(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】ステータ、モータ、およびコア体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20240716BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20240716BHJP
H02K 1/14 20060101ALI20240716BHJP
H02K 15/10 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H02K3/46 B
H02K3/34 B
H02K1/14 Z
H02K15/10
(21)【出願番号】P 2020162907
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】小菅 将洋
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-278684(JP,A)
【文献】特開2012-120264(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142693(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/181770(WO,A1)
【文献】特開2013-021880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
H02K 3/34
H02K 1/14
H02K 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状部、および前記環状部から径方向内側に延びる複数本の突極部を備えるコアと、
各突極部を当該突極部の軸線回りで覆う複数の被覆部を備える樹脂製のインシュレータと、
前記被覆部を介して各突極部に巻き回されたコイル線と、を有し、
各被覆部は、前記突極部が貫通する被覆部本体と、前記被覆部本体の前記径方向内側の端部分から前記コアの中心軸線に沿った中心軸線方向の両側に突出する鍔部と、を備え、
前記突極部の前記径方向内側の端面は、周方向の中心に、前記中心軸線方向に延びる溝を備え、
前記鍔部は、前記被覆部本体から前記中心軸線方向の一方に突出する第1鍔部と、前記被覆部本体から前記中心軸線方向の他方に突出する第2鍔部と、を備え、
前記第1鍔部の前記径方向内側を向く第1内側面は、周方向の中央に、前記中心軸線方向に延びる第1溝を備え、
前記第2鍔部の前記径方向内側を向く第2内側面は、周方向の中央に、前記中心軸線方向に延びる第2溝を備え、
前記コイル線は、前記鍔部の径方向外側に巻回され、
前記被覆部本体の前記径方向内側の端は、各突極部の前記径方向内側の内周側端面から前記径方向外側に所定距離以上離間し、
各鍔部の前記中心軸線方向の両端は、前記内周側端面よりも前記径方向外側に位置し、
前記鍔部は、前記鍔部の中心から周方向に離間するのに伴って前記中心軸線方向への突出量が小さくなるとともに、
前記鍔部の径方向の幅が、前記径方向外側に向かって広がるように、前記鍔部の中心から周方向に沿って徐々に広がり、
前記中心軸線方向から見た場合に、前記第1溝および前記第2溝は、前記突極部の溝と重なることを特徴とするステータ。
【請求項2】
前記コアは、前記中心軸線方向に積層された複数枚の板状コアからなり、
前記所定距離は、0.05mmであることを特徴とする請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記鍔部は、前記径方向外側を向く外側面が前記被覆部本体から離間するのに伴って前記径方向内側に傾斜することを特徴とする請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記コアは、前記中心軸線方向に積層された複数枚の板状コアからなり、
前記鍔部は、前記径方向外側を向く外側面の前記被覆部本体の側の端部分に、前記被覆部本体に向かって前記径方向内側に傾斜する外周面部分を備え、
前記所定距離は、一枚の前記板状コアの厚み寸法の10%であることを特徴とする請求項1に記載のステータ。
【請求項5】
前記コアは、単一の部材であり、
前記所定距離は、0.05mmであることを特徴とする請求項1に記載のステータ。
【請求項6】
前記被覆部本体の前記径方向内側の端と前記内周側端面とが径方向で離間する離間距離は、前記所定距離と前記コイル線の直径とを合計した合計寸法以下であることを特徴とする請求項2から5のうちのいずれか一項に記載のステータ。
【請求項7】
請求項1から6のうちのいずれか一項に記載のステータと、
マグネットを備え、複数の前記突極部の前記径方向内側に配置されたロータと、
を有することを特徴とするモータ。
【請求項8】
前記ロータの外周側で前記ステータを覆う樹脂封止部材を備え、
前記樹脂封止部材は、前記ロータの前記径方向外側で前記内周側端面および前記被覆部の前記径方向内側に位置する環状部分を備えることを特徴とする請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
