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特許7520621複数の電極を有するカテーテルによるペーシングのための患者に安全な電気機械的スイッチング
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  • 特許-複数の電極を有するカテーテルによるペーシングのための患者に安全な電気機械的スイッチング 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】複数の電極を有するカテーテルによるペーシングのための患者に安全な電気機械的スイッチング
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/362 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
A61N1/362
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020130146
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2021023811
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】16/530,702
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
(72)【発明者】
【氏名】アロン・ボウメンディル
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ・シットニツキー
(72)【発明者】
【氏名】スタニスラフ・カツィール
(72)【発明者】
【氏名】イェフダ・アルガウィ
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-525642(JP,A)
【文献】特表平09-510887(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0000813(US,A1)
【文献】特開2016-173945(JP,A)
【文献】特開2008-272444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/05、1/36
H01H 15/00-15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーシングシステムであって、
ペーシング信号を生成するように構成された信号発生器と、
患者の心臓内に挿入された複数の電極に連結されるように構成された複数の出力を有する電気機械的スイッチであって、それぞれの出力が前記ペーシング信号をそれぞれの電極に送達するように構成され、前記電気機械的スイッチは、前記ペーシング信号を任意の所与の時間に前記出力のうちの単一の選択されたもののみにルーティングするように構成されており、前記電極のうちの単一の選択されたもののみを使用して前記心臓をペーシングするようにする、電気機械的スイッチと、を備え、
前記電気機械的スイッチが、
アレイに配置された複数の接点でパターニングされた基板であって、前記アレイの各接点が、前記複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結されている、基板と、
接点の前記アレイの上を移動し、任意の所与の時間に、1つの接点のみとの電気的接触を確立するように構成されている、移動スイッチと、
前記移動スイッチを移動させるように構成されたモータと、を備える、
ペーシングシステム。
【請求項2】
前記電気機械的スイッチが、前記モータによって回転されるように構成されたねじを更に含み、前記電気機械的スイッチの前記移動スイッチは、前記ねじに連結され、前記ねじが前記モータによって回転されるときに、前記接点の線形アレイの上を線形の軌道で移動するように構成されている、請求項に記載のペーシングシステム。
【請求項3】
前記接点の前記アレイが円形構成で配置され、前記電気機械的スイッチの前記移動スイッチが、前記接点の前記アレイの上を円形の軌道で移動するように構成されている、請求項に記載のペーシングシステム。
【請求項4】
前記電気機械的スイッチの前記基板が、プリント回路基板(PCB)から作製されている、請求項に記載のペーシングシステム。
【請求項5】
前記電気機械的スイッチの前記モータが、ステッパモータを含む、請求項に記載のペーシングシステム。
【請求項6】
前記移動スイッチが、接点の前記アレイの上を転動するように構成されたホイールを備え、
前記ホイールと前記接点との間の前記電気的接触を最適化するように、前記モータを適合するように制御して前記移動スイッチの位置を微調整する制御ループを適用するように構成されているプロセッサを備える、請求項に記載のペーシングシステム。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記接点に関連する前記電極を介して感知された心電図(ECG)に基づいて前記モータを制御するように構成されている、請求項に記載のペーシングシステム。
【請求項8】
前記移動スイッチが、接点の前記アレイの上を転動するように構成されたホイールを備える、請求項に記載のペーシングシステム。
【請求項9】
前記ホイールが金属製である、請求項に記載のペーシングシステム。
【請求項10】
前記ホイールが導電性ポリマーから作製されている、請求項に記載のペーシングシステム。
【請求項11】
前記ホイールがポリマーで作製され、導電性ストリップを備えて配置されている、請求項に記載のペーシングシステム。
【請求項12】
前記ペーシング信号を生成するように前記信号発生器に命令し、前記電気機械的スイッチに命令して、予め定められたペーシングプロトコルに従って前記ペーシング信号をルーティングするように構成されているプロセッサを含む、請求項1に記載のペーシングシステム。
【請求項13】
前記ペーシング信号がユニポーラである、請求項1に記載のペーシングシステム。
【請求項14】
前記ペーシング信号がバイポーラ信号であり、前記ペーシングシステムが、前記電気機械的スイッチと共に二重電気機械的スイッチを形成する追加の電気機械的スイッチを備え、前記二重電気機械的スイッチは、任意の所与の時間に、選択された対の前記出力のみに前記バイポーラ信号をルーティングするように構成され、選択された対の前記電極のみを使用してバイポーラで前記心臓をペーシングするようにする、請求項1に記載のペーシングシステム。
【請求項15】
前記二重電気機械的スイッチが、
