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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】パネルを固定するための治具と方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/16 20060101AFI20240716BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20240716BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
E04G21/16
E04B2/56 622C
E04B2/56 622H
E04B2/56 642D
E04F13/08 101H
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020209080
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096143
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】日村 みのり
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-307088(JP,A)
【文献】特開2011-006992(JP,A)
【文献】特開2012-117268(JP,A)
【文献】特開2003-103409(JP,A)
【文献】特開平08-336711(JP,A)
【文献】米国特許第06264407(US,B1)
【文献】米国特許第03060769(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14-21/22
E04B 2/56- 2/70
E04F 13/08
B23B 35/00-49/06
B25B 1/00-11/02
B25F 1/00- 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
万力、
前記万力に取り付けられる操作ユニット、および
電動ドライバを支持するように構成されるドライバユニットを含み、
前記操作ユニットは、
前記ドライバユニットを第1の方向において可逆的にスライドするスライド機構、および
前記電動ドライバのトリガを操作するための操作機構を備える、パネルを胴縁に固定するための治具。
【請求項2】
前記操作ユニットは、前記万力上において前記万力に対して着脱可能に取り付けられ、
前記ドライバユニットは前記操作ユニットに連結されており、かつ、前記電動ドライバを支持する筐体と、前記筐体に固定され前記第1の方向に延伸するスライドシャフトを備え、
前記スライド機構は、前記スライドシャフトを前記第1の方向において可逆的にスライドする、請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記万力は、
固定顎、
第1の方向において前記固定顎に対向し、前記第1の方向において可逆的にスライドするように構成されるスライド顎、および
前記固定顎と前記スライド顎を連結するアームを備える、請求項1に記載の治具。
【請求項4】
前記ドライバユニットは、前記第1の方向において前記スライドシャフトに対して相対的にかつ可逆的に移動可能なように前記スライドシャフトに取り付けられる、ビスを保持するためのビスホルダを備える、請求項2に記載の治具。
【請求項5】
前記スライド機構は、前記第1の方向に垂直な第2の方向に延伸する回転軸を中心として回転し、前記スライドシャフトに連結されるハンドルである、請求項2に記載の治具。
【請求項6】
前記操作機構は、前記スライド機構に連結される制御レバーであり、
前記ドライバユニットは、前記電動ドライバのトリガを操作するレバーを備え、
前記トリガと前記レバーはケーブルを介して互いに連結される、請求項1に記載の治具。
【請求項7】
前記万力は、前記アームまたは前記固定顎に連結され、前記第1の方向において前記固定顎を中心に前記スライド顎に対して反対側に位置するパネルストッパをさらに有し、
前記パネルストッパは、前記スライド顎に対向する第1の面を有し、
前記固定顎の前記スライド顎側の主面から前記第1の面までの距離は、前記パネルの最大厚さよりも小さい、請求項3に記載の治具。
【請求項8】
前記万力は、前記アームに連結されるガイドプレートをさらに備え、
前記ガイドプレートの主面の法線は、前記第1の方向と直交し、前記アームの前記操作ユニットに面する主面の法線と直交する、請求項3に記載の治具。
【請求項9】
前記万力は、前記ガイドプレートと前記アームの間にスロットを有し、
前記操作ユニットは、前記スロットと嵌合する突起部を有する、請求項8に記載の治具。
【請求項10】
前記万力は、前記アーム上に突出部を有し、
前記操作ユニットは、前記突出部と嵌合する凹部を有する、請求項3に記載の治具。
【請求項11】
前記ビスホルダは、前記第1の方向に向けて観音開き方式で開閉する一対の爪、および前記一対の爪のそれぞれの動きを規制する一対の弾性体を有し、
前記一対の弾性体は、定常状態において前記一対の爪を閉じるように構成され、
前記一対の爪の各々は、閉じた状態において互いに対向する切り欠きを有する、請求項4に記載の治具。
【請求項12】
前記スライド顎は、前記第1の方向に可逆的に移動するように構成されるマグネットチャックである、請求項3に記載の治具。
【請求項13】
前記アームの前記固定顎側または前記スライド顎側に配置されるスペーサをさらに含む、請求項3に記載の治具。
【請求項14】
建築物に取り付けられた胴縁、および前記胴縁に固定されるパネルに治具を取り付けること、ならびに、
前記治具および前記治具に支持される電動ドライバを前記胴縁側から操作し、前記電動ドライバを前記パネルから前記胴縁へ向かう第1の方向へ移動しつつ前記パネルを介して前記胴縁にビスを打ち付けることで、前記パネルを前記胴縁に固定することを含
前記治具は万力を備え、
前記治具の取り付けは、前記パネル上で前記胴縁を前記万力で挟むことで行われる、パネルを胴縁に固定する方法。
【請求項15】
前記治具は、
前記万力に着脱可能なように取り付けられる操作ユニット、および
前記電動ドライバを支持するように構成されるドライバユニットを有し、
前記電動ドライバの前記移動は、前記操作ユニットに設けられるスライド機構を用いて行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ドライバユニットは、前記電動ドライバを支持する筐体、ならびに前記筐体に固定され、前記操作ユニットに連結されるスライドシャフトを備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記スライド機構は、前記第1の方向に垂直な第2の方向に延伸する回転軸を中心として回転するハンドルであり、
