IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 近畿車輌株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-鉄道車両の床構造 図1
  • 特許-鉄道車両の床構造 図2
  • 特許-鉄道車両の床構造 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】鉄道車両の床構造
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/10 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
B61D17/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020124143
(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公開番号】P2022020900
(43)【公開日】2022-02-02
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000163372
【氏名又は名称】近畿車輌株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】寺村 弘
(72)【発明者】
【氏名】隅川 倫成
(72)【発明者】
【氏名】新田 真一
(72)【発明者】
【氏名】清水 滉平
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-213652(JP,A)
【文献】特開昭57-161263(JP,A)
【文献】実開昭55-025920(JP,U)
【文献】特許第3573693(JP,B2)
【文献】特開2011-196077(JP,A)
【文献】特開2012-061904(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00370604(GB,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0319756(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の床構造であって、
金属製の基板と、
前記基板上に形成され、複数のコルクチップと前記複数のコルクチップを繋ぐバインダーとを含んでなり、空隙率が5%以上50%以下の範囲である弾性層と、
前記弾性層上に形成され、少なくとも一部が前記弾性層の空隙に入り込んだ目止め層と、
前記目止め層上に形成され、前記目止め層とは組成が異なる材料からなる不陸調整層とを備えており、
前記弾性層の前記基板の最上部上における厚みが5mm以上25mm以下の範囲であり、
前記目止め層は、厚み方向において、その半分以上が前記弾性層の上層部に入り込みつつ、上面が前記弾性層よりも上方に位置していることを特徴とする鉄道車両の床構造。
【請求項2】
前記基板は、
一方向に沿って延在し、前記一方向と直交する方向に互いに離隔して配列された複数の底板部と、
前記一方向に沿って延在し、前記底板部から上方に離隔した位置に配置された上板部と、
上端が前記上板部の前記直交する方向の両端部と繋がり、下端が互いに異なる前記底板部と繋がる一対の側板部とを有する金属製の波板であることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の床構造。
【請求項3】
前記基板は、
金属製のダブルスキン基板であることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から鉄道車両の床構造に用いられる弾性層として、複数のゴムチップに膨張性黒鉛粉末及びバインダーを混合して一体化されたゴムチップ成形体(弾性層)が知られている(特許文献1参照)。このゴムチップ成形体においては、膨張性黒鉛粉末が混合されていることで、極難燃性が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3573693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のゴムチップ成形体においては、チップとしてゴムチップのみを含んで構成されているため、ゴムチップ成形体の重量が大きくなる。