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特許7520718生体反応性組成物およびそれらの使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】生体反応性組成物およびそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/00 20060101AFI20240716BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240716BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240716BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240716BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240716BHJP
   C12N 15/52 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
C12N9/00 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/52 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020546932
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 US2019021433
(87)【国際公開番号】W WO2019173760
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】62/640,450
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507127440
【氏名又は名称】ザ・リージエンツ・オブ・ザ・ユニバーシテイー・オブ・カリフオルニア
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン,レイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ナンシ
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0196985(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02221370(EP,A1)
【文献】国際公開第2015/045052(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0094457(US,A1)
【文献】Lacey, V. K. et al.,Chembiochem,2013年,Vol.14, No.16,pp.2100-2105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3のアミノ酸配列を有するピロリシル-tRNA合成酵素の基質結合部位内に少なくとも5個のアミノ酸残基置換を含む、ピロリシル-tRNA合成酵素であって、
前記少なくとも5個のアミノ酸残基置換が、配列番号3のアミノ酸配列における、302位のアラニンに対するイソロイシン、346位のアスパラギンに対するトレオニン、348位のシステインに対するイソロイシン、384位のチロシンに対するロイシン、および417位のトリプトファンに対するリジンである、tRNApylへのフルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)の結合を触媒する、ピロリシル-tRNA合成酵素。
【請求項2】
配列番号1のアミノ酸配列を有する、ピロリシル-tRNA合成酵素。
【請求項3】
配列番号2の核酸配列によってコードされる、ピロリシル-tRNA合成酵素。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のピロリシル-tRNA合成酵素、及び下記の式で表されるフルオロサルフェート-L-チロシン
【化1】
を含む複合体。
【請求項5】
さらにtRNApylを含む、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
請求項4に記載の複合体を含む細胞。
【請求項7】
請求項5に記載の複合体を含む細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月8日に出願された米国特許出願第62/640,450号の優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の下でなされた発明に対する権利に関する記述
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって付与された助成金番号R01 GM118384およびMH114079の下で政府支援を受けて行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質のアミノ酸側鎖は、通常、弱く可逆的なジスルフィド結合を生成するシステインを除いて、互いに共有結合を形成することができない。したがって、タンパク質は、主にタンパク質内またはタンパク質間の非共有相互作用を使用する。細胞に対して非毒性であり、複数の天然アミノ酸残基と反応することができる潜在的な生体反応性非天然アミノ酸は、インビボで共有結合に適したタンパク質の多様性を劇的に拡大するであろう。インビボでの共有結合に適したタンパク質の多様性を拡大することにより、新規の共有結合を利用することによって、既存のタンパク質特性を増強するか、または新しい機能を進化させることが可能である。加えて、タンパク質間で共有結合を形成する能力は、タンパク質同定、創薬ターゲット探索、または生物療法学に有用であり得る、インビボでのタンパク質-タンパク質相互作用の不可逆的な捕捉を可能にするであろう。
【0004】
とりわけ、当該技術分野におけるこれらおよび他の問題に対する解決策が、本明細書に提供されている。
【発明の概要】
【0005】
態様では、バイオコンジュゲートリンカーを介して第2の生体分子部分にコンジュゲートされる第1の生体分子部分を含む、生体分子コンジュゲートが提供され、バイオコンジュゲートリンカーは、式:
【化1】
を有する。
【0006】
態様では、
【化2】
の非天然アミノ酸側鎖を有するタンパク質が提供される。態様では、タンパク質は、この非天然アミノ酸側鎖の近位にあるリジン、ヒスチジン、チロシン、またはそれらの2つ以上の組み合わせをさらに含む。
【0007】
態様では、式(I)のタンパク質:
【化3】
が提供され、
式中、RおよびRは、各々独立して、ペプチジル部分である。
【0008】
態様では、式(II)のタンパク質:
【化4】
が提供され、
式中、RおよびRは、各々独立して、ペプチジル部分である。
【0009】
態様では、式(III)のタンパク質:
【化5】
が提供され、
式中、RおよびRは、各々独立して、ペプチジル部分である。
【0010】
態様では、式(A)の部分、式(B)の部分、式(C)の部分、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む、タンパク質が提供される。
【化6】
【0011】
態様では、配列番号3の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素の基質結合部位内に少なくとも5つのアミノ酸残基置換を含む、ピロリシル-tRNA合成酵素が提供される。
【0012】
態様では、本明細書に記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素をコードする核酸配列を含む、ベクターが提供される。
【0013】
態様では、本明細書に記載のピロリシル-tRNA合成酵素、およびフルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)を含む、複合体が提供される。
【0014】
態様では、フルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)、本明細書に記載の生体分子コンジュゲート、本明細書に記載のFSY生体分子、本明細書に記載のピロリシル-tRNA合成酵素、本明細書に記載のベクター、または本明細書に記載の複合体を含む、細胞が提供される。態様では、細胞は、細菌細胞または哺乳類細胞である。
【0015】
本開示のこれらおよび他の実施形態ならびに態様は、本明細書においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A-1E】E.coli中のタンパク質にFSYを遺伝子コードする。
図1A】FSYの構造。
図1B】FSYと天然求核残基(Nuと略される)との間の近接により可能になるSuFEx反応を示すスキーム。
図1C】E.coli中のAfb(36TAG)へのFSY組み込みを示すSDS-PAGE。
図1D】無傷のAfb-36FSYのESI-TOF MSスペクトル。
図1E】Z-24FSYのタンデムMSスペクトル。
図2A-2C】哺乳類細胞中のタンパク質にFSYを遺伝子コードする。
図2A】HeLa細胞中のEGFP-182TAGへのFSY組み込みのFACS分析。
図2B】同じ数のHeLa-EGFP-182TAGレポーター細胞から測定された全EGFP蛍光強度。エラーバー:平均値の標準誤差、n=6。
図2C】HeLa-EGFP-182TAGレポーター細胞の蛍光画像。
図3A-3D】FSYは、E.coli中で直接SuFExを介して近位のLys、His、およびTyrに架橋する。
図3A】FSYおよび標的残基X組み込みのための2つの近位部位を示すAfb-Z複合体の構造。
図3B】上:E.coli細胞溶解物のウェスタンブロット、下:E.coliから精製されたタンパク質HisタグのSDS-PAGE。
図3C-3D】MBP-Z-24FSY/Afb-7Lys(図3C)およびMBP-Z-24FSY/Afb-7His(図3D)のタンデムMSスペクトル。
図4A-4C】FSYは、E.coli細胞中で分子内でSuFExを介してTyrに架橋する。
図4A】FSYおよび標的Tyrの部位を示すCaMの構造。精製CaM-76FSY-80Tyrの(図4B)SDS-PAGEおよび(図4C)タンデムMSスペクトル。
図5A-5C】FSYは、分子間でSuFExを介してTyrに架橋する。(図5A)FSY部位および未変性Tyr191を示す、PAPS還元酵素と複合したTrx1の構造。PAPS還元酵素と架橋されたTrx1の(図5B)SDS-PAGEおよび(図5C)タンデムMSスペクトル。
図6】1mM FSYの存在下または非存在下、37℃でのE.coli DH10B細胞の成長曲線を提供する。実験を3回繰り返した。
図7】EGFP-182TAG HeLaレポーター細胞へのAzF組み込みのFACS分析を示す。
図8】様々な濃度のFSYでインキュベートされたHeLa-EGFP-182TAGレポーター細胞および293T細胞の細胞生存率アッセイを示す。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す、n=3。
図9】pH7.4および8.0でのPAPS還元酵素とのTrx62FSY架橋のSDS-PAGE分析を示す。
図10】生細胞中のFSY挙動の例示を提供する。
図11】hGH上のFSY組み込み部位(Q68)およびhGH受容体上の標的残基Lys166を示すリガンド-受容体界面を提供する。
図12】hGH受容体の細胞外ドメインとのhGH(FSY)結合のウェスタンブロット分析である。
図13】実施例2に記載される、hGH(FSY)またはhGH(WT)による刺激時のBAF3細胞中のpSTAT5産生のウェスタンブロット分析である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
細胞に対して非毒性であり、複数の天然アミノ酸残基と反応することができる潜在的な生体反応性非天然アミノ酸は、インビボで共有結合に適したタンパク質の多様性を劇的に拡大するであろう。フルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)を生細胞中の生体分子(例えば、タンパク質)に遺伝子コードするための新しいtRNA/アミノアシル-tRNA合成酵素対が、本明細書に記載される。細胞に対して非毒性であることが見出されたFSYは、インビトロおよび生細胞の両方のタンパク質において近位のリジン、ヒスチジン、およびチロシンと反応することができる。
【0018】
タンパク質のアミノ酸側鎖は、通常、弱く可逆的なジスルフィド結合を生成するシステインを除いて、互いに共有結合を形成することができない。したがって、タンパク質は、主にタンパク質内またはタンパク質間の非共有相互作用を使用する。共有結合能力を有するタンパク質を付与するために、本発明者らは、潜在的な生体反応性非天然アミノ酸フルオロサルフェート-L-チロシンを遺伝子に組み込み、これは、リジン、ヒスチジン、またはチロシンと選択的に反応し、タンパク質内およびタンパク質間の共有結合をインビボで直接形成することができる。
【0019】
遺伝子コードされたフルオロサルフェート-L-チロシンは、複数の残基を標的とすることによって共有結合する能力をタンパク質に提供する。タンパク質内で使用される場合、これは、既存のタンパク質特性を強化する、または新規の共有結合を利用することによって新たな機能を進化させるための新規のタンパク質工学的方法である。タンパク質間で使用される場合、タンパク質同定、創薬ターゲット探索、または生物療法学に有用であり得る、不可逆的に相互作用するタンパク質を捕捉することができる。
【0020】
タンパク質修飾または生体直交化学などの既存の技術は、インビトロでタンパク質に共有結合能力を備えることができる。しかしながら、本明細書に記載の技術は、インビボで共有結合能力を有するタンパク質を備えることができる。最終産物は、インビボ(生細胞内)で開発することができ、これは、生理学的関連性を有する標的同定および組み換えアプローチによる産生のスケールアップに有利である。
【0021】
定義
本明細書で使用される略語は、化学および生物学の分野におけるそれらの従来の意味を有する。本明細書に示される化学構造および化学式は、化学の分野で知られている化学原子価の標準法則に従って構築される。
【0022】
置換基が、左から右に書かれるそれらの従来の化学式によって特定される場合、それらは、右から左に構造を書くことから生じ得る化学的に同一の置換基を包含する。例えば、-CHO-は-OCH-と等価である。
【0023】
「アルキル」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、別段の記述がない限り、直鎖(すなわち、非分枝)もしくは分枝の炭素鎖(または炭素)、またはそれらの組み合わせを意味し、これは、完全飽和、一価または多価不飽和であってもよく、かつ一価、二価、および多価ラジカルを含み得る。アルキルは、指定された数の炭素を含んでもよい(例えば、C~C10は1~10個の炭素を意味する)。アルキルは、非環化鎖である。飽和炭化水素基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、メチル、例えばn-ペンチル、n-ヘキシル、n-オクチルの同族体および異性体等の基が挙げられるが、これらに限定されない。不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、ならびに高級同族体および異性体が挙げられるが、これらに限定されない。アルコキシは、酸素リンカー(-O-)を介して分子の残りの部分に結合しているアルキルである。アルキル部分は、アルケニル部分であってもよい。アルキル部分は、アルキニル部分であってもよい。アルキル部分は、完全に飽和していてもよい。アルケニルは、1つ以上の二重結合に加えて、2つ以上の二重結合および/または1つ以上の三重結合を含んでもよい。アルキニルは、1つ以上の三重結合に加えて、2つ以上の三重結合および/または1つ以上の二重結合を含んでもよい。
【0024】
「アルキレン」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、別段の記述がない限り、例として-CHCHCHCH-であるがこれに限定されない、アルキルから誘導される二価ラジカルを意味する。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は、1~24個の炭素原子を有し、10個以下の炭素原子を有する基が本明細書においては好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、一般に8個以下の炭素原子を有する短鎖アルキルまたはアルキレン基である。「アルケニレン」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、別段の記述がない限り、アルケンから誘導される二価ラジカルを意味する。
【0025】
「ヘテロアルキル」という用語は、それ自体でまたは別の用語と組み合わせて、特に明記しない限り、少なくとも1個の炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、O、N、P、Si、およびS)を含む安定な直鎖または分岐鎖、またはそれらの組み合わせを意味し、窒素原子および硫黄原子は、任意に酸化されて、窒素ヘテロ原子は、任意に四級化され得る。ヘテロ原子(複数可)(例えば、N、S、Si、またはP)は、ヘテロアルキル基の任意の内部位置またはアルキル基が分子の残りの部分に結合している位置に配置されていてもよい。ヘテロアルキルは非環化鎖である。例としては、-CH-CH-CH-O-CH、-CH-CH-NH-CH、-CH-CH-N(CH)-CH、-CH-S-CH-CH、-CH-CH、-S(O)-CH、-CH-CH-S(O)-CH、-CH=CH-O-CH、-Si(CH、-CH-CH=N-OCH、-CH=CH-N(CH)-CH、-O-CH、-O-CH-CH、および-CNが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、-CH-NH-OCHおよび-CH-O-Si(CHなどの、最大2個または3個のヘテロ原子が連続していてもよい。ヘテロアルキル部分は、1個のヘテロ原子(例えば、O、N、S、Si、またはP)を含んでもよい。ヘテロアルキル部分は、2個の任意に異なるヘテロ原子(例えば、O、N、S、Si、またはP)を含んでもよい。ヘテロアルキル部分は、3個の任意に異なるヘテロ原子(例えば、O、N、S、Si、またはP)を含んでもよい。ヘテロアルキル部分は、4個の任意に異なるヘテロ原子(例えば、O、N、S、Si、またはP)を含んでもよい。ヘテロアルキル部分は、5個の任意に異なるヘテロ原子(例えば、O、N、S、Si、またはP)を含んでもよい。ヘテロアルキル部分は、最大8個の任意に異なるヘテロ原子(例えば、O、N、S、Si、またはP)を含んでもよい。「ヘテロアルケニル」という用語は、それ自体で、または別の用語と組み合わせて、別段の記述がない限り、少なくとも1つの二重結合を含むヘテロアルキルを意味する。ヘテロアルケニルは、任意に、1つ以上の二重結合に加えて、2つ以上の二重結合および/または1つ以上の三重結合を含んでもよい。「ヘテロアルキニル」という用語は、それ自体で、または別の用語と組み合わせて、別段の記述がない限り、少なくとも1つの三重結合を含むヘテロアルキルを意味する。ヘテロアルキニルは、任意に、1つ以上の三重結合に加えて、2つ以上の三重結合および/または1つ以上の二重結合を含んでもよい。
【0026】
同様に、「ヘテロアルキレン」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、別段の記述がない限り、例として-CH-CH-S-CH-CH-および-CH-S-CH-CH-NH-CH-であるがこれらに限定されない、ヘテロアルキルから誘導される二価ラジカルを意味する。ヘテロアルキレン基について、ヘテロ原子はまた、鎖末端の一方または両方を占めることもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ等)。なおさらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基については、連結基の式が書かれている方向によって、連結基の配向が示唆されることはない。例えば、式-C(O)R´-は、-C(O)R´-と-R´C(O)-との両方を表す。上記のように、本明細書で使用される場合、ヘテロアルキル基は、-C(O)R´、-C(O)NR´、-NR´R´´、-OR´、-SR´、および/または-SOR´などのヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合している基を含む。「ヘテロアルキル」が記載され、その後に特定のヘテロアルキル基、例えば-NR´R´´等が記載される場合、ヘテロアルキルおよび-NR´R´´という用語は、重複または相互に排他的ではないことが理解されよう。むしろ、特定のヘテロアルキル基は、明確さを加えるために記載されている。したがって、「ヘテロアルキル」という用語は、本明細書では、特定のヘテロアルキル基、例えば、-NR´R´´等を除外するものとして解釈されるべきではない。
【0027】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」という用語は、それら自体で、または他の用語と組み合わせて、別段の記述がない限り、それぞれ「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環式バージョンを意味する。シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルは芳香族ではない。加えて、ヘテロシクロアルキルについては、ヘテロ原子が、複素環が分子の残りの部分に結合している位置を占めることができる。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチル等が挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキルの例としては、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニル等が挙げられるが、これらに限定されない。「シクロアルキレン」および「ヘテロシクロアルキレン」は、単独で、または別の置換基の一部として、それぞれシクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルから誘導される二価ラジカルを意味する。
【0028】
実施形態では、「シクロアルキル」という用語は、単環式、二環式、または多環式シクロアルキル環系を意味する。態様では、単環式環系は、3~8個の炭素原子を含有する環状炭化水素基であり、そのような基は、飽和または不飽和であり得るが、芳香族ではない。態様では、シクロアルキル基は、完全に飽和している。単環式シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。二環式シクロアルキル環系は、架橋単環式環または縮合二環式環である。態様では、架橋単環式環は、単環式環の2つの非隣接炭素原子が、1~3個の追加の炭素原子の間のアルキレン架橋(すなわち、wが1、2、または3である形態(CHの架橋基)によって連結される、単環式シクロアルキル環を含む。二環式環系の代表的な例としては、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.2]ノナン、ビシクロ[3.3.1]ノナン、およびビシクロ[4.2.1]ノナンが挙げられるが、これらに限定されない。態様では、縮合二環式シクロアルキル環系は、フェニル、単環式シクロアルキル、単環式シクロアルケニル、単環式ヘテロシクリル、または単環式ヘテロアリールのいずれかに縮合した単環式シクロアルキル環を含有する。態様では、架橋または縮合二環式シクロアルキルは、単環式シクロアルキル環内に含まれる任意の炭素原子を介して親分子部分に結合する。態様では、シクロアルキル基は、独立して、オキソまたはチアである1つまたは2つの基で任意に置換される。態様では、縮合二環式シクロアルキルは、フェニル環、5もしくは6員単環式シクロアルキル、5もしくは6員単環式シクロアルケニル、5もしくは6員単環式ヘテロシクリル、または5もしくは6員単環式ヘテロアリールのいずれかに縮合された5もしくは6員単環式シクロアルキル環であり、この縮合二環式シクロアルキルは、独立して、オキソまたはチアである1つまたは2つの基によって任意に置換される。態様では、多環式シクロアルキル環系は、(i)二環式アリール、二環式ヘテロアリール、二環式シクロアルキル、二環式シクロアルケニル、および二環式ヘテロシクリルからなる群から選択される1つの環系、または(ii)独立して、フェニル、二環式アリール、単環式もしくは二環式ヘテロアリール、単環式もしくは二環式シクロアルキル、単環式もしくは二環式シクロアルケニル、および単環式もしくは二環式ヘテロシクリルからなる群から選択される2つの他の環系のいずれかに縮合された単環式シクロアルキル環(塩基環)である。態様では、多環式シクロアルキルは、塩基環内に含有される任意の炭素原子を介して親分子部分に結合する。態様では、多環式シクロアルキル環系は、(i)二環式アリール、二環式ヘテロアリール、二環式シクロアルキル、二環式シクロアルケニル、および二環式ヘテロシクリルからなる群から選択される1つの環系、または(ii)独立して、フェニル、単環式ヘテロアリール、単環式シクロアルキル、単環式シクロアルケニル、および単環式ヘテロシクリルからなる群から選択される2つの他の環系のいずれかに縮合された単環式シクロアルキル環(塩基環)である。多環式シクロアルキル基の例としては、テトラデカヒドロフェナントレニル、ペルヒドロフェノチアジン-1-イル、およびペルヒドロフェノキサジン-1-イルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
実施形態では、シクロアルキルは、シクロアルケニルである。「シクロアルケニル」という用語は、その単純な通常の意味に従って使用される。態様では、シクロアルケニルは、単環式、二環式、または多環式シクロアルケニル環系である。態様では、単環式シクロアルケニル環系は、3~8個の炭素原子を含有する環状炭化水素基であり、そのような基は、不飽和(すなわち、少なくとも1つの環状炭素炭素二重結合を含有する)が、芳香族ではない。単環式シクロアルケニル環系の例としては、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニルが挙げられる。態様では、二環式シクロアルケニル環は、架橋単環式環または縮合二環式環である。態様では、架橋単環式環は、単環式環の2つの非隣接炭素原子が、1~3個の追加の炭素原子の間のアルキレン架橋(すなわち、wが1、2、または3である形態(CHの架橋基)によって連結される、単環式シクロアルキル環を含む。二環式シクロアルケニルの代表的な例としては、ノルボルネニルおよびビシクロ[2.2.2]オクト2エニルが挙げられるが、これらに限定されない。態様では、縮合二環式シクロアルケニル環系は、フェニル、単環式シクロアルキル、単環式シクロアルケニル、単環式ヘテロシクリル、または単環式ヘテロアリールのいずれかに縮合した単環式シクロアルケニル環を含有する。態様では、架橋または縮合二環式シクロアルケニルは、単環式シクロアルケニル環内に含有される任意の炭素原子を介して親分子部分に結合する。態様では、シクロアルケニル基は、独立して、オキソまたはチアである1つまたは2つの基で任意に置換される。態様では、多環式シクロアルケニル環系は、(i)二環式アリール、二環式ヘテロアリール、二環式シクロアルキル、二環式シクロアルケニル、および二環式ヘテロシクリルからなる群から選択される1つの環系、または(ii)独立して、フェニル、二環式アリール、単環式もしくは二環式ヘテロアリール、単環式もしくは二環式シクロアルキル、単環式もしくは二環式シクロアルケニル、および単環式もしくは二環式ヘテロシクリルからなる群から選択される2つの環系のいずれかに縮合された単環式シクロアルキル環(塩基環)を含有する。態様では、多環式シクロアルケニルは、塩基環内に含有される任意の炭素原子を介して親分子部分に結合する。態様では、多環式シクロアルケニル環系は、(i)二環式アリール、二環式ヘテロアリール、二環式シクロアルキル、二環式シクロアルケニル、および二環式ヘテロシクリルからなる群から選択される1つの環系、または(ii)独立して、フェニル、単環式ヘテロアリール、単環式シクロアルキル、単環式シクロアルケニル、および単環式ヘテロシクリルからなる群から選択される2つの環系のいずれかに縮合された単環式シクロアルキル環(塩基環)を含有する。
【0030】
実施形態では、ヘテロシクロアルキルは、ヘテロシクリルである。本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」という用語は、単環式、二環式、または多環式複素環を意味する。ヘテロシクリル単環式複素環は、独立して、O、N、およびSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する3、4、5、6、または7員環であり、この環は、飽和または不飽和であるが、芳香族ではない。3または4員環は、O、N、およびSからなる群から選択される1個のヘテロ原子を含有する。5員環は、0または1つの二重結合、およびO、N、およびSからなる群から選択される1、2、または3個のヘテロ原子を含有し得る。6または7員環は、0、1、または2つの二重結合、およびO、N、およびSからなる群から選択される1、2、または3個のヘテロ原子を含有する。ヘテロシクリル単環式複素環は、ヘテロシクリル単環式複素環内に含まれる任意の炭素原子または任意の窒素原子を介して親分子部分に接続される。ヘテロシクリル単環式複素環の代表的な例としては、アゼチジニル、アゼパニル、アジリジニル、ジアゼパニル、1,3-ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、1,3-ジチオラニル、1,3-ジチアニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オキサジアゾリニル、オキサジアゾリニル、オキサジアゾリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、チアジアゾリニル、チアジアゾリニル、チアゾリニル、チアゾリニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキシドチオモルホリニル(チオモルホリンスルホン)、チオピラニル、およびトリアニルが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクリル二環式複素環は、フェニル、単環式シクロアルキル、単環式シクロアルケニル、単環式複素環、または単環式ヘテロアリールのいずれかに縮合された単環式複素環である。ヘテロシクリル二環式複素環は、二環式環系の単環式複素環部分内に含まれる任意の炭素原子または任意の窒素原子を介して親分子部分に接続される。二環式ヘテロシクリルの代表例としては、2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル、2,3-ジヒドロベンゾフラン-3-イル、インドリン-1-イル、インドリン-2-イル、インドリン-3-イル、2,3-ジヒドロベンゾチエン-2-イル、デカヒドロキノリニル、デカヒドロイソキノリニル、オクタヒドロ-1H-インドリル、およびオクタヒドロベンゾフラニルが挙げられるが、これらに限定されない。態様では、ヘテロシクリル基は、独立して、オキソまたはチアである1つまたは2つの基で任意に置換される。ある特定の態様では、二環式ヘテロシクリルは、フェニル環、5もしくは6員単環式シクロアルキル、5もしくは6員単環式シクロアルケニル、5もしくは6員単環式ヘテロシクリル、または5もしくは6員単環式ヘテロアリールに縮合された5もしくは6員単環式ヘテロシクリル環であり、この二環式ヘテロシクリルは、独立して、オキソまたはチアである1つまたは2つの基によって任意に置換される。多環式ヘテロシクリル環系は、(i)二環式アリール、二環式ヘテロアリール、二環式シクロアルキル、二環式シクロアルケニル、および二環式ヘテロシクリルからなる群から選択される1つの環系、または(ii)独立して、フェニル、二環式アリール、単環式もしくは二環式ヘテロアリール、単環式もしくは二環式シクロアルキル、単環式もしくは二環式シクロアルケニル、および単環式もしくは二環式ヘテロシクリルからなる群から選択される2つの他の環系のいずれかに縮合された単環式ヘテロシクリル環(塩基環)である。多環式ヘテロシクリルは、塩基環内に含有される任意の炭素原子または窒素原子を介して親分子部分に結合する。態様では、多環式ヘテロシクリル環系は、(i)二環式アリール、二環式ヘテロアリール、二環式シクロアルキル、二環式シクロアルケニル、および二環式ヘテロシクリルからなる群から選択される1つの環系、または(ii)独立して、フェニル、単環式ヘテロアリール、単環式シクロアルキル、単環式シクロアルケニル、および単環式ヘテロシクリルからなる群から選択される2つの他の環系のいずれかに縮合された単環式ヘテロシクリル環(塩基環)である。多環式ヘテロシクリル基の例としては、10H-フェノチアジン-10-イル、9,10-ジヒドロアクリジン-9-イル、9,10-ジヒドロアクリジン-10-イル、10H-フェノキサジン-10-イル、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル、1,2,3,4-テトラヒドロピリド[4,3-g]イソキノリン-2-イル、12H-ベンゾ[b]フェノキサジン-12-イル、およびドデカヒドロ-1H-カルバゾール-9-イルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、それら自体で、または別の置換基の一部として、別段の記述がない限り、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。加えて、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、「ハロ(C~C)アルキル」という用語は、限定されないが、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピル等を含む。
