(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】ベルトサンダ
(51)【国際特許分類】
B24B 23/06 20060101AFI20240716BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20240716BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B24B23/06
B25F5/00 C
B25F5/00 F
B25F5/02
(21)【出願番号】P 2020184354
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】201921928798.0
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 迅
(72)【発明者】
【氏名】唐 成玉
(72)【発明者】
【氏名】王 彭生
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04727685(US,A)
【文献】特開2019-150907(JP,A)
【文献】特開2019-051579(JP,A)
【文献】特開2015-174213(JP,A)
【文献】特開2018-202511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 23/00-23/08;
B25F 5/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトサンダであって、
ユーザによって把持されるための把持部と、
ブラシレスモータと、
前記
ブラシレスモータの駆動力によって回転するように構成された駆動ローラと、
所定方向に延在するアームと、
前記アームの先端に設けられた従動ローラと、
前記駆動ローラと前記従動ローラとの間に掛け渡される無端のサンディングベルトと、
前記
ブラシレスモータの回転数を調節するためのユーザインタフェースと
、
前記ブラシレスモータに電力を供給するように構成されたバッテリパックと、
前記ユーザインタフェースから入力される指令に基づいて前記バッテリパックから前記ブラシレスモータへの電力の供給を制御するように構成されたコントローラと、
前記把持部に対して前記ブラシレスモータと反対側に配置され、前記コントローラを収容するためのコントローラハウジングと
を備え、
前記把持部と前記アームとが略一直線になる状態において前記駆動ローラが回転するときに前記サンディングベルトが前記駆動ローラから前記従動ローラに向けて進む第1の側と、前記サンディングベルトが前記従動ローラから前記駆動ローラに向けて進む第2の側と、のうちの前記第1の側を上側と定義し、前記第2の側を下側と定義したとき、前記ユーザインタフェースは、前記把持部を避けて、前記
コントローラハウジング
の側方の面に配置され
る
ベルトサンダ。
【請求項2】
請求項
1に記載のベルトサンダであって、
前記
コントローラハウジングは凹部を備え、
前記ユーザインタフェースは、前記凹部の内側空間を超えて外側に突出しないように配置される
ベルトサンダ。
【請求項3】
請求項
2に記載のベルトサンダであって、
前記ユーザインタフェースは、前記ユーザの手動操作によって回転軸線を中心に回転可能に構成されたダイヤルであって、略円盤状に形成されたダイヤルを備え、
前記ダイヤルは、該ダイヤルの周面の一部が、前記凹部の開口方向を向くように配置された
ベルトサンダ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のベルトサンダであって、
前記
コントローラハウジングは、前記ユーザインタフェースが配置される前記上側の面または前記側方の面から、該上側の面または該側方の面に交差する方向に延在する壁部であって、前記ユーザインタフェースにアクセスするための開口を残しつつ、該ユーザインタフェースの周囲を取り囲む壁部を備え、
前記ユーザインタフェースは、前記壁部の内側空間を超えて外側に突出しないように配置される
ベルトサンダ。
【請求項5】
請求項
4に記載のベルトサンダであって、
