IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本光電工業株式会社の特許一覧

特許7520670生体情報処理装置、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】生体情報処理装置、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/352 20210101AFI20240716BHJP
【FI】
A61B5/352 100
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020165101
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057040
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小池 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 智
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/055782(WO,A1)
【文献】特表2013-532573(JP,A)
【文献】国際公開第2019/003549(WO,A1)
【文献】特表2004-523250(JP,A)
【文献】特開2007-265009(JP,A)
【文献】特表2019-502437(JP,A)
【文献】特開2019-201997(JP,A)
【文献】特開2004-016248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/03
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の生体情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された生体情報から拍を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された連続する拍の間隔を算出する算出部と、
拍の全測定期間を複数に分割した測定期間毎の前記間隔のバラツキに基づく情報を生成する生成部と、
前記バラツキに基づく情報、および当該情報に対応する前記測定期間に関する情報のうちの少なくともいずれかの情報を、前記測定期間毎に出力する出力部と、を有し、
前記生成部は、前記バラツキに基づく情報として、前記バラツキに関する相関係数を前記測定期間毎に算出する、生体情報処理装置。
【請求項2】
生体の生体情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された生体情報から拍を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された連続する拍の間隔を算出する算出部と、
拍の全測定期間を複数に分割した測定期間毎の前記間隔のバラツキに基づく情報を生成する生成部と、
前記バラツキに基づく情報、および当該情報に対応する前記測定期間に関する情報のうちの少なくともいずれかの情報を、前記測定期間毎に出力する出力部と、を有し、
前記バラツキに基づく情報は、前記バラツキをグラフにプロットした場合の点群の形状、および前記バラツキをグラフにプロットした場合の点群の面積、の少なくとも一つを含む情報である、生体情報処理装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記バラツキに基づく情報を用いて、複数の前記測定期間を分類し、分類した結果に基づいて、前記少なくともいずれかの情報を出力する、請求項1または2に記載の生体情報処理装置。
【請求項4】
生体の生体情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された生体情報から拍を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された連続する拍の間隔を算出する算出部と、
拍の全測定期間を複数に分割した測定期間毎の前記間隔のバラツキに基づく情報を生成する生成部と、
前記バラツキに基づく情報、および当該情報に対応する前記測定期間に関する情報のうちの少なくともいずれかの情報を、前記測定期間毎に出力する出力部と、を有し、
前記出力部は、前記バラツキに基づく情報の大きさに応じて、前記少なくともいずれかの情報の出力形態を異ならせる、生体情報処理装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記バラツキに基づく情報の小さい順、または大きい順に、前記少なくともいずれかの情報の順序を並び替えて出力する、請求項に記載の生体情報処理装置。
【請求項6】
生体の生体情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された生体情報から拍を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された連続する拍の間隔を算出する算出部と、
拍の全測定期間を複数に分割した測定期間毎の前記間隔のバラツキに基づく情報を生成する生成部と、
前記バラツキに基づく情報、および当該情報に対応する前記測定期間に関する情報のうちの少なくともいずれかの情報を、前記測定期間毎に出力する出力部と、を有し、
前記生成部は、前記バラツキに基づく情報として、前記測定期間における複数の前記拍をプロットした場合の点群の形状、面積、または密度に関する情報を生成し、
前記出力部は、前記形状、面積、または密度に関する情報に応じて、前記複数の前記測定期間を分類し、分類した結果に基づいて、前記少なくともいずれかの情報を出力する、生体情報処理装置。
【請求項7】
前記生成部は、拍の測定における前記生体の体位と前記測定の時間とに関する情報を取得し、当該情報に基づいて、前記生体の体位についての条件、前記測定の時間帯についての条件、ならびに拍の形状および間隔について条件の少なくともいずれかの条件が満たされるか否かを判定し、前記少なくともいずれかの条件が満たされない場合、拍を前記複数の拍から除外して前記バラツキに基づく情報を生成する、請求項1~のいずれか1項に記載の生体情報処理装置。
【請求項8】
前記出力部は、予め設定された点群の形状と同等の形状の点群に対応する測定期間、または互いに類似する点群の形状の測定期間を同じグループに分類する、請求項に記載の生体情報処理装置。
【請求項9】
前記出力部は、予め設定された点群の面積または密度と同等の面積または密度の点群に対応する測定期間、または互いに同等の面積または密度の点群の測定期間を同じグループに分類する、請求項に記載の生体情報処理装置。
【請求項10】
