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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】走行式回収機
(51)【国際特許分類】
   A63B 47/02 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
A63B47/02 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021019850
(22)【出願日】2021-02-10
(62)【分割の表示】P 2020120081の分割
【原出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022017164
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 涼太
(72)【発明者】
【氏名】中野 賢二
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-220935(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2085102(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第110559623(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108310732(CN,A)
【文献】特開2017-123885(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0243970(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1430103(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0303207(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0098468(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00 -47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面上で走行しながら面上に散乱した落下物を拾い上げて回収する走行式回収機であって、
前記走行式回収機は、前記面上から落下物を拾い上げる回収部材と、前記面上での当該走行式回収機の走行制御を行うとともに、測位システムにより検出された当該走行式回収機の位置情報を取得するコントローラと、前記測位システムにより検出された位置において、前記回収部材で拾い上げられた各落下物が回収されたことを検出するためのセンサとを備え
前記コントローラは、前記落下物が前記回収部材により面上から拾い上げられて前記センサで検出されるまでの当該走行式回収機の移動距離、又は、前記落下物が前記回収部材により面上から拾い上げられて前記センサで検出されるまでに要した時間長を使用して前記落下物を拾った実際の位置を求め、この求められた実際の位置情報を記憶することを特徴とする走行式回収機。
【請求項2】
前記コントローラは、前記落下物が前記センサで検出された時点での当該走行式回収機の位置情報から、前記落下物が前記回収部材により面上から拾い上げられて前記センサで検出されるまでの当該走行式回収機の移動距離分を、そのときの当該走行式回収機の走行方向とは逆方向に反映した位置を、前記落下物を拾った実際の位置とすることを特徴とする請求項に記載の走行式回収機。
【請求項3】
前記コントローラは、当該走行式回収機の位置情報に基づいて、前記落下物が前記センサで検出された時点から、前記落下物が前記回収部材により面上から拾い上げられて前記センサで検出されるまでに要した時間長分を遡った時点での当該走行式回収機の位置を、前記落下物を拾った実際の位置とすることを特徴とする請求項に記載の走行式回収機。
【請求項4】
前記コントローラは、前記落下物が前記回収部材により面上から拾い上げられて前記センサで検出されるまでの当該走行式回収機の移動距離を、そのときの当該走行式回収機の走行速度で除して、前記時間長を求めることを特徴とする請求項に記載の走行式回収機。
【請求項5】
前記センサは、前記回収部材で拾い上げられた落下物が当接することで前記落下物を検出する接触式のセンサであり、
前記コントローラは、前記落下物が前記回収部材により面上から拾い上げられて前記センサに当接するまでの当該走行式回収機の移動距離、又は、前記落下物が前記回収部材により面上から拾い上げられて前記センサに当接するまでに要した時間長を使用して前記落下物を拾った実際の位置を求めることを特徴とする請求項からのいずれか一項に記載の走行式回収機。
【請求項6】
前記コントローラは、前記落下物を拾った実際の位置情報を当該走行式回収機のための管理用サーバーに送信することを特徴とする請求項からのいずれか一項に記載の走行式回収機。
【請求項7】
前記コントローラは、衛星測位システムを構成する衛星からの測位信号を受信して当該走行式回収機の位置情報を取得することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の走行式回収機。
【請求項8】
前記回収部材は、当該走行式回収機が面上を走行することにより面上を転動することで面上から落下物を拾い上げることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の走行式回収機。
【請求項9】
前記回収部材は、外周に多数の環状溝からなる多条溝を有し、前記各環状溝内に、面上の落下物を拾い上げるための多数のポケットが周方向に沿って形成され、隣り合う前記環状溝の前記各ポケットは周方向に所定角度ずつずらして設けられていることを特徴とする請求項に記載の走行式回収機。
【請求項10】
前記センサは、全ての前記環状溝に跨る単一のセンサで構成されていることを特徴する請求項に記載の走行式回収機。
【請求項11】
前記回収部材で拾い上げられた落下物を該回収部材から解放すべく、櫛歯状の解放部材が前記各環状溝へ突入状態で配設され、該解放部材に前記センサが配設されていることを特徴とする請求項に記載の走行式回収機。
【請求項12】
前記センサは、前記回収部材で拾い上げられた落下物をカウントするためのカウントセンサであることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の走行式回収機。
【請求項13】
予め定められたプログラムに従って面上に設定された走行経路を走行しながら面上に散乱したボールを拾い上げて回収する走行式回収機であって、
