(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】健康支援装置及び健康支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20240716BHJP
G16H 20/00 20180101ALI20240716BHJP
【FI】
G16H50/30
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2020172642
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】道庭 賢一
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】春木 耕祐
(72)【発明者】
【氏名】山口 泰平
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-115614(JP,A)
【文献】特開2010-250489(JP,A)
【文献】特開2020-135489(JP,A)
【文献】特開2015-164502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子との入力を受け付ける入力部と、
前記生活習慣の組み合わせパターンと前記第1の因子の変化量との関係が記録された第1の因子の変化テーブルと、前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量との関係が記録された第2の因子の変化テーブルとに基づいて、前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算する因子変化計算部と、
健診データを入力として疾病毎の疾病リスク値を出力するように構成されたリスク予測モデルに前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量を入力し、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測するリスク予測部と、
を具備する健康支援装置。
【請求項2】
前記因子変化計算部は、前
記組み合わせパターン毎の前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算し、
前記リスク予測部は、前
記組み合わせパターン毎の前記発症リスク値を予測し、
予測された前記発症リスク値と前記発症リスク値の低減目標値とに基づいて1つ以上の前
記組み合わせパターンを選択する選択
部、
をさらに具備する請求項
1に記載の健康支援装置。
【請求項3】
予測された前記発症リスク値と前記発症リスク値の低減目標値との差分に基づく第1のロスと、前記健診者の生活習慣と前記健診者の目標の生活習慣との差分に基づく第2のロスと、前記第1のロスと前記第2のロスとの和に基づく第3のロスとを計算するロス計算部をさらに具備し、
前記選択部は、前記第3のロスに基づいて1つ以上の生活習慣の改善の組み合わせパターンを選択する、
請求項
2に記載の健康支援装置。
【請求項4】
前記ロス計算部は、前記健診者の前記生活習慣の改善に関わる個人の意向を反映させるための個人意向パラメータにさらに基づいて前記第2のロスを計算し、
前記第3のロス
が小さくなるようにベイジアン探索によって前記生活習慣の改善の組み合わせパターンの候補を生成する
生成部を具備する、
請求項
3に記載の健康支援装置。
【請求項5】
入力された前記健診者の生活習慣に関わる生活習慣関連情報を解析し、前記生活習慣関連情報の解析結果に
よってアルコールの摂取量が一定量を超えたことが確認された場合には飲酒の頻度を減らすように前記個人意向パラメータを調整し、歩行の習慣が確認された場合には1日の歩行量が多いものとして前記個人意向パラメータを調整する解析部をさらに具備する請求項
4に記載の健康支援装置。
【請求項6】
前記選択部で選択された前記1つ以上の生活習慣の改善の組み合わせパターンを表示する表示部をさらに具備する請求項
2乃至
5の何れか1項に記載の健康支援装置。
【請求項7】
前記第1の因子は、前記健診者の体重を含み、
前記第2の因子は、前記健診者の生体検査値を含む、
請求項1乃至
6の何れか1項に記載の健康支援装置。
【請求項8】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子と、前記第1の因子と前記第2の因子との少なくとも何れかの低減目標値との入力を受け付ける入力部と、
前記生活習慣の組み合わせパターンと前記第1の因子の変化量との関係が記録された第1の因子の変化テーブルと、前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量との関係が記録された第2の因子の変化テーブルとに基づいて、前記低減目標値と対応する因子
と関連する前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算する因子変化計算部と、
健診データを入力として疾病毎の疾病リスク値を出力するように構成されたリスク予測モデルに前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量を入力し、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測するリスク予測部と、
を具備する健康支援装置。
【請求項9】
前記因子変化計算部は、前
記組み合わせパターン毎の前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算し、
前記リスク予測部は、前
記組み合わせパターン毎の前記発症リスク値を予測し、
予測された前記発症リスク値と前記発症リスク値の低減目標値とに基づいて1つ以上の前
記組み合わせパターンを選択する選択
部、
をさらに具備する請求項
8に記載の健康支援装置。
【請求項10】
予測された前記発症リスク値と前記発症リスク値の低減目標値との差分に基づく第1のロスと、前記健診者の生活習慣と前記健診者の目標の生活習慣との差分に基づく第2のロスと、前記第1のロスと前記第2のロスとの和に基づく第3のロスとを計算するロス計算部をさらに具備し、
前記選択部は、前記第3のロスに基づいて1つ以上の生活習慣の改善の組み合わせパターンを選択する、
請求項
9に記載の健康支援装置。
【請求項11】
前記ロス計算部は、前記健診者の前記生活習慣の改善に関わる個人の意向を反映させるための個人意向パラメータにさらに基づいて前記第2のロスを計算し、
前記第3のロス
が小さくなるようにベイジアン探索によって前記生活習慣の改善の組み合わせパターンの候補を生成する
生成部を具備する、
請求項
10に記載の健康支援装置。
【請求項12】
入力された前記健診者の生活習慣に関わる生活習慣関連情報を解析し、前記生活習慣関連情報の解析結果に
よってアルコールの摂取量が一定量を超えたことが確認された場合には飲酒の頻度を減らすように前記個人意向パラメータを調整し、歩行の習慣が確認された場合には1日の歩行量が多いものとして前記個人意向パラメータを調整する解析部をさらに具備する請求項
11に記載の健康支援装置。
【請求項13】
前記選択部で選択された前記1つ以上の生活習慣の改善の組み合わせパターンを表示する表示部をさらに具備する請求項
