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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】プラス極組成物
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/45 20060101AFI20240716BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240716BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240716BHJP
   C01B 32/21 20170101ALI20240716BHJP
【FI】
C01B25/45 M
H01M4/58
H01M4/36 C
C01B32/21
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021504226
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019070549
(87)【国際公開番号】W WO2020025638
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】1857116
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バートリー, ローラ
(72)【発明者】
【氏名】アミス, ロバン
(72)【発明者】
【氏名】ビュイセット, ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】ブライダ, マルク-ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】レストゥルゲス, ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】ル メルシェ, ティエリー
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103594716(CN,A)
【文献】特開2014-075254(JP,A)
【文献】特表2004-533706(JP,A)
【文献】特表2018-520462(JP,A)
【文献】国際公開第2017/064189(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/45
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意選択的に部分酸化されているN(PO(NVPF)の粒子、並びに黒鉛化形態でのカーボンを含む組成物であって、前記任意選択的に部分酸化されているNVPFは、Amam空間群の斜方晶系単位格子で結晶化されており、前記組成物は、
(1)1.0%~3.5%のカーボン含有量であって、この含有量は、前記組成物の総重量に対して元素カーボンの重量で表される、含有量で、
(2)0.9g/ml以上のタップ密度TDで、及び
(3)以下の特性:
・ 5.0μm~25.0μmのDv90;
・ 1.0μm~10.0μmのDv50
を示す体積での粒度分布で特徴付けられ;
前記粒度分布が、エタノール中の前記組成物の分散系からレーザー回折によって得られ、
前記粒度分布が、2つの母集団:分布の最大値を示す直径が1.0μm~4.0μmである、第1母集団;及び分布の最大値を示す直径が10.0μm~25.0μmである、第2母集団を含み、前記第2母集団のピークの強度に対する前記第1母集団のピークの強度の比が3.0以上である、組成物。
【請求項2】
任意選択的に部分酸化されているN(PO(NVPF)の粒子、並びに黒鉛化形態でのカーボンからなる組成物であって、前記任意選択的に部分酸化されているNVPFは、Amam空間群の斜方晶系単位格子で結晶化されており、前記組成物は、
(1)1.0%~3.5%のカーボン含有量であって、この含有量は、前記組成物の総重量に対して元素カーボンの重量で表される、含有量で、
(2)0.9g/ml以上のタップ密度TDで、及び
(3)以下の特性:
・ 5.0μm~25.0μmのDv90;
・ 1.0μm~10.0μmのDv50
を示す体積での粒度分布で特徴付けられ;
前記粒度分布が、エタノール中の前記組成物の分散系からレーザー回折によって得られ、
前記粒度分布が、2つの母集団:分布の最大値を示す直径が1.0μm~4.0μmである、第1母集団;及び分布の最大値を示す直径が10.0μm~25.0μmである、第2母集団を含み、前記第2母集団のピークの強度に対する前記第1母集団のピークの強度の比が3.0以上である、組成物。
【請求項3】
任意選択的に部分酸化されているNVPFの重量割合が、97.0重量%~99.0重量%であり、この割合が、前記組成物の総重量に対して表される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
NVPFの斜方晶系単位格子の単位格子パラメーターcが、10.686オングストローム以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
NVPFの斜方晶系単位格子の単位格子体積Vが872.604~878.390オングストロームである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
1.5以下の、好ましくは1.0以下の比Rを示す、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物であって、
- Rが、前記組成物の試料の様々なポイントで実施された少なくとも6つの測定値にわたって計算された比I/Iの算術平均を意味し;
- Iが、おおよそ1340cm-1に中心があるラマン振動バンドの強度を意味し;
- Iが、おおよそ1590cm-1に中心があるラマン振動バンドの強度を意味する
組成物。
【請求項7】
Dv90が5.0μm~20.0μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
