(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】建設機械の伸縮ブーム及び建設機械
(51)【国際特許分類】
B66C 23/687 20060101AFI20240716BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20240716BHJP
B66C 23/06 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B66C23/687 Z
B66C13/00 B
B66C23/06 A
(21)【出願番号】P 2020124169
(22)【出願日】2020-07-21
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】関 広幸
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216209(JP,A)
【文献】特開2010-132456(JP,A)
【文献】実開昭60-019584(JP,U)
【文献】特開2004-315160(JP,A)
【文献】米国特許第06244450(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00
B66C 23/687
B66C 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブーム筒であって、初段以外のブーム筒のそれぞれは、外周側に隣接するブーム筒の内部に挿入されるとともに、前記外周側に隣接する前記ブーム筒に対して長手方向に沿って移動することにより、前記外周側に隣接する前記ブーム筒からの前方側への突出量が変化する複数のブーム筒と、
初段以外の前記ブーム筒の中の1つである第1のブーム筒と前記第1のブーム筒の前記外周側に隣接する第2のブーム筒との間に設置され、前記第1のブーム筒と一緒に前記長手方向に沿って移動するスライド板と、
前記第2のブーム筒の外表面に接合され、前記第2のブーム筒が内周側から隣接する流路が形成される第1の積層板と、
前記流路に前記外周側から隣接する状態で前記第1の積層板に前記外周側から接合され、前記流路を前記外周側へ向かって開口させる流入孔が形成される第2の積層板と、
を具備し、
前記第2のブーム筒には、前記流路を前記第2のブーム筒の内部に向かって開口させ、かつ、前記長手方向に沿った前記スライド板の移動軌跡に対して前記外周側から対向する吐出孔が、形成さ
れ、
前記流入孔では、前記内周側に向かうにつれて断面積が減少する断面積減少部が、前記第2の積層板の外表面から前記内周側に向かって形成される、
建設機械の伸縮ブーム。
【請求項2】
前記流入孔は、幅方向について、前記スライド板の前記移動軌跡及び前記吐出孔に対してずれた位置に形成され、
前記流路は、前記流入孔から前記吐出孔まで前記幅方向に沿って形成される、
請求項1の伸縮ブーム。
【請求項3】
請求項1
又は2の伸縮ブームと、
前記伸縮ブームの後方端部が連結され、前記伸縮ブームが起伏可能な旋回体と、
前記伸縮ブームと一緒に旋回可能な状態で前記旋回体が鉛直上側に連結される走行車体と、
を具備する建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の伸縮ブーム、及び、その伸縮ブームを備える建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建設機械の伸縮ブームが開示されている。この伸縮ブームには、複数のブーム筒が設けられ、最も外周側のブーム筒以外のブーム筒のそれぞれ、すなわち、初段以外のブーム筒のそれぞれは、外周側に隣接するブーム筒の内部に挿入される。そして、初段以外のブーム筒のそれぞれは、外周側に隣接するブーム筒に対して伸縮ブームの長手方向に沿って移動可能である。初段以外のブーム筒のそれぞれは、外周側に隣接するブーム筒に対して長手方向に沿って移動することにより、外周側に隣接するブーム筒からの前方側への突出量が変化する。初段以外のブーム筒のいずれかの長手方向に沿った移動によって、伸縮ブームは、長手方向について、伸長又は収縮する。また、初段以外のブーム筒(2段目及び2段目より前方段のブーム筒)のそれぞれでは、筒頂壁の外表面に、スライド板が設置される。前述の伸縮ブームには、複数の流路構造(供給流路)が形成され、スライド板のそれぞれには、流路構造の対応するいずれかを通して、グリースが供給される。また、前述の伸縮ブームでは、流路構造のそれぞれに対応してニップルが設けられ、グリースガン等を用いて、対応するニップルから流路構造のそれぞれの流路にグリースを流入させる。前述のようにスライド板にグリースが供給されることにより、初段以外のブーム筒のそれぞれは、外周側に隣接するブーム筒に対して円滑に移動可能となり、伸縮ブームは長手方向について円滑に伸縮可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1のようにスライド板へ供給されるグリースの流路構造(供給流路)が形成される伸縮ブームでは、流路構造においてニップルを省略する等して、互いに対して隣接するブーム筒の間の隙間を小さくし、伸縮ブームの大型化を抑制することが、求められている。また、ニップルを省略しても、スライド板に流路構造を通して適切にグリースが供給されることが、求められている。