【0032】
「アシル」という用語は、別段の記述がない限り、-C(O)Rを意味し、式中、Rは、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、または置換もしくは非置換ヘテロアリールである。
【0033】
「アリール」という用語は、別段の記述がない限り、単環、または共に縮合している(すなわち、縮合環アリール)もしくは共有結合的に連結している複数の環(好ましくは1~3環)であり得る、多価不飽和の芳香族炭化水素置換基を意味する。縮合環アリールは、縮合環のうちの少なくとも1つがアリール環である、共に縮合した複数の環を指す。「ヘテロアリール」という用語は、N、O、またはSなどの少なくとも1つのヘテロ原子を含むアリール基(または環)を指し、窒素原子および硫黄原子は任意に酸化され、窒素原子(複数可)は任意に四級化される。したがって、「ヘテロアリール」という用語は、縮合環ヘテロアリール基(すなわち、縮合した環のうちの少なくとも1つが複素芳香環である、共に縮合した複数の環)を含む。5,6-縮合環ヘテロアリーレンは、一方の環が5員を有し、他方の環が6員を有し、かつ少なくとも1つの環がヘテロアリール環である、共に縮合した2つの環を指す。同様に、6,6-縮合環ヘテロアリーレンは、一方の環が6員を有し、他方の環が6員を有し、かつ少なくとも1つの環がヘテロアリール環である、共に縮合した2つの環を指す。そして、6,5-縮合環ヘテロアリーレンは、一方の環が6員を有し、他方の環が5員を有し、かつ少なくとも1つの環がヘテロアリール環である、共に縮合した2つの環を指す。ヘテロアリール基は、炭素またはヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合することができる。アリール基およびヘテロアリール基の非限定的な例としては、フェニル、ナフチル、ピロリル、ピラゾリル、ピリダジニル、トリアジニル、ピリミジニル、イミダゾリル、ピラジニル、プリニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル ベンズイミダゾリル、ベンゾフラン、イソベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾチオフェニル、イソキノリル、キノキサリニル、キノリル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリルが挙げられる。上記のアリール環系およびヘテロアリール環系の各々に対する置換基は、下記の許容される置換基の群から選択される。「アリーレン」および「ヘテロアリーレン」は、単独で、または別の置換基の一部として、それぞれアリールおよびヘテロアリールから誘導される二価ラジカルを意味する。ヘテロアリール基置換基は、環ヘテロ原子窒素に-O-結合していてもよい。
【0034】
縮合環ヘテロシクロアルキル-アリールは、ヘテロシクロアルキルに縮合されたアリールである。縮合環ヘテロシクロアルキル-ヘテロアリールは、ヘテロシクロアルキルに縮合されたヘテロアリールである。縮合環ヘテロシクロアルキル-シクロアルキルは、シクロアルキルに縮合されたヘテロシクロアルキルである。縮合環ヘテロシクロアルキル-ヘテロシクロアルキルは、別のヘテロシクロアルキルに縮合されたヘテロシクロアルキルである。縮合環ヘテロシクロアルキル-アリール、縮合環ヘテロシクロアルキル-ヘテロアリール、縮合環ヘテロシクロアルキル-シクロアルキル、または縮合環ヘテロシクロアルキル-ヘテロシクロアルキルは、各々独立して、非置換であってもよく、または本明細書に記載の置換基のうちの1つ以上で置換されていてもよい。
【0035】
スピロ環式環は、隣接する環が単一の原子を介して結合している、2つ以上の環である。スピロ環式環内の個々の環は、同一であっても異なっていてもよい。スピロ環式環内の個々の環は、置換されていても非置換であってもよく、一組のスピロ環式環内に他の個々の環とは異なる置換基を有していてもよい。スピロ環式環内の個々の環に対する可能な置換基は、スピロ環式環の一部ではない場合、同じ環に対する可能な置換基(例えば、シクロアルキル環またはヘテロシクロアルキル環に対する置換基)である。スピロ環式環は、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、または置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレンであってもよく、スピロ環式環基内の個々の環は、一種類の全ての環を有するもの(例えば、全ての環が置換ヘテロシクロアルキレンであり、各環は同じまたは異なる置換ヘテロシクロアルキレンであり得る)を含む、直前のリストのうちのいずれかであり得る。スピロ環式環系に言及するとき、複素環式スピロ環式環は、少なくとも1つの環が複素環式環であり、かつ各環が異なる環であり得る、スピロ環式環を意味する。スピロ環式環系に言及するとき、置換スピロ環式環は、少なくとも1つの環が置換されており、各置換基が任意に異なっていてもよいことを意味する。
【0036】
【化7】
または「-」という記号は、分子または化学式の残りの部分への化学部分の結合点を示す。
【0037】
本明細書で使用される「オキソ」という用語は、炭素原子に二重結合している酸素を意味する。
【0038】
本明細書で使用される「アルキルスルホニル」という用語は、式-S(O)-R´を有する部分を意味し、式中、R´は、上で定義される置換または非置換アルキル基である。R´は、指定された数の炭素を有してもよい(例えば、「C~Cアルキルスルホニル」)。
【0039】
アルキレン部分に共有結合したアリーレン部分としての「アルキルアリーレン」という用語(本明細書ではアルキレンリンカーとも称される)。態様では、アルキルアリーレン基は、式:
【化8】
を有する。
【0040】
アルキルアリーレン部分は、アルキレン部分またはアリーレンリンカー(例えば、炭素2、3、4、もしくは6)において、ハロゲン、オキソ、-N、-CF、-CCl、-CBr、-CI、-CN、-CHO、-OH、-NH、-COOH、-CONH、-NO、-SH、-SOCH-SOH、-OSOH、-SONH、-NHNH、-ONH、-NHC(O)NHNH、置換もしくは非置換C~Cアルキル、または置換もしくは非置換2~5員ヘテロアルキル)で置換され得る。態様では、アルキルアリーレンは、非置換である。
【0041】
上記の用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、および「ヘテロアリール」)の各々は、示されたラジカルの置換形態と非置換形態との両方を含む。各種類のラジカルに対する好ましい置換基を以下に提供する。
【0042】
アルキルラジカルおよびヘテロアルキルラジカルに対する置換基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルと称されることが多い基を含む)は、0~(2m´+1)(m´は、そのようなラジカル中の炭素原子の総数である)の範囲の数で、限定されないが、-OR´、=O、=NR´、=N-OR´、-NR´R´´、-SR´、-ハロゲン、-SiR´R´´R´´´、-OC(O)R´、-C(O)R´、-COR´、-CONR´R´´、-OC(O)NR´R´´、-NR´´C(O)R´、-NR´-C(O)NR´´R´´´、-NR´´C(O)R´、-NR-C(NR´R´´R´´´)=NR´´´´、-NR-C(NR´R´´)=NR´´´、-S(O)R´、-S(O)R´、-S(O)NR´R´´、-NRSOR´、-NR´NR´´R´´´、-ONR´R´´、-NR´C(O)NR´´NR´´´R´´´´、-CN、-NO、-NR´SOR´´、-NR´C(O)R´´、-NR´C(O)-OR´´、-NR´OR´´から選択される様々な基のうちの1つ以上であり得る。R、R´、R´´、R´´´、およびR´´´´は各々、好ましくは、独立して、水素、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アリール(例えば、1~3つのハロゲンで置換されたアリール)、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換アルキル、アルコキシ、またはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を指す。例えば、本明細書に記載の化合物が1つ超のR基を含む場合、R基の各々は、独立して、これらの基のうちの1つ超が存在する場合の各R´、R´´、R´´´、およびR´´´´基のように選択される。R´およびR´´が同じ窒素原子に結合している場合、それらは、窒素原子と組み合わさって、4、5、6、または7員環を形成することができる。例えば、-NR´R´´としては、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルが挙げられるが、これらに限定されない。置換基の上記考察から、当業者は、「アルキル」という用語が、水素基以外の基に結合した炭素原子を含む基、例えば、ハロアルキル(例えば、-CFおよび-CHCF)およびアシル(例えば、-C(O)CH、-C(O)CF、-C(O)CHOCH等)を含むことを意味すると理解するであろう。
【0043】
アルキルラジカルについて記載される置換基と同様に、アリールおよびヘテロアリール基の置換基は様々であり、0~芳香族環系上の原子価の総数の範囲の数で、例えば、-OR´、-NR´R´´、-SR´、-ハロゲン、-SiR´R´´R´´´、-OC(O)R´、-C(O)R´、-COR´、-CONR´R´´、-OC(O)NR´R´´、-NR´´C(O)R´、-NR´-C(O)NR´´R´´´、-NR´´C(O)R´、-NR-C(NR´R´´R´´´)=NR´´´´、-NR-C(NR´R´´)=NR´´´、-S(O)R´、-S(O)R´、-S(O)NR´R´´、-NRSOR´、-NR´NR´´R´´´、-ONR´R´´、-NR´C(O)NR´´NR´´´R´´´´、-CN、-NO、-R´、-N、-CH(Ph)、フルオロ(C~C)アルコキシ、およびフルオロ(C~C)アルキル、-NR´SOR´´、-NR´C(O)R´´、-NR´C(O)-OR´´、-NR´OR´´から選択され、R´、R´´、R´´´、およびR´´´´は、好ましくは、独立して、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される。例えば、本明細書に記載の化合物が1つ超のR基を含む場合、R基の各々は、これらの基のうちの1つ超が存在する場合の各R´、R´´、R´´´、およびR´´´´基のように、独立して選択される。
【0044】
環に対する置換基(例えば、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレン)は、環の特定の原子上ではなく環上の置換基として表され得る(一般に浮遊置換基と称される)。そのような場合、置換基は、(化学原子価の規則に従って)環原子のいずれかに結合されてもよく、縮合環またはスピロ環式環の場合、縮合環またはスピロ環式環の1員と結合されるものとして示される置換基(単環上の浮遊置換基)は、縮合環またはスピロ環式環のいずれか上の置換基(多環上の浮遊置換基)であり得る。置換基が、特定の原子ではなく、環に結合して場合(浮遊置換基)、置換基の下付き文字は、1より大きい整数であり、複数の置換基が、同じ原子、同じ環、異なる原子、異なる縮合環、異なるスピロ環式環上にあってもよく、各置換基が、任意に異なり得る。分子の残りの部分への環の結合点が単一の原子(浮動置換基)に限定されない場合、結合点は、環の任意の原子であってもよく、縮合環またはスピロ環式環の場合、化学原子価の法則に従って、縮合環またはスピロ環式環のいずれかの任意の原子であり得る。環、縮合環、またはスピロ環式環が1つ以上の環ヘテロ原子を含有し、環、縮合環、またはスピロ環式環が1つ以上の浮動置換基と共に示される場合(限定されないが、分子の残りの部分に対する結合点を含む)、浮遊置換基は、ヘテロ原子に結合され得る。ヘテロ原子が、浮遊置換基を有する構造または式中で1つ以上の水素に結合して示される場合(例えば、環原子への2つの結合、および水素への3番目の結合を伴う環窒素)、ヘテロ原子が浮遊置換基に結合するとき、置換基は、化学原子価の法則に従いながら、水素を置き換えると理解されるであろう。
【0045】
2つ以上の置換基が任意に結合して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキル基を形成してもよい。そのようないわゆる環形成置換基は、典型的には、必ずではないが、環式塩基構造に結合していることが見出される。一実施形態では、環形成置換基は、塩基構造の隣接する構成員に結合している。例えば、環式塩基構造の隣接する構成員に結合した2つの環形成置換基は、縮合環構造を創出する。別の実施形態では、環形成置換基は、塩基構造の単一の構成員に結合している。例えば、環式塩基構造の単一の構成員に結合した2つの環形成置換基は、スピロ環式構造を創出する。さらに別の実施形態では、環形成置換基は、基本構造の隣接していない構成員に結合されている。
【0046】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの2つは、任意選択で、式-T-C(O)-(CRR´)-U-の環を形成してもよく、式中、TおよびUは、独立して、-NR-、-O-、-CRR´-、または単結合であり、qは、0~3の整数である。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの2つは、任意に、式-A-(CH-B-の置換基で置き換えられてもよく、式中、AおよびBは、独立して、-CRR´-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)-、-S(O)NR´-、または単結合であり、rは、1~4の整数である。このように形成された新たな環の単結合のうちの1つは、任意に、二重結合で置き換えられてもよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの2つは、任意に、式-(CRR´)-X´-(C´´R´´R´´´)-の置換基で置き換えられてもよく、式中、sおよびdは、独立して、0~3の整数であり、X´は、-O-、-NR´-、-S-、-S(O)-、-S(O)-、または-S(O)NR´-である。置換基R、R´、R´´、およびR´´´は、好ましくは、独立して、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される。
【0047】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」または「環ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、リン(P)、およびケイ素(Si)を含むことを意味する。
【0048】
本明細書で使用される「置換基」は、以下の部分から選択される基を意味する:(A)オキソ、ハロゲン、-CCl、-CBr、-CF、-CI、-CN、-OH、-NH、-COOH、-CONH、-NO、-SH、-SOH、-SOH、-SONH、-NHNH、-ONH、-NHC(O)NHNH、-NHC(O)NH、-NHSOH、-NHC(O)H、-NHC(O)OH、-NHOH、-OCCl、-OCF、-OCBr、-OCI、-OCHCl、-OCHBr、-OCHI、-OCHF、非置換アルキル(例えば、C~Cアルキル、C~Cアルキル、もしくはC~Cアルキル)、非置換ヘテロアルキル(例えば、2~8員ヘテロアルキル、2~6員ヘテロアルキル、もしくは2~4員ヘテロアルキル)、非置換シクロアルキル(例えば、C~Cシクロアルキル、C~Cシクロアルキル、もしくはC~Cシクロアルキル)、非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3~8員ヘテロシクロアルキル、3~6員ヘテロシクロアルキル、もしくは5~6員ヘテロシクロアルキル)、非置換アリール(例えば、C~C10アリール、C10アリール、もしくはフェニル)、または非置換ヘテロアリール(例えば、5~10員ヘテロアリール、5~9員ヘテロアリール、もしくは5~6員ヘテロアリール)、および(B)以下から選択される少なくとも1つの置換基で置換される、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール:(i)オキソ、ハロゲン、-CCl、-CBr、-CF、-CI、-CN、-OH、-NH、-COOH、-CONH、-NO、-SH、-SOH、-SOH、-SONH、-NHNH、-ONH、-NHC(O)NHNH、-NHC(O)NH、-NHSOH、-NHC(O)H、-NHC(O)OH、-NHOH、-OCCl、-OCF、-OCBr、-OCI、-OCHCl、-OCHBr、-OCHI、-OCHF、非置換アルキル(例えば、C~Cアルキル、C~Cアルキル、もしくはC~Cアルキル)、非置換ヘテロアルキル(例えば、2~8員ヘテロアルキル、2~6員ヘテロアルキル、もしくは2~4員ヘテロアルキル)、非置換シクロアルキル(例えば、C~Cシクロアルキル、C~Cシクロアルキル、もしくはC~Cシクロアルキル)、非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3~8員ヘテロシクロアルキル、3~6員ヘテロシクロアルキル、もしくは5~6員ヘテロシクロアルキル)、非置換アリール(例えば、C~C10アリール、C10アリール、もしくはフェニル)、または非置換ヘテロアリール(例えば、5~10員ヘテロアリール、5~9員ヘテロアリール、もしくは5~6員ヘテロアリール)、および(ii)以下から選択される少なくとも1つの置換基で置換される、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(a)オキソ、ハロゲン、-CCl、-CBr、-CF、-CI、-CN、-OH、-NH、-COOH、-CONH、-NO、-SH、-SOH、-SOH、-SONH、-NHNH、-ONH、-NHC(O)NHNH、-NHC(O)NH、-NHSOH、-NHC(O)H、-NHC(O)OH、-NHOH、-OCCl、-OCF、-OCBr、-OCI、-OCHCl、-OCHBr、-OCHI、-OCHF、非置換アルキル(例えば、C~Cアルキル、C~Cアルキル、もしくはC~Cアルキル)、非置換ヘテロアルキル(例えば、2~8員ヘテロアルキル、2~6員ヘテロアルキル、もしくは2~4員ヘテロアルキル)、非置換シクロアルキル(例えば、C~Cシクロアルキル、C~Cシクロアルキル、もしくはC~Cシクロアルキル)、非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3~8員ヘテロシクロアルキル、3~6員ヘテロシクロアルキル、もしくは5~6員ヘテロシクロアルキル)、非置換アリール(例えば、C~C10アリール、C10アリール、もしくはフェニル)、または非置換ヘテロアリール(例えば、5~10員ヘテロアリール、5~9員ヘテロアリール、もしくは5~6員ヘテロアリール)、および(b)以下から選択される少なくとも1つの置換基で置換される、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール:オキソ、ハロゲン、-CCl、-CBr、-CF、-CI、-CN、-OH、-NH、-COOH、-CONH、-NO、-SH、-SOH、-SOH、-SONH、-NHNH、-ONH、-NHC(O)NHNH、-NHC(O)NH、-NHSOH、-NHC(O)H、-NHC(O)OH、-NHOH、-OCCl、-OCF、-OCBr、-OCI、-OCHCl、-OCHBr、-OCHI、-OCHF、非置換アルキル(例えば、C~Cアルキル、C~Cアルキル、もしくはC~Cアルキル)、非置換ヘテロアルキル(例えば、2~8員ヘテロアルキル、2~6員ヘテロアルキル、もしくは2~4員ヘテロアルキル)、非置換シクロアルキル(例えば、C~Cシクロアルキル、C~Cシクロアルキル、もしくはC~Cシクロアルキル)、非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3~8員ヘテロシクロアルキル、3~6員ヘテロシクロアルキル、もしくは5~6員ヘテロシクロアルキル)、非置換アリール(例えば、C~C10アリール、C10アリール、もしくはフェニル)、または非置換ヘテロアリール(例えば、5~10員ヘテロアリール、5~9員ヘテロアリール、もしくは5~6員ヘテロアリール)。
【0049】
本明細書で使用される「サイズ制限置換基(size-limited substituent)」または「サイズ制限置換基(size-limited substituent group)」は、「置換基」について上で説明した全ての置換基から選択される基を意味し、各置換または非置換アルキルは、置換または非置換C~C20アルキルであり、各置換または非置換ヘテロアルキルは、置換または非置換2~20員ヘテロアルキルであり、各置換または非置換シクロアルキルは、置換または非置換C~Cシクロアルキルであり、各置換または非置換ヘテロシクロアルキルは、置換または非置換3~8員ヘテロシクロアルキルであり、各置換または非置換アリールは、置換または非置換C~C10アリールであり、各置換または非置換ヘテロアリールは、置換または非置換5~10員ヘテロアリールである。
【0050】
「低級置換基(lower substituent)」または「低級置換基(lower substituent group)」は、本明細書で使用される場合、「置換基」について上で説明した全ての置換基から選択される基を意味し、各置換または非置換アルキルは、置換または非置換C~Cアルキルであり、各置換または非置換ヘテロアルキルは、置換または非置換2~8員ヘテロアルキルであり、各置換または非置換シクロアルキルは、置換または非置換C~Cシクロアルキルであり、各置換または非置換ヘテロシクロアルキルは、置換または非置換3~7員ヘテロシクロアルキルであり、各置換または非置換アリールは、置換または非置換C~C10アリールであり、各置換または非置換ヘテロアリールは、置換または非置換5~9員ヘテロアリールである。
【0051】
実施形態では、本明細書の化合物において説明される各置換基は、少なくとも1つの置換基で置換されている。より具体的には、態様では、本明細書の化合物において説明される各置換アルキル、置換ヘテロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、置換ヘテロアリール、置換アルキレン、置換ヘテロアルキレン、置換シクロアルキレン、置換ヘテロシクロアルキレン、置換アリーレン、および/または置換ヘテロアリーレンは、少なくとも1つの置換基で置換されている。態様では、これらの基のうちの少なくとも1つまたは全てが、少なくとも1つのサイズ制限置換基で置換されている。態様では、これらの基のうちの少なくとも1つまたは全てが、少なくとも1つの低級置換基で置換されている。
【0052】
本明細書の化合物の実施形態では、各置換または非置換アルキルは、置換または非置換C~C20アルキルであってもよく、各置換または非置換ヘテロアルキルは、置換または非置換2~20員ヘテロアルキルであり、各置換または非置換シクロアルキルは、置換または非置換C~Cシクロアルキルであり、各置換または非置換ヘテロシクロアルキルは、置換または非置換3~8員ヘテロシクロアルキルであり、各置換または非置換アリールは、置換または非置換C~C10アリールであり、かつ/あるいは各置換または非置換ヘテロアリールは、置換または非置換5~10員ヘテロアリールである。本明細書の化合物の態様では、各置換または非置換アルキレンは、置換または非置換C~C20アルキレンであり、各置換または非置換ヘテロアルキレンは、置換または非置換2~20員ヘテロアルキレンであり、各置換または非置換シクロアルキレンは、置換または非置換C~Cシクロアルキレンであり、各置換または非置換ヘテロシクロアルキレンは、置換または非置換3~8員ヘテロシクロアルキレンであり、各置換または非置換アリーレンは、置換または非置換C~C10アリーレンであり、かつ/あるいは各置換または非置換ヘテロアリーレンは、置換または非置換5~10員ヘテロアリーレンである。
【0053】
実施形態では、各置換または非置換アルキルは、置換または非置換C~Cアルキルであり、各置換または非置換ヘテロアルキルは、置換または非置換2~8員ヘテロアルキルであり、各置換または非置換シクロアルキルは、置換または非置換C~Cシクロアルキルであり、各置換または非置換ヘテロシクロアルキルは、置換または非置換3~7員ヘテロシクロアルキルであり、各置換または非置換アリールは、置換または非置換C~C10アリールであり、かつ/あるいは各置換または非置換ヘテロアリールは、置換または非置換5~9員ヘテロアリールである。態様では、各置換または非置換アルキレンは、置換または非置換C~Cアルキレンであり、各置換または非置換ヘテロアルキレンは、置換または非置換2~8員ヘテロアルキレンであり、各置換または非置換シクロアルキレンは、置換または非置換C~Cシクロアルキレンであり、各置換または非置換ヘテロシクロアルキレンは、置換または非置換3~7員ヘテロシクロアルキレンであり、各置換または非置換アリーレンは、置換または非置換C~C10アリーレンであり、かつ/あるいは各置換または非置換ヘテロアリーレンは、置換または非置換5~9員ヘテロアリーレンである。態様では、化合物は、以下の実施例セクション、図面、または表に示される化学種である。
【0054】
実施形形態では、置換または非置換部分(例えば、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換アリーレン、および/または置換もしくは非置換ヘテロアリーレン)は、非置換である(例えば、それぞれ、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、非置換アルキレン、非置換ヘテロアルキレン、非置換シクロアルキレン、非置換ヘテロシクロアルキレン、非置換アリーレン、および/または非置換ヘテロアリーレン)。態様では、置換または非置換部分(例えば、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換アリーレン、および/または置換もしくは非置換ヘテロアリーレン)は、置換されている(例えば、それぞれ、置換アルキル、置換ヘテロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、置換ヘテロアリール、置換アルキレン、置換ヘテロアルキレン、置換シクロアルキレン、置換ヘテロシクロアルキレン、置換アリーレン、および/または置換ヘテロアリーレン)。
【0055】
実施形態では、置換部分(例えば、置換アルキル、置換ヘテロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、置換ヘテロアリール、置換アルキレン、置換ヘテロアルキレン、置換シクロアルキレン、置換ヘテロシクロアルキレン、置換アリーレン、および/または置換ヘテロアリーレン)は、少なくとも1つの置換基で置換され、置換部分が複数の置換基で置換される場合、各置換基は、任意に異なっていてもよい。態様では、置換部分が複数の置換基で置換される場合、各置換基は異なる。
【0056】
実施形態では、置換部分(例えば、置換アルキル、置換ヘテロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、置換ヘテロアリール、置換アルキレン、置換ヘテロアルキレン、置換シクロアルキレン、置換ヘテロシクロアルキレン、置換アリーレン、および/または置換ヘテロアリーレン)は、少なくとも1つのサイズ制限置換基で置換され、置換部分が複数のサイズ制限置換基で置換される場合、各サイズ制限置換基は、任意に異なっていてもよい。態様では、置換部分が複数のサイズ制限置換基で置換される場合、各サイズ制限置換基は異なる。
【0057】
実施形態では、置換部分(例えば、置換アルキル、置換ヘテロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、置換ヘテロアリール、置換アルキレン、置換ヘテロアルキレン、置換シクロアルキレン、置換ヘテロシクロアルキレン、置換アリーレン、および/または置換ヘテロアリーレン)は、少なくとも1つの低級置換基で置換され、置換部分が、複数の低級置換基で置換されている場合、各低級置換基は、任意に異なっていてもよい。態様では、置換部分が複数の低級置換基で置換される場合、各低級置換基は異なる。
【0058】
実施形態では、置換部分(例えば、置換アルキル、置換ヘテロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、置換ヘテロアリール、置換アルキレン、置換ヘテロアルキレン、置換シクロアルキレン、置換ヘテロシクロアルキレン、置換アリーレン、および/または置換ヘテロアリーレン)は、少なくとも1つの置換基、サイズ制限置換基、または低級置換基で置換され、置換部分が、置換基、サイズ制限置換基、および低級置換基から選択される複数の基で置換されている場合、各置換基、サイズ制限置換基、および/または低級置換基は、任意に異なっていてもよい。態様では、置換部分が、置換基、サイズ制限置換基、および低級置換基から選択される複数の基で置換される場合、各置換基、サイズ制限置換基、および/または低級置換基は異なる。
【0059】
本開示のある特定の化合物は、不斉炭素原子(光学中心もしくはキラル中心)または二重結合を保有する。エナンチオマー、ラセミ体、ジアステレオマー、互変異性体、幾何異性体、絶対立体化学の観点からアミノ酸について(R)-もしくは(S)-として、または(D)-もしくは(L)-として定義され得る立体異性形態、および個々の異性体が、本開示の範囲に包含される。本開示の化合物は、合成および/または単離するには不安定すぎることが当該技術分野において知られているものを含まない。本開示は、ラセミ形態および光学的に純粋な形態の化合物を含むことを意味する。光学活性な(R)-および(S)-または(D)-および(L)-異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を使用して調製してもよく、あるいは従来の技法を使用して分割してもよい。本明細書に記載の化合物がオレフィン結合または他の幾何学的不斉中心を含む場合、また別段の指示がない限り、化合物はEおよびZ両方の幾何異性体を含むことが意図される。
【0060】
本明細書で使用される場合、「異性体」という用語は、同じ数および種類の原子、したがって同じ分子量を有するが、原子の構造配置または立体配置に関しては異なる化合物を指す。
【0061】
本明細書で使用される「互変異性体」という用語は、平衡状態で存在し、ある異性型から別の異性型に容易に変換される2つ以上の構造異性体のうちの1つを指す。
【0062】
本開示のある特定の化合物が互変異性形態で存在してもよく、化合物のそのような互変異性形態が全て本開示の範囲内であることは当業者に明らかであろう。
【0063】
別段の記述がない限り、本明細書に示される構造は、その構造の全ての立体化学形態、すなわち、各不斉中心についてR配置およびS配置も含むことを意味する。したがって、本化合物の単一の立体化学異性体、およびエナンチオマーとジアステレオマーとの混合物が本開示の範囲内である。
