(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
A01G7/00 601C
A01G7/00 603
(21)【出願番号】P 2020157481
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 倫直
(72)【発明者】
【氏名】川島 哲文
(72)【発明者】
【氏名】水谷 敦司
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-157331(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131207(WO,A1)
【文献】特開2014-064479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 2/00- 2/38
A01G 5/00- 7/06
A01G 9/28
A01G 17/00-17/02
A01G 17/18
A01G 20/00-22/67
A01G 24/00-24/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培棚の栽培領域の一部の領域に光を照射する、移動可能な第1照射部と、
前記栽培棚の栽培領域の全部の領域に光を照射する、固定された第2照射部と、
前記第1照射部を移動させる制御を行う制御部と、
前記栽培領域に前記光の照射対象とする植物体を配置した状態で、当該植物体の生育過程における当該植物体の少なくとも一部を含む領域を撮影する撮影部と、
を備え、
前記制御部は、前記撮影部による撮影によって得られた画像を用いて、前記光が前記植物体の少なくとも一部に照射されるように前記第1照射部を移動させる制御を行い、かつ、前記植物体の少なくとも一部に対し、当該植物体に応じた光量の光を照射するように前記第1照射部を制御するにあたり、
前記撮影部による撮影によって得られた画像を用いて、前記植物体の少なくとも一部の位置及び面積を含む形態を特定し、
特定した形態を用いて、前記第1照射部により複数種類の強度の光を照射した場合の前記植物体の少なくとも一部の各強度の光における受光量を予測し、
予測した受光量を用いて、前記植物体内で生成される植物由来有用成分の生成量を推定し、
推定した生成量を用いて、前記光量を決定する、
光照射装置。
【請求項2】
前記第1照射部は、光合成のための光の波長帯域を除く波長帯域の光を照射し、
前記第2照射部は、光合成のための光の波長帯域の光を照射する、
請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記第1照射部は、前記栽培棚の栽培領域の上方において、当該栽培領域の一端部側と他端部側との間で移動可能とされている、
請求項1又は請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記第1照射部から照射する光の波長帯域は、当該光の強度分布において単一のピークを有する、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記第1照射部における光源は、発光ダイオードである、
請求項4に記載の光照射装置
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の生育に寄与することができる技術として、以下に示す技術があった。
【0003】
即ち、特許文献1には、植物栽培用の照明を備えた植物栽培システムが開示されている。この植物栽培システムは、前記照明の移動手段と、植物の高さを検知する植物高検知手段と、前記植物高検知手段の検知結果により該照明と該植物との距離が一定になるように前記移動手段を制御する照明位置制御手段と、を備えている。また、この植物栽培システムは、前記照明の照射条件を記憶する照射条件記憶手段と、前記照射条件記憶部に記憶された照射条件で該照明を制御する照明制御手段と、を備えている。
【0004】
また、特許文献2には、栽培床の上に照明灯を設置する植物栽培の照明装置が開示されている。この照明装置は、照明灯を支持する複数の支持部材と、前記支持部材を横に並列した状態で並び方向に移動可能に支持する略水平のガイドレールと、を備えている。
【0005】
また、特許文献3には、密閉型栽培工場内に設置され、植物やきのこ類などの栽培物を多数載置して栽培する多段式ラックに使用する植物栽培用人工光源が開示されている。この植物栽培用人工光源は、栽培物と対向し多段式ラックの段板下部にそれぞれ設けられる照明器具と、該照明器具を前記多段式ラックの長手方向に移動可能に保持するレールとからなる。また、この植物栽培用人工光源は、前記照明器具が所定の波長光を照射する光源を複数配置した矩形パネルであり、且つ該パネルが前記多段式ラックの各段板と略同幅と半分の長さに形成され、所定の時間毎に前記レールを介して移動して照射位置を変更する。
【0006】
更に、特許文献4には、植物を定植する培地が複数載置される定植パネルを複数段に収納する栽培棚、を備えた植物栽培装置が開示されている。この植物栽培装置は、前記定植パネルの上方に配置されて該定植パネルに定植された植物を上方から撮影するように構成されたカメラ部と、該カメラ部からの前記植物の画像を処理することにより該植物の生育幅を解析する生育幅解析部と、を備えている。また、この植物栽培装置は、前記植物の生育高さを検知する高さセンサ部と、前記定植パネルに定植された植物に光を照射する照明装置と、該照明装置を制御して前記植物に照射される光の量を調整する照明制御部と、を備えている。