前記電動ドライバの前記移動は、前記ハンドルを回転させることで行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記操作ユニットは、前記電動ドライバのトリガを操作するための操作機構を備え、
前記ビスの前記打ち付けは、前記操作機構を用いて前記トリガを操作することによって前記ビスを回転しながら行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ドライバユニットは、前記第1の方向において前記筐体に対して相対的にかつ可逆的に移動可能なように前記スライドシャフトに取り付けられる、前記ビスを保持するためのビスホルダを備え、
前記ビスは、前記ビスホルダに保持された状態で前記電動ドライバに取り付けられる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ビスホルダは、前記第1の方向に向けて観音開き方式で開閉する一対の爪、および前記一対の爪のそれぞれの動きを規制する一対の弾性体を有し、
前記一対の弾性体は、定常状態において前記一対の爪を閉じるように構成され、
前記一対の爪の各々は、閉じた状態において互いに対向する切り欠きを有し、
前記ビスの前記保持は、前記切り欠きに前記ビスが収容されるよう、前記一対の爪で前記ビスを挟むことで行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ビスの前記打ち付けは、
前記ビスホルダに対して前記筐体を前記第1の方向に相対的に移動させることで前記ビスを前記ビスホルダに対して前記第1の方向に相対的に移動させ、
前記ビスの頭部を前記一対の爪に接触させることによって前記一対の爪を開き、
前記ビスを前記一対の爪の間を通過させ、
前記ビスが前記一対の爪の間を通過した後、閉じた前記一対の爪によって前記電動ドライバの一部を挟むように行われる、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、建築物の外壁として用いられるパネルを胴縁に固定するための治具と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫などの物流施設や工場、商業ビルなどの大規模建築物は、建築物の骨格となる躯体を構築し、躯体に外壁やルーバー、建具、窓などが取り付けられて施工されることが多い。大規模建築物に特殊な外観形状やデザインが要求されない場合には、ロックウールなどの不燃断熱材を鋼板で挟み込んだ外壁パネル(以下、単にパネルと記す)で構成することで、短い工期で建築物を施工することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-116823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、建築物の躯体に固定された胴縁に対し、建築物の外壁として用いられるパネルを安全に、低コストで、あるいは短い工期で固定するための治具と方法を提供することを課題の一つとする。あるいは、本発明の実施形態の一つは、建築物の躯体に固定された胴縁に対し、建築物周囲に足場を組み立てることなく建築物内部でパネルを固定するための治具と方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、パネルを胴縁に固定するための治具である。この治具は、万力、万力上に取り付けられる操作ユニット、および電動ドライバを支持するように構成されるドライバユニットを含む。操作ユニットは、ドライバユニットを第1の方向において可逆的にスライドするスライド機構、および電動ドライバのトリガを操作するための操作機構を備える。
【0006】
本発明の実施形態の一つは、建築物に取り付けられた胴縁にパネルを固定するための方法である。この方法は、建築物に取り付けられた胴縁、および胴縁に固定されるパネルに治具を取り付けること、ならびに、治具および治具に支持される電動ドライバを胴縁側から操作し、電動ドライバをパネルから胴縁へ向かう第1の方向へ移動しつつパネルを介して胴縁にビスを打ち付けることで、パネルを胴縁に固定することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態の一つである、パネルの固定方法を説明する正面図、およびパネルと胴縁の断面図。
図2】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の斜視図。
図3】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の斜視図。
図4】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の側面図、上面図、および正面図。
図5】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の側面図と上面図。
図6】パネルの側面図、および本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の側面図。
図7】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の断面図と上面図。
図8】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の側面図と正面図。
図9】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の斜視図。
図10】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の側面図。
図11】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の側面図と背面図。
図12】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の斜視図。
図13】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の側面図と上面図。
図14】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための方法を説明するための側面図
図15】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための方法を説明するための側面図
図16】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための方法を説明するための側面図
図17】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための方法を説明するための側面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0009】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。符号が付された要素の一部を表記する際には、符号に小文字のアルファベットが添えられる。