第1のアレイに配置された複数の接点でパターニングされた基板であって、前記第1のアレイの各接点が、前記複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結され、複数の接点が第2のアレイに配置され、前記第2のアレイの各接点は、前記複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結されている、基板と、
第1の移動スイッチであって、接点の前記第1のアレイの上を移動し、任意の所与の時間において、前記第1のアレイの1つの接点のみとの電気的接触を確立するように構成されている、第1の移動スイッチと、
第2の移動スイッチであって、接点の前記第2のアレイの上を移動し、任意の所与の時間において、前記第2のアレイの1つの接点のみとの電気的接触を別個に確立するように構成されている、第2の移動スイッチと、
前記第1の移動スイッチ及び前記第2の移動スイッチを互いに独立して移動させるように構成された1つ以上のモータと、を備える、請求項14に記載のペーシングシステム。
【請求項16】
前記二重電気機械的スイッチの接点の前記第1のアレイ及び接点の前記第2のアレイが空間内で空間的に分離されている、請求項15に記載のペーシングシステム。
【請求項17】
接点の前記第1のアレイ及び前記第2のアレイが同心の円形アレイである、請求項15に記載のペーシングシステム。
【請求項18】
前記二重電気機械的スイッチが、
第1のアレイに配置された複数のリードスイッチでパターニングされた基板であって、前記第1のアレイの各リードスイッチは、前記複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結され、複数のリードスイッチが第2のアレイに配置され、前記第2のアレイの各リードスイッチは、前記複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結されている、基板と、
磁石を含む第1の移動スイッチであって、リードスイッチの前記第1のアレイの上を移動し、前記第1のアレイの1つのみのリードスイッチに、任意の所与の時間に電気的接触を確立させるように構成されている、第1の移動スイッチと、
磁石を含む第2の移動スイッチであって、リードスイッチの前記第2のアレイの上を移動し、前記第2のアレイの1つのみのリードスイッチに、任意の所与の時間に電気的接触を別個に確立させるように構成されている、第2の移動スイッチと、
前記第1の移動スイッチ及び前記第2の移動スイッチを互いに独立して移動させるように構成された1つ以上のモータと、を備える、請求項14に記載のペーシングシステム。
【請求項19】
ペーシングシステムであって、
ペーシング信号を生成するように構成された信号発生器と、
患者の心臓内に挿入された複数の電極に連結されるように構成された複数の出力を有する電気機械的スイッチであって、それぞれの出力が前記ペーシング信号をそれぞれの電極に送達するように構成され、前記電気機械的スイッチは、前記ペーシング信号を任意の所与の時間に前記出力のうちの単一の選択されたもののみにルーティングするように構成されており、前記電極のうちの単一の選択されたもののみを使用して前記心臓をペーシングするようにする、電気機械的スイッチと、を備え、
前記電気機械的スイッチが、
アレイに配置された複数のリードスイッチを備えて配置された基板であって、前記アレイの各リードスイッチが、前記複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結されている、基板と、
磁石を備える移動スイッチであって、リードスイッチの前記アレイの上を移動し、任意の所与の時間に、1つのみのリードスイッチに電気的接触を確立させるように構成されている、移動スイッチと、
前記移動スイッチを移動させるように構成されたモータと、を備える、ペーシングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電気生理学的マッピングに関し、詳細には心臓の電気生理学的マッピングの電気機械的スイッチングに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓組織心臓の電気生理学的特性をマッピングするための侵襲的技術は、一般に提案された電気機械的スイッチング概念において、必要な変更を加えて使用を見出すことができる。電気機械的スイッチの例が、いくつかのスイッチ位置間を選択するための複数のチャネルのための線形スライドセレクタスイッチを説明する、米国特許第5,977,499号に挙げられている。具体的には、ラッチロックを有するヒンジ式ドアを有するハウジングが存在し、ドアは閉鎖位置に回転し、ラッチロックによって閉鎖位置に保持される。ハウジングはまた、スライド及びプリント回路基板も含む。プリント回路基板は、接点の列を有する。コンタクタはスライドに取り付けられる。スライドが直線的に移動すると、電気的接続が作製され、プリント回路基板上で破壊される。
【0003】
別の例として、米国特許第6,421,567号は、心臓に電気信号を出力するため、及び/又は心臓から信号を受信するための、電極ラインの遠位端の領域内に複数の導電性表面領域を有する電極ラインを含む植込み可能な電極の配置を記載している。電極の構成は、電極ラインを介して、除細動器又は心臓ペースメーカーなどの心筋電気装置に電気的に接続することができ、この装置は電気信号及び/又は出力パルスを受信する。電極構成は、任意選択に機械的スイッチング要素であるスイッチング手段を含んでもよく、それは、導電性表面領域の個々のものと心電装置との間の接続を、電極ラインの領域内で永続的にオン又はオフにすることができる配置又は構成である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、信号発生器及び電気機械的スイッチを含むペーシングシステムを提供する。信号発生器は、ペーシング信号を生成するように構成されている。電気機械的スイッチは、患者の心臓内に挿入された複数の電極に連結されるように構成された複数の出力を有し、各出力はペーシング信号をそれぞれの電極に送達するように構成されている。電気機械的スイッチは、電極のうちの単一の選択されたもののみを使用して心臓をペーシングするように、ペーシング信号を任意の所与の時間に出力のうちの単一の選択されたもののみにルーティングするように構成されている。
【0005】