Dv50が1.0μm~5.0μmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
Dv10が、0.50μm以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
関係(Dv90-Dv10)/Dv50によって定義される、分散係数σ/mが、最大でも10.0である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも2m/gのBET比表面積を示す、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記タップ密度が、2.0g/ml以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物の調製方法であって、以下の工程:
a)V及びNHPOから形成される混合物であって、これらの2つの反応物は両方とも固体状態にある、混合物、並びにその初期割合が75%~150%である、水であって、この割合は、前記2つの反応物V及びNHPOの組合せに対して重量で計算される、水、が撹拌される工程;
b)先行工程から生じた湿ったペーストが、VPOの形成をもたらすために少なくとも700℃の温度でか焼される工程;
c)工程b)において得られた前記VPOが、フッ化ナトリウム及び、熱分解して部分的に黒鉛化形態でのカーボンを与える、含酸素炭化水素化合物と混合され、このようにして得られた混合物が少なくとも700℃の温度でか焼される工程;
d)工程c)において得られた生成物が、前記組成物をもたらすためにボールミリング又はエアジェットミリングによって解凝集される工程
を含む方法。
【請求項14】
ナトリウム電池用の又はナトリウムイオン電池用の電極の電気化学的活物質としての請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物と、少なくとも1種の導電性材料と任意選択的にバインダーとを含む導電性組成物。
【請求項16】
前記導電性材料が、炭素繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びグラフェンから選択される、請求項15に記載の導電性組成物。
【請求項17】
前記バインダーが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンと少なくとも1種のコモノマーとのコポリマー、カルボキシメチルセルロースに由来するポリマー、多糖類及びラテックスから選択される、請求項15又は16に記載の導電性組成物。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか一項に記載の導電性組成物又は請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物を含むプラス極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年7月30日出願の仏国特許出願第1857116号の優先権を主張するものであり、その内容は、参照により完全に援用される。用語の又は表現の明瞭さに影響を与えるであろう矛盾が本出願の文章と仏国特許出願の文章との間にある場合には、本出願のみを参照するものとする。
【0002】
本発明は、NVPFベースの組成物に、及び電気化学的に活性な材料としての電池の分野でのその使用に関する。それはまた、前記組成物を含む導電性組成物に、及び前記組成物を得ることを可能にする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池に対する需要は、携帯電話及び電気自動車などの、多種多様の電子デバイスにおけるそれらの用途に関して近年増加している。実際に、リチウムベースの化合物は、比較的高価であり、天然リチウム源は、本惑星にわたって不均等に分布しており、それらが小数の国に局在化しているので、容易にアクセスできない。この元素の代替品が従って探求されている。その目的に向けて、ナトリウムイオン電池が開発されている。これは、ナトリウムが非常に豊富であり、且つ、均質に分布しており、有利には非毒性であり、経済的により有利であるからである。
【0004】
しかしながら、トリプルモル質量について、Na/Naカップルの酸化還元電位は(SHEに対して-2.71V)であり、従ってLi/Liカップルのそれ(SHEに対して-3.05V)よりも大きい。これらの仕様は、ホスト材料を選択することを困難にする。最近、材料Na(PO(又はNVPF)が、その電気化学的性能品質に関して特に有利な電気化学的に活性な材料であることが証明されている。
【0005】
仏国特許第3 042 313号明細書及び国際公開第2017/064189号パンフレットは、25μm未満の、好ましくは10μm未満の平均サイズを示し得るNVPF粒子を記載しており、このサイズは、レーザー粒度分析によって測定されている。この公文書は、本発明の組成物の改善されたDv10、Dv50及びDv90特性を明記していない。
【0006】
中国特許第103594716号明細書は、Dv10、Dv50及びDv90特性に関する情報なしにNVPFベースの組成物を記載している。
【0007】
中国特許第105655565号明細書は、1g/cmを超え得るタップ密度を示すNVPFベースの組成物を記載している。これらの組成物は、式Na(POのリン酸バナジウムナトリウム並びに、例えばポリアニリン(PANI)タイプの、導電性ポリマーを含む。粒度分布の言及は全くない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電極の体積エネルギー密度は、電極が単位体積当たり貯蔵し得るエネルギーの量を表す。それは、電池の嵩高さを制限するために最大にされなければならない。ある種の用途は、例えば電池がボタン電池の形態にある場合に、電池の嵩高さの減少を要求するので、これは、完全に真実である。電気化学的に活性な材料のナトリウムイオンの抜出及び再挿入を保証するために、電極は、電気化学的に活性な材料、並びにバインダー又は導電性添加物などの、好適な割合の電気化学的に不活性な材料を含み、多孔性の程度で特徴付けられる導電性組成物から形成される。導電性添加物は、電極を通しての電子透過を確実にする。バインダーは、電流コレクタへの接着及び複合電極の機械的強度を確実にする。多孔性は、その一部について、電解質と活性材料との間のイオン透過のために必要である。体積容量(この特許出願ではAh/l単位で表される)を最大にするために、電気化学的に不活性な材料の量並びに複合材料における多孔性を制限する、しかしながら、活性材料のナトリウムイオンの抜出及び再挿入を損なうことのない試みが行われる。
