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特許7520746水質画像センサおよびそれに適用される温度調節方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】水質画像センサおよびそれに適用される温度調節方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/18 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
G01N33/18 F
G01N33/18 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021026391
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022128075
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸次
(72)【発明者】
【氏名】有村 良一
(72)【発明者】
【氏名】城田 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】小城 和高
(72)【発明者】
【氏名】早見 徳介
(72)【発明者】
【氏名】金谷 道昭
(72)【発明者】
【氏名】横山 雄
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-202770(JP,A)
【文献】特開2003-139764(JP,A)
【文献】特開2017-207323(JP,A)
【文献】特開平07-294431(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0104806(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被観測水を保持する観測水槽と、
前記観測水槽内の前記被観測水を撮像する撮像部と、
前記撮像部による撮像の結果に基づいて、前記被観測水の水質を監視する監視部と、
前記観測水槽に導入される前記被観測水と熱交換を行う熱交換器と
前記観測水槽の周囲の温度を測定する第1の温度センサと、
前記観測水槽に導入される前記被観測水の温度を測定する第2の温度センサと
を具備
前記熱交換器は、前記観測水槽に導入される前記被観測水を加熱する加熱部と、冷却する冷却部とを含み、
前記熱交換器は、前記加熱部による前記被観測水の加熱、または前記冷却部による前記被観測水の冷却によって、前記第1の温度センサによって測定される温度と、前記第2の温度センサによって測定される温度とを一致させるように、前記熱交換を行う、水質画像センサ。
【請求項2】
被観測水を保持する観測水槽と、
前記観測水槽内の前記被観測水を撮像する撮像部と、
前記撮像部による撮像の結果に基づいて、前記被観測水の水質を監視する監視部と、
前記観測水槽に導入される前記被観測水と熱交換を行う熱交換器と
を具備し、
前記監視部は、前記撮像部による撮像の結果に基づいて、前記被観測水の鉛直方向における移動速度と、水平方向における移動速度とを算出し、
前記熱交換器は、前記観測水槽に導入される前記被観測水を加熱する加熱部と、冷却する冷却部とを含み、前記加熱部による前記被観測水の加熱、または前記冷却部による前記被観測水の冷却によって、前記水平方向における移動速度が、前記鉛直方向における移動速度よりも大きくなるように、前記熱交換を行う、水質画像センサ。
【請求項3】
被観測水を保持する観測水槽と、
前記観測水槽内の前記被観測水を撮像する撮像部と、
前記撮像部による撮像の結果に基づいて、前記被観測水の水質を監視する監視部と、
前記観測水槽の周囲を冷却するための冷却水と熱交換を行う熱交換器と、
前記観測水槽の周囲を覆うように配置された断熱カバーと
を具備
前記熱交換器は、前記断熱カバーの内側の空気を循環させるための空気循環器を有する、水質画像センサ。
【請求項4】
前記熱交換器は、前記冷却水を加熱する機能と、冷却する機能との両方を備えた加熱冷却素子を含む、請求項に記載の水質画像センサ。
【請求項5】
前記観測水槽の周囲の温度を測定する第1の温度センサと、
前記観測水槽に導入される前記被観測水の温度を測定する第2の温度センサとをさらに具備し、
前記熱交換器は、前記加熱冷却素子による前記冷却水の加熱または冷却によって、前記第1の温度センサによって測定される温度と、前記第2の温度センサによって測定される温度とを一致させるように、前記熱交換を行う、請求項に記載の水質画像センサ。
【請求項6】
前記断熱カバーの内部に、前記冷却水を導入するための導水路を設けた、請求項乃至のうち何れか1項に記載の水質画像センサ。
【請求項7】
前記監視部は、前記撮像部による撮像の結果に基づいて、前記被観測水の鉛直方向における移動速度と、水平方向における移動速度とを算出し、
前記熱交換器は、前記加熱冷却素子による前記冷却水の加熱または冷却によって、前記水平方向における移動速度が、前記鉛直方向における移動速度よりも大きくなるように、前記熱交換を行う、請求項に記載の水質画像センサ。
【請求項8】
水質画像センサに具備された観測水槽内の被観測水の温度を測定し、
前記観測水槽の周囲の温度を測定し、
前記被観測水の温度と、前記観測水槽の周囲の温度とを一致させるような温度調節を行う、前記水質画像センサのための温度調節方法。
【請求項9】
水質画像センサに具備された観測水槽内の被観測水を撮像し、
前記撮像の結果に基づいて、前記被観測水の鉛直方向における移動速度と、水平方向における移動速度とを算出し、
