(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】車両用コンソールボックス
(51)【国際特許分類】
B60R 7/04 20060101AFI20240716BHJP
B60N 3/00 20060101ALI20240716BHJP
E05B 83/32 20140101ALI20240716BHJP
E05C 21/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B60R7/04 C
B60N3/00 Z
E05B83/32
E05C21/00 A
(21)【出願番号】P 2021049851
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 祐
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111251959(CN,A)
【文献】特開平10-217857(JP,A)
【文献】特開平04-353059(JP,A)
【文献】特開2021-126922(JP,A)
【文献】特開平08-048189(JP,A)
【文献】特開2011-088620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
B60N 3/00
E05B 83/32
E05C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有するコンソールボックス本体と、前記コンソールボックス本体の前記開口を開閉可能に左のヒンジの軸と右のヒンジの軸を介して前記コンソールボックス本体に対して左右に両開き可能に組み付けられたリッドと、を備えており、
前記リッドには、
前記右のヒンジの軸による前記コンソールボックス本体に対する前記リッドの左開きをロックする左のロック機構と、前記左のヒンジの軸による前記コンソールボックス本体に対する前記リッドの右開きをロックする右のロック機構と、前記左のロック機構をロック解除する左のサイドノブと、前記右のロック機構をロック解除する右のサイドノブと、を備えている車両用コンソールボックスであって、
前記リッドの後端部には、
前記左のロック機構と前記右のロック機構の少なくとも一方を後部座席の乗員からアクセス可能にロック解除するリアノブを備えて
おり、
前記リッドには、前記左のヒンジの軸と前記右のヒンジの軸が枢着された切替部材を備えており、
前記切替部材は、下方に向けて突出する略U字状に形成されており、
前記リアノブは、前記切替部材の略U字状の凹空間に位置するように備えられている車両用コンソールボックス。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用コンソールボックスであって、
前記左のサイドノブ若しくは前記右のサイドノブ又は前記リアノブを操作しても、前記リアノブ又は前記左のサイドノブ若しくは前記右のサイドノブが操作された状態となることがないように、前記左のサイドノブ若しくは前記右のサイドノブおよび前記リアノブの機械的な連結が遮断されている車両用コンソールボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用コンソールボックスに関し、詳しくは、開口を有するコンソールボックス本体と、コンソールボックス本体の開口を開閉可能に左右のヒンジの軸を介してコンソールボックス本体に対して左右に両開き可能に組み付けられたリッドとを備えている車両用コンソールボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の車両用コンソールボックスが既に知られている。ここで、下記特許文献1には、リッドが、コンソールボックス本体の開口を開閉可能に左右のヒンジの軸を介してコンソールボックス本体に対して左右に両開き可能に組み付けられている車両用コンソールボックスが開示されている。このような車両用コンソールボックスでは、リッドは、左右のヒンジの軸によるコンソールボックス本体に対するリッドの左右の両開きをそれぞれロックする左右のロック機構と、左右のロック機構をそれぞれロック解除する左右のサイドノブとを備えている。
【0003】
