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特許7520685超高出力の高周波(RF)電力を超短時間使用する低~中程度の損傷深さのアブレーション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】超高出力の高周波(RF)電力を超短時間使用する低~中程度の損傷深さのアブレーション
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020175847
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2021065706
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】16/658,601
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・アルトマン
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-509713(JP,A)
【文献】特開2017-070711(JP,A)
【文献】特表2010-525867(JP,A)
【文献】特開2019-126728(JP,A)
【文献】特開2019-022659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0107510(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0065329(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0165808(US,A1)
【文献】特開2018-089431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12-18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓をアブレーションするシステムであって、
患者の前記心臓の組織内に特定の損傷部を形成するための、(i)少なくとも400ワットの目標アブレーション電力と、(ii)3秒を超えないパルス持続時間と、を有するアブレーション信号を指定する超高出力超短時間(UPUD)アブレーションプロトコルの値を記憶するように構成されたメモリと、
前記組織と接触するように構成されたアブレーションプローブと、
前記アブレーション信号を生成するように構成された超高出力超短時間(UPUD)発生器と、
前記UPUDアブレーションプロトコルに従って前記アブレーション信号を前記組織に印加するように前記発生器及び前記アブレーションプローブを制御して、指定された前記目標アブレーション電力及び前記パルス持続時間を有する前記アブレーション信号を送達するように構成されたプロセッサと、
前記組織に冷却流体を供給する灌注をおこなう灌注ポンプと、
を備え、
前記アブレーション信号及び前記灌注のタイミングを制御して、前記アブレーション中に前記灌注を行う、システム。
【請求項2】
前記パルス持続時間が1秒を超えない、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記パルス持続時間が前記患者の単一の心拍周期を超えない、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記アブレーション信号の印加中に、
前記組織近傍の温度を監視し、
監視された前記温度が所定の最大温度を超えると、前記アブレーション信号を停止させる、
ように前記アブレーションプローブを制御するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記アブレーション信号の印加中に、
前記アブレーションプローブが前記組織に及ぼす接触力を監視し、
監視された前記接触力が所定の値を下回ると、前記アブレーション信号を停止させる、
ように前記アブレーションプローブを制御するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、高周波(RF)アブレーションに関し、特に、心臓RFアブレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波(RF)アブレーション治療を最適化するための技術は、過去に特許文献において提案されている。例えば、米国特許出願公開第2009/0093802号には、経中隔心臓処置のためのシステム及び方法が記載されている。一実施形態による患者の治療方法は、組織貫通ガイドワイヤを心臓中隔に隣接して配置することと、エネルギーのパルスをガイドワイヤへ方向付けることと、ガイドワイヤを一連の別個の工程で遠位方向に移動させることによって、ガイドワイヤを中隔を穿通して前進させることと、を含む。各工程が、患者の身体外で測定された所定の距離にわたってもよい。この方法は、ガイドワイヤが中隔を貫通した後に、カテーテルをガイドワイヤ上でこれに沿って通すことを更に含み得る。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2004/0172110号は、心房前庭の標的病変部を焼灼することができるRF加温バルーンカテーテルを記載している。RF加温バルーンカテーテルは、膨張時に標的病変部と接触することができる膨張可能なバルーンと、対象の体表面に取り付けられた表面電極の対極としての役割を果たすRF電極であって、バルーンの壁内又はバルーン内に配置されて、表面電極とRF電極との間にRF電力を供給するRF電極と、バルーン内の温度を感知可能な温度センサと、内筒の先端部から突出し、バルーンを標的病変部上に保持可能なガイドシャフトと、カテーテルチューブ及びガイドシャフトを挿通するガイドワイヤと、を備える。