【0005】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、大型化が抑制されるとともに、スライド板にグリースが適切に供給される伸縮ブーム、及び、その伸縮ブームを備える建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明のある態様の建設機械の伸縮ブームは、複数のブーム筒であって、初段以外のブーム筒のそれぞれは、外周側に隣接するブーム筒の内部に挿入されるとともに、前記外周側に隣接する前記ブーム筒に対して長手方向に沿って移動することにより、前記外周側に隣接する前記ブーム筒からの前方側への突出量が変化する複数のブーム筒と、初段以外の前記ブーム筒の中の1つである第1のブーム筒と前記第1のブーム筒の前記外周側に隣接する第2のブーム筒との間に設置され、前記第1のブーム筒と一緒に前記長手方向に沿って移動するスライド板と、前記第2のブーム筒の外表面に接合され、前記第2のブーム筒が内周側から隣接する流路が形成される第1の積層板と、前記流路に前記外周側から隣接する状態で前記第1の積層板に前記外周側から接合され、前記流路を前記外周側へ向かって開口させる流入孔が形成される第2の積層板と、を備え、前記第2のブーム筒には、前記流路を前記第2のブーム筒の内部に向かって開口させ、かつ、前記長手方向に沿った前記スライド板の移動軌跡に対して前記外周側から対向する吐出孔が、形成され、前記流入孔では、前記内周側に向かうにつれて断面積が減少する断面積減少部が、前記第2の積層板の外表面から前記内周側に向かって形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、大型化が抑制されるとともに、スライド板にグリースが適切に供給される伸縮ブーム、及び、その伸縮ブームを備える建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るクレーンを示す側面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るクレーンの旋回体及び伸縮ブームを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るクレーンの旋回体及び伸縮ブームを鉛直上側から視た状態で示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る伸縮ブームを、幅方向の一方側から視た状態で示す概略図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る伸縮ブームを、長手方向に垂直又は略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る伸縮ブームのスライド板及び流路構造を、伸縮ブームの長手方向に垂直又は略垂直な断面で示す概略図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る伸縮ブームの流路構造を概略的に示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る伸縮ブームの流路構造を、部材ごとに分解された状態で概略的に示す斜視図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る伸縮ブームの流路構造を、伸縮ブームの長手方向に垂直又は略垂直な断面で示す概略図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る伸縮ブームのあるスライド板へグリースを供給する作業を示す概略図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態に係る伸縮ブームの
図10とは別のあるスライド板へグリースを供給する作業を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態の建設機械の一例として第1の実施形態に係るクレーン1を示す。建設機械であるクレーン1は、走行車体2と、走行車体2の鉛直上側に連結される旋回体3と、旋回体3に連結される伸縮ブーム5と、を備える。旋回体3は、鉛直方向に平行又は略平行な旋回軸を中心として、走行車体2に対して旋回可能である。走行車体2では、鉛直方向(矢印Y1及び矢印Y2で示す方向)に対して交差する(垂直又は略垂直な)前後方向、及び、鉛直方向及び前後方向の両方に対して交差する(垂直又は略垂直な)幅方向が、規定される。また、旋回体3でも、鉛直方向に対して交差する(垂直又は略垂直な)前後方向(矢印X1及び矢印X2で示す方向)、及び、鉛直方向及び前後方向の両方に対して交差する(垂直又は略垂直な)幅方向(
図1において紙面に対して垂直又は略垂直な方向)が規定される。
図1では、走行車体2の前後方向が旋回体3の前後方向と一致又は略一致する状態、すなわち、走行車体2の前方側が旋回体3の前方側(矢印X1側)と一致又は略一致する状態で、クレーン1を示す。また、
