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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】ガスセンサ及びガスセンサ取付構造
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20240716BHJP
   G01N 27/41 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
G01N27/409 100
G01N27/41 325H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020181915
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072459
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】米津 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】島崎 雄次
(72)【発明者】
【氏名】吉田 将之
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-146155(JP,U)
【文献】特開2016-023985(JP,A)
【文献】実開平05-004000(JP,U)
【文献】特開2013-257192(JP,A)
【文献】特開2015-040716(JP,A)
【文献】特開2019-070601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/407
G01N 27/41
G01N 27/409
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延び、先端側に被検出ガスを検知する検知部が形成されたセンサ素子と、
前記センサ素子の径方向周囲を取り囲んで保持する筒状の主体金具と、
前記主体金具の先端側の周囲に固定されると共に、前記センサ素子の前記先端側を取り囲む一重筒状のプロテクタと、
を備えたガスセンサであって、
前記プロテクタは、ガス導入孔と、前記ガス導入孔よりも先端側に配置されたガス排出孔とを有し、
前記主体金具は、前記被検出ガスが流れる配管に自身の外面を直接又は間接的に固定する固定部と、該固定部の後端側に位置して前記ガスセンサを取り付けるための径大の工具係合部とを有し、
前記軸線方向の前記ガス導入孔と前記ガス排出孔との距離L1が、前記軸線方向の前記工具係合部と前記ガス導入孔との距離L2よりも大きく、
前記センサ素子の先端が前記ガス導入孔よりも先端側に位置することを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記距離L1における前記プロテクタの最大内径DAが、前記距離L1の1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記ガス排出孔の合計の開口面積S1が、前記プロテクタの底部の面積S2の以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
ガスセンサと、
被検出ガスが流れる配管と、を有し、
前記ガスセンサを前記配管に取り付けてなるガスセンサ取付構造であって、
前記ガスセンサが請求項1~3のいずれか一項に記載のガスセンサであり、
前記ガスセンサの先端側が前記配管の取付穴から前記配管の内部に臨むようにして、前記配管に前記固定部が直接又は間接的に固定され、かつ前記工具係合部の先端向き面が前記配管の外面に直接又は間接的に接して取付けられた状態で、
前記ガス導入孔は前記取付穴の仮想内面よりも径方向外側に配置され、
前記ガス排出孔は前記配管の内側に配置されてなることを特徴とするガスセンサ取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一重のプロテクタを備えたガスセンサ及びガスセンサ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筒状の主体金具にセンサ素子を保持し、さらに排ガスに晒されるセンサ素子の先端側を一重又は二重のプロテクタで保護するガスセンサが知られている。このプロテクタにはガス導入孔が設けられているが、排ガスに混入した凝縮水がセンサ素子に到達するのを抑制する耐被水性と、センサ素子の検知部へ速やかに排ガスを導入する応答性とを要求される。
