(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】発泡成形方法、発泡成形用射出成形機の制御方法及び発泡成形用射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 44/00 20060101AFI20240716BHJP
B29C 44/60 20060101ALI20240716BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B29C44/00 D
B29C44/60
B29C45/00
(21)【出願番号】P 2021042726
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 伸行
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-207094(JP,A)
【文献】特開2005-271448(JP,A)
【文献】特開2019-198993(JP,A)
【文献】特開2019-199011(JP,A)
【文献】特開2008-12803(JP,A)
【文献】特開2003-39474(JP,A)
【文献】特開昭59-109335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00
B29C 44/60
B29C 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型によって形成されるキャビティに、一様に分散した気泡を含む溶融樹脂を射出して発泡成形品を成形する発泡成形方法であって、
内部にスクリュが配置されて前記溶融樹脂を混練するバレルに設けられて前記溶融樹脂を射出するノズル部を開閉するシャットオフノズルを開いた状態で、前記スクリュを後退させて前記ノズル部から前記バレル内に大気を取り込む手順と、
前記シャットオフノズルを閉じて前記スクリュを前進させ、前記バレル内に取り込んだ前記大気を前記バレル内の前記溶融樹脂に拡散する手順と、
前記シャットオフノズルを閉じた状態で前記スクリュを回転させながら後退させることにより、前記大気を前記気泡として前記溶融樹脂内で分散させつつ前記溶融樹脂を前側に送る手順と、
前記シャットオフノズルを開き、分散した前記気泡を含む前記溶融樹脂を前記キャビティへ射出する手順と、
を含むことを特徴とする発泡成形方法。
【請求項2】
金型によって形成されるキャビティに、一様に分散した気泡を含む溶融樹脂を射出して発泡成形品を成形する発泡成形方法であって、
内部で前記溶融樹脂を混練するバレルの内部に配置されるスクリュを後退させ、前記バレルにおける前記スクリュよりも前側に設けられて前記バレル内への大気の供給が可能な状態と前記バレル内へ前記大気の供給が不可の状態との切り替えが可能な供給口を開いて、前記供給口から前記バレル内に前記大気を取り込む手順と、
前記スクリュを前進させて前記供給口を閉じ、前記バレル内に取り込んだ前記大気を前記バレル内の前記溶融樹脂に拡散する手順と、
前記供給口を閉じた状態で前記スクリュを回転させながら後退させることにより、前記大気を前記気泡として前記溶融樹脂内で分散させつつ前記溶融樹脂を前側に送る手順と、
分散した前記気泡を含む前記溶融樹脂を前記キャビティへ射出する手順と、
を含むことを特徴とする発泡成形方法。
【請求項3】
金型によって形成されるキャビティに、一様に分散した気泡を含む溶融樹脂を射出して発泡成形品を成形する発泡成形方法であって、
内部で前記溶融樹脂を混練するバレルの内部に配置されるスクリュを後退させ、前記バレルにおける前記スクリュよりも前側に設けられて前記バレル内への圧縮ガスの供給が可能な状態と前記バレル内へ前記圧縮ガスの供給が不可の状態との切り替えが可能な供給口を開いて、前記供給口から前記バレル内に前記圧縮ガスを取り込む手順と、
前記スクリュを前進させて前記供給口を閉じ、前記バレル内に取り込んだ前記圧縮ガスを前記バレル内の前記溶融樹脂に拡散する手順と、
前記供給口を閉じた状態で前記スクリュを回転させながら後退させることにより、前記圧縮ガスを前記気泡として前記溶融樹脂内で分散させつつ前記溶融樹脂を前側に送る手順と、
分散した前記気泡を含む前記溶融樹脂を前記キャビティへ射出する手順と、
を含むことを特徴とする発泡成形方法。
【請求項4】
前記圧縮ガスは、圧力が1MPa未満である請求項3に記載の発泡成形方法。
【請求項5】
金型によって形成されるキャビティに、一様に分散した気泡を含む溶融樹脂を射出して発泡成形品を成形する発泡成形用射出成形機の制御方法であって、
内部にスクリュが配置されて前記溶融樹脂を混練するバレルに設けられて前記溶融樹脂を射出するノズル部を開閉するシャットオフノズルを開いた状態で、前記スクリュを後退させて前記ノズル部から前記バレル内に大気を取り込む手順と、
前記シャットオフノズルを閉じて前記スクリュを前進させ、前記バレル内に取り込んだ前記大気を前記バレル内の前記溶融樹脂に拡散する手順と、
前記シャットオフノズルを閉じた状態で前記スクリュを回転させながら後退させることにより、前記大気を前記気泡として前記溶融樹脂内で分散させつつ前記溶融樹脂を前側に送る手順と、
前記シャットオフノズルを開き、分散した前記気泡を含む前記溶融樹脂を前記キャビティへ射出する手順と、
を含むことを特徴とする発泡成形用射出成形機の制御方法。
【請求項6】
一様に分散した気泡を含む溶融樹脂より発泡成形品を成形するキャビティを形成する金型と、
内部で前記溶融樹脂を混練するバレルと、
前記バレル内に回転可能に配置され、且つ、前記バレル内で回転の軸方向に移動可能なスクリュと、
前記バレルに設けられ、前記バレル内の前記溶融樹脂を前記キャビティへ射出するノズル部と、
前記ノズル部を開閉するシャットオフノズルと、
前記スクリュと前記シャットオフノズルの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記バレル内の前記溶融樹脂を前記キャビティへ射出する際には、
前記シャットオフノズルを開いた状態で前記スクリュを後退させることにより前記ノズル部から前記バレル内に大気を取り込み、
前記シャットオフノズルを閉じて前記スクリュを前進させることにより、前記バレル内に取り込んだ前記大気を前記バレル内の前記溶融樹脂に拡散し、
前記シャットオフノズルを閉じた状態で前記スクリュを回転させながら後退させることにより、前記大気を前記気泡として前記溶融樹脂内で分散させつつ前記溶融樹脂を前側に送り、
分散した前記気泡を含む前記溶融樹脂を、前記シャットオフノズルを開いて前記キャビティへ射出することを特徴とする発泡成形用射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形品を成形する発泡成形方法、発泡成形用射出成形機の制御方法及び発泡成形用射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、射出成形機を用いた樹脂の成形の中には、窒素や二酸化炭素を発泡材とした物理発泡と呼ばれる射出発泡成形がある。このような発泡成形は、発泡材を発泡させながら成形を行うことにより、成形品の軽量化や使用材料の低減等の効果を得ることができる。射出成形機を用いて発泡成形を行う際において、溶融樹脂に発泡材を注入する方法としては、例えば、特許文献1~3に示すように、発泡材を加圧して射出成形機の加熱バレルに供給する方法が提案されている。また、他の方法としては、特許文献4、5に示すように、導入速度調整容器やスクリュに飢餓ゾーンを設け、窒素や二酸化炭素等の発泡材が貯蔵されたボンベから、導入速度調整容器を介して可塑化シリンダ内における飢餓ゾーンに発泡材を注入する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2625576号公報
【文献】特許第3788750号公報
【文献】特許第4144916号公報
【文献】特許第6533009号公報
【文献】特開2019-104125号公報
【文献】特開2019-198993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発泡成形を行う際に、発泡成形専用の射出成形機や、高圧ガス発生装置や導入速度調整容器などの装置を用いたり、飢餓ゾーンを有するスクリュを用いたりして発泡成形を行う場合、高額な初期投資費用が発生する。このため、射出成形機を用いて発泡成形を行う場合、コスト面で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、発泡成形を行う際におけるコストの低減を図ることのできる発泡成形方法、発泡成形用射出成形機の制御方法及び発泡成形用射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る発泡成形方法は、金型によって形成されるキャビティに、一様に分散した気泡を含む溶融樹脂を射出して発泡成形品を成形する発泡成形方法であって、内部にスクリュが配置されて前記溶融樹脂を混練するバレルに設けられて前記溶融樹脂を射出するノズル部を開閉するシャットオフノズルを開いた状態で、前記スクリュを後退させて前記ノズル部から前記バレル内に大気を取り込む手順と、前記シャットオフノズルを閉じて前記スクリュを前進させ、前記バレル内に取り込んだ前記大気を前記バレル内の前記溶融樹脂に拡散する手順と、前記シャットオフノズルを閉じた状態で前記スクリュを回転させながら後退させることにより、前記大気を前記気泡として前記溶融樹脂内で分散させつつ前記溶融樹脂を前側に送る手順と、前記シャットオフノズルを開き、分散した前記気泡を含む前記溶融樹脂を前記キャビティへ射出する手順と、を含む。
【0007】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る発泡成形方法は、金型によって形成されるキャビティに、一様に分散した気泡を含む溶融樹脂を射出して発泡成形品を成形する発泡成形方法であって、内部で前記溶融樹脂を混練するバレルの内部に配置されるスクリュを後退させ、前記バレルにおける前記スクリュよりも前側に設けられて前記バレル内への大気の供給が可能な状態と前記バレル内へ前記大気の供給が不可の状態との切り替えが可能な供給口を開いて、前記供給口から前記バレル内に前記大気を取り込む手順と、前記スクリュを前進させて前記供給口を閉じ、前記バレル内に取り込んだ前記大気を前記バレル内の前記溶融樹脂に拡散する手順と、前記供給口を閉じた状態で前記スクリュを回転させながら後退させることにより、前記大気を前記気泡として前記溶融樹脂内で分散させつつ前記溶融樹脂を前側に送る手順と、分散した前記気泡を含む前記溶融樹脂を前記キャビティへ射出する手順と、を含む。