【0064】
別段の記述がない限り、本明細書に示される構造はまた、1つ以上の同位体濃縮原子の存在下でのみ異なる化合物を含むことを意味する。例えば、重水素もしくは三重水素による水素の代置または13C-もしくは14C-濃縮炭素による炭素の代置を除いて本構造を有する化合物は、本開示の範囲内である。
【0065】
本開示の化合物はまた、そのような化合物を構成する原子のうちの1つ以上において、不自然な均衡の原子同位体を含み得る。例えば、これらの化合物は、例えば三重水素(H)、ヨウ素125(125I)、または炭素14(14C)などの放射性同位体で放射性標識されていてもよい。本開示の化合物の全ての同位体変形は、放射性であろうとなかろうと、本開示の範囲内に包含される。
【0066】
本出願全体を通して、代替物は、マーカッシュ群、例えば、1つ超の可能なアミノ酸を含む各アミノ酸位置で書かれていることに留意されたい。マーカッシュ群の各構成員は別々に考慮されて、別の実施形態を構成するべきであり、マーカッシュ群は単一の単位として読まれるべきではないことが、明確に企図される。
【0067】
「類似体(analog)」または「類似体(analogue)」は、化学および生物学におけるその単純な通常の意味に従って使用され、別の化合物(すなわち、いわゆる「参照」化合物)と構造的に類似しているが、組成において、例えば、ある原子の異なる元素の原子による代置、または特定の官能基の存在下、またはある官能基の別の官能基による代置、または参照化合物の1つ以上のキラル中心の絶対立体化学において異なる化学化合物を指す。したがって、類似体は、機能および外観において類似または同等であるが、参照化合物と構造または起源においては類似または同等でない化合物である。
【0068】
本明細書で使用される「a」または「an」という用語は、1つ以上を意味する。加えて、本明細書で使用される「[n]で置換された(substituted with a[n])」という語句は、特定された基が、任意のまたは全ての指定された置換基のうちの1つ以上で置換されていてもよいことを意味する。例えば、アルキル基またはヘテロアリール基などの基は、「非置換C~C20アルキル、または非置換2~20員ヘテロアルキルで置換される」場合、その基は、1つ以上の非置換C~C20アルキル、および/または1つ以上の非置換2~20員ヘテロアルキルを含有することができる。
【0069】
さらに、ある部分がR置換基で置換されている場合、その基は、「R置換」と称され得る。ある部分がR置換である場合、この部分は、少なくとも1つのR置換基で置換され、各R置換基は、任意に異なる。特定のR基が化学種(式(I)など)の説明中に存在する場合、ローマアルファベット記号が、その特定のR基の各外観を区別するために使用することができる。例えば、複数のR13置換基が存在する場合、各R13置換基は、R13A、R13B、R13C、R13D等として区別されてもよく、R13A、R13B、R13C、R13D等の各々は、R13の定義の範囲内で定義され、任意に異なっている。
【0070】
「検出可能な薬剤」または「検出可能な部分」は、分光、光化学、生化学、免疫化学、化学、磁気共鳴イメージング、または他の物理的手段などの適切な手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な検出可能な薬剤としては、18F、32P、33P、45Ti、47Sc、52Fe、59Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、77As、86Y、90Yが挙げられる。89Sr、89Zr、94Tc、94Tc、99mTc、99Mo、105Pd、105Rh、111Ag、111In、123I、124I、125I、131I、142Pr、143Pr、149Pm、153Sm、154~1581Gd、161Tb、166Dy、166Ho、169Er、175Lu、177Lu、186Re、188Re、189Re、194Ir、198Au、199Au、211At、211Pb、212Bi、212Pb、213Bi、223Ra、225Ac、Cr、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、32P、フルオロフォア(例えば、蛍光色素)、電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAで一般的に使用される)、ビオチン、ジゴキシゲニン、常磁性分子、常磁性ナノ粒子、極小超常磁性酸化鉄(「USPIO」)ナノ粒子、USPIOナノ粒子凝集体、超常磁性酸化鉄(「SPIO」)ナノ粒子、SPIOナノ粒子凝集体、単結晶酸化鉄ナノ粒子、単結晶酸化鉄、ナノ粒子造影剤、リポソーム、またはガドリニウムキレート(「Gd-キレート」)分子を含む他の送達ビヒクル、ガドリニウム、放射性同位体、放射性核種(例えば、炭素-11、窒素-13、酸素-15、フッ素-18、ルビジウム-82)、フルオロデオキシグルコース(例えば、フッ素-18標識化)、任意のガンマ線放射性核種、ポジトロン放射性核種、放射性標識グルコース、放射性標識水、放射性標識アンモニア、バイオコロイド、マイクロバブル(例えば、アルブミン、ガラクトース、脂質、および/またはポリマーを含むマイクロバブル殻;空気、重量ガス(複数可)、ペルフルオロカーボン、窒素、オクタフルオロプロパン、ペルフレキサン脂質微粒子、ペルフルトレン等を含むマイクロバブルガスコア);ヨウ素化造影剤(例えば、イオヘキソール、イオジキサノール、イオパミドール、イオキシラン、イオプロミド、ジアトリゾエート、メトリゾエート、イオキサグラート)、硫酸バリウム、二酸化トリウム、金、金ナノ粒子、金ナノ粒子凝集体、フルオロフォア、2光子フルオロフォア、もしくはハプテンおよびタンパク質、あるいは例えば、ペプチドに放射標識を組み込むことによって検出可能にすることができる他の実体、または標的ペプチドと特異的に反応する抗体。検出可能な部分は、一価の検出可能な薬剤または別の組成物との結合を形成することができる検出可能な薬剤である。
【0071】
本開示の実施形態に従って撮像剤および/または標識剤として使用され得る放射性物質(例えば、放射性同位体)としては、18F、32P、33P、45Ti、47Sc、52Fe、59Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、77As、86Y、90Yが挙げられるが、これらに限定されない。89Sr、89Zr、94Tc、94Tc、99mTc、99Mo、105Pd、105Rh、111Ag、111In、123I、124I、125I、131I、142Pr、143Pr、149Pm、153Sm、154~1581Gd、161Tb、166Dy、166Ho、169Er、175Lu、177Lu、186Re、188Re、189Re、194Ir、198Au、199Au、211At、211Pb、212Bi、212Pb、213Bi、223Ra、および225Ac。本開示の実施形態に従って追加の撮像剤として使用され得る副磁気イオンとしては、遷移イオンおよびランタニド金属(例えば、21~29、42、43、44、または57~71の原子番号を有する金属)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの金属には、Cr、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuのイオンが含まれる。
【0072】
本開示の化合物の説明は、当業者に知られている化学結合の原理によって制限される。したがって、基がある数の置換基のうちの1つ以上によって置換され得る場合、かかる置換は、化学結合の原理に従うように、また本質的に不安定ではなく、かつ/または水性、中性、およびいくつかの既知の生理学的条件などの周囲条件下で不安定である可能性が高いものとして当業者に知られている化合物を生じさせるように、選択される。例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールは、当業者に既知の化学結合の原理に準じて、環ヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合することにより、本質的に不安定な化合物を回避する。
【0073】
当業者であれば、化合物または化合物属(例えば、本明細書に記載の属)の変数(例えば、部分またはリンカー)が、全ての価を充填したスタンドアロン化合物の名前または式によって説明されるとき、変数の未充填価(複数可)は、変数が使用される文脈によって指示されることを理解するであろう。例えば、本明細書に記載の化合物の変数が、単一の結合を通じて化合物の残りの部分に接続される(例えば、結合される)場合、その変数は、スタンドアロン化合物の一価形態(すなわち、未充填の価に起因して単一の結合を形成することができる)を表すと理解される(例えば、実施形態において、変数が「メタン」と命名されるが、変数が化合物の残りの部分に単一の結合によって結合されることが知られている場合、当業者は、その変数が実際にメタンの一価形態、すなわち、メチルまたは-CHであることを理解するであろう)。同様に、リンカー変数(例えば、本明細書に記載のL、L、またはL)に関して、当業者は、変数がスタンドアロン化合物の二価形態であることを理解するであろう(例えば、実施形態において、変数が「PEG」または「ポリエチレングリコール」に割り当てられているが、変数が化合物の残りの部分に2つの別個の結合によって接続されている場合、当業者は、変数がスタンドアロン化合物PEGの代わりにPEGの二価(すなわち、2つの未充填価を介して2つの結合を形成することができる)形態であることを理解するであろう。
【0074】
「核酸」とは、一本鎖、二本鎖、または多本鎖のいずれかの形態のヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド)およびそれらのポリマー、あるいはそれらの相補体を指す。「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「オリゴ」等の用語は、通常および慣習的な意味で、ヌクレオチドの線状配列を指す。「ヌクレオチド」という用語は、通常のおよび慣習的な意味で、単一のポリヌクレオチド単位、すなわちモノマーを指す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはそれらの修飾型であり得る。本明細書で企図されるポリヌクレオチドの例には、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖および二本鎖DNAとRNAの混合物を有するハイブリッド分子が含まれる。本明細書で企図される核酸、例えばポリヌクレオチドの例には、あらゆるタイプのRNA、例えば、mRNA、siRNA、miRNA、およびガイドRNA、ならびにあらゆる種類のDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、およびミニサークルDNA、ならびにそれらのあらゆる断片が含まれる。ポリヌクレオチドの文脈における「二本鎖」という用語は、通常のおよび慣習的な意味で、二本鎖性を指す。核酸は、直鎖または分岐鎖であり得る。例えば、核酸は、ヌクレオチドの直鎖であり得るか、または核酸は、例えば、核酸がヌクレオチドの1つ以上のアームまたは分岐を含むように分岐し得る。任意に、分岐核酸は、繰り返し分岐して、デンドリマー等の高次構造を形成する。
【0075】
例えばホスホチオエート骨格を有する核酸を含む核酸は、1つ以上の反応性部分を含み得る。本明細書で使用される場合、反応性部分という用語は、共有結合、非共有結合、または他の相互作用を介して別の分子、例えば、核酸またはポリペプチドと反応することができる任意の基を含む。例として、核酸は、共有結合、非共有結合、または他の相互作用を介してタンパク質またはポリペプチド上のアミノ酸と反応するアミノ酸反応性部分を含み得る。
【0076】
この用語はまた、既知のヌクレオチド類似体または修飾された骨格残基もしくは結合を含む核酸も包含し、合成、天然に存在する、および天然に存在せず、参照核酸と同様の結合特性を有し、参照ヌクレオチドと類似の方法で代謝される。そのような類似体の例としては、限定されないが、例えば、ホスホルアミデート、ホスホロジアミデート、ホスホロチオエート(リン酸中の酸素を二重結合硫黄で置換するホスホチオエートとしても知られる)、ホスホロジアミデート、ホスホノカルボン酸、ホスホノカルボキシレート、ホスホノ酢酸、ホスホノギ酸、メチルホスホネート、ボロンホスホネート、またはO-メチルホスホロアミダイト結合を含むホスホジエステル誘導体(Eckstein,Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,Oxford University Pressを参照)、ならびに5-メチルシチジンまたはプソイドウリジンなどの場合にはヌクレオチド塩基、およびペプチド核酸骨格と結合に対する修飾が挙げられる。他の類似体核酸としては、米国特許第5,235,033号および同第5,034,506号、ならびに第6章および第7章、ASCシンポジウムシリーズ580、Carbohydrate Modifications in Antisense Research,Sanghui&Cook,eds.に記載されているものを含む、陽性骨格、非イオン性骨格、修飾糖、および非リボース骨格(例えば、当該技術分野において公知のホスホロジアミデートモルホリノオリゴまたはロックド核酸(LNA))を有するものが挙げられる。1つ以上の炭素環式糖を含有する核酸もまた、核酸の1つの定義内に含まれる。リボース-ホスフェート骨格の修飾は、例えば、生理学的環境におけるそのような分子の安定性および半減期を増加させるために、またはバイオチップ上のプローブとして、様々な理由で行うことができる。天然に存在する核酸と類似体の混合物が作製され得るか、あるいは、異なる核酸類似体の混合物、および天然に存在する核酸と類似体の混合物が作製され得る。態様では、DNA中のヌクレオチド間結合は、ホスホジエステル、ホスホジエステル誘導体、または両方の組み合わせである。
【0077】
核酸は、非特異的配列を含み得る。本明細書で使用される場合、「非特異的配列」という用語は、任意の他の核酸配列に相補的であるように設計されていないか、または部分的に相補的であるにすぎない一連の残基を含む核酸配列を指す。例として、非特異的核酸配列は、細胞または生物と接触したときに阻害性核酸として機能しない核酸残基の配列である。
【0078】
本明細書で使用され得るように、「核酸」、「核酸分子」、「核酸オリゴマー」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸配列」、「核酸断片」、および「ポリヌクレオチド」という用語は、交換可能に使用され、限定されないが、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらの類似体、誘導体、もしくは修飾のいずれかの様々な長さを有し得る、一緒に共有結合したヌクレオチドのポリマー形態を含むことが意図される。異なるポリヌクレオチドは、異なる三次元構造を有してもよく、既知または未知の様々な機能を実行してもよい。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、遺伝子間DNA(限定されないが、複素色素DNAを含む)、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、配列の単離されたDNA、配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマーが挙げられる。本開示の方法に有用なポリヌクレオチドは、天然核酸配列およびその変異体、人工核酸配列、またはそのような配列の組み合わせを含み得る。
【0079】
ポリヌクレオチドは、典型的には、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、およびチミン(T)(ポリヌクレオチドがRNAである場合は、チミン(T)に対してウラシル(U))の4つのヌクレオチド塩基の特定の配列で構成される。したがって、「ポリヌクレオチド配列」という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット順の表現であり、代替として、この用語は、ポリヌクレオチド分子自体に適用され得る。このアルファベット表現は、中央処理ユニットを有するコンピュータ内のデータベースに入力することができ、機能ゲノム学および相同性検索などのバイオインフォマティクスアプリケーションに使用することができる。ポリヌクレオチドは、任意に、1つ以上の非標準ヌクレオチド(複数可)、ヌクレオチド類似体(複数可)、および/または修飾ヌクレオチドを含んでもよい。
【0080】
本明細書で使用される「相補体」という用語は、相補的なヌクレオチドまたはヌクレオチドの配列と塩基対合することができる、ヌクレオチド(例えば、RNAもしくはDNA)またはヌクレオチドの配列を指す。本明細書に記載され、当該技術分野において一般的に公知であるように、アデノシンの相補的(マッチング)ヌクレオチドは、チミジンであり、グアニジンの相補的(マッチング)ヌクレオチドは、シトシンである。したがって、相補体は、第2の核酸配列の対応する相補的ヌクレオチドと塩基対合するヌクレオチドの配列を含み得る。相補体のヌクレオチドは、第2の核酸配列のヌクレオチドと部分的にまたは完全に一致し得る。相補体のヌクレオチドが第2の核酸配列の各ヌクレオチドと完全に一致する場合、その相補体は、第2の核酸配列の各ヌクレオチドと塩基対を形成する。相補体のヌクレオチドが第2の核酸配列のヌクレオチドと部分的に一致する場合、相補体のヌクレオチドの一部のみが第2の核酸配列のヌクレオチドと塩基対を形成する。相補的配列の例には、コード配列および非コード配列が含まれ、非コード配列は、コード配列に対する相補的ヌクレオチドを含み、したがって、コード配列の相補体を形成する。相補的配列のさらなる例は、センスおよびアンチセンス配列であり、センス配列は、アンチセンス配列に対する相補的ヌクレオチドを含み、したがってアンチセンス配列の相補体を形成する。
【0081】
本明細書に記載されるように、配列の相補性は、部分的であり得、そのうちいくつかの核酸のみが塩基対合に従って一致するか、または完全な場合、全ての核酸が塩基対合に従って一致する。したがって、互いに相補的な2つの配列は、同一の特定の割合のヌクレオチド(すなわち、特定の領域にわたって約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性)を有し得る。
【0082】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と類似の方法で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるもの、ならびに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合したα炭素、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムと同じ塩基性化学構造を有する化合物を指す。そのような類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ塩基性化学構造を保持する。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸に類似の方法で機能する化学化合物を指す。「天然に存在しないアミノ酸」および「非天然アミノ酸」という用語は、天然に見出されないアミノ酸類似体、合成アミノ酸、およびアミノ酸模倣物を指す。
【0083】
アミノ酸は、本明細書において、それらの一般的に知られている3つの文字記号またはIUPAC-IUB生化学命名委員会によって推奨される1つの文字記号のいずれかによって参照され得る。ヌクレオチドは、同様に、それらの一般的に許容される単一文字コードによって参照され得る。
【0084】
「アミノ酸側鎖」という用語は、アミノ酸に含まれる機能的置換基を指す。例えば、アミノ酸側鎖は、天然に存在するアミノ酸の側鎖であり得る。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コード(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリン)によってコードされるもの、ならびに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸塩、およびO-ホスホセリンであるアミノ酸である。態様では、アミノ酸側鎖は、非天然アミノ酸側鎖であり得る。態様では、アミノ酸側鎖は、H、
【化9】
である。
実施形態では、非天然アミノ酸側鎖は、
【化10】
である。
【0085】
「非天然アミノ酸側鎖(non-natural amino acid side chain)」または「非天然アミノ酸側鎖(unnatural amino acid side chain)」または「Uaa」という用語は、天然に存在するアミノ酸、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合したα炭素と同じ塩基性化学構造を有する化合物の機能的置換基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム、アリルアラニン、2-アミノイソブトリル酸を指す。非天然アミノ酸は、天然に存在するか、または化学合成されるかのいずれかである非タンパク質原性アミノ酸である。そのような類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ塩基性化学構造を保持する。非限定的な例としては、エキソ-シス-3-アミノビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-カルボン酸塩酸塩、シス-2-アミノシクロヘプタンカルボン酸塩酸塩、シス-6-アミノ-3-シクロヘキセン-1-カルボン酸塩酸塩、シス-2-アミノ-2-メチルシクロヘキサンカルボン酸塩酸塩、シス-2-アミノ-2-メチルシクロペンタンカルボン酸塩酸塩、2-(Boc-アミノメチル)安息香酸、2-(Boc-アミノ)オクタン二酸、Boc-4,5-デヒドロ-Leu-OH(ジシクロヘキシルアンモニウム)、Boc-4-(Fmoc-アミノ)-L-フェニルアラニン、Boc-β-ホモピル-OH、Boc-(2-インダニル)-Gly-OH、4-Boc-3-モルホリン酢酸、4-Boc-3-モルホリン酢酸、Boc-ペンタフルオロ-D-フェニルアラニン、Boc-ペンタフルオロ-L-フェニルアラニン、Boc-Phe(2-Br)-OH、Boc-Phe(4-Br)-OH、Boc-D-Phe(4-Br)-OH、Boc-D-Phe(3-Cl)-OH、Boc-Phe(4-NH2)-OH、Boc-Phe(3-NO2)-OH、Boc-Phe(3,5-F2)-OH、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-(3,4-ジメトキシフェニル)酢酸プルム、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-(2-フルオロフェニル)酢酸プルム、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-(3-フルオロフェニル)酢酸プルム、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-(4-フルオロフェニル)酢酸プルム、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-(4-メトキシフェニル)酢酸プルム、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-フェニル酢酸プルム、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-(3-ピリジル)酢酸プルム、2-(4-Boc-ピペラジノ)-2-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]酢酸プルム、Boc-β-(2-キノリル)-Ala-OH、N-Boc-1,2,3,6-テトラヒドロ-2-ピリジンカルボン酸、Boc-β-(4-チアゾリル)-Ala-OH、Boc-β-(2-チエニル)-D-Ala-OH、Fmoc-N-(4-Boc-アミノブチル)-Gly-OH、Fmoc-N-(2-Boc-アミノエチル)-Gly-OH、Fmoc-N-(2,4-ジメトキシベンジル)-Gly-OH、Fmoc-(2-インダニル)-Gly-OH、Fmoc-ペンタフルオロ-L-フェニルアラニン、Fmoc-Pen(Trt)-OH、Fmoc-Phe(2-Br)-OH、Fmoc-Phe(4-Br)-OH、Fmoc-Phe(3,5-F2)-OH、Fmoc-β-(4-チアゾリル)-Ala-OH、Fmoc-β-(2-チエニル)-Ala-OH、4-(ヒドロキシメチル)-D-フェニルアラニンが挙げられる。実施形態では、非天然アミノ酸は、以下の式:
【化11】
を有するフルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)である。
【0086】
「保存的に修飾された変異形」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、「保存的に修飾された変異形」は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指す。遺伝子コードの変性のため、いくつかの核酸配列は、任意の所与のタンパク質をコードするであろう。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって指定される全ての位置において、コドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載される対応するコドンのいずれかに変更することができる。そのような核酸変異は、保存的に修飾された変異のうちの1つの種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書の全ての核酸配列はまた、核酸の全ての可能なサイレント変異を説明する。当業者は、核酸中の各コドン(通常はメチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して機能的に同一の分子を得ることができることを認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、各記載の配列において暗黙的である。
【0087】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列中の単一のアミノ酸またはわずかな割合のアミノ酸を変化させる、付加する、または欠失する核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列への個々の置換、欠失、または付加が、「保存的に修飾された変異形」であり、その変化は、化学的に類似するアミノ酸でのアミノ酸の置換をもたらすことを認識するであろう。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換テーブルは、当該技術分野において周知である。そのような保存的修飾変異形は、本開示の多型変異形、種間同族体、および対立遺伝子に加えられ、これらを除外しない。
【0088】
以下の8つの基は各々、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:(1)アラニン(A)、グリシン(G);(2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);(4)アルギニン(R)、リジン(K);(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);(7)セリン(S)、トレオニン(T);および(8)システイン(C)、メチオニン(M)。(例えば、Creighton,Proteins(1984)を参照)。
【0089】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書で交換可能に使用され、このポリマーは、実施形態ではアミノ酸から構成されない部分に共役されてもよい。これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の合成化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。「融合タンパク質」は、単一の部分として組み換え発現される2つ以上の別個のタンパク質配列をコードするキメラタンパク質を指す。
【0090】
アミノ酸またはヌクレオチド塩基の「位置」は、N末端(または5´末端)に対するその位置に基づいて、参照配列中の各アミノ酸(またはヌクレオチド塩基)を順次同定する数によって示される。最適なアラインメントを決定する際に考慮に入れなければならない欠失、挿入、切断、融合等のため、一般に、N末端から単にカウントすることによって決定される試験配列中のアミノ酸残基数は、必ずしも参照配列中のその対応する位置の数と同じではない。例えば、変異形が整列された参照配列に対して欠失を有する場合、欠失部位における参照配列中の位置に対応するアミノ酸が変異形中に存在しないであろう。整列された参照配列に挿入がある場合、その挿入は、参照配列内の番号付けされたアミノ酸位置に対応しない。切断または融合の場合、対応する配列中の任意のアミノ酸に対応しない参照配列または整列された配列のいずれかのアミノ酸の伸長が存在し得る。
【0091】
所与のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列の番号付けの文脈で使用される場合、「に関連する番号付け」または「に対応する」という用語は、所与のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列が参照配列と比較される場合、特定の参照配列の残基の番号付けを指す。
【0092】
タンパク質中のアミノ酸残基は、それがタンパク質内で所与の残基と同じ必須構造位置を占めるときに、所与の残基に「対応する」。例えば、選択された残基が、PylRSタンパク質中のAla302と同じ本質的な空間的関係または他の構造的関係を占める場合、選択されたタンパク質中の選択された残基は、PylRSタンパク質のAla302に対応する。実施形態では、選択されたタンパク質が、PylRSタンパク質で最大の相同性のために整列される場合、Ala302と整列する整列された選択されたタンパク質における位置は、Ala302に対応すると言われている。一次配列アラインメントの代わりに、例えば、選択されたタンパク質の構造が、PylRSおよび比較される全体的構造と最大限に一致するように整列される場合、三次元構造アラインメントも使用され得る。この場合、構造モデルにおいてAla302と同じ必須位置を占めるアミノ酸は、Ala302残基に対応すると言われる。
【0093】
「配列同一性パーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列した配列を比較することによって決定され、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適アラインメントのための参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、付加または欠失(すなわちギャップ)を含み得る。パーセンテージは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列に存在する位置数を決定して、マッチした位置数を出し、そのマッチした位置数を比較のウィンドウにおける位置の総数で割り、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。
