(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】スラリ循環型高速凝集沈殿装置及び浄水処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/08 20060101AFI20240716BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20240716BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20240716BHJP
【FI】
B01D21/08 D
B01D21/08 E
B01D21/30 A
C02F1/52 Z
(21)【出願番号】P 2021119924
(22)【出願日】2021-07-20
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森 康輔
(72)【発明者】
【氏名】矢出 乃大
(72)【発明者】
【氏名】塩野 孝人
(72)【発明者】
【氏名】安永 利幸
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-153729(JP,A)
【文献】特開2007-007601(JP,A)
【文献】特開2014-042860(JP,A)
【文献】実公昭32-008873(JP,Y1)
【文献】特開2021-186793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/01
B01D 21/02-21/34
C02F 1/52- 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機凝集剤が添加された原水をスラリの存在下で凝集処理する撹拌室と、
前記スラリを固液分離する分離室と、
前記固液分離後の処理水を外部へ流出させる流出部と、
前記固液分離された前記スラリを濃縮するコンセントレータと、
前記撹拌室、前記分離室及び前記コンセントレータ間で前記スラリを循環させるための撹拌流を形成する撹拌機と、
前記コンセントレータ内に設けられ、前記コンセントレータ内の前記スラリに高分子凝集剤を注入する注入部と
を備えることを特徴とするスラリ循環型高速凝集沈殿装置。
【請求項2】
前記注入部が、前記コンセントレータと前記撹拌室との間に設けられた前記スラリの循環口よりも上方に設けられている請求項1に記載のスラリ循環型高速凝集沈殿装置。
【請求項3】
前記コンセントレータが、
前記コンセントレータ内に前記高分子凝集剤を分散させる分散機構と、
前記コンセントレータの上部に設けられた整流板と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のスラリ循環型高速凝集沈殿装置。
【請求項4】
前記分散機構が、
前記注入部よりも上方に配置され、前記コンセントレータの下方へ液流を生じさせる撹拌機を含むことを特徴とする請求項3に記載のスラリ循環型高速凝集沈殿装置。
【請求項5】
前記分散機構が、吐出管を備えるポンプ装置を含み、
前記吐出管の吐出口が、前記注入部よりも上方に配置され、前記吐出管の吐出口が、前記コンセントレータ内において水平方向又は該水平方向よりも下方に向けられていることを特徴とする請求項3に記載のスラリ循環型高速凝集沈殿装置。
【請求項6】
前記分散機構が、吸引管と、吐出管と、前記吸引管及び前記吐出管に接続されたポンプ本体とを備えるポンプ装置を含み、
前記ポンプ本体が、前記スラリ循環型高速凝集沈殿装置の水面よりも上方に配置され、前記吐出管の吐出口が、前記注入部に配置され、
前記吸引管及び前記吐出管の少なくともいずれかに、前記高分子凝集剤を注入するための注入点が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のスラリ循環型高速凝集沈殿装置。
【請求項7】
前記撹拌室が、前記撹拌機の下方に設けられた第1撹拌室と、前記撹拌機の上方に設けられた第2撹拌室とを備え、
前記分散機構が、吸引管及び吐出管に接続されたポンプ本体を備えるポンプ装置を含み、
前記ポンプ装置が、前記ポンプ本体に接続され、前記第1撹拌室内に前記高分子凝集剤を含むスラリを供給可能な供給配管と、前記ポンプ本体に接続され、前記第2撹拌室内に前記高分子凝集剤を含むスラリを供給可能な供給配管とを更に備え、
前記第2撹拌室内に、前記第2撹拌室内を撹拌するための補助撹拌羽根を備えることを特徴とする請求項3に記載のスラリ循環型高速凝集沈殿装置。
【請求項8】
前記撹拌室が、前記撹拌機の下方に設けられた第1撹拌室と、前記撹拌機の上方に設けられた第2撹拌室とを備え、
前記分散機構が、前記コンセントレータと前記第2撹拌室との間に配置され、前記高分子凝集剤を前記注入部又は前記第2撹拌室内に供給可能なエアリフトを備え、
前記第2撹拌室内に、前記第2撹拌室内を撹拌するための補助撹拌羽根を備えることを特徴とする請求項3に記載のスラリ循環型高速凝集沈殿装置。
【請求項9】
無機凝集剤が添加された原水をスラリの存在下で凝集処理する撹拌室と、前記スラリを固液分離する分離室と、前記固液分離後の処理水を外部へ流出させる流出部と、前記固液分離された前記スラリを濃縮するコンセントレータと、前記撹拌室、前記分離室及び前記コンセントレータ間で前記スラリを循環させるための撹拌流を形成する撹拌機とを備えるスラリ循環型高速凝集沈殿装置を用いて、前記原水を凝集沈殿処理する浄水処理方法において、前記コンセントレータ内に高分子凝集剤を供給し、前記コンセントレータ内の前記スラリと前記高分子凝集剤とを接触させる工程を有することを特徴とする浄水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリ循環型高速凝集沈殿装置及び浄水処理方法に関し、特に、浄水処理に好適なスラリ循環型高速凝集沈殿装置及び浄水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水処理に用いられている凝集沈殿装置は、原水中の濁質を主とする不純物を凝集剤で凝集させてフロックを形成し、主に重力を用いてフロック(固体)と水(液体)とに固液分離させる処理装置である。このような凝集沈殿装置は、横流式凝集沈殿池と高速凝集沈殿装置とに大別される。高速凝集沈殿装置は、系内に保有したスラリ(母フロックとも言う)を利用することにより高速凝集処理を可能とした装置であり、スラリが装置内を循環するスラリ循環型高速凝集沈殿装置と、スラリが装置内を循環しないブランケット型高速凝集沈殿装置とに大別される。