【0008】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る発泡成形方法は、金型によって形成されるキャビティに、一様に分散した気泡を含む溶融樹脂を射出して発泡成形品を成形する発泡成形方法であって、内部で前記溶融樹脂を混練するバレルの内部に配置されるスクリュを後退させ、前記バレルにおける前記スクリュよりも前側に設けられて前記バレル内への圧縮ガスの供給が可能な状態と前記バレル内へ前記圧縮ガスの供給が不可の状態との切り替えが可能な供給口を開いて、前記供給口から前記バレル内に前記圧縮ガスを取り込む手順と、前記スクリュを前進させて前記供給口を閉じ、前記バレル内に取り込んだ前記圧縮ガスを前記バレル内の前記溶融樹脂に拡散する手順と、前記供給口を閉じた状態で前記スクリュを回転させながら後退させることにより、前記圧縮ガスを前記気泡として前記溶融樹脂内で分散させつつ前記溶融樹脂を前側に送る手順と、分散した前記気泡を含む前記溶融樹脂を前記キャビティへ射出する手順と、を含む。
【0009】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る発泡成形用射出成形機の制御方法は、金型によって形成されるキャビティに、一様に分散した気泡を含む溶融樹脂を射出して発泡成形品を成形する発泡成形用射出成形機の制御方法であって、内部にスクリュが配置されて前記溶融樹脂を混練するバレルに設けられて前記溶融樹脂を射出するノズル部を開閉するシャットオフノズルを開いた状態で、前記スクリュを後退させて前記ノズル部から前記バレル内に大気を取り込む手順と、前記シャットオフノズルを閉じて前記スクリュを前進させ、前記バレル内に取り込んだ前記大気を前記バレル内の前記溶融樹脂に拡散する手順と、前記シャットオフノズルを閉じた状態で前記スクリュを回転させながら後退させることにより、前記大気を前記気泡として前記溶融樹脂内で分散させつつ前記溶融樹脂を前側に送る手順と、前記シャットオフノズルを開き、分散した前記気泡を含む前記溶融樹脂を前記キャビティへ射出する手順と、を含む。
【0010】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る発泡成形用射出成形機は、一様に分散した気泡を含む溶融樹脂より発泡成形品を成形するキャビティを形成する金型と、内部で前記溶融樹脂を混練するバレルと、前記バレル内に回転可能に配置され、且つ、前記バレル内で回転の軸方向に移動可能なスクリュと、前記バレルに設けられ、前記バレル内の前記溶融樹脂を前記キャビティへ射出するノズル部と、前記ノズル部を開閉するシャットオフノズルと、前記スクリュと前記シャットオフノズルの動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記バレル内の前記溶融樹脂を前記キャビティへ射出する際には、前記シャットオフノズルを開いた状態で前記スクリュを後退させることにより前記ノズル部から前記バレル内に大気を取り込み、前記シャットオフノズルを閉じて前記スクリュを前進させることにより、前記バレル内に取り込んだ前記大気を前記バレル内の前記溶融樹脂に拡散し、前記シャットオフノズルを閉じた状態で前記スクリュを回転させながら後退させることにより、前記大気を前記気泡として前記溶融樹脂内で分散させつつ前記溶融樹脂を前側に送り、分散した前記気泡を含む前記溶融樹脂を、前記シャットオフノズルを開いて前記キャビティへ射出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る発泡成形方法、発泡成形用射出成形機の制御方法及び発泡成形用射出成形機は、発泡成形を行う際におけるコストの低減を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る発泡成形用射出成形機の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る発泡成形用射出成形機の装置構成を示す要部断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る発泡成形用射出成形機の装置構成を示す要部平面図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る発泡成形用射出成形機を用いて発泡成形を行う際における手順を示すフロー図である。
【
図7】
図7は、加熱バレルを後退させた状態を示す模式図である。
【
図8】
図8は、スクリュを後退させた状態を示す模式図である。
【
図9】
図9は、シャットオフノズルを閉じてスクリュを前進させた状態を示す模式図である。
【
図10】
図10は、スクリュを回転させながら後退させる状態を示す説明図である。
【
図11】
図11は、計量工程における加熱バレル内の溶融樹脂の圧力分布についての説明図である。
【
図12】
図12は、計量を行った溶融樹脂を射出する状態を示す説明図である。
【
図13】
図13は、溶融樹脂の射出を行う際におけるチェックリングの状態を示す説明図である。
【
図14】
図14は、実施形態2に係る発泡成形用射出成形機が有する加熱バレルの要部模式図である。
【
図15】
図15は、実施形態2に係る発泡成形用射出成形機を用いて発泡成形を行う際における手順を示すフロー図である。
【
図16】
図16は、実施形態3に係る発泡成形用射出成形機が有する加熱バレルの要部模式図である。
【
図17】
図17は、実施形態3に係る発泡成形用射出成形機を用いて発泡成形を行う際における手順を示すフロー図である。
【
図18】
図18は、実施形態2に係る発泡成形用射出成形機の変形例であり、圧縮ガスの供給にボンベを用いる場合の説明図である。
【
図19】
図19は、発泡成形の実験により得られた発泡成形サンプルの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示に係る発泡成形用射出成形機の制御方法及び発泡成形用射出成形機の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る発泡成形用射出成形機1の斜視図である。
図2は、実施形態1に係る発泡成形用射出成形機1の装置構成を示す要部断面図である。
図3は、実施形態1に係る発泡成形用射出成形機1の装置構成を示す要部平面図である。なお、以下の説明では、発泡成形用射出成形機1の通常の使用状態における上下方向を、発泡成形用射出成形機1における上下方向Zとして説明し、発泡成形用射出成形機1の通常の使用状態における上側を、発泡成形用射出成形機1における上側とし、発泡成形用射出成形機1の通常の使用状態における下側を、発泡成形用射出成形機1における下側として説明する。また、以下の説明では、発泡成形用射出成形機1の長手方向Yを、発泡成形用射出成形機1を有する各部においても長手方向Yとして説明し、発泡成形用射出成形機1の上下方向Zと長手方向Yとの双方に直交する方向を、発泡成形用射出成形機1における幅方向Xとして説明する。
【0015】
<発泡成形用射出成形機1>
本実施形態1に係る発泡成形用射出成形機1は、ベース5と、ベース5上に配置された射出装置10及び型締装置15等を有して構成されている。また、発泡成形用射出成形機1には、長手方向Yにおける中央付近に、発泡成形用射出成形機1の各種情報を表示する表示部101と、オペレータが発泡成形用射出成形機1に対して入力操作を行う際に用いる入力部102とが配置されている。
【0016】
ベース5は、長手方向が発泡成形用射出成形機1における長手方向Yとなる略直方体の形状で形成されており、ベース5の上面には、第1レール6が配置されている。第1レール6は、ベース5上で幅方向Xに離間して2本が配置されており、2本の第1レール6は、いずれもベース5の長手方向に沿って延在して形成されている。射出装置10は、第1レール6上に、第1レール6の延在方向に沿って移動自在に載置されており、これにより、射出装置10は、長手方向Yに移動自在に配置されている。
【0017】
型締装置15は、ベース5上における、長手方向Yにおける射出装置10の一方側に配置されている。型締装置15は型締機構を備え、型締機構に組み付けられた金型16(
図4参照)を開閉させる。型締装置15は、サーボモータ駆動方式が好ましいが、油圧駆動方式であってもよい。本実施形態1に係る発泡成形用射出成形機1は、射出装置10及び型締装置15の外側にカバーを有しており、
図1は、射出装置10と型締装置15とがそれぞれカバーで覆われた状態で図示されている。
【0018】
<射出装置10>
以下の説明では、長手方向Yにおいて射出装置10に対して型締装置15が位置する側を前方、或いは前側とし、長手方向Yにおいて射出装置10に対して型締装置15が位置する側の反対側を後方、或いは後ろ側として説明する。
【0019】
射出装置10は、フレーム20と、加熱バレル50と、スクリュ60と、スクリュ60を回転させる回転機構70と、スクリュ60を前後進させる前後進機構80と、射出装置10の推進機構40とを備えている。フレーム20は、基台21と、基台21上に取り付けられた上フレーム30とを有して形成されている。基台21は、上下方向Zに偏平な枠体になっており、長手方向Yにおける両側と幅方向Xにおける両側との4箇所に、脚部24が配置されている。4箇所の脚部24は、ベース5上に配置される2本の第1レール6上に、第1レール6の延在方向に沿って移動自在に載置されている。これにより、基台21は、ベース5に対して長手方向Yに摺動自在に支持されている。
【0020】
推進機構40は、駆動用電動機41と、ボールねじ機構43とを有している。駆動用電動機41は、基台21における長手方向Yの後ろ側に位置する後壁23に取り付けられている。駆動用電動機41は、駆動軸が長手方向Yに延びる向きで配置され、駆動用電動機41の駆動軸は、基台21の後壁23を貫通して、連結機構42によりボールねじ機構43のねじ部44に連結されている。これにより、ボールねじ機構43は、駆動用電動機41の駆動時に、駆動用電動機41の駆動力が連結機構42を介して駆動軸から伝達され、伝達された駆動力により回転可能になっている。