前記ユーザインタフェースは、前記ユーザの手動操作によって回転軸線を中心に回転可能に構成されたダイヤルであって、略円盤状に形成されたダイヤルを備え、
前記ダイヤルは、該ダイヤルの周面の一部が、前記壁部の開口方向を向くように配置された
ベルトサンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト状の研磨要素を駆動する工具、すなわち、ベルトサンダに関する。
【背景技術】
【0002】
木工製品や金属製品を研磨する工具として、ベルトサンダが知られている。種々の型式のベルトサンダが存在するが、下記の特許文献1に記載されたベルトサンダは、ユーザによって把持されるための把持部と、モータと、モータの駆動力によって回転するように構成された駆動ローラと、アームと、アームの先端に設けられた従動ローラと、駆動ローラと従動ローラとの間に掛け渡される無端のサンディングベルトと、を備えている。駆動ローラと従動ローラとの間で回転する無端のサンディングベルトを被研磨物に接触させることによって、被研磨物を研磨できる。
【0003】
この種のベルトサンダでは、モータの回転速度を調節可能なユーザインタフェースが設けられることがある。従来、このユーザインタフェースは、把持部の下面に設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ベルトサンダの利便性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態によれば、ベルトサンダが提供される。このベルトサンダは、ユーザによって把持されるための把持部と、電動モータと、電動モータの駆動力によって回転するように構成された駆動ローラと、所定方向に延在するアームと、アームの先端に設けられた従動ローラと、駆動ローラと従動ローラとの間に掛け渡される無端のサンディングベルトと、モータの回転数を調節するためのユーザインタフェースと、を備えている。把持部とアームとが略一直線になる状態において駆動ローラが回転するときにサンディングベルトが駆動ローラから従動ローラに向けて進む第1の側と、サンディングベルトが従動ローラから駆動ローラに向けて進む第2の側と、のうちの第1の側を上側と定義し、第2の側を下側と定義したとき、ユーザインタフェースは、把持部を避けて、ベルトサンダのハウジングの上側の面または側方の面に配置される。
【0007】
かかるベルトサンダによれば、ユーザインタフェースがユーザから見やすい位置に配置されているので、利便性が高い。
【0008】
本発明の一形態によれば、電動モータはブラシレスモータである。ベルトサンダは、さらに、ブラシレスモータに電力を供給するように構成されたバッテリパックと、ユーザインタフェースから入力される指令に基づいてバッテリパックからブラシレスモータへの電力の供給を制御するように構成されたコントローラと、を備えている。ハウジングは、コントローラを収容するためのコントローラハウジングを備えている。ユーザインタフェースは、コントローラハウジングに設けられる。かかる形態によれば、ユーザインタフェースから入力される情報をコントローラに出力するための配線を短くするか、なくすことができる。
【0009】
本発明の一形態によれば、コントローラハウジングは、把持部に対して、ブラシレスモータと反対側に配置される。かかる形態によれば、コントローラハウジングは、ベルトサンダの使用時において、ユーザから見て、把持部を把持する手よりも自身の体側に位置することになる。このため、ユーザの指がコントローラハウジングに触る機会はほとんどない。したがって、ユーザが誤ってユーザインタフェースに触る機会を低減できる。
【0010】
本発明の一形態によれば、ハウジングは凹部を備えている。ユーザインタフェースは、凹部の内側空間を超えて外側に突出しないように配置される。かかる形態によれば、ユーザが誤ってユーザインタフェースに触る機会をいっそう低減できる。
【0011】
本発明の一形態によれば、ユーザインタフェースは、ユーザの手動操作によって回転軸線を中心に回転可能に構成されたダイヤルであって、略円盤状に形成されたダイヤルを備えている。ダイヤルは、ダイヤルの周面の一部が、凹部の開口方向を向くように配置される。かかる形態によれば、ユーザは、凹部内に指を入れて、ダイヤルを容易に回すことができる。したがって、ユーザの操作性を低下させることなく、ダイヤル式のユーザインタフェースを採用できる。