【0003】
この他にも粒径の大部分が100μm超の砂をバラスト剤として用いる超高速凝集沈殿装置が工業用水で主に使用されている。これは、原水と凝集剤を由来とする濁質分で生成されたスラリではなく、バラスト剤を循環させる点で、高速凝集沈殿装置とは異なる装置である。
【0004】
例えば、特許第6082209号公報(特許文献1)には、スラリ循環型高速凝集沈殿装置が記載されている。特許文献1には、円形の沈殿池の内部を撹拌室と分離室とに仕切る円錐台形のスカートプレートと、フロックを撹拌し、沈殿池内に循環流を形成する高速撹拌機と、高速撹拌機を回転させる第1の駆動装置と、フロックが沈殿するコンセントレータと、沈殿池の底に堆積したフロックを撹拌する低速撹拌機と、低速撹拌機を回転させる第2の駆動装置とを備える高速凝集沈殿装置の例が記載されている。
【0005】
特開2009-247957号公報(特許文献2)には、スラリ循環型高速凝集沈殿装置を用いて、濁度が10度以下の原水に特定の粒子径の固体粒子を加え、特定の撹拌条件で撹拌することにより、沈降性の高いフロックを形成させる水処理方法の例が記載されている。
【0006】
特開2019-171309号公報(特許文献3)には、スラリ循環型高速凝集沈殿装置を用いて、スラリーの少なくとも一部を、有機高分子凝集剤の添加場所と、添加場所よりも下流側のいずれか1か所以上に返送してフロックを循環させ、フロックの沈降性を改善する凝集沈殿方法の例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6082209号公報
【文献】特開2009-247957号公報
【文献】特開2019-171309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術のいずれも、フロックの衝突回数向上及びフロックの沈降性を改善する上では一定の効果が得られているものの、高分子凝集剤を用いてフロックの強度及び沈降性を更に高め、より効率的な固液分離を行う点では、まだ改善の余地がある。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、フロックの強度及び沈降性を高めて効率的な固液分離を行うことが可能なスラリ循環型高速凝集沈殿装置及び浄水処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、スラリ循環型高速凝集沈殿装置内のコンセントレータ内のスラリに高分子凝集剤を注入する注入部を設けることが有用であるとの知見を得た。
【0011】
以上の知見を基礎として完成した本発明の実施の形態は、一側面において、無機凝集剤が添加された原水をスラリの存在下で凝集処理する撹拌室と、スラリを固液分離する分離室と、固液分離後の処理水を外部へ流出させる流出部と、固液分離されたスラリを濃縮するコンセントレータと、撹拌室、分離室及びコンセントレータ間でスラリを循環させるための撹拌流を形成する撹拌機と、コンセントレータ内に設けられ、コンセントレータ内のスラリに高分子凝集剤を注入する注入部とを備えるスラリ循環型高速凝集沈殿装置である。
【0012】
本発明の一実施態様によれば、注入部が、コンセントレータと撹拌室との間に設けられたスラリの循環口よりも上方に設けられている。
【0013】
本発明の別の一実施態様によれば、コンセントレータが、コンセントレータ内に高分子凝集剤を分散させる分散機構と、コンセントレータの上部に設けられた整流板とを備える。
【0014】
本発明の更に別の一実施態様によれば、分散機構が、注入部よりも上方に配置され、コンセントレータの下方へ液流を生じさせる撹拌機を含む。
【0015】
本発明の更に別の実施態様によれば、分散機構が、吐出管を備えるポンプ装置を含み、吐出管の吐出口が、注入部よりも上方に配置され、吐出管の吐出口が、コンセントレータ内において水平方向又は該水平方向よりも下方に向けられている。
【0016】
本発明の更に別の実施態様によれば、分散機構が、吸引管と、吐出管と、吸引管及び吐出管に接続されたポンプ本体とを備えるポンプ装置を含み、ポンプ本体が、スラリ循環型高速凝集沈殿装置の水面よりも上方に配置され、吐出管の吐出口が、注入部に配置され、吸引管及び吐出管の少なくともいずれかに、高分子凝集剤を注入するための注入点が設けられている。
【0017】
本発明の更に別の実施態様によれば、撹拌室が、撹拌機の下方に設けられた第1撹拌室と、撹拌機の上方に設けられた第2撹拌室とを備え、分散機構が、吸引管及び吐出管に接続されたポンプ本体を備えるポンプ装置を含み、ポンプ装置が、ポンプ本体に接続され、第1撹拌室内に高分子凝集剤を含むスラリを供給可能な供給配管と、ポンプ本体に接続され、第2撹拌室内に高分子凝集剤を含むスラリを供給可能な供給配管とを備え、第2撹拌室内に、第2撹拌室内を撹拌するための補助撹拌羽根を備える。
【0018】
本発明の更に別の実施態様によれば、撹拌室が、撹拌機の下方に設けられた第1撹拌室と、撹拌機の上方に設けられた第2撹拌室とを備え、分散機構が、コンセントレータと第2撹拌室との間に配置され、高分子凝集剤を注入部又は第2撹拌室内に供給可能なエアリフトを備え、第2撹拌室内に、第2撹拌室内を撹拌するための補助撹拌羽根を備える。
【0019】