【0021】
ボールねじ機構43のねじ部44は、長手方向Yに延びて配置されて基台21の幅方向Xにおけるほぼ中央を貫き、長手方向Yにおける前側の端部側が、基台21における長手方向Yの前側に位置する前壁22に回動自在に支持されている。また、ボールねじ機構43のナット部45は、基台21の内側で、ベース5の上面に固定されている。これにより、推進機構40は、駆動用電動機41の駆動時に、駆動用電動機41から伝達される駆動力によってボールねじ機構43のねじ部44が回転することにより、ねじ部44はベース5に固定されるナット部45に対してねじ部44の延在方向に相対移動することが可能になっている。従って、推進機構40は、ねじ部44が支持される基台21を、ナット部45が固定されるベース5に対して長手方向Yに相対移動させることができ、基台21を有するフレーム20を、ベース5に配置される第1レール6上で、長手方向Yに移動させることができる。これにより、推進機構40は、射出装置10を長手方向Yに移動させることができる。
【0022】
上フレーム30は、四角の枠体状に形成され、基台21の長手方向Yにおける前側の端部付近の位置に、支持ピン33により回動自在に取り付けられている。また、上フレーム30は、支持ピン33が配置されている以外の位置で、上フレーム30を基台21に固定する固定ねじ34によって、回動不可の状態で固定される。このため、上フレーム30は、固定ねじ34を取り外して固定ねじ34による固定を解除すると、支持ピン33を中心にして基台21に対して回動可能に構成されている。
【0023】
上フレーム30は、基台21への取り付け部から上下方向Zにおける上側に立設される前壁31を有しており、加熱バレル50は、上フレーム30の前壁31に取り付けられている。加熱バレル50は、前壁31から長手方向Yにおける前側に延び、その先端、即ち、加熱バレル50の前側の端部には、金型16(
図4参照)に密接するノズル部52が配置されている。このため、加熱バレル50は、上下方向Zにおけるフレーム20の上側で、長手方向Yにおけるフレーム20の前側に配置されている。
【0024】
詳しくは、加熱バレル50は、略円筒状の形状で形成されると共に、軸心方向が長手方向Yに沿った向きで配置されており、バンドヒータ等のヒータ51(
図4参照)が設けられている。これにより、加熱バレル50は、内部で樹脂材料を溶融可能になっている。つまり、加熱バレル50は、ヒータ51によって加熱バレル50の温度を上昇させることができ、内部で樹脂材料を加熱して溶融し、可塑化材料である溶融樹脂にすることが可能になっている。
【0025】
スクリュ60は、加熱バレル50の内部に配置されており、軸心方向が加熱バレル50の軸心方向と沿った方向になる螺旋形状を有しており、即ち、スクリュ60は、外周面に螺旋状の溝を有している。このように、螺旋形状を有して形成されるスクリュ60は、加熱バレル50内で、軸心を中心として回転可能になっている。また、スクリュ60は、加熱バレル50内で回転の軸方向に移動可能になっている。換言すると、スクリュ60は、加熱バレル50内に、加熱バレル50の形状である円筒の中心軸と、スクリュ60の回転軸とが略一致して配置されており、且つ、加熱バレル50の軸方向に移動可能に配置されている。加熱バレル50内に回転可能に配置されるスクリュ60は、加熱バレル50の内部で回転をすることにより、溶融樹脂を混練することが可能になっており、このため、加熱バレル50は、内部で溶融樹脂の混練が可能なバレルになっている。
【0026】
加熱バレル50における上フレーム30に取り付けられる側の部分の近傍には、ホッパ55が配置されている。ホッパ55は、加熱バレル50内に連通し、原料樹脂となる樹脂材料であるペレット(図示省略)を加熱バレル50に供給することが可能になっている。
【0027】
さらに、上フレーム30には、上フレーム30の幅方向Xにおける両側に位置する側壁32上に、それぞれ第2レール35が配置されている。第2レール35は、長手方向Yに延在しており、即ち、加熱バレル50と略平行に延びて形成されている。
【0028】
回転機構70は、長手方向Yにおいて加熱バレル50よりも後ろ側に配置されており、加熱バレル50の内部に配置されるスクリュ60を、中心軸周りに回転させることが可能になっている。スクリュ60を回転させる回転機構70は、回転機構本体部71と、駆動用電動機73と、伝動ベルト74と、プーリ75とを有している。このうち、回転機構本体部71は、幅方向Xに延在するステー72を有しており、ステー72は、幅方向Xにおける2箇所の第2レール35上に摺動自在に載置されている。これにより、回転機構本体部71は、ステー72を介して第2レール35上に移動可能に載置されている。
【0029】
駆動用電動機73は、回転機構本体部71の上側に配置されている。プーリ75は、回転機構本体部71の前方に配置されて軸受76を介して回転機構本体部71に対して回転自在に配置されている。また、プーリ75は、伝動ベルト74を介して駆動用電動機73の駆動軸に連結されており、これにより、プーリ75は、伝動ベルト74を介して伝達される駆動用電動機73の駆動力により回転することが可能になっている。このように、駆動用電動機73から伝達される駆動力により回転可能なプーリ75は、スクリュ60に対して同軸に一体に固定されている。換言すると、スクリュ60は、長手方向Yにおける後端側が、プーリ75に連結されている。これにより、加熱バレル50内に配置されるスクリュ60は、駆動用電動機73からプーリ75に伝達される駆動力により、プーリ75と一体に回転することが可能になっている。
【0030】
長手方向Yにおける回転機構本体部71の後方には、前後進機構80が配置されている。前後進機構80は、加熱バレル50内に配置されるスクリュ60を、スクリュ60の軸心方向に移動させることが可能になっている。即ち、スクリュ60を長手方向Yに前進させたり後退させたりすることが可能になっている。詳しくは、前後進機構80は、駆動用電動機81と、伝動ベルト83と、プーリ84と、ボールねじ機構86とを有している。このうち、駆動用電動機81は、上フレーム30の幅方向Xにおける側方に配置されている。また、駆動用電動機81は、駆動用電動機81の回転位置を検出するエンコーダ82を有しており、駆動用電動機81の駆動軸は、伝動ベルト83を介してプーリ84に連結されている。
【0031】
プーリ84は、軸受85により上フレーム30に回動自在に支持されている。プーリ84には、ボールねじ機構86のねじ部87が一体に連結されている。ボールねじ機構86のねじ部87は、スクリュ60と同軸に配置されており、回転機構本体部71が有するプーリ75に対しても、同軸に配置されている。前後進機構80が有するボールねじ機構86のナット部88は、略円筒形の形状で形成されており、ボールねじ機構86のねじ部87は、当該ナット部88に螺合している。
【0032】
長手方向Yにおける、前後進機構80が有するボールねじ機構86のナット部88と、回転機構70が有する回転機構本体部71との間には、ロードセル90が配置されている。ロードセル90は、回転機構70が有する回転機構本体部71の後ろ側で、前後進機構80が有するボールねじ機構86のナット部88の前側に配置されている。
【0033】
ロードセル90は、軸方向に加えられた荷重を計測する荷重計測器で、起歪体と起歪体に取り付けられた歪みセンサ(いずれも図示省略)などから構成されている。本実施形態1では、ロードセル90は、軸方向が長手方向Yとなる向きで配置され、且つ、長手方向Yに偏平な略円筒形の形状で形成されており、円筒の内径は、前後進機構80が有するボールねじ機構86のねじ部87の外径よりも大きくなっている。このように形成されるロードセル90は、長手方向Yにおける前側の面は回転機構70が有する回転機構本体部71に一体に固定され、長手方向Yにおける後ろ側の面は前後進機構80が有するボールねじ機構86のナット部88に一体に固定されている。回転機構70の回転機構本体部71と、前後進機構80が有するボールねじ機構86のナット部88との間に配置されるロードセル90は、回転機構本体部71とナット部88との間で長手方向Yに作用する荷重を検出することが可能になっている。
【0034】
図4は、
図2に示す加熱バレル50の詳細図である。加熱バレル50は、
図4に示すように、略円筒状の形状で形成され、外周面にバンドヒータ等のヒータ51が配置されている。加熱バレル50における、長手方向Yの前端には、ノズル部52が設けられている。ノズル部52は、内径が加熱バレル50の内径よりも小さな略円筒状の形状で形成され、加熱バレル50の長手方向Yにおける前側に開口して配置されている。このように、加熱バレル50の前端に設けられるノズル部52は、加熱バレル50内の溶融樹脂を、型締装置15が有する金型16によって形成されるキャビティ17へ射出することが可能になっている。
【0035】
ここで、金型16について説明すると、金型16は、固定金型16fと移動金型16mとを有しており、固定金型16fと移動金型16mとが組み合わされることにより、溶融樹脂を成形品として成形する1つの金型16として形成される。固定金型16fと移動金型16mとのうち、固定金型16fは、長手方向Yにおける加熱バレル50が位置する側に配置され、ノズル部52に対向している。移動金型16mは、固定金型16fに対して、長手方向Yにおける加熱バレル50が位置する側の反対側に配置されている。型締装置15は、移動金型16mを長手方向Yに移動させることにより、移動金型16mを固定金型16fから離間させたり、移動金型16mを固定金型16fに対して接触させたりすることができる。
【0036】
固定金型16fと移動金型16mとを有する金型16は、固定金型16fに移動金型16mを接触させ、固定金型16fと移動金型16mとを組み合わせた状態において、固定金型16fと移動金型16mとの間に空間を有している。金型16は、固定金型16fと移動金型16mとを組み合わせた状態において、双方の間に形成される空間が、金型16において溶融樹脂より成形品を成形するキャビティ17になっている。固定金型16fには、ノズル部52に対向する側の面とキャビティ17とを貫通する孔である貫通口18が形成されており、加熱バレル50は、溶融樹脂をノズル部52から貫通口18に対して射出することにより、加熱バレル50内の溶融樹脂をキャビティ17へ射出することが可能になっている。
