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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/615 20140101AFI20240716BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20240716BHJP
   H01M 10/6553 20140101ALI20240716BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20240716BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20240716BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20240716BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20240716BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20240716BHJP
   H01M 50/593 20210101ALN20240716BHJP
【FI】
H01M10/615
H01M10/6571
H01M10/6553
H01M10/617
H01M10/643
H01M50/505
H01M50/588
H01M50/213
H01M50/593
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021509311
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012308
(87)【国際公開番号】W WO2020196266
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019064716
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 尉浩
(72)【発明者】
【氏名】岡村 健太郎
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/135762(WO,A1)
【文献】特開2007-213939(JP,A)
【文献】特開2018-006043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/60-10/667
H01M50/20-50/298
H01M50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に正極と負極とを設けてなる複数の電池セルからなる電池ブロックと、
前記電池セルの正極と負極にそれぞれ接続されて、前記電池セルを電気接続している正極リード板および負極リード板と、
前記電池セルを加温するシートヒーターとを備える電源装置であって、
前記シートヒーターが、
前記電池セルの負極側の片面に、
前記負極リード板を介して熱結合状態に積層されており、
前記電池ブロックが、
負極表面と正極表面とが交互に同一平面に位置する配列で、複数のコアモジュールを配置しており、
前記シートヒーターが、
各々のコアモジュールの負極表面を加温する複数の加温シート部と、
隣り合う加温シート部を連結する連結シート部とを備え、
前記連結シート部が、
前記コアモジュールの前記正極表面に対向する位置に配置されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載する電源装置であって、
前記電池ブロックが、
複数のコアモジュールに分割されて、
前記コアモジュールは、
複数の電池セルを備え、
前記コアモジュールは、
複数の電池セルが互いに平行姿勢に配置されて、
複数の前記電池セルの負極を同一平面に配置している前記負極表面と、
複数の前記電池セルの正極を同一平面に配置している前記正極表面とを対向面に配置しており、
前記コアモジュールは、前記負極表面と前記正極表面にそれぞれ前記負極リード板および正極リード板が配置されて、
前記負極表面の前記負極リード板は、複数の前記電池セルの負極に接続されて、
前記正極表面の前記正極リード板は、複数の前記電池セルの正極に接続され、
前記シートヒーターが、
前記コアモジュール片面の負極表面側において、
前記負極リード板の表面に熱結合して積層されて、
前記負極リード板を介して、前記電池セルを一方の端部である負極側から加温する構造としてなることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載する電源装置であって、
前記シートヒーターが、
不織布製の基材シートと、
前記基材シートに縫着されてなるヒーター線と、
前記ヒーター線を保護する絶縁シートとを備え、
前記絶縁シートが前記負極リード板に接触して配置されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項に記載する電源装置であって、
前記加温シート部が細長い形状で、
前記連結シート部が、前記加温シート部の長手方向の両端部に連結されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項に記載する電源装置であって、
前記連結シート部が、前記正極表面との間に絶縁隙間を設けて配置されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項ないしのいずれかに記載する電源装置であって、
前記シートヒーターが、
前記連結シート部に縫着してなるヒーター線を備え、
前記連結シート部に縫着してなる前記ヒーター線と
前記加温シート部の前記ヒーター線が連続するヒーター線であることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項ないしのいずれかに記載する電源装置であって、
前記電池ブロックを収納してなる電池ケースを備え、
前記電池ケースと前記加温シート部との間にクッションシートが配置され、
前記クッションシートが前記加温シート部を前記負極リード板に弾性的に押圧してなることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項ないしのいずれかに記載する電源装置であって、
前記電池ブロックの両面に前記シートヒーターが配置されて、
各々の前記コアモジュールの前記負極リード板に前記加温シート部が積層されて、
全ての前記電池セルの負極側に対向して前記加温シート部を配置してなることを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれかに記載する電源装置であって、
前記電池セルが円筒形電池であることを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを備える電源装置であって、低温環境で電池セルを加温するシートヒーターを備える電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルをシートヒーターで加温する電源装置は開発されている。(特許文献1参照)
特許文献1の電源装置は、図9の分解斜視図に示すように、電池ブロック90の両面にシートヒーター93を配置している。電池ブロック90は、複数の電池セル91を