【0004】
米国特許第9,962,217号には、アブレーション部位への係合時に遠位先端部に加えられる機械的力を感知するための圧力検出器を心臓カテーテルが内蔵している組織アブレーションシステム及び方法が記載されている。コントローラは、圧力検出器に応答して、部位に対する接触圧とアブレータの電力出力とエネルギー印加時間との間の関係に従って、アブレーション体積を計算する。このシステムは、組織をアブレーションするために、組織に、ある印加時間の間及びある電力レベルで、特定の投入量のエネルギーを印加するものであり、この場合、この投入量の印加時間及び電力レベルのうちの少なくとも1つは、機械的力に依存する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、身体組織のアブレーション方法を提供し、この方法は、患者の体内の組織内に特定の損傷部を形成するための、(i)少なくとも400ワットの目標アブレーション電力及び(ii)3秒を超えないパルス持続時間を有するアブレーション信号を指定する超高出力超短時間(UPUD)アブレーションプロトコルを定義することを含む。アブレーションプローブ及び組織を接触させる。アブレーションプローブを使用し、UPUDプロトコルに従って、アブレーション信号が組織に印加され、指定された目標アブレーション電力及び持続時間を有するアブレーション信号が送達される。
【0006】
いくつかの実施形態では、UPUDアブレーションプロトコルを定義することは、パルス持続時間を1秒を超えないように設定することを含む。他の実施形態では、UPUDアブレーションプロトコルを定義することは、パルス持続時間を患者の単一の心拍周期を超えないように設定することを含む。
【0007】
一実施形態では、この方法は、アブレーション信号の印加中に、組織近傍の温度を監視することと、
監視された温度が所定の最大温度を超えると、アブレーション信号を停止させることと、を更に含む。
【0008】
別の一実施形態では、この方法は、アブレーション信号の印加中に、プローブが組織に及ぼす接触力を監視することと、監視された接触力が所定の値を下回ると、アブレーション信号を停止させることと、を更に含む。
【0009】
加えて、本発明の一実施形態によれば、身体組織をアブレーションするためのシステムであって、
メモリ、アブレーションプローブ、超高出力超短時間(UPUD)発生器、及びプロセッサを含むシステムが更に提供される。メモリは、患者の体内の組織内に特定の損傷部を形成するための、(i)少なくとも400ワットの目標アブレーション電力と、(ii)3秒を超えないパルス持続時間と、を有するアブレーション信号を指定する超高出力超短時間(UPUD)アブレーションプロトコルの値を記憶するように構成されている。アブレーションプローブは、組織と接触するように構成されている。UPUD発生器は、アブレーション信号を生成するように構成されている。プロセッサは、UPUDプロトコルに従ってアブレーション信号を組織に印加するように発生器及びアブレーションプローブを制御して、指定された目標アブレーション電力及び持続時間を有するアブレーション電力を送達するように構成されている。
【0010】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による、超高出力超短時間(UPUD)心臓高周波(RF)アブレーション療法のためのシステムの概略的な描写図である。
図2】本発明の一実施形態による、図1の超高出力超短時間(UPUD)RFアブレーションシステムの動作において実施されるアルゴリズムのステップを模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概論
心臓高周波(RF)アブレーションシステムは、正確な損傷深さを達成するための試みにおいて、アブレーション中のアブレーション電力出力を変化させることができる。いくつかのシステムは、アブレーションされる組織の温度が最大値を超えないように、又は最小値を下回らないようにしつつ、RF電力及び灌注速度の双方とアブレーションの持続時間とを変化させることができる。
【0013】
しかしながら、例えば薄い組織では、アブレーション中の組織の温度応答が良好でない場合がある(例えば、組織温度が予想外に上昇又は下降する場合がある)。結果として、システムが組織に印加するエネルギーの量がこれに応じて変動する可能性があり、このために、損傷深さを制御できなくなるおそれがある。例えば、最大10秒の持続時間にわたって数十ワットを印加する典型的なプロトコルでは、組織内の導電加熱メカニズムを制御できなくなると、損傷深さを制御できなくなるおそれがある。