前記出力部は、前記少なくともいずれかの情報が出力される色と異なる色で当該情報の背景色を出力する、請求項に記載の生体情報処理装置。
【請求項11】
前記出力部は、前記少なくともいずれかの情報を識別するための識別情報を当該情報に対して付与する、請求項に記載の生体情報処理装置。
【請求項12】
前記測定期間に関する情報は、前記バラツキに基づく情報に対応する複数の拍の測定を行った時間または時間帯、あるいは複数の前記測定期間を互いに区別するための符号を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の生体情報処理装置。
【請求項13】
生体の生体情報を取得するステップ(a)と、
前記ステップ(a)において取得された生体情報から拍を検出するステップ(b)と、
前記ステップ(b)において検出された連続する拍の間隔を算出するステップ(c)と、
前記拍の全測定期間を複数に分割した測定期間毎における前記間隔のバラツキに基づく情報を生成するステップ(d)と、
前記バラツキに基づく情報、および当該情報に対応する前記測定期間に関する情報のうちの少なくともいずれかの情報を、前記測定期間毎に出力するステップ(e)と、を有し、
前記ステップ(d)において、前記バラツキに基づく情報として、前記バラツキに関する相関係数を前記測定期間毎に算出する、生体情報処理方法。
【請求項14】
前記ステップ(e)において、前記バラツキに基づく情報を用いて、複数の前記測定期間を分類し、分類した結果に基づいて、前記少なくともいずれかの情報を出力する、請求項13に記載の生体情報処理方法。
【請求項15】
生体の生体情報を取得するステップ(a)と、
前記ステップ(a)において取得された生体情報から拍を検出するステップ(b)と、
前記ステップ(b)において検出された連続する拍の間隔を算出するステップ(c)と、
前記拍の全測定期間を複数に分割した測定期間毎における前記間隔のバラツキに基づく情報を生成するステップ(d)と、
前記バラツキに基づく情報、および当該情報に対応する前記測定期間に関する情報のうちの少なくともいずれかの情報を、前記測定期間毎に出力するステップ(e)と、を有し、
前記ステップ(e)において、前記バラツキに基づく情報の大きさに応じて、前記少なくともいずれかの情報の出力形態を異ならせる、生体情報処理方法。
【請求項16】
請求項13~15のいずれか1項に記載の生体情報処理方法に含まれる処理を、コンピュータに実行させるための生体情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報処理装置、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、医師が患者の心臓の状態を把握するために、心電計を使用した心電図測定が行われる。心電計には、数分間程度の心電図を記録する通常の心電計の他に、長時間(例えば、1~14日程度)を通じて心電図を記録することが可能なホルタ心電計がある。ホルタ心電計によるホルタ心電図検査は、睡眠時、運動時等の日常生活を通して長時間にわたり心電図波形を記録するために行われる。
【0003】
心電図波形を処理して表示する生体情報処理装置には、収集された心電図から心拍を検出し、各々の心拍について不整脈の分類を行う機能を有するものがある。しかし、患者に装着する電極が拾ったノイズが心電図波形に含まれていたり、生体情報処理装置による不整脈の分類が適切ではなかったりする可能性があるため、現状では、医師による診断の前に、検査技師が各々の心拍波形を目視により確認している。通常、心電図には膨大な数の心拍波形が含まれているため、心拍波形の確認は、検査技師にとって非常に負担が大きい作業となっている。
【0004】
これに関連して、例えば、下記の特許文献1には、医師や検査技師等のユーザが、心拍のトレンドグラフの領域を指定して、その領域に含まれる複数の心拍について、不整脈の分類を一括して別の不整脈の分類に変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、ユーザが不整脈の分類を変更できるものの、ユーザは、分類された多量の心拍波形のトレンドグラムやローレンツプロット等のグラフを確認する必要がある。したがって、依然としてユーザに大きな負担となっているという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものである。したがって、本発明の主たる目的は、分類されたグラフを確認するユーザの作業を軽減できる生体情報処理装置、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記によって達成される。
【0009】
生体情報処理装置は、取得部、検出部、算出部、生成部、および出力部を有する。取得部は、生体の生体情報を取得する。検出部は、前記取得部によって取得された生体情報から拍を検出する。算出部は、前記検出部によって検出された連続する拍の間隔を算出する。生成部は、拍の全測定期間を複数に分割した測定期間毎の前記間隔のバラツキに基づく情報を生成する。出力部は、前記バラツキに基づく情報、および当該情報に対応する前記測定期間に関する情報のうちの少なくともいずれかの情報を、前記測定期間毎に出力する。
一態様では、前記生成部は、前記バラツキに基づく情報として、前記バラツキに関する相関係数を前記測定期間毎に算出する。
また、別の態様では、前記バラツキに基づく情報は、前記バラツキをグラフにプロットした場合の点群の形状、および前記バラツキをグラフにプロットした場合の点群の面積、の少なくとも一つを含む情報である。
また、別の態様では、前記出力部は、前記バラツキに基づく情報の大きさに応じて、前記少なくともいずれかの情報の出力形態を異ならせる。
さらに、別の態様では、前記生成部は、前記バラツキに基づく情報として、前記測定期間における複数の前記拍をプロットした場合の点群の形状、面積、または密度に関する情報を生成し、前記出力部は、前記形状、面積、または密度に関する情報に応じて、前記複数の前記測定期間を分類し、分類した結果に基づいて、前記少なくともいずれかの情報を出力する
【0010】
また、生体情報処理方法は、生体の生体情報を取得するステップ(a)と、前記ステップ(a)において取得された生体情報から拍を検出するステップ(b)と、前記ステップ(b)において検出された連続する拍の間隔を算出するステップ(c)と、前記拍の全測定期間を複数に分割した測定期間毎における前記間隔のバラツキに基づく情報を生成するステップ(d)と、前記バラツキに基づく情報、および当該情報に対応する前記測定期間に関する情報のうちの少なくともいずれかの情報を、前記測定期間毎に出力するステップ(e)と、を有する。
一態様では、前記ステップ(d)において、前記バラツキに基づく情報として、前記バラツキに関する相関係数を前記測定期間毎に算出する。
