(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】二次電池の試験治具、試験装置及び試験方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/36 20200101AFI20240716BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240716BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240716BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240716BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
G01R31/36
H01M10/04 Z
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/48 A
(21)【出願番号】P 2020164870
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】奥山 新
(72)【発明者】
【氏名】梶原 隆志
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-185893(JP,A)
【文献】特開2016-018722(JP,A)
【文献】特開2019-015701(JP,A)
【文献】特開2012-215537(JP,A)
【文献】国際公開第2012/117660(WO,A1)
【文献】特開2017-045693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 10/04
H01M 10/058
H01M 10/052
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の試験治具であって、
前記二次電池に突き刺し可能に構成された釘部と、
電力の供給を受けて前記釘部を昇温させるヒーターと、
前記釘部の突き刺しに伴う内部短絡に応じた前記二次電池の熱暴走を監視する熱暴走監視制御と、前記二次電池の熱暴走が所定時間内に生じないと判断された場合に前記二次電池に突き刺された状態の前記釘部を昇温させる前記ヒーターによる加熱制御と、を行うコントローラと、を備える、試験治具。
【請求項2】
二次電池の試験治具であって、
前記二次電池に突き刺し可能に構成された釘部と、
電力の供給を受けて前記釘部を昇温させるヒーターと、
前記釘部を昇温させる前記ヒーターによる加熱制御と、前記釘部の突き刺しに伴う内部短絡に応じた前記二次電池の熱暴走を監視する熱暴走監視制御
と、を行うように構成されたコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記熱暴走監視制御
において前記二次電池が熱暴走するに至っていないと判断した場合に、前記加熱制御によって昇温した前記釘部がさらに昇温するように前記ヒーターを制御するよう構成される、試験治具。
【請求項3】
二次電池の試験治具であって、
前記二次電池に突き刺し可能に構成された釘部と、
電力の供給を受けて前記釘部を昇温させるヒーターと、
前記釘部の突き刺しに伴う前記二次電池の内部短絡部が加熱されて熱暴走が誘発されるように、前記二次電池に突き刺された状態の前記釘部を昇温させる前記ヒーターによる加熱制御を
所定時間行うコントローラと、を備える、試験治具。
【請求項4】
前記ヒーターは、前記釘部に内蔵されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の試験治具。
【請求項5】
前記ヒーターは、前記釘部の外周面に取り付けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の試験治具。
【請求項6】
前記釘部の温度を検出する温度検出部を更に備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の試験治具。
【請求項7】
二次電池の試験装置であって、
請求項1~6のいずれか1項に記載の試験治具と、
前記釘部を前記二次電池に向けて移動させる移動機構と、を備える、試験装置。
【請求項8】
二次電池の試験装置であって、
請求項1~3のいずれか1項に記載の試験治具と、
前記釘部を支持する支持部材と、
前記支持部材を移動させることにより、当該支持部材の移動に伴って前記釘部を前記二次電池に向けて移動させる移動機構と、を備え、
前記ヒーターは、前記支持部材を介して前記釘部を昇温させる、試験装置。
【請求項9】
二次電池の試験方法であって、
釘部をヒーターによって昇温させる加熱工程と、
前記釘部を前記二次電池に突き刺す釘刺し工程と、
前記釘刺し工程の後に、前記釘部の突き刺しに伴う内部短絡に応じた前記二次電池の熱暴走を監視する熱暴走監視工程と、を含み、
前記熱暴走監視工程において前記二次電池の熱暴走が所定時間内に生じないと判断されると、前記加熱工程を実施する、試験方法。
【請求項10】
二次電池の試験方法であって、
釘部をヒーターによって昇温させる加熱工程と、
前記釘部を前記二次電池に突き刺す釘刺し工程と、
前記釘刺し工程の後に、前記釘部の突き刺しに伴う内部短絡に応じた前記二次電池の熱暴走を監視する熱暴走監視工程と、を含み、
前記熱暴走監視工程
において前記二次電池が熱暴走するに至っていないと判断した場合は、前記加熱工程によって昇温した前記釘部がさらに昇温するように前記ヒーターを制御する、試験方法。
【請求項11】
二次電池の試験方法であって、
釘部を前記二次電池に突き刺す釘刺し工程と、
前記釘部の突き刺しに伴う前記二次電池の内部短絡部が加熱されて熱暴走が誘発されるように、前記二次電池に突き刺された状態の前記釘部をヒーターによって昇温させる加熱工程と、を含
み、
前記加熱工程を所定時間行う、試験方法。
【請求項12】
前記加熱工程の後に前記釘刺し工程を実施する、請求項10に記載の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の試験治具、試験装置及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の二次電池において、急激な温度上昇を伴う熱暴走が発生した際の安全性を評価する試験方法として、下記特許文献1のものが知られている。具体的には、この特許文献1の試験方法は、単電池を加熱することにより、強制的に熱暴走させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の試験方法のように単電池の表面を外部から加熱する試験方法では、単電池の内部にまで熱が伝わって単電池が熱暴走に至るまでに要する時間が長くなり、単電池を効率よく熱暴走させることができないという問題が生じ得る。
【0005】