前記走行式回収機は、前記面上を転動することにより前記面上からボールを拾い上げるボール回収輪と、該ボール回収輪で拾い上げられたボールが回収されたことを検出するためのセンサと、前記面上での当該走行式回収機の走行制御を行うとともに、測位システムにより検出された当該走行式回収機の位置情報を取得するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記ボールが前記ボール回収輪により面上から拾い上げられて前記センサで検出されるまでの当該走行式回収機の移動距離、又は、前記ボールが前記ボール回収輪により面上から拾い上げられて前記センサで検出されるまでに要した時間長を使用して前記ボールを拾った実際の位置を求め、この求められたボールの実際の位置情報を記憶することを特徴とする走行式回収機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばゴルフボール、テニスボール、木の実、容器等の、地面上に落下して散乱している物(落下物)を走行しながら拾い上げて回収する走行式回収機に係り、例えば、衛星測位システムを構成する衛星からの測位信号(GPS信号等)を受信して当該走行式回収機の位置情報を取得できるようにされている走行式回収機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1、2に所載のように、ゴルフ練習場等において、地面上に散乱した多数のゴルフボールを走行しながら回収するボールピッカー等と呼ばれる自律走行式(自走式とも称する)のボール回収機が知られている。
【0003】
かかるボール回収機は、通常、上記特許文献1、2にも見られるように、地面上を転動することにより地面上からボールを拾い上げるボール回収輪と、このボール回収輪で拾い上げられたボールが送り込まれて貯められる回収タンクとを備える。さらに最近では、ボール回収輪と回収タンクとの間に、ボール回収輪から回収タンクへ送られるボールをカウントするための接触式のカウントセンサ、具体的には圧力センサを設置して、ボール回収輪から回収タンクに送られて貯められるボールの個数をカウントするようにしたものも実用に供されている。
【0004】
なお、かかるボール回収機のボール回収輪としては、特許文献3に所載のように、多数の環状溝からなる多条溝を形成する多数のディスクを有し、各環状溝内に地面上のボールを拾い上げるための多数のボールポケットが周方向に沿って等角度間隔で形成されているものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2963571号公報
【文献】国際公開第00/78410号
【文献】実開昭50-53061号公報
【文献】特開2008-220935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような、回収ボールの個数をカウントする機能を備えたボール回収機においては、通常、マイクロコンピュータが用いられたコントローラが配備され、コントローラは、カウントセンサからの信号に基づいてボールの個数をカウントして集計する。具体的には、コントローラは、ボールがカウントセンサに当接してカウントセンサからの信号(レベル)が予め定められた閾値を越えたとき、ボール回収数を1個カウントアップする。ボール回収機は、コントローラがカウントしたボールカウント数(集計数)が一定数に達すると(回収タンクが満杯になったと推定されると)、ボール回収作業を中断してステーションへ帰還し、回収タンク内のボールを所定のボール置場に荷下ろしして、再びボール回収作業を続行する。
【0007】
ところで、最近、ボール回収作業を効率的に行うため、ボールの散乱(分布)状況、ボール密集エリア等を正確に把握することが考えられている。例えば、特許文献4に所載のように、ボール回収作業前にボール密度分布情報を収集し、ボールの分布率(密度)が高いエリアから、例えば衛星測位システム等を利用して作業領域における当該ボール回収機の位置を検出しながらボール回収作業を行うものが既知である。
【0008】
しかし、特許文献4に所載の技術では、ボール密度分布情報を、例えば、作業領域の状況を監視するカメラ等の視覚センサ、指定範囲において収集されたボールの数量を監視するためのセンサ等を利用し、作業領域上のボールのパターンを一定期間観察することにより作成しており、ボール密度分布情報の作成に必要な各ボールを拾った実際の位置(ボールの実位置情報)を正確に取得することはできない。また、衛星測位システム等を利用して作業領域における当該ボール回収機の位置を検出し得るが、衛星測位システム等を利用して前記したボールの実位置情報を把握する具体的手段は明らかではない。
【0009】
そこで、具体的方策の一つとして、ボール回収機に、衛星測位システムを構成する衛星からの測位信号(例えばGPS信号)を受信するアンテナ付受信機を設け、受信した測位信号(例えばGPS信号)に基づいて、ボールがカウントセンサに当接してカウントセンサからの信号(レベル)が予め定められた閾値を越えた時点、言い換えれば、ボールを拾ったと認識した時点での位置情報(緯度、経度情報)をボールを拾った位置とすることが本発明者により考えられている。
【0010】
しかしながら、このようにボールがカウントセンサに当接してボールを拾ったと認識した時点での位置情報は、実際にボールを拾った位置からは離れたものとなっている。すなわち、ボールがボール回収輪により地面上から拾い上げられてカウントセンサに当接するまでには当該ボール回収機は少なからず移動しており、その位置情報には、ボール回収機の走行方向への移動距離分の誤差が生じることになる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、簡易な方法でボール等の地面上の落下物の位置を求めることのできる、または、ハードウェアの大幅な改変を必要とすることなく、ソフトウェアを改善するだけで、ボール等の地面上の落下物の位置を正確に求めることのできる、信頼性の高い費用対効果に優れた走行式回収機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、本発明に係る走行式回収機は、基本的には、面上で走行しながら面上に散乱した落下物を拾い上げて回収する走行式回収機であって、前記走行式回収機は、前記面上から落下物を拾い上げる回収部材と、前記面上での当該走行式回収機の走行制御を行うとともに、測位システムにより検出された当該走行式回収機の位置情報を取得するコントローラと、前記測位システムにより検出された位置において、前記回収部材で拾い上げられた各落下物が回収されたことを検出するためのセンサとを備えることを特徴としている。
【0013】
