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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】原料ホッパの排出シュート
(51)【国際特許分類】
   B65G 65/42 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
B65G65/42 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021188653
(22)【出願日】2021-11-19
(65)【公開番号】P2023075632
(43)【公開日】2023-05-31
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大菅 宏児
(72)【発明者】
【氏名】山田 薫
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴之
【審査官】小野 孝朗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-217533(JP,A)
【文献】実開昭60-043638(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/30 - 65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石を含み、造粒機で造粒される前の原料を貯留する原料ホッパの下側に備えられ且つ、前記原料を水平方向に搬送するベルトコンベアに排出する排出シュートにおいて、
前記排出シュートは、前記原料の搬送方向下流側の第1案内壁と、前記第1案内壁と対面し且つ搬送方向上流側の第2案内壁と、を有し、
前記第2案内壁は、前記排出シュートの側面視において、下縁が搬送方向下流側を向くように傾斜して配置されており、
前記第1案内壁は、垂直方向より搬送方向下流側に傾斜した角度となるように配置されている
ことを特徴とする原料ホッパの排出シュート。
【請求項2】
前記第1案内壁は、前記第2案内壁と沿う方向に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の原料ホッパの排出シュート。
【請求項3】
前記原料の水分率は10mass%を超えることを特徴とする請求項1又は2に記載の原料ホッパの排出シュート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体原料を貯蔵する原料ホッパに備えられた排出シュートの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、焼結鉱製造プロセスでは、多数の銘柄の鉄鉱石(例えば、豪州産や南米産等)および副原料(石灰石やドロマイトなど)を、造粒機にて所定の配合比で混合して造粒する。造粒したものを焼結機へ充填した後、焼成して焼結鉱を製造する。
鉄鉱石や副原料などの原料は、一時的に焼結工場内の原料ホッパ(原料槽とも呼ぶ)に貯蔵されている。原料ホッパの下方には、ベルトコンベアが配備されている。原料ホッパから排出シュートを経て原料がベルトコンベアへ排出されると、ベルトコンベアで秤量しながら水平方向へ原料が搬送される。ベルトコンベアから造粒機に原料が供給される。
【0003】
原料を搬送して供給する技術としては、例えば、特許文献1~3に開示されているものがある。
特許文献1は、焼結原料の装入方法において、原料に特別な事前処理を施したりバインダ-を用いて造粒することなく、通常の造粒原料を用いてもパレット内の疑似粒子充填層の装入密度を制御して通気性を向上させることを目的としている。
【0004】
具体的には、焼結原料を焼結パレットに装入するに際し、焼結パレット上に充填ホッパを設置し、該充填ホッパのパレット進入側の下端はグレート近傍にまたパレット退出側の下端は焼結層表層部に位置するように構成し、ホッパ内に原料を供給して充填層を形成するとともにこの充填原料を焼結パレットの移動に応じて連続的に移動降下させる。充填ホッパの形状を下方が広くなるように末広型とすると装入原料の粒間距離が大きくなり、垂直型より装入密度を小さくできるとされている。
【0005】
特許文献2は、特許文献1の問題点を解決するために、焼結原料を装入するに際してパレットに装入される疑似粒子充填層の装入密度を制御すると同時に焼結層の下層部に粗粒原料を多く配合することを目的としている。
具体的には、焼結パレット上に充填ホッパを設置し、該充填ホッパ内に原料を供給して充填層を形成するとともに、この充填原料を焼結パレットの移動によって連続的に降下させて焼結原料を装入するに際して、充填ホッパをパレット退出側の下端は焼結表層部に位置するように配置し、充填ホッパのパレット侵入側の下端は焼結層の下層部に粗粒原料が多く配合されるようにその高さを調整するものとされている。