【0007】
この植物栽培装置は、前記照明制御部が、前記植物の生育幅が所定の閾値を超えていないことを前記生育幅解析部の解析結果が示し、かつ、該植物の生育高さが所定の閾値を超えていないことを前記高さセンサ部が示している場合には、前記生育幅解析部による解析結果、及び/又は前記高さセンサ部による検知結果に基づいて前記植物に照射される光の量を調整する。そして、この植物栽培装置は、前記植物の生育幅が所定の閾値を超えていることを前記生育幅解析部の解析結果が示し、かつ、該植物の生育高さが所定の閾値を超えていることを前記高さセンサ部が示している場合には、前記生育幅解析部による解析結果や前記高さセンサ部による検知結果にかかわらず、前記植物に照射される光の量を所定量に減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-153691号公報
【文献】特開2009-106208号公報
【文献】特開2011-244740号公報
【文献】国際公開2017/131207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、植物は特定波長帯域の光を受けることで、遺伝子発現を促進して対応成分が生成されることや、植物体内に蓄積された成分の二重結合や修飾部位が変成すること等により、植物体内の含有成分量をコントロールすることができることが明らかになってきた。
【0010】
そして、これらの特性を生かして、植物の栽培の段階で特定波長帯域の光を照射し、産業での利用が可能な植物由来有用成分を増産する取り組みが活発化してきている。
【0011】
なお、ここでいう特定波長帯域の光とは、一般的な植物生育に利用される光合成波長帯域(400~500nm、600~700nm)以外の波長帯にある10~100nm帯域幅の単独、若しくは複数の光を表す。即ち、植物にはクロロフィル(葉緑素)と呼ばれる物質が組み込まれており、この物質を介して光エネルギーの授受を行う。このクロロフィルには2種類あり、一例として
図13に示すように、各々400~500nmの青色光と600~700nmの赤色光を吸収することが知られており、これらの波長帯域が光合成波長帯域となる。そして、上記特定波長帯域は、当該光合成波長帯域を除く波長帯域(一例として、200nm~2500nmの範囲内の波長帯域であり、紫外線~近赤外線の領域)とされている。
【0012】
しかしながら、特許文献1~特許文献4の各文献に記載の技術では、光合成波長帯域の光については考慮されているものの、上記特定波長帯域の光については何ら考慮されていないため、何れの技術においても、必ずしも植物由来有用成分を効果的に生産することができるとは限らない、という問題点があった。
【0013】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、植物由来有用成分を効果的に生産することができる光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の本発明に係る光照射装置は、栽培棚の栽培領域の一部の領域に光を照射する、移動可能な第1照射部と、前記栽培棚の栽培領域の全部の領域に光を照射する、固定された第2照射部と、前記第1照射部を移動させる制御を行う制御部と、前記栽培領域に前記光の照射対象とする植物体を配置した状態で、当該植物体の生育過程における当該植物体の少なくとも一部を含む領域を撮影する撮影部と、を備え、前記制御部は、前記撮影部による撮影によって得られた画像を用いて、前記光が前記植物体の少なくとも一部に照射されるように前記第1照射部を移動させる制御を行い、かつ、前記植物体の少なくとも一部に対し、当該植物体に応じた光量の光を照射するように前記第1照射部を制御するにあたり、前記撮影部による撮影によって得られた画像を用いて、前記植物体の少なくとも一部の位置及び面積を含む形態を特定し、特定した形態を用いて、前記第1照射部により複数種類の強度の光を照射した場合の前記植物体の少なくとも一部の各強度の光における受光量を予測し、予測した受光量を用いて、前記植物体内で生成される植物由来有用成分の生成量を推定し、推定した生成量を用いて、前記光量を決定する。
【0015】
請求項1に記載の本発明に係る光照射装置によれば、栽培棚の栽培領域の一部の領域に光を照射する、移動可能な第1照射部と、栽培棚の栽培領域の全部の領域に光を照射する、固定された第2照射部と、を備えることで、植物由来有用成分の生産に寄与することのできる光を第1照射部及び第2照射部の何れか一方で照射し、光合成に寄与することのできる光を第1照射部及び第2照射部の他方で照射することにより、植物由来有用成分を効果的に生産することができる。
また、請求項1に記載の本発明に係る光照射装置によれば、栽培領域に光の照射対象とする植物体を配置した状態で、当該植物体の生育過程における当該植物体の少なくとも一部を含む領域を撮影する撮影部による撮影によって得られた画像を用いて、光が植物体の少なくとも一部に照射されるように第1照射部を移動させる制御を行うことで、より効果的に植物由来有用成分を生産することができる。
また、請求項1に記載の本発明に係る光照射装置によれば、植物体の少なくとも一部に対し、当該植物体に応じた光量の光を照射するように第1照射部を制御することで、より効果的に植物由来有用成分を生産することができる。