【0094】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における「同一の」または「同一性」の割合という用語は、下記のデフォルトパラメータを用いたBLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用するか、マニュアルアラインメントおよび目視検査によって測定されるように、同一であるか、または同一である特定のパーセンテージ(すなわち、比較ウィンドウまたは指定された領域に関して最大に対応するように比較およびアラインメントを行った場合に、特定の領域について、約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性)のアミノ酸残基またはヌクレオチドを有する、2つ以上の配列または部分配列を指す(例えば、NCBIウェブサイトncbi.nlm.nih.gov/BLAST/等を参照)。次いで、そのような配列は、「実質的に同一」であると言われる。この定義はまた、試験配列の相補物を指すか、またはこれに適用することができる。定義はまた、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有するものを含む。以下に説明するように、好ましいアルゴリズムは、ギャップ等を計算することができる。好ましくは、同一性は、少なくとも約25アミノ酸長またはヌクレオチド長の領域にわたり、またより好ましくは50~100アミノ酸長またはヌクレオチド長の領域にわたって存在する。
【0095】
本明細書で使用される「生体分子」という用語は、例えば、タンパク質、炭水化物、脂質、および核酸などの大分子、ならびに例えば、一次代謝産物および二次代謝産物などの小分子を指す。態様では、生体分子という用語は、タンパク質を指す。態様では、生体分子という用語は、核酸を指す。態様では、生体分子という用語は、炭水化物を指す。
【0096】
「生体分子部分」という用語は、生体分子を形成するペプチジル部分、炭水化物部分、脂質部分、または核酸部分を指す。
【0097】
本明細書で使用される「ペプチジル部分」という用語は、生体分子または生体分子コンジュゲートの一部を形成し得るタンパク質、タンパク質断片、またはペプチドを指す。態様では、ペプチジル部分は、生体分子(例えば、タンパク質)の一部を形成する。態様では、ペプチジル部分は、生体分子(例えば、タンパク質)コンジュゲートの一部を形成する。ペプチジル部分はまた、追加の化学部分(例えば、追加のR置換基)で置換されてもよい。
【0098】
本明細書で使用される「炭水化物部分」という用語は、炭水化物、例えば、生体分子または生体分子コンジュゲートの一部を形成し得る、ポリヒドロキシアルデヒド、ケトン、アルコール、酸、それらの単純誘導体、およびアセタール型の結合を有するそれらのポリマーを指す。態様では、炭水化物部分は、生体分子の一部を形成する。態様では、炭水化物部分は、生体分子コンジュゲートの一部を形成する。炭水化物部分はまた、追加の化学部分(例えば、追加のR置換基)で置換されてもよい。
【0099】
本明細書で使用される「核酸部分」という用語は、例えば、生体分子または生体分子コンジュゲートの一部を形成し得るDNAおよびRNAを指す。態様では、核酸部分は、生体分子の一部を形成する。態様では、核酸部分は、生体分子コンジュゲートの一部を形成する。核酸部分はまた、追加の化学部分(例えば、追加のR置換基)で置換されてもよい。
【0100】
「ピロリシル-tRNA合成酵素」という用語は、ピロリシル-tRNA合成酵素活性を有する酵素(その同族体、異性体、および機能的断片を含む)を指す。ピロリシル-tRNA合成酵素は、α-アミノ酸ピロリジンを同族tRNA(tRNApyl)に結合させるのに必要な反応を触媒するアミノアシル-tRNA合成酵素であり、それによってアンバー停止コドン(すなわち、UAG)でのタンパク質産生中にピロリジンの組み込みを可能にする。この用語は、(例えば、野生型ピロリシル-tRNA合成酵素と比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、もしくは100%の活性の範囲内の)ピロリシル-tRNA合成酵素活性を維持するピロリシル-tRNA、またはその変異形、同族体、もしくは異性体の任意の組み換えまたは天然に存在する形態を含む。態様では、変異形、同族体、または異性体は、天然に存在するピロリシル-tRNA合成酵素と比較して、配列全体または配列の一部(例えば、50、100、150、または200の連続するアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有する。態様では、ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号3に示される配列を含む。態様では、ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号3に示される配列である。
【0101】
「突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素」または「突然変異体PylRS」という用語は、配列番号3に示されるMethanosarcina mazeitピロリシル-tRNA合成酵素の野生型アミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する、任意のピロリシル-tRNA合成酵素を指す。態様では、「突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素」は、tRNApylへのフルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)の結合を触媒する任意のピロリシル-tRNA合成酵素を指す。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号1に示される配列を含む。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号1に示される配列である。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号2に示される配列によってコードされる。態様では、「突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素」は、「ピロリシル-tRNA合成酵素」と称され、当業者は、野生型配列番号3との比較に基づいて、ピロリシル-tRNA合成酵素が突然変異体であるかどうかを容易に認識するであろう。
【0102】
「tRNAPyl」および「
【化12】
」(すなわち、tRNA(上付き文字Pyl)(下付き文字CUA))という用語はいずれも、鎖内塩基対合を介して折り畳んで、特定のアミノ酸(例えば、ピロリジン、FSY)を担持し、タンパク質合成中にmRNA上のその対応するコドン(すなわち、tRNAのアンチコドンに相補的なもの)に一致する特徴的なクローバーリーフ構造を形成する約50~約100ヌクレオチドを含有する、一本鎖RNA分子を指す。tRNAPylでは、アンチコドンは、CUAである。アンチコドンCUAは、アンバー停止コドンUAGに相補的である。tRNAPylの略語「Pyl」は、ピロリジンを表し、tRNAPylの「CUA」は、そのアンチコドンCUAを指す。態様では、tRNAPylは、FSYに結合している。態様では、tRNAPylは、約70~約90ヌクレオチドを含有する一本鎖RNA分子を指す。
【0103】
本明細書で使用される「基質結合部位」という用語は、基質と一時的な結合または相互作用を形成する酵素活性部位に位置する残基を指す。態様では、ピロリシル-tRNA合成酵素の基質結合部位は、アミノ酸基質と一時的な結合または相互作用を形成するピロリシル-tRNA合成酵素の活性部位に位置する残基を指す。態様では、ピロリシル-tRNA合成酵素の基質結合部位は、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位のアラニン、305位のロイシン、306位のチロシン、309位のロイシン、322位のイソロイシン、346位のアスパラギン、348位のシステイン、384位のチロシン、401位のバリン、および417位のトリプトファンのうちの1つ以上の残基を含む。
【0104】
「プラスミド」、「ベクター」、または「発現ベクター」という用語は、遺伝子の発現に必要な遺伝子および/または調節エレメントをコードする核酸分子を指す。プラスミドからの遺伝子の発現は、シスまたはトランスで生じ得る。遺伝子がシスで発現される場合、遺伝子および調節エレメントは、同じプラスミドによってコードされる。トランスにおける発現とは、遺伝子および調節エレメントが別個のプラスミドによってコードされる場合を指す。
【0105】
「複合体」という用語は、2つ以上の成分を含む組成物を指し、成分は一緒に結合して機能的単位を作製する。態様では、本明細書に記載の複合体は、本明細書に記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素およびアミノ酸基質(例えば、FSY)を含む。態様では、本明細書に記載の複合体は、本明細書に記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素およびtRNA(例えば、tRNAPyl)を含む。態様では、本明細書に記載の複合体は、本明細書に記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素、アミノ酸基質(例えば、FSY)、およびtRNA(例えば、tRNAPyl)を含む。態様では、本明細書に記載の複合体は、本明細書に記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素、アミノ酸基質(例えば、FSY)、FSYを含有するポリペプチド、およびtRNA(例えば、tRNAPyl)からなる群から選択される少なくとも2つの成分を含む。
【0106】
「トランスフェクション」、「形質導入」、「トランスフェクトする」、または「形質導入する」という用語は、交換可能に使用することができ、核酸分子またはタンパク質を細胞に導入するプロセスとして定義される。核酸は、非ウイルスまたはウイルスベースの方法を使用して細胞に導入される。核酸分子は、完全なタンパク質またはその機能部分をコードする遺伝子配列であり得る。非ウイルス性トランスフェクション方法としては、核酸分子を細胞に導入するために、ウイルスDNAまたはウイルス粒子を送達系として使用しない任意の適切なトランスフェクション方法が挙げられる。例示的な非ウイルストランスフェクション方法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポソームトランスフェクション、ヌクレオフェクション、ソノポレーション、熱ショックによるトランスフェクション、マグネトフェクション、およびエレクトロポレーションが挙げられる。態様では、核酸分子は、当該技術分野で周知である標準手順に従って、エレクトロポレーションを使用して細胞内に導入される。ウイルスベースのトランスフェクション方法については、本明細書に記載の方法において、任意の有用なウイルスベクターを使用してもよい。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、およびアデノ関連ウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。態様では、核酸分子は、当該技術分野で周知の標準手順に従って、レトロウイルスベクターを使用して細胞内に導入される。「トランスフェクション」または「形質導入」という用語はまた、タンパク質を外部環境から細胞に導入することを指す。典型的には、タンパク質の形質導入またはトランスフェクションは、対象となるタンパク質への細胞膜を交差させることができるペプチドまたはタンパク質の結合に依存する。例えば、Ford et al.(2001)Gene Therapy 8:1-4およびProchiantz(2007)Nat.Methods 4:119-20を参照されたい。
【0107】
「単離された」という用語は、核酸またはタンパク質に適用される場合、核酸またはタンパク質が、それが天然状態で会合する他の細胞成分を本質的に含まないことを示す。それは、例えば、均質な状態であってもよく、乾燥溶液または水溶液のいずれかであってもよい。純度および均質性は、典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技法を使用して決定される。調製物中に存在する主要種であるタンパク質は、実質的に精製される。
【0108】
「接触させる」とは、その平易な通常の意味に従って使用され、少なくとも2つの異なる種(例えば、生体分子、生体分子部分、または細胞を含む化学化合物)が、反応、相互作用、または物理的に接触するのに十分近位になることを可能にするプロセスを指す。しかしながら、得られた反応産物は、添加された試薬間の反応から、または反応混合物中で産生され得る添加された試薬のうちの1つ以上からの中間体から直接産生され得る。
【0109】
「接触させる」という用語は、2つの種が反応、相互作用、または物理的に接触するのを可能にすることを含むことができ、2つの種は、本明細書に記載の生体分子および/または生体分子部分であり得る。態様では、接触させるとは、本明細書に記載の2つの生体分子部分が相互作用するのを可能にすることを含み、生体分子部分は、共有結合してコンジュゲートを形成する。
【0110】
本明細書で使用される場合、「バイオコンジュゲート反応性部分」および「バイオコンジュゲート反応性基」という用語は、バイオコンジュゲート反応性基の原子または分子間の会合の結果として、バイオコンジュゲート(例えば、共有結合性リンカー)を形成することができる部分または基を指す。会合は、直接的または間接的であり得る。例えば、本明細書に提供される第1のバイオコンジュゲート反応基(例えば、-NH2、-COOH、-N-ヒドロキシスクシンイミド、もしくは-マレイミド)と第2のバイオコンジュゲート反応基(例えば、スルフヒドリル、硫黄含有アミノ酸、アミン、アミノ酸を含有するアミン側鎖、もしくはカルボキシレート)との間のコンジュゲートは、例えば、共有結合またはリンカー(例えば、第2のリンカーの第1のリンカー)によって直接的であり得るか、あるいは例えば、非共有結合(例えば、静電相互作用(例えば、イオン結合、水素結合、ハロゲン結合)、ファンデルワールス相互作用(例えば、双極子、双極子誘起双極子、ロンドン分散)、環スタッキング(パイ効果)、疎水性相互作用等)によって間接的であり得る。態様では、求核置換(例えば、アシルハロゲン化物、活性エステルとのアミンおよびアルコールの反応)、求電子置換(例えば、エナミン反応)、ならびに炭素-炭素および炭素-ヘテロ原子多重結合への付加(例えば、マイケル反応、Diels-Alder付加)を含むがこれらに限定されない、バイオコンジュゲート化学(すなわち、2つのバイオコンジュゲート反応基の会合)を使用して、バイオコンジュゲートまたはバイオコンジュゲートリンカーが形成される。これらおよび他の有用な反応は、例えば、March,Advanced Organic Chemistry,3rd Ed.,John Wiley&Sons,New York,1985、Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,1996、およびFeeney et al.,Modification of Proteins;Advances in Chemistry Series,Vol.198,American Chemical Society,Washington,D.C.,1982において論じられている。態様では、第1のバイオコンジュゲート反応性基(例えば、マレイミド部分)は、第2のバイオコンジュゲート反応性基(例えば、スルフヒドリル)に共有結合している。態様では、第1のバイオコンジュゲート反応性基(例えば、ハロアセチル部分)は、第2のバイオコンジュゲート反応性基(例えば、スルフヒドリル)に共有結合している。態様では、第1のバイオコンジュゲート反応性基(例えば、ピリジル部分)は、第2のバイオコンジュゲート反応性基(例えば、スルフヒドリル)に共有結合している。態様では、第1のバイオコンジュゲート反応性基(例えば、-N-ヒドロキシスクシンイミド部分)は、第2のバイオコンジュゲート反応性基(例えば、アミン)に共有結合している。態様では、第1のバイオコンジュゲート反応性基(例えば、マレイミド部分)は、第2のバイオコンジュゲート反応性基(例えば、スルフヒドリル)に共有結合している。態様では、第1のバイオコンジュゲート反応性基(例えば、-スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド部分)は、第2のバイオコンジュゲート反応性基(例えば、アミン)に共有結合している。
【0111】
本明細書におけるバイオコンジュゲート化学に使用される有用なバイオコンジュゲート反応性部分としては、例えば、以下が挙げられる。(a)N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、N-ヒドロキシベンズトリアゾールエステル、酸ハロゲン化物、アシルイミダゾール、チオエステル、p-ニトロフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニル、および芳香族エステルを含むがこれらに限定されないカルボキシル基、およびそれらの様々な誘導体;(b)エステル、エーテル、アルデヒド等に変換することができる、ヒドロキシル基;(c)ハロゲン化物が後に、例えばアミン、カルボキシレートアニオン、チオールアニオン、カルバニオン、またはアルコキシドイオンなどの求核基で置換され得、それによってハロゲン原子の部位での新しい基の共有結合をもたらす、ハロアルキル基;(d)例えば、マレイミドまたはマレイミド基などのDiels-Alder反応に関与することができる、ジエノフィル基;(e)例えばイミン、ヒドラゾン、セミカルバゾンまたはオキシムなどのカルボニル誘導体の形成を介して、またはグリニャール付加またはアルキルリチウム付加などの機序を介して、後続の誘導体化が可能になるようなアルデヒドまたはケトン基;(f)例えば、スルホンアミドを形成するアミンとの後続反応のためのハロゲン化スルホニル基;(g)ジスルフィドに変換することができるか、アシルハロゲン化物と反応することができるか、金などの金属に結合することができるか、またはマレイミドと反応することができる、チオール基;(h)例えばアシル化、アルキル化、または酸化することができる、アミンまたはスルフヒドリル基(例えばシステイン中に存在する);(i)例えば、付加環化、アシル化、マイケル付加等を受けることができる、アルケン;(j)例えば、アミンおよびヒドロキシル化合物と反応することができる、エポキシド;(k)ホスホラミダイトおよび核酸合成に有用な他の標準的な官能基;(l)金属酸化ケイ素結合;(m)例えば、リン酸ジエステル結合を形成する反応性リン基(例えば、ホスフィン)への金属結合;(n)銅触媒付加環化クリック化学を使用してアルキンに結合したアジド;(o)ビオチンコンジュゲートは、アビジンまたはストレプトビジンと反応して、アビジン-ビオチン複合体またはストレプトアビジン-ビオチン複合体を形成することができる。
【0112】
バイオコンジュゲート反応性基は、それらが本明細書に記載のコンジュゲートの化学的安定性に関与しない、または干渉しないように選択することができる。あるいは、反応性官能基は、保護基の存在によって架橋反応に関与することから保護することができる。態様では、バイオコンジュゲートは、マレイミドなどの不飽和結合とスルフヒドリル基との反応から誘導される分子実体を含む。
【0113】
「フルオロサルフェート-L-チロシン」および「FSY」という用語は、構造:
【化13】
を有する非天然アミノ酸を指す。FSYは、式:
【化14】
のアミノ酸側鎖を含む。
【0114】
「FSY生体分子」という用語は、FSY非天然アミノ酸および/またはそのアミノ酸側鎖を含む生体分子を指す。
【0115】
「生体分子コンジュゲート」という用語は、式:
【化15】
のバイオコンジュゲートリンカーを含む任意の生体分子を指す。
【0116】
「FSYタンパク質」という用語は、FSY非天然アミノ酸および/またはそのアミノ酸側鎖を含むタンパク質を指す。
【0117】
「タンパク質コンジュゲート」という用語は、式:
【化16】
のバイオコンジュゲートリンカーを含む任意のタンパク質を指す。
【0118】
「硫黄-フッ化物交換反応」または「SuFEx」という用語は、例えば、Dong et al,Angewandte Chemie,53(36):9340-9448(2014)、Wang et al,J.Am.Chem.Soc.,140(15):4995-4999(2018)によって詳細に記載されるクリック化学のタイプを指し、本明細書の実施例に記載のとおりである。「近接により可能になる」SuFExという用語は、反応性種が互いに近位にあるとき、すなわち、SuFEx反応が生じるのに十分に空間的に近いときに生じる硫黄-フッ化物交換反応を指す。近接性は、単一の生体分子(例えば、タンパク質)内で、または2つの異なる生体分子(例えば、タンパク質)間で生じ得る。当業者は、反応性種が、反応(例えば、バイオコンジュゲート、式(A)、(B)、もしくは(C)の部分、または式(I)、(II)、もしくは(III)のタンパク質を形成する、FSYとリジン、ヒスチジン、またはチロシンとの間の硫黄-フッ化物交換反応)が生じるのに十分に近位にあるかどうかを容易に決定することができる。
【0119】
「分子間リンカー」という用語は、2つの生体分子間の連結基を指す。例えば、式(A)、(B)、または(C)の部分が分子間リンカーである場合、次いで、Rペプチジル部分は、第1のタンパク質であり、Rのペプチジル部分は、第2のタンパク質であり、それにより第1のタンパク質および第2のタンパク質は、式(A)、(B)、または(C)の部分を介して共有結合する。態様では、第1のタンパク質および第2のタンパク質は、例えば、同じアミノ酸配列を有する2つのタンパク質間で分子間リンカーを提供する、同じタンパク質であり得る。態様では、第1のタンパク質および第2のタンパク質は、例えば、ホルモンおよびホルモンの受容体などの2つの異なるタンパク質間に分子間リンカーを提供する、異なるタンパク質であり得る。
【0120】
「分子内リンカー」という用語は、生体分子内の連結基を指す。例えば、式(A)、(B)、または(C)の部分が分子内リンカーである場合、Rのペプチジル部分およびRのペプチジル部分は、同じタンパク質中にある。分子内リンカーを有する化合物は、分子内でコンジュゲートされた生体分子コンジュゲートまたは分子内でコンジュゲートされた生体分子タンパク質とも称され得る。
【0121】
生体分子および生体分子コンジュゲート
本明細書では、潜在的な生体反応性非天然アミノ酸と天然に存在するアミノ酸との相互作用を通じて形成される生体分子および生体分子コンジュゲートを提供する。潜在的な生体反応性非天然アミノ酸であるフルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)は、クリック化学反応(例えば、硫黄-フッ化物交換反応(SuFEx))を受けることによって、近位標的アミノ酸残基(例えば、リジン、ヒスチジン、チロシン)との共有結合の形成を促進する。例えば、FSYは、天然に存在するタンパク質中のアミノ酸に挿入されてもよく、または置き換えられてもよく、それによってタンパク質自体上に、またはそれが天然に相互作用するタンパク質上に、近位に位置付けられた標的アミノ酸残基(例えば、リジン、ヒスチジン、チロシン)と共有結合を形成する能力をタンパク質に付与する。FSYは、少なくとも部分的に、その細胞に対して非毒性であることに起因して、インビトロおよびインビボ条件の両方でタンパク質間またはタンパク質内の共有結合の形成を促進するために使用され得る。したがって、潜在的な生体反応性非天然アミノ酸FSYは、生体分子(例えば、タンパク質、炭水化物、核酸)を共有結合して生体分子コンジュゲートを形成するのに有用である。態様では、潜在的な生体反応性非天然アミノ酸FSYは、単一の生体分子(例えば、タンパク質)内の生体分子部分(例えば、ペプチジル部分)を共有結合させるのに有用である。態様では、潜在的な生体反応性非天然アミノ酸FSYは、異なる生体分子中の生体分子部分(例えば、ペプチジル部分)を共有結合的に連結するのに有用である(例えば、2つのタンパク質を共有結合的に連結する)。
【0122】
本明細書に示されるように、FSYは、潜在的な生体反応性非天然アミノ酸として、前述の生体反応性非天然アミノ酸と比較して優れた化学機能性(すなわち、優れた特性)を示している。例えば、FSYは、細胞内で安定しており、非毒性であり、非反応性であるが、標的残基に対して近位に配置されると、細胞条件下で反応性になる。FSYは、生理学的条件下で、タンパク質内およびタンパク質間の近接により可能になるSuFEx反応を介して、優れた選択性でリジン、ヒスチジン、およびチロシンと特異的に反応することができる。細胞内で非毒性であり、2個以上のアミノ酸残基と反応することができる生体反応性の非天然アミノ酸は報告されていない。
【0123】
1つ以上の潜在的な生体反応性非天然アミノ酸を含む生体分子が、本明細書に提供される。態様では、生体分子は、タンパク質、核酸、または炭水化物である。態様では、生体分子は、タンパク質である。態様では、潜在的な生体反応性非天然アミノ酸は、式:
【化17】
を有するフルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)である。態様では、生体分子は、FYS非天然アミノ酸を含むタンパク質である。態様では、生体分子は、式:
【化18】
で表されるFYSアミノ酸側鎖を含むタンパク質である。態様では、タンパク質は、リジン、ヒスチジン、チロシン、またはそれらの2つ以上の組み合わせの近位にあるFSYを含む。態様では、タンパク質は、リジンの近位にあるFSYを含む。態様では、タンパク質は、ヒスチジンの近位にあるFSYを含む。態様では、タンパク質は、チロシンの近位にあるFSYを含む。態様では、「近位」とは、FSYおよびリジン、ヒスチジン、またはチロシンが、SuFEx反応が正常に生じるために互いに十分に近接していることを意味する。態様では、「近位」とは、FSYが、リジン、ヒスチジン、またはチロシンの1~20アミノ酸内にあることを意味する。態様では、「近位」とは、FSYが、リジン、ヒスチジン、またはチロシンの1~15アミノ酸内にあることを意味する。態様では、「近位」とは、FSYが、リジン、ヒスチジン、またはチロシンの1~10アミノ酸内にあることを意味する。態様では、「近位」とは、FSYが、リジン、ヒスチジン、またはチロシンの1~9アミノ酸以内にあることを意味する。態様では、「近位」とは、FSYが、リジン、ヒスチジン、またはチロシンの1~8アミノ酸内にあることを意味する。態様では、「近位」とは、FSYが、リジン、ヒスチジン、またはチロシンの1~7アミノ酸内にあることを意味する。態様では、「近位」とは、FSYが、リジン、ヒスチジン、またはチロシンの1~6アミノ酸以内にあることを意味する。態様では、「近位」とは、FSYが、リジン、ヒスチジン、またはチロシンの1~5アミノ酸以内にあることを意味する。態様では、「近位」とは、FSYが、リジン、ヒスチジン、またはチロシンの1~4アミノ酸内にあることを意味する。態様では、「近位」とは、FSYが、リジン、ヒスチジン、またはチロシンの1~3アミノ酸内にあることを意味する。態様では、「近位」とは、FSYが、リジン、ヒスチジン、またはチロシンの1~2アミノ酸内にあることを意味する。態様では、「近位」とは、FSYが、リジン、ヒスチジン、またはチロシンに隣接していることを意味する。態様では、FSYおよびリジン、ヒスチジン、またはチロシンは、タンパク質のα鎖にある。態様では、FSYおよびリジン、ヒスチジン、またはチロシンは、タンパク質のβ鎖にある。態様では、タンパク質は、ホルモンである。態様では、タンパク質は、ホルモン受容体である。
【0124】
バイオコンジュゲートリンカーを介して第2の生体分子部分にコンジュゲートされた第1の生体分子部分を含む生体分子コンジュゲートが本明細書に提供され、バイオコンジュゲートリンカーは、式:
【化19】
を有する。態様では、第1の生体分子部分および第2の生体分子部分は、各々独立して、ペプチジル部分である。態様では、生体分子コンジュゲートは、タンパク質コンジュゲートである。態様では、生体分子コンジュゲートは、タンパク質コンジュゲートであり、バイオコンジュゲートリンカーは、分子内リンカーである。態様では、タンパク質コンジュゲートは、複数の分子内リンカーを含む。態様では、生体分子コンジュゲートは、タンパク質コンジュゲートであり、バイオコンジュゲートリンカーは、分子間リンカーである。態様では、タンパク質コンジュゲートは、複数の分子間リンカーを含む。態様では、タンパク質コンジュゲートは、分子内リンカーおよび分子間リンカーを含む。
【0125】
実施形態では、生体分子コンジュゲートは、式:R-L-A-X-L-Rを有し、式中、Aは、バイオコンジュゲートリンカーであり、Rは、第1の生体分子部分であり、Rは、第2の生体コンジュゲート部分であり、Lは、結合または第1の共有結合リンカーであり、Lは、第2の共有結合リンカーの結合であり、
は、-NR-、-O-、-S-、または
【化20】
であり、環Aは、置換もしくは非置換ヘテロアリーレンまたは置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレンであり、A中の窒素は、バイオコンジュゲートリンカーに結合している。Rは、水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、または置換もしくは非置換ヘテロアリールである。
【0126】
実施形態では、Lは、結合、-S(O)-、-NR3A-、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)NR3A-、-NR3AC(O)-、-NR3AC(O)NR3B-、-C(O)O-、-OC(O)-、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換アリーレン、または置換もしくは非置換ヘテロアリーレンである。実施形態では、Lは、結合、-S(O)-、-NR4A-、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)NR4A-、-NR4AC(O)-、-NR4AC(O)NR4B-、-C(O)O-、-OC(O)-、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換アリーレン、または置換もしくは非置換ヘテロアリーレンである。R3A、R3B、R4A、およびR4Bは、独立して、水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アリーリル、または置換もしくは非置換ヘテロアリーリルである。
【0127】
実施形態では、Xは、-NR-、-O-、-S-、または
【化21】
、であり、環Aは、置換もしくは非置換ヘテロアリーレンまたは置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレンである。態様では、Xは、-NRである-。態様では、Xは、-O-である。態様では、Xは、-S-である。態様では、Xは、
【化22】
であり、環Aは、置換もしくは非置換ヘテロアリーレンまたは置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレンである。態様では、環Aは、置換または非置換ヘテロアリーレンである。態様では、環Aは、置換または非置換ヘテロシクロアルキレンである。態様では、環Aは、非置換ヘテロアリーレンである。態様では、環Aは、非置換ヘテロシクロアルキレンである。態様では、環Aは、置換ヘテロシクロアルキレン(例えば、3~8員、3~6員、4~6員、4~5員、または5~6員)である。態様では、環Aは、非置換ヘテロシクロアルキレン(例えば、3~8員、3~6員、4~6員、4~5員、または5~6員)である。態様では、環Aは、置換もしくは非置換ヘテロアリーレン(例えば、5~10員、5~9員、または5~6員)である。態様では、環Aは、置換ヘテロアリーレン(例えば、5~10員、5~9員、または5~6員)である。態様では、環Aは、非置換ヘテロアリーレン(例えば、5~10員、5~9員、または5~6員)である。
【0128】
実施形態では、Rは、水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、または置換もしくは非置換ヘテロアリールである。態様では、Rは、水素である。
【0129】
実施形態では、Rは、水素、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換アルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換ヘテロアルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換シクロアルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換ヘテロシクロアルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換アリール、あるいは置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換ヘテロアリールである。
【0130】