【0010】
以下、本発明の実施形態の一つに係る、パネルを胴縁に固定するための治具、およびこの治具を用いるパネルの胴縁への固定方法について説明する。具体的には、建築物内における操作によって建築物に固定された胴縁にパネルを固定するための治具と方法について説明する。
【0011】
1.胴縁とパネル
図1(A)に示すように、建築物10は、図示しない杭または基礎コンクリートに連結される基礎梁12、基礎梁12と連結される躯体14、16を基本骨格として有しており、躯体14、16によって建築物10の外部形状が主に決定される。躯体14、16には、鉛直方向に延伸する複数の胴縁18が固定される。各パネル20はクレーンなどの揚重機によって吊り上げられ、所定の位置に搬送され、ねじや釘などの固定具(以下、固定具を総じてビス24と記す)を用いて躯体14、16に取り付けられる。
【0012】
胴縁18はパネル20を支持する機能を有し、アルミニウムや鉄などの金属、あるいはステンレスなどの合金、木材、あるいは樹脂を含む、直線状に延伸するフレームである。胴縁18は、一方向に延伸する板、中空管、あるいは空洞を持たないロッドでもよい。例えば胴縁18は、所謂リップ付き溝形鋼でもよく、あるいは断面が閉じた形状を有する角鋼管でもよい。胴縁18は、リップを持たない溝形鋼(平行フランジ溝形鋼)やH鋼でもよい。胴縁18の外表面の少なくとも一部は、胴縁18が延伸する方向の全体にわたって平坦であり、この平坦面にパネル20が配置、固定される。胴縁18の長さや幅、厚さは任意であり、例えば日本工業規格(JIS)G 3350を満たすように構成してもよい。
【0013】
パネル20は、木材、セメント、金属、ロックウールなどの鉱物繊維、ケイ酸カルシウム、石膏、樹脂などを含み、単層構造、あるいは積層構造を有するように構成される。例えばグラスウールやロックウールなどの鉱物繊維、セルロースファイバーなどの天然高分子由来の繊維、ポリウレタンやポリスチレンを含む発砲プラスチックなどの断熱材、ケイ酸カルシウム、石膏などを板状に加工し、これを一対の金属板や樹脂板、木板などで挟持した構造を採用することができる。金属板を用いる場合、金属板はアルミニウムや鉄などの金属、あるいはステンレスなどの合金などを含むことができ、その表面はアルミニウムや亜鉛を含む合金皮膜で覆われていてもよい。各パネル20の長さ(長手方向の長さ)と幅(長手方向に垂直な長さ)は任意に決定することができる。パネル20の長さは、例えば1m以上10m以下、2m以上6m以下、3m以上7m以下、5m以上6m以下、あるいは3m以上5m以下である。パネル20の幅は、例えば20cm以上200cm以下、60cm以上100cm以下、30cm以上150cm以下、あるいは30cm以上100cm以下である。以下、パネル20の長さ方向、幅方向、および厚さ方向をそれぞれx方向、z方向、y方向とする。x方向、z方向、y方向は、互いに直交し、パネル20の主面を構成する平面はxz平面となる。胴縁18が延伸する方向はz方向であり、z方向は鉛直方向でもよい。
【0014】
図1(B)に示すように、通常、パネル20は、対向する長辺にx方向に延伸する一対のレール20a、20bがそれぞれ設けられる。二つのパネル20を一つの胴縁18に対して上下に固定する場合、一つのパネル20のレール20aが他方のパネル20のレール20bで挟み込まれる。一方のパネル20の主面20cと他方のパネル20のレール20bの一つが略同一平面になるようにパネル20が構成されるため、レール20aが設けられる長辺側の端部20dでは、パネル20の厚さが小さくなっている。ビス24は、一方のパネル20の端部20dと他方のパネル20のレール20bを貫通し、胴縁18に達するように打ち付けられる。
【0015】
以下に述べるように、パネル20の取り付けは、建築物10の内部の作業として行われる。すなわち、パネル20に対して胴縁18側に配置される作業員の作業としてパネル20の取り付けが行われる。
【0016】
2.治具
2-1.全体構造
図2に示すように、本発明の実施形態の一つである、パネル20を胴縁18に固定するための治具100は、主な構成として、万力(シャコ万)110、万力110の上に着脱可能なように取り付けられる操作ユニット150、および操作ユニット150に連結されるドライバユニット200を含む。以下、それぞれの構成について述べる。
【0017】
2-2.万力
万力110は、胴縁18を挟むことで胴縁18に固定されるとともに、取り付けられるパネル20を胴縁18に接触させ、かつ、操作ユニット150とドライバユニット200を配置するための台座としての機能を有するパーツである。したがって、これらの機能を果たすことができれば、万力110の形状や構成に制約はなく、添付図面で示される構成や形状に限られない。以下の説明では、図2に示される万力110を一つの例として説明する。
【0018】
(1)基本構成
図3(A)と図3(B)は、それぞれ胴縁18側とパネル20側から見た万力110の斜視図であり、図4(A)から図5(C)は万力110の平面図、上面図、または背面図である。これらの図では、胴縁18とパネル20はそれぞれ点線と一点鎖線で示されている。万力110は、固定顎112、スライド顎114、およびこれらを連結するアーム116を備える。
【0019】
固定顎112はアーム116に固定され、胴縁18と当接しながらスライド顎114とともに胴縁18を挟む機能を有する。固定顎112は胴縁18に当接する主面112aをxz平面上に有し、x方向においてスライド顎114に対向する(図3(A)参照)。主面112aのx方向における長さに限定は無く、胴縁18のx方向における長さと同じ、あるいはこの長さよりも短くても長くてもよい。
【0020】
固定顎112は、胴縁18に取り付けられる際の位置を安定化させるため、パネル20と重なるように構成することができる。したがって、アーム116が延伸する方向、すなわちy方向における長さがパネル20の厚さ(例えば50mmから70mm)と同程度となるように固定顎112を構成してもよい。例えば、固定顎112のy方向における長さは、30mm以上100mm以下または40mm以上40mm以下とすることができる。
【0021】
スライド顎114は、固定顎112の主面112aの法線方向、すなわちy方向に可逆的に移動可能なようにアーム116に取り付けられ、固定顎112に対向する。スライド顎114の先端には胴縁18に当接するための主面114aが設けられ(図3(B))、固定顎112の主面とこの主面114aによって胴縁18が挟まれ、胴縁18に万力110が固定される。スライド顎114の数は任意に決定でき、一つでも複数でもよい。確実な固定を実現するため、複数のスライド顎114をz方向に重なるように設けることが好ましい。スライド顎114を移動するための機構は任意に選択することができ、図示しないネジ山が設けられたスピンドル114bとスピンドル114bを回転させるためのノブ114cでもよい。この場合、アーム116にはスピンドル114bのネジ山と嵌合する貫通孔が設けられ、ノブ114cの回転に従ってスライド顎114がy方向に移動する。