更に、請求項1に記載の本発明に係る光照射装置によれば、撮影部による撮影によって得られた画像を用いて、植物体の少なくとも一部の位置及び面積を含む形態を特定し、特定した形態を用いて、第1照射部により複数種類の強度の光を照射した場合の植物体の少なくとも一部の各強度の光における受光量を予測し、予測した受光量を用いて、植物体内で生成される植物由来有用成分の生成量を推定し、推定した生成量を用いて、上記光量を決定することで、より効果的に植物由来有用成分を生産することができる。
【0016】
請求項2に記載の本発明に係る光照射装置は、請求項1に記載の光照射装置であって、前記第1照射部は、光合成のための光の波長帯域を除く波長帯域の光を照射し、前記第2照射部は、光合成のための光の波長帯域の光を照射する。
【0017】
請求項2に記載の本発明に係る光照射装置によれば、第1照射部によって光合成のための光の波長帯域を除く波長帯域の光を照射し、第2照射部によって光合成のための光の波長帯域の光を照射することで、生育対象とする植物体の成長に応じた当該植物体の位置に植物由来有用成分の生産に寄与することのできる光を照射することができる結果、より効果的に植物由来有用成分を生産することができる。
【0018】
請求項3に記載の本発明に係る光照射装置は、請求項1又は請求項2に記載の光照射装置であって、前記第1照射部は、前記栽培棚の栽培領域の上方において、当該栽培領域の一端部側と他端部側との間で移動可能とされている。
【0019】
請求項3に記載の本発明に係る光照射装置によれば、第1照射部を、栽培棚の栽培領域の上方において、当該栽培領域の一端部側と他端部側との間で移動可能とすることで、第1照射部を栽培棚の側方に設ける場合に比較して、生育対象とする植物体が複数である場合であっても、各植物体に対して効果的に光を照射することができる。
【0020】
請求項4に記載の本発明に係る光照射装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の光照射装置であって、前記第1照射部から照射する光の波長帯域は、当該光の強度分布において単一のピークを有する。
【0021】
請求項4に記載の本発明に係る光照射装置によれば、第1照射部から照射する光の波長帯域を、当該光の強度分布において単一のピークを有するものとすることで、より効果的に植物由来有用成分を生産することができる。
【0022】
請求項5に記載の本発明に係る光照射装置は、請求項4に記載の光照射装置であって、前記第1照射部における光源は、発光ダイオードであるものである。
【0023】
請求項5に記載の本発明に係る光照射装置によれば、第1照射部における光源を、発光ダイオードとすることで、第1照射部を低コスト、かつ、小型、かつ、低消費電力で構成することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、植物由来有用成分を効果的に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施形態に係る光照射システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る栽培棚の構成の一例を分解した状態で示す分解斜視図である。
【
図3】実施形態に係る栽培棚の構成の一例を示す斜視図である。
【
図4】実施形態に係る情報処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る特定波長帯域の光による植物由来有用成分の生成効率の説明に供する図であり、横軸を特定波長帯域の光の照射時間とし、縦軸を植物体内における植物由来有用成分の量の一例としたグラフである。
【
図6】実施形態に係る特定波長帯域の光による植物由来有用成分の生成効率の説明に供する図であり、植物由来有用成分の生成効率が不効率である場合の光の照射状態の一例を示す模式図である。
【
図7】実施形態に係る特定波長帯域の光による植物由来有用成分の生成効率の説明に供する図であり、植物由来有用成分の生成効率が、より効率的である場合の光の照射状態の一例を示す模式図である。
【
図8】実施形態に係る植物情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図9】実施形態に係る光照射処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態に係る光照射処理の説明に供する図であり、植物体の形状を葉単位で認識する場合の認識結果の一例を示す図である。
【
図11】実施形態に係る光照射処理の説明に供する図であり、植物体の葉単位での光の照射状態の解析結果の一例を示す図である。
【
図12】実施形態に係る栽培棚の他の構成の一例を示す側面図である。
【
図13】光合成波長帯域の説明に供する図であり、横軸を光の波長とし、縦軸を光の吸収量(相対値)の一例としたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0033】
まず、
図1~
図4を参照して、本実施形態に係る光照射システム90の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る光照射システム90のハードウェア構成の一例を示すブロック図であり、
図2は、本実施形態に係る栽培棚の構成の一例を分解した状態で示す分解斜視図である。また、
図3は、本実施形態に係る栽培棚の構成の一例を示す斜視図であり、
図4は、本実施形態に係る情報処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0034】
図1に示すように、本実施形態に係る光照射システム90は、情報処理装置10及び栽培棚50を含んで構成されている。なお、情報処理装置10の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の情報処理装置が挙げられる。