9乃至
12の何れか1項に記載の健康支援装置。
【請求項14】
前記第1の因子は、前記健診者の体重を含み、
前記第2の因子は、前記健診者の生体検査値を含む、
請求項
8乃至
13の何れか1項に記載の健康支援装置。
【請求項15】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因
子との入力を受け付けることと、
前記生活習慣の組み合わせパターンと前記第1の因子の変化量との関係が記録された第1の因子の変化テーブルと、前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量との関係が記録された第2の因子の変化テーブルとに基づいて、前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算することと、
健診データを入力として疾病毎の疾病リスク値を出力するように構成されたリスク予測モデルに前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量を入力し、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測することと、
をコンピュータに実行させるための健康支援プログラム。
【請求項16】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子と、前記第1の因子と前記第2の因子との少なくとも何れかの低減目標値との入力を受け付けることと、
前記生活習慣の組み合わせパターンと前記第1の因子の変化量との関係が記録された第1の因子の変化テーブルと、前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量との関係が記録された第2の因子の変化テーブルとに基づいて、前記低減目標値と対応する因子
と関連する前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算することと、
健診データを入力として疾病毎の疾病リスク値を出力するように構成されたリスク予測モデルに前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量を入力し、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測することと、
をコンピュータに実行させるための健康支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、健康支援装置及び健康支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、精密医療が提唱されている。精密医療は、個人レベルで治療方法を分析し、分析した治療方法の中から最適な治療方法を選択する医療である。生活習慣病の健康指導においても、精密医療と同様に個人レベルの最適な目標設定が望まれている。例えば、糖尿病リスク低減のために5%の減量を全員一律に指導するのではなく、ある人には7%の減量、別の人には3%の減量と、個人の健康状態に合わせて指導することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、健康指導において個人レベルでの疾病予測をすることが可能な健康支援装置及び健康支援プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様の健康支援装置は、実施形態の健康支援装置は、入力部と、因子変化計算部と、リスク予測部とを有する。入力部は、健診データのうちで健診者の生活習慣の改善によって値が変化する第1の因子と、健診データのうちで健診者の生活習慣の改善による第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子との入力を受け付ける。因子変化計算部は、生活習慣の組み合わせパターンと第1の因子の変化量との関係が記録された第1の因子の変化テーブルと、第1の因子の変化量と第2の因子の変化量との関係が記録された第2の因子の変化テーブルとに基づいて、第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算する。リスク予測部は、健診データを入力として疾病毎の疾病リスク値を出力するように構成されたリスク予測モデルに第1の因子の変化量と第2の因子の変化量を入力し、健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る健康支援装置の一例の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、生活習慣の改善のパターンの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、因子変化計算部の一例の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の因子の変化テーブルの一例としての体重変化率テーブルの例を示す図である。
【
図5】
図5は、体重変化率の計算結果の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第2の因子の変化テーブルの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、健康支援装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態における健康支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る健康支援装置の一例の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態における健康支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図11A】
図11Aは、個人意向パラメータの入力のためのGUIの例を示す図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態に係る健康支援装置の一例の構成を示す図である。
【
図13】
図13は、第3の実施形態における健康支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図14A】
図14Aは、第4の実施形態に係る健康支援装置の第1の例の構成を示す図である。
【
図14B】
図14Bは、第4の実施形態に係る健康支援装置の第2の例の構成を示す図である。
【
図15】
図15は、第4の実施形態の第1の例における健康支援装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る健康支援装置の一例の構成を示す図である。健康支援装置1は、入力部100と、探索パターン生成部120と、因子変化計算部130と、リスク予測部140と、ロス計算部150と、選択部170とを有する。
【0008】