【0009】
電気化学的に活性な材料が電気化学的に不活性な材料と容易に配合できること、及び導電性組成物が容易に、且つ、例えば、「縞入りの」フィルムなどの、欠陥をもたらすことなくコートできることがまた探求される。
【0010】
電気化学的に活性な材料として、本発明の組成物は、この損なうことの解消をターゲットとしている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の組成物(点線)の及び比較例1の組成物(実線)のサイズ分布を表す。
図2】実施例1の組成物のSEM画像を表す。この画像において、NVPF粒子のみが検出されること及びカーボンベースの粒子を観察できないことが注目される。
図3】実施例1の組成物(点線)の及び比較例1の組成物(実線)の容量に対して電位単位での定電流曲線を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、任意選択的に部分酸化されている、NVPFの粒子、並びに黒鉛化形態でのカーボンを含む組成物であって、(1)1.0%~3.5%、実に1.0%~3.0%さえのカーボン含有量(この含有量は、組成物の総重量に対して元素カーボンの重量で表される)で、(2)0.9g/ml以上の、実に1.0g/ml以上さえの、実に更にいっそう1.1g/ml又は1.2g/ml以上のタップ密度TDで、及び(3)以下の特性:
・ 25.0μm以下、実に20.0μm以下さえのDv90;
・ 1.0μm~10.0μm、より特に1.0μm~7.0μm、実に1.0μm~5.0μmさえのDv50
を示す体積での粒度分布で特徴付けられ;
この分布が、エタノール中の、特に無水エタノール中の組成物の分散系からレーザー回折によって得られる
組成物に関する。
【0013】
本発明に関してさらに詳しくは、特許請求の範囲においてを含めて、これから以下に示される。
【0014】
本発明の組成物は、任意選択的に部分酸化されている、NVPFの粒子を含む。任意選択的に部分酸化されている、NVPFは、本組成物の支配的な要素である。その重量割合は、97.0%以上であり、この割合は、組成物の総重量に対して表される。この割合は、97.0重量%~99.0重量%であり得る。本発明の組成物は、Na(POを含まないか、又は組成物がそれを含有する場合、その重量割合は、最大でも1.0%、実に最大でも0.5%さえである。
【0015】
より特に、本発明の組成物は、任意選択的に部分酸化されている、NVPFの粒子、並びに黒鉛化形態でのカーボンから本質的に構成され、(1)1.0%~3.5%、実に1.0%~3.0%さえのカーボン含有量(この含有量は、組成物の総重量に対して元素カーボンの重量で表される)で、(2)0.9g/ml以上の、実に1.0g/ml以上さえの、実に更にいっそう1.1g/ml又は1.2g/ml以上のタップ密度TDで、及び(3)以下の特性:
・ 25.0μm以下、実に20.0μm以下さえのDv90;
・ 1.0μm~10.0μm、より特に1.0μm~7.0μm、実に1.0μm~5.0μmさえのDv50
を示す体積での粒度分布であって、
この分布が、エタノール中の、特に無水エタノール中の組成物の分散系からレーザー回折によって得られる粒度分布で特徴付けられる。
【0016】
NVPFは、分子式Na(POの化合物である。この化合物中に、バナジウムは、+III酸化状態で存在する。NVPFは、部分酸化され得る。この場合に、生成物は、また+IV酸化状態でのバナジウムの存在によって並びに酸素原子によるフッ素原子の部分置き換えによって特徴付けられる。部分酸化NVPFは、式Na(PO3-x(xは、0より大きく0.5より小さい)で表され得る。

【0017】
任意選択的に部分酸化されたNVPFは、Amam空間群の斜方晶系単位格子で結晶化する。単位格子パラメーターcは、10.686オングストローム以上、実に10.750オングストローム以上さえであり得る。それは、10.750オングストロームに実質的に等しいものであり得る。単位格子パラメーターaは、その一部について9.027~9.036オングストロームであり得、好ましくは9.029オングストロームに実質的に等しいものであり得る。単位格子パラメーターbは、その一部について9.038~9.045オングストロームであり得、好ましくは9.044オングストロームに実質的に等しいものであり得る。単位格子体積Vは、その一部について872.604~878.390オングストロームであり、好ましくは878.000オングストロームに実質的に等しい。
【0018】
NVPFについて、単位格子パラメーターcは、10.741~10.754オングストロームである。単位格子パラメーターaは、9.028~9.031オングストロームである。単位格子パラメーターbは、9.043~9.045オングストロームである。単位格子体積Vは、その一部について877.335~878.390オングストロームであり、好ましくは878.000オングストロームに実質的に等しい。
【0019】
本発明の組成物はまた、そのカーボン含有量で特徴付けられる。後者は、1.0%~3.5%、実に1.0%~3.0%さえであり、この含有量は、組成物の総重量に対して元素カーボンの重量で表される。カーボン含有量は、微量分析によって測定される。
【0020】