これにより、例えば、フロント左席(例えば、助手席)の乗員が左のサイドノブの操作によって左のロック機構をロック解除すると、右のヒンジの軸回りにリッドを回転させてリッドを左開きできる。そのため、フロント左席の乗員が車両用コンソールボックスを使用できる。これと同様に、例えば、フロント右席(例えば、運転席)の乗員が右のサイドノブの操作によって右のロック機構をロック解除すると、左のヒンジの軸回りにリッドを回転させてリッドを右開きできる。そのため、フロント右席の乗員が車両用コンソールボックスを使用できる。このように、フロント席(フロント左席およびフロント右席)の乗員のどちらからでも操作性良く(アクセス良く)左右のロック機構をロック解除してリッドの自身側を開けることができる。したがって、車両用コンソールボックスの使用時における乗員の利便性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、左右のロック機構を解除するための左右のサイドノブは、それぞれリッドの前寄り位置に設けられている。そのため、後部座席の左右の乗員からの左右のサイドノブの操作(アクセス)が困難であった。すなわち、左右のロック機構をロック解除するための操作性を向上させることが求められていた。
【0006】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、リッドが両開きの車両用コンソールボックスにおいて、フロント席の左右の乗員だけでなく後部座席の左右の乗員からの左右のロック機構をロック解除するための操作性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの特徴によると、車両用コンソールボックスは、開口を有するコンソールボックス本体と、コンソールボックス本体の開口を開閉可能に左のヒンジの軸と右のヒンジの軸を介してコンソールボックス本体に対して左右に両開き可能に組み付けられたリッドとを備えている。リッドには、右のヒンジの軸によるコンソールボックス本体に対するリッドの左開きをロックする左のロック機構と、左のヒンジの軸によるコンソールボックス本体に対するリッドの右開きをロックする右のロック機構と、左のロック機構をロック解除する左のサイドノブと、右のロック機構をロック解除する右のサイドノブとを備えている。リッドの後端部には、左のロック機構と右のロック機構の少なくとも一方を後部座席の乗員からアクセス可能にロック解除するリアノブを備えている
【0008】
そのため、左のサイドノブ又は右のサイドノブの操作と同様の操作をリアノブで実施できる。また、このリアノブは、後部座席の乗員からアクセス可能にリッドの後端部に備えられているため、後部座席の乗員はこのリアノブの操作をスムーズに実施できる。したがって、フロント席の左右の乗員だけでなく後部座席の乗員からの左右のロック機構をロック解除するための操作性を向上させることができる。
【0009】
本開示の他の特徴によると、リッドには、左のヒンジの軸と右のヒンジの軸が枢着された切替部材を備えている。切替部材は、下方に向けて突出する略U字状に形成されている。リアノブは、切替部材の略U字状の凹空間に位置するように備えられている。
【0010】
そのため、リアノブの配置の高さ位置を低く設定できる。したがって、リッドの厚みを増すことなく、リアノブを左のサイドノブと右のサイドノブに対して同一の高さ位置に配置できる。
【0011】
また、本開示の他の特徴によると、左のサイドノブ若しくは右のサイドノブ又はリアノブを操作しても、リアノブ又は左のサイドノブ若しくは右のサイドノブが操作された状態となることがないように、左のサイドノブ若しくは右のサイドノブおよびリアノブの機械的な連結が遮断されている。
【0012】
そのため、操作していないノブが、操作された状態となることがない。したがって、リッドの開け操作時の見栄えの悪化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る車両用コンソールボックスの全体斜視図である。
【
図2】
図1の車両用コンソールボックスにおける分解図である。
【
図3】
図1において、リッドのアウタ部材を透過した平面図である。
【
図6】
図3において、右のサイドノブを操作した状態を示す図である。
【
図7】
図4において、リッドを右開きした状態を示す図である。
【
図8】
図5において、リッドを右開きした状態を示す図である。
【
図9】
図4において、リッドを左開きした状態を示す図である。
【
図10】
図5において、リッドを左開きした状態を示す図である。
【
図11】
図3において、右のリアノブを操作した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態を、