【0012】
本発明の一形態によれば、ハウジングは、ユーザインタフェースが配置される上側の面または側方の面から、上側の面または側方の面に交差する方向に延在する壁部であって、ユーザインタフェースにアクセスするための開口を残しつつ、ユーザインタフェースの周囲を取り囲む壁部を備えている。ユーザインタフェースは、壁部の内側空間を超えて外側に突出しないように配置される。かかる形態によれば、ユーザが誤ってユーザインタフェースに触る機会をいっそう低減できる。
【0013】
本発明の一形態によれば、ユーザインタフェースは、ユーザの手動操作によって回転軸線を中心に回転可能に構成されたダイヤルであって、略円盤状に形成されたダイヤルを備えている。ダイヤルは、ダイヤルの周面の一部が、壁部の開口方向を向くように配置される。かかる形態によれば、壁部の開口内に指を入れて、ダイヤルを容易に回すことができる。したがって、ユーザの操作性を低下させることなく、ダイヤル式のユーザインタフェースを採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態によるベルトサンダの側面図であり、一部を断面で示している。
【
図3】ベルトサンダの平面図であり、一部を断面で示している。
【
図4】
図1に対応するベルトサンダの側面図であり、アームの枢動位置を示している。
【
図5】
図2の矢印A-Aの方向に見たベルトサンダの矢視図であり、一部を断面で示している。
【
図6】
図1に対応するベルトサンダの側面図である。
【
図8】代替実施形態によるベルトサンダの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~3を参照して、本発明の一実施形態であるベルトサンダ10の概略構成について説明する。
図1,3に示すように、ベルトサンダ10は、把持部20と、アーム41と、従動ローラ42と、駆動ローラ43と、サンディングベルト44と、電動モータ80と、を備えている。把持部20は、所定方向に延在する細長い形状を有している。把持部20は、ベルトサンダ10の使用時においてユーザによって把持されるために設けられる。アーム41は、所定方向を長軸として延在する細長い形状を有している。
図1~3に示す状態では、アーム41は、把持部20が延在する方向と略同一の方向に延在している。ただし、本実施形態では、アーム41は、把持部20に対して枢動可能に構成されている(詳細は後述)。アーム41の先端には、従動ローラ42が設けられている。
図3に示すように、駆動ローラ43には、電動モータ80の出力軸81が連結されている。駆動ローラ43は、軸受83によって支持されており、電動モータ80の回転駆動力によって回転軸線45を中心に回転するように構成される。従動ローラ42と駆動ローラ43との間には、無端のサンディングベルト44が掛け渡されている。電動モータ80が駆動されると、サンディングベルト44は、従動ローラ42と駆動ローラ43との間で矢印A1(
図1,2参照)の方向に回転する。
【0016】
以下の説明では、便宜上、把持部20とアーム41とが略一直線になる状態(つまり、
図1~3に示す状態)において、駆動ローラ43が回転するときにサンディングベルト44が駆動ローラ43から従動ローラ42に向けて進む側を上側と定義し、サンディングベルト44が従動ローラ42から駆動ローラ43に向けて進む側を下側と定義する(
図1,2参照)。さらに、把持部20が延在する方向を前後方向と定義する。前後方向のうち、把持部20に対して電動モータ80が位置する側を前側と定義し、把持部20に対して電動モータ80と反対側を後側と定義する(
図1,3参照)。さらに、回転軸線45が延在する方向を左右方向と定義する。左右方向のうち、電動モータ80が位置する側を左側と定義し、駆動ローラ43が位置する側を右側と定義する(
図3参照)。
【0017】
ベルトサンダ10は、さらにプーリカバー70を備えている。プーリカバー70は、アーム41が延在する方向と同一方向に延在する延在部71と、延在部71の後端に設けられたフランジ部72と、を備えている。延在部71は、その上側、下側、左側および後側が閉じられており、右側と前側が開口している。この延在部71内には、