図1では、走行車体2及び旋回体3のそれぞれを、幅方向の一方側から視た状態で示す。
【0010】
図2及び
図3は、旋回体3及び伸縮ブーム5を示す。ここで、
図2は、斜視図であり、
図3は、鉛直上側(矢印Y1側)から視た状態を示す。また、
図2及び
図3では、矢印W1及び矢印W2で示す方向が、旋回体3の幅方向となる。旋回体3は、運転室6及びマシンルームフレーム7を備える。運転室6では、作業者によってクレーン1の操作等が行われる。マシンルームフレーム7の内部には、マシンルームが形成される。また、旋回体3には、伸縮ブーム5が連結される。旋回体3は、伸縮ブーム5と一緒に、旋回軸を中心として、走行車体2に対して旋回可能である。また、伸縮ブーム5は、旋回体3の幅方向について、運転室6とマシンルームフレーム7との間に配置される。したがって、マシンルームフレーム7は、旋回体3の幅方向について、伸縮ブーム5に対して運転室6とは反対側に配置される。
図2等の一例では、運転室6は、伸縮ブーム5に対して旋回体3の右方側に配置され、マシンルームフレーム7は、伸縮ブーム5に対して旋回体3の左方側に配置される。
【0011】
図4及び
図5は、伸縮ブーム5の構成を示す。
図2乃至
図5等に示すように、伸縮ブーム5では、長手方向(矢印X3及び矢印X4で示す方向)が規定され、伸縮ブーム5は、長手方向に沿って延設される。そして、伸縮ブーム5では、長手方向の一方側が前方側(矢印X3側)となり、前方側とは反対側が後方側(矢印X4側)となる。旋回体3には、伸縮ブーム5の後方端部が連結及び接続される。そして、伸縮ブーム5では、後方端部から前方端部に近づくほど、旋回体3の前方側に位置する。また、伸縮ブーム5の前方端部には、ジブ等のアタッチメント(図示しない)を取付け可能である。伸縮ブーム5は、長手方向について伸縮可能である。
【0012】
また、伸縮ブーム5は、旋回体3への接続位置を中心として回動することにより、旋回体3に対して起きる又は伏せる。すなわち、伸縮ブーム5は、旋回体3に対して起伏可能である。伸縮ブーム5の起伏方向(矢印Y3及び矢印Y4で示す方向)は、伸縮ブーム5の長手方向に対して交差する(垂直又は略垂直である)。また、
図2乃至
図5の一例では、伸縮ブーム5が起きる側として矢印Y3側が規定され、伸縮ブーム5が伏せる側として矢印Y4側が規定される。また、伸縮ブーム5では、長手方向及び起伏方向の両方に対して交差する(垂直又は略垂直な)幅方向(矢印W3及び矢印W4で示す方向)が規定される。伸縮ブーム5の幅方向は、旋回体3の幅方向と一致又は略一致する。
図4は、伸縮ブーム5を幅方向の一方側から視た状態で示すとともに、幅方向に対して垂直又は略垂直な断面で一部を示す。また、
図5は、伸縮ブーム5を長手方向に対して垂直又は略垂直な断面で示す。また、伸縮ブーム5では、長手方向に沿う仮想上の中心軸Cが規定される。伸縮ブーム5では、中心軸Cから離れる側が外周側として規定され、中心軸Cに近づく側が内周側として規定される。
【0013】
図4及び
図5等に示すように、伸縮ブーム5は、複数の(本実施形態では5つの)ブーム筒M1~Mnを備え、n段の伸縮ブームである。ブーム筒M1~Mnのそれぞれは、伸縮ブーム5の長手方向に沿って延設される。ここで、ブーム筒M1~Mnの1~nは、ブーム筒の段番を示す。そして、ブーム筒M1は、初段(1段目)となり、ブーム筒Mnが最終段(n段目)となる。
図4及び
図5等の一例では、伸縮ブーム5は、6段の伸縮ブームであり、ブーム筒M1~M6を備える。そして、6段目のブーム筒M6が、最終段のブーム筒Mnとなる。伸縮ブーム5では、ベースブーム筒である初段のブーム筒M1の後方端部が、旋回体3に取付けられる。
【0014】
ブーム筒M1~Mnのそれぞれの内部には、内部空洞が形成される。ブーム筒M1~Mnの中では、初段のブーム筒M1が最も外周側に配置され、最終段のブーム筒Mn(本実施形態ではブーム筒M6)が最も内周側に配置される。そして、ブーム筒M1~Mnの中では、段番が大きいほど、内周側に配置される。また、伸縮ブーム5では、初段のブーム筒(ベースブーム筒)M1によって後方端が形成され、最終段のブーム筒Mn(本実施形態ではブーム筒M6)によって前方端が形成される。そして、ブーム筒M1~Mnの中では、段番が大きいほど、前方端が前方側に位置する。前述のようにブーム筒M1~Mnが設けられるため、例えば、ブーム筒M2は、ブーム筒M1に対して1段だけ前方段(上段)となり、ブーム筒M1の内周側に隣接する。そして、例えば、ブーム筒M2は、ブーム筒M3に対して1段だけ後方段(下段)となり、ブーム筒M3の外周側に隣接する。
【0015】
最も外周側のブーム筒M1以外のブーム筒M2~Mnのそれぞれ、すなわち、初段以外のブーム筒M2~Mnのそれぞれは、外周側に隣接するブーム筒(M1~Mn-1の対応する1つ)の内部に挿入される。そして、2段目及び2段目より前方段のブーム筒M2~Mnのそれぞれは、外周側に隣接するブーム筒(M1~Mn-1の対応する1つ)に対して、長手方向に移動可能である。可動ブーム筒となるブーム筒M2~Mnのそれぞれは、外周側に隣接するブーム筒(M1~Mn-1の対応する1つ)に対して長手方向に沿って移動することにより、外周側に隣接するブーム筒(M1~Mn-1の対応する1つ)からの前方側への突出量が変化する。ある一例では、伸縮ブーム5の内部に伸縮シリンダーが設けられる。そして、所定の状態において伸縮シリンダーを伸長又は収縮することにより、初段以外のブーム筒M2~Mnのいずれかが長手方向に沿って移動する。2段目及び2段目より前方段のブーム筒M2~Mnのいずれかが長手方向に沿って移動することにより、伸縮ブーム5は、長手方向について、伸長又は収縮する。