また、別の態様では、前記ステップ(e)において、前記バラツキに基づく情報の大きさに応じて、前記少なくともいずれかの情報の出力形態を異ならせる。
【0011】
また、生体情報処理プログラムは、上記生体情報処理方法に含まれる処理を、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、拍の間隔のバラツキに基づく情報、および測定期間に関する情報のうちの少なくともいずれかの情報を、測定期間毎に出力するので、ユーザは、拍のバラツキの大きさを測定期間毎に容易に確認できる。したがって、分類されたグラフを確認するユーザの作業を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る生体情報処理システムの概略的なハードウェア構成を示すブロック図である。
図2図1に示す生体情報処理装置の主要な機能を例示する機能ブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る生体情報処理方法の処理手順について説明するためのフローチャートである。
図4】心電図波形の概形を例示する模式図である。
図5】各測定期間について心拍の間隔の算出結果を例示する図である。
図6】洞調律のローレンツプロットを例示するグラフである。
図7】心房細動のローレンツプロットを例示するグラフである。
図8】比較例として、測定期間毎のローレンツプロットの一覧表示を例示する模式図である。
図9】相関係数に応じて並び替えられたローレンツプロットの一覧表示を例示する模式図である。
図10】並び替えられたローレンツプロットに測定期間の符号を付加した一覧表示を例示する模式図である。
図11】測定期間に関する情報として測定期間毎の開始時刻の一覧表示を例示する模式図である。
図12】測定期間に関する情報として測定期間の符号の一覧表示を例示する模式図である。
図13】バラツキに関する情報として相関係数を付加した一覧表示を例示する模式図である。
図14】バラツキに基づく情報、または測定期間に関する情報に応じて、背景色を変化させて表示することで識別する場合を例示する模式図である。
図15】一覧表示に識別情報を付与する場合を例示する模式図である。
図16】心拍のRR間隔の時系列変化を拍数(密度)で表示するグラフである。
図17】心拍のRR間隔の時系列変化を点で表示するグラフである。
図18】第2の実施形態に係る生体情報処理方法の処理手順について説明するためのフローチャートである。
図19】頻脈のローレンツプロットを例示するグラフである。
図20】心房粗動のローレンツプロットを例示するグラフである。
図21】VPC代償性 洞性不整脈が含まれるローレンツプロットを例示するグラフである。
図22】VT等が含まれるローレンツプロットを例示するグラフである。
図23】通常の睡眠時、および睡眠時無呼吸症候群が発生している睡眠時のローレンツプロットを例示するグラフである。
図24】点群の形状に応じて分類したローレンツプロットの一覧表示を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、図中、同一の部材には同一の符号を用いた。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る生体情報処理システム100の概略的なハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、生体情報処理システム100は、生体情報処理装置110、出力装置120、および入力装置130等を有する。
【0016】
生体情報処理装置110は、患者(生体)から収集した生体情報(例えば、心電図または脈波)から拍(心拍または脈拍)を検出し、拍のバラツキの大きさを測定期間毎に容易に確認できるように出力、および/または分類する機能を備える。例えば、特定の心疾患の患者では、時系列的にある程度まとまった数の拍において、健常者と比べて、拍の間隔のバラツキが大きくなることが知られている。したがって、ユーザは生体情報処理装置110による出力結果、または分類結果を確認することにより、拍の間隔のバラツキが大きい測定期間を容易に識別でき、心疾患が疑われる測定期間をユーザが探索する手間を軽減することが可能となる。ユーザは、例えば、医師や検査技師等の医療従事者である。
【0017】
なお、以下では、生体情報として心電図を取得し、心電図から心拍を検出する場合について例示するが、本実施形態は、このような場合に限定されず、生体情報として脈波信号をパルスオキシメータ等から取得し、脈波信号から脈拍を検出する場合についても適用できる。
【0018】
本実施形態の生体情報処理システム100は、例えば、心拍波形、生体情報のトレンドグラフやリスト等を表示できる医療用の専用装置(生体情報モニタ等)でありうる。また、生体情報処理装置110は、例えば、後述する生体情報処理方法を実行するための生体情報処理プログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等であってもよい。さらに、生体情報処理装置110は、ユーザの身体(例えば、腕や頭部等)に装着されるウェアラブルデバイス等であってもよい。
【0019】
生体情報処理装置110は、プロセッサ101、メモリ102、記憶装置103、および通信制御装置104を有する。メモリ102は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を有する。ROMには、各種プログラムやパラメータ等が記憶されている。また、RAMは、プロセッサ101により実行される各種プログラム等が格納されるワークエリアを備える。プロセッサ101は、ROMや記憶装置103に記憶されている各種プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMと協働することにより各種処理を実行するように構成されている。
【0020】
記憶装置103は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等のストレージを有する。記憶装置103は、生体情報処理プログラムや各種データを格納するように構成されている。
【0021】
また、記憶装置103は、生体情報としての心電図データを保存することができる。心電図は、時間軸上に連続して発生する複数の心拍波形、測定時間(時刻)に関する情報等を含む。心拍波形は、心拍、すなわち心臓の拍動を示す波形である。心電図データは、心電計(例えば、ホルタ心電計)により取得され、生体情報処理装置110に提供される。心電図データは、例えば、患者の14日分の心電図を含みうる。
【0022】
また、心電計は、患者の体位を計測する体位センサーを備え、心電図データとともに、患者の体位に関する情報を生体情報処理装置110に提供する。
【0023】