本発明の実施の形態は別の一側面において、無機凝集剤が添加された原水をスラリの存在下で凝集処理する撹拌室と、スラリを固液分離する分離室と、固液分離後の処理水を外部へ流出させる流出部と、固液分離されたスラリを濃縮するコンセントレータと、撹拌室、分離室及びコンセントレータ間でスラリを循環させるための撹拌流を形成する撹拌機とを備えるスラリ循環型高速凝集沈殿装置を用いて、原水を凝集沈殿処理する浄水処理方法において、コンセントレータ内に高分子凝集剤を供給し、コンセントレータ内のスラリと高分子凝集剤とを接触させる工程を有する浄水処理方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フロックの強度及び沈降性を高めて効率的な固液分離を行うことが可能なスラリ循環型高速凝集沈殿装置及び浄水処理方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置の第1変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置の一例を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置の第2変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置の一例を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置の第3変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置の一例を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置の第4変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置の一例を示す概略図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置の第5変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置の一例を示す概略図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置の第6変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置の一例を示す概略図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置の第7変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであってこの発明の技術的思想は構成要素の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0023】
(スラリ循環型高速凝集沈殿装置)
本発明の実施の形態に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1は、
図1に示すように、無機凝集剤が添加された原水をスラリの存在下で凝集処理する撹拌室11、12と、スラリを固液分離する分離室13と、固液分離後の処理水を外部へ流出させる流出部16と、固液分離されたスラリを濃縮するコンセントレータ15と、撹拌室11、12、分離室13及びコンセントレータ15間でスラリを循環させるための撹拌流を形成する撹拌機2と、コンセントレータ15内に設けられ、コンセントレータ15内のスラリに高分子凝集剤を注入する注入部5とを備える。
【0024】
スラリ循環型高速凝集沈殿装置1は、中央部に撹拌機2を備えており、撹拌機2の周囲には円筒状の内側ドラフトチューブ43aが配置されている。内側ドラフトチューブ43aの下端にはリング板42が配置されており、内側ドラフトチューブ43aの外周面上に、底部に向けて径が大きくなる円錐型のスカートプレート4が配置されている。このスカートプレート4により、撹拌室11、12及び分離室13が区画されている。
【0025】
撹拌機2の下方には、第1撹拌室11が設けられている。撹拌機2の上方には、筒状の外側ドラフトチューブ43bが配置され、この外側ドラフトチューブ43bの内側に、第2撹拌室12が設けられている。原水は、スカートプレート4と、リング板42と、内側ドラフトチューブ43aとの間に区画された原水供給室10内に接続された原水流入管21を介して原水供給室10内に供給される。スカートプレート4とリング板42との間には環状の隙間が形成されており、原水供給室10内へ供給された原水は、この環状の隙間を通って第1撹拌室11内へと導入される。
【0026】
原水流入管21は、原水に無機凝集剤を注入するための注入点8を備え、原水の濁度に応じた注入率で無機凝集剤が注入されることが装置小型化の観点から好ましい。無機凝集剤の注入は、
図1の態様に限定されず、別途混合槽等を設けて行ってもよい。無機凝集剤としては、例えば、アルミニウム系凝集剤又は鉄系凝集剤が使用できる。アルミニウム系凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム(PAC)や硫酸アルミニウム(硫酸バンド)が利用できる。鉄系凝集剤としては、硫酸第二鉄(ポリ鉄)や塩化第二鉄が利用できる。無機凝集剤は酸性であるため、原水に無機凝集剤を注入するとスラリ循環型高速凝集沈殿装置1の最適凝集pH範囲を外れる場合がある。そのような場合は、アルカリ剤である消石灰や苛性ソーダを更に添加することが好ましい。無機凝集剤の注入率は、ジャーテスト等によって、原水の流量に関係する滞留時間及び濁度に応じて最適な注入率となるように調整されることが望ましい。
【0027】