金型のキャビティに、環状部および当該環状部から径方向内側に延びる複数本の突極部を有するコアを配置して前記キャビティに樹脂を充填し、各突極部が貫通する被覆部本体および当該被覆部本体の前記径方向内側の端部分から前記コアの中心軸線に沿った中心軸線方向の両側に突出する鍔部を備える複数の被覆部を有するインシュレータを前記コアと一体に形成するコア体の製造方法において、
前記突極部の前記径方向内側の端面は、周方向の中心に、前記中心軸線方向に延びる溝を備え、
前記鍔部は、前記被覆部本体から前記中心軸線方向の一方に突出する第1鍔部と、前記被覆部本体から前記中心軸線方向の他方に突出する第2鍔部と、を備え、
前記第1鍔部の前記径方向内側を向く第1内側面は、周方向の中央に、前記中心軸線方向に延びる第1溝を備え、
前記第2鍔部の前記径方向内側を向く第2内側面は、周方向の中央に、前記中心軸線方向に延びる第2溝を備え、
前記鍔部は、前記鍔部の中心から周方向に離間するのに伴って前記中心軸線方向への突出量が小さくなるとともに、
前記鍔部の径方向の幅が、前記径方向外側に向かって広がるように、前記鍔部の中心から周方向に沿って徐々に広がり、
前記中心軸線方向から見た場合に、前記第1溝および前記第2溝は、前記突極部の溝と重なり、
前記キャビティの内壁面において、前記被覆部本体の前記径方向内側の端、および各被覆部本体の前記径方向内側の端に連続する各鍔部の内側面を成形するための内壁面部分は、各突極部の前記径方向内側の内周側端面から前記コアの径方向外側に所定距離以上離間し、前記中心軸線と平行に延びることを特徴とするコア体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアおよびインシュレータとからなるコア体とコイル線とを備えるステータ、およびモータに関する。また、コア体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータと、ロータの外周側に配置されたステータとを有するモータは、特許文献1に記載されている。同文献のステータは、環状部、および環状部から径方向内側に延びる複数本の突極部を有するコアと、各突極部を覆う複数の被覆部とを備える樹脂製のインシュレータと、被覆部を介して各突極部に巻き回されたコイル線と、を備える。インシュレータの各被覆部は、突極部が貫通する筒部と、筒部の径方向内側の端部分から筒部の外周側に突出する鍔部と、を備える。コイル線は、胴部の外周側において、鍔部の径方向外側に巻き回されている。同文献において、ステータは、樹脂によりモールドされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイル線は、所定の張力が付与された状態で被覆部に巻回される。従って、コイル線を被覆部に巻回したときに、コイル線にかかる張力によって、被覆部の鍔部が径方向内側に付勢されて、インシュレータの内径(複数の被覆部の内周側端面からなる内径)が小さくなる場合がある。例えば、各被覆部の鍔部が、径方向内側に傾斜するなどして、インシュレータの内径が小さくなる。ここで、鍔部が径方向内側に傾斜することによって鍔部が突極部よりも径方向内側に突出すると、鍔部とロータとが干渉して、鍔部がロータの回転を阻害する可能性がある。
【0005】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、ロータとコイル線を巻回したインシュレータとの干渉を防止或いは抑制できるステータを提供することにある。また、ロータとコイル線を巻回したインシュレータとの干渉を防止或いは抑制できるモータを提供することにある。さらに、コイル線を巻回したときに、インシュレータとロータとの干渉を防止或いは抑制できるコア体の製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のステータは、環状部、および前記環状部から径方向内側に延びる複数本の突極部を備えるコアと、各突極部を当該突極部の軸線回りで覆う複数の被覆部を備える樹脂製のインシュレータと、前記被覆部を介して各突極部に巻き回されたコイル線と、を有し、各被覆部は、前記突極部が貫通する被覆部本体と、前記被覆部本体の前記径方向内側の端部分から前記コアの中心軸線に沿った中心軸線方向の両側に突出する鍔部と、を備え、前記コイル線は、前記鍔部の径方向外側に巻回され、前記被覆部本体の前記径方向内側の端は、各突極部の前記径方向内側の内周側端面から前記径方向外側に所定距離以上離間し、各鍔部の前記中心軸線方向の両端は、前記内周側端面よりも前記径方向外側に位置することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、インシュレータにおいてコアの突極部を覆う各被覆部は、各突極部を貫通させる被覆部本体と、被覆部本体の径方向内側の端部分から中心軸線方向に突出する鍔部と、を備える。コイル線は、被覆部における鍔部の径方向外側に巻回される。ここで
、被覆部本体は、各突極部の内周側端面から径方向外側に所定距離以上離間する。従って、各被覆部を介して各突極部にコイル線を巻回したときにコイル線にかかる張力によって鍔部が付勢されて径方向内側に傾斜した場合でも、鍔部の中心軸線方向の両端を内周側端面よりも径方向外側に位置させることができる。よって、ステータの径方向内側にロータを配置したときに、ロータと、コイル線を巻回したインシュレータとの干渉を防止或いは抑制できる。