図1~11を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、上下、前後、左右は、車両用コンソールボックス1を車両(例えば、図示しない、自動車)に組み付けた状態を基準としたときの上下、前後、左右を示している。
【0015】
車両用コンソールボックス1は、主として、コンソールボックス本体2と、リッド3とから構成されている(
図1参照)。以下に、これらコンソールボックス本体2と、リッド3とを個別に説明する。
【0016】
はじめに、コンソールボックス本体2を説明する(
図2参照)。コンソールボックス本体2は、内部に物品(図示しない)を出し入れ可能な開口20aを有する矩形枠状のベゼル20と、ベゼル20の左右の縁部に締結される左右一対のサイドパネル28とを備えている。ベゼル20の左右の前端部には、略逆L字形状の張出部21が左右に対を成すように形成されている。
【0017】
張出部21の先端部21aには、前ロッド41のヒンジピン41aを抜き挿し可能な挿込孔21bが形成されている。ベゼル20の後端部には、下ベース25と上ベース26とから上下に半割構造を成すヒンジベース22が組み付けられている。下ベース25の右端部には、第1トーションばね24を装着可能な装着部25aが形成されている。装着部25aには、第1トーションばね24が装着されている。
【0018】
第1トーションばね24の一端部24aは、下ベース25に掛け留めされている。第1トーションばね24の他端部24bは、後述する切替部材60の右端部に掛け留めされている。また、下ベース25の右端部には、後述する第1シャフト61を挿し込み可能な貫通孔25bが形成されている。貫通孔25bは、装着部25aに装着された第1トーションばね24と同一の軸心を成すように形成されている。
【0019】
上ベース26は、下ベース25の目隠しカバーを成すものである。
これにより、下ベース25の装着部25aに装着した第1トーションばね24を目隠しできる。そのため、下ベース25の見栄え(リッド3を開けたときの見栄え)を向上させることができる。なお、
図2からも明らかなように、ヒンジベース22は、切替部材60に沿うように、下方に向けて突出する略U字状に形成されている。コンソールボックス本体2は、このように構成されている。
【0020】
次に、リッド3を説明する(
図2~5参照)。リッド3は、略矩形状のインナ部材30と、インナ部材30に組み付けられるロックベース40と、インナ部材30が組み付けられ意匠パネルであるアウタ部材70とを備えている(
図2参照)。以下に、これらインナ部材30と、ロックベース40と、アウタ部材70とを個別に説明する。
【0021】
はじめに、インナ部材30を説明する。インナ部材30の後端部には、上述したコンソールボックス本体2のヒンジベース22および切替部材60を覆い可能に左右方向に沿って盛り上がる膨出部34が形成されている。膨出部34は、切替部材60に沿うように、下方に向けて突出する略U字状に形成されている。膨出部34の左端部には、後述する第3トーションばね64を挿し込み可能な貫通孔34aが形成されている。
【0022】
膨出部34の右端部には、後述する右の後ロッド47を挿し込み可能な貫通孔34bが形成されている。膨出部34には、その略U字状の凹空間34cに位置するようにリアノブユニット31が左右に対を成すように2本の第1ビスB1(合計4本の第1ビスB1)を介して組み付けられている(
図3~5参照)。すなわち、左右に対を成すリアノブユニット31は、膨出部34の凹空間34cに位置するように2本の第1ビスB1を介して組み付けられている。
【0023】
このように組み付けられていると、左右に対を成すリアノブユニット31は、結果として、ヒンジベース22の凹空間22cおよび切替部材60の凹空間60dに位置することとなる(
図4~5参照)。リアノブユニット31は、ノブベース32と、ノブベース32に対して前後方向に沿ってスライド可能なリアノブ33とを備えている。リアノブ33の先端部には、略鋭角形状に先細りした押当部33aが形成されている。インナ部材30は、このように構成されている。
【0024】
ロックベース40の左右の縁部には、略クランク形状の前ロッド41が左右に対を成すように第1引っ張りばね42を介して前後方向に沿ってスライド可能に組み付けられている(
図3参照)。前ロッド41の前端部には、丸軸形状のヒンジピン41aが前方に突出するように形成されている。この左右の前ロッド41の各ヒンジピン41aが、特許請求の範囲に記載の「左のヒンジの軸、右のヒンジの軸」に相当する。