【0006】
特許文献3は、バルク材を冷却するための冷却装置において、バルク材の均等な冷却を実現することを目的としている。バルク材は、例えば、焼結物とも呼ばれる焼結鉄鋼石であり得る。すなわち、当該冷却装置は、いわゆる焼結冷却器であり得る。
具体的には、バルク材を冷却するための冷却装置であって、バルク材を冷却シャフトに導入するための供給シュートを有している。供給シュートは、第1の壁面は、少なくとも部分的に、垂直線に対して、前記第2の壁面とは異なる傾斜角度において配置されている。前記第1の壁面が、垂直線に対して27°から47°の間の傾斜角度において配置されており、前記第2の壁面が、垂直線に対して7°から27°の間の傾斜角度において配置するものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭61-195928号公報
【文献】特開昭61-217533号公報
【文献】特表2018-520329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、製鉄所内で発生したもの(製品ではないもの)をリサイクルすることを目的として、複数銘柄の鉄鉱石と発生品をヤードで混合したヤードブレンド原料を、焼結の原料に使用することがある。このヤードブレンド原料は、ヤード備蓄時に降雨した水分の影
響や高水分の発生品(製鋼スラグなど)が混合されていることにより、含有水分が高いものとなっている。
【0009】
図1に示すように、原料の水分が低いと、原料の流動性が上がるため、原料は原料ホッパ内から排出されやすくなる。
しかしながら、原料の水分が上昇すると、原料の流動性が低下するため、原料の動きが少なくなる。特に、原料ホッパの内壁近傍に存在する原料が静止してしまう領域(不動層)が拡大する。つまり、ホッパ内において原料の流動範囲が狭小化してしまい、原料ホッパ(原料槽)からの排出性が悪化することとなる。
【0010】
また、棚吊り(原料が流動しなくなって原料ホッパ内が閉塞する)等の発生により、原料ホッパからの原料排出が不安定化すると、後工程の造粒機(例えば、ドラムミキサ等)へ供給される原料の量が変動してしまい、造粒状態が変動することとなる。その結果、造粒物の強度が低下し、原料充填層を形成した際の通気性が低下することにより、焼結鉱の減産をしなければならなくなる。
【0011】
これらの課題を解消するため、現状では定期的に高圧洗浄などの方法で、原料ホッパの内壁面に付着した原料を除去しながら操業を行っている。
特許文献1は、充填ホッパに関する技術である。充填ホッパは、焼結パレット上に配置されており、焼結機へ原料(造粒後)を供給する給鉱装置の一部である。一方で、本発明は原料(造粒前)を貯蔵する原料ホッパを対象としており、特許文献1と対象が異なる。
【0012】
また、給鉱装置に供給される造粒物(擬似粒子)は、複数の原料を用いて混合と造粒を造粒機で行うことで製造され、このとき含有する水分が平均化される。そのため、造粒物が含有する水分は、高くとも水分率8%程度のものである。
一方で、造粒機に供給する前の原料は、水分率10%を超える低流動性の原料である。含有する水分が高い原料は、原料ホッパ内で流動性が低くなり閉塞する可能性がある。このことから、本発明は低流動性の原料を対象としており、特許文献1と対象が異なる。
【0013】
したがって、特許文献1は、充填ホッパの形状について記載されているが、充填ホッパから焼結機へ原料(造粒後)を降下させることで移動させた際における、原料の装入密度を低減させることが目的であるが、本発明が目的としている原料ホッパの内壁面に原料が付着することを抑制するものとはなっていない。すなわち、本発明と特許文献1とは対象とする技術が異なる。
【0014】
特許文献2は、特許文献1と同様に、焼結パレット上に配置された充填ホッパに関する技術である。充填ホッパは、焼結機へ原料(造粒後)を供給する給鉱装置の一部である。一方で、本発明は原料(造粒前)を貯蔵する原料ホッパを対象としており、特許文献2と対象が異なる。
また、給鉱装置に供給される造粒物は、造粒機での造粒時に含有する水分が平均化される。造粒物の水分率は、高くとも8%程度のものである。しかしながら、本発明は、造粒機に入る前の水分率10%を超える低流動性の原料を対象としており、特許文献2と対象が異なる。
【0015】
したがって、特許文献2は、充填ホッパから焼結機へ原料(造粒後)を装入したときの装入密度を低減させることが目的であるが、本発明が目的としている原料ホッパの内壁面に原料が付着する(原料ホッパ内で原料の流動性が低くなり閉塞する)ことを抑制するものとはなっていない。すなわち、本発明と特許文献2とは対象とする技術が異なる。
特許文献3は、冷却装置へバルク材を供給するシュートを対象とした技術である。一方で、本発明は、原料(造粒前)を貯蔵する原料ホッパにおいて、ベルトコンベアで原料を水平方向に切り出す際の排出シュートを対象としており、特許文献3と対象が異なる。
