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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】ブラケット構造及びスピーカユニット
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20240716BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H04R1/02 105A
H04R1/02 101F
H04R1/02 102B
H04R1/40 310
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020190949
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022080019
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 一彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 智則
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-015565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
H04R 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つのスピーカの背面同士を対向させて保持するブラケット構造であって、
前記二つのスピーカを同軸上に保持する少なくとも二つのブラケットと、
前記二つのブラケットを前記軸と直交する方向に締め付けることによって前記ブラケット同士を締結する締結部と、
を備え、
前記ブラケットが、前記締結部によって締め付けられる力を、軸方向に前記スピーカ同士を引き合わせる力に変換する変換部を備えるブラケット構造。
【請求項2】
前記二つのブラケットが前記軸方向の両端部分に前記スピーカを保持する保持部を備え、
前記二つのブラケットが前記スピーカを挟んで対向配置され、前記二つのブラケットの前記保持部が、前記ブラケットの両端において前記スピーカを対向位置から挟持することで前記二つのスピーカを同軸上に保持し、
前記ブラケットが、前記保持部の前記スピーカと当接する部分に前記変換部を有し、前記変換部の前記スピーカと当接する面が、前記軸方向において端部側よりも中央側で前記軸から離れるように傾斜している傾斜面である請求項1に記載のブラケット構造。
【請求項3】
前記二つのブラケットのうち、一方の第一ブラケットが、前記二つのスピーカにそれぞれ一端が接続された二つの部材からなり、他方の第二ブラケットが、前記第一ブラケットの前記スピーカと接続されていない自由端同士を連結する部材であり、
前記第一ブラケットと前記第二ブラケットの少なくとも一方が、前記第一ブラケットと前記第二ブラケットとの当接部分に前記変換部を有し、前記変換部の当接面が、前記軸方向に対して傾斜し、前記二つのスピーカ間の中央へ向かうにつれて前記軸から離れるように傾斜した請求項1に記載のブラケット構造。
【請求項4】
前記締結部が、前記軸と直交する方向に締め込まれるネジである請求項1~3の何れか1項に記載のブラケット構造。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のブラケット構造と、
前記二つのスピーカと、
を備えたスピーカユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラケット構造及びスピーカユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカ装置は、例えば、振動板(コーン等)、ボイスコイル、マグネット等を有するスピーカユニットがエンクロージャ(筐体)の所定面に取り付けられた構造を有する。このようなスピーカ装置では、スピーカユニットの駆動に伴う振動が、エンクロージャに伝わり、エンクロージャ自体やエンクロージャの周囲のものを震わせて不要な音を発生させる場合がある。このため、特許文献1のスピーカ装置では、二つのスピーカの背面同士をシャフトで接続して振動を打ち消すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-273062号公報
【文献】特開2009-135837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、シャフトで二つのスピーカの背面同士を接続する構成の場合、振動を打ち消すことができる剛性を有し、スピーカ一の背面と接続可能な形状を有するシャフトを用いることになり、このシャフトを製造するための負荷(コスト)が高いという問題があった。