前記水平方向における移動速度が、前記鉛直方向における移動速度よりも大きくなるように、前記観測水槽の周囲の温度、または前記観測水槽内の前記被観測水の温度を調節する、前記水質画像センサのための温度調節方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水質の変動を画像により監視する水質画像センサおよびそれに適用される温度調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下水道の水質の変動を監視する水質センサには、一般的に濁度計、pH計、導電率計などが使用されていた。近年では、水中の微生物や、微小の浮遊物をカメラで撮像し、撮像された2次元の画像データから、水中に含まれる微生物や藻類の種類、浮遊物の大きさやその量などを解析することによって、水質の変動を画像によりモニタリングする水質画像センサが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-202770号公報
【文献】特開2005-326243号公報
【文献】特開平9-21748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、上下水道の水質変動のモニタリングに水質画像センサを使用する際、その観測対象である水中の微生物や、微小の浮遊物のサイズは、数μm~数十μmのオーダである。
【0005】
水質画像センサは、観測対象を含む被観測水を、例えば石英セル製の観測水槽に保持した状態で撮像する。その際、観測水槽の周囲の空気の温度(以降、「周囲温度」とも称する)が、観測水槽内の観測対象を含む水(以降、「被観測水」とも称する)の温度よりも高いと、観測水槽の周囲から、観測水槽の外壁を介して、観測水槽の内部へと熱が流入し、観測水槽の内壁近傍の水が加熱され、上昇流が発生する。逆に、周囲温度が、被観測水の温度よりも低いと、観測水槽の内部から、観測水槽の外壁を介して、観測水槽の外部へと熱が流出し、観測水槽の内壁近傍の水が冷却され、下降流が発生する。
【0006】
すなわち、周囲温度と被観測水との間に温度差がある場合、観測対象は、熱対流によって移動する。そして、この熱対流による移動速度は、周囲温度と被観測水との温度差が大きくなるほど増加する。
【0007】
したがって、水質画像センサによって、観測対象を高倍率の光学系を用いて撮像し、撮像された2次元の画像データから、前述した解析を行おうとしても、熱対流による移動速度が大きい場合、解析中に観測対象が光学系の視野内で移動し、解析が完了する前に視野から外れてしまい、結果として、信頼性の高い監視結果を得ることができない場合がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、信頼性の高い監視結果を得ることができる水質画像センサおよびそれに適用される温度調節方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の水質画像センサは、観測水槽と、撮像部と、監視部と、熱交換器とを具備する。観測水槽は、被観測水を保持する。撮像部は、観測水槽内の被観測水を撮像する。監視部は、撮像部による撮像の結果に基づいて、被観測水の水質を監視する。熱交換器は、観測水槽に導入される被観測水と熱交換を行う。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態の温度調節方法が適用された水質画像センサの部分的な構成例を示す概念図である。
図2】水質画像センサにおけるサンプリング水槽から観測水槽までの構成例を示すブロック図である。
図3】サンプリング水槽の構成例を示す概念図である。
図4】観測水槽が水中に配置される例を示す模式図である。
図5】監視部によってなされる被観測水の水質監視方法の一例を説明する図である。
図6】第1の実施形態の温度調節方法が適用された水質画像センサの動作例を示すフローチャートである。
図7】第2の実施形態の温度調節方法が適用された水質画像センサの部分的な構成例を示す概念図である。
図8】水質画像センサにおけるサンプリング水槽から観測水槽までの構成例を示すブロック図である。
図9】第2の実施形態の変形例1における水質画像センサの部分的な構成例を示す概念図である。
図10】第2の実施形態の変形例1における水質画像センサにおけるサンプリング水槽から観測水槽までの構成例を示すブロック図である。
図11】第2の実施形態の変形例2における水質画像センサにおけるサンプリング水槽から観測水槽までの構成例を示すブロック図である。
図12】第2の実施形態の変形例3における水質画像センサの部分的な構成例を示す概念図である。
図13】パイプを折り曲げて角コイル状に形成されたジャケットの構成例を示す平面図である。
図14】第3の実施形態の温度調節方法が適用された水質画像センサの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の各実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
第1の実施形態の温度調節方法が適用された水質画像センサについて説明する。
【0013】
図1は、第1の実施形態の温度調節方法が適用された水質画像センサの部分的な構成例を示す概念図である。
【0014】
図2は、水質画像センサにおけるサンプリング水槽から観測水槽までの構成例を示すブロック図である。
【0015】
図3は、サンプリング水槽の構成例を示す概念図である。
【0016】
本実施形態の水質画像センサ10は、図1に例示されるように、光源12、観測水槽14、接眼レンズ16、鏡筒18、撮像部20、および監視部22を備えている。
【0017】