【0016】
また、特許文献3は、供給シュートの形状について記載されているが、バルク材を冷却シャフトへ均等に分配することで均等な冷却効果を得ることが目的であるが、本発明が目的としている原料ホッパの内壁面に原料が付着する(原料ホッパ内で原料の流動性が低くなり閉塞する)ことを抑制するものとはなっていない。すなわち、本発明と特許文献3とは対象とする技術が異なる。
【0017】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、原料を貯蔵する原料ホッパの排出シュート(下
方出口部)の形状を排出しやすい形状にすることで、高い水分を含んだ原料を使用しても、原料が原料ホッパの内壁面に付着することによる詰まり、すなわち棚吊りなどの排出不良を抑制し、安定して原料の排出を行うことができる原料ホッパの排出シュートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明にかかる原料ホッパの排出シュートは、鉄鉱石を含み、造粒機で造粒される前の原料を貯留する原料ホッパの下側に備えられ且つ、前記原料を水平方向に搬送するベルトコンベアに排出する排出シュートにおいて、前記排出シュートは、前記原料の搬送方向下流側の第1案内壁と、前記第1案内壁と対面し且つ搬送方向上流側の第2案内壁と、を有し、前記第2案内壁は、前記排出シュートの側面視において、下縁が搬送方向下流側を向くように傾斜して配置されており、前記第1案内壁は、垂直方向より搬送方向下流側に傾
斜した角度となるように配置されていることを特徴とする。
【0019】
好ましくは、前記第1案内壁は、前記第2案内壁と沿う方向に配置されているとよい。前記原料の水分率は10mass%を超える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の原料ホッパの排出シュートによれば、原料を貯蔵する原料ホッパの排出シュートの形状を排出しやすい形状にすることで、高い水分を含んだ原料を使用しても、原料が原料ホッパの内壁面に付着することによる詰まり、すなわち棚吊りなどの排出不良を抑制し、安定して原料の排出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ホッパ内における原料の流動性を模式的に示した図である。
図2A】原料ホッパの排出シュート(比較例)の概略を模式的に示した図である。
図2B】本発明の原料ホッパの排出シュートの概略を模式的に示した図である。
図3】焼結プロセスのフローの一例を示した模式図である。
図4】フロー試験の概略を模式的に示した図である。
図5】ヤードブレンド原料の水分と、原料の流動性の関係をまとめたものを示した図である。
図6】原料ホッパの構造の一例を示した模式図である。
図7】ホッパ模型実験に用いた装置の構成を示した図である。
図8】ホッパ模型実験において、原料水分を変えた場合の実験結果を示した図である(原料水分率:8mass%,10mass%,12mass%)。
図9】原料ホッパの下部に備えられた排出シュート内における原料の流れを示した図である(比較例、傾斜角度:69°)。
図10】排出シュートの形状を変更した場合の実験結果を示した図である(傾斜角度:69°(比較例)、傾斜角度:90°,111°(本実施例))。
図11】原料ホッパの下部に備えられた排出シュート内における原料の流れを示した図である(本実施例、傾斜角度:111°)
図12】原料ホッパ内に付着する原料の付着量の推移を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明にかかる原料ホッパの排出シュートの実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。
本発明にかかる原料ホッパ1の排出シュート2(下方出口部)の概要について説明する。
【0023】
図2Aに、原料ホッパ1の排出シュート2(比較例)の概略を模式的に示す。
図2Bに、本発明の原料ホッパ1の排出シュート2の概略を模式的に示す。
原料ホッパ1は、原料6を貯留するものである。原料ホッパ1は、下方に向かって径が小さくなるテーパ形状とされている。原料ホッパ1は、上部に原料6を装入する挿入口を備え、下部に排出シュート2が設けられている。その排出シュート2の下部には、原料6を降下させることで排出する排出口2aを備えている。
【0024】
排出シュート2の下方には、ベルトコンベア3(1次ベルトコンベア3a)が配置されている。ベルトコンベア3は、排出シュート2から排出された原料6を載せて水平方向に移動させて、造粒機4へ搬送する。
図2A図2Bにおいて紙面左側に向かう方向を、原料6を搬送する方向とする。この搬送方向を原料切出方向と呼ぶこともある。つまり、原料6は排出シュート2からベルトコンベア3に降下すると、紙面左側に向かってベルトコンベア3により搬送される。また、排出シュート2において、原料切出方向側の第1案内壁2b,2dに(A)を付し、対面する第2案内壁2c,2eに(B)を付す。
