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特許7520727癌を有する個人における抗LIF抗体治療に対する反応を向上させるための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】癌を有する個人における抗LIF抗体治療に対する反応を向上させるための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240716BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240716BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240716BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20240716BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20240716BHJP
【FI】
A61K39/395 E
A61P35/00
A61K39/395 T
A61P35/02
G01N33/574 A
C07K16/18 ZNA
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020570177
(86)(22)【出願日】2019-06-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 IB2019000806
(87)【国際公開番号】W WO2019243898
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】19382131.1
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18382431.7
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508098350
【氏名又は名称】メドイミューン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MedImmune Limited
【住所又は居所原語表記】1 Francis Crick Avenue, Cambridge Biomedical Campus, Cambridge CB2 0AA, UNITED KINGDOM
(73)【特許権者】
【識別番号】520394621
【氏名又は名称】フンダシオ・プリバダ・インスティトゥト・ディンベスティガシオ・オンコロジカ・デ・バイ・エブロン
【氏名又は名称原語表記】FUNDACIO PRIVADA INSTITUT D’INVESTIGACIO ONCOLOGICA DE VALL HEBRON
(73)【特許権者】
【識別番号】519219807
【氏名又は名称】ファンダシオ プリヴァダ インスティタシオ カタラナ デ レセルカ アイ エスタディス アヴァンキャッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン・セオアネ・スアレス
(72)【発明者】
【氏名】ジュディット・アニド・フォルゲイラ
(72)【発明者】
【氏名】ロビン・マシュー・ハレット
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・エドワード・ベイリス
(72)【発明者】
【氏名】アジタ・ジェガナタン
(72)【発明者】
【氏名】パトリシア・アン・ギブリン
(72)【発明者】
【氏名】イサベル・フンベル・ルアノ
(72)【発明者】
【氏名】ジェンヌ・マグラム
(72)【発明者】
【氏名】モニカ・パスクアル・ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】エステル・ボンフィル・テシドル
(72)【発明者】
【氏名】エステル・プラナス・リゴル
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-523796(JP,A)
【文献】特表2012-522756(JP,A)
【文献】J. Clin. Oncol.,2018年06月01日,Vol.36 No.15 (Suppl.),[TPS2602]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 35/00-35/768
A61K 31/00-31/80
A61K 45/00-45/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用抗白血病抑制因子(LIF)抗体で、癌を有する個人を治療する方法における使用のための医薬組成物であって、前記方法が、
前記個人からの生体試料中の基準レベルを超えるLIFのレベルを決定することと、
免疫調節分子の基準レベルを超える、前記免疫調節分子のタンパク質レベルを決定することと、ここで、前記免疫調節分子がCCL7、CCL2、CCL3、及びCCL22から選択される、
前記LIFのレベルがLIFの前記基準レベルを超え、かつ、前記免疫調節分子のタンパク質レベルが免疫調節分子の基準レベルを超える場合に、治療量の前記治療用抗LIF抗体を前記個人に投与することと
を含み、
ここで、前記医薬組成物が前記治療用抗LIF抗体を含み、かつ
前記治療用抗LIF抗体が、
a)配列番号1~3のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1);
b)配列番号4又は5のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2);
c)配列番号6~8のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3);
d)配列番号9又は10のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1);
e)配列番号11又は12のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2);及び
f)配列番号13に示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)、
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記治療用抗LIF抗体が、配列番号15に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、及び配列番号19に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記治療用抗LIF抗体が、配列番号31に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン重鎖領域、及び配列番号35に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン軽鎖領域を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記治療用抗LIF抗体が、2本の免疫グロブリン重鎖と2本の免疫グロブリン軽鎖を含むIgG抗体である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記治療用抗LIF抗体が、ヒト化されている、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記LIFのレベルを決定することが、免疫組織化学アッセイを実施することを含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記基準レベルが、約10から約100のIHCスコアである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記LIFのレベルを決定することが、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を実施することを含み、ELISAが電気化学発光を検出する、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記基準レベルが、前記個人からの無希釈の生体試料中の約4pg/mLのLIFである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記LIFの基準レベルが、ヒト癌におけるLIFタンパク質発現の5パーセンタイル、10パーセンタイル、25パーセンタイル、又は50パーセンタイルに相当する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ヒト癌が、肺癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、膵癌、前立腺癌、泌尿生殖器癌、婦人科癌、胃腸癌、内分泌系癌、多形神経膠芽腫、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、胆管癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、頭頸部扁平上皮癌、及びその組み合わせからなるリストから選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ヒト癌が、非小細胞肺癌、多形神経膠芽腫、卵巣上皮癌、膵臓腺癌、及びその組み合わせからなるリストから選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記生体試料が、血漿または血清を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記生体試料が、腫瘍生検試料である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記方法が、免疫調節分子の基準レベル未満である、前記免疫調節分子のタンパク質レベルを決定することをさらに含み、ここで、前記免疫調節分子がMHCII、CXCL9、CXCL10、CXCR3、及びPD-L1から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記方法が、II型マクロファージ(M2)マーカーのタンパク質の基準レベルを超える、前記II型マクロファージ(M2)マーカーのレベルを決定することをさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記M2マーカーが、CD206、CD163、PF4、CTSK、及びARG1からなるリストから選択される、請求項16に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2018年6月18日に出願された欧州特許出願第18382431.7号及び2019年2月22日に出願された欧州特許出願第19382131.1号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
白血病抑制因子(LIF)は、サイトカインのインターロイキン6(IL-6)ファミリーのメンバーである。LIFの公知の生理活性、LIF欠乏の臨床的特徴、及び健康な組織及び腫瘍におけるLIF発現の非臨床研究に基づいて、LIFの阻害が、良好な耐容性を示すこと、また、限定はされないが非小細胞肺癌(NSCLC)、膵癌、卵巣癌、及び多形神経膠芽腫(GBM)を含めた様々な固形腫瘍における抗腫瘍有効性をもたらすことが期待されている。
【0003】
標的特異的な治療薬で癌を治療する場合に臨床医が直面するある問題は、すべての腫瘍が所与の標的特異的な治療薬に対して反応性であり得るわけではないということである。LIF又はLIF受容体を発現することが分かっている腫瘍型だとしても、個々の腫瘍の間には、かなりの不均一性が存在する。さらに、LIF又はLIF受容体を発現するすべての腫瘍が、同様に反応することができるわけではなく、したがって、抗LIF治療用抗体での治療から最も恩恵を受けることができる個人を決定するための有効な方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、個人における癌を治療する方法であって、前記抗体に反応する可能性が最も高い個人に治療用抗LIF抗体を投与することを含む方法、及びどの個人が治療用抗LIF抗体に反応する可能性が最も高いかを決定する方法に関する。本明細書に記載される通りの基準レベルを超えるmRNA又はタンパク質レベルのLIF又はLIF受容体の発現を呈する腫瘍又は癌を有する患者は、LIF治療用抗体で有効に治療することができる。さらに、治療用抗LIF抗体での治療から恩恵を受けるであろう個人を決定することができる、いくつかの非LIFバイオマーカーを記載する。これらの非LIFバイオマーカーは、単独で、又はLIF又はLIF受容体レベルを測定するアッセイと共に使用することができる。非LIFバイオマーカーには、免疫抑制特性(これらには、免疫抑制性の細胞型、免疫抑制性サイトカイン、又は免疫抑制性ケモカインの存在が含まれる)を示す免疫調節分子が含まれる。免疫抑制特性と共にLIF又はLIF受容体レベルを決定することは、治療用抗LIF抗体での治療を決定する方法の予知力を高めることとなることが想定される。
【0005】
一態様では、本明細書に記載されるのは、治療用抗白血病抑制因子(LIF)抗体で、癌を有する個人を治療する方法であって、個人からの生体試料中の基準レベルを超えるLIFのレベルを決定することと、LIFのレベルがLIFの基準レベルを超える場合に、治療量の抗LIF抗体を個人に投与することとを含む方法である。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、配列番号1~3のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1);配列番号4又は5のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2);配列番号6~8のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3);配列番号9又は10のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1);配列番号11又は12のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2);及び配列番号13に示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、配列番号14、15、17、又は38に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、及び配列番号18~21に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、配列番号30~33又は39に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン重鎖領域、及び配列番号34~37に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン軽鎖領域を含む。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、2本の免疫グロブリン重鎖と2本の免疫グロブリン軽鎖を含むIgG抗体である。ある種の実施形態では、LIFのレベルは、LIFタンパク質レベルであり、そのレベルを決定することは、LIFタンパク質を検出する少なくとも1つのアッセイを実施すること、又はLIFタンパク質を検出する少なくとも1つのアッセイの結果を得ることを含む。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、免疫組織化学を含む。ある種の実施形態では、基準レベルは、抗LIF抗体での約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、又は50%の細胞染色陽性である。
である。
【0006】
ある種の実施形態では、基準レベルは、約100のIHCスコアである。いくつかの実施形態では、基準レベルは、約1から約300のIHCスコアである。いくつかの実施形態では、基準レベルは、約1から約30、約1から約60、約1から約90、約1から約120、約1から約150、約1から約180、約1から約210、約1から約240、約1から約270、約1から約300、約30から約60、約30から約90、約30から約120、約30から約150、約30から約180、約30から約210、約30から約240、約30から約270、約30から約300、約60から約90、約60から約120、約60から約150、約60から約180、約60から約210、約60から約240、約60から約270、約60から約300、約90から約120、約90から約150、約90から約180、約90から約210、約90から約240、約90から約270、約90から約300、約120から約150、約120から約180、約120から約210、約120から約240、約120から約270、約120から約300、約150から約180、約150から約210、約150から約240、約150から約270、約150から約300、約180から約210、約180から約240、約180から約270、約180から約300、約210から約240、約210から約270、約210から約300、約240から約270、約240から約300、又は約270から約300のIHCスコアである。いくつかの実施形態では、基準レベルは、約1、約30、約60、約90、約120、約150、約180、約210、約240、約270、又は約300のIHCスコアである。いくつかの実施形態では、基準レベルは、少なくとも約1、約30、約60、約90、約120、約150、約180、約210、約240、又は約270のIHCスコアである。いくつかの実施形態では、基準レベルは、最大で約30、約60、約90、約120、約150、約180、約210、約240、約270、又は約300のIHCスコアである。いくつかの実施形態では、基準レベルは、約10から約100のIHCスコアであるか又はこれを超える。
【0007】
ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を含む。ある種の実施形態では、ELISAは、電気化学発光を検出する。ある種の実施形態では、基準レベルは、個人からの無希釈の生体試料中の約1pg/mLから約10pg/mLのLIFである。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、同じ型のLIF陽性癌におけるLIFタンパク質発現の5パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、同じ型のLIF陽性癌におけるLIFタンパク質発現の10パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIFタンパク質発現の5パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIFタンパク質発現の10パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFのレベルは、LIF mRNAレベルであり、そのレベルを決定することは、LIF mRNAを検出する少なくとも1つのアッセイを実施すること、又はLIF mRNAを検出する少なくとも1つのアッセイの結果を得ることを含む。ある種の実施形態では、基準レベルは、同じ型の癌におけるLIF mRNA発現の5パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、基準レベルは、同じ型の癌におけるLIF mRNA発現の10パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIF mRNA発現の5パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIF mRNA発現の10パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、同じ型のLIF陽性癌におけるLIFタンパク質発現の25パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、同じ型のLIF陽性癌におけるLIFタンパク質発現の50パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIFタンパク質発現の25パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIFタンパク質発現の50パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFのレベルは、LIF mRNAレベルであり、そのレベルを決定することは、LIF mRNAを検出する少なくとも1つのアッセイを実施すること、又はLIF mRNAを検出する少なくとも1つのアッセイの結果を得ることを含む。ある種の実施形態では、基準レベルは、同じ型の癌におけるLIF mRNA発現の25パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、基準レベルは、同じ型の癌におけるLIF mRNA発現の50パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIF mRNA発現の25パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIF mRNA発現の50パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、LIFのレベルは、LIF DNAレベルであり、そのレベルを決定することは、LIF DNAを検出する少なくとも1つのアッセイを実施すること、又はLIF DNAを検出する少なくとも1つのアッセイの結果を得ることを含む。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む。ある種の実施形態では、PCRは、定量的PCRを含む。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、シークエンシング反応を含む。ある種の実施形態では、シークエンシング反応は、次世代シークエンシング反応を含む。ある種の実施形態では、生体試料は、血液試料を含む。ある種の実施形態では、血液試料は、血漿である。ある種の実施形態では、血液試料は、血清である。ある種の実施形態では、生体試料は、組織試料を含む。ある種の実施形態では、生体試料は、腫瘍生検試料である。ある種の実施形態では、この方法は、免疫調節分子の基準レベルを超える、免疫調節分子のDNA、mRNA、又はタンパク質レベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、この方法は、免疫調節分子の基準レベル未満である免疫調節分子のDNA、mRNA、又はタンパク質レベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、免疫調節分子は、MHCII、CXCL9、CXCL10、CXCR3、PD-L1、CCL7、CCL2、CCL3、及びCCL22からなるリストから転写されたmRNA、又は産生されたタンパク質から選択される。ある種の実施形態では、この方法は、II型マクロファージ(M2)マーカーのDNA、mRNA、又はタンパク質の基準レベルを超える、II型マクロファージ(M2)マーカーのレベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、M2マーカーは、CD206、CD163、PF4、CTSK、及びARG1からなるリストから転写されたmRNA、又は産生されたタンパク質である。ある種の実施形態では、この方法は、LIFRの基準レベルを超える、LIF受容体(LIFR)のDNA、mRNA、又はタンパク質レベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、LIFRのレベルは、免疫調節細胞上で検出される。ある種の実施形態では、ヒト癌は、非小細胞肺癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、膵癌、前立腺癌、泌尿生殖器癌、婦人科癌、胃腸癌、内分泌系癌、多形神経膠芽腫、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、胆管癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、頭頸部扁平上皮癌、及びその組み合わせからなるリストから選択される。ある種の実施形態では、ヒト癌は、非小細胞肺癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、及びその組み合わせからなるリストから選択される。ある種の実施形態では、ヒト癌は、膵癌、前立腺癌、多形神経膠芽腫、及びその組み合わせからなるリストから選択される。
【0008】
別の態様では、本明細書に記載されるのは、治療用抗白血病抑制因子(LIF)抗体で、癌を有する個人を治療する方法であって、個人からの生体試料中の基準レベルを超えるLIFのレベルを決定することと、治療量の抗LIF抗体を投与することとを含む方法である。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、配列番号1~3のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1);配列番号4又は5のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2);配列番号6~8のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3);配列番号9又は10のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1);配列番号11又は12のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2);及び配列番号13に示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、配列番号14、15、17、又は38に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、及び配列番号18~21に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、配列番号30~33又は39に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン重鎖領域、及び配列番号34~37に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン軽鎖領域を含む。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、2本の免疫グロブリン重鎖と2本の免疫グロブリン軽鎖を含むIgG抗体である。ある種の実施形態では、LIFのレベルは、LIFタンパク質レベルであり、そのレベルを決定することは、LIFタンパク質を検出する少なくとも1つのアッセイを実施すること、又はLIFタンパク質を検出する少なくとも1つのアッセイの結果を得ることを含む。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、免疫組織化学を含む。ある種の実施形態では、基準レベルは、抗LIF抗体での約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、又は50%の細胞染色陽性である。
【0009】