サンプリング水槽30は、図3に例示されるように、例えば上下水道に接続された導入配管31を介して、上下水道からの試料水Aを受け取り、試料水Aから、観測水槽14の容積に対応する量の試料水Aをサンプリングし、サンプリングした試料水Aを、被観測水Sとして、サンプリング配管33を介して、観測水槽14へ向けて送液する。
【0018】
また、サンプリング水槽30では、サンプリング配管33の取込口を覆うように、金属メッシュ32が設けられている。これによって、試料水Aに含まれる粒径の大きな粒子等が、被観測水Sとともに観測水槽14へ送液されないようにしている。
【0019】
また、サンプリング水槽30には、堰34および排出配管35が設けられており、堰34を越流した試料水Aは、排出配管35を介して、サンプリング水槽30から排出される。また、堰34の高さは、サンプリング配管33の取込口の先端よりも高くなっているので、サンプリング水槽30内における試料水Aの液位は、サンプリング配管33の取込口が常に液浸するように、サンプリング配管33の取込口よりも高く一定に保たれる。
【0020】
図2に示すように、サンプリング水槽30から観測水槽14までのサンプリング配管33の途中には、温度センサ42および熱交換器40が設けられ、さらに観測水槽14の外側近傍には温度センサ44が設けられている。
【0021】
温度センサ42は、サンプリング配管33において、熱交換器40よりも上流側に設けられ、観測水槽14に導入される被観測水Sの温度を測定し、測定結果を、熱交換器40へ出力する。
【0022】
温度センサ44は、観測水槽14の外側近傍に設けられ、観測水槽14の周囲の温度を測定し、測定結果を、熱交換器40へ出力する。
【0023】
熱交換器40は、温度センサ42によって測定される被観測水Sの温度と、温度センサ44によって測定される観測水槽14の周囲の温度とを一致させるように、観測水槽14に導入される被観測水Sと熱交換を行う。
【0024】
熱交換器40は、この熱交換のために、加熱部および冷却部を備えている。加熱部は、例えば、ヒータによって実現できる。また、冷却部は、冷却水による冷却によって実現できる。また、加熱と冷却との両機能を有するペルチェ素子によっても実現できる。
【0025】
そして、熱交換器40は、温度センサ42からの測定結果が、温度センサ44からの測定結果よりも低い場合には、加熱部によって被観測水Sを加熱し、逆に、温度センサ42からの測定結果が、温度センサ44からの測定結果よりも高い場合には、冷却部によって被観測水Sを冷却する。
【0026】
このようにして、サンプリング水槽30から送液された被観測水Sは、熱交換器40によって、観測水槽14の周囲の温度と一致するように熱交換された後に、観測水槽14へ導入される。
【0027】
観測水槽14は、被観測水Sを保持するための、例えば石英セル製の透明な容器である。被観測水Sの中には、水質画像センサ10によって水質観測される観測対象が含まれている。観測対象は、前述したように、被観測水S中の微生物や、微小の浮遊物である。
【0028】
観測水槽14は、空気環境に配置されることも、水中環境に配置されることもある。したがって、温度センサ44は、観測水槽14が空気環境に配置された場合、観測水槽14の周囲の気温を測定する一方、観測水槽14が水中環境に配置された場合、観測水槽14の周囲の水温を測定する。
【0029】
図4は、観測水槽が水中に配置される例を示す模式図である。
【0030】
観測水槽14を水中環境に配置する場合には、図4に例示するように、内部に水を含む専用容器48内に、周囲が水で囲まれるように観測水槽14を配置することによって実現する。なお、図4では、煩雑化を避けるために、観測水槽14以外の図示を省略している。
【0031】
図1に戻って示すように、撮像部20は、観測水槽14内の被観測水Sを撮像する部位であって、例えば、CCDカメラ、C-MOSカメラなどの撮像素子によって実現できる。
【0032】
光源12は、撮像部20による撮像のために、観測水槽14を照明する。観測水槽14は、前述したように、例えば石英セル製の透明容器であるので、光源12からの光によって、観測水槽14内の被観測水Sを照明することができる。
【0033】
鏡筒18の先端、すなわち、観測水槽14側には、接眼レンズ16が固定されている。また、鏡筒18は、非観測水槽側(図1中における左側)が、撮像部20本体内に収納可能に構成されており、図1中左右方向に伸縮可能に移動できる。これによって、観測水槽14に保持されている被観測水S内の観測対象と、接眼レンズ16との間の距離を調整できるので、接眼レンズ16のピント調整が可能となり、接眼レンズ16によって鮮明に拡大表示された観測対象の像を、撮像部20に送ることを可能としている。
【0034】
これによって、撮像部20は、被観測水Sに含まれる観測対象を、鮮明に撮像できる。撮像部20は、撮像結果、すなわち、撮像された画像を、監視部22へ出力する。
【0035】
監視部22は、撮像部20による撮像結果に基づいて、被観測水Sの水質を監視する部位であって、例えば、コンピュータによって実現できる。
【0036】
以下に、監視部22によってなされる被観測水Sの水質監視方法を、図5を用いて説明する。
【0037】
図5は、監視部によってなされる被観測水の水質監視方法の一例を説明する図である。
【0038】
図5(a)は、観測水槽14内において熱対流がない状態において、観測水槽14に対して水平方向に電位を印加した場合における被観測水S中の観測対象Wの移動を示す図である。
【0039】