【0008】
本発明において、前記コアは、前記中心軸線方向に積層された複数枚の板状コアからなり、前記所定距離は、0.05mmであるものとすることができる。このようにすれば、各被覆部を介して各突極部にコイル線を巻回したときに、コイル線にかかる張力によって鍔部が付勢されて径方向内側に傾斜した場合でも、各鍔部の中心軸線方向の両端がコアの内周側端面よりも内周側に突出することを防止できる。
【0009】
ここで、コアが複数枚の板状コアを積層した積層コアからなる場合には、コイル線を被覆部に巻回したときに、コイル線から被覆部を介してコアにかかる圧力によって、積層された複数の板状コアの位置ズレが矯正されて、コアの内径寸法が小さくなることがある。すなわち、コイル線を巻回した後の各突極部の内周側端面が、コイル線を巻回する前と比較して、ごく僅かに、径方向内側に移動することがある。また、コアが複数枚の板状コアを積層した積層コアからなる場合には、各板状コアの製造時に、突極部の内周側端面を構成する各板状コアの内周端にダレが発生して、各板状コアの内周端の寸法精度が低下する場合がある。ダレとは、板状コアの内周端にバリが発生している状態や、板状コアの内周端のエッジが直角に形成されていない状態の総称である。ダレは、板状コアの厚み寸法が増加するのに伴って、大きくなる。ここで、発明者等は、鋭意検討の結果、これらの現象を考慮した場合において、所定距離を0.5mm以上に設定すれば、コイル線にかかる張力によって鍔部が付勢されて径方向内側に傾斜した場合でも、鍔部の中心軸線方向の両端が内周側端面よりも径方向外側に位置させることができることを確認した。
【0010】
本発明において、前記鍔部は、前記径方向外側を向く外側面が前記被覆部本体から離間するのに伴って前記径方向内側に傾斜するものとすることができる。このようにすれば、金型を利用した射出成形によってインシュレータを製造する際に、成形品を離型させることが容易となる。ここで、鍔部の外側面が筒部から外周側に向かって径方向内側に傾斜する場合には、コイル線にかかる張力によって鍔部が径方向内側に付勢されやすくなる。また、鍔部の先端側が薄くなるので、鍔部が傾斜して、その先端側が径方向内側に移動しやすくなる。しかし、鍔部がこのような形状を備える場合でも、所定距離を0.5mmに設定すれば、コイル線を巻回したときに、鍔部の中心軸線方向の両端が内周側端面よりも径方向外側に位置させることができる。
【0011】
本発明において、前記コアは、前記中心軸線方向に積層された複数枚の板状コアからなり、前記鍔部は、前記径方向外側を向く外側面の前記被覆部本体の側の端部分に、前記被覆部本体に向かって前記径方向内側に傾斜する外周面部分を備え、前記所定距離は、一枚の前記板状コアの厚み寸法の10%であるものとすることができる。
【0012】
鍔部の外側面の被覆部本体の側の端部分に、筒部に向かって径方向内側に傾斜する外周面部分を備えれば、コイル線を鍔部の径方向外側に巻回したときに、コイル線にかかる張力によって鍔部が径方向内側に付勢される力を分散させることができる。従って、鍔部がこのような外周面部分を備えていない場合と比較して、鍔部の先端側が径方向内側に傾斜することを抑制できる。ここで、本発明者等は、鋭意検討の結果、鍔部の外側面の形状、コイル線の巻回時におけるコアの内径寸法の縮小、および板状コアの成形時のダレに起因する寸法精度の低下を考慮した場合に、所定距離を板状コアの厚み寸法の10%に設定すれば、コイル線にかかる張力によって鍔部が付勢されて径方向内側に傾斜した場合でも、
鍔部の中心軸線方向の両端が内周側端面よりも径方向外側に位置させることができることを確認した。
【0013】
本発明において、前記コアは、単一の部材であり、前記所定距離は、0.05mmであるものとすることができる。コアが単一の部材である場合には、コアの厚みは、同一形状のコアを複数枚の板状コアを積層して構成する場合の板状コアの厚みと比較して、大きくなる。従って、コアが単一の部材である場合には、板状コアと比較して、コアの内周側の端に発生するダレが大きくなる。ここで、本発明者等は、鋭意検討の結果、単一の部材からなるコアのダレの大きさを考慮した場合に、所定距離を0.5mmに設定すれば、コイル線にかかる張力によって鍔部が付勢されて径方向内側に傾斜した場合でも、鍔部の中心軸線方向の両端が内周側端面よりも径方向外側に位置させることができることを確認した。
【0014】
本発明において、前記被覆部本体の前記径方向内側の端と前記内周側端面とが径方向で離間する離間距離は、前記所定距離と前記コイル線の直径とを合計した合計寸法以下であるものとすることができる。すなわち、離間距離は、所定距離以上、かつ、合計寸法以下とすることができる。このようにすれば、被覆部がコアの内周側端面から径方向外側に離間しすぎることがない。従って、コアとインシュレータとからなるコア体が、径方向で大型化することを防止或いは抑制できる。
【0015】
次に、本発明のモータは、上記のステータと、マグネットを備え、複数の前記突極部の前記径方向内側に配置されたロータと、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、ステータの径方向内側に配置されたロータと、コイル線が巻回されたインシュレータとが干渉することを防止或いは抑制できる。