通信制御装置104、生体情報処理装置110を通信ネットワーク140に接続するように構成されている。具体的には、通信制御装置120は、通信ネットワーク140を介してサーバ(コンピュータ)等の外部装置と通信するための各種インターフェース用の処理回路を含んでおり、通信ネットワーク140を介して通信するための通信規格に適合するように構成されている。ここで、通信ネットワーク140は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)またはインターネット等である。
【0024】
生体情報処理装置110は、例えば、通信ネットワーク140上に配置されたサーバから通信制御装置120を介して、患者の心電図データおよび体位に関する情報を取得するように構成できる。
【0025】
出力装置120は、ディスプレイを有する。ディスプレイは、生体情報処理装置110から受信した表示用のデータを画面に表示する。ディスプレイは、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等でありうる。また、ディスプレイは、ユーザの頭部に装着される透過型、または非透過型のヘッドマウントディスプレイ等の表示装置であってもよい。なお、図1には、生体情報処理装置110と出力装置120とが別装置である場合について例示しているが、このような場合に限定されず、出力装置120のディスプレイと生体情報処理装置110とは一体であってもよい。
【0026】
また、出力装置120は、プリンタを有し、プリンタは生体情報処理装置110から受信した印刷用のデータを用紙に印刷する。
【0027】
入力装置130は、生体情報処理装置110を操作するユーザの入力操作を受け付けるとともに、当該入力操作に対応する指示信号を生成するように構成されている。入力装置130は、例えば、出力装置120のディスプレイ上に重ねて配置されたタッチパネル、筐体に取り付けられた操作ボタン、マウス、キーボード等を備える。入力装置130によって生成された指示信号は、生体情報処理装置110に送信される。生体情報処理装置110は、指示信号に応じて所定の処理を実行する。
【0028】
また、入力装置130は、USBメモリ等の記憶媒体を読み取るデバイスを備える。心電計により取得された心電図データおよび体位に関する情報は、記憶媒体に保存され、ユーザに提供される。入力装置130は、記憶媒体に保存された心電図データおよび体位に関する情報を読み取り、記憶装置103に保存する。
【0029】
また、心電計と生体情報処理装置110とが有線または無線による接続手段により接続可能である場合、心電計は、心電図データおよび体位に関する情報を生体情報処理装置110に送信し、生体情報処理装置110は心電図データおよび体位に関する情報を受信して記憶装置103に保存する。
【0030】
生体情報処理装置110のプロセッサ101は、生体情報処理プログラムをRAM上に展開し、生体情報処理プログラムを実行することで、生体情報処理装置110の各部を制御し、様々な機能を実現する。
【0031】
<生体情報処理方法>
図2図1に示す生体情報処理装置110の主要な機能を例示する機能ブロック図であり、図3は第1の実施形態に係る生体情報処理方法の処理手順について説明するためのフローチャートである。また、図4は心電図波形の概形を例示する模式図であり、図5は各測定期間について心拍の間隔の算出結果を例示する図である。
【0032】
図2に示すように、生体情報処理装置110は、取得部111、検出部112、算出部113、生成部114、および出力部115として機能する。以下、これらの機能部の詳細と、これらの機能部を用いた生体情報処理方法の処理手順の詳細とを説明する。各機能部とそれらの制御処理は、生体情報処理装置110のプロセッサ101が生体情報処理プログラムを実行することにより実現される。
【0033】
図3に示すように、まず、患者の心電図を取得する(ステップS101)。取得部111は、心電計から、例えば、USBメモリを介して、患者の心電図および体位に関する情報を取得する。取得した心電図データおよび体位に関する情報は、記憶装置103に保存される。
【0034】
次に、ステップS101において取得された心電図から心拍を検出する(ステップS102)。検出部112は、取得部111によって取得された心電図から心拍を検出する。図4に示すように、心電図は、R波をピークとする複数の心拍波形を含む。検出部112は、例えば、心電図波形のピーク値を検出するピーク検出部を備え、心電図において、高さが所定の閾値を超える波を、心拍のR波として心拍を検出する。
【0035】
次に、ステップS102において検出された連続する心拍の間隔を算出する(ステップS103)。算出部113は、心拍の全測定期間(1回の測定で検出部112によって心拍の検出が行われた期間)について、基準拍と当該基準拍の1つ前の心拍である前方拍との間の間隔RRnと、基準拍と当該基準拍の1つ後の心拍である後方拍との間の間隔RRn+1と、を算出する。間隔RRnおよび間隔RRn+1の算出結果の一例を図5に示す。図5では、心拍の全測定期間を複数の測定期間T1~Tnに分割して示している。測定期間T1~Tnは、時系列的にまとまった数の心拍を含む期間(例えば、時間では30分程度、拍数では2000拍程度)である。
【0036】
なお、通常、患者の心拍の検出後、全測定期間の心拍データは、不整脈の種類に応じて自動的に分類される。これにより、心拍データは、正常、心房細動、頻脈、心房粗動等の該当する不整脈のラベルが付与されうる。しかし、自動分類は、完全ではなく、心電図測定時に電極が拾ったノイズ(例えば、図中の太線で囲われたデータ)等により、分類に誤りが生じたり、分類ができなかったりする場合がある。検出されたノイズは、自動的に除去されうるが、分類の誤りや未分類の心拍はユーザにより分類を再度行う必要がある。
【0037】
次に、心拍の間隔のバラツキに基づく情報を生成する(ステップS104)。生成部114は、測定期間T1~Tn毎に、心拍の間隔のバラツキに基づく情報(以下、「バラツキ情報」と称する)を生成する。バラツキ情報は、例えば、心拍の間隔のバラツキの大小を評価するための指標(以下、単に「指標」ともいう)でありうる。
【0038】
生成部114は、例えば、測定期間T1~Tn毎に、間隔RRnおよび間隔RRn+1を使用して、指標を算出する。この指標としては、例えば、間隔RRnおよび間隔RRn+1についての相関係数S1~Sn、間隔RRnおよび間隔RRn+1をグラフにプロットした場合の点群の面積、点群の密度、点群の形状等でありうる。グラフは、例えば、ローレンツプロットでありうる。
【0039】
相関係数は、例えば、患者の心臓が心房細動を起こしている場合、心拍の間隔のバラツキが大きくなるため、患者の心臓が正常なリズムで動いている洞調律である場合よりも小さい値となる。
【0040】