【0016】
ブーム筒M1~Mnのそれぞれは、筒頂壁11、筒底壁12、及び、一対の筒側壁15,16を備える。ブーム筒M1~Mnのそれぞれでは、筒頂壁11は、伸縮ブーム5が起きる側から内部空洞に隣接し、筒底壁12は、伸縮ブーム5が伏せる側から内部空洞に隣接する。そして、ブーム筒M1~Mnのそれぞれでは、筒側壁15は、伸縮ブーム5の幅方向の一方側から内部空洞に隣接し、筒側壁16は、伸縮ブーム5の幅方向について筒側壁15とは反対側から内部空洞に隣接する。このため、ブーム筒M1~Mnのそれぞれでは、筒頂壁11、筒底壁12及び筒側壁15,16によって、内部空洞が全周に渡って囲まれる。
【0017】
また、ブーム筒M1~Mnのそれぞれでは、筒頂壁11に一対のR面17,18が形成される。R面17,18のそれぞれは、長手方向に垂直又は略垂直な断面において、円弧状又は略円弧状になる。ブーム筒M1~Mnのそれぞれでは、R面17は、筒頂壁11において筒側壁15との境界部分に形成される。R面17では、筒側壁15に近い部位ほど、すなわち、伸縮ブーム5の幅方向について外側の部位ほど、伸縮ブーム5が伏せる側に位置する。また、ブーム筒M1~Mnのそれぞれでは、R面18は、筒頂壁11において筒側壁16との境界部分に形成される。R面18では、筒側壁16に近い部位ほど、すなわち、伸縮ブーム5の幅方向について外側の部位ほど、伸縮ブーム5が伏せる側に位置する。
【0018】
また、初段以外のブーム筒(可動ブーム筒)M2~Mnのそれぞれでは、筒頂壁11の外表面に、一対のスライド板Pが設置される。ブーム筒M2~Mn(本実施形態ではブーム筒M2~M6)のそれぞれの筒頂壁11では、後方端部にスライド板Pが設置される。また、ブーム筒M2~Mnのそれぞれでは、一対のスライド板Pの一方は、筒頂壁11の外表面において、R面17に設置され、筒側壁15との境界部分に設置される。このため、一対のスライド板Pの一方は、筒側壁16より筒側壁15に近い部位に設置される。そして、ブーム筒M2~Mnのそれぞれでは、一対のスライド板Pの他方は、筒頂壁11の外表面において、R面18に設置され、筒側壁16との境界部分に設置される。このため、一対のスライド板Pの他方は、筒側壁15より筒側壁16に近い部位に設置される。
【0019】
また、最終段以外のブーム筒M1~Mn-1(本実施形態ではM1~M5)のそれぞれには、一対の流路構造Fが設置される。ブーム筒M1~Mn-1のそれぞれでは、後方端部に流路構造Fが形成される。また、ブーム筒M1~Mn-1のそれぞれでは、一対の流路構造Fの一方は、筒頂壁11及び筒頂壁11の外表面上において、筒側壁16より筒側壁15に近い部位に形成される。そして、ブーム筒M1~Mn-1のそれぞれでは、一対の流路構造Fの他方は、筒頂壁11及び筒頂壁11の外表面上において、筒側壁15より筒側壁16に近い部位に形成される。
【0020】
前述のようにスライド板P及び流路構造Fが設けられるため、初段のブーム筒M1には、流路構造Fのみが形成され、スライド板Pは設置されない。また、最終段のブーム筒Mnには、スライド板Pのみが設置され、流路構造Fは形成されない。そして、初段及び最終段以外のブーム筒M2~Mn-1のそれぞれには、スライド板Pが設置されるとともに、流路構造Fが形成される。ブーム筒M2~Mn-1のそれぞれでは、スライド板Pは、伸縮ブーム5の長手方向について、流路構造Fから離れた位置に設けられる。
【0021】
なお、以下のスライド板Pに関する説明等では、2段目のブーム筒M2に設置されるスライド板は“P2”とし、最終段のブーム筒Mnに設置されるスライド板は“Pn”とする等、スライド板が設置されるブーム筒の段番も示す。同様に、以下の流路構造Fに関する説明等では、1段目のブーム筒M1に形成される流路構造は“F1”とし、2段目のブーム筒M2に形成される流路構造は“F2”とする等、流路構造が形成されるブーム筒の段番も示す。
【0022】
ここで、初段以外のブーム筒(可動ブーム筒)M2~Mnの中の1つをブーム筒(第1のブーム筒)Mαとし、最終段以外のブーム筒M1~Mn-1の中でブーム筒Mαの外周側に隣接する1つをブーム筒(第2のブーム筒)Mβとする。例えば、3段目のブーム筒M3がブーム筒Mαに相当する場合は、ブーム筒M3の外周側に隣接するブーム筒M2がブーム筒Mβに相当する。また、例えば、2段目のブーム筒M2がブーム筒Mαに相当する場合は、ブーム筒M2の外周側に隣接するブーム筒M1がブーム筒Mβに相当する。また、例えば、最終段のブーム筒Mnがブーム筒Mαに相当する場合は、ブーム筒Mnの外周側に隣接するブーム筒Mn-1がブーム筒Mβに相当する。ブーム筒Mαは、ブーム筒Mβに対して伸縮ブーム5の長手方向に沿って移動することにより、伸縮ブーム5の前方側へのブーム筒Mβからの突出量が変化する。なお、以下に説明するブーム筒Mα及びブーム筒Mαの外周側に隣接するブーム筒Mβに関する構成は、ブーム筒Mαがブーム筒M2~Mnの中のいずれであっても、成立する。
