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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】磁気抵抗効果素子および磁気メモリ
(51)【国際特許分類】
   H10N 50/20 20230101AFI20240716BHJP
   H10B 61/00 20230101ALI20240716BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20240716BHJP
   H01F 10/16 20060101ALI20240716BHJP
   H01F 10/14 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H10N50/20
H10B61/00
H01L29/82 Z
H01F10/16
H01F10/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020148867
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043545
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智生
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-049101(JP,A)
【文献】特開2013-069865(JP,A)
【文献】特開2018-026421(JP,A)
【文献】特許第6624356(JP,B1)
【文献】特開2009-094244(JP,A)
【文献】国際公開第2015/060239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 50/20
H10B 61/00
H01L 29/82
H01F 10/16
H01F 10/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1強磁性層、非磁性層、第2強磁性層が第1方向に順に積層された積層体と、
前記積層体の前記第2強磁性層上又は前記第2強磁性層の上方にある磁性体と、
前記磁性体の第1側面に接し、前記第1方向と交差する第2方向に延びる配線と、を備え、
前記第1強磁性層は、前記第2強磁性層よりも配向方向が変化しにくく、
前記第1強磁性層、前記第2強磁性層及び前記磁性体のそれぞれの磁化容易軸方向は前記第1方向であり、
前記磁性体は、前記第2強磁性層と磁気結合し、
前記配線は、内部に電流が流れる際のスピンホール効果によってスピン流を発生させ、前記磁性体にスピンを注入し、
前記第2強磁性層の前記第1方向の厚さは、前記第2強磁性層の前記第1方向と直交する面内の最小長さより薄く、
前記磁性体の前記第1方向の厚さは、前記磁性体の前記第1方向と直交する面内の最小長さより厚い、磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
前記配線は、前記磁性体の上面とさらに接する、請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
前記配線は、前記第2強磁性層の第1側面とさらに接する、請求項1又は2に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
前記第2強磁性層と前記磁性体とは、材料又は組成が異なる、請求項1~3のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記磁性体は、Co、Tb、Fe、Gdからなる群から選択される2つ以上の元素を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
前記磁性体の下面は、前記第2強磁性層の上面より大きく、
前記磁性体と前記第2強磁性層との界面に段差がある、請求項1~5のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項7】
前記磁性体と前記第2強磁性層との間に中間層をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項8】
前記磁性体と前記第2強磁性層との間に第2配線と絶縁層とをさらに備え、
前記第2配線は、前記第2強磁性層と接し、
前記絶縁層は、前記第2配線と前記磁性体とに挟まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項9】
前記磁性体の上面に接する酸化物層をさらに備える、請求項1又は請求項3~8のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果素子を複数備える、磁気メモリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子および磁気メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
強磁性層と非磁性層の多層膜からなる巨大磁気抵抗(GMR)素子、及び、非磁性層に絶縁層(トンネルバリア層、バリア層)を用いたトンネル磁気抵抗(TMR)素子は、磁気抵抗効果素子として知られている。磁気抵抗効果素子は、磁気センサ、高周波部品、磁気ヘッド及び不揮発性ランダムアクセスメモリ(MRAM)への応用が可能である。