【0022】
あるいは図5(A)から図5(C)に示すように、スライド顎114は、y方向に可逆的に移動可能なように構成されるマグネット130でもよい。この場合、図示しないレバーでy方向において可逆的に移動できるようにスライド顎114を構成してもよく、あるいは図3(A)に示すノブ114cと連結されるスピンドル114bの先端にマグネット130を設けてもよい。マグネット130には、磁力のオンオフを切り替え可能なマグネットチャックを用いることが好ましい。マグネットチャックを用いることで、スライド顎114を移動させる際には磁力を解除または大幅に低下させることができ、胴縁18への固定作業が容易となる。
【0023】
アーム116は固定顎112とスライド顎114を連結するとともに、操作ユニット150とドライバユニット200を配置するための台座として機能することができる。アーム116は、これらの機能が果たされれば、その形状や構造は任意に決定することができる。台座として機能する場合、アーム116はxy平面に平行な主面を有するように構成し、この主面上に操作ユニット150が配置すればよい。
【0024】
(2)その他の構成
万力110は、任意の構成として、胴縁18に対する位置や方向を容易に決めるためのガイドプレート118を備えてもよい。ガイドプレート118は、アーム116および/または固定顎112に連結される。ガイドプレート118は、yz平面に平行な面を有するプレートとして設けることができ、その法線は、y方向と直交し、かつ、アーム116の主面の法線と直交してもよい。ガイドプレート118を胴縁18に当接させることで、万力110を適正な方向と位置で胴縁18に固定することができる。
【0025】
ガイドプレート118は、操作ユニット150やドライバユニット200を取り付けるための台座として機能してもよい。この場合、図示しないが、ガイドプレート118に切り欠きまたはスロットを設け、操作ユニット150(例えば後述するスライドボックス154)にフックを設け、フックをガイドプレート118に掛けることで操作ユニット150やドライバユニット200を万力110に固定してもよい。
【0026】
万力110はさらに、固定されるパネル20の転倒を防ぐためのパネルストッパ120を有してもよい。パネルストッパ120は、固定顎112の主面112aと平行な面を有するパーツであり、固定顎112よりも下に設けられる。パネルストッパ120は、ガイドプレート118と連結されてもよく、アーム116または固定顎112と連結されていてもよい。パネル20上に治具100が配置される際、胴縁18とパネルストッパ120の間に挟まれるようにパネル20が配置される(図5(A)参照)。これにより、パネル20の転倒を防止することができる。
【0027】
図6に示すように、パネルストッパ120は、y方向においてパネル20の端部20d(図1(B)参照)と重なるように配置されてもよく、図示しないが、端部20dとは重ならず、主面20cと重なるようにパネルストッパ120を配置してもよい。また、パネル20上に治具100が配置される際、パネルストッパ120は主面20cまたは端部20dと接してもよく、接しなくてもよい。前者の場合、y方向における固定顎112の主面112aからパネルストッパ120の固定顎112側の面までの距離Dは、パネル20の端部20dの厚さ、または端部20dを除く部分(主面20cを構成する部分)の厚さと同一となる。後者の場合、距離Dは、端部20dの厚さ、または端部20dを除く部分の厚さよりも大きい。したがって、パネルストッパ120が端部20dと重なる場合には、距離Dは主面20cを構成する部分の厚さ(すなわち、パネル20の最大厚さTmax)よりも小さくなるようにパネルストッパ120が構成される。
【0028】
万力110はさらに、操作ユニット150を安定的に万力110上に配置するためのアライメント機構を備えてもよい。アライメント機構としては、例えばアーム116の主面上に設けられる突起部126が挙げられる(図4(B)、図4(C)参照)。突起部126はアーム116の主面からz方向に突き出たパーツであり、xy平面における形状も任意に決定することができる。例えば図4(B)や図4(C)に示すように、y方向に垂直なx方向へ延伸するように構成してもよく、図示しないがxy平面においてy方向とx方向から傾く方向に延伸するように構成してもよい。後述するように、突起部126は操作ユニット150のプラットフォーム152に設けられるトレンチ172と嵌合し、これにより、操作ユニット150を万力110上に容易に配置、固定することができる。
【0029】
あるいは、図3(A)から図4(A)に示すように、アーム116とガイドプレート118の間にスロット122をアライメント機構として設けてもよい。スロット122はy方向に延伸する切り欠きをガイドプレート118に形成することで設けることができる。図示しないが、スロット122はアーム116に設けられる切り欠きとして形成してもよい。後述するように、スロット122を設ける場合、操作ユニット150のプラットフォーム152にスロット122と嵌合する突起部174が設けられ、この突起部174をスロット122に挿入することで操作ユニット150を万力110上に容易に配置、固定することができる。
【0030】
あるいは、図4(B)に示すように、z方向に延伸する開口116aをアライメント機構としてアーム116に形成してもよい。図4(B)の鎖線A-A´に沿った断面図(図7(A)から図7(C))に示すように、開口116aは底面を有する有底孔でもよく(図7(A))、段差を有する有底孔でもよい(図7(B))。あるいは、開口116aは貫通孔でもよい(図7(C))。開口116aを設ける場合には、操作ユニット150のプラットフォーム152の対応する位置に、プラットフォーム152から下方向に延伸する突起部が設けられ、これにより、操作ユニット150を万力110上に容易に配置、固定することができる。
【0031】
あるいは、開口116aはクランプ孔でもよい(図7(D))。この場合には、アーム116の底面側(固定顎112やスライド顎114が設けられる側)に円形の有底孔を設け、上面側(固定顎112やスライド顎114に対して反対側)には、この有底孔に達する矩形の開口が設けられる。詳細は後述するが、操作ユニット150のプラットフォーム152にはT字形状を有するクランプ170が設けられ、クランプ170をアーム116の上面側から開口116aへ挿入し、その後z方向を回転軸としてクランプ170を回転させることで、プラットフォーム152がアーム116上に安定的に固定される。
【0032】