撹拌機2は、第1撹拌室11内のスラリを撹拌する撹拌羽根2aと、第1撹拌室11から第2撹拌室12への上昇流を形成する循環羽根2bとを備える。撹拌機2は、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1の水面の上方まで延びる回転軸31に接続されている。回転軸31を駆動する駆動装置3により、撹拌羽根2a及び循環羽根2bの回転が駆動される。撹拌羽根2aの駆動により第1撹拌室11内のスラリが撹拌され、循環羽根2bの駆動により第1撹拌室11内のスラリが第2撹拌室12へ流入する。
【0028】
分離室13の上方には、固液分離によって得られた上澄水を収容する上澄部14と、上澄水を処理水として装置外部へ流出させるための越流堰等を備える流出部16が設けられている。分離室13の下方には分離室13内の固液分離によって沈降したスラリを更に濃縮するコンセントレータ15が配置されている。コンセントレータ15は、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1内に複数台設置されており、必要な排泥量に合わせて必要台数を稼働させることができる。
【0029】
コンセントレータ15は、コンセントレータ15内に高分子凝集剤を分散させる分散機構6と、コンセントレータ15の上部に設けられた整流板7とを備えることができる。
図1の例では、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1の側面から高分子凝集剤を供給するための供給配管25が挿入されており、供給配管25を介して、高分子凝集剤をコンセントレータ15の注入部5へ供給する例が記載されている。しかしながら、高分子凝集剤のコンセントレータ15内への供給態様は
図1に示す例に限定されず、種々の構成が採用可能である。
【0030】
例えば、供給配管25の代わりに、高分子凝集剤を供給するための供給配管(不図示)を、コンセントレータ15の注入部5からスラリ循環型高速凝集沈殿装置1の水面よりも上方まで延ばすように配置する。そして、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1の上方側で高分子凝集剤を注入し、上方から供給配管を介して高分子凝集剤を注入部5へ供給するようにしてもよい。
【0031】
コンセントレータ15内に供給される高分子凝集剤としては、特に限定されない。例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸カリウム、ポリメタクリル酸アンモニウムからなる群より選択されるいずれか1種以上を高分子凝集剤として用いることが可能であるが、中でもポリアクリル酸ナトリウムを用いることが好ましい。ポリアクリルアミド系高分子凝集剤はポリアクリルアミドとポリ(メタ)アクリル酸塩の共重合物で、アニオン系高分子凝集剤としての市販品が利用できる。
【0032】
コンセントレータ15内へ注入する高分子凝集剤の添加率は、原水の流量に関係する滞留時間及び濁度に応じて最適な注入率となるように、予めジャーテスト等を利用して調整してもよい。或いは、原水の濁度等を測定し、その測定結果に応じてコンセントレータ15内で生成されるスラリの汚泥濃度を予測する。そして、コンセントレータ15内の汚泥重量に基づいて、高分子凝集剤の添加量を決定することで、高分子凝集剤の添加量を最適化することが好ましい。
【0033】
以下に限定されるものではないが、典型的には、高分子凝集剤の添加率は、例えば、0.005~1.0wt%対SSとすることができ、好ましくは0.01~0.5wt%対SSである。高分子凝集剤の添加率が0.005wt%対SS未満ではコンセントレータ15内において高分子凝集剤が不足し、生成される凝集フロックの強度及び沈降性が十分に得られないことがある。逆に、高分子凝集剤の添加率が1.0wt%対SSを超えると、コンセントレータ15内において高分子凝集剤が過剰となり、粘性の高い凝集フロックが生成されることがある。この粘性の高い凝集フロックを含むスラリを第1撹拌室11へ循環させると、第1撹拌室11で凝集フロックの分散性が低下し、第1撹拌室11及び第1撹拌室11に繋がる第2撹拌室12の凝集沈殿効果が有意に得られないこともある。
【0034】
注入部5は、コンセントレータ15内で高分子凝集剤とスラリとが接触する領域(注入点)を指し、
図1の態様においては、高分子凝集剤をコンセントレータ15内へ供給する供給配管25の先端部に位置し、高分子凝集剤の濃度が周囲と比べて濃くなる領域をいう。この注入部5は、コンセントレータ15と第1撹拌室11との間に設けられてコンセントレータ15から第1撹拌室11へ循環させるスラリを第1撹拌室11へ供給する循環口15bよりも上方に設けられることが好ましい。これにより、高分子凝集剤の注入効果をより効果的に得ることができる。
図1に示すように、典型的には、循環口15bにはスラリの循環を制御するための開閉弁41が設けられることが多いため、注入部5は開閉弁41よりも上方に設けられることが好ましい。
【0035】
注入部5の高さが高すぎると、注入部5へ供給される高分子凝集剤の液流によってコンセントレータ15の上部の汚泥界面が流動し、コンセントレータ15内のスラリが分離室13内へ逆流するおそれがある。一方、注入部5の高さが低すぎると、高濃度化したスラリ(汚泥)が更に高粘度化し、このようなスラリが第1撹拌室11に循環されることにより、撹拌室11でスラリが十分に分散しないことがある。また、注入部5がコンセントレータ15内で濃縮した濃縮汚泥界面下に埋没すると、注入部5に高分子凝集剤を供給する供給配管25の閉塞、注入部5に隣接する分散機構6の腐食又はスラリの固着などを招くこともある。以下に限定されるものではないが、典型的には、注入部5は、コンセントレータ15の底部を高さ0とし、コンセントレータ15上部の整流板7の高さを1とした場合に、高さ2/3~1/3となる位置に配置される。なお、本実施形態では、注入部5の高さとは、高分子凝集剤が供給される供給配管又はエアリフト等の管の先端の中心部の高さをいう。
【0036】