【0003】
MRAMは、磁気抵抗効果素子が集積された記憶素子である。MRAMは、磁気抵抗効果素子における非磁性層を挟む二つの強磁性層の互いの磁化の向きが変化すると、磁気抵抗効果素子の抵抗が変化するという特性を利用してデータを読み書きする。
【0004】
例えば、特許文献1及び2には、スピン軌道トルク(SOT)を利用して磁気抵抗効果素子の抵抗を変化させる方法が記載されている。SOTは、スピン軌道相互作用によって生じたスピン流又は異種材料の界面におけるラシュバ効果により誘起される。磁気抵抗効果素子内にSOTを誘起するための電流は、磁気抵抗効果素子の積層方向と交差する方向に流れる。磁気抵抗効果素子の積層方向に電流を流す必要がなく、磁気抵抗効果素子の長寿命化が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/090733号
【文献】特開2020-107790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2には、磁化にスピン軌道トルクを与えるための配線(スピン軌道トルク配線)を磁化自由層の側面と接するように配置することが記載されている。しかしながら、特許文献1及び2に記載の磁気抵抗効果素子は、無磁場下でも磁化反転させるという点とMR比を大きくするという点を両立することができない。
【0007】
例えば、特許文献1に記載の磁気抵抗効果素子において、スピン軌道トルク配線は、膜厚の薄い磁化自由層の側面と接しており、スピン軌道トルク配線と磁化自由層との接触面積が小さい。これらの間の接触面積が小さいと、磁化自由層に十分なスピンを供給できない。したがって、スピン軌道トルク配線の側壁接合部から供給されるスピンのみでは、磁化を反転させるだけのトルクを十分与えることができない。特許文献1においても側壁接合部から供給されるスピンは磁化反転のアシストに用いられており、側壁接合部単独で磁化反転を行うことは特許文献1には記載されていない。
【0008】
一方で、特許文献2に記載の磁気抵抗効果素子は、自由層の厚みが厚くなっており、自由層とSOT発生源との接触面積が大きい。しかしながら、垂直磁気異方性を保ちつつ、自由層の厚みを厚くできる材料は限られている。他方、大きなMR比を示すことができる磁性体の材料も限られている。2つの特徴を同時に満たす磁性体はほとんどなく、特許文献2に記載の磁気抵抗効果素子は、MR比が小さくなる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、MR比が大きく、かつ、無磁場下でも磁化反転可能な磁気抵抗効果素子及び磁気メモリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0011】
(1)第1の態様にかかる磁気抵抗効果素子は、第1強磁性層、非磁性層、第2強磁性層が第1方向に順に積層された積層体と、前記積層体の前記第2強磁性層上又は前記第2強磁性層の上方にある磁性体と、前記磁性体の第1側面に接し、前記第1方向と交差する第2方向に延びる配線と、を備え、前記第2強磁性層の前記第1方向の厚さは、前記第2強磁性層の前記第1方向と直交する面内の最小長さより薄く、前記磁性体の前記第1方向の厚さは、前記磁性体の前記第1方向と直交する面内の最小長さより厚い。
【0012】
(2)上記態様にかかる磁気抵抗効果素子において、前記配線は、前記磁性体の上面とさらに接してもよい。
【0013】
(3)上記態様にかかる磁気抵抗効果素子において、前記配線は、前記第2強磁性層の第1側面とさらに接してもよい。
【0014】
(4)上記態様にかかる磁気抵抗効果素子において、前記磁性体及び前記第2強磁性層の磁化の磁化容易軸方向は前記第1方向でもよい。
【0015】
(5)上記態様にかかる磁気抵抗効果素子において、前記第2強磁性層と前記磁性体とは、材料又は組成が異なってもよい。
【0016】
(6)上記態様にかかる磁気抵抗効果素子において、前記磁性体は、Co、Tb、Fe、Gdからなる群から選択される2つ以上の元素を含んでもよい。
【0017】
(7)上記態様にかかる磁気抵抗効果素子において、前記磁性体の下面は、前記第2強磁性層の上面より大きく、前記磁性体と前記第2強磁性層との界面に段差があってもよい。
【0018】
(8)上記態様にかかる磁気抵抗効果素子は、前記磁性体と前記第2強磁性層との間に中間層をさらに備えてもよい。
【0019】
(9)上記態様にかかる磁気抵抗効果素子は、前記磁性体と前記第2強磁性層との間に第2配線と絶縁層とをさらに備え、前記第2配線は、前記第2強磁性層と接し、前記絶縁層は、前記第2配線と前記磁性体とに挟まれてもよい。
【0020】
(10)上記態様にかかる磁気抵抗効果素子は、前記磁性体の上面に接する酸化物層をさらに備えてもよい。
【0021】
(11)第2の態様にかかる磁気メモリは、上記態様にかかる磁気抵抗効果素子を複数備える。
【発明の効果】
【0022】
本実施形態にかかる磁気抵抗効果素子及び磁気メモリは、MR比が大きく、かつ、無磁場下でも磁化反転可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態にかかる磁気記録アレイの模式図である。
図2】第1実施形態にかかる磁気記録アレイの断面図である。
図3】第1実施形態にかかる磁気記録アレイの特徴部分の断面図である。
図4】第1実施形態にかかる磁気記録アレイの特徴部分の平面図である。