図3に示すように、駆動ローラ43と、アーム41の一部分(より具体的には、後側の端部)と、が収容される。延在部71の右側の開口部には、安全カバー78が設けられる。安全カバー78は、延在部71の右側の開口部に追従した形状を有しており、当該開口部よりも若干小さい大きさを有している。このため、安全カバー78と延在部71との間には、安全カバー78の外周に沿って僅かな隙間が形成されている。この隙間は、ユーザの指は入らないが、サンディングベルト44を挿入できる程度の大きさを有している。サンディングベルト44が摩耗した場合には、この隙間を介してサンディングベルト44が取り替えられる。
【0018】
図3に示すように、延在部71内には、さらに、テンショナ47と圧縮バネ48とが収容されている。圧縮バネ48は、前端と後端とを備えている。前端は、テンショナ47に接触しており、後端は、プーリカバー70の内部面に支持されている。この圧縮バネ48は、テンショナ47を介して、アーム41を前側に付勢している。これによって、従動ローラ42と駆動ローラ43との間でサンディングベルト44のテンションが適正に保たれる。
【0019】
サンディングベルト44の前側の略半分は、延在部71の前側の開口部から延出して、露出されている。サンディングベルト44のうち、このように露出された部分を露出部分44a(
図1参照)とも呼ぶ。従動ローラ42の近傍において、アーム41には一対のシュー49が設けられている。これらのシュー49は、アーム41の上側および下側にそれぞれ取り付けられている。シュー49の各々は、アーム41と平行に(換言すれば、サンディングベルト44と略平行に)延在する平坦面を有している。サンディングベルト44によって被研磨物を研磨する際、サンディングベルト44は、シュー49の平坦面上を摺動しつつ、従動ローラ42と駆動ローラ43との間で回転する。ユーザがサンディングベルト44を被研磨物に押し当てる際、サンディングベルト44が上下方向に撓んだとしても、シュー49の平坦面がサンディングベルト44を内側で支持することによって、サンディングベルト44と被研磨物との間に、研磨に必要な摩擦力を生じさせることができる。
【0020】
電動モータ80は、本実施形態ではブラシレスDCモータである。電動モータ80は、前後方向において把持部20に隣接しており、把持部20に対して前側に配置されている。電動モータ80は、ブラシレスモータであるから、通常の電動モータよりも小型であり、特に軸方向に短くなっている。これにより、把持部20の右端から右側へ突出している量と、把持部20の左端から左へ突出している量と、が略同一になっている。ベルトサンダ10は、さらに、コントローラハウジング90とバッテリパック95とを備えている。コントローラハウジング90は、前後方向において把持部20に隣接しており、把持部20に対して後側に配置されている。バッテリパック95は、前後方向においてコントローラハウジング90に隣接しており、コントローラハウジング90に対して後側に配置されている。バッテリパックは、バッテリパッケージや組電池と呼ばれる場合がある。バッテリパックは、所定のサイズに成形された外郭ハウジングと、当該外郭ハウジング内に収容され直列に接続された複数の電池セルと、を備えていてもよい。
【0021】
バッテリパック95は、電動モータ80に電力を供給するために着脱可能に設けられる。本実施例では、バッテリパック95は、公称18ボルトの電圧で電力を供給する。コントローラハウジング90は、その内部にコントローラ91を収容している(
図1参照)。コントローラ91は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって電動モータ80の駆動を制御する。コントローラハウジング90およびバッテリパック95は、その重心が、上下方向における下側に偏心するように配置される。
【0022】
図1,2に示すように、ベルトサンダ10は、さらに、トリガスイッチ50を備えている。トリガスイッチ50は、前後方向において、把持部20と電動モータ80との間に配置されている。また、トリガスイッチ50は、上下方向において下側に配置されている。このトリガスイッチ50は、駆動ローラ43を駆動させるため(換言すれば、電動モータ80を駆動させるため)に設けられる。トリガスイッチ50は、操作部51とスイッチボックス52とを備えている。操作部51は、上下方向に変位可能に構成される。操作部51がユーザの手動操作によって、