好ましい態様では、前記コントローラは、前記落下物が前記回収部材により面上から拾い上げられて前記センサで検出されるまでの当該走行式回収機の移動距離、又は、前記落下物が前記回収部材により面上から拾い上げられて前記センサで検出されるまでに要した時間長を使用して前記落下物を拾った実際の位置を求め、この求められた実際の位置情報を記憶する。
【0014】
他の好ましい態様では、前記コントローラは、前記落下物が前記センサで検出された時点での当該走行式回収機の位置情報から、前記落下物が前記回収部材により面上から拾い上げられて前記センサで検出されるまでの当該走行式回収機の移動距離分を、そのときの当該走行式回収機の走行方向とは逆方向に反映した位置を、前記落下物を拾った実際の位置とする。
【0015】
他の好ましい態様では、前記コントローラは、当該走行式回収機の位置情報に基づいて、前記落下物が前記センサで検出された時点から、前記落下物が前記回収部材により面上から拾い上げられて前記センサで検出されるまでに要した時間長分を遡った時点での当該走行式回収機の位置を、前記落下物を拾った実際の位置とする。
【0016】
更に好ましい態様では、前記コントローラは、前記落下物が前記回収部材により面上から拾い上げられて前記センサで検出されるまでの当該走行式回収機の移動距離を、そのときの当該走行式回収機の走行速度で除して、前記時間長を求める。
【0017】
別の好ましい態様では、前記センサは、前記回収部材で拾い上げられた落下物が当接することで前記落下物を検出する接触式のセンサであり、前記コントローラは、前記落下物が前記回収部材により面上から拾い上げられて前記センサに当接するまでの当該走行式回収機の移動距離、又は、前記落下物が前記回収部材により面上から拾い上げられて前記センサに当接するまでに要した時間長を使用して前記落下物を拾った実際の位置を求める。
【0018】
別の好ましい態様では、前記コントローラは、前記落下物を拾った実際の位置情報を当該走行式回収機のための管理用サーバーに送信する。
【0019】
別の好ましい態様では、前記コントローラは、衛星測位システムを構成する衛星からの測位信号を受信して当該走行式回収機の位置情報を取得する。
【0020】
別の好ましい態様では、前記回収部材は、当該走行式回収機が面上を走行することにより面上を転動することで面上から落下物を拾い上げる。
【0021】
別の好ましい態様では、前記回収部材は、外周に多数の環状溝からなる多条溝を有し、前記各環状溝内に、面上の落下物を拾い上げるための多数のポケットが周方向に沿って形成され、隣り合う前記環状溝の前記各ポケットは周方向に所定角度ずつずらして設けられる。
【0022】
別の好ましい態様では、前記センサは、全ての前記環状溝に跨る単一のセンサで構成される。
【0023】
別の好ましい態様では、前記回収部材で拾い上げられた落下物を該回収部材から解放すべく、櫛歯状の解放部材が前記各環状溝へ突入状態で配設され、該解放部材に前記センサが配設される。
【0024】
別の好ましい態様では、前記センサは、前記回収部材で拾い上げられた落下物をカウントするためのカウントセンサである。
【0025】
また、本発明に係る走行式回収機のより具体的な態様は、基本的に、予め定められたプログラムに従って面上に設定された走行経路を走行しながら面上に散乱したボールを拾い上げて回収する走行式回収機であって、前記走行式回収機は、前記面上を転動することにより前記面上からボールを拾い上げるボール回収輪と、該ボール回収輪で拾い上げられたボールが回収されたことを検出するためのセンサと、前記面上での当該走行式回収機の走行制御を行うとともに、測位システムにより検出された当該走行式回収機の位置情報を取得するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記ボールが前記ボール回収輪により面上から拾い上げられて前記センサで検出されるまでの当該走行式回収機の移動距離、又は、前記ボールが前記ボール回収輪により面上から拾い上げられて前記センサで検出されるまでに要した時間長を使用して前記ボールを拾った実際の位置を求め、この求められたボールの実際の位置情報を記憶することを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る走行式回収機では、例えば衛星測位システムにより検出された位置において、回収された各落下物(ボール等)の位置を検出するためのカウントセンサ等で構成されるセンサを備えるので、簡易な方法でボール等の地面上の落下物の位置を求めることができる。そして、例えば、落下物(ボール等)が回収部材(ボール回収輪)により面上から拾い上げられてカウントセンサでカウントされるまでの当該走行式回収機の移動距離、又は、落下物(ボール等)が回収部材(ボール回収輪)により面上から拾い上げられてカウントセンサでカウントされるまでに要した時間長を使用して落下物を拾った実際の位置を求め、この求められた実際の位置情報を記憶する。例えば落下物(ボール等)がカウントセンサに当接してカウントされた時点での当該走行式回収機の位置情報から、落下物(ボール等)が回収部材(ボール回収輪)により面上から拾い上げられてカウントセンサに当接してカウントされるまでの当該走行式回収機の移動距離分を、そのときの当該走行式回収機の走行方向とは逆方向に反映させる(引き算する)ことにより、落下物(ボール等)を拾った実際の位置を求めるか、あるいは、例えば落下物(ボール等)がカウントセンサに当接してカウントされた時点から、落下物(ボール等)が回収部材(ボール回収輪)により面上から拾い上げられてカウントセンサに当接してカウントされるまでに要した時間長分を遡った時点での当該走行式回収機の位置情報を得て、これを落下物(ボール等)を拾った実際の位置とする。そのため、ハードウェアの大幅な改変を必要とすることなく、ソフトウェアを改善するだけで、ボール等の地面上の落下物の位置を正確に求めることができ、信頼性の高い費用対効果に優れた走行式回収機を提供することができる。
【0027】
また、ボール等の位置を正確に求めることができることから、ボール等の散乱(分布)状況、ボール密集エリア等を正確に把握することができ、その結果、ボール等の回収作業を一層効率良く行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る走行式回収機としてのボール回収機の一実施形態を示す全体斜視図。
図2図1のボール回収機からボール回収輪カバーを取り外した状態の斜視図。
図3図2のボール回収機において機体カバーを省略したIII-III矢視断面図。
図4図2中のボール回収輪の一部の拡大斜視図。
図5図3中のボール回収輪の拡大断面図。
図6図5のVI-VI矢視断面図。
図7図5のVII-VII矢視部の周方向に沿う断面の一部を平面に展開した図。
図8図3のカウントセンサ及びボール解放部材部分を詳細に示す分解斜視図。
図9図1のボール回収機が使用される作業領域、走行経路、ステーション等を示す模式図。
図10】実施形態におけるボール回収機に配備されるコントローラの処理内容の説明に供される機能ブロック図。