図5】第1実施形態にかかる磁気記録アレイの製造過程の一例を示す断面図である。
図6】第1実施形態にかかる磁気記録アレイの製造過程の一例を示す断面図である。
図7】第1実施形態にかかる磁気記録アレイの製造過程の一例を示す断面図である。
図8】第1実施形態にかかる磁気記録アレイの製造過程の一例を示す断面図である。
図9】第1実施形態にかかる磁気記録アレイの製造過程の一例を示す断面図である。
図10】第2実施形態にかかる磁気記録アレイの特徴部分の断面図である。
図11】第3実施形態にかかる磁気記録アレイの特徴部分の断面図である。
図12】第4実施形態にかかる磁気記録アレイの特徴部分の断面図である。
図13】第5実施形態にかかる磁気記録アレイの特徴部分の断面図である。
図14】第6実施形態にかかる磁気記録アレイの特徴部分の断面図である。
図15】第7実施形態にかかる磁気記録アレイの特徴部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0025】
まず方向について定義する。後述する基板Sub(図2参照)の一面の一方向をx方向、x方向と直交する方向をy方向とする。x方向は、例えば、配線30が延びる方向である。z方向は、x方向及びy方向と直交する方向である。z方向は、積層方向の一例である。以下、+z方向を「上」、-z方向を「下」と表現する場合がある。上下は、必ずしも重力が加わる方向とは一致しない。
【0026】
本明細書で「x方向に延びる」とは、例えば、x方向、y方向、及びz方向の各寸法のうち最小の寸法よりもx方向の寸法が大きいことを意味する。他の方向に延びる場合も同様である。また本明細書で「接続」とは、物理的に接続される場合に限定されない。例えば、二つの層が物理的に接している場合に限られず、二つの層の間が他の層を間に挟んで接続している場合も「接続」に含まれる。また2つの部材が電気的に接続されている場合も「接続」に含まれる。
【0027】
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態にかかる磁気記録アレイ200の構成図である。磁気記録アレイ200は、複数の磁気抵抗効果素子100と、複数の書き込み配線Wpと、複数の共通配線Cmと、複数の読み出し配線Rpと、複数の第1スイッチング素子Sw1と、複数の第2スイッチング素子Sw2と、複数の第3スイッチング素子Sw3とを備える。磁気記録アレイ200は、例えば、磁気メモリ等に利用できる。
【0028】
書き込み配線Wpのそれぞれは、電源と1つ以上の磁気抵抗効果素子100とを電気的に接続する。共通配線Cmのそれぞれは、データの書き込み時及び読み出し時の両方で用いられる配線である。共通配線Cmは、基準電位と1つ以上の磁気抵抗効果素子100とを電気的に接続する。基準電位は、例えば、グラウンドである。共通配線Cmは、複数の磁気抵抗効果素子100のそれぞれに設けられてもよいし、複数の磁気抵抗効果素子100に亘って設けられてもよい。読み出し配線Rpのそれぞれは、電源と1つ以上の磁気抵抗効果素子100とを電気的に接続する。電源は、使用時に磁気記録アレイ200に接続される。
【0029】
第1スイッチング素子Sw1、第2スイッチング素子Sw2、第3スイッチング素子Sw3は、例えば、一つの磁気抵抗効果素子100にそれぞれ接続されている。第1スイッチング素子Sw1は、磁気抵抗効果素子100と書き込み配線Wpとの間に接続されている。第2スイッチング素子Sw2は、磁気抵抗効果素子100と共通配線Cmとの間に接続されている。第3スイッチング素子Sw3は、磁気抵抗効果素子100と読み出し配線Rpとの間に接続されている。
【0030】
所定の第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2をONにすると、所定の磁気抵抗効果素子100に接続された書き込み配線Wpと共通配線Cmとの間に書き込み電流が流れる。所定の第2スイッチング素子Sw2及び第3スイッチング素子Sw3をONにすると、所定の磁気抵抗効果素子100に接続された共通配線Cmと読み出し配線Rpとの間に読み出し電流が流れる。
【0031】
第1スイッチング素子Sw1、第2スイッチング素子Sw2及び第3スイッチング素子Sw3は、電流の流れを制御する素子である。第1スイッチング素子Sw1、第2スイッチング素子Sw2及び第3スイッチング素子Sw3は、例えば、トランジスタ、オボニック閾値スイッチ(OTS:Ovonic Threshold Switch)のように結晶層の相変化を利用した素子、金属絶縁体転移(MIT)スイッチのようにバンド構造の変化を利用した素子、ツェナーダイオード及びアバランシェダイオードのように降伏電圧を利用した素子、原子位置の変化に伴い伝導性が変化する素子である。
【0032】
第1スイッチング素子Sw1、第2スイッチング素子Sw2、第3スイッチング素子Sw3のいずれかは、同じ配線に接続された磁気抵抗効果素子100で、共用してもよい。例えば、第1スイッチング素子Sw1を共有する場合は、書き込み配線Wpの上流に一つの第1スイッチング素子Sw1を設ける。例えば、第2スイッチング素子Sw2を共有する場合は、共通配線Cmの上流に一つの第2スイッチング素子Sw2を設ける。例えば、第3スイッチング素子Sw3を共有する場合は、読み出し配線Rpの上流に一つの第3スイッチング素子Sw3を設ける。
【0033】