ある種の実施形態では、基準レベルは、約100のIHCスコアである。いくつかの実施形態では、基準レベルは、約1から約300のIHCスコアである。いくつかの実施形態では、基準レベルは、約1から約30、約1から約60、約1から約90、約1から約120、約1から約150、約1から約180、約1から約210、約1から約240、約1から約270、約1から約300、約30から約60、約30から約90、約30から約120、約30から約150、約30から約180、約30から約210、約30から約240、約30から約270、約30から約300、約60から約90、約60から約120、約60から約150、約60から約180、約60から約210、約60から約240、約60から約270、約60から約300、約90から約120、約90から約150、約90から約180、約90から約210、約90から約240、約90から約270、約90から約300、約120から約150、約120から約180、約120から約210、約120から約240、約120から約270、約120から約300、約150から約180、約150から約210、約150から約240、約150から約270、約150から約300、約180から約210、約180から約240、約180から約270、約180から約300、約210から約240、約210から約270、約210から約300、約240から約270、約240から約300、又は約270から約300のIHCスコアである。いくつかの実施形態では、基準レベルは、約1、約30、約60、約90、約120、約150、約180、約210、約240、約270、又は約300のIHCスコアである。いくつかの実施形態では、基準レベルは、少なくとも約1、約30、約60、約90、約120、約150、約180、約210、約240、又は約270のIHCスコアである。いくつかの実施形態では、基準レベルは、最大で約30、約60、約90、約120、約150、約180、約210、約240、約270、又は約300のIHCスコアである。
【0010】
ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を含む。ある種の実施形態では、ELISAは、電気化学発光を検出する。ある種の実施形態では、基準レベルは、個人からの無希釈の生体試料中の少なくとも約4pg/mLのLIFである。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、同じ型のLIF陽性癌におけるLIFタンパク質発現の5パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、同じ型のLIF陽性癌におけるLIFタンパク質発現の10パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIFタンパク質発現の5パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIFタンパク質発現の10パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFのレベルは、LIF mRNAレベルであり、そのレベルを決定することは、LIF mRNAを検出する少なくとも1つのアッセイを実施すること、又はLIF mRNAを検出する少なくとも1つのアッセイの結果を得ることを含む。ある種の実施形態では、基準レベルは、同じ型の癌におけるLIF mRNA発現の5パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、基準レベルは、同じ型の癌におけるLIF mRNA発現の10パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIF mRNA発現の5パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIF mRNA発現の10パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、同じ型のLIF陽性癌におけるLIFタンパク質発現の25パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、同じ型のLIF陽性癌におけるLIFタンパク質発現の50パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIFタンパク質発現の25パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFの基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIFタンパク質発現の50パーセンタイルに相当する。ある種の実施形態では、LIFのレベルは、LIF mRNAレベルであり、そのレベルを決定することは、LIF mRNAを検出する少なくとも1つのアッセイを実施すること、又はLIF mRNAを検出する少なくとも1つのアッセイの結果を得ることを含む。ある種の実施形態では、基準レベルは、同じ型の癌におけるLIF mRNA発現の25パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、基準レベルは、同じ型の癌におけるLIF mRNA発現の50パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIF mRNA発現の25パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、基準レベルは、ヒト癌の代表的な試料におけるLIF mRNA発現の50パーセンタイルに相当するレベルである。ある種の実施形態では、LIFのレベルは、LIF DNAレベルであり、そのレベルを決定することは、LIF DNAを検出する少なくとも1つのアッセイを実施すること、又はLIF DNAを検出する少なくとも1つのアッセイの結果を得ることを含む。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む。ある種の実施形態では、PCRは、定量的PCRを含む。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、シークエンシング反応を含む。ある種の実施形態では、シークエンシング反応は、次世代シークエンシング反応を含む。ある種の実施形態では、生体試料は、血液試料を含む。ある種の実施形態では、血液試料は、血漿である。ある種の実施形態では、血液試料は、血清である。ある種の実施形態では、生体試料は、組織試料を含む。ある種の実施形態では、生体試料は、腫瘍生検試料である。ある種の実施形態では、この方法は、免疫調節分子の基準レベルを超える、免疫調節分子のDNA、mRNA、又はタンパク質レベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、この方法は、免疫調節分子の基準レベル未満である免疫調節分子のDNA、mRNA、又はタンパク質レベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、免疫調節分子は、MHCII、CXCL9、CXCL10、CXCR3、PD-L1、CCL7、CCL2、CCL3、及びCCL22からなるリストから転写されたmRNA、又は産生されたタンパク質から選択される。ある種の実施形態では、この方法は、II型マクロファージ(M2)マーカーの基準レベルを超える、II型マクロファージ(M2)マーカーのDNA、mRNA、又はタンパク質レベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、M2マーカーは、CD206、CD163、PF4、CTSK、及びARG1からなるリストから転写されたmRNA、又は産生されたタンパク質である。ある種の実施形態では、この方法は、LIFRの基準レベルを超える、LIF受容体(LIFR)のDNA、mRNA、又はタンパク質レベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、LIFRのレベルは、免疫調節細胞上で検出される。ある種の実施形態では、ヒト癌は、非小細胞肺癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、膵癌、前立腺癌、泌尿生殖器癌、婦人科癌、胃腸癌、内分泌系癌、多形神経膠芽腫、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、胆管癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、頭頸部扁平上皮癌、及びその組み合わせからなるリストから選択される。ある種の実施形態では、ヒト癌は、非小細胞肺癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、及びその組み合わせからなるリストから選択される。ある種の実施形態では、ヒト癌は、膵癌、前立腺癌、多形神経膠芽腫、及びその組み合わせからなるリストから選択される。
【0011】
別の態様では、本明細書に記載されるのは、治療用抗白血病抑制因子(LIF)抗体で、癌を有する個人を治療する方法であって、個人からの生体試料中の基準レベルを超える白血病抑制因子受容体(LIFR)のレベルを決定することと、LIFRのレベルがLIFRの基準レベルを超える場合に治療量の抗LIF抗体を個人に投与することとを含む方法である。ある種の実施形態では、LIFRのレベルは、免疫調節細胞上で検出される。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、配列番号1~3のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1);配列番号4又は5のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2);配列番号6~8のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3);配列番号9又は10のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1);配列番号11又は12のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2);及び配列番号13に示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、配列番号14、15、17、又は38に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、及び配列番号18~21に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、配列番号30~33又は39に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン重鎖領域、及び配列番号34~37に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン軽鎖領域を含む。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、2本の免疫グロブリン重鎖と2本の免疫グロブリン軽鎖を含むIgG抗体である。ある種の実施形態では、LIFRのレベルは、LIFRタンパク質のレベルであり、そのレベルを決定することは、LIFRタンパク質を検出する少なくとも1つのアッセイを実施すること、又はLIFRタンパク質を検出する少なくとも1つのアッセイの結果を得ることを含む。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、免疫組織化学を含む。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を含む。ある種の実施形態では、ELISAは、電気化学発光を検出する。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、フローサイトメトリーを含む。ある種の実施形態では、LIFRのレベルは、LIFR mRNAのレベルであり、そのレベルを決定することは、LIFR mRNAを検出する少なくとも1つのアッセイを実施すること、又はLIFR mRNAを検出する少なくとも1つのアッセイの結果を得ることを含む。ある種の実施形態では、LIFRのレベルは、LIFR DNAのレベルであり、そのレベルを決定することは、LIFR DNAを検出する少なくとも1つのアッセイを実施すること、又はLIFR DNAを検出する少なくとも1つのアッセイの結果を得ることを含む。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む。ある種の実施形態では、PCRは、定量的PCRを含む。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、シークエンシング反応を含む。ある種の実施形態では、シークエンシング反応は、次世代シークエンシング反応を含む。ある種の実施形態では、生体試料は、血液試料を含む。ある種の実施形態では、血液試料は、血漿である。ある種の実施形態では、血液試料は、血清である。ある種の実施形態では、生体試料は、組織試料を含む。ある種の実施形態では、生体試料は、腫瘍生検試料である。ある種の実施形態では、この方法は、免疫調節分子の基準レベルを超える、免疫調節分子のDNA、mRNA、又はタンパク質レベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、この方法は、免疫調節分子の基準レベル未満である免疫調節分子のDNA、mRNA、又はタンパク質レベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、免疫調節分子は、MHCII、CXCL9、CXCL10、CXCR3、PD-L1、CCL7、CCL2、CCL3、及びCCL22からなるリストから転写されたmRNA、又は産生されたタンパク質から選択される。ある種の実施形態では、この方法は、II型マクロファージ(M2)マーカーの基準レベルを超える、II型マクロファージ(M2)マーカーのDNA、mRNA、又はタンパク質レベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、M2マーカーは、CD206、CD163、PF4、CTSK、及びARG1からなるリストから転写されたmRNA、又は産生されたタンパク質である。ある種の実施形態では、この方法は、LIFの基準レベルを超える、LIFのDNA、mRNA、又はタンパク質レベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、ヒト癌は、非小細胞肺癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、膵癌、前立腺癌、泌尿生殖器癌、婦人科癌、胃腸癌、内分泌系癌、多形神経膠芽腫、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、胆管癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、頭頸部扁平上皮癌、及びその組み合わせからなるリストから選択される。ある種の実施形態では、ヒト癌は、非小細胞肺癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、及びその組み合わせからなるリストから選択される。ある種の実施形態では、ヒト癌は、膵癌、前立腺癌、多形神経膠芽腫、及びその組み合わせからなるリストから選択される。
【0012】
別の態様では、本明細書に記載されるのは、治療用抗白血病抑制因子(LIF)抗体で、癌を有する個人を治療する方法であって、個人からの生体試料中の基準レベルを超える白血病抑制因子受容体(LIFR)のレベルを決定することと、治療量の抗LIF抗体を個人に投与することとを含む方法である。ある種の実施形態では、LIFRのレベルは、免疫調節細胞上で検出される。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、配列番号1~3のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1);配列番号4又は5のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2);配列番号6~8のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3);配列番号9又は10のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1);配列番号11又は12のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2);及び配列番号13に示したアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、配列番号14、15、17、又は38に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、及び配列番号18~21に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、配列番号30~33又は39に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン重鎖領域、及び配列番号34~37に対する少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を含む免疫グロブリン軽鎖領域を含む。ある種の実施形態では、治療用抗LIF抗体は、2本の免疫グロブリン重鎖と2本の免疫グロブリン軽鎖を含むIgG抗体である。ある種の実施形態では、LIFRのレベルは、LIFRタンパク質のレベルであり、そのレベルを決定することは、LIFRタンパク質を検出する少なくとも1つのアッセイを実施すること、又はLIFRタンパク質を検出する少なくとも1つのアッセイの結果を得ることを含む。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、免疫組織化学を含む。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を含む。ある種の実施形態では、ELISAは、電気化学発光を検出する。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、フローサイトメトリーを含む。ある種の実施形態では、LIFRのレベルは、LIFR mRNAのレベルであり、そのレベルを決定することは、LIFR mRNAを検出する少なくとも1つのアッセイを実施すること、又はLIFR mRNAを検出する少なくとも1つのアッセイの結果を得ることを含む。ある種の実施形態では、LIFRのレベルは、LIFR DNAのレベルであり、そのレベルを決定することは、LIFR DNAを検出する少なくとも1つのアッセイを実施すること、又はLIFR DNAを検出する少なくとも1つのアッセイの結果を得ることを含む。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む。ある種の実施形態では、PCRは、定量的PCRを含む。ある種の実施形態では、少なくとも1つのアッセイは、シークエンシング反応を含む。ある種の実施形態では、シークエンシング反応は、次世代シークエンシング反応を含む。ある種の実施形態では、生体試料は、血液試料を含む。ある種の実施形態では、血液試料は、血漿である。ある種の実施形態では、血液試料は、血清である。ある種の実施形態では、生体試料は、組織試料を含む。ある種の実施形態では、生体試料は、腫瘍生検試料である。ある種の実施形態では、この方法は、免疫調節分子の基準レベルを超える、免疫調節分子のDNA、mRNA、又はタンパク質レベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、この方法は、免疫調節分子の基準レベル未満である免疫調節分子のDNA、mRNA、又はタンパク質レベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、免疫調節分子は、MHCII、CXCL9、CXCL10、CXCR3、PD-L1、CCL7、CCL2、CCL3、及びCCL22からなるリストから転写されたmRNA、又は産生されたタンパク質から選択される。ある種の実施形態では、この方法は、II型マクロファージ(M2)マーカーの基準レベルを超える、II型マクロファージ(M2)マーカーのDNA、mRNA、又はタンパク質レベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、M2マーカーは、CD206、CD163、PF4、CTSK、及びARG1からなるリストから転写されたmRNA、又は産生されたタンパク質である。ある種の実施形態では、この方法は、LIFの基準レベルを超える、LIFのDNA、mRNA、又はタンパク質レベルを決定することをさらに含む。ある種の実施形態では、ヒト癌は、非小細胞肺癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、膵癌、前立腺癌、泌尿生殖器癌、婦人科癌、胃腸癌、内分泌系癌、多形神経膠芽腫、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、胆管癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、頭頸部扁平上皮癌、及びその組み合わせからなるリストから選択される。ある種の実施形態では、ヒト癌は、非小細胞肺癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、及びその組み合わせからなるリストから選択される。ある種の実施形態では、ヒト癌は、膵癌、前立腺癌、多形神経膠芽腫、及びその組み合わせからなるリストから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】異なる抗LIFヒト化抗体のLIF誘発STAT3リン酸化の阻害を示すウエスタンブロットを表す。
図2A-2B】ヒト化された親5D8抗体のLIF誘発STAT3リン酸化の阻害を示すウエスタンブロットを表す。
図3A】h5D8抗体を使用するU-251細胞におけるLIF阻害についてのIC50を示す。
図3B】内在性LIF刺激条件下でのpSTAT3のr5D8及びh5D8阻害の代表的なIC50用量反応曲線を示す。示したのは、代表的な曲線である(n=1 h5D8、n=2 r5D8)。
図4】この開示に記載した異なるモノクローナル抗体のLIF誘発STAT3リン酸化の阻害を示すウエスタンブロットを表す。
図5】ヒト患者からの多形神経膠芽腫(GBM)、NSCLC(非小細胞肺癌)、卵巣癌、結腸直腸癌腫瘍、及び膵腫瘍における、LIF発現の免疫組織化学染色及び定量化を表す。バーは、平均値+/-SEMを表す。
図6】ヒト化5D8抗体を使用して、非小細胞肺癌のマウスモデルにおいて行われた実験を示すグラフである。
図7A】GBMの同所移植(orthotopic)マウスモデルにおけるU251細胞の阻害に対するr5D8の効果を示す。第26日での定量化が示される。
図7B】ルシフェラーゼ発現ヒトU251 GBM細胞を接種し、且つその後100、200、又は300μgのh5D8又は賦形剤で週2回治療されたマウスからのデータを示す。腫瘍サイズは、第7日に、生物発光(Xenogen IVIS Spectrum)によって決定した。このグラフは、平均値±SEMを示す水平なバーと共に、個々の腫瘍測定値を示す。統計的有意性は、対応のないノンパラメトリックなマン・ホイットニーのU検定を使用して算出した。
図8A】同系移植(syngeneic)マウスモデルにおける卵巣癌細胞の増殖の阻害に対するr5D8の効果を示す。
図8B】第25日での腫瘍の個々の測定値を示す。
図8C】h5D8が、週2回200μg/マウスで投与された場合に腫瘍増殖の有意な低下を示す(p<0.05)ことを図示する。記号は、平均値±SEMであり、統計的有意性は、(対応のないノンパラメトリックなマン・ホイットニーのU検定を用いて)賦形剤と比較した。
図9A】同系移植マウスモデルにおける結腸直腸癌細胞の増殖の阻害に対するr5D8の効果を示す。
図9B】第17日での腫瘍の個々の測定値を示す。
図10A】CCL22+細胞の代表的な画像及び定量化を用いて、GBMの同所移植マウスモデルにおける腫瘍部位へのマクロファージ浸潤の減少を示す。
図10B】ヒト器官型組織片培養モデルにおけるマクロファージ極性化の減少を示す。代表的な画像(左)及び定量化(右)が示されている。
図10C】CCL22+細胞の代表的な画像及び定量化を用いて、卵巣癌の同系移植マウスモデルにおける腫瘍部位へのマクロファージ極性化の減少を示す。
図10D】CCL22+細胞の代表的な画像及び定量化を用いて、結腸直腸癌の同系移植マウスモデルにおける腫瘍部位へのマクロファージ浸潤の減少を示す。
図11A】r5D8での治療後の卵巣癌の同系移植マウスモデルにおける非骨髄性エフェクター細胞の増加を示す。
図11B】r5D8での治療後の結腸直腸癌の同系移植マウスモデルにおける非骨髄性エフェクター細胞の増加を示す。
図11C】r5D8での治療後のNSCLC癌のマウスモデルにおけるCD4+TREG細胞のパーセンテージの低下を示す。
図12】抗CD4及び抗CD8枯渇抗体の存在又は非存在下で腹腔内に投与されるPBS(対照)又はr5D8で週2回治療された、CT26腫瘍を有するマウスからのデータを示す。このグラフは、平均腫瘍体積+SEMとして表される第13日での個々の腫瘍測定値を示す。群間の統計的有意差は、対応のないノンパラメトリックなマン・ホイットニーのU検定によって決定した。R5D8は、CT26腫瘍の増殖を阻害した(*p<0.05)。r5D8による腫瘍増殖阻害は、抗CD4及び抗CD8枯渇抗体の存在下で有意に低下した(****p<0.0001)。
図13A】LIFとの複合体におけるh5D8 Fabの共結晶構造の全体像を図示する。gp130相互作用部位の位置を、LIFの表面上に示す(濃く色付けされている)。
図13B】塩橋を形成する残基と100Åを超える埋没した表面積を有するh5D8残基を示す、LIFとh5D8との間の詳細な相互作用を図示する。
図14A】5つのh5D8 Fab結晶構造の重ね合わせを図示し、また、異なる化学的条件で結晶化されているにもかかわらず高度の類似性を示す。
図14B】不対のCys100によって媒介されるファンデルワールス相互作用の広範なネットワークを図示する。この残基は、秩序立っており、HCDR1及びHCDR3の立体構造を形作るのに加わり、所望されないジスルフィドスクランブリングには関与しない。残基間の距離は、破線として示され、標識が付けられている。
図15A】ELISAによる、h5D8 C100変異体のヒトLIFへの結合を図示する。
図15B】ELISAによる、h5D8 C100変異体のマウスLIFへの結合を図示する。
図16A】Octetによって、h5D8が、LIFとLIFRとの間の結合を阻止しないことを示す。h5D8のLIFへの結合の後、LIFRへの連続した結合が続く。
図16B-16C】固定化されたLIFR又はgp130に対するLIF/mAb複合体結合のELISA分析を図示する。固定化されたLIFR(図16B)又はgp130(図16C)コーティングプレートと結合するmAb/LIF複合体の抗体部分を検出する、種特異的なペルオキシダーゼ結合抗IgG抗体((-)及びh5D8については抗ヒト、r5d8及びB09については抗ラット)のシグナル。
図17A-17B】72個の異なるヒト組織におけるLIF(図16A)又はLIFR(図16B)のmRNA発現を図示する。
図18】高、中-高、中-低、及び低レベルに層別化される、異なる癌型におけるmRNA発現レベルを示す。発現データは、The Cancer Genome Atlasから収集された22種の適応症から収集された7,769本の試料にわたって測定されるLIF転写物レベルを表し、データセットを通して4分割することによって閾値設定される。
図19A】LIF mRNAレベルとCCL7 mRNAレベルとの相関(r)を示す。各適応症についての試料を、The Cancer Genome Atlasから入手し、LIFとCCL7との間の関連を、ピアソン相関によって評価した。