コンセントレータ15内に高分子凝集剤を分散させるための分散機構6としては、コンセントレータ15内に液流を生じさせる種々の装置を利用することが好ましく、例えば撹拌機、ポンプ装置等を含む。但し、曝気装置のようなコンセントレータ15内に上向き流を発生させる装置は、コンセントレータ15内のスラリの濃縮及び沈降を妨げる場合がある。そのため、分散機構6を配置する場合には、コンセントレータ15内のスラリの濃縮及び沈降を妨げないように、コンセントレータ15の上方から底部へと向かう緩慢な下向流を発生させる分散機構6を用いることが好ましい。コンセントレータ15内のスラリの濃縮及び沈降を妨げないようにするには、分散機構6が発生させる下向き流が例えば、2m/s以下、より典型的には0.1~1.5m/sとなるように調整されることが好ましい。
【0037】
例えば、
図1に示すように、分散機構6としては、コンセントレータ15内において注入部5よりも上方に配置され、コンセントレータ15の下方へ液流を生じさせる撹拌羽根60を備える撹拌機を備えることが好ましい。撹拌羽根60の形状は特に限定されず、種々の形状の羽根が採用できる。撹拌羽根60の周辺に下向流を促進させるための邪魔板、造粒板等を更に配置してもよい。
【0038】
更に、コンセントレータ15の上部には、複数の傾斜板からなる整流板7が配置されていることが好ましい。整流板7は、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1の半径方向に沿って等間隔で配列されており、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1の上方から見たときに、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1の半径方向に対して垂直に配置されている。
【0039】
整流板7は、スカートプレート4の傾斜面と同じ方向に傾斜していることが好ましい。すなわち、整流板7は、鉛直方向に対してスラリ循環型高速凝集沈殿装置1の半径方向内側に傾斜させることで、スカートプレート4の傾斜に沿ってコンセントレータ15内へスラリを円滑に流入させることができる。整流板7は、可能な限りコンセントレータ15の上部全面に渡って配置することが好ましい。整流板7の材質は、耐久性と部材費から金属製が好ましいが、プラステック材や炭素繊維でも良い。
【0040】
分離室13から固液分離により分離されたスラリがコンセントレータ15内に流入する際、その流れが整流板7により整流されるため、コンセントレータ15内の汚泥の巻き上げが抑制される。更に、コンセントレータ15の上部に整流板7が配置されることにより、分散機構6によって液流が発生したとしても、スラリがコンセントレータ15から分離室13内へ逆流することを抑制できるため、コンセントレータ15内のスラリの濃縮を効率良く高めることができる。
【0041】
コンセントレータ15は、更に、コンセントレータ15内のスラリを余剰汚泥として外部へ排出させるための配管又は汚泥ピット等からなる排泥部23を備えることが好ましい。スラリ循環型高速凝集沈殿装置1で処理を継続すると系内のスラリ量(固体量)が増加する。そのため、コンセントレータ15内にスラリの循環を制御するための開閉弁41とスラリを外部へ排出させるための排泥部23とを設ける。操作者が必要に応じて開閉弁41を操作することにより、或いは、コンセントレータ15から定期的に排泥を行うことにより、系内のスラリ濃度を一定範囲に安定的に保つことができる。コンセントレータ15の開閉弁41は、閉めるとスラリの循環流れが遮られてスラリが濃縮し、開けるとスラリがコンセントレータ15から第1撹拌室11に流れるようになっている。
【0042】
開閉弁41の開閉制御は、
図1には図示しない制御装置によって制御されることが好ましい。例えば、コンセントレータ15内の注入部5に高分子凝集剤が供給される間は、高分子凝集剤がコンセントレータ15内に十分に分散するように、制御装置から、開閉弁41を閉じるための制御信号が出力される。コンセントレータ15で濃縮されたスラリを第1撹拌室11へ循環させる場合には、制御装置から、開閉弁41を開くための制御信号が出力されることで循環させるスラリの量を調整できる。なお、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1の底部に堆積する余剰汚泥は、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1の底部に接続された排泥部22から排出できる。
【0043】
高分子凝集剤は、その吸着架橋作用によりフロックを粗大化させ、フロックの強度や沈降性を高めて効率的な固液分離を行うことが可能である。高分子凝集剤の特徴としては、無機凝集剤の注入率よりも少なく概ね1/100程度で済むこと、これにより無機凝集剤のように原水濁度の変動追随が要求されないこと、無機凝集剤のようにアルカリ分を消費せず苛性ソーダなどアルカリ分の添加と制御を必要としないこと、浄水処理における運転管理が楽になる、などが挙げられる。このようなことから、浄水処理においては、原水変動への対応性、運転管理性、ろ過処理性(水質)の向上目的で、凝集補助剤として高分子凝集剤を併用することが好ましい。
【0044】
しかしながら、従来のスラリ循環型高速凝集沈殿装置においては、高分子凝集剤を用いることは想定されておらず、スラリ循環型高速凝集沈殿装置内には注入点が設けられていないことが多い。また、従来のスラリ循環型高速凝集沈殿装置では、一般に、原水流入管に無機凝集剤を注入することが行われているが、無機凝集剤と高分子凝集剤とを同時に注入すると凝集処理性が低下することがある。無機凝集剤の凝集撹拌槽と高分子凝集剤の凝集槽のそれぞれを別々に設けることも可能であるが、設置スペースが増加してしまい、既存の施設によってはスペースが無く設置できない場合もある。更に、原水の濁度が比較的低い場合には、高分子凝集剤の添加による凝集沈殿効果が十分得られない場合がある。
【0045】