実施形態では、Rは、水素、置換もしくは非置換(例えば、C~C20、C~C10、C~C)アルキル、置換もしくは非置換(例えば、2~20員、2~10員、2~5員)ヘテロアルキル、置換もしくは非置換(例えば、C~C、C~C、C~C)シクロアルキル、置換もしくは非置換(例えば、3~8員、3~6員、3~5員)ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換(例えば、C~C10、C~C、C~C)アリール、または置換もしくは非置換(例えば、5~10員、5~8員、5~6員)ヘテロアリールである。
【0131】
実施形態では、Rは、水素、非置換(例えば、C~C20、C~C10、C~C)アルキル、非置換(例えば、2~20員、2~10員、2~5員)ヘテロアルキル、非置換(例えば、C~C、C~C、C~C)シクロアルキル、非置換(例えば、3~8員、3~6員、3~5員)ヘテロシクロアルキル、非置換(例えば、C~C10、C~C、C~C)アリール、または非置換(例えば、5~10員、5~8員、5~6員)ヘテロアリールである。
【0132】
実施形態では、Lは、結合、-S(O)-、-NR3A-、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)NR3A-、-NR3AC(O)-、-NR3AC(O)NR3B-、-C(O)O-、-OC(O)-、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換アリーレン、または置換もしくは非置換ヘテロアリーレンである。
【0133】
実施形態では、Lは、結合、-S(O)-、-NR3A-、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)NR3A-、-NR3AC(O)-、-NR3AC(O)NR3B-、-C(O)O-、-OC(O)-、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換アリーレン、または置換もしくは非置換ヘテロアリーレンである。態様では、Lは、結合、置換もしくは非置換アルキレン、または置換もしくは非置換ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、結合、非置換アルキレン、または非置換ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、非置換アルキレンである。態様では、Lは、非置換ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、結合である。
【0134】
実施形態では、Lは、-O-、-S-、R32-置換または非置換C~Cアルキレン(例えば、CもしくはC)あるいはR32-置換または非置換2員ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、R32-置換または非置換アルキレン(例えば、C~Cアルキレン、C~Cアルキレン、もしくはC~Cアルキレン)、R32-置換または非置換ヘテロアルキレン(例えば、2~8員ヘテロアルキレン、2~6員ヘテロアルキレン、もしくは2~4員ヘテロアルキレン)、R32-置換または非置換シクロアルキレン(例えば、C~Cシクロアルキレン、C~Cシクロアルキレン、もしくはC~Cシクロアルキレン)、R32-置換または非置換ヘテロシクロアルキレン(例えば、3~8員ヘテロシクロアルキレン、3~6員ヘテロシクロアルキレン、もしくは5~6員ヘテロシクロアルキレン)、R32-置換または非置換アリーレン(例えば、C~C10アリーレン、C10アリーレン、もしくはフェニレン)、あるいはR32-置換または非置換ヘテロアリーレン(例えば、5~10員ヘテロアリーレン、5~9員ヘテロアリール、もしくは5~6員ヘテロアリーレン)である。態様では、Lは、独立して、-O-、-S-、非置換C~Cアルキレン(例えば、CもしくはC)または非置換2員ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、独立して、非置換メチレンである。態様では、Lは、独立して、非置換エチレンである。態様では、Lは、置換2員ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、置換3員ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、置換4員ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、非置換2員ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、非置換3員ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、非置換4員ヘテロアルキレンである。
【0135】
32は、独立して、オキソ、ハロゲン、-CX32 、-CHX32 、-CH32、-OCX32 、-OCH32、-OCHX32 、-CN、-OH、-NH、-COOH、-CONH、-NO、-SH、-SOH、-SOH、-SONH、-NHNH、-ONH、-NHC=(O)NHNH、-NHC=(O)NH、-NHSOH、-NHC=(O)H、-NHC(O)-OH、-NHOH、-N、R33-置換または非置換アルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、R33-置換または非置換ヘテロアルキル(例えば、2~8員、2~6員、4~6員、2~3員、もしくは4~5員)、R33-置換または非置換シクロアルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、R33-置換または非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3~8員、3~6員、4~6員、4~5員、もしくは5~6員)、R33-置換または非置換アリール(例えば、C~C10もしくはフェニル)、あるいはR33-置換または非置換ヘテロアリール(例えば、5~10員、5~9員、もしくは5~6員)である。態様では、R32は、独立して、オキソ、ハロゲン、-CX32 、-CHX32 、-CH32、-OCX32 、-OCH32、-OCHX32 、-CN、-OH、-NH、-COOH、-CONH、-NO、-SH、-SOH、-SOH、-SONH、-NHNH、-ONH、-NHC=(O)NHNH、-NHC=(O)NH、-NHSOH、-NHC=(O)H、-NHC(O)-OH、-NHOH、-N、非置換アルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、非置換ヘテロアルキル(例えば、2~8員、2~6員、4~6員、2~3員、もしくは4~5員)、非置換シクロアルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3~8員、3~6員、4~6員、4~5員、もしくは5~6員)、非置換アリール(例えば、C~C10もしくはフェニル)、または非置換ヘテロアリール(例えば、5~10員、5~9員、もしくは5~6員)である。X32は、独立して、-F、-Cl、-Br、または-Iである。
【0136】
実施形態では、R32は、独立して、非置換メチルである。態様では、R32は、独立して、非置換エチルである。
【0137】
33は、独立して、オキソ、ハロゲン、-CX33 、-CHX33 、-CH33、-OCX33 、-OCH33、-OCHX33 、-CN、-OH、-NH、-COOH、-CONH、-NO、-SH、-SOH、-SOH、-SONH、-NHNH、-ONH、-NHC=(O)NHNH、-NHC=(O)NH、-NHSOH、-NHC=(O)H、-NHC(O)-OH、-NHOH、-N、R34-置換または非置換アルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、R34-置換または非置換ヘテロアルキル(例えば、2~8員、2~6員、4~6員、2~3員、もしくは4~5員)、R34-置換または非置換シクロアルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、R34-置換または非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3~8員、3~6員、4~6員、4~5員、もしくは5~6員)、R34-置換または非置換アリール(例えば、C~C10もしくはフェニル)、あるいはR34-置換または非置換ヘテロアリール(例えば、5~10員、5~9員、もしくは5~6員)である。態様では、R33は、独立して、オキソ、ハロゲン、-CX33 、-CHX33 、-CH33、-OCX33 、-OCH33、-OCHX33 、-CN、-OH、-NH、-COOH、-CONH、-NO、-SH、-SOH、-SOH、-SONH、-NHNH、-ONH、-NHC=(O)NHNH、-NHC=(O)NH、-NHSOH、-NHC=(O)H、-NHC(O)-OH、-NHOH、-N、非置換アルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、非置換ヘテロアルキル(例えば、2~8員、2~6員、4~6員、2~3員、もしくは4~5員)、非置換シクロアルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3~8員、3~6員、4~6員、4~5員、もしくは5~6員)、非置換アリール(例えば、C~C10もしくはフェニル)、または非置換ヘテロアリール(例えば、5~10員、5~9員、もしくは5~6員)である。X33は、独立して、-F、-Cl、-Br、または-Iである。
【0138】
実施形態では、R33は、独立して、非置換メチルである。態様では、R33は、独立して、非置換エチルである。
【0139】
態様では、R34は、独立して、オキソ、ハロゲン、-CX34 、-CHX34 、-CH34、-OCX34 、-OCH34、-OCHX34 、-CN、-OH、-NH、-COOH、-CONH、-NO、-SH、-SOH、-SOH、-SONH、-NHNH、-ONH、-NHC=(O)NHNH、-NHC=(O)NH、-NHSOH、-NHC=(O)H、-NHC(O)-OH、-NHOH、-N、非置換アルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、非置換ヘテロアルキル(例えば、2~8員、2~6員、4~6員、2~3員、もしくは4~5員)、非置換シクロアルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3~8員、3~6員、4~6員、4~5員、もしくは5~6員)、非置換アリール(例えば、C~C10もしくはフェニル)、または非置換ヘテロアリール(例えば、5~10員、5~9員、もしくは5~6員)である。X34は、独立して、-F、-Cl、-Br、または-Iである。
【0140】
実施形態では、R34は、独立して、非置換メチルである。態様では、R34は、独立して、非置換エチルである。
【0141】
実施形態では、R3Aは、水素、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換アリーレン、または置換もしくは非置換ヘテロアリーレンである。
【0142】
実施形態では、R3Aは、水素、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換アルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換ヘテロアルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換シクロアルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換ヘテロシクロアルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換アリール、あるいは置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換ヘテロアリールである。
【0143】
実施形態では、R3Aは、水素、置換もしくは非置換(例えば、C~C20、C~C10、C~C)アルキル、置換もしくは非置換(例えば、2~20員、2~10員、2~5員)ヘテロアルキル、置換もしくは非置換(例えば、C~C、C~C、C~C)シクロアルキル、置換もしくは非置換(例えば、3~8員、3~6員、3~5員)ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換(例えば、C~C10、C~C、C~C)アリール、または置換もしくは非置換(例えば、5~10員、5~8員、5~6員)ヘテロアリールである。
【0144】
実施形態では、R3Aは、水素、非置換(例えば、C~C20、C~C10、C~C)アルキル、非置換(例えば、2~20員、2~10員、2~5員)ヘテロアルキル、非置換(例えば、C~C、C~C、C~C)シクロアルキル、非置換(例えば、3~8員、3~6員、3~5員)ヘテロシクロアルキル、非置換(例えば、C~C10、C~C、C~C)アリール、または非置換(例えば、5~10員、5~8員、5~6員)ヘテロアリールである。
【0145】
実施形態では、R3Bは、水素、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換アリーレン、または置換もしくは非置換ヘテロアリーレンである。
【0146】
実施形態では、R3Bは、水素、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換アルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換ヘテロアルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換シクロアルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換ヘテロシクロアルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換アリール、あるいは置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換ヘテロアリールである。
【0147】
実施形態では、R3Bは、水素、置換もしくは非置換(例えば、C~C20、C~C10、C~C)アルキル、置換もしくは非置換(例えば、2~20員、2~10員、2~5員)ヘテロアルキル、置換もしくは非置換(例えば、C~C、C~C、C~C)シクロアルキル、置換もしくは非置換(例えば、3~8員、3~6員、3~5員)ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換(例えば、C~C10、C~C、C~C)アリール、または置換もしくは非置換(例えば、5~10員、5~8員、5~6員)ヘテロアリールである。
【0148】
実施形態では、R3Bは、水素、非置換(例えば、C~C20、C~C10、C~C)アルキル、非置換(例えば、2~20員、2~10員、2~5員)ヘテロアルキル、非置換(例えば、C~C、C~C、C~C)シクロアルキル、非置換(例えば、3~8員、3~6員、3~5員)ヘテロシクロアルキル、非置換(例えば、C~C10、C~C、C~C)アリール、または非置換(例えば、5~10員、5~8員、5~6員)ヘテロアリールである。
【0149】
実施形態では、Lは、結合、-S(O)-、-NR4A-、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)NR4A-、-NR4AC(O)-、-NR4AC(O)NR4B-、-C(O)O-、-OC(O)-、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換アリーレン、または置換もしくは非置換ヘテロアリーレンである。
【0150】
実施形態では、Lは、結合、置換もしくは非置換アルキレン、または置換もしくは非置換ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、結合、非置換アルキレン、または非置換ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、非置換アルキレンである。態様では、Lは、非置換ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、結合である。
【0151】
実施形態では、Lは、-O-、-S-、R35-置換または非置換C~Cアルキレン(例えば、CもしくはC)あるいはR35-置換または非置換2員ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、R35-置換または非置換アルキレン(例えば、C~Cアルキレン、C~Cアルキレン、もしくはC~Cアルキレン)、R35-置換または非置換ヘテロアルキレン(例えば、2~8員ヘテロアルキレン、2~6員ヘテロアルキレン、もしくは2~4員ヘテロアルキレン)、R35-置換または非置換シクロアルキレン(例えば、C~Cシクロアルキレン、C~Cシクロアルキレン、もしくはC~Cシクロアルキレン)、R35-置換または非置換ヘテロシクロアルキレン(例えば、3~8員ヘテロシクロアルキレン、3~6員ヘテロシクロアルキレン、もしくは5~6員ヘテロシクロアルキレン)、R35-置換または非置換アリーレン(例えば、C~C10アリーレン、C10アリーレン、もしくはフェニレン)、あるいはR35-置換または非置換ヘテロアリーレン(例えば、5~10員ヘテロアリーレン、5~9員ヘテロアリーレン、もしくは5~6員ヘテロアリーレン)である。態様では、Lは、-O-、-S-、非置換C~Cアルキレン(例えば、CもしくはC)または非置換2員ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、独立して、非置換メチレンである。態様では、Lは、独立して、非置換エチレンである。態様では、Lは、置換2員ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、置換3員ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、置換4員ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、非置換2員ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、非置換3員ヘテロアルキレンである。態様では、Lは、非置換4員ヘテロアルキレンである。
【0152】
35は、独立して、オキソ、ハロゲン、-CX35 、-CHX35 、-CH35、-OCX35 、-OCH35、-OCHX35 、-CN、-OH、-NH、-COOH、-CONH、-NO、-SH、-SOH、-SOH、-SONH、-NHNH、-ONH、-NHC=(O)NHNH、-NHC=(O)NH、-NHSOH、-NHC=(O)H、-NHC(O)-OH、-NHOH、-N、R36-置換または非置換アルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、R36-置換または非置換ヘテロアルキル(例えば、2~8員、2~6員、4~6員、2~3員、もしくは4~5員)、R36-置換または非置換シクロアルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、R36-置換または非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3~8員、3~6員、4~6員、4~5員、もしくは5~6員)、R36-置換または非置換アリール(例えば、C~C10もしくはフェニル)、あるいはR36-置換または非置換ヘテロアリール(例えば、5~10員、5~9員、もしくは5~6員)である。態様では、R35は、独立して、オキソ、ハロゲン、-CX35 、-CHX35 、-CH35、-OCX35 、-OCH35、-OCHX35 、-CN、-OH、-NH、-COOH、-CONH、-NO、-SH、-SOH、-SOH、-SONH、-NHNH、-ONH、-NHC=(O)NHNH、-NHC=(O)NH、-NHSOH、-NHC=(O)H、-NHC(O)-OH、-NHOH、-N、非置換アルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、非置換ヘテロアルキル(例えば、2~8員、2~6員、4~6員、2~3員、もしくは4~5員)、非置換シクロアルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3~8員、3~6員、4~6員、4~5員、もしくは5~6員)、非置換アリール(例えば、C~C10もしくはフェニル)、または非置換ヘテロアリール(例えば、5~10員、5~9員、もしくは5~6員)である。X35は、独立して、-F、-Cl、-Br、または-Iである。
【0153】
実施形態では、R35は、独立して、非置換メチルである。態様では、R35は、独立して、非置換エチルである。
【0154】
36は、独立して、オキソ、ハロゲン、-CX36 、-CHX36 、-CH36、-OCX36 、-OCH36、-OCHX36 、-CN、-OH、-NH、-COOH、-CONH、-NO、-SH、-SOH、-SOH、-SONH、-NHNH、-ONH、-NHC=(O)NHNH、-NHC=(O)NH、-NHSOH、-NHC=(O)H、-NHC(O)-OH、-NHOH、-N、R37-置換または非置換アルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、R37-置換または非置換ヘテロアルキル(例えば、2~8員、2~6員、4~6員、2~3員、もしくは4~5員)、R37-置換または非置換シクロアルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、R37-置換または非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3~8員、3~6員、4~6員、4~5員、もしくは5~6員)、R37-置換または非置換アリール(例えば、C~C10もしくはフェニル)、あるいはR37-置換または非置換ヘテロアリール(例えば、5~10員、5~9員、もしくは5~6員)である。態様では、R36は、独立して、オキソ、ハロゲン、-CX36 、-CHX36 、-CH36、-OCX36 、-OCH36、-OCHX36 、-CN、-OH、-NH、-COOH、-CONH、-NO、-SH、-SOH、-SOH、-SONH、-NHNH、-ONH、-NHC=(O)NHNH、-NHC=(O)NH、-NHSOH、-NHC=(O)H、-NHC(O)-OH、-NHOH、-N、非置換アルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、非置換ヘテロアルキル(例えば、2~8員、2~6員、4~6員、2~3員、もしくは4~5員)、非置換シクロアルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3~8員、3~6員、4~6員、4~5員、もしくは5~6員)、非置換アリール(例えば、C~C10もしくはフェニル)、または非置換ヘテロアリール(例えば、5~10員、5~9員、もしくは5~6員)である。X36は、独立して、-F、-Cl、-Br、または-Iである。
【0155】
実施形態では、R36は、独立して、非置換メチルである。態様では、R36は、独立して、非置換エチルである。
【0156】
態様では、R37は、独立して、オキソ、ハロゲン、-CX37 、-CHX37 、-CH 37、-OCX37 、-OCH37、-OCHX37 、-CN、-OH、-NH、-COOH、-CONH、-NO、-SH、-SOH、-SOH、-SONH、-NHNH、-ONH、-NHC=(O)NHNH、-NHC=(O)NH、-NHSOH、-NHC=(O)H、-NHC(O)-OH、-NHOH、-N、非置換アルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、非置換ヘテロアルキル(例えば、2~8員、2~6員、4~6員、2~3員、もしくは4~5員)、非置換シクロアルキル(例えば、C~C、C~C、C~C、もしくはC~C)、非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3~8員、3~6員、4~6員、4~5員、もしくは5~6員)、非置換アリール(例えば、C~C10もしくはフェニル)、または非置換ヘテロアリール(例えば、5~10員、5~9員、もしくは5~6員)である。X37は、独立して、-F、-Cl、-Br、または-Iである。
【0157】
実施形態では、R37は、独立して、非置換メチルである。態様では、R37は、独立して、非置換エチルである。
【0158】
実施形態では、R4Aは、水素、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換アリーレン、または置換もしくは非置換ヘテロアリーレンである。
【0159】
実施形態では、R4Aは、水素、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換アルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換ヘテロアルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換シクロアルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換ヘテロシクロアルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換アリール、あるいは置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換ヘテロアリールである。
【0160】
実施形態では、R4Aは、水素、置換もしくは非置換(例えば、C~C20、C~C10、C~C)アルキル、置換もしくは非置換(例えば、2~20員、2~10員、2~5員)ヘテロアルキル、置換もしくは非置換(例えば、C~C、C~C、C~C)シクロアルキル、置換もしくは非置換(例えば、3~8員、3~6員、3~5員)ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換(例えば、C~C10、C~C、C~C)アリール、または置換もしくは非置換(例えば、5~10員、5~8員、5~6員)ヘテロアリールである。
【0161】
実施形態では、R4Aは、水素、非置換(例えば、C~C20、C~C10、C~C)アルキル、非置換(例えば、2~20員、2~10員、2~5員)ヘテロアルキル、非置換(例えば、C~C、C~C、C~C)シクロアルキル、非置換(例えば、3~8員、3~6員、3~5員)ヘテロシクロアルキル、非置換(例えば、C~C10、C~C、C~C)アリール、または非置換(例えば、5~10員、5~8員、5~6員)ヘテロアリールである。
【0162】
実施形態では、R4Bは、水素、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換アリーレン、または置換もしくは非置換ヘテロアリーレンである。
【0163】
実施形態では、R4Bは、水素、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換アルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換ヘテロアルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換シクロアルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換ヘテロシクロアルキル、置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換アリール、あるいは置換(例えば、置換基(複数可)、サイズ制限置換基、もしくは低級置換基(複数可)で置換)または非置換ヘテロアリールである。
【0164】
実施形態では、R4Bは、水素、置換もしくは非置換(例えば、C~C20、C~C10、C~C)アルキル、置換もしくは非置換(例えば、2~20員、2~10員、2~5員)ヘテロアルキル、置換もしくは非置換(例えば、C~C、C~C、C~C)シクロアルキル、置換もしくは非置換(例えば、3~8員、3~6員、3~5員)ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換(例えば、C~C10、C~C、C~C)アリール、または置換もしくは非置換(例えば、5~10員、5~8員、5~6員)ヘテロアリールである。
【0165】
実施形態では、R4Bは、水素、非置換(例えば、C~C20、C~C10、C~C)アルキル、非置換(例えば、2~20員、2~10員、2~5員)ヘテロアルキル、非置換(例えば、C~C、C~C、C~C)シクロアルキル、非置換(例えば、3~8員、3~6員、3~5員)ヘテロシクロアルキル、非置換(例えば、C~C10、C~C、C~C)アリール、または非置換(例えば、5~10員、5~8員、5~6員)ヘテロアリールである。
【0166】
実施形態では、Xは、イミダゾリレン、-NH-、または-O-である。態様では、Xは、イミダゾリレン(すなわち、二価イミダゾール)である。態様では、Xは、-NH-である。態様では、Xは、-O-である。
【0167】
実施形態では、第1の生体分子部分は、ペプチジル部分である。態様では、第2の生体分子部分は、ペプチジル部分である。態様では、第1の生体分子部分は、ペプチジル部分であり、第2の生体分子部分は、ペプチジル部分である。態様では、第1の生体分子部分および第2の生体分子部分のペプチジル部分は、同じタンパク質中にある。態様では、第1の生体分子部分および第2の生体分子部分のペプチジル部分は、異なるタンパク質中にある。
【0168】
実施形態では、-L-Rは、ペプチジル部分である。実施形態では、-L-Rは、ペプチジル部分である。態様では、-L-Rおよび-L-Rのペプチジル部分は、同じタンパク質中にある。態様では、-L-Rおよび-L-Rのペプチジル部分は、異なるタンパク質中にある。
【0169】
実施形態では、第1の生体分子部分は、核酸部分または炭水化物部分である。実施形態では、第1の生体分子部分は、核酸部分である。実施形態では、第1の生体分子部分は、炭水化物部分である。実施形態では、第2の生体分子部分は、核酸部分または炭水化物部分である。実施形態では、第2の生体分子部分は、核酸部分である。実施形態では、第2の生体分子部分は、炭水化物部分である。
【0170】
実施形態では、-L-Rは、核酸部分または炭水化物部分である。態様では、-L-Rは、核酸部分である。態様では、-L-Rは、炭水化物部分である。態様では、-L-Rは、核酸部分または炭水化物部分である。態様では、-L-Rは、核酸部分である。態様では、-L-Rは、炭水化物部分である。
【0171】
実施形態では、第1の生体分子部分は、ペプチジル部分、核酸部分、および炭水化物部分からなる群から選択される。態様では、第2の生体分子部分は、ペプチジル部分、核酸部分、および炭水化物部分からなる群から選択される。態様では、第1の生体分子部分は、第2の生体分子部分と同じである。態様では、第1の生体分子部分は、第2の生体分子部分とは異なる。態様では、第1の生体分子部分および第2の生体分子部分は、同じ生体分子内にある。態様では、第1の生体分子部分および第2の生体分子部分は、異なる生体分子内にある。態様では、第1の生体分子部分および第2の生体分子部分は、各々独立して、ペプチジル部分である。
【0172】
実施形態では、-L-Rは、ペプチジル部分、核酸部分、および炭水化物部分からなる群から選択される。態様では、-L-Rは、ペプチジル部分、核酸部分、および炭水化物部分からなる群から選択される。態様では、-L-Rは、-L-Rと同じである。態様では、-L-Rは、-L-Rとは異なる。態様では、-L-Rおよび-L-Rは、各々独立して、ペプチジル部分である。
【0173】
態様では、本開示は、式(A)の部分、式(B)の部分、式(C)の部分、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含むタンパク質を提供する。
【化23】