いくつかの実施形態では、電気機械的スイッチは、(a)アレイに配置された複数の接点でパターニングされた基板であって、アレイの各接点が、複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結されている、基板と、(b)接点のアレイの上を移動し、任意の所与の時間に、1つの接点のみとの電気的接触を確立するように構成されている、移動スイッチと、(c)移動スイッチを移動させるように構成されたモータと、を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、電気機械的スイッチは、モータによって回転されるように構成されたねじを更に含み、電気機械的スイッチの移動スイッチは、ねじに連結され、ねじがモータによって回転されるときに、接点の線形アレイの上を線形の軌道で移動するように構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、接点のアレイは円形構成で配置され、電気機械的スイッチの移動スイッチは、接点のアレイの上を円形の軌道で移動するように構成されている。
【0008】
実施形態では、電気機械的スイッチの基板は、プリント回路基板(PCB)から作製されている。別の実施形態では、電気機械的スイッチのモータは、ステッパモータを含む。
【0009】
実施形態では、システムは、ホイールと接点との間の電気的接触を最適化するように、モータを適合するように制御して移動スイッチの位置を微調整する制御ループを適用するように構成されているプロセッサを更に備える。別の実施形態では、プロセッサは、接点に関連する電極を介して感知された心電図(ECG)に基づいてモータを制御するように構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、移動スイッチは、接点のアレイの上を転動するように構成されたホイールを含む。実施形態では、ホイールは金属製である。別の実施形態では、ホイールは、導電性ポリマーで作製されている。更に別の実施形態では、ホイールはポリマーで作製され、導電性ストリップを備えて配置されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、電気機械的スイッチは、(a)アレイに配置された複数のリードスイッチに配置された基板であって、アレイの各リードスイッチが、複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結されている、基板と、(b)リードスイッチのアレイの上を移動し、任意の所与の時間に、1つのリードスイッチのみが電気的接触を確立するように構成されている、磁石を備える移動スイッチと、(c)移動スイッチを移動させるように構成されている、モータと、を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、ペーシングシステムはプロセッサを更に含み、これはペーシング信号を生成するようにペーシング発生器に命令し、電気機械的スイッチに命令して、予め定められたペーシングプロトコルに従ってペーシング信号をルーティングするように構成されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、ペーシング信号はユニポーラである。他の実施形態では、ペーシング信号はバイポーラであり、ペーシングシステムは、電気機械的スイッチと共に二重電気機械的スイッチを形成する追加の電気機械的スイッチを含む。二重電気機械的スイッチは、任意の所与の時間に、選択された対の出力のみにバイポーラペーシング信号をルーティングするように構成され、選択された対の電極のみを使用してバイポーラで心臓をペーシングするようにする。
【0014】
実施形態では、二重電気機械的スイッチは、(a)第1のアレイに配置された複数の接点でパターニングされた基板であって、第1のアレイの各接点が、複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結され、複数の接点が第2のアレイに配置され、第2のアレイの各接点は、複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結されている、基板と、(b)第1の移動スイッチであって、接点の第1のアレイの上を移動し、任意の所与の時間において、第1のアレイの1つの接点のみとの電気的接触を確立するように構成されている、第1の移動スイッチと、(c)第2の移動スイッチであって、接点の第2のアレイの上を移動し、任意の所与の時間において、第2のアレイの1つの接点のみとの電気的接触を別個に確立するように構成されている、第2の移動スイッチと、(d)第1の移動スイッチ及び第2の移動スイッチを互いに独立して移動させるように構成された、1つ以上のモータと、を含む。
【0015】
実施形態では、二重電気機械的スイッチの接点の第1のアレイ及び接点の第2のアレイが空間内で空間的に分離されている。別の実施形態では、接点の第1のアレイ及び第2のアレイが同心の円形アレイである。実施形態では、接点の第1のアレイ及び第2のアレイが、互いに垂直に重ねられている。
【0016】
いくつかの実施形態では、二重電気機械的スイッチは、(a)第1のアレイに配置された複数のリードスイッチでパターニングされた基板であって、第1のアレイの各リードスイッチが、複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結され、複数のリードスイッチが第2のアレイに配置され、第2のアレイの各リードスイッチは、複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結されている、基板と、(b)第1の移動スイッチであって、リードスイッチの第1のアレイの上を移動し、任意の所与の時間において、第1のアレイの1つのリードスイッチのみが電気的接触を確立するように構成されている、磁石を備える第1の移動スイッチと、(c)第2の移動スイッチであって、リードスイッチの第2のアレイの上を移動し、任意の所与の時間において、第2のアレイの1つのリードスイッチのみが電気的接触を別個に確立するように構成されている、磁石を備える第2の移動スイッチと、(d)第1の移動スイッチ及び第2の移動スイッチを互いに独立して移動させるように構成された1つ以上のモータと、を含む。
【0017】
本発明の実施形態によれば、心臓をペーシングするための方法が更に提供され、この方法は、ペーシング信号を生成することを含む。心臓に挿入された複数の電極に連結され、ペーシング信号をそれぞれの電極に送達するようにそれぞれが構成された複数の出力を有する電気機械的スイッチを使用して、ペーシング信号を任意の所与の時間に出力のうちの単一の選択されたもののみにルーティングし、電極のうちの単一の選択されたもののみを使用して心臓をペーシングするようにする。
【0018】