【0005】
また、特許文献1,2のように、二つのスピーカの背面同士を接続する構成の場合、エンクロージャ内にスピーカの少なくとも背面部分を収めた状態でスピーカ同士を接続するため、限られたスペースで作業することになり、組み立て作業が難しいという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、構成を簡素化し、組立て作業の容易化を図ることができるブラケット構造又はスピーカユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るブラケット構造は、
二つのスピーカの背面同士を対向させて保持するブラケット構造であって、
前記二つのスピーカを同軸上に保持する少なくとも二つのブラケットと、
前記二つのブラケットを前記軸と直交する方向に締め付けることによって前記ブラケット同士を締結する締結部と、
を備え、
前記ブラケットが、前記締結部によって締め付けられる力を、軸方向に前記スピーカ同士を引き合わせる力に変換する変換部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、構成を簡素化し、組立て作業の容易化を図ることが可能なブラケット構造又はスピーカユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態に係るスピーカユニットを車両のセンタコンソール内に搭載した場合の外観図である。
図2図1におけるスピーカユニットの構造を示す模式縦断面図である。
図3】スピーカの一例を示す図である。
図4】第一本実施形態に係るブラケット構造の正面図である。
図5】第一実施形態に係るブラケット構造の平面図である。
図6】第一実施形態に係るブラケット構造の底面図である。
図7】第一実施形態に係るブラケット構造の側面図である。
図8】締結時の動作を説明する図である。
図9】第一実施形態における締結部の変形例を示す図である。
図10】第二実施形態に係るスピーカユニットの構成を示す模式縦断面図である。
図11】第二実施形態に係るブラケット構造の正面図である。
図12】第二実施形態に係るブラケット構造の平面図である。
図13】第二実施形態に係るブラケット構造の裏面図である。
図14】第二実施形態に係るブラケット構造の側面図である。
図15図12に示すA-A線におけるブラケット構造の断面図である。
図16】締結時の動作を説明する図である。
図17】変形例1に係るスピーカユニットの構成を示す図である。
図18】変形例2に係るスピーカユニットの構成を示す模式従断面図である。
図19】変形例2に係るスピーカユニットの正面、側面、及び底面を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〈第一実施形態〉
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、第一実施形態に係るスピーカユニット100を車両のセンタコンソール内に搭載した場合の外観図、図2は、図1におけるスピーカユニット100の構造を示す模式縦断面図である。図2において、X軸は車幅方向、Y軸は高さ方向、Z軸は車両の前後方向を示している。なお、本実施形態の以降の図においても、X軸、Y軸、及びZ軸は図2と同じ方向を示す。これらの方向は説明の便宜上示すものであり、本実施形態のスピーカユニットは、図2の方向に限定されるものではない。
【0011】
本実施形態では、図1に示すように、車両のセンタコンソール内に設置されたスピーカユニット100の例を示す。センタコンソールは、オーディオや、ナビゲーション装置、エアコンの操作部等の機器90が設けられ、これらの機器90を壁材(以下、内装材とも称す)31で覆った空間に収容している。内装材31は、スピーカユニット100から出力される音が視聴される車室と、スピーカユニット100が設置されたセンタコンソール内の空間とを区切り、スピーカユニット100のエンクロージャ(筐体)として機能する。なお、本実施形態は、一例であり、スピーカユニット100は、車両に組み込まれるものに限らない。
【0012】
スピーカユニット100は、図2に示すように、一対のスピーカ10A,10Bと、これらのスピーカ10A,10B同士を結合する少なくとも二つのブラケット20A、20Bと、ブラケット20A、20B同士を締結する締結部24と、これらを収容する壁材(筐体)31を有している。
【0013】
スピーカ10A,10Bは、振動板12と、振動板12を振動させる磁気回路13と、振動板12及び磁気回路13を保持するフレーム11とを有している。