図11】コントローラが実行する位置情報修正ルーチンの一例を示すフローチャート。
図12】コントローラが実行する位置情報修正ルーチンの他例を示すフローチャート。
図13】ボールの実位置情報から作成されるボール密度分布マップの一例を示す模式図。
図14】仮想作業領域の一例を示す模式図。
図15】ボール置場又は仮想作業領域(優先作業領域)の近傍の定義説明に供される図。
図16】通常作業を行う領域と作業しない領域を分ける一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る走行式回収機としてのボール回収機の一実施形態を示す全体斜視図である。
【0031】
図示のボール回収機1は無人自律走行式のものであり、多数のボールが散乱している地面上を自走しながら、ボールを回収するものである。このボール回収機1は、典型的には、打ち放しのゴルフ練習場で地面に散乱した多数のゴルフボールを回収するのに用いられる。ボール回収機1は下向きに開口した機体カバー2を備える。この機体カバー2によって回収機本体3が覆われている。
【0032】
機体カバー2(図示例ではボール回収輪カバー4)には、衛星測位システムを構成する衛星からの測位信号(例えばGPS信号)を受信するアンテナ付受信機44が設けられ、受信機44の近傍に管理用サーバー70(図9図10)と当該ボール回収機1とを無線回線(例えば無線LAN)で繋ぐための無線通信機46が設けられている。
【0033】
また、機体カバー2内には走行制御等を行うコントローラ50(後で詳述)が配備されている。コントローラ50には、受信機44で受信した測位信号(例えばGPS信号)に基づいて当該ボール回収機1の位置情報(緯度、経度情報)を取得する位置情報取得部54(図10)が機能的に備えられている。
【0034】
なお、ここでは、衛星測位システムを利用して、衛星測位システムを構成する衛星からの測位信号(例えばGPS信号)を受信して当該ボール回収機1の位置情報を取得するが、当該ボール回収機1の位置情報を取得する方式は、これに限られない。例えば、測位システムとして当該ボール回収機1が使用される作業領域にカメラ等の位置検出装置を設置しておき、位置検出装置からの信号(撮影画像等)を用いて作業領域における当該ボール回収機1の位置情報を取得(検出)してもよい。
【0035】
図2は、図1のボール回収機1から機体カバー2上のボール回収輪カバー4を取り外した状態を示している。ボール回収輪カバー4は、機体カバー2に対して着脱自在である。ボール回収輪カバー4を外すとボール回収輪5が現れるので、ボール回収輪5のメンテナンスを行うのに便利である。
【0036】
図3に示される如くに、回収機本体3は、地面上を移動可能な機体としての走行機体6と、ボール回収輪5と、ボール解放部材(スクイーザとも称する)7と、回収タンク8と、を備える。
【0037】
図3に示される如くに、走行機体6は、フレーム9と、このフレーム9の後部に配設される左右一対の駆動車輪10、10と、駆動車輪10、10を駆動する駆動部11と、フレーム9の前部に配設される左右一対の舵取り車輪12、12と、舵取り車輪12、12を制御する舵取り調整部13等を備える。駆動部11は、電源となる蓄電池14と、この蓄電池14から電力供給される左右の駆動車輪10、10用の走行モータ15、15とを備える。駆動部11によって駆動車輪10、10が回転駆動されることで走行機体6が移動し、所定のプログラムに沿って自動制御されることで、ボール回収が必要な領域内を余すところなく走行するように走行機体6の走行方向が自動的に変更される。
【0038】
ボール回収輪5は、ボール回収機1の前後方向において、一対の舵取り車輪12、12と一対の駆動車輪10、10との間に配設される。ボール回収輪5は、走行機体6の左右方向に延びる軸線Xを中心として遊転自在であり、自重で外周面が地面Gに常時接触するようにフレーム9に支持される。そして、ボール回収輪5は、走行機体6が前進走行することにより地面Gを転動しながら、地面Gに散乱している多数のボールBを回収する。
【0039】
図4に示される如くに、ボール回収輪5は、外周に環状の(多数の環状溝17からなる)多条溝16を備える。この多条溝16を構成する各環状溝17内には、弾性によってボールBの出入りを許容するボールポケット18が周方向に沿って連続的に形成される。各ボールポケット18は、図3に示される如くに、ボールBを一つだけしか保持できない大きさである。そして、隣り合う環状溝17、17の各ボールポケット18が環状溝17の周方向に所定角度ずつずれた位置となるように形成される。
【0040】
引き続き図4を参照して分かるように、ボール回収輪5は、同一構成の多数のディスク19の集合により形成され、隣り合うディスク19、19同士の間に等間隔で環状溝17が形成される。各ディスク19は、片面にスペーサ20付きの複数本の取付軸部21を備え、もう片面に取付軸部21を受け入れる軸部受入孔(図示省略)を備える。そして、隣り合うディスク19、19同士の取付軸部21と軸部受入孔とを結合させることで、多数のディスク19が等間隔で集積される。隣り合うディスク19、19同士の間には、スペーサ20によって環状溝17が形成される。各ディスク19の中央には、支軸22(図3参照)を受け入れるボス部23が形成され、ボス部23の集合によりボール回収輪5に支軸挿通孔24が形成される。この支軸挿通孔24に挿通される支軸22(図3参照)はフレーム9に回動自在に支持される。
【0041】
図5に示される如くに、走行機体6のフレーム9にはボール解放部材(スクイーザ)7が固定されている。ボール解放部材7は、後述するように、ボールポケット18を画成する仕切り凸条31と協働して、ボール回収輪5の外周上の所定の角度位置で、ボールポケット18内のボールBを強制的に解放させるものである。
【0042】
ボール解放部材7は、図5に加えて図8を参照すればよくわかるように、全体として櫛歯形の部材であり、走行機体6の左右方向に延びる基部25と、この基部25から互いに等間隔で平行に延びる多数のボール解放突起26と、を備える。ボール解放突起26の間隔はボール回収輪5のディスク19(換言すれば、環状溝17)の間隔と同一である。ボール解放部材7の基部25はボール回収輪5の上方位置でフレーム9に固定され、各ボール解放突起26はボール回収輪5の各環状溝17内へと突入している。すなわち、櫛歯状のボール解放部材7が多条溝16を構成する各環状溝17へ突入状態で配設されている。
【0043】