そこで、プロテクタを一重として応答性を向上させた技術が開発されている(特許文献1)。この技術では、センサ素子を筒状のインシュレータの内側に保持すると共に、インシュレータ先端に設けたガス導入口に多孔質フィルタを配置している。これにより、ガス導入口に飛来した凝縮水を多孔質フィルタにトラップさせ、センサ素子の被水を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-67734号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術の場合、センサ素子がインシュレータの内部に収容され、しかもセンサ素子への排ガスの流通が多孔質フィルタを介して行われるため、プロテクタを一重としても応答性が低下する傾向にある。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、一重のプロテクタを用いて耐被水性と応答性とを共に向上させることができるガスセンサ及びガスセンサ取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のガスセンサは、軸線方向に延び、先端側に被検出ガスを検知する検知部が形成されたセンサ素子と、前記センサ素子の径方向周囲を取り囲んで保持する筒状の主体金具と、前記主体金具の先端側の周囲に固定されると共に、前記センサ素子の前記先端側を取り囲む一重筒状のプロテクタと、を備えたガスセンサであって、前記プロテクタは、ガス導入孔と、前記ガス導入孔よりも先端側に配置されたガス排出孔とを有し、前記主体金具は、前記被検出ガスが流れる配管に自身の外面を直接又は間接的に固定する固定部と、該固定部の後端側に位置して前記ガスセンサを取り付けるための径大の工具係合部とを有し、前記軸線方向の前記ガス導入孔と前記ガス排出孔との距離L1が、前記軸線方向の前記工具係合部と前記ガス導入孔との距離L2よりも大きく、前記センサ素子の先端が前記ガス導入孔よりも先端側に位置することを特徴とする。
【0006】
このガスセンサによれば、ガスセンサの先端側が配管の内部に臨むようにして、配管に固定部が固定され、かつ工具係合部の先端向き面が配管の外面に接するように取り付けられた場合、プロテクタのうち、L2より相対的に長いL1の部位(ガスセンサの先端側)を配管の内部に突出させ易くなる。
その結果、ガスセンサの先端側に位置するガス排出孔を、被検出ガスの流速が最も高い配管の中心に近づけさせ、プロテクタ内の被検出ガスをガス排出孔から負圧により外部へ確実に吸引できるので、応答性が向上する。
【0007】
又、L2<L1とすることで、ガス導入孔を配管の径方向外側に配置させ易くなる。これにより、ガス導入孔が配管内部の流速が高い被検出ガスに直接曝されることを抑制し、ひいては被検出ガスに含まれる水滴もガス導入孔からプロテクタ内に直接浸入することを抑制し、被水性が向上する。
又、被検出ガスの流速が最も高く負圧となるガス排出孔近傍に比べ、配管の外側に位置するガス導入孔の圧力が高くなり、ガス排出孔とガス導入孔の圧力差が大きくなる。このため、プロテクタ内のガス置換がより促進され、応答性がさらに向上する。
【0008】
本発明のガスセンサにおいて、前記距離L1における前記プロテクタの最大内径DAが、前記距離L1の1/2以下であってもよい。
このガスセンサによれば、プロテクタのうちガス導入孔より先端のL1の部位が軸線方向に細長くなる。このため、ガス排出孔近傍の圧力がベンチュリ効果によりさらに負圧となり、プロテクタ内のガスがガス排出孔から外部へさらに吸引されるので、応答性がさらに向上する。
【0009】
本発明のガスセンサにおいて、前記ガス排出孔の合計の開口面積S1が、前記プロテクタの底部の面積S2の50%以下であってもよい。
このガスセンサによれば、ガス排出孔近傍の圧力がさらに負圧となり、プロテクタ内のガスがガス排出孔から外部へさらに吸引されるので、応答性がさらに向上する。
【0010】
本発明のガスセンサ取付構造は、ガスセンサと、被検出ガスが流れる配管と、を有し、前記ガスセンサを前記配管に取り付けてなるガスセンサ取付構造であって、前記ガスセンサが請求項1~3のいずれか一項に記載のガスセンサであり、前記ガスセンサの先端側が前記配管の取付穴から前記配管の内部に臨むようにして、前記配管に前記固定部が直接又は間接的に固定され、かつ前記工具係合部の先端向き面が前記配管の外面に直接又は間接的に接して取付けられた状態で、前記ガス導入孔は前記取付穴の仮想内面よりも径方向外側に配置され、前記ガス排出孔は前記配管の内側に配置されてなることを特徴とする。
【0011】