【0035】
本実施形態に係る情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16及び通信I/F部18はバスBを介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0036】
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、光照射プログラム13Aが記憶されている。光照射プログラム13Aは、光照射プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの光照射プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、光照射プログラム13Aを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、光照射プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0037】
また、記憶部13には、植物情報データベース13Bが記憶される。植物情報データベース13Bについては、詳細を後述する。
【0038】
一方、
図1に示すように、本実施形態に係る栽培棚50は、何れも後述する撮影部60、モータ70、第1照射部64、及び第2照射部58を含んで構成されている。撮影部60、モータ70、第1照射部64、及び第2照射部58は情報処理装置10の通信I/F部18に接続されている。従って、情報処理装置10のCPU11は、モータ70、第1照射部64、及び第2照射部58の各々の作動を制御することができ、かつ、撮影部60による撮影によって得られた撮影画像を示す画像データを取得することができる。
【0039】
次に、
図2及び
図3を参照して、本実施形態に係る栽培棚50の構成について詳細に説明する。
【0040】
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係る栽培棚50は、複数の脚部を備えた栽培棚本体52が備えられている。栽培棚本体52の上記複数の脚部の高さ方向の略中央部には、植物体30の栽培領域とされ、植物体30が設置される設置部54が設けられており、栽培棚本体52の高さ方向の上端部には、天板56が設けられている。なお、
図2及び
図3では、植物体30として、鉢植えの植物体を例示しているが、これに限定されるものではない。例えば、培養植物組織等の他の形態の植物体を植物体30として適用する形態としてもよい。
【0041】
天板56の下面には、栽培棚50の栽培領域の全領域に光合成のための光の波長帯域の光を照射する、上述した第2照射部58が固定的に取り付けられている。本実施形態に係る第2照射部58は、複数本(本実施形態では、3本)の長尺形状とされた光源部58A~58Cを含んで構成されている。
【0042】
本実施形態に係る光源部58A~58Cの各々には、一般的な植物生育に利用される光合成波長帯域(本実施形態では、400~500nm及び600~700nmの2種類の波長帯域)の光を射出する光源が設けられている。なお、本実施形態では、当該光源として、複数のLED(Light Emitting Diode)が用いられているが、これに限定されるものではない。上記光源として、例えば、蛍光灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプの何れか1つを適用する形態や、これらの光源にLEDを含めて複数種類の光源の組み合わせを適用する形態としてもよい。
【0043】
一方、本実施形態に係る栽培棚50の天板56の下面には、第2照射部58に加えて、栽培棚50の栽培領域に光の照射対象とする植物体30を配置した状態で、当該植物体30の生育過程における当該植物体30の葉を含む領域を撮影する撮影部60が固定的に取り付けられている。本実施形態では、撮影部60として一対のエリアCCD(Charge Coupled Device)60A及び60Bが用いられており、エリアCCD60A及びエリアCCD60Bによって植物体30に対する3次元撮影が可能とされている。
【0044】
このように、本実施形態では、一対のエリアCCD60A、60Bを用いて3次元撮影が可能な撮影部60を構成しているが、これに限定されるものではない。撮影部60として、例えば、エリアCCD60A、60Bに代えて、通常の撮影装置(所謂カメラ)を2台用いたものを撮影部60として適用する形態としてもよく、立体撮影装置(所謂立体カメラ)を1台用いたものを撮影部60として適用する形態としてもよい。また、撮影部60として、3次元レーザースキャナを用いる形態としてもよい。また、撮影部60は、必ずしも3次元撮影が可能であるものでなくてもよく、2次元撮影のみを行う場合には、例えば、通常の撮影装置を1台のみ撮影部60として適用する形態としてもよい。
【0045】
また、本実施形態に係る栽培棚50の天板56の下面には、第2照射部58及び撮影部60に加えて、一対のレール62に案内されて移動可能に構成された、上述した第1照射部64が設けられている。本実施形態に係る第1照射部64は、栽培棚50の栽培領域より照射面積が小さく、光合成のための光の波長帯域を除く波長帯域(以下、「特定波長帯域」という。)の光を、設置部54に設置された植物体30に照射する。
【0046】