【0025】
前ロッド41の中央部には、丸軸形状の第1挿込ピン41bが上方に突出するように形成されている。前ロッド41の後端部には、丸軸形状の第2挿込ピン41cが上方に突出するように形成されている。前ロッド41の前部には、前後方向に対して略45°傾斜した傾斜壁41dが形成されている。傾斜壁41dには、ストッパ体41eが形成されている。
【0026】
ストッパ体41eは、内方に面する(左右方向に直交する面を成す)内壁41fと、後方に面する(前後方向に直交する面を成す)後壁41gと、内壁41fと後壁41gとが交わる角部41hを備えている。また、傾斜壁41dには、引掛片41iが形成されている。引掛片41iには、後述するロック解除部材68の引掛部68bが引っ掛けられている。ロックベース40の左右の前端部には、サイドノブ43が左右に対を成すように左右方向に沿ってスライド可能に組み付けられている。サイドノブ43の先端部には、前ロッド41の傾斜壁41dを押し当て可能な押当部43aが形成されている。
【0027】
ロックベース40の左右の中央部には、第1カム44が左右に対を成すように第2ビスB2を介して回転可能に組み付けられている。第1カム44は、径方向に沿って一端部材45と他端部材46とを備えている。一端部材45は、長孔45aを備えている。長孔45aには、前ロッド41の第1挿込ピン41bが挿し込まれている。他端部材46は、長孔46aを備えている。長孔46aには、後述する後ロッド47の挿込ピン47aが挿し込まれている。
【0028】
ロックベース40の左右の後部には、後ロッド47が左右に対を成すように前後方向に沿ってスライド可能に組み付けられている。このとき、右の後ロッド47は、インナ部材30の貫通孔34bに挿し込まれている。後ロッド47の前端部には、丸軸形状の挿込ピン47aが上方に向けて突出するように形成されている。後ロッド47の後端部には、丸軸形状のロックピン47bが後方に向けて突出するように形成されている。
【0029】
また、ロックベース40の左右の後部には、第2カム48が左右に対を成すように第3ビスB3と第2トーションばね51とを介して回転可能に組み付けられている。第2カム48は、径方向に沿って一端部材49と他端部材50とを備えている。一端部材49は、長孔49aを備えている。長孔49aには、前ロッド41の第2挿込ピン41cが挿し込まれている。
【0030】
ロックベース40の左の後端部には、第3トーションばね64を装着可能な装着部40aが形成されている。装着部40aには、第3トーションばね64が装着されている。第3トーションばね64の一端部64aは、ロックベース40に掛け留めされている。第3トーションばね64の他端部64bは、切替部材60の左端部に掛け留めされている。また、装着部40aには、後述する第2シャフト63を挿し込み可能な貫通孔40bが形成されている。
【0031】
貫通孔40bは、装着部40aに装着された第3トーションばね64と同一の軸心を成すように形成されている。ロックベース40の前部には、略ロッド形状の規制部材66が第2引っ張りばね67を介して左右方向に沿ってスライド可能に組み付けられている。規制部材66の先端部には、左右方向に対して略45°傾斜する傾斜部66aが形成されている。
【0032】
また、ロックベース40の左右の前端部には、ロック解除部材68が左右に対を成すように第4トーションばね69を介して回転可能に組み付けられている。ロック解除部材68には、コンソールボックス本体2の張出部21の先端部21aに押し当てられる押当部68aが形成されている。また、ロック解除部材68には、前ロッド41の引掛片41iを引っ掛けられた引掛部68bが形成されている。ロックベース40は、このように構成されている。なお、このロックベース40における前ロッド41、第1カム44、後ロッド47がロック機構10に相当する。
【0033】
アウタ部材70の左右の前端部には、左右に対を成すサイドノブ43に対応するように切欠71が左右に対を成すように形成されている(
図2参照)。アウタ部材70の表面は、本革等の表皮72によって覆われている。これにより、アウタ部材70の意匠性を高めることができる。アウタ部材70は、このように構成されている。
【0034】
このように構成されているロックベース40は、7本の第4ビスB4を介してインナ部材30に組み付けられている。また、ロックベース40が組み付けられたインナ部材30は、5本の第5ビスB5を介してアウタ部材70に組み付けられている。これらインナ部材30と、ロックベース40と、アウタ部材70とからリッド3は構成されている。リッド3は、このように構成されている。