なお、上述した固定顎112やアーム116、ガイドプレート118、パネルストッパ120、突起部126は機能によって定義されたパーツであり、これらの要素は独立したパーツがボルトや接着剤、あるいは溶接によって連結されていてもよく、あるいは一体化された一つのパーツでもよい。例えば固定顎112とアーム116は一体化された一つのパーツであり、その一部が固定顎112として機能し、一部がアーム116として機能してもよい。同様に、アーム116やガイドプレート118、突起部126も一体化された一つのパーツであり、その一部がそれぞれアーム116、ガイドプレート118、突起部126として機能してもよく、これらは独立したパーツとして形成され、溶接などによって互いに固定されてもよい。あるいは、ガイドプレート118とパネルストッパ120も一体化された一つのパーツであり、その一部がガイドプレート118として機能し、一部がパネルストッパ120として機能してもよく、あるいはこれらは独立したパーツとして形成され、溶接などによって互いに固定されてもよい。
【0033】
任意の構成として、万力110はスペーサ128をさらに含んでもよい(図8(A)、図8(B))。スペーサ128は胴縁18とアーム116の間、または胴縁18とガイドプレート118の間に配置することができるパーツであり、好ましくは磁力でアーム116またはガイドプレート118に着脱可能な磁性体のパーツである。x方向における長さが小さい胴縁18を使用する際、アーム116またはガイドプレート118が胴縁18と接するように万力110を配置すると、固定顎112の主面112aおよび/またはスライド顎114の主面114aが胴縁18に当接できず、万力110を胴縁18に固定できない場合がある。この場合、スペーサ128を万力110と胴縁18の間に配置することで主面112aと主面114aをx方向にシフトすることができ、その結果、胴縁18に万力110を固定することができる。
【0034】
2-3.ドライバユニット
パネル20側および胴縁18側から見た際のドライバユニット200の斜視図をそれぞれ図2図9に示す。図9では、操作ユニット150の一部は点線で描かれている。図10(A)、図10(B)にドライバユニット200の側面図を示す。これらの図に示すように、ドライバユニット200は、基本的な構成として、筐体202、少なくとも一つのスライドシャフト210、ダンパー208、およびビスホルダ220を備える。
【0035】
(1)筐体
筐体202は電動ドライバ22を支持するためのパーツである(図2参照)。このため、電動ドライバ22を支持できる形状や大きさであれば、その構造に制約はない。例えば、筐体202は箱状の形態を有してもよく、あるいは単に電動ドライバ22を支持する板状の台座でもよい。あるいは、筐体202は、電動ドライバ22をスライドシャフト210に固定するためのプレート、ロッド、クランプなどでもよい。また、電動ドライバ22は筐体202内に収容されていてもよく、あるいは筐体202から一部または全体が露出されていてもよい。筐体202は、パネル20と胴縁18を固定するためのビス24が電動ドライバ22に取り付けられた状態でビス24の先端がパネル20や胴縁18を向くように構成される(図2図10(A)、図10(B)参照)。例えば、ビス24を電動ドライバ22に取り付けられるためのパーツ(スリーブやビット)や、電動ドライバ22を駆動させるためのトリガがパネル20や胴縁18を向くように、筐体202が構成される。
【0036】
図10(A)に示すように、筐体202は、電動ドライバ22のトリガを操作するためのトリガレバー216を備える。トリガレバー216はx方向に延伸する回転軸を中心に回転することで、トリガから離間した状態とトリガを押し込んだ状態をとるように構成される(図10(A)における曲線矢印参照)。トリガレバー216は、ばねなどの弾性体(図示しない)によってその動きが規制され、定常状態ではトリガから離間する、またはトリガと接するものの電動ドライバ22が動作しない状態を維持するように構成される。トリガレバー216はケーブル214に直接または間接的に連結され、後述する操作レバー160の作用によって回転する。このため、操作レバー160を用いることで、電動ドライバ22を遠隔的に駆動することができ、その結果、電動ドライバ22に取り付けられるビス24の回転も遠隔的に制御することができる。
【0037】
(2)スライドシャフト
スライドシャフト210は、筐体202に対して直接または間接的に固定され、操作ユニット150に向かう方向、すなわち、y方向に延伸する。スライドシャフト210の数に制約はなく、一つでも複数でもよい。図9から図10(B)に示された例では、スライドシャフト210はz方向に重なるように二つ設けられ、それぞれがサイドプラケット204を介して筐体202に固定されている。スライドシャフト210の操作ユニット150側の端部は、直接または間接的に操作ユニット150に連結される。例えば図9に示すように、貫通孔212aを有するコネクタ212をスライドシャフト210の端部に連結し、貫通孔212aを介してスライドシャフト210を操作ユニット150に連結することができる。操作ユニット150に設けられるスライド機構(後述)によってスライドシャフト210がy方向において可逆的に移動し、これにより、筐体202と筐体202に支持される電動ドライバ22がスライドシャフト210と同時にy方向に可逆的に移動することができる。
【0038】
(3)ダンパー
ダンパー208は、ビスホルダ220に対する筐体202のy方向における相対的な移動の制御を容易にするために設けられるパーツである。すなわち、ダンパー208は、ビスホルダ220をy方向において操作ユニット150側へ移動させ、さらに電動ドライバ22を介してビス24をパネル20に対して押し付ける際の圧力調整を補助する機能を有する。ダンパー208の形状や構造は、この機能を発現できる構成であればなんら制約はなく、例えばダンパー208は、ダンパーロッド208a、ダンパーロッド208aの一部を取り囲むばね208b、ばね208bの位置を固定し、ばね208bの位置を規定し、ばね208bを縮めるための基点として機能するガード208c、およびダンパーロッド208aと筐体202をy方向に移動させるためのエンドストッパー208dを有する。
【0039】
ダンパーロッド208aはy方向に延伸し、操作ユニット150側の端部はビスホルダ220に対して直接または間接的に固定される。例えば、図9に示す例では、ダンパーロッド208aは、その端部がビスホルダ220が固定されるフロントプラケット206に固定される。したがって、ダンパーロッド208aとビスホルダ220の相対的な位置は変化しない。
【0040】
ダンパーロッド208aの他端は、筐体202と直接または間接的に連結されるが、筐体202がダンパーロッド208aやビスホルダ220に対してy方向において相対的に移動できるようにダンパーロッド208aの他端と筐体202が連結される。例えば図9に示す例では、サイドプラケット204にサポート209が設けられ、サポート209に形成されるy方向に延伸する貫通孔にダンパーロッド208aが挿入される。ダンパーロッド208aは、この貫通孔に挿入された状態でy方向において可逆的に移動できるように構成される。ただし、ダンパーロッド208aの他端にはエンドストッパー208dが固定され、サポート209がダンパーロッド208aとエンドストッパー208dによって挟まれる。このため、エンドストッパー208dによってサポート209がダンパーロッド208aから分離せず、また、ダンパーロッド208aのy方向への移動に伴ってサポート209とそれに連結される筐体202がy方向に移動することができる。