【0017】
本発明において、前記ロータの外周側で前記ステータを覆う樹脂封止部材を備え、前記樹脂封止部材は、前記ロータの前記径方向外側で前記内周側端面および前記被覆部の前記径方向内側に位置する環状部分を備えるものとすることができる。このようにすれば、ステータを液密に保護することができる。ここで、コイル線にかかる張力によって被覆部の鍔部が径方向内側に傾斜して鍔部の中心軸線方向の両端が内周側端面よりも径方向外側に位置すると、鍔部の先端の周辺において樹脂封止部材の環状部分が薄くなる。従って、鍔部の先端の周辺において、樹脂封止部材が欠けるなどのショートモールドが発生しやすくなる。これに対して、本例では、各鍔部の中心軸線方向の両端がコアの内周側端面よりも内周側に突出することが防止されているので、ショートモールドが発生することを抑制できる。
【0018】
また、本発明は、金型のキャビティに、環状部および当該環状部から径方向内側に延びる複数本の突極部を有するコアを配置して前記キャビティに樹脂を充填し、各突極部が貫通する被覆部本体および当該被覆部本体の前記径方向内側の端部分から前記コアの中心軸線に沿った中心軸線方向の両側に突出する鍔部を備える複数の被覆部を有するインシュレータを前記コアと一体に形成するコア体の製造方法において、前記キャビティの内壁面において、前記被覆部本体の前記径方向内側の端、および各被覆部本体の前記径方向内側の端に連続する各鍔部の内側面を成形するための内壁面部分は、各突極部の前記径方向内側の内周側端面から前記コアの径方向外側に所定距離以上離間し、前記中心軸線と平行に延びることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、コアとインシュレータとからなるコア体を、インサート成形により製造する。従って、コアの突極部が貫通する被覆部をコアと一体に形成できる。また、キャビティの内壁面において、各被覆部本体の径方向内側の端および各鍔部の内側面を成形す
るための内壁面部分は、コアの中心軸線と平行で、各突極部の内周側端面から径方向外側に所定距離以上離間する。従って、コア体が製造されたときに、インシュレータの各被覆部は、コアの各突極部の内周側端面から径方向外側に所定距離以上離間する位置で、各突極部を覆う。従って、各被覆部を介して各突極部にコイル線を巻回したときに、コイル線にかかる張力によって鍔部が付勢されて径方向内側に傾斜した場合でも、鍔部の中心軸線方向の両端がコアの内周側端面よりも径方向外側に位置させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、インシュレータの被覆部本体は、コアの各突極部の内周側端面から径方向外側に所定距離以上離間する位置で、各突極部を覆う。これにより、各被覆部を介して各突極部にコイル線を巻回したときにコイル線にかかる張力によって鍔部が径方向内側に傾斜した場合でも、鍔部の中心軸線方向の両端を内周側端面よりも径方向外側に位置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図9】鍔部の形状を変更した変形例のコア体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータを説明する。
【0023】
(全体構成)
図1は、モータの斜視図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図3は、ステータの斜視図である。
図4は、コア体の斜視図である。
図5はコアの斜視図である。
図6はインシュレータの斜視図である。
図7は、
図4のB-B線断面図である。
【0024】
本例のモータ1は、3相のDCブラシレスモータである。モータ1は、ポンプやコンプレッサなどの駆動源として使用される。
図2に示すように、モータ1は、回転軸5を備えるロータ6と、ロータ6の外周側に配置されたステータ10と、を備える。また、モータ1は、ロータ6およびステータ10を内部に収容するハウジング11を備える。
図1、
図2に示すように、回転軸5の一方側の端部は、ハウジング11から外側に露出する。以下の説明では、回転軸5の軸線に沿った方向を中心軸線方向Xとする。また、中心軸線方向Xの一方側を第1方向X1、他方側を第2方向X2とする。第1方向X1は、回転軸5が露出している側とは反対側であり、モータ1の反出力側である。第2方向X2は、回転軸5が露出している側であり、モータ1の出力側である。また、回転軸5と直交する方向を径方向、回転軸5回りの方向を周方向とする。
【0025】
(ロータ)
ロータ6は、回転軸5と、回転軸5を囲む円環状のマグネット7を備える。マグネット7は、周方向に分極着磁されている。
【0026】
(ステータ)
ステータ10は、マグネット7の径方向外側に位置するコア15と、コア15に密着す
る樹脂製のインシュレータ16と、備える。
図2から
図4に示すように、コア15とインシュレータ16とはコア体17を構成する。また、ステータ10は、
図2、
図3に示すように、インシュレータ16を介してコア15に巻回されたコイル線18と、インシュレータ16に固定されて第1方向X1に突出する3本の端子ピン19を備える。3本の端子ピン19には、コイル線18が接続されている。