【0037】
加熱バレル50には、さらに、ノズル部52を開閉するシャットオフノズル53が設けられている。シャットオフノズル53は、開閉部53aと、開閉ロッド53bと、アクチュエータ53cとを有している。このうち、開閉部53aは、加熱バレル50の内側におけるノズル部52の近傍に配置され、長手方向Yに移動することにより、ノズル部52を開閉することが可能になっている。即ち、開閉部53aは、加熱バレル50における内側から、ノズル部52における加熱バレル50の内側と外側とを連通する孔を開閉することが可能になっている。
【0038】
開閉ロッド53bは、開閉部53aとアクチュエータ53cとを接続し、アクチュエータ53cから出力される力を開閉部53aに伝達することにより、開閉部53aを長手方向Yに移動させることが可能になっている。
【0039】
アクチュエータ53cは、シャットオフノズル53における開閉部53aを移動させる力の発生源になっており、加熱バレル50の外側に配置されている。アクチュエータ53cは、当該アクチュエータ53cで発生した力を、開閉ロッド53bを介して開閉部53aに伝達することにより、開閉部53aによってノズル部52を開閉することが可能になっている。アクチュエータ53cは、例えば、ソレノイドや、エアシリンダ、油圧シリンダ等を用いることができ、開閉部53aを移動させる力を発生させることができるものであれば、その構成は問わない。
【0040】
加熱バレル50内に配置されるスクリュ60は、スクリュ60の径方向における外側に突出し、且つ、スクリュ60の軸心を中心とする螺旋状に形成されるフライト61を有している。これにより、スクリュ60は、螺旋状に形成されるフライト61における隣り合う周回部分同士に間に、螺旋状の溝状の部分を有している。
【0041】
このように形成されるスクリュ60には、長手方向Yにおける前側の端部付近に、チェックリング65が配置されている。チェックリング65は、スクリュ60における長手方向Yの前側の端部付近に形成される溝部62に配置されている。溝部62は、溝幅方向がスクリュ60の軸心方向となり、スクリュ60の周方向における1周に亘って形成される溝になっている。
【0042】
図5は、
図4に示すチェックリング65の詳細図である。チェックリング65は、略円筒状の形状で形成され、軸心がスクリュ60の軸心に略一致する形態で、スクリュ60の溝部62に配置される。略円筒状に形成されるチェックリング65は、外径が加熱バレル50の内径と同程度で加熱バレル50の内径よりも僅かに小さな径になっている。また、チェックリング65の内径は、スクリュ60の溝部62の溝底の径よりも大きな径になっており、チェックリング65の内周面とスクリュ60の溝部62の溝底との間には、空隙が形成されている。また、チェックリング65の軸心方向における幅は、スクリュ60の溝部62の溝幅よりも小さくなっている。このため、チェックリング65は、溝部62内で溝幅方向に移動することが可能になっている。
【0043】
また、スクリュ60には、溝部62よりも長手方向Yにおける前側の部分と溝部62内とを連通する連通部64が形成されている。連通部64は、溝部62の溝幅方向における前側の溝壁63に開口している。
【0044】
また、発泡成形用射出成形機1は、発泡成形用射出成形機1の各種制御を行う制御部100を有している。制御部100は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、各種情報を記憶するメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などを有している。制御部100の各機能の全部または一部は、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって、RAMやROMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0045】
表示部101と入力部102とは、共に制御部100に接続されており、表示部101は、制御部100から伝達された情報を表示する。また、入力部102は、入力操作された情報を制御部100に伝達する。また、前後進機構80の駆動用電動機81に配置されるエンコーダ82や、前後進機構80と回転機構70との間に配置されるロードセル90は、制御部100に接続されており、検出結果を制御部100に送信することが可能になっている。さらに、射出装置10が有するヒータ51や、シャットオフノズル53のアクチュエータ53c、回転機構70の駆動用電動機73、前後進機構80の駆動用電動機81、推進機構40が有する駆動用電動機41は、制御部100に接続されており、制御部100からの制御信号によって動作する。即ち、制御部100は、加熱バレル50と、スクリュ60と、シャットオフノズル53との動作を制御することが可能になっている。
【0046】
<発泡成形用射出成形機1の作用>
本実施形態1に係る発泡成形用射出成形機1は、以上のような構成を含み、以下、その作用について説明する。発泡成形用射出成形機1は、1回の射出・成形動作を1サイクルとして、この射出・成形動作のサイクルを繰り返し実行する。各サイクルは、成形に用いる樹脂材料の射出、及び製品の成形のために複数の工程を含む。各サイクルは、例えば、射出工程、冷却工程、型開工程、取出工程、中間工程、型閉工程、計量工程を含む。
【0047】
射出工程は、射出装置10の加熱バレル50に設けられるノズル部52を型締装置15が有する固定金型16fの貫通口18に押し付け、加熱バレル50によって溶融された樹脂材料である溶融樹脂を、移動金型16mと固定金型16fとにより形成されるキャビティ17内に注入する工程である。
【0048】
冷却工程は、型締装置15が有する固定金型16fと移動金型16mとにより形成されるキャビティ17に注入された樹脂材料である成形樹脂の温度が低下して固化し、成形樹脂が成形品となるまで一定の時間待機をする工程である。
【0049】
型開工程は、型締装置15が有する固定金型16fと移動金型16mによって成形された成形品を取り出すために、移動金型16mを固定金型16fから離す工程になっている。
【0050】
取出工程は、成形品を移動金型16mから取り外すために、型締装置15に備えられる押出部材(図示省略)によって移動金型16mから成形品を押し出す工程になっている。
【0051】
中間工程は、移動金型16mから押し出された成形品を所定の位置まで移動し、取得する工程である。
【0052】
型閉工程は、型締装置15が有する移動金型16mと固定金型16fとを組み合わせ、移動金型16mと固定金型16fとの間に製品形状に対応した空間であるキャビティ17を形成する工程である。
【0053】
計量工程は、次のサイクルにおいて射出される溶融樹脂を、射出装置10が有する加熱バレル50におけるノズル部52が位置する端部側に送り、次のサイクルで用いる樹脂材料を準備する工程になっている。計量工程は、型締装置15において冷却工程が行われている期間に行われる。
【0054】
発泡成形用射出成形機1で成形品を成形する際には、これらの射出・成形動作のサイクルが繰り返し実行されるが、繰り返し実行されるサイクルにおいて、加熱バレル50内の樹脂材料を円滑に射出できるように、制御部100は、ヒータ51によって加熱バレル50内を継続的に加熱している。これにより、加熱バレル50は、ペレットの状態でホッパ55に投入されてホッパ55から加熱バレル50に供給された樹脂材料を、溶融状態で保持している。
【0055】
制御部100は、射出・成形動作のサイクル内における各工程の始期または終期を判断しながら制御を行う。各工程の始期または終期を判断するためには、例えば、制御部100によって発泡成形用射出成形機1を動作させるためのプログラム中において、各工程の最初のステップまたは最終のステップに、予めフラグを規定する。これにより、制御部100は、発泡成形用射出成形機1を動作させるためのプログラムを実行中に、各工程の始期または終期を判断することができる。即ち、制御部100は、フラグを規定することにより、各工程のステップの処理前または処理後にフラグを実行したときに、処理が次の工程へ移行したと判断することができる。
【0056】
また、制御部100は、工程が移行したときに、表示部101に工程の移行を表示させる。即ち、表示部101は、発泡成形用射出成形機1の現在の工程を表示する。これにより、オペレータは、表示部101を視認することにより、発泡成形用射出成形機1の現在の運転状態を認識することができる。
【0057】
発泡成形用射出成形機1は、上述した工程を基本の工程とし、これらの工程を繰り返すことにより、溶融樹脂より成形品を成形することが可能になっているが、本実施形態1に係る発泡成形用射出成形機1は、気泡を含む溶融樹脂より、発泡成形品を成形することが可能になっている。次に、発泡成形品を成形する発泡成形方法について説明する。
【0058】
<発泡成形の方法>
本実施形態1に係る発泡成形方法では、発泡成形品を成形する際には、加熱バレル50内に大気を取り込み、取り込んだ大気を加熱バレル50内の溶融樹脂に分散させて気泡にし、さらに、溶融樹脂に圧力を付与することにより、気泡を超臨界流体の状態にする。その後、超臨界流体の状態の気泡が含まれる溶融樹脂を金型16のキャビティ17に射出し、溶融樹脂の圧力が低下して気泡が成長することにより、発泡成形が行われ、発泡成形品が成形される。このような発泡成形方法による発泡成形を、発泡成形用射出成形機1を用いて行う際には、推進機構40による加熱バレル50の長手方向Yにおける移動と、前後進機構80によるスクリュ60の長手方向Yにおける移動と、シャットオフノズル53によるノズル部52の開閉とを切り替えながら行う。
【0059】
図6は、実施形態1に係る発泡成形用射出成形機1を用いて発泡成形を行う際における手順を示すフロー図である。