【0025】
搬送方向上流側からベルトコンベア3の新しい原料搭載面が進んでくると、排出シュート2の第2案内壁2c(B)側の上部に位置する原料6は、優先的に降下し排出シュート2の排出口2aから排出されて、原料切出方向に流れるベルトコンベア3上に載せられて搬送される。その結果、原料切出方向側の第1案内壁2b(A)に位置する原料6は、排出されにくくなる。
【0026】
そこで、原料ホッパ1の下部に設けられている排出シュート2の形状を、以下のようにする。
まず、図2Aに示すように、従来の原料ホッパ1の排出シュート2は、側面視で、下部の排出口2aに進むにつれて大きさが小さくなる形状とされている。すなわち、第1案内壁2bと第2案内壁2cが下方に進むにつれて近づく、側面視で「ハ」の字を逆さにした形状とされている(比較例)。
【0027】
図2Bに示すように、本発明では、側面視で従来(比較例)の逆ハの字形状に対し、原料切出方向側の第1案内壁2d(A)の傾斜角度α(シュート角度α)を垂直方向(90°)よりも外側(原料6の搬送方向下流側)へ広げるような角度とする。つまり、排出シュート2における、原料切出方向側の第1案内壁2dの外角を鈍角にする。好ましくは、側面視で、第1案内壁2dと第2案内壁2eが同じ方向(平行)になるように配置されているとよい。
【0028】
上記のような形状にすることにより、排出シュート2において、原料切出方向側の第1案内壁2d(A)の上部における原料6の降下を促進することで、内壁面に原料6の不動層が形成されることを抑制し、原料ホッパ1内の原料6の流動範囲を広げて、内壁面への原料6の付着を抑制することができる。
以下に、本発明にかかる原料ホッパ1の排出シュート2について詳細に説明する。
【0029】
図3に、焼結プロセスのフローの一例を模式的に示す。
図3に示すように、焼結鉱製造プロセスでは、原料6として、鉄鉱石(例えば、豪州産や南米産等の多数の銘柄)と副原料(石灰石やドロマイトなど)を所定の配合比で且つ、熱源となる炭材を加えて造粒機4(例えば、ドラムミキサ等)内に装入する。造粒機4に装入された原料6に水分(造粒水)を添加しながら転動させて混合することで、造粒物7(焼結原料)を造粒する。造粒した後に、焼結機5に造粒物7(焼結鉱の原料)を充填し、焼成して焼結鉱を製造する。
【0030】
さて、造粒機4に挿入する前においては、原料6は一時的に焼結工場内の原料ホッパ1(原料槽1とも呼ぶ)に貯蔵されている。その原料6は、原料ホッパ1内から排出シュート2を経てベルトコンベア3に排出される。原料6は、操業上の配合条件に応じて、ベルトコンベア3で秤量しながら原料切出方向(水平方向)に搬送される。そして、原料6は造粒機4に供給される。
【0031】
ところで、製鉄所内で発生したもの(製品ではないもの)をリサイクルすることを目的として、複数銘柄の鉄鉱石と発生品をヤードで混合したヤードブレンド原料を、焼結の原料6に使用することがある。このヤードブレンド原料は、ヤード備蓄時に降雨した水分の影響や高水分の発生品(製鋼スラグなど)が混合されていることにより、含水率が10~12mass%と焼結原料6の中で非常に高いものとなっている。
【0032】
ここで、原料6の流動性を調査した。なお、コンクリートの評価手法であるフロー試験を模した手法で行った。
図4に、実施したフロー試験の模式図を示す。
フロー試験手順を以下の(1)~(4)に例示する(詳細は、表1を参照)。
(1)所定水分に調整した原料(原料6)を、筒部材8aに擦切りまで充填する。なお、筒部材8aは、内径:100mm×高さ:200mmのサイズとした。
【0033】
(2)平滑な板材8bの上で、素早く(1~2秒程度)筒部材8aを垂直に引き抜く。
(3)筒部材8a内の原料6が形成した山の「最長径」および「最長径と直行する径」を測定する。
(4)「最長径」と「最長径と直行する径」の平均値をフロー値[mm]とする。
表1に、フロー試験における実施条件を示す。
【0034】
【表1】
【0035】
なお、本実施形態におけるパラメータの定義については、以下の通りである。
表2に、本実施形態におけるパラメータの定義を示す。
【0036】
【表2】
【0037】
図5に、一例としてヤードブレンド原料(原料6)の水分と流動性の関係をまとめたものを示す。
図5に示すように、原料6の水分率が低い場合は、粒子どうしの付着力が小さいため、原料6が山裾に流れてしまい、フロー値は高くなる。
一方で、原料6の水分率が10mass%を超えると、原料6の流動性が著しく低下してしまう。さらに、原料6の水分率14mass%では、ほとんど流動しなくなる。
【0038】
ただし、筒部材8aの内径が100mmのため、フロー値が100mm近くでは筒部材8aを抜いても、原料6が「ところてん」のように固まっていることを示す。