図2は、第1実施形態に係る磁気記録アレイ200の特徴部分の断面図である。図2は、磁気抵抗効果素子100を後述する配線30のy方向の幅の中心を通るxz平面で切断した断面である。積層体10及び磁性体20は、配線30よりy方向(紙面奥行き方向)に存在するため点線で図示している。
【0034】
図2に示す第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2は、トランジスタTrである。第3スイッチング素子Sw3は、電極E1と電気的に接続され、例えば、図2のy方向に位置する。トランジスタTrは、例えば電界効果型のトランジスタであり、ゲート電極Gとゲート絶縁膜GIと基板Subに形成されたソースS及びドレインDとを有する。基板Subは、例えば、半導体基板である。
【0035】
トランジスタTrと磁気抵抗効果素子100とは、配線w及び電極E1、E2を介して、電気的に接続されている。またトランジスタTrと書き込み配線Wp又は共通配線Cmとは、配線wで接続されている。配線wは、例えば、接続配線、ビア配線、層間配線と言われることがある。配線w及び電極E2、E3は、導電性を有する材料を含む。配線wは、例えば、z方向に延びる。
【0036】
磁気抵抗効果素子100及びトランジスタTrの周囲は、絶縁体Inで覆われている。絶縁体Inは、多層配線の配線間や素子間を絶縁する絶縁体である。絶縁体Inは、例えば、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)、窒化クロム、炭窒化シリコン(SiCN)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)等である。
【0037】
図3は、第1実施形態に係る磁気記録アレイ200の特徴部分の断面図である。図3は、磁気抵抗効果素子100をyz平面で切断した断面である。図4は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子100をz方向から見た平面図である。
【0038】
磁気抵抗効果素子100は、例えば、積層体10と磁性体20と配線30とを有する。絶縁層In1,In2,In3,In4は、絶縁体Inの一部である。磁気抵抗効果素子100は、スピン軌道トルク(SOT)を利用した磁性素子であり、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子、スピン注入型磁気抵抗効果素子、スピン流磁気抵抗効果素子と言われる場合がある。
【0039】
積層体10は、基板Subに近い側から順に第1強磁性層1、非磁性層3、第2強磁性層2を有する。積層体10は、電極E1上に積層されている。積層体10は、z方向に、磁性体20と電極E1とに挟まれる。積層体10は、柱状体である。積層体10は、上面から下面に向かって徐々に拡幅している。積層体10のz方向からの平面視形状は、例えば、円形、楕円形、四角形である。
【0040】
第1強磁性層1は磁化M1を有し、第2強磁性層2は磁化M2を有する。第1強磁性層1の磁化M1は、所定の外力が印加された際に第2強磁性層2の磁化M2よりも配向方向が変化しにくい。第1強磁性層1は磁化固定層、磁化参照層と言われ、第2強磁性層2は磁化自由層と言われる。積層体10は、磁化固定層が基板Sub側にあるボトムピン構造である。ボトムピン構造は、磁化固定層が磁化自由層より基板Subから離れた位置にあるトップピン構造より磁化の安定性が高い。積層体10は、非磁性層3を挟む第1強磁性層1の磁化M1と第2強磁性層2の磁化M2との相対角の違いに応じて抵抗値が変化する。
【0041】
第1強磁性層1及び第2強磁性層2は、強磁性体を含む。強磁性体は、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等である。強磁性体は、例えば、Co-Fe、Co-Fe-B、Ni-Fe、Co-Ho合金、Sm-Fe合金、Fe-Pt合金、Co-Pt合金、CoCrPt合金である。
【0042】
第1強磁性層1及び第2強磁性層2は、ホイスラー合金を含んでもよい。ホイスラー合金は、XYZまたはXYZの化学組成をもつ金属間化合物を含む。Xは周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、YはMn、V、CrあるいはTi族の遷移金属又はXの元素種であり、ZはIII族からV族の典型元素である。ホイスラー合金は、例えば、CoFeSi、CoFeGe、CoFeGa、CoMnSi、CoMn1-aFeAlSi1-b、CoFeGe1-cGa等である。ホイスラー合金は高いスピン分極率を有する。
【0043】
第1強磁性層1の磁化M1及び第2強磁性層2の磁化M2は、例えば、z方向に配向している。第1強磁性層1及び第2強磁性層2は、磁化容易軸がz方向である垂直磁化膜である。
【0044】
第2強磁性層2の膜厚Hは、第2強磁性層2のxy面内における最小長さWより薄い。第2強磁性層2の膜厚Hは、例えば、10nm以下であり、第2強磁性層2の最小長さWは、例えば、10nmより大きい。第1強磁性層1も第2強磁性層2と同様に、膜厚がxy面内における最小長さより薄い。
【0045】