図7は、加熱バレル50を後退させた状態を示す模式図である。実施形態1に係る発泡成形用射出成形機1を用いて発泡成形を行う際には、まず、加熱バレル50を後退させ、シャットオフノズル53を開く(ステップST11)。詳しくは、加熱バレル50は、推進機構40を作動させることによって射出装置10を長手方向Yに移動させ、射出装置10を後退させることにより、射出装置10が有する加熱バレル50を後退させる。推進機構40によって射出装置10の移動させる際には、推進機構40が有する駆動用電動機41を駆動させ、駆動用電動機41で発生した駆動力が、連結機構42を介してボールねじ機構43のねじ部44に伝達され、ねじ部44が回転する。これにより、ねじ部44は、ベース5に固定されるボールねじ機構43のナット部45に対して相対的に長手方向Yに移動し、射出装置10全体が、第1レール6に支持されながら長手方向Yに移動する。このように、推進機構40によって射出装置10を長手方向Yに移動させることにより、射出装置10が有する加熱バレル50のノズル部52を金型16から僅かに離間させる。
【0060】
また、シャットオフノズル53のアクチュエータ53cを作動させてシャットオフノズル53を開くことにより、ノズル部52を開いた状態にする。つまり、シャットオフノズル53のアクチュエータ53cを作動させ、アクチュエータ53cで発生した力を開閉ロッド53bによって加熱バレル50内の開閉部53aに伝達することにより、開閉部53aをノズル部52の孔から離間させてノズル部52の孔を開放する。これにより、加熱バレル50の内側を、ノズル部52の孔を介して加熱バレル50の外側の雰囲気と連通させる。
【0061】
図8は、スクリュ60を後退させた状態を示す模式図である。次に、スクリュ60を後退させ、加熱バレル50内に大気を取り込む(ステップST12)。つまり、シャットオフノズル53を開いた状態で、前後進機構80を作動させてスクリュ60を長手方向Yに移動させることにより、スクリュ60を後退させる。前後進機構80によってスクリュ60を後退させる際には、前後進機構80が有する駆動用電動機81を駆動させ、駆動用電動機81で発生した駆動力が、伝動ベルト83によってプーリ84に伝達され、プーリ84からボールねじ機構86のねじ部87に伝達されて、ねじ部87が回転する。これにより、ボールねじ機構86のナット部88が長手方向Yに移動し、ナット部88と共に、ロードセル90、及び回転機構70全体が、第2レール35に支持されながら長手方向Yに移動する。これにより、回転機構70のプーリ75に連結されるスクリュ60も、回転機構70のプーリ75と共に長手方向Yに移動し、スクリュ60は後退する。
【0062】
加熱バレル50内に大気Aを取り込む際には、このように、スクリュ60を後退させることにより、ノズル部52から加熱バレル50内に、大気A、即ち、加熱バレル50の周囲に存在する空気を取り込む。詳しくは、スクリュ60には、加熱バレル50の内径と同程度の外径で形成されるチェックリング65が配置されるため、スクリュ60を後退させた場合、加熱バレル50内におけるスクリュ60よりも前側の部分は、負圧になる。このため、スクリュ60を後退させた場合には、チェックリング65よりも前側の部分で発生する負圧により、ノズル部52から大気Aが入り込み、加熱バレル50内におけるチェックリング65よりも前側の部分に大気Aが取り込まれる。
【0063】
なお、加熱バレル50内に大気Aを取り込むためにスクリュ60を後退させる際におけるスクリュ60の後退量は、成形を行う発泡成形品において求められる気泡の量に応じて調整するのが好ましい。
【0064】
図9は、シャットオフノズル53を閉じてスクリュ60を前進させた状態を示す模式図である。次に、シャットオフノズル53を閉じてスクリュ60を前進させ、また、加熱バレル50を前進させる(ステップST13)。つまり、シャットオフノズル53のアクチュエータ53cを作動させてシャットオフノズル53を閉じることによってノズル部52を閉じた状態で、前後進機構80を作動させてスクリュ60を長手方向Yに移動させることにより、スクリュ60を前進させる。これにより、加熱バレル50内に取り込んだ大気Aを、加熱バレル50内の溶融樹脂Rに拡散する。詳しくは、発泡成形用射出成形機1で成形品の成形を行う際には、加熱バレル50内では、樹脂材料を溶融状態で保持しており、このため、加熱バレル50内におけるチェックリング65よりも後ろ側の部分には、溶融樹脂Rが貯留されている。
【0065】
一方、加熱バレル50内おけるチェックリング65よりも前側の部分には、大気Aが取り込まれているため、ノズル部52を閉じた状態でスクリュ60を前進させた場合には、チェックリング65よりも前側の部分に取り込まれた大気Aは、前進するスクリュ60により圧縮される。これにより、チェックリング65よりも前側の部分に取り込まれた大気Aは、チェックリング65が配置されている部分を通過して、チェックリング65よりも後ろ側の部分に流れる。即ち、加熱バレル50内におけるチェックリング65よりも前側に位置する大気Aは、スクリュ60に形成される連通部64を通り、チェックリング65の内周面とスクリュ60の溝部62の溝底との間の空隙を通り、スクリュ60の溝部62における後ろ側の溝壁63とスクリュ60との間を通って、チェックリング65よりも後ろ側の部分に流れる。これにより、加熱バレル50内に取り込まれた大気Aは、チェックリング65よりも後ろ側の部分に位置する溶融樹脂Rに拡散される。
【0066】
また、加熱バレル50は、推進機構40を作動させることによって射出装置10を長手方向Yに移動させ、射出装置10を前進させることにより、射出装置10が有する加熱バレル50を前進させる。これにより、加熱バレル50のノズル部52を金型16に接触させ、加熱バレル50のノズル部52と、固定金型16fに形成される貫通口18とを連通させる。なお、スクリュ60の前進の動作と、加熱バレル50を前進の動作とは、どちらが先に行われてもよく、双方の動作が同時に行われてもよい。
【0067】
図10は、スクリュ60を回転させながら後退させる状態を示す説明図である。次に、スクリュ60を回転させながら後退させ、取り込んだ大気Aを気泡Bとして溶融樹脂R内で分散させる(ステップST14)。つまり、シャットオフノズル53を閉じた状態で、回転機構70を作動させることによってスクリュ60を回転させながら、前後進機構80を作動させることによってスクリュ60を長手方向Yに移動させ、スクリュ60を後退させる。回転機構70によってスクリュ60を回転させる際には、回転機構70が有する駆動用電動機73を駆動させ、駆動用電動機73で発生した駆動力が、伝動ベルト74によってプーリ75に伝達され、プーリ75からスクリュ60に伝達されることにより、スクリュ60は回転をする。
【0068】
このように、回転機構70によってスクリュ60を回転させた場合、加熱バレル50内の溶融樹脂Rは、スクリュ60の回転により混練されるため、加熱バレル50内におけるチェックリング65よりも後ろ側に流れて溶融樹脂Rに拡散された大気Aは、溶融樹脂Rが混練されることにより、細かい気泡Bに分かれる。これにより、加熱バレル50内で溶融樹脂Rに拡散された大気Aは、気泡Bとして溶融樹脂R内で分散される。
【0069】
また、このようにスクリュ60を回転させながら後退させる場合におけるスクリュ60の回転方向は、スクリュ60が有するフライト61における隣り合う周回部分同士の間に存在する溶融樹脂Rを、スクリュ60の回転によって長手方向Yにおける前側に送ることのできる回転方向になっている。
【0070】
スクリュ60が回転することにより前側に送られる溶融樹脂Rは、チェックリング65が配置されている部分を通過して、チェックリング65よりも前側の部分に送られる。即ち、チェックリング65よりも後ろ側に位置する溶融樹脂Rは、スクリュ60の溝部62における後ろ側の溝壁63とスクリュ60との間を通り、チェックリング65の内周面とスクリュ60の溝部62の溝底との間の空隙を通り、スクリュ60に形成される連通部64を通って、チェックリング65よりも前側の部分に流れる。これにより、気泡Bが分散する溶融樹脂Rは、加熱バレル50内におけるチェックリング65よりも前側、即ち、加熱バレル50におけるノズル部52が位置する側の端部側である先端側に押し出される。これらのように、スクリュ60は、回転しながら後退することにより、加熱バレル50内に取り込んだ大気Aを気泡Bとして溶融樹脂R内で分散させつつ、溶融樹脂Rを前側に送る。
【0071】
加熱バレル50内の溶融樹脂Rを、加熱バレル50の先端側に送る工程は、発泡成形用射出成形機1における計量工程になっている。計量工程では、金型16に形成されるキャビティ17に対して1回の射出工程で射出する分の溶融樹脂Rを計量し、溶融樹脂Rを加熱バレル50内における先端側の部分に確保する工程になっている。具体的には、計量工程では、スクリュ60を後退させる際における移動量、若しくは加熱バレル50内における長手方向Yの位置と、加熱バレル50内における先端側の部分に送った溶融樹脂Rの圧力とに基づいて、溶融樹脂Rの計量を行う。
【0072】
計量工程における制御のうち、スクリュ60の移動量は、前後進機構80の駆動用電動機81が有するエンコーダ82での検出結果に基づいて取得する。つまり、前後進機構80は、駆動用電動機81で発生した駆動力をスクリュ60に伝達することにより、スクリュ60を長手方向Yに移動させるが、エンコーダ82は、駆動用電動機81が有する回転体(図示省略)の回転位置を検出することが可能になっている。このため、制御部100は、エンコーダ82で検出する駆動用電動機81の回転体の回転位置を取得することにより、スクリュ60の長手方向Yにおける位置する取得する。
【0073】
前後進機構80の駆動用電動機81が有するエンコーダ82は、加熱バレル50内でのスクリュ60を長手方向Yのおける位置を検出する、スクリュ位置検出部になっている。制御部100は、計量工程では、前後進機構80の駆動用電動機81が有するエンコーダ82での検出結果に基づいて、スクリュ60の長手方向Yにおける位置を取得することにより、スクリュ60の後退量を取得する。
【0074】
また、加熱バレル50内における先端側の部分に送った溶融樹脂Rの圧力の検出は、ロードセル90の検出結果を用いて行う。ロードセル90は、加熱バレル50内において、スクリュ60により先端側に押し出した溶融樹脂Rの圧力である背圧を検出する、背圧検出部として用いられる。
【0075】
ロードセル90での溶融樹脂Rの背圧の検出について説明すると、スクリュ60によって加熱バレル50内の溶融樹脂Rを加熱バレル50内における先端側に押し出す場合、スクリュ60には、溶融樹脂Rを前側に押し出す際の反作用により、長手方向Yにおける後ろ側への力が作用する。スクリュ60に作用した長手方向Yの力は、スクリュ60から回転機構70のプーリ75に伝わり、プーリ75から回転機構本体部71に伝わることにより、回転機構本体部71に固定されるロードセル90に伝達される。