観測水槽14内において熱対流がない状態において、観測水槽14に対して、図示しない電位印加手段によって、水平方向(すなわち、撮像部20によって左右方向として撮像される方向)に電位を印加した場合、図5(a)に示すように、被観測水S中の観測対象Wは、水平方向に移動する。監視部22は、この水平方向における移動速度をリアルタイムで算出することによって、被観測水Sの水質の変動を監視することができる。
【0040】
一方、図5(b)および図5(c)は、観測水槽14内において熱対流がある状態において、観測水槽14に対して水平方向に電位を印加した場合における被観測水S中の観測対象Wの移動を示す図である。図5(b)は、熱対流として上昇流がある場合であり、図5(c)は、熱対流として下降流がある場合である。
【0041】
熱対流として上昇流がある状態では、観測対象Wは、上昇する。したがって、この状態で観測水槽14に対して水平方向に電位を印加した場合、図5(b)に示すように、観測対象Wは、上昇しながら水平方向に移動するので、監視部22によって算出される水平方向における移動速度は、実際の値よりも低くなる。
【0042】
熱対流として下降流がある状態では、観測対象Wは、下降する。したがって、この状態で観測水槽14に対して水平方向に電位を印加した場合、図5(c)に示すように、観測対象Wは、下降しながら水平方向に移動するので、同様に、監視部22によって算出される水平方向における移動速度は、実際の値よりも低くなる。
【0043】
実施形態の水質画像センサ10によれば、熱交換器40によって、観測水槽14の周囲の温度と一致させるように熱交換された被観測水Sが観測水槽14に導入される。したがって、観測水槽14では、熱対流が発生しないか、あるいは非常に小さいので、観測水槽14に対して水平方向に電位を印加した場合の観測対象Wの移動は、図5(a)に示すようになる。
【0044】
したがって、監視部22によって算出される水平方向における移動速度は、実際の値に近いものとなるので、本実施形態の水質画像センサ10は、被観測水Sの水質の変動に関して、信頼性の高い監視結果を得ることができる。
【0045】
次に、以上のように構成した第1の実施形態の温度調節方法が適用された水質画像センサの動作例を説明する。
【0046】
図6は、第1の実施形態の温度調節方法が適用された水質画像センサの動作例を示すフローチャートである。
【0047】
本実施形態の水質画像センサ10によって、例えば、上下水道水の水質を監視する際には、図3に例示されるように、サンプリング水槽30において、上下水道に接続された導入配管31を介して、上下水道水を試料水Aとして取得する(S1)。
【0048】
サンプリング水槽30では、試料水Aから、観測水槽14の容積に対応する量の試料水Aがサンプリングされ、サンプリングされた試料水Aが、被観測水Sとして、サンプリング配管33を介して、観測水槽14へ向けて送液される(S2)。
【0049】
図2に示すように、サンプリング水槽30から観測水槽14までのサンプリング配管33の途中には、温度センサ42および熱交換器40が設けられている。熱交換器40は、熱交換を行うために、加熱部および冷却部を備えている。
【0050】
サンプリング配管33を介して送液されている被観測水Sは、温度センサ42によって温度が測定され、測定結果が、熱交換器40へ出力される(S3)。
【0051】
一方、熱交換器40には、温度センサ44によって測定された、観測水槽14の周囲の温度の測定結果も出力される。熱交換器40では、温度センサ42からの測定結果と、温度センサ44からの測定結果とを用いて、被観測水Sに対して、被観測水Sの温度を、観測水槽14の周囲の温度と一致させるような熱交換が行われる。
【0052】
具体的には、温度センサ42からの測定結果が、温度センサ44からの測定結果よりも低い場合(S4:<)には、熱交換器40は加熱部(例えば、ヒータ)を動作させる。これによって、被観測水Sは、加熱される(S5)。
【0053】
逆に、温度センサ42からの測定結果が、温度センサ44からの測定結果よりも高い場合(S4:>)には、熱交換器40は冷却部を動作(例えば、冷却水を循環)させる。これによって、被観測水Sは、冷却される(S6)。
【0054】
ステップS5およびステップS6の後、ステップS3の動作に戻り、ステップS3からステップS5またはステップS6までの動作が、温度センサ42からの測定結果が、温度センサ44からの測定結果と等しくなる(S4:=)まで繰り返され、その後、被観測水Sが、観測水槽14に導入される(S7)。したがって、観測水槽14内の被観測水Sの温度と、観測水槽14の周囲の温度とは一致化が図られている。
【0055】
観測水槽14には、図示しない電位印加手段によって、水平方向に電位が印加されている。
【0056】
また、観測水槽14の近傍には光源12が設けられ、観測水槽14は、例えば石英セルのような透明材料で製造されているので、観測水槽14に保持された被観測水Sは、光源12からの光によって明るく照明される。さらに、鏡筒18の伸縮によってピント調整された接眼レンズ16によって、被観測水Sに含まれる微生物や微小の浮遊物のような観測対象Wが鮮明に拡大表示された画像が、撮像部20によって撮像され、撮像結果が、監視部22へ出力される(S8)。
【0057】
監視部22では、撮像部20による撮像結果に基づいて、被観測水Sの水質が監視される(S9)。
【0058】
このように、観測水槽14に導入される被観測水Sの温度は、観測水槽14の周囲の温度と一致するように制御されるので、観測水槽14内では熱対流は発生しない。したがって、観測水槽14に対して水平方向に電位を印加された場合、観測水槽14中の観測対象Wの移動は、図5(a)に示すように、水平方向となる。
【0059】
監視部22では、この水平方向における移動速度が、リアルタイムで算出されることによって、被観測水Sの水質の変動が監視される。