このガスセンサ取付構造によれば、ガスセンサの先端側が配管の取付穴から配管の内部に臨むようにして、配管に固定部が固定され、かつ工具係合部の先端向き面が配管の外面に接するように取り付けられるので、プロテクタのうち、L2より相対的に長いL1の部位(ガスセンサの先端側)を配管の内部に突出させ易くなる。
その結果、ガスセンサの先端側に位置するガス排出孔を、被検出ガスの流速が最も高い配管の中心に近づけさせ、プロテクタ内の被検出ガスをガス排出孔から負圧により外部へ確実に吸引できるので、応答性が向上する。
【0012】
又、L2<L1とすることで、ガス導入孔を取付穴の仮想内面よりも径方向外側に配置させ易くなる。これにより、ガス導入孔が配管内部の流速が高い被検出ガスに直接曝されることを抑制し、ひいては被検出ガスに含まれる水滴もガス導入孔からプロテクタ内に直接浸入することを抑制し、被水性が向上する。
又、被検出ガスの流速が最も高く負圧となるガス排出孔近傍に比べ、配管の仮想内面より外側に位置するガス導入孔の圧力が高くなり、ガス排出孔とガス導入孔の圧力差が大きくなる。このため、プロテクタ内のガス置換がより促進され、応答性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、一重のプロテクタを用いて耐被水性と応答性とを共に向上させることができるガスセンサ及びガスセンサ取付構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態にかかるガスセンサの断面図である。
図2】ガスセンサを配管に取り付けたガスセンサ取付構造の断面図である。
図3】先端側から後端側へ向かってプロテクタを見たときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図1図3に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態にかかるガスセンサ1の断面図、図2はガスセンサ1を配管100に取り付けたガスセンサ取付構造200の断面図、図3は先端側から後端側へ向かってプロテクタ51を見たときの平面図である。
【0016】
図1において、ガスセンサ(全領域空燃比ガスセンサ)1は、センサ素子21と、軸線O方向に貫通してセンサ素子21を挿通させる貫通孔32を有するホルダ(セラミックホルダ)30と、セラミックホルダ30の径方向周囲を取り囲む主体金具11と、プロテクタ51と、を備えている。
センサ素子21のうち、検知部22が形成された先端側が、セラミックホルダ30及び主体金具11より先端に突出している。このように貫通孔32を通されたセンサ素子21は、セラミックホルダ30の後端面側(図示上側)に配置されたシール材(本例では滑石)41を、絶縁材からなるスリーブ43、リングワッシャ45を介して先後方向に圧縮することによって、主体金具11の内側において先後方向に気密を保持して固定されている。
【0017】
なお、センサ素子21の後端側29はスリーブ43及び主体金具11より後方に突出しており、その後端側29に形成された各電極端子24に、シール材85を通して外部に引き出された各リード線71の先端に設けられた端子金具75が圧接され、電気的に接続されている。また、この電極端子24を含むセンサ素子21の後端側29は、外筒81でカバーされている。以下、さらに詳細に説明する。
【0018】
センサ素子21は軸線O方向に延びると共に、測定対象に向けられる先端側(図示下側)に、検知用電極等(図示せず)からなり被検出ガス中の特定ガス成分を検出する検知部22を備えた帯板状(板状)をなしている。センサ素子21の横断面は、先後において一定の大きさの長方形(矩形)をなし、セラミック(固体電解質等)を主体として細長いものとして形成されている。このセンサ素子21自体は、従来公知のものと同じものであり、固体電解質(部材)の先端側に検知部22をなす一対の検知用電極が配置され、これに連なり後端側には、検知用出力取り出し用のリード線71接続用の電極端子24が露出形成されている。
【0019】
また、本例では、センサ素子21のうち、固体電解質(部材)に積層状に形成されたセラミック材の先端側内部にヒータ(図示せず)が設けられており、後端側には、このヒータへの電圧印加用のリード線71接続用の電極端子24が露出形成されている。なお、図示はしないが、これら電極端子24は縦長矩形に形成され、例えばセンサ素子21の後端側29において、帯板の幅広面(両面)に3つ又は2つの電極端子が横に並んでいる。
なお、センサ素子21の検知部22に、アルミナ又はスピネル等からなる多孔質の保護層23が被覆されている。又、センサ素子21には、検知部22に連通して被検出ガスを検知部22に導入する素子導入孔25が設けられており、素子導入孔25には図示しない多孔質の拡散抵抗層が配置されている。
【0020】