【0076】
ロードセル90における回転機構本体部71に固定される側の面の反対側の面は、前後進機構80が有するボールねじ機構86のナット部88に固定されているため、回転機構70の回転機構本体部71からロードセル90に対して、長手方向Yにおける後ろ側への力は、ロードセル90を長手方向Yに圧縮する力として作用する。ロードセル90は、このようにロードセル90に作用する力の大きさを検出し、制御部100に伝達する。制御部100は、ロードセル90から送信された力の大きさを、スクリュ60に対して長手方向Yに作用する力として取得する。
【0077】
制御部100は、計量工程では、ロードセル90での検出結果に基づいて、スクリュ60に対して長手方向Yに作用する力の大きさを取得することにより、スクリュ60によって前側に押し出した溶融樹脂Rの背圧を取得する。即ち、計量工程では、制御部100は、エンコーダ82での検出結果に基づいてスクリュ60の長手方向Yの位置を取得し、ロードセル90での検出結果に基づいて溶融樹脂Rの背圧を取得することにより、加熱バレル50におけるノズル部52が位置する側である先端側に押し出した溶融樹脂Rの量を取得し、溶融樹脂Rの計量を行う。これにより、計量工程では、1回の射出工程で、加熱バレル50から型締装置15が有する金型16のキャビティ17に対して射出する分の溶融樹脂Rの計量を行う。
【0078】
計量工程では、このように、加熱バレル50内の溶融樹脂Rを、スクリュ60の回転によって前側に加熱バレル50内における先端側に押し出すことにより、溶融樹脂Rに背圧を発生させるが、溶融樹脂Rには、気泡Bが含まれている。このため、気泡Bにも、スクリュ60の回転によって溶融樹脂Rが押し出されることにより溶融樹脂Rに作用する圧力が作用する。
【0079】
その際に、溶融樹脂Rから気泡Bに対して作用する圧力により、気泡Bに含まれる空気を超臨界状態にする。このため、計量工程における溶融樹脂Rの背圧は、気泡Bに含まれる空気を超臨界状態にすることができる大きさの圧力に設定し、例えば、背圧は3.7MPa以上に設定する。即ち、制御部100は、計量工程において、ロードセル90での検出結果に基づいて取得する溶融樹脂Rの背圧が3.7MPa以上になるように、回転機構70と前後進機構80とを制御する。
【0080】
図11は、計量工程における加熱バレル50内の溶融樹脂Rの圧力分布についての説明図である。ここで、加熱バレル50には、樹脂材料であるペレットがホッパ55から加熱バレル50内に継続して供給できるようになっており、加熱バレル50は、ホッパ55を介して周囲の大気に開放されている。一方で、計量工程中は、加熱バレル50内の溶融樹脂Rは、全体的にスクリュ60によって長手方向Yにおける前側に押されている。このため、溶融樹脂Rの圧力は、長手方向Yにおけるスクリュ60の中央付近で最大となり、長手方向Yにおける後ろ側、即ち、ホッパ55が位置する側が、圧力が低くなるものの、長手方向Yにおける前側は、圧力が高い状態が確保され、チェックリング65よりも前側では、設定背圧が確保される。
【0081】
このように、加熱バレル50内の溶融樹脂Rは、スクリュ60によって、全体的に前側に押されるため、加熱バレル50内がホッパ55を介して周囲の大気に開放されている状態であっても、加熱バレル50内における先端側の部分では、高い圧力が確保される。
【0082】
図12は、計量を行った溶融樹脂Rを射出する状態を示す説明図である。次に、シャットオフノズル53を開き、分散した気泡Bを含む溶融樹脂Rをキャビティ17へ射出する(ステップST15)。即ち、計量工程において加熱バレル50内で計量を行った溶融樹脂Rを、射出工程で、金型16に形成されるキャビティ17内へ射出する。溶融樹脂Rをキャビティ17内へ射出する際には、まず、シャットオフノズル53のアクチュエータ53cを作動させてシャットオフノズル53を開き、ノズル部52を開くことにより、ノズル部52の孔と固定金型16fに形成される貫通口18とが連通する状態にする。
【0083】
シャットオフノズル53を開いたら、前後進機構80を作動させることにより、スクリュ60を前進させる。これにより、加熱バレル50内においてスクリュ60の前側に位置する溶融樹脂Rであり、計量工程において計量を行った溶融樹脂Rを、スクリュ60によってノズル部52から押し出し、金型16に形成されるキャビティ17内へ射出する。
【0084】
ここで、スクリュ60には、外径が加熱バレル50の内径と同程度の大きさのチェックリング65が配置されているが、チェックリング65の内周面とスクリュ60との間には、空隙を有している。このため、計量工程において、スクリュ60を回転させた際には、チェックリング65よりも後ろ側に位置する溶融樹脂Rは、この空隙と通って、チェックリング65の前側に押し出される。
【0085】
これに対し、計量工程で計量を行った溶融樹脂Rを射出する際には、チェックリング65は、長手方向Yにおける両側間の溶融樹脂Rの移動が不可の状態になる。
図13は、溶融樹脂Rの射出を行う際におけるチェックリング65の状態を示す説明図である。射出工程において、加熱バレル50内の溶融樹脂Rをノズル部52から射出する際には、制御部100によって前後進機構80を作動させることにより、スクリュ60を前進させる。これにより、加熱バレル50内においてチェックリング65よりも前側に位置する溶融樹脂Rには、スクリュ60から、長手方向Yにおける前側への押圧力が付与される。スクリュ60の溝部62に配置されるチェックリング65は、長手方向Yにおける幅が、スクリュ60の溝部62の溝幅よりも小さくなっているため、チェックリング65は、溝部62内で溝幅方向に移動することが可能になっている。
【0086】
また、スクリュ60が前進することにより、チェックリング65よりも前側に位置する溶融樹脂Rに対して、前側への押圧力が付与された際には、溶融樹脂Rからチェックリング65に対して、後ろ方向への押圧力が反力として作用する。これにより、チェックリング65は、スクリュ60における溝部62が形成される範囲内において、溝部62に対して相対的に後方へ移動し、溝部62の溝幅方向における後ろ側に位置する溝壁63に、チェックリング65は当接する。
【0087】
このため、溝部62の溝幅方向における後ろ側に位置する溝壁63とチェックリング65との間には、隙間が無くなり、溶融樹脂Rが通ることが出来なくなる。即ち、チェックリング65より前側に位置する溶融樹脂Rが、スクリュ60に形成される連通部64を通って、チェックリング65の内周面と溝部62の溝底との間の空隙に流れ込んだ場合でも、その位置から後ろ側へは流れることが出来なくなる。従って、スクリュ60を前進させることにより、計量工程で計量を行った溶融樹脂Rを射出工程で射出する際には、チェックリング65よりも前側に位置する溶融樹脂Rは、チェックリング65の後ろ側へ流れることなく、ノズル部52から押し出される。
【0088】
その際に、溶融樹脂Rには、分散した気泡Bが含まれているため、射出工程では、一様に分散した気泡Bを含む溶融樹脂Rを、ノズル部52から固定金型16fの貫通口18を介して、金型16に形成されるキャビティ17に対して射出する。これにより、キャビティ17に、一様に分散した気泡Bを含む溶融樹脂Rを充填する。
【0089】
ここで、計量工程では、溶融樹脂Rの背圧を高めながら計量を行うことにより、溶融樹脂R内の気泡Bに含まれる空気は、超臨界状態になっている。一方、溶融樹脂Rがキャビティ17に射出された際におけるキャビティ17内での溶融樹脂Rの圧力は、計量工程におけるチェックリング65よりも前側に位置する溶融樹脂Rの背圧よりも低くなっている。このため、溶融樹脂Rに含まれる気泡Bは、キャビティ17内で成長する。従って、溶融樹脂Rが射出されたキャビティ17内では、発泡成形が行われ、一様に分散した気泡Bを含む溶融樹脂Rは、発泡成形品Mとして成形される。
【0090】
<実施形態1の効果>
以上の実施形態1に係る発泡成形方法、発泡成形用射出成形機1の制御方法及び発泡成形用射出成形機1は、加熱バレル50内に取り込んだ大気Aを、気泡Bとして溶融樹脂R内に分散させ、分散した気泡Bを含む溶融樹脂Rをキャビティ17へ射出している。これにより、発泡成形専用の射出成形機を用いることなく、発泡成形用射出成形機1として既存の射出成形機を用いることができ、高圧ガス発生装置等の装置を用いることなく、発泡成形を行うことができる。この結果、発泡成形を行う際におけるコストの低減を図ることができる。
【0091】
また、溶融樹脂R内に分散した気泡Bに対して、計量工程で圧力を付与することによって、気泡Bに含まれる空気を超臨界流体の状態にするため、発泡成形に用いる気体に、圧力が高い気体を用いたり、気体の圧力を高める装置を用いたりすることなく、溶融樹脂Rの計量工程で、気泡B対して大きな圧力を付与することにより、気泡Bに含まれる空気を超臨界流体にすることができる。この結果、コストの増加を抑えつつ、より確実に発泡成形を行うことができる。
【0092】
[実施形態2]
実施形態2に係る発泡成形用射出成形機1は、実施形態1に係る発泡成形用射出成形機1と略同様の構成であるが、加熱バレル50が供給口56を備える点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0093】
図14は、実施形態2に係る発泡成形用射出成形機1が有する加熱バレル50の要部模式図である。本実施形態2に係る発泡成形用射出成形機1は、実施形態1と同様に、加熱バレル50にシャットオフノズル53が設けられている。さらに、実施形態2では、加熱バレル50の長手方向Yにおけるスクリュ60よりも前側に、加熱バレル50内への大気Aの供給が可能な供給口56が設けられている。供給口56は、加熱バレル50における、長手方向Yにおいてスクリュ60が配置される位置と、加熱バレル50におけるシャットオフノズル53の開閉部53aとの間に配置されている。
【0094】