本発明の実施形態によれば、アレイに配置された複数の接点をパターニングすることを含む製造方法が更に提供される。アレイの上を移動し、任意の所与の時間に1つの接点のみとの電気的接触を確立するように構成された移動スイッチが提供される。移動スイッチを移動させるように構成された1つ以上のモータが提供される。
【0019】
本発明の実施形態によれば、第1のアレイに配置された複数の接点、及び第2のアレイに配置された複数の接点を有する基板をパターニングすることを含む製造方法が追加的に提供される。第1の移動スイッチが提供され、第1のアレイの上を移動し、任意の所与の時間において第1のアレイの1つの接点のみとの電気的接触を確立するように構成されている。第2の移動スイッチが提供され、第2のアレイの上を移動し、任意の所与の時間において第2のアレイの1つの接点のみとの電気的接触を別個に確立するように構成されている。1つ以上のモータが連結され、これは、第1の移動スイッチ及び第2の移動スイッチを互いに独立して移動させるように構成されている。
【0020】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態による、同心円状の電気機械的スイッチを含む電気生理学的(EP)マッピングシステムの概略的な描写図である。
図2A】本発明の実施形態による、各々図1の同心円状の電気機械的スイッチ、及び並列した円形電気機械的スイッチのレイアウトの二重線形電気機械的スイッチの概略的な上面図である。
図2B】本発明の実施形態による、各々図1の同心円状の電気機械的スイッチ、及び並列した円形電気機械的スイッチのレイアウトの二重線形電気機械的スイッチの概略的な上面図である。
図2C】本発明の実施形態による、各々図1の同心円状の電気機械的スイッチ、及び並列した円形電気機械的スイッチのレイアウトの二重線形電気機械的スイッチの概略的な上面図である。
図3】本発明の実施形態による、図2A図2Cの電気機械的スイッチのホイール付き移動スイッチの概略的な側面図である。
図4】本発明の実施形態による、図2A図2Cの電気機械的スイッチのリードスイッチのレイアウトの概略的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
概論
電気生理学的(EP)マッピング処置の心臓ペーシングセッション中などカテーテルを使用して心臓に信号を送達する際、誤った送達を回避することは医学的に重要である。したがって、診断用のEPカテーテルなどの複数の電極を有するカテーテルのための送達システムは、半導体電気装置を送達信号経路において使用することを回避しなければならない。半導体が、隣接するチャネル間に十分な電気的絶縁、並びに特定のチャネルの半導体における電気的破壊の可能性を有し得ないためである。
【0023】
以下に記載される本発明の実施形態は、複数の電極を有するカテーテルと共に使用するために、患者に安全であるペーシングシステム及びペーシング方法を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態では、ユニポーラペーシングのレイアウトにおいて戻り電極として身体表面パッチを使用するペーシングシステムが提供される。ペーシングシステムは、(a)ペーシング信号を生成するように構成された信号発生器と、(b)患者の心臓内に挿入された複数の電極に連結される複数の出力を有する電気機械的スイッチであって、それぞれの出力がペーシング信号をそれぞれの電極に送達するように構成され、電気機械的スイッチは、ペーシング信号を任意の所与の時間に出力のうちの単一の選択されたもののみにルーティングするように構成されており、電極のうちの単一の選択されたもののみを使用して心臓をペーシングするようにする、電気機械的スイッチと、を備える。開示される電気機械的スイッチは、電極間での漏れのいずれの可能性をも防止する。システムが故障した場合(例えば、モータが故障した)場合であっても、チャネル間での漏れの可能性又は誤ったチャネルへ電流を送達する可能性はない。
【0025】
実施形態では、電気機械的スイッチは、(i)アレイに配置された複数の接点でパターニングされた基板であって、アレイの各接点が、複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結されている、基板と、(ii)接点のアレイの上を移動し、任意の所与の時間に、1つの接点のみとの電気的接触を確立するように構成されている、移動スイッチと、(iii)移動スイッチを移動させるように構成されたモータと、を備える。
【0026】
開示される発明の文脈において、移動スイッチは、接点を覆うホイールの転動によって接点の上を転動する、又は摺動可能な接点要素を有することによって接点上を摺動することができる。ホイール及び摺動可能接点要素の両方は、導電性である。いくつかの実施形態では、ホイールは金属製であり、他の実施形態では、ホイールは、導電性要素を含むポリマーで作製される。導電性要素は、ホイールのバルクに電気を伝導させても、ポリマーホイールの表面に配置された導電性材料のパターンであってもよい。使用することができるポリマーの例としては、様々な種類のゴムが挙げられる。
【0027】
いくつかの実施形態では、非接点移動電気機械的スイッチングは、以下に記載されるように、リードスイッチのアレイ(すなわち、印加された磁場によって動作される電気スイッチのアレイ)を使用することによって実施される。リードスイッチは、米国特許第2,264,746号(1941年12月2日付与)に記載されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、ペーシングシステムは、バイポーラ信号をペースするように構成され、第1のスイッチとは独立して移動する追加の電気機械的スイッチを備える。結果として得られる二重電気機械的スイッチは、電極のうちの選択された単一の第1及び第2の電極のみを使用して心臓をバイポーラでペーシングするように、任意の所与の時間に出力のうちの第1及び第2の選択された単一の2つのみに、バイポーラペーシング信号をルーティングするように構成される。典型的には、二重電気機械的スイッチは、以下に記載されるように、例えば、二重線形、同心、又は側面の円形のレイアウトと同じ基板において実現される。
【0029】
