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特許7520585データ変換システム、及びデータ変換プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】データ変換システム、及びデータ変換プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20240716BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20240716BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/10 100
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020102657
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021196847
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】三舩 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 正人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 康如
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 貴文
(72)【発明者】
【氏名】松尾 享
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-038631(JP,A)
【文献】特開2008-254167(JP,A)
【文献】特開2000-293549(JP,A)
【文献】特開2007-022234(JP,A)
【文献】国際公開第2013/030929(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0004237(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0025099(US,A1)
【文献】古川玲,転ばぬ先の地図活用豆知識 第8回 無償で使える地図/地形データあれこれ,Interface,CQ出版株式会社,2020年04月01日,第46巻,第4号,pp. 144-147
【文献】佐々木洋子 外1名,自律移動ロボットによる人と空間情報の構造化,人工知能,一般社団法人人工知能学会,2020年01月,第35巻,第1号,pp. 54-60
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
G05B 1/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1工程として、建築物の設計において必要となる各種の情報である設計情報を含むモデル情報から、前記設計情報に含まれる属性情報を少なくとも除去し、ロボットの制御において経路となり得る領域、及び当該領域で所定の作業工程において接触し得る要素表面の位置情報のみのデータを抽出し、
第2工程として、内部構造の一部の削除及び追加の自動化が可能な機能を備える所定のソフトウェアを用いて、前記モデル情報から前記第1工程で抽出したデータに対して、特定の形状の構造物の要素表面が存在する場合の当該要素表面の削除又は任意の構造物を追加する処理を行うと共に、ロボット制御に必要な互換可能な形式のデータであって、ロボットの制御に必要な空間情報を抽出した制御用3次元データを生成する、
データ変換システム。
【請求項2】
前記モデル情報の構造を表示する画面領域と、変換して得られた前記制御用3次元データの構造を表示する画面領域とを切り替えて表示できる表示インターフェースを有する端末を更に備える、請求項1に記載のデータ変換システム。
【請求項3】
第1工程として、建築物の設計において必要となる各種の情報である設計情報を含むモデル情報から、前記設計情報に含まれる属性情報を少なくとも除去し、ロボットの制御において経路となり得る領域、及び当該領域で所定の作業工程において接触し得る要素表面の位置情報のみのデータを抽出し、
第2工程として、内部構造の一部の削除及び追加の自動化が可能な機能を備える所定のソフトウェアを用いて、前記モデル情報から前記第1工程で抽出したデータに対して、特定の形状の構造物の要素表面が存在する場合の当該要素表面の削除又は任意の構造物を追加する処理を行うと共に、ロボット制御に必要な互換可能な形式のデータであって、ロボットの制御に必要な空間情報を抽出した制御用3次元データを生成する、
処理をコンピュータに実行させるデータ変換プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの制御に必要な空間情報のデータの取得に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物を構成する複数の部材についての3次元形状、配置、仕様に関するデータを含む建築モデルデータから所定の特性データを抽出する技術が知られている(例えば、特許文献1)。この技術では、建築モデルデータを構成する複数の部材のうち建物の光環境に影響する部材を抽出し、部材の光環境に関連する特性のデータを用いて、光環境に要求される所定の条件を満足するように、照明設備に関する特性のデータを定めている。
【0003】
また、BIM(Building Information Modeling)データファイルに含まれたデータを提供するための技術が知られている(例えば、特許文献3)。この技術では、BIMデータの検索データ及び編集データをクライアントに送信している。
【0004】
またBIMから部屋モデルを作成する技術が知られている(例えば、特許文献4)。この技術では、BIMから起点要素を抽出し、起点要素を起点とした所定の検索により、検索結果の複数の建物要素のそれぞれに仮想部材を配備することによって、仮想部材で構成された仮想部屋を抽出している。また、仮想部材に、BIMに含まれる属性情報のうち仮想部材が配備された建物要素に対応する属性情報を設定し、属性情報の設定された仮想部屋を部屋モデルとして作成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/088335号
【文献】国際公開第2014/132802号
【文献】特開2013-171579号公報