主体金具11は、先後において同心異径の筒状をなし、先端側には小径で後述するプロテクタ51を外嵌して固定するための円筒状の円環状部(以下、円筒部ともいう)12を有し、その後方(図示上方)の外周面には、それより大径をなす、エンジンの排気管への固定用の雄ネジをなすネジ(固定部)13が設けられている。そして、その後方には、このネジ13によってセンサ1をねじ込むための径大で多角形の工具係合部14を備えている。また、この工具係合部14の後方には、ガスセンサ1の後方をカバーする保護筒(外筒)81を外嵌して溶接する円筒部15が連設され、その後方には外径がそれより小さく薄肉のカシメ用円筒部16を備えている。
なお、工具係合部14はネジ13より径大で、工具係合部14の先端向き面14aがネジ13の後端側との間で段部を形成している。
【0021】
なお、このカシメ用円筒部16は、図1では、カシメ後のために内側に曲げられている。なお、工具係合部14の下面には、ねじ込み時におけるシール用のガスケット19が取着されている。
一方、主体金具11は、軸線O方向に貫通する内孔18を有している。内孔18の内周面は後端側から先端側に向かって径方向内側に先細るテーパ状の段部17を有している。
【0022】
主体金具11の内側には、絶縁性セラミック(例えばアルミナ)からなり、概略短円筒状に形成されたセラミックホルダ30が配置されている。セラミックホルダ30は、先端に向かって先細りのテーパ状に形成された先端向き面30aを有している。そして、先端向き面30aの外周寄りの部位が段部17に係止されつつ、セラミックホルダ30が後端側からシール材41で押圧されることで主体金具11内にセラミックホルダ30が位置決めされ、かつ隙間嵌めされている。
一方、貫通孔32は、セラミックホルダ30の中心に設けられると共に、センサ素子21が略隙間なく通るように、センサ素子21の横断面とほぼ同一の寸法の矩形の開口とされている。
【0023】
センサ素子21は、セラミックホルダ30の貫通孔32に通され、センサ素子21の先端21aをセラミックホルダ30及び主体金具11の先端12aよりも先方に突出させている。
一方、センサ素子21の先端部は、一重の有底円筒状のプロテクタ(保護カバー)51で覆われている。プロテクタ51の後端は主体金具11の円筒部12に外嵌され、溶接されている。又、プロテクタ51の後端寄りの部位には、径方向(軸線O方向に垂直な方向)に沿う段部51dが形成され、段部51dより先端側が小径となっている。
【0024】
そして、段部51dにはガス導入孔56が開口している。図3に示すように、本例では、ガス導入孔56は段部51dの周方向に等間隔に複数(12個)設けられている。
なお、ガス導入孔56の周縁のうち、プロテクタ51内側の周縁を通る平面56eの垂線が、径方向と角度をなし(径方向と平行でない)、かつガス導入孔56のうちプロテクタ51の内側の周縁が最も後端側に位置する(換言すれば、ガス導入孔56のうちプロテクタ51の外側の周縁より内側の周縁の方が後端側にある)と、被検出ガス中の水滴がガス導入孔56からプロテクタ51内に侵入し難くなるので好ましい。
【0025】
一方、プロテクタ51の先端の底部51a中央にはガス排出孔53(本例では1個)が設けられている。ガス排出孔53は、ガス導入孔56よりも先端側に配置され、ガスセンサ1が取り付けられる配管を流れる被検出ガスの流れによってプロテクタ51内のガスがガス排出孔53から外部へ吸い出され、その負圧により、ガス導入孔56から被検出ガスがプロテクタ51内へ導入される。
なお、図1の例では、プロテクタ51の先端の底部51a中央が平行な2本の切れ目で後端側に切り起こされてカバー51fを形成し、ガス排出孔53は、プロテクタ51の底部51aとカバー51fとの間の隙間に径方向に向いて形成されている。この場合、プロテクタ51を軸線O方向の先端側から見たとき、ガス排出孔53が直接見えないので、ガス排出孔53から凝縮水等の水滴がプロテクタ51内部に侵入することを抑制できる。
【0026】
又、図1に示すように、センサ素子21の後端側29に形成された各電極端子24には、外部にシール材85を通して引き出された各リード線71の先端に設けられた各端子金具75がそのバネ性により圧接され、電気的に接続されている。そして、この圧接部を含む各端子金具75は、本例のガスセンサ1では、外筒81内に配置された絶縁性のセパレータ91内に設けられた各収容部内に、それぞれ対向配置で設けられている。なお、セパレータ91は、外筒81内にカシメ固定された保持部材82を介して径方向及び先端側への動きが規制されている。そして、この外筒81の先端部を、主体金具11の後端側の円筒部15に外嵌して溶接することで、ガスセンサ1の後方が気密状にカバーされている。