図19B】LIF mRNAレベルとCCL2 mRNAレベルとの相関(r)を示す。各適応症についての試料を、The Cancer Genome Atlasから入手し、LIFとCCL2との間の関連を、ピアソン相関によって評価した。
図19C】LIF mRNAレベルとCCL3 mRNAレベルとの相関(r)を示す。各適応症についての試料を、The Cancer Genome Atlasから入手し、LIFとCCL3との間の関連を、ピアソン相関によって評価した。
図19D】LIF mRNAレベルとCCL22 mRNAレベルとの相関(r)を示す。各適応症についての試料を、The Cancer Genome Atlasから入手し、LIFとCCL22との間の関連を、ピアソン相関によって評価した。
図20A】LIF mRNAレベルと、II型マクロファージ(M2)に典型的な発現特性との相関(r)を示す。
図20B】GBM及び卵巣癌における、LIFと、CD163、CD206、及びCCL2発現との間の相関を示す。回帰プロットは、GBM及び卵巣癌(OV)TCGA腫瘍コホートにおける(log2 RSEMにおける)、LIFと、CD163、CD206、CCL2発現との間のものである。
図20C】20個のGBM腫瘍からの示されたマーカーのIHCの相関を示す。R二乗係数(R)を用いて、LIFと、CCL2、CD206、CD163、及びCXCL9との間の相関が示される。
図20D】抗LIFで治療された又は治療されていないGL261N腫瘍からのTAM(CD11bLy6GLy6C)におけるCCL2及びCXCL9のパーセンテージ及び平均蛍光強度(MFI)を示す。
図20E】TAMマーカー陽性細胞に対するダブルポジティブ細胞のパーセンテージを示す。CXCL9定量化は、総細胞数に対するものである。
図20F】TAM(CD11bLy6GLy6C)におけるCCR2、CXCR3、及びLIFR受容体のパーセンテージを示す。CD8T細胞(CD3CD8)集団は、フローサイトメトリーによって決定した。データは、平均値±SEMとして示される。マン・ホイットニーT検定による統計解析。*P<0.05。
図20G】CXCL9-/-及びCCL2-/-マウス又は示された抗体で治療されたマウスにおけるGL261Nの腫瘍増殖が、全光束(p/s)として示されることを示す。
図20H】示された治療における腫瘍浸潤CD8T細胞の増大(倍)(FI)を示す。データは、平均値±SEMである。マン・ホイットニーT検定による統計解析。*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001。
図20I】Iba1細胞に対するダブルポジティブ細胞のパーセンテージ、及び10j.tg/ml抗LIFと共に3日間インキュベートされたGBM器官型切片(患者1、2、3)におけるCXCL9細胞の総細胞数に対するパーセンテージを示す。データは、すべての患者の平均±SEMである。マン・ホイットニーT検定による統計解析。*P<0.05、**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001。
図20J】全腫瘍ライセート(n=8)のqRT-PCRによって決定される、終点でのCT26腫瘍におけるM1及びM2遺伝子の転写物レベルを示す。データは、IgG1対照で治療された腫瘍(Hprt、Tbp、Tfrc)の平均に対する変化(倍)として表される。
図20K】pan骨髄細胞集団(CD45細胞におけるCD11b)、TAM(CD45細胞におけるCD11bLy6ClowF4/80)、MHC IITAM(CD11bLy6ClowF4/80細胞におけるMHC II)、及びTAMにおけるMHC II発現の定量化を示す。データは、平均値±s.e.m.として示される(nは各実験について示される)。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図21A-B】フローサイトメトリーによる(図21A)、及び蛍光キャリブレーションビーズに対する補間によって定量化される(図21B)、3人の異なるドナーからの初代単球から分化した初代マクロファージ上のLIF受容体のレベルを示す。
図22】72時間のLIF治療(20nM)に反応する、初代MマクロファージにおけるCD206及びCD163の増大を示す。
図23】Mマクロファージにおける、及びM1及びM2マクロファージ(右下隅)における、LIF治療(20nM)に反応するCCL22分泌の増大を示す。
図24】フローサイトメトリーによって決定される、漿液性卵巣癌、ステージIII-C(2人の異なるドナー、左の2つのパネル)、及び肺腺癌、ステージIII-A(2人の異なるドナー、右の2つのパネル)からの腫瘍関連マクロファージ上のLIF受容体発現を示す。対照プロットは、蛍光色素を1つ除いた(fluorescent minus one)(FMO)対照である。
図25】フローサイトメトリーによって決定される、漿液性卵巣癌、ステージIII-C(2人の異なるドナー、左の2つのパネル)、及び肺腺癌、ステージIII-A(2人の異なるドナー、右の2つのパネル)からの腫瘍単球系の骨髄由来抑制細胞(myeloid derived suppressor cell)(M-MDSC)腫瘍多形核細胞系の(tumor polymorphonuclear)骨髄由来抑制細胞(PMN-MDSC)上のLIF受容体発現を示す。対照プロットは、蛍光色素を1つ除いた(fluorescent minus one)(FMO)染色である。試料は、CD11bCD33HLA-DRlowに対してゲーティングを行う。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一態様では、本明細書に記載されるのは、治療用抗白血病抑制因子(LIF)抗体で、癌を有する個人を治療する方法であって、個人からの生体試料中の基準レベルを超えるLIFのレベルを決定することと、LIFのレベルがLIFの基準レベルを超える場合に治療量の抗LIF抗体を個人に投与することとを含む方法である。
【0015】
別の態様では、本明細書に記載されるのは、治療用抗白血病抑制因子(LIF)抗体で、癌を有する個人を治療する方法であって、個人からの生体試料中の基準レベルを超えるLIFのレベルを決定することと、治療量の抗LIF抗体を投与することとを含む方法である。
【0016】
別の態様では、本明細書に記載されるのは、治療用抗白血病抑制因子(LIF)抗体で、癌を有する個人を治療する方法であって、個人からの生体試料中の基準レベルを超える白血病抑制因子受容体(LIFR)のレベルを決定することと、LIFRのレベルがLIFRの基準レベルを超える場合に治療量の抗LIF抗体を個人に投与することとを含む方法である。
【0017】
別の態様では、本明細書に記載されるのは、治療用抗白血病抑制因子(LIF)抗体で、癌を有する個人を治療する方法であって、個人からの生体試料中の基準レベルを超える白血病抑制因子受容体(LIFR)のレベルを決定することと、治療量の抗LIF抗体を個人に投与することとを含む方法である。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「個人」、「患者」、又は「対象」は、癌、腫瘍、又は新生物と診断された、又は癌、腫瘍、又は新生物を患っている疑いがある、又は癌、腫瘍、又は新生物を発症するリスクがある個人を指す。ある種の実施形態では、個人は、哺乳類である。ある種の実施形態では、哺乳類は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラマ、アルパカ、又はヤクである。ある種の実施形態では、個人は、ヒトである。
【0019】
本明細書で使用する場合、他に指示されない限り、用語「免疫調節分子」は、限定はされないが、免疫抑制性ケモカイン、免疫抑制性サイトカイン、又はチェックポイント阻害剤分子を含めた、自然及び/又は適応免疫系を調節する又は調節を引き起こす、腫瘍又は腫瘍微小環境に存在するあらゆる分子、ポリペプチド、又はタンパク質を指す。免疫調節分子は、免疫調節細胞、腫瘍/癌細胞、又は間質細胞によって産生され得る。免疫調節分子としては、非限定的な例として、CCL7、CCL2、CCL3、CCL22、MHCII、CXCL9、CXCL10、CXCR3、及びPD-L1が挙げられる。
【0020】
本明細書で使用する場合、他に指示されない限り、用語「免疫調節細胞」は、免疫調節因子を産生する能力を有する、免疫系のあらゆる細胞を指し、樹状細胞、マクロファージ、腫瘍関連マクロファージ、I型マクロファージ、II型マクロファージ、骨髄由来抑制細胞、腫瘍多形核細胞系の骨髄由来抑制細胞(PMN-MDSC)、ヘルパーT細胞、制御性T細胞、活性化T細胞、抗原曝露歴のあるT細胞、細胞傷害性T細胞などが含まれる。
【0021】
本明細書で使用する場合、他に指示されない限り、用語「抗体」には、抗体の抗原結合断片、すなわち、全長抗体によって結合される抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体断片、例えば、1つ以上のCDR領域を保持する断片が含まれる。抗体断片の例としては、限定はされないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;二重特異性抗体;線状抗体;重鎖抗体、単鎖抗体分子、例えば単鎖可変領域断片(scFv)、ナノボディ、及び二重特異性抗体などの別の特異性を有する抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられる。ある種の実施形態では、抗体は、その抗体に対する個人の免疫応答を低下させるようにヒト化されている。例えば、抗体は、キメラ、例えばヒト定常領域を有する非ヒト可変領域、又はCDRグラフトされたもの、例えばヒト定常領域及び可変領域のフレームワーク配列を有する非ヒトCDR領域であり得る。ある種の実施形態では、抗体は、ヒト化後に脱免疫原性化される。脱免疫原性化は、抗体の定常領域内の1つ以上のT細胞エピトープを除去する又は変異させることを含む。ある種の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、モノクローナルである。本明細書で使用する場合、「組換え抗体」は、2つの異なる種又は2つの異なる供給源由来のアミノ酸配列を含む抗体であり、合成の分子、例えば、非ヒトCDR及びヒトフレームワーク又は定常領域を含む抗体が含まれる。ある種の実施形態では、本発明の組換え抗体は、組換えDNA分子から産生される、又は合成される。用語「癌」及び「腫瘍」は、無秩序な細胞増殖を特徴とする、哺乳類における生理学的状態に関する。癌は、一群の細胞が、制御されない増殖又は望まれない増殖を呈する類の疾患である。癌細胞は、他の位置に拡散する可能性もあり、これが、転移の形成をもたらす可能性がある。体内の癌細胞の拡散は、例えば、リンパ又は血液を介して起こる可能性がある。制御されない増殖、侵入、及び転移形成は、癌の悪性特性とも呼ばれる。これらの悪性特性は、癌を、一般的には浸潤も転移もしない良性腫瘍と区別する。
【0022】
本明細書で使用する場合、「治療用抗体」は、個人に投与され、且つ癌の治療に有用な1つ以上の有益な効果をもたらすことが意図されるものである。本開示の治療用抗体には、h5D8と同一のCDR配列、重鎖及び/又は軽鎖免疫グロブリン可変領域、若しくは完全な免疫グロブリン重鎖及び軽鎖、又はh5D8とは異なるが類似の結合特性(エピトープ、親和性、又は生物学的効果)を有するCDRを有し、且つ癌の治療に有用な1つ以上の有益な効果をもたらすことができる抗体が含まれる。
【0023】
本明細書で使用する場合、「治療量」は、癌を治療するのに有用な1つ以上の有益な効果をもたらすことが意図される治療用抗体の投薬量である。いくつかの具体的な治療量を、本明細書で詳細に論じる。
【0024】
本明細書で使用する場合、「を治療すること」又は「治療」は、1つ以上の有益な効果を生じることが意図される病的状態への介入を指す。癌/腫瘍のためには、治療には、病態安定、部分応答、完全寛解、無増悪生存期間の延長、全生存期間の延長、腫瘍縮小、腫瘍増殖の遅延、腫瘍増殖の停止、又は転移の予防若しくは低下をもたらす又は確かにもたらすことを目的とする方法が含まれる。ある種の場合では、本明細書に記載される治療方法は、成功裏の治療後の維持として、又は特定の腫瘍若しくは癌の再発若しくは転移を予防するために使用することができる。すべての個人が、治療用抗体の所与の投与に対して、同程度に反応する又は全く反応しないこととなるわけではないが、たとえ反応が検出されないとしても、これらの個人は治療されているとみなされることが理解されよう。
【0025】
本明細書で使用する場合、「バイオマーカー」は、その存在がその個人の病的状態を示す、個人における測定可能な分子である。限定はされないが、バイオマーカーは、例えば、タンパク質及びその翻訳後修飾物、ポリペプチド、核酸、DNA、RNA、アミノ酸、脂肪酸、脂質、ステロール、炭水化物、又はアミノ酸、脂肪酸、脂質、ステロール、及び炭水化物の代謝産物及び代謝中間体を含む。
【0026】
本明細書で使用する場合、「IHCスコア」は、検査試料におけるLIF又はLIF受容体発現レベルを定量化するために使用されるパラメータに関する。試料におけるIHCスコアは、試料を、免疫組織化学を使用して抗LIF又はLIF受容体特異的抗体で染色することによって決定される。各腫瘍細胞には、染色なしに対する0から最も強い染色に対する3+までの範囲の強度レベルが与えられ、中程度に染色している細胞については2+、及び弱く染色している細胞については1+である。次いで、IHCスコアを、次の式:
[1×(1+の細胞(%))+2×(2+の細胞(%))+3×(3+の細胞(%))]
によって算出することができる。
IHCスコアは、1から300までの範囲であり得る。試料におけるIHCスコアを、直接的に使用して、LIF発現レベルに関する指標を提供することもできるし、基準のIHCスコア値と比較して、個人が抗LIF治療用抗体での治療に反応したかどうかについての指標を提供することもできる。
【0027】
本明細書で使用する場合、「免疫組織化学」又は「IHC」は、組織又は細胞の試料中のある種の抗原(バイオマーカー)について試験するために抗体、親和性分子、及び染料を使用する臨床検査を指す。抗体は、酵素又は蛍光色素と結合させることができる。IHCは、組織又は細胞構造、例えば核又は細胞膜染色をさらに生じる他の非抗体染色又は方法と組み合わせることができる。IHCは、ホルマリン固定パラフィン包埋された又は凍結された組織又は生検試料に対して実施することができる。IHCはまた、懸濁液中の細胞に対しても実施することができ、その後、細胞を遠心沈殿させる又は顕微鏡のスライドガラス若しくはカバーガラスに付着させる。IHC試料は、可視光での顕微鏡観察若しくは画像化又は蛍光での顕微鏡観察若しくは画像化によって適切に分析することができる。定量化は、手作業で又はコンピュータプログラム(例えば、Image J)によって実施することができる。
【0028】
本明細書で使用する場合、「基準レベル」は、個人から得られた試料から得られた値又はデータを評価するために参照基準として使用される、あらかじめ定められた基準に関する。基準レベルは、絶対値;相対値;上限又は下限を有する値;値の範囲;平均値(average value);中央値;平均値(mean value);又は特定の対照若しくはベースライン値と比較された値であり得る。基準レベルは、例えば検査される対象からのより早い時点での試料から得られた値などの、個々の試料の値に基づくものであり得る。基準レベルは、同様の暦年齢、性別、病態、又は他に対応する群の対象の集団からのものなどの多数の試料に基づくもの、又は検査されることとなる試料が含められた又は除外された試料のプールに基づくものであり得る。基準レベルは、癌を患っている異なる個人から得られた典型的な数の癌/腫瘍試料から決定することもできる。基準レベルは、癌を患っている又は癌を患っていない個人からの生体試料から決定することもできる。癌を患っている又は癌を患っていない個人からのこれらの生体試料は、例えば、組織生検試料、血液、血漿、血清、糞便試料、尿、脳脊髄液、パップスメア、又は精液を含むことができる。代表的な試料は、少なくとも50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000又はそれ以上の個人、又は個人からの癌/腫瘍生体試料からの測定を含むことができる。
【0029】
参照ポリペプチド又は抗体配列に関する配列同一性のパーセント(%)は、配列同一性の最大のパーセントを得るために、必要であれば配列を整列させてギャップを導入した後の、且つ配列同一性の一部としてのいかなる保存的置換も考慮しない、参照ポリペプチド又は抗体配列内のアミノ酸残基と同一である、候補配列内のアミノ酸残基のパーセンテージである。アミノ酸配列同一性のパーセントを決定する目的のアラインメントは、公知である様々な方式で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、実現することができる。比較される配列の全長にわたる最大アラインメントを実現するために必要とされるアルゴリズムを含めた、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することが可能である。しかし、本明細書の目的では、アミノ酸配列同一性の値(%)は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用してもたらされる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって作成され、ソースコードは、U.S.Copyright Office,Washington D.C.,20559に、ユーザ文書と共に保管されており、ここでは、これは、U.S.Copyright Registration No.TXU510087で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Calif.から公的に利用可能であるし、ソースコードからコンパイルすることもできる。ALIGN-2プログラムは、digital UNIX V4.0Dを含めたUNIXオペレーティングシステムでの使用のためにコンパイルされるべきである。すべての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変更しない。
【0030】
ALIGN-2が、アミノ酸配列比較のために用いられる場合、所与のアミノ酸配列Bに対する、アミノ酸配列Bとの、又はアミノ酸配列Bと対照する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性(%)(これは、代わりに、所与のアミノ酸配列Bに対して、アミノ酸配列Bと、又はアミノ酸配列Bと対照して、あるアミノ酸配列同一性(%)を有する又は含む所与のアミノ酸配列Aと表現することもできる)は、次の通りに算出される:100×分数X/Y(ここでは、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、AとBのプログラムのアラインメントについて同一のマッチとして記録されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性(%)は、BのAに対するアミノ酸配列同一性(%)と等しくないこととなるということを理解されたい。他に具体的に規定されない限り、本明細書で使用されるすべてのアミノ酸配列同一性の値(%)は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して、直前の段落に記載した通りに得られる。
【0031】
用語「エピトープ」には、抗体などの抗原結合タンパク質によって結合されることが可能であるあらゆる決定基が含まれる。エピトープは、その抗原を標的にする抗原結合タンパク質によって結合される抗原の領域であり、抗原がタンパク質である場合、抗原結合タンパク質と直接的に接触する特異的なアミノ酸が含まれる。エピトープは、タンパク質上に存在することが最も多いが、糖類又は脂質などの他の種類の分子上に存在する場合もあり得る。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、又はスルホニル基などの分子の、化学的に活性な表面集団(grouping)を含むことができ、特異的な三次元構造特性及び/又は特異的な電荷特性を有することができる。一般に、特定の標的抗原に特異的な抗体は、タンパク質及び/又は高分子の複合混合物における標的抗原上のエピトープを優先的に認識することとなる。ある種の実施形態では、本明細書に開示した抗体は、線状配列のアミノ酸を認識する。ある種の実施形態では、本明細書に開示した抗体は、立体構造(非線状)配列のアミノ酸を認識する。
【0032】
本明細書に記載される抗体の構造的特質
相補性決定領域(「CDR」)は、主として抗体の抗原結合特異性の原因である、免疫グロブリン(抗体)可変領域の一部である。CDR領域は、抗体が同じ標的又はエピトープに特異的に結合する場合でも、抗体ごとに高度に変動する。重鎖可変領域は、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3と省略される3つのCDR領域を含み;軽鎖可変領域は、VL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3と省略される3つのCDR領域を含む。これらのCDR領域は、可変領域内に連続して並んでおり、CDR1が最もN末端側であり、CDR3が最もC末端側である。CDRは、構造に寄与し且つCDR領域よりもかなり低い変動性を呈するフレームワーク領域の間に挿入されている。重鎖可変領域は、VH-FR1、VH-FR2、VH-FR3、及びVH-FR4と省略される4つのフレームワーク領域を含み;軽鎖可変領域は、VL-FR1、VL-FR2、VL-FR3、及びVL-FR4と省略される4つのフレームワーク領域を含む。2本の重鎖と軽鎖を含む完全なフルサイズの二価抗体は、3つの特有の重鎖CDRと3つの特有の軽鎖CDRを含む12個のCDR;4つの特有の重鎖FR領域と4つの特有の軽鎖FR領域を含む16個のFR領域を含むこととなる。ある種の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、3つの重鎖CDRを最小限含む。ある種の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、3つの軽鎖CDRを最小限含む。ある種の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、3つの重鎖CDRと3つの軽鎖CDRを最小限含む。所与のCDR又はFRの厳密なアミノ酸配列の境界は、Kabat et al.(1991),“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”5th Ed.Public Health Service,アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health),Bethesda,MD(「Kabat」ナンバリングスキーム);Al-Lazikani et al.,(1997)JMB 273,927-948(「Chothia」ナンバリングスキーム);MacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996),“Antibody-antigen interactions:Contact analysis and binding site topography,”(「Contact」ナンバリングスキーム);Lefranc MP et al.,”IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,”Dev Comp Immunol,2003 Jan;27(1):55-77(「IMGT」ナンバリングスキーム);及びHonegger A and Plueckthun A,“Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool,”J Mol Biol,2001 Jun 8;309(3):657-70,(「Aho」ナンバリングスキーム)によって記載されているものを含めた、いくつかの周知のスキームのいずれかを使用して容易に決定することができる。CDRは、異なるナンバリングシステムを使用して、本明細書ではKabat、IMGT、Chothiaナンバリングシステム、又は3つの任意の組み合わせを用いて提供される可変の配列から、本明細書で特定される。所与のCDR又はFRの境界は、特定のために使用されるスキームに応じて変わり得る。例えば、Kabatスキームは、構造アラインメントに基づいているのに対して、Chothiaスキームは、構造情報に基づいている。KabatスキームとChothiaスキームのどちらについてのナンバリングも、いくつかの抗体に現れる、挿入(挿入文字、例えば「30a」によって対応される)及び欠失と共に、最も一般的な抗体領域配列長に基づいている。2つのスキームは、ある種の挿入及び欠失(「インデル」)を、異なる位置に配置し、その結果、異なるナンバリングがもたらされる。Contactスキームは、複合体結晶構造の解析に基づいており、多くの点でChothiaナンバリングスキームと似ている。ある種の実施形態では、本明細書に開示した可変領域から定義されるCDRは、Chothia、Kabat、IMGT、Contact、若しくはAho方法、又はその任意の組み合わせに従って定義されるものを含む。
【0033】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体が抗原に結合することに関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然の抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般に、類似の構造を有し、各ドメインは、4つの保存されるフレームワーク領域(FR)及び3つのCDRを含む(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照されたい)。たった1つのVH又はVLドメインが、抗原結合特異性を与えるのに十分であり得る。さらに、特定の抗原と結合する抗体を、抗原と結合する抗体由来のVH又はVLドメインを使用して単離して、それぞれ相補的VL又はVHドメインのライブラリをスクリーニングすることができる(例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993);Clarkson et al.,Nature352:624-628(1991)を参照されたい)。ある種の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ラット起源の可変領域を含む。ある種の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ラット起源のCDRを含む。ある種の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、マウス起源の可変領域を含む。ある種の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、マウス起源のCDRを含む。
【0034】
例えば抗体親和性を向上させるために、CDRに変更(例えば置換)を施すことができる。こうした変更は、体細胞成熟中に高い変異率を有するCDRコードコドンに施すことができ(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照されたい)、得られたバリアントを、結合親和性について試験することができる。親和性成熟(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、CDRのランダム化、又はオリゴヌクレオチド指定変異誘発を使用する)を使用して、抗体親和性を向上させることができる(例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(2001)を参照されたい)。抗原結合に関与するCDR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発又はモデリングを使用して、具体的に特定することができる(例えば、Cunningham and Wells Science,244:1081-1085(1989)を参照されたい)。具体的には、CDR-H3及びCDR-L3が、しばしば標的にされる。或いは、又はさらに、抗原-抗体複合体の結晶構造を解析して、抗体と抗原の間の接触点が特定される。こうした接触残基及び隣接残基は、置換のための候補として標的にする又は排除することができる。バリアントをスクリーニングして、そのバリアントが所望される特性を含有するかどうかを決定することができる。