入力部100は、健診データ及びリスク低減目標値の入力を受け付ける。例えば、入力部100は、ユーザの健康支援装置1の操作により、健診データ及び低減目標値の入力を受け付けるように構成されていてよい。ここでの「ユーザ」は、健康支援装置1を使用する人である。ユーザは、健診者自身であってもよいし、医師等であってもよい。この他、入力部100は、図示しない健康支援装置1の外部の記憶媒体に記憶されている健診データを、通信媒体を介して受けつけるように構成されていてもよい。また、入力部100は、記憶媒体が健康支援装置1に装着されたことを受けて、この記憶媒体から転送されてくる健診データを受け付けるように構成されていてもよい。
【0009】
ここで、健診データは、健康診断の結果が記録されたデータである。実施形態の健診データは、生活習慣病のリスクの予測に用いられる因子の検査値と、運動習慣の量、日常の歩行量、飲酒の頻度といった生活習慣情報を含む。この因子は、第1の因子と、第2の因子を含む。第1の因子は、健診者の生活習慣の改善によって直接的にコントロールできる因子である。例えば、体重は、運動の実施及び食生活の改善によって直接的に変化する。したがって、体重は、第1の因子に含まれる。この他、体脂肪率等も第1の因子に含まれ得る。一方、第2の因子は、健診者の生活習慣の改善によって直接的にコントロールできない因子である。例えば、HbA1c(ヘモグロビンA1c)は、運動の実施及び食生活の改善によって直接的には変化しない。したがって、HbA1cは、第2の因子に含まれる。この他、GOT(Glutamic Oxaloacetic Transaminase)、LDL(Low Density Lipoprotein)、血圧等の各種の生体検査値も第2の因子に含まれ得る。なお、HbA1c等は、生活習慣の改善によって直接的にはコントロールできない因子であるが、生活習慣の改善に伴う体重等の変化によって間接的に変化し得る。つまり、第2の因子は、第1の因子の変化によって間接的にコントロールされる因子を含む。
【0010】
また、リスク低減目標値は、生活習慣病等の特定の疾病の疾病リスク値をどの程度低減したいかの目標値であり、相対値で指定されてもよいし、絶対値で指定されてもよい。ここで、「疾病リスク値」とは、ある期間内の特定の疾病の発症確率である。例えば、糖尿病の疾病リスクを30%から20%に低減したい場合、相対値で指定される場合にはリスク低減目標値(相対値)は、10(%)である。絶対値で指定される場合にはリスク低減目標値(絶対値)は、20(%)である。
【0011】
探索パターン生成部120は、生活習慣の改善の探索パターンを生成する。生活習慣の改善の探索パターンは、予め定められた複数の生活習慣の組み合わせパターンである。
図2は、生活習慣の改善の組み合わせパターンの一例を示している。
図2の例では、生活習慣として、「運動習慣」、「日常の歩行」、「飲酒」の少なくとも3つの項目が示されている。探索パターン生成部120は、例えばこれらの生活習慣の「あり」、「なし」を設定することで生活習慣の改善の組み合わせパターンを生成する。例えば、「運動習慣」及び「日常の歩行」については「あり」に設定されたときに生活習慣の改善が図られることを意味する。一方、「飲酒」については「なし」に設定されたときに生活習慣の改善が図られることを意味する。例えば、「No.1」のパターンは、「運動習慣」、「日常の歩行」、「飲酒」は、何れも「なし」に設定されている。このような「No.1」のパターンは、「飲酒」を実施しないことで生活習慣の改善が図られることを意味している。また、例えば、「No.2」のパターンは、「運動習慣」、「日常の歩行」は「なし」、「飲酒」は「あり」に設定されている。このような「No.2」のパターンは、「運動習慣」、「日常の歩行」、「飲酒」による生活習慣の改善が図られないことを意味している。ここで、
図2の「なし」は、「運動習慣」、「日常の歩行」、「飲酒」をまったく実施しないことを意味してはいない。
図2の「なし」は、疾病リスク値の予測に影響を与えない程度の少量の「運動習慣」、「日常の歩行」、「飲酒」の実施を含むものであってよい。また、
図2では、生活習慣の「あり」、「なし」が設定されることで生活習慣の改善のパターンが生成されるとしている。これに対し、さらにそれぞれの生活習慣の量が考慮されて生活習慣の組み合わせパターンが生成されてもよい。例えば、運動習慣の「あり」が「少ない」、「中」、「多い」といった3つのパターンに分けられてもよい。
【0012】
ここで、探索パターン生成部120で生活習慣の探索パターンを生成するために用いられる生活習慣のデータは、例えば探索パターン生成部120に記憶されている。この他、生活習慣のデータは、健康支援装置1の外部の記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、探索パターン生成部120は、必要に応じて外部の記憶媒体から生活習慣のデータを取得する。
【0013】
因子変化計算部130は、探索パターン生成部120で生成された生活習慣の探索パターンに基づいて、第1の因子と第2の因子のそれぞれの変化量を計算する。例えば、因子変化計算部130には、生活習慣毎の因子の変化量のテーブルが予め記憶されている。因子変化計算部130は、探索パターン生成部120で生成された生活習慣の探索パターンに応じて因子の変化量を計算する。因子変化計算部130は、運動や日常の歩行など生活習慣の個別の改善パターン毎の変化率を合計することによって計算してもよいし、複数の生活習慣の組み合わせにより変化量を計算してもよい。
【0014】
図3は、因子変化計算部130の一例の構成を示す図である。
図3に示すように、因子変化計算部130は、第1の因子変化計算部131と、第2の因子変化計算部132とを有していてもよい。第1の因子変化計算部131は、生活習慣の探索パターンに基づいて第1の因子の変化量を計算する。第2の因子変化計算部132は、第2の因子の変化量を計算する。第2の因子変化計算部132は、第1の因子の変化が第2の因子の変化に影響を与え得るときには、第1の因子の変化量に基づいて第2の因子の変化量を計算する。
【0015】
図4は、第1の因子の変化テーブルの一例としての体重変化率テーブルの例を示す図である。体重変化率テーブルは、生活習慣の改善による体重変化率を表すテーブルである。体重変化率は、元の体重からの体重変化を百分率で表した値である。
図4は、体重変化率を、メタボリック症候群該当群と予備群と非該当群の3群に分けた例である。体重変化率テーブルは、例えば多数人についての生活習慣の改善に伴う体重変化を実測することで生成され得る。第1の因子変化計算部131は、体重変化率テーブルを用いて第1の因子としての体重変化率を計算し、計算した体重変化率に基づいて体重の変化量を計算する。体重の変化量は、例えば健診者の体重と体重変化率との積である。ここで、体重変化率テーブルは、生活習慣の量に応じた体重変化率を含んでいてもよい。
【0016】
図5は、体重変化率の計算結果の一例を示す図である。
図5は、メタボリック症候群該当群で、「運動習慣なし」、「日常の歩行習慣なし」、「飲酒習慣あり」の状態を基準とし、この基準の状態から少なくともいずれかの生活習慣が改善された場合の体重変化率である。例えば、
図5の「No.2」の生活習慣の探索パターンは、飲酒習慣が「あり」から「なし」に改善されているパターンである。
図4に示すように、メタボリック症候群該当群における「飲酒なし」の体重変化率は、-1.00%である。したがって、体重変化率の計算結果は、-1.00%である。同様に、
図5の「No.4」の生活習慣の探索パターンは、日常の歩行習慣が「なし」から「あり」に、飲酒習慣が「あり」から「なし」に改善されているパターンである。