組成物は、黒鉛化形態でのカーボンを含む。黒鉛化形態でのカーボンは、NVPF粒子の表面での電子伝導性に寄与する。組成物中の黒鉛化形態でのカーボンの存在は、ラマン分光法を用いて実証され得る。より具体的には、黒鉛化形態でのカーボンは、1580~1600cm-1にある、より特におおよそ1590cm-1に中心がある振動バンドの存在によりラマン分光法によって実証され得る。黒鉛化形態でのカーボンは、以下に記載されるように、含酸素炭化水素化合物の高温熱分解によって得られる。熱分解はまた、非晶質カーボンの形成をもたらす。
【0021】
本発明の組成物は、1.5以下の、好ましくは1.0以下の、実に0.9以下さえの比Rを示し得、ここで:
- Rは、組成物の試料の様々なポイントで実施された少なくとも6つの測定値にわたって計算された比I/Icの算術平均を意味し;
- Iは、おおよそ1340cm-1に中心があるラマン振動バンドの強度を意味し;
- Iは、おおよそ1590cm-1に中心があるラマン振動バンドの強度を意味する。
【0022】
おおよそ1340cm-1の振動バンドは、非晶質(又は無秩序)カーボンに帰せられる。このバンドは、一般に1330~1360cm-1にある。おおよそ1590cm-1の振動バンドは、黒鉛化カーボンに帰せられる。このバンドは、一般に1580~1600cm-1にある。
【0023】
本発明の組成物は、更に、0.9g/ml以上、実に1.0g/ml以上さえの、実に更にいっそう1.1g/ml又は1.2g/ml以上であるタップ密度TDを示す。タップ密度は、粉末タッピング装置を用いて公知の方法で測定される。
【0024】
タップ密度の以下の測定方法が適用され得る:
i)標準ISO 6706に従って好ましくはクラスA+の、25mlの目盛付きメスシリンダーが、組成物で満たされ、この組成物の初期体積Viはおよそ20mlであり;
ii)試験検体がその後一連の3000ブローにかけられ;
iii)組成物の最終体積Vfが次いで測定される。
【0025】
タップ密度は、そのとき:
TD(g/ml単位での)=組成物の重量/体積Vf
で定義される。
【0026】
従って、特許請求の範囲においてを含めて、本特許出願において定義されるような本発明は、特に、任意選択的に部分酸化されている、NVPFの粒子、並びに黒鉛化形態でのカーボンを含む組成物であって、(1)1.0%~3.5%、実に1.0%~3.0%さえのカーボン含有量(この含有量は、組成物の総重量に対して元素カーボンの重量で表される)で、(2)0.9g/ml以上の、実に1.0g/ml以上さえの、実に更にいっそう1.1g/ml又は1.2g/ml以上のタップ密度TDで、及び(3)以下の特性:
・ 25.0μm以下、実に20.0μm以下さえのDv90;
・ 1.0μm~10.0μm、より特に1.0μm~7.0μm、実に1.0μm~5.0μmさえのDv50
を示す体積での粒度分布で特徴付けられ;
この分布が、エタノール中の、特に無水エタノール中の組成物の分散系からレーザー回折によって得られ、
及びタップ密度が、
i)標準ISO 6706に従って好ましくはクラスA+の、25mlの目盛付きメスシリンダーを組成物で満たし(この組成物の初期体積Viはおよそ20mlである);
ii)試験検体がその後一連の3000ブローにかけられ;
iii)組成物の最終体積Vfが次いで測定される
ことに存する方法によって測定され、
タップ密度が、次いで、以下の関係:
TD(g/ml単位での)=組成物の重量/体積Vf
で定義される、
組成物に関する。
【0027】
一般に、ブローは、試験検体を一定の高さだけ持ち上げることに及びそれを落下させることに存する。この高さは、例えば、0.5インチであり得る。
【0028】
3000ブロー後に、組成物の体積はもはや変化しないと一般に考えられる。一連の3000ブロー後に、2つの連続した一連のブロー間の体積の差の絶対値が2.0%未満(すなわち、(|V第1シリーズ-V次のシリーズ│)/V第1シリーズ×100<2.0%)であることを確認するために、試験検体を別の一連のブローにかけ続けることが可能であろう。しかしながら、この差が2.0%以上である場合、この差が2.0%未満になるまで、本手順が他のシリーズのブローで続行される。考慮に入れられるべき体積Vfは、2つの連続シリーズのブローの間の体積の差の絶対値が2.0%未満であるものである。
【0029】
タップ密度の測定方法は、実施例セクションにおいてより具体的に見出され得る。
【0030】
タップ密度は、一般に2.0g/ml以下、実に1.8g/mlさえ、実に更にいっそう1.5g/mlである。
【0031】
本発明の組成物はまた、特定の粒度分布を示す。後者は、エタノール、特に無水エタノール中の組成物の分散系からレーザー回折によって測定される。レーザー回折は、レーザービームが分散粒子の試料を通過するときに散乱する光の強度の角度変動を測定することによって粒子の粒度分布を測定することを可能にする。大きい粒子は、レーザービームに対して小さい角度で光を散乱させ、小さい粒子は、より大きい角度で光を散乱させる。本特許出願において示される、Dv10、Dv50又はDv90などの、分布の特性は、体積での分布から得られ、数での分布からではない。パラメーターDv10、Dv50及びDv90は、レーザー回折による測定の分野での通常の意味を有する。例えば、https://www.horiba.com/fileadmin/uploads/Scientific/Documents/PSA/PSA_Guidebook.pdfを参照されたい。
【0032】
Dvxは、粒子のサイズの体積での分布に関して測定される値を意味し、その値について粒子のx%が、この値Dvx以下のサイズを有する。従って、例えば、Dv10に関しては、粒子の10%がDv10未満であるサイズを有する。例えば再び、Dv90に関しては、粒子の90%がDv90未満であるサイズを有する。Dv50は、体積での分布の中央値に相当する。
【0033】
従って、本発明の組成物について、Dv90は、25.0μm以下、実に20.0μm以下さえである。Dv90は、5.0μm~25.0μm、実に5.0μm~20.0μmさえであり得る。
【0034】
更に、Dv50は、1.0μm~10.0μm、より特に1.0μm~7.0μm、実に1.0μm~5.0μmさえである。
【0035】