【0035】
ある種の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、可変領域に加えて定常領域を含む。重鎖定常領域(C)は、完全な重鎖ポリペプチドのC末端、可変領域に対してC末端側に位置する、C1、C2、C3、及びC4と省略される4つのドメインを含む。軽鎖定常領域(C)は、Cよりもかなり小さく、完全な軽鎖ポリペプチドのC末端、可変領域に対してC末端側に位置する。定常領域は、高度に保存され、わずかに異なる機能及び特性と関連する異なるアイソタイプを含む。ある種の実施形態で定常領域は、標的抗原への抗体結合にとって不必要である。ある種の実施形態では、抗体の定常領域、重鎖と軽鎖は両方とも、抗体結合にとって不必要である。ある種の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、1つ以上の軽鎖定常領域、重鎖定常領域、又はこれらの両方を欠いている。最も多いモノクローナル抗体は、IgGアイソタイプのものであり;これは、さらに、4つのサブクラスIgG、IgG、IgG、及びIgGに分類される。ある種の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、あらゆるIgGサブクラスを含む。ある種の実施形態では、IgGサブクラスは、IgGを含む。ある種の実施形態では、IgGサブクラスは、IgGを含む。ある種の実施形態では、IgGサブクラスは、IgGを含む。ある種の実施形態では、IgGサブクラスは、IgGを含む。
【0036】
抗体は、補体及びFc受容体への結合を担うフラグメント結晶化可能領域(fragment crystallizable region)(Fc領域)を含む。Fc領域は、抗体分子のC2、C3、及びC4領域を含む。抗体のFc領域は、補体及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)の活性化を担う。Fc領域はまた、抗体の血清半減期に寄与する。ある種の実施形態では、本明細書に記載される治療用抗体のFc領域は、補体介在性の細胞溶解を促進する1つ以上のアミノ酸置換を含む。ある種の実施形態では、本明細書に記載される治療用抗体のFc領域は、ADCCを促進する1つ以上のアミノ酸置換を含む。ある種の実施形態では、本明細書に記載される治療用抗体のFc領域は、補体介在性の細胞溶解を減少させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。ある種の実施形態では、本明細書に記載される治療用抗体のFc領域は、抗体のFc受容体への結合を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。ある種の実施形態では、Fc受容体は、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、FcγRIIIB(CD16b)、又はこれらのあらゆる組み合わせを含む。ある種の実施形態では、本明細書に記載される治療用抗体のFc領域は、抗体の血清半減期を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。ある種の実施形態では、治療用抗体の血清半減期を増大させる1つ以上のアミノ酸置換は、新生児型Fc受容体(FcRn)に対する抗体の親和性を増大させる。
【0037】
診療現場において有用な抗体は、ヒト個人における免疫原性を低下させるために、しばしば「ヒト化」されている。ヒト化抗体は、モノクローナル抗体療法の安全性及び有効性を向上させる。ある一般的なヒト化の方法は、いずれかの好適な動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター)においてモノクローナル抗体を産生し、定常領域をヒト定常領域と置き換えることであり、このようにして遺伝子操作で作られた抗体は、「キメラ」と称される。別の一般的な方法は、非ヒトV-FRをヒトV-FRと置き換える「CDRグラフティング」である。CDRグラフティング方法では、CDR領域を除くすべての残基が、ヒト起源のものである。ある種の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒト化されている。ある種の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、キメラである。ある種の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、CDRグラフトされている。
【0038】
治療用抗LIF抗体での治療を決定する方法
本明細書に記載されるのは、個人からの試料中のバイオマーカーのレベルが基準レベルを超える場合に、治療用抗LIF抗体で個人を治療することを含む方法である。試料は、血液試料、血漿試料、血清試料、尿試料、糞便試料、又は組織試料、例えば疑われている又は分かっている腫瘍からの組織生検試料などを含むことができる。バイオマーカーは、LIF、LIF受容体、II型マクロファージ(M2)細胞のマーカー、制御性T細胞のマーカー、活性化T細胞、抗原曝露歴のあるT細胞、細胞傷害性T細胞、免疫抑制性サイトカイン、若しくは免疫抑制性ケモカイン、若しくはリン酸化STAT3、又はあらゆる他の免疫調節分子を含むことができる。バイオマーカーのレベルは、あらゆる一般的に使用される分子又は細胞技術、例えば、限定はされないが:半定量的PCR、デジタルPCR、リアルタイムPCR、若しくはRNA-seqによるmRNA定量化;又はウエスタンブロット、フローサイトメトリー、マスサイトメトリー、ELISA、免疫蛍光、若しくは均一系による(homogenous)タンパク質定量化アッセイ(例えば、AlphaLISA(登録商標))によるタンパク質定量化などによって決定することができる。ある種の実施形態では、バイオマーカーは、ある種のバイオマーカーに対して特異的な抗体を使用する免疫組織化学によって決定される。免疫組織化学は、個人からの生検試料又は血液試料に対して実施することができる。免疫組織化学を使用して、ある種のタンパク質についてのIHCスコアを決定し、基準レベル又は対照試料と比較することができる。さらに、治療法決定の情報を与えるために、バイオマーカーの組み合わせのタンパク質、mRNA、又はDNAレベルを決定することができる。
【0039】
ある種の実施形態では、バイオマーカーは、LIFである。ある種の実施形態では、この開示の抗体で治療される個人は、LIF陽性の腫瘍/癌を有する場合に治療について選択されている。ある種の実施形態では、腫瘍は、LIF陽性である、又は上昇したレベルのLIFを生じる。ある種の実施形態では、LIF陽性は、基準値、又は一連の病理学的基準と比較して決定される。ある種の実施形態では、LIF陽性腫瘍は、その腫瘍が由来する非形質転換細胞よりも2倍、3倍、5倍、10倍、100倍大きい、又はそれよりも大きいLIFを発現する。ある種の実施形態では、腫瘍は、LIFの異所性発現を獲得している。
【0040】
LIFタンパク質レベルは、免疫組織化学を使用して、定量的に又は半定量的に決定することができる。ある種の実施形態では、LIF IHCスコアは、個人からの試料において算出することができ、IHCスコアが、約1、5、10、25、50、75、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、又は250である又はこれらを超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、治療用抗体は、h5D8又はその抗原結合断片である。ある種の実施形態では、試料は、組織試料又は組織生検試料である。ある種の実施形態では、LIF陽性細胞のパーセンテージは、個人からの試料において決定することができ、LIF陽性細胞のパーセンテージが、1%、2%、3%. 4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、又は80%を超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、治療用抗体は、h5D8又はその抗原結合断片である。ある種の実施形態では、試料は、組織試料又は組織生検試料である。LIF-IHCスコア基準レベルは、少なくともN本の試料の集団において観察されたレベルから得られる。ある種の実施形態では、Nは、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、又はそれ以上である。ある種の実施形態では、試料は、同様の型の癌(例えば、特定の癌についての基準レベルを定義すること)又はすべての癌(例えば、すべての癌についての基準レベルを定義すること)を含む。異なる型の癌は、h5D8での成功裏の治療の可能性の増大を示す、異なる基準レベルを有する可能性があるので、LIF IHCスコアは、ある種の癌に特有であり得る。ある種の実施形態では、LIF IHCスコアは、非小細胞肺癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、膵癌、前立腺癌、泌尿生殖器癌、婦人科癌、胃腸癌、内分泌系癌、多形神経膠芽腫、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、胆管癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、及び頭頸部扁平上皮癌のいずれか1つ以上に特有である。
【0041】
LIFタンパク質レベルは、ELISAに基づくアッセイを使用して、定量的に又は半定量的に決定することができる。ある種の実施形態では、LIFタンパク質量は、個人からの試料において決定することができ、タンパク質量が、1ピコグラム/ミリリットル(pg/mL)、2pg/mL、3pg/mL、4pg/mL、5pg/mL、6pg/mL、7pg/mL、8pg/mL、9pg/mL、10pg/mL、20pg/mL、30pg/mL、40pg/mL、50pg/mL、60pg/mL、70pg/mL、80pg/mL、90pg/mLを超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、治療用抗体は、h5D8又はその抗原結合断片である。ある種の実施形態では、LIFタンパク質量は、個人からの試料において決定することができ、タンパク質量が、100pg/mL)、200pg/mL、300pg/mL、400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mL、900pg/mL、1ナノグラム/ミリリットル(ng/mL)、2ng/mL、3ng/mL、4ng/mL、5ng/mL、6ng/mL、7ng/mL、8ng/mL、9ng/mL、10ng/mLを超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、治療用抗体は、h5D8又はその抗原結合断片である。ある種の実施形態では、LIFタンパク質量は、個人からの試料において決定することができ、タンパク質量が、100ピコグラム/ミリリットル(pg/mL)、200pg/mL、300pg/mL、400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mL、900pg/mL、1ナノグラム/ミリリットル(ng/mL)、2ng/mL、3ng/mL、4ng/mL、5ng/mL、6ng/mL、7ng/mL、8ng/mL、9ng/mL、10ng/mLを超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、治療用抗体は、h5D8又はその抗原結合断片である。ある種の実施形態では、試料は、血液試料、血漿試料、又は血清試料である。ELISA基準レベルは、少なくともN本の試料の集団において観察されたレベルから得られる。ある種の実施形態では、Nは、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、又はそれ以上である。ある種の実施形態では、試料は、同様の型の癌(例えば、特定の癌についての基準レベルを定義すること)又はすべての癌(例えば、すべての癌についての基準レベルを定義すること)を含む。異なる型の癌は、h5D8での成功裏の治療の可能性の増大を示す、異なる基準レベルを有する可能性があるので、LIF ELISA基準は、ある種の癌に特有であり得る。ある種の実施形態では、LIF ELISA基準は、非小細胞肺癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、膵癌、前立腺癌、泌尿生殖器癌、婦人科癌、胃腸癌、内分泌系癌、多形神経膠芽腫、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、胆管癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、及び頭頸部扁平上皮癌のいずれか1つ以上に特有である。
【0042】
LIF mRNAレベルは、リアルタイムPCR又はRNA-seqを使用して、定量的に又は半定量的に決定することができる。ある種の実施形態では、LIF mRNAレベルを決定することができ、LIF mRNAレベルが、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、又は75パーセンタイルに相当するレベルを超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、治療用抗体は、h5D8又はその抗原結合断片である。パーセンタイル基準は、少なくともN本の試料の集団において観察されたmRNAレベルに関する。ある種の実施形態では、Nは、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、又はそれ以上である。ある種の実施形態では、試料は、同様の型の癌(例えば、特定の癌についての基準レベルを定義すること)又はすべての癌(例えば、すべての癌についての基準レベルを定義すること)を含む。異なる型の癌は、h5D8での成功裏の治療の可能性の増大を示す、異なる基準レベルを有する可能性があるので、LIF mRNA基準レベルは、ある種の癌に特有であり得る。ある種の実施形態では、LIF mRNA基準レベルは、非小細胞肺癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、膵癌、前立腺癌、泌尿生殖器癌、婦人科癌、胃腸癌、内分泌系癌、多形神経膠芽腫、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、胆管癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、及び頭頸部扁平上皮癌のいずれか1つ以上に特有である。
【0043】
LIFは、LIF受容体及びgp130への結合を介してシグナルを送る。ある種の実施形態では、本明細書に開示した抗体は、癌細胞上に直接的に、又は腫瘍関連骨髄細胞(例えば、マクロファージ若しくは骨髄由来抑制細胞)、間質細胞(癌関連線維芽細胞)、若しくは内皮細胞上に、LIF受容体(CD118)を発現する腫瘍又は癌を治療するのに有用である。腫瘍関連マクロファージは、II型マクロファージ(M2)などの特異的な免疫抑制性マクロファージであり得る。
【0044】
ある種の実施形態では、バイオマーカーは、LIF受容体である。ある種の実施形態では、この開示の抗体で治療される個人は、LIF受容体陽性の腫瘍/癌を有する場合に治療について選択されている。ある種の実施形態では、この開示の抗体で治療される個人は、例えば、IHC、フローサイトメトリー、又はmRNA定量化によって評価された場合に腫瘍部位へのLIF受容体陽性の浸潤物を有する場合に治療について選択されている。これらの浸潤物は、腫瘍関連マクロファージ、II型マクロファージ、骨髄由来抑制細胞、腫瘍単球系の骨髄由来抑制細胞(M-MDSC)、又は腫瘍多形核細胞系の骨髄由来抑制細胞(PMN-MDSC)などの免疫調節細胞を含むことができる。
【0045】
ある種の実施形態では、本明細書に開示した抗体は、LIF受容体を発現する腫瘍又は癌を治療するのに有用である。LIF受容体陽性の腫瘍は、病理組織学又はフローサイトメトリーによって決定することができ、ある種の実施形態では、アイソタイプ対照よりも2×、3×、4×、5×、10×又はそれよりも多いLIF受容体抗体と結合する細胞を含む。ある種の実施形態では、腫瘍は、LIF受容体の異所性発現を受けている。ある種の実施形態では、癌は、癌幹細胞である。ある種の実施形態では、LIF受容体陽性の腫瘍又は癌は、抗LIF受容体を使用する免疫組織化学によって決定することができる。ある種の実施形態では、免疫抑制性反応と関連する1つ以上の細胞集団と関連するLIF受容体タンパク質又はmRNAのレベルが決定される。ある種の実施形態では、細胞集団は、骨髄細胞、マクロファージ細胞、M2細胞、好中球、骨髄由来抑制細胞、腫瘍M-MDSC、又は腫瘍PMN-MDSCである。
【0046】
LIF受容体タンパク質レベルは、免疫組織化学を使用して、定量的に又は半定量的に決定することができる。LIF受容体についてのIHCアッセイは、試料中のすべての細胞上に、試料中のすべての免疫細胞上に、試料中のすべての骨髄由来の細胞上に、又は試料中のすべてのマクロファージ上に発現されるLIF受容体に基づくものであり得る。ある種の実施形態では、LIF受容体IHCスコアは、個人からの試料において算出することができ、IHCスコアが、約1、5、10、25、50、75、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、又は250である又はこれらを超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、治療用抗体は、h5D8又はその抗原結合断片である。ある種の実施形態では、試料は、組織試料又は組織生検試料である。ある種の実施形態では、LIF受容体陽性の細胞のパーセンテージは、個人からの試料において決定することができ、LIF受容体陽性細胞のパーセンテージが、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、又は80%を超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、治療用抗体は、h5D8又はその抗原結合断片である。ある種の実施形態では、試料は、組織試料又は組織生検試料である。LIF受容体IHCスコア基準レベルは、少なくともN本の試料の集団において観察されたレベルから得られる。ある種の実施形態では、Nは、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、又はそれ以上である。ある種の実施形態では、試料は、同様の型の癌(例えば、特定の癌についての基準レベルを定義すること)又はすべての癌(例えば、すべての癌についての基準レベルを定義すること)を含む。異なる型の癌は、h5D8での成功裏の治療の可能性の増大を示す、異なる基準レベルを有する可能性があるので、LIF受容体IHCスコアは、ある種の癌に特有であり得る。ある種の実施形態では、LIF受容体IHCスコアは、非小細胞肺癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、膵癌、前立腺癌、泌尿生殖器癌、婦人科癌、胃腸癌、内分泌系癌、多形神経膠芽腫、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、胆管癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、及び頭頸部扁平上皮癌のいずれか1つ以上に特有である。
【0047】
LIF受容体タンパク質レベルは、フローサイトメトリーに基づくアッセイを使用して、定量的に又は半定量的に決定することができる。ある種の実施形態では、LIF受容体タンパク質レベルは、個人からの試料において決定することができ、タンパク質量が、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×を超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、治療用抗体は、h5D8又はその抗原結合断片である。ある種の実施形態では、試料は、血液試料、血漿試料、又は血清試料である。フローサイトメトリー基準レベルは、少なくともN本の試料の集団において観察されたレベルから得られる。ある種の実施形態では、Nは、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、又はそれ以上である。ある種の実施形態では、試料は、同様の型の癌(例えば、特定の癌についての基準レベルを定義すること)又はすべての癌(例えば、すべての癌についての基準レベルを定義すること)を含む。異なる型の癌は、h5D8での成功裏の治療の可能性の増大を示す、異なる基準レベルを有する可能性があるので、LIFフローサイトメトリー基準スコアは、ある種の癌に特有であり得る。ある種の実施形態では、LIFフローサイトメトリー基準は、非小細胞肺癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、膵癌、前立腺癌、泌尿生殖器癌、婦人科癌、胃腸癌、内分泌系癌、多形神経膠芽腫、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、胆管癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、及び頭頸部扁平上皮癌のいずれか1つ以上に特有である。
【0048】
LIF受容体mRNAレベルは、リアルタイムPCR又はRNA-seqを使用して、定量的に又は半定量的に決定することができる。ある種の実施形態では、LIF受容体mRNAレベルを決定することができ、LIF受容体mRNAレベルが、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、又は75パーセンタイルに相当するレベルを超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、治療用抗体は、h5D8又はその抗原結合断片である。パーセンタイル基準は、少なくともN本の試料の集団において観察されたmRNAレベルに関する。ある種の実施形態では、Nは、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、又はそれ以上である。ある種の実施形態では、試料は、同様の型の癌(例えば、特定の癌についての基準レベルを定義すること)又はすべての癌(例えば、すべての癌についての基準レベルを定義すること)を含む。異なる型の癌は、h5D8での成功裏の治療の可能性の増大を示す、異なる基準レベルを有する可能性があるので、LIF mRNA基準レベルは、ある種の癌に特有であり得る。ある種の実施形態では、LIF mRNA基準レベルは、非小細胞肺癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、膵癌、前立腺癌、泌尿生殖器癌、婦人科癌、胃腸癌、内分泌系癌、多形神経膠芽腫、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、胆管癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、及び頭頸部扁平上皮癌のいずれか1つ以上に特有である。
【0049】
本明細書に記載される、治療用抗LIF抗体で個人を治療する方法に有用な追加のバイオマーカーには、免疫抑制性バイオマーカーが含まれる。本明細書では、LIF及びLIF受容体が、種々の免疫調節細胞型におけるシグナル伝達にとって重要であり、したがって、免疫抑制性バイオマーカーが、治療成功の可能性の指標としての役割を果たすことができることが示される。これらのバイオマーカーは、それ自体で利用することも、LIF及びLIF受容体レベルの決定と組み合わせることもできる。ある種の実施形態では、免疫抑制性バイオマーカーのタンパク質、mRNA、又はDNAレベルが基準レベルを超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、治療用抗体は、h5D8又はその抗原結合断片である。ある種の実施形態では、免疫抑制性バイオマーカーのタンパク質、mRNA、又はDNAレベルが基準レベルを超える、且つLIFが基準レベルを超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、治療用抗体は、h5D8又はその抗原結合断片である。ある種の実施形態では、免疫抑制性バイオマーカーのタンパク質、mRNA、又はDNAレベルが基準レベルを超える、且つLIF受容体が基準レベルを超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、治療用抗体は、h5D8又はその抗原結合断片である。
【0050】