すなわち、流動性を低下させる水分は、粉体の吸水性や表面性状により異なるが、原料6の銘柄によらず同様の性質を有する。
このように、含有する水分の上昇により原料6の流動性が低下すると、原料6を切り出す時に排出シュート2の排出口2aの直上に存在する粉体(原料6)のみが優先的に排出され、その周囲が静止しているといった流れ(ファンネルフロー)となる。
【0039】
この排出シュート2内における原料6の静止部(不動層とも呼ぶ)が拡大すると、原料6の流動範囲が狭くなって排出シュート2が閉塞し、排出不良(棚吊りとも呼ぶ)が頻発するようになる。
図6に、原料搬送設備に備えられた原料ホッパ1の構造の一例を模式的に示す。
なお、原料搬送設備は、原料6を貯留する原料ホッパ1と、原料ホッパ1の下側に備えられ且つ原料を排出する排出シュート2と、排出シュート2の下側に備えられ且つ原料6を水平方向に搬送するベルトコンベア3と、を有する。
【0040】
図6に示すように、本実施形態の原料ホッパ1は、建屋に固定されていて、下部ホッパ1aと上部ホッパ1bとを有している。原料ホッパ1に貯蔵した原料6を排出し、ベルトコンベア3で水平方向に搬送する場合、原料ホッパ1の下部(下部ホッパ1a)に排出シュート2を設けている。
なお、本実施形態においては、上部ホッパ1bは平面断面が四角形状である。また、下部ホッパ1aは、下方に向かって径が小さくなるテーパ形状で且つ、平面断面が円形状である。排出シュート2は、下方に向かって径が小さくなるテーパ形状で且つ、平面断面が四角形状である。
【0041】
この排出シュート2は、原料ホッパ1から流入する原料6を受け、排出口2aからベルトコンベア3(1次ベルトコンベア3a)に載せる役割を担うものである。1次ベルトコンベア3a下流には、2次ベルトコンベア3bが配備されている。2次ベルトコンベア3bには、秤量装置9が配備されている。
なお、原料6を搬送する方向について、図6の紙面左側に向かう方向を1次の搬送方向とし、紙面右側に向かう方向を2次の搬送方向とする。
【0042】
但し、本発明は、小規模な原料1ホッパの場合、排出シュート2を別に設けずに、下部ホッパ1aと排出シュート2とを一体化した下部構造を含むものも対象とする。
ところで、原料ホッパ1は、前述のような排出不良(棚吊り)を抑制するため、次のような構造が望ましいとされている。
以下に、理想的な原料ホッパ1の特徴を以下の(1)~(6)に示す。
【0043】
(1)排出口2aは、可能な限り大きく円筒形であること。
(2)原料ホッパ1内に垂直の仕切り板を入れると効果がある。
(3)原料ホッパ1の内壁には、平滑なライニングを施すと効果が大きい。
(4)原料ホッパ1の壁角度は、限界まで小さくしたほうが良い。
(5)バイブレータを取り付けることにより、原料ホッパ1自体を振動させる。
【0044】
(6)空気を原料ホッパ1の壁面から吹込み、原料6を流動化させる。
なお詳しくは「鉄鋼短期大学 製銑原料処理 p122」を参照するとよい。
但し、これらの原料ホッパ1の構造は、含まれる水分が比較的低く流動性の高い原料には有効であるが、ヤードブレンド原料のような、含まれる水分が高く流動性が低い原料6では十分に機能しなかったり、設備制約上設置できないこともある。
【0045】
ここで、原料ホッパ1内において、原料6が含有する水分の上昇によって変動する原料6の流動範囲を調査するため、内部を観察可能な原料ホッパ10の模型実験を実施した。
図7に、ホッパ模型実験に用いた装置構成の概要を示す。
以下に、原料ホッパ10の模型のサイズ、ベルトコンベア3の仕様、排出シュート20の仕様、模型ホッパ試験の手順について、例示する(詳細は、表3を参照)。
【0046】
原料ホッパ10の模型のサイズについて、以下の通りである。
・上部ホッパ10bの高さ:600mm、下部ホッパ10aの高さ:650mm
・幅:650mm、奥行き:150mm
・容量:180kg
・排出部の幅:150mm、奥行き:150mm
原料6を搬送するベルトコンベア3について、以下の通りである。
【0047】
・原料6の切出速度:10kg/min
・原料6の降下速度:6.5m/h
ただし、原料6の降下速度については、以下の式(1)で求めた。
原料6の降下速度[m/h]=原料6の切出速度[t/h]÷密度[t/m3]÷原料ホッパ10の断面積[m2] ・・・(1)
排出シュート20について、以下の通りである。
【0048】
・高さ:85mm
・原料6の切り出し厚み:20mm
・排出シュート20の原料切出方向側のシュート角度α(第1案内壁20b,20d,20fの傾斜角度α)
(i)既存型の排出シュート20:第1案内壁20bの傾斜角度α=69°(比較例、逆ハの字形状、図2Aを参照)
(ii)改良型の排出シュート20:第1案内壁20dの傾斜角度α=111°(本実施例、第2案内壁20eと平行、図2Bを参照)
模型ホッパ試験の手順(1)~(3)について、以下の通りである。
【0049】