図1に示す第1の位置から、第2の位置(第1の位置から上側に所定距離だけ変位された位置)まで変位されると、指令信号がスイッチボックス52からコントローラ91に入力される。コントローラ91は、指令信号を受け付けると、バッテリパック95から電動モータ80に電力を供給して、電動モータ80を駆動する。これによって、駆動ローラ43が駆動され、サンディングベルト44が、従動ローラ42と駆動ローラ43との間で回転される。
【0023】
上述したように、アーム41は、把持部20に対して枢動可能に構成されている。具体的には、
図4に示すように、アーム41は、回転軸線45(
図3参照)に直交する平面上で、延在部71とともに枢動可能に構成される。本実施形態では、アーム41は、回転軸線45を中心として枢動する。
図4では、アーム41の枢動位置として、第1の位置P1と、第2の位置P2と、第3の位置P3と、が示されている。本実施形態では、アーム41は、第1の位置P1と第3の位置P3との間で移動可能に構成される。詳細は後述するが、アーム41は、第1の位置P1と第3の位置P3との間の任意の枢動位置において固定され得る。アーム41は、第1の位置P1から第3の位置P3に移動するとき、アーム41がコントローラハウジング90およびバッテリパック95の下側と最終的に対向する方向に枢動する。
【0024】
第1の位置P1では、アーム41は、前後方向に対して5度だけ上側に傾いている。このとき、アーム41と把持部20とがなす角度は185度である。本実施形態において、アーム41と把持部20とがなす角度とは、アーム41と把持部20とがなす2つの角度(この2つの角度の和は360度である)のうち、ベルトサンダ10の下側で形成される角度をいう。第2の位置P2では、アーム41は、上下方向に平行である。このとき、アーム41と把持部20とがなす角度は90度である。本実施形態では、ベルトサンダ10を使用して研磨作業を行う場合、アーム41は、ベルトサンダ10の用途に応じて、第1の位置P1と第2の位置P2との間の任意の枢動位置で固定される。
【0025】
第3の位置P3では、把持部20とアーム41とがわずかな角度となって近接し、上下方向にほぼ並んでいる。このとき、アーム41と把持部20とがなす角度は20度である。第3の位置P3では、ベルトサンダ10が前後方向および上下方向においてコンパクトになる。このため、ベルトサンダ10を使用しないとき(例えば、ベルトサンダ10の持ち運び時や収納時)には、アーム41は第3の位置P3まで枢動されてもよい。
【0026】
次に、アーム41を枢動させるための構造について説明する。プーリカバー70のフランジ部72は、
図3に示すように、左右方向の左側において延在部71の後端に連続している。また、フランジ部72は、
図2に示すように、左右方向、すなわち、回転軸線45が延在する方向に見て、延在部71の後端を円弧状に取り囲んでいる。
【0027】
図2に示すように、フランジ部72には、その外周に沿って長穴73が円弧状に形成されている。長穴73は、フランジ部72を左右方向に貫通している(
図3参照)。
図5に示すように、フランジ部72は、電動モータ80の右側を覆うブラケット82に当接している。円筒状のボス84が、ブラケット82から右側に向けて突出している。このボス84は、フランジ部72の長穴73を貫通して、フランジ部72の右側の端面を超えて、右側に向けて延在している。ボス84の外周は、フランジ部72よりも右側において、リング状のスペーサ77内に嵌合されている。スペーサ77の左面は、フランジ部72の右面と当接している。
【0028】
ボス84の内面には雌ネジが形成されており、ボス84内には六角ボルト75が挿入されている。この雌ネジと六角ボルト75は左ネジ(逆ネジ)である。六角ボルト75の周囲には、レバー74が取り付けられている。レバー74は、レバー74を左右方向に貫通する貫通穴を有している。この貫通穴を形成するレバー74の内面は、六角ボルト75の六角断面に適合する断面形状を有している。このため、ユーザがレバー74を回すと、六角ボルト75も一緒に回転される。
図2には、六角ボルト75を締めたときのレバー74の位置が実線で示されており、また、矢印A2の方向にレバー74を回して六角ボルト75を緩めたときのレバー74の位置が点線で示されている。レバー74および六角ボルト75とスペーサ77との間には、ワッシャ76が配置されている。