積層体10は、第1強磁性層1、非磁性層3、第2強磁性層2以外の層を有してもよい。例えば、第1強磁性層1の非磁性層3と反対側の面に、スペーサ層と第3強磁性層とを有してもよい。第1強磁性層1と第3強磁性層とが磁気的にカップリングすることで、第1強磁性層1の磁化M1の安定性が高まる。第1強磁性層、スペーサ層、第3強磁性層は、シンセティック反強磁性構造(SAF構造)である。第3強磁性層は、第1強磁性層1と同様の材料を用いることができる。第3強磁性層は、例えば、Co/Ni、Co/Ptなどの磁性膜のみ、あるいは、磁性膜と非磁性膜の多層膜によって形成される垂直磁化膜であることが好ましい。スペーサ層は、例えば、Ru、Ir、Rhからなる群から選択される少なくとも一つを含む。また第1強磁性層1の下面に下地層を有してもよい。下地層は、積層体10を構成する各層の結晶性を高める。
【0046】
磁性体20は、積層体10のz方向の位置にある。磁性体20は、例えば、積層体10の上にある。磁性体20は、第2強磁性層2上にあり、第2強磁性層2と磁気結合している。磁気結合は強磁性結合でも反強磁性結合でもよい。
【0047】
磁性体20は、強磁性体を含む。磁性体20の磁化M20は、例えば、z方向に配向している。磁性体20は、磁化容易軸方向がz方向である垂直磁化膜である。
【0048】
磁性体20は、z方向に結晶磁気異方性を有する材料を含む。磁性体20は、例えば、第2強磁性層2と材料又は組成が異なる。結晶磁気異方性は、磁性体の結晶構造に起因する磁化の特定の方向への配向しやすさである。結晶の電子構造が結晶方位によって異なることによって結晶磁気異方性は生じる。磁性体20は、例えば、c軸がz方向に配向した正方晶構造を有する。
【0049】
磁性体20は、例えば、Co/Ni、Co/Ptなどの磁性膜のみ、あるいは、磁性膜と非磁性膜の多層膜でも良い。
【0050】
磁性体20は、例えば、Co、Tb、Fe、Gdからなる群から選択される2つ以上の元素を含む。磁性体20は、例えば、GdFeCo、TbFeCoである。磁性体20は、例えば、PtFe合金、PtCo合金、PdFe合金、FeNi合金、MnGa合金、MnGe合金でもよい。
【0051】
磁性体20のz方向の厚さH20は、磁性体20のxy面内における最小長さW20より厚い。磁性体20がz方向に延びることで、磁性体20は、z方向に形状磁気異方性を有し、磁化M20がz方向に強く配向する。形状磁気異方性は、磁性体20の形状に起因する磁化の特定の方向への配向しやすさである。磁性体20は、形状に異方性を有し、長軸方向と短軸方向とで反磁界の大きさが異なる。磁性体20の磁化M20は、反磁界が弱い磁性体20の長軸方向に配向しやすい。
【0052】
磁性体20は、例えば、z方向からの平面視で、第2強磁性層2より大きい。磁性体20の下面20bは、例えば、第2強磁性層2の上面2uより大きい。磁性体20と第2強磁性層2との界面には、段差stが形成されている。
【0053】
配線30は、磁性体20の第1側面20s1に接続されている。配線30は、例えば、磁性体20の複数の側面のうち第1側面20s1のみに接続されている。配線30と磁性体20との間には、膜厚がスピン拡散長以下の他の層を有してもよい。配線30は、例えば、x方向に延びる。
【0054】
配線30は、電流Iが流れる際のスピンホール効果によってスピン流を発生させ、磁性体20にスピンを注入する。配線30は、スピン軌道トルク配線と称される。配線30は、例えば、磁性体20の磁化M20を反転できるだけのスピン軌道トルク(SOT)を磁性体20の磁化M20に与える。スピンホール効果は、電流を流した場合にスピン軌道相互作用に基づき、電流の流れる方向と直交する方向にスピン流が誘起される現象である。スピンホール効果は、運動(移動)する電荷(電子)が運動(移動)方向を曲げられる点で、通常のホール効果と共通する。通常のホール効果は、磁場中で運動する荷電粒子の運動方向がローレンツ力によって曲げられる。これに対し、スピンホール効果は磁場が存在しなくても、電子が移動するだけ(電流が流れるだけ)でスピンの移動方向が曲げられる。
【0055】
例えば、配線30に電流が流れると、一方向に配向した第1スピンsp1と、第1スピンsp1と反対方向に配向した第2スピンsp2とが、それぞれ電流Iの流れる方向と直交する方向にスピンホール効果によって曲げられる。例えば、+z方向に配向した第1スピンsp1が-y方向に向かい、-z方向に配向した第2スピンsp2が+y方向に向かう。
【0056】
非磁性体(強磁性体ではない材料)は、スピンホール効果により生じる第1スピンsp1の電子数と第2スピンsp2の電子数とが等しい。すなわち、-y方向に向かう第1スピンsp1の電子数と+y方向に向かう第2スピンsp2の電子数とは等しい。第1スピンsp1と第2スピンsp2は、スピンの偏在を解消する方向に流れる。第1スピンsp1及び第2スピンsp2のy方向への移動において、電荷の流れは互いに相殺されるため、電流量はゼロとなる。電流を伴わないスピン流は特に純スピン流と呼ばれる。
【0057】
第1スピンsp1の電子の流れをJ、第2スピンsp2の電子の流れをJ、スピン流をJと表すと、J=J-Jで定義される。スピン流Jは、y方向に生じる。
【0058】
配線30は、電流Iが流れる際のスピンホール効果によってスピン流を発生させる機能を有する金属、合金、金属間化合物、金属硼化物、金属炭化物、金属珪化物、金属燐化物のいずれかを含む。
【0059】
配線30は、例えば、主成分として非磁性の重金属を含む。重金属は、イットリウム(Y)以上の比重を有する金属を意味する。非磁性の重金属は、例えば、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の原子番号が大きい非磁性金属である。配線30は、例えば、Hf、Ta、Wからなる。非磁性の重金属は、その他の金属よりスピン軌道相互作用が強く生じる。スピンホール効果はスピン軌道相互作用により生じ、配線30内にスピンが偏在しやすく、スピン流Jが発生しやすくなる。