図4に示すように、メタボリック症候群該当群における「歩行習慣あり」の体重変化率は、-1.50%であり、「飲酒なし」の体重変化率は、-1.00%である。したがって、体重変化率の計算結果は、-2.50%である。
【0017】
ここで、
図4は、体重変化率を計算するためのテーブルとして用いられ得る。
図4と同様のテーブルは、第1の因子の種類毎に準備されている。第1の因子変化計算部131は、対応する第1の因子の変化テーブルを用いてそれぞれの第1の因子の変化量を計算する。
【0018】
図6は、第2の因子の変化テーブルの例である。
図6は、体重変化率と第2の因子の変化率との関連を表すテーブルである。生活習慣の改善に伴う体重の変化により、第2の因子としてのGOT、HbA1c、LDLといった生体検査値が有意に変化することが例えば、津下一代,「生活習慣介入のエビデンスと実際」,日本内科学会雑誌第105巻第9号,[Online][令和2年10月7日検索],インターネットURL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/9/105_1654/_article/-char/ja/において報告されている。
図6は、このような体重の変化と第2の因子としての生体検査値の変化との関連を表している。第2の因子の変化テーブルは、例えば多数人についての体重変化に伴う生体検査値の変化を実測することで生成され得る。第2の因子変化計算部132は、第1の因子変化計算部131で計算される生活習慣の探索パターン毎の第1の因子の変化量に基づいて第2の因子の変化量を計算する。例えば、体重変化量が-1Kgから+1kgであるとき、GOT、HbA1c、LDLの何れの変化率も0.00%である。一方、体重変化量が-1Kgから-3kgであるとき、GOTの変化率は-2.00%、HbA1cの変化率は-1.00%、LDLの変化率は-3.00%である。
【0019】
ここで、
図6は、体重変化率から第2の因子の変化量を計算するためのテーブルとして用いられ得る。
図6と同様のテーブルは第1の因子の種類毎に準備されている。第2の因子変化計算部132は、対応する第2の因子の変化テーブルを用いてそれぞれの第2の因子の変化量を計算する。
【0020】
リスク予測部140は、探索パターン毎の疾病の疾病リスク値を予測する。リスク予測部140は、例えば疾病リスクの予測モデルに基づき、リスク低減目標値で特定される疾病の疾病リスク値を予測する。このリスク予測モデルは、例えば健診データを入力として疾病毎の疾病リスク値を出力するように構成された学習モデルである。ここで健診データとは、第1の因子と第2の因子と生活習慣情報を含む。疾病リスクの予測方法としては、一般的に知られている任意に予測方法が用いられ得る。前述したように、生活習慣の改善により、体重といった第1の因子と、GOT、HbA1c、LDLといった第2の因子としての生体検査値はある割合で変化する。したがって、このリスク予測モデルに生活習慣情報と生活習慣の改善に伴う変化後の第1の因子と第2の因子の値が入力されることにより、リスク予測モデルは、生活習慣の改善に伴って変化する疾病リスク値を出力することになる。なお、リスク予測部140は、少なくとも第2の因子の値を入力として疾病毎の疾病リスク値を出力するように構成されていれば特定の構成に限定されない。例えば、リスク予測部140は、健診データを全て使用するのではなく、第1の因子と第2の因子の値のみで疾病毎の疾病リスク値を出力するように構成されていてもよい。
【0021】
ロス計算部150は、選択部170における選択に用いられる第3のロスLoss3を例えば以下の(式1)に基づいて計算する。
Loss3=Loss1+α×Loss2 (式1)
ここで、Loss1は、リスク予測部140で予測された疾病リスク値と、この疾病リスク値と対応するリスク低減目標値との差分に基づく第1のロスである。また、Loss2は、予測に用いられる生活習慣とそれぞれの因子を変更することによる、すなわち生活習慣改善とその改善に伴う因子の変更による第2のロスである。さらにαは、第1のロスLoss1と第2のロスLoss2の重みを調整するパラメータである。
ロス計算部150は、第1のロスLoss1を以下の(式2)に基づいて計算する。
a)予測された疾病リスク値≦リスク低減目標値のとき
Loss1=0
b)予測された疾病リスク値>リスク低減目標値のとき
Loss1=(予測された疾病リスク値-リスク低減目標値)2
(式2)
また、ロス計算部150は、第2のロスLoss2を以下の(式3)に基づいて計算する。
Loss2=Σ(Xi-Xi_org)2/Num_X (式3)
(式3)のXiは予測モデルのi(iは自然数)番目の入力値の目標値の候補である。ここで、予測モデルの入力は健診データであり、第1の因子と第2の因子と生活習慣情報を含む。また、Xi_orgは予測モデルのi番目の入力値の実際の検査値である。さらに、Num_Xは、入力値の数である。なお、それぞれの入力値のスケールは、大きく異なっていることがあり得る。この場合、Loss2の値は、スケールの大きな入力値の影響を受けやすい。このような特定の入力値の影響を抑制するため、Xi及びXi_orgの値は例えば0から1の範囲に規格化されてもよい。
【0022】
ここで、(式1)から(式3)で示したロス計算部150におけるロスの計算は一例である。ロス計算部150は、選択部170における選択に用いることができるロスを計算できる任意のロス計算を行ってよい。
【0023】
選択部170は、ロス計算部150で計算されたロスを用いて1つ以上の生活習慣の組み合わせパターンを選択する。例えば、(式1)でロスが計算されるときには第3のロスLoss3の値が小さいほど、そのときの生活習慣の組み合わせパターンによって改善される疾病リスク値がリスク低減目標値に近いことを意味している。したがって、例えば(式1)でロスが計算されるときには、選択部170は、生成された探索パターンのうちで第3のロスLoss3の値の小さい順に1つ以上の生活習慣の組み合わせパターンを選択する。ロスの計算によっては、ロスの値が大きいほど、そのときの生活習慣の組み合わせパターンによって改善される疾病リスク値がリスク低減目標値に近いことを意味していることもある。この場合には、選択部170は、生成された探索パターンのうちでロスの値の大きい順に1つ以上の生活習慣の組み合わせパターンを選択する。
【0024】
図7は、健康支援装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。健康支援装置1は、例えばプロセッサ201と、メモリ202と、入力装置203と、表示装置204と、通信装置205と、ストレージ206とをハードウェアとして有している。プロセッサ201と、メモリ202と、入力装置203と、表示装置204と、通信装置205と、ストレージ206とは、バス207に接続されている。健康支援装置1は、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、タブレット端末といった端末装置であってよい。
【0025】