更に、Dv10は、0.50μm以上、実に1.0μm以上さえであり得る。分布は更に狭く、それは、最大でも10.0の分散係数σ/mで特徴付けられる。この係数は、以下の式:σ/m=(Dv90-Dv10)/Dv50によって決定される。σ/mは、代わりに2.0~8.0、より特に2.5~6.0、実に2.5~5.0さえであり得る。
【0036】
粒度分布は、2つの母集団:支配的であり、1.0μm~4.0μm、優先的には2.0μm~3.5μmの値に中心がある、第1母集団;及び小さい、10.0μm~25.0μm、優先的には15.0μm~21.0μmの値に中心がある、第2母集団を含み得る。
【0037】
第1母集団が支配的であり、第2母集団は小さい。これは、第1母集団のピークの強度対第2母集団のピークの強度の比が3.0以上であるという事実によって特に実証され得る。
【0038】
表現「所与の値に中心がある母集団」は、その最大値がこの所与の値にある、ピークのデコンボリュートされた分布にわたる存在を意味する。デコンボリューションについて、母集団は、ガウス分布であると考えられ得る。図1において、サイズ分布にわたって、このダブル母集団の存在を識別することが可能である。
【0039】
加えて、12.0μm以上のサイズの粒子の割合(P12μmと示される)は、より特に5.0%以上、実に10.0%以上さえ、実に更にいっそう15.0%以上であり得る。P12μmは、体積でのサイズ分布から決定される。
【0040】
本発明の組成物は、少なくとも2m/gに等しい、実に10m/g以上さえのBET比表面積を示し得る。この比表面積は、2~15m/g、実に10~15m/gさえであり得る。BET表面積は、周知のBrunauer-Emmett-Teller法に従って窒素の吸着/脱着によって得られる比表面積を言う。BET比表面積の測定方法は、実施例において見出され得る。
【0041】
本発明の組成物は、以下の工程:
a)V及びNHPOから形成される混合物(これらの2つの反応物は両方とも固体状態にある)、並びにその初期割合が75%~150%(この割合は、2つの反応物V及びNHPOの組合せに対して重量で計算される)である、水が撹拌される工程;
b)先行工程から生じた湿ったペーストが、VPOの形成をもたらすために少なくとも700℃の温度でか焼される工程;
c)工程b)において得られたVPOが、フッ化ナトリウム及び、熱分解して部分的に黒鉛化形態でのカーボンを与える、含酸素炭化水素化合物と混合され、このようにして得られた混合物が少なくとも700℃の温度でか焼される工程;
d)工程c)において得られた生成物が、本発明の組成物をもたらすために解凝集される工程
を含む方法によって調製され得る。
【0042】
工程a)において、V、NHPO及び水を含む混合物が形成される。2つの化合物V及びNHPOは、好ましくは、粉末の形態で存在する。その粒子が最大でも100μmの、実に最大でも50μmさえの直径Dv50を示す、粉末を使用することが可能である。Dv50は、レーザー粒子寸法測定器によって決定される体積でのサイズ分布から得られる中央直径である。2つの出発反応物が均質混合されている混合物を使用することが好ましい。
【0043】
良好な純度のNVPFを得るために、反応(I)の化学量論に近い混合物を使用することが好ましい。例えば、V及びNHPOを0.9~1.1、実に0.95~1.05さえの初期V/Pモル比で含む混合物が使用され得る。
【0044】
混合物はまた、その初期重量割合が75%~150%(この割合は、2つの反応物V及びNHPOの組合せに対して重量で計算される)である、水を含む。この割合は、工程a)の開始時の混合物中に存在する水の割合である。
【0045】
混合物の調製は、任意の順でのVの、NHPOの及び水の混合をベースとしている。例えば、2つの粉末を均質に混合すること、このようにして得られた2つの粉末の混合物に水を添加すること、及びその後組合せを混合することが可能である。この混合は、混合物のレオロジーに好適な混合手段で実施され得る。
【0046】
2つの反応物間の反応は、
+2NHPO→2(NH)(VO)(HPO)+HO (I)
と記される。
【0047】
上に記載された混合物は、例えば、プロペラ型攪拌機、傾斜ブレード攪拌機又はニーダーなどの、粘性のある媒体に好適な任意の混合手段で撹拌される。これは、反応が進行するときに、混合物の粘度が増加して粘性のあるペーストをもたらすことが観察されるからである。実験室規模では、Controlab L0031.2ニーダーが用いられ得る。
【0048】
撹拌は、高くなくてもよい温度で実施され得る。このように、この温度は、最高でも100℃、実に最高でも60℃さえ、実に最高でも30℃さえであり得る。撹拌が始まる初期温度が50℃未満、実に30℃未満さえである場合、反応はより長く、それは、(反応の進行と共に増加する傾向がある)混合物の粘度のより良好な制御を可能にし、及びまた反応混合物が固化する(setting solid)のを防ぐ。反応の継続時間は、混合物中に初期に存在する水の量に、開始時に使用される固体のディビジョンの状態に、並びに混合物の物理的形状に依存する。この継続時間は、一般に2時間~60時間である。幾つかの方法に従って反応(I)の進行をモニターすることが可能である。第1の目視方法は、反応中に取り出された15mgの試料を、超音波下に、5mlの脱イオン水中に分散させることに存する。出発反応物が残っている場合、このようにして形成された混合物は、不透明の分散系の形態で存在し、一方、進行が十分に前進している場合、このようにして形成された混合物は、鮮黄色の半透明溶液の形態で存在する。より定量的には、第2方法によれば、反応中に取り出された試料を、x線回折計(XRD)を用いて、分析することによって化学反応をモニターすることが可能である。
【0049】
工程a)の終わりに、湿ったペーストが得られる。
【0050】
工程b)において、先行工程から生じた湿ったペーストは、少なくとも700℃の、実に少なくとも800℃さえの温度でか焼されて、VPOの形成をもたらす。この温度は、VPOの分解を回避しながら生成物(斜方晶系構造を示すVPO)の結晶性を発現させるために好ましくは700℃~1000℃である。
【0051】