本発明の実施の形態に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1によれば、コンセントレータ15内に、コンセントレータ15内のスラリと高分子凝集剤とが接触する注入部5が設けられる。コンセントレータ15内のスラリは、第1撹拌室11、第2撹拌室12のスラリに比べて汚泥濃度が高いため、第1撹拌室11、第2撹拌室12のスラリと高分子凝集剤とを接触させる場合に比べて、高分子凝集剤によるフロックの強度及び沈降性の向上効果を効率良く得ることができる。
【0046】
また、高分子凝集剤によりその強度及び沈降性の向上が図られたフロックを含むスラリが第1撹拌室11へ返送されることで、返送されたフロックが第1撹拌室11における凝集処理の核となり、第1撹拌室11における凝集処理をより効率良く行うことができる。本発明の実施の形態に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1によれば、原水に高分子凝集剤を混合するための専用の設備をスラリ循環型高速凝集沈殿装置1の外に設ける必要がないため、設置スペースを省略でき、装置全体として小型化が図れる。
【0047】
高分子凝集剤は、注入量が無機凝集剤に比べて少なく、注入部5では撹拌による分散が必要となることがある。本発明の実施の形態に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1によれば、コンセントレータ15内に高分子凝集剤を分散させる分散機構6を備えるため、コンセントレータ15内に注入された高分子凝集剤を効率良くコンセントレータ15内に分散させることができる。
【0048】
更に、コンセントレータ15の上部に設けられた整流板7を備えることにより、分散機構6によってコンセントレータ15内に上向きの液流が発生しても、整流板7が上向きの液流を抑え、コンセントレータ15内のスラリの分離室13上部への逆流を防ぐことができるため、コンセントレータ15内のスラリの濃度を効率良く高めることができる。
【0049】
(浄水処理方法)
次に、本発明の実施の形態に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1を用いた浄水処理方法の一例を説明する。濁質を含む原水は、無機凝集剤を注入する注入点8を有する原水流入管21において無機凝集剤が添加された後、
図1に示すスラリ循環型高速凝集沈殿装置1の原水供給室10に導入され、第1撹拌室11へと流入する。第1撹拌室11及び第2撹拌室12では、流入原水が母フロックを含むスラリの存在下で凝集処理され、フロックの粗大化処理が行われる。粗大化したフロックを含むスラリは分離室13において固液分離が行われる。分離された上澄水は分離室13の上方の上澄部14を経て、越流堰を備える流出部16から系外に取り出される。
【0050】
固液分離されたスラリは、分離室13からコンセントレータ15の上部に配置された整流板7を通ってコンセントレータ15内へ流入する。コンセントレータ15内では、供給配管25を介して高分子凝集剤が注入され、注入部5でスラリと高分子凝集剤とが混合されることにより、コンセントレータ15内のスラリに含まれるフロックの強度及び沈降性が向上する。コンセントレータ15内で濃縮され、且つ高分子凝集剤の添加により強度及び沈降性が向上したフロックを含むスラリを、循環口15bから第1撹拌室11へ再循環させ、凝集沈殿処理を継続する。
【0051】
凝集沈殿処理を継続すると、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1内のスラリ量(固体量)が増加する。スラリ量が増加しすぎた場合には、操作者が手動で、或いは図示しない制御装置によって自動的に開閉弁41を閉じ、排泥部22、23を開放するように操作することによって、コンセントレータ15内のスラリ及び第1撹拌室11の底部に沈降した汚泥を系外へ排出させる。
【0052】
本発明の実施の形態に係る浄水処理方法によれば、コンセントレータ内に高分子凝集剤を供給してコンセントレータ内のスラリと接触させる工程を有することにより、フロックの強度及び沈降性を高め、より効率的な固液分離を行うことができる。
【0053】
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態及び運用技術が明らかとなろう。
【0054】
(第1変形例)
例えば、
図2に示すように、本発明の第1変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1aは、分散機構6が、コンセントレータ15内に浸漬された吐出管61を備えるポンプ装置を含み、吐出管61の吐出口61aが、注入部5よりも上方に配置され、吐出管61の吐出口61aが、コンセントレータ15内において水平方向又は水平方向よりも下方に向けられていることが好ましい。
【0055】
吐出管61の吐出口61aを、水平方向又は水平方向よりも下方に差し向けることにより、吐出管61の吐出口61aから排出される液の流れによって、コンセントレータ15内に下向流を発生させることができる。更には、吐出管61の吐出口61aから排出される液の流れをスカートプレート4の傾斜面に対して斜め下方に当てるように、又は排出管の先端部付近をコンセントレータ15内で旋回させるように配置し、コンセントレータ15の下方に向けて旋回流を発生させるように吐出管61の吐出口61aの向きを調整する。これにより、コンセントレータ15内で旋回流を発生させて高分子凝集剤との接触時間をより長くとることができるため、フロックの強度及び沈降性をより向上できる。吐出管61の吐出口61aから排出される液の吐出量としては以下に限定されないが、例えば2m/s以下、好ましくは0.1~1.5m/sとすることで、コンセントレータ15内の濃縮を妨げることなく高分子凝集剤とスラリとの撹拌効果を得ることができる。
【0056】
(第2変形例)