【0060】
もしも観測水槽14に導入される被観測水Sの温度と、観測水槽14の周囲の温度とが一致していない場合、観測水槽14では、熱対流によって、上昇流または下降流が発生するので、観測対象Wは、図5(b)や図5(c)に示すように、電位印加により水平方向に移動することに加えて、上下方向の移動も生じるために、監視部22によって算出される水平方向における移動速度は、実際の値よりも低くなる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の水質画像センサ10によれば、観測水槽14に導入される被観測水Sの温度は、観測水槽14の周囲の温度と一致するように制御されるので、観測水槽14内では熱対流は発生しない。したがって、観測水槽14に対して水平方向に電位を印加した場合、観測水槽14内で観測対象Wは、上下方向には移動しないので、監視部22は、観測水槽14中の観測対象Wの水平方向における移動速度を、高い精度で算出することができる。その結果、被観測水Sの水質の変動に関して、信頼性の高い監視結果を得ることが可能となる。
【0062】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の温度調節方法が適用された水質画像センサについて説明する。
【0063】
以下の説明では、第1の実施形態で説明した部分と同一部分については、同一符号を用いて示し、重複説明を避け、異なる箇所について説明する。
【0064】
図7は、第2の実施形態の温度調節方法が適用された水質画像センサの部分的な構成例を示す概念図である。
【0065】
図8は、水質画像センサにおけるサンプリング水槽から観測水槽までの構成例を示すブロック図である。
【0066】
第2の実施形態の水質画像センサ10Aは、空気環境において設置されるものであって、第1の実施形態の水質画像センサ10とは異なり、光源12、観測水槽14、接眼レンズ16、鏡筒18、撮像部20、および熱交換器41の周囲を、断熱材で構成された断熱カバー50で覆うとともに、温度センサ42、44を省略した構成をしている。また、第1の実施形態同様、図示していないが、観測水槽14に電位を印加する電位印加手段も備えている。
【0067】
水質画像センサ10Aは、水質画像センサ10と同様に、サンプリング水槽30によって取得された試料水Aの一部を、サンプリング配管33を介して、観測水槽14へ向けて送液する。しかしながら、水質画像センサ10とは異なり、サンプリング配管33には、温度センサ42も熱交換器40も設けられていない。
【0068】
また、水質画像センサ10Aでは、サンプリング水槽30からの排出配管35が、断熱カバー50の内側に取り込まれるように設けられている。排出配管35には、断熱カバー50の内側において、空気循環器41aを備えた熱交換器41が設けられている。空気循環器41aは、例えばファンによって実現され、断熱カバー50の内側の空気を循環させる。
【0069】
また、断熱カバー50は、断熱カバー50の外側と内側との間での熱の移動を遮断する。
【0070】
なお、図7でも、煩雑化を避けるために、サンプリング配管33、排出配管35、および熱交換器41を省略している。
【0071】
以上のように構成した第2の実施形態の温度調節方法が適用された水質画像センサによれば、観測水槽14内の被観測水Sと、断熱カバー50の内側に取り込まれる試料水Aとは、ともにサンプリング水槽30から供給されるので、それぞれの水温は同一であるとみなされる。
【0072】
そして、断熱カバー50の内側では、断熱カバー50の外側との熱の出入りが遮断された状態で、空気循環器41aによって空気が循環されるので、断熱カバー50の内側において、断熱カバー50の内側の空気と試料水Aとの間での熱交換が促進される。
【0073】
この熱交換によって、最終的には、断熱カバー50の内側の空気の温度と、観測水槽14内の被観測水Sとの温度の一致化が図られるので、観測水槽14内での熱対流の発生が阻止される。
【0074】
その結果、第1の実施形態で説明したように、観測水槽14内で観測対象Wは、上下方向には移動しなくなるので、監視部22は、観測水槽14中の観測対象Wの水平方向における移動速度を、高い精度で算出することができ、もって、被観測水Sの水質の変動に関して、信頼性の高い監視結果を得ることが可能となる。
【0075】
(第2の実施形態の変形例1)
第2の実施形態の変形例1について説明する。
【0076】
図9は、第2の実施形態の変形例1における水質画像センサの部分的な構成例を示す概念図である。
【0077】
図10は、第2の実施形態の変形例1における水質画像センサにおけるサンプリング水槽から観測水槽までの構成例を示すブロック図である。
【0078】
図9は、図7に対応しており、図10は、図8に対応しているので、それぞれ相違点のみ説明する。
【0079】
本変形例における水質画像センサは、図10に例示するように、図8に示す構成とは異なり、サンプリング水槽30からの排出配管35は、断熱カバー50の内側には取り込まれない。代わりに、冷却水Cを貯液した冷却水水槽60を備え、冷却水水槽60からの冷却水Cが内部を流れる排出配管62が、断熱カバー50の内部に取り込まれるように構成される。
【0080】
排出配管62には、熱交換器41が設けられている。熱交換器41は、図10のように、断熱カバー50の内側に設けられても、図9のように、断熱カバー50と一体化されて設けられていても良い。熱交換器41は、例えばファンのように、断熱カバー50の内側の空気を循環させる空気循環器41aと、例えばペルチェ素子やヒートシンクのような加熱冷却素子41bとを備えている。
【0081】