ある種の実施形態では、個人を治療について選択するために、LIF、LIF受容体、及び免疫抑制性バイオマーカーの3つすべての組み合わせを利用することができる。本開示の重要な免疫調節性及び免疫抑制性バイオマーカーには、制御性T細胞、活性化T細胞、抗原曝露歴のあるT細胞、細胞傷害性T細胞、及びそのそれぞれの機能(腫瘍関連マクロファージによって放出される又は腫瘍微小環境中に存在するケモカイン及びサイトカインが含まれる);骨髄由来抑制細胞のマーカー、又はマクロファージ(M2マクロファージが含まれる)のマーカーと関連するものが含まれる。ある種の実施形態では、バイオマーカーは、制御性T細胞に作用する共刺激分子、抗原提示分子、サイトカイン、又はケモカインなどの免疫調節分子である。ある種の実施形態では、制御性T細胞に作用する共刺激分子、抗原提示分子、サイトカイン、又はケモカインは、MHCII、CXCL9、CXCL10、CXCR3、PD-L1、CCL7、CCL2、CCL3、及びCCL22からなるリストから選択される。ある種の実施形態では、制御性T細胞に作用する抗原提示分子は、MHCIIである。ある種の実施形態では、制御性T細胞に作用するサイトカイン又はケモカインは、CXCL9である。ある種の実施形態では、制御性T細胞に作用するサイトカイン又はケモカインは、CXCL10である。ある種の実施形態では、制御性T細胞に作用するサイトカイン又はケモカインは、CXCR3である。ある種の実施形態では、制御性T細胞に作用する共刺激分子は、PD-L1である。ある種の実施形態では、制御性T細胞に作用するサイトカイン又はケモカインは、CCL7である。ある種の実施形態では、制御性T細胞に作用するサイトカイン又はケモカインは、CCL2である。ある種の実施形態では、制御性T細胞に作用するサイトカイン又はケモカインは、CCL3である。ある種の実施形態では、制御性T細胞に作用するサイトカイン又はケモカインは、CCL22である。ある種の実施形態では、患者は、MHCIIのレベルが基準レベル未満であるならば、治療について選択される。ある種の実施形態では、MHCIIが、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×未満であるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、患者は、CXCL9のレベルが基準レベル未満であるならば、治療について選択される。ある種の実施形態では、CXCL9が、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×未満であるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、患者は、CXCL10のレベルが基準レベル未満であるならば、治療について選択される。ある種の実施形態では、CXCL10が、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×未満であるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、患者は、CXCR3のレベルが基準レベル未満であるならば、治療について選択される。ある種の実施形態では、CXCR3が、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×未満であるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、患者は、PD-L1のレベルが基準レベル未満であるならば、治療について選択される。ある種の実施形態では、PD-L1が、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×未満であるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、患者は、CCL7のレベルが基準レベルを超えるならば、治療について選択される。ある種の実施形態では、CCL7が、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×を超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、患者は、CCL2のレベルが基準レベルを超えるならば、治療について選択される。ある種の実施形態では、CCL2が、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×を超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、患者は、CCL3のレベルが基準レベルを超えるならば、治療について選択される。ある種の実施形態では、CCL3が、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×を超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、患者は、CCL22のレベルが基準レベルを超えるならば、治療について選択される。ある種の実施形態では、CCL22が、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×を超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、免疫抑制性バイオマーカーは、M2マクロファージ細胞のマーカーである。ある種の実施形態では、M2マクロファージ細胞のマーカーは、CD206、CD163、PF4、CTSK、及びARG1からなるリストから選択される。ある種の実施形態では、M2マクロファージ細胞のマーカーは、CD206である。ある種の実施形態では、M2マクロファージ細胞のマーカーは、CD163である。ある種の実施形態では、M2マクロファージ細胞のマーカーは、PF4である。ある種の実施形態では、M2マクロファージ細胞のマーカーは、CTSKである。ある種の実施形態では、M2マクロファージ細胞のマーカーは、ARG1である。ある種の実施形態では、患者は、CD206のレベルが基準レベルを超えるならば、治療について選択される。ある種の実施形態では、CD206が、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×を超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、患者は、CD163のレベルが基準レベルを超えるならば、治療について選択される。ある種の実施形態では、CD163が、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×を超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、患者は、PF4のレベルが基準レベルを超えるならば、治療について選択される。ある種の実施形態では、PF4が、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×を超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、患者は、CTSKのレベルが基準レベルを超えるならば、治療について選択される。ある種の実施形態では、CTSKが、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×を超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、患者は、ARG1のレベルが基準レベルを超えるならば、治療について選択される。ある種の実施形態では、ARG1が、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×を超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。免疫抑制性バイオマーカーのタンパク質レベルは、ウエスタンブロット、ELISA、フローサイトメトリー、又はIHCによって決定することができ;免疫抑制性バイオマーカーのmRNAレベルは、定量的PCR又はRNA-seqによって決定することができる。ある種の実施形態では、治療用抗体は、h5D8又はその抗原結合断片である。ある種の実施形態では、本明細書に記載される免疫抑制性バイオマーカーのレベルが、基準レベルを超えるならば、患者は、治療用抗LIF抗体での治療について選択される。ある種の実施形態では、免疫抑制性バイオマーカーのレベルが基準レベルを超える、且つLIFが基準レベルを超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、免疫抑制性バイオマーカーのレベルが基準レベルを超える、且つLIF受容体が基準レベルを超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、個人を治療について選択するために、LIF、LIF受容体、及び免疫抑制性バイオマーカーの3つすべての組み合わせを利用することができる。
【0051】
本明細書に記載される、治療用抗LIF抗体での個人の治療を決定する方法に有用な追加のバイオマーカーには、LIFシグナル伝達のマーカーが含まれる。ある種の実施形態では、LIFシグナル伝達のマーカーは、リン酸化STAT3である。ある種の実施形態では、患者は、リン酸化STAT3のレベルが基準レベルを超えるならば、治療について選択される。ある種の実施形態では、pSTAT3が、対照抗体(例えば、アイソタイプ対照)と比較して1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×を超えるならば、治療用抗LIF抗体が、個人に投与される。ある種の実施形態では、治療用抗体は、h5D8又はその抗原結合断片である。
【0052】
治療用抗LIF抗体
本明細書に記載される5D8抗体は、ヒトLIFをコードするDNAで免疫化されたラットから産生された。この抗体の親ラット型は、r5D8と称され、ヒト化型は、h5D8と称される。
【0053】
5D8
本明細書に記載される抗体は、ヒトLIFをコードするDNAで免疫化されたラットから産生された。あるこうした抗体(5D8)をクローン化及び配列決定した。これは、次のアミノ酸配列:配列番号1(GFTFSHAWMH)に相当するVH-CDR1、配列番号4(QIKAKSDDYATYYAESVKG)に相当するVH-CDR2、配列番号6(TCWEWDLDF)に相当するVH-CDR3、配列番号9(RSSQSLLDSDGHTYLN)に相当するVL-CDR1、配列番号11(SVSNLES)に相当するVL-CDR2、及び配列番号13(MQATHAPPYT)に相当するVL-CDR3を含むCDR(KabatとIMGT CDRナンバリング方法の組み合わせを使用する)を含む。この抗体は、CDRグラフティングによってヒト化されており、ヒト化型はh5D8と称される。V及びV領域を、配列番号15及び配列番号19に示している。
【0054】
ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号1(GFTFSHAWMH)に示したものと少なくとも80%又は90%同一のVH-CDR1、配列番号4(QIKAKSDDYATYYAESVKG)に示したものと少なくとも80%、90%、又は95%同一のVH-CDR2、及び配列番号6(TCWEWDLDF)に示したものと少なくとも80%又は90%同一のVH-CDR3を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号9(RSSQSLLDSDGHTYLN)に示したものと少なくとも80%又は90%同一のVL-CDR1、配列番号11(SVSNLES)に示したものと少なくとも80%同一のVL-CDR2、及び配列番号13(MQATHAPPYT)に示したものと少なくとも80%又は90%同一のVL-CDR3を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号1(GFTFSHAWMH)に示したVH-CDR1、配列番号4(QIKAKSDDYATYYAESVKG)に示したVH-CDR2、配列番号6(TCWEWDLDF)に示したVH-CDR3、配列番号9(RSSQSLLDSDGHTYLN)に示したVL-CDR1、配列番号11(SVSNLES)に示したVL-CDR2、及び配列番号13(MQATHAPPYT)に示したVL-CDR3を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。この開示のCDRのアミノ酸配列中の、ある程度の保存的アミノ酸置換が想定される。ある種の実施形態では、抗体は、配列番号1、4、6、9、11、及び13のいずれか1つに示したアミノ酸配列と、1、2、3、又は4個のアミノ酸が異なるCDRを含む。ある種の実施形態では、抗体は、配列番号1、4、6、9、11、及び13のいずれか1つに示したアミノ酸配列と、1、2、3、又は4個のアミノ酸が異なり、且つ結合親和性に10%、20%、又は30%を超える影響を与えないCDRを含む。ある種の実施形態では、LIFと特異的に結合する抗体は、1つ以上のヒト重鎖フレームワーク領域を含む。
【0055】
ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号1(GFTFSHAWMH)に示したものと少なくとも80%又は90%同一のVH-CDR1アミノ酸配列、配列番号4(QIKAKSDDYATYYAESVKG)に示したものと少なくとも80%、90%、又は95%同一のVH-CDR2アミノ酸配列、及び配列番号8(TSWEWDLDF)に示したものと少なくとも80%又は90%同一のVH-CDR3アミノ酸配列を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号9(RSSQSLLDSDGHTYLN)に示したものと少なくとも80%又は90%同一のVL-CDR1アミノ酸配列、配列番号11(SVSNLES)に示したものと少なくとも80%同一のVL-CDR2アミノ酸配列、及び配列番号13(MQATHAPPYT)に示したものと少なくとも80%又は90%同一のVL-CDR3アミノ酸配列を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号1(GFTFSHAWMH)に示したVH-CDR1アミノ酸配列、配列番号4(QIKAKSDDYATYYAESVKG)に示したVH-CDR2アミノ酸配列、配列番号8(TSWEWDLDF)に示したVH-CDR3アミノ酸配列、配列番号9(RSSQSLLDSDGHTYLN)に示したVL-CDR1アミノ酸配列、配列番号11(SVSNLES)に示したVL-CDR2アミノ酸配列、及び配列番号13(MQATHAPPYT)に示したVL-CDR3アミノ酸配列を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。この開示のCDRのアミノ酸配列中の、ある程度の保存的アミノ酸置換が想定される。ある種の実施形態では、抗体は、配列番号1、4、8、9、11、及び13のいずれか1つに示したアミノ酸配列と、1、2、3、又は4個のアミノ酸が異なるCDRを含む。ある種の実施形態では、抗体は、配列番号1、4、8、9、11、及び13のいずれか1つに示したアミノ酸配列と、1、2、3、又は4個のアミノ酸が異なり、且つ結合親和性に10%、20%、又は30%を超える影響を与えないCDRを含む。
【0056】
ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号14、15、又は17のいずれか1つに示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変領域を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号14、15、及び17のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変領域を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号18~21のいずれか1つに示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変領域を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号18~21のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変領域を含む、LIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、抗体は、ヒトLIFと特異的に結合する。
【0057】
ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号15に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変領域;及び配列番号19に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変領域を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号15に示したアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変領域;及び配列番号19に示したアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変領域を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。
【0058】
ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号38に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変領域;配列番号19に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変領域を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号38に示したアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変領域と;配列番号19に示したアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変領域を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。
【0059】
ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号30~33のいずれか1つに示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖;配列番号34~37のいずれか1つに示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号30~33のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含むヒト化重鎖;配列番号34~37のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。
【0060】
ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号31に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖;配列番号35に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号31に示したアミノ酸配列を含むヒト化重鎖;配列番号35に示したアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号39に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖;配列番号35に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号39に示したアミノ酸配列を含むヒト化重鎖;配列番号35に示したアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。
【0061】
ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号3に示したアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1);配列番号4に示したアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2);配列番号7に示したアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3);配列番号9に示したアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1);及び配列番号11に示したアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2);及び配列番号13に示したアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む、白血病抑制因子(LIF)と特異的に結合する組換え抗体である。
【0062】
ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号2に示したアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1);配列番号5に示したアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2);配列番号6に示したアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3);配列番号10に示したアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1);及び配列番号12に示したアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2);及び配列番号13に示したアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む、白血病抑制因子(LIF)と特異的に結合する組換え抗体である。この開示のCDRのアミノ酸配列中の、ある程度の保存的アミノ酸置換が想定される。ある種の実施形態では、抗体は、配列番号2、5、6、10、12、及び13のいずれか1つに示したアミノ酸配列と、1、2、3、又は4個のアミノ酸が異なるCDRを含む。ある種の実施形態では、抗体は、配列番号2、5、6、10、12、及び13のいずれか1つに示したアミノ酸配列と、1、2、3、又は4個のアミノ酸が異なり、且つ結合親和性に10%、20%、又は30%を超える影響を与えないCDRを含む。
【0063】
ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号3に示したアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1);配列番号4に示したアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2);配列番号7に示したアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3);配列番号9に示したアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1);及び配列番号11に示したアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2);及び配列番号13に示したアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む、白血病抑制因子(LIF)と特異的に結合する組換え抗体である。この開示のCDRのアミノ酸配列中の、ある程度の保存的アミノ酸置換が想定される。ある種の実施形態では、抗体は、配列番号3、4、7、9、11、及び13のいずれか1つに示したアミノ酸配列と、1、2、3、又は4個のアミノ酸が異なるCDRを含む。ある種の実施形態では、抗体は、配列番号3、4、7、9、11、及び13のいずれか1つに示したアミノ酸配列と、1、2、3、又は4個のアミノ酸が異なり、且つ結合親和性に10%、20%、又は30%を超える影響を与えないCDRを含む。
【0064】
ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号22~25のいずれか1つに示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖;配列番号26~29のいずれか1つに示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号22~25のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含むヒト化重鎖;配列番号26~29のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。
【0065】
ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号23に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖;配列番号27に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号23に示したアミノ酸配列を含むヒト化重鎖;配列番号27のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。
【0066】
ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号39に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖;及び配列番号27に示したアミノ酸配列と少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、配列番号39に示したアミノ酸配列を含むヒト化重鎖;及び配列番号27のいずれか1つに示したアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖を含むLIFと特異的に結合する治療用抗体である。
【0067】
治療的に有用なLIF抗体によって結合されるエピトープ
本明細書に記載されるのは、結合された場合にLIFの生物学的活性(例えば、STAT3リン酸化)を阻害する、且つインビボで腫瘍増殖を阻害し、治療効果をもたらす、ヒトLIFの固有のエピトープである。本開示の治療用抗体は、h5D8のCDRを含まないが、h5D8と同じ又は類似のエピトープ(アミノ酸残基)に結合する、治療用抗体であり得る。類似のエピトープは、特定されるエピトープの範囲内で結合するものである。本明細書に記載されるエピトープは、ヒトLIFタンパク質の2つの別のトポロジカルドメイン(αヘリックスA及びC)中に存在する、(ヒトLIFの残基13から残基32まで、及び残基120から138までの)アミノ酸の2つの不連続な伸長からなる。この結合は、弱い(ファンデルワールス引力)、中程度の(水素結合)、及び強い(塩橋)相互作用の組み合わせである。ある種の実施形態では、接触残基は、抗LIF抗体上の残基と共に水素結合を形成するLIF上の残基である。ある種の実施形態では、接触残基は、抗LIF抗体上の残基と共に塩橋を形成するLIF上の残基である。ある種の実施形態では、接触残基は、抗LIF抗体上の残基と共にファンデルワールス引力をもたらし、且つ抗LIF抗体上の残基の少なくとも5、4、又は3オングストローム以内である、LIF上の残基である。治療用抗体は、このエピトープと結合する、又はこのエピトープのより小さい部分に結合する、又はこのエピトープと重複し、本明細書に記載されるアッセイに利用することができる。
【0068】
ある種の実施形態では、本明細書に記載される治療用抗体は、次の配列番号40の残基:A13、I14、R15、H16、P17、C18、H19、N20、Q25、Q29、Q32、D120、R123、S127、N128、L130、C131、C134、S135、又はH138のうちのいずれか1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個と結合する、単離された治療用抗体である。ある種の実施形態では、本明細書に記載されるのは、次の配列番号40の残基:A13、I14、R15、H16、P17、C18、H19、N20、Q25、Q29、Q32、D120、R123、S127、N128、L130、C131、C134、S135、又はH138のうちのすべてと結合する、単離された抗体である。ある種の実施形態では、抗体は、強い又は中程度の相互作用で抗体と関与する残基とのみ結合する。ある種の実施形態では、抗体は、強い相互作用で抗体と関与する残基とのみ結合する。ある種の実施形態では、抗体は、LIFのヘリックスA及びCと相互作用する。ある種の実施形態では、抗体は、gp130と共にLIF相互作用を阻止する。
【0069】
治療適応症
ある種の実施形態では、本明細書に開示した治療用抗体は、細胞におけるLIFシグナル伝達を阻害する。ある種の実施形態では、U-251細胞における血清飢餓条件下での抗体の生物学的阻害についてのIC50は、約100、75、50、40、30、20、10、5、又は1ナノモル濃度以下である。ある種の実施形態では、U-251細胞における血清飢餓条件下での抗体の生物学的阻害についてのIC50は、約900、800、700、600、500、400、300、200、又は100ナノモル濃度以下である。
【0070】