図6は洞調律のローレンツプロットを例示するグラフであり、図7は心房細動のローレンツプロットを例示するグラフである。図6に示すように、間隔RRnおよび間隔RRn+1を各々縦軸および横軸に取ったローレンツプロットを想定した場合、洞調律では、各点は、図中の45度線L1に概ね沿って分布する。図6の例では、患者の覚醒時、および睡眠時の心拍を測定対象としているので、心拍の間隔は、短い時(例えば、運動時等)と長い時(例えば、睡眠時)とが生じうる。したがって、各点は、心拍の間隔が短く原点に近い部分から、心拍の間隔が長く原点から遠い部分へ、L1上に沿って分布する。これに対して、図7に示すように、心房細動では、図中の45度線L2と交差する方向に広がりを有する形状になる。
【0041】
また、指標として点群の面積を算出する場合、生成部114は、例えば、図6図7と同様のローレンツプロットを想定し、ローレンツプロットにおける点群の面積を算出する。より具体には、生成部114は、例えば、座標(RRn,RRn+1)の各点を面積1の領域とし、互いに重ならない、すなわち同一の位置にプロットされない点の数をカウントすることにより、指標としての点群の面積を算出する。したがって、この処理は、互いに異なる座標(RRn,RRn+1)の数を合計する処理と同等であるので、ディスプレイにグラフを表示する必要はないが、仮にローレンツプロットを表示した場合、指標は、点群によって覆われている部分の面積に対応する(例えば、図6図7等を参照)。
【0042】
なお、図6図7では、プロットされた点の粗密に応じたヒートマップが表示されている(図8図10図13図15図19図24のローレンツプロットについても同様)。これらの図において、点群の中央部の色の濃い部分において密度が最も高く、その周辺の色の薄い部分において密度が中程度、点群の周縁部の濃い部分において密度が最も低くなっている。ただし、ヒートマップの濃淡は、1つのヒートマップ内における粗密を相対的に表しているが、他のヒートマップとの間における相対的な粗密の関係を表すものではない。すなわち、2つのヒートマップにおいて同じ濃さであっても、同じ密度の高さを表しているとは限らない。
【0043】
なお図6及び図7は、点の粗密をグレースケールの濃淡で表現したヒートマップであるが、点の粗密を表すヒートマップはこれに限られず、例えば点の粗密を色の変化に応じて表現することもできる。すなわち、点群の粗密を表現可能な任意の表現(色の変化、濃淡の変化、の他に明度の変化、彩度の変化、等)を用いたヒートマップを表示すればよい。
【0044】
また、点群の密度については、例えば、図6では密度が高い点群領域が45度線L1の付近に集中的に分布しているのに対し、図7では密度が中程度の点群領域が45度線L2の付近と、その周辺部に広がりを持って分布している。点群の密度は、45度線L2上で最も高く、45度線L2から離れるにつれて低くなっている。したがって、ローレンツプロットの45度線の付近の密度が指標として使用されうる。
【0045】
また、生成部114は、心拍の測定における患者の体位と測定時間とに関する情報を取得し、当該情報に基づいて、患者の体位についての条件、測定の時間帯についての条件、ならびに心拍の形状および間隔について条件の少なくともいずれかの条件が満たされない心拍を除外してバラツキ情報を生成できる。
【0046】
例えば、覚醒時におけるバラツキ情報を生成する場合、患者が立位または座位であるという条件と、普段患者が就寝していない時間帯であるという条件と、心拍の形状および間隔について所定の条件を満たすという条件と、が満たされているか否かが判定される。この場合、出力部115は、患者の体位と測定時間とに関する情報を用いて、例えば、仰臥位、伏臥位、または横臥位の時に測定した心拍と、患者が就寝している時間帯(夜の時間帯)に測定した心拍とを除外する。また、形状および間隔が所定の条件を満たさない心拍についても除外する。これにより、ユーザが所望する条件に適合した心拍のデータを使用してバラツキ情報を生成できる。
【0047】
次に、バラツキ情報、および当該情報に対応する測定期間に関する情報(以下、単に「測定期間情報」という)のうちの少なくともいずれかの情報(以下、「出力情報」という)を、測定期間毎に出力する(ステップS105)。
【0048】
図8は比較例として、測定期間毎のローレンツプロットの一覧表示を例示する模式図であり、図9は相関係数に応じて並び替えられたローレンツプロットの一覧表示を例示する模式図であり、図10は並び替えられたローレンツプロットに測定期間の符号を付加した一覧表示を例示する模式図である。
【0049】
図8では、従来技術により、15日の03:12~16日の05:42を全測定期間として、患者の心拍を検出し、検出結果に基づいて、各測定期間の心拍のローレンツプロットを作成し一覧表示している。全測定期間は、T1~T54の測定期間を含むが、図8では紙面の都合上、全測定期間のうちT1~T36の期間のみについて示している。各測定期間は、30分であり、各測定期間の測定開始時刻は、各ローレンツプロットの上部に表示されている。また、図8では、説明の便宜のため、各測定期間を互いに区別するための符号T1~T36の符号を付している。
【0050】
本実施形態では、出力部115は、相関係数の大きさに応じて、出力情報の出力形態を異ならせる。より具体的には、出力部115は、例えば、測定期間T1~T54について、相関係数の小さい順、または大きい順にバラツキ情報、および/または測定期間情報の順序を並び替えた表示用のデータを生成し、出力装置120に送信してディスプレイに表示させる。また、出力部115は、測定期間T1~T54について、相関係数の小さい順、または大きい順にバラツキ情報、および/または測定期間情報の順序を並び替えた印刷用のデータを生成し、出力装置120に送信してプリンタに印刷させることもできる。
【0051】
例えば、図9に示すように、出力部115は、測定期間T1~T54について、相関係数の小さい順にローレンツプロットを並び替えた表示用のデータを出力装置120のディスプレイに表示させる。なお、各ローレンツプロットの上部には、測定期間情報として、各測定期間の測定開始時刻が表示されている。したがって、相関係数による並び替え後は、時系列的な並び順とは異なる並び順になりうるが、ユーザは、測定開始時刻によって、表示されている各測定期間ローレンツプロットと、時系列との対応関係を把握することができる。
【0052】
上述のように、通常、患者の心拍の検出後、心拍データは、不整脈の種類に応じて自動的に分類される。本実施形態では、出力部115は、相関係数の小さい順、または大きい順にディスプレイに表示させる。したがって、心房細動に該当する心拍が分類されている場合は、図9に示すように相関係数が小さい順に並び替えた後における左側の2列の測定期間は、心房細動の不整脈であることが推定される。これにより、ユーザは移動分類の結果を確認することなく、上記2列の測定期間の不整脈が心房細動に該当することを直ちに判断できるので、この2列の測定期間の不整脈について、迅速な対応が可能となる。