【文献】国際公開第2016-147304号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1~4に記載の技術によれば、BIMから所定の情報を抽出している。ここで、ロボットの制御に必要な情報は、特許文献1のような光環境に必要とする特性の情報とは異なり、ロボットの移動経路を生成するための3次元的な空間を捉えることが可能な情報である。そのため、BIMデータをこのような3次元的な形状、及び空間を捉えたデータ形式に変換することが必要である。
【0007】
本発明は上記事実を考慮して、ロボットの効率的な制御に必要な空間情報を含む3次元データを生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のデータ変換システムは、建築物の設計において必要となる各種の情報である設計情報を含むモデル情報から、所定の変換工程を経て、ロボットの制御に必要な空間情報を抽出した制御用3次元データを生成する。これにより、ロボットの効率的な制御に必要な空間情報を含む3次元データを生成することを可能とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロボットの効率的な制御に必要な空間情報を含む3次元データを生成することを可能とする、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ロボット管理プラットフォームのイメージ図である。
図2】本発明の実施形態に係るデータ変換システムの構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態の複数回の変換工程による制御用3次元データの生成を示す概念図である。
図4】本発明の実施形態に係るデータ変換装置におけるデータ変換処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のデータ変換システムについて説明する。
【0012】
本発明の実施形態の概要を説明する。本発明の実施形態に係る手法では、複数回の変換工程を経て、制御用3次元データを生成する。制御用3次元データは、ロボットの制御に必要な空間情報を抽出したデータである。また、ロボットの制御は、ロボットの経路生成を行って、生成した経路に従って行われる。そのため、制御用3次元データは、少なくとも経路生成に必要なデータを含む。制御用3次元データの抽出の元には、建築物の設計において必要となる各種の情報であるモデル情報を用いる。
【0013】
ここで、本実施形態の前提となるロボット管理プラットフォームについて説明する。図1はロボット管理プラットフォームのイメージ図である。図1に示すように、ロボット管理プラットフォームは、クラウド環境でロボットの管理を行うためのプラットフォームである。ロボット管理プラットフォームにはロボットを管理するための機能を実行するプログラムが各種モジュールとして実装されており、モジュールを適宜連携させて必要な処理を行う。これによりロボット管理プラットフォームは、ロボットによる施工作業のオートメーション化を実現する。図1に示したモジュールの一覧はあくまで機能的な手段の一例を示しており、これらの例に限定されない。このようなロボット管理プラットフォームを活用することにより、煩わしいロボット操作のための設定作業などを極力なくすことに繋がる。また、施工対象のBIMデータをもとにロボットの自己位置を推定することで、現場担当者はBIMデータを参照してロボットの指示ができるようになるため、直感的な操作を現場担当者に提供できる。また、遠隔操作におけるロボットの状態監視など、施工時に必要な機能をプラットフォームのサービスとして展開できる。
【0014】
図1に示したロボット管理プラットフォームにおいて、本実施形態の手法は、経路シミュレーションに必要な制御用3次元データを生成するための手法という位置付けである。
【0015】
図2は、本発明の実施形態に係るデータ変換システムの構成を示すブロック図である。図2に示すように、データ変換システム100は、データ変換装置110と、端末140と、複数のロボット150とが、ネットワークNを介して接続されている。ネットワークNは、例えば、インターネット回線、又は公衆無線LAN等である。
【0016】
端末140は、データ変換装置110へのモデル情報の入力、データ変換装置110からの制御用3次元データの出力結果の確認等を行う端末である。なお、端末140は、各種担当が操作する端末であり、データ変換装置110の処理に必要な入出力を行う。ここでの各種担当は上述のロボット管理プラットフォームに当てはめられる。例えば、本実施形態では、BIMデータの運用全般を担っている「機材管理担当者」が担当である。端末140のログイン時に各種担当に応じた権限が振り分けられているが、データ変換システム100の主たる処理でないためここでは説明は省略する。
【0017】
ロボット150は、制御用3次元データによる経路生成の対象とするロボットである。ロボット150は、ロボット環境プラットフォームのシミュレーション環境にエージェントとして種類ごとに実装されており動作エミュレートが可能である。動作エミュレートにおいて、本実施形態のデータ変換装置110により生成した制御用3次元データを用いて、ロボットの種類ごとの経路生成を行うとする。なお、ロボットの経路生成については説明を省略する。
【0018】
データ変換装置110は、通信部112と、第1変換部114と、第2変換部116と、記憶部120とを含んで構成されている。また、データ変換装置110は、CPUと、RAMと、各処理部を実行するためのプログラム及び各種データを記憶したROMと、を含むコンピュータで構成することができる(図示省略)。本実施形態のデータ変換装置110は、上述した図1のロボット管理プラットフォームの一部の機能をモジュール化して構築したサーバであり、各機能部は機能の一例である。
【0019】
通信部112は、端末140及びロボット150との通信により各種データの送受信を行う。例えば、端末140からモデル情報を受け付け記憶部120に格納する。また、通信部112は、必要に応じて制御用3次元データを端末140及びロボット150に送信する。
【0020】
記憶部120には、端末140から受け付けたモデル情報が格納される。また、第2変換部116により取得された制御用3次元データが格納される。
【0021】
図3は、本実施形態の複数回の変換工程による制御用3次元データの生成を示す概念図である。以下、図3に沿いつつ第1変換部114及び第2変換部116の説明を行う。図3に示すように、本実施形態で生成する制御用3次元データは、一例として、ロボットの経路シミュレーション用のモデルデータとしての3次元データである.daeファイルとする。