ボール解放部材7の基部25の下面には、ボール解放突起26によってボールポケット18から解放されるボールBの数をカウントする接触式のカウントセンサ27が接着等の手法で固着されている。このカウントセンサ27は、圧電素子が用いられた単一の細長板状の圧力センサで構成されており、(全ての)各環状溝17を跨ぐようにボール解放部材7の基部25に沿って左右方向に延びており、ボール回収輪5の軸方向の長さに対応する長さを有する。そして、カウントセンサ27は、ボール解放部材7のボール解放突起26と仕切り凸条31とによってボール回収輪5(のディスク19)の放射方向に案内されるボールBの軌道上に配設されている。このため、ボール解放部材7でボール回収輪5から解放されるボールBがカウントセンサ27に確実に当たる。よって、カウントセンサ27によるボールBのカウントが精確になされる。
【0044】
なお、本実施形態では、カウントセンサ27は、(全ての)各環状溝17に跨る単一の圧力センサで構成されているが、各環状溝17に対して個別に(複数個)設置してもよい。また、カウントセンサ27は、ボール解放部材7以外の部位に設置してもよい。
【0045】
図3図5及び図8に示される如くに、ボール解放部材7の後方には、底板8a、側板8b、8c、前板8d等からなる回収タンク8が配設される。回収タンク8の側板8b、8cは、走行機体6のフレーム9に支持されており、ボール解放部材7によってボール回収輪5から解放されるボールBを収容する。図3に示される如くに、回収タンク8の底板8aは上下に平行移動できるように取り付けられており、下方のボール排出位置へと移動させることで、回収タンク8の底板8aと後板28との間に隙間ができ、この隙間からボールBが排出される。また、回収タンク8には、回収された複数のボールBで満杯になったことを検出するためのフルタンクディテクタ41が(揺動自在に)設けられている(図8参照)。
【0046】
図4図6及び図7を参照して分かるように、ボール回収輪5を構成する各ディスク19の両面には、円周方向に延びる外側凸条29と、同じく円周方向に延びる内側凸条30と、外側凸条29と内側凸条30との間で放射方向に延びる仕切り凸条31と、が形成される。内側凸条30によって底部が画成される環状溝17が、隣り合うディスク19、19間に形成され、外側凸条29と内側凸条30と仕切り凸条31とによって、環状溝17に扇形のボールポケット18が区画形成される。外側凸条29、内側凸条30及び仕切り凸条31は、薄板状の各ディスク19にボール回収輪5として必要な強度を付与するためのリブの機能も有している。
【0047】
前述したように、各ボールポケット18は、ボールBを一つだけしか保持できない大きさである。また、図6に示される如くに、各ボールポケット18の互いに対向する内面(隣り合うディスク19、19の対向する側面)18aは平坦面であり、各ボールポケット18内で平坦面18aに沿ってボールBが移動できるように各ボールポケット18内の横幅が設定されている。各ディスク19は、プラスチック等の軽量で耐久性の良好な材料で形成され、少なくとも内側凸条30より径方向外側の部分に弾性変形性を有する。各ディスク19の弾性変形性により、各ボールポケット18へのボールBの出入りが許容され、且つ、各ボールポケット18によるボールBの保持が可能となる。
【0048】
外側凸条29は、図6に示される如くに、各ディスク19の外周縁からディスク19の厚さ方向外方へと突出している。外側凸条29は、各ボールポケット18の、ボールBが脱落不能な出入口部を画成する。外側凸条29の突出高さは、隣り合うディスク19、19における外側凸条29、29間の間隔LがボールBの直径よりもやや小さくなるように設定される。これにより、ディスク19の弾性変形性によって、ボールBが外側凸条29、29間を通ってボールポケット18へ出入り可能となり、且つ、ボールポケット18内に入ったボールBは、ボール解放部材7による強制解放作用が働かない限り、ボールポケット18内に保持される。
【0049】
同じく図6に示される如くに、内側凸条30は、外側凸条29からボールの直径とほぼ同じ長さだけディスク19の半径方向内側に形成され、各ディスク19の側面からディスク19の厚さ方向外方へと突出している。内側凸条30は、ボールポケット18の底部を画成する。よって、内側凸条30には外側凸条29ほどの高さ制限はなく、隣り合うディスク19、19の内側凸条30、30間にボール解放部材7のボール解放突起26が突入し得る隙間が形成されるだけの高さであればよい。
【0050】
図4及び図5に示される如くに、仕切り凸条31は、外側凸条29と内側凸条30との間で放射方向に延びており、環状溝17を周方向において等角度間隔に仕切ることでボールポケット18を画成する。図示例では、仕切り凸条31によって各環状溝17が17個のボールポケット18に区画されている。各環状溝17におけるボールポケット18の個数は限定されない。但し、ボール解放部材7と仕切り凸条31との協働によって各ボールポケット18からボールBを確実に解放できるように、各ボールポケット18はボールBを一つだけしか保持できない大きさとすることが必要である。
【0051】
図7に示される如くに、隣り合う環状溝17、17の各ボールポケット18は、環状溝17の周方向に所定角度ずつずれた位置となるように形成される。図示例では、各ディスク19、19の両面に等角度間隔で形成される仕切り凸条31が、各ディスク19、19の両面間で周方向に所定角度ずつずれた位置に形成される。このため、図7に示される如くに、隣り合うディスク19、19の互いに対向する仕切り凸条31、31同士が互いに周方向で一致した位置となるように同一構成の多数のディスク19を集合させることで、隣り合う環状溝17、17の各ボールポケット18を環状溝17の周方向に所定角度ずつずれた位置となるように形成することができる。よって、ボール回収輪5の作製が容易となる。
【0052】
図5に示される如くに、走行機体6が前進走行すると、地面Gに常時接触している遊転自在なボール回収輪5が図5で見て反時計方向へと回転する。これにより、地面Gに多数散乱しているボールBがボールポケット18の弾性変形性によってボールポケット18内に入り込んで保持される(すなわち、地面上のボールBが拾い上げられる)。ボールポケット18に保持されたボールBは、走行機体6の前進に伴うボール回収輪5の回転により上方へと移送され、ボール解放部材7のボール解放突起26に押し当てられる。ボール回収輪5のさらなる回転により、ボールポケット18内のボールBは、ボール回収輪5の回転方向後方の仕切り凸条31に沿って上方へと案内され、ボール解放部材7の基部25の下面に取り付けられたカウントセンサ27に当接した後に、回収タンク8内へと送られて落下する。
【0053】
なお、回収機本体3には、ボール回収輪5を地面から浮かせて支持する機構(図示省略)が設けられている。上記のようなボール回収作業を行わないとき、例えば、回収タンク8が満杯となってステーション65(図9)に戻るとき、Uターン等の方向転換するとき等においては、ボール回収輪5を地面から浮かせるようにされる。
【0054】