本実施形態に係る第1照射部64には、上述した特定波長帯域の光を射出する光源として、複数(本実施形態では、4つ)の光源64A~64Dが設けられている。なお、本実施形態では、当該光源64A~64Dとしても、射出する光の波長帯域が、当該光の強度分布において単一のピークを有するLEDが用いられているが、これに限定されるものではない。この場合も、光源64A~64Dとして、例えば、蛍光灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプの何れか1つを適用する形態や、これらの光源にLEDを含めて複数種類の光源の組み合わせを適用する形態としてもよい。
【0047】
本実施形態に係る栽培棚50には、第1照射部64をレール62の長手方向に沿って往復移動させることのできる、上述したモータ70が設けられており、モータ70の回転駆動は、上述したようにCPU11によって制御される。
【0048】
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る情報処理装置10の機能的な構成について説明する。
図4に示すように、本実施形態に係る情報処理装置10は、制御部11Aを含む。情報処理装置10のCPU11が光照射プログラム13Aを実行することで、制御部11Aとして機能する。
【0049】
本実施形態に係る制御部11Aは、第1照射部64を移動させる制御を行う。特に、本実施形態に係る制御部11Aは、撮影部60による撮影によって得られた画像(本実施形態では、3次元画像)を用いて、光が植物体30の少なくとも一部(本実施形態では、植物体30の葉)に照射されるように第1照射部64を移動させる制御を行う。また、制御部11Aは、植物体30の葉に対し、当該植物体30に応じた光量の光を照射するように第1照射部64を制御する。
【0050】
更に、本実施形態に係る制御部11Aは、撮影部60による撮影によって得られた画像を用いて、植物体30の葉の位置及び面積を含む形態を特定する。また、本実施形態に係る制御部11Aは、特定した形態を用いて、第1照射部64により複数種類の強度の光を照射した場合の植物体30の葉の各強度の光における受光量を予測する。そして、本実施形態に係る制御部11Aは、予測した受光量を用いて、植物体30内で生成される植物由来有用成分の生成量を推定し、推定した生成量を用いて、上記光量を決定する。
【0051】
以下、
図5~
図7を参照して、本実施形態に係る制御部11Aによる第1照射部64の制御について、より詳細に説明する。
図5は、本実施形態に係る特定波長帯域の光による植物由来有用成分の生成効率の説明に供する図であり、横軸を特定波長帯域の光の照射時間とし、縦軸を植物体内における植物由来有用成分の量の一例としたグラフである。また、
図6は、本実施形態に係る特定波長帯域の光による植物由来有用成分の生成効率の説明に供する図であり、植物由来有用成分の生成効率が不効率である場合の光の照射状態の一例を示す模式図である。更に、
図7は、本実施形態に係る特定波長帯域の光による植物由来有用成分の生成効率の説明に供する図であり、植物由来有用成分の生成効率が、より効率的である場合の光の照射状態の一例を示す模式図である。
【0052】
上述したように、植物体は特定波長帯域の光を受けることで、遺伝子発現が促進されて対応成分が生成されることや、植物体内に蓄積された成分の二重結合や修飾部位が変成すること等により、植物体内の植物由来有用成分の量をコントロールすることができる。但し、一例として
図5に示すように、植物体に対して、特定波長帯域の光を過度に照射した場合、植物由来有用成分の量が減少したり、植物体の生育が阻害されたりする等といった問題が生じる場合がある。
【0053】
そこで、本実施形態に係る制御部11Aでは、植物体30の葉に対し、当該植物体30に応じた光量の光を照射するように第1照射部64を制御する。
【0054】
一方、本発明の発明者らの検討によれば、一例として
図6に示すように、生育過程の最終期のみに特定波長帯域の光を植物体に照射した場合に比較して、一例として
図7に示すように、植物体の生育に合わせて適切な量の特定波長帯域の光を照射したほうが、植物由来有用成分の収穫量が格段に増加することが判明している。
【0055】
そこで、本実施形態に係る制御部11Aは、植物体30の生育過程において、順次、当該植物体30に応じた好適な量の特定波長帯域の光を照射するように第1照射部64を制御する。
【0056】
次に、
図8を参照して、本実施形態に係る植物情報データベース13Bについて説明する。
図8は、本実施形態に係る植物情報データベース13Bの構成の一例を示す模式図である。
【0057】
図8に示すように、本実施形態に係る植物情報データベース13Bは、植物体30の葉の各々別に、葉ID(Identification)、日時、位置、面積、光照射量、及び推定成分含有量の各情報が関連付けられて記憶される。
【0058】
上記葉IDは、植物体30の葉の各々を識別するために当該葉の各々別に付与された情報であり、上記日時は、対応する情報を記憶した日時を示す情報であり、上記位置は、対応する葉の、対応する日時における位置を示す情報である。本実施形態では、一例として
図8に示すように、上記位置を示す情報として、x方向(本実施形態では、第1照射部64の移動方向)、x方向に水平な方向で、かつ直交する方向であるy方向、及び高さ方向であるz方向の3次元座標系の位置を適用している。但し、これに限定されるものではなく、例えば、x方向及びy方向のみの2次元座標系の位置を、上記位置を示す情報として適用する形態してもよく、z方向のみの1次元の座標系の位置を、上記位置を示す情報として適用する形態としてもよい。また、本実施形態では、上記位置として、対応する葉の中央の位置を適用しているが、これに限定されるものではない。例えば、対応する葉の、対応する植物体の茎から最も近い端部の位置や、最も遠い端部の位置を、上記位置として適用する形態としてもよい。