(1)模型ホッパ10(原料ホッパ10)内に水分を調整した原料を充填する。
このとき、模型ホッパ内の原料6の流れを観察するため、原料層の厚み:150mmに対し、石灰石層の厚み:15mmを縞状に形成する。
(2)ベルトコンベア3を運転し、模型ホッパ10(原料ホッパ10)から原料6を切り出す。
【0050】
(3)原料6の排出過程における模型ホッパ10(原料ホッパ10)内の原料6の静止部(不動層)の領域を観察する。
表3に、模型ホッパ実験における実施条件を示す。
【0051】
【表3】
【0052】
原料6の降下速度を略同一とすることで、ホッパ模型実験と実機との相似性を担保している。
図8に、ホッパ模型実験の実験結果であって、ヤードブレンド原料(原料6)に含まれる水分を変えた場合の原料ホッパ10内の原料6の流れを示す(原料水分率8mass%,10mass%,12mass%)。
【0053】
この図8は、約3割の原料6を排出した時点での原料ホッパ10内部の様子を示している。
また、図中に示す白色の破線は、元々同一高にあった石灰石層が排出された後の位置であり、原料6の降下範囲の違いを示している。なお、原料6が静止している領域(不動層)を、白色でハッチングした。また、白色実線の矢印は、石灰石層の位置から推定される原料6の流れを図示したものである。
【0054】
図8の左図に示すように、原料6の水分率8mass%においては、原料ホッパ10内の原料6全体が概ね均一に荷下がりしている。つまり、水分が少ないので、原料6が全体的に流動しやすくなる。
図8の中央図に示すように、原料6の水分率10mass%においては、原料ホッパ10内の原料6の流動範囲が狭まり、排出口20aの直上が優先的に排出されている。つまり、中央の原料6が大きく下がり、原料ホッパ10の内壁側が排出されにくくなる。
【0055】
図8の右図に示すように、原料6の水分率12mass%になると、原料切出方向側の第1案内壁20bに巨大な不動層が形成され、原料ホッパ10内の偏った領域(第2案内壁20
c側)のみ優先的に原料6が排出されるようになる。
つまり、第1案内壁20bの角度が原料切出方向に対して抵抗する(原料6を堰き止める)ような角度(鋭角)となり、上部に原料6の不動層が形成されることとなる。そして、第2案内壁20cの角度が原料切出方向に対して原料6を流しやすくなる角度となり、第2案内壁20c側にある原料6がベルトコンベア3の運転によって原料切出方向に引き出されるように排出される。
【0056】
図9に、原料ホッパ10の下部に備えられた排出シュート20内における原料6の流れを示す(比較例、第1案内壁20bの傾斜角度α=69°)。
図9に示すように、原料ホッパ10内の下部領域を詳細に観察すると、原料6の流れが原料切出方向と逆側(第2案内壁20c側)に偏っている状況である。
理由としては、ベルトコンベア3を用いて原料ホッパ10から原料6を水平方向に切り出す場合、ベルトコンベア3と原料6が接触する面の摩擦により原料6が排出されるため、ベルトコンベア3の新しい原料搭載面が進入してくる原料切出方向と逆側(第2案内壁20c側)の原料6が優先的に排出されるためである。
【0057】
その結果、原料ホッパ10内において、排出されにくい原料切出方向側(原料6の搬送方向下流側)の第1案内壁20bに原料6が静止する領域(不動層)が形成されることとなる。
そこで、原料ホッパ10の下部における原料6の流れを均一化して不動層を縮小させるため、排出シュート20の最適な形状を検討した。
【0058】
図10に、排出シュート20の形状を変更した場合の実験結果を示す。
一例として、側面視で、第1案内壁20bの傾斜角度α=69°(比較例)、第1案内壁20fの傾斜角度α=90°(本実施例)、第1案内壁20dの傾斜角度α=111°(本実施例)の例を示す。
前述した模型ホッパ(原料ホッパ10)を用いて実験を行った。排出シュート20の原料切出方向側に設けられた第1案内壁20fの傾斜角度αを「垂直」とした構造の場合における、原料ホッパ10内の原料6の流れを観察した。
【0059】
また、第1案内壁20dの傾斜角度αを第2案内壁20e(背面壁)と「平行」とした構造の場合における原料ホッパ10内における原料6の流れを観察した。
ただし、「垂直」については排出シュート20角度α=90°とし、「平行」は排出シュート20角度α=111°とした。
なお、本実施形態における「平行」とは、数学的の平行ではないとしている。すなわち、本実施形態における「平行」は、厳密なものではなく、大まかに同じ方向(数°のずれも含まれる)を向くものである。
【0060】
また、原料6の排出が極端に片寄り、原料ホッパ10内に巨大な不動層を形成した原料6の水分率12mass%とした条件で、排出シュート20の形状による影響を比較した。つまり、本実施例と比較例とを対比した。
図10に示すように、排出シュート20を構成する第1案内壁20dの傾斜角度αを垂直(鉛直)よりも外側(原料切出方向側)に広げることで、原料ホッパ10内における原料6排出の挙動が変化した。