【0022】
第1変換部114は、記憶部120からモデル情報を取得し、モデル情報を変換したBIMデータを生成する。当該変換が第1変換工程である。第1変換部114による第1変換工程により、モデル情報から、ロボットの制御において経路となり得る領域、及び当該領域で所定の作業工程においてロボットが接触し得る要素表面の位置情報のみを抽出したBIMデータに変換する。ここでの領域とは空間において構造物の存在しない領域であり、要素表面とは構造物の要素表面である。図3に示したように、第1変換工程において、モデル情報はARCHICADで扱われる.plaファイルを一例として用いる。第1変換工程では、ARCHICADの.plaファイルからBIMデータの.stlファイルに変換する。ARCHICADのようなCADの設計情報のデータは、その特性上、膨大な設計用に必要となる情報を含んでしまっている。.plaファイルは、設計情報を含む設計図面である。設計情報は、建築物内に配置される構造物の内部構造、構造物の特性を表す属性情報、及び構造物の縮尺を含む。そのため、第1変換工程により、属性情報等を除去し、領域、及び要素表面を抽出し、.stlファイルに変換する。なお、属性情報等については一部を第2変換工程で除去する等、役割を分担してもよい。
【0023】
第2変換部116は、BIMデータを取得し、BIMデータを変換した制御用3次元データを生成する。当該変換が第2変換工程である。第2変換部116による第2変換工程により、モデル情報を変換したBIMデータを、ロボット制御に必要な互換可能な形式である制御用3次元データへ変換する。図3に示したように、第2変換工程においては、3次元モデリングソフトウェアであるblenderを介して、BIMデータである.stlファイルから制御用3次元データである.daeファイルへの変換を行う。blenderは、3次元形状物のモデリングを行うためのソフトウェアであり、構造物の空間的な特性を備えた互換形式である.daeファイルへの変換を可能とする。blenderにはアドオンとして内部処理プログラムを搭載することが可能であり、blenderを媒介として第2変換工程の自動化が可能である。blenderで変換される.daeファイルについて説明する。blenderにおいて、構造物は、その要素表面の位置情報がグローバル座標系において示される。ロボットの制御では、構造物の表面のみに関する情報があればよいため、構造物の内部構造は当該第2変換により削除が可能である。また、アドオンによって設計図面に存在していた構造物(構造物の要素表面)を自動的に削除することが可能である。例えば、特定の形状の構造物の要素表面が存在する場合に、当該要素表面を削除するプログラムをアドオンとして実装する。逆に、アドオンによって任意の構造物を空間に追加することも可能である。変換後の.daeファイルにおいて、ロボットの経路となり得る領域は、グローバル座標系に配置された構造物のない空間により表される。なお、blenderは一例であり、他のモデリングソフトウェアを媒介として用いてもよい。
【0024】
以上のように、設計図面として必要とされた属性情報、内部構造、及び縮尺等の設計情報は、ロボット制御においては不要であるため、変換工程により適宜除外される。また、図3に示したように、複数の変換工程を経て必要部分のみを抽出し軽量化された制御用3次元データを用いることで、効率的にロボット制御のための経路シミュレーションを行うことが可能となる。そして、経路シミュレーションを経て、生成した経路、作業対象の範囲設定の実機へのデプロイ(展開)を行う。
【0025】
ここで端末140では表示インターフェースにおいて、モデル情報と、制御用3次元データとの比較結果の表示が可能である。表示インターフェースには様々な態様が想定され得る。例えば、画面において、モデル情報の詳細な構造を表示する画面領域と、制御用3次元データの簡素な構造を表示する画面領域との表示を切り替えられる表示インターフェースとしてもよい。また、変換で得られた制御用3次元データを確認し、要素表面の調整等も行えるようにしてもよい。これにより、現場担当者は、変更点を確認でき、施工図面、及び実際の建設現場との整合をとることができる。
【0026】
次に、本発明の実施形態のデータ変換装置110の作用について説明する。図4は、本発明の実施形態に係るデータ変換装置110におけるデータ変換処理を示すフローチャートである。CPUがROMからプログラム及び各種データを読み出して実行することにより、データ変換処理が行なわれる。CPUが、データ変換装置110の各部として機能する。なお、モデル情報は記憶部120に予め格納されているとする。
【0027】
ステップS100では、第1変換部114が、モデル情報を取得し、モデル情報を変換したBIMデータを生成する。BIMデータは、ロボットの制御において経路となり得る領域、及び当該領域で所定の作業工程においてロボットが接触し得る要素表面の位置情報のみを抽出したデータである。
【0028】
ステップS102では、第2変換部116が、BIMデータを取得し、BIMデータを変換して、ロボット制御に必要な互換可能な形式である制御用3次元データを生成する。当該第2変換工程において、空間情報に存在する構造物の削除、又は空間情報への構造物の付加を行ってもよい。
【0029】
ステップS104では、通信部112が、端末140へモデル情報と制御用3次元データとの比較結果を出力する。
【0030】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係るデータ変換システム100によれば、ロボットの効率的な制御に必要な空間情報を含む3次元データを生成することを可能とする。
【0031】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0032】
例えば、上述した実施形態では、データ変換システムによって制御用3次元データを生成する態様について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、生成した制御用3次元データを用いて経路シミュレーションによる経路生成を行うようにしてもよい。この場合に、経路シミュレーションにおいて構造物によって通行できない場合にフィードバックを行い、第2変換部116において構造物の位置の調整又は削除を行うようにしてもよい。変更点は現場担当者に通知し、施工図面、及び実際の建設現場に反映を促す。
【符号の説明】
【0033】
100 データ変換システム
110 データ変換装置
112 通信部
114 第1変換部
116 第2変換部
120 記憶部
140 端末
150 ロボット
図1
図2
図3
図4