【0041】
ガード208cは、ばね208bの位置を規定するストッパーとして機能する。ガード208cはダンパーロッド208aを取り囲み、ダンパーロッド208aに固定される。ガード208cとダンパーロッド208aは一体化された一つのパーツでもよく、独立したパーツとして互いに溶接などによって固定されていてもよい。
【0042】
ばね208bはダンパーロッド208aを囲むコイルバネであり、ガード208cとエンドストッパー208dの間に配置される。定常状態(例えば筐体202が操作ユニット150から最も離れた位置にある状態)では、ばね208b自然長を有し、復元力を持たないように配置してもよく、あるいは自然長よりも短い長さで配置されてもよい。
【0043】
スライドシャフト210をy方向へ移動させると、ダンパー208、筐体202、およびビスホルダ220がy方向に移動する。後述するように、ビスホルダ220には電動ドライバ22にセットされたビス24が保持されているため、スライドシャフト210の移動により、電動ドライバ22にセットされた状態でビス24をパネル20に当接させ、押し込むことができる。この時、ビス24はy方向とは逆向きの抵抗を受けるが、バネ208bを設けることで、この抵抗を緩和することが可能である。
【0044】
ビス24がパネル20に進入した後にさらにスライドシャフト210をy方向へ移動させると、フロントプラケット206またはビスホルダ220が万力110または操作ユニット150と当接するため、これらの移動は停止する。この状態でさらにスライドシャフト210をy方向へ移動させると、フロントプラケット206またはビスホルダ220が停止したままダンパー208と筐体202がy方向へ移動する。ダンパーロッド208aはビスホルダ220またはフロントプラケット206に固定されているものの、筐体202はダンパー208に対して相対的にy方向に移動可能であるため、電動ドライバ22とそれにセットされたビス24をさらにパネル20に押し込むことができる。この間、筐体202に固定されるスライドシャフト210はy方向へ移動するため、バネ208bが徐々に圧縮されて縮む。この時に発生する復元力はビス24が受ける抵抗を緩和するとともに、作業員がビス24の状況を把握するために利用することができる。
【0045】
(4)ビスホルダ
ビスホルダ220は、電動ドライバ22に取り付けられるビス24を保持する機能を有するパーツであり、筐体202およびスライドシャフト210に対して相対的にy方向に移動するよう、スライドシャフト210に直接または間接的に連結される。図9に示した例では、貫通孔を有するフロントプラケット206にビスホルダ220が連結され、スライドシャフト210が貫通孔に差し込まれている。このため、スライドシャフト210上でフロントプラケット206が移動することで、ビスホルダ220がスライドシャフト210に対して相対的にy方向に移動することができる。
【0046】
ビスホルダ220を中心とする拡大側面図を図11(A)に、y方向から見た背面図を図11(B)に示す。これらの図に示すように、ビスホルダ220は、ビス24およびビス24を電動ドライバ22に取り付けるためのビット26が貫通可能な貫通孔222aを備えるベース222、ベース222に取り付けられる一対の爪224、および一対の爪224の動きを規制するための一対の弾性部材226を備える。
【0047】
ベース222はスライドシャフト210に直接または間接的に連結し、一対の爪224と弾性部材226を支持するためのパーツである。図9から図11(A)に示した例では、ベース222はフロントプラケット206を介してスライドシャフト210に取り付けられている。ベース222とそれに設けられる貫通孔222aは、電動ドライバ22のスリーブの回転軸が貫通孔222aを貫通するように配置・形成される。
【0048】
一対の爪224は、ベース222の操作ユニット150側に取り付けられ、かつ、x方向に延伸する回転軸を中心に回転するように構成される。一対の爪224はカンチ式レバーであり、上記回転によって所謂観音開き方式で操作ユニット150側に開閉するよう、ベース222に取り付けられる。一対の弾性部材226は、y方向に可逆的に弾性的に伸縮するパーツであり、それぞれ一対の爪224と接するよう、一対の爪224とベース222の間に配置される。弾性部材226は、例えば爪224と当接するロッドとそれを取り囲むコイルバネであってもよい。一対の弾性部材226は、定常状態では一対の爪224を閉じるための復元力を一対の爪224に与えるようにベース222に配置される。例えば図11(A)に示すように、ベース222に凹部を形成し、この凹部内に弾性部材226を配置してもよい。一対の爪224のそれぞれには、互いに対向する切り欠き224aが形成される(図11(B))。切り欠き224aは、弾性部材226の復元力によって一対の爪224が閉じた状態においてビス24を保持できる大きさと形状で形成される。このため、図11(A)に示すように、ビス24を電動ドライバ22にセットした状態ではビス24が一対の爪224で挟まれ、ビス24が安定的に電動ドライバ22にセットされる。
【0049】
(5)その他の構成
任意の構成として、ドライバユニット200はフロントストッパー218を有してもよい。フロントストッパー218は、ダンパー208に対して万力110または操作ユニット150側に配置される。フロントストッパー218は、ビスホルダ220に直接または間接的に固定され、例えば図9図11(A)などに示される例では、フロントストッパー218は、フロントプラケット206を介してビスホルダ220に固定される。フロントストッパー218は、ビスホルダ220のy方向への移動に制限を加える機能を有するパーツであり、ビスホルダ220とフロントストッパー218の相対的な位置は変化しない。上述したように、スライドシャフト210をy方向に移動させると同時にビスホルダ220もy方向に移動するが、ビスホルダ220またはフロントプラケット206が万力110または操作ユニット150に当接すると、y方向への移動は停止する。ビスホルダ220またはフロントプラケット206が万力110または操作ユニット150と当接しないようにフロントストッパー218を設けることで、ビスホルダ220やフロントプラケット206の破損を防止するとともに、万力110または操作ユニット150からビスホルダ220までの距離を調節することができる。好ましくは、フロントストッパー218のy方向における長さは、フロントストッパー218が万力110または操作ユニット150と当接した際、ビスの先端がパネル20の内部に達し、かつ、胴縁18に達しないように選択される。
【0050】
2-4.操作ユニット