【0035】
このように構成されているリッド3は、コンソールボックス本体2に切替部材60を介して組み付けされている。ここで、この組み付けを詳述する。この組み付けを詳述するにあたって、切替部材60を説明する。切替部材60は、下方に向けて突出する略U字状に形成されている。
【0036】
切替部材60の左端部には、第2シャフト63を貫通可能な貫通孔60aが形成されている。また、切替部材60の左端部には、既に説明したように、第3トーションばね64の他端部64bが掛け留めされている。これら貫通孔60aと第3トーションばね64とロックベース40の貫通孔40bには、第2シャフト63が順に挿し込まれている。
【0037】
挿し込まれた第2シャフト63は、Cリング63aによって抜け防止状態となっている。この第2シャフト63が、特許請求の範囲に記載の「左のヒンジの軸」に相当する。また、第2シャフト63の先端部には、左の後ロッド47のロックピン47bを抜き挿し可能な挿込穴63bが形成されている。挿込穴63bには、左の後ロッド47のロックピン47bが挿し込まれている。
【0038】
一方、切替部材60の右端部には、第1シャフト61を貫通可能な貫通孔60bが形成されている。また、切替部材60の右端部には、既に説明したように、第1トーションばね24の他端部24bが掛け留めされている。また、切替部材60の右部には、右の後ロッド47のロックピン47bが抜き挿し可能に挿し込まれるロック穴60cが形成されている。これら貫通孔60bと第1トーションばね24とヒンジベース22の貫通孔25bには、第1シャフト61が順に挿し込まれている。
【0039】
挿し込まれた第1シャフト61は、Cリング61aによって抜け防止状態となっている。この第1シャフト61が、特許請求の範囲に記載の「右のヒンジの軸」に相当する。リッド3は、このようにしてコンソールボックス本体2に切替部材60を介して組み付けされている。このように組み付けられたコンソールボックス本体2とリッド3とから車両用コンソールボックス1は構成されている。
【0040】
続いて、
図3~11を参照して、上述した車両用コンソールボックス1の作用を説明する。この説明にあたって、車両用コンソールボックス1をフロント右席(例えば、運転席)の乗員が使用する場合と、フロント左席(例えば、助手席)の乗員が使用する場合と、後部座席4の右の乗員が使用する場合と、後部座席4の左の乗員(いずれの乗員も図示しない)が使用する場合を個別に説明する。なお、これらのいずれの説明においても、リッド3の初期状態(リッド3が閉ざされた状態)から説明する(
図3~5参照)。この初期状態では、左右のロック機構10のロックによってリッド3がロックされた状態となっている。
【0041】
はじめに、フロント右席の乗員が使用する場合を説明する。まず、フロント右席の乗員は、右のサイドノブ43を押し込む操作を行う(
図6参照)。すると、右のサイドノブ43の押当部43aが右の前ロッド41の傾斜壁41dを押し当てる。これにより、右の前ロッド41が第1引っ張りばね42の付勢力に抗して後方へスライドする。そのため、右の前ロッド41のヒンジピン41aがコンソールボックス本体2の右の張出部21の挿込孔21bから脱落する。
【0042】
このスライドにより、右の前ロッド41に連結されている右の第1カム44と右の第2カム48が、平面視において、時計回り方向に回転する。この右の第1カム44の回転により、右の第1カム44に連結されている右の後ロッド47が前方へスライドする。そのため、右の後ロッド47のロックピン47bが切替部材60のロック穴60cから脱落する。これらの脱落によって、右のロック機構10がロック解除される。すなわち、右のサイドノブ43を押し込む操作によって、右のロック機構10をロック解除できる。
【0043】
そのため、左の前ロッド41のヒンジピン41aと第2シャフト63とを左のヒンジの軸とする軸回りにリッド3を右開きできる(
図7~8参照)。したがって、車両用コンソールボックス1の内部に物品を出し入れできる。なお、リッド3を右開きした後に、右のサイドノブ43を押し込む操作を解消してよい。また、上述したように右の第2カム48が回転しても、この回転は空回りとなっている(
図6参照)。
【0044】