【0014】
スピーカ10Aおよびスピーカ10Bは、同一の構成であることが望ましいが、口径や形状等が異なるものであってもよい。なお本実施形態では磁器回路とボイスコイルを備え
る動電型スピーカを例に説明するが、スピーカの形式はこれに限られない。例えば固定電極と振動板との間に高電圧の音響信号を印加して静電気力で振動板を振動させる静電型スピーカであってもよいし、圧電素子や磁歪素子を備えたアクチュエータで振動板を振動させる圧電型・磁歪型スピーカであってもよい。その場合、例えば静電型スピーカでは二つのスピーカの固定電極同士、圧電型・磁歪型スピーカではアクチュエータの背面同士を向かい合わせて結合すればよい。
【0015】
図3は、スピーカ10Aおよびスピーカ10Bの一例を示す図である。なお、本実施形態では、スピーカ10Aとスピーカ10Bとを同一の構成としているため、これらを区別せずに説明する場合には、スピーカ10とも称す。
【0016】
スピーカ10において、振動板12を備えた側をスピーカの前面(正面)、磁気回路13を備えた側をスピーカ10の後面(背面)と称す。図3の振動板12は、コーン型であり、少なくとも外縁部がフレーム11に取り付けられ、コーンの頂点側、即ち後面側に駆動コイル(ボイスコイル)14が取り付けられている。駆動コイル14の両端は、不図示のリード線を介してスピーカ10の入力端子と電気的に接続され、オーディオ信号(電気信号)が入力される。
【0017】
フレーム11の後端には、磁気回路13が固設されている。即ち、フレーム11は、振動板12及び磁気回路13を支持している。フレーム11の前側周縁には、スピーカ10を筐体に固定するためのフランジ111が設けられている。
【0018】
磁気回路13は、プレート15、マグネット16、ヨーク17を有している。フレーム11の背後には磁性材料によって形成されたプレート15が配置されている。プレート15は、スピーカ10の前側から見て略円環状に形成されている。
【0019】
プレート15の後面には円環状に形成されたマグネット16が配置され、マグネット16の後面にはヨーク17が取り付けられている。ヨーク17は円板状のベース面部171とベース面部171の中心部から前方へ突出されたセンターポール部172とが一体に形成されて成り、センターポール部172は、例えば、円柱状に形成されている。ヨーク17はベース面部171の前面がマグネット16の後面に取り付けられている。
【0020】
フレーム11、プレート15、マグネット16、ヨーク17は、正面視におけるそれぞれの中心を一致させた状態で結合されている。ヨーク17は、センターポール部172が前側に突出し、プレート15とセンターポール部172の間の空間が磁気ギャップ156として形成されている。
【0021】
センターポール部172の前端側には、駆動コイル14が外嵌され、前後方向、即ち、センターポール部172の軸方向へ変動可能(移動可能)な状態で配置されている。駆動コイル14は、少なくとも一部が磁気ギャップ156に位置し、オーディオ信号が入力されると、オーディオ信号による電流と磁気ギャップ156の磁束との相互作用(ローレンツ力)によって振動する。この駆動コイル14の振動が伝達されて振動板12が振動し、振動板12が周囲の空気を振動させることでオーディオ信号に応じた音を発生させる。このため駆動コイル14及び振動板12がフレーム11に対して駆動される反作用等によってフレーム11及び磁気回路13に振動が伝わる。
【0022】
図2に示すように、センタコンソールの内装材31には、スピーカ10A,10Bを装着するための開口部32が設けられている。開口部32は、スピーカ10A,10Bと相似形状であり、本実施形態では、円形である。また、開口部32は、スピーカ10A,10Bのフランジ111の外径よりも小さくフレーム11のフランジ111以外の部分より
も大きい径となっている。
【0023】
図4は、本実施形態に係るブラケット構造20の正面図、図5は、本実施形態に係るブラケット構造20の平面図、図6は、本実施形態に係るブラケット構造20の底面図、図7は、本実施形態に係るブラケット構造20の側面図である。
【0024】
本実施形態のブラケット構造20は、二つのスピーカ10A,10Bを同軸61上に保持するための少なくとも二つのブラケット20A,20Bと、このブラケット20A,20Bを軸61と直交する方向に締め付けることによってブラケット20A,20B同士を締結する締結部24とを備えている。
【0025】
ブラケット20A,20Bは、それぞれ軸方向の両端部分にスピーカ10A,10Bを保持する保持部28を備えると共に、両端の保持部28を軸方向に結合する結合板部23を備えている。
【0026】
