IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝電機サービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図1
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図2
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図3
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図4
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図5
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図6
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図7
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図8
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図9
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図10
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図11
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図12
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図13
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図14
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図15
  • 特許-レーダ装置及びレーダ信号処理方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】レーダ装置及びレーダ信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/90 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
G01S13/90 191
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020115722
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022013279
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 晋一
(72)【発明者】
【氏名】和田 泰明
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-159575(JP,A)
【文献】特開2013-152239(JP,A)
【文献】特開2017-139571(JP,A)
【文献】特開2017-021013(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0128892(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00 - 3/74
5/00 - 5/14
7/00 - 7/64
13/00 - 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次元または2次元に配置した1または複数のアンテナ素子による複数のサブアレイにより、パルス変調または連続波変調した信号を送受信した信号を用いるレーダ装置であって、
前記複数のサブアレイの受信信号を角度軸のFFT(DBF)処理を行うFFT処理手段と、
目標反射点の2次元の絶対位置(X,Y)または3次元の絶対位置(X,Y,Z)を設定し、前記FFT処理手段の処理結果を用いてレンジ軸、角度軸の極座標をX軸、Y軸(及びZ軸、3次元の場合)の直交座標に変換し、X-Y面(及びY-Z面、3次元の場合)に振幅投影した振幅加算値を用いて、所定の振幅スレショルドを超えるX軸、Y軸(及びZ軸、3次元の場合)の目標範囲を抽出する目標範囲抽出手段と、
前記複数のサブアレイの受信信号について、角度軸CS(compressed sensing:圧縮センシング)またはレンジ軸CS処理の少なくとも一方の処理を行うCS処理手段と、
前記CS処理手段の処理結果について前記目標範囲に入る点を抽出し、抽出された点の2次元の絶対位置(X,Y)または3次元の絶対位置(X,Y,Z)を出力する位置出力手段と
を具備するレーダ装置。
【請求項2】