いくつかの実施形態では、二重電気機械的スイッチは、(a)第1のアレイに配置された複数の接点でパターニングされた基板であって、第1のアレイの各接点は、複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結され、複数の接点が第2のアレイに配置され、第2のアレイの各接点が、複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結される、基板と、(b)第1の移動スイッチであって、接点の第1のアレイの上を移動し、任意の所与の時間において、第1のアレイの1つの接点のみとの電気的接触を確立するように構成されている、第1の移動スイッチと、(c)第2の移動スイッチであって、接点の第2のアレイの上を移動し、任意の所与の時間において、第2のアレイの1つの接点のみとの電気的接触を別個に確立するように構成されている、第2の移動スイッチと、(d)第1の移動スイッチ及び第2の移動スイッチを互いに独立して移動させるように構成された1つ以上のモータと、を備える。2つのアレイは、空間において、例えば横方向及び/又は垂直方向に空間的に分離されている。
【0030】
いくつかの実施形態では、開示される電気機械的スイッチは、例えば数百個を超えるカテーテルの受信電極間で、信号発生器からペーシング信号をスイッチすることができる。開示されている電気機械的リレーを使用する心臓EPマッピングシステムなどの送達システムは、「オフ」又は「オン」状態のいずれかであり得、以下に記載されるように、電気機械的スイッチが故障した場合に、ユニポーラ信号又はバイポーラ信号の誤った送達の問題を引き起こさない。
【0031】
実施形態では、二重電気機械的スイッチの移動スイッチはそれぞれ、ステッパモータなどのプロセッサ制御モータによって転動されるリードねじに連結されることによって、線形の軌道で移動するように拘束される。別の実施形態では、電気機械的スイッチの移動スイッチはそれぞれ、以下に記載されるように、ステッパモータによって回転させることによって、円形の軌道で移動するように拘束される。運動の種類(線形又は円形)に従い、電極接点のアレイは、線又は円において形成される。
【0032】
いくつかの実施形態では、接点アレイは、プリント回路基板(PCB)などの基板に形成され、ステッパモータは、移動スイッチの移動接点が、選択された接点と整列するまで回転される。移動接点及びアレイの接点の大きさは、移動スイッチの位置にかかわりなく、各アレイ内の1つの接点のみが任意の所与の時間に接続され得るように選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、2つ以上のカテーテルからの電極は、単一の二重電気機械的スイッチに接続されても、例えば、ユニポーラ信号を1つのカテーテルとペーシングし、得られたEP信号を他のカテーテルで感知することができる。
【0034】
開示されているペーシングシステムは、ペーシング発生器に命令してペーシング信号を生成し、予め定められたペーシングプロトコルに従ってペーシング信号をルーティングする電気機械的スイッチを命令するように構成されたプロセッサを含んでもよい。
【0035】
したがって、開示されている電気機械的スイッチング技術は、複数の電極を備えるカテーテルを使用してユニポーラ又はバイポーラペーシングのいずれかを可能にするために、患者に安全かつ柔軟な解決策を提供する。
【0036】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、同心円形の電気機械的スイッチ40を含む電気生理学的(EP)マッピングシステム21の概略的な描写図である。電気機械的スイッチ40は、図2Bに記載されている。示しているように、医師27は、患者25の心臓23をペーシングするためにEPマッピングカテーテル29を使用する。カテーテル29は、インセット35に見られるように、その遠位端部に、機械的に柔軟であり得る複数のアーム20を備え、それらのアームの各々に複数の電極22が連結されている。
【0037】
ペーシングの処置中に、電極22は、心臓23の組織に注入され、心臓23の組織から信号を取得する。プロセッサ28は、電気インターフェース43を介して結果的に得られた信号を受信し、これらの信号に含まれる情報を使用して、患者25の心臓23の壁組織の少なくとも一部のEPマップ31を構築する。処置の最中に、及び/又は処置に続いて、プロセッサ28は、ディスプレイ26にEPマップ31を表示することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、システム21は、プロセッサ28によって心臓23を可変的にペーシングして、プロセッサ28が、ペーシング信号発生器39が生成するバイポーラ信号をルーティング(すなわち、スイッチ)するように円形の電気機械的スイッチ40に指示する。バイポーラ信号は、電極22が連結される電気機械的スイッチ40の複数の出力38によって複数の電極22に出力される。電気機械的スイッチ40は、複数の異なる対の電極22の間で、出力された信号をスイッチする。システム21は、電極22の一部又は全てを使用して、心臓23の得られた電気的活動を測定することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、多数の電極対22の連続的選択によって心臓23をバイポーラ様式でペーシングするために、プロセッサ28は、予め定義された自動刺激ルーティングプロトコルを適用することができる。プロトコルを使用して、プロセッサ28は、特定の所定のシーケンスに従って、異なる電極対22間で同心の電気機械的スイッチ40をルーティング(すなわち、スイッチ)するように命令する。自動刺激ルーティングから利益を得ることができる処置の例は、肺静脈隔離術の検証である。
【0040】
ペーシング中に、電極22のそれぞれの位置が追跡される。追跡は、例えば、Biosense Webster(Irvine、カリフォルニア州)製のCarto3(登録商標)システムを使用して実行され得る。このようなシステムは、電極22と患者25の身体に連結された複数の外部導電パッチ24との間のインピーダンスを測定する。例えば、3本の外部導電パッチ24が、患者の胸部に連結され得、別の3本の外部電極が、患者の背部に連結され得る。説明を容易にするために、胸部電極のみが示されている。開示されているペーシングシステムは、ユニポーラペーシングのレイアウトにおいて、導電パッチ24を戻り電極として使用することができる。
【0041】
図1に示す例示的な図は、純粋に、概念を分かりやすくするために選択されたものである。Lasso(登録商標)Catheter(Biosense Webster,Inc.により製造されている)など、他のタイプのセンシング用の幾何学的形状も採用され得る。
【0042】
プロセッサ28は、メモリ42に記憶されたソフトウェアを用いてシステム21を操作する。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、プロセッサ28に電子形態でダウンロードすることができるか、あるいはそれは、代替的に又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、又は電子メモリなどの、非一時的な有形媒体で提供及び/又は記憶できる。具体的に言えば、プロセッサ28は、上記の機能をプロセッサ28が実行することを可能にする専用のアルゴリズムを稼働させる。