【0059】
また、上記面積は、対応する葉の面積を示す情報であり、上記光照射量は、対応する日時に、対応する葉に対して第1照射部64から照射した光の量を示す情報である。更に、上記推定成分含有量は、対応する照射量の第1照射部64からの光の照射によって、対応する葉に含有される植物由来有用成分(以下、「目標物質」という。)の推定量を示す情報である。なお、本実施形態では、
図5に示すように、推定成分含有量として、目標物質そのものの含有量と、目標物質の前駆体などの目標物質の生成速度に関係する物質の含有量と、の2種類の推定成分含有量を適用している。
【0060】
次に、
図9~
図11を参照して、本実施形態に係る情報処理装置10の作用を説明する。
図9は、本実施形態に係る光照射処理の一例を示すフローチャートであり、
図10は、本実施形態に係る光照射処理の説明に供する図であり、植物体の形状を葉単位で認識する場合の認識結果の一例を示す図である。また、
図11は、本実施形態に係る光照射処理の説明に供する図であり、植物体の葉単位での光の照射状態の解析結果の一例を示す図である。
【0061】
ユーザによって生育対象とする植物体30が栽培棚50における設置部54の所定位置(本実施形態では、設置部54の平面視中央部)に設置された後、光照射プログラム13Aの実行を開始する指示入力が情報処理装置10の入力部14を介して行われた場合に、情報処理装置10のCPU11が当該光照射プログラム13Aを実行することにより、
図9に示す光照射処理が実行される。なお、ここでは、錯綜を回避するために、生育対象とする植物体30が1つのみの場合について説明する。
【0062】
図9のステップ200で、CPU11は、撮影を開始するように撮影部60を制御し、ステップ202で、CPU11は、予め定められた第1光度で光の照射を開始するように第2照射部58を制御する。ステップ204で、CPU11は、第1照射部64を予め定められたホームポジションへ移動させるようにモータ70を制御する。なお、本実施形態では、上記ホームポジションとして、レール62の一端部の位置(本実施形態では、
図3に示す位置)を適用しているが、これに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0063】
ステップ206で、CPU11は、所定時間だけ待機した後、ステップ208で、CPU11は、撮影部60による撮影によって得られた3次元画像を示す画像データを撮影部60から取得する。ステップ210で、CPU11は、取得した画像データが示す3次元画像を解析し、従来既知の画像認識技術により、一例として
図10に模式的に示すように、当該3次元画像に含まれる植物体30の葉の位置及び面積を特定する。そして、CPU11は、特定した葉の位置及び面積を示す情報を、この時点の日時を示す情報と共に、植物情報データベース13Bの対応する記憶領域に記憶する。この際、CPU11は、新たな葉を植物情報データベース13Bに記憶する場合には、それまでに用いられていない葉IDを生成して、当該葉IDと、導出した位置及び面積の各情報とを上記日時を示す情報と共に、植物情報データベース13Bに新たに記憶する。
【0064】
ステップ212で、CPU11は、ステップ210の処理によって特定した、植物体30の葉の位置及び面積の各形態を用いて、一例として
図11に示すように、第1照射部64により複数種類の強度の光を照射した場合の植物体30の葉での各強度の光における受光量を予測する。なお、本実施形態では、当該受光量の予測を、モンテカルロ法に基づく光子シミュレーションを行うことにより行っているが、これに限定されるものではない。例えば、第1照射部64と葉の離隔距離および第1照射部64と葉の間の被陰する物体有無を把握することにより、上記受光量の予測を行う形態としてもよい。
【0065】
ステップ214で、CPU11は、ステップ212の処理によって予測した、各強度の光における受光量を用いて、植物体30の各葉によって生成される目標物質の生成量を推定する。なお、本実施形態では、当該目標物質の生成量の推定を、あらかじめ実験等で把握した受光量と遺伝子発現の促進速度との関係を示す数理モデルから予測することにより行っている。また、この際、CPU11は、上述したように、目標物質そのものの含有量と、目標物質の前駆体などの目標物質の生成速度に関係する物質の含有量と、の推定成分含有量を推定する。
【0066】
ステップ216で、CPU11は、植物体30の各葉に対して、最も効果的な状態で光を照射することができる、第1照射部64の移動可能な範囲内における位置を決定する。また、ステップ216で、CPU11は、決定した位置に第1照射部64を位置させた場合における、第1照射部64による植物体30に対する光の照射時間を決定する。なお、本実施形態では、上記第1照射部64の位置及び上記光の照射時間を、ステップ214の処理で推定した目標物質の生成量を用いて、目標物質の含有量が最も多くなると考えられる光の照射量を把握することにより決定している。但し、この形態に限らず、例えば、推定で得られた結果から、さらに光照射量と目標物質含有量の関係を表す数理モデルを構築し、最適な光の照射量を導出することにより、上記第1照射部64の位置及び上記光の照射時間を決定する形態としてもよい。
【0067】