なお、リード線71は外筒81の後端部の内側に配置されたシール材(例えばゴム)85を通されて外部に引き出されており、この小径筒部83を縮径カシメしてこのシール材85を圧縮することにより、この部位の気密が保持されている。
【0027】
因みに、外筒81の軸線O方向の中央よりやや後端側には、先端側が径大の段部81dが形成され、この段部81dの内面がセパレータ91の後端を先方に押すように支持する。一方、セパレータ91はその外周に形成されたフランジ93を外筒81の内側に固定された保持部材82の上に支持させられており、段部81dと保持部材82とによってセパレータ91が軸線O方向に保持されている。
【0028】
次に、本発明の特徴部分について説明する。
図1に示すように、本実施形態では、軸線O方向のガス導入孔56とガス排出孔53との距離L1が、軸線O方向の工具係合部14とガス導入孔56との距離L2よりも大きく、センサ素子21の先端21aがガス導入孔56よりも先端側に位置する。
【0029】
このようにすると、図2に示すように、ガスセンサ1の先端側が、被検出ガスGが流れる配管100(排気管等)の取付穴100hから配管100の内部に臨むようにして、配管100にネジ13が直接又は間接的に固定され、かつ工具係合部14の先端向き面14aが配管100の外面100eに直接又は間接的に接するように取り付けられた場合、プロテクタ51のうち、L2より相対的に長いL1の部位(ガスセンサ1の先端側)を配管100の内部に突出させ易くなる。
その結果、ガスセンサの先端側に位置するガス排出孔53を、被検出ガスGの流速が最も高い配管100の中心に近づけさせ、プロテクタ51内の被検出ガスGをガス排出孔53から負圧により外部へ確実に吸引できるので、応答性が向上する。
【0030】
又、L2<L1とすることで、ガス導入孔56を取付穴100hの仮想内面100a2よりも径方向外側に配置させ易くなる。これにより、ガス導入孔56が配管100内部の流速が高い被検出ガスGに直接曝されることを抑制し、ひいては被検出ガスGに含まれる水滴もガス導入孔56からプロテクタ51内に直接浸入することを抑制し、被水性が向上する。
又、被検出ガスGの流速が最も高く負圧となるガス排出孔53近傍に比べ、配管100の仮想内面100a2より外側に位置するガス導入孔56の圧力が高くなり、ガス排出孔53とガス導入孔56の圧力差が大きくなる。このため、図2の被検出ガスGの流れ(矢印)に示すように、プロテクタ51内の被検出ガスGをガス排出孔53からさらに外部へ吸引しつつ、仮想内面100a2よりも外側ではガス導入孔56からガスをプロテクタ51内に導入し易くなり、プロテクタ51内のガス置換がより促進され、応答性がさらに向上する。
【0031】
これに対し、L2≧L1である場合、工具係合部14とガス導入孔56との距離L2が相対的に長すぎることになる。その結果、工具係合部14を配管100の取付穴100hから径方向外側に遠ざけても、ガス導入孔56自体が取付穴100hの内部(仮想内面100a2よりも径方向内側)に入ってしまうことがあり、ガス導入孔56が配管100内部の流速が高い被検出ガスGに直接曝されて被水性が低下する。
又、L2≧L1である場合、プロテクタ51のL1の部位(ガスセンサの先端側)が相対的に短くなり、取付穴100hから配管100のより内部に突出させることが困難になる。その結果、ガス排出孔53を配管100の中心に近づけ難くなり、ガス排出孔53を負圧に維持し難くなって応答性が低下する。
【0032】
なお、L1はガス導入孔56とガス排出孔53との軸線O方向の距離であり、ガス導入孔56の先端とガス排出孔53の後端との距離を示す。
同様に、L2は工具係合部14とガス導入孔56との軸線O方向の距離であり、工具係合部14の先端向き面14aとガス導入孔56の後端との距離を示す。
又、ガス導入孔56とガス排出孔53が複数個ある場合、L1は、複数のガス導入孔56のうち最も先端と、複数のガス排出孔53のうち最も後端との距離を示す。同様に、L2は、工具係合部14の先端向き面14aと、複数のガス導入孔56のうち最も先端との距離を示す。
【0033】
また、センサ素子21の先端21aがガス導入孔56よりも先端側に位置する必要がある理由は以下による。つまり、ガス導入孔56から導入された被検出ガスGはプロテクタ51内部を先端側へ向かう。そこで、ガス導入孔56よりも先端側にセンサ素子21の先端21aが位置することで、この被検出ガスGを確実にセンサ素子21の(先端21a近傍に位置する)検知部22に接触させ易くなり、検知精度が向上する。
【0034】