ある種の実施形態では、本明細書に開示されるのは、癌又は腫瘍の治療に有用な抗体である。ある種の実施形態では、癌は、乳房、心臓、肺、小腸、結腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭部、頸部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、精巣、及び肝臓腫瘍を含む。ある種の実施形態では、本発明の抗体で治療することができる腫瘍は、腺腫、腺癌、血管肉腫、星細胞腫、上皮癌、胚細胞腫、膠芽腫、神経膠腫、血管内皮腫、血管肉腫、血腫、肝芽腫、白血病、リンパ腫、髄芽腫、黒色腫、神経芽腫、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫及び/又は奇形腫を含む。ある種の実施形態では、腫瘍/癌は、末端黒子型黒色腫、日光角化症、腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、星細胞系腫瘍、バルトリン腺癌、基底細胞癌、気管支腺癌、毛細血管カルチノイド(capillary carcinoid)、癌腫、癌肉腫、胆管癌、軟骨肉腫、嚢胞腺腫、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、上衣肉腫(ependymal sarcoma)、スウィング肉腫(Swing’s sarcoma)、限局性結節性過形成、ガストロノーマ(gastronoma)、生殖系列腫瘍、膠芽腫、グルカゴノーマ、血管芽細胞腫、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝細胞癌、インスリナイト(insulinite)、上皮内腫瘍、上皮内扁平上皮癌(intraepithelial squamous cell neoplasia)、浸潤性扁平上皮癌、大細胞癌、脂肪肉腫、肺癌、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、平滑筋肉腫、黒色腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、神経鞘腫、髄芽腫、髄上皮腫、中皮腫、粘表皮癌、骨髄性白血病、神経芽腫、神経上皮腺癌、結節性型黒色腫、骨肉腫、卵巣癌、漿液性乳頭状腺癌、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、前立腺癌、肺芽腫、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、有棘細胞癌、小細胞癌、軟部組織癌(soft tissue carcinoma)、ソマトスタチン産生腫瘍(somatostatin secreting tumor)、扁平上皮癌、有棘細胞癌、未分化癌、ブドウ膜黒色腫、疣状癌、膣/外陰癌、VIP産生腫瘍、及びウィルムス腫瘍の群から選択される。ある種の実施形態では、本発明の1つ以上の抗体で治療されるべき腫瘍/癌は、脳癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、急性骨髄性白血病、プレB細胞急性リンパ性白血病、膀胱癌、星細胞腫、好ましくはグレードII、III、又はIV星細胞腫、膠芽腫、多形神経膠芽腫、小細胞癌、及び非小細胞癌、好ましくは非小細胞肺癌、肺腺癌、転移性黒色腫、アンドロゲン非依存性転移性前立腺癌、アンドロゲン依存性転移性前立腺癌、前立腺腺癌、及び乳癌(breast cancer)、好ましくは乳管癌、及び/又は乳癌(breast carcinoma)を含む。ある種の実施形態では、この開示の抗体で治療される癌は、膠芽腫を含む。ある種の実施形態では、この開示の1つ以上の抗体で治療される癌は、膵癌を含む。ある種の実施形態では、この開示の1つ以上の抗体で治療される癌は、卵巣癌を含む。ある種の実施形態では、この開示の1つ以上の抗体で治療される癌は、肺癌を含む。ある種の実施形態では、この開示の1つ以上の抗体で治療される癌は、前立腺癌を含む。ある種の実施形態では、この開示の1つ以上の抗体で治療される癌は、結腸癌を含む。ある種の実施形態では、治療される癌は、膠芽腫、膵癌、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。ある種の実施形態では、癌は、他の治療に対して抵抗性である。ある種の実施形態では、治療される癌は、再発性である。ある種の実施形態では、癌は、再発した/抵抗性の膠芽腫、膵癌、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、泌尿生殖器癌、婦人科癌、胃腸癌、内分泌系癌、又は肺癌である。ある種の実施形態では、癌は、進行した固形腫瘍、膠芽腫、胃癌、皮膚癌、前立腺癌、膵癌、乳癌、精巣癌、甲状腺癌、結腸直腸癌、胆管癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肝臓癌、腎臓癌、食道癌、卵巣癌、結腸癌、肺癌、リンパ腫、又は軟部組織癌を含む。ある種の実施形態では、癌は、非小細胞肺癌、卵巣上皮癌、又は膵臓腺癌を含む。ある種の実施形態では、癌は、進行した固形腫瘍を含む。
【0071】
治療方法
ある種の実施形態では、治療用抗体は、例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、腫瘍内、又は脳内などの、抗体含有医薬組成物の投与に適したあらゆる経路によって投与することができる。ある種の実施形態では、抗体は、静脈内に投与される。ある種の実施形態では、抗体は、好適な投薬スケジュールで(例えば、毎週、週2回、毎月、月2回など)投与される。ある種の実施形態では、抗体は、3週に1回投与される。抗体は、あらゆる治療有効量で投与することができる。ある種の実施形態では、治療的に許容される量は、約0.1mg/kg~約50mg/kgである。ある種の実施形態では、治療的に許容される量は、約1mg/kg~約40mg/kgである。ある種の実施形態では、治療的に許容される量は、約5mg/kg~約30mg/kgである。治療用抗体は、h5D8抗体が投与される個人の重量又は質量とは無関係に、一定の用量で投与することができる。h5D8抗体は、個人が少なくとも約37.5キログラムの質量を有するという条件で、治療用抗体が投与される個人の重量又は質量とは無関係に、一定の用量で投与することができる。約75ミリグラムから約2000ミリグラムまでの、一定の用量の治療用抗体を投与することができる。約225ミリグラムから約2000ミリグラムまでの、約750ミリグラムから約2000ミリグラムまでの、約1125ミリグラムから約2000ミリグラムまでの、又は約1500ミリグラムから約2000ミリグラムまでの、一定の用量の治療用抗体を投与することができる。約75ミリグラムの、一定の用量の治療用抗体を投与することができる。約225ミリグラムの、一定の用量の治療用抗体を投与することができる。約750ミリグラムの、一定の用量の治療用抗体を投与することができる。約1125ミリグラムの、一定の用量の治療用抗体を投与することができる。約1500ミリグラムの、一定の用量の治療用抗体を投与することができる。約2000ミリグラムの、一定の用量の治療用抗体を投与することができる。
【0072】
治療用抗体の他の投薬量も企図される。約50、100、150、175、200、250、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1025、1050、1075、1100、1150、1175、1200、1225、1250、1275、1300、1325、1350、1375、1400、1425、1450、1475、1525、1550、1575、1600、1625、1650、1675、1700、1725、1750、1775、1800、1825、1850、1875、1900、1925、1950、1975、2025、2050、2075、又は2100ミリグラムの、一定の用量の治療用抗体を投与することができる。これらの用量のいずれかを、週1回、2週に1回、3週に1回、又は4週に1回投与することができる。
【0073】
治療用抗体は、治療用抗体が投与される個人の重量又は質量に基づく用量で投与することができる。約1mg/kgから約25mg/kgまでの、体重により調節された用量の治療用抗体を投与することができる。約3mg/kgから約25mg/kgまでの、約10mg/kgから約25mg/kgまでの、約15mg/kgから約25mg/kgまでの、又は約20mg/kgから約25mg/kgまでの、体重により調節された用量の治療用抗体を投与することができる。約1mg/kgの、体重により調節された用量のh5D8を投与することができる。約3mg/kgの、体重により調節された用量の治療用抗体を投与することができる。約10mg/kgの、体重により調節された用量の治療用抗体を投与することができる。約15mg/kgの、体重により調節された用量の治療用抗体を投与することができる。約20mg/kgの、体重により調節された用量の治療用抗体を投与することができる。約25mg/kgの、体重により調節された用量の治療用抗体を投与することができる。
【0074】
本明細書で詳述した用量のいずれかを、少なくとも約60分という時間をかけてi.v.投与することができる;しかし、この時間は、それぞれ個々の投与に関する条件に基づいて、いくらか変動する可能性がある。
【0075】
薬学的に許容し得る補形薬、担体、及び希釈剤
ある種の実施形態では、本開示の抗体は、無菌の溶液に懸濁して投与される。ある種の実施形態では、この溶液は、生理学的に適切な塩濃度(例えば、NaCl)を含む。ある種の実施形態では、この溶液は、約0.6%~1.2%のNaClを含む。ある種の実施形態では、この溶液は、約0.7%~1.1%のNaClを含む。ある種の実施形態では、この溶液は、約0.8%~1.0%のNaClを含む。ある種の実施形態では、抗体の高度に濃縮されたストック溶液を、約0.9%のNaClに希釈することができる。ある種の実施形態では、溶液は、約0.9%のNaClを含む。ある種の実施形態では、溶液は、緩衝液、例えば、酢酸、クエン酸、ヒスチジン、コハク酸、リン酸、炭酸水素、及びヒドロキシメチルアミノメタン(Tris);界面活性剤、例えば、ポリソルベート80(Tween80)、ポリソルベート20(Tween20)、ポリソルベート及びポロクサマー188;ポリオール/二糖/多糖、例えば、グルコース、デキストロース、マンノース、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、及びデキストラン40;アミノ酸、例えば、ヒスチジン、グリシン、又はアルギニン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、メチオニン;並びにキレート剤、例えば、EGTA又はEGTAのうちの1種以上をさらに含む。ある種の実施形態では、本開示の抗体は、凍結乾燥して輸送/保管され、投与前に再構成される。ある種の実施形態では、凍結乾燥される抗体製剤は、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、及びデキストラン40などの充填剤を含む。ある種の実施形態では、この開示の抗LIF抗体は、使用される治療場所で希釈されることとなる濃縮されたストック溶液として輸送及び保管することができる。ある種の実施形態では、このストック溶液は、約25mMのヒスチジン、約6%のスクロース、約0.01%のポリソルベート、及び約20mg/mLの抗LIF抗体を含む。ある種の実施形態では、この溶液のpHは、約6.0である。ある種の実施形態では、個人に投与される形態は、約25mMのヒスチジン、約6%のスクロース、約0.01%のポリソルベート80、及び約20mg/mLのh5D8抗体を含む水溶液である。ある種の実施形態では、この溶液のpHは、約6.0である。
【実施例
【0076】
次の実例は、本明細書に記載される組成物及び方法の実施形態を代表するものであり、決して制限的であることが意図されない。
【0077】
実施例1-LIFに特異的なラット抗体の産生
ヒトLIFのアミノ酸23~202をコードするcDNAを、発現プラスミド(Aldevron GmbH,Freiburg,Germany)にクローニングした。実験用ラット(Wistar)の群に、微粒子撃ち込み(particle bombardment)(「遺伝子銃(gene gun)」)のための手持ち型装置を使用するDNAコーティングされた金粒子の皮内適用によって、免疫化した。一過性トランスフェクトしたHEK細胞上の細胞表面発現を、LIFタンパク質のN末端に付加されたタグを認識する抗タグ抗体を用いて確認した。一連の免疫化後に、血清試料を収集し、前述の発現プラスミドを用いて一過性トランスフェクトしたHEK細胞に対してフローサイトメトリーで試験した。抗体産生細胞を単離し、標準の手順に従って、マウス骨髄腫細胞(Ag8)と融合させた。上に記載した通りにフローサイトメトリー分析においてスクリーニングを行うことによって、LIFに特異的な抗体を産生するハイブリドーマを特定した。RNA保護剤(ThermoFisher ScientificによるRNAlater,cat.#AM7020)を使用して、陽性のハイブリドーマ細胞の細胞ペレットを調製し、抗体の可変ドメインの配列決定のためにさらに処理した。
【0078】
実施例2-LIFに特異的なマウス抗体の産生
ヒトLIFのアミノ酸23~202をコードするcDNAを、発現プラスミド(Aldevron GmbH,Freiburg,Germany)にクローニングした。実験用マウス(NMRI)の群に、微粒子撃ち込み(「遺伝子銃」)のための手持ち型装置を使用するDNAコーティングされた金粒子の皮内適用によって、免疫化した。一過性トランスフェクトしたHEK細胞上の細胞表面発現を、LIFタンパク質のN末端に付加されたタグを認識する抗タグ抗体を用いて確認した。一連の免疫化後に、血清試料を収集し、前述の発現プラスミドを用いて一過性トランスフェクトしたHEK細胞に対してフローサイトメトリーで試験した。抗体産生細胞を単離し、標準の手順に従って、マウス骨髄腫細胞(Ag8)と融合させた。上に記載した通りにフローサイトメトリー分析においてスクリーニングを行うことによって、LIFに特異的な抗体を産生するハイブリドーマを特定した。RNA保護剤(ThermoFisher ScientificによるRNAlater,cat.#AM7020)を使用して、陽性のハイブリドーマ細胞の細胞ペレットを調製し、抗体の可変ドメインの配列決定のためにさらに処理した。
【0079】
実施例3-LIFに特異的なラット抗体のヒト化
それに続くヒト化のために、ラット免疫化(5D8)からの1つのクローンを選択した。ヒト化は、標準のCDRグラフティング方法を使用して行った。重鎖及び軽鎖領域を、標準の分子クローニング技術を使用して、5D8ハイブリドーマからクローニングし、サンガー法によって配列決定した。次いで、ヒト重鎖及び軽鎖可変配列に対して、BLAST検索を行い、それぞれからの4つの配列を、ヒト化のためのアクセプターフレームワークとして選択した。これらのアクセプターフレームワークを脱免疫原性化して、T細胞応答エピトープを除去した。5D8の重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を、4つの異なる重鎖アクセプターフレームワーク(H1からH4)、及び4つの異なる軽鎖フレームワーク(L1からL4)にクローニングした。次いで、16個の異なる抗体をすべて、CHO-S細胞(Selexis)における発現;LIF誘発STAT3リン酸化の阻害;及び表面プラズモン共鳴(SPR)による結合親和性について試験した。これらの実験を、以下にまとめて示す。
【0080】
【表1】
【0081】
トランスフェクトした細胞の発現性能を、エルレンマイヤーフラスコ(3×10細胞/mL播種、200mL培養体積)中で、流加培養で、10日の細胞培養後に、比較した。この時点で、細胞を回収し、分泌された抗体をプロテインAカラムを使用して精製し、次いで定量化した。H3重鎖を使用するものを除いて、すべてのヒト化抗体が発現した。H2及びL2可変領域は、他の可変領域と比較して、良い成果を果たした(配列番号15及び配列番号19)。
【0082】
チロシン705でのLIF誘発STAT3リン酸化の阻害を、ウエスタンブロットによって決定した。U251神経膠腫細胞を、100,000細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートにプレーティングした。細胞を、あらゆる処理の前に、完全培地で24時間培養し、その後、細胞を、8時間、血清飢餓状態にした。その後、細胞を、10μg/mlの濃度の指示された抗体で、一晩処理した。処理後、ホスファターゼ及びプロテアーゼ阻害剤を含有する放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)溶解緩衝液中でタンパク質を得、定量化し(BCA-タンパク質定量法、Thermo Fisher Scientific)、ウエスタンブロットに使用した。ウエスタンブロットについては、メンブレンを、5%脱脂粉乳-TBST中で1時間ブロッキングし、一次抗体と共に一晩(p-STAT3、catalog#9145、Cell Signaling若しくはSTAT3、catalog#9132、Cell Signaling)又は30分(β-アクチン-ペルオキシダーゼ、catalog#A3854、Sigma-Aldrich)インキュベートした。次いで、メンブレンをTBSTで洗浄し、二次抗体と共にインキュベートし、再び洗浄した。タンパク質を、化学発光(SuperSignal Substrate、catalog#34076、Thermo Fisher Scientific)によって検出した。これらの結果を、図1に示す。pSTAT3バンドの色が濃いほど、存在する阻害が小さい。阻害は、5D8(非ヒト化ラット)、A(H0L0)、C(H1L2)、D(H1L3)、及びG(H2L2)と標識が付けられたレーンでは高かった;阻害は、H(H2L3)、O(H4L2)、及びP(H4L3)では中程度であった;阻害は、B(H1L1)、E(H1L4)、F(H2L1)、I(H2L4)、N(H4L1)、及びQ(H4L4)では存在しなかった。
【0083】
次いで、LIF誘発STAT3リン酸化の阻害を呈する抗体を、SPRによって分析して、結合親和性を決定した。簡単に言うと、アミンカップリングhLIFに対するA(H0L0)、C(H1L2)、D(H1L3)、及びG(H2L2)、H(H2L3)及びO(H4L2)ヒト化抗体の結合を、Biacore(商標)2002装置を使用して観察した。速度定数及び親和性を、6つのリガンド濃度でのすべてのセンサーチップ表面上でもたらされたすべてのセンサーグラムの数学的センサーグラムフィッティング(ラングミュア相互作用モデル[A+B=AB])によって決定した。各濃度の最も適合する曲線(最小カイ二乗)を、速度定数及び親和性の算出のために使用した。表1を参照されたい。
【0084】
実験手順は、検体として二価抗体を使用したので、ヒト化抗体の標的結合機構へのより詳細な洞察を得るために、最も適合するセンサーグラムをまた、二価検体フィッティングモデル[A+B=AB;AB+B=AB2]に基づいて分析した。二価フィッティングモデル[A+B=AB;AB+B=AB2]を使用するセンサーグラム動態解析によって、mAb試料の相対的親和性順位が確認された。
【0085】
その高い結合親和性、及び回分培養からの高い収率により、より掘り下げた分析のために、H2及びL2を含むヒト化5D8を選択した。
【0086】
実施例4-クローン5D8のヒト化はLIFに対する結合を向上させる
さらなる分析のために、H2L2クローン(h5D8)を選択し、SPRによって、結合を、親ラット5D8(r5D8)及びマウスクローン1B2と比較した。1B2抗体は、以前にDeutsche Sammlung von Mikroorganismen and Zellkulturen GmbH(DSM ACC3054)に寄託された、以前に開示されたマウス抗LIF抗体であり、比較目的で含められた。それぞれ大腸菌(E.coli)及びHEK-293細胞から精製された組換え型ヒトLIを、リガンドとして使用した。ヒト又は大腸菌(E.coli)起源からのLIFを、アミンカップリング化学を使用して、Biacore光学センサーチップの表面に共有結合させ、速度定数から結合親和性を算出した。
【0087】
材料及び方法
大腸菌(E.coli)由来のヒトLIFは、Millipore(参照記号LIF 1010)から入手し;HEK-293細胞由来のヒトLIFは、ACRO Biosystems(参照記号LIF-H521b)から入手した。LIFを、Biacore Amine Coupling Kit(BR-1000-50;GE-Healthcare,Uppsala)を使用して、センサーチップにカップリングさせた。試料は、CM5光学センサーチップ(BR-1000-12;GE-Healthcare,Uppsala)を使用するBiacore(商標)2002装置に流した。機械の稼働中、Biacore HBS-EP緩衝液を使用した(BR-1001-88;GE-Healthcare,Uppsala)。結合センサーグラムの動態解析を、BIAevaluation 4.1ソフトウェアを使用して実施した。速度定数及び親和性を、漸増する検体濃度でのすべてのセンサーチップ表面上でもたらされたすべてのセンサーグラムの数学的センサーグラムフィッティング(ラングミュア相互作用モデル[A+B=AB])によって決定した。決定されたラングミュア抗体-標的親和性に対する二価の寄与(例えば、結合活性の寄与)についての見積もりをもたらすために、センサーグラムをまた、主成分分析を含めて、二価検体センサーグラムフィッティングモデル[A+B=AB;AB+B=AB2]に基づいて分析した。各濃度の最も適合する曲線(最小カイ二乗)を、速度定数及び親和性の算出のために使用した。これらの親和性実験の概要を、表2(大腸菌(E.coli)において作られたヒトLIF)及び表3(HEK293細胞において作られたヒトLIF)に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
この一連の実験から、ラングミュア1:1センサーグラムフィッティングモデルは、ヒト化5D8(h5D8)抗体が、マウス1B2及びr5D8よりも約10~25倍高い親和性で、ヒトLIFに結合したことを示す。
【0091】
次に、h5D8抗体を、SPRによって、複数の種のLIFに対して試験した。h5D8 SPR結合速度解析を、異なる種及び発現系由来の組換え型LIF検体:ヒトLIF(大腸菌(E.coli)、HEK293細胞);マウスLIF(大腸菌(E.coli)、CHO細胞);ラットLIF(大腸菌(E.coli));カニクイザルLIF(酵母、HEK293細胞)について実施した。
【0092】
材料及び方法
h5D8抗体を、非共有結合性の、Fc特異的な捕捉によって、センサーチップ表面に固定した。LIF検体に対する抗LIF抗体の立体的に均一且つフレキシブルな提示を可能にする、組換え型の、Ig(Fc)特異的な黄色ブドウ球菌(S.aureus)プロテインA/Gを、捕捉剤として使用した。LIF検体の供給源は、次の通りである:ヒトLIF(大腸菌(E.coli)より;Millipore参照記号LIF 1050);ヒトLIF(HEK細胞よりACRO Biosystems LIF-H521);マウスLIF(大腸菌(E.coli);Millipore Cat.No NF-LIF2010);マウスLIF(CHO細胞より;Reprokine Catalog# RCP09056);サルLIF(酵母 Kingfisher Biotech Catalog# RP1074Y);HEK-293細胞において産生されるサルLIF。全h5D8が、いくつかの種由来のLIFに対する結合を呈した。この親和性実験の概要を、表4に示す。
【0093】
【表4】
【0094】
実施例5-ヒト化クローン5D8は、STAT3のLIF誘発リン酸化をインビトロで阻害する
h5D8の生物学的活性を決定するために、LIF活性化の細胞培養モデルにおいて、ヒト化及び親型を試験した。図2Aは、神経膠腫細胞株をヒトLIFと共にインキュベートした場合に、ヒト化クローンが、STAT3リン酸化(Tyr 705)の阻害の増大を呈したことを示す。図2Bは、異なる希釈のh5D8抗体を用いて再び行った、図2Aと同じ手順を用いた実験を示す。
【0095】
方法
U251神経膠腫細胞を、150,000細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートにプレーティングした。細胞を、あらゆる処理の前に、完全培地で24時間培養した。その後、細胞を、10μg/mlの濃度のr5D8抗LIF抗体又はh5D8抗LIF抗体で、一晩処理した、又はしなかった(対照細胞)。
【0096】
処理後、ホスファターゼ及びプロテアーゼ阻害剤を含有する放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)溶解緩衝液中でタンパク質を得、定量化し(BCA-タンパク質定量法、Thermo Fisher Scientific)、ウエスタンブロットに使用した。ウエスタンブロットについては、メンブレンを、5%脱脂粉乳-TBST中で1時間ブロッキングし、一次抗体と共に一晩(p-STAT3、catalog#9145、Cell Signaling若しくはSTAT3、catalog#9132、Cell Signaling)又は30分(β-アクチン-ペルオキシダーゼ、catalog#A3854、Sigma-Aldrich)インキュベートした。次いで、メンブレンをTBSTで洗浄し、必要であれば二次抗体と共にインキュベートし、再び洗浄した。タンパク質を、化学発光(SuperSignal Substrate、catalog#34076、Thermo Fisher Scientific)によって検出した。
【0097】
実施例6-U-251細胞における内在レベルのLIFに対するh5D8抗体処理のIC50
U-251細胞において、血清飢餓条件下で、h5D8についての生物学的阻害に対する490ピコモル濃度(図3A)と低いIC50が決定された。代表的な結果図3A及び3B及び表5を参照されたい。
【0098】
【表5】
【0099】
方法
U-251細胞を、(条件あたり)6cmプレートあたり600,000細胞で蒔いた。細胞を、対応する濃度(段階希釈(titration))のh5D8で、血清飢餓(0.1% FBS)下で37℃で一晩処理した。pSTAT3についての陽性対照として、組換え型LIF(R&D #7734-LF/CF)を使用して、1.79nMで、37℃で10分間、細胞を刺激した。pSTAT3の陰性対照として、JAK I阻害剤(Calbiochem #420099)を、1μMで、37℃で30分間使用した。次いで、Meso Scale Discovery Multi-Spot Assay System Total STAT3(Cat# K150SND-2)及びPhospho-STAT3(Tyr705)(Cat# K150SVD-2)キットのプロトコルに従って、細胞を、ライセートのために氷上に回収して、MSD Meso Sector S600によって、検出可能なタンパク質レベルを測定した。
【0100】
実施例7-ヒトLIFに特異的に結合する追加の抗体
ヒトLIFと特異的に結合する他のラット抗体クローン(10G7及び6B5)を特定し、その結合特性の概要を、下の表6に示す(クローン1B2は比較としての役割を果たす)。
【0101】
方法
検体として、組換え型LIF標的タンパク質[ヒトLIF(大腸菌(E.coli));Millipore Cat.No.LIF 1010及びヒトLIF(HEK293細胞);ACRO Biosystems Cat.No.LIF-H521b]を適用して、CM5光学センサーチップの表面上に固定された抗LIF mAbs 1B2、10G7、及び6B5について、リアルタイム結合動態解析を実施した。
【0102】
速度定数及び親和性は、グローバルフィッティング(センサーグラムセットの同時フィッティング)並びに単一曲線フィッティングアルゴリズムを適用して、ラングミュア1:1結合モデルを使用する数学的センサーグラムフィッティングによって得た。グローバルフィットの妥当性を、kobs解析によって評価した。
【0103】
【表6】
【0104】
実施例8-STAT3のLIF誘発リン酸化をインビトロで阻害する追加の抗LIF抗体
追加のクローンを、細胞培養において、STAT3のLIF誘発リン酸化を阻害するその能力について試験した。図4に示す通り、クローン10G7及び以前に詳述したr5D8は、1B2クローンと比較して、LIF誘発STAT3リン酸化の高い阻害を呈した。抗LIFポリクローナル抗血清(pos.)は、陽性対照として含まれていた。6B5は、阻害を呈さなかったが、これは、この実験で使用された非グリコシル化LIFに対する6B5結合が存在しない可能性によって説明することができる。
【0105】
方法