さらに、目標反射点の2次元の絶対位置(X,Y)または3次元の絶対位置(X,Y,Z)を用いて目標軸を抽出する目標軸抽出手段を備える請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記目標軸抽出手段は、前記位置出力手段で得られる点を集めて目標画像を生成し、その目標画像をレンジ-角度軸の画像中心に移動させる請求項2記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記目標軸抽出手段は、前記目標範囲の中心を中心に、所定の幅及び所定の角度の範囲を基準として、他は0に設定したテンプレートを用意し、このテンプレートと画像中心化した画像の振幅を乗算し加算し、その加算結果を保存して、その加算結果が最大となるテンプレートを抽出し、前記テンプレートを用いて目標軸範囲を抽出する請求項2記載のレーダ装置。
【請求項5】
レーダ装置の信号処理装置が、1次元または2次元に配置した1または複数のアンテナ素子による複数のサブアレイにより、パルス変調または連続波変調した信号を送受信した信号を用いて目標を検出するレーダ信号処理方法であって、
前記信号処理装置が、
前記複数のサブアレイの受信信号について角度軸のFFT(DBF)処理を行うステップと
目標反射点の2次元の絶対位置(X,Y)または3次元の絶対位置(X,Y,Z)を設定し、前記FFT(DBF)処理の処理結果を用いてレンジ軸、角度軸の極座標をX軸、Y軸(及びZ軸、3次元の場合)の直交座標に変換し、X-Y面(及びY-Z面、3次元の場合)に振幅投影した振幅加算値を用いて、所定の振幅スレショルドを超えるX軸、Y軸(及びZ軸、3次元の場合)の目標範囲を抽出するステップと
前記複数のサブアレイの受信信号について、角度軸CS(compressed sensing:圧縮センシング)またはレンジ軸CS処理の少なくとも一方のCS処理を行うステップと
前記CS処理の処理結果について前記目標範囲に入る点を抽出し、抽出された点の2次元の絶対位置(X,Y)または3次元の絶対位置(X,Y,Z)を出力するステップと
を具備するレーダ信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、レーダ装置及びレーダ信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
目標形状の絶対位置を出力するレーダ装置として、逆合成開口レーダ装置(ISAR:Inverse Synthetic aperture radar)が知られている。このISARレーダ装置は、相手側である目標の移動や姿勢変化を利用して分解能を高める方式であるが、目標の回転により、目標形状のドップラ軸の大きさが変化するために、目標形状の絶対位置を出力することができず、例えば目標軸の向きを正しく観測することができないという問題が指摘されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】SAR方式(ISAR)、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp. 280-283(1996)
【文献】モノパルス、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp. 260-264(1996)
【文献】SAR方式(レンジ圧縮)、大内、‘リモートセンシングのための合成開口レーダの基礎’、東京電機大学出版局、pp. 131-149 (2003)
【文献】パルス圧縮、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp. 278-280(1996)
【文献】圧縮センシング、Toyoki Hoshikawa, ’Performance Comparison of Compressed Sensing Algorithms for DOA Estimation of Multi-band Signals’, 2018 15TH WORKSHOP ON POSITIONING NAVIGATION AND COMMUNICATIONS (2018)
【文献】一般化ハフ変換、大橋、‘一般化Hough変換による任意図形検出アルゴリズム、グラフィックスとCAD’, 37-5, pp.33-39 (1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上述べたように、従来のISARレーダ装置では、目標回転により、目標形状のドップラ軸の大きさが変化するために、目標形状の絶対位置を出力することができず、例えば目標軸の向きを正しく観測することができない問題があった。
【0005】