本実施形態のボール回収機1においては、ボール回収輪5の隣り合う環状溝17、17の各ボールポケット18が環状溝17の周方向に所定角度ずつずれた位置にあるので、隣り合う環状溝17、17のボールポケット18には環状溝17の周方向に所定角度ずつずれた位置でボールBが保持される。このため、隣り合う環状溝の周上の互いに一致する位置にボールが同時に保持されるという事態が生じない。よって、ボールポケット18からの解放時にボール保持力が強くなりすぎることがなく、ボール解放部材7によるボールBの解放が確実になされる。
【0055】
また、多数の環状溝17の全体においても、環状溝17の周上の互いに一致する位置にボールBが同時に保持されるという事態が生じないか、又は生じにくいので、ボール解放部材による多数のボールBの解放タイミングが一致してしまうという事態が生じにくい。このため、ボール回収輪5の回転が停止してしまう等の問題も生じない。
【0056】
また、図5に示される如くに、ボール解放部材7のボール解放突起26と仕切り凸条31とによって環状溝17を形成するディスク19の放射方向に案内されるボールBの軌道上にカウントセンサ27が配設されるので、ボール解放部材7でボール回収輪5から解放されるボールBがカウントセンサ27に確実に当たる。このため、回収されたボールBの数を正確に把握することができる。また、隣り合う環状溝17、17の各ボールポケット18は環状溝17の周方向に所定角度ずつずれた位置にあるので、隣り合う環状溝17、17の各ボールポケット18内のボールBがカウントセンサ27に対して互いにずれたタイミングで当たる。このため、カウントセンサ27によるボールBのカウントが精確に行える。
【0057】
以上の構成に加えて、本実施形態のボール回収機1では、走行制御、ボールカウント集計制御、ボール位置情報修正等を行うべく、マイクロコンピュータが用いられたコントローラ50が配備されている。コントローラ50は、CPU、入出力回路、記憶部(ROM、RAM、不揮発性メモリ、HDD、SDD等)を備えている。記憶部には、プログラムおよび各種データが記憶され、この記憶部に記憶されている所定のプログラムを実行することによって、自律走行制御や位置情報取得等の所要の機能処理部として機能する。
【0058】
図9に、図1のボール回収機1が使用される作業領域W、走行経路R、ステーション65等を示す模式図が例示されているように、本実施形態のボール回収機1は、予め定められたプログラムに従って起動後はまず作業領域W(例えば埋め込みワイヤ等で構成)の所定のスタート地点Sに向かい、スタート地点Sからは作業領域W内に設定された走行経路Rに沿って走行して(例えば東から西へ走行し、端に達すると旋回反転して、南北方向にボール回収輪5の横幅分弱の間隔をあけて、西から東へ走行し、以下同様に、終点Eまでジグザグ状に作業領域W内をくまなく走行して)ボール回収作業を行う。ボール回収作業中にボールカウント数(集計数)が一定数に達すると(回収タンク8が満杯になったと推定されると)、ボール回収作業を中断してステーション65へ帰還し、回収タンク8内のボールを所定のボール置場66に荷下ろしして、再び、ボール回収作業を続行する。
【0059】
ステーション65には、ボール回収機1を充電するための充電スタンド67が設けられるとともに、管理用サーバー70が設置されている。管理用サーバー70は、当該ボール回収機1と無線回線(例えば無線LAN)で繋がれるとともに、必要に応じて有線でも接続される。
【0060】
ここで、本実施形態の課題について図5を参照しながら説明する。
【0061】
衛星測位システムを構成する衛星からの測位信号(例えばGPS信号)に基づいて、ボールがカウントセンサ27に当接してカウントセンサ27からの信号(レベル)が予め定められた閾値を越えた時点、言い換えれば、ボールを拾ったと認識した時点での位置(ボールBe)は、実際にボールを拾った位置(ボールBa)からは離れたものとなっている。すなわち、ボールがボール回収輪5により地面上から拾い上げられてカウントセンサ27に当接するまでには当該ボール回収機1は、ボールBa-支軸22-ボールBeで形成される中心角θ分のボール回収輪5の外周円弧長Laだけ移動しており、その位置情報には、ボール回収機1の走行方向への移動距離La分の誤差が生じることになる。
【0062】
本実施形態は、ボールがカウントセンサ27に当接してカウントされた時点での当該ボール回収機1の位置情報を修正して、ボールを拾った実際の位置(ボールの実位置情報)を得ることを主目的としている。
【0063】
コントローラ50は、上記主目的を達成すべく、図10に機能ブロックで示されているように、計時部51と、回転速度算出部52と、ボールカウント部53と、位置情報取得部54と、修正用情報取得部56と、位置情報修正部57と、記憶部58と、走行制御部60と、を有する。
【0064】
計時部51は、コントローラ50の電源ON(起動)で計時を開始し、電源ON中は継続して経過時間を計測し、電源OFFで計時を終了する。この計時部51の1計測単位は例えば10μsであり、計時部51からは「時刻」に相当するコントローラ50起動時点からの経過時間が10万分の1秒単位で得られる。
【0065】
回転速度算出部52は、ディスク19の回転速度を検出するディスク回転数センサ43からの信号に基づいてボール回収輪5の回転速度(もしくはそれに等価なボール回収機1の走行速度)を算出し、算出した回転速度(もしくは走行速度)を修正用情報取得部56に送る。
【0066】
ボールカウント部53は、カウントセンサ(圧力センサ)27からの信号が予め定められた閾値を越えたか否かを判定し、閾値を越えたと判定された場合にはボールが回収されたとしてボール回収個数をカウントアップするとともに、カウントアップした旨及び閾値越え時点を修正用情報取得部56に送る。
【0067】
位置情報取得部54は、受信機44で受信した測位信号(例えばGPS信号)に基づいて当該ボール回収機1の位置情報を所定時間毎に(例えば100分の1秒毎に)取得し、取得した位置情報を修正用情報取得部56に送る。
【0068】
修正用情報取得部56は、ボールを拾った実際の位置を求めるべく、ボールがカウントセンサ27に当接してカウントされた時点での当該ボール回収機1の位置情報を修正するための情報を取得する。修正するための情報としては、ボールがボール回収輪5により地面上から拾い上げられてカウントセンサ27に当接してカウントされるまでの当該ボール回収機1の移動距離La、ボールがボール回収輪5により地面上から拾い上げられてカウントセンサ27に当接してカウントされるまでに要した時間長Ja、前記位置情報取得部54から得られる位置情報、当該ボール回収機1の走行方向、当該ボール回収機1の走行速度又はボール回収輪5の回転速度等を使用する。
【0069】
位置情報修正部57は、修正用情報取得部56で取得された情報を使用してボールがカウントセンサ27に当接してカウントされた時点での当該ボール回収機1の位置情報を修正して、ボールを拾った実際の位置(ボールの実位置情報)を得る(後で説明)。