【0014】
また、インピーダンスなどの他の制御読み取り値が不正確であるために、例えば印加する電力が小さ過ぎる、印加する時間が長過ぎるなど、アブレーションのRF電力及び持続時間の調整が不正確となり、この結果、アブレーションの効率が低下し、血液凝固などの副作用が発生する場合もある。
【0015】
以下に記載する本発明の実施形態は、一定の超高出力超短時間(UPUD)モードでアブレーションシステムを動作させる。典型的には、本開示のUPUDアブレーションプロトコルは、非常に短い時間(例えば3秒以下、典型的には、目標とする損傷深さに応じて0.5秒~0.9秒の秒未満など)にわたって組織に加えられる超高定格のアブレーションRF電力(例えば、アブレーション電極当たり少なくとも400ワット)を使用して、事前に計画された通りの損傷を達成する。アブレーション時間が非常に短いことで、高出力を所望の損傷領域に集中させることができ、所望の領域から逃げるエネルギーによる、例えば組織を介した伝導加熱によって引き起こされる損傷などの二次的なダメージのリスクが大幅に低減される。
【0016】
本開示のRFアブレーションのUPUDモードでは、結果として生じる損傷の深さは、組織の伝導加熱ではなく、組織の抵抗加熱に主に依存し、損傷パラメータの高レベルの再現性を達成する。特に、前述の従来のアブレーションプロトコルと本開示のUPUDプロトコルとの相違は、特に、例えば肺静脈と付属肢との間の隆起部などの、カテーテルの安定した位置を維持することが困難な領域において顕著である。
【0017】
単一の心拍に相当する時間内でRFアブレーションを生成し印加できることで、長時間(例えば、10心拍)にわたるカテーテルの安定性に対する要件が大幅に緩和される。要件が緩和されることで、カテーテルを安定させて正確で有効な損傷を達成するために医師が費やす必要のある労力及び時間が削減される。一実施形態では、RFアブレーション持続時間は、患者の単一の心拍周期(単一の心周期)を超えないように設定される。心拍周期は、特定の患者について予め測定されてもよく、又は全ての患者に好適な一般的な上限を設定することもできる。
【0018】
いくつかの実施形態では、アブレーション中にアルゴリズムを実行するプロセッサが温度を監視し、温度が許容最大温度値(例えば、所定の高温限界)を超えると、プロセッサはアブレーション処置を停止させる。加えて又は代わりに、アブレーション中に、プロセッサがカテーテルと組織との間の接触力を監視し、接触力が所定の値を下回ってアブレーション効率を低下させると、プロセッサはアブレーション処置を停止させる。
【0019】
多電極カテーテルでは、本発明の実施形態は、上述のように、典型的には1秒未満の範囲内である必要な持続時間にわたって、各電極に約400ワットを印加することができる。本開示のUPUDアブレーションは、例えば、高度に局在化された正確な損傷部のリングを形成することができる。
【0020】
したがって、本開示のUPUD RFアブレーション技術は、カテーテルベースのRFアブレーション処置の臨床結果を改善することができる。
【0021】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、超高出力超短時間(UPUD)心臓高周波(RF)アブレーション療法のためのシステム20の概略的な描写図である。典型的には、システム20のメモリ45は、図2に記されるプロトコルなど、様々な臨床シナリオ用の多数のアブレーションプロトコルを記憶する。
【0022】
図示するように、医師26は、血管を通して対象22の心臓24の心腔内へとカテーテル28を挿入し、カテーテルの遠位端部32が治療対象領域内の心組織に接触するように、カテーテルを操作する。カテーテル28の先端電極51は、挿入画25に見られるが、電極の温度を測定する1つ以上の温度センサ50を備える。いくつかの実施形態において、この温度は、アブレーションされる組織の近傍の温度を推定するために使用される。先端電極51は、先端電極51によって組織に及ぼされる力を測定する1つ以上の接触力センサ53を更に含む。
【0023】
アブレーションプローブによって組織に及ぼされる瞬間的な接触力を推定する方法は、本特許出願の譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、「Adapting Irrigation rate in Radiofrequency(RF)Ablation in Response to Contact-Force Variation」と題する2019年5月6日出願の米国特許出願第16/403,865号に記載されている。あるいは、任意の他の好適な技術を使用して、先端電極51によって組織に及ぼされる接触力を推定してもよい。
【0024】
アブレーション部位に遠位端部32を位置決めし、先端が心組織に確実に接触するようにした後、操作者26は、制御コンソール42内の超高出力超短時間(UPUD)RFエネルギー発生器44を作動させて、ケーブル38を介して遠位端部32にRF電力を供給する。一方、灌注ポンプ48は、管40及びカテーテル28の内腔を介して、通常の生理食塩水などの冷却流体を、遠位端部に供給する。典型的には、アブレーション前及びアブレーション中の両方において、ディスプレイ46は、以下の表I~IIに列挙されるものなどのアブレーションパラメータの値を、医師26に表示する。