プロセッサ201は、健康支援装置1の全体的な動作を制御するプロセッサである。プロセッサ201は、例えばストレージ206に記憶されている健康支援プログラムを実行することによって、入力部100と、探索パターン生成部120と、因子変化計算部130と、リスク予測部140と、ロス計算部150と、選択部170として動作する。プロセッサ201は、例えばCPUである。プロセッサ201は、MPU、GPU、ASIC、FPGA等であってもよい。プロセッサ201は、単一のCPU等であってもよいし、複数のCPU等であってもよい。
【0026】
メモリ202は、ROM及びRAMを含む。ROMは、不揮発性のメモリである。ROMは、健康支援装置1の起動プログラム等を記憶している。RAMは、揮発性のメモリである。RAMは、例えばプロセッサ201における処理の際の作業メモリとして用いられる。
【0027】
入力装置203は、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力装置である。入力装置203の操作がされた場合、操作内容に応じた信号がバス207を介してプロセッサ201に入力される。プロセッサ201は、この信号に応じて各種の処理を行う。入力装置203は、例えば健診データ及びリスク低減目標値の入力に用いられ得る。
【0028】
表示装置204は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置である。表示装置204は、各種の画像を表示する。
【0029】
通信装置205は、健康支援装置1が外部の機器と通信するための通信装置である。通信装置205は、有線通信のための通信装置であってもよいし、無線通信のための通信装置であってもよい。
【0030】
ストレージ206は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブといったストレージである。ストレージ206は、健康支援プログラム2061等のプロセッサ201によって実行される各種のプログラムを記憶している。また、ストレージ206は、生活習慣の探索パターンを生成するための生活習慣データ2062を記憶している。生活習慣データ2062は、例えばそれぞれの生活習慣毎に割り振られたIDである。また、ストレージ206は、第1の因子の変化量を計算するための体重変化率テーブル等の第1の因子の変化テーブル2063を記憶している。また、ストレージ206は、第2の因子の変化量を計算するための第2の因子の変化テーブル2064を記憶している。また、ストレージ206は、疾病リスク値の予測に用いられるリスク予測モデル2065を記憶している。生活習慣データ2062、第1の因子の変化テーブル2063、第2の因子の変化テーブル2064及びリスク予測モデル2065は、必ずしもストレージ206に記憶されている必要はない。例えば、生活習慣データ2062、第1の因子の変化テーブル2063、第2の因子の変化テーブル2064及びリスク予測モデル2065は、健康支援装置1の外部のサーバに記憶されていてもよい。この場合、健康支援装置1は、通信装置205を用いてサーバにアクセスすることで必要な情報を取得する。
【0031】
バス207は、プロセッサ201と、メモリ202と、入力装置203と、表示装置204と、通信装置205と、ストレージ206との間のデータのやり取りのためのデータ転送路である。
【0032】
次に、第1の実施形態における健康支援装置1の動作を説明する。
図8は、第1の実施形態における健康支援装置1の動作を示すフローチャートである。
図8の処理は、プロセッサ201によって実行される。
【0033】
ステップS1において、プロセッサ201は、健診データ及びリスク低減目標値を取得する。健診データは、例えば、表示装置204に表示されるGUI(Graphical User Interface)上でのユーザの入力装置203の操作を介して入力されてもよいし、健康支援装置1の外部の記憶媒体を介して入力されてもよい。また、リスク低減目標値は、例えば、表示装置204に表示されるGUI上でのユーザの入力装置203の操作を介して入力されてよい。
【0034】
ステップS2において、プロセッサ201は、生活習慣データ2062を参照し、生活習慣の探索パターンを生成する。プロセッサ201は、生活習慣データ2062から生成され得るすべての生活習慣の組み合わせで探索パターンを生成してもよいし、一部の生活習慣の組み合わせで探索パターンを生成してもよい。
【0035】
ステップS3において、プロセッサ201は、探索パターン毎の疾病リスクの予測に用いられる因子の変化量を計算する。第1の因子の変化が第2の因子の変化に影響を与え得るときには、プロセッサ201は、先に第1の因子の変化テーブル2063を用いて第1の因子の変化量を計算し、その後に第2の因子の変化テーブル2064を用いて第2の因子の変化量を計算する。
【0036】
ステップS4において、プロセッサ201は、疾病リスク値を予測する。例えば、プロセッサ201は、疾病のリスク予測モデルに変化後の第2の因子の値を入力して探索パターン毎の疾病リスク値を予測する。
【0037】
ステップS5において、プロセッサ201は、ロス計算を実施する。例えば、プロセッサ201は、(式1)-(式3)に従ってロスを計算する。
【0038】
ステップS6において、プロセッサ201は、ユーザに対して提示する生活習慣の組み合わせパターンを選択する。例えば、プロセッサ201は、ロスの値の小さい順に1以上の生活習慣の組み合わせパターンを選択する。
【0039】
ステップS7において、プロセッサ201は、ユーザに対して結果を提示する。その後、
図8の処理は終了する。例えば、プロセッサ201は、表示装置204の画面上に、選択した生活習慣の組み合わせパターンと、その生活習慣において予測される疾病リスク値とを表示する。疾病リスク値に代えて、疾病リスク値の低減値が表示されてもよい。
【0040】
以上説明したように第1の実施形態によれば、健診者の生活習慣の改善によって直接的にコントロールできる第1の因子と、健診者の生活習慣の改善によって直接的にコントロールできない第2の因子とを用いて疾病リスク値が予測される。ここで、第2の因子の変化に第1の因子の変化が影響するときには、第1の因子の変化が第2の因子の変化に置き換えられ、この置き換えられた第2の因子に基づいて疾病リスク値が予測され得る。例えば、生活習慣を改善することで半年後及び1年後といった長期的に体重が減少し、長期的に体重が減少することで生体検査値は改善する。第1の実施形態では、これらの長期的な体重変化、長期的な生体検査値変化が考慮されて疾病リスク値が計算され得る。このようにして第1の実施形態では、疾病リスク値の予測において健診者の生活習慣の改善によって直接的にコントロールできない第2の因子も予測結果に適切に反映されるので、健康指導において個人レベルの最適な生活習慣の目標設定がされ得る。
【0041】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態を説明する。
図9は、第2の実施形態に係る健康支援装置の一例の構成を示す図である。第2の実施形態における健康支援装置1は、入力部100と、候補生成部121と、因子変化計算部130と、リスク予測部140と、ロス計算部150と、終了判定部160と、選択部170とを有する。ここで、第2の実施形態において第1の実施形態と共通する部分についての説明は省略又は簡略化する。また、健康支援装置1のハードウェア構成は、
図7の構成が適用され得る。したがって、説明を省略する。
【0042】