【0070】
記憶部58は、位置情報修正部57で修正されたボールの実位置情報を記憶し、記憶されたボールの実位置情報を無線通信機46を介して管理用サーバー70に送信する。送信時期としては、ボールを1個回収毎に送信してもよいし、ステーション65に戻ったときにまとめて送信してもよいし、作業終了時にまとめて送信してもよい。なお、上記のようにボールの実位置情報を当該ボール回収機1のための管理用サーバー70に送信して保存する形態の他、例えばコントローラ50に抜き差し可能なメモリカード等の外部記憶装置72にボールの実位置情報を保存するようにしてもよい。
【0071】
走行制御部60は、予め定められたプログラムに従って作業領域W内に設定された走行経路Rに沿って走行するように、左右の走行モータ15、15の回転速度を調整する操向制御を行う。また、前記ボールカウント部53からボールカウント数(集計数)が一定数に達した満杯情報が送られると、左右の走行モータ15、15の回転速度を調整する操向制御を行って、ボール回収機1にボール回収作業を中断させてステーション65へ帰還させ、回収タンク8内のボールを所定のボール置場66に荷下ろしさせて、再びボール回収作業を続行させる。また、走行制御部60は、前記したボール回収機1の走行制御に、管理用サーバー70に送られたボールの実位置情報(又は、後述するボール密度分布マップや仮想作業領域)を利用することもできる。
【0072】
次に、主として、コントローラ50において、位置情報取得部54、修正用情報取得部56、及び位置情報修正部57で実行される位置情報修正ルーチンの一例(図11)及び他例(図12)をフローチャートを参照しながら説明する。
【0073】
図11図12に示される位置情報修正ルーチンは、コントローラ50に電源が投入されたときにスタートし、所定の周期で繰り返し実行される。
【0074】
図11に示される位置情報修正ルーチンの一例では、スタート後、ステップS81でカウントセンサ27からの信号Svが予め定められた閾値Lsを越えたか否か(実際には、SvがLsを下回ったか否か)を判断する。閾値Lsを越えてない場合はこのフローを終了し、閾値Lsを越えた場合は、ステップS82に進んで、閾値Lsを越えた時点、言い換えれば、ボールを拾ったと認識した時点での位置情報を得る。
【0075】
続くステップS83では、位置情報(緯度、経度情報)の変化、現在の走行経路、操向操舵状態等に基づいて走行方向を求める。
【0076】
次のステップS84では、ステップS82で得られた、ボールを拾ったと認識した時点での位置情報から、ボールがボール回収輪5により地面上から拾い上げられてカウントセンサ27に当接してカウントされるまでの当該ボール回収機1の移動距離Laを、そのときの当該ボール回収機1の走行方向とは逆方向に反映させる(例えば西側に向けて走行している場合は移動距離La分を東側に戻す)ことにより修正し、ボールを拾った実際の位置(ボールの実位置情報)を求める。言い換えれば、ボールがカウントセンサ27に当接してカウントされた時点での当該ボール回収機1の位置情報から、ボールがボール回収輪5により地面上から拾い上げられてカウントセンサ27に当接してカウントされるまでの当該ボール回収機1の移動距離La分を、そのときの当該ボール回収機1の走行方向とは逆方向に反映した位置を、ボールを拾った実際の位置(ボールの実位置情報)とする。
【0077】
ステップS85では、ステップS84で修正されたボールの実位置情報を記憶して、このフローを終了する。
【0078】
図12に示される位置情報修正ルーチンの他例では、スタート後、ステップS91でカウントセンサ27からの信号Svが予め定められた閾値Lsを越えたか否か(実際には、SvがLsを下回ったか否か)を判断する。閾値Lsを越えてない場合はこのフローを終了し、閾値Lsを越えた場合は、ステップS92に進んで、閾値Lsを越えた時点(閾値越え時点)を記憶する。
【0079】
続くステップS93では、ディスク回転数センサ43からの信号に基づいて当該ボール回収機1の走行速度を算出する。なお、走行速度は、位置情報(緯度、経度情報)の変化、操向操舵状態等に基づいて求めてもよい。
【0080】
続くステップS94では、前記移動距離LaをステップS93で算出された走行速度で除して(La/走行速度)、ボールがボール回収輪5により地面上(ボールBaの位置)から拾い上げられてカウントセンサ27に当接してカウントされる(ボールBeの位置)までに要した時間長Jaを求める。
【0081】
続くステップS95では、位置情報取得部54から得られる位置情報に基づいて、ボールがカウントセンサ27に当接してカウントされた時点、すなわち、ステップS92で記憶した閾値越え時点から時間長Ja分を遡った時点での当該ボール回収機1の位置を求め、この位置をボールを拾った実際の位置(ボールの実位置情報)とする。言い換えれば、位置情報取得部54から得られる当該ボール回収機1の位置情報に基づいて、ボールがカウントセンサ27に当接してカウントされた時点から、ボールがボール回収輪5により地面上から拾い上げられてカウントセンサ27に当接してカウントされるまでに要した時間長Ja分を遡った時点での当該ボール回収機1の位置を、ボールを拾った実際の位置(ボールの実位置情報)とする。
【0082】
ステップS96では、ステップS95で得られたボールの実位置情報(修正後の位置情報)を記憶して、このフローを終了する。
【0083】
なお、上記実施形態では、位置情報修正方法を2例(図11図12)挙げたが、これらに限られないことは勿論である。
【0084】
なお、図11のステップS85又は図12のステップS95で得られたボールの実位置情報を利用して、図13に模式図が例示されているように、ボールの散乱(分布)状況、ボール密集エリア等を示すボール密度分布マップMを作成することができる。ここでは、ボール密度分布マップMは、ボールが密集する(密度分布が高い)ボール大密集領域M1、ボールがあまり密集しない(密度分布が低い)ボール小密集領域M2、ボールがほとんど密集しない(密度分布がほぼ零の)ボール非密集領域M3の3つの領域に分けて構成されているが、図13に示すマップは一例であり、ボール密度分布マップMの区分は、これに限られないことは勿論である。このようなボール密度分布マップMをボール回収機1の走行制御に利用することで、ボール回収作業を一層効率良く行うことができる。
【0085】