【0025】
超高出力超短時間(UPUD)RF及び灌注のタイミングを調整して、超短時間アブレーション中に適切な量の灌注を行い、過剰な灌注液によって心臓に過剰に負荷を与えることなく、カテーテルの先端及び組織を冷却することができる。
【0026】
システム20を操作するために、プロセッサ41は、プロセッサによるシステムの操作に使用されるいくつかのモジュールを含む。これらのモジュールは、温度モジュール52、電力設定モジュール54、灌注モジュール55及び接触力モジュール57を含み、これらの機能については以下で説明する。具体的には、プロセッサ41は、以下で更に説明するように、本開示のステップをプロセッサ41が実行することを可能にする、図2に含まれる本明細書に開示の専用のアルゴリズムを実行する。
【0027】
図示された実施形態は、特に心臓組織のアブレーションのための先端アブレーション装置の使用に関するものであるが、本明細書に記載の方法は、代替的に、複数のアブレーション電極を備え、各電極がプロセッサ41によって独立して制御され、図2で説明されているように、UPUDプロトコルで指定されたRF電力及び持続時間に従って動作するアブレーション装置に適用されてもよい。
【0028】
超高出力のRF電力を超短時間にわたって印加する
図2は、本発明の一実施形態に係る、図1の超高出力超短時間(UPUD)RFアブレーションシステム20の動作において実施されるアルゴリズムのステップを模式的に示すフローチャートである。このプロセスは、アブレーションパラメータの事前設定ステップ60で開始され、この間に、医師26は、アブレーション電力及び持続時間を事前設定する。ステップ60に、異なる臨床的シナリオに合わせて異なるプロトコルを作成すること及び、これらのプロトコルを、例えばシステム20のメモリ45に保存することが含まれてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、前述のアブレーションパラメータ及び他の事前設定されたパラメータは、表I~IIに示すように設定される。典型的には、電極毎のRF電力については、システムの操作者は超高出力RF電力のみを設定し、最小RF電力は、安全上の理由のためにシステムによってゼロに自動設定される。
【0030】
表I~IIに、臨床上の必要性に応じて、二次的なダメージを最小限に抑えながら損傷深さを最適化するために使用され得る様々な設定を示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
アブレーションパラメータ設定ステップ60は、医師26がアブレーションを実施する前に、例えば、事前定義されたUPUDアブレーションプロトコルを使用又は修正することによって実行される。
【0034】
アブレーションセッションの開始時、プローブ導入ステップ62において、医師26は、システム20に内蔵されたカテーテル位置追跡システムを使用して、心臓24内の所望の位置にカテーテル28を挿入する。
【0035】
次に、医師26は、電極-組織接触ステップ64において、電極先端51と標的心臓組織との間の物理的接触を行う。プロセッサ41は、カテーテル28上のセンサからの接触力を表す信号を受信し、瞬間的な接触力を算出する。
【0036】
RF送達ステップ66において、医師26は、ステップ60及びステップ62でパラメータ値が選択されている、医師26の選択した特定のアブレーションプロトコルで、システム20を動作させる。医師26のタスクは、例えば、表I~IIに示すアブレーションパラメータを含むUPUDプロトコルで定義された非常に短い時間にわたって、(例えば、電極51を用いて)目標電力出力を印加することによって、事前設定されたアブレーションプロトコルを実行することである。
【0037】
表I~IIに示す値は例示的な値であり、任意の他の好適な値を代替的な実施形態で使用することができる。一般に、電極毎に印加される電力レベルは少なくとも400Wであり、パルス持続時間は3秒を超えない。最も実用的な実装では、パルス持続時間は1秒を超えない。
【0038】
いくつかの実施形態では、パルス持続時間は、患者の単一の心拍持続時間(単一の心周期)を超えないように設定される。単一の心拍内でアブレーションを行うことは、例えば、処置の間、カテーテルを安定した状態に維持することが非常に容易であるという点で有利である。一実施形態では、プロセッサ41は、治療される特定の患者の心拍周期を事前に測定し、パルス持続時間が事前に測定された心拍持続時間を超えないようにする。あるいは、パルス持続時間は、一般に全ての患者に適しているグローバルな持続時間(例えば、何らかの1秒未満の時間)よりも短く設定されてもよい。
【0039】
システム20のディスプレイ46は、当該技術分野で公知の方法によって、医師26に、電極へのRF送達の進行を表示するよう構成され得る。進捗の表示は、アブレーションによって損傷部が生成される際の各損傷部の寸法のシミュレーションなどのグラフィック表示によるものであってもよく、及び/又は、英数字表示を利用したものであってもよい。