【0043】
複数の電極を有するカテーテルを用いたペーシングのための患者に安全な機械的スイッチング
図2A図2Cは、本発明の実施形態による、図1の同心円状の電気機械的スイッチ40の二重線形電気機械的スイッチ50、及び並列の円形の電気機械的スイッチ60のレイアウト各々の概略的な上面図である。開示される電気機械的二重スイッチは、バイポーラペーシング信号をルーティングするように構成される。
【0044】
図2Aに見られるように、二重線形電気機械的スイッチ50は、互いに平行に整列された2つの線形接点アレイ50a及び50bを備える。第1の線形アレイ50aは接点52を含み、第2の線形アレイ50bは接点54を含む。電極は、プリント回路基板(PCB)51から作製された基板に配置される。
【0045】
移動スイッチ56及び58はそれぞれ、リードねじ57及び59にそれぞれ連結されることにより、接点52と接点54との間の直線軌道で移動するように拘束される。ねじ57及び59のそれぞれは、それぞれステッパモータ55a及び55bによって独立して回転される。第1の移動スイッチ56は移動接点56aを備え、第2の移動スイッチ58は移動接点58aを備え、移動接点56a及び58aは、それぞれ接点アレイ50a及び50bで独立して移動する。アレイ50a及び50bのそれぞれにおける単一のみの接点が、任意の所与の時間に移動接点に接続することができ、これにより、心臓23をペーシングするために使用されるシステム21の隣接するチャネル間の電気的絶縁を確実にする。
【0046】
移動接点56a及び58aは、システム21に含まれるペーシング信号源(接続及び信号源は図示せず)に接続される。バイポーラ信号は、電極22が連結される電気機械的スイッチ50の複数の出力38aによって、複数の電極22(図1に見られる)に出力される。電気機械的スイッチ50は、スイッチ50のリード56b及び58b各々を介して、カテーテル29の選択された電極にペーシング信号を出力する。
【0047】
図2Bに見られるように、同心円状の電気機械的スイッチ40は、接点42の第1の外側の円形アレイ40aと、プリント回路基板(PCB)41から作製された基板に配置された接点44の第2の内側の円形アレイ40bとを備える。2つの円形アレイは、同心円状に整列している。
【0048】
移動スイッチ46及び48はそれぞれ、円形レール47及び49にそれぞれ連結されることによって、電極接点間の円形の軌道で移動するように拘束される。移動スイッチ46及び48のそれぞれは、それぞれの移動スイッチをそれぞれの円形レール上で回転させるステッパモータ(図2Cに例示的な連結機構及びステッパモータが示されている)に連結される。第1の移動スイッチ46は移動接点46aを備え、第2の移動スイッチ48は移動接点48aを含み、接点アレイ40a及び40bでそれぞれ独立して移動することができる。心臓23をペーシングするために使用されるシステム21の隣接するチャネル間での電気的絶縁を確実にするために、各アレイにおける単一のみの接点を任意の所与の時点で移動接点に接続することができる。
【0049】
移動接点46a及び48aは、システム21に含まれるペーシング信号源(接続及び信号源は図示せず)に接続される。バイポーラ信号は、電極22が連結される電気機械的スイッチ40の複数の出力38によって、複数の電極22(図1に見られる)に出力される。電気機械的スイッチ40は、スイッチ40のリード46b及び48b各々を介して、カテーテル29の選択された電極にペーシング信号を出力する。
【0050】
図2Cに見られるように、並列の円形電気機械的スイッチ60は、接点64の第2の円形アレイ60bに並列に配置された接点62の第1の円形アレイ60aを備える。両方のアレイは、プリント回路基板(PCB)61から作製された基板に配置される。
【0051】
移動スイッチ66a及び66bはそれぞれ、レール67a及び67bにそれぞれ連結されることによって接点62と接点64との間で円形の軌道で移動するように拘束され、レール67a及び67bは、図2Bのレール47と同様である。移動スイッチ66a及び66bの各々は、それぞれのシャフト63a及び63bを介して、それぞれのディスク69a及び69bを備える連結機構によってステッパモータ65aと65b各々に連結され、各々のシャフトは各ディスクを回転させて、各移動スイッチをそれぞれの円形レール上で回転させる。
【0052】
移動接点660aを含む第1の移動スイッチ66aと、移動接点660bを含む第2の移動スイッチ66bとは、接点アレイ60a及び60bにおいてそれぞれ移動することができる。心臓23をペーシングするために使用されるシステム21の隣接するチャネル間の電気的絶縁を確実にするために、各アレイにおける単一のみの接点を任意の所与の時点で移動接点に接続することができる。
【0053】
移動接点660a及び660bは、システム21について含まれるペーシング信号源(電気接続及び信号源は図示せず)に接続される。バイポーラ信号は、電極22が連結される電気機械的スイッチ60の複数の出力38cによって、複数の電極22(図1に見られる)に出力される。電気機械的スイッチ60は、スイッチ60のリード68a及び68bを介して、カテーテル29の選択された電極にペーシング信号を出力する。
【0054】
図2に示す上面図は、例として挙げられ、概念を明確にするために簡略化されている。例えば、運動機構は、最小限の詳細で概略を記されている。
【0055】
図3は、本発明の実施形態による、図2A図2Cの電気機械的スイッチのホイール付き移動スイッチの概略的な側面図である。見られるように、移動スイッチ458は、接点454のアレイの上に導電性ホイール1458を使用して転動される移動接点458aを備える。移動スイッチ458は、モータ(図2Aのステッパモータ55a及び55bなど)によって回転されるねじ457によって移動される。
【0056】