また、前記したボール密度分布マップM(もしくはボールの実位置情報)等を利用して、図14に模式図が例示されているように、仮想作業領域Zを作成することもできる。一例として、ボール置場66の近傍に仮想作業領域Zのうちの優先作業領域Z1(ボール回収作業を優先的に行う領域)を作成し、その優先作業領域Z1の周りに非優先作業領域Z2や非作業領域Uを作成することができる。また、他例として、作業領域Wにおいて仮想作業領域Zのうちの優先作業領域Z1(ボール回収作業を優先的に行う領域)を作成し、その近傍にボール置場66を設置することができる。例えば、優先作業領域Z1は、ボール密度分布マップMのボール大密集領域M1を含むように設定し、非優先作業領域Z2は、ボール密度分布マップMのボール小密集領域M2を含むように設定し、非作業領域Uは、ボール密度分布マップMのボール大密集領域M1やボール小密集領域M2以外のボール非密集領域M3に設定することが考えられる。このような仮想作業領域Zをボール回収機1の走行制御に利用することで、ボール回収作業をより一層効率良く行うことができる。
【0086】
なお、ボール置場66の「近傍」や仮想作業領域Z(優先作業領域Z1)の「近傍」とは、優先作業領域Z1の面積が2:1(a:b)となる、ボール置場66を中心とした円(図15中、点線で表記)を描いた際に、優先作業領域Z1の方が作業領域Wのその他の領域(c)よりも広くなるような位置を意味する(図15参照)。
【0087】
前記したボール密度分布マップMや仮想作業領域Zは、ボール回収機1のコントローラ50の内部で作成してもよいし、ボールの実位置情報を受信した管理用サーバー70が作成してもよいし、作業者がボールの実位置情報を基に作成してボール回収機1のコントローラ50や管理用サーバー70に入力してもよい。
【0088】
以上の説明から明らかなように、本実施形態のボール回収機(走行式回収機)1では、例えば衛星測位システムにより検出された位置において、回収された各ボールの位置を検出するためのセンサとしてのカウントセンサ27を備えるので、簡易な方法でボールの地面上の位置を求めることができる。そして、例えば、ボール(落下物)がボール回収輪(回収部材)5により地面上から拾い上げられてカウントセンサ27でカウントされるまでの当該ボール回収機1の移動距離La、又は、ボール(落下物)がボール回収輪(回収部材)5により地面上から拾い上げられてカウントセンサ27でカウントされるまでに要した時間長Jaを使用してボールを拾った実際の位置を求め、この求められた実際の位置情報を記憶する。例えばボールがカウントセンサ27に当接してカウントされた時点での当該ボール回収機1の位置情報から、ボールがボール回収輪5により地面上から拾い上げられてカウントセンサ27に当接してカウントされるまでの当該ボール回収機1の移動距離La分を、そのときの当該ボール回収機1の走行方向とは逆方向に反映させる(戻す)ことにより、ボールを拾った実際の位置を求めるか、あるいは、例えばボールがカウントセンサ27に当接してカウントされた時点から、ボールがボール回収輪5により地面上から拾い上げられてカウントセンサ27に当接してカウントされるまでに要した時間長Ja分を遡った時点での当該ボール回収機1の位置情報を得て、これをボールを拾った実際の位置とする。そのため、ハードウェアの大幅な改変を必要とすることなく、ソフトウェアを改善するだけで、ボールの地面上の位置を正確に求めることができ、信頼性の高い費用対効果に優れたボール回収機1を提供することができる。
【0089】
また、ボールの位置を正確に求めることができることから、ボールの散乱(分布)状況、ボール密集エリア等を正確に把握することができ、その結果、ボールの回収作業を一層効率良く行うことが可能となる。
【0090】
なお、上記実施形態では、例えば衛星測位システムにより検出された位置において、拾い上げられた各ボールが回収されたことを検出する(回収された各ボールの位置を検出する)ためのセンサとして、ボール回収機1が、回収タンク8内のボールの数をカウントするカウントセンサ27を備え、そのカウントセンサ27がボールを回収したことを検知して、各ボールの位置を特定する例を説明した。ただし、ボール回収機1は、回収タンク8内のボールの重さを測る重量センサと、その重量センサでボールを回収したことを検知して、各ボールの位置を特定するセンサとを備える形態でもよい。また、ボール回収機1は、回収タンク8内のボールの数をカウントするセンサと、そのセンサでボールを回収したことを検知して、各ボールの位置を特定するセンサとを備える形態でもよい。このようなセンサとしては、ボタンのような物理的に検知する方法や、レーザーで検知する方法や、カメラの画像で検知する方法等が考えられる。また、ICチップ入りの高価なボールでなくとも、検知できる態様が好ましく、その場合に、そのセンサでボールを回収したことを検知するとよい。特に、ボール回収機1は無人自律走行式がよい。
【0091】
また、上記実施形態によるセンサを利用してボール密度分布マップMを作成して、図16に模式図が例示されているように、ユーザーが仮想枠Pや仮想枠Qを設定して作業領域Wと非作業領域Uとに分けて、仮想作業領域Zを設定して、優先作業領域Z1内を優先的に作業させるモードでない場合に、作業領域W及び仮想枠P内で作業させるような通常作業を行わせても、または作業領域W内で仮想枠Q内へ侵入させないように作業をさせるような通常作業を行わせてもよい。この場合に、仮想枠Pや仮想枠Qは、簡単な形状でボール密度分布マップM上に形成することが可能である。
【0092】
本実施形態の他の実施形態として、走行機体6は、動力による自走式のものの他、手押し式や引張り式等、人力によって移動させられるものであってもよい。また、ボール回収輪5は、走行機体6の走行に伴って転動するものの他、ボール回収輪5自体が回転駆動力を有する態様とすることもできる。また、ボール回収機1が用いられる場所(領域)や、回収するボールの種類等も、上記の例に限定されない。
【0093】
また、上記実施形態では、回収する物がゴルフボールの例を挙げて説明したが、本実施形態は、ゴルフボールに限られることはなく、回収する物がテニスボール、野球ボール、木の実、容器等であっても同様に適用できる。
【0094】
以上、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の実施形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 ボール回収機(走行式回収機)
2 機体カバー
3 回収機本体
5 ボール回収輪(回収部材)
6 走行機体
7 ボール解放部材
8 回収タンク
16 多条溝
17 環状溝
18 ボールポケット
19 ディスク
27 カウントセンサ
43 ディスク回転数センサ
44 受信機
46 無線通信機
50 コントローラ
51 計時部
52 回転速度算出部
53 ボールカウント部
54 位置情報取得部
56 修正用情報取得部
57 位置情報修正部
58 記憶部
60 走行制御部
65 ステーション
70 管理用サーバー
72 外部記憶装置
La 移動距離
Ja 時間長
M ボール密度分布マップ
U 非作業領域
W 作業領域
Z 仮想作業領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16