【0029】
六角ボルト75を締めた状態では、六角ボルト75は、ワッシャ76およびスペーサ77を介してフランジ部72をブラケット82に対して押圧する。この押圧力によって、フランジ部72がブラケット82に対して回転することが阻止される。一方、六角ボルト75を緩めた状態では、この押圧力が解除される。このため、フランジ部72は、ボス84が長穴73を貫通する範囲内で、ブラケット82に対して枢動することが許容される。フランジ部72は延在部71と一体的に構成されており、かつ、アーム41は延在部71に支持されているから、フランジ部72が枢動すると、アーム41もフランジ部72と一緒に枢動する。
【0030】
長穴73は、
図4に示す第1の位置P1から第3の位置P3までアーム41を枢動させることができる範囲に形成されている。このため、ユーザは、レバー74を使用して六角ボルト75を緩め、次いで、アーム41を所望の位置まで枢動させ、次いで、レバー74を使用して六角ボルト75を締めることにより、
図4に示した第1の位置P1から第3の位置P3の間の所望の枢動位置にアーム41を固定することができる。
【0031】
図6に示すように、ベルトサンダ10は、電動モータ80の回転数を調節するためのユーザインタフェースとして、ダイヤル92を備えている。ダイヤル92は、略円盤状の形状を有しており、ユーザの手動操作によって回転軸線93(
図7参照)を中心に回転可能に構成される。換言すれば、ダイヤル92は、ユーザによって回転操作可能な位置に配置される。回転軸線93は、前後方向と略平行である。ユーザがダイヤル92を所定位置に回すと、ダイヤル92の回転位置が光学的、電気的、または、磁気的に検出され、コントローラ91に出力される。
【0032】
かかるダイヤル92は、コントローラハウジング90に配置される。この配置によれば、ダイヤル92の回転位置をコントローラ91に出力するための配線を短くするか、なくすことができる。また、コントローラハウジング90は、把持部20よりも後側に位置するので、ユーザの指がコントローラハウジング90に触る機会はほとんどない。このため、ユーザが誤ってダイヤル92に触る機会を低減できる。本実施形態では、ダイヤル92は、コントローラハウジング90のうちの側方の面(換言すれば、左右方向を向いた面)に設けられる。この配置によれば、ユーザはダイヤル92を見やすい。ダイヤル92は、
図6に示す例では、ユーザが把持部20を右手で把持した場合に見やすいように、コントローラハウジング90の左側面に設けられている。ただし、ダイヤル92は、ユーザが把持部20を左手で把持した場合に見やすいように、コントローラハウジング90の右側面に設けられてもよい。また、ユーザの指が側方の面に触る機会は、上方の面に触る機会よりも少ないので、ダイヤル92を側方の面に配置すれば、ユーザが誤ってダイヤル92に触る機会をいっそう低減できる。
【0033】
図6,7に示すように、コントローラハウジング90の左側面は凹部94を備えている。
図7に示すように、ダイヤル92は、凹部94内の内側空間を超えて外側に突出しないように配置される。このため、ユーザが誤ってダイヤル92に触る機会をいっそう低減できる。また、ダイヤル92は、その周面の一部が、凹部94の開口方向を向くように配置されている。このため、ユーザは、凹部94内に指を入れて、ダイヤル92を容易に回すことができる。したがって、ユーザの操作性も低下しない。
【0034】
また、本実施形態では、凹部94は、その底面から、その開口の外縁部に向けて、開口面積が大きくなる形状を有している。このため、ユーザがダイヤル92を意図的に回す際の凹部94への指の入れやすさと、ユーザが意図せずに凹部94へ指を入れてしまった際にダイヤル92に触れてしまうことを防止する機能性と、のバランスが図られている。
【0035】
ダイヤル92は、コントローラハウジング90の側面に限らず、コントローラハウジング90の上面に配置されてもよい。もとより、ダイヤル92は、コントローラハウジング90に限らず、把持部20を避けて、ベルトサンダ10が備える任意のハウジングの上側の面、または、側方の面に配置されてもよい。ダイヤル92が把持部20を避けてハウジングの上側の面、または、側方の面に配置されることにより、ユーザは、ダイヤル92を見やすい。つまり、ユーザは、ダイヤル92によって電動モータ80の回転数がどのように設定されているかを確認しやすく、また、それ故に、変更操作も行いやすい。なお、把持部20とは、