いくつかの実施形態では、ホイール1458は金属製である。他の実施形態では、ホイール1458は、導電性ゴムなどの導電性ポリマーで作製されている。ゴムを使用することにより、金属間の摩擦及び金属間の引っ掻きなどによるパッドの浸食を防止することによって、機械的スイッチの寿命を延ばすことができる。また、ゴムを使用することにより、例えば、接点の変化するトポグラフィーを調節することによって、ホイール1458と接点454のそれぞれとの間の機械的接触を改善することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、ポリマーホイールは、ホイール1458が転動する際に、接点454のそれぞれと別個に電気的接触を確立するために、導電性ストリップ460と共に配置される。そのため、導電性ストリップ460(例えば、金のストリップ)は、ホイールの周囲の一部分を覆う。ホイール自体は、機械的吸収具として機能し、PCBパッドとの高い摩擦を排除し、より良好な機械的接触のために、移動スイッチ458とPCBとの間の垂直方向の誤った整列のために調節する。ストリップ460は、円の扇形として図3に描かれているが、他の好適なパターンを有することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、ホイール1458と接点454との間の堅固な電気的接触を確立するために、プロセッサ28は、モータを適合するように制御して(例えば、ホイールが前後方向に移動することによって)移動スイッチ458の位置を微調整する制御ループを適用する。プロセッサ28は、接点に関連する電極を介して感知された心電図(ECG)に基づいてモータを制御するように構成されている。例えば、システムが、それぞれの電極を介して、(例えば、十分に大きい信号の)予め定められた基準に従って許容可能な質のECGを感知すると、プロセッサ28は、接点454のホイール1458間をスイッチするために良好な電気的接触が達成されたと判定する。接触の質を制御するためにECGを使用することは、例えば接点上の塵埃粒子が電気的接触を劣化させる場合に補助することができる、なぜなら接点領域が小さい(例えば、円の接線)からである。
【0059】
図4は、本発明の実施形態による、図2A図2Cの電気機械的スイッチのリードスイッチのレイアウトの概略的な図である。見られるように、間隙が存在する、すなわち、移動スイッチ550とリードスイッチ552のアレイとの間に機械的接触がない。代わりに、移動スイッチ550が、リードスイッチ552の上に位置付けられている場合は必ず、移動スイッチ550の内側にある固定磁石などの磁石555は、通常開いているリードスイッチ552が閉じて、ペーシング信号を通すようにする。移動スイッチ550は、モータ(図2Aのステッパモータ55a及び55bなど)によって回転されるねじ557によって移動される。
【0060】
インセットで見られるように、典型的にはリードスイッチは、通常開モードで2つの「スティック」を有し、磁石でこれらの「スティック」を接続することができる。リードスイッチを使用することにより、機械的なウェアの問題(例えば、移動スイッチとの摩擦によるPCBパッドの破壊)を排除することによって、開示されているペーシングスイッチの寿命を延ばすことができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、磁石555は電磁石であり、これは、接触することを意図しないリードスイッチ上で移動されたときに近づけない。したがって、電磁石は、目標のリードスイッチの上方に配置されたときにのみ動作し、意図されたチャネルで回路を閉じる。誤ったリードスイッチの起動を回避するためのより多くの選択肢が可能である。例えば、磁石555は、アレイの上を移動しながら水平に反転され、目標のリードスイッチ上でのみ垂直に反転されてもよい。ロジックを使用してリードスイッチを切断するなどの他の手段も可能である。
【0062】
図4の図は例として挙げたものである。リードスイッチを使用して、例えばリードスイッチをスイッチするために固定磁石の代わりに電磁石を使用することによって、他の実施形態が可能である。
【0063】
本明細書に記載されている実施形態は、主に医療用途に対処するものであるが、本明細書に記載されている方法及びシステムはまた、電気スイッチ、制御回路、及び通信スイッチにおけるなどの、他の用途に使用することもできる。
【0064】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせ及びその部分的組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、従来技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれる文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部と見なすものとする。
【0065】
〔実施の態様〕
(1) ペーシングシステムであって、
ペーシング信号を生成するように構成された信号発生器と、
患者の心臓内に挿入された複数の電極に連結されるように構成された複数の出力を有する電気機械的スイッチであって、それぞれの出力が前記ペーシング信号をそれぞれの電極に送達するように構成され、前記電気機械的スイッチは、前記ペーシング信号を任意の所与の時間に前記出力のうちの単一の選択されたもののみにルーティングするように構成されており、前記電極のうちの単一の選択されたもののみを使用して前記心臓をペーシングするようにする、電気機械的スイッチと、を備える、ペーシングシステム。
(2) 前記電気機械的スイッチが、
アレイに配置された複数の接点でパターニングされた基板であって、前記アレイの各接点が、前記複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結されている、基板と、
接点の前記アレイの上を移動し、任意の所与の時間に、1つの接点のみとの電気的接触を確立するように構成されている、移動スイッチと、
前記移動スイッチを移動させるように構成されたモータと、を備える、実施態様1に記載のペーシングシステム。
(3) 前記電気機械的スイッチが、前記モータによって回転されるように構成されたねじを更に含み、前記電気機械的スイッチの前記移動スイッチは、前記ねじに連結され、前記ねじが前記モータによって回転されるときに、前記接点の線形アレイの上を線形の軌道で移動するように構成されている、実施態様2に記載のペーシングシステム。
(4) 前記接点の前記アレイが円形構成で配置され、前記電気機械的スイッチの前記移動スイッチが、前記接点の前記アレイの上を円形の軌道で移動するように構成されている、実施態様2に記載のペーシングシステム。
(5) 前記電気機械的スイッチの前記基板が、プリント回路基板(PCB)から作製されている、実施態様2に記載のペーシングシステム。
【0066】
(6) 前記電気機械的スイッチの前記モータが、ステッパモータを含む、実施態様2に記載のペーシングシステム。
(7) 前記ホイールと前記接点との間の前記電気的接触を最適化するように、前記モータを適合するように制御して前記移動スイッチの位置を微調整する制御ループを適用するように構成されているプロセッサを備える、実施態様2に記載のペーシングシステム。