ここで、「配管100にネジ13が直接又は間接的に固定され」とは、本例では配管100の取付穴100hを囲うように配管100外側に筒状のボア102が固定されており、このボア102の内面の配管側固定部(例えば、雌ネジ)に、主体金具11側の固定部(雄ネジ13)をネジ止めしてガスセンサ1が固定されることをいう。このような状態を、配管100にネジ13が「間接的に」固定されるものとする。
一方、例えばボア102を用いずに、配管100の取付穴100h付近が径方向外側に一体に突出したり、配管100自体の厚みが厚い場合は、配管100の内面の配管側固定部(例えば、雌ネジ)に、ネジ13が「直接」固定されるものとする。
【0035】
同様に、「工具係合部14の先端向き面14aが配管100の外面100eに直接又は間接的に接して取り付けられる」とは、本例ではボア102にネジ13が固定された状態で、工具係合部14の先端向き面14aがボア102の外面(後端向き面)に接した状態をいう。なお、具体的には、工具係合部14にスパナ等の工具を掛けて主体金具11側のネジ(雄ネジ)13をボア102内面の雌ネジにねじ込むことで、工具係合部14の先端向き面14aがガスケット19を介してボア102外面に当接することになる。このような状態を、配管100の外面100eに工具係合部14の先端向き面14aが「間接的に」接して取り付けられるものとする。
一方、上述のようにボア102を用いずに、配管100の取付穴100h付近が径方向外側に一体に突出したり、配管100自体の厚みが厚い場合は、配管100自身にネジ13が固定された状態で、工具係合部14の先端向き面14aがガスケット19を介して配管100の外面100eに「直接」接して取り付けられるものとする。
【0036】
又、取付穴100hの「仮想内面100a2」とは、図2に示した配管100の径方向に沿う断面において、配管100の内面100aの輪郭を取付穴100hの位置で外挿した内面をいう。この外挿は、例えば配管100の内面100a上の点を多数プロットし、この点を通る近似曲線とすることができる。
仮想内面100a2よりも径方向内側が、被検出ガスGが流通する配管100の内部とみなすことができる。一方、仮想内面100a2よりも径方向外側は配管100の外部とみなすことができ、被検出ガスGの流れが殆ど無いと考えられる。
【0037】
距離L1におけるプロテクタの最大内径DAが、距離L1の1/2以下であると、プロテクタ51のうちガス導入孔56より先端のL1の部位が軸線O方向に細長くなる。このため、ガス排出孔53近傍の圧力がベンチュリ効果によりさらに負圧となり、プロテクタ51内のガスがガス排出孔53から外部へさらに吸引されるので、応答性がさらに向上する。
【0038】
又、図3に示すように、ガス排出孔53の合計の開口面積S1が、プロテクタ51の底部51aの面積S2の50%以下であると、ガス排出孔53近傍の圧力がさらに負圧となり、プロテクタ51内のガスがガス排出孔53から外部へさらに吸引されるので、応答性がさらに向上する。
なお、ガス排出孔53近傍の圧力を確実に下げるためには、ガス排出孔53がプロテクタ51の最先端に位置する、つまり底部51aに設けられていることが好ましい。
【0039】
本発明のガスセンサは、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜にその構造、構成を設計変更して具体化できる。
例えば上記実施形態では、プロテクタ51の段部51dが径方向に沿って(平行に)形成され、段部51dに設けられたガス導入孔56のプロテクタ51内側の周縁を通る平面の垂線が径方向と垂直であったが、プロテクタ51の段部が径方向と角度を持って形成されてもよい。
従って、ガス導入孔を径方向の外側から見たとき、プロテクタの内部が見えないことが好ましい。但し、プロテクタ51の段部51d3が径方向内側に向かって先端側へ下がるようなテーパ状をなしていても、ガス導入孔56を径方向の外側から見たとき、プロテクタ51の内部が見えないような構成であればよい。
【0040】
また、センサ素子としては、酸素の濃度を測定するものに限定されず、窒素酸化物(NOx)又は炭化水素(HC)等の濃度を測定するものを用いてもよい。
センサ素子としては、筒型のものを用いてもよい。
ガス導入孔やガス排出孔の形状や個数も限定されず、例えば楕円形であってもよい。工具係合部の形状も上記に限定されない。
【符号の説明】
【0041】
1 ガスセンサ
11 主体金具
13 固定部(雄ネジ)
14 工具係合部
14a 工具係合部の先端向き面
21 センサ素子
21a センサ素子の先端
22 検知部
51 プロテクタ
53 ガス排出孔
56 ガス導入孔
100 配管
100a2 仮想内面
100e 配管の外面
100h 取付穴
O 軸線
G 被検出ガス
図1
図2
図3