なお、上記のような問題は、組電池を構成する複数の単電池のうちの1つの単電池に熱暴走が発生した際の安全性を評価する試験だけでなく、1つの二次電池に熱暴走が発生した際の安全性を評価する試験でも同様に生じるものである。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、二次電池の安全性を評価する際に効率よく熱暴走させることが可能な二次電池の試験治具、試験装置及び試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る二次電池の試験治具は、前記二次電池に突き刺し可能に構成された釘部と、電力の供給を受けて前記釘部を昇温させるヒーターと、を備える。
【0008】
この試験治具によれば、二次電池に突き刺されて二次電池の内部と接触することになる釘部を、ヒーターによって昇温させることができる。このため、ヒーターにより昇温された釘部からの伝熱によって当該釘部の熱が二次電池の内部に直接伝わり、二次電池の内部を強制的に加熱することができる。また、釘部が突き刺されることにより二次電池に内部短絡が生じて発熱するような場合には、その発熱に加えて、ヒーターにより昇温された釘部からの伝熱によっても、二次電池の内部を強制的に加熱することができる。これにより、二次電池を強制的に熱暴走させて安全性を評価する際に、効率よく熱暴走させることができる。
【0009】
上記の試験治具において、前記ヒーターは、前記釘部に内蔵されている構成であってもよい。
【0010】
この態様では、ヒーターが釘部に内蔵されているので、ヒーターが発する熱を外部に放散させることなく釘部に効率よく伝達させることができる。このため、ヒーターは、釘部を効果的に昇温させることができる。これにより、釘部からの伝熱に伴う二次電池の内部の強制的な加熱を効果的に行うことができる。また、ヒーターが釘部に内蔵されることにより、ヒーター自体が二次電池に接触することを回避することができる。
【0011】
上記の試験治具において、前記ヒーターは、前記釘部の外周面に取り付けられている構成であってもよい。
【0012】
この態様では、ヒーターが釘部の外周面に取り付けられているので、釘部が二次電池に突き刺された状態において当該二次電池の内部に接する釘部の外周面を、効率よく昇温させることができる。このため、釘部からの伝熱に伴う二次電池の内部の強制的な加熱を効果的に行うことができる。また、釘部の外周面にヒーターを取り付ける構造によって、釘部を小さくすることができる。
【0013】
上記の試験治具は、前記釘部の温度を検出する温度検出部を更に備える構成であってもよい。
【0014】
この態様では、温度検出部の温測結果に基づいて、ヒーターによって昇温される釘部の温度の検出が可能である。
【0015】
本発明の他の局面に係る二次電池の試験装置は、上記の試験治具と、前記釘部を前記二次電池に向けて移動させる移動機構と、を備える。
【0016】
また、二次電池の試験装置は、上記の試験治具と、前記釘部を支持する支持部材と、前記支持部材を移動させることにより、当該支持部材の移動に伴って前記釘部を前記二次電池に向けて移動させる移動機構と、を備え、前記ヒーターは、前記支持部材を介して前記釘部を昇温させる。
【0017】
この試験装置によれば、移動機構による移動に伴って釘部を二次電池に突き刺す。この際、ヒーターにより昇温された釘部から二次電池内部への伝熱によって、二次電池の内部を強制的に加熱することができる。これにより、試験装置を用いて二次電池を強制的に熱暴走させて安全性を評価する際に、効率よく熱暴走させることができる。
【0018】
本発明の他の局面に係る二次電池の試験方法は、釘部をヒーターによって昇温させる加熱工程と、前記釘部を前記二次電池に突き刺す釘刺し工程と、を含む。
【0019】
この試験方法によれば、釘刺し工程において二次電池に突き刺されて二次電池の内部と接触することになる釘部を、加熱工程においてヒーターによって昇温させることができる。このため、ヒーターにより昇温された釘部からの伝熱によって当該釘部の熱が二次電池の内部に直接伝わり、二次電池の内部を強制的に加熱することができる。また、釘部が突き刺されることにより二次電池に内部短絡が生じて発熱するような場合には、その発熱に加えて、ヒーターにより昇温された釘部からの伝熱によって、二次電池の内部を強制的に加熱することができる。これにより、二次電池を強制的に熱暴走させて安全性を評価する際の試験方法において、効率よく二次電池を熱暴走させることができる。
【0020】
上記の試験方法において、前記釘刺し工程の後に前記加熱工程を実施するようにしてもよい。
【0021】
この態様では、釘刺し工程において釘部を二次電池に突き刺し、その後、加熱工程において昇温された釘部からの伝熱によって二次電池の内部を強制的に加熱することができる。これにより、二次電池を強制的に熱暴走させて安全性を評価する際に、効率よく熱暴走させることができる。
【0022】
上記の試験方法は、前記釘刺し工程の後に、前記釘部の突き刺しに伴う内部短絡に応じた前記二次電池の熱暴走を監視する熱暴走監視工程を更に含み、前記熱暴走監視工程において前記二次電池の熱暴走が所定時間内に生じないと判断されると、前記加熱工程を実施するようにしてもよい。
【0023】
この態様では、釘部の突き刺しによって二次電池に内部短絡が生じた状態において、二次電池が熱暴走するに至らない場合に、加熱工程において昇温された釘部からの伝熱によって二次電池を加熱することができる。これにより、二次電池の熱暴走を誘発させることができる。
【0024】
上記の試験方法において、前記加熱工程の後に前記釘刺し工程を実施するようにしてもよい。
【0025】
この態様では、加熱工程において予め昇温された釘部を、釘刺し工程において二次電池に突き刺して、当該二次電池を内部から加熱する。このため、二次電池を、予め昇温された釘部からの伝熱によって迅速に加熱することができる。これにより、二次電池を強制的に熱暴走させて安全性を評価する際に、効率よく熱暴走させることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、二次電池の安全性を評価する際に効率よく熱暴走させることが可能な二次電池の試験治具、試験装置及び試験方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る試験装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1の試験装置に適用される試験治具の構成を示す断面図である。
【
図3】
図1の試験装置に適用される試験治具の変形例の構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る試験装置の構成を示す図である。
【
図5】
図4の試験装置に適用される試験治具の構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る試験装置の構成を示す図である。
【
図7】本発明の第4実施形態に係る試験装置の構成を示す図である。
【
図8】
図7の試験装置に適用される試験治具の構成を示す断面図である。