図3に示すように、本発明の第2変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1bは、分散機構6がコンセントレータ15内に浸漬された吐出管61を備えるポンプ装置を含み、吐出管61がスラリ循環型高速凝集沈殿装置1の水面の上方まで延び、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1の水面よりも上方へ引き出された吐出管61に、高分子凝集剤を添加するための注入点63を備えることが好ましい。吐出管61の吐出口61aは注入部5まで延びており、高分子凝集剤が添加されたスラリが注入部5に供給される。
【0057】
本発明の第2変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1bによれば、コンセントレータ15内に、
図1に示すような供給配管25を設置しなくて済むため、高分子凝集剤添加のための設置工事を簡略化でき、装置のメンテナンス時の作業性も良好となる。
【0058】
(第3変形例)
図4に示すように、本発明の第3変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1cは、分散機構6が、吸引管62と、吐出管61と、吸引管62及び吐出管61に接続されたポンプ本体64とを備えるポンプ装置を備えることが好ましい。ポンプ本体64は、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1の水面よりも上方に配置されており、吐出管61の吐出口61aが注入部5に到達するように配置され、吸引管62の吸引口62aが吐出口61aよりも下方に設けられる。そして、高分子凝集剤を注入する注入点63が、吸引管62及び吐出管61の少なくともいずれかに設けられることが好ましい。
【0059】
図4に示すスラリ循環型高速凝集沈殿装置1cによれば、ポンプ本体64がスラリ循環型高速凝集沈殿装置1cの水面よりも上方に配置されることにより、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1cの水面の上方に設けられる点検歩廊(不図示)から、ポンプ本体64の状態を容易に確認できる。そのため、ポンプ本体64を水中に浸漬する場合に比べて、メンテナンス作業が容易になる。高分子凝集剤の注入点63は、吸引管62又は吐出管61に設けられるため、コンセントレータ15内に高分子凝集剤を供給するためにスラリ循環型高速凝集沈殿装置1に配管接続用の穴等を設ける必要がない。そのため、高分子凝集剤の注入のための設置作業も容易となり、注入点63を水中に設けた場合と比べて、注入点63の管理も容易になる。更に、吸引管62の先端の吸引口62aを吐出管61の先端の吐出口61aよりも下方に設け、吸引管62及び吐出管61によって、注入部5周辺の液流を下向きに発生させるように流速を制御することにより、コンセントレータ15内に撹拌のための撹拌設備の配置を省略することができる。
【0060】
(第4変形例)
図5に示すように、本発明の第4変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1dは、分散機構6が、吸引管62及び吐出管61に接続されたポンプ本体64を備えるポンプ装置を含み、ポンプ装置が、ポンプ本体64に接続され、第1撹拌室11内に高分子凝集剤を含むスラリを供給可能な供給配管66と、ポンプ本体64に接続され、第2撹拌室12内に高分子凝集剤を含むスラリを供給可能な供給配管65とを更に備える。
【0061】
ポンプ本体64、吸引管62、吐出管61及び供給配管65、66は、制御装置9に接続されており、制御装置9からの制御信号に応じて、高分子凝集剤を含むスラリのコンセントレータ15内、第1撹拌室11内へ、又は第2撹拌室12内への供給の切替制御が可能である。
【0062】
本発明の第4変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1dによれば、コンセントレータ15内のスラリを、吸引管62を介して引抜き、水面上に設けられた高分子凝集剤の注入点63から高分子凝集剤が注入されたスラリを、注入部5に加えて、供給配管66、65を介して、第1撹拌室11及び第2撹拌室12へも供給することができるため、第1撹拌室11及び第2撹拌室12に供給されるスラリに含まれるフロックの強度及び沈降性を向上させ、凝集処理をより効率良く行うことができる。
【0063】
撹拌機2は撹拌羽根2aによる撹拌流で第1撹拌室11は十分な撹拌効果が得られるが、第2撹拌室12内には撹拌羽根がないため、十分な撹拌流が得られない場合がある。
図5に示すスラリ循環型高速凝集沈殿装置1dによれば、第2撹拌室12内を撹拌する補助撹拌羽根2cを備えるため、供給配管65から吐出される高分子凝集剤を含む吐出液を第2撹拌室12内に素早く分散させることができる。
【0064】
(第5変形例)
図6に示すように、本発明の第5変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1eは、分散機構6が、吸引管62、吐出管61、供給配管66、65及び抜取配管67に接続されたポンプ本体64を備えるポンプ装置を含むことができる。図示は省略しているが、吸引管62、吐出管61、供給配管66、65及び抜取配管67にはそれぞれ弁が配置されており、制御装置9によって弁の切替を行うことができる。
【0065】
本発明の第5変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1eによれば、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1eの内部を循環するスラリの状態に応じて、吸引管62、吐出管61、供給配管66、65及び抜取配管67の供給を制御することで、高分子凝集剤の注入点を任意の箇所に設定することができる。これにより、槽内のフロックの強度及び沈降性を高めてより効率的な固液分離を行うことが可能となる。