【0027】
コア15は、磁性材料からなる。
図5に示すように、コア15は、環状部20、および環状部20から径方向内側に延びる6本の突極部21を備える。コア15はロータ6と同軸に配置される。コア15の中心軸線Lは、ロータ6の回転軸5の軸線と一致する。従って、コア15の中心軸線Lに沿った方向は、中心軸線方向Xである。中心軸線方向Xにおけるコア15の厚さは一定である。
【0028】
環状部20は、略6角形の枠体である。各突極部21は、略6角形の枠体の各辺の中央部分から径方向内側に突出する。各突極部21は、径方向に延びる腕部22と、腕部22の先端から周方向の両側に広がる広がり部23と、を備える。コア15の内周側端面15a、すなわち、広がり部23の内周側の端面は、中心軸線Lを中心とする円弧の湾曲面である。広がり部23は、周方向の両端に向かって径方向の厚みが薄くなる。各内周側端面15aは、周方向の中心に、中心軸線方向Xに延びる溝24を備える。溝24は、内周側端面15aの第1方向X1の端から第2方向X2の端に達する。
【0029】
図2に示すように、本例では、コア15は、中心軸線方向Xに積層された複数枚の板状コア14からなる。各板状コア14は、互いに同一の形状を備える。中心軸線方向Xにおける板状コア14の厚み寸法Hは、0.2mmである。コア15は、35枚の板状コア14を備える。
【0030】
図4、
図6に示すように、インシュレータ16は、コア15の環状部20を覆う環状被覆部30と、環状被覆部30から内周側に突出して各突極部21を当該突極部21の軸線回りで覆う複数の被覆部31と、を備える。環状被覆部30は、コア15の環状部20を、径方向内側、径方向外側、第1方向X1、および第2方向X2から覆う。環状被覆部30は、中心軸線方向Xから見た場合に、輪郭形状が略六角形の六角形部分30aと、輪郭形状が円形の円形部分30bとを備える。円形部分30bは、六角形部分30aの第1方向X1に連続する。円形部分30bの外周面には、周方向に延びる環状溝30cが、複数本、設けられている。
【0031】
図6に示すように、各被覆部31は、突極部21が貫通する被覆部本体35と、被覆部本体35の径方向内側の端部分から中心軸線方向Xの両側に突出する鍔部36と、を備える。被覆部本体35は、突極部21の腕部22を囲む筒部分37と、筒部分37から周方向の両側に延びて広がり部23を径方向外側から覆う外側被覆部分38と、筒部分37から広がり部23の第1方向X1の端面に沿って径方向内側および周方向の両側に延びて当該広がり部23を第1方向X1から覆う第1被覆部分39と、筒部分37から広がり部23の第2方向X2の端面に沿って径方向内側および周方向の両側に延びて当該広がり部23を第2方向X2から覆う第2被覆部分40と、を備える。
図4に示すように、各突極部21の内周側端面15aおよび周方向の両側の端面15b、15cは、被覆部本体35によって覆われていない。すなわち、各突極部21の内周側端面15aおよび周方向の両側の端面15b、15cは、被覆部本体35から露出している。
【0032】
鍔部36は、第1被覆部分39から第1方向X1に突出する第1鍔部41と、第2被覆部分40から第2方向X2に突出する第2鍔部42と、を備える。第1鍔部41において径方向内側を向く第1内側面41a、および第1被覆部分39の径方向内側の端面39aは、中心軸線Lを中心とする円弧の湾曲面である。第1内側面41aおよび端面39aは
、周方向の中央に、中心軸線方向Xに延びる第1溝43を備える。第2鍔部42において径方向内側を向く第2内側面42a、および第2被覆部分40の径方向内側の端面40aは、中心軸線Lを中心とする円弧の湾曲面である。第2内側面42aおよび端面40aは、周方向の中央に、中心軸線方向Xに延びる第2溝44を備える。コア体17を中心軸線方向Xから見た場合に、第1溝43および第2溝44は、コア15の溝24と重なる。
【0033】
第1鍔部41は、第1溝43から周方向の両側に離間するのに伴って第1方向X1への突出量が小さくなる。また、第1鍔部41は、第1溝43から周方向の両側に離間するのに伴って径方向外側に向かって広がる。これにより、第1鍔部41は、第1溝43から周方向の両側に離間するのに伴って径方向で厚くなる。第1鍔部41において径方向外側を向く第1外側面41bは、第1方向X1(被覆部本体35から離間する方向)に向かって径方向内側に傾斜する。本例において、第1外側面41bは、テーパー面である。すなわち、第1外側面41bは、中心軸線L回りを円弧に湾曲するとともに、第1方向X1に向かって径方向内側に傾斜する。
【0034】
第2鍔部42は、第1鍔部41と同様の形状を備える。すなわち、第2溝44から周方向の両側に離間するのに伴って第2方向X2への突出量が小さくなる。また、第2鍔部42は、第2溝44から周方向の両側に離間するのに伴って径方向外側に広がる。これにより、第2鍔部42は、第2溝44から周方向の両側に離間するのに伴って径方向で厚くなる。第2鍔部42において径方向外側を向く第2外側面42bは、第2方向X2(被覆部本体35から離間する方向)に向かって径方向内側に傾斜する。本例において、第2外側面42bは、テーパー面である。すなわち、第2外側面42bは、中心軸線L回りを円弧に湾曲するとともに、第2方向X2に向かって径方向内側に傾斜する。