【
図9】
図7の試験装置に適用される試験治具の第1変形例の構成を示す断面図である。
【
図10】
図7の試験装置に適用される試験治具の第2変形例の構成を示す断面図である。
【
図11】本発明の第5実施形態に係る試験装置の構成を示す図である。
【
図12】
図11の試験装置に適用される試験治具の構成を示す断面図である。
【
図13】
図11の試験装置に適用される試験治具の変形例の構成を示す断面図である。
【
図14】本発明の第6実施形態に係る試験装置の構成を示す図である。
【
図15】
図14の試験装置において用いられる釘部の構成を示す断面図である。
【
図16】
図14の試験装置において用いられる釘部の変形例の構成を示す断面図である。
【
図17】試験装置を用いた第1の試験方法のフローチャートである。
【
図18】試験装置を用いた第2の試験方法のフローチャートである。
【
図19】試験装置を用いた第3の試験方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本実施形態に係る二次電池の試験治具、試験装置及び試験方法について、図面に基づいて説明する。
【0029】
本実施形態に係る二次電池の試験治具、試験装置及び試験方法は、リチウムイオン電池等の二次電池において、急激な温度上昇を伴う熱暴走が発生した際の安全性を評価するための試験に適用される。本実施形態の適用範囲は、1つの二次電池を対象とした試験のみならず、複数の単電池を組み合わせて構成された組電池を対象とした試験にも及ぶ。1つの二次電池を試験対象とした場合、当該二次電池を強制的に熱暴走させて発火や破裂等が生じるか否かの安全性が評価される。一方、組電池を試験対象とした場合、当該組電池を構成する複数の単電池のうちの1つの単電池を強制的に熱暴走させて他の単電池に類焼が生じるか否かの安全性が評価される。以下では、本実施形態に係る二次電池の試験治具、試験装置及び試験方法について、組電池を試験対象とした場合を例に挙げて説明することとする。
【0030】
[試験装置について]
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る試験装置E1の構成を示す図である。
図1に例示される試験装置E1は、組電池LBを構成する複数の単電池LB2のうちの1つの単電池LB2を強制的に熱暴走させて、他の単電池LB2に類焼が生じるか否かを評価する耐類焼試験に適用される。
【0031】
試験装置E1の構成を説明する前に、組電池LBについて説明する。組電池LBは、複数の単電池LB2がプラスチック製の組電池ケースLB1内に配列されてなる。各単電池LB2は、リチウムイオン電池等の二次電池である。各単電池LB2は、金属製の電池ケースLB21と、電池ケースLB21内に収容された電解液(不図示)と、電池ケースLB21内で電解液に浸漬された正極LB22及び負極LB23と、電池ケースLB21内で正極LB22と負極LB23との間に介在するセパレータLB24と、を有する。
図1に示す例では、平板状の複数の正極LB22と複数の負極LB23とが互いに平行に交互に並列されており、互いに隣接する正極LB22と負極LB23との間に平板状のセパレータLB24が配置されている。更に、正極LB22又は負極LB23と電池ケースLB21とが対向する位置にも、これらの間にセパレータLB24が介在するように配置されている。
【0032】
図1に示すように、試験装置E1は、試験治具1と、支持部材2と、電力供給部3と、アクチュエータ4と、コントローラ5とを備える。
【0033】
試験治具1は、組電池LBを構成する複数の単電池LB2のうちの1つの単電池LB2を、強制的に熱暴走させる際に用いられる治具である。この試験治具1について、
図2の断面図を参照して説明する。試験治具1は、釘部11とヒーター12とを備えている。
【0034】
釘部11は、組電池ケースLB1を貫通し、当該組電池ケースLB1に対向する1つの単電池LB2に突き刺されることにより、当該単電池LB2に疑似的な内部短絡を起こさせることが可能な棒状の部材である。疑似的な内部短絡とは、単電池LB2の内部において、正極LB22と負極LB23とが釘部11によって短絡された状態や、釘刺しによる物理的な変形によって正極LB22と負極LB23とが短絡された状態をいう。釘部11の軸方向に垂直な断面形状は、特に限定されるものではないが、本実施形態では円形状である。釘部11は、導電性及び熱伝導性がよく、且つ、単電池LB2に突き刺されるときに変形しないような硬度を有する金属素材から構成されている。なお、釘部11はセラミック等の導電性を有さない素材で構成されていてもよい。釘部11は、軸方向の一方側の端部に位置する先の尖った尖端部113と、軸方向の一方側とは反対の他方側の端部に位置する基端部114と、を有している。釘部11は、基端部114が後述の支持部材2によって支持された状態で、尖端部113が単電池LB2に突き刺される。
【0035】
更に、釘部11は、その内部に、基端部114から、軸方向において尖端部113と基端部114との間の中間部115まで延びる有底孔111を有している。この有底孔111は、釘部11の径方向の中央に形成されている。釘部11の有底孔111には、電気絶縁性を有する粒状の無機絶縁材112が充填されている。
【0036】
ヒーター12は、後述の電力供給部3から電力の供給を受けると、釘部11を昇温させるように発熱する。ヒーター12は、自身の発熱により釘部11を昇温させて当該釘部11を加熱する。ヒーター12には、一対の導線121が接続されている。ヒーター12は、一対の導線121を介して電力が供給されると発熱する。ヒーター12が発熱すると釘部11は昇温する。ヒーター12は、釘部11の有底孔111内に収容された状態において中間部115に配置されるように、釘部11に内蔵されている。すなわち、ヒーター12は、釘部11の中間部115に内蔵されている。ヒーター12は、釘部11の有底孔111内に収容された状態において、釘部11の内面との接触が防止されるように、有底孔111内に充填された無機絶縁材112によって変位が規制されている。
【0037】
ヒーター12は、一対の導線121を介して電力が供給されることにより発熱する抵抗発熱体である。ヒーター12は、ニッケル・クロムや鉄・クロム・アルミニウムなどの金属からなる金属発熱体によって構成されている。なお、ヒーター12は、炭化ケイ素やカーボンなどの非金属の発熱体によって構成されてもよい。ヒーター12の形状は、特に限定されるものではなく、直線状、螺旋状、板状などの何れであってもよい。ヒーター12は、釘部11の有底孔111内において、釘部11の径方向の中央に配置されることが好ましいが、径方向の中央から外側に許容範囲内でずれた位置に配置されても構わない。また、複数のヒーター12が釘部11の有底孔111内に配置されてもよい。この場合、複数のヒーター12は、有底孔111内において釘部11の径方向に互いに所定の間隔を隔てて配置される。
【0038】