態様では、タンパク質は、式(A)の部分を含む。態様では、タンパク質は、式(B)の部分を含む。態様では、タンパク質は、式(C)の部分を含む。態様では、タンパク質は、式(A)の部分および式(B)の部分を含む。態様では、タンパク質は、式(A)の部分および式(C)の部分を含む。態様では、タンパク質は、式(B)の部分および式(C)の部分を含む。態様では、タンパク質は、式(A)の部分、式(B)の部分、および式(C)の部分を含む。態様では、式(A)、(B)、(C)、またはそれらの組み合わせの部分は、分子内共有結合を形成する。態様では、式(A)の部分は、分子内共有結合を形成する。態様では、式(B)の部分は、分子内共有結合を形成する。態様では、式(C)の部分は、分子内共有結合を形成する。態様では、式(A)および(B)の部分は、分子内共有結合を形成する。態様では、式(A)および(C)の部分は、分子内共有結合を形成する。態様では、式(B)および(C)の部分は、分子内共有結合を形成する。態様では、式(A)、(B)、および(C)の部分は、分子内共有結合を形成する。態様では、式(A)、(B)、(C)の部分、またはそれらの組み合わせは、分子間共有結合を形成する。態様では、式(A)の部分は、分子間共有結合を形成する。態様では、式(B)の部分は、分子間共有結合を形成する。態様では、式(C)の部分は、分子間共有結合を形成する。態様では、式(A)および(B)の部分は、分子間共有結合を形成する。態様では、式(A)および(C)の部分は、分子間共有結合を形成する。態様では、式(B)および(C)の部分は、分子間共有結合を形成する。態様では、式(A)、(B)、および(C)の部分は、分子間共有結合を形成する。
【0174】
態様では、本開示は、式(I)、式(II)、または式(III):
【化24】
のタンパク質を提供し、
式中、RおよびRは、各々独立して、一緒に結合されるペプチジル部分であり、すなわち、式(I)、(II)、および(III)のタンパク質は、分子内共有結合を含む。態様では、タンパク質は、式(I)である。態様では、タンパク質は、式(II)である。態様では、タンパク質は、式(III)である。態様では、Rのペプチジル部分およびRのペプチジル部分は、タンパク質α鎖を含む。態様では、Rのペプチジル部分およびRのペプチジル部分は、タンパク質β鎖を含む。態様では、Rのペプチジル部分は、タンパク質α鎖を含み、Rのペプチジル部分は、タンパク質β鎖を含む。態様では、Rのペプチジル部分は、タンパク質β鎖を含み、Rのペプチジル部分は、タンパク質α鎖を含む。
【0175】
態様では、本開示は、式(I)、式(II)、または式(III):
【化25】
のタンパク質を提供し、
式中、Rは、第1のタンパク質のペプチジル部分であり、Rは、第2のタンパク質のペプチジル部分であり、すなわち、2つのタンパク質間に分子間共有結合が存在する。態様では、分子間結合は、2つの異なるタンパク質の間にある。態様では、分子間結合は、同じタンパク質(例えば、分子間結合されている同じアミノ酸配列を有する2つのタンパク質)のうちの2つの間にある。態様では、第1のタンパク質は、式(A)の部分を介して第2のタンパク質に共有結合して、式(I)の分子間結合タンパク質を形成する。態様では、第1のタンパク質は、式(B)の部分を介して第2のタンパク質に共有結合して、式(II)の分子間結合タンパク質を形成する。態様では、第1のタンパク質は、式(C)の部分を介して第2のタンパク質に共有結合して、式(III)の分子間結合タンパク質を形成する。態様では、第1のタンパク質は、式(A)の部分および式(A)の部分を介して第2のタンパク質に共有結合している。態様では、第1のタンパク質は、式(A)の部分および式(C)の部分を介して第2のタンパク質に共有結合している。態様では、第1のタンパク質は、式(B)の部分および式(C)の部分を介して第2のタンパク質に共有結合している。態様では、第1のタンパク質は、式(A)の部分、式(B)の部分、および式(C)の部分を介して第2のタンパク質に共有結合している。態様では、第1のタンパク質は、ホルモンであり、第2のタンパク質は、ホルモンの受容体である。態様では、ペプチジル部分RおよびRは、タンパク質α鎖を含む。態様では、ペプチジル部分RおよびRは、タンパク質β鎖を含む。態様では、ペプチジル部分Rは、タンパク質α鎖を含み、ペプチジル部分Rは、タンパク質β鎖を含む。態様では、ペプチジル部分Rは、タンパク質β鎖を含み、ペプチジル部分Rは、タンパク質α鎖を含む。
【0176】
態様では、タンパク質コンジュゲートは、3つ以上の異なるおよび/または別個のタンパク質を含んでもよい。例えば、第1のタンパク質は、式(A)の部分、式(B)の部分、式(C)の部分、またはそれらの2つ以上の組み合わせを介して第2のタンパク質に共有結合し、第2のタンパク質は、式(A)の部分、式(B)の部分、式(C)の部分、またはそれらの2つ以上の組み合わせを介して第3のタンパク質に共有結合する。別の例として、第1のタンパク質は、式(A)の部分、式(B)の部分、式(C)の部分、またはそれらの2つ以上の組み合わせを介して第2のタンパク質に共有結合し、第1のタンパク質はまた、式(A)の部分、式(B)の部分、式(C)の部分、またはそれらの2つ以上の組み合わせを介して第3のタンパク質に共有結合する。これらの態様の各々では、第1のタンパク質、第2のタンパク質、および第3のタンパク質は各々、任意に、式(A)の部分、式(B)の部分、式(C)の部分、またはそれらの2つ以上の組み合わせをさらに含んでよく、RおよびRのペプチジル部分は、それぞれ、第1のタンパク質、第2のタンパク質、または第3のタンパク質内に分子内結合を形成する。
【0177】
ピロリシル-tRNA合成酵素
本明細書に記載のように、非天然アミノ酸(例えば、FSY)は、生体分子(例えば、タンパク質)中の天然に存在するアミノ酸に挿入されてもよく、または置き換えられてもよい。非天然アミノ酸を生体分子(例えば、タンパク質)中のアミノ酸に挿入するか、または置き換えるためには、タンパク質生成中に組み込むことができる必要がある。したがって、非天然アミノ酸は、翻訳に使用することができるように、転移RNA分子(tRNA)上に存在しなければならない。アミノ酸の負荷は、適切なアミノ酸の、tRNA分子への結合を促進する酵素である、アミノアシル-tRNA合成酵素を介して発生する。しかしながら、tRNAへの非天然アミノ酸の結合は、必ずしも天然に存在するアミノアシル-tRNA合成酵素によって達成されるとは限らない場合がある。操作されたアミノアシル-tRNA合成酵素(例えば、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素(PyIRS))は、非天然アミノ酸をtRNAに結合させるのに有用であり得る。PyIRS突然変異体ライブラリを生成した。前述のPyIRS突然変異体ライブラリと比較して、本明細書で生成されたPyIRS突然変異体ライブラリは、より多くのアミノ酸残基(例えば、10個のアミノ酸残基)を同時に突然変異させることを可能にする新しい小知能突然変異誘発アプローチを使用して構築された。選択され、スクリーニングされた合計2.76×10個のクローンのうち、FSYを結合することができる1つのPyIRS突然変異体(6個のクローン内)が同定された(例えば、実施例1を参照)。
【0178】
本開示は、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素の基質結合部位内の少なくとも5個のアミノ酸残基置換を含む、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素を提供する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも5個のアミノ酸残基置換を含む。態様では、基質結合部位は、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位のアラニン、305位のロイシン、306位のチロシン、309位のロイシン、322位のイソロイシン、346位のアスパラギン、348位のシステイン、384位のチロシン、401位のバリン、および417位のトリプトファンを含む。態様では、少なくとも5個のアミノ酸残基置換は、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位のアラニンの置換、346位のアスパラギンの置換、348位のシステインの置換、384位のチロシンの置換、および417位のトリプトファンの置換である。態様では、少なくとも5個のアミノ酸残基置換は、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位のアラニンに対するイソロイシン、346位のアスパラギンに対するトレオニン、348位のシステインに対するイソロイシン、384位のチロシンに対するロイシン、および417位のトリプトファンに対するリジンである。
【0179】
実施形態では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号1のアミノ酸配列を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号1に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号1に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号1に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号1に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0180】
実施形態では、突然変異ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号2の核酸配列によってコードされる。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号2の配列を含む核酸配列によってコードされる。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号2に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性である核酸配列によってコードされる。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号2に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号2に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号2に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0181】
ベクター
本明細書に提供される組成物(例えば、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素、tRNAPyl)は、当該技術分野において周知の方法を使用して細胞に送達され得ることが企図される。したがって、態様では、本明細書に記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素をコードする核酸配列を含むベクターであって、その実施形態を含む、ベクターが提供される。態様では、ベクターは、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素の基質結合部位内に少なくとも5個のアミノ酸残基置換を含む、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素をコードする核酸配列を含む。態様では、ベクターは、tRNAPylをコードする核酸配列をさらに含む。態様では、ベクターは、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも5個のアミノ酸残基置換を含む突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素をコードする核酸配列を含む。態様では、ベクターは、tRNAPylをコードする核酸配列をさらに含む。態様では、ベクターは、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位の残基アラニン、305位のロイシン、306位のチロシン、309位のロイシン、322位のイソロイシン、346位のアスパラギン、348位のシステイン、384位のチロシン、401位のバリン、および417位のトリプトファンのアミノ酸置換を含む、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素をコードする核酸配列を含む。態様では、ベクターは、tRNAPylをコードする核酸配列をさらに含む。態様では、ベクターは、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位のアラニンのアミノ酸置換、346位のアスパラギンの置換、348位のシステインの置換、384位のチロシンの置換、および417位のトリプトファンの置換を含む、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素をコードする核酸配列を含む。態様では、ベクターは、tRNAPylをコードする核酸配列をさらに含む。態様では、ベクターは、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位のアラニンに対する残基イソロイシン、346位のアスパラギンに対するトレオニン、348位のシステインに対するイソロイシン、384位のチロシンに対するロイシン、および417位のトリプトファンに対するリジンのアミノ酸置換を含む、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素をコードする核酸配列を含む。態様では、ベクターは、tRNAPylをコードする核酸配列をさらに含む。
【0182】
実施形態では、tRNAPylをコードする核酸配列は、配列番号4に示される配列である。態様では、tRNAPylをコードする核酸配列は、配列番号4に示される配列を含む。態様では、tRNAPylをコードする核酸配列は、配列番号4に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する配列を有する。態様では、tRNAPylをコードする核酸配列は、配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を有する。態様では、tRNAPylをコードする核酸配列は、配列番号4に対して少なくとも85%の同一性を有する配列を有する。態様では、tRNAPylをコードする核酸配列は、配列番号4に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する。態様では、tRNAPylをコードする核酸配列は、配列番号4に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する。態様では、tRNAPylをコードする核酸配列は、配列番号4に対して少なくとも98%の同一性を有する配列を有する。
【0183】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、それが結合している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。1つのタイプのベクターは、「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントをライゲーションすることができる直鎖または環状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターは、ウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントは、ウイルスゲノムにライゲーションされ得る。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内で自律複製することができる(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある特定のベクターは、それらが作用可能に結合している遺伝子の発現を誘導することができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。一般に、組み換えDNA技法において有用な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形態である。「プラスミド」および「ベクター」という用語は、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であるため、交換可能に使用することができる。しかしながら、本開示は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ関連ウイルス)などの、そのような他の形態の発現ベクターを含むことを意図する。加えて、いくつかのウイルスベクターは、特定の細胞型を特異的または非特異的に標的化することができる。使用され得る例示的なベクターとしては、pEvolベクター、pMPベクター、pETベクター、pTakベクター、pBadベクターが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、実施例1を参照)。
【0184】
複合体
態様では、本明細書に記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素(その実施形態を含む)、および以下の式:
【化26】
を有するフルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)を含む複合体が提供される。
【0185】
態様では、複合体は、配列番号3のピロリシル-tRNA合成酵素の基質結合部位内に少なくとも5個のアミノ酸残基置換を含む、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素を含む。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位の残基アラニン、305位のロイシン、306位のチロシン、309位のロイシン、322位のイソロイシン、346位のアスパラギン、348位のシステイン、384位のチロシン、401位のバリン、および417位のトリプトファンにおける基質結合部位内にアミノ酸残基置換を含む。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位の残基アラニンにおける置換結合部位内のアミノ酸残基置換、346位のアスパラギンの置換、348位のシステインの置換、384位のチロシンの置換、および417位のトリプトファンの置換を含む。態様では、少なくとも5個のアミノ酸残基置換は、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位のアラニンに対するイソロイシン、346位のアスパラギンに対するトレオニン、348位のシステインに対するイソロイシン、384位のチロシンに対するロイシン、および417位のトリプトファンに対するリジンである。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNAは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNAは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNAは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNAは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNAは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNAは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNAは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNAは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNAは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。態様では、突然変異体ピロリシル-tRNAは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0186】
実施形態では、複合体は、本明細書に記載される突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素(その実施形態を含む)、フルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)、および本明細書に記載されるtRNAPyl(その実施形態を含む)を含む。態様では、tRNAPylは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。態様では、tRNAPylは、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する。態様では、tRNAPylは、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。態様では、tRNAPylは、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。態様では、tRNAPylは、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0187】
細胞組成物
本開示は、その実施形態を含む、本明細書に提供される組成物および複合体を含む細胞を提供する。したがって、態様では、以下の式:
【化27】
を有するフルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)を含む細胞が提供される。
【0188】
実施形態では、細胞は、その態様を含む、本明細書に記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素をさらに含む。態様では、細胞は、その態様を含む、本明細書に記載のベクターをさらに含む。態様では、細胞は、tRNAPylをさらに含む。
【0189】
実施形態では、FSYは、細胞内で生合成され、それによってFSYを含有する細胞を生成する。態様では、FSYは、細胞の外側の培地に含有され、細胞内に浸透し、それによってFSYを含有する細胞を生成する。態様では、細胞は、FSY生体分子を含む。態様では、細胞は、FSYタンパク質を含む。態様では、細胞は、細胞内で合成されるFSY生体分子を含む。態様では、細胞は、細胞内で合成されるFSYタンパク質を含む。態様では、細胞は、細胞の外側で合成され、細胞内に浸透するFSY生体分子を含む。態様では、細胞は、細胞の外側で合成され、細胞内に浸透するFSYタンパク質を含む。
【0190】
実施形態では、細胞は、本明細書に記載の生体分子コンジュゲートを含む。態様では、細胞は、バイオコンジュゲートリンカーを介して第2の生体分子部分にコンジュゲートされた第1の生体分子部分を含む生体分子コンジュゲートを含み、バイオコンジュゲートリンカーは、式:
【化28】
を有する。態様では、細胞は、式R-L-A-X-L-Rの生体分子コンジュゲートを含み、置換基は、本明細書に定義されるとおりである。態様では、第1および第2の生体分子部分は、各々独立して、ペプチジル部分、核酸部分、または炭水化物部分である。態様では、第1および第2の生体分子部分は各々、同じタンパク質内のペプチジル部分である。態様では、第1および第2の生体分子部分は各々、異なるタンパク質内のペプチジル部分である。
【0191】
実施形態では、細胞は、式(A)の部分、式(B)の部分、式(C)の部分、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含むタンパク質を含む。
【化29】
態様では、式(A)、(B)、または(C)の部分は、タンパク質内に分子内共有結合を形成する。態様では、式(A)、(B)、または(C)の部分は、2つのタンパク質間で分子間共有結合を形成する。
【0192】
実施形態では、細胞は、式(I)、式(II)、または式(III):
【化30】
のタンパク質を含み、
式中、RおよびRは、各々独立して、ペプチジル部分である。態様では、RおよびRは、式(I)、(II)、および(III)のタンパク質が分子内結合を含むように、一緒に結合される。態様では、RおよびRは、式(I)、(II)、および(III)のタンパク質が2つのタンパク質間の分子間結合を含むように、2つの異なるタンパク質中のペプチジル部分である。
【0193】
細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であり得る。例えば、本明細書に記載される組成物のうちのいずれかは、E.coli、昆虫細胞、酵母または哺乳類細胞(例えば、Hela細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞)などの細菌細胞内で発現することができる。態様では、細胞は、細菌細胞である。態様では、細胞は、早期哺乳類細胞、すなわち、多能性幹細胞であり得る。態様では、細胞は、他のヒト組織に由来し得る。態様では、細胞は、哺乳類細胞である。他の好適な細胞は、当業者に既知である。
【0194】
生体分子または生体分子コンジュゲートを形成する方法
本明細書で提供される組成物は、生体分子または生体分子コンジュゲートを形成するのに有用である。したがって、態様では、生体分子、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素、tRNAPyl、および式:
【化31】
を有するフルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)に接触し、それによってFSY生体分子、すなわちFSYの非天然アミノ酸を含む生体分子を産生することによってFSY生体分子を形成する方法が提供される。この方法によって産生される生体分子は、式:
【化32】
の非天然アミノ酸側鎖を含むであろう。生体分子を産生する方法で使用される突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、本明細書に記載のいずれかである。生体分子を産生する方法で使用されるtRNAPylは、本明細書に記載のいずれかである。態様では、生体分子は、タンパク質である。態様では、生体分子は、核酸である。態様では、生体分子は、炭水化物である。態様では、反応は、インビトロで行われる。態様では、反応は、インビボで行われる。態様では、反応は、1つ以上の生細胞中で行われる。態様では、反応は、1つ以上の生細菌細胞中で行われる。態様では、反応は、1つ以上の生哺乳類細胞中で行われる。
【0195】
実施形態では、本開示は、タンパク質、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素、tRNAPyl、および式:
【化33】
を有するフルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)に接触し、それによってFSYタンパク質、すなわちFSYの非天然アミノ酸を含むタンパク質を産生することによってFSYタンパク質を産生するための方法を提供する。この方法によって産生されるタンパク質は、式:
【化34】
の非天然アミノ酸側鎖を含むであろう。タンパク質を産生する方法で使用される突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素は、本明細書に記載のいずれかである。タンパク質を産生する方法に使用されるtRNAPylは、本明細書に記載のいずれかである。態様では、FSYタンパク質は、リジン、ヒスチジン、チロシン、またはそれらの2つ以上をさらに含む。態様では、FSYタンパク質は、リジン、ヒスチジン、チロシン、またはそれらの2つ以上の近位にあるFSYを含む。態様では、FSYタンパク質は、リジンの近位にあるFSYを含む。態様では、FSYタンパク質は、ヒスチジンの近位にあるFSYを含む。態様では、FSYタンパク質は、チロシンの近位にあるFSYを含む。「近位」という用語は、本明細書に記載される。態様では、反応は、インビトロで行われる。態様では、反応は、インビボで行われる。態様では、反応は、1つ以上の生細胞中で行われる。態様では、反応は、1つ以上の生細菌細胞中で行われる。態様では、反応は、1つ以上の生哺乳類細胞中で行われる。
【0196】
実施形態では、本開示は、1つ以上の分子内共有結合(例えばタンパク質コンジュゲート)を含むタンパク質を提供する。態様では、FSYおよび近位のリジン、ヒスチジン、またはチロシンは、分子内共有結合を形成するための反応を受け、式(A)の部分、式(B)の部分、式(C)の部分、またはそれらの2つ以上の組み合わせをもたらす。
【化35】
FSYおよびそれの近位にあるリジン、ヒスチジン、またはチロシンは、タンパク質のα鎖および/またはタンパク質のβ鎖上にあり得る。態様では、FSYとリジン、ヒスチジン、またはチロシンとの間の分子内共有結合を形成する反応は、クリック化学を介して達成される。態様では、FSYとリジン、ヒスチジン、またはチロシンとの間の分子内共有結合を形成する反応は、近接により可能になるクリック化学を介して達成される。態様では、FSYとリジン、ヒスチジン、またはチロシンとの間の分子内共有結合を形成する反応は、硫黄-フッ化物交換反応を介して達成される。態様では、FSYとリジン、ヒスチジン、またはチロシンとの間の分子内共有結合を形成する反応は、近接により可能になる硫黄-フッ化物交換反応を介して達成される。態様では、反応は、インビトロで行われる。態様では、反応は、インビボで行われる。態様では、反応は、1つ以上の生細胞中で行われる。態様では、反応は、1つ以上の生細菌細胞中で行われる。態様では、反応は、1つ以上の生哺乳類細胞中で行われる。
【0197】
実施形態では、本開示は、式(I)、(II)、または(III)のタンパク質コンジュゲートを提供し、式中、RおよびRは、各々独立して、ペプチジル部分である:
【化36】
態様では、RおよびRは、一緒に結合されて、分子内共役タンパク質を形成する。態様では、RおよびRは、一緒に結合されない。態様では、タンパク質コンジュゲートを形成する反応は、クリック化学を介して達成される。態様では、タンパク質コンジュゲートを形成する反応は、近接により可能になるクリック化学を介して達成される。態様では、タンパク質コンジュゲートを形成する反応は、硫黄-フッ化物交換反応を介して達成される。態様では、タンパク質コンジュゲートを形成する反応は、近接により可能になる硫黄-フッ化物交換反応を介して達成される。態様では、反応は、インビトロで行われる。態様では、反応は、インビボで行われる。態様では、反応は、1つ以上の生細胞中で行われる。態様では、反応は、1つ以上の生細菌細胞中で行われる。態様では、反応は、1つ以上の生哺乳類細胞中で行われる。
【0198】
実施形態では、2つ以上のタンパク質は、本明細書に記載の方法および組成物によって共有結合され得る。態様では、FSYは、第1のタンパク質中の非天然アミノ酸であり、リジン、ヒスチジン、またはチロシンは、第2のタンパク質中のアミノ酸であり、第1のタンパク質および第2のタンパク質は異なる。第1のタンパク質中のFSYは、第2のタンパク質中のリジン、ヒスチジン、またはチロシンとの反応を経て、第1のタンパク質と第2のタンパク質との間の分子間共有結合を形成する。2つのタンパク質を連結する分子間共有結合は、式(A)の部分、式(B)の部分、式(C)の部分、またはそれらの2つ以上の組み合わせで表される:
【化37】
FSYおよびリジン、ヒスチジン、またはチロシンは、それぞれのタンパク質のα鎖および/またはそれぞれのタンパク質のβ鎖上にあり得る。態様では、第1のタンパク質中のFSYと第2のタンパク質中のリジン、ヒスチジン、またはチロシンとの間の分子間共有結合を形成する反応は、クリック化学を介して達成される。態様では、第1のタンパク質中のFSYと第2のタンパク質中のリジン、ヒスチジン、またはチロシンとの間に分子間共有結合を形成する反応は、近接により可能になるクリック化学を介して達成される。態様では、第1のタンパク質中のFSYと第2のタンパク質中のリジン、ヒスチジン、またはチロシンとの間の分子間共有結合を形成する反応は、硫黄-フッ化物交換を介して達成される。態様では、第1のタンパク質中のFSYと第2のタンパク質中のリジン、ヒスチジン、またはチロシンとの間の分子間共有結合を形成する反応は、近接により可能になる硫黄-フッ化物交換を介して達成される。態様では、反応は、インビトロで行われる。態様では、反応は、インビボで行われる。態様では、反応は、1つ以上の生細胞中で行われる。態様では、反応は、1つ以上の生細菌細胞中で行われる。態様では、反応は、1つ以上の生哺乳類細胞中で行われる。
【0199】