【0053】
例えば、ユーザが心電図検査についての報告書を作成する際に、上記2列を選択(例えば、タッチパネルでタッチ)することにより、この2列のローレンツプロットを一括でコピーして報告書の「所見」の欄に掲載することができる。これにより、ユーザが報告書を作成する手間や時間を低減できる。また、報告書には、ローレンツプロットに対応するRR間隔の経時変化をプロットしたグラフ(例えば、図16を参照)を併せて掲載することもできる。
【0054】
また、図10に示すように、出力部115は、各測定期間のローレンツプロットに対して、T1~T54の符号を付して表示することができる。これにより、表示されている各測定期間のローレンツプロットと、時系列の対応関係を把握することがさらに容易となる。
【0055】
図11は測定期間情報として測定期間毎の開始時刻の一覧表示を例示する模式図であり、図12は測定期間情報として測定期間の符号の一覧表示を例示する模式図である。測定期間情報は、バラツキ情報に対応する複数の心拍の測定を行った時間または時間帯、あるいは複数の測定期間を互いに区別するための符号を含む。また、図13はバラツキに関する情報として相関係数を付加した一覧表示を例示する模式図であり、図14はバラツキ情報、または測定期間情報が表示される色とは異なる色で背景色を表示する場合を例示する模式図であり、図15は一覧表示に識別情報を付与する場合を例示する模式図である。
【0056】
ユーザがローレンツプロットを確認する必要が無い場合は、図11に示すように、ローレンツプロットを表示せずに、測定期間T1~T54について、相関係数の小さい順、または大きい順に、測定期間情報として測定開始時刻を表示するように構成してもよい。図11には、相関係数の小さい順に、測定期間毎の開始時刻を表示する場合を例示している(紙面の都合上、全測定期間のうちの一部の測定期間の測定開始時刻のみ示されている)。
【0057】
また、ユーザがローレンツプロットを確認する必要が無い場合は、図12に示すように、ローレンツプロットを表示せずに、測定期間T1~T54について、相関係数の小さい順、または大きい順に、測定期間情報として測定期間の符号を表示するように構成してもよい。図12には、相関係数の小さい順に、測定期間の符号T1~T54を表示する場合が例示されている(紙面の都合上、全測定期間のうちの一部の測定期間の符号のみ示されている)。
【0058】
また、図13に示すように、図9に示す各ローレンツプロットに、バラツキ情報としての相関係数の値を付加するように構成することもできる。ユーザは、相関係数の値を確認できるので、各測定期間における心拍の間隔のバラツキの大小を把握しやすくなる。
【0059】
また、出力部115は、各測定期間のローレンツプロットの並び順を、図8に示す時系列的な並び順から変えずに、バラツキ情報、または測定期間情報が表示される色と異なる色で当該情報の背景色を表示させることもできる。例えば、図14に示すように、出力部115は、相関係数の大小に応じて、測定開始時刻が表示される色と異なる色で測定開始時刻の背景色を表示させる。より具体的には、出力部115は、相関係数の大きさが所定の第1閾値よりも小さい場合、測定開始時刻の背景色を赤色、所定の第2閾値よりも小さく、かつ第1の閾値以上である場合、背景色を黄色、第2閾値以上である場合、背景色を緑色で表示させる。これにより、ディスプレイに表示される各測定期間のローレンツプロットの並び順は変わらないが、ユーザは、相関係数の大小、すなわち心拍の間隔のバラツキの大小が一目で把握できる。
【0060】
また、出力部115は、各測定期間のローレンツプロットの並び順を、図8に示す時系列的な並び順から変えずに、バラツキ情報、または測定期間情報を識別するための識別情報を当該情報に対して付与することもできる。例えば、図15に示すように、出力部115は、相関係数が所定の第3閾値よりも小さい測定期間のローレンツプロットを四角い枠のマークで囲って表示する。これにより、ユーザは、マークを頼りに心拍のバラツキの大小を容易に識別できる。なお、マークは四角い枠に限らず、識別が容易な形状であれば他の形状であってもよい。また、相関係数の大きさを複数段階に区分し、段階に応じて異なる形態(形状や色)のマークを表示させることもできる。
【0061】
以上では、点群をローレンツプロットに表示する場合を例示して説明したが、グラフはローレンツプロットに限定されるものではなく、心拍の間隔のバラツキを表示できるグラフを適用できる。
【0062】
図16に示すように、心拍のRR間隔および時刻を各々縦軸および横軸に取り、RR間隔に該当する拍数(密度)を表示する場合、点の密度が低い区間(A)は、RR間隔のバラツキが大きく、間隔RRnおよび間隔RRn+1についての相関係数は小さくなる。一方、区間(A)よりも点の密度が高い区間は、RR間隔のバラツキが小さく、相関係数は高くなる。
【0063】
また、図17に示すように、心拍のRR間隔および時刻を各々縦軸および横軸に取り、RR間隔に対応する点を1つ1つ表示する場合、区間(B)はRR間隔のバラツキが大きく、間隔RRnおよび間隔RRn+1についての相関係数は小さくなる。一方、点が集中している区間は、RR間隔のバラツキが小さく、相関係数は高くなる。
【0064】
出力部115は、例えば、バラツキ情報、または測定期間情報が表示される色とは異なる色で当該情報の背景色を表示できる。あるいは、バラツキ情報、または測定期間情報を識別するための識別情報を付与できる。
【0065】
図16では、密度が低い区間(A)に含まれる測定開始時刻に「*」が付加される場合について例示している。また、図17では、点がばらついている区間(B)に含まれる測定開始時刻が表示される色と異なる色で測定開始時刻の背景色を表示する場合について例示している。したがって、ユーザは、点のバラツキの大きい区間(A),(B)では、何らかの不整脈が発生しており、バラツキの小さい、すなわち密度の高い区間では、洞調律に対応していると推定できる。
【0066】
以上で説明した本実施形態の生体情報処理装置110によれば、心拍の間隔のバラツキ情報、および測定期間情報のうちの少なくともいずれかの情報を、測定期間毎に出力する。より具体的には、心拍の間隔のバラツキの大小を評価するための指標に応じて、出力情報の出力形態を異ならせるので、ユーザは、心拍のバラツキの大きさを測定期間毎に容易に確認できる。したがって、分類されたグラフを確認するユーザの作業を軽減できる。
【0067】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、バラツキ情報として、上記指標、または測定期間における複数の心拍をグラフにプロットした場合の点群の形状に関する情報を用いて、複数の測定期間を分類し、分類した結果に基づいて、出力情報を表示する場合について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態の構成と同一の構成については詳細な説明を省略する。