患者由来の神経膠腫細胞を、150,000細胞/ウェルの密度で、6ウェルプレートにプレーティングした。細胞を、あらゆる処理の前に、B27(Life Technologies)、ペニシリン/ストレプトマイシン、及び増殖因子(20ng/ml EGF及び20ng/ml FGF-2[PeproTech])を添加したNeurobasal培地(Life Technologies)から構成されるGBM培地中で、24時間培養した。次の日、細胞を、大腸菌(E.coli)において産生された組換え型LIF、又は組換え型LIFプラス指示された抗体の混合物で、15分間処理した、又はしなかった(抗体については10μg/mlの最終濃度、及び20ng/mlの組換え型LIF)。処理後、ホスファターゼ及びプロテアーゼ阻害剤を含有する放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)溶解緩衝液中でタンパク質を得、定量化し(BCA-タンパク質定量法、Thermo Fisher Scientific)、ウエスタンブロットに使用した。ウエスタンブロットについては、メンブレンを、5%脱脂粉乳-TBST中で1時間ブロッキングし、一次抗体と共に一晩(p-STAT3、catalog#9145、Cell Signaling)又は30分(β-アクチン-ペルオキシダーゼ、catalog#A3854、Sigma-Aldrich)インキュベートした。次いで、メンブレンをTBSTで洗浄し、必要であれば二次抗体と共にインキュベートし、再び洗浄した。タンパク質を、化学発光(SuperSignal Substrate、catalog#34076、Thermo Fisher Scientific)によって検出した。
【0106】
実施例9-LIFは複数の腫瘍型にわたって高度に過剰発現される
複数のヒト腫瘍型に対して免疫組織化学を行って、LIF発現の程度を決定した。図5に示す通り、LIFは、多形神経膠芽腫(GBM)、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、結腸直腸癌(CRC)、及び膵腫瘍において高度に発現される。
【0107】
実施例10-ヒト化クローンh5D8は非小細胞肺癌のマウスモデルにおいて腫瘍増殖を阻害する
ヒト化5D8クローンがLIF陽性癌をインビボで阻害する能力を決定するために、この抗体を、非小細胞肺癌(NSCLC)のマウスモデルにおいて試験した。図6は、この抗体で治療されたマウスにおける、賦形剤の陰性対照と比較した腫瘍増殖の減少を示す。
【0108】
方法
高いLIFレベルを有するマウス非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株KLN205を、インビボでの生物発光モニタリングのために、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を発現するレンチウイルスに安定に感染させた。マウスモデルを発病させるために、5×10個のKLN205非小細胞肺癌(NSCLC)細胞を、8週齢の免疫適格性の同系移植DBA/2マウスの左肺に、肋間穿刺によって同所性移植した。マウスを、対照賦形剤で又は15mg/kg若しくは30mg/kgのh5D8抗体で(週2回、腹腔内に)治療し、腫瘍増殖を生物発光によってモニタリングした。生物発光画像化のために、マウスは、1~2%吸入イソフルラン麻酔下で0.2mLの15mg/mL D-ルシフェリンの腹腔内注射を受けた。生物発光シグナルは、高感度冷却CCDカメラから構成されるIVISシステム2000シリーズ(Xenogen Corp.,Alameda,CA,USA)を使用してモニタリングした。Living Imageソフトウェア(Xenogen Corp.)を使用して、画像化データをグリッド処理し、囲まれた各領域内の全生物発光シグナルを統合した。データは、対象領域(ROI)内の全光子束放射(光子/秒)を使用して解析した。結果は、h5D8抗体での治療が、腫瘍退縮を促進することを実証する。データは、平均値±SEMとして示される。
【0109】
実施例11-h5D8は多形神経膠芽腫のマウスモデルにおいて腫瘍増殖を阻害する
ルシフェラーゼ発現ヒト細胞株U251を使用する、同所移植GBM腫瘍モデルでは、腹腔内(IP)注射によって300μg r5D8及びh5D8を週2回投与したマウスにおいて、r5D8は、腫瘍体積を有意に低下させた。この研究の結果を、図7Aに示す(治療後第26日に定量化)。この実験をまた、200μg又は300μgで治療されるヒト化h5D8マウスを使用して行い、治療の7日後の腫瘍の統計的に有意な低下が示された。
【0110】
方法
ルシフェラーゼを安定に発現するU251細胞を収集し、PBS中で洗浄し、400gで5分間遠心分離し、PBSに再懸濁し、自動セルカウンター(Countess,Invitrogen)を用いて計数した。最適な生存能を維持するために、細胞を氷上に維持した。マウスを、ケタミン(Ketolar50(登録商標))/キシラシン(Xylacine)(Rompun(登録商標))(それぞれ75mg/kg及び10mg/kg)の腹腔内投与で麻酔した。各マウスを、注意深く定位装置に入れ、固定した。脱毛クリームを用いて頭部から毛を除去し、メスで頭部皮膚を切断して、頭蓋骨を露出させた。ラムダに対して横方向1.8mm且つ前方向1mmの座標に、穿孔器を用いて小さい切開部を注意深く作成した。右線条体に、2.5mmの深さでHamilton 30Gシリンジを使用して、5μLの細胞を接種した。Hystoacryl組織接着剤(Braun)を用いて頭部切開部を閉じ、マウスに皮下鎮痛薬メロキシカム(Metacam(登録商標))(1mg/kg)を注射した。各マウスに移植された最終細胞数は、3×10個であった。
【0111】
マウスを、腹腔内に投与されるh5D8で週2回治療した。治療は、腫瘍細胞接種の直後、第0日に開始した。マウスは、h5D8又は賦形剤対照の合計2回の投与を受けた。
【0112】
体重及び腫瘍体積:体重は、2回/週、測定し、腫瘍増殖は、第7日に生物発光(Xenogen IVIS Spectrum)によって定量化した。生物発光活性をインビボで定量化するために、マウスを、イソフルオラン(isofluorane)を使用して麻酔し、ルシフェリン基質(PerkinElmer)(167μg/kg)を腹腔内注射した。
【0113】
生物発光(Xenogen IVIS Spectrum)によって求められた腫瘍サイズを、第7日に評価した。個々の腫瘍測定値、及び各治療群についての平均値±SEMを算出した。統計的有意性は、対応のないノンパラメトリックなマン・ホイットニーのU検定によって決定した。
【0114】
実施例12-h5D8は卵巣癌のマウスモデルにおいて腫瘍増殖を阻害する
r5D8の有効性を、2つの他の同系移植腫瘍モデルにおいて評価した。卵巣同所移植腫瘍モデルID8では、300μg r5D8(週2回)のIP投与は、腹部体積によって測定された場合に、腫瘍増殖を有意に阻害した(図8A及び8B)。図8Cにおける結果は、h5D8はまた、200μg以上の用量でも腫瘍体積を低下させたことを示す。
【0115】
方法
ID8細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco,Invitrogen)、40U/mLペニシリン及び40μg/mLストレプトマイシン(PenStrep)(Gibco,Invitrogen)、及び0.25μg/mLプラスモシン(Plasmocin)(Invivogen)を添加した、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Gibco,Invitrogen)中で培養した。
【0116】
ID8細胞を収集し、PBS中で洗浄し、400gで5分間遠心分離し、PBSに再懸濁した。最適な生存能を維持するために、細胞を氷上に維持し、200μLの細胞懸濁液を、27G針を用いて腹腔内に注射した。マウスに移植された最終細胞数は、5×10個であった。
【0117】
マウスは、指示された通りの異なる用量でip投与されるh5D8で週2回治療した。体重は、2回/週、測定し、腫瘍増悪は、ノギス(Fisher Scientific)を使用して腹囲を測定することによってモニタリングした。
【0118】
実施例13-r5D8は結腸直腸癌のマウスモデルにおいて腫瘍増殖を阻害する
皮下結腸CT26腫瘍を有するマウスでは、r5D8(週2回300μgをIP投与される)は、腫瘍増殖を有意に阻害した(図9A及び9B)。
【0119】
方法
CT26細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)、40U/mLペニシリン及び40μg/mLストレプトマイシン(PenStrep)、及び0.25μg/mLプラスモシン(Plasmocin)を添加した、ロズウェルパーク記念研究所培地(Roswell Park Memorial Institute medium)(RPMI[Gibco,Invitrogen])中で培養した。
【0120】
CT26細胞(8×10)を、トリプシン処理し、PBSですすぎ、400gで5分間遠心分離し、100μL PBSに再懸濁した。細胞は、細胞死を回避するために氷上に維持した。CT26細胞を、27G針を使用する皮下注射を介して、マウスに投与した。
【0121】
300μg r5D8、又は賦形剤対照を、CT26細胞移植後、第3日から、週2回、腹腔内注射(IP)を介してマウスに投与した。
【0122】
体重及び腫瘍体積は、1週間に3回測定した。腫瘍体積は、ノギス(Fisher Scientific)を使用して測定した。
【0123】
実施例14-r5D8は腫瘍モデルにおいて炎症性浸潤を減少させる
U251 GBM同所移植モデルでは、CCL22、すなわちM2極性化マクロファージのマーカーの発現は、図10Aに示した通り、r5D8で治療された腫瘍において有意に低下した。この所見はまた、r5D8を使用する、生理学的に関連する器官型組織片培養モデルにおいても確認され、ここでは、3つの患者試料は、図10Bに示した通り、治療後に、CCL22及びCD206(MRC1)発現(同様にM2マクロファージのマーカー)の有意な低下を示した(MRC1とCCL22の両方について、上(対照)を下(治療)と比較されたい)。さらに、r5D8はまた、免疫適格性マウスにおける同系移植ID8(図10C)及びCT26(図10D)腫瘍において、CCL22M2マクロファージを減少させた。
【0124】
実施例15-r5D8は非骨髄性エフェクター細胞を増加させる
さらなる免疫機構を調べるために、腫瘍微小環境内でのT細胞及び他の非骨髄性免疫エフェクター細胞に対するr5D8の効果を評価した。卵巣同所移植ID8同系移植モデルでは、r5D8治療は、図11Aに示した通り、腫瘍内NK細胞の増加及び全部の及び活性化されたCD4及びCD8T細胞の増加をもたらした。同様に、結腸同系移植CT26腫瘍モデルでは、r5D8は、図11Bに示した通り、腫瘍内NK細胞を増加させ、CD4及びCD8T細胞を増加させ、また、CD4CD25FoxP3T-reg細胞を減少させる傾向があった。CD4CD25FoxP3T-reg細胞の減少の傾向はまた、図11Cに示した通り、r5D8治療後の同系移植同所移植KLN205腫瘍モデルにおいても観察された。有効性を媒介するためのT細胞の必要性と一致して、CT26モデルにおけるCD4及びCD8T細胞の枯渇は、図12に示した通り、r5D8の抗腫瘍有効性を阻害した。
【0125】
T細胞枯渇のための方法
CT26細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS[Gibco,Invitrogen])、40U/mLペニシリン及び40μg/mLストレプトマイシン(PenStrep[Gibco,Invitrogen])、及び0.25μg/mLプラスモシン(Plasmocin)を添加した、RPMI培養培地(Gibco,Invitrogen)中で培養した。CT26細胞(5×10)を、収集し、PBSですすぎ、400gで5分間遠心分離し、100μL PBSに再懸濁した。細胞は、細胞死を回避するために氷上に維持した。CT26細胞を、27Gシリンジを使用する皮下注射を介して、マウスの両側腹部に投与した。マウスは、研究デザインにおいて指示された通り、腹腔内投与されるr5D8で週2回治療した。賦形剤対照(PBS)、ラットr5D8、及び/又は抗CD4及び抗CD8を、研究デザインにおいて記述した通り、週2回、腹腔内注射(IP)を介してマウスに投与した。すべての抗体治療は、同時に施された。
【0126】
実施例16-ヒトLIFとの複合体におけるh5D8の結晶構造
h5D8の結晶構造を、h5D8が結合するLIF上のエピトープを決定する、また、結合に関与するh5D8の残基を決定するために、3.1オングストロームの分解能に対して解析した。共結晶構造から、LIFのN末端ループが、h5D8の軽鎖可変領域と重鎖可変領域との間の中心に位置することが明らかになった(図13A)。さらに、h5D8は、LIFのヘリックスA及びC上の残基と相互作用し、それによって、不連続且つ立体構造的エピトープを形成する。結合は、いくつかの塩橋、H結合、及びファンデルワールス相互作用によって推進される(表7、図13B)。LIFのh5D8エピトープは、gp130との相互作用の領域に及ぶ。Boulanger,M.J.,Bankovich,A.J.,Kortemme,T.,Baker,D.&Garcia,K.C. Convergent mechanisms for recognition of divergent cytokines by the shared signaling receptor gp130.Molecular cell 12,577-589(2003)を参照されたい。これらの結果を、下の表7にまとめて示し、また、図13に表す。
【0127】
【表7】
【0128】
方法
LIFは、HEK 293S(Gnt I-/-)細胞において一過性発現させ、Ni-NTA親和性クロマトグラフィー、それに続いてゲル濾過クロマトグラフィー(20mM Tris pH8.0及び150mM NaCl中)を使用して精製した。組換え型h5D8 Fabは、HEK 293F細胞において一過性発現させ、KappaSelectアフィニティクロマトグラフィー、それに続いて陽イオン交換クロマトグラフィーを使用して精製した。精製されたh5D8 FabとLIFを、1:2.5のモル比で混合し、室温で30分間インキュベートし、その後EndoHを使用して脱グリコシル化を行った。続いて、ゲル濾過クロマトグラフィーを使用して、複合体を精製した。この複合体を、20mg/mLに濃縮し、低密度マトリックススクリーン(tesparse matrix screen)を使用する結晶化試行のために準備した。19%(v/v)イソプロパノール、19%(w/v)PEG 4000、5%(v/v)グリセロール、0.095Mクエン酸ナトリウム(pH5.6)を含有する条件で、4℃で結晶を形成させた。この結晶を、Canadian Light Source(CLS)の08ID-1ビームラインで、3.1Åの分解能まで回折させた。データを収集し、Kabsch et al.Xds.Acta crystallographica.Section D,Biological crystallography 66,125-132(2010)の通りにXDSを使用して処理及びスケーリングした。構造は、McCoy et al.Phaser crystallographic software.J Appl Crystallogr 40,658-674(2007)の通りに、Phaserを使用して、分子置換によって決定した。構造が許容されるRwork及びRfreeに収束するまで、Coot及びphenix.refineを使用して、数回繰り返されるモデル構築及び精密化を実施した。Emsley et al.Features and development of Coot.Acta crystallographica.Section D,Biological crystallography 66,486-501(2010);及びAdams,et al.PHENIX:a comprehensive Python-based system for macromolecular structure solution.Acta crystallographica.Section D,Biological crystallography 66,213-221(2010)をそれぞれ参照されたい。図は、PyMOL(The PyMOL Molecular Graphics System,Version 2.0 Schroedinger,LLC)で作成した。
【0129】
実施例17-h5D8はLIFに対する高い特異性を有する
目的は、h5D8の他のLIFファミリーメンバーに対する結合を試験して、結合特異性を決定することであった。Octet96解析を使用すると、ヒトLIFに対するh5D8結合は、LIFと最も高い相同性のIL-6ファミリーメンバーオンコスタチンM(OSM)に対する結合よりもおよそ100倍強い(どちらのタンパク質も大腸菌(E.coli)において産生される場合)。どちらのタンパク質も哺乳類系において産生される場合、h5D8は、OSMに対する結合は呈しない。データを、表8にまとめて示す。
【0130】
【表8】
【0131】
方法
Octet結合実験:試薬は、製造者によって提供されたマニュアルの通りに使用及び調製した。基本の速度解析実験(Basic Kinetics Experiment)は、Octet Data Acquisitionソフトウェアver.9.0.0.26を次の通りに使用して実施した:センサー/プログラムの設定:i)平衡化(60秒);ii)負荷(15秒);iii)ベースライン(60秒);iv)結合(180秒);及びv)解離(600秒)。
【0132】
サイトカインに対するh5D8のOctet親和性:基本の速度解析実験(Basic Kinetics Experiment)は、Octet Data Acquisitionソフトウェアver.9.0.0.26を次の通りに使用して実施した:アミン反応性第2世代バイオセンサー(Amine Reactive 2ndGeneration Biosensors)(AR2G)を水中で最低15分間含水させた。バイオセンサーに対するh5D8のアミン結合を、アミンカップリング第2世代キット(Amine Coupling Second Generation Kit)を使用して、ForteBio Technical Note 26(参考文献を参照されたい)に従って実施した。浸漬ステップは、30℃、1000rpmで、次の通りに実施した:i)水中での60秒の平衡化;ii)20mM ECD、10mMスルホ-NHS(水中)中での300秒の活性化;iii)10mM酢酸ナトリウム(pH6.0)中での10μg/ml h5D8の600秒の固定化;iv)1Mエタノールアミン(pH8.5)中での300秒の反応停止(Quench);v)水中での120秒のベースライン。次いで、30℃、1000rpmでの次の浸漬及び読み取りステップを伴う速度解析実験を実施した:vi)1X速度解析緩衝液中での60秒のベースライン;vii)サイトカインの1X速度解析緩衝液中での適切な段階希釈物の180秒の結合;viii)1X速度解析緩衝液中での300秒の解離;ix)それぞれ10mMグリシン(pH2.0)と1X速度解析緩衝液とを交代させる3回の再生/中和サイクル(3回のサイクルについてそれぞれ5秒)。再生後、バイオセンサーを、その後の結合分析のために再利用した。
【0133】
哺乳類細胞から産生されるヒト組換え型LIFは、ACROBiosystems(LIF-H521b)によるものであった;哺乳類細胞において産生されるヒト組換え型OSMは、R&D(8475-OM/CF)によるものであった;大腸菌(E.coli)細胞において産生されるヒト組換え型OSMは、R&D(295-OM-050/CF)によるものであった。
【0134】
実施例18-h5D8 fabの結晶構造
広範囲の化学的条件下でのh5D8 Fabの5つの結晶構造を決定した。これらの構造の高い分解能は、CDR残基の立体構造が、わずかな自由度しか伴っておらず、異なる化学環境でも高度に類似であることを示す。この抗体の固有の特徴は、可変重鎖領域の第100位における非カノニカルなシステインの存在である。構造分析により、システインが不対であり、溶媒に大いに近づきにくいことが示される。
【0135】
H5D8 Fabは、そのIgGのパパイン消化、それに続く、標準のアフィニティ、イオン交換、及びクロマトグラフィー技術を使用する精製によって得た。結晶は、蒸気拡散法を使用して得、分解能が1.65Å~2.0Åの範囲である5つの結晶構造を決定することが可能になった。5つの異なるpHレベル:5.6、6.0、6.5、7.5、及び8.5にわたる範囲である結晶化条件にもかかわらず、すべての構造が、同じ結晶学的空間群内で、且つ類似の単位格子寸法を伴って(P212121、a 約53.8Å、b 約66.5Å、c 約143.3Å)解析された。したがって、これらの結晶構造は、人工産物を詰め込んだ結晶によって邪魔されない、また、広範囲の化学的条件にわたる、h5D8 Fabの三次元配置の比較が可能である。
【0136】
すべての相補性決定領域(CDR)残基について、電子密度を観察し、続いて、これをモデル化した。注目すべきことに、LCDR1及びHCDR2は、細長い立体構造をとり、これは、浅いLCDR3及びHCDR3領域と共に、パラトープの中心の結合溝を形成していた(図14A)。5つの構造は、すべての残基にわたって高度に類似であり、すべての原子の平均二乗偏差は、0.197Å~0.327Åの範囲である(図14A)。これらの結果は、CDR残基の立体構造が、5.6~8.5の範囲であるpHレベル及び150mM~1Mの範囲であるイオン強度を含めた様々な化学環境において維持されることを示した。h5D8パラトープの静電表面の分析から、正及び負に帯電した領域が、親水特性に等しく寄与し、広く行きわたる疎水性パッチは存在しないことが明らかになった。h5D8は、HCDR3の基部に(Cys100)、非カノニカルなシステインというあまり見られない特徴を有する。5つすべての構造において、この遊離のシステインが配列され、ジスルフィドスクランブルをまったく形成しない。さらに、これは、Cys(システイン付加(cysteinylation))又はグルタチオン(グルタチオン付加(glutathiolation))の付加によって改変されず、重鎖のLeu4、Phe27、Trp33、Met34、Glu102、及びLeu105の主鎖及び側鎖原子と共にファンデルワールス相互作用(3.5~4.3Å距離)を生じる(図14B)。最後に、Cys100は、CDR1及びHCDR3の立体構造を媒介するのに関与するように見える圧倒的に埋没した構造の残基である。したがって、本発明者らの5つの結晶構造におけるこの領域の均一な配置によって観察される場合に、他のシステインとの反応性を有する可能性が低い。
【0137】
方法
H5D8-1 IgGは、Catalent Biologicsから入手し、25mMヒスチジン、6%スクロース、0.01%ポリソルベート80中でpH6.0で調製した。調製されたIgGを、10K MWCO濃縮器(Millipore)を使用して、大規模にPBSに緩衝液交換し、その後、37℃で1時間、1:100マイクログラムのパパイン(Sigma)(PBS、1.25mM EDTA、10mMシステイン中)を用いて消化を行った。パパインで消化されたIgGを、AKTA Startクロマトグラフィーシステム(GE Healthcare)を使用して、プロテインAカラム(GE Healthcare)に流した。h5D8 Fabを含有するプロテインA素通り画分を回収し、10K MWCO濃縮器(Millipore)を使用して、20mM 酢酸ナトリウム(pH5.6)に緩衝液交換した。得られた試料を、AKTA Pureクロマトグラフィーシステム(GE Healthcare)を使用して、Mono S陽イオン交換カラム(GE Healthcare)に負荷した。1M塩化カリウムのグラジエントを用いる溶離は、顕著なh5D8 Fabピークをもたらし、これを回収し、濃縮し、20mM Tris-HCl、150mM塩化ナトリウム中で、pH8.0で、Superdex 200 Increaseゲル濾過カラム(GE Healthcare)を使用して精製して、大きさを均一にした。還元及び非還元条件下でのSDS-PAGEによって、高純度のh5D8 Fabが確認された。
【0138】
精製されたh5D8 Fabを、10K MWCO濃縮器(Millipore)を使用して25mg/mLに濃縮した。Oryx 4ディスペンサー(Douglas Instruments)を使用して、20℃で低密度マトリックス96-コンディションズ(conditions)市販のスクリーンJCSG TOP96(Rigaku Reagents)及びMCSG-1(Anatrace)を用いる蒸気拡散結晶化実験の準備をした。次の5つの結晶化条件:1)0.085Mクエン酸ナトリウム、25.5%(w/v)PEG 4000、0.17M酢酸アンモニウム、15%(v/v)グリセロール(pH5.6);2)0.1M MES、20%(w/v)PEG 6000、1M塩化リチウム(pH6.0);3)0.1M MES、20%(w/v)PEG 4000、0.6M塩化ナトリウム(pH6.5);4)0.085M HEPESナトリウム、17%(w/v)PEG 4000、8.5%(v/v)2-プロパノール、15%(v/v)グリセロール(pH7.5);及び5)0.08M Tris、24%(w/v)PEG 4000、0.16M塩化マグネシウム、20%(v/v)グリセロール(pH8.5)において、4日後に結晶を得、収集した。液体窒素中で瞬間凍結させる前、結晶を含有する母液を、必要に応じて5~15%(v/v)グリセロール又は10%(v/v)エチレングリコールと共に添加した。結晶に、先端放射光施設(Advanced Photon Source)でのX線シンクロトロン放射、ビームライン23-ID-D(Chicago,IL)を施し、回折パターンを、Pilatus3 6M検出器で記録した。XDSを使用してデータを処理し、Phaserを使用して分子置換によって構造を決定した。Cootでのモデル構築と共に、PHENIXでの精密化を実施した。図は、PyMOLで作成した。すべてのソフトウェアは、SBGridを通してアクセスした。
【0139】
実施例19-h5D8のシステイン100での変異は結合を維持する
h5D8の分析から、重鎖の可変領域における第100位での遊離のシステイン残基(C100)が明らかになった。ヒト及びマウスLIFに対する結合及び親和性を特徴付けるために、C100をそれぞれ天然に存在するアミノ酸と置換することによって、H5D8バリアントを作製した。ELISA及びOctetアッセイを使用して、結合を特徴付けた。結果を表9にまとめて示す。ELISA EC50曲線は、図15に示す(図15A ヒトLIF及び図15B マウスLIF)。
【0140】
【表9】
【0141】
方法
ELISA:ヒト及びマウスLIFに対するh5D8 C100バリアントの結合を、ELISAによって決定した。組換え型ヒト又はマウスLIFタンパク質を、1μg/mLで、4℃で一晩、Maxisorp 384ウェルプレート上にコーティングした。プレートを、室温で2時間、1×ブロッキング緩衝液でブロッキングした。各h5D8 C100バリアントの段階希釈物(titration)を添加し、室温で1時間結合させた。プレートを、PBS+0.05% Tween-20で3回洗浄した。HRP結合抗ヒトIgGを添加し、室温で30分間結合させた。プレートを、PBS+0.05% Tween-20で3回洗浄し、1×TMB基質を使用して顕色させた。1M HClを用いて反応を停止させ、450nmでの吸収を測定した。図の作成及び非線形回帰分析は、Graphpad Prismを使用して実施した。
【0142】
Octet RED96:ヒト及びマウスLIFに対するh5D8 C100バリアントの親和性を、Octet RED96システムを使用して、BLIによって決定した。h5D8 C100バリアントを、1×速度解析緩衝液中での30秒のベースライン後に、7.5μg/mLで、抗ヒトFcバイオセンサーに負荷した。ヒト又はマウスLIFタンパク質の段階希釈物(titration)を、90秒間、負荷されたバイオセンサーに結合させ、300秒間、1×速度解析緩衝液中で解離させた。KDは、1:1グローバルフィットモデルを使用して、データ分析ソフトウェアによって算出した。
【0143】
実施例20-h5D8はLIFのgp130への結合をインビトロで阻止する