実施形態では、本開示は、バイオコンジュゲートリンカーを介して第2の生体分子部分にコンジュゲートされた第1の生体分子部分を含む生体分子コンジュゲートを提供し、バイオコンジュゲートリンカーは、式:
【化38】
を有する。態様では、生体分子コンジュゲートは、式R-L-A-X-L-Rを有し、置換基は、本明細書に定義されるとおりである。態様では、生体分子コンジュゲートを形成する反応は、クリック化学を介して達成される。態様では、生体分子コンジュゲートを形成する反応は、近接により可能になるクリック化学を介して達成される。態様では、生体分子コンジュゲートを形成する反応は、硫黄-フッ化物交換反応を介して達成される。態様では、生体分子コンジュゲートを形成する反応は、近接により可能になる硫黄-フッ化物交換反応を介して達成される。態様では、反応は、インビトロで行われる。態様では、反応は、インビボで行われる。態様では、反応は、1つ以上の生細胞中で行われる。態様では、反応は、1つ以上の生細菌細胞中で行われる。態様では、反応は、1つ以上の生哺乳類細胞中で行われる。
【0200】
実施形態1~53
実施形態1.バイオコンジュゲートリンカーを介して第2の生体分子部分にコンジュゲートされた第1の生体分子部分を含む生体分子コンジュゲートであって、バイオコンジュゲートリンカーが、式:
【化39】
を有する、生体分子コンジュゲート。
【0201】
実施形態2.生体分子コンジュゲートが、式:R-L-A-X-L-Rを有し、式中、Aが、バイオコンジュゲートリンカーであり、Rが、第1の生体分子部分であり、Rが、第2の生体分子部分であり、Lが、結合または第1の共有結合リンカーであり、Lが、結合または第2の共有結合リンカーであり、Xが、-NR-、-O-、-S-、または
【化40】
であり、式中、環Aが、置換もしくは非置換ヘテロアリーレンまたは置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレンであり、A中の窒素が、バイオコンジュゲートリンカーに結合しており、Rが、水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、または置換もしくは非置換ヘテロアリールであり、RおよびRが、分子内でコンジュゲートされた生体分子コンジュゲートを形成するために、任意に一緒に結合している、実施形態1に記載の生体分子コンジュゲート。
【0202】
実施形態3.Lが、結合、-S(O)-、-NR3A-、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)NR3A-、-NR3AC(O)-、-NR3AC(O)NR3B-、-C(O)O-、-OC(O)-、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換アリーレン、または置換もしくは非置換ヘテロアリーレンであり、Lが、結合、-S(O)-、-NR4A-、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)NR4A-、-NR4AC(O)-、-NR4AC(O)NR4B-、-C(O)O-、-OC(O)-、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換アリーレン、または置換もしくは非置換ヘテロアリーレンであり、R3A、R3B、R4A、およびR4Bが、独立して、水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、または置換もしくは非置換ヘテロアリールである、実施形態2に記載の生体分子コンジュゲート。
【0203】
実施形態4.Xが、-NH-、-O-、またはイミダゾリレンである、実施形態2または3に記載の生体分子コンジュゲート。
【0204】
実施形態5.第1の生体分子部分が、ペプチジル部分、核酸部分、または炭水化物部分である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の生体分子コンジュゲート。
【0205】
実施形態6.第1の生体分子部分が、ペプチジル部分であり、ペプチジル部分が、リジン、ヒスチジン、またはチロシンを介してバイオコンジュゲートリンカーに共有結合している、実施形態5に記載の生体分子コンジュゲート。
【0206】
実施形態7.第2の生体分子部分が、ペプチジル部分、核酸部分、または炭水化物部分である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の生体分子コンジュゲート。
【0207】
実施形態8.第2の生体分子部分が、ペプチジル部分であり、ペプチジル部分が、リジン、ヒスチジン、またはチロシンを介してバイオコンジュゲートリンカーに共有結合している、実施形態7に記載の生体分子コンジュゲート。
【0208】
実施形態9.-L-Rが、ペプチジル部分、核酸部分、または炭水化物部分である、実施形態2または3に記載の生体分子コンジュゲート。
【0209】
実施形態10.-L-Rが、ペプチジル部分、核酸部分、または炭水化物部分である、実施形態2、3、または9に記載の生体分子コンジュゲート。
【0210】
実施形態11.バイオコンジュゲートリンカーが、分子間リンカーである、実施形態1~10のいずれか1つに記載の生体分子コンジュゲート。
【0211】
実施形態12.バイオコンジュゲートリンカーが、分子内リンカーである、実施形態1~10のいずれか1つに記載の生体分子コンジュゲート。
【0212】
実施形態13.式(I)、式(II)、または式(III):
【化41】
のタンパク質であって、RおよびRが、各々独立して、ペプチジル部分であり、RおよびRが、任意に一緒に結合されて、分子内でコンジュゲートされたタンパク質を形成する、タンパク質。
【0213】
実施形態14.タンパク質が、式(I)のものである、実施形態13に記載のタンパク質。
【0214】
実施形態15.タンパク質が、式(II)のものである、実施形態13に記載のタンパク質。
【0215】
実施形態16.タンパク質が、式(III)のものである、実施形態13に記載のタンパク質。
【0216】
実施形態17.RおよびRが、各々独立して、タンパク質α鎖またはタンパク質β鎖を含む、実施形態13~18のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0217】
実施形態18.tRおよびRが、一緒に結合されて、分子内でコンジュゲートされたタンパク質を形成する、実施形態13~17のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0218】
実施形態19.RおよびRが、一緒に結合されていない、実施形態13~17のいずれか1つに記載のタンパク質。
【0219】
実施形態20.配列番号3のアミノ酸配列を有するピロリシル-tRNA合成酵素の基質結合部位内に少なくとも5個のアミノ酸残基置換を含む、ピロリシル-tRNA合成酵素。
【0220】
実施形態21.基質結合部位が、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位の残基アラニン、305位のロイシン、306位のチロシン、309位のロイシン、322位のイソロイシン、346位のアスパラギン、348位のシステイン、384位のチロシン、401位のバリン、および417位のトリプトファンを含む、実施形態20に記載のピロリシル-tRNA合成酵素。
【0221】
実施形態22.少なくとも5個のアミノ酸残基置換が、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位のアラニンの置換、346位のアスパラギンの置換、348位のシステインの置換、384位のチロシンの置換、および417位のトリプトファンの置換である、実施形態21に記載のピロリシル-tRNA合成酵素。
【0222】
実施形態23.少なくとも5個のアミノ酸残基置換が、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位のアラニンに対するイソロイシン、346位のアスパラギンに対するトレオニン、348位のシステインに対するイソロイシン、384位のチロシンに対するロイシン、および417位のトリプトファンに対するリジンである、実施形態22に記載のピロリシル-tRNA合成酵素。
【0223】
実施形態24.ピロリシル-tRNA合成酵素が、配列番号1のアミノ酸配列を有する、実施形態20~23のいずれか1つに記載のピロリシル-tRNA合成酵素。
【0224】
実施形態25.ピロリシル-tRNA合成酵素が、配列番号2の核酸配列によってコードされる、実施形態20~24のいずれか1つに記載のピロリシル-tRNA合成酵素。
【0225】
実施形態26.実施形態20~25のいずれか1つに記載のピロリシル-tRNA合成酵素をコードする核酸配列を含む、ベクター。
【0226】
実施形態27.tRNAPylをコードする核酸配列をさらに含む、実施形態26に記載のベクター。
【0227】
実施形態28.実施形態20~27のいずれか1つに記載のピロリシル-tRNA合成酵素と、以下の式:
【化42】
を有するフルオロサルフェート-L-チロシンと、を含む、複合体。
【0228】
実施形態29.tRNAPylをさらに含む、実施形態28に記載の複合体。
【0229】
実施形態30.実施形態1~12のいずれか1つに記載の生体分子コンジュゲートを含む、細胞。
【0230】
実施形態31.実施形態13~19のいずれか1つに記載のタンパク質を含む、細胞。
【0231】
実施形態32.実施形態20~25のいずれか1つに記載のピロリシル-tRNA合成酵素を含む、細胞。
【0232】
実施形態33.実施形態26または27に記載のベクターを含む、細胞。
【0233】
実施形態34.実施形態28または29に記載の複合体を含む、細胞。
【0234】
実施形態35.式:
【化43】
のフルオロサルフェート-L-チロシンを含む、細胞。
【0235】
実施形態36.配列番号3に示されるピロリシル-tRNA合成酵素の基質結合部位内に少なくとも5個のアミノ酸残基置換を含むピロリシル-tRNA合成酵素をさらに含む、実施形態35に記載の細胞。
【0236】
実施形態37.配列番号3に示されるピロリシル-tRNA合成酵素の基質結合部位内に少なくとも5個のアミノ酸残基置換を含むピロリシル-tRNA合成酵素をコードする核酸配列を含むベクターをさらに含む、実施形態35に記載の細胞。
【0237】
実施形態38.tRNAPylをさらに含む、実施形態35~37のいずれか1つに記載の細胞。
【0238】
実施形態39.細胞が、細菌細胞または哺乳類細胞である、実施形態30~38のいずれか1つに記載の細胞。
【0239】
実施形態40.実施形態11に記載の生体分子コンジュゲートを形成する方法であって、(i)FSY生体分子内のFSY部分を、第2の生体分子部分を含む化合物と接触させ(第2の生体分子は、FSY部分と反応性である)、それによって分子間リンカーを有する生体分子コンジュゲートを形成することを含む、方法。
【0240】
実施形態41.実施形態12に記載の生体分子コンジュゲートを形成する方法であって、(i)FSY生体分子内のFSY部分を、FSY生体分子内の第2の生体分子部分と接触させ(第2の生体分子は、FSY部分と反応性である)、それによって分子内リンカーを有する生体分子コンジュゲートを形成することを含む、方法。
【0241】
実施形態42.(i)における接触が、細胞内で行われる、実施形態40または41に記載の方法。
【0242】
実施形態43.ステップ(i)における接触の前に、(ii)生体分子、実施形態20~25のいずれか1つに記載のピロリシル-tRNA合成酵素、tRNAPyl、および式:
【化44】
を有するフルオロサルフェート-L-チロシンに接触させて、FSY生体分子を形成することをさらに含む、実施形態40または41に記載の方法。
【0243】
実施形態44.(ii)における接触が、細胞内で行われる、実施形態43に記載の方法。
【0244】
実施形態45.FSYタンパク質を、リジン、ヒスチジン、またはチロシンを含む第2のタンパク質と接触させ、それによって分子内でコンジュゲートされたタンパク質を形成することを含む、実施形態18に記載のタンパク質を形成する方法。
【0245】
実施形態46.FSYタンパク質中のフルオロサルフェート-L-チロシンを、第2のタンパク質中のリジン、ヒスチジン、またはチロシンと接触させ、それによって分子間でコンジュゲートされたタンパク質を形成する、実施形態19に記載のタンパク質を形成する方法。
【0246】
実施形態47.FSYタンパク質を産生することをさらに含み、方法が、タンパク質、実施形態20~25のいずれか1つに記載のピロリシル-tRNA合成酵素、tRNAPyl、および式:
【化45】
を有するフルオロサルフェート-L-チロシンを接触させ、それによってFSYタンパク質を産生することを含む、実施形態45または46に記載の方法。
【0247】
実施形態48.接触させることが、硫黄-フッ化物交換反応を含む、実施形態40~47のいずれか1つに記載の方法。
【0248】
実施形態49.接触させることが、近接により可能になる硫黄-フッ化物交換反応を含む、実施形態48に記載の方法。
【0249】
実施形態50.接触させることが、細胞内で行われる、実施形態46~50のいずれか1つに記載の方法。
【0250】
実施形態51.リジン、ヒスチジン、またはチロシンの近位にある非天然アミノ酸を含むタンパク質であって、非天然アミノ酸が、式:
【化46】
の側鎖を有する、タンパク質。
【0251】
実施形態52.式(A)の部分、式(B)の部分、式(C)の部分、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含むタンパク質
【化47】
【0252】
実施形態53.実施形態51または52に記載のタンパク質を含む、細胞。
【0253】
実施形態P1~P29
実施形態P1.バイオコンジュゲートリンカーを介して第2の生体分子部分にコンジュゲートされた第1の生体分子部分を含む生体分子コンジュゲートであって、当該バイオコンジュゲートリンカーが、式:
【化48】
を有する、生体分子コンジュゲート。
【0254】
実施形態P2.当該生体分子コンジュゲートが、式:R-L-A-X-L-Rを有し、式中、Aが、当該バイオコンジュゲートリンカーであり、Rが、当該第1の生体分子部分であり、Rが、当該第2のバイオコンジュゲート部分であり、Lが、結合または第1の共有結合リンカーであり、Lが、結合または第2の共有結合リンカーであり、Xが、-NR-、-O-、-S-、または
【化49】
であり、環Aが、置換もしくは非置換ヘテロアリーレンまたは置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレンであり、A中の窒素が、当該バイオコンジュゲートリンカーに結合され、Rが、水素、置換もしくは非置換アルキリル、置換もしくは非置換ヘテロアルキリル、置換もしくは非置換シクロアルキリル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキリル、置換もしくは非置換アリーリル、または置換もしくは非置換ヘテロアリーリルである、実施形態P1に記載の生体分子コンジュゲート。
【0255】
実施形態P3.Lが、結合、-S(O)-、-NR3A-、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)NR3A-、-NR3AC(O)-、-NR3AC(O)NR3B-、-C(O)O-、-OC(O)-、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換アリーレン、または置換もしくは非置換ヘテロアリーレンであり、Lが、結合、-S(O)-、-NR4A-、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)NR4A-、-NR4AC(O)-、-NR4AC(O)NR4B-、-C(O)O-、-OC(O)-、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換ヘテロアルキレン、置換もしくは非置換シクロアルキレン、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換アリーレン、または置換もしくは非置換ヘテロアリーレンであり、R3A、R3B、R4A、およびR4Bが、独立して、水素、置換もしくは非置換アルキリル、置換もしくは非置換ヘテロアルキリル、置換もしくは非置換シクロアルキリル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキリル、置換もしくは非置換アリーリル、または置換もしくは非置換ヘテロアリーリルである、実施形態P2に記載の生体分子コンジュゲート。
【0256】
実施形態P4.Xが、イミダゾール、-NH-、または-O-である、実施形態P2に記載の生体分子コンジュゲート。
【0257】
実施形態P5.当該第1の生体分子部分が、ペプチジル部分である、実施形態P1に記載の生体分子コンジュゲート。
【0258】
実施形態P6.当該第2の生体分子部分が、ペプチジル部分である、実施形態P1に記載の生体分子コンジュゲート。
【0259】
実施形態P7.-L-Rが、ペプチジル部分である、実施形態P2~P4のいずれか1つに記載の生体分子コンジュゲート。
【0260】
実施形態P8.-L-Rが、ペプチジル部分である、実施形態P2~P4のいずれか1つに記載の生体分子コンジュゲート。
【0261】
実施形態P9.当該第1の生体分子部分が、核酸部分または炭水化物部分である、実施形態P1に記載の生体分子コンジュゲート。
【0262】
実施形態P10.当該第2の生体分子部分が、核酸部分または炭水化物部分である、実施形態P1に記載の生体分子コンジュゲート。
【0263】
実施形態P11.-L-Rが、核酸部分または炭水化物部分である、実施形態P2~P4のいずれか1つに記載の生体分子コンジュゲート。
【0264】
実施形態P12.-L-Rが、核酸部分または炭水化物部分である、実施形態P2~P4のいずれか1つに記載の生体分子コンジュゲート。
【0265】
実施形態P13.当該突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素の基質結合部位内に少なくとも5個のアミノ酸残基置換を含む、突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素。
【0266】
実施形態P14.当該基質結合部位が、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位の残基アラニン、305位のロイシン、306位のチロシン、309位のロイシン、322位のイソロイシン、346位のアスパラギン、348位のシステイン、384位のチロシン、401位のバリン、および417位のトリプトファンを含む、実施形態P13に記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素。
【0267】
実施形態P15.当該少なくとも5個のアミノ酸残基置換が、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位のアラニンの置換、346位のアスパラギンの置換、348位のシステインの置換、384位のチロシンの置換、および417位のトリプトファンの置換である、実施形態P14に記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素。
【0268】
実施形態P16.当該少なくとも5個のアミノ酸残基置換が、配列番号3のアミノ酸配列に示されるように、302位のアラニンに対するイソロイシン、346位のアスパラギンに対するトレオニン、348位のシステインに対するイソロイシン、384位のチロシンに対するロイシン、および417位のトリプトファンに対するリジンである、実施形態P15に記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素。
【0269】
実施形態P17.当該突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素が、配列番号1のアミノ酸配列を有する、実施形態P13~P16のいずれか1つに記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素。
【0270】
実施形態P18.当該突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素が、配列番号2の核酸配列によってコードされる、実施形態P13~P17のいずれか1つに記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素。
【0271】
実施形態P19.実施形態P13~P18のいずれか1つに記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素をコードする核酸配列を含む、ベクター。
【0272】
実施形態P20.tRNAPylをコードする核酸配列をさらに含む、実施形態P19に記載のベクター。
【0273】
実施形態P21.実施形態P13~P18のいずれか1つに記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素と、以下の式:
【化50】
を有するフルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)と、を含む、複合体。
【0274】
実施形態P22.tRNAPylをさらに含む、実施形態P21に記載の複合体。
【0275】
実施形態P23.実施形態P1~P12のいずれか1つに記載の生体分子コンジュゲート、実施形態P13~P18のいずれか1つに記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素、実施形態P19もしくはP20に記載のベクター、または実施形態P21もしくはP22に記載の複合体を含む、修飾細胞。
【0276】
実施形態P24.以下の式:
【化51】
を有する、フルオロ硫酸塩-L-チロシン(FSY)を含む、修飾細胞。
【0277】
実施形態P25.実施形態P13~P18のいずれか1つに記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素をさらに含む、実施形態P24に記載の修飾細胞。
【0278】
実施形態P26.実施形態P19またはP20に記載のベクターをさらに含む、実施形態P24に記載の修飾細胞。
【0279】
実施形態P27.tRNAPylをさらに含む、実施形態P24に記載の修飾細胞。
【0280】
実施形態P28.生体分子コンジュゲートを形成する方法であって、実施形態P13~P18のいずれか1つに記載の突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素、tRNAPyl、および以下の式:
【化52】
を有するフルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)を接触させることを含む、方法。
【0281】
実施形態P29.当該接触させることが、細胞内で行われる、実施形態28に記載の方法。
【実施例
【0282】
以下の実施例は、本開示のある特定の実施形態および態様をさらに例示することを意図している。実施例は、本開示または特許請求の範囲の趣旨または範囲を限定することを意図していない。
【0283】
実施例1
インビボでタンパク質中のSuFExを介してリジン、ヒスチジン、およびチロシンと反応するようにフルオロサルフェート-L-チロシンを遺伝子コードする
【0284】
生細胞中のタンパク質に新しい化学反応性を導入することは、インビボでの研究および操作のためのタンパク質への革新的な共有結合能力を付与するであろう。潜在的な生体反応性の非天然アミノ酸(Uaas)をタンパク質中に組み込み、近接により可能になる反応性を介して標的天然アミノ酸残基と反応させることができる。そのようなインビボでの反応性に適したタンパク質の多様性を拡大するために、生体適合性であり、生理学的条件下で複数の天然残基と反応することができる化学官能性が非常に望ましい。ここで、発明者らは、インビボでタンパク質上で硫黄-フッ化物交換(SuFEx)を受ける第1の潜在的な生体反応性Uaaであるフルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)の遺伝子コードを報告する。FSYは、E.coliおよび哺乳類細胞に対して非毒性であることが見出され、タンパク質に組み込まれた後、SuFExを介して近位リジン、ヒスチジン、およびチロシンと選択的に反応し、生細胞内で直接相互作用するタンパク質の共有タンパク質内架橋およびタンパク質間架橋を生成した。FSYの近接活性化可能な反応性、多標的化能力、および優れた生体適合性は、インビボでのタンパク質の共有結合操作に非常に貴重であろう。さらに、遺伝子コードされたFSYは、これによって化学生物学、創薬、および生物療法学において広範な有用性を提供するであろう次世代のクリック化学、SuFExで一般タンパク質に力を与える。
【0285】
E.coliおよび哺乳類細胞中のタンパク質にフルオロサルフェート-L-チロシン(FSY)(図1A)を遺伝的に組み込むために、新しいtRNA合成酵素対を開発した。本発明者らは、FSYが一般に細胞に対して非毒性であり、生理学的条件下でタンパク質内およびタンパク質間の近接により可能になるSuFEx反応を介してLys、His、およびTyrと反応することができることを見出した(図1B)。本発明者らは、インビボで直接FSYを使用した相互作用タンパク質の架橋を実証した。
【0286】
SO/ホウ砂法(収率88%)を使用して、FSYを合成した。Dong et al,Angew.Chem.Int.Ed.Engl,53:9430-9448(2014)、Chen et al,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,55:1835-1838(2016)。FSYを遺伝子的にコードするために、本発明者らは、FSYに特異的な突然変異体ピロリシル-tRNA合成酵素(PylRS)を開発した。小知能突然変異誘発アプローチを使用して、Methanosarcina mazei PylRSの残基Ala302、Leu305、Tyr306、Leu309、Ile322、Asn346、Cys348、Tyr384、Val401、およびTrp417を突然変異させることによって、PylRS突然変異体ライブラリを生成し、記載されるように選択した。Lacey et al,ChemBioChem,14:2100-2105(2013)、Wang et al,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,44:34-66(2005)、Takimoto et al,ACS Chem.Biol.,6:733-743(2011)。FSY依存性表現型を示す6つのヒットが同定され、それらは全て、本明細書でFSYRSと称される同じアミノ酸配列(302I/346T/348I/384L/417K)上に集中していた。
【0287】
E.coli中のタンパク質へのFSYの組み込み特異性を評価した。36位にTAGコドンを含有するZspaアフィボディ(Afb)遺伝子(Afb-36TAG)を、E.coli中のtRNAPyl/FSYRS対と共発現させた。FSYが存在しない場合、全長Afbは検出されず、成長培地に1mMのFSYを添加した場合、全長Afb36FSYを1.6mg/Lの収率で産生した(図1C)。精製したAfb36FSYを、エレクトロスプレーイオン化飛行時間質量分析(ESI-TOF MS)によって分析した(図1D)。7855.96Daで観察されたピークは、部位36でFSYを含有する無傷のAfbに対応する(Afb36FSY:予想7856.69Da)。7724.77Daで測定されたピークは、開始Metを欠くAfb36FSYに対応する(Afb36FSY-Met:予想7725.50Da)。7836.55および7705.16Daで観察された2つの軽微なピークは、それぞれFを欠くAfb36FSY(予想7836.69Da)およびFを欠くAfb36FSY-Met(予想7705.49Da)に対応し、MS測定中にわずかなF消失を示唆した。特に、36位に他のアミノ酸を含有するAfbに対応するピークは観察されなかった。FSYはまた、Zタンパク質の24位に組み込まれ、タンデムMSで分析された。一連のbおよびyイオンは、FSYがTAG指定位置24に組み込まれたことを明確に示した(図1E)。1mMのFSYの存在は、E.coliの成長に影響を及ぼさず(図6)、明らかな細胞毒性がないことを示した。これらの結果は、進化したtRNAPyl/FSYRS対が、E.coli中で高効率かつ特異性でFSYを組み込むことができることを示した。
【0288】
哺乳類細胞中のタンパク質へのFSY組み込みを試験した。HeLa-EGFP-182TAGレポーター細胞を、FSYRSおよびtRNAPyl遺伝子を発現するプラスミドpMP-FSYRS-3xtRNAでトランスフェクトした。Wang et al,Nat.Neurosci.,10:1063-1072(2007)。182TAGコドンの抑制により、全長EGFPレンダリング細胞が蛍光性になる。トランスフェクション後、細胞を37℃で24時間または48時間、様々な濃度のFSYでインキュベートし、続いて、フローサイトメトリーを行った。強いEGFP蛍光は、FSYを付加したときにのみ細胞から測定した(図2A)。蛍光強度は、FSY濃度およびインキュベーション時間と共に増加した(図2B図7)。陽性対照として、プラスミドpIre-Azi3を使用して、我々の手中にある哺乳類細胞において最も効率的なUaa組み込み系である、p-アジド-L-フェニルアラニン(AzF)をレポーター細胞に並行して組み込んだ。Coin et al,Cell,155:1258-1269(2013)。FSY組み込みは、AzFと比較して良好であり、AzFレベルの76%に達する。特に、細胞毒性は、しばしば生体反応性Uaasの問題であるが、HeLaまたは293T細胞に対するFSYの明らかな毒性は観察されなかったが(図8)、FSYの貴重な特徴は、細胞内のフルオロ硫酸アリールの極めて低いバックグラウンド反応性に起因する可能性がある。Chen et al,J.Am.Chem.Soc.,138:7353-7364(2016)。これらの結果はまた、蛍光共焦点顕微鏡法によっても確認された(図2C)。FSYの存在下では、細胞全体にわたって強いEGFP蛍光が観察され、細胞形態は正常なままであった。FSYを付加しなかった場合、蛍光シグナルは検出されなかった。これらの結果により、FSYが有害な効果を引き起こさずに、高い効率および特異性で哺乳類細胞中のタンパク質に組み込まれたことが実証される。
【0289】
次いで、本発明者らは、組み込まれたFSYがE.coli中で直接近接により可能になる反応性を介して天然アミノ酸残基と反応することができるかどうかを決定した。Afbは、適度な親和性でその基質Zタンパク質に結合し、インビボでFSY架橋を研究するための好適なタンパク質フレームワークを提供する。Afb-Z複合体の結晶構造に照らして(Hogbom,et al,P.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100:3191-3196(2003))、本発明者らは、Zタンパク質の24位にFSYを導入し、Afbの7位に標的天然残基を導入し、Afb-Z結合時に2つの残基を近接して配置した(図3A)。フルオロ硫酸アリールが弱い求電子体であるため、発明者らは、陰性対照としてAlaを使用して、Lys、His、Tyr、Cys、Ser、およびThrに対するFSYの反応性を試験することにした。類似の分子量のAfbタンパク質およびZタンパク質をより良好に分離するために、マルトース結合タンパク質(MBP)をZのN末端(MBP-Z)に融合させた。MBP-ZおよびAfbは共に、C末端に6×Hisタグを付加した。生細胞中で化学架橋が生じる可能性があるかどうかを判断するために、E.coli中でMBP-Z24FSYおよびAfb-7X(X=標的残基)を共発現させた。37℃で6時間培養した後、同じ数の細胞を、変性条件下でウェスタンブロットを使用して分析した。Afb-7Lys、Afb-7His、またはAfb-7Tyrを発現する細胞から、MBP-Z24FSYおよびAfb付加物に対応する分子量で架橋バンドが観察された(図3B)。6×Hisタグ付けタンパク質を細胞から精製し、SDS-PAGEで分析した。一貫して、Afbと架橋したMBP-Zに対応するタンパク質バンドは、Afb-7Lys、Afb-7His、およびAfb-7Tyrについて明確に観察され(図3B)、架橋効率は、それぞれ59%、53%、および35%であった。対照的に、MBP-Z24FSYを、Afb-7Cys、Afb-7Ser、Afb-7Thr、またはAfb-7Alaと共発現させた場合、架橋バンドは観察されなかった。アリールカルバメートは、インビトロでAfb/Z界面でLysまたはTyrを架橋するために塩基性pHを必要とするが(Xuan et al,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,56:5096-5100(2017))、FSYは、Lys、His、またはTyrを生きたE.coli細胞内で直接架橋することができた。