【0066】
図6に示す例においても、供給配管65から高分子凝集剤を含むスラリを第2撹拌室12内に供給する場合には、第2撹拌室12内を撹拌する補助撹拌羽根2cを用いて、供給配管65から吐出される高分子凝集剤を含む吐出液を第2撹拌室12内に素早く分散させることができる。
【0067】
(第6変形例)
図7に示すように、本発明の第6変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1fは、分散機構6が、コンセントレータ15と第2撹拌室12との間に配置され、高分子凝集剤を注入部5又は第2撹拌室12内に供給可能なエアリフト68を含むことが好ましい。エアリフト68の一方の先端は、コンセントレータ15内の注入部5に配置され、エアリフト68の他方の先端は、第2撹拌室12内に設けられている。第2撹拌室12内には、第2撹拌室12内を撹拌する補助撹拌羽根2cが設けられている。
【0068】
本発明の第6変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1fによれば、揚水管(不図示)と送気管(不図示)とを備えるきわめて簡単な構造を有するエアリフト68を用いて、コンセントレータ15内のスラリを揚水する、或いはエアリフト68を介して高分子凝集剤を注入部5へ供給することができる。そのため、撹拌機やポンプ装置等に比べて故障が少なくより長期間安定した処理を行うことができる。更に、本発明の第6変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1fによれば、コンセントレータ15内のスラリを分散させるためにエアリフト68による吸引力を利用できるため大きな液流の乱れが生じにくく、整流板7の設置面積を縮小又は設置を省略することができる。更に、第2撹拌室12内には、第2撹拌室12内を撹拌するための補助撹拌羽根2cを備えることにより、補助撹拌羽根2cにより第2撹拌室12内を速やかに撹拌できる。
【0069】
(第7変形例)
図8に示すように、本発明の第7変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1gは、分散機構6が、コンセントレータ15と第2撹拌室12との間に配置され、高分子凝集剤を注入部5又は第2撹拌室12内に供給可能なエアリフト68と、エアリフト68の端部に設けられた気泡除去槽50とを備えることが好ましい。
【0070】
気泡除去槽50は、エアリフト68を介してコンセントレータ15から送られた気泡を含むスラリを受け入れる受入槽51と、受入槽51と連続し、気泡が除去されたスラリを収容するスラリ収容槽52と、受入槽51とスラリ収容槽52とを区分けするように受入槽51とスラリ収容槽52との間に配置され、受入槽51の水面へ上昇する気泡を除去する気泡除去壁53とを備える。スラリ収容槽52の底部には供給管54が配置されており、供給管54を介して、スラリ収容槽52内のスラリが第2撹拌室12へ送られる。
【0071】
本発明の第7変形例に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1gによれば、エアリフト68の端部に気泡除去槽50が設けられ、気泡除去槽50においてエアリフト68により供給された気泡を含むスラリから気泡が取り除かれるため、気泡の第2撹拌室12への侵入を防ぐことができる。これにより、第2撹拌室12の凝集沈殿処理をより効率良く行うことができる。
【0072】
このように、本発明の実施の形態に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1a~1g及びこれを用いた浄水処理方法によれば、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1a~1gのコンセントレータ15内に高分子凝集剤の注入点(注入部5)を備えることにより、いずれも高分子凝集剤専用の凝集槽を利用することなく、フロックの強度及び沈降性を高めて効率的な固液分離を行うことができる。また、供給される原水の濁度及びSSに急激な変動が生じても、高分子凝集剤を適切に加えることにより、高分子凝集剤を添加しない従来式に比べて処理水の濁度を安定的に低く抑えた清澄な処理水を得ることができる。
【0073】
本発明の実施の形態に係るスラリ循環型高速凝集沈殿装置1a~1gにおいては、注入部5のスラリの汚泥濃度を計測するための計測設備(不図示)を更に設けることもまた好ましい。汚泥濃度を計測する計測設備の設置位置は特に限定されない。例えば、注入部5のスラリを配管等でサンプリングし、スラリ循環型高速凝集沈殿装置1a~1gの外部でサンプリング後のスラリの汚泥濃度を測定するようにしてもよい。注入部5のスラリの汚泥濃度を計測し、この汚泥濃度に応じて適切な量の高分子凝集剤を注入部5へ注入することで、フロックの強度をより適切に調整して効率的な固液分離を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1,1a~1g…スラリ循環型高速凝集沈殿装置
2…撹拌機
2a…撹拌羽根
2b…循環羽根
2c…補助撹拌羽根
3…駆動装置
4…スカートプレート
5…注入部
6…分散機構
7…整流板
8…注入点
9…制御装置
10…原水供給室
11…第1撹拌室
12…第2撹拌室
13…分離室
14…上澄部
15…コンセントレータ
15b…循環口
16…流出部
21…原水流入管
22…排泥部
23…排泥部
25…供給配管
31…回転軸
41…開閉弁
42…リング板
43a…内側ドラフトチューブ
43b…外側ドラフトチューブ
50…気泡除去槽
51…受入槽
52…スラリ収容槽
53…気泡除去壁
54…供給管
60…撹拌羽根
61…吐出管
61a…吐出口
62…吸引管
62a…吸引口
63…注入点
64…ポンプ本体
65…供給配管
66…供給配管
67…抜取配管
68…エアリフト