また、供給口56には、供給口56を介して加熱バレル50の内外を連通させる状態と、加熱バレル50の内外の連通を閉止する状態とを切り替えるチェックバルブ57が配置されている。チェックバルブ57は、加熱バレル50の内側と外側とを連通する向きで加熱バレル50に配置され、供給口56は、チェックバルブ57の連通方向における加熱バレル50の内側寄りの端部側に位置して加熱バレル50内に開口している。一方、チェックバルブ57の連通方向における加熱バレル50の外側寄りの端部側には、加熱バレル50の外の大気をチェックバルブ57に向けて流すことのできる供給管58が接続されている。供給管58におけるチェックバルブ57に接続される側の反対側の端部は、大気に対して開放されており、供給管58は、チェックバルブ57に対して大気を供給することが可能になっている。
【0095】
チェックバルブ57は、加熱バレル50内の雰囲気の圧力と大気圧との差に基づいて開閉することが可能になっており、加熱バレル50内の雰囲気の圧力が大気圧に対して所定の圧力差以上で低い場合にチェックバルブ57は開き、それ以外の場合はチェックバルブ57は閉じた状態になる。即ち、チェックバルブ57は、供給口56が開口する加熱バレル50内の雰囲気の圧力が、供給管58によって供給される加熱バレル50の外の大気圧に対して、所定の圧力差以上で低い場合に開き、それ以外の場合は、チェックバルブ57は閉じるように構成されている。これらにより、供給口56は、加熱バレル50内の雰囲気の圧力と大気圧との差に応じて、加熱バレル50内への大気Aの供給が可能な状態と、加熱バレル50内へ大気Aの供給が不可の状態との切り替えが可能になっている。
【0096】
<発泡成形の方法>
図15は、実施形態2に係る発泡成形用射出成形機1を用いて発泡成形を行う際における手順を示すフロー図である。実施形態2に係る発泡成形用射出成形機1を用いて発泡成形を行う際には、まず、シャットオフノズル53を閉じた状態でスクリュ60を後退させ、供給口56を開いて供給口56から加熱バレル50内に大気Aを取り込む(ステップST21)。つまり、シャットオフノズル53を閉じた状態で、前後進機構80を作動させてスクリュ60を後退させた場合、加熱バレル50内におけるスクリュ60とシャットオフノズル53との間の部分は、雰囲気の圧力が低下する。これにより、長手方向Yにおけるスクリュ60とシャットオフノズル53との間の部分で加熱バレル50内に開口する供給口56に連通するチェックバルブ57は、加熱バレル50内の雰囲気の圧力と大気圧との差によって開いた状態になり、即ち、供給口56が開いた状態になる。
【0097】
このように、供給口56が開いた状態で、さらにスクリュ60を後退させると、加熱バレル50内におけるスクリュ60とシャットオフノズル53との間の部分の圧力と、チェックバルブ57及び供給管58を介して連通する大気圧との差より、加熱バレル50の周囲の大気Aが加熱バレル50内に入り込む。換言すると、シャットオフノズル53を閉じた状態で、スクリュ60を後退させることにより、加熱バレル50内におけるスクリュ60とシャットオフノズル53との間の部分が負圧になるため、チェックバルブ57が開き、加熱バレル50の周囲の大気Aが、供給管58を通じて供給口56から加熱バレル50内に流れ込む。この場合、加熱バレル50内におけるスクリュ60とシャットオフノズル53との間の部分の負圧を大きくしてチェックバルブ57を開かせることができるように、スクリュ60の回転を停止した状態で、比較的速い速度でスクリュ60を後退させる。これにより、供給口56から加熱バレル50内に大気Aを取り込む。
【0098】
次に、スクリュ60を前進させて供給口56を閉じる(ステップST22)。つまり、前後進機構80を作動させてスクリュ60を前進させることにより、加熱バレル50内におけるスクリュ60とシャットオフノズル53との間の部分の圧力を高め、チェックバルブ57を閉じる。これにより、加熱バレル50内に開口する供給口56を閉じる。この状態で、さらにスクリュ60を前進させることにより、加熱バレル50内に取り込んだ大気Aを、加熱バレル50内の溶融樹脂Rに拡散する。
【0099】
詳しくは、シャットオフノズル53と供給口56とが閉じられている状態でスクリュ60を前進させた場合、スクリュ60とシャットオフノズル53との間の部分に取り込まれた大気A、即ち、チェックリング65よりも前側の部分に取り込まれた大気Aは、前進するスクリュ60により圧縮される。これにより、チェックリング65よりも前側の部分に取り込まれた大気Aは、チェックリング65が配置されている部分を通過して、チェックリング65よりも後ろ側の部分に流れる。これにより、供給口56から加熱バレル50内に取り込まれた大気Aは、チェックリング65よりも後ろ側の部分に位置する溶融樹脂Rに拡散される。
【0100】
次に、スクリュ60を回転させながら後退させ、取り込んだ大気Aを気泡Bとして溶融樹脂R内で分散させる(ステップST23)。つまり、供給口56を閉じた状態で回転機構70を作動させることによってスクリュ60を回転させながら、前後進機構80を作動させることによってスクリュ60を後退させることにより、加熱バレル50内に取り込んだ大気Aを気泡Bとして溶融樹脂R内で分散させつつ溶融樹脂Rを前側に送り、溶融樹脂Rの計量を行う。換言すると、溶融樹脂Rの計量工程において、溶融樹脂Rを混練させながら前側に送る計量工程でのスクリュ60の動作により、加熱バレル50内に取り込んだ大気Aを気泡Bとして溶融樹脂R内で分散させる。
【0101】
この場合、スクリュ60の後退速度は、ステップST21において供給口56から加熱バレル50内に大気Aを取り込む場合におけるスクリュ60の後退速度よりも遅くし、また、スクリュ60を回転させて溶融樹脂Rを前側に送るため、加熱バレル50内におけるスクリュ60とシャットオフノズル53との間の部分は負圧にならず、チェックバルブ57は開かない。これにより、加熱バレル50内における、スクリュ60に設けられるチェックリング65の前側に送り出した溶融樹脂Rの背圧を高めることができ、溶融樹脂Rに含まれる気泡Bに対して作用する圧力も高めることができる。従って、溶融樹脂R内の気泡Bに含まれている空気を超臨界状態にすることができる。
【0102】
次に、シャットオフノズル53を開き、分散した気泡Bを含む溶融樹脂Rをキャビティ17へ射出する(ステップST24)。即ち、シャットオフノズル53を開き、前後進機構80を作動させてスクリュ60を前進させることにより、計量工程において加熱バレル50内で計量を行った溶融樹脂Rを、射出工程で、金型16に形成されるキャビティ17内へ射出する。
【0103】
この場合、加熱バレル50内におけるスクリュ60とシャットオフノズル53との間の部分は、スクリュ60を前進させることにより圧力が高くなるため、チェックバルブ57は開かない。このため、スクリュ60を前進させることにより圧力が高められた、加熱バレル50内におけるチェックリング65よりも前側に位置する溶融樹脂Rは、ノズル部52から押し出される。これにより、一様に分散した気泡Bが含まれる溶融樹脂Rは、ノズル部52から固定金型16fの貫通口18を介して、金型16に形成されるキャビティ17に対して射出され、キャビティ17には、一様に分散した気泡Bを含む溶融樹脂Rが充填される。
【0104】
その際に、溶融樹脂R内の気泡Bに含まれる空気は、加熱バレル50内では超臨界状態になっているが、キャビティ17内での溶融樹脂Rの圧力は、計量工程におけるチェックリング65よりも前側に位置する溶融樹脂Rの背圧よりも低くなっている。このため、溶融樹脂Rに含まれる気泡Bは、キャビティ17内で成長する。従って、溶融樹脂Rが射出されたキャビティ17内では、発泡成形が行われ、一様に分散した気泡Bを含む溶融樹脂Rは、発泡成形品Mとして成形される。
【0105】
<実施形態2の効果>
以上の実施形態2に係る発泡成形方法、発泡成形用射出成形機1の制御方法及び発泡成形用射出成形機1は、加熱バレル50内への大気Aの供給が可能な状態と加熱バレル50内へ大気Aの供給が不可の状態との切り替えが可能な供給口56を有するため、供給口56から、加熱バレル50内に大気Aを取り込むことができる。これにより、推進機構40によって射出装置10を長手方向Yに移動させ、加熱バレル50のノズル部52を金型16に対して離間させたり近付けたりする動作を行わせることなく、加熱バレル50内に大気Aを取り込むことができる。従って、推進機構40の動作の頻度を低減することができ、推進機構40の耐久性を確保することができるため、部品交換の頻度を低減することができる。この結果、発泡成形を行う際におけるコストの低減を図ることができる。
【0106】
[実施形態3]
実施形態3に係る発泡成形用射出成形機1は、実施形態2に係る発泡成形用射出成形機1と略同様の構成であるが、加熱バレル50内には圧縮ガスが供給される点に特徴がある。他の構成は実施形態2と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0107】
図16は、実施形態3に係る発泡成形用射出成形機1が有する加熱バレル50の要部模式図である。本実施形態3に係る発泡成形用射出成形機1は、実施形態2と同様に、加熱バレル50における、長手方向Yにおいてスクリュ60が配置される位置と、加熱バレル50におけるシャットオフノズル53の開閉部53aとの間に、供給口56が設けられている。このように、加熱バレル50に設けられる供給口56にはチェックバルブ57が配置され、チェックバルブ57の連通方向における加熱バレル50の外側寄りの端部側には、供給管58が接続されている。
【0108】
供給管58における、チェックバルブ57に接続される側の反対側の端部には、本実施形態3では、コンプレッサ110が接続されている。コンプレッサ110は、大気を吸引し、吸引した大気を圧縮して圧縮ガスCとして供給管58に対して供給することが可能になっている。このため、供給管58は、コンプレッサ110から供給された圧縮ガスCを、チェックバルブ57に対して供給することが可能になっている。なお、コンプレッサ110から供給される圧縮ガスCは、圧力が1MPa未満になっている。
【0109】
チェックバルブ57は、供給口56が開口する加熱バレル50内の雰囲気の圧力が、供給管58によって供給される圧縮ガスCの圧力に対して、所定の圧力差以上で低い場合に開き、それ以外の場合は、チェックバルブ57は閉じるように構成されている。従って、供給口56は、加熱バレル50内の雰囲気の圧力と圧縮ガスCの圧力との差に応じて、加熱バレル50内への圧縮ガスCの供給が可能な状態と、加熱バレル50内へ圧縮ガスCの供給が不可の状態との切り替えが可能になっている。
【0110】