【0068】
図18は、第2の実施形態に係る生体情報処理方法の処理手順について説明するためのフローチャートである。また、図19図20は、各々頻脈、および心房粗動のローレンツプロットを例示するグラフであり、図21図22は、各々VPC(Ventricular Premature Contraction)代償性 洞性不整脈が含まれるローレンツプロット、およびVT(Ventricular Tachycardia)等が含まれるローレンツプロットを例示するグラフである。また、図23は、通常の睡眠時、および睡眠時無呼吸症候群が発生している睡眠時のローレンツプロットを例示するグラフである。また、図24は、点群の形状に応じて分類したローレンツプロットの一覧表示を例示する模式図である。
【0069】
図18において、ステップS201~S203の処理は、第1の実施形態におけるステップS101~S103の処理と同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0070】
ステップS204において、心拍の間隔のバラツキ情報を生成する。本実施形態では、バラツキ情報は、指標、または測定期間における複数の心拍をグラフにプロットした場合の点群の形状に関する情報でありうる。以下では、グラフとして、間隔RRnおよび間隔RRn+1を各々縦軸および横軸に取ったローレンツプロットを想定し、点群の代表的な形状について説明する。
【0071】
第1の実施形態において、図6を参照して述べたように、洞調律では、各点は、図中の45度線L1に概ね沿って分布する。したがって、点群は、L1に沿った帯状(ひも状)の形状を有する。これに対して、図7を参照して述べたように、心房細動では、図中の45度線L2と交差する方向に広がりを有する形状になる。より具体には、点群は、L2上の原点に近い部分では広がりが小さく、原点から遠くなるにつれて広がりが大きくなる三角形状の形状を有する。
【0072】
また、図19に示すように、頻脈では、各点は、洞調律の場合(図6)と同様に、図中の45度線L3に概ね沿って分布するが、洞調律の場合と比較して、原点から近い領域に概ね分布する。これは、頻脈の場合、心拍の間隔が洞調律の場合と比べて短い傾向があるためである。したがって、点群は、L3に沿った帯状(ひも状)の形状を有する。帯(ひも)の長さは、洞調律の点群に比べて短い。
【0073】
また、図20に示すように、心房粗動では、点群は、図中の45度線L4と交差する方向に広がりを有する形状になる。より具体には、点群は、L4上の原点に近い部分および遠い部分では広がりが小さく、これらの部分の中間で広がりが大きくなる形状を有する。また、心房粗動では、点の分布が密な部分と疎の部分が混在することで、概ねL4を中心とした房状の形状を有する。
【0074】
また、図21に示すように、VPC代償性 洞性不整脈が含まれる場合、点群は、図中の45度線L5と交差する方向に広がりを有する形状になる。より具体には、点群は、図中の45度線L5に概ね沿って分布している部分D1と、L5上の原点に近い部分からL5とは異なる方向に延びる部分D2とを有する。したがって、点群は、概ねL5を中心とした手のひら状の形状を有する。
【0075】
また、図22に示すように、VT等が含まれる場合、点群は、図中の45度線L6と交差する方向に広がりを有する形状になる。より具体には、点群は、図中の45度線L6に概ね沿って分布している部分D3と、D3からL6とは異なる方向に延びる部分D4とを有する。したがって、点群は、概ねL6を中心とした樹枝状の形状を有する。
【0076】
また、図23の上段のグラフに示すように、不整脈が発生しておらず、呼吸が安定している通常の睡眠時のローレンツプロットでは、各点は、図中の45度線L7に概ね沿い、RRnおよびRR+1がともに1.0よりも大きい領域に分布する傾向がある。これは、交感神経の活動が低下して心拍数が低下するためである。したがって、点群は、概ねL7を中心とした非常に短い帯状(ひも状)の形状を有する。
【0077】
一方、下段のグラフのように、睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)が発生している睡眠時では、酸素不足を補うために、覚醒時と同じように交感神経が活動し続けるため、心拍数が上昇し、心拍の間隔が短い時が生じる。これにより、点群は、概ねL8を中心とした帯状(ひも状)の形状を有する。帯(ひも)の長さは、通常の睡眠時よりも長くなる。
【0078】
このように、ローレンツプロットにおける点群の形状は、測定期間における不整脈の有無、不整脈の種類に応じて変化する。したがって、点群の形状から、不整脈の有無や、不整脈の種類を識別することが可能となる。以上で説明した不整脈以外にも、上室性/心室性不整脈や、徐脈、ブロック等、様々な不整脈についても、点群の形状から識別できることが多い。
【0079】
また、第1の実施形態で述べたように、点群の面積は、互いに異なる座標(RRn,RRn+1)の数を合計することで求められる。したがって、図6図7図19図23から、点群の面積は、おおよそ頻脈<洞調律<心房細動、心房粗動等であると考えられる。これにより、点群の面積から少なくとも不整脈の有無の判別が可能となる。
【0080】
次に、ステップS205において、バラツキ情報を用いて、複数の測定期間を分類する。出力部115は、例えば、ローレンツプロットの点群の形状に関する情報を用いて、測定期間T1~T54を不整脈の有無や、不整脈の種類によって分類する。
【0081】
より具体的には、出力部115は、測定期間T1~T54の中から選定されたローレンツプロットについて点群の形状の特徴を抽出し、選定されたローレンツプロット以外の測定期間T1~T54のうち、同じ特徴を有するローレンツプロットを紐づける。これにより、同じ特徴を有するローレンツプロットが同じグループに分類される。生体情報処理装置110のプロセッサ101は、OSやアプリケーションソフトウェア上で、不整脈の有無、不整脈の種類に対応するフォルダを生成する。グループに分類された各々の測定期間T1~T54のローレンツプロットは、対応するフォルダに振り分けられる。
【0082】
ユーザは、例えば、出力装置120のディスプレイや、通信ネットワーク140により生体情報処理装置110と接続されたコンピュータ端末(例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等)のディスプレイで分類されたローレンツプロットを確認できる。
【0083】
また、ローレンツプロットの選定は、例えば、ユーザが入力装置130を通じて行うことができる。ユーザは、入力装置130のタッチパネル、マウス等を使用して、例えば一覧表示されたローレンツプロットの中から、分類を行うローレンツプロットを選定する。