本実施形態の課題は、目標回転によらず、目標形状の絶対位置を出力することができ、これによって目標軸の向きを正しく観測することのできるレーダ装置及びレーダ信号処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本実施形態に係るレーダ装置は、1次元または2次元に配置した1または複数のアンテナ素子による複数のサブアレイにより、パルス変調または連続波変調した信号を送受信した信号を用いるレーダ装置であって、前記複数のサブアレイの受信信号を角度軸のFFT(DBF)処理を行い、目標反射点の2次元の絶対位置(X,Y)または3次元の絶対位置(X,Y,Z)を設定し、前記FFT(DBF)処理の処理結果を用いてレンジ軸、角度軸の極座標をX軸、Y軸(及びZ軸、3次元の場合)の直交座標に変換し、X-Y面(及びY-Z面、3次元の場合)に振幅投影した振幅加算値を用いて、所定の振幅スレショルドを超えるX軸、Y軸(及びZ軸、3次元の場合)の目標範囲を抽出し、前記複数のサブアレイの受信信号について、角度軸CS(compressed sensing:圧縮センシング)またはレンジ軸CS処理の少なくとも一方のCS処理を行い、前記CS処理の処理結果について前記目標範囲に入る点を抽出し、抽出された点の2次元の絶対位置(X,Y)または3次元の絶対位置(X,Y,Z)を出力する。
【0007】
すなわち、2次元(1次元)に配置したアンテナ素子(サブアレイ)により、パルス変調(連続波変調)した信号を送受信した信号を用いて、AZ軸及びEL軸(AZ軸またはEL軸)の角度軸においてFFT処理し、更にレンジ周波数軸においてFFT処理したデータを用いて、目標反射点の3次元(2次元)の絶対位置(X,Y,Z)を出力し、レンジ軸、AZ軸及びEL軸の極座標をX軸、Y軸及びZ軸の直交座標に変換して、X-Y面とY-Z面に振幅投影した振幅加算値を用いて、所定の振幅スレショルドを超えるX軸、Y軸、Z軸の範囲を抽出し、AZ軸及びEL軸(AZ軸またはEL軸)においてCS処理し、更にレンジ周波数軸においてCS処理したデータより、前述のFFT結果の抽出範囲の点のみを抽出して、目標反射点の3次元(2次元)の絶対位置(X,Y,Z)を出力する。このように、アンテナ素子(サブアレイ)の信号を用いて角度軸CS処理し、必要に応じてレンジ軸でもCS処理し、更に、CS処理の代わりにFFT処理を用いた出力により、目標範囲を限定することで、誤検出を抑圧し、目標形状の絶対値を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係るレーダ装置の受信系統の構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態において、アンテナのサブアレイ受信系統例を示すブロック図である。
図3図3は、第1の実施形態において、サブアレイそれぞれの受信信号を示す波形図である。
図4図4は、第1の実施形態において、サブアレイ信号入力から目標範囲を抽出する処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、第1の実施形態において、サブアレイの受信出力からサブアレイDBFを形成する様子を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態において、サブアレイDBF出力から振幅スレショルドに基づいて目標範囲を抽出する様子を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態において、ドップラバンクを選定した信号によりサブアレイ-レンジ周波数軸の信号を取得する様子を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態において、サブアレイ-レンジ周波数軸の信号から角度軸CS処理、レンジ軸CS処理により角度-レンジ軸の信号を取得する様子を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態において、サブアレイ信号入力から角度軸CS処理、レンジ周波数軸CS処理を経て目標範囲を抽出する処理の流れを示すフローチャートである。
図10図10は、第1の実施形態において、被搭載機のフライト方向及び移動速度に対する目標範囲の位置を定義する図である。
図11図11は、第1の実施形態において、目標範囲抽出処理の様子を示す図である。
図12図12は、第1の実施形態において、被搭載機の飛翔経路に対する目標の位置を定義する図である。
図13図13は、第2の実施形態に係るレーダ装置の受信系統の構成を示すブロック図である。
図14図14は、第2の実施形態の目標範囲抽出処理を示すフローチャートである。
図15図15は、第2の実施形態において、ISAR画像を画像化範囲の中心に変換する処理を説明するための図である。
図16図16は、第2の実施形態において、目標軸と目標軸を中心にした目標幅で規定される目標軸範囲を抽出する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るレーダ装置の受信系統の構成を示すブロック図である。送信系統は、説明を簡単にするために割愛する。送信系統では、被搭載レーダによる実開口ビームが目標に常に照射するように、アンテナのビーム指向方向を制御して、PRI(Pulse Repetition Interval)間隔でパルスを送信する。