結合板部23は、軸方向に長手の平板状であり、軸方向中央部に締結部24を通す穴25,26を有している。一方のブラケット20Aの穴25は、締結部24を遊嵌させる通し穴であり、ブラケット20Bの穴26は、締結部24と螺合する雌ネジである。
【0027】
なお、本実施形態のブラケット20A,20Bは、この穴25,26の形状が異なり、その他の形状は同じである。本実施形態では、軸方向において、ブラケット20A,20Bの中央側を内側、中央から離れる両端側を外側とも称す。保持部28は、結合板部23の外側端部に立設された側壁22と、側壁22の結合板部23と反対側の端部から軸方向の外側へ延出された周壁27と、周壁27の外側端部から軸61に対して近づくように傾斜したテーパ部21とを有している。
【0028】
ブラケット20A,20Bの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、金属の平板を板金加工することによって形成されてもよい。
【0029】
ブラケット20Aとブラケット20Bとは、スピーカ10A,10B(図2)を挟んで対向配置され、二つのブラケット20A,20Bの保持部28が、ブラケット20A,20Bの両端においてスピーカ10A,10Bを対向位置から挟持することで、二つのスピーカ10A,10Bを同軸上に保持する。
【0030】
ブラケット20A,20Bは、保持部28のスピーカ10A,10Bと当接する部分にテーパ部21を有し、テーパ部21のスピーカ10A,10Bと当接する面が、軸方向において端部側(外側)よりも中央側(内側)で軸61から離れるように傾斜した傾斜面となっている。テーパ部21は、後述のように、ブラケット20A,20Bが締結部24によって締結される際、締め付けられる力を軸方向にスピーカ10A,10B同士を引き合わせる力に変換する変換部である。
【0031】
締結部24は、軸61と直交する方向において、ブラケット20A側から軸61に向かって穴25に挿入され、ブラケット20Bのネジ穴26と螺合する雄ネジである。締結部24は、スクリュードライバーやボックスレンチ等の工具(ネジ回し)によってネジ穴26にネジ込まれ、軸61と直交する方向に締め付けることによってブラケット20A,20B同士を締結する。
【0032】
<スピーカユニットの組み立て方法>
先ずセンタコンソールの外側から開口部32内へスピーカ10A,10Bの後部を挿入し、図2に示すようにフランジ111の後面を内装材31の外面に突き当てる。即ち、ス
ピーカ10A,10Bの磁気回路13を対向させた状態とし、この状態で磁気回路13を上下から挟持するようにブラケット20A,20Bを配置し、締結部24でブラケット20A,20B同士を締結する。なお、本実施形態では、ナビゲーション装置やオーディオ機器等の機器90をセンタコンソールから外した状態とすることで、これら機器90が収められる開口からブラケット20A,20Bの挿入や、ブラケット20A,20Bの締結作業を行う。
【0033】
図8は、締結時の動作を説明する図である。図8において、状態Aは、ブラケット20Bの穴26に締結部24を螺合し、ブラケット20Aをブラケット20Bに対して締め付ける前の初期状態を示し、状態Bは、ブラケット20Aをブラケット20Bに対して締め付けた後の締め付け状態を示している。
【0034】
締結部24は、図8に示すように、ブラケット20A,20Bの穴25,26に対し、軸61と直交する方向に挿入される。即ち、締結部24が、スクリュードライバーやボックスレンチ等によって締め込まれると、軸61と直交する方向に進行し、締結部24の頭部がブラケット20Aとブラケット20Bとの間隔を狭めるように、ブラケット20A,20Bを締め付ける。即ち、ブラケット20Aとブラケット20Bとが、相対的に軸61と直交する方向に移動して近づけられる。
【0035】
状態Aのように、締め付け前では、磁気回路13の外側周縁が、テーパ部21の傾斜面21Aのうち外側の位置P1で接しているのに対し、状態Bの締め付け後では、ブラケット20A,20Bの間隔が狭まり、テーパ部21の傾斜面21Aに沿って軸方向に距離LAだけ移動し、位置P1より内側の位置P2で接している。即ち、締め付けられたテーパ部21が原節として軸61と直交方向に移動すると、磁気回路13が従節となり内側へ移動する。この移動は、両端のスピーカ10A,10Bについて行われるため、スピーカ10A,10B同士が引き合わされる。このように本実施形態において、テーパ部21は、締結部24によって締め付けられる力を、軸方向にスピーカ10A,10B同士を引き合わせる力に変換する変換部の一形態である。
【0036】