第2の実施形態における入力部100は、健診データ及びリスク低減目標値の入力を受け付ける。さらに、第2の実施形態における入力部100は、個人意向パラメータの入力を受け付ける。個人意向パラメータは、疾病リスクを減らすための生活習慣の変更に際して、どの生活習慣を中心に変更したいか又はどの生活習慣を変更したくないかといった健診者毎の生活習慣の改善に関わる個人の意向を反映させるためのパラメータである。例えば、入力部100は、ユーザの健康支援装置1の操作により、個人意向パラメータの入力を受け付けるように構成されていてよい。
【0043】
候補生成部121は、個人意向パラメータを考慮して、生活習慣の改善の候補パターンを生成する。生活習慣の改善の候補パターンは、予め定められた1つの生活習慣の組み合わせパターンである。候補生成部121は、生活習慣の「あり」、「なし」及び「あり」のときにはその量を設定することで候補パターンを生成する。候補生成部121は、ランダムに候補パターンを生成してもよいし、ロス計算部150で計算されるロスを利用したベイジアン探索(ベイズ最適化法)に基づいて候補パターンを生成してもよい。すなわち、候補生成部121は、個人意向パラメータを考慮できる任意の手法で生活習慣の改善の候補パターンを生成してよい。
【0044】
因子変化計算部130は、候補生成部121で生成された候補パターンに基づいて、第1の因子と第2の因子のそれぞれの変化量を計算する。第1の因子の変化量と第2の因子の変化量の計算は、第1の実施形態で説明した手法で行われてよい。
【0045】
リスク予測部140は、候補パターンについての疾病の疾病リスク値を予測する。リスク予測部140による予測は、第1の実施形態で説明した手法で行われてよい。
【0046】
ロス計算部150は、第3のロスLoss3を例えば前述の(式1)に基づいて計算する。ここで、第2の実施形態では、ロス計算部150は、第2のロスLoss2を例えば以下の(式4)に基づいて計算する。
Loss2=Σ(Xi-Xi_org)2×Xi_std/Num_X (式4)
ここで、Xi_stdは、i番目の入力値に関する個人意向パラメータに対応する値である。Xi_stdは、例えば0から1の範囲の値である。Xi_stdが小さくされたときにはLoss2の値が小さくなる。例えばベイジアン探索ではロスの値が小さくなるように次の候補パターンが生成されるので、結果として小さくされたXi_stdに対応した生活習慣の改善が多くなるように候補パターンが生成される。一方、Xi_stdが大きくされたときにはLoss2の値が大きくなるので、結果としてそのXi_stdに対応した生活習慣の改善が少なくなるように候補パターンが生成される。例えば、運動習慣を変更して疾病リスクを減らすように個人意向パラメータが設定された場合には、運動習慣の量に対応したXi_stdが小さくなる。また、例えば、飲酒の頻度を変更しないで疾病リスクを減らすように個人意向パラメータが設定された場合には、飲酒の頻度に対応したXi_stdが大きくなる。
【0047】
終了判定部160は、候補パターンの探索を終了するか否かを判定する。例えば、終了判定部160は、予め定められた回数の探索、すなわち第3のロスの計算が行われたら探索を終了すると判定する。この他、終了判定部160は、第3のロスが予め設定された閾値よりも小さくなったときに探索を終了すると判定してもよい。
【0048】
選択部170は、ロス計算部150で計算されたロスを用いて1つ以上の生活習慣の組み合わせパターンを選択する。例えば(式1)でロスが計算されるときには、選択部170は、生成された候補パターンのうちで第3のロスLoss3の値の小さい順に1つ以上の生活習慣の組み合わせパターンを選択する。
【0049】
次に、第2の実施形態における健康支援装置1の動作を説明する。
図10は、第2の実施形態における健康支援装置1の動作を示すフローチャートである。
図10の処理は、プロセッサ201によって実行される。
【0050】
ステップS101において、プロセッサ201は、健診データ、リスク低減目標値及び個人意向パラメータを取得する。健診データは、例えば、表示装置204に表示されるGUI上でのユーザの入力装置203の操作を介して入力されてもよいし、健康支援装置1の外部の記憶媒体を介して入力されてもよい。また、リスク低減目標値は、例えば、表示装置204に表示されるGUI上でのユーザの入力装置203の操作を介して入力されてよい。さらに、個人意向パラメータは、例えば、表示装置204に表示されるGUI上でのユーザの入力装置203の操作を介して入力されてよい。
【0051】
図11Aは、個人意向パラメータの入力のためのGUIの例である。
図11Aの例では、個人意向パラメータを表す数値が直接的に入力される。ユーザは、自身の変更したい又は変更したくない生活習慣に対応する個人意向パラメータを選択し、例えば0から1の範囲で数値を入力する。入力された数値に応じて前述のXi_stdの値が設定される。
図11Aでは、生活習慣に関する各項目として、例えば「運動習慣」、「運動強度」、「飲酒の習慣」、「飲酒の頻度」、「1回の飲酒量」、「喫煙」、「睡眠時間」、「食事種類」等が表示されている。
【0052】
ステップS102において、プロセッサ201は、生活習慣データ2062を参照し、生活習慣の候補パターンを生成する。
【0053】
ステップS103において、プロセッサ201は、候補パターンについての疾病リスクの予測に用いられる因子の変化量を計算する。第1の因子の変化が第2の因子の変化に影響を与え得るときには、プロセッサ201は、先に第1の因子の変化テーブル2063を用いて第1の因子の変化量を計算し、その後に第2の因子の変化テーブル2064を用いて第2の因子の変化量を計算する。
【0054】
ステップS104において、プロセッサ201は、疾病リスク値を予測する。例えば、プロセッサ201は、疾病のリスク予測モデルに変化後の第2の因子の値を入力して探索パターン毎の疾病リスク値を予測する。
【0055】
ステップS105において、プロセッサ201は、ロス計算を実施する。例えば、プロセッサ201は、(式1)、(式2)、(式4)に従ってロスを計算する。
【0056】
ステップS106において、プロセッサ201は、探索を終了するか否かを判定する。ステップS106において、探索を終了すると判定されていないときには、処理はステップS102に戻る。この場合には、次の候補パターンが生成される。ステップS106において、探索を終了すると判定されたときには、処理はステップS107に移行する。
【0057】
ステップS107において、プロセッサ201は、ユーザに対して提示する生活習慣の組み合わせパターンを選択する。例えば、プロセッサ201は、ロスの値の小さい順に1以上の生活習慣の組み合わせパターンを選択する。
【0058】
ステップS108において、プロセッサ201は、ユーザに対して結果を提示する。その後、
図10の処理は終了する。例えば、プロセッサ201は、表示装置204の画面上に、選択した生活習慣の組み合わせパターンと、その生活習慣において予測される疾病リスク値とを表示する。
【0059】
以上説明したように第2の実施形態によれば、第1の因子と第2の因子とに加えてさらに健診者の個人の意向が考慮された疾病リスク値が予測される。これにより、第2の実施形態では、第1の実施形態よりもさらに適切な個人レベルの生活習慣の目標設定がされ得る。
【0060】