操作ユニット150の斜視図を図12に、側面図と上面図をそれぞれ図13(A)と図13(B)に示す。操作ユニット150は万力110のアーム116上に配置され、ドライバユニット200のスライドシャフト210をy方向において可逆的に移動させる機能を果たすスライド機構、および筐体202のトリガレバー216を操作する機能を果たす操作機構を有するパーツである。このため、万力110と着脱可能なように構成され、上記二つの機構を備えていれば、任意の形状や構造、大きさを有することができる。
【0051】
例えば図12から図13(B)に示すように、操作ユニット150は、万力110と接するプラットフォーム152、プラットフォーム152上に取り付けられ、スライド機構として働くハンドル156、およびハンドル156に取り付けることができる操作レバー160などを有することができる。以下、これらのスライド機構と操作機構を中心に説明する。
【0052】
(1)ハンドル
ハンドル156は、z軸方向に延伸する回転軸Arを中心に回転するようにプラットフォーム152に連結される。ハンドル156には、スライドシャフト210が延伸する方向と交差する位置にz方向に延伸する貫通孔156aが設けられ、この貫通孔156aを介してスライドシャフト210と直接または間接的に連結される。例えば図13(A)、図13(B)に示すように、コネクタ212に設けられる貫通孔とハンドル156の貫通孔156aを貫通し、貫通孔156a内をスライド可能なボルト166を一対のプレート164で挟持したコネクタ162を用いてコネクタ212とハンドル156を連結してもよい。なお、ハンドル156の回転軸Arはz方向でなくてもよく、x方向でもよい。あるいは、回転軸Arはz方向とx方向の一方または両者から傾いてもよい。
【0053】
回転軸Arを中心にハンドル156を回転させることで(図13(B)における実線矢印参照)、コネクタ162、212がy方向において可逆的に移動し(鎖線矢印参照)、これに伴い、スライドシャフト210がスライドボックス154内を通過しながらy方向において可逆的に移動する。その結果、電動ドライバ22を支持する筐体202を備えるドライバユニット200をy方向へ可逆的に移動することができる。
【0054】
なお、スライド機構は上述したようなハンドル156に限られない。例えば、ねじ方式のスライド機構を利用してもよい。具体的には、コネクタ212にねじ山を有する貫通孔をy方向に延伸するように設け、この貫通孔のねじ山と嵌合するねじ山を備えるスピンドルを貫通孔内に設け、スピンドルおよびスピンドルを回転する回転ノブでスライド機構を構成してもよい。あるいはラックアンドピニオン方式をスライド機構として採用してもよい。具体的には、ロッド状の歯車をスライドシャフト210またはコネクタ212に用い、ロッド状の歯車とそれに嵌合するギアをスライド機構として用いてもよい。
【0055】
(2)操作レバー
図12から図13(B)に例示される操作ユニット150の操作機構は、ハンドル156に取り付けることができる操作レバー160である。操作レバー160は、ハンドル156が延伸する方向に対して垂直な方向、またはハンドル156が延伸する方向から傾く回転軸を中心として回転するレバーである。操作レバー160をハンドル156の回転軸Arに対して反対側の端部(グリップ156b)近傍に配置することで、ハンドル156を操作しながら操作レバー160を操作することができる。操作レバー160にはケーブル214が接続され、ケーブル214はドライバユニット200のトリガレバー216に直接または間接的に接続される。このため、操作レバー160を操作する(例えば握る)ことにより、トリガレバー216を回転させることができ、その結果、電動ドライバ22のトリガを制御することができる。
【0056】
操作機構は、上述した操作レバー160に限られず、例えばハンドル156が延伸する方向に回転軸を有するグリップ156bでもよい。この場合、グリップ156bにケーブル214が接続され、グリップ156bの回転に伴ってケーブル214がスライドするように操作ユニット150を構成すればよい。あるいは、図示しないが、操作機構はグリップ156bに取り付けられるスライドスイッチやボタンでもよい。
【0057】
(3)その他の構成
プラットフォーム152上には、任意の構成としてスライドボックス154を設けてもよい。スライドボックス154はスライドシャフト210がスライドするための空間(例えば貫通孔)を有する筐体であり、スライドシャフト210の湾曲を防止するとともに、コネクタ212のドライバユニット200側への移動を規制するためのストッパーとして機能することができる。
【0058】
任意の構成として、操作ユニット150はグリップハンドル168を有してもよい。グリップハンドル168は操作ユニット150の運搬や万力110上への配置、あるいは操作ユニット150の操作を容易にするための把手であり、例えばスライドボックス154に固定することができる。図示しないが、グリップハンドル168は複数設けてもよい。例えばスライドボックス154の上面と側面にそれぞれ一つのグリップハンドル168を設けてもよい。
【0059】
操作ユニット150を安定的に万力110上に配置、固定するため、プラットフォーム152に突起部174やトレンチ172を設けてもよい。例えば突起部174はxy平面内でx方向に延伸する突起であり、万力110のスロット122と嵌合するような形状で形成すればよい。トレンチ172は、万力110の突起部126と嵌合するようにプラットフォーム152の底面に形成すればよい。
【0060】
同様に、万力110の開口116a(図7(A)から図7(C)参照)と嵌合する突起部をプラットフォーム152の下部に設けてもよい。あるいは、図13(B)に示すように、万力110のアーム116にクランプ孔として開口116aを形成し、この開口116aに挿入することができ、かつ、開口116a内で回転することで開口116aと嵌合するクランプ170をプラットフォーム152に設けてもよい。
【0061】
3.パネルの胴縁への固定方法
以下、上述した治具100を用い、建築物10に固定された胴縁18にパネル20を固定する方法について説明する。
【0062】
3-1.治具の取り付け
まず、パネル20を所定の位置に搬送する(図1(A))。搬送はクレーンなどの揚重機を用いればよい。すでに他のパネル20が設置されており、そのパネル20上に新たにパネル20を配置する場合には、下側のパネル20のレール20aを新たなパネル20のレール20bで挟持するように新たなパネル20を設置すればよい(図1(B)参照)。
【0063】
その後、胴縁18に万力110を固定する。万力110の固定は、固定顎112やアーム116の下面がパネル20と接し、固定顎112の主面112aが胴縁18の一辺に接するよう、万力110をパネル20上に配置する。万力110がガイドプレート118を有する場合には、ガイドプレート118が胴縁18と接するように万力110を配置する。その後、スライド顎114のノブ114cを回転させてスライド顎114をy方向において胴縁18側へ移動させ、固定顎112の主面112aとスライド顎114の主面114aで胴縁18を挟み、万力110を胴縁18に固定する(図2図3(A)、図3(B)参照)。万力110の固定は、建築物10内の作業として実施すればよい。なお、胴縁18のx方向における長さが短い場合には、スペーサ128を胴縁18とアーム116の間、または胴縁18とガイドプレート118の間に配置すればよい。