<発泡成形の方法>
図17は、実施形態3に係る発泡成形用射出成形機1を用いて発泡成形を行う際における手順を示すフロー図である。実施形態3に係る発泡成形用射出成形機1を用いて発泡成形を行う際には、シャットオフノズル53を閉じた状態でスクリュ60を後退させ、供給口56を開いて供給口56から加熱バレル50内に圧縮ガスCを取り込む(ステップST31)。つまり、シャットオフノズル53を閉じた状態で、前後進機構80を作動させてスクリュ60を後退させることにより、チェックバルブ57は、加熱バレル50内の雰囲気の圧力と、コンプレッサ110から供給される圧縮ガスCの圧力との差によって開いた状態になり、即ち、供給口56が開いた状態になる。
【0111】
これにより、供給管58を介してコンプレッサ110から加熱バレル50に対して供給される圧縮ガスCは、供給口56から加熱バレル50内に入り込む。即ち、シャットオフノズル53を閉じた状態で、スクリュ60の回転が停止した状態でスクリュ60を後退させることにより、供給口56から加熱バレル50内に圧縮ガスCを取り込む。
【0112】
次に、スクリュ60を前進させて供給口56を閉じる(ステップST32)。つまり、前後進機構80を作動させてスクリュ60を前進させることにより、加熱バレル50内におけるスクリュ60とシャットオフノズル53との間の部分の圧力を高め、チェックバルブ57を閉じる。これにより、加熱バレル50内に開口する供給口56を閉じる。この状態で、さらにスクリュ60を前進させることにより、チェックリング65よりも前側の部分に取り込まれた圧縮ガスCを圧縮し、当該圧縮ガスCを、チェックリング65が配置されている部分を通過させてチェックリング65よりも後ろ側の部分に流す。これにより、加熱バレル50内に取り込んだ圧縮ガスCを、加熱バレル50内の溶融樹脂Rに拡散する。
【0113】
次に、スクリュ60を回転させながら後退させ、取り込んだ圧縮ガスCを気泡Bとして溶融樹脂R内で分散させる(ステップST33)。つまり、供給口56を閉じた状態で回転機構70を作動させることによってスクリュ60を回転させながら、前後進機構80を作動させることによってスクリュ60を後退させることにより、加熱バレル50内に取り込んだ圧縮ガスCを気泡Bとして溶融樹脂R内で分散させつつ溶融樹脂Rを前側に送り、溶融樹脂Rの計量を行う。溶融樹脂Rの計量を行う計量工程では、スクリュ60に設けられるチェックリング65の前側に送り出した溶融樹脂Rの背圧を高めながら計量を行うので、溶融樹脂Rに含まれる気泡Bに対して作用する圧力も高めることができる。従って、溶融樹脂R内の気泡Bに含まれている圧縮ガスC、即ち、空気を、超臨界状態にすることができる。
【0114】
次に、シャットオフノズル53を開き、分散した気泡Bを含む溶融樹脂Rをキャビティ17へ射出する(ステップST34)。即ち、シャットオフノズル53を開き、前後進機構80を作動させてスクリュ60を前進させることにより、計量工程において加熱バレル50内で計量を行った溶融樹脂Rを、射出工程で、金型16に形成されるキャビティ17内へ射出する。これにより、キャビティ17には、一様に分散した気泡Bを含む溶融樹脂Rが充填される。その際に、溶融樹脂R内の気泡Bに含まれる圧縮ガスCは、加熱バレル50内では超臨界状態になっているが、キャビティ17内での溶融樹脂Rの圧力は、計量工程におけるチェックリング65よりも前側に位置する溶融樹脂Rの背圧よりも低くなっている。このため、溶融樹脂Rが射出されたキャビティ17内では、気泡Bが成長することにより発泡成形が行われ、一様に分散した気泡Bを含む溶融樹脂Rは、発泡成形品Mとして成形される。
【0115】
<実施形態3の効果>
以上の実施形態3に係る発泡成形方法、発泡成形用射出成形機1の制御方法及び発泡成形用射出成形機1は、圧力が高められた圧縮ガスCを供給口56から加熱バレル50内に取り込むため、発泡成形を行うために加熱バレル50内に取り込む気体の量を増加させることができる。このため、加熱バレル50内に取り込んだ圧縮ガスCを、溶融樹脂R内で気泡Bとして分散した際に、より多くの気泡Bを、溶融樹脂R内で分散させることができる。従って、推進機構40の動作の頻度を低減して推進機構40の耐久性を確保しつつ、より容易に発泡成形を行うことができる。この結果、発泡成形をより容易に行いつつ、発泡成形を行う際におけるコストの低減を図ることができる。
【0116】
また、圧縮ガスCは、圧力が1MPa未満であるため、発泡成形用射出成形機1において圧縮ガスCが流れる部分の強度を大幅に増加させることなく、圧縮ガスCを用いて溶融樹脂R内に多くの気泡Bを分散させることができる。この結果、発泡成形をより容易に行いつつ、より確実に発泡成形を行う際におけるコストの低減を図ることができる。
【0117】
また、圧縮ガスCの圧力を1MPa未満とすることにより、高圧ガスを使用する際に必要な設備申請等の手続きを行うことなく、圧縮ガスCを使用することができる。これにより、圧縮ガスCを使用する際におけるコストを、より確実に抑えることができ、より確実に発泡成形を行う際におけるコストの低減を図ることができる。
【0118】
[変形例]
なお、上述した実施形態2では、加熱バレル50内への圧縮ガスCの供給源として、コンプレッサ110を用いているが、圧縮ガスCの供給源には、コンプレッサ110以外を用いてもよい。
図18は、実施形態2に係る発泡成形用射出成形機1の変形例であり、圧縮ガスCの供給にボンベ120を用いる場合の説明図である。加熱バレル50内への圧縮ガスCの供給源には、例えば、
図18に示すように、圧縮ガスCが貯蔵されたボンベ120を用いてもよい。この場合、圧縮ガスCには、窒素ガス等の不活性ガスを使用し、ボンベ120は、窒素ガス等の不活性ガスが貯蔵されたボンベ120を用いるのが好ましい。
【0119】
このように、加熱バレル50内への圧縮ガスCの供給源に、圧縮ガスCが貯蔵されたボンベ120を用いることにより、圧縮ガスCの供給源としてコンプレッサ110を使用する場合のように、コンプレッサ110を作動させるための電源等のエネルギー源が不要になる。これにより、発泡成形用射出成形機1の設置場所の設備に関わらず、加熱バレル50内へ容易に圧縮ガスCを供給することができる。この結果、発泡成形を行う際におけるコストの低減を図りつつ、より容易に発泡成形を行うことができる。
【0120】
<発泡成形方法の実験>
発明者らは、実施形態1に係る発泡成形方法を用いた発泡成形についての実験を行った。次に、発泡成形の実験について説明する。発泡成形の実験は、実施形態1に係る発泡成形方法を用いた発泡成形と、発泡成形を行わない標準成形とで、それぞれサンプルを成形することにより行った。
図19は、発泡成形の実験により得られた発泡成形サンプルの外観図である。
図19は、発泡成形の実験により得られた発泡成形サンプルの写真になっている。
図19に示される2つのサンプルのうち、左側が、実施形態1に係る発泡成形方法を用いた発泡成形によって得られたサンプルである発泡成形サンプル200になっており、右側が、発泡成形を行わない標準成形によって得られたサンプルである標準成形サンプル210になっている。
【0121】
発泡成形サンプル200と標準成形サンプル210とは、いずれも長さ100mm、幅75mm、厚み4mmの板形状になっており、成形に用いる金型は、比較的厚み寸法が大きい厚肉金型を使用して成形した。溶融樹脂を充填するゲート(実施形態1に係る発泡成形用射出成形機1における固定金型16fの貫通口18)は、サンプルの中央に配置している。成形に使用した成形機は、発泡成形サンプル200を成形した発泡成形用射出成形機1と、標準成形サンプル210を成形した射出成形機とのいずれも、スクリュ直径が36mm、型締装置の型締力が980kNで、シャットオフノズルを付属していること以外は、標準的な射出成形機の仕様になっている。
【0122】
成形品の材料となる樹脂にはポリプロピレンを使用し、計量工程における計量時のスクリュストローク設定は36mm、背圧設定は10MPa、充填速度は25mm/sである。また、発泡成形における発泡の効果を確認するために、金型への溶融樹脂の充填後の保圧設定は、0MPaとして保圧未使用とした。実施形態1に係る発泡成形方法を用いた発泡成形においては、シャットオフノズルを開いた状態でスクリュを144mm後退させ、ノズル部から加熱バレル内に空気を吸い込んだ後に、スクリュを長手方向Yに移動させたり回転させたりすることにより、加熱バレル内に取り込んだ空気を溶融樹脂内に拡散させた。
【0123】
発泡成形サンプル200と標準成形サンプル210とは、いずれも厚さが4mmであり、比較的厚肉であるため、
図19に示すように、標準成形サンプル210では、全面に成形不良であるヒケ211が発生しているのに対し、発泡成形サンプル200では、ヒケが発生していない。これにより、実施形態に係る発泡成形方法を用いて発泡成形を行った場合でも、厚肉成形においてもヒケの抑制効果を確認でき、有効的な発泡成形を行うことが出来ることが分かった。
【符号の説明】
【0124】
1…発泡成形用射出成形機、5…ベース、6…第1レール、10…射出装置、15…型締装置、16…金型、16f…固定金型、16m…移動金型、17…キャビティ、18…貫通口、20…フレーム、21…基台、22…前壁、23…後壁、24…脚部、30…上フレーム、31…前壁、32…側壁、33…支持ピン、34…固定ねじ、35…第2レール、40…推進機構、41…駆動用電動機、42…連結機構、43…ボールねじ機構、44…ねじ部、45…ナット部、50…加熱バレル、51…ヒータ、52…ノズル部、53…シャットオフノズル、53a…開閉部、53b…開閉ロッド、53c…アクチュエータ、55…ホッパ、56…供給口、57…チェックバルブ、58…供給管、60…スクリュ、61…フライト、62…溝部、63…溝壁、64…連通部、65…チェックリング、70…回転機構、71…回転機構本体部、72…ステー、73…駆動用電動機、74…伝動ベルト、75…プーリ、76…軸受、80…前後進機構、81…駆動用電動機、82…エンコーダ、83…伝動ベルト、84…プーリ、85…軸受、86…ボールねじ機構、87…ねじ部、88…ナット部、90…ロードセル、100…制御部、101…表示部、102…入力部、110…コンプレッサ、120…ボンベ、200…発泡成形サンプル、210…標準成形サンプル、211…ヒケ、R…溶融樹脂、A…大気、B…気泡、C…圧縮ガス、M…発泡成形品