このため、鉄道車両自体の重量が増加する問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、弾性層を軽量化することが可能な鉄道車両の床構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鉄道車両の床構造は、鉄道車両の床構造であって、金属製の基板と、前記基板上に形成され、複数のコルクチップと前記複数のコルクチップを繋ぐバインダーとを含んでなり、空隙率が5%以上50%以下の範囲である弾性層と、前記弾性層上に形成され、少なくとも一部が前記弾性層の空隙に入り込んだ目止め層と、前記目止め層上に形成され、前記目止め層とは組成が異なる材料からなる不陸調整層とを備えており、前記弾性層の前記基板の最上部上における厚みが5mm以上25mm以下の範囲であり、前記目止め層は、厚み方向において、その半分以上が前記弾性層の上層部に入り込みつつ、上面が前記弾性層よりも上方に位置している。
【0007】
これによると、弾性層を構成する材料として複数のコルクチップが含まれているため、チップとしてゴムチップのみを採用するものに比して、弾性層を軽量化することが可能となる。また、弾性層を構成するためのチップとしてコルクチップを採用することで、弾性層での固体伝播音を効果的に低減させることが可能となる。また、弾性層の難燃性及び断熱性が向上する。また、弾性層の重量の増加を抑制しつつ床下からの振動を効果的に減衰することができる。
【0008】
本発明において、前記基板は、一方向に沿って延在し、前記一方向と直交する方向に互いに離隔して配列された複数の底板部と、前記一方向に沿って延在し、前記底板部から上方に離隔した位置に配置された上板部と、上端が前記上板部の前記直交する方向の両端部と繋がり、下端が互いに異なる前記底板部と繋がる一対の側板部とを有する金属製の波板であることが好ましい。これにより、床構造の金属製の基板に波板を採用することが可能となる。
【0009】
また、本発明において、前記基板は、金属製のダブルスキン基板であることが好ましい。これにより、床構造の金属製の基板にダブルスキン基板を採用することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鉄道車両の床構造によると、弾性層を構成する材料として複数のコルクチップが含まれているため、チップとしてゴムチップのみを採用するものに比して、弾性層を軽量化することが可能となる。また、弾性層を構成するためのチップとしてコルクチップを採用することで、弾性層での固体伝播音を効果的に低減させることが可能となる。また、弾性層の難燃性及び断熱性が向上する。また、弾性層の重量の増加を抑制しつつ床下からの振動を効果的に減衰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る鉄道車両の縦断面図である。
図2図1に示す床構造の要部拡大図である。
図3】本発明の変形例に係る鉄道車両の床構造の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態である鉄道車両1の床構造10について、図1を参照しつつ以下に説明する。
【0013】
鉄道車両1は、図1に示すように、鉄道車両1の底部をなす台枠20と、台枠20上に配置された複数の横梁30と、複数の横梁30上に配置された床部材40とを含み、これらによって鉄道車両1の床構造10が構成される。台枠20は、鉄道車両1全体を維持するとともに、その重量を車輪21に伝達するための基礎構造である。
【0014】
複数の横梁30は、図1に示すように、台枠20の上面において、鉄道車両1の長手方向A(図1中紙面垂直方向)に沿って互いに離隔して配置され、台枠20に固定されている。また、横梁30は、鉄道車両1の幅方向B(長手方向と直交する方向)に沿って延在している。
【0015】
鉄道車両1の床構造10に含まれる床部材40は、図2に示すように、金属製の基板50と、弾性層60と、修正層70と、床敷物80とを含む。本実施形態における基板50は、複数の横梁30上に固定された、金属製の波板(キーストンプレート)である。より詳細には、基板50は、複数の底板部51と、複数の上板部52と、上端が上板部52の幅方向Bの両端部と繋がる複数対の側板部53とを有する。複数の底板部51は、長手方向Aに延出し、幅方向Bに互いに離隔して配置された状態で、複数の横梁30に固定されている。
【0016】
複数の上板部52は、図2に示すように、長手方向Aに延出し、底板部51から上方に離隔した位置において幅方向Bに互いに離隔して配置されている。また、複数の上板部52は、底板部51に対して幅方向Bにずれて配置されている。各対の側板部53は、その下端が互いに異なる底板部51と繋がっている。つまり、上板部52の左端部に繋がった側板部53は、当該上板部52よりも左側にずれた底板部51の右端部に繋がっており、上板部52の右端部に繋がった側板部53は、当該上板部52よりも右側にずれた底板部51の左端部に繋がっている。