【0023】
図6は、スライド板P及び流路構造Fの構成を示す図であり、
図7乃至
図9は、流路構造Fの構成を示す図である。
図6では、ブーム筒Mαのスライド板Pα及びブーム筒Mβの流路構造Fβに加えて、ブーム筒Mβの外周側に隣接するブーム筒Mγが示される。また、
図6は、伸縮ブーム5の長手方向に対して垂直又は略垂直な断面を示す。そして、
図7及び
図8は、斜視図であり、
図8では、流路構造Fβが、部材ごとに分解された状態で示される。また、
図9では、流路構造Fβが、伸縮ブーム5の長手方向に対して垂直又は略垂直な断面で示される。
【0024】
ブーム筒Mαは初段以外のブーム筒M2~Mnの1つであるため、ブーム筒Mαの筒頂壁11の外表面には、前述のように一対のスライド板Pαが設置される。
図4乃至
図6等に示すように、ブーム筒Mαのスライド板Pαは、ブーム筒Mαとブーム筒Mβとの間に配置される。ブーム筒Mαに設置されるスライド板Pαは、ブーム筒Mαと一緒に、伸縮ブーム5の長手方向に沿って移動する。このため、スライド板Pαのそれぞれは、伸縮ブーム5の長手方向に沿った移動軌跡を有する。また、ブーム筒Mαのスライド板Pαのそれぞれは、ブーム筒Mβの筒頂壁11の内表面に、内周側から接触し、本実施形態では、伸縮ブーム5が伏せる側からブーム筒Mβの筒頂壁11の内表面に接触する。ブーム筒Mαのスライド板Pαのそれぞれは、伸縮ブーム5の長手方向に沿ってブーム筒Mβに対してスライド可能な状態で、ブーム筒Mβの筒頂壁11の内表面に接触する。ブーム筒Mαのスライド板Pαのそれぞれは、ブーム筒Mαの移動に伴って、ブーム筒Mβに対して伸縮ブーム5の長手方向に沿って移動する(スライドする)。
【0025】
ブーム筒Mβは最終段以外のブーム筒M1~Mn-1の1つであるため、ブーム筒Mβの後方端部には、一対の流路構造Fβが形成される。
図6乃至
図9等に示すように、ブーム筒Mβでは、流路構造Fβのそれぞれは、筒頂壁11、及び、筒頂壁11の外表面に積層される積層板21,22によって、形成される。したがって、ブーム筒Mβでは、筒頂壁11及び筒頂壁11の外表面上に、流路構造Fβが形成される。また、ブーム筒Mαが2段目より前方段のブーム筒M3~Mnのいずれかである場合は、ブーム筒Mβは、初段及び最終段を除くブーム筒M2~Mn-1の中のブーム筒Mαの外周側に隣接する1つとなり、可動ブーム筒となる。この場合、ブーム筒Mβに形成される流路構造Fβ及びこれらの流路構造Fβを形成する積層板21,22は、ブーム筒Mβと一緒に、伸縮ブーム5の長手方向に沿って移動する。したがって、ブーム筒Mβが可動ブーム筒である場合は、流路構造Fβのそれぞれ及び流路構造Fβの構成要素は、伸縮ブーム5の長手方向に沿った移動軌跡を有する。
【0026】
ブーム筒Mαに設置されるスライド板Pαのそれぞれには、ブーム筒Mβに形成される流路構造Fβの対応する一方を通して、グリースが供給される。例えば、ブーム筒Mαにおいて筒側壁15に近い側(R面17)に設置されるスライド板Pαには、ブーム筒Mβにおいて筒側壁15に近い側に形成される流路構造Fβを通して、グリースが供給される。また、ブーム筒Mαにおいて筒側壁16に近い側(R面18)に設置されるスライド板Pαには、ブーム筒Mβにおいて筒側壁16に近い側に形成される流路構造Fβを通して、グリースが供給される。
【0027】
ブーム筒Mβに形成される流路構造Fβのそれぞれでは、筒頂壁11の外表面に、積層板(第1の積層板)21が、溶接等によって接合される。そして、ブーム筒Mβの流路構造Fβのそれぞれでは、積層板(第2の積層板)22が外周側から積層板21に、溶接等によって接合される。本実施形態では、積層板22は、伸縮ブーム5が起きる側から、積層板21に接合される。したがって、ブーム筒Mβの流路構造Fβのそれぞれでは、積層板22が、積層板21に対して、筒頂壁11とは反対側に積層される。
【0028】
ブーム筒Mβに形成される流路構造Fβのそれぞれでは、積層板(第1の積層板)21に、流路23が形成される。流路23は、積層板21の厚さ方向に積層板21を貫通する孔によって、形成される。ブーム筒Mβに形成される流路構造Fβのそれぞれでは、ブーム筒Mβの筒頂壁11が流路23に内周側から隣接し、流路23の伸縮ブーム5が伏せる側の壁面は、筒頂壁11によって形成される。また、流路構造Fβのそれぞれでは、積層板(第2の積層板)22が流路23に外周側から隣接し、流路23の伸縮ブーム5が起きる側の壁面は、積層板22によって形成される。そして、流路構造Fβのそれぞれでは、積層板21を貫通する前述の孔の周面によって、流路23の側壁面が形成される。
【0029】