一対の導線121は、ヒーター12に対する電力供給時に電流が流れる導線である。一対の導線121は、一端がヒーター12に接続され、一端とは反対の他端が後述の電力供給部3の昇温調整器31に接続されている。一対の導線121は、釘部11の基端部114から釘部11の外方に延出している。一対の導線121における釘部11からの延出部分は、電気絶縁性を有する被覆材13によって被覆されている。
【0039】
なお、ヒーター12は、上記の構成に限定されるものではなく、無機絶縁材が充填された金属シース管の内部に抵抗発熱体が収容されてなるカートリッジヒーターによって構成されてもよい。この場合、カートリッジヒーターが釘部11の有底孔111に収容されることになる。カートリッジヒーターは、有底孔111に収容された状態において、当該有底孔111に充填された無機絶縁材112によって変位が規制されている。また、ヒーター12としてカートリッジヒーターを用いる場合には、釘部11の有底孔111に無機絶縁材112を充填する必要はない。この場合、有底孔111を規定する釘部11の内面にカートリッジヒーターの金属シース管の少なくとも先端が接触するように、カートリッジヒーターを有底孔111に圧入することにより、釘部11に対してカートリッジヒーターを固定することができる。有底孔111を規定する釘部11の内面に、熱伝導性及び耐熱性のよい接着剤を用いて、カートリッジヒーターを接着することにより固定してもよい。
【0040】
図1に示すように、支持部材2は、釘部11を支持する部材である。支持部材2は、釘部11の基端部114を挟持することにより、釘部11を支持する。なお、支持部材2による釘部11の支持構造としては、釘部11の基端部114が締結部材などによって支持部材2に締結される構造を採用してもよい。支持部材2は、電気絶縁性及び熱伝導性のよい素材から構成されている。支持部材2は、後述のアクチュエータ4によって移動される。この支持部材2の移動によって、当該支持部材2に支持された釘部11を移動させることができる。
【0041】
電力供給部3は、一対の導線121を介してヒーター12に電力を供給するものである。電力供給部3は、昇温調整器31と電源32とを有している。昇温調整器31には、一対の導線121が接続されるとともに、電源32が接続されている。昇温調整器31は、一対の導線121を介してヒーター12に供給される電力を調整することが可能な電力調整器である。昇温調整器31は、電源32によるヒーター12への供給電力を調整することにより、ヒーター12の発熱量を調整することができる。すなわち、昇温調整器31は、電源32によるヒーター12への供給電力を調整することにより、ヒーター12による釘部11の昇温を調整することができる。昇温調整器31は、後述のコントローラ5によって制御される。
【0042】
アクチュエータ4は、電源32からの電力供給によって支持部材2を直線的に移動させる移動機構である。アクチュエータ4は、この支持部材2の移動に伴って釘部11を単電池LB2に向けて直線的に移動させる。アクチュエータ4は、釘部11の単電池LB2への突き刺しの際、並びに、単電池LB2に突き刺された釘部11を単電池LB2から離間させる際に、支持部材2を移動させる。なお、アクチュエータ4は、単電池LB2に対して釘部11を相対的に移動させる構造であればよい。例えば、アクチュエータ4は、支持部材2を移動させる構造に代えて、組電池LBを保持する保持ステージを移動させる構造であってもよい。この場合でも、アクチュエータ4は、釘部11を単電池LB2に向けて相対的に移動させることができる。アクチュエータ4は、後述のコントローラ5によって制御される。
【0043】
電源32は、昇温調整器31を介してヒーター12に電力を供給するとともに、アクチュエータ4に電力を供給する。
図1では、昇温調整器31及びアクチュエータ4に1つの電源32が接続される構成を例示しているが、昇温調整器31とアクチュエータ4とにそれぞれ個別に電源32を設けるようにしてもよい。
【0044】
コントローラ5は、CPU(Central Pocessing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。コントローラ5は、CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、昇温調整器31及びアクチュエータ4を制御する。また、
図1に示すように、コントローラ5には、単電池LB2の表面温度を検出する温度センサTSが電気的に接続されている。これにより、温度センサTSによって検出された単電池LB2の表面温度に関する情報がコントローラ5に入力される。温度センサTSは、単電池LB2の表面に装着されている。
【0045】
コントローラ5は、組電池LBを構成する複数の単電池LB2のうちの1つの単電池LB2を強制的に熱暴走させる試験において、釘刺し制御、加熱制御、熱暴走監視制御、及び試験終了制御を行う。
【0046】
コントローラ5は、釘刺し制御においてアクチュエータ4を制御し、釘部11が単電池LB2に突き刺さるように支持部材2を移動させる。釘部11が突き刺された単電池LB2には、疑似的な内部短絡が生じる。単電池LB2に内部短絡が生じると、この単電池LB2の内部短絡部において発熱する。
【0047】
コントローラ5は、加熱制御において昇温調整器31を制御し、一対の導線121を介してヒーター12に供給される電力を調整させる。これにより、ヒーター12の発熱によって釘部11が昇温される。
【0048】
コントローラ5は、熱暴走監視制御において、温度センサTSの検出結果に基づいて単電池LB2の熱暴走を監視し、単電池LB2が熱暴走するに至ったか否かを判断する。コントローラ5は、温度センサTSの検出結果が、単電池LB2の急激な温度上昇を示す結果である場合には、単電池LB2が熱暴走するに至ったと判断する。一方、単電池LB2の急激な温度上昇がない場合には、コントローラ5は、単電池LB2が熱暴走するに至っていないと判断する。
【0049】
コントローラ5は、単電池LB2が熱暴走するに至ってから所定時間経過したときに、試験終了制御を行う。コントローラ5は、試験終了制御においてアクチュエータ4を制御し、単電池LB2に突き刺されている釘部11が単電池LB2から離間するように支持部材2を移動させる。更に、コントローラ5は、試験終了制御において昇温調整器31を制御し、一対の導線121を介したヒーター12への電力の供給を停止させる。
【0050】
以上説明したように、試験治具1を備えた試験装置E1では、単電池LB2に突き刺されて単電池LB2の内部と接触することになる釘部11を、ヒーター12によって昇温させることができる。このため、単電池LB2に釘部11が突き刺されることにより、ヒーター12により昇温された釘部11からの伝熱によって当該釘部11の熱が単電池LB2の内部に直接伝わり、単電池LB2の内部を強制的に加熱することができる。また、釘部11が突き刺されることにより単電池LB2に内部短絡が生じて発熱するような場合には、その発熱に加えて、ヒーター12により昇温された釘部11からの伝熱によっても、単電池LB2の内部を強制的に加熱することができる。これにより、単電池LB2を強制的に熱暴走させて安全性を評価する際に、効率よく熱暴走させることができる。