ステップ218で、CPU11は、ステップ216の処理で決定した位置に第1照射部64を移動させるようにモータ70を制御し、ステップ220で、CPU11は、予め定められた第2光度で光の照射を開始するように第1照射部64の各光源64A~64Dを制御する。
【0068】
なお、本実施形態では、上記第1光度として、植物体30の種類に応じて、植物体30の生育に好適とされる光度を適用し、上記第2光度として、植物体30の種類に応じて、植物体30による目標物質が最も効率よく生成される光度を適用している。但し、この形態に限定されるものではなく、第1光度及び第2光度ともに、必要最低限の量の目標物質を生成することができ、かつ、第1照射部64及び第2照射部58による消費電力を可能な限り低減させることのできる光度を適用する形態としてもよい。
【0069】
ステップ222で、CPU11は、ステップ216の処理で決定した光の照射時間が経過するまで待機する。
【0070】
ステップ224で、CPU11は、以上の処理によって第1照射部64から植物体30の各葉に対して各々照射された光の照射量と、ステップ214の処理によって推定した目標物質の生成量とを、植物情報データベース13Bの対応する記憶領域に記憶する。ステップ226で、CPU11は、ステップ220の処理によって開始した第1照射部64からの光の照射を停止するように制御する。
【0071】
ステップ228で、CPU11は、予め定められた終了タイミングが到来したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ206に戻る一方、肯定判定となった場合はステップ230に移行する。なお、本実施形態では、上記予め定められた終了タイミングとして、植物体30による目標物質の生成量が予め定められた目標量に到達したタイミングを適用しているが、これに限定されるものではない。例えば、予め定められた植物体30の生育期間が終了したタイミング、ユーザによって光照射処理を終了させる旨の指示情報が入力部14を介して入力されたタイミング等を上記予め定められた終了タイミングとして適用する形態としてもよい。
【0072】
ステップ230で、CPU11は、ステップ202の処理によって開始した第2照射部58からの光の照射を停止するように制御する。ステップ232で、CPU11は、ステップ200の処理によって開始した撮影部60による撮影を停止するように制御した後、本光照射処理を終了する。
【0073】
以上の光照射処理により、植物体の生育過程において各葉に多くの重なりが順次生じた場合であっても、第1照射部64から特定波長帯域の光を好適に植物体30の各葉に照射させることができる。この結果、以上の光照射処理によれば、植物由来有用成分を効果的に生産することができる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る光照射システム90によれば、栽培棚50の栽培領域の一部の領域に光を照射する、移動可能な第1照射部64と、栽培棚50の栽培領域の全部の領域に光を照射する、固定された第2照射部58と、を備えている。従って、植物由来有用成分の生産に寄与することのできる光を第1照射部64及び第2照射部58の何れか一方で照射し、光合成に寄与することのできる光を第1照射部64及び第2照射部58の他方で照射することにより、植物由来有用成分を効果的に生産することができる。
【0075】
また、本実施形態に係る光照射システム90によれば、第1照射部64によって光合成のための光の波長帯域を除く波長帯域の光を照射し、第2照射部58によって光合成のための光の波長帯域の光を照射している。従って、生育対象とする植物体30の成長に応じた当該植物体30の位置に植物由来有用成分の生産に寄与することのできる光を照射することができる結果、より効果的に植物由来有用成分を生産することができる。
【0076】
また、本実施形態に係る光照射システム90によれば、第1照射部64を、栽培棚50の栽培領域の上方において、当該栽培領域の一端部側と他端部側との間で移動可能としている。従って、第1照射部64を栽培棚50の側方に設ける場合に比較して、生育対象とする植物体30が複数である場合であっても、各植物体30に対して植物体の形態に応じて効果的に光を照射することができる。
【0077】
また、本実施形態に係る光照射システム90によれば、第1照射部64から照射する光の波長帯域を、当該光の強度分布において単一のピークを有するものとしている。従って、より効果的に植物由来有用成分を生産することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る光照射システム90によれば、第1照射部64における光源を、発光ダイオードとしている。従って、第1照射部64を低コスト、かつ、小型、かつ、低消費電力で構成することができる。
【0079】
特に、第1照射部64の性能は経時的に劣化するため、特定波長帯域の照明光の照射による安定した植物由来有用成分の生産を行うためには、第1照射部64の性能のモニタリングが不可欠となる。第1照射部64を移動可能にして光源を集約することで、栽培棚全面に第1照射部64に代わる照射部を設置する場合に比べて、第1照射部64の維持管理を容易にし、また、その特定波長帯域の光の照射による植物由来有用成分の生産量の推定精度の向上にも寄与することができる。
【0080】
また、本実施形態に係る光照射システム90によれば、栽培領域に光の照射対象とする植物体30を配置した状態で、当該植物体30の生育過程における当該植物体30の少なくとも一部(本実施形態では、葉)を含む領域を撮影する撮影部60による撮影によって得られた画像を用いて、光が植物体30の少なくとも一部に照射されるように第1照射部64を移動させる制御を行っている。従って、より効果的に植物由来有用成分を生産することができる。