また、流路構造Fβのそれぞれでは、積層板22に、グリースを流路23に流入させる流入孔25が形成される。流入孔25は、積層板22の厚さ方向に積層板22を貫通する。流路構造Fβのそれぞれでは、流路23は、流入孔25において、外周側に向かって、本実施形態では、伸縮ブーム5が起きる側に向かって、開口する。したがって、流入孔25は、ブーム筒Mβの外部から流路23まで、伸縮ブーム5が伏せる側に向かって延設される。そして、積層板22の外表面に、ブーム筒Mβの外部への流入孔25の開口が形成される。なお、最も外周側の(初段の)ブーム筒M1では、流路構造F1(Fβ)のそれぞれの流路23は、流入孔25において、伸縮ブーム5の外部に対して開口する。また、初段及び最終段を除くブーム筒M2~Mn-1のそれぞれでは、流路構造Fβのそれぞれの流路23は、流入孔25において、ブーム筒Mβとブーム筒Mβの外周側に隣接するブーム筒Mγとの間の隙間に向かって開口する。なお、ブーム筒Mγは、ブーム筒M1~Mn-2の中のブーム筒Mβの外周側に隣接する1つである。
【0030】
また、流路構造Fβのそれぞれでは、ブーム筒Mβの筒頂壁11に、グリースを流路23から吐出させる吐出孔26が形成される。吐出孔26は、ブーム筒Mβの筒頂壁11を外表面から内表面まで貫通する。流路構造Fβのそれぞれでは、流路23は、吐出孔26において、内周側に向かって、本実施形態では、伸縮ブーム5が伏せる側に向かって、開口する。したがって、流路構造Fβのそれぞれの流路23は、吐出孔26において、ブーム筒Mβの内部に向かって開口し、本実施形態では、ブーム筒Mβとブーム筒Mαとの間の隙間に向かって開口する。流路構造Fβのそれぞれでは、ブーム筒Mβの筒頂壁11の内表面に、ブーム筒Mβの内部への吐出孔26の開口が形成される。また、ブーム筒Mβの筒頂壁11では、一対の流路構造Fβの一方の吐出孔26は、R面17から内周側へ向かって形成され、一対の流路構造Fβの他方の吐出孔26は、R面18から内周側へ向かって形成される。
【0031】
また、ブーム筒Mαのスライド板Pαのそれぞれは、前述のように、伸縮ブーム5の長手方向に沿った移動軌跡を有する。そして、ブーム筒Mβの流路構造Fβのそれぞれの吐出孔26は、伸縮ブーム5の幅方向について、ブーム筒Mαのスライド板Pαの対応する一方の移動軌跡に対して、ずれていない、又は、ほとんどずれていない。このため、流路構造Fβのそれぞれの吐出孔26は、ブーム筒Mαのスライド板Pαの対応する一方の移動軌跡に対して、外周側から対向し、本実施形態では、伸縮ブーム5が起きる側から対向する。また、伸縮ブーム5の長手方向についてブーム筒Mαがブーム筒Mβに対して所定の位置に位置する状態、すなわち、ブーム筒Mαがブーム筒Mβに対して所定の突出量になる状態では、流路構造Fβのそれぞれの吐出孔26は、伸縮ブーム5の長手方向及び幅方向の両方について、ブーム筒Mαのスライド板Pαの対応する一方に対して、ずれていない、又は、ほとんどずれていない。したがって、ブーム筒Mαがブーム筒Mβに対して所定の突出量になる状態では、伸縮ブーム5が起きる側から視て、すなわち、外周側から視て、流路構造Fβのそれぞれの吐出孔26は、ブーム筒Mαのスライド板Pαの対応する一方に対して、重なって、又は、ほぼ重なって配置される。
【0032】
ブーム筒Mβの流路構造Fβのそれぞれでは、流入孔25は、吐出孔26に対して、伸縮ブーム5の幅方向についてずれた位置に形成される。本実施形態では、流入孔25は、吐出孔26に対して、伸縮ブーム5の幅方向の内側に配置される。このため、流路構造Fβのそれぞれでは、流路23は、流入孔25から吐出孔26まで、伸縮ブーム5の幅方向に沿って延設され、流入孔25から吐出孔26まで、伸縮ブーム5の幅方向の外側へ向かって延設される。また、前述のように流入孔25が形成されるため、流路構造Fβのそれぞれの流入孔25は、ブーム筒Mαのスライド板Pαの対応する一方の移動軌跡に対して、伸縮ブーム5の幅方向について内側へずれた位置に、形成される。
【0033】
また、流路構造Fβのそれぞれの流入孔25には、内周側に向かうにつれて断面積が減少する断面積減少部28が、形成される。断面積減少部28は、例えば、円錐台形状又は略円錐台形状に形成される。流路構造Fβのそれぞれでは、断面積減少部28は、積層板(第2の積層板)22の外表面から内周側に向かって形成される。
【0034】
以下、ブーム筒Mβが初段及び最終段を除くブーム筒M2~Mn-1の中のブーム筒Mαの外周側に隣接する1つである場合について説明する。この場合、ブーム筒Mβより外周側のブーム筒M1~Mγのそれぞれに、ブーム筒Mβの流路構造Fβのそれぞれに対応した挿入孔31が形成される。例えば、ブーム筒Mβが3段目のブーム筒M3である場合(2段目のブーム筒M2がブーム筒Mγに相当する場合)は、ブーム筒M1,M2のそれぞれに、ブーム筒M3の流路構造F3のそれぞれに対応した挿入孔31が形成され、ブーム筒Mβが2段目のブーム筒M2である場合(初段のブーム筒M1がブーム筒Mγに相当する場合)は、ブーム筒M1に、ブーム筒M2の流路構造F2のそれぞれに対応した挿入孔31が形成される。また、ブーム筒Mβより外周側のブーム筒M1~Mγのそれぞれでは、ブーム筒Mβの流路構造Fβのそれぞれに対応した挿入孔31は、筒頂壁11を外表面から内表面まで貫通する。
【0035】