【0084】
例えば、出力部115は、測定期間T1~T54の中から選定されたローレンツプロットの特徴と、測定期間T1~T54の他のローレンツプロットの特徴とについて類似度を算出する。類似度が所定の閾値以上である場合、点群の形状が同じ特徴を有すると判定し、類似度が所定の閾値未満である場合、点群の形状が同じ特徴を有しないと判定する。類似度は、点群の形状について、類似性を複数の観点(例えば、点群の輪郭線の形状、点群の輪郭線と45度線とがなす角度等)を考慮して算出されうる。
【0085】
また、測定期間T1~T54のローレンツプロットから点群の形状の特徴を抽出する代わりに、正常、心房細動、心房粗動、頻脈等における点群の形状の特徴を予め生体情報処理装置110の記憶装置103に記憶しておくこともできる。出力部115は、測定期間T1~T54のローレンツプロットの点群の形状が、記憶装置103に記憶されたこれらの特徴と一致するか否かを判定することにより、点群の形状が同じ特徴を有するか否かを判定することもできる。
【0086】
例えば、洞調律(図6)および頻脈(図19)のローレンツプロットの点群は、45度線L1(L3)に概ね沿って帯状(ひも状)であり、その他の不整脈のローレンツプロットからの点群は45度線と交差する方向に広がりを有する。したがって、出力部115は、点群が広がりを有するか否かの差異に基づいて、不整脈の有無を判定できる。また、心房細動(図7)、心房粗動(図20)のローレンツプロット、およびVPC代償性 洞性不整脈が含まれるローレンツプロット(図21)の点群は、各々概ね45度線L2を中心とした三角形状、概ね45度線L4を中心とした房状の形状、概ね45度線L5を中心とした手のひら状の形状を有する。また、VTが含まれるローレンツプロット(図22)の点群は、概ねL6を中心とした樹枝状の形状を有し、SASが発生している場合の点群の形状は、概ねL8を中心とした帯状(ひも状)の形状を有する。したがって、出力部115は、点群の形状の違いに基づいて、不整脈の種類を判別できる。
【0087】
また、出力部115は、SASを分類する場合、患者の体位に関する情報を用いて、例えば、立位、寝返り、起床時の測定結果を除外し、特定の体位(例えば、仰臥位)の時の測定結果に限定して分類することができる。これにより、患者の寝返りや、起床によって発生する変動がSASによる心拍のバラツキと誤って認識されることを回避できる。
【0088】
次に、ステップS206において、出力情報を測定期間毎に出力する。図24に示すように、出力部115は、例えば、不整脈の種類に応じて分類されたローレンツプロットを測定期間毎に一覧表示する。
【0089】
このように、図18に示すフローチャートの処理では、生体の生体情報を取得し、取得された生体情報から心拍を検出し、検出された連続する心拍の間隔を算出する。続いて、拍の全測定期間を複数に分割した測定期間毎における間隔のバラツキ情報を生成し、バラツキ情報を用いて、複数の測定期間を分類し、分類した結果に基づいて、出力情報を出力する。
【0090】
なお、以上では、バラツキ情報としてローレンツプロットの点群の形状を使用してローレンツプロットを分類する場合について主に説明したが、バラツキ情報として相関係数、点群の面積や密度を使用してローレンツを分類することもできる。例えば、バラツキ情報として相関係数を使用する場合、相関係数の値(-1~1)に応じて、ローレンツプロットを分類できる。また、ローレンツプロットに限らず、RR間隔の経時変化を表示するグラフ(図16図17)を測定期間毎に分類するように構成してもよい。
【0091】
また、ローレンツプロットにおける点群の面積、または密度の標準値を、不整脈の種類毎に生体情報処理装置110の記憶装置103に予め設定しておき、出力部115は、予め設定された点群の面積、または密度と同等の面積、または密度の点群に対応する測定期間を同じグループに分類することもできる。または、互いに同等の面積、または密度の点群を有するローレンツプロットの測定期間を同じグループに分類することもできる。
【0092】
なお上述の説明では、対象となるローレンツプロットを選定し、選定したローレンツプロットとの類似性を基に分類を行ったが必ずしもこれに限られない。出力部115は、測定期間T1~T54のローレンツプロットについての点群の形状を用いて任意の機械学習(教師なし学習/教師あり学習)を行う。これにより出力部115は、各ローレンツプロットを複数のグループに分類しても良い。ここで同じグループに属するローレンツプロットは、類似の傾向を有する。この際に、分類するグループ数は予め指定しても良い。ここで任意の機械学習とは、例えばクラスタリング分類(K-Means法等)が挙げられる。なお、ローレンツプロットは画像化した後にクラスタリング分類を行ってもかまわない。
【0093】
以上で説明した本実施形態の生体情報処理装置110は、バラツキ情報として、指標、または測定期間における複数の心拍をグラフにプロットした場合の点群の形状に関する情報を用いて、複数の測定期間を分類し、分類した結果に基づいて、出力情報を出力する。したがって、ユーザは、異なる大きさのバラツキ有するグラフや、異なる点群の形状を有するグラフを容易に確認できる。したがって、分類されたグラフを確認するユーザの作業を軽減できる。
【0094】
以上のとおり、実施形態において、本発明の生体情報処理装置110、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラムを説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、および省略できることはいうまでもない。
【0095】
たとえば、上述の第1および第2の実施形態では、生体情報処理装置110が心電計と別体の構成である場合について説明したが、本発明はこのような場合に限定されず、生体情報処理装置110と心電計とを一体の構成とすることもできる。
【0096】
また、実施形態において生体情報処理プログラムにより実行される処理の一部または全部を回路等のハードウェアに置き換えて実行されうる。
【0097】
また、上述の第1および第2の実施形態では、生体が人(患者)である場合を想定して説明したが、生体は人である場合に限定されることはなく、生体は、犬や猫等の動物であってもよい。
【符号の説明】
【0098】
100 生体情報処理システム、
101 プロセッサ、
102 メモリ、
103 記憶装置、
104 通信制御装置、
110 生体情報処理装置、
111 取得部、
112 検出部、
113 算出部、
114 生成部、
115 出力部、
120 出力装置、
130 入力装置、
140 通信ネットワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24