サンプリング水槽30と冷却水水槽60とは、同一環境に設置する。これによって、観測水槽14内の被観測水Sの水温と、断熱カバー50の内側に取り込まれる冷却水Cの水温とは同一となる。
【0082】
以上のように構成した第2の実施形態の変形例1の水質画像センサでも、断熱カバー50の内側では、断熱カバー50の外側との熱の出入りが遮断された状態で、空気循環器41aによって空気が循環されるので、断熱カバー50の内側において、断熱カバー50の内側の空気と冷却水Cとの間での熱交換が促進される。
【0083】
この熱交換によって、最終的には、断熱カバー50の内側の空気の温度と、観測水槽14内の被観測水Sとの温度の一致化が図られるので、観測水槽14内での熱対流の発生が阻止される。
【0084】
その結果、第1の実施形態で説明したように、観測水槽14内で観測対象Wは、上下方向には移動しなくなるので、監視部22は、観測水槽14中の観測対象Wの水平方向における移動速度を、高い精度で算出することができ、もって、被観測水Sの水質の変動に関して、信頼性の高い監視結果を得ることが可能となる。
【0085】
(第2の実施形態の変形例2)
第2の実施形態の変形例2について説明する。
【0086】
図11は、第2の実施形態の変形例2における水質画像センサにおけるサンプリング水槽から観測水槽までの構成例を示すブロック図である。
【0087】
図11は、図10に対応しているので、図10との相違点のみ説明する。
【0088】
本変形例における水質画像センサは、図11図10との比較から明らかないように、変形例1の水質画像センサに、温度センサ42、44を設けた構成をしている。
【0089】
温度センサ42は、サンプリング水槽30と断熱カバー50との間、すなわち断熱カバー50の外側のサンプリング配管33上に設けられており、サンプリング配管33内を流れる被観測水Sの温度を測定して、測定結果を熱交換器41へ出力する。
【0090】
温度センサ44は、断熱カバー50の内側の、観測水槽14の近傍に設けられており、断熱カバー50の内側の空気の温度を測定して、測定結果を熱交換器41へ出力する。
【0091】
熱交換器41は、これら測定結果に基づいて、加熱冷却素子41bを制御することによって、被観測水Sの温度に、観測水槽14の近傍の気温を一致させる熱交換を行う。
【0092】
具体的には、温度センサ42からの測定結果(すなわち、被観測水Sの温度)の方が、温度センサ44からの測定結果(すなわち、観測水槽14の周囲の気温)よりも高い場合、観測水槽14の周囲の気温を上げるために、加熱冷却素子41bの加熱機能を動作させるによって冷却水Cを加熱する。逆に、温度センサ42からの測定結果(すなわち、被観測水Sの温度)の方が、温度センサ44からの測定結果(すなわち、観測水槽14の周囲の気温)よりも低い場合、観測水槽14の周囲の気温を下げるために、加熱冷却素子41bの冷却機能を動作させることによって冷却水Cを冷却する。
【0093】
断熱カバー50の内側の空気は、空気循環器41aによって循環されている。したがって、冷却水Cの加熱に伴い、断熱カバー50の内側の温度が上昇し、最終的には、被観測水Sの温度と、断熱カバー50の内側の空気の温度との一致化が図られる。また、冷却水Cの冷却に伴い、断熱カバー50の内側の温度が下降し、最終的には、被観測水Sの温度と、断熱カバー50の内側の空気の温度との一致化が図られる。
【0094】
これによって、観測水槽14内での熱対流の発生が阻止され、観測水槽14内で観測対象Wは、上下方向には移動しなくなるので、第1の実施形態で説明したように、監視部22は、観測水槽14中の観測対象Wの水平方向における移動速度を、高い精度で算出することができ、もって、被観測水Sの水質の変動に関して、信頼性の高い監視結果を得ることが可能となる。
【0095】
(第2の実施形態の変形例3)
第2の実施形態の変形例3について説明する。
【0096】
図12は、第2の実施形態の変形例3における水質画像センサの部分的な構成例を示す概念図である。
【0097】
本変形例の水質画像センサは、前述した変形例1および変形例2をさらに変形したものであって、断熱カバー50の内側に取り込まれる排出配管62を、断熱カバー50の内部あるいは内壁面に設けられた導水路52によって実現するものである。
【0098】
図12は、導水路52を、断熱カバー50の内壁面に設けた例を示している。
【0099】
導水路52は、例えば、1)パイプを折り曲げて角コイル状に形成されたジャケット(図13参照)、2)断熱カバー50の内壁面に切削加工により設けられた水路、3)断熱カバー50の内壁面のうち4面に配置された水冷ヒートシンク板、4)冷却水Cの入口および出口が設けられた魔法瓶構造等によって実現することができるがこれらに限定されない。
【0100】
図13は、パイプを折り曲げて角コイル状に形成されたジャケットの構成例を示す平面図である。
【0101】
図13に例示するジャケット52aは、上記1)に対応するものである。ジャケット52aの両端は、図10図11に例示されている排出配管62に接続されており、これによって、冷却水水槽60からの冷却水Cが、ジャケット52aに送られ、蛇行した経路に沿って移動することによって、断熱カバー50の内側の空気との熱交換効率を高めることができる。
【0102】
このような導水路52が設けられた断熱カバー50を、図10に示す変形例1の水質画像センサや、図11に示す変形例2の水質画像センサに適用することによって、ジャケット52a内の冷却水Cと、断滅カバー50の内側の空気との熱交換がより促進されるので、それに応じて、断滅カバー50の内側の空気の温度と、観測水槽14内の被観測水Sの温度とがより迅速に一致化される。
【0103】