【0051】
また、試験治具1を用いた試験では、単電池LB2に突き刺された釘部11からの伝熱によって単電池LB2の内部を加熱するので、単電池LB2の内部短絡部を直接的に加熱することができる。しかも、釘部11からの伝熱によって単電池LB2の内部を加熱することにより、例えば単電池LB2の表面を加熱する場合と比較して、組電池LBを構成する他の単電池LB2への加熱の影響を軽減することができる。
【0052】
また、試験治具1においてヒーター12が釘部11に内蔵された構造であるため、ヒーター12が発する熱を外部に放散させることなく釘部11に効率よく伝達させることができる。このため、ヒーター12は、釘部11を効果的に昇温させることができる。これにより、釘部11から内部短絡部への伝熱に伴う単電池LB2の内部の強制的な加熱を効果的に行うことができる。また、ヒーター12が釘部11に内蔵されることにより、ヒーター12自体が単電池LB2に接触することを回避することができる。
【0053】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態に係る試験装置E1に適用される試験治具の構造は、上記の試験治具1の構造に限られない。
図3は、試験装置E1に適用される試験治具1の変形例を示す断面図である。本変形例に係る試験治具1では、釘部11に対するヒーター12の配置位置が、上記の試験治具1とは異なっている。
【0054】
図3に示すように、本変形例に係る試験治具1では、釘部11において無機絶縁材112が充填された有底孔111は、基端部114から尖端部113を含む領域まで延びるように形成されている。そして、ヒーター12は、釘部11の有底孔111内に収容された状態において尖端部113に配置されるように、釘部11に内蔵されている。すなわち、ヒーター12は、釘部11の尖端部113に内蔵されている。このような構造の試験治具1では、単電池LB2に突き刺される釘部11の尖端部113を、ヒーター12による発熱によって効率よく昇温させることができる。このため、単電池LB2を強制的に熱暴走させて安全性を評価する際に、効率よく熱暴走させることができる。
【0055】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る試験装置E2の構成を示す図である。
図5は、試験装置E2に適用される試験治具1の構成を示す断面図である。ここでは、第1実施形態と異なる構成要素について説明し、その他の構成要素については説明を省略する。
【0056】
第2実施形態に係る試験装置E2においては、試験治具1の構造が、第1実施形態に係る試験装置E1に適用される場合とは異なっている。
【0057】
第2実施形態に係る試験治具1においては、釘部11に有底孔が形成されていない。そして、ヒーター12は、釘部11の外周面に取り付けられている。具体的には、ヒーター12は、釘部11の外周面において尖端部113と基端部114との間の中間部115に取り付けられた構造である。すなわち、ヒーター12は、釘部11の外周面において、釘部11が単電池LB2に突き刺された状態で当該単電池LB2に接触しない位置に配置されている。釘部11の外周面に対するヒーター12の取り付け位置は、単電池LB2に接触しない位置であればよく、中間部115に限定されるものではない。例えば、ヒーター12は、釘部11の外周面において、中間部115よりも尖端部113側に取り付けられていてもよく、あるいは、中間部115よりも基端部114側に取り付けられていてもよい。ヒーター12は、一対の導線121を介して電力が供給されることにより発熱する抵抗発熱層と、抵抗発熱層と釘部11の外周面との間に配置される絶縁層と、を有する多層構造体である。抵抗発熱層は、金属発熱体や非金属発熱体などの抵抗発熱体から構成されている。絶縁層は、電気絶縁性のよい素材から構成されている。ヒーター12の形状は、特に限定されるものではなく、シート状、筒状などの何れであってもよい。ヒーター12は、熱伝導性及び耐熱性のよい接着剤を用いた接着や、カシメ部品を用いた締め付けなどによって、釘部11の中間部115の外周面に取り付けられる。
【0058】
試験装置E2では、単電池LB2に突き刺される釘部11を、当該釘部11の外周面に取り付けられたヒーター12の発熱によって昇温させることができる。このため、単電池LB2に釘部11が突き刺されることにより、ヒーター12により昇温された釘部11からの伝熱によって、単電池LB2の内部を強制的に加熱することができる。また、釘部11が突き刺されることにより単電池LB2に内部短絡が生じて発熱するような場合には、その発熱に加えて、ヒーター12により昇温された釘部11からの伝熱によっても、単電池LB2の内部を強制的に加熱することができる。これにより、単電池LB2を強制的に熱暴走させて安全性を評価する際に、効率よく熱暴走させることができる。
【0059】
また、ヒーター12が釘部11の外周面に取り付けられた構造であるため、釘部11が単電池LB2に突き刺された状態において当該単電池LB2の内部に接する釘部11の外周面を、効率よく加熱することができる。このため、釘部11からの伝熱に伴う単電池LB2の内部の強制的な加熱を効果的に行うことができる。また、釘部11の外周面にヒーター12を取り付ける構造によって、釘部11を小さくすることができる。
【0060】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係る試験装置E3の構成を示す図である。ここでは、第1実施形態と異なる構成要素について説明し、その他の構成要素については説明を省略する。
【0061】
試験装置E3に適用される釘部11は、二次電池の安全性を評価する釘刺し試験において一般的に用いられる釘部材である。このため、釘部11は、第1実施形態及び第2実施形態に係る試験治具1とは異なり、ヒーターを備えていない。その代わりに、試験装置E3においては、釘部11を支持する支持部材2にヒーター12が取り付けられている。
【0062】
ヒーター12は、支持部材2を介して釘部11を昇温させる。具体的には、ヒーター12は、一対の導線121を介した電力供給に応じた発熱によって支持部材2を昇温させ、これに伴って支持部材2に支持される釘部11を昇温させる。
【0063】
ヒーター12は、支持部材2の外周面に取り付けられてもよいし、支持部材2の内部に埋設されていてもよい。支持部材2の外周面に取り付ける構造とする場合には、ヒーター12としては、一対の導線121を介して電力が供給されることにより発熱する抵抗発熱層と、抵抗発熱層と釘部11の外周面との間に配置される絶縁層と、を有する多層構造体などを用いることができる。一方、支持部材2の内部に埋設する構造とする場合には、ヒーター12としては、無機絶縁材が充填された金属シース管の内部に抵抗発熱体が収容されてなるカートリッジヒーターなどを用いることができる。
【0064】