【0011】
図1において、アンテナ11は、それぞれ1または複数のアンテナ素子を配列したN個(N>1)のサブアレイ111~11Nで構成される。受信系統では、サブアレイ111~11Nそれぞれの受信出力を、周波数変換器121~12Nで周波数変換した後、AD変換器131~13Nでディジタル信号に変換し、Slow-time FFT141~14Nでそれぞれのslow-time軸のFFT処理を施すことでドップラ軸の信号を取得し、以下の信号処理部で目標検出処理を行う。
【0012】
上記信号処理部は、DBF(Digital Beam Forming)合成器15、第1の目標範囲抽出器16、信号抽出器17、レンジ周波数変換器18、CS(compress sensing:圧縮センシング)処理器19、第2の目標範囲抽出器20を備える。
【0013】
上記DBF合成器15は、Slow-time FFT141~14Nで得られるドップラ軸の信号についてサブアレイ間のFFT処理を行って、角度空間に対してマルチビームを形成し、ドップラ-角度軸の信号を得る。
【0014】
上記第1の目標範囲抽出器16は、DBF合成器15で形成されるビームによって得られたドップラ-角度軸の信号から所定の振幅スレッショルドを超える振幅成分の角度、レンジ、ドップラを計測し、目標範囲を示すドップラバンクを抽出する。
【0015】
上記信号抽出器17は、上記N系統のSlow-time FFT141~14Nで得られるドップラ軸の信号を入力し、第1の目標抽出器16で抽出された目標範囲のドップラバンクそれぞれについてサブアレイ毎のfast-time軸の信号を抽出する。
【0016】
上記レンジ周波数変換器18は、信号抽出器17で抽出されたサブアレイ毎のfast-time軸の信号を入力し、FFT処理してレンジ周波数軸に変換し、レンジ周波数軸の信号を得る。
【0017】
上記CS処理器19は、レンジ周波数軸の信号を入力して角度軸CS処理を行ったのち、角度毎にレンジ周波数軸のCS処理を行う。
【0018】
上記第2の目標範囲抽出器20は、第1の目標範囲抽出器16で抽出された角度-レンジ周波数軸の目標範囲をX-Y軸に変換し、角度-レンジ周波数軸のCS処理結果からX-Y軸に変換された目標範囲内の目標を抽出する。
【0019】
上記構成において、図2乃至図12を参照してその処理動作を説明する。
【0020】
図2図1に示すアンテナ11のサブアレイ111~11Nの受信系統例を示すブロック図、図3図1に示すサブアレイそれぞれの受信信号を示す波形図である。図2に示す例は、AZ(またはEL)軸のアンテナ素子(サブアレイ)を1次元に配列したアレイである。本実施形態では、AZ(またはEL)軸の圧縮センシング(以下、CS)処理により、AZ(またはEL)軸の到来方向を算出する。他方のEL(またはAZ)軸について、測角が必要であれば、図2に示すように、上下(または左右)開口2分割の差ビームによりΔEL(またはΔAZ)を出力し、AZ(またはEL)軸では、アナログ合成した信号を用いて、全体開口の和であるΣビームと組み合わせ、測角誤差と測角テーブルにより、位相モノパルス測角(非特許文献1参照)すればよい。
【0021】
アンテナ11は、搭載レーダによる実開口ビームを目標に常に照射されるように指向させて、PRI(Pulse Repetition Interval)間隔で送信したパルス毎(slow-time)に、PRI内のレンジセル単位(fast-time)でデータを取得する。すなわち、上記サブアレイ(アンテナ素子を含むが、以下省略する)111~11Nで受信されたRF信号#1~#Nは、それぞれ周波数変換器121~12NによりIF帯に周波数変換され、さらにAD変換器131~13Nによりディジタル信号に変換される。この受信信号#1~#Nは、図3に示すように、fast-time-slow-time軸の信号である。
【0022】
以下、ディジタル化されたサブアレイ受信信号#1~#Nから目標範囲を抽出する処理について説明する。
【0023】
図4はサブアレイ信号入力から目標範囲を抽出する処理の流れを示すフローチャート、図5はサブアレイの受信出力からサブアレイDBFを形成する様子を示す波形図、図6はサブアレイDBF出力から振幅スレショルドに基づいて目標範囲を抽出する様子を示す図である。
【0024】