その結果、観測水槽14内での熱対流を阻止できるので、本変形例の水質画像センサもまた、第1の実施形態と同様に、被観測水Sの水質の変動に関して、信頼性の高い監視結果を得ることができる。
【0104】
[第3の実施形態]
第3の実施形態の温度調節方法が適用された水質画像センサについて説明する。
【0105】
以下では、第1および第2の実施形態で説明した部分と同一部分については、同一符号を用いて示し、重複説明を避け、異なる箇所について説明する。
【0106】
第3の実施形態の水質画像センサは、温度情報に基づくことなく、撮像部20による撮像の結果に基づいて、観測水槽14内の被観測水Sの熱対流を阻止するようにしたものである。
【0107】
このため、図8および図10に例示するように、温度センサ42、44を備えていない構成において好適に適用される。
【0108】
図5(b)および図5(c)を用いて説明したように、観測水槽14内の被観測水Sの温度と、観測水槽14の周囲の温度とが一致していない場合、観測水槽14では、熱対流によって、上昇流または下降流が発生する。
【0109】
監視部22は、撮像部20による撮像の結果に基づいて、被観測水Sの鉛直方向(図中上下方向)における移動速度と、水平方向(図中左右方向)における移動速度とを算出する。鉛直方向における移動速度は、例えば、異なる時間において撮像された2つの画像における観測対象Wの、鉛直方向における移動量を、各画像が撮像された時間差で除することによって算出することができる。同様に、鉛直方向における移動速度は、例えば、異なる時間において撮像された2つの画像における観測対象Wの、鉛直方向における移動量を、各画像が撮像された時間差で除することによって算出することができる。
【0110】
観測水槽14内の被観測水Sの温度よりも、観測水槽14の周囲の温度の方が高い場合、観測水槽14の周囲から、観測水槽14の中へと熱が流入し、観測水槽14において上昇流が生じるために、鉛直方向における移動速度は正の値となる。
【0111】
逆に、観測水槽14内の被観測水Sの温度よりも、観測水槽14の周囲の温度の方が低い場合、観測水槽14の中から、観測水槽14の周囲から熱が流出し、観測水槽14において下降流が生じるために、鉛直方向における移動速度は負の値となる。
【0112】
これら移動速度の絶対値は、観測水槽14内の被観測水Sの温度と、観測水槽14の周囲の温度との差に対応する。
【0113】
熱交換器41は、被観測水Sの水平方向における移動速度が、鉛直方向における移動速度よりも大きくない場合、なるように、被観測水Sの水平方向における移動速度が、鉛直方向における移動速度よりも大きくなるまで、以下のような熱交換を行う。
【0114】
例えば、図10に示すように、熱交換器41が、加熱冷却素子41bを備えている構成においては、鉛直方向における移動速度が正の値である場合、熱交換器41は、加熱冷却素子41bに、冷却水Cを冷却させる。一方、鉛直方向における移動速度が負の値である場合、熱交換器41は、加熱冷却素子41bに、冷却水Cを加熱させる。
【0115】
空気循環器41aの動作によって、断熱カバー50内の空気は循環されるので、冷却水Cが冷却されると、それに応じて、断熱カバー50の内側の空気が冷却され、断熱カバー50内の空気の温度は、観測水槽14内の被観測水Sの温度へ接近する。逆に、冷却水Cが加熱されると、それに応じて、断熱カバー50の内側の空気が加熱され、断熱カバー50内の空気の温度は、観測水槽14内の被観測水Sの温度へ接近する。
【0116】
水平方向における移動速度が、鉛直方向における移動速度よりも大きくない場合、熱交換器41は、被観測水Sの水平方向における移動速度が、鉛直方向における移動速度よりも大きくなる(被観測水Sの移動方向が、水平方向に対して角度±45°以下になる)まで、上述したような熱交換を繰り返す。これによって、断熱カバー50内の空気の温度は、観測水槽14内の被観測水Sの温度との一致化が図られ、観測水槽14内の被観測水Sの熱対流を阻止することができる。例えば、被観測水Sの水平方向における移動速度が4μm/秒である場合、鉛直方向における移動速度は、-4~+4μm/秒の範囲内になるように制御される。
【0117】
なお、図8に示すように、熱交換器41が、空気循環器41aしか備えておらず、加熱冷却素子41bを備えていない構成では、上述したような加熱および冷却は実施できないものの、例えば、熱交換器41が、被観測水Sの鉛直方向における移動速度の絶対値に応じて、空気循環器41aの風量を動的に制御することによって代替することができる。
【0118】
具体的には、被観測水Sの鉛直方向における移動速度の絶対値が大きい場合には、大風量で、逆に、絶対値が小さい場合には、低風量で動作するように、空気循環器41aを制御する。こうすることによっても、観測水槽14内の被観測水Sの温度と、観測水槽14の周囲の温度との一致化を図ることができるので、観測水槽14内の被観測水Sの熱対流を阻止することができる。
【0119】
これによって、観測水槽14内での熱対流を阻止し、被観測水Sの水質の変動に関して、信頼性の高い監視結果を得ることができる。
【0120】
次に、以上のように構成した第3の実施形態の温度調節方法が適用された水質画像センサの動作について説明する。
【0121】
図14は、第3の実施形態の温度調節方法が適用された水質画像センサの動作例を示すフローチャートである。
【0122】
図14では、図6と同じ動作については、同じステップ番号を付すことによって、重複説明を避け、異なる動作について説明する。
【0123】
監視部22では、ステップS8において撮像部20から出力された撮像結果に基づいて、被観測水Sの鉛直方向における移動速度と、水平方向における移動速度とが算出される(S11)。