【0061】
図10の中央図に示すように、排出シュート20を構成する第1案内壁20fを「垂直」の構造とすることで、図中に示す白色の破線において、中央の原料6から下がり始め、遅れて第1案内壁20fと第2案内壁20g側の原料6が下がり、側面視で略V字形状の崩れ方となり、中央の原料6から順に排出されることとなる。この形状によれば、原料ホッパ10内の不動層の形成をほぼ抑制することができる。つまり、第1案内壁20fが「垂直」の構造でも所望の効果が期待できる。
【0062】
図10の右図に示すように、第1案内壁20dを第2案内壁20e(背面壁)と「平行」の構造とした場合、図中に示す白色の破線において、原料ホッパ10内において原料6全体が下がり始め(第1案内壁20dと第2案内壁20e側が少し遅れてはいるものの)、排出シュート20に近づくにつれて原料6の降下が一定となり、原料6が順に排出されることとなる。この形状によれば、原料ホッパ10内の流動範囲がさらに広がることとなり、不動層の形成を抑制し且つ、原料6の荷下がりを均一化させることができる。つまり、第1案内壁20dを第2案内壁20eと「平行」の構造(第1案内壁20dを外側(原料切出方向、原料6の搬送方向下流側)に開くような構造)とすることで、所望の効果を確実に期待することができる。
【0063】
図11に、原料ホッパ10の下部に備えられた排出シュート20内における原料6の流れを示す(本実施例、傾斜角度α=111°)。
図11に示すように、原料ホッパ10内の下部領域を詳細に観察すると、原料6の流れが均一化していた。
さて、比較例のような「逆ハの字」形状の構造を備える排出シュート20の形状では、原料6が原料ホッパ10の下部に向かって荷下がりするにつれて、原料6が中央部に集中するため、降下に抵抗が生じる。
【0064】
しかし、本実施例のような排出シュート20の原料切出方向側(原料6の搬送方向下流側)に設けられた第1案内壁20dを「垂直」よりも広げた、すなわち第1案内壁20dを原料切出方向側に向ける構造とすることで、原料ホッパ10の下部における原料6降下時の抵抗を緩和させることができる。ただし、第1案内壁20fを「垂直」の構造としても、本発明の作用効果を期待することができる。
【0065】
また、排出シュート20の原料切出方向側(原料6の搬送方向下流側)に設けられた第1案内壁20dの傾斜角度αを、第2案内壁20eと「平行」以上に広げても、すなわち第1案内壁20dを原料切出方向側のより傾けた(排出口20aがより開いた)形状にしても、不動層の形成を抑制し且つ、原料6の荷下がりを均一化させる効果が得られると考えられる。
【0066】
まとめると、本発明は、原料6を貯留する原料ホッパ1の下側に備えられ且つ、原料6を水平方向に搬送するベルトコンベア3に排出する排出シュート2において、排出シュート2は、側面視において、原料6の搬送方向下流側(原料切出方向側)の第1案内壁2dと、第1案内壁2dと対面し且つ原料6の搬送方向上流側の第2案内壁2eと、を有している。
【0067】
第2案内壁2e(背面壁)は、排出シュート2の側面視において、下縁が原料6の搬送方向下流側(原料切出方向側)を向くように傾斜して配置されている。
また、第1案内壁2dは、排出シュート2の側面視において、垂直(鉛直)方向より原料6の搬送方向下流側(原料切出方向側)に傾斜した角度α(シュート角度αが鈍角)となるように配置されている。
【0068】
好ましくは、第1案内壁2dは、排出シュート2の側面視において、第2案内壁2eと沿う方向に配置されているとよい。
すなわち、本発明では、原料切出方向側の第1案内壁2dの傾斜角度α(シュート角度α)を、垂直方向(90°)よりも外側(原料切出方向側)へ広げるような角度とする。
つまり、排出シュート2の側面視において、原料切出方向側に対し、第1案内壁2dの外壁面側の角度αが90°以上(外角が鈍角(垂直でも可))となるように配置されている。
【0069】
より好ましくは、第1案内壁2dは、第2案内壁2eと同じ方向(平行)になるように配置されているとよい。
なお、本発明については、上で詳説したような粉体(原料6)を原料ホッパ1に一時的に貯蔵し、一定量を次工程に送るプロセスは様々あるので、製鉄業における焼結プロセスに限定しない。
【0070】
つまり、本発明は、例えば水分を多く含むなどといった、低流動性の粉体を貯蔵する原料ホッパ1の排出シュート2であれば、如何なる実施の形態であっても、適用することができるものである。
[実施例]
以下に、本発明の原料ホッパ1の排出シュート2を用いて従って実施した実施例及び、本発明と比較するために実施した比較例について、説明する。
【0071】
本実施例における実施条件については、以下の通りである。
本実施例においては、実機の原料ホッパ1に備えられた排出シュート2の形状を変更し、既存型シュート2(比較例)との原料6排出の挙動の比較を行うロングラン試験を実施した。なお、実機について、以下に例示する(詳細は、表4を参照)。