ここで、第2の実施形態では、個人の意向が個人意向パラメータの数値として入力されるとしている。これに対し、個人意向パラメータの数値ではなく、運動習慣の量及び飲酒の頻度といったそれぞれの因子の値が直接入力されることで個人の意向が反映されてもよい。
図11Bは、個人意向の入力のためのGUIの別の例である。別の例では、生活習慣に関わる因子とその量の選択肢とが表示される。ユーザは、これから変更する生活習慣とその量を直接指定する。例えば、ユーザは、運動習慣を「多い」に変更する場合には、
図11Bの運動習慣の欄の「多い」を選択する。それぞれの選択肢には前述のXi_orgの値が対応付けられており、選択に応じてXi_orgの値が選択される。例えば、運動習慣が「多い」に変更された場合には、運動習慣の量に対応したXi_orgの値が「多い」状態に固定される。この後、プロセッサ201は、第1の実施形態と同様に第3のロスを計算しながら探索を実施する。これにより、運動習慣の頻度は「多い」状態に固定され、他の生活習慣が変更されることによって探索が実施される。
【0061】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態を説明する。
図12は、第3の実施形態に係る健康支援装置の一例の構成を示す図である。第3の実施形態における健康支援装置1は、入力部100と、解析部110と、候補生成部121と、因子変化計算部130と、リスク予測部140と、ロス計算部150と、終了判定部160と、選択部170とを有する。ここで、第3の実施形態において第2の実施形態と共通する部分についての説明は省略又は簡略化する。また、健康支援装置1のハードウェア構成は、
図7の構成が適用され得る。したがって、説明を省略する。
【0062】
第3の実施形態における入力部100は、健診データ、リスク低減目標値、個人意向パラメータの入力を受け付ける。さらに、第3の実施形態における入力部100は、生活習慣関連情報の入力を受け付ける。生活習慣関連情報は、健診者の生活習慣に関わる情報である。例えば、生活習慣関連情報は、例えば健診者の食生活に関わる情報である。食生活に関わる情報は、例えば食品の購入履歴、外食の履歴といった情報を含む。食品の購入履歴、外食の履歴の情報は、例えばレシート、各種のポイントカード、プリペイドカードによって特定され得る。この他、生活習慣関連情報は、例えば歩数計によって測定される1日の歩数、カロリー消費量、スマートフォン等を用いて健診者毎に管理されるPHR(Personal Health Record)といった情報も含む。
【0063】
解析部110は、生活習慣関連情報を解析し、解析結果に基づいて個人意向パラメータを調整する。例えば、複数のレシートに記録される購入情報から、アルコールの摂取量が計算できる。アルコールの摂取量が多いことが確認された場合、解析部110は、健診者に飲酒の習慣があると判断する。アルコールの摂取量が一定量までは健康への影響は小さいが、一定量を超えると大きく影響を及ぼすことが知られている。解析部110は、アルコールの摂取量が一定量までは意向パラメータを調整しないが、アルコールの摂取量が一定量を超えた場合には、飲酒の頻度を減らすように個人意向パラメータを調整する。また、例えば、1日の歩行量が多いことが確認された場合、解析部110は、歩行の習慣があると判断する。この場合において、解析部110は、例えば1日の歩行量を多い状態として疾病リスクを減らすように個人意向パラメータを調整する。
【0064】
候補生成部121、因子変化計算部130、リスク予測部140、ロス計算部150、終了判定部160及び選択部170は、第2の実施形態と同様に動作してよい。したがって、説明を省略する。
【0065】
次に、第3の実施形態における健康支援装置1の動作を説明する。
図13は、第3の実施形態における健康支援装置1の動作を示すフローチャートである。
図13の処理は、プロセッサ201によって実行される。
【0066】
ステップS201において、プロセッサ201は、健診データ、リスク低減目標値、個人意向パラメータ及び生活習慣関連情報を取得する。健診データは、例えば、表示装置204に表示されるGUI上でのユーザの入力装置203の操作を介して入力されてもよいし、健康支援装置1の外部の記憶媒体を介して入力されてもよい。また、リスク低減目標値は、例えば、表示装置204に表示されるGUI上でのユーザの入力装置203の操作を介して入力されてよい。また、個人意向パラメータは、例えば、表示装置204に表示されるGUI上でのユーザの入力装置203の操作を介して入力されてよい。生活習慣関連情報は、表示装置204に表示されるGUI上でのユーザの入力装置203の操作を介して入力されてもよいし、PHRを記録したスマートフォン等の端末装置から入力されてもよいし、レシート等の画像から文字を認識することによって入力されてもよい。
【0067】
ステップS202において、プロセッサ201は、生活習慣関連情報を解析し解析結果に基づいて個人意向パラメータを調整する。
【0068】
ステップS203において、プロセッサ201は、生活習慣データ2062を参照し、生活習慣の候補パターンを生成する。
【0069】
ステップS204において、プロセッサ201は、候補パターンについての疾病リスクの予測に用いられる因子の変化量を計算する。第1の因子の変化が第2の因子の変化に影響を与え得るときには、プロセッサ201は、先に第1の因子の変化テーブル2063を用いて第1の因子の変化量を計算し、その後に第2の因子の変化テーブル2064を用いて第2の因子の変化量を計算する。
【0070】
ステップS205において、プロセッサ201は、疾病リスク値を予測する。例えば、プロセッサ201は、疾病のリスク予測モデルに変化後の第2の因子の値を入力して探索パターン毎の疾病リスク値を予測する。
【0071】
ステップS206において、プロセッサ201は、ロス計算を実施する。例えば、プロセッサ201は、(式1)、(式2)、(式4)に従ってロスを計算する。
【0072】
ステップS207において、プロセッサ201は、探索を終了するか否かを判定する。ステップS207において、探索を終了すると判定されていないときには、処理はステップS203に戻る。この場合には、次の候補パターンが生成される。ステップS207において、探索を終了すると判定されたときには、処理はステップS208に移行する。
【0073】
ステップS208において、プロセッサ201は、ユーザに対して提示する生活習慣の組み合わせパターンを選択する。例えば、プロセッサ201は、ロスの値の小さい順に1以上の生活習慣の組み合わせパターンを選択する。
【0074】
ステップS209において、プロセッサ201は、ユーザに対して結果を提示する。その後、
図13の処理は終了する。例えば、プロセッサ201は、表示装置204の画面上に、選択した生活習慣の組み合わせパターンと、その生活習慣において予測される疾病リスク値とを表示する。
【0075】
以上説明したように第3の実施形態によれば、生活習慣関連情報に従って個人意向パラメータが調整される。これにより、ユーザの手動によって入力された個人意向パラメータがなくても健診者の個人の意向が考慮された疾病リスク値が予測される。これにより、第3の実施形態では、第2の実施形態よりもさらに個人レベルの生活習慣の目標設定がされ得る。
【0076】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態を説明する。