スピーカ10A,10Bは、フランジ111の後面が内装材31に突き当たることで、軸方向内側への移動が制止されるが、この制止に抗してブラケット20A,20Bを締め付け、内装材31を弾性変形させることでスピーカ10A,10B同士を引き合わせる。このため内装材31の復元力が、スピーカ10A,10Bを元の位置に戻す方向に働くため、スピーカ10A,10Bのフランジ111と内装材31が密着すると共に、スピーカ10A,10Bの磁気回路13とブラケット20A,20Bとの結合が強固に維持される。
【0037】
なお、前述の説明では、締結部24をブラケット20A,20Bの中央に1つ設けたが、これに限らず、締結部24を複数設けてもよい。図9の例では、二つの締結部24を保持部28に近い位置に設けている。また、ブラケット20A,20Bが、二つ以上設けられてもよい。例えば、図2のブラケット20A,20Bと、図9のブラケット20A,20Bとを軸61回りの角度を異ならせて二組設けてもよい。
【0038】
<実施形態の効果>
本実施形態のブラケット構造20は、二つのスピーカ10A、10Bを同軸61上に保持する少なくとも二つのブラケット20A,20Bと、ブラケット20A,20B同士を締結する締結部24とを備え、ブラケット20A,20Bが、締結部24によって締め付けられる力を、軸方向にスピーカ10A,10B同士を引き合わせる力に変換するテーパ部(変換部)21を備えている。
【0039】
これにより本実施形態のブラケット構造20は、スピーカ10A,10Bから生じる不要な振動を抑え、ノイズの発生を抑制できる。また、本実施形態のブラケット構造20は、スピーカ10A,10B同士を結合することと、スピーカ10A,10B同士を引き合わせることとを一度の締結作業で行うことができ、組み立てを容易にできる。
【0040】
更に、本実施形態のブラケット構造20は、締結部24が、二つのブラケット20A、20Bの一方に対して、軸61と直交する方向に締め込まれるネジである。これにより、締結部24が、軸61と直交する一方向から締め込むことで、スピーカ10A,10B同士を引き合わせることができ、限られたスペース内における組み立てを容易にできる。また、ブラケット20A,20Bは、板金加工によって容易に形成でき、ブラケット20A,20Bの制作コストを低減できる。
【0041】
<第二実施形態>
図10は、第二実施形態に係るスピーカユニット100Aの構成を示す模式縦断面図、図11は、第二実施形態に係るブラケット構造40の正面図、図12は、第二実施形態に係るブラケット構造40の平面図、図13は、第二実施形態に係るブラケット構造40の裏面図、図14は、第二実施形態に係るブラケット構造40の側面図、図15は、図12に示すA-A線におけるブラケット構造40の断面図である。
【0042】
本例は、前述の第一実施形態と比べて、ブラケット構造40の構成が異なっている。その他の構成は、第一実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして、再度の説明を省略する。
【0043】
本実施形態のブラケット構造40は、二つのスピーカ10A,10Bを同軸61上に保持するための少なくとも二つのブラケット41,42と、このブラケット41,42の締結を補助する補助ブラケット43と、ブラケット41,42を軸61と直交する方向に締め付けることによってブラケット41,42を締結する締結部44とを備えている。
【0044】
二つのブラケット41,42のうち、一方の第一ブラケット41が、二つのスピーカ10A,10Bにそれぞれ一端が接続された二つの部材からなり、他方の第二ブラケット42が、第一ブラケット41のスピーカ10A,10Bと接続されていない自由端同士を連結する部材である。
【0045】
本実施形態では、軸61の軸方向(以下単に軸方向と称す)において、スピーカ10Aとスピーカ10Bとの間の中央に近い側を内側、中央から遠い側を外側と称す。第一ブラケット41は、軸方向に長手の平板状であり、軸方向内側に長穴412を有し、平板状部分の外側端部に、スピーカ10A,10Bと接続するための接続部411を有している。接続部411は、平板状部分の外側端部において軸61と直交し、軸61から離れる方向に立設されている。
【0046】
第二ブラケット42は、軸方向に長手の平板状であり、軸方向外側端部に第一ブラケット側に突出した嵌合凸部421有し、軸方向中央部に締結部44を遊嵌させる通し穴45を有している。
【0047】
嵌合凸部421は、第一ブラケット41と当接する当接面421A(図11)が軸61に対して傾斜し、前記二つのスピーカ間の中央へ向かうにつれて軸61から離れるように傾斜している。嵌合凸部421は、後述のように、ブラケット41,42が締結部24によって締結される際、締め付けられる力を軸方向にスピーカ10A,10B同士を引き合わせる力に変換する変換部である。