図4に示す処理によれば、上記構成による受信系統では、図5(a)に示すサブアレイ受信信号#1~#Nを入力すると(ステップS11)、Slow-time FFT141~14NでPRI#1~PRI#L毎にslow-time FFT処理を施して、図5(b)に示すPRI#1~PRI#Lそれぞれに対応するバンク#1~#Lでfast-time軸のサブアレイ受信信号#1~#Nを取得し、DBF(Digital Beam Forming)合成器15でサブアレイ間のDBF合成を行って(ステップS12)、X軸及びY軸に振幅波形を投影し(ステップS13)、第1の目標範囲抽出器16で図5(c)に示すレンジ-角度軸の目標範囲(X-Y軸)を抽出する(ステップS14)。DBF合成は、サブアレイ間のFFT処理であり、角度空間に対してマルチビームを形成する。このドップラ-角度軸の信号より、図6に示すように、所定の振幅スレショルドを超えるドップラと角度の範囲を目標範囲(X-Y軸)として抽出することができる。
【0025】
ここで、図7はドップラバンクを選定した信号によりサブアレイ-レンジ周波数軸の信号を取得する様子を示す図、図8はサブアレイ-レンジ周波数軸の信号から角度軸のCS処理、レンジ周波数軸のCS処理により角度-レンジ周波数軸の信号を取得する様子を示す図、図9はサブアレイ信号入力から角度軸CS処理、レンジ周波数軸CS処理を経て目標範囲を抽出する処理の流れを示すフローチャート、図10は被搭載機のフライト方向及び移動速度に対する目標範囲の位置を定義する図、図11は目標範囲抽出処理の様子を示す図、図12は被搭載機の飛翔経路に対する目標の位置を定義する図である。
【0026】
本実施形態では、図7(a)に示すサブアレイ受信信号#1~#Nを入力して、Slow-time FFT141~14NでPRI#1~PRI#L毎にslow-time FFT処理を施した後、図7(b)に示すように、PRI#1~PRI#Lそれぞれに対応するバンク#1~#Lでfast-time軸のサブアレイ受信信号#1~#Nを取得する。これにより、抽出した目標範囲のドップラバンク毎に、サブアレイ毎のfast-time軸の信号を抽出することができる。そこで、このfast-time軸の信号をFFT処理してレンジ周波数軸に変換することで、図7(c)に示すサブアレイ-レンジ周波数軸の信号を抽出することができる。
【0027】
上記の処理を具体的に説明する。
パルス圧縮処理(非特許文献3参照)された信号等のようにパルス内で変調している場合は、変調信号である参照信号をFFT処理したものを周波数軸の信号に乗算して、レンジ周波数軸の信号Sigr(f)を得る(非特許文献4参照)。
【0028】
まず、
【0029】
【数1】
【0030】
各サブアレイ受信信号#1~#Nは、全体のアンテナ開口の位相中心からの位相により、次式で与えられる。
【0031】
【数2】
【0032】
【数3】
【0033】
次に、圧縮センシング処理(非特許文献5参照)を考える。図5と同様の手法で、ドップラバンクを選定した信号により図7(c)に示すサブアレイ-レンジ周波数軸の信号を得る。この信号を入力信号Yとして、波源をXangとすると、次式で表すことができる。
【0034】
【数4】
【0035】
【数5】
【0036】
【数6】
【0037】
【数7】

次に、(4)式を用いて、Xがスパースであることを用いると、次式を最小化するXangを算出することができる(非特許文献5参照)。
【0038】
【数8】
【0039】
次に、レンジ周波数軸におけるCS処理をすることを考える。入力信号の変化の様子を図8に示す。角度軸CS処理をした後は、角度毎にレンジ軸のCS処理を行う。この角度軸毎の入力信号をYrとし波源をXrとすると、次式で表すことができる。
【0040】
【数9】
【0041】
【数10】
【0042】
Arのn番目の縦列の要素は、波源xnが存在するときの距離に対応するベクトルである。
【0043】
【数11】
【0044】
【数12】

ここで、(9)式を用いて、Xがスパースであることを用いると、次式を最小化するXrを算出することができる(非特許文献5参照)。
【0045】
【数13】

Xrに対応するmが算出できれば、次式により距離を算出することができる。
【0046】
【数14】
【0047】
以上の角度軸及びレンジ周波数軸のCS処理の全体処理フローを図9に示す。図9では、サブアレイ信号入力から角度軸CS処理、レンジ周波数軸CS処理を経て目標範囲を抽出する処理の流れを示しているが、角度軸とレンジ周波数軸のCS処理の順番を入れ替えてもよい。
【0048】
図9において、まずサブアレイ信号を入力し、fast-time軸信号を入力すると(ステップS21)、fast-time軸FFT処理を施し(ステップS22)、fast-time軸参照信号を設定し(ステップS23)、そのfast-time軸参照信号をFFT処理して(ステップS24)、fast-time軸信号にFFT処理されたfast-time軸参照信号を乗算(周波数軸乗算)して(ステップS25)、角度軸のCS処理を行う(ステップS26)。ここで、全てのレンジ周波数セルについてCS処理が終了したかを判断し(ステップS27)、終了していない場合は、レンジ周波数セルを変化させ(ステップS28)、ステップS26に戻って角度軸CS処理を行う。ステップS27で全てのレンジ周波数セルのCS処理が終了していた場合には、レンジ周波数軸の観測行列を設定し(ステップS28)、レンジ周波数軸のCS処理を行う(ステップS29)ここで、全ての角度セルについてCS処理が終了したかを判断し(ステップS30)、終了していない場合は、角度セルを変化させ(ステップS31)、ステップS29に戻ってレンジ周波数軸CS処理を行う。ステップS30で全ての角度セルのCS処理が終了していた場合には、一連の処理を終了する。