ブーム筒Mβの流路構造Fβのそれぞれの流入孔25(流入孔25の移動軌跡)は、伸縮ブーム5の幅方向について、ブーム筒Mβより外周側のブーム筒M1~Mγのそれぞれの対応する挿入孔31に対して、ずれていない、又は、ほとんどずれていない。また、ブーム筒Mβ、及び、ブーム筒Mβより外周側の初段以外のブーム筒M2~Mγのそれぞれが伸縮ブーム5の長手方向について所定の位置に位置する状態では、ブーム筒Mβの流路構造Fβのそれぞれの流入孔25は、伸縮ブーム5の長手方向及び幅方向の両方について、ブーム筒Mβより外周側のブーム筒M1~Mγのそれぞれの対応する挿入孔31に対して、ずれていない、又は、ほとんどずれていない。したがって、ブーム筒Mβ、及び、ブーム筒Mβより外周側の可動ブーム筒(M2~Mγ)のそれぞれが外周側に隣接するブーム筒に対して所定の突出量になる状態では、伸縮ブーム5が起きる側から視て、すなわち、外周側から視て、ブーム筒Mβの流路構造Fβのそれぞれの流入孔25は、ブーム筒Mβより外周側のブーム筒M1~Mγのそれぞれの対応する挿入孔31に対して、重なって、又は、ほぼ重なって配置される。
【0036】
図10及び
図11は、あるスライド板Pへグリースを供給する作業を示す。
図11では、グリースが供給されるスライド板Pが、
図10とは異なる。
図10及び
図11に示すように、スライド板Pのそれぞれへのグリースの供給は、グリースガン30を用いて行われる。グリースガン30は、ガン本体32及びノズル33を備える。ガン本体32は、作業者等によって保持可能であり、ノズル33は、ガン本体32から突出する。また、グリースガン30には、ガン本体32に対して開閉可能なハンドル(図示しない)が設けられる。ガン本体32の内部には、グリースカートリッジ(図示しない)を取付け可能である。グリースガン30では、グリースカートリッジがガン本体32に取付けられた状態において、ハンドルをガン本体32に対して閉じることにより、ノズル33の突出端(先端)からグリースが吐出される。
【0037】
また、
図6等に示すように、グリースガン30では、ノズル33において突出端及びその近傍に、テーパ部35が形成される。ノズル33では、テーパ部35によって、ガン本体32からの突出端が形成される。テーパ部35では、ノズル33の突出端に近い部位ほど、ノズル33の外径が小さい。テーパ部35は、例えば、円錐台形状又は略円錐台形状に形成される。
【0038】
以下、ブーム筒Mαのスライド板Pαにグリースを供給する作業について説明する。ブーム筒Mαのスライド板Pαにグリースを供給する際には、伸縮ブーム5の長手方向についてブーム筒Mαが外周側に隣接するブーム筒Mβに対して所定の位置に位置する状態まで、ブーム筒Mαをブーム筒Mβに対して移動させる。例えば、ブーム筒M2のスライド板P2にグリースを供給する場合は、ブーム筒M2をブーム筒M1に対して
図10に示す状態まで移動させる。また、ブーム筒M3のスライド板P3にグリースを供給する場合は、ブーム筒M3をブーム筒M2に対して
図10に示す状態まで移動させる。そして、ブーム筒M6のスライド板P6にグリースを供給する場合は、ブーム筒M6をブーム筒M5に対して
図11に示す状態まで移動させる。これにより、伸縮ブーム5が起きる側から視て、すなわち、外周側から視て、流路構造Fβのそれぞれの吐出孔26は、ブーム筒Mαのスライド板Pαの対応する一方に対して、重なって、又は、ほぼ重なって配置される。
【0039】
また、3段目及び3段目より内周側のブーム筒M3~Mnのいずれか1つであるブーム筒Mαのスライド板Pαにグリースを供給する場合は、ブーム筒Mβ、及び、ブーム筒Mβより外周側の初段以外のブーム筒M2~Mγのそれぞれを、伸縮ブーム5の長手方向について所定の位置に位置する状態まで移動させる。例えば、ブーム筒M3のスライド板P3にグリースを供給する場合は、ブーム筒M2を
図10に示す状態まで移動させる。また、ブーム筒M6のスライド板P6にグリースを供給する場合は、ブーム筒M2~M5のそれぞれを
図11に示す状態まで移動させる。これにより、伸縮ブーム5が起きる側から視て、すなわち、外周側から視て、ブーム筒Mβの流路構造Fβのそれぞれの流入孔25は、ブーム筒Mβより外周側のブーム筒M1~Mγのそれぞれの対応する挿入孔31に対して、重なって、又は、ほぼ重なって配置される。
【0040】
そして、
図6等に示すように、流路構造Fβの流入孔25に、グリースガン30のノズル33の突出端及びその近傍を挿入する。なお、3段目及び3段目より内周側のブーム筒M3~Mnのいずれか1つであるブーム筒Mαのスライド板Pαにグリースを供給する場合は、ブーム筒Mβより外周側のブーム筒M1~Mγのそれぞれの対応する挿入孔31にノズル33が挿通した後に、ブーム筒Mβの流路構造Fβの流入孔25にノズル33を挿入する。そして、ノズル33が流路構造Fβの流入孔25に挿入された状態で、作業者は、ハンドルをガン本体32に対して閉じ、ノズル33の突出端から流入孔25にグリースを吐出する。
【0041】
これにより、流路構造Fβでは、ノズル33から吐出されたグリースが、流入孔25から流路23に流入する。そして、グリースは、流路23において、流入孔25から吐出孔26に向かって流れる(
図6の矢印B1)。すなわち、グリースは、流入孔25から吐出孔26まで、伸縮ブーム5の幅方向の外側へ向かって流れる。そして、グリースは、流路構造Fβの吐出孔26から、内周側へ向かって、すなわち、スライド板Pαに向かって吐出される。なお、
図10では、グリースガン30から流路構造F1を通してスライド板P2にグリースが供給されている状態が、破線で示され、グリースガン30から流路構造F2を通してスライド板P3にグリースが供給されている状態が、実線で示される。また、