【0035】
図7に示すように、被覆部本体35の径方向内側の端35aは、各突極部21の内周側端面15aから径方向外側に所定距離以上離間する。すなわち、被覆部本体35の径方向内側の端35aと突極部21の内周側端面15aとの離間距離O(所定距離)は、0.05mmである。また、離間距離Oは、所定距離(離間距離O)とコイル線18の直径Dとを合計した合計寸法以下である。なお、
図7では、被覆部本体35の径方向内側の端35aが突極部21の内周側端面15aから径方向外側にオフセットされていることを明らかになるように、他の図と比較して、この部分を誇張して示す。
【0036】
ここで、コイル線18の直径Dは、0.8mmである。コイル線18は、
図2、
図3に示すように、鍔部36(第1鍔部41および第2鍔部42)の径方向外側に巻回される。コイルが被覆部31を介して突極部21に巻回された状態では、コイル線18が巻回された巻回部は、径方向で鍔部36と環状被覆部30との間に位置する。
【0037】
(ハウジング)
図1に示すように、ハウジング11は、ステータ10を覆う樹脂封止部材50と、樹脂封止部材50に第2方向X2から被せられた隔壁部材51と、を備える。樹脂封止部材50からは、各端子ピン19の先端側が第1方向X1に突出する。樹脂封止部材50は、ステータ10を樹脂でモールドすることによって形成される。
【0038】
図2に示すように、樹脂封止部材50は、ロータ6の外周側で、コア体17、およびコイル線18を覆う筒状の第1封止部53と、第1封止部53の第1方向X1の筒状封止部の第1方向X1の端を封鎖する円盤形状の第2封止部54と、を備える。第1封止部53は、ロータ6の外周側で、コア15の内周側端面15aおよびインシュレータ16の被覆部31よりも内周側に位置する環状部分55を備える。また、第1封止部53は、その中心孔の第1方向X1の端部分で第1軸受け部材57を保持する。第1軸受け部材57は、付勢部材58により第2方向X2に付勢されている。本例では、第1軸受け部材57は、
ベアリング軸受であり、付勢部材58は、コイルバネである。
【0039】
隔壁部材51は、樹脂製である。隔壁部材51は、中心軸線方向Xから見た場合に、円形であり、その中央に貫通孔51aを備える。また、隔壁部材51は、第2方向X2の端面に、貫通孔51aを囲む円形凹部59を備える。円形凹部59には、第2軸受け部材60が保持されている。
【0040】
ロータ6は、回転軸5の第1方向X1の端部分が、第1軸受け部材57を介して樹脂封止部材50に支持される。また、ロータ6は、回転軸5の第2方向X2の端部分が、第2軸受け部材60を介して隔壁部材51に支持される。これにより、ロータ6は、中心軸線L回りに回転可能な状態でハウジング11に保持される。回転軸5の第2方向X2の端部分は、隔壁部材51の貫通孔51aを介して、ハウジング11から外側に突出する。
【0041】
(被覆部本体の径方向内側の端と突極部の内周側端面との間の離間距離)
ここで、被覆部本体35の径方向内側の端35aと突極部21の内周側端面15aとの間の離間距離O(設定距離)は、(1)コイル線18の巻回時におけるインシュレータ16の内径寸法の縮小、(2)コイル線18の巻回時におけるコア15の内径寸法の縮小、および、(3)板状コア14の成形時のダレに起因する寸法精度の低下を考慮して設定されている。
【0042】
そもそも、インシュレータ16は、所定の剛性を備えるように設計されており、被覆部31にコイル線18が巻回されたときに、ほとんど変形しない。しかし、巻回時にコイル線18にかかる張力によっては、鍔部36が径方向内側に付勢されることにより、インシュレータ16の内径寸法が小さくなる場合がある。例えば、鍔部36が径方向内側に傾斜するなどして、インシュレータ16の内径寸法が小さくなる場合がある。インシュレータ16の内径寸法とは、複数の被覆部31の最も径方向内側に位置する部位によって規定される仮想の円の内径(最内径)の寸法である。
【0043】
また、コア15が複数枚の板状コア14を積層した積層コアである場合には、コイル線18を被覆部31に巻回したときに、コイル線18から被覆部31を介してコア15にかかる圧力によって、積層された複数の板状コア14の位置ズレが矯正されて、コア15の内径寸法が小さくなることがある。すなわち、コイル線18を巻回した後の各突極部21の内周側端面15aは、コイル線18を巻回する前と比較して、ごく僅かに、径方向内側に移動して、コア15の内径寸法が小さくなる場合がある。コア15の内径寸法とは、複数の板状コア14の内周側端面において最も径方向内側に位置する部位によって規定される仮想の円の内径(最内径)の寸法である。
【0044】
ここで、コア15の内径寸法が変化量は、インシュレータ16の内径寸法が変化する変化量と比較して、小さい。以下の表1は、コイル線18を所定の張力でインシュレータ16に巻回したときに、コイル線18を巻回する前と比較して、コア15の最内径(内径寸法)、およびインシュレータ16の最内径(内径寸法)が変化する変化量を示す。変化量の単位は、mmである。なお、本例では、コイル線18は、50Nから60Nの張力が付与された状態で巻き回される。
【0045】
【0046】