【0060】
配線30は、例えば、Ta、W、Pt、Au、Nb、Mo、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Agからなる群から選択される少なくとも一つを含む。配線30は、例えば、これらの元素の単体金属からなる。これらの元素は、熱伝導性に優れ、磁気抵抗効果素子100の放熱性が向上する。
【0061】
配線30は、この他に、磁性金属を含んでもよい。磁性金属は、強磁性金属又は反強磁性金属である。非磁性体に含まれる微量な磁性金属は、スピンの散乱因子となる。微量とは、例えば、配線30を構成する元素の総モル比の3%以下である。スピンが磁性金属により散乱するとスピン軌道相互作用が増強され、電流に対するスピン流の生成効率が高くなる。
【0062】
配線30は、トポロジカル絶縁体を含んでもよい。トポロジカル絶縁体は、物質内部が絶縁体又は高抵抗体であるが、その表面にスピン偏極した金属状態が生じている物質である。トポロジカル絶縁体は、スピン軌道相互作用により内部磁場が生じる。トポロジカル絶縁体は、外部磁場が無くてもスピン軌道相互作用の効果で新たなトポロジカル相が発現する。トポロジカル絶縁体は、強いスピン軌道相互作用とエッジにおける反転対称性の破れにより純スピン流を高効率に生成できる。
【0063】
トポロジカル絶縁体は、例えば、SnTe、Bi1.5Sb0.5Te1.7Se1.3、TlBiSe、BiTe、Bi1-xSb、(Bi1-xSbTeなどである。トポロジカル絶縁体は、高効率にスピン流を生成することが可能である。
【0064】
次いで、磁気抵抗効果素子100の製造方法について説明する。磁気抵抗効果素子100は、各層の積層工程と、各層の一部を所定の形状に加工する加工工程により形成される。各層の積層は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD)法、電子ビーム蒸着法(EB蒸着法)、原子レーザデポジッション法等を用いることができる。各層の加工は、フォトリソグラフィー等を用いて行うことができる。
【0065】
まず図5に示すように、絶縁体Inと電極E1上に、強磁性層91、非磁性層92、強磁性層93を順に積層する。絶縁体In及び電極E1の積層面は、例えば、化学機械研磨(CMP)で平坦化されている。
【0066】
次いで、図6に示すように、強磁性層91、非磁性層92、強磁性層93を所定の形状に加工する。加工により強磁性層91は第1強磁性層1、非磁性層92は非磁性層3、強磁性層93は第2強磁性層2となり、積層体10が得られる。その後、積層体10上に絶縁層In2、絶縁層In3を順に積層する。そして、積層体10上に積層された絶縁層In2、絶縁層In3の一部を化学機械研磨で除去し、第2強磁性層2が露出する。
【0067】
次いで、図7に示すように、絶縁層In3及び第2強磁性層2上に、磁性体94を積層する。そして、磁性体94の所定の位置に、マスク層95を積層する。マスク層95は、例えば、Ta,Wである。
【0068】
次いで、図8に示すように、マスク層95を介して磁性体94を加工し、磁性体20を形成する。そして、例えば、イオンビームデポジッション(IBD)法を用いて、z方向に対して傾斜した斜め方向からイオンビームB1を照射し、磁性体20に対して導電層96を成膜する。導電層96は、シャドウ効果により磁性体20の片側面に成膜される。
【0069】
次いで、図9に示すように、z方向からイオンビームB2を照射して導電層96の一部をエッチングする。イオンビームエッチング(IBE)により導電層96の不要部が除去され配線30が得られる。その後、磁性体20及び配線30の周囲に絶縁層In4を形成し、化学機械研磨(CMP)によりマスク層95を除去することで、磁気抵抗効果素子100が得られる。
【0070】
次いで、磁気抵抗効果素子100の動作について説明する。磁気抵抗効果素子100は、書き込み動作と読出し動作がある。
【0071】
磁気抵抗効果素子100へのデータの書き込み動作について説明する。まずデータを書き込みたい磁気抵抗効果素子100に接続される第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2をONにする。第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2をONにすると、配線30に電流Iが流れる。
【0072】
配線30に電流Iが流れると、スピンホール効果により第1スピンsp1が磁性体20に注入される。磁性体20の磁化M20は、第1スピンsp1が注入されることで生じるスピン軌道トルクを受けて反転する。磁性体20の磁化M20の反転の挙動は、磁性体20に注入されるスピンの配向方向によって異なる。磁性体20の磁化M20の配向方向と第1スピンsp1の配向方向とが平行又は反平行の関係にある場合、磁化M20を180°回転させようとするトルクが加わるため、無磁場化での磁化反転が可能である。磁性体20の磁化M20の配向方向と第1スピンsp1の配向方向とが直交する関係にある場合、磁化M20に加わるトルクは磁化M20を90°回転させようとするトルクとなり、安定的な磁化反転には外部磁場等の外力が必要となる。
【0073】