図11では、グリースガン30から流路構造F5を通してスライド板P6にグリースが供給されている状態が、示される。
【0042】
ブーム筒Mαのスライド板Pαに前述のようにグリースが供給されることにより、ブーム筒Mαは、外周側に隣接するブーム筒Mβに対して円滑に移動可能となる。ブーム筒(可動ブーム)M2~Mnのそれぞれが外周側に隣接するブーム筒(M1~Mn-1の対応する1つ)に対して円滑に移動可能になることにより、伸縮ブーム5は長手方向について円滑に伸縮可能となる。また、スライド板Pのそれぞれにグリースを供給する作業時には、
図2等に示すように、作業者は、マシンルームフレーム7の上面に昇って、作業を行う。
【0043】
本実施形態では、流路構造Fのそれぞれに、ニップル等は設けられない。また、流路構造Fβのそれぞれは、ブーム筒Mβの筒頂壁11及び積層板21,22から形成される。そして、流路構造Fβのそれぞれでは、ブーム筒Mβの筒頂壁11が、流路23に内周側から隣接する。前述のように流路構造Fβが形成されるため、ブーム筒Mβが初段及び最終段を除くブーム筒M2~Mn-1のいずれかである場合は、ブーム筒Mβとブーム筒Mβの外周側に隣接するブーム筒Mγとの間の隙間が、小さく抑えられる。また、ブーム筒Mβが初段のブーム筒M1である場合は、伸縮ブーム5において、流路構造F1の外周側への突出量が小さく抑えられる。したがって、伸縮ブーム5の大型化を、抑制可能になる。
【0044】
また、流路構造Fβでは、前述のように流入孔25から流路23にグリースを流入させることにより、流路23において、流入孔25から吐出孔26へグリースが流れる。そして、流路構造Fβでは、吐出孔26からブーム筒Mαのスライド板Pαに、グリースが吐出される。したがって、流路構造Fβを通して、グリースがスライド板Pαに適切に供給される。
【0045】
また、流路構造Fβは、ブーム筒Mβの筒頂壁11の外表面に積層板(第1の積層板)21を溶接等によって接合し、積層板21に、ブーム筒Mβとは反対側(外周側)から積層板(第2の積層板)22を溶接等によって接合することで、形成される。このため、流路構造Fのそれぞれは、容易に形成される。したがって、前述のように流路構造Fが設けられる場合でも、伸縮ブーム5の製造において、手間及びコストの増大が防止される。
【0046】
また、スライド板Pαにグリースを供給する作業時には、伸縮ブーム5に対して伸縮ブーム5が起きる側に、ロープ等が張られたりする等して障害物が存在することがある。本実施形態では、流路構造Fβの流入孔25は、幅方向について、スライド板Pαの移動軌跡及び流路構造Fβの吐出孔26に対してずれた位置に形成される。このため、伸縮ブーム5に対して伸縮ブーム5が起きる側にロープ等の障害物が存在する場合も、グリースガン30のノズル33と障害物との干渉等が有効に防止され、ノズル33を流路構造Fβの流入孔25に容易に挿入可能となる。したがって、スライド板Pαにグリースを供給する作業の作業性が向上する。
【0047】
また、スライド板Pαにグリースを供給する作業においては、作業者は、前述のように、マシンルームフレーム7の上面に昇って、作業を行う。本実施形態では、流路構造Fβのそれぞれにおいて、流入孔25は、吐出孔26に対して、伸縮ブーム5の幅方向の内側に配置される。このため、作業者は、一対の流路構造Fβの中でマシンルームフレーム7に近い側の一方の流入孔25だけでなく、一対の流路構造Fβの中でマシンルームフレーム7から遠い側の一方の流入孔25にも、グリースガン30のノズル33を容易に挿入可能となる。したがって、スライド板Pαのそれぞれにグリースを供給する作業の作業性が、さらに向上する。
【0048】
また、流路構造Fβの流入孔25には、内周側に向かうにつれて断面積が減少する断面積減少部28が形成される。このため、流路構造Fβの流入孔25にノズル33を挿入すると、ノズル33のテーパ部35が、流入孔25の周面(積層板22)に密着する。これにより、ノズル33から吐出されたグリースが、流入孔25から流路23に適切に流入する。したがって、グリースが、さらに適切にスライド板Pαに供給される。
【0049】
(変形例)
なお、ブーム筒M1~Mn-1の全てにおいて流路構造Fを前述の構成にする必要はない。ある実施形態では、ブーム筒M1~Mn-1のいずれか1つ以上において、流路構造Fが前述の構成であればよい。
【0050】
また、前述の実施形態等では、クレーン1を例に挙げて説明したが、前述した伸縮ブーム5の構造は、走行車体2及び旋回体3を備え、伸縮ブーム5が旋回体3に取付けられる建設機械であれば、適用可能である。
【0051】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
【符号の説明】
【0052】
1…クレーン、2…走行車体、3…旋回体、5…伸縮ブーム、21…積層板(第1の積層板)、22…積層板(第2の積層板)、23…流路、25…流入孔、26…吐出孔、28…断面積減少部、30…グリースガン、33…ノズル、35…テーパ部、M1~Mn,Mα,Mβ,Mγ…ブーム筒、P2~Pn,Pα…スライド板、F1~Fn-1,Fβ…流路構造。