すなわち、この右の第2カム48が回転しても、右のリアノブユニット31のリアノブ33が動作することがない。この記載が、特許請求の範囲に記載の「前記左のサイドノブと前記右のサイドノブまたは前記左のリアノブと前記右のリアノブを操作しても、前記左のリアノブと前記右のリアノブまたは前記左のサイドノブと前記右のサイドノブが操作された状態となることがないように、前記左のサイドノブと前記右のサイドノブおよび前記左のリアノブと前記右のリアノブの機械的な連結が遮断されている」に相当する。
【0045】
また、右開きしたリッド3を閉じていくと、右のロック解除部材68の押当部68aがコンソールボックス本体2の右の張出部21の先端部21aに押し当てられる。すると、右のロック解除部材68の押当部68aが引き起こされる方向に第4トーションばね69の付勢力に抗して右のロック解除部材68が回転する。この回転により、右のロック解除部材68に連結している右の前ロッド41が第1引っ張りばね42の付勢力に抗して後方へスライドする。
【0046】
そのため、右のサイドノブ43を押し込む操作を行ったときと同様に、右のロック機構10がロック解除される。なお、閉じ途中のリッド3の右のロック解除部材68の押当部68aがコンソールボックス本体2の右の張出部21の先端部21aを通過する(押し当たりが終了する)と、右のロック解除部材68が第4トーションばね69の付勢力によって逆回転する(回転する前の状態に戻される)。
【0047】
この逆回転により、右の前ロッド41が第1引っ張りばね42の付勢力によって前方へスライドする。そのため、右の前ロッド41のヒンジピン41aがコンソールボックス本体2の右の張出部21の挿込孔21bに侵入する。このスライドにより、右の前ロッド41に連結されている右の第1カム44と右の第2カム48が、平面視において、反時計回り方向に回転する。
【0048】
この右の第1カム44の回転により、右の第1カム44に連結されている右の後ロッド47が後方へスライドする。そのため、右の後ロッド47のロックピン47bが切替部材60のロック穴60cに侵入する。これらの侵入によって、右のロック機構10がロックされる。したがって、リッド3が初期状態に戻される(
図3~5参照)。
【0049】
次に、フロント左席の乗員が使用する場合を説明する。まず、フロント左席の乗員は、左のサイドノブ43を押し込む操作を行う。すると、左のサイドノブ43の押当部43aが左の前ロッド41の傾斜壁41dを押し当てる。これにより、左の前ロッド41が第1引っ張りばね42の付勢力に抗して後方へスライドする。そのため、左の前ロッド41のヒンジピン41aがコンソールボックス本体2の左の張出部21の挿込孔21bから脱落する。
【0050】
このスライドにより、左の前ロッド41に連結されている左の第1カム44と左の第2カム48が、平面視において、時計回り方向に回転する。この左の第1カム44の回転により、左の第1カム44に連結されている左の後ロッド47が前方へスライドする。そのため、左の後ロッド47のロックピン47bが第2シャフト63の挿込穴63bから脱落する。これらの脱落によって、左のロック機構10がロック解除される。すなわち、左のサイドノブ43を押し込む操作によって、左のロック機構10をロック解除できる。
【0051】
そのため、右の前ロッド41のヒンジピン41aと第1シャフト61とを右のヒンジの軸とする軸回りにリッド3を左開きできる(
図9~10参照)。したがって、車両用コンソールボックス1の内部に物品を出し入れできる。なお、リッド3を左開きした後に、左のサイドノブ43を押し込む操作を解消してよい。また、上述したように左の第2カム48が回転しても、この回転は空回りとなっている。
【0052】
すなわち、この第2カム48が回転しても、右のリアノブユニット31のリアノブ33が動作することがない。この記載が、特許請求の範囲に記載の「前記左のサイドノブと前記右のサイドノブまたは前記左のリアノブと前記右のリアノブを操作しても、前記左のリアノブと前記右のリアノブまたは前記左のサイドノブと前記右のサイドノブが操作された状態となることがないように、前記左のサイドノブと前記右のサイドノブおよび前記左のリアノブと前記右のリアノブの機械的な連結が遮断されている」に相当する。
【0053】
また、右開きしたリッド3を閉じていくと、右のロック解除部材68の押当部68aがコンソールボックス本体2の右の張出部21の先端部21aに押し当てられる。すると、右のロック解除部材68の押当部68aが引き起こされる方向に第4トーションばね69の付勢力に抗して右のロック解除部材68が回転する。この回転により、右のロック解除部材68に連結している右の前ロッド41が第1引っ張りばね42の付勢力に抗して後方へスライドする。