磁性体20と第2強磁性層2とは磁気的に結合しているため、磁化M20が反転すると、磁化M2が反転する。磁化M2が反転すると、第1強磁性層1の磁化M1との相対角が変化し、積層体10の抵抗値が変化する。磁気抵抗効果素子100は、積層体10の抵抗値に基づいてデータを記憶する。したがって、上記手順で磁気抵抗効果素子100へのデータ書き込みが完了する。
【0074】
磁気抵抗効果素子100からのデータの読出し動作について説明する。まずデータを読み出したい磁気抵抗効果素子100に接続される第3スイッチング素子Sw3及び第2スイッチング素子Sw2をONにする。第3スイッチング素子Sw3及び第2スイッチング素子Sw2をONにすると、積層体10のz方向に読出し電流が流れる。
【0075】
積層体10の抵抗値は、磁化M1と磁化M2とが、平行な場合と反平行な場合とで異なる。磁化M1と磁化M2とが平行な場合は、磁気抵抗効果素子100の抵抗値は低くなり、磁化M1と磁化M2とが反平行な場合は、磁気抵抗効果素子100の抵抗値は高くなる。磁気抵抗効果素子100の抵抗値は、オームの法則により電位差として出力される。したがって、上記手順で磁気抵抗効果素子100からのデータ読出しが完了する。
【0076】
第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子100は、磁化反転を担う磁性体20と抵抗変化を担う第2強磁性層2とが分かれているため、大きなMR比を有しつつ、無磁場下でも磁化反転可能である。
【0077】
また磁性体20がz方向に延びることで、磁性体20と配線30との接触面積を確保でき、多くのスピンを磁性体20に注入できる。また磁性体20がz方向に延びることで、形状異方性により磁性体20の磁化M20がz方向に配向しやすくなる。磁性体20が形状異方性を有すると、磁化M20の安定性が高まる。また磁性体20がz方向に配向すると、磁性体20の磁化方向と注入される第1スピンsp1との磁化方向が平行又は反平行となり、無磁場下でも磁化反転を行うことができる。
【0078】
「第2実施形態」
図10は、第2実施形態にかかる磁気記録アレイの特徴部分の平面図である。図10は、磁気抵抗効果素子101をyz平面で切断した断面である。磁気抵抗効果素子101は、配線31の形状が磁気抵抗効果素子100と異なる。図10において、図3と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
【0079】
配線31は、第1部分31Aと第2部分31Bとを有する。第1部分31Aは磁性体20の第1側面20s1に接続し、第2部分31Bは上面20uに接続している。
【0080】
スピンホール効果によって生じるスピンは、配線31の表面に沿う。第2部分31Bで生じる第3スピンsp3及び第4スピンsp4は、y方向に配向する。磁性体20には、第1スピンsp1及び第3スピンsp3が注入される。第3スピンsp3は磁化M20の磁化反転のきっかけを生み出し、磁化M20の磁化反転が容易になり、かつ、磁化反転に要する時間が短くなる。
【0081】
磁気抵抗効果素子101は、例えば、マスク層95を配線30と同じ材料とし、マスク層95を残すことで作製できる。
【0082】
また第2実施形態にかかる磁気抵抗効果素子101は、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子100と同様の効果が得られる。
【0083】
「第3実施形態」
図11は、第3実施形態にかかる磁気記録アレイの特徴部分の平面図である。図11は、磁気抵抗効果素子102をyz平面で切断した断面である。磁気抵抗効果素子102は、磁性体21及び配線32の形状が磁気抵抗効果素子100と異なる。図11において、図3と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
【0084】
磁性体21は、側面が積層体10の側面と連続し、上面から下面に向けて拡幅している。磁性体21は、例えば、積層体10と同時に加工されて作製される。
【0085】
配線32は、磁性体21の第1側面21s1及び第2強磁性層2の側面に接続されている。第1側面21s1と配線32との接触面積は、第2強磁性層2の側面と配線32との接触面積より大きい。配線32からスピンが第2強磁性層2に直接注入されることで、磁性体21の磁化M21を容易に反転させることができる。
【0086】
また第3実施形態にかかる磁気抵抗効果素子102は、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子100と同様の効果が得られる。
【0087】
「第4実施形態」
図12は、第4実施形態にかかる磁気記録アレイの特徴部分の平面図である。図12は、磁気抵抗効果素子103をyz平面で切断した断面である。磁気抵抗効果素子103は、中間層40を有する点が磁気抵抗効果素子100と異なる。図12において、図3と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
【0088】
中間層40は、第2強磁性層2と磁性体20との間にある。第2強磁性層2と磁性体20とは、中間層40を挟んで磁気的に結合している。磁気結合は、強磁性結合でも反強磁性結合でもよい。中間層40は、例えば、Ru、Ir、Rhからなる群から選択される少なくとも一つを含む。
【0089】
第4実施形態にかかる磁気抵抗効果素子103は、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子100と同様の効果が得られる。また中間層40を設けることで、製造プロセスが容易になり、磁気抵抗効果素子103を製造しやすくなる。