【0017】
弾性層60は、基板50の上面に塗り込まれて形成されている。より詳細には、弾性層60は、底板部51とこれに隣接する一対の側板部53とによって囲まれた凹部内に充填しつつ、上板部52の上面を被覆した弾性材料から構成されている。弾性層60の上面61は均らされている。基板50上に弾性層60が形成されることで、鉄道車両1が走行すると振動が発生し、台枠20から上方へ伝播するが、弾性層60が軟らかいため、床下からの振動を効率的に減衰することができる。これにより、放射音を低減することが可能となる。
【0018】
また、図2に示すように、本実施形態における弾性層60の上板部52上における厚さT1は、5mm以上25mm以下の範囲にある。厚みT1が5mm未満であると、床下からの振動を効果的に減衰できずに放射音が大きいままであるが、厚みT1が5mm以上あると、床下からの振動を効果的に減衰することができる。また、厚みT1が25mmを超えると、弾性層60の重量が増加するが、厚みT1が25mm以下であると、弾性層60の重量の増加を抑制しつつ床下からの振動を効果的に減衰することができる。
【0019】
また、本実施形態における弾性層60内には複数の空隙68が形成されており、当該弾性層60の空隙率は、5%以上50%以下の範囲内である。空隙率が5%未満であると、弾性層60の重量が増加する。一方空隙率が5%以上であると、弾性層60の重量の増加を抑制しつつ柔らかい層を実現可能となる。空隙率が50%を超えると、弾性層60上に修正層70を形成する際にその大部分が空隙68に入り込んで修正層70が形成しにくくなる。一方空隙率が50%以下であると、弾性層60上に修正層70を形成する際に修正層70を構成する材料が空隙68に入り込みにくくなって修正層70が形成しやすくなる。
【0020】
なお、空隙率は、弾性層60の体積に占める空隙部分の体積の比率を意味し、次の式で表すことが出来る。
空隙率(%)={(V-W/ρ)/V}×100
(上記の式中、Vはサンプルの体積(cm3)、Wはサンプルの重量(g)、ρはサンプルを完全圧縮した際の比重を表す。そして、ここで、完全圧縮とは、温度150℃、面圧50Kg/cm2の条件下、金型内における1時間の加熱加圧処理を意味する。)
【0021】
弾性層60は、複数のコルクチップ65と、これらコルクチップ65を繋ぐバインダー66とから構成されている。変形例として、弾性層60は、複数のコルクチップ65と、バインダー66とを含んでおれば、他の材料(例えば、添加剤など)を含んで構成されていてもよい。添加剤としては、例えば、老化防止剤、充填剤、補強性充填剤、加工助剤などを採用可能である。上記の充填剤としては、珪砂および/または廃プラスチック破砕品が好適であり、また、上記の補強性充填剤としては、カーボンブラック、ホワイトカーボン等が好適である。また、弾性層60が、コルクチップ65とゴムチップとを混合した複数種類のチップと、これらチップを繋ぐバインダー66とを含んでいてもよい。
【0022】
本実施形態のコルクチップ65の材料としては、特に制限されないが、内山工業株式会社製の3号粒が採用される。また、本実施形態のコルクチップ65の形状としては、通常の形態である粒状が採用されているが、特に制限されず、相互の絡み合いが生じ易い細長形状のものであってもよい。粒状のコルクチップ65としては、1mm以上3mm以下の小粒状チップ、3mm以上5mm以下の大粒状チップなどを採用することができる。また、本実施形態のコルクチップ65の密度は、約0.16g/cm3であり、ゴムチップに比して非常に密度が小さくなっている。
【0023】
本実施形態のバインダー66としては、1液性のウレタン樹脂から構成されているが、特に限定するものではなく、例えば、熱可塑性合成樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体など)、熱硬化性合成樹脂(ウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステルなど)、プレポリマー(ウレタン樹脂プレポリマー、エポキシ樹脂プレポリマー、メラミン樹脂プレポリマー、尿素樹脂プレポリマー、フェノール樹脂プレポリマー、ジアリルフタレートプレポリマー、アクリルオリゴマー、多価イソシアナート、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマーなど)、合成樹脂前駆体(オリゴマー、モノマーなど)などであってもよい。
【0024】