試験装置E3においては、ヒーター12が支持部材2に取り付けられているので、ヒーター12により加熱される支持部材2からの伝熱によって釘部11を昇温させることができる。このため、ヒーター12により昇温された釘部11から単電池LB2の内部への伝熱によって、単電池LB2の内部を強制的に加熱することができる。
【0065】
(第4実施形態)
図7は、本発明の第4実施形態に係る試験装置E4の構成を示す図である。
図8は、試験装置E4に適用される試験治具1の構成を示す断面図である。ここでは、第1実施形態と異なる構成要素について説明し、その他の構成要素については説明を省略する。
【0066】
第4実施形態に係る試験装置E4においては、試験治具1の構造が、第1実施形態に係る試験装置E1に適用される場合とは異なっている。更に、試験装置E4においては、
図7に示されるように計測器6が設けられている。
【0067】
第4実施形態に係る試験治具1は、釘部11及びヒーター12に加えて、熱電対14を備えている。
【0068】
第4実施形態に係る試験治具1は、釘部11の中間部115にヒーター12が内蔵されているという点において、第1実施形態に係る試験治具と共通している。
【0069】
熱電対14は、ヒーター12により昇温される釘部11の温度を検出する温度検出部を構成する。熱電対14は、
図8に示す様に、熱電対素線141と測温部142とを有している。熱電対14は、測温部142が尖端部113に位置するように、熱電対素線141が釘部11の有底孔111に挿入されることにより、釘部11に内蔵されている。なお、熱電対素線141が有底孔111に挿入された状態での測温部142の位置は、尖端部113に限定されるものではない。例えば、熱電対14においては、測温部142が尖端部113と基端部114との間の所定位置に位置するように、熱電対素線141が有底孔111に挿入されていてもよい。
【0070】
熱電対素線141は、無機絶縁材112が充填された釘部11の有底孔111内において、ヒーター12から離間するように配置されている。熱電対素線141は、異種の金属からなる一対(又は複数対)の素線を有している。熱電対素線141における一対の素線は、測温部142に結合されるとともに、測温部142とは反対側の端部も例えば補償導線を介して結合されている。このように、熱電対素線141は、異種の金属によって閉ループが形成され、その両結合部間に温度差が与えられると熱起電力が発生する、という公知のゼーベック効果に基づいて構成されている。すなわち、熱電対素線141は、測温部142が検出する温度に応じて熱起電力を発生し、当該熱起電力に応じた信号(熱起電力信号)を出力する。熱電対素線141から出力された熱起電力信号は、計測器6に入力される。
【0071】
なお、熱電対14は、上記の構成に限定されるものではなく、無機絶縁材が充填された保護管の内部に熱電対素線141が挿入されたものであってもよい。保護管は、ステンレスなどの金属素材から構成されていてもよいし、ポリテトラフルオロエチレンなどの非金属素材から構成されていてもよい。
【0072】
図7に示すように、計測器6には、熱電対素線141が接続されるとともに、電源32が接続される。計測器6には、熱電対素線141から出力された熱起電力信号が入力される。計測器6は、入力された熱起電力信号で示される熱起電力を温度に換算し、その換算した温度を示す計測温度信号をコントローラ5へ出力する。
【0073】
コントローラ5は、計測器6から出力された計測温度信号に基づいて、昇温調整器31を制御する。
【0074】
以上説明したように、試験装置E4では、単電池LB2に突き刺される釘部11をヒーター12によって昇温させることができる。このため、ヒーター12により昇温された釘部11から単電池LB2の内部への伝熱によって、単電池LB2の内部を強制的に加熱することができる。
【0075】
更に、試験装置E4では、熱電対素線141からの熱起電力に応じて計測器6から出力された計測温度信号に基づいて、ヒーター12によって昇温される釘部11の温度の検出が可能である。このため、コントローラ5は、釘部11の温度を監視しながら昇温調整器31を制御することが可能である。これにより、コントローラ5は、昇温調整器31の制御によって、釘部11の温度に応じてヒーター12の発熱量を調整することができる。
【0076】
また、コントローラ5は、釘部11の温度の検出結果に基づいて、当該釘部11に接する単電池LB2の内部短絡部の温度を予測することもできる。
【0077】
(第4実施形態の第1変形例)
第4実施形態に係る試験装置E4に適用される試験治具1の構造は、上記の構造に限られない。
図9は、試験装置E4に適用される試験治具1の変形例を示す断面図である。本変形例に係る試験治具1では、釘部11に対するヒーター12の配置位置が、上記の試験治具1とは異なっている。
【0078】
図9に示すように、本変形例に係る試験治具1では、ヒーター12は、釘部11の有底孔111内に収容された状態において尖端部113に配置されるように、釘部11に内蔵されている。すなわち、ヒーター12は、釘部11の尖端部113に内蔵されている。
【0079】
また、本変形例に係る試験治具1では、熱電対14は、測温部142が尖端部113に位置するように、熱電対素線141が釘部11の有底孔111に挿入されることにより、釘部11に内蔵されている。熱電対素線141は、無機絶縁材112が充填された釘部11の有底孔111内において、ヒーター12から離間するように配置されている。
【0080】
このような構造の試験治具1では、単電池LB2に突き刺される釘部11の尖端部113を、ヒーター12の発熱によって効率よく加熱することができるとともに、熱電対14によって釘部11の温度の検出が可能である。
【0081】
(第4実施形態の第2変形例)
図10は、試験装置E4に適用される試験治具1の変形例を示す断面図である。本変形例に係る試験治具1では、釘部11に対する熱電対14の配置位置が、上記の試験治具1とは異なっている。
【0082】
図10に示すように、本変形例に係る試験治具1では、ヒーター12は、釘部11の有底孔111内に収容された状態において中間部115に配置されるように、釘部11に内蔵されている。すなわち、ヒーター12は、釘部11の中間部115に内蔵されている。
【0083】
また、本変形例に係る試験治具1では、熱電対14は、測温部142が中間部115に位置するように、熱電対素線141が釘部11の有底孔111に挿入されることにより、釘部11に内蔵されている。熱電対素線141は、無機絶縁材112が充填された釘部11の有底孔111内において、ヒーター12から離間するように配置されている。
【0084】
このような構造の試験治具1では、ヒーター12が配置される釘部11の中間部115の温度を、熱電対14によって適切に検出することができる。
【0085】
(第5実施形態)
図11は、本発明の第5実施形態に係る試験装置E5の構成を示す図である。
図12は、試験装置E5に適用される試験治具1の構成を示す断面図である。ここでは、第4実施形態と異なる構成要素について説明し、その他の構成要素については説明を省略する。
【0086】