実機の原料ホッパ1については、以下の通りである。
【0072】
・上部ホッパ1bの高さ:6.0m、下部ホッパ1aの高さ:6.5m
・幅:6.5m、奥行き:6.5m
・容量:700t
・排出部のサイズ:φ1.5m
原料6を搬送するベルトコンベア3については、以下の通りである。
【0073】
・原料6の切り出し速度:70~130t/h
・原料6の平均降下速度:3.5~6.5m/h
ただし、原料6の降下速度については、以下の式(1)で求めた。
原料6の降下速度[m/h]=原料6の切出速度[t/h]÷密度[t/m3]÷原料ホッパ1の断面積[m2] ・・・(1)
原料6については、ヤードブレンド原料を使用した。
【0074】
排出シュート2については、以下の通りである。
・高さ:0.85m
・排出シュート2の原料切出方向側のシュート角度α(第1案内壁2b,2dの傾斜角度α)
(i)既存型の排出シュート2:第1案内壁2bの傾斜角度α=69°(比較例、逆ハの字形状)
(ii)改良型の排出シュート2:第1案内壁2dの傾斜角度α=111°(本実施例、第2案内壁2eと平行)
評価期間については、5か月間とした。
【0075】
評価指標については、以下の(1)、(2)の通りである。
(1)原料層内の付着割合
原料ホッパ1内の原料6の排出が停止するまで定期的に空槽化し、その際の原料ホッパ1の内壁面への付着量を調査する。
ただし、付着割合については、以下の式(2)で求めた。
【0076】
付着割合[%]=付着量[t]÷ホッパ容量[t]×100 ・・・(2)
なお、付着量については、原料ホッパ1を原料6で満槽にしてから、原料6の排出が停止するまでの原料排出量を積算し、原料ホッパ1の容量と積算排出量の差から求めた。
(2)排出不良回数
操業中に棚吊り等で原料6の排出が、一時的に停止した回数をカウントする。
【0077】
1分以上、原料6の切り出しが停止した場合を排出不良とする。
表4に、実機実証実験における実施条件を示す。
【0078】
【表4】
【0079】
図12に、実機の原料ホッパ1内における原料6の付着量の推移を示す。
図12に示すように、比較例(■印)では、わずか1か月程度で原料ホッパ1内における原料6の付着割合が増加していることがわかる。それに対し、本実施例(●印)では、原料6付着の成長が約1/3に抑制されていることがわかる。
表5に、原料6の排出不良(棚吊り)の回数を示す。
【0080】
【表5】
【0081】
表5に示すように、本実施例においては、原料ホッパ1の内壁面に原料6が付着すること(不動層)が抑制されることにより、排出不良回数も比較例の18回/day/槽に対し、本実施例では5回/day/槽となり、1/3以下に減少していることがわかる。
以上述べたように、原料ホッパ1に備えられている排出シュート2の形状を変更する、すなわち第1案内壁2dを原料切出方向側(原料6の搬送方向下流側)に傾斜させる形状とすることにより、原料ホッパ1の内壁面に原料6が付着すること(不動層)が抑制されるので、原料6の排出が安定するという効果が得られる。
【0082】
さらに、原料ホッパ1の内壁面に原料6が固着すると、高圧洗浄などを用いて原料ホッ
パ1内の清掃が必要となるが、その清掃の頻度を1/3以下に低減させることができる。
すなわち、本発明の原料ホッパ1の排出シュート2によれば、原料6を貯蔵する原料ホッパ1の排出シュート2の形状を排出しやすい形状(第1案内壁2dを原料切出方向側(原料6の搬送方向下流側)に傾斜させた形状)にすることで、高い水分を含んだ原料6を使用しても、原料6が原料ホッパ1の内壁面に付着することによる詰まり、すなわち棚吊りなどの排出不良を抑制し、安定して原料の排出を行うことができる。
【0083】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
特に、今回開示された実施形態において、明示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0084】
1 原料ホッパ、原料槽(実機)
1a 下部ホッパ
1b 上部ホッパ
2 排出シュート
2a 排出口
2b 第1案内壁(比較例、既存型)
2c 第2案内壁
2d 第1案内壁(本実施例、平行型)
2e 第2案内壁
3 ベルトコンベア
3a 1次ベルトコンベア
3b 2次ベルトコンベア
4 造粒機
5 焼結機
6 原料
7 造粒物
8a 筒部材
8b 板材
9 秤量装置
10 原料ホッパ(模型実験)
10a 下部ホッパ
10b 上部ホッパ
20 排出シュート
20a 排出口
20b 第1案内壁(比較例、既存型)
20c 第2案内壁
20d 第1案内壁(本実施例、平行型)
20e 第2案内壁
20f 第1案内壁(本実施例、垂直型)
20g 第2案内壁
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12