【0040】
RF送達処置の間、プロセッサ41は、温度モジュール52及び接触力モジュール57を使用して、処置の進行に関するいくつかのチェックを実行する。いくつかの実施形態では、温度がチェックされ(68)、温度が表Iに記載の許容最大値を超えている場合には、プロセッサは、アブレーション終了ステップ72で電力の送達を停止し、アブレーション処置を停止させる。加えて又は代わりに、接触力がチェックされ(70)、接触力が所定の値を下回っている場合には、プロセッサは、アブレーション終了ステップ72で電力の送達を停止し、アブレーション処置を停止させる。
【0041】
図2に示す例示的なフローチャートは、単に概念を明確化する目的のために選択されたものである。本実施形態はまた、より単純化されたフローチャートを提供するために本明細書では意図的に本開示から省略されている、灌注流の確認などのアルゴリズムの付加的なステップを含む。
【0042】
本明細書に記載の実施形態は、主に心臓用途を対象としたものであるが、本明細書に記載の方法及びシステムを、例えば、腎臓及び前立腺などの身体の他の器官のアブレーションに使用することもできる。
【0043】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせ及びその部分的組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれる文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0044】
〔実施の態様〕
(1) 身体組織をアブレーションする方法であって、
患者の体内の組織内に特定の損傷部を形成するための、(i)少なくとも400ワットの目標アブレーション電力及び(ii)3秒を超えないパルス持続時間を有するアブレーション信号を指定する超高出力超短時間(UPUD)アブレーションプロトコルを定義することと、
アブレーションプローブ及び前記組織を接触させることと、
前記アブレーションプローブを使用し、前記UPUDプロトコルに従って、前記アブレーション信号を前記組織に印加し、指定された前記目標アブレーション電力及び前記持続時間を有する前記アブレーション信号を送達することと、
を含む、方法。
(2) 前記UPUDアブレーションプロトコルを定義することは、前記パルス持続時間を1秒を超えないように設定することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記UPUDアブレーションプロトコルを定義することは、前記パルス持続時間を前記患者の単一の心拍周期を超えないように設定することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記アブレーション信号の印加中に、
前記組織近傍の温度を監視することと、
監視された前記温度が所定の最大温度を超えると、前記アブレーション信号を停止させることと、
を含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記アブレーション信号の印加中に、
前記プローブが前記組織に及ぼす接触力を監視することと、
監視された前記接触力が所定の値を下回ると、前記アブレーション信号を停止させることと、
を含む、実施態様1に記載の方法。
【0045】
(6) 身体組織をアブレーションするシステムであって、
患者の体内の組織内に特定の損傷部を形成するための、(i)少なくとも400ワットの目標アブレーション電力と、(ii)3秒を超えないパルス持続時間と、を有するアブレーション信号を指定する超高出力超短時間(UPUD)アブレーションプロトコルの値を記憶するように構成されたメモリと、
前記組織と接触するように構成されたアブレーションプローブと、
前記アブレーション信号を生成するように構成された超高出力超短時間(UPUD)発生器と、
前記UPUDプロトコルに従って前記アブレーション信号を前記組織に印加するように前記発生器及び前記アブレーションプローブを制御して、指定された前記目標アブレーション電力及び前記持続時間を有する前記アブレーション電力を送達するように構成されたプロセッサと、
を備える、システム。
(7) 前記パルス持続時間が1秒を超えない、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記パルス持続時間が前記患者の単一の心拍周期を超えない、実施態様6に記載のシステム。
(9) 前記プロセッサは、前記アブレーション信号の印加中に、
前記組織近傍の温度を監視し、
監視された前記温度が所定の最大温度を超えると、前記アブレーション信号を停止させる、
ように前記プローブを制御するように更に構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(10) 前記プロセッサは、前記アブレーション信号の印加中に、
前記プローブが組織に及ぼす接触力を監視し、
監視された前記接触力が所定の値を下回ると、前記アブレーション信号を停止させる、
ように前記プローブを制御するように更に構成されている、実施態様6に記載のシステム。
図1
図2