図6において、前後方向におけるトリガスイッチ50の前側の端部からコントローラハウジング90の前面までの範囲をいう。
【0036】
代替実施形態では、
図8に示すように、ベルトサンダ110では、ダイヤル192がハウジングの上面に配置されている。より具体的には、ダイヤル192は、ベルトサンダ110のハウジングのうちの、モータハウジング85と把持部20との間に設けられている。ダイヤル192は、ダイヤル92と同一の構成を有している。この実施形態では、ダイヤル192が設けられるハウジングは、壁部194を備えている。壁部194は、その周囲の面(上下方向に略直交する面)に交差する方向(本実施形態では直交する方向、すなわち、上下方向)に延在している。壁部194は、ユーザがダイヤル192にアクセスするための開口を残しつつ、ダイヤル192の周囲を取り囲んでいる。ダイヤル192は、壁部194の内側空間を超えて外側に突出しないように配置される。また、ダイヤル192は、ダイヤル192の周面の一部が、壁部194の開口方向を向くように配置されている。このような構成においても、ユーザが誤ってダイヤル192に触る機会を低減できる。
【0037】
壁部194の開口は、その開口方向(上下方向)に見て、ダイヤル192の回転軸線と平行な方向(すなわち、左右方向)の幅が、回転軸線と直交する方向(すなわち、前後方向)の幅よりも小さい。このため、ユーザがダイヤル192を意図的に回す際の操作性と、ユーザが意図せずにダイヤル192に触れてしまうことを防止する機能性と、のバランスが図られている。壁部194の開口の、ダイヤル192の回転軸線と平行な方向の幅は、例えば、人の指が1本ちょうど入る程度の幅(一般的には、約1~2cm)を有していてもよい。壁部194の開口の、回転軸線と直行する方向の幅は、ダイヤル192の直径の0.5倍以上、1.5倍以下であってもよい。なお、他の代替形態では、上述した凹部94についても、その開口方向(左右方向)に見て、回転軸線93と平行な方向(すなわち、前後方向)の幅が、回転軸線93と直交する方向(すなわち、上下方向)の幅よりも小さくなるように構成されてもよい。この場合、凹部94の、回転軸線93と平行な方向の幅、および、回転軸線93と直行する方向の幅は、壁部194の開口の上述の幅と同様に設定されてもよい。
【0038】
電動モータ80の回転数を調節するために、ダイヤル92に代えて、任意のユーザインタフェースが使用されてもよい。このようなユーザインタフェースは、例えば、スライドスイッチ、トグルスイッチ、タッチパネルなどであってもよい。
【0039】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各形態要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。例えば、ベルトサンダ10は、バッテリパックに代えて、商用電源に接続する電源コードを備えていてもよい。また、ベルトサンダ10は、アーム41が枢動できないように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10...ベルトサンダ
20...把持部
41...アーム
42...従動ローラ
43...駆動ローラ
44...サンディングベルト
44a...露出部分
45...回転軸線
47...テンショナ
48...圧縮バネ
49...シュー
50...トリガスイッチ
51...操作部
52...スイッチボックス
70...プーリカバー
71...延在部
72...フランジ部
73...長穴
74...レバー
75...六角ボルト
76...ワッシャ
77...スペーサ
78...安全カバー
80...電動モータ
81...出力軸
82...ブラケット
83...軸受
84...ボス
85...モータハウジング
90...コントローラハウジング
91...コントローラ
92...ダイヤル
93...回転軸線
94...凹部
95...バッテリパック
110...ベルトサンダ
192...ダイヤル
194...壁部