さらに、コア15が複数枚の板状コア14を積層した積層コアからなる場合には、各板状コア14の製造時に、突極部21の内周側端面15aを構成する各板状コア14の内周端にダレが発生して、各板状コア14の内周端の寸法精度が低下する場合がある。板状コア14は、磁性材料を溶解させて型に流し込んで固めることにより製造される。ダレとは、板状コア14の内周端にバリが発生している状態や、板状コア14の内周端のエッジが直角に形成されていない状態の総称である。ダレは、板状コア14の厚み寸法Hが増加するのに伴って、大きくなる。
【0047】
ここで、発明者等は、鋭意検討の結果、これらの現象を考慮した場合において、離間距離Oを0.5mmに設定すれば、コイル線18にかかる張力によって被覆部31の鍔部36が付勢されて径方向内側に傾斜した場合でも、鍔部36の中心軸線方向Xの両端が内周側端面15aよりも径方向外側に位置させることができることを確認した。
【0048】
(コア体の製造方法)
図8は、コア体17の製造方法の説明図である。本例では、コア体17は、インサート成形により製造される。すなわち、コア体17を製造する際には、金型65のキャビティに、環状部20および当該環状部20から径方向内側に延びる複数本の突極部21を有するコア15を配置して、キャビティに樹脂を充填する。これにより、各突極部21が貫通する被覆部本体35、および被覆部本体35の径方向内側の端部分から中心軸線方向Xの両側に突出する鍔部36を備える複数の被覆部31と、環状部20を被覆する環状被覆部30と、を有するインシュレータ16を、コア15と一体に形成する。ここで、
図8に示すとおり、キャビティの内壁面66において、各被覆部本体35の径方向内側の端35a、および各鍔部36(第1鍔部41および第2鍔部42)の第1内側面41a、第2内側面42aを成形するための内壁面部分66aは、各突極部21の径方向内側の内周側端面15aからコア15の径方向外側に所定距離(離間距離O)以上離間する。内壁面部分66aは、コア15の中心軸線Lを中心とする円弧であり、外周側に突出する湾曲面である。また、内壁面部分66aは、中心軸線Lと平行に延びる。これにより、コア体17の製造時点において、被覆部31は、コア15の内周側端面15aから、所定距離(離間距離O)だけ、径方向外側に位置する。また、各鍔部36の第1内側面41a、第2内側面42aは、コア15の内周側端面15aから所定距離(離間距離O)だけ径方向外側において、コア15の中心軸線Lと平行に形成される。
【0049】
(作用効果)
本例において、コア15は積層された複数枚の板状コア14からなる。インシュレータ
16の被覆部本体35の径方向内側の端35aとコア15の突極部21の内周側端面15aとの間の離間距離Oは、0.05mm以上である。従って、各被覆部31を介して各突極部21にコイル線18を巻回したときにコイル線18にかかる張力によって被覆部31の鍔部36が径方向内側に傾斜した場合でも、各鍔部36の中心軸線方向Xの両端がコア15の内周側端面15aよりも内周側に突出することを防止できる。よって、本例のモータ1では、ステータ10の径方向内側に配置されたロータ6と、コイル線18が巻回されたインシュレータ16とが干渉することを防止できる。
【0050】
また、本例では、鍔部36は、径方向外側を向く外側面が筒部分37から外周側に向かって径方向内側に傾斜するテーパー面である。従って、金型65を利用した射出成形によってインシュレータ16を製造する際に、成形品を離型させることが容易である。ここで、鍔部36の外側面が筒部分37から外周側に向かって径方向内側に傾斜する場合には、コイル線18にかかる張力によって鍔部36が径方向内側に付勢されやすくなる。また、鍔部36の先端側が薄くなるので、コイル線18にかかる張力によって鍔部36が径方向内側に傾斜しやすくなる。しかし、鍔部36がこのような形状を備える場合でも、離間距離Oを0.5mm以上に設定すれば、コイル線18を巻回したときに、鍔部36の中心軸線方向Xの両端が内周側端面15aよりも径方向外側に位置させることができる。
【0051】
本例において、被覆部本体35の径方向内側の端35aとが径方向で離間する離間距離Oは、予め設定した所定距離(離間距離O)以上であり、かつ、所定距離(離間距離O)とコイル線18の直径Dとを合計した合計寸法以下である。従って、被覆部31がコア15の内周側端面15aから径方向外側に離間しすぎることがない。よって、コア15とインシュレータ16とからなるコア体17が、径方向で大型化することを防止或いは抑制できる。
【0052】
また、本例のモータ1は、ロータ6の外周側でステータ10を覆う樹脂封止部材50を備える。樹脂封止部材50は、ロータ6の径方向外側で内周側端面15aおよび被覆部31の径方向内側に位置する環状部分55を備える。これにより、ステータ10を液密に保護することができる。ここで、コイル線18にかかる張力によって被覆部31の鍔部36が径方向内側に傾斜して鍔部36の中心軸線方向Xの両端が内周側端面15aよりも径方向外側に位置すると、鍔部36の先端の周辺において樹脂封止部材50の環状部分55が薄くなる。従って、鍔部36の先端の周辺において、樹脂封止部材50が欠けるなどのショートモールドが発生しやすくなる。これに対して、本例では、各鍔部36の中心軸線方向Xの両端がコア15の内周側端面15aよりも内周側に突出することが防止されている。従って、ステータ10を樹脂モールドしたときに、ショートモールドが発生することを抑制できる。