図14Aは、第4の実施形態に係る健康支援装置の第1の例の構成を示す図である。
図14Bは、第4の実施形態に係る健康支援装置の第2の例の構成を示す図である。前述した第1から第3の実施形態では、リスク低減目標値が入力されるのに対し、第4の実施形態では直接的に因子の変化の目標値が入力される。
【0077】
まず、第1の例を説明する。第1の例の健康支援装置1は、入力部100と、因子変化計算部130と、リスク予測部140とを有する。ここで、第4の実施形態の第1の例において第1の実施形態と共通する部分についての説明は省略又は簡略化する。また、健康支援装置1のハードウェア構成は、
図7の構成が適用され得る。したがって、説明を省略する。
【0078】
第4の実施形態の第1の例における入力部100は、健診データ及び因子変化目標値の入力を受け付ける。因子変化目標値は、因子の変化の目標値である。因子変化目標値は、体重等の第1の因子の変化の目標値であってもよいし、血圧等の第2の因子の変化の目標値であってもよい。
【0079】
第4の実施形態の第1の例の因子変化計算部130は、入力された因子変化目標値の因子の変化と関連する因子の変化量を計算する。例えば、体重の変化量の目標値が因子変化目標値として入力されたとする。前述したように、体重の変化は、GOT、HbA1c、LDLといった生体検査値にも影響する。因子変化計算部130は、体重の変化量からGOT、HbA1c、LDLといった生体検査値の変化量を計算する。因子の変化量の計算は、第1の実施形態と同様の因子変化のテーブルを用いて行われ得る。
【0080】
リスク予測部140は、入力された因子変化目標値の状態での疾病毎の疾病リスク値を予測する。リスク予測部140による予測は、第1の実施形態で説明した手法で行われてよい。
【0081】
次に、第2の例を説明する。第2の例の健康支援装置1は、入力部100と、探索パターン生成部120と、因子変化計算部130と、リスク予測部140と、ロス計算部150と、選択部170とを有する。ここで、第4の実施形態の第2の例において第1の実施形態と共通する部分についての説明は省略又は簡略化する。また、健康支援装置1のハードウェア構成は、
図7の構成が適用され得る。したがって、説明を省略する。
【0082】
第4の実施形態の第2の例における入力部100は、第1の例と同様に、健診データ及び因子変化目標値の入力を受け付ける。因子変化目標値は、体重等の第1の因子の変化の目標値であってもよいし、血圧等の第2の因子の変化の目標値であってもよい。
【0083】
探索パターン生成部120は、生活習慣の改善のパターンを生成する。生活習慣の改善のパターンは、第1の実施形態と同様でよい。
【0084】
第4の実施形態の第2の例の因子変化計算部130は、探索パターン生成部120で生成された生活習慣の探索パターンに基づき、因子変化目標値として入力された因子を除く他の第1の因子と第2の因子のそれぞれの変化量を計算する。因子の変化量の計算は、第1の実施形態と同様の因子変化のテーブルを用いて行われ得る。
【0085】
リスク予測部140は、入力された因子変化目標値の状態での疾病毎の疾病リスク値を予測する。リスク予測部140による予測は、第1の実施形態で説明した手法で行われてよい。
【0086】
ロス計算部150は、第3のロスLoss3を例えば前述の(式1)に基づいて計算する。ただし、第4の実施形態の第2の変形例では、ロス計算部150は、第1のロスLoss1を例えば以下の(式5)に基づいて計算する。
Loss1=(F1-F2)2 (式5)
ここで、F1は、入力された因子変化目標値を達成するために必要な因子の変化率である。F2は、生活習慣改善により達成できる因子の変化率である。例えば、入力された因子変化目標値がGOTの目標値であれば、F1はGOT変化目標値を達成するために必要な体重の変化率であり、F2は生活習慣改善により達成できる体重の変化率であり得る。
【0087】
終了判定部160及び選択部170は、第1の実施形態と同様に動作してよい。したがって、説明を省略する。
【0088】
次に、第4の実施形態における健康支援装置1の動作を説明する。
図15は、第4の実施形態の第1の例における健康支援装置1の動作を示すフローチャートである。
図15の処理は、プロセッサ201によって実行される。なお、第2の例における健康支援装置1の動作は、
図15にさらに
図8のステップS2、S3、S5及びS6の処理が加わるのみである。したがって、説明を省略する。
【0089】
ステップS301において、プロセッサ201は、健診データ及び因子変化目標値を取得する。健診データは、例えば、表示装置204に表示されるGUI(Graphical User Interface)上でのユーザの入力装置203の操作を介して入力されてもよいし、健康支援装置1の外部の記憶媒体を介して入力されてもよい。また、因子変化目標値は、例えば、表示装置204に表示されるGUI上でのユーザの入力装置203の操作を介して入力されてよい。
【0090】
ステップS302において、プロセッサ201は、入力された因子変化目標値に関連する因子の変化量を計算する。例えば、体重の変化目標値が入力されたときには、プロセッサ201は、体重の変化によって変化するGOT、HbA1c、LDLといった生体検査値の変化量を計算する。
【0091】
ステップS303において、プロセッサ201は、疾病リスク値を予測する。例えば、プロセッサ201は、疾病のリスク予測モデルに変化後の第2の因子の値を入力して探索パターン毎の疾病リスク値を予測する。
【0092】
ステップS304において、プロセッサ201は、ユーザに対して結果を提示する。その後、
図15の処理は終了する。例えば、プロセッサ201は、表示装置204の画面上に、入力された因子変化目標値に対して疾病リスク値を表示する。疾病リスク値に代えて、疾病リスク値の低減値が表示されてもよい。
【0093】
以上説明したように第4の実施形態によれば、リスク低減目標値に代えて因子の変化量の目標値が入力され、この入力された目標値に関連する因子の変化量が算出されて疾病リスク値が予測される。これによっても、個人レベルの生活習慣の目標設定がされ得る。また、第4の実施形態ではより直接的な生活習慣の改善目標に従って疾病リスク値が予測され得る。
【0094】
ここで、第4の実施形態においても第2の実施形態及び第3の実施形態と同様に個人意向パラメータが考慮されて予測が行われてもよい。例えば、第2の例における探索パターン生成部120が候補生成部121に置き換えられれば、そのまま第2の実施形態及び第3の実施形態の手法が適用され得る。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0096】
1 健康支援装置、100 入力部、110 解析部、120 探索パターン生成部、121 候補生成部、130 因子変化計算部、131 第1の因子変化計算部、132 第2の因子変化計算部、140 リスク予測部、150 ロス計算部、160 終了判定部、170 選択部、201 プロセッサ、202 メモリ、203 入力装置、204 表示装置、205 通信装置、206 ストレージ、207 バス、2061 健康支援プログラム、2062 生活習慣データ、2063 第1の因子の変化テーブル、2064 第2の因子の変化テーブル、2065 リスク予測モデル。