【0054】
そのため、右のサイドノブ43を押し込む操作を行ったときと同様に、右のロック機構10がロック解除される。なお、閉じ途中のリッド3の右のロック解除部材68の押当部68aがコンソールボックス本体2の右の張出部21の先端部21aを通過する(押し当たりが終了する)と、右のロック解除部材68が第4トーションばね69の付勢力によって逆回転する(回転する前の状態に戻される)。
【0055】
この逆回転により、右の前ロッド41が第1引っ張りばね42の付勢力によって前方へスライドする。そのため、右の前ロッド41のヒンジピン41aがコンソールボックス本体2の右の張出部21の挿込孔21bに侵入する。このスライドにより、右の前ロッド41に連結されている右の第1カム44と第2カム48が、平面視において、反時計回り方向に回転する。
【0056】
この第1カム44の回転により、右の第1カム44に連結されている右の後ロッド47が後方へスライドする。そのため、右の後ロッド47のロックピン47bが切替部材60のロック穴60cに侵入する。これらの侵入によって、右のロック機構10がロックされる。したがって、リッド3が初期状態に戻される(
図3~5参照)。
【0057】
次に、後部座席4の右の乗員が使用する場合を説明する。まず、後部座席4の右の乗員は、右のリアノブユニット31のリアノブ33を押し込む操作を行う(
図11参照)。すると、右のリアノブ33の押当部33aが右の第2トーションばね51の付勢力に抗して右の第2カム48を時計回り方向に回転させる。この回転により、右の第2カム48に連結されている右の前ロッド41が第1引っ張りばね42の付勢力に抗して後方へスライドする。そのため、右の前ロッド41のヒンジピン41aがコンソールボックス本体2の右の張出部21の挿込孔21bから脱落する。
【0058】
このスライドにより、右の前ロッド41に連結されている右の第1カム44が、平面視において、時計回り方向に回転する。この右の第1カム44の回転により、右の第1カム44に連結されている右の後ロッド47が前方へスライドする。そのため、右の後ロッド47のロックピン47bが切替部材60のロック穴60cから脱落する。これらの脱落によって、右のロック機構10がロック解除される。すなわち、右のリアノブ33を押し込む操作によって、右のロック機構10をロック解除できる。
【0059】
以降、上述したフロント右席の乗員が使用する場合の説明と同様に、リッド3を右開きできる(
図7~8参照)。また、上述したフロント右席の乗員が使用する場合の説明と同様に、リッド3を初期状態に戻すことができる(
図3~5参照)。
【0060】
最後に、後部座席4の左の乗員が使用する場合を説明する。まず、後部座席4の左の乗員は、左のリアノブユニット31のリアノブ33を押し込む操作を行う。すると、左のリアノブ33の押当部33aが左の第2トーションばね51の付勢力に抗して左の第2カム48を反時計回り方向に回転させる。この回転により、左の第2カム48に連結されている左の前ロッド41が第1引っ張りばね42の付勢力に抗して後方へスライドする。そのため、左の前ロッド41のヒンジピン41aがコンソールボックス本体2の左の張出部21の挿込孔21bから脱落する。
【0061】
このスライドにより、左の前ロッド41に連結されている左の第1カム44が、平面視において、時計回り方向に回転する。この左の第1カム44の回転により、左の第1カム44に連結されている左の後ロッド47が前方へスライドする。そのため、左の後ロッド47のロックピン47bが第2シャフト63の挿込穴63bから脱落する。これらの脱落によって、左のロック機構10がロック解除される。すなわち、左のリアノブ33を押し込む操作によって、左のロック機構10をロック解除できる。
【0062】
以降、上述したフロント左席の乗員が使用する場合の説明と同様に、リッド3を左開きできる(
図9~10参照)。また、上述したフロント左席の乗員が使用する場合の説明と同様に、リッド3を初期状態に戻すことができる(
図3~5参照)。これらの説明から明らかなように、この車両用コンソールボックス1において、リッド3を両開きできる。
【0063】
なお、右のサイドノブ43を押し込む操作を行うと、第1引っ張りばね42の付勢力に抗して後方へスライドした右の前ロッド41の内壁41fが規制部材66の基端部66bと干渉する(