【0124】
鉛直方向における移動速度は、例えば、異なる時間において撮像された2つの画像における観測対象Wの、鉛直方向における移動量を、各画像が撮像された時間差で除することによって算出される。同様に、水平方向における移動速度は、例えば、異なる時間において撮像された2つの画像における観測対象Wの、水平方向における移動量を、各画像が撮像された時間差で除することによって算出される。
【0125】
観測水槽14内の被観測水Sの温度よりも、観測水槽14の周囲の温度の方が高い場合、鉛直方向における移動速度は正の値となり、逆に、観測水槽14内の被観測水Sの温度よりも、観測水槽14の周囲の温度の方が低い場合、鉛直方向における移動速度は負の値となる。移動速度の絶対値は、観測水槽14内の被観測水Sの温度と、観測水槽14の周囲の温度との差に対応する。
【0126】
熱交換器41では、被観測水Sの水平方向における移動速度が、鉛直方向における移動速度よりも大きくなるように、熱交換が行われる。以下の説明では、図10のように、熱交換器41が加熱冷却素子41bを備えている構成の水質画像センサを例に説明する。
【0127】
ステップS11において算出された水平方向における移動速度が、鉛直方向における移動速度よりも大きい場合(S12:Yes)、監視部22において、撮像部20による撮像結果に基づいて、被観測水Sの水質が監視される(S9)。
【0128】
一方、ステップS11において算出された水平方向における移動速度が、鉛直方向における移動速度よりも大きくない場合(S12:No)、鉛直方向における移動速度の値に応じて(S13)、熱交換器41による冷却水Cの冷却動作または加熱動作が行われる。
【0129】
具体的には、鉛直方向における移動速度が正の値である場合(S13:Yes)、熱交換器41は、加熱冷却素子41bによって、冷却水Cを冷却させる(S14)。一方、鉛直方向における移動速度が、負の値である場合(S13:No)、熱交換器41は、加熱冷却素子41bによって、冷却水Cを加熱させる(S15)。
【0130】
空気循環器41aの動作によって、断熱カバー50内の空気は循環されるので、ステップS14のように冷却水Cが冷却されると、それに応じて、断熱カバー50の内側の空気が冷却され、断熱カバー50内の空気の温度は、観測水槽14内の被観測水Sの温度へ接近する。逆に、ステップS15のように、冷却水Cが加熱されると、それに応じて、断熱カバー50の内側の空気が加熱され、断熱カバー50内の空気の温度は、観測水槽14内の被観測水Sの温度へ接近する。
【0131】
ステップS14およびステップS15の後、ステップS8の動作に戻り、ステップS8からステップS14またはステップS15までの動作が、被観測水Sの水平方向における移動速度が、鉛直方向における移動速度よりも大きくなる(被観測水Sの移動方向が、水平方向に対して角度±45°以下になる)まで繰り返されることによって、断熱カバー50内の空気の温度と、観測水槽14内の被観測水Sの温度との一致化が図られる。
【0132】
これによって、観測水槽14内での熱対流が阻止されるので、観測水槽14に対して水平方向に電位を印加された場合、観測水槽14中の観測対象Wの移動は、図5(a)に示すようになるため、監視部22は、観測水槽14中の観測対象Wの水平方向における移動速度を、高い精度で算出することができ、結果として、被観測水Sの水質の変動に関して、信頼性の高い監視結果を得ることが可能となる。
【0133】
なお、図8のように、熱交換器41が、加熱冷却素子41bを備えていない場合、上記のステップS14およびS15は省略されるが、熱交換器41が、空気循環器41aを、ステップS11において算出された鉛直方向における移動速度の絶対値に応じて風量を動的に制御すること、すなわち、絶対値が大きい場合には、大風量で動作し、絶対値が小さい場合には、小風量で動作するように制御することによって、観測水槽14内の被観測水Sの温度と、観測水槽14の周囲の温度との一致化を促進することが可能である。
【0134】
このように、第3の実施形態の温度調節方法が適用された水質画像センサは、温度情報を使わずに、撮像部20による撮像の結果に基づいて、観測水槽14内の被観測水Sの温度と、観測水槽14の周囲の温度とを一致させるように熱交換を実施できるので、例えば図2図11に例示されているような温度センサ42、44は不要となる。したがって、温度センサ42、44を備えていない簡素化された構成で実現することができる。また、図2のように、断熱カバー50を備えていない構成であっても、温度センサ42、44を排除した構成で実現することが可能である。
【0135】
以上説明したように、本実施形態の水質画像センサによれば、温度情報を使わなくても、観測水槽14内での熱対流を阻止することができ、もって、第1の実施形態と同様に、被観測水Sの水質の変動に関して、信頼性の高い監視結果を得ることができる。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0137】
10、10A・・水質画像センサ、12・・光源、14・・観測水槽、16・・接眼レンズ、18・・鏡筒、20・・撮像部、22・・監視部、30・・サンプリング水槽、31・・導入配管、32・・金属メッシュ、34・・堰、35・・排出配管、40、41・・熱交換器、41a・・空気循環器、41b・・加熱冷却素子、42、44・・温度センサ、48・・専用容器、50・・断熱カバー、52・・導水路、52a・・ジャケット、60・・冷却水水槽、62・・排出配管、A・・試料水、C・・冷却水、S・・被観測水、W・・観測対象
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