【0081】
また、本実施形態に係る光照射システム90によれば、植物体30の少なくとも一部に対し、当該植物体30に応じた光量の光を照射するように第1照射部64を制御している。従って、より効果的に植物由来有用成分を生産することができる。
【0082】
更に、本実施形態に係る光照射システム90によれば、撮影部60による撮影によって得られた画像を用いて、植物体30の少なくとも一部の位置及び面積を含む形態を特定し、特定した形態を用いて、第1照射部64により複数種類の強度の光を照射した場合の植物体30の少なくとも一部の各強度の光における受光量を予測し、予測した受光量を用いて、植物体30内で生成される植物由来有用成分の生成量を推定し、推定した生成量を用いて、上記光量を決定している。従って、より効果的に植物由来有用成分を生産することができる。
【0083】
なお、上記実施形態では、第1照射部64を水平方向に移動可能なものとした場合について説明したが、これに限定されない。例えば、第1照射部64を垂直方向に移動可能なものとする形態としてもよい。この場合、垂直方向に生育する植物に対して、より効率的に特定波長帯域の光を照射することができる。
【0084】
また、上記実施形態では、植物体30の少なくとも一部の領域として、植物体30の葉の領域を適用した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、植物体30の茎の領域を、植物体30の少なくとも一部の領域として適用してもよく、植物体30の葉の領域及び当該植物体30の茎の領域の組み合わせを植物体30の少なくとも一部の領域として適用する形態としてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、特定波長帯域の光を第1照射部64から照射し、光合成のための光の波長帯域の光を第2照射部58から照射する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、光合成のための光の波長帯域の光を第1照射部64から照射し、特定波長帯域の光を第2照射部58から照射する形態としてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、生育対象とする植物体を1つのみとした場合について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の植物体を生育対象とする形態としてもよい。この場合、栽培棚50の設置部54に当該複数の植物体を並べて設置し、各植物体の各々毎に、上述した光照射処理を実行する。なお、この場合の複数の植物体は同一種類の植物体でも異なる種類の植物体でも適用することが可能であり、異なる種類の植物体を同時に生育する場合は、植物体の種類に応じて、第1照射部64による光の照射時間や光度を、当該光を照射する植物体毎に切り替えるようにする。この場合、一度に複数の植物体を生育することができるため、より効率的に目標物質を生産することができる。
【0087】
また、上記実施形態では、栽培棚50の設置部54に植物体30を固定して配置し、第1照射部64を移動可能とする場合について説明したが、これに限定されない。例えば、栽培棚50の設置部54を移動可能に構成し、第1照射部64を固定して配置する形態としてもよく、栽培棚50の設置部54及び第1照射部64の双方とも移動可能に構成する形態としてもよい。要は、植物体30及び第1照射部64を相対的に移動可能とする形態であれば、如何なる形態も適用することができる。
【0088】
また、上記実施形態では、撮影部60を、栽培棚50の栽培領域の上方に対して、当該栽培領域の全域を撮影可能に設けた場合について説明したが、これに限定されない。例えば、一例として
図12に示すように、撮影部60を栽培棚50の側方に設ける形態としてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、第2照射部58の光源を、第1照射部64の移動方向に沿った方向に長い長尺形状とした場合について説明したが、これに限定されない。例えば、一例として
図12に示すように、第2照射部58の光源を、第1照射部64の移動方向とは直交する方向に沿った方向に長い長尺形状とする形態としてもよい。
【0090】
また、上記実施形態において、例えば、制御部11Aの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0091】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0092】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0093】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0094】
10 情報処理装置
11 CPU
11A 制御部
12 メモリ
13 記憶部
13A 光照射プログラム
13B 植物情報データベース
14 入力部
15 表示部
16 媒体読み書き装置
17 記録媒体
18 通信I/F部
30 植物体
50 栽培棚
52 栽培棚本体
54 設置部
56 天板
58 第2照射部
58A~58C 光源部
60 撮影部
60A、60B エリアCCD
62 レール
64 第1照射部
64A~64D 光源
70 モータ
90 光照射システム