第5実施形態に係る試験装置E5においては、試験治具1の構造が、第4実施形態に係る試験装置E4に適用される場合とは異なっている。
【0087】
第5実施形態に係る試験治具1では、釘部11は、基端部114から尖端部113にわたって、有底孔111が形成されている。また、ヒーター12は、釘部11の中間部115の外周面に取り付けられた構造である。すなわち、第5実施形態に係る試験治具1は、釘部11の中間部115の外周面にヒーター12が取り付けられているという点において、第2実施形態に係る試験治具1と共通している。
【0088】
第5実施形態に係る試験治具1において、熱電対14は、測温部142が尖端部113に位置するように、熱電対素線141が釘部11の有底孔111に挿入されることにより、釘部11に内蔵されている。
【0089】
試験装置E5では、単電池LB2に突き刺される釘部11を、当該釘部11の外周面に取り付けられたヒーター12の発熱によって昇温させることができるとともに、熱電対14によって釘部11の温度の検出が可能である。
【0090】
(第5実施形態の変形例)
第5実施形態に係る試験装置E5に適用される試験治具1の構造は、上記の構造に限られない。
図13は、試験装置E5に適用される試験治具1の変形例を示す断面図である。本変形例に係る試験治具1では、釘部11に対する熱電対14の配置位置が、上記の試験治具1とは異なっている。
【0091】
図13に示すように、本変形例に係る試験治具1では、釘部11は、基端部114から中間部115にわたって、有底孔111が形成されている。そして、熱電対14は、測温部142が中間部115に位置するように、熱電対素線141が釘部11の有底孔111に挿入されることにより、釘部11に内蔵されている。
【0092】
このような構造の試験治具1では、釘部11の外周面においてヒーター12が配置される中間部115の温度を、熱電対14によって適切に検出することができる。
【0093】
(第6実施形態)
図14は、本発明の第6実施形態に係る試験装置E6の構成を示す図である。
図15は、試験装置E6において用いられる釘部11の構成を示す断面図である。ここでは、第4実施形態と異なる構成要素について説明し、その他の構成要素については説明を省略する。
【0094】
試験装置E6においては、釘部11を支持する支持部材2にヒーター12が取り付けられている。この点において試験装置E6は、第3実施形態に係る試験装置E3と共通している。ヒーター12は、支持部材2を介して釘部11を昇温させる。
【0095】
試験装置E6においては、ヒーター12が支持部材2に取り付けられているので、単電池LB2に突き刺される釘部11を、ヒーター12により加熱される支持部材2からの伝熱によって昇温させることができる。更に、試験装置E6では、釘部11に内蔵された熱電対14によって釘部11の温度の検出が可能である。
【0096】
(第6実施形態の変形例)
第6実施形態に係る試験装置E6において用いられる釘部11の構造は、
図16に例示される構造であってもよい。
図16に示す例では、釘部11の基端部114に有底孔111が形成されている。この場合、熱電対14は、測温部142が基端部114に位置するように、熱電対素線141が釘部11の有底孔111に挿入されることにより、釘部11の基端部114に内蔵される。
【0097】
基端部114に熱電対14が内蔵された釘部11では、ヒーター12により加熱される支持部材2に接する基端部114の温度を、熱電対14によって適切に検出することができる。
【0098】
[試験方法について]
次に、二次電池の試験方法について説明する。二次電池の試験方法の各工程は、第1~第6実施形態に係る試験装置E1~E6に備えられるコントローラ5の制御に基づいて行われる。以下では、第1実施形態に係る試験装置E1を用いた場合を例に挙げて、二次電池の試験方法について説明する。
【0099】
(第1の試験方法)
図17は、試験装置E1を用いた第1の試験方法のフローチャートである。試験治具1の釘部11が支持部材2によって支持された状態で、釘部11の尖端部113と対向する所定位置に組電池LBがセットされ、スタートボタンが押下されると、コントローラ5の制御が開始される。コントローラ5の制御が開始されると、組電池LBの安全性を評価する試験が開始される。なお、試験開始から試験終了までの試験期間においては、組電池LBを構成する複数の単電池LB2のうちの試験対象の1つの単電池LB2の表面温度が温度センサTSによって検出され、その検出結果がコントローラ5に入力される。
【0100】
まず、コントローラ5は、アクチュエータ4を制御し、試験対象の単電池LB2に釘部11が突き刺さるように支持部材2を移動させる釘刺し制御を行う(ステップa1、釘刺し工程)。釘部11が突き刺された単電池LB2には、疑似的な内部短絡が生じる。単電池LB2に内部短絡が生じると、この単電池LB2の内部短絡部において発熱する。
【0101】
次いで、コントローラ5は、昇温調整器31を制御し、一対の導線121を介したヒーター12に対する供給電力を調整させて、ヒーター12によって釘部11を昇温させる加熱制御を行う(ステップa2、加熱工程)。
【0102】
釘刺し制御及び加熱制御の実行後において、コントローラ5は、温度センサTSの検出結果に基づいて、単電池LB2が熱暴走するに至ったか否かを判断する熱暴走監視制御を行う(ステップa3、熱暴走監視工程)。コントローラ5は、温度センサTSの検出結果が、単電池LB2の急激な温度上昇を示す結果である場合には、単電池LB2が熱暴走するに至ったと判断する。一方、単電池LB2の急激な温度上昇がない場合には、コントローラ5は、単電池LB2が熱暴走するに至っていないと判断する。この場合、コントローラ5は、昇温調整器31を制御し、一対の導線121を介してヒーター12に供給される電力を増加させる。これにより、ヒーター12の発熱量が高まり、ヒーター12による釘部11の加熱を強めることができる。このため、単電池LB2が熱暴走するに至る可能性を高めることができる。
【0103】
単電池LB2が熱暴走するに至ってから所定時間経過すると、コントローラ5は、試験終了制御を行う(ステップa4)。コントローラ5は、試験終了制御においてアクチュエータ4を制御し、単電池LB2に突き刺されている釘部11が単電池LB2から離間するように支持部材2を移動させる。更に、コントローラ5は、昇温調整器31を制御し、一対の導線121を介したヒーター12への電力の供給を停止させる。
【0104】
コントローラ5による試験終了制御の実行後において、作業員は、試験対象の単電池LB2以外の他の単電池への類焼が生じたかどうかを目視確認する。なお、試験対象の単電池LB2に隣接している単電池に、第2の温度センサを予め取り付けておいてもよい。この場合、第2の温度センサの検出結果に基づいて、当該第2の温度センサが取り付けられた単電池への類焼が生じたかどうかを確認することができる。
【0105】
以上説明したように、第1の試験方法では、試験対象の単電池LB2に釘部11を突き刺して内部短絡を生じさせ、その後、単電池LB2に突き刺された釘部11をヒーター12によって昇温させる。これにより、単電池LB2を効率よく熱暴走させることができる。