修正層70は、図2に示すように、弾性層60上に形成された目止め層71と、目止め層71上に形成された不陸調整層72とを有する。本実施形態の目止め層71は、2液性ウレタン樹脂(主剤として三井化学社製の「タケネートL」、硬化剤として三井化学社製の「タケテックPC6050NC」)を混合して硬化させたものから構成されているが、特に限定するものではなく、例えば、2液性の常温硬化型樹脂が望ましくアクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、変性シリコン樹脂系などの樹脂から構成されていてもよい。また、目止め層71は、弾性層60上において硬化する前の粘度が不陸調整層72の硬化する前の粘度よりも大きい。このため、目止め層71を弾性層60上に形成する際に、硬化前の目止め層71を構成する材料(2液性ウレタン樹脂)が空隙68を介して弾性層60内に入り込みにくくなって、目止め層71を弾性層60の上部に形成することが可能となる。本実施形態の目止め層71は、厚み方向において、その半分以上が弾性層60の上層部に入り込んでいる。
【0025】
本実施形態の不陸調整層72は、目止め層71と組成が異なり、2液性ウレタン樹脂(主剤及び硬化剤として宝建材製作所社製の「ローンテックスF2」)を混合して硬化させたものから構成されているが、特に限定するものではなく、例えば、2液性の常温硬化型樹脂が望ましくアクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、変性シリコン樹脂系などの樹脂から構成されていてもよい。また、不陸調整層72は、硬化する前の粘度が非常に小さく、目止め層71上に流し込むことで上面が平滑な面となる。
【0026】
床敷物80は、不陸調整層72上に形成されている。本実施形態における床敷物80は、塩化ビニル系の材質からなるが、特に限定するものではなく、例えば、ゴム系、ウレタン樹脂系、オレフィン系などの床敷物や絨毯、石英成形板などであってもよい。なお、床敷物80は、その上面が鉄道車両1の客室内の床面として露出している。
【0027】
続いて、鉄道車両1の床構造10に含まれる床部材40の製造方法は、まず、基板50を準備し、基板50を複数の横梁30上に配置する。その後、基板50と底板部51と横梁30とを溶接などで固定する。この後、基板50の上面には弾性層60と基板50との密着性を高めるためのプライマ処理が行われる。
【0028】
次に、基板50のプライマ処理が行われた上面に、弾性層60の硬化前の構成材料(複数のコルクチップ65とバインダー66とを混合した材料)を塗り込む。そして、当該材料が硬化することで弾性層60が形成される。
【0029】
次に、弾性層60の上面61に目止め層71を構成する材料(2液性ウレタン樹脂を混合したもの)を塗り込む。このとき、目止め層71の構成材料の一部が弾性層60の上部にある空隙68に入り込むが、弾性層60の空隙率が5%以上50%以下の範囲となるように、その粘度や塗布量が調整されている。目止め層71の硬化後に、目止め層71の上面に不陸調整層72を構成する材料(目止め層71と組成が異なる2液性ウレタン樹脂を混合したもの)を流し込む。当該材料は、非常に粘度が小さく流動性がよいため、硬化したときにはその上面が平滑な面となる。また、修正層70の上面には、床敷物80と修正層70との密着性を高めるためのプライマ処理が行われる。このような修正層70によって、弾性層60の上面61の凹凸が吸収される。そして、修正層70の上面が平滑な面であるため、床敷物80を貼り付けやすくなる。
【0030】
次に、修正層70のプライマ処理が行われた上面に、床敷物80を配置し、接着する。こうして、床部材40が製造され、鉄道車両1の床構造10が完成する。
【0031】
以上に述べたように、本実施形態の鉄道車両1の床構造10によると、弾性層60を構成する材料のチップとして複数のコルクチップ65のみが含まれているため、ゴムチップを採用するものに比して、弾性層60を軽量化することが可能となる。なお、チップとしてゴムチップとコルクチップの両方を含んでいる場合は、ゴムチップのみを採用するものに比して、弾性層60を軽量化することが可能となる。
【0032】
また、コルクチップ65は、1cm3当たり約4000万個のセル(細胞)が存在する。このため、弾性層60を構成するためのチップとしてコルクチップ65を採用することで、弾性層60での固体伝播音を効果的に低減させることが可能となる。また、コルク自体は、天然の難燃剤である。コルクのセル中には空気が存在するため、コルクは優れた熱絶縁体となる。これらより、弾性層60の難燃性及び断熱性が向上する。また、コルクチップは、植物由来原料であることから、環境に対してカーボンニュートラルである。