【0053】
(変形例)
鍔部36は、径方向外側を向く外側面(第1鍔部41の第1外側面41b、および第2鍔部42の第2外側面42b)の被覆部本体35の側の端部分に、被覆部本体35に向かって径方向内側に傾斜する外周面部分を備えてもよい。
図9(a)は、鍔部36の外側面の形状を変更した変形例1のコア体17Aの説明図である。
図9(b)は、鍔部36の外側面の形状を変更した変形例2のコア体17Bの説明図である。
図9(a)、
図9(b)では、第2鍔部42の断面を示す。なお、図示は省略するが、第1鍔部41は、第2鍔部42と同様の断面形状を備える。
【0054】
図9(a)に示す変形例1のコア体17Aは、第2鍔部42は、径方向外側を向く第2外側面42bの被覆部本体35の側の端部分に、被覆部本体35に向かって径方向内側に傾斜する第1外周面部分42cを備える。また、コア体17Aでは、第2鍔部42は、径方向外側を向く第2外側面42bの被覆部本体35とは反対側の端部分に端部分に、被覆
部本体35に向かって径方向内側に傾斜する第2外周面部分42dを備える。第1外周面部分42c、および第2外周面部分42dは、テーパー面として設けられる。
図9(b)に示す変形例2のコア体17Bでは、第2鍔部42は、径方向外側を向く第2外側面42bの全体が、被覆部本体35に向かって径方向内側に傾斜するテーパー面となっている。
【0055】
インシュレータ16の鍔部36の形状をこれらの形状とした場合には、所定距離(離間距離O´)は、一枚の板状コア14の厚み寸法Hの10%とすることができる。従って、本例では、被覆部本体35の径方向内側の端35aと突極部21の内周側端面15aとの離間距離O´は、0.02mm以上とすることができる。
【0056】
すなわち、鍔部36の外側面(第1外側面41b、第2外側面42b)の被覆部本体35の側の端部分に、被覆部本体35に向かって径方向内側に傾斜する外周面部分を備える場合には、コイル線18を被覆部31に巻回したときにコイル線18の張力によって鍔部36が径方向内側に付勢される力を分散させることができる。従って、コイル線18が被覆部36に巻回されたときに、第2鍔部42の第2外側面42bが第2方向X2(被覆部本体35から離間する方向)に向かって径方向内側に傾斜する場合と比較して、鍔部36が径方向内側に傾斜することを抑防止或いは抑制できる。
【0057】
ここで、本発明者等は、鋭意検討の結果、鍔部36の外側面(第1外側面41b、第2外側面42b)を上記の形状とした場合のインシュレータの内径寸法の縮小、コイル線18の巻回時におけるコア15の内径寸法の縮小、および板状コア14の成形時のダレに起因する寸法精度の低下を考慮した場合に、離間距離O´を一枚の板状コア14の厚み寸法Hの10%に設定すれば、コイル線18にかかる張力によって被覆部31の鍔部36が径方向内側に傾斜した場合でも、鍔部36の中心軸線方向Xの両端が内周側端面15aよりも径方向外側に位置させることができることを確認した。
【0058】
(変形例2)
本例において、コア15は、単一の部材としてもよい。この場合には、
図7に示す場合と同様に、所定距離(離間距離O)は、0.05mmとする。すなわち、コア15が単一の部材である場合には、コア15の厚みは、同一形状のコア15を複数枚の板状コア14を積層して構成する場合の板状コア14の厚みと比較して、大きくなる。従って、コア15が単一の部材である場合には、板状コア14と比較して、コア15の内周側の端に発生するダレが大きくなる。ここで、本発明者等は、鋭意検討の結果、単一の部材からなるコア15のダレの大きさを考慮した場合に、所定距離(離間距離O)を0.5mmに設定すれば、コイル線18にかかる張力によって被覆部31の鍔部36が付勢されて径方向内側に傾斜した場合でも、鍔部36の中心軸線方向Xの両端が内周側端面15aよりも径方向外側に位置させることができることを確認した。
【符号の説明】
【0059】
1…モータ、5…回転軸、6…ロータ、7…マグネット、10…ステータ、11…ハウジング、14…板状コア、15…コア、15a…コアの内周側端面、15b…コアの周方向の両側の端面、16…インシュレータ、17…コア体、18…コイル線、19…端子ピン、20…環状部、21…突極部、22…腕部、23…広がり部、24…溝、30…環状被覆部、30a…六角形部分、30b…円形部分、30c…環状溝、31…被覆部、35…被覆部本体、36…鍔部、37…筒部分、38…外側被覆部分、39…第1被覆部分、39a…径方向内側の端面、40…第2被覆部分、40a…径方向内側の端面、41…第1鍔部、41a…第1内側面、41b…第1外側面、42…第2鍔部、42a…第2内側面、42b…第2外側面、43…第1溝、44…第2溝、50…樹脂封止部材、51…隔壁部材、51a…貫通孔、53…第1封止部、54…第2封止部、55…環状部分、57…第1軸受け部材、58…付勢部材、59…円形凹部、60…第2軸受け部材、66…キャ
ビティの内壁面、66a…内壁面部分、L…中心軸線、X…中心軸線方向、H…板状コアの厚み寸法、O・O´…所定距離(離間距離)、D…コイル線の径寸法