工程c)において、工程b)において得られたVPOが化学量論量のフッ化ナトリウム及び含酸素炭化水素化合物、組成物中に存在するカーボン源と混合され、このようにして得られた混合物は、少なくとも700℃の、実に少なくとも800℃さえの温度でか焼される。固体が均質に混合されている混合物を使用することが有利である。完全に均質な混合物を得るために、あらかじめ粉砕されている及び/又は篩分けられているVPOを使用することが可能である。例えば、20~60μmのDv50及び80~100μmのDv90(分布は、それ自体無水エタノール中の懸濁液から測定される)を示す、粉砕された及び篩分けられたVPOが使用され得る。
【0052】
含酸素炭化水素化合物は、熱分解によって、組成物中に存在する、特に黒鉛化形態での、カーボンをもたらす。この化合物は、例えば、グルコース、サッカロース、スクロース若しくはフルクトースなどの、糖類、又は、例えば、デンプン若しくはセルロース誘導体などの、炭水化物で、例えば、あり得る。より優先的には、それは、セルロース誘導体、より特に更に微晶質セルロースである。組成物中に存在するカーボン源は、それが、タップ密度に及び電気化学的特性に影響を及ぼしがちである(比較例1を参照されたい)ので重要である。VPOを及びNaFをベースとする混合物中の含酸素炭化水素化合物の割合は、0.5重量%~15.0重量%、実に8.0%~12.0%さえであり得、この割合は、VPO及びNaF混合物の組合せに対して計算される。
【0053】
工程b)又は工程c)中に、反応混合物と酸素との接触を最小限することが賢明である。これを行うために、か焼は、密閉環境中で実施され得、及び/又はか焼が行われる容器中への、窒素若しくはアルゴンなどの、不活性ガスの導入によって、酸素の存在が限定され得る。これを行うために、隙間がない、且つ、非常に多孔質ではない材料で形成された、密閉容器中でか焼を実施することがまた有利であり得る。実験室規模では、同じ材料での蓋で閉じられるSiC坩堝が従って使用された。
【0054】
工程d)において、工程c)において得られた生成物が解凝集される。ボールミル又はエアジェットミルがこのために用いられ得る。ボールミリングは、粉砕されるべき生成物で及び粉砕ボールで部分的に満たされたタンクをその水平軸の周りに回転させることに存する。限定されたスピードでの回転の開始は、生成物と回転に組み込まれたボールとの間の衝突による生成物の粉砕を誘発する。生成物の最終粒度を制御するための臨界パラメーターは、一般にタンクの体積の2/3未満の、タンクの充填度;1:4~1:15、優先的には1:4~1:10であり得る、粉砕されるべき生成物対ボールの重量による装入比;例えば、粉砕媒体の異なる硬度を反映する、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア若しくはアルミナ製であり得る、粉砕ボールの性質;一般に0.5mm~5cm、優先的には1~2mmの、粉砕ボールのサイズ;一般に100rpm未満、優先的には80prm未満の、タンクの回転のスピード;並びに15分~4時間、優先的には30分~2時間で変わり得る
、粉砕時間である。
【0055】
エアジェットミリングに関して、それは、それらのサイズを低減することを可能にする粒子間の衝突を生み出すように高速での空気の流れ中に粉砕されるべき生成物を引きずり込むことに存する。この技術に関してさらに詳しくは、アドレス:https://www.hosokawa-alpine.com/powder-particle-processing/machines/jet-mills/afg-fluidised-bed-opposed-jet-mill/で見出され得る。粉砕チャンバー中への粉砕されるべき生成物の供給速度は、定常状態流動床を構成するために、例えば計量供給スクリューを用いて、調節される。セレクターは、十分に細かい粒子のみを回収するために粉砕チャンバーの出口に置かれる。生成物の最終粒度を制御するための臨界パラメーターは、粉砕チャンバー中へ導入される空気の圧力及びセレクターの回転のスピードである。エアミルの例は、Hosokawaによって販売されるAFG-100ミルである。実施例1に記載される条件が用いられ得る。
【0056】
解凝集の進行は、無水エタノール中でサイズ分布を測定するために、経時的に生成物の試料を取り出すことによってモニターされ得る。これは、解凝集の条件がタップ密度の及びサイズ分布の所望の特性を得るために適切である場合に測定することを可能にする。最も穏和な解凝集条件で解凝集を開始することが一般に賢明である。タップ密度の及びサイズ分布の特性が得られない場合、より厳しい条件で解凝集を続行することが可能である。
【0057】
本発明の組成物は、実施例1に記載される手順に従ってより特に調製され得る。
【0058】
本発明の組成物は、ナトリウム電池用の又はナトリウムイオン電池用の電極の電気化学的に活性な材料として使用され得る。本発明はまた、本発明の組成物と、少なくとも1種の導電性材料と任意選択的にバインダーとを含む導電性組成物を含む電極に関する。導電性組成物中の本発明の組成物の割合は、一般に40.0重量%超であり、この割合は、導電性組成物の総重量に対してである。この割合は、40.0%~80.0%であり得る。導電性材料の割合は、一般に50.0重量%未満であり、この割合は、導電性組成物の総重量に対してである。この割合は、8.0%~30.0%であり得る。より特に、導電性組成物は、75.0重量%~85.0重量%の本発明の組成物と、5.0重量%~15.0重量%の導電性材料%と5.0重量%~15.0重量%のバインダーとを含み得る。
【0059】
導電性材料は、炭素繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン及びそれらの類似体から選択され得る。導電性材料の例は、Alfa Aesarによって販売される、Super Pカーボン、例えばH 30253である。バインダーは、有利には、ポリマーであり得る。バインダーは、有利には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン又はフッ化ビニリデンと、例えば、ヘキサフルオロプロピレンなどの、少なくとも1種のコモノマーとのコポリマー、カルボキシメチルセルロースに由来するポリマー、多糖類及び、特にスチレン/ブタジエンゴムタイプの、ラテックスから選択される。バインダーは、好ましくは、フッ化ビニリデンと、例えば、ヘキサフルオロプロピレンなどの、少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーである。それは、例えば、Solvayによって販売されるSolef 5130銘柄であり得る。