【0048】
補助ブラケット43は、軸方向に長手の平板状であり、軸方向中央部に締結部44と螺合するネジ穴46を有している。
【0049】
ブラケット41,42,43の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、金属の平板を板金加工することによって形成されてもよい。
【0050】
ブラケット構造40は、スピーカ10A,10Bの周方向に複数設けられる。本実施形態では、図10に示すように、スピーカ10A,10Bを挟んで上下に対向配置され、二つのブラケット構造40によって、二つのスピーカ10A,10Bを同軸上に保持している。ブラケット構造40は、二つに限らず、スピーカ10A,10Bの周方向に三つ以上設けられてもよい。
【0051】
締結部24は、第二ブラケット42側の穴45に挿入され、補助ブラケット43のネジ穴46と螺合する雄ネジである。締結部24は、スクリュードライバーやボックスレンチ等の工具(ネジ回し)によってネジ穴46にネジ込まれ、軸61と直交する方向に締め付けることによってブラケット41~43を締結する。
【0052】
<スピーカユニットの組み立て方法>
先ずスピーカ10A,10Bのフランジ111に第一ブラケットの接続部411をネジ等の締結部材で接続し、センタコンソールの外側から開口部32内へスピーカ10A,10Bの後部を挿入し、図10に示すようにフランジ111の後面を内装材31の外面に突き当てる。即ち、スピーカ10A,10Bの磁気回路13を対向させた状態とし、この状態で第一ブラケット41の長穴412に、第二ブラケット42の嵌合凸部421を嵌合させ、第二ブラケット42と反対側から第一ブラケット41の自由端を挟むように補助ブラケット43を配置し、締結部44でブラケット41~43を締結する。なお、本実施形態では、ナビゲーション装置やオーディオ機器等の機器90をセンタコンソールから外した状態とすることで、これら機器90が収められる開口からブラケット42,43の挿入や、ブラケット41~43の締結作業を行う。
【0053】
図16は、締結時の動作を説明する図である。図16において、状態Aは、補助ブラケット43の穴46に締結部44を螺合し、第二ブラケット42を第一ブラケット41に対して締め付ける前の初期状態を示し、状態Bは、第二ブラケット42を第一ブラケット41に対して締め付けた後の締め付け状態を示している。
【0054】
締結部44は、図16に示すように、ブラケット42,43の穴45,46に対し、軸61と直交する方向に挿入される。即ち、締結部24が、スクリュードライバーやボックスレンチ等によって締め込まれると、軸方向と直交する方向に進行し、締結部44の頭部が第一ブラケット41と第二ブラケット42との間隔を狭めるように、ブラケット41~43を締め付ける。即ち、第一ブラケット41と第二ブラケット42とが、相対的に軸方向と直交する方向に移動して近づけられる。
【0055】
状態Aのように、締め付け前では、第一ブラケット41における長穴412の内側内壁が、嵌合凸部421の当接面421Aのうち外側の位置で接しているのに対し、状態Bの締め付け後では、ブラケット41,42の間隔が狭まり、嵌合凸部421の当接面421Aに沿って当接位置が軸方向に距離LBだけ移動し、初期状態より内側の位置で接している。即ち、締め付けられた嵌合凸部421が原節として軸方向と直交する方向に移動すると、第一ブラケット41が従節となり内側へ移動する。この移動は、スピーカ10A,10Bにそれぞれ接続された両端の第一ブラケット41について行われるため、スピーカ10A,10B同士が引き合わされる。
【0056】
スピーカ10A,10Bは、フランジ111の後面が内装材31に突き当たることで、軸方向内側への移動が制止されるが、この制止に抗してブラケット41~43を締め付け、内装材31を弾性変形させることでスピーカ10A,10B同士を引き合わせる。このため内装材31の復元力が、スピーカ10A,10Bを元の位置に戻す方向に働くため、スピーカ10A,10Bのフランジ111と内装材31が密着すると共に、第一ブラケット41と第二ブラケット42との結合が強固に維持される。
【0057】
<実施形態の効果>
本実施形態のブラケット構造40は、二つのスピーカ10A、10Bを同軸61上に保持する少なくとも二つのブラケット41,42と、ブラケット41,42同士を締結する締結部44とを備え、ブラケット41,42が、締結部44によって締め付けられる力を、軸方向にスピーカ10A,10B同士を引き合わせる力に変換する嵌合凸部(変換部)421を備えている。
【0058】