【0106】
なお、上記では、コントローラ5が、釘刺し制御の後に加熱制御を行う試験方法について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1の試験方法において、コントローラ5は、釘刺し制御とともに加熱制御を行うように構成されていてもよい。すなわち、コントローラ5は、釘刺し制御と加熱制御とを同時に行う。この場合、試験対象の単電池LB2に釘部11を突き刺して内部短絡を生じさせるとともに、当該単電池LB2に突き刺された釘部11をヒーター12によって昇温させることができる。
【0107】
また、第1の試験方法では、コントローラ5は、上記の熱暴走監視制御を省略しても構わない。この場合、コントローラ5は、釘刺し制御の後に加熱制御を行うか、あるいは、釘刺し制御とともに加熱制御を行う。そして、コントローラ5は、試験対象の単電池LB2に突き刺された釘部11をヒーター12によって昇温させてから所定時間経過すると、試験終了制御を行う。
【0108】
(第2の試験方法)
図18は、試験装置E1を用いた第2の試験方法のフローチャートである。第2の試験方法においては、スタートボタンが押下されると、コントローラ5は、昇温調整器31を制御し、一対の導線121を介したヒーター12に対する供給電力を調整させて、ヒーター12によって釘部11を昇温させる加熱制御を行う(ステップb1、加熱工程)。
【0109】
次いで、コントローラ5は、アクチュエータ4を制御し、試験対象の単電池LB2に釘部11が突き刺さるように支持部材2を移動させる釘刺し制御を行う(ステップb2、釘刺し工程)。釘部11が突き刺された単電池LB2には、疑似的な内部短絡が生じる。
【0110】
加熱制御及び釘刺し制御の実行後において、コントローラ5は、第1の試験方法と同様に、熱暴走監視制御を行い(ステップb3)、その後、試験終了制御を行う(ステップb4)。
【0111】
以上説明したように、第2の試験方法では、ヒーター12によって予め昇温された釘部11を試験対象の単電池LB2に突き刺して内部短絡を生じさせる。これにより、単電池LB2を、予め昇温された釘部11からの伝熱によって迅速に加熱することができる。このため、単電池LB2を効率よく熱暴走させることができる。
【0112】
なお、上記では、コントローラ5が、加熱制御の後に釘刺し制御を行う試験方法について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第2の試験方法において、コントローラ5は、加熱制御とともに釘刺し制御を行うように構成されていてもよい。すなわち、コントローラ5は、加熱制御と釘刺し制御とを同時に行う。この場合、釘部11をヒーター12によって昇温させるとともに、当該釘部11を試験対象の単電池LB2に突き刺して内部短絡を生じさせることができる。
【0113】
また、第2の試験方法では、コントローラ5は、上記の熱暴走監視制御を省略しても構わない。この場合、コントローラ5は、加熱制御の後に釘刺し制御を行うか、あるいは、加熱制御とともに釘刺し制御を行う。そして、コントローラ5は、ヒーター12によって昇温された釘部11が試験対象の単電池LB2に突き刺されてから所定時間経過すると、試験終了制御を行う。
【0114】
(第3の試験方法)
図19は、試験装置E1を用いた第3の試験方法のフローチャートである。第3の試験方法においては、スタートボタンが押下されると、コントローラ5は、アクチュエータ4を制御し、試験対象の単電池LB2に釘部11が突き刺さるように支持部材2を移動させる釘刺し制御を行う(ステップc1、釘刺し工程)。釘部11が突き刺された単電池LB2には、疑似的な内部短絡が生じる。
【0115】
次いで、コントローラ5は、温度センサTSの検出結果に基づいて、釘部11の突き刺しに伴う内部短絡に応じて単電池LB2が熱暴走するに至ったか否かを判断する熱暴走監視制御を行う(ステップc2、熱暴走監視工程)。
【0116】
コントローラ5は、釘部11が単電池LB2に突き刺されてから所定時間内に当該単電池LB2の熱暴走が生じないと判断した場合に、加熱制御を行う(ステップc3、加熱工程)。コントローラ5は、加熱制御において昇温調整器31を制御し、一対の導線121を介したヒーター12に対する供給電力を調整させて、ヒーター12によって釘部11を昇温させる。そして、単電池LB2が熱暴走するに至ってから所定時間経過すると、コントローラ5は、試験終了制御を行う(ステップc4)。
【0117】
コントローラ5は、熱暴走監視制御(ステップc2)において、釘部11の突き刺しに応じて単電池LB2に熱暴走が生じたと判断した場合には、加熱制御(ステップc3)を省略して試験終了制御(ステップc4)を行うよう構成してもよい。
【0118】
以上説明したように、第3の試験方法では、釘部11の突き刺しによって単電池LB2に内部短絡が生じた状態において、単電池LB2が熱暴走するに至らない場合に、ヒーター12によって昇温された釘部11からの伝熱によって単電池LB2を加熱することができる。これにより、単電池LB2の熱暴走を誘発させることができる。
【0119】
以上、本発明の実施形態に係る二次電池の試験治具、試験装置及び試験方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0120】
上記の実施形態では、組電池を試験対象とした場合の試験治具、試験装置及び試験方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、1つの二次電池を試験対象とした場合にも適用される。
【0121】
上記の第4~第6実施形態では、計測器6が、熱電対素線141から出力された熱起電力信号で示される熱起電力を温度に換算する構成について説明したが、このような構成に限定されるものではない。例えば、コントローラ5が熱起電力を温度に換算する機能構成を有していてもよい。この場合、計測器6の設置が省略され、熱電対素線141から出力された熱起電力信号はコントローラ5に直接入力される。コントローラ5は、入力された熱起電力信号で示される熱起電力を温度に換算する。
【0122】
上記の第4~第6実施形態では、釘部11の温度を検出する温度検出部が熱電対14によって構成される点について説明したが、温度検出部は熱電対14に限定されるものではない。例えば、温度検出部は、サーミスタや測温抵抗体などで構成されていてもよい。
【0123】
上記の第4~第6実施形態では、温度検出部を構成する熱電対14が釘部11に内蔵されている構成について説明したが、このような構成に限定されるものではない。例えば、温度検出部は、釘部11の外周面に取り付けられていてもよい。この場合、温度検出部は、釘部11の外周面において、釘部11が単電池LB2に突き刺された状態で当該単電池LB2に接触しない位置に配置される。
【符号の説明】
【0124】
1 試験治具
11 釘部
12 ヒーター
14 熱電対(温度検出部)
2 支持部材
E1~E6 試験装置