【0060】
導電性組成物は、N-メチルピロリドンなどの、極性溶媒の存在下でそれを構成する原料を一緒に混合することによって調製され得る。混合物の粘度が高い場合、高粘度に好適なニーダーが用いられ得る。ポリマーバインダーの場合には、例えば、バインダーを先ずNMPに溶解させること、その後撹拌しながら導電性材料、次いで本発明による組成物を添加することが可能である。混合物は、その後アルミニウムシート上に堆積させられ得、次いでNMPが、例えば加熱を用いて、蒸発させられ得る。
【0061】
本発明の電極は、ナトリウム発電機のプラス極として使用され得る。有利には、それは、ナトリウム又はナトリウムイオン蓄電池用のプラス極としての使用に都合が良い。
【実施例
【0062】
カーボン含有量の測定
カーボン含有量は、Horiba EMIA 320 V2銘柄カーボン/硫黄分析装置での微量分析によって測定する。
【0063】
粒度分布の測定
粒度分布は、無水エタノール中の粒子の懸濁液に関するレーザー回折によって測定する。Hydro SVモジュールを備えたMalvern Mastersizer 3000装置を用いる。装置のタンクを無水エタノール(1.360のエタノールについての屈折率)で満たし、1800rpmで撹拌する。2、3ミリグラムの粉末を次いで、5%~15%の吸収を有するようにタンクに直接導入する。用いられる光学モデルは、Fraunhoferである。
【0064】
測定シーケンスは、試料に関する5つの一連の測定からなるであろう。取得期間は、次の通り規定される:
- バックグラウンドノイズ測定の継続時間(赤):10.00秒;
- 試料測定の継続時間(赤):10.00秒;
- 青色光中での測定の実施:あり;
- バックグラウンドノイズ測定の継続時間(青):10.00秒;
- 試料測定の継続時間(青):10.00秒。
【0065】
タップ密度の測定
25ml(20℃で±0.2ml)のクラスA+標準化目盛付きメスシリンダーを用い、正確におよそ20mlのルーズな組成物で満たす。3000ブローを課した後、タップされた粉末によって占有される最終体積を読み取る。タップ密度を次いで次式によって決定する:
TD(g/ml単位での)=組成物の重量/測定された最終体積
【0066】
BET比表面積の測定
BET比表面積は、Mountech Macsorb装置で「一点」Brunauer-Emmett-Teller法に従って測定する。この機器は、大気圧で試料の上方での吸着剤及び不活性ガス混合物の連続流を伴うガス流法によって比表面積を測定する。使用されるガス混合物は、70%ヘリウム及び30%窒素、すなわち、0.3の相対圧力である。
【0067】
試料を、先ず窒素の流れ下に2時間200℃で脱気した後、測定デバイスのカルーセル上に置く。分析中に、5分間200℃での追加の脱気を、分析前に装置によって実施する。分析中に、吸着及び脱着段階を記録する。比表面積測定値を次いで脱着段階に関して計算する。各試料について、センサーを、既知体積の純窒素の注入によって較正する。この測定のために使用された試料の重量は、脱気後の試料の重量に相当する。
【0068】
粉末X線回折図の測定
粉末X線ディフラクトグラムを、可変スリットの、Bragg-Brentano構成において得た。取得は、40kVの電圧及び30mAの電流で、銅対陰極のチューブX線源を備えた、Panalytical製のX Pert Pro MPDアセンブリで、2θ=5°及び2θ=90°の間で実施する。検出器は、2.122°のアーク長さのXCelerator線型検出器である。PHD間隔は、37~80%のデフォルト設定での間隔である。検出器の前に置かれたニッケルフィルターは、銅のKベータラインによる回折を減衰させることを可能にする。暴露時間は、0.017°のステップにおいて40秒である。位相解析は、最新バージョンのICDD PDF4+データベースを備えたHigh Score Plusソフトウェアで実施する。ゴニオメーターは、多結晶シリコン標準を使用して定期的にチェックする。
【0069】
ラマン分光法スペクトルの記録及び処理
スペクトルは、532nmレーザー(100mW公称電力)、100×対物レンズ、1200rpm回折格子、1%フィルター、100μm共焦点ホール及び2×120秒捕捉時間の50及び2600cm-1間のHoriba-XploRA PLUS分光計で記録した。取得及び処理操作のために用いられるソフトウェアは、Horiba製のLabspecバージョン6-4-4-16である。取得を実施するために、それ自体、アルミニウムで覆われたガラススライド上に堆積した、フッ化カルシウムウィンドウ上に試料を粉末形態で堆積させる。100×対物レンズを使って焦点合せを試料上で実施する。取得後に、スペクトルを平坦化し、次いで2つのガウス曲線寄与:おおよそ1340cm-1に中心があるもの及びおおよそ1580cm-1に中心がある他のものへデコンボリュートする。強度は、700cm-1に及び2000cm-1にあるスペクトル上の2点間に引かれたベースラインから測定する。
【0070】
本発明の組成物からのプラス極の調製
導電性組成物(つまり電極インク)は、粘性のあるインクを得るためにN-メチル-2-ピロリドン溶媒中で80:10:10のそれぞれの重量比でNVPFベースの組成物をカーボンブラック(Super P カーボン)及びフルオロポリマー(PVDF Solef 5130)と混合することによって調製する。このインクを、その後20μmの厚さのアルミニウムシート上に150μmの厚さでフィルムアプリケーターを用いて堆積させ、次いで、溶媒が完全に蒸発してしまうまで90℃で乾燥させる。14mmの直径の電極ディスクを乾燥フィルムから切り取り、次いで、1分間1.3トン/cmの圧力で一軸プレス機を用いて周囲温度でプレスする。ディスクを、その後10時間120℃で低圧下に乾燥させた後、アルゴン雰囲気下のグローブボックス中へ移す。