これにより本実施形態のブラケット構造40は、スピーカ10A,10Bから生じる不要な振動を抑え、ノイズの発生を抑制できる。また、本実施形態のブラケット構造40は、軸61と直交する一方向から締結部44を締め込むことで、スピーカ10A,10B同士を引き合わせることができ、限られたスペース内における組み立てを容易にできる。
【0059】
<変形例1>
図17は、変形例1に係るスピーカユニットの構成を示す図である。本変形例は、前述の第二実施形態と比べて、変換部を第一ブラケットに設けた構成が異なっている。その他の構成は、第二実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして、再度の説明を省略する。
【0060】
本変形例の第一ブラケット41は、軸方向に長手の平板状であり、内側端部に嵌合凸部413を有している。第二ブラケット42は、軸方向に長手の平板状であり、嵌合凸部413が嵌合する長穴422を有している。
【0061】
締結部44によって、ブラケット41~43が締め付けられると、ブラケット41,42の間隔が狭まり、嵌合凸部413の当接面413Aに沿って当接位置が移動し、第一ブラケット41が内側へ移動する。即ち、締め付けられた第二ブラケット42が原節として軸方向と直交する方向に移動すると、第一ブラケット41が従節となり内側へ移動する。この移動は、スピーカ10A,10Bにそれぞれ接続された両端の第一ブラケット41について行われるため、スピーカ10A,10B同士が引き合わされる。
【0062】
このように、第一ブラケット41に変換部を備えた構成においても、締結部44によりブラケット41~43を締め付ける力をスピーカ10A,10B同士を引き合わせる力に変換でき、前述の実施形態と同様に組み立ての容易化を図ることができる。
【0063】
<変形例2>
図18は、変形例2に係るスピーカユニットの構成を示す模式従断面図、図19は、変形例2に係るスピーカユニットの正面、側面、及び底面を示す斜視図である。本変形例は、前述の第一実施形態と比べて、直方体の筐体51を採用した構成が異なっている。その他の構成は、第一実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして、再度の説明を省略する。図18図19において、X軸はスピーカユニットの幅方向、Y軸は高さ方向、Z軸はスピーカユニットの前後方向を示している。
【0064】
図18図19に示すように、本変形例の筐体51は、直方体であり、対向する二つの側面にスピーカ10A,10Bを装着する開口部52を有し、底面にメンテナンス用の開
口部53を有している。開口部53は、使用時に蓋部材で閉塞される。
【0065】
スピーカユニット200を組み立てる場合、筐体51の外側から開口部52内へスピーカ10A,10Bの後部を挿入し、図18に示すようにフランジ111の後面を内装材31の外面に突き当てる。即ち、スピーカ10A,10Bの磁気回路13を対向させた状態とし、この状態で磁気回路13を上下から挟持するようにブラケット20A,20Bを配置し、締結部24でブラケット20A,20B同士を締結する。なお、本実施形態では、蓋部材を筐体51から外した状態とすることで、開口部53からブラケット20A,20Bの挿入や、ブラケット20A,20Bの締結作業を行う。なお、本変形例では、筐体51の底部にメンテナンス用の開口部53を設けたため、締結部24を下側のブラケット20B側からブラケット20Aの穴25に螺合させている。即ち、本変形例では、ブラケット20Bの穴26が締結部24を遊嵌する通し穴であり、ブラケット20Aの穴25がネジ穴である。
【0066】
このように本変形例によれば、直方体の筐体51にスピーカ10A,10Bを備え、筐体51内の限られたスペース内でスピーカ10A,10Bを結合する場合であっても、軸61と直交する一方向から締結部24を締結することで、スピーカ10A,10Bを引き合わせる作業を行うことができ、組み立ての容易化を図ることができる。
【符号の説明】
【0067】
10,10A,10B:スピーカ
11 :フレーム
12 :振動板
13 :磁気回路
14 :駆動コイル
15 :プレート
16 :マグネット
17 :ヨーク
20 :ブラケット構造
20A,20B:ブラケット
21 :テーパ部
21A :傾斜面
22 :側壁
23 :結合板部
24 :締結部
25,26:ネジ穴
28 :保持部
31 :内装材
32 :開口部
40 :ブラケット構造
44 :締結部
100,100A:スピーカユニット
111 :フランジ
200 :スピーカユニット
図1
図2
図3
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図5
図6
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