【0090】
「第5実施形態」
図13は、第5実施形態にかかる磁気記録アレイの特徴部分の平面図である。図13は、磁気抵抗効果素子104をyz平面で切断した断面である。磁気抵抗効果素子104は、第2配線50及び絶縁層In5を有する点が磁気抵抗効果素子100と異なる。図13において、図3と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
【0091】
第2配線50と絶縁層In5は、磁性体20と第2強磁性層2との間にある。第2配線50は、第2強磁性層2に接続されている。絶縁層In5は、第2強磁性層2と第2配線50との間にある。
【0092】
第2配線50は、導電性を有する材料であればよい。第2配線50は、例えば、Cu、Al、Agである。また第2配線50は、配線30と同様の材料でもよい。絶縁層In5は、絶縁体Inと同様の材料を用いることができる。
【0093】
磁気抵抗効果素子104は、データの書き込み及び読出しの挙動が磁気抵抗効果素子100と異なる。磁気抵抗効果素子104は、磁性体20が生み出す磁場が第2強磁性層2の磁化M20を反転させる。すなわち、磁気抵抗効果素子104は、データを書き込む際に、磁性体20が生み出す磁場を利用している点が異なる。また磁気抵抗効果素子104は、データを読み出す際に、第2配線50と電極E1との間に読出し電流を流す。第3スイッチング素子Sw3は、第2配線50に接続されている。
【0094】
第5実施形態にかかる磁気抵抗効果素子104は、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子100と同様の効果が得られる。また磁性体20と積層体10とが電気的に分離されていることで、書き込み電流が積層体10側に分岐することを抑制し、データの書き込み効率を高めることができる。その結果、磁気抵抗効果素子104は、書き込み電流の電流密度を下げることができる。
【0095】
「第6実施形態」
図14は、第6実施形態にかかる磁気記録アレイの特徴部分の平面図である。図14は、磁気抵抗効果素子105をyz平面で切断した断面である。磁気抵抗効果素子105は、酸化物層60を有する点が磁気抵抗効果素子100と異なる。図14において、図3と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
【0096】
酸化物層60は、磁性体20の上面20uに積層されている。酸化物層60は、例えば、AlO、MgO、SiO、HfO、TaO、WO、PtOである。酸化物層60に含まれる酸素は、磁性体20に含まれる電子をz方向に引き寄せ、磁性体20の電子構造を変え、磁化M20をz方向に強く配向させる。また酸化物層60は、界面垂直磁気異方性を誘起し、磁化M20を強くz方向に配向させる。磁化M20が強くz方向に配向すると、第2強磁性層2の磁化M2のz方向への配向性も強まり、積層体の磁気抵抗変化(MR比)が大きくなる。
【0097】
第6実施形態にかかる磁気抵抗効果素子105は、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子100と同様の効果が得られる。
【0098】
「第7実施形態」
図15は、第7実施形態にかかる磁気記録アレイの特徴部分の平面図である。図15は、磁気抵抗効果素子106のz方向からの平面図である。磁気抵抗効果素子106は、磁性体22の形状が磁気抵抗効果素子100と異なる。図15において、図4と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
【0099】
磁性体22は、配線30に沿ってx方向に延びる。磁性体22と配線30との接触面積が大きくなることで、多くのスピンを磁性体22に注入できる。また磁性体22に含まれる磁化量が大きくなり、第2強磁性層2の磁化反転を安定化できる。
【0100】
第7実施形態にかかる磁気抵抗効果素子106は、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子100と同様の効果が得られる。
【0101】
ここまで、第1実施形態から第3実施形態を基に、本発明の好ましい態様を例示したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではない。例えば、それぞれの実施形態における特徴的な構成を他の実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…第1強磁性層、2…第2強磁性層、2u,20u…上面、3,92…非磁性層、10…積層体、20,21,22…磁性体、20b…下面、20s1,21s1…第1側面、30,31,32…配線、31A…第1部分、31B…第2部分、40…中間層、50…第2配線、60…酸化物層、91,93…強磁性層、94…磁性体、95…マスク層、96…導電層、100,101,102,103,104,105,106…磁気抵抗効果素子、200…磁気記録アレイ、B1,B2…イオンビーム、Cm…共通配線、E1,E2,E3…電極、In…絶縁体、In1,In2,In3,In4,In5…絶縁層、M1,M2,M20,M21…磁化、st…段差、Wp…書き込み配線、Rp…読出し配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15