h5D8が、LIFがLIFRと結合するのを妨げるかどうかを決定するために、Octet RED 96 プラットフォームを使用する分子結合アッセイを実施した。H5D8を、抗ヒトFc捕捉によってAHCバイオセンサーに負荷した。次いで、バイオセンサーをLIFに浸漬させ、予想通り、結合が観察された(図16A、3分割の中央)。続いて、バイオセンサーを、異なる濃度のLIFRに浸漬させた。用量依存性の結合が観察された(図16A、3分割の右側)。対照実験は、この結合がLIF特異的であり(図示していない)、LIFRとh5D8との、又はバイオセンサーとの非特異的な相互作用に起因しないことを実証した。
【0144】
h5D8とLIFとの結合をさらに特徴付けるために、一連のELISA結合実験を行った。H5D8とLIFをプレインキュベートし、次いで、組換え型ヒトLIFR(hLIFR)又はgp130でコーティングしたプレートに導入した。h5D8/LIF複合体とコーティング基質との間の結合の欠如は、h5D8が、LIFの受容体への結合を何らかの方法で妨害したことを示すであろう。さらに、LIFと結合しない対照抗体((-)で示されるアイソタイプ対照)、又は知られている結合部位でLIFと結合する対照抗体(B09は、LIF結合について、gp130ともLIFRとも競合しない;r5D8は、h5D8のラット親型である)も使用した。ELISA結果は、h5D8/LIF複合体が、hLIFRと結合することが可能である(r5D8/LIF複合体もそうである)ことを実証し、これらの抗体がLIF/LIFR結合を妨げないことが示された(図16A)。対照的に、h5D8/LIF複合体(及びr5D8/LIF複合体)は、組換え型ヒトgp130と結合することが可能ではなかった(図16B)。これは、LIFがh5D8に結合した場合に、LIFのgp130結合部位が影響を受けたことを示す。
【0145】
実施例21-ヒト組織におけるLIF及びLIFR発現
LIF及びLIFRの発現レベルを決定するために、多くの異なる種類のヒト組織に対して、定量的リアルタイムPCRを実施した。図17A及び17Bに示した平均発現レベルは、100ngの全RNAあたりのコピー数として示される。ほとんどの組織は、100ngの全RNAあたり少なくとも100コピーを発現した。LIF mRNA発現は、ヒト脂肪組織(腸間膜-回腸[1])、血液-血管組織(脈絡膜-神経叢[6]及び腸間膜[8])、及び臍帯[68]組織において最も高く、脳組織(皮質[20]及び黒質[28])において最も低かった。LIFR mRNA発現は、ヒト脂肪組織(腸間膜-回腸[1])、血管組織(肺[9])、脳組織[11-28]、及び甲状腺[66]組織において最も高く、PBMC[31]において最も低かった。カニクイザル組織におけるLIF及びLIFR mRNA発現レベルは、ヒト組織において観察されるものと同様であり、ここでは、LIF発現は、脂肪組織において高く、また、LIFR発現は、脂肪組織において高く、PBMCにおいて低かった(データは示していない)。
【0146】
図17A及び図17Bについての組織番号付けは、以下である:1-脂肪(腸間膜-回腸);2-副腎;3-膀胱;4-膀胱(三角部);5-血液-血管(大脳:中大脳-動脈);6-血管(脈絡膜-神経叢);7-血管(冠動脈);8-血管(腸間膜(結腸));9-血管(肺);10-血管(腎臓);11-脳(扁桃体);12-脳(尾状核);13-脳(小脳);14 脳-(皮質:帯状皮質-前);15-脳(皮質:帯状皮質-後);16-脳(皮質:前頭皮質-外側部);17-脳(皮質:前頭皮質-内側部);18-脳(皮質:後頭);19-脳(皮質:頭頂葉);20-脳(皮質:側頭);21-脳(背側縫線核);22-脳(海馬);23-脳(視床下部:前部);24-脳(視床下部:後部);25-脳(青斑核);26-脳(延髄);27-脳(側坐核);28-脳(黒質);29-乳房;30-盲腸;31-末梢血単核球(PBMC);32-結腸;33-後根神経節(DRG);34-十二指腸;35-ファロピウス管;36-胆嚢;37-心臓(左心房);38-心臓(左心室);39-回腸;40-空腸;41-腎臓(皮質);42-腎臓(髄質);43-腎臓(骨盤);44-肝臓(実質);45-肝臓(気管支:主);46-肝臓(気管支:3次);47-肺(実質);48-リンパ腺(扁桃);49-筋肉(骨格筋);50-食道;51-卵巣;52-膵臓;53-松果体;54-脳下垂体;55-胎盤;56-前立腺;57-直腸;58-皮膚(包皮);69-脊髄;60-脾臓(実質);61-胃(前庭部);62-胃(体部);63-胃(底部);64-胃(幽門管);65-精巣;66-甲状腺;67-気管;68-臍帯;69-尿管;70-子宮(頸部);71-子宮(筋層);及び72-精管。
【0147】
実施例22-用量選択、用量増大、及び一定投薬
抗LIF抗体の用量選択、用量増大、及び一定投薬を、以下に記載する。h5D8の安全性評価については、マウス及びカニクイザルを使用した。
【0148】
100mg/kgまでのIV投薬を毎週受けたマウス及びサルにおける4週のGLP毒性研究において、非治療関連有害作用が認められた。したがって、重篤な毒性が発現しない最大用量(highest non-severely toxic dose)(HNSTD)は、>100mg/kgであり、無毒性量(NOAEL)は、この研究の条件下で、どちらの種においても100mg/kg(IV)として確立された。投薬量をスケール調節して、ヒト等価用量(HED)を確立した。HEDの推定については、体表面積(BSA)に基づくスケール調節手法を採用した。これらのGLP毒性研究に基づくと、推奨される最大開始用量(maximum recommended starting dose)(MRSD)は、以下に示した通りに推定された:
・マウスNOAELからの10倍の安全係数を用いた0.81mg/kg(IV)HED
・マウスにおける重篤な毒性が発現する用量(severely toxic dose)の1/10に基づいた>10mg/kg(IV)
・カニクイザルNOAELからの10倍の安全係数を用いた3.2mg/kg(IV)HED
・HNSTDの1/6に基づいた>16.7mg/kg(IV)
毒性研究に基づき、また、第1相研究における進行癌患者集団について保守的な手法を取り、1mg/kg(又は75mg一定用量)(IV)のMRSDを、データによって裏付けた。
【0149】
MRSDの設定においては、薬理学的作用量(pharmacologically active dose)(PAD)も考慮されている。今日までに利用可能なマウス薬理学モデルにおける薬理学、PK、及びLIF安定化データに基づいて、次の手法を使用して、PADを推定した。U251マウス異種移植モデルにおける用量反応に基づくと、最適な有効用量は、約300μg(IP 週2回)であると考えられ;この用量レベルは、約230μg/mLの最終投与の前のトラフ血清レベルと関連していた。血清LIFレベルの最大の安定化が、このモデルにおけるこの300μg用量で得られるという証拠が存在しており、これはまた、10、30、及び100mg/kgの用量でのマウスGLP毒性研究における血清LIF安定化データによって裏付けられた。サルPKデータに適合させ、ヒトのためにスケール調節した2-コンパートメントモデルに基づくPKモデルを使用すると、3週ごとの1500mgの臨床用量は、約500μg/mLのCトラフを提供するであろう。同様に、このU251マウス異種移植モデルにおける20μg(週2回)の最小有効量は、約20μg/mLの最終投与の前のトラフ血清レベルと関連していた;マウスPK-忍容性研究における0.5mg/kg(IV)の用量での最小LIF安定化の証拠によって裏付けられる、最大血清LIF安定化のわずか約50%が、この20μg用量で得られるという証拠が存在していた。3週ごとの75mgの臨床用量は、約25μg/mLのCトラフを提供するであろう。マウス同系移植モデルから入手できる追加のPK-PD(LIF安定化)データによって、U251マウス異種移植モデルから得られるPADが裏付けられた。
【0150】
したがって、75mg(i.v.)の開始用量は、マウス及びサルにおける毒性データとマウス異種移植モデルにおける最小有効用量との両方に基づいて、適切であると考えられた。1500から2000mgの最大臨床用量は、毒性データによって裏付けられた。試験物関連の有害所見がないことと併せて、動物モデルにおける線形PKの知見に基づくと、一定投薬手法が適切であった。
【0151】
実施例23-異なる癌におけるLIF発現
癌型とは関係なくLIFレベルに基づいて治療を設定することは、異なる癌型におけるLIF発現の不均一性が存在する場合にふさわしい方法であろう。図18は、ある種の癌が、このように、より高頻度の高LIF mRNAレベルを有することを示す。比較的高頻度の低LIF発現を有する癌であっても、抗LIF治療から恩恵を受けるであろう個人の亜集団を有する。
【0152】
方法
22種の適応症にわたる7,769本の試料に対するRNAシークエンシングデータは、The Cancer Genome Atlasリポジトリから入手した。LIF転写物発現を、すべての試料にわたって算出されたLIF発現の上、中の上、中の下、及び下の4分割に基づいて、高、中-高、中-低、及び低に閾値設定した。
【0153】
実施例24-LIF発現は異なる癌においてT制御性ケモカインと相関する
以前に記述した通り、LIF阻害は、マウス及びヒトエクスビボモデル(図10A~10D)における免疫抑制性マクロファージ集団(例えば、M2マクロファージ)を減少させる、及びNSCLCのマウスモデル(図11C)における制御性CD4+T細胞、及び浸潤を減少させる効果を有する。したがって、骨髄細胞又はM2マクロファージによって分泌されるLIFとT制御性ケモカインの両方が高レベルである癌は、抗LIF治療に反応する可能性が高い個人の亜集団を定義することができる。制御性T細胞は、免疫抑制性CD4+細胞であり、M2マクロファージは、炎症促進性環境を支えるM1マクロファージとは対照的に、組織における抗炎症性の免疫抑制性環境を支えるマクロファージである。図19Aから19Dは、LIF mRNAと、様々なT制御性ケモカインCCL7(図19A)、CCL2(図19B)、CCL3(図19A)、及びCCL22(図19A)のmRNAとの発現の相関を示す。同様に、図20Aは、LIF mRNAと、M2マクロファージ特性を定義するmRNAとの発現の相関を示す。これらは、LIF発現を有する個人(低又は中-低のLIFを有する個人であっても)の集団を、(例えば、M2マーカーの発現、T制御性ケモカイン、又は制御性T細胞に基づいて)免疫抑制特性が存在する場合に抗LIF治療用抗体に対する潜在的な反応者として分けるための根拠を提供する。
【0154】
ヒトGBMと卵巣癌(図20B)との両方のTCGAデータセットの解析において、LIFと、CCL2、CD163、及びCD206との間に、有意に正の相関が見られた。LIFとCXCL9との間に相関は認められなかった(データは示していない)が、腫瘍すべてにわたって比較的に低いレベルのCXCL9 mRNAが認められた。これらの結果は、20人のGBM患者のコホートを分析し、腫瘍のLIF、CXCL9、CCL2、CD163、及びCD206 IHCを実施することによって、タンパク質レベルで実証された。LIFと、CCL2、CD163、及びCD206との間に、強い正の相関が認められた(図20C)。CXCL9は、細胞の孤立クラスター(isolated cluster)において発現され、これは、腫瘍に存在する低レベルのCXCL9 mRNAを説明している。特に、CXCL9は、ヒトGBMにおいてLIFとの逆相関を示した(図20C)。
【0155】
CXCL9及びCCL2は、CD8T細胞腫瘍浸潤、及びそれぞれTAMとTregの動員にとって重要なケモカインとして際立っていた。TAM(CD11bLy6GLy6C)におけるLIFの中和によるCXCL9及びCCL2調節が確認された(図20D)。TAMの免疫染色及び単離により、CXCL9、CCL2、CD206、及びCD163が、主としてTAM中で発現され(図20E)、抗LIF(h5D8)での治療が、その発現を調節することが示された(図20D、20E)。CXCR3(CXCL9受容体)、CCR2(CCL2受容体)、及びLIFRは、TAM及びCD8T細胞において発現された(図20F)。
【0156】
CXCL9及びCCL2ノックアウト(CXCL9-/-、CCL2-/-)マウスモデルを使用して、LIF発癌作用におけるCXCL9及びCCL2の調節の関連性について試験した。これらのマウスモデルにおける腫瘍を、CXCL9及びCCL2に対するブロッキング抗体で治療した。興味深いことに、LIFの阻害に対する抗腫瘍反応は、CXCL9-/-マウスでは弱められたが、CCL2-/-マウスでは弱められなかった(図20G)。同様に、CXCL9中和抗体は、抗LIF(h5D8)に対する抗癌反応を減じたが、CCL2抗体は減じなかった(図20G)。これらの結果は、抗LIF(h5D8)反応の主要メディエータが、CXCL9であることを示した。予想通り、CXCL9の遮断は、抗LIF(h5D8)に反応するCD8T細胞腫瘍浸潤を低下させた(図20H)。
【0157】
LIFが、実際の癌患者からの腫瘍において、CXCL9の抑制を通じて免疫細胞腫瘍浸潤を調節することを確認するために、患者から新たに得られたGBM検体から、器官型組織培養物を産生した。これらの器官型モデルは、患者の腫瘍の組織構造及び間質(免疫細胞が含まれる)を維持する、腫瘍の切片の短期培養を可能にする。その腫瘍細胞が高レベルのLIFを発現した3人の患者からの器官型組織培養物(図20I)。3つすべての培養物において、Iba1マーカーによって検出される場合のTAMの大きな浸潤が存在しており、TAMの大部分は、CCL2、CD163、及びCD206を発現した。興味深いことに、LIFに対する中和抗体での、器官型培養物の3日の治療は、CCL2、CD163、及びCD206の減少、及びCXCL9発現の増大を促進した(図20I)。
【0158】
抗LIF(h5D8)で治療されたヒトマクロファージにおける上記の観察と同様に、抗LIF(h5D8)治療を観察して、CT26腫瘍におけるM2マーカーCD206及びCD163の下方調節を誘発した(図20J)。対照的に、抗LIF(h5D8)治療は、CXCL9、CXCL10、及びPD-L1を含めた免疫刺激M1マーカーの発現の増大を誘発した(図20J)。これらの知見を、抗LIF(h5D8)治療されたMC38腫瘍におけるTAM表現型も検討することによって、さらに拡張した。治療された腫瘍が、総骨髄又はTAM集団の全頻度の違いを示さないことが観察されたが、抗LIF(h5D8)治療は、MHCIIを発現するTAMの割合と、MHCIIの全発現レベルとの両方の増大を誘発した(図20K)。MC38 TAMが、CD206、すなわち、CT26モデルにおけるM2マクロファージの表現型を決定するために使用される重要なマーカーを発現しなかったので、CT26及びMC38モデルを通したM1/M2歪度(skewing)の並行比較は可能ではなかった。まとめると、これらのデータは、2つの独立した前臨床腫瘍モデルにおいて、抗LIF治療が腫瘍増殖を阻害することを実証する。この分析は、抗LIF治療が、TAM表現型に影響を与えるが、TAMの全体数又は総骨髄細胞には影響を与えないことを実証し、この観察される有効性は、おそらく、ある程度、抗腫瘍免疫性へ向かうTAMのリプログラミングを通じて生じることが示唆される。
【0159】
方法
RNAシークエンシングデータは、The Cancer Genome Atlasリポジトリから入手した。LIF発現と、種々の制御性T細胞ケモカイン(CCL7、CCL2、CCL3、及びCCL22)との間の関連は、膀胱、脳、乳房、結腸、頭頸部、腎臓、肺、黒色腫、卵巣、膵臓、前立腺、及び子宮癌試料について、ピアソン相関に基づいて算出した。LIF発現と、M2マクロファージとなる転写特性との間の関連は、膀胱、脳、乳房、結腸、頭頸部、腎臓、肺、黒色腫、卵巣、膵臓、前立腺、及び子宮癌試料について、ピアソン相関に基づいて算出した。
【0160】
mRNA抽出(RNeasy Mini又はMicro Kit、Qiagen)、逆転写(retrotranscription)(iScript Reverse Supermix、BioRadから、mRNA用)のために細胞を溶解し、製造者の推奨に従ってApplied BiosystemsからのTaqmanプローブを使用してqRT-PCRを実施した。パラフィン包埋切片に対して、High Pure FFPET RNA単離キット(Roche)を使用し、且つ製造者の指示書に従ってRNAを得た。反応は、CFX384 TouchTMリアルタイムPCR Detection System(Bio-Rad)で実施し、結果は、対照試料に対してCt法によって算出された変化(倍)として表した。マウス又はヒトのACTB又はGAPDHを、内部規準化(internal normalization)対照として使用した。
【0161】
RNAを、Mouse Gene 2.1 STを用いるAffymetrixマイクロアレイプラットフォーム上で分析にかけた。次に、これを、Robust-Microarray Average(RMA)に基づいて正規化した。limma Bioconductorパッケージを使用して、対応のあるデータを考慮するベイズ線形回帰を介して、抗LIF治療マウスにおいて特異的に発現される遺伝子を特定した。
【0162】
マウス実験では、核をDAPIで対比染色し、共焦点レーザー走査型NIKON Eclipse Ti顕微鏡を使用して画像を取り込んだ。ImageJを用いて免疫蛍光の定量化を実施し、各マウス(3~5匹/群)の2つ~3つの異なる範囲のCD11b、Iba1、又はCD3について陽性のすべて又は最大100個の細胞をカウントし、Iba1(GL261Nモデルについて)又はCD68/CD11b(ID8モデルについて)陽性の集団の中のCCL2、CD206、及びCD163について陽性の細胞のパーセンテージを算出した。CXCL9については、全細胞集団の中の、このサイトカインのシグナルによって囲まれた細胞のパーセンテージを算出した。器官型切片については、各患者(n=3)の3つ~4つの範囲を定量化した。器官型組織免疫蛍光のために、条件あたり5つの異なるZスタック画像をFiji-Image Jソフトウェアで処理した。CD8+T細胞については、全集団の中でCD8+T細胞のパーセンテージを算出した。グラフ内のデータは、平均値±SEMとして表す。
【0163】
免疫蛍光抗体:ヒト/マウス CCL2(Novus Biologicals、1:200)、ヒト/マウス CD11b(AbCam;1:2000)、ヒト/マウス Iba1(Wako;1:1000)、マウス CD68(AbCam;1:200)、ヒト/マウス CD206(Abcam;1:500)、マウス CD163(Abcam;1:200)、CXCL9(マウス Novus Biologicals 1:200;ヒト Thermo Fischer Scientific;1:200)、及びヒト CD8(DAKO;1:200)。
【0164】
ヒトGBM検体は、Vall d’Hebron University Hospital and Clinic Hospitalから入手した。臨床プロトコルは、Vall d’Hebron Institutional Review Board and Clinic Hospital(CEIC)によって承認され、すべての対象からインフォームドコンセントを得た。
【0165】
GBM器官型切片培養物は、次の通りに産生した。切除後、摘出検体をメスで長さ5~10mm、幅1~2mmの四角形のブロックに切断し、6ウェルプレート内の0.4μm膜カルチャーインサート(Millipore)にそれぞれ移した。インサートを6ウェルプレートに入れる前に、各ウェルに、B27(Life Technologies)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)、及び増殖因子(20ng/ml EGF及び20ng/ml FGF-2)(PeproTech)を添加した1.2mlのNeurobasal培地(Life Technologies)を入れた。培養物は、一定湿度、95%空気及び5% COと共に、37℃に維持した。1日後、切片を、ラット抗マウス/ヒトLIFブロッキング抗体(h5D8)(抗LIFと称される)(社内で開発されたもの)で、又はその対応する正常IgG(10μg/ml)で、3日間処理した。ブロッキングCXCL9研究については、ヒトCXCL9に対する中和するマウスモノクローナル抗体(R&D Systems)を、1.5μg/mlで、培養物に添加した。ある種の場合には、0.1ng/mlのヒトrIFNγ(R&D Systems)を、24時間添加した。並行して、同じ患者の全血から、Lymphosep(Biowest)を使用して、密度勾配遠心分離(centrifuge density separation)によって、末梢血単核球(PBMC)を得た。PBMCは、10%非働化済みFBS及び10% DMSOを添加したRPMI培地中で、使用まで凍結保存した。免疫細胞浸潤アッセイのために、対照又は抗LIF切片を、Matrigel(Corning)に包埋し、続いて、1×106PBMCを、24ウェルプレートの完全RPMI培地に添加した。さらに、上清を収集し、器官型切片をMatrigelから回収し、IF及びフローサイトメトリーのためにさらに処理した。ある種の条件では、PBMCを10細胞/mlの濃度でPBSで再懸濁し、5μM Cell Trace CFSE(Invitrogen)と共に20分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を、RPMIで洗浄し、Matrigelに包埋された切片に加えた。24時間後、Matrigelへの蛍光PBMC侵入を、各条件につき5つの異なる領域内の、移動している細胞を計数することによって、顕微鏡下で評価した。
【0166】
スライドを、脱パラフィン処理し、水和させた。抗原賦活化を、pH6又はpH9 Citrate Antigen Retrieval Solution(DAKO)、10分の10%ペルオキシダーゼ(H2O2)、及びブロッキング溶液(2% BSA)を室温で1時間使用して実施した。検出システムとして、EnVision FLEX+(DAKO)を、製造者の指示書に従って使用し、それに続いてヘマトキシリンでの対比染色、脱水、及びマウンティング(DPX)を行った。患者からのGBM腫瘍におけるLIF、CCL2、CD163、CD206、及びCXCL9染色の定量化は、0から300の範囲を与えるHスコア(3×強い染色のパーセンテージ+2×中程度の染色のパーセンテージ+弱い染色のパーセンテージ)として表した。p-STAT3、Ki67、CC3、及びCD8の定量化は、ImageJを用いて実施し、マウス(5匹/群)あたり3つの異なる範囲の総細胞数をカウントし、陽性細胞のパーセンテージを算出した。グラフ内のデータは、平均値±SEMとして表す。
【0167】
免疫組織化学的抗体:ヒト LIF(Atlas;1:200)、マウス LIF(AbCam;1:200)、マウス p-STAT3(Cell Signaling;1:50)、マウス Ki67(AbCam;1:200)、マウス Cleaved-Caspase3(CC3)(Cell Signaling;1:500)、マウス CD8(Bioss;1:200)、ヒト/マウス CCL2(Novus Biologicals、1:200)、ヒト CXCL9(Thermo Fischer Scientific;1:100)、及びヒト CD163(Leica Novacastra;1:200)。
【0168】
実施例25-LIFはII型(M2)マクロファージ極性化を誘発する
二重の(dual)LIF-免疫抑制特性層別化は、潜在的に、抗LIF治療薬治療に特に反応しやすい個人を特定するための頑強な方式である。これについてのさらなる証拠を、図21A及び21B、22、並びに23に示す。図21A及び21Bは、ヒト初代マクロファージが、単球を50ng/ml M-CSFと共に7日間培養した後に、LIF受容体を上方調節することを示す。3人の異なる個人からの細胞が示される。図22及び23は、初代ヒトマクロファージが、LIFを伴う72時間の培養後に、マクロファージ表面マーカーCD206及びCD163(図22)、並びにCCL22の分泌(図23)を上方調節することをさらに示す。興味深いことに、CCL22分泌は、M2極性化マクロファージにおけるものよりもはるかに頑強である(図23、右下)。このデータは、LIF発現と、免疫抑制特性の存在との間の機構的関連を提供し、患者治療を選択するための二重のLIF-免疫抑制特性が、すべての癌型に、またすべての組織に適用できることが示される。
【0169】
方法
マクロファージは、10%熱失活FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、及び50ng/ml M-CSFと共に、RPMI-1640培地中で7日間培養することによって、CD14+末梢ヒト単球から分化させた。いくつかの実験では、これに続いて、20nM LIF、又はPBS(対照について)、又は100ng/ml LPS及び25ng/ml IFNγ(M1極性化について)、又は各20ng/mlのIL-4、IL-10、及びTGFβ(M2極性化について)が添加された同じ培地中で、示されたさらなる時間、培養を行った。
【0170】
実施例26-異なる癌からの骨髄細胞上でのLIF受容体発現
腫瘍増殖及び癌の生存にとって重要なものとしての二重のLIF-免疫抑制特性の見通しのための追加の裏付けは、ヒト腫瘍関連マクロファージが、実際、LIF受容体を確かに発現することである。図24及び25は、卵巣癌及び肺癌の、4個のうちの3個の解離された腫瘍細胞から単離されたマクロファージが、LIF受容体を発現することを示す(図24)。さらに、LIF受容体は、腫瘍関連骨髄由来抑制細胞、単球系の骨髄由来抑制細胞(M-MDSC)と腫瘍多形核細胞系の骨髄由来抑制細胞(PMN-MDSC)の両方の細胞表面上に発現される(図25)。
【0171】
本発明の好ましい実施形態を、本明細書に提示及び記載してきたが、こうした実施形態が、ほんの一例として提供されるに過ぎないことが、当業者には明らかであろう。本発明から逸脱しない多数の変更、改変、及び置換が、当業者には直ちに思い浮かぶであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する種々の代替物を、本発明を実施する際に用いることができることが理解されよう。
【0172】
本明細書において言及したすべての刊行物、特許出願、発行された特許、及び又は文書は、それぞれ個々の刊行物、特許出願、発行された特許、及び他の文書が、あたかも具体的且つ個々にその全体を参照によって組み込まれることが示されるがごとく、参照により本明細書に組み込む。参照によって組み込まれる本文に含有される定義は、それらがこの開示における定義と矛盾する限りは除外される。
【0173】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語は、本発明が属する分野の技術者当分野の技術者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈によってそうではないと明確に指示されない限り、複数の指示物が含まれる。本明細書での「又は」に対するあらゆる言及は、他に規定されない限り、「及び/又は」を包含することが意図される。
【0174】
本明細書で使用する場合、他に示されない限り、用語「約」は、少なくとも10%の差の、規定した量に近い量を指す。
【0175】
【表10】
【0176】
【表11】
【0177】
【表12】
【0178】
【表13】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図12
図13
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図15
図16
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図17-2】
図18
図19-1】
図19-2】
図20-1】
図20-2】
図20-3】
図20-4】
図20-5】
図20-6】
図20-7】
図20-8】
図20-9】
図20-10】
図21
図22
図23
図24
図25
【配列表】
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