【0064】
電動ドライバ22を筐体202に取り付け、電動ドライバ22のスリーブに電動ドライバ22の一部であるビット26を介してビス24をセットする(図14)。この時、弾性部材226の復元力によって一対の爪224に挟まれるようにビス24をセットする。その後、操作ユニット150とドライバユニット200を万力110上に配置する。例えば万力110のスロット122に突起部174を嵌合させる、あるいは、操作ユニット150のプラットフォーム152に形成されるトレンチ172と万力110の突起部126を嵌合させることで、操作ユニット150とドライバユニット200を適正な位置に配置することができる。クランプ170が設けられる場合には、クランプ170を操作し、より強固に操作ユニット150とドライバユニット200を万力110に固定することができる。これにより、ビス24の先端がパネル20や胴縁18側に向いた状態で電動ドライバ22が配置される。ビス24のセット、および操作ユニット150とドライバユニット200の配置も建築物10内の作業として実施することができる。なお、ビス24やビット26は、ドライバユニット200や操作ユニット150を万力110上に配置した後にセットしてもよい。以上のプロセスにより、建築物10に固定された胴縁18、および胴縁18に取り付けられるパネル20に治具100を取り付けることができる。
【0065】
3-2.ビスの打ち付け
引き続き、建築物10側から操作ユニット150を操作し、ビス24の打ち付けを行う。具体的には、ハンドル156を回転軸Arを中心に回転させ(図13(B))、スライドシャフト210をy方向に移動させる。これにより、筐体202も同時にy方向に移動する。また、ダンパー208と筐体202がエンドストッパー208dの作用によってy方向に移動するとともに、ビスホルダ220もy方向へ移動するので、ビス24の先端をパネル20に当接させることができる(図15(A))。なお、ビス24の先端をパネル20に当接させる前に、ビス24が当接する位置において、ビス24の挿入を容易にするための凹部をパネル20(例えばレール20a)に形成してもよい。
【0066】
この後、操作レバー160を操作してトリガレバー216を回転させ、トリガ22aを操作する(図15(B))。その結果、ビス24の回転が開始する。この状態でさらにハンドル156を回転させて筐体202をy方向に移動させることで、回転しているビス24をパネル20へ押し込む。これにより、ビス24がパネル20に挿入される(図16(A))。
【0067】
ビス24がパネル20へ挿入された後、フロントストッパー218が万力110または操作ユニット150と当接する。図16(A)に示された例では、フロントストッパー218は操作ユニット150のスライドボックス154と当接する。フロントストッパー218はビスホルダ220に連結されているため、ビスホルダ220のy方向への移動はこの段階で停止する。
【0068】
その後、さらにハンドル156を回転させてスライドシャフト210をy方向に移動させると、エンドストッパー208dがサポート209を介して筐体202をy方向へ移動させる。したがって、ビスホルダ220の位置が固定されたまま、筐体202と電動ドライバ22がy方向へ移動することになる。その結果、ビス24は、そのヘッドによって一対の爪224を開きつつ、さらにy方向へ移動し、胴縁18へ進入する(図16(B))。この時、ダンパー208に設けられるばね208bが収縮されるため、復元力が発生する。この復元力によってビス24が受ける抵抗が緩和される。また、作業員はこの復元力の大きさを感じ取りながらハンドル156を回転するための力を調節できるため、ビス24の状況を把握することができる。
【0069】
さらにハンドル156を回転させてスライドシャフト210をy方向に移動させると、ビス24は完全に一対の爪224の間を通過するため、弾性部材226の作用によって一対の爪224が閉じられる。しかしながら、電動ドライバ22は、ビット26が一対の爪224に挟まれた状態でy方向に移動することができるため、ヘッドがパネル20と接触する位置までビス24を打ち込むことができる(図17)。この後、操作レバー160を開放して電動ドライバ22を停止させ、ハンドル156を逆方向に回転させてドライバユニット200を元の位置に戻せばよい。以上のプロセスにより、胴縁18にパネル20を固定することができる。
【0070】
以上述べたように、本発明の実施形態に係る治具100を用いることにより、パネル20の胴縁18への固定作業をすべて胴縁18側、すなわち、建築物10内の作業として行うことができる。このため、従来、パネル20の固定のためには建築物10の周りに足場を固定し、建築物10の外側に作業員を配置して作業を行う必要があったが、治具100を用いる方法を適用することで、足場の組立・撤去が不要となり、工期の大幅な短縮と施行コストの低減が可能である。また、天候による影響も低減することができる。さらに、作業員は建築物10の内部で作業を行うことができるため、足場上での不安定な作業から解放され、より安全性の高い環境下での作業が可能となる。
【0071】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0072】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0073】
10:建築物、12:基礎梁、14:躯体、16:躯体、18:胴縁、20:パネル、20a:レール、20b:レール、20c:主面、20d:端部、22:電動ドライバ、22a:トリガ、24:ビス、26:ビット、100:治具、110:万力、112:固定顎、112a:主面、114:スライド顎、114a:主面、114b:スピンドル、114c:ノブ、116:アーム、116a:開口、118:ガイドプレート、120:パネルストッパ、122:スロット、126:突起部、128:スペーサ、130:マグネット、150:操作ユニット、152:プラットフォーム、154:スライドボックス、156:ハンドル、156a:貫通孔、156b:グリップ、160:操作レバー、162:コネクタ、164:プレート、166:ボルト、168:グリップハンドル、170:クランプ、172:トレンチ、174:突起部、200:ドライバユニット、202:筐体、204:サイドプラケット、206:フロントプラケット、208:ダンパー、208a:ダンパーロッド、208b:バネ、208c:ガード、208d:エンドストッパー、209:サポート、210:スライドシャフト、212:コネクタ、212a:貫通孔、214:ケーブル、216:トリガレバー、218:フロントストッパー、220:ビスホルダ、222:ベース、222a:貫通孔、224:爪、224a:切り欠き、226:弾性部材
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