【0290】
FSYのインビボ化学架橋能力をさらに検証するために、精製タンパク質をタンデムMSを使用して分析した。予想どおり、MBP-Z24FSYおよびAfb-7Lysの共有結合ペプチドに対応する強力なシグナルを同定した(図3C)。一連のbおよびy断片化イオンは、組み込まれたFSYがAfbのLys7と独占的に架橋されていることを明確に示した。Afb-7Hisと共発現したMBP-Z24FSYについても同様のMS結果を得て、標的His7と架橋したFSYを確認した(図3D)。一方、ウェスタンおよびSDS-PAGEの結果と一致して、Afb-7Ser、Afb-7Thr、Afb-7Cys、またはAfb-7AlaとのMBP-Z24FSYの架橋ペプチドは、タンデムMSによって検出されなかった。MBP-Z24FSYとAfb-7Tyrとの架橋は、ウェスタンおよびSDS-PAGEを使用して検出されたが(図3B)、タンデムMSとの架橋ペプチドは同定できなかった。
【0291】
FSYがTyrと反応する追加の証拠を探求するために、FSYおよびTyrを、インビボでの分子内架橋のために単一タンパク質に組み込んだ。E.coliでは、tRNAPyl/FSYRS対を、FSY組み込みのための76TAGをコードする突然変異体カルモジュリン遺伝子(CaM-76TAG)、および近くの部位80におけるTyrと共発現させた(図4A)。このCaMタンパク質を、1mM FSYの存在下で発現させ、精製し(図4B)、タンデムMSで分析した(図4C)。一連のbおよびy断片イオンは、FSYがSuFExを介してTyr80と共有結合を形成し、HFの質量を失うことを明確に示す。
【0292】
FSYが天然Tyr残基を標的とすることを通じて相互作用タンパク質を架橋することができることを実証するために、FSYアーム型チオレドキシン(Trx)が、3´-ホスホアデノシン-5´-ホスホ硫酸(PAPS)還元酵素を共有結合的に捕捉できるかどうかを試験した。Trxは、PAPS還元酵素と相互作用して、デノボシステイン生合成のためのアデニル化硫酸塩の亜硫酸塩への還元を促進する。Chartron et al.Biochemistry,46:3942-3951(2007)。Trx1を有するPAPS還元酵素の複合体構造に基づいて(Chartron et al.Biochemistry,46:3942-3951(2007))、FSYを部位62のE.coli Trx1に組み込み、PAPS還元酵素の近位Tyr191を標的にした(図5A)。Trx1(62FSY)およびWT PAPS還元酵素を、pH7.4または8.0のTris緩衝液中で12時間発現、精製、およびインキュベートした。SDS-PAGEは、PAPS還元酵素を有するTrx1の共有結合複合体に対応する明確なバンドを示した(図5B図9)。試料をタンデムMSを使用してさらに分析し、これは、Trx1のFSYがSuFEx反応を介してPAPS還元酵素の標的Tyr191と共有結合的に架橋したことを明確に示した(図5C)。まとめると、分子内CaM架橋および分子間Trx1-PAPS還元酵素架橋は、SuFEx反応を介してFSYがTyrと近接して反応したことを確認した。
【0293】
要約すると、生細胞に優しいFSYを、E.coli細胞および哺乳類細胞中のタンパク質に遺伝子コードし、生きたE.coli細胞中で直接SuFExを介して近位のLys、His、およびTyr残基と選択的に反応させた。生体反応性Uaasを使用する分子間架橋は、Cysを標的とする少数の例外を除いて、主にインビトロでの使用に限定されてきた(Coin et al,Cell,155:1258-1269(2013)、Yang et al,Nat.Commun.,8:2240(2017))、FSYは、インビボで相互作用するタンパク質の分子間架橋を可能にし、3つの異なる残基を標的とする。FSYの標的残基は、タンパク質表面および界面にしばしば見出されるため、FSYは、共有結合に適したタンパク質の多様性を劇的に拡大し、タンパク質共有結合能力を利用するための創造的なインビボ用途を可能にする。さらに、FSYを遺伝子コードすることで、新世代のクリック化学、SuFExでタンパク質を強化し、これは化学生物学、創薬、および生物療法学における広範な応用を見出すであろう。
【0294】
材料および方法
FSYの化学合成:フルオロサルフェート-L-チロシンHCl塩を、従来のSO/ホウ砂法に基づいて合成した。Chen et al,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2016,55,1835-1838、Dong et al,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2014,53,9430-9448。
【化53】
【0295】
磁気撹拌棒を含む2Lの二口丸底フラスコに、Boc-Tyr-OH(5.00g、17.8mmol)、210mLのCHCl、および860mLの飽和ホウ砂溶液を添加した。混合物を20分間激しく撹拌した。二相溶液が脱気を開始するまで反応系を真空処理し、SOを3回再充填した。反応混合物を25℃で一晩激しく撹拌した。CHClは、回転式蒸発器を使用して慎重に除去した。次いで、1MのHCl水溶液(210mL)を、撹拌しながらゆっくりと反応混合物に添加したところ、白色固体が沈殿した。混合物を濾過し、固体を水(80mL×3)で洗浄した。白色固体を真空下(1mmHg)、40℃で4時間乾燥させ、6.07g(16.7mmol)のBoc-Tyr-OSOFを得、これをさらに精製することなく次のステップで直接使用した。
【0296】
Boc-Tyr-OSOF(2.0g、5.5mmol)をジオキサン(11mL)中の4M HClで処理し、反応混合物を一晩撹拌し、その間に白色固体が沈殿した。固体を濾過し、冷たいエーテル(5mL×2)によって洗浄して、標的化フルオロサルフェート-L-チロシンHCl塩を白色固体として得た(1.46g、88%収率)。1H NMR(400MHz,CDOD):δ(ppm)3.23-3.41(m,2H),4.32-4.34(m,1H),7.45-7.53(m,4H);13C NMR(400MHz,CDOD):δ(ppm)38.9,57.2,125.0,135.3,139.5,153.5,173.3;MS:264.0[NH-Tyr-OSOF],286.0[NH-Tyr-OSOF+Na]
【0297】
合成酵素ライブラリの構築および選択:MmPylRSのpBK-TK3突然変異体ライブラリは、各アミノ酸に対して単一のコドンを使用し、したがってより多くの残基を同時に突然変異させる新しい小知能突然変異誘発アプローチを使用して構築された。Lacey et al,ChemBioChem,14:2100-2105(2013)によって以前に記載された手順を使用して、MmPylRSの以下の残基を突然変異させた:302NYT、305WTG、306WTG/TAC、309KYA、322AYA、346NDT/VMA/ATG/TGG、348NDT/VMA/ATG/TGG、384TTM/TAT、401VTT、417NDT/VMA/ATG/TGG。
【0298】
pREP陽性選択レポーターを保有するDH10B細胞(100μL)を、エレクトロポレーションを介して100ngのpBK-TK3ライブラリで形質転換した。エレクトロポレーションした細胞を、1mLの予温したSOC培地で直ちに回収し、37℃で1時間激しく撹拌した。回収した細胞を、1mMのFSY、12.5μgmL-1のテトラサイクリン(Tet)、25μgmL-1のカナマイシン(Kan)、および68μgmL-1のクロラムフェニコール(Cm)を補充したLB-寒天選択プレート上に直接播種した。選択プレートを37℃で48時間インキュベートし、次いで室温で保管した。緑色蛍光を示すコロニーを、100μLのLB中で希釈し、1)Tet12.5Kan25、2)Tet12.5Kan25Cm100、3)Tet12.5Kan25Cm100を含有する、1mMのFSYを補充したLB-寒天スクリーニングプレート上で複製した。37℃で48時間のインキュベーション後、FSY依存性蛍光および成長を示した6個のクローンをヒットとしてみなし、さらに特徴付けた。PylRS突然変異体をコードするpBKプラスミドをミニプレップによって抽出し、次いでDNAゲル電気泳動によってレポータープラスミドから分離した。精製したpBKプラスミドを、Sanger配列決定によって分析した。
【0299】
プラスミド構築
pEvol-FSY:pEvol-FSYプラスミドは、ライゲーション非依存性クローニングを介して、FSYRSコード遺伝子をpEvolベクターに導入することによって生成した。Li et al,S.J.Nat.Methods,4:251-256(2007)。簡潔に述べると、FSYRS遺伝子を以下のプライマーで増幅し、精製し、T4 DNAポリメラーゼでpEvolベクターにライゲーションした(Bgl IIおよびSal Iで直線化した)。FSRYS-BglII-Fは、配列番号5である。FSYRS-SalI-Rは、配列番号6である。
【0300】
pMP-3×tRNAPyl-FSYRS:pMP-3x
【化54】
-FSYRSプラスミドは、標準クローニングを介してFSYRS遺伝子をpMPベクターに導入することによって構築した。FSYRS遺伝子を以下のプライマーで増幅し、Nco IおよびNhe Iで消化し、同じ制限酵素で前処理したpMPベクターにライゲーションした。FSYRS-NcoI-Fは、配列番号7である。FSYRS-NheI-Rは、配列番号8である。
【0301】
pET-Duet-Afb4A-7X-MBP-Z24TAG:FSYのインビボ架橋能力を評価するために、pET-Duet-Afb4A-7X-MBP-Z24TAGプラスミドを、部位特異的突然変異誘発を介して、pET-Duet-MBP-Z24TAG発現ベクター内のAfb4A-7X(X=Lys、Tyr、Cys、Ser、Thr、His、またはAla)遺伝子の残基7に突然変異を導入することによって生成した。Yang et al,Nat.Communi,8:2240(2017)。以下のプライマーを使用した。Afb-4A7A-Fは、配列番号9である。Afb-4A7K-Fは、配列番号10である。
【0302】
pTak-CaM-76TAG-80Tyr:FSYの分子内架橋能力を調査するために、遺伝子CaMをコードするカルモジュリンの残基76および80を、それぞれアンバー停止コドンTAGおよびTyrに突然変異させた。一方、CaMの残基75、77、79、81を、重複PCRを介してAlaに突然変異させ、架橋反応を補助した。CaM遺伝子を以下のプライマーで増幅し、Spe IおよびBlp Iで消化し、同じ制限酵素で前処理したpTak-CaMベクターにライゲーションした。CaM-SpeI-Fは、配列番号18である。80Tyr-Rは、配列番号19である。80Tyr-Fは、配列番号20である。
【0303】
pBad-CysH:pBad-CysHプラスミドを生成するために、遺伝子CysHをコードするPAPS還元酵素をコロニーPCRによって増幅し、Nde IおよびHind IIIで消化し、同じ制限酵素で前処理されたpBadベクターにライゲーションした。CysH-NdeI-Fは、配列番号22である。CysH-Hind3-Rは、配列番号23である。
【0304】
pBad-Trx35A62TAG:pBad-Trx35A62TAGプラスミドを生成するために、Trx35A遺伝子の残基62を、以下のプライマーを用いた部位特異的突然変異誘発を使用して、アンバー停止コドンTAGに突然変異させた。Trx-62TAG-Fは、配列番号24である。Trx-62TAG-Rは、配列番号25である。
【0305】
タンパク質発現:
Afb36FSY:pTak-Afb36TAG-HisおよびpBK-FSYRSを、DH10B E.coli化学能細胞に共形質転換した。形質転換体をLB-Kan50Cm34寒天プレート上に配置し、37℃で一晩インキュベートした。単一のコロニーを5mLの2xYT-Kan50Cm34に接種し、37℃で一晩培養した。翌日、2mLの一晩細胞培養物を100mLの2xYT-Kan50Cm34に希釈し、37℃で激しく撹拌した。OD600が0.4~0.6に達したとき、細胞培養物の半分(50mL)を1mMのFSYおよび0.5mMのIPTGで補充し、次いで、30℃で6時間誘導した。陰性対照として、残りの50mLの細胞培養物を、30℃で6時間、0.5mMのIPTGで誘導した。細胞ペレットを、4℃で30分間、4200gで遠心分離することによって収集し、-80℃で貯蔵した。
【0306】
Afb4A-7XおよびMBP-Z24FSY:pEvol-FSYRSおよびpET-Duet-Afb4A-7X-MBP-Z24TAGを、BL21(DE3)E.coli化学能細胞に共形質転換した。形質転換体をLB-Amp100Cm34寒天プレート上に配置し、37℃で一晩インキュベートした。単一のコロニーを5mLの2xYT-Amp100Cm34に接種し、37℃で一晩培養した。翌日、1mLの一晩細胞培養物を50mLの2xYT-Amp100Cm34に希釈し、37℃で激しく撹拌した。OD600が0.4~0.6に達したとき、細胞培養物を0.5mMのIPTGおよび0.2%のアラビノースで誘導し、次いで、37℃で6時間インキュベートした。細胞ペレットを、4℃で30分間、4200gで遠心分離することによって収集し、-80℃で貯蔵した。
【0307】
CaM-76FSY-80Tyr:pBad-CaM76TAG80TyrおよびpEvol-FSYRSをBL21(DE3)E.coli化学能細胞に共形質転換した。形質転換体をLB-Amp100Cm34寒天プレート上に配置し、37℃で一晩インキュベートした。単一のコロニーを5mLの2xYT-Amp100Cm34に接種し、37℃で一晩培養した。翌日、1mLの一晩細胞培養物を50mLの2xYT-Amp100Cm34に希釈し、37℃で激しく撹拌した。OD600が0.4~0.6に達したとき、細胞培養物を0.2%のアラビノースで誘導し、次いで、37℃で6時間インキュベートした。細胞ペレットを、4℃で30分間、4200gで遠心分離することによって収集し、-80℃で貯蔵した。
【0308】
Trx35A62FSY:pBad-Trx35A62TAGおよびpEvol-FSYRSをBL21(DE3)E.coli化学能細胞に共形質転換した。形質転換体をLB-Amp100Cm34寒天プレート上に配置し、37℃で一晩インキュベートした。単一のコロニーを5mLの2xYT-Amp100Cm34に接種し、37℃で一晩培養した。翌日、1mLの一晩細胞培養物を50mLの2xYT-Amp100Cm34に希釈し、37℃で激しく撹拌した。OD600が0.4~0.6に達したとき、細胞培養物を0.2%のアラビノースで誘導し、次いで、30℃で6時間インキュベートした。細胞ペレットを、4℃で30分間、4200gで遠心分離することによって収集し、-80℃で貯蔵した。
【0309】
PAPS還元酵素:pBad-CysHを、DH10B E.coli化学能細胞に形質転換した。形質転換体をLB-Amp100寒天プレート上に配置し、37℃で一晩インキュベートした。単一のコロニーを10mLの2xYT-Amp100に接種し、37℃で一晩培養した。翌日、10mLの一晩細胞培養物を1Lの2xYT-Amp100に希釈し、37℃で激しく撹拌した。OD600が0.4~0.6に達したとき、細胞培養物を0.2%のアラビノースで誘導し、次いで、30℃で6時間インキュベートした。細胞ペレットを、4℃で30分間、4200gで遠心分離することによって収集し、-80℃で貯蔵した。
【0310】
Hisタグタンパク質精製:上記の細胞ペレットを、14mLの溶解緩衝液(50mMのTris-HCl(pH8.0、500mMのNaCl、20mMのイミダゾール、1%v/vのTween 20、10%v/vのグリセロール、リゾザイム1mg/mL、DNase 0.1mg/mL、およびプロテアーゼ阻害剤)に再懸濁した。細胞懸濁液を4℃で30分間溶解した。細胞溶解物を、氷水浴中でSonic Dismembrator(Fisher Scientific、30%出力、3分、1秒オフ、1秒オン)で超音波処理し、続いて遠心分離を行った(20,000g、30分、4℃)。可溶性画分を収集し、事前平衡化Protino(登録商標)Ni-NTAアガロース樹脂(400μL)を用いて4℃で1時間、一定の機械的回転でインキュベートした。スラリーをPoly-Prep(登録商標)クロマトグラフィーカラムに充填し、5mLの洗浄緩衝液(50mMのTris-HCl pH8.0、500mMのNaCl、20mMのイミダゾール、および10%v/vのグリセロール)で3回洗浄し、200μLの溶出緩衝液(50mMのTris-HCl、pH8.0、500mMのNaCl、250mMのイミダゾール、および10%v/vのグリセロール)で5回溶出させた。溶出液を濃縮し、緩衝液を、Amicon Ultraカラムを使用して100μLのタンパク質貯蔵緩衝液(50mM Tris-HCl、pH7.4または8.0、および150mMのNaCl)中に交換し、将来の分析のために-80℃で貯蔵した。
【0311】
HeLa-GFP-182TAGレポーター細胞へのUaa組み込みのFACS分析:トランスフェクションの1日前に、4.5×10個のHeLa-EGFP-182TAGレポーター細胞(Wang et al.,Nat.Neurosci.,10:1063-1072(2007))を、10%のFBSを有する500μLのDMEM培地を含有するGreiner bio-one24ウェル細胞培養皿に播種し、COインキュベーター中37℃でインキュベートした。プラスミドpMP-3xtRNA-FSYRS(500ng、FSYRSおよびtRNAPylの3コピーをコードする)を、製造業者の指示に従って、2.5μLのリポフェクタミン2000を使用して標的細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後、トランスフェクション複合体を含有する培地を、1mM FSYの存在下または非存在下で10% FBSを有する新鮮なDMEM培地で置き換えた。AzF組み込みのために、プラスミドpIre-Azi3(Coin et al,Cell,155:1258-1269(2013))を同様にトランスフェクトし、1mMのAzFの有無にかかわらず、10%のFBSを含有するDMEM培地を使用した。37℃で24~48時間のインキュベーション後、トランスフェクトした細胞をトリプシン化し、遠心分離しによって収集した(1500rpm、5分、室温)。細胞を300μLのFACS緩衝液(1×PBS、2% FBS、1mM EDTA、0.1%アジドナトリウム、0.28μM DAPI)中に再懸濁し、BD LSRFortessa(商標)細胞分析器によって分析した。
【0312】
HeLa-EGFP-182TAGレポーター細胞の蛍光共焦点顕微鏡:トランスフェクションの1日前に、4.5×10個のHeLa-EGFP-182TAG細胞を、10%のFBSを有する500μLのDMEM培地を含有するGreiner bio-one CELLビューガラス底皿に播種し、COインキュベーター中37℃でインキュベートした。プラスミドpMP-3xtRNA-FSYRS(500ng)を、製造業者の指示に従って、2.5μLのリポフェクタミン2000を使用して標的細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後、培地を1mMのFSYの有無にかかわらず完全なDMEM培地で置き換えた。細胞を37℃でさらに24~48時間インキュベートし、Nikon Eclipse Ti共焦点顕微鏡で撮像した。
【0313】
質量分析:無傷のFSY含有Afbを、Agilent 1100 HPLCシステムに結合したAgilent 6210質量分析計を使用して、ESI-TOF MSによって分析した。2マイクログラムのタンパク質試料を、オートサンプラーによって注入し、0~80%のアセトニトリルの逆相勾配により、Agilent Zorbax SB-C8カラム(長さ2.1mm ID×10cm)上で15分間分離した。分析の直前に質量較正を行った。タンパク質スペクトルを平均化し、電荷状態を、Agilent MassHunterソフトウェアを使用してデコンボリューションした。
【0314】
タンパク質消化およびタンデム質量分析測定は、Yang et al,Nat.Communi.,8:2240(2017)によって以前に記載されたように行った。Afb/MBP-Z試料をGlu-Cで消化した。CaMおよびTrx1/PAPS還元酵素試料をトリプシンによって消化した。消化されたペプチドを、インラインEASYスプレー源およびElite質量分析計(Thermo Fisher)と連動したナノ-LC UltiMate 3000高性能液体クロマトグラフィーシステム(Thermo Fisher)で分析した。ペプチドを、2%~40%緩衝液B(80%アセトニトリル、20% HO、0.1%ギ酸)の勾配にわたって、EASY-Spray PepMap C18カラム(50cm;粒径、2μm;孔径、100Å;Thermo Fisher)から流量300nL/分で溶出させた。異なる試料について、分離方法にわずかな修正を加えた。エリート質量分析計を、データ依存モードで、R=60,000(m/z=200)質量範囲が375~1800(AGC標的1×10)、続いて10回のCID MS/MS走査で操作した。30秒の動的除外時間を使用し、単一荷電イオンを除外した。質量分析の生データは、Maxquantによって検索された。
【0315】
実施例2
FSYを使用して、リガンドをその未変性受容体に共有結合させた。ヒト成長ホルモン(hGH)は、下垂体前葉によって分泌されるホルモンである。hGHは、hGH受容体と結合し、ヒトの成長、細胞繁殖、および細胞再生を刺激する。また、インスリン様成長因子の産生を刺激する。成長ホルモン欠乏症は、米国の4000人に1人の子供に影響を及ぼし、治療するのに高価であるため、hGHは、興味深い治療標的である(Stanley,T.Curr.Opin.Endocrinol Diabetes Obes.2012,19.47-52)。加えて、過剰なhGHは、乳癌の発達、進行、および転移に関与している(Subramani,R.et al.Endocrinology,6:1543-1555(2017))。
【0316】
その受容体とのhGH結合の結晶構造に基づいて、FSYを、部位68のhGHに遺伝子的に組み込み、受容体の残基Lys166を標的とした(図11)。E.coli中でhGH(FSY68)を発現させ、続いて精製した後、hGH(FSY)をPBS緩衝液中のhGH受容体の細胞外ドメインと共に異なる期間にわたってインキュベートした。次いで、反応混合物をSDS-PAGEによって分離し、hGHのC末端に付加されたHisx6タグに特異的な抗体を用いるウェスタンブロットを使用して検出した。
【0317】
図12に示されるように、hGH(FSY)をhGH受容体と共有結合し、約50kDの新しいバンドによって示された。同じ条件下で野生型(WT)hGHを使用した場合、50kDで架橋バンドは検出されなかった。これらの結果は、hGHに組み込まれたFSYが、hGHがその受容体と不可逆的に結合するのを可能にしたことを示している。
【0318】
また、hGHへのFSYの組み込みが、その生物学的活性に影響を及ぼすかどうかも調べた。hGHがその受容体と結合すると、STAT5は、JAK/STAT経路を介して下流シグナルとしてリン酸化され、細胞免疫、増殖、およびアポトーシスに重要な遺伝子の転写をもたらす(Waters,MJ.et al.Clin.Exp.Pharmacol.Physiol.1999,10760-764)。本発明者らは、hGH受容体発現を有する細胞株であるBAF3細胞を、hGH(WT)およびhGH(FSY)で刺激し、次いで細胞溶解物のウェスタンブロット分析を使用してpSTAT5発現をプローブした。図13に示されるように、hGH(FSY)は、hGH(WT)と同じSTAT5リン酸化を刺激する効果を示したが、PBS緩衝液を使用した陰性対照は、pSTAT5産生を示さなかった。したがって、これらの結果は、hGHへのFSYの組み込みが、hGHのシグナル伝達能力に影響を与えなかったことを示している。
【0319】
配列一覧
配列番号1(FSYRのアミノ酸配列)
MDKKPLNTLISATGLWMSRTGTIHKIKHHEVSRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSSRTARAL
RHHKYRKTCKRCRVSDEDLNKFLTKANEDQTSVKVKVVSAPTRTKKAMPKSVARAPKPLE
NTEAAQAQPSGSKFSPAIPVSTQESVSVPASVSTSISSISTGATASALVKGNTNPITSMS
APVQASAPALTKSQTDRLEVLLNPKDEISLNSGKPFRELESELLSRRKKDLQQIYAEERE
NYLGKLEREITRFFVDRGFLEIKSPILIPLEYIERMGIDNDTELSKQIFRVDKNFCLRPM
LIPNLYNYLRKLDRALPDPIKIFEIGPCYRKESDGKEHLEEFTMLTFIQMGSGCTRENLE
SIITDFLNHLGIDFKIVGDSCMVLGDTLDVMHGDLELSSAVVGPIPLDREWGIDKPKIGA
GFGLERLLKVKHDFKNIKRAARSESYYNGISTNL*
【0320】
配列番号2(FSYRの核酸(DNA)配列)
ATGGATAAAAAGCCTTTGAACACTCTGATTTCTGCGACCGGTCTGTGGATGTCCCGCACCGGCACCATCCACAAAATCAAACACCATGAAGTTAGCCGTTCCAAAATCTACATTGAAATGGCTTGCGGCGATCACCTGGTTGTCAACAACTCCCGTTCTTCTCGTACCGCTCGCGCACTGCGCCACCACAAATATCGCAAAACCTGCAAACGTTGCCGTGTTAGCGATGAGGACCTGAACAAATTCCTGACCAAAGCTAACGAGGATCAGACCTCCGTAAAAGTGAAGGTAGTAAGCGCTCCGACCCGTACTAAAAAGGCTATGCCAAAAAGCGTGGCCCGTGCCCCGAAACCTCTGGAAAACACCGAGGCGGCTCAGGCTCAACCATCCGGTTCTAAATTTTCTCCGGCGATCCCAGTGTCCACCCAAGAATCTGTTTCCGTACCAGCAAGCGTGTCTACCAGCATTAGCAGCATTTCTACCGGTGCTACCGCTTCTGCGCTGGTAAAAGGTAACACTAACCCGATTACTAGCATGTCTGCACCGGTACAGGCAAGCGCCCCAGCTCTGACTAAATCCCAGACGGACCGTCTGGAGGTGCTGCTGAACCCAAAGGATGAAATCTCTCTGAACAGCGGCAAGCCTTTCCGTGAGCTGGAAAGCGAGCTGCTGTCTCGTCGTAAAAAGGATCTGCAACAGATCTACGCTGAGGAACGCGAGAACTATCTGGGTAAGCTGGAGCGCGAAATTACTCGCTTCTTCGTGGATCGCGGTTTCCTGGAGATCAAATCTCCGATTCTGATTCCGCTGGAATACATTGAACGTATGGGCATCGATAATGATACCGAACTGTCTAAACAGATCTTCCGTGTGGATAAAAACTTCTGTCTGCGTCCGATGCTGATTCCGAACTTGTACAACTATTTACGTAAACTGGACCGTGCCCTGCCGGACCCGATCAAAATATTCGAGATCGGTCCTTGCTACCGTAAAGAGTCCGACGGTAAAGAGCACCTGGAAGAATTCACCATGCTGACATTCATTCAGATGGGTAGCGGTTGCACGCGTGAAAACCTGGAATCCATTATCACCGACTTCCTGAATCACCTGGGTATCGATTTCAAAATTGTTGGTGACAGCTGTATGGTGTTAGGCGATACGCTGGATGTTATGCACGGCGATCTGGAGCTGTCTTCCGCAGTTGTGGGCCCAATCCCGCTGGATCGTGAGTGGGGTATCGACAAACCTAAAATCGGTGCGGGTTTTGGTCTGGAGCGTCTGCTGAAAGTAAAACACGACTTCAAGAACATCAAACGTGCTGCACGTTCCGAGTCCTATTACAATGGTATTTCTACTAACCTGTAA
【0321】
配列番号3(Methanosarcina mazei PylRSの野生型アミノ酸配列)
MDKKPLNTLISATGLWMSRTGTIHKIKHHEVSRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSSRT
ARALRHHKYRKTCKRCRVSDEDLNKFLTKANEDQTSVKVKVVSAPTRTKKAMPKSV
ARAPKPLENTEAAQAQPSGSKFSPAIPVSTQESVSVPASVSTSISSISTGATASAL
VKGNTNPITSMSAPVQASAPALTKSQTDRLEVLLNPKDEISLNSGKPFRELESELL
SRRKKDLQQIYAEERENYLGKLEREITRFFVDRGFLEIKSPILIPLEYIERMGIDN
DTELSKQIFRVDKNFCLRPMLAPNLYNYLRKLDRALPDPIKIFEIGPCYRKESDGK
EHLEEFTMLNFCQMGSGCTRENLESIITDFLNHLGIDFKIVGDSCMVYGDTLDVMH
GDLELSSAVVGPIPLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVKHDFKNIKRAARSESYYNGISTNL*
【0322】
配列番号4(tRNAPylの核酸配列)ggaaacctgatcatgtagatcgaatggactctaaatccgttcagccgggttagattcccggggtttccg
【0323】
配列番号5は、CTAACAGGAGGAATTAGATCTATGGATAAAAAGCCTである
【0324】
配列番号6は、GATGATGATGATGATGGTCGACTTACAGGTTAGTAGAAである
【0325】
配列番号7は、TATGCCATGGATAAAAAGCCTTTGである
【0326】
配列番号8は、CTATGCTAGCTTACAGGTTAGTAGAである
【0327】
配列番号9は、AACGCGGAACTATCAGTCGCCGGCである
【0328】
配列番号10は、AACAAAGAACTATCAGTCGCCGGCである
【0329】
配列番号11は、AACTGCGAACTATCAGTCGCCGGCである
【0330】
配列番号12は、AACAGCGAACTATCAGTCGCCGGCである
【0331】
配列番号13は、AACACCGAACTATCAGTCGCCGGCである
【0332】
配列番号14は、AACCATGAACTATCAGTCGCCGGCである
【0333】
配列番号15は、GAACGCGTTGTCTACCATGGTATATCTCCである
【0334】
配列番号16は、CCATGGTAGACAACGCGTTCAACTATGAACTATCAGTCGCCである
【0335】
配列番号17は、TATATCTCCTTCTTAAAGTTAAACAAAATTATTTCTAGAGGGGである
【0336】
配列番号18は、AACTATGACTAGTCATGACCAACTGACである
【0337】
配列番号19は、CGCATACGCGTCCGCCTACGCTCTAGCCATCATAGTである
【0338】
配列番号20は、TGGCTAGAGCGTAGGCGGACGCGTATGCGGAAGAGGAAATCCGである
【0339】
配列番号21は、CCAAGCTCAGCTTATTAGTGATGGTGATGである
【0340】
配列番号22は、TATACATATGTCCAAACTCGATCTAAACGである
【0341】
配列番号23は、AGCCAAGCTTTTAATGATGATGATGATGATGCCCTTCGTGTAACCCACATTCCである
【0342】
配列番号24は、GAACATCGATTAGAACCCTGGCACである
【0343】
配列番号25は、AGTTTTGCAACGGTCAGTTTGである
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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