(8) 前記プロセッサが、前記接点に関連する前記電極を介して感知された心電図(ECG)に基づいて前記モータを制御するように構成されている、実施態様7に記載のペーシングシステム。
(9) 前記移動スイッチが、接点の前記アレイの上を転動するように構成されたホイールを備える、実施態様2に記載のペーシングシステム。
(10) 前記ホイールが金属製である、実施態様9に記載のペーシングシステム。
【0067】
(11) 前記ホイールが導電性ポリマーから作製されている、実施態様9に記載のペーシングシステム。
(12) 前記ホイールがポリマーで作製され、導電性ストリップを備えて配置されている、実施態様9に記載のペーシングシステム。
(13) 前記電気機械的スイッチが、
アレイに配置された複数のリードスイッチを備えて配置された基板であって、前記アレイの各リードスイッチが、前記複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結されている、基板と、
磁石を備える移動スイッチであって、リードスイッチの前記アレイの上を移動し、任意の所与の時間に、1つのみのリードスイッチに電気的接触を確立させるように構成されている、移動スイッチと、
前記移動スイッチを移動させるように構成されたモータと、を備える、実施態様1に記載のペーシングシステム。
(14) 前記ペーシング信号を生成するように前記ペーシング発生器に命令し、前記電気機械的スイッチに命令して、予め定められたペーシングプロトコルに従って前記ペーシング信号をルーティングするように構成されているプロセッサを含む、実施態様1に記載のペーシングシステム。
(15) 前記ペーシング信号がユニポーラである、実施態様1に記載のペーシングシステム。
【0068】
(16) 前記ペーシング信号がバイポーラであり、前記ペーシングシステムが、前記電気機械的スイッチと共に二重電気機械的スイッチを形成する追加の電気機械的スイッチを備え、前記二重電気機械的スイッチは、任意の所与の時間に、選択された対の前記出力のみに前記バイポーラペーシング信号をルーティングするように構成され、選択された対の前記電極のみを使用してバイポーラで前記心臓をペーシングするようにする、実施態様1に記載のペーシングシステム。
(17) 前記二重電気機械的スイッチが、
第1のアレイに配置された複数の接点でパターニングされた基板であって、前記第1のアレイの各接点が、前記複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結され、複数の接点が第2のアレイに配置され、前記第2のアレイの各接点は、前記複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結されている、基板と、
第1の移動スイッチであって、接点の前記第1のアレイの上を移動し、任意の所与の時間において、前記第1のアレイの1つの接点のみとの電気的接触を確立するように構成されている、第1の移動スイッチと、
第2の移動スイッチであって、接点の前記第2のアレイの上を移動し、任意の所与の時間において、前記第2のアレイの1つの接点のみとの電気的接触を別個に確立するように構成されている、第2の移動スイッチと、
前記第1の移動スイッチ及び前記第2の移動スイッチを互いに独立して移動させるように構成された1つ以上のモータと、を備える、実施態様16に記載のペーシングシステム。
(18) 前記二重電気機械的スイッチの接点の前記第1のアレイ及び接点の前記第2のアレイが空間内で空間的に分離されている、実施態様17に記載のペーシングシステム。
(19) 接点の前記第1のアレイ及び前記第2のアレイが同心の円形アレイである、実施態様17に記載のペーシングシステム。
(20) 接点の前記第1のアレイ及び前記第2のアレイが、互いに垂直に重ねられている、実施態様17に記載のペーシングシステム。
【0069】
(21) 前記二重電気機械的スイッチが、
第1のアレイに配置された複数のリードスイッチでパターニングされた基板であって、前記第1のアレイの各リードスイッチは、前記複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結され、複数のリードスイッチが第2のアレイに配置され、前記第2のアレイの各リードスイッチは、前記複数の出力のうちのそれぞれの出力に連結されている、基板と、
磁石を含む第1の移動スイッチであって、リードスイッチの前記第1のアレイの上を移動し、前記第1のアレイの1つのみのリードスイッチに、任意の所与の時間に電気的接触を確立させるように構成されている、第1の移動スイッチと、
磁石を含む第2の移動スイッチであって、リードスイッチの前記第2のアレイの上を移動し、前記第2のアレイの1つのみのリードスイッチに、任意の所与の時間に電気的接触を別個に確立させるように構成されている、第2の移動スイッチと、
前記第1の移動スイッチ及び前記第2の移動スイッチを互いに独立して移動させるように構成された1つ以上のモータと、を備える、実施態様16に記載のペーシングシステム。
(22) 心臓をペーシングする方法であって、
ペーシング信号を生成することと、
前記心臓に挿入された複数の電極に連結され、前記ペーシング信号をそれぞれの電極に送達するようにそれぞれが構成された複数の出力を有する電気機械的スイッチを使用して、前記ペーシング信号を任意の所与の時間に前記出力のうちの単一の選択されたもののみにルーティングし、前記電極のうちの単一の選択されたもののみを使用して前記心臓をペーシングするようにすることと、を含む、方法。
(23) 製造方法であって、
アレイに配置された複数の接点を有する基板をパターニングすることと、
前記アレイの上を移動し、任意の所与の時間に1つの接点のみとの電気的接触を確立するように構成された移動スイッチを提供することと、
前記移動スイッチを移動させるように構成された1つ以上のモータを提供することと、を含む、方法。
(24) 製造方法であって、
第1のアレイに配置された複数の接点、及び第2のアレイに配置された複数の接点を有する基板をパターニングすることと、
前記第1のアレイの上を移動し、任意の所与の時間において前記第1のアレイの1つの接点のみとの電気的接触を確立するように構成されている、第1の移動スイッチを提供することと、
前記第2のアレイの上を移動し、任意の所与の時間において前記第2のアレイの1つの接点のみとの電気的接触を別個に確立するように構成されている、第2の移動スイッチを提供することと、
前記第1の移動スイッチ及び前記第2の移動スイッチを互いに独立して移動させるように構成された1つ以上のモータを連結することと、を含む、方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4