図6参照)。このとき、左のサイドノブ43を押し込む操作を行うと、左の前ロッド41の内壁41fが規制部材66の傾斜部66aに干渉する。そのため、右のサイドノブ43を押し込む操作を行うと、左のサイドノブ43を押し込む操作を受け付けない。
【0064】
これとは逆に、左のサイドノブ43を押し込む操作を行うと、第1引っ張りばね42の付勢力に抗して後方へスライドし左の前ロッド41の角部41hが規制部材66の傾斜部66aと干渉する。これにより、規制部材66が第2引っ張りばね67の付勢力に抗して右へスライドする。そのため、右へスライドした規制部材66の基端部66bが右の前ロッド41の後壁41gに干渉する。したがって、左のサイドノブ43を押し込む操作を行うと、右のサイドノブ43を押し込む操作を受け付けない。結果として、左右のサイドノブ43が同時に操作されることを防止できる。このことは、左右のリアノブ33においても同様である。
【0065】
本発明の実施形態に係る車両用コンソールボックス1は、上述したように構成されている。この構成によれば、リッド3には、左のロック機構10と、右のロック機構10と、左のロック機構10をロック解除する左のサイドノブ43と、右のロック機構10をロック解除する右のサイドノブ43を備えている。また、リッド3の後端部であるインナ部材30の膨出部34の左右の端部には、左のロック機構と右のロック機構の少なくとも一方を後部座席4の乗員からアクセス可能にロック解除する左右のリアノブ33を備えている。
【0066】
そのため、左のサイドノブ43又は右のサイドノブ43の操作と同様の操作を左のリアノブ33または右のリアノブ33で実施できる。また、これら左右のリアノブ33は、後部座席4の乗員からアクセス可能にリッド3の後端部に備えられているため、後部座席4の乗員はこれら左右のリアノブ33の操作をスムーズに実施できる。したがって、フロント席の左右の乗員だけでなく後部座席4の左右の乗員からの左右のロック機構10をロック解除するための操作性を向上させることができる。
【0067】
また、この構成によれば、リッド3には、左のヒンジの軸(左の前ロッド41のヒンジピン41aと第2シャフト63)と右のヒンジの軸(右の前ロッド41のヒンジピン41aと第1シャフト61)が枢着された切替部材60を備えている。切替部材60は、下方に向けて突出する略U字状に形成されている。左右のリアノブ33は、切替部材60の略U字状の凹空間60dに位置するように備えられている。
【0068】
そのため、左右のリアノブ33の配置の高さ位置を低く設定できる。したがって、リッド3の厚みを増すことなく、左右のリアノブ33を左右のサイドノブ43に対して同一の高さ位置に配置できる。
【0069】
また、この構成によれば、左右のサイドノブ43または左右のリアノブ33を操作しても、左右のリアノブ33または左右のサイドノブ43が操作された状態となることがないように、左右のサイドノブ43および左右のリアノブ33の機械的な連結が遮断されている。そのため、操作していないノブが、操作された状態となることがない。したがって、リッド3の開け操作時の見栄えの悪化を防止できる。
【0070】
以上、実施形態について説明したが、この実施形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができるものである。実施形態では、左右のリアノブ33、左右のサイドノブ43の操作として、押し込み操作を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、左右のリアノブ33、左右のサイドノブ43の操作として、引き出し操作でも構わない。
【0071】
また、実施形態では、前ロッド41と後ロッド47の連結を第1カム44によって実施する形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、前ロッド41と後ロッド47の連結をピニオンギヤによって実施する形態でも構わない。
【0072】
また、実施形態では、リアノブ33は、左右に対を成すように備えられている形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、リアノブ33は、左右のいずれか一方に備えられている形態でも構わない。
【符号の説明】
【0073】
1 車両用コンソールボックス
2 コンソールボックス本体
3 リッド
4 後部座席
10 ロック機構
20a 開口
33 リアノブ
41a ヒンジピン(左右のヒンジの軸)
43 サイドノブ
61 第1シャフト(右のヒンジの軸)
63 第2シャフト(左のヒンジの軸)