【0071】
本発明の組成物が容易に配合され、「縞入りの」フィルムをもたらさないことを観察することができた。
【0072】
「ボタン電池」型の電気化学セルのアセンブリ
NVPF電極を、2032(直径20mm×厚さ3.2mm)ボタン電池構造で、金属ナトリウムマイナス極に面して、半電池構成に組み立てる。使用される電解質は、1リットル当たり1モルの溶解したナトリウムヘキサフルオロホスフェート塩を含有する等体積のエチレンカーボネート及びジメチルカーボネートの混合物からなり、その混合物に1重量%のフルオロエチレンカーボネートを添加する。ボタン電池は、NVPFプラス極から、金属ナトリウムマイナス極から、100μlの電解質から、1mmの厚さのステンレス鋼電流コレクタから、1.4mmの厚さのリング状スプリングから、16mmの厚さの繊維ガラスセパレーターから及び電池の硬質ケーシング(シールと連結した2つの中空ピース)からなる。金属ナトリウムの薄い平らな層を電流コレクタ上に堆積し、ナトリウムの重量は、システムにおいて制限的ではないのに十分である。セパレーターに電解質を含浸させ、セパレーターを2つの対面する電極間に置く。これらの要素を、硬質ケーシングの内側でスプリングによる圧力下に保ち、ケーシングをその後システムの無漏洩を保証するためにひだを付ける。
【0073】
電気化学的試験
NVPF電極から組み立てられたセルを、充電(正電流)から始まって、Na/Naに対して3.5V~4.3Vで、定電流条件下に電気化学的に試験した。充電に及び放電に用いられる電流をCレート単位で表す。Cレートは、電池が充電されている又は放電されているスピードの尺度である。それは、1時間で電池の理論容量を届けるために必要な理論電流で割った印加電流と定義される。電気化学的試験は、10時間での理論充電又は理論放電に相当する、C/10のCレートで実施する。
【0074】
電気化学的試験は、NVPF電極の可逆的な充電容量を測定することを可能にする。この容量は、組成物の体積によって報告し、Ah/l単位で表す(組成物の体積は、使用された組成物の重量及びタップ密度TDから計算する)。
【0075】
実施例1:本発明によるNVPFベースの組成物の調製
先ず第一に、化学量論量のVとNHPOとを、Controlab L0031.2型のニーダーにおいて100重量%の水の存在下で混合する。水の割合この割合は、2つの反応物VとNHPOとの組合せに対して重量により計算する。およそ2時間の終わりに、混合物は増粘し、NHVOHPO(存在はXRDによって確認される)から及び水から形成される黄色のペーストが得られる。この湿ったペーストを十分に密閉された環境中に置く。これを行うために、ペーストを、SiC蓋で閉じられるSiC坩堝に注ぎ込む。ペーストを、その後5.5℃/分の昇温勾配で3時間800℃でか焼する。
【0076】
か焼から生じたVPOは、脆く、1mm~5cmのピースからなる。この生成物を、60rpmの回転スピードでおよそ2時間ジャーミルを用いて粉砕する。20cmの直径及びわずかに卵形状のポリエチレンジャーを用い、そのジャーは、20mmの直径のイットリア安定化ジルコニアボールで粉砕するために生成物を装入することを可能にする。装入比は、4kgのボールの装入に対して1kgのVPOであり得る。このようにして粉砕されたVPOをジャーから抜き出し、ボールから分離し、0.5~1.6の振動振幅を有し得る振動篩を用いて500μmで篩分ける。500μmで篩分られたVPOは、粉砕されたVPOの総重量の95%~98%の分率を表す。このようにして粉砕され、篩分けられた生成物は、そのDv50が20~60μmであり、そのDv90が80~100μmである、粒径を示す。
【0077】
このようにして得られたVPOを、化学量論量のNaF及び、VPO+NaF(Sigma-Aldrich)の総重量に対して、10重量%の微結晶性セルロースと混合する。固体の混合物を、イットリア安定化ジルコニアボール(1(5mm)対4(20mm)の重量比での5mm及び20mmのボール、重量比[VPO+NaF+セルロース]混合物:ボール=1:3)で満たしたポリエチレンジャー中であらかじめ均質化し、およそ2~3時間その対称軸周りに回転させる。VPOを粉砕し、サイズが500μmよりも小さい粒子のみを保有するために篩分けた。
【0078】
粉末の均質混合物を、その後5.5℃/分の昇温勾配で3時間800℃でか焼する。一般に、VPO を得るための第1か焼中と同じ条件適用される。粉末は、か焼の間中十分に密閉されているべきである。最終的に得られるNVPFは、XRDによれば純粋である。
【0079】
得られるNVPFを、所望の粒度分布を得るために最終的に解凝集させる。例えば、ボールミリング又はエアジェットミリングを実施することが可能である。エアジェットミリングのために、Hosokawaによって販売されるAFG-100基準のエアミルを用いた。計量供給スクリューを用いてNVPFを粉砕チャンバー中へ導入する。粉砕チャンバーの供給速度は、このようにして形成される流動床の「定常」状態下に置くために調節する。5.5バールの圧力で2mmの直径のノズルを用いて加圧空気を粉砕チャンバー中へ導入する。最も細かい粒子は、粉砕チャンバーの最上部へ上昇する。その回転が3000~5000rpmである、セレクターが、解凝集生成物を回収することを可能にする。
【0080】
比較例1:
この例の組成物は、
- VとNHPOとの混合を、水の添加なしに実施する;
- 粉末の閉じ込めという欠点を克服するためにカーボンブラックを第1か焼中に添加した(アルミナでできた坩堝及び蓋を使用する)
ことを除いて、先行実施例のプロセスに似たプロセスに従って調製した。
【0081】
カーボン粒子がある場所で依然として目に見え、これは、か焼後でさえも当てはまることを顕微鏡画像で観察することができた。加えて、このようにして調製された組成物は、本発明による組成物のそれよりも低い体積密度を示す。
【0082】
図1
図2
図3