【0049】
以上により、距離Rと角度θを算出できるため、3次元座標にするには、図10を参照して、次式により変換する。
【0050】
【数15】
【0051】
次に、CS処理による誤検出の影響を抑圧するために、図6で抽出したレンジ-角度軸の目標範囲を図11(a)に示すようにX-Y軸に変換して所定の振幅スレッショルドを超える振幅範囲を目標範囲として抽出し、図11(b)に示すように目標範囲内の信号を抽出し、その他をノイズとして誤検出を抑圧する。また、目標範囲内の目標の分布から目標軸を抽出する。
【0052】
結果として、図12(a)に示すように、X-Y軸上の被搭載機の飛翔経路(Y軸方向)に対してAZ角度方向、距離Rの位置に目標が存在するとき、図12(b)に示すようにX-Y軸で高分解能の目標画像が得られる。
【0053】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、CS処理を用いて、角度軸-レンジ周波数軸(あるいは、変換座標であるX-Y軸)の高分解能化を図る手法について述べた。本実施形態では、高分解能化画像を用いて、目標軸を抽出する手法について述べる。目標軸の抽出には、一般化ハフ変換(非特許文献5参照)等を用いる手法があるが、ここでは、テンプレートマッチングを用いた手法について述べる。
【0054】
図13は第2の実施形態に係るレーダ装置の受信系統の構成を示すブロック図、図14は目標範囲抽出処理を示すフローチャート、図15はISAR画像を画像化範囲の中心に変換する処理を説明するための図、図16は目標軸と目標軸を中心にした目標幅で規定される目標軸範囲を抽出する様子を示す図である。
【0055】
本実施形態に係るレーダ装置の受信系統は、図13に示すように、第1の実施形態の第2の目標範囲抽出器20の後段に、目標軸を抽出するための信号処理器21を追加した点にある。図13において、図1と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは重複する説明を省略する。
【0056】
本実施形態では、図14に示すように、まず、第2の目標範囲抽出器20で得られたISAR画像をレンジ-角度軸の画像中心に変換する(ステップS41)。画像中心に変換するには、図15(a)に示すX-Y軸の目標画像について、図15(b)に示すようにX軸とY軸に対して振幅を投影し、その結果に対して振幅スレショルドを設定し、それを超えたX軸とY軸の範囲を目標範囲として抽出し、目標範囲の中心(Xtc,Ytc)を算出する。この目標範囲の中心を画像化中心(Xc,Yc)に変換することで、図15(c)に示すように、目標画像を移動する。これにより、目標中心軸に対するテンプレートの数を減らすことができる。
【0057】
次に、目標軸を抽出するために、図16に示す目標範囲の中心(Xc,Yc)を中心に、所定の幅Wtn(n=1~Nw)及び所定の角度θtn(n=1~Nt)の範囲を1(基準)として、他は0に設定したテンプレートを用意し、このテンプレートと画像中心化した画像の振幅を乗算し、加算し(ステップS42)、その加算結果を保存して(ステップS42)、その加算結果が最大となるテンプレートを抽出する(ステップS44~S46)。テンプレートを用いて目標軸範囲(θtとWt)を抽出し(ステップS47)、目標軸範囲の輝度を強調して(ステップS48)、一連の処理を終了する。これにより、目標軸θtと目標軸を中心にした目標幅Wtで規定される目標軸範囲を抽出することができる。
【0058】
以上のように、上記の実施形態に係るレーダ装置は、目標が回転する場合でも、目標形状の絶対位置を出力することができ、例えば目標軸の向きを正しく観測することができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態をそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
11…アンテナ、121~12N…周波数変換器、131~13N…AD変換器、141~14N…Slow-time FFT、15…DBF(Digital Beam Forming)合成器、16…第1の目標範囲抽出器、17…信号抽出器、18…レンジ周波数変換器、19…CS(compress sensing:圧縮センシング)処理器、20…第2の目標範囲抽出器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16