【0033】
また、基板50が、金属製の波板(キーストンプレート)で構成されている。これにより、床構造10の基板50に波板を採用することが可能となる。
【0034】
上述の実施形態における基板50には、波板(キーストンプレート)が採用されていたが、図3に示すようなダブルスキン基板を採用することも可能である。本変形例における鉄道車両の床構造210は、図3に示すように、金属製のダブルスキン基板250と、弾性層260と、上述の修正層70、床敷物80とを有する床部材240を含む。
【0035】
本変形例のダブルスキン基板250は、アルミ合金を含むアルミ系材料で形成した押出形材である公知のアルミダブルスキン基板である。このダブルスキン基板250も、上述の基板50と同様に、複数の横梁30上に配置され、溶接などで横梁30に固定される。ダブルスキン基板250は、図3に示すように、長手方向Aに沿って延在する略三角柱状の中空部251が幅方向Bに複数並んで配置されるように構成されたものである。本実施形態の中空部251は、ダブルスキン基板250のトラス形態のリブ252間に構成されるが、種々のリブの配置によって形成されてもよい。
【0036】
弾性層260は、ダブルスキン基板250の上面253に塗り込まれて形成されている。より詳細には、弾性層260は、ダブルスキン基板250の上面253を被覆するとともに、弾性層260の上面261が均らされた弾性材料から構成されている。このようにダブルスキン基板250上に弾性層260が形成されることで、上述の弾性層60と同様に、床下からの振動を効率的に減衰することができる。これにより、放射音を低減することが可能となる。
【0037】
また、本変形例における弾性層260の上面253上における厚さT2は、上述の厚みT1と同様の範囲である。これにより、弾性層60と同様な効果を得ることができる。
【0038】
また、本変形例における弾性層260内にも複数の空隙268が形成されており、当該弾性層260の空隙率も、上述の弾性層60と同様の範囲(5%以上50%以下)である。これにおいても、弾性層60と同様な効果を得ることができる。また、弾性層260も、複数のコルクチップ265と、これらコルクチップ265を繋ぐバインダー266とから構成されている。そして、弾性層260上には、上述の修正層70と床敷物80が順に積層されている。
【0039】
本変形例における床構造210に含まれる床部材240の製造方法も、まず、ダブルスキン基板250を準備し、ダブルスキン基板250を複数の横梁30上に配置する。その後、ダブルスキン基板250と横梁30とを溶接などで固定する。この後、ダブルスキン基板250の上面253には弾性層260とダブルスキン基板250との密着性を高めるためのプライマ処理が行われる。
【0040】
次に、ダブルスキン基板250のプライマ処理が行われた上面に、弾性層260の硬化前の構成材料(複数のコルクチップ265とバインダー266とを混合した材料)を塗り込む。そして、当該材料が硬化することで弾性層260が形成される。
【0041】
この後、上述の実施形態と同様に、弾性層260上に修正層70、床敷物80を積層して、床部材240が製造され、鉄道車両1の床構造210が完成する。なお、本変形例においても、目止め層71が、上述の弾性層60のときと同様に、弾性層260の上部にある空隙268に入り込んで形成される。
【0042】
本変形例の床構造210においても、上述の実施形態と同様な部分については同じ効果を得ることができる。また、床構造210の金属製の基板としてダブルスキン基板を採用することが可能となる。
【0043】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態及び変形例の目止め層71は、その半分以上が弾性層60,260に入り込んでいるが、半分以下の一部が入り込んでいるだけでもよい。また、目止め層71は、その全体が弾性層60,260内に入り込んでいてもよい。この場合、目止め層71の厚みは弾性層60,260の厚みの半分以下が好ましい。
【0044】
弾性層60,260を積層する基板としては、波板(キーストンプレート)やダブルスキン基板以外の金属製の基板から構成されていてもよい。また、床構造10,210が、台枠20、横梁30、床敷物80を含んでいなくてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 鉄道車両
10,210 床構造
50 基板
51 底板部
52 上板部
53 側板部
60,260 弾性層
65,265 コルクチップ
66,266 バインダー
68,268 空隙
71 目止め層
72 不陸調整層
図1
図2
図3