(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】瞬低補償システム
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20240716BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H02J3/32
(21)【出願番号】P 2021100628
(22)【出願日】2021-06-17
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 優真
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187219(JP,A)
【文献】特開2002-272016(JP,A)
【文献】特開2006-288142(JP,A)
【文献】特開2006-197709(JP,A)
【文献】特開2004-236427(JP,A)
【文献】特開平06-113489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
H02J 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の交流負荷に交流電力を供給する第1の瞬低補償装置と、
第2の交流負荷に交流電力を供給する第2の瞬低補償装置とを備え、
前記第1の瞬低補償装置は、
商用電源と接続され、
交流電力を前記第1の交流負荷に直送するとともに、前記商用電源の喪失時に商用系統を高速解列する第1のハイスピードスイッチと、
前記商用電源の喪失時
に直流電圧を供給する第1の蓄電装置と、
前記商用電源の交流電圧を直流電圧に変換し前記第1の蓄電装置へ充電し、前記第1の蓄電装置からの直流電圧を交流電圧に変換し前記第1の交流負荷へ供給する第1の双方向変換装置と、
前記第1のハイスピードスイッチと並列に設けられ、前記第1のハイスピードスイッチの第1のメンテナンスの際に用いられる第1の保守バイパス回路と、
前記第1のメンテナンスの際に、前記第2の瞬低補償装置の第2の交流負荷に供給する交流電力を分岐させて前記商用電源の代わりに前記第1の保守バイパス回路の入力ノードに供給するための第1の分岐回路とを含み、
前記第2の瞬低補償装置は、
前記商用電源と接続され、
交流電力を前記第2の交流負荷に直送するとともに、前記商用電源の喪失時に商用系統を高速解列する第2のハイスピードスイッチと、
前記商用電源の喪失時に前記直流電圧を供給する第2の蓄電装置と、
前記商用電源の交流電圧を直流電圧に変換し前記第2の蓄電装置へ充電し、前記第2の蓄電装置からの直流電圧を交流電圧に変換し前記第2の交流負荷へ供給する第2の双方向変換装置と、
前記第2のハイスピードスイッチと並列に設けられ、前記第2のハイスピードスイッチの第2のメンテナンスの際に用いられる第2の保守バイパス回路と、
前記第2のメンテナンスの際に、前記第1の瞬低補償装置の第1の交流負荷に供給する交流電力を分岐させて前記商用電源の代わりに前記第2の保守バイパス回路の入力ノードに供給するための第2の分岐回路とを含む、瞬低補償システム。
【請求項2】
前記第1の瞬低補償装置は、前記商用電源の入力を遮断する第1の入力遮断器をさらに含み、
前記第1の分岐回路は、前記第1の入力遮断器により前記商用電源の入力を遮断した後、分岐した交流電力を前記第1の保守バイパス回路の入力ノードと接続するための第1の分岐スイッチを含む、
前記第2の瞬低補償装置は、前記商用電源の入力を遮断する第2の入力遮断器をさらに含み、
前記第2の分岐回路は、前記第2の入力遮断器により前記商用電源の入力を遮断した後、分岐した交流電力を前記第2の保守バイパス回路の入力ノードと接続するための第2の分岐スイッチを含む、請求項1記載の瞬低補償システム。
【請求項3】
前記第1の瞬低補償装置は、前記第1のハイスピードスイッチと並列に設けられ、前記第1のハイスピードスイッチをバイパスする第1のバイパス回路を含み、
前記第2の瞬低補償装置は、前記第2のハイスピードスイッチと並列に設けられ、前記第2のハイスピードスイッチをバイパスする第2のバイパス回路を含む、請求項1記載の瞬低補償システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、瞬低補償システムのメンテナンスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、瞬間的な停電も許されない例えばコンピュータ等の重要負荷の電源として瞬低補償装置(以下単にMPCとも称する)が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、従来の瞬低補償装置は、メンテナンスの際には、瞬低および停電から負荷系統を保護することはできないという課題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、瞬低補償装置のメンテナンスの際に、瞬低および停電から負荷系統を保護することが可能な瞬低補償システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある実施形態に従えば、瞬低補償システムは、第1の交流負荷に交流電力を供給する第1の瞬低補償装置と第2の交流負荷に交流電力を供給する第2の瞬低補償装置とを備える。第1の瞬低補償装置は、商用電源と接続され、第1の交流負荷に直送するとともに、商用電源の喪失時に商用系統を高速解列する第1のハイスピードスイッチと、商用電源の喪失時に直流電圧を供給する第1の蓄電装置と、商用電源の交流電圧を直流電圧に変換し第1の蓄電装置へ充電し、第1の蓄電装置からの直流電圧を交流電圧に変換し第1の交流負荷へ供給する第1の双方向変換装置と、第1のハイスピードスイッチと並列に設けられ、第1のハイスピードスイッチの第1のメンテナンスの際に用いられる第1の保守バイパス回路と、第1のメンテナンスの際に、第2の瞬低補償装置の第2の交流負荷に供給する交流電力を分岐させて商用電源の代わりに第1の保守バイパス回路の入力ノードに供給するための第1の分岐回路とを含む。第2の瞬低補償装置は、商用電源と接続され、第2の交流負荷に直送するとともに、商用電源の喪失時に商用系統を高速解列する第2のハイスピードスイッチと、商用電源の喪失時に直流電圧を供給する第2の蓄電装置と、商用電源の交流電圧を直流電圧に変換し第2の蓄電装置へ充電し、第2の蓄電装置からの直流電圧を交流電圧に変換し第2の交流負荷へ供給する第2の双方向変換装置と、第2のハイスピードスイッチと並列に設けられ、第2のハイスピードスイッチの第2のメンテナンスの際に用いられる第2の保守バイパス回路と、第2のメンテナンスの際に、第1の瞬低補償装置の第1の交流負荷に供給する交流電力を分岐させて商用電源の代わりに第2の保守バイパス回路の入力ノードに供給するための第2の分岐回路とを含む。
【0007】
好ましくは、第1の瞬低補償装置は、商用電源の入力を遮断する第1の入力遮断器をさらに含む。第1の分岐回路は、第1の入力遮断器により商用電源の入力を遮断した後、分岐した交流電力を第1の保守バイパス回路の入力ノードと接続するための第1の分岐スイッチを含む。第2の瞬低補償装置は、商用電源の入力を遮断する第2の入力遮断器をさらに含む。第2の分岐回路は、第2の入力遮断器により商用電源の入力を遮断した後、分岐した交流電力を第2の保守バイパス回路の入力ノードと接続するための第2の分岐スイッチを含む。
【0008】
好ましくは、第1の瞬低補償装置は、第1のハイスピードスイッチと並列に設けられ、第1のハイスピードスイッチをバイパスする第1のバイパス回路を含む。第2の瞬低補償装置は、第2のハイスピードスイッチと並列に設けられ、第2のハイスピードスイッチをバイパスする第2のバイパス回路を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の瞬低補償システムは、瞬低補償装置のメンテナンスの際に、瞬低および停電から負荷系統を保護することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に基づく瞬低補償システムの回路構成を説明する図である。
【
図2】実施形態に従う商用給電モード時における瞬低補償システムについて説明する図である。
【
図3】実施形態に従う補償給電回路5AおよびHSS6Aの保守メンテナンスを実施する場合の瞬低補償システムについて説明する図(その1)である。
【
図4】実施形態に従う補償給電回路5AおよびHSS6Aの保守メンテナンスを実施する場合の瞬低補償システムについて説明する図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
図1は、実施形態に基づく瞬低補償システムの回路構成を説明する図である。
図1に示されるように、瞬低補償システムは、瞬低補償装置1A,1Bを含む。
【0013】
瞬低補償装置1Aは、負荷系統16Aに対応して設けられている。瞬低補償装置1Bは、負荷系統16Bに対応して設けられている。なお、本例においては2つの瞬低補償装置について説明するが、特に2つに限られずさらに複数の負荷系統に対応して瞬低補償装置を設ける構成についても適用可能である。
【0014】
瞬低補償装置1Aおよび1Bは、基本的に同一の構成である。
【0015】
瞬低補償装置1Aは、補償給電回路5Aと、ハイスピードスイッチ(以下、HSSとも称する)6Aと、入力遮断器7A,8Aと、出力遮断器9A,10Aと、バイパス回路12Aと、保守バイパス回路14Aとを含む。補償給電回路5Aは、双方向変換器2Aと、蓄電装置3Aと、変圧器4Aとを含む。バイパス回路12Aは、バイパス遮断器11Aを含む。保守バイパス回路14Aは、保守バイパス遮断器13Aを含む。
【0016】
瞬低補償装置1Bは、補償給電回路5Bと、ハイスピードスイッチ6Bと、入力遮断器7B,8Bと、出力遮断器9B,10Bと、バイパス回路12Bと、保守バイパス回路14Bとを含む。補償給電回路5Bは、双方向変換器2Bと、蓄電装置3Bと、変圧器4Bとを含む。バイパス回路12Bは、バイパス遮断器11Bを含む。保守バイパス回路14Bは、保守バイパス遮断器13Bを含む。
【0017】
瞬低補償装置1Aは、A系統の商用電源15Aと接続されている。
【0018】
瞬低補償装置1Bは、B系統の商用電源15Bと接続されている。
【0019】
瞬低補償装置1Aは、交流入力側に入力分岐遮断器17A,18Aと、交流出力側に出力分岐遮断器19Aと20Aとをさらに含む。
【0020】
瞬低補償装置1Bは、交流入力側に入力分岐遮断器17B,18Bと、交流出力側に出力分岐遮断器19Bと20Bとをさらに含む。
【0021】
入力分岐遮断器17Aと18A、入力分岐遮断器17Bと18Bはそれぞれ同時投入を不可とするようインターロックが設けられている。
【0022】
商用給電モードについて説明する。
【0023】
図2は、実施形態に従う商用給電モード時における瞬低補償システムについて説明する図である。
【0024】
図2を参照して、商用給電モードにおいては、入力分岐遮断器18A,18Bと、出力分岐遮断器20A,20Bは開放状態(オフ)となっている。入力分岐遮断器17A,17Bと、出力分岐遮断器19A,19Bは、投入状態(オン)となっている。
【0025】
商用給電モード時、商用電源15Aは、瞬低補償装置1Aと入力分岐遮断器17Aを介して接続され、入力遮断器7A,8Aと、HSS6Aと、出力遮断器9A,10Aを経由して負荷系統16Aへ電力供給する。
【0026】
商用給電モード時、商用電源15Bは、瞬低補償装置1Bと入力分岐遮断器17Bを介して接続され、入力遮断器7B,8Bと、HSS6Bと、出力遮断器9B,10Bを経由して負荷系統16Bへ電力供給する。
【0027】
補償給電回路5Aは、変圧器4Aによって交流電圧を変圧したものを、双方向変換器2Aによって直流電圧に変換し、蓄電装置3Aに充電する。
【0028】
補償給電回路5Bは、変圧器4Bによって交流電圧を変圧したものを、双方向変換器2Bによって直流電圧に変換し、蓄電装置3Bに充電する。
【0029】
補償給電モードについて説明する。
【0030】
商用電源15Aが瞬時低下(以下、瞬低)または停電した際には自動的に補償給電回路5Aによる補償給電モードへと切り換り、商用電源15AはHSS6Aによって高速で切り離されると同時に、蓄電装置3Aの直流電力を双方向変換器2Aによって交流電力へ変換し、変圧器4Aで変圧し、負荷系統16Aへ電力を供給する。
【0031】
商用電源15Bが瞬時低下(以下、瞬低)または停電した際には自動的に補償給電回路5Aによる補償給電モードへと切り換り、商用電源15BはHSS6Bによって高速で切り離されると同時に、蓄電装置3Bの直流電力を双方向変換器2Bによって交流電力へ変換し、変圧器4Bで変圧し、負荷系統16Bへ電力を供給する。
【0032】
これにより商用電源が瞬低または停電した際に瞬断することなく必要な電力を負荷系統に供給し続けることが可能となる。
【0033】
次に、補償給電回路5AおよびHSS6Aの保守メンテナンスを実施する場合について説明する。
【0034】
図3は、実施形態に従う補償給電回路5AおよびHSS6Aの保守メンテナンスを実施する場合の瞬低補償システムについて説明する図(その1)である。
【0035】
図3を参照して、補償給電回路5AおよびHSS6Aの保守メンテナンスを実施する場合には、出力分岐遮断器20Bを投入(オン)する。そして、入力分岐遮断器17Aを開放(オフ)し、入力分岐遮断器18Aを投入(オン)する。瞬低補償装置1Aの入力電源を商用電源15Aから瞬低補償装置1B経由での給電へ切り換える。
【0036】
この際、入力電源の切り換えの際には入力電源が一時喪失状態となるため、瞬低補償装置1Aは自動的に補償給電モードへと切り換り、補償給電回路5Aから負荷系統16Aへ補償給電する。
【0037】
当該出力分岐遮断器20Bを投入(オン)し、入力分岐遮断器18Aを投入(オン)することにより、瞬低補償装置1Aの保守バイパス回路14Aの入力ノードに対して瞬低補償装置1Bの出力の供給が可能となる。
【0038】
図4は、実施形態に従う補償給電回路5AおよびHSS6Aの保守メンテナンスを実施する場合の瞬低補償システムについて説明する図(その2)である。
【0039】
図4を参照して、入力電源の切り換えが完了すると、瞬低補償装置1Bの出力からの商用電源による商用給電モードへと切り戻る。
【0040】
保守バイパス回路14Aへ給電経路を変更するために、保守バイパス遮断器13Aを投入(オン)し、入力遮断器7A、出力遮断器10Aを開放(オフ)する。そして、入力遮断器8Aおよび出力遮断器9Aを開放(オフ)する。これにより、保守バイパス回路14Aより内側の経路は、電気的に分離される。
【0041】
上記手順により、補償給電回路5A、HSS6A、バイパス回路12Aの保守メンテナンスが可能となる。
【0042】
保守メンテナンス終了後は、上記工程の逆の手順で操作することにより元の状態へ戻すことが可能となる。
【0043】
上記実施の形態では、瞬低補償装置1Aは、保守バイパス回路14Aでの給電が可能となっているが、その電力は瞬低補償装置1Bの出力側から供給されている。
【0044】
負荷系統16A、負荷系統16Bの総負荷容量が、瞬低補償装置1Bの装置容量以下の負荷容量となる場合であれば、瞬低または停電が発生した際には瞬低補償装置1Bが動作する。瞬低補償装置1Bの補償給電回路5Bから出力分岐遮断器20Bを介して瞬低補償装置1Aに必要な電力が供給される。これにより、負荷系統16Aと負荷系統16Bの両系統を保護することが可能である。
【0045】
負荷系統16Aと負荷系統16Bへの瞬低補償機能を維持したまま、補償給電回路5A、HSS6A、バイパス回路12Aの保守メンテナンスを実施することが可能となるため、より信頼性の高いシステムを構築することが可能である。
【0046】
実施の形態では簡単のため異なる2つの負荷系統に対し、それぞれ瞬低補償装置が接続されている場合の構成を示したが、同様に異なる2つ以上の負荷系統に対して、それぞれ瞬低補償装置が接続されている場合においても、同様の運用ができるため、負荷系統数に関わらず同じ効果を得ることができる。
【0047】
なお、上記においては、瞬低補償装置1Aの補償給電回路5A、HSS6A、バイパス回路12Aの保守メンテナンスを実施する場合について説明したが、瞬低補償装置1Bの補償給電回路5B、HSS6B、バイパス回路12Bの保守メンテナンスを実施することについても同様である。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1A,1B 低補償装置、2A,2B 双方向変換器、3A,3B 蓄電装置、4A,4B 変圧器、5A,5B 補償給電回路、6A,6B ハイスピードスイッチ、7A,7B,8A,8B 入力遮断器、9A,9B,10A,10B 出力遮断器、11A,11B バイパス遮断器、12A,12B バイパス回路、13A,13B 保守バイパス遮断器、14A,14B 保守バイパス回路、15A,15B 商用電源、16A,16B 負荷系統、17A,17B,18A,18B 入力分岐遮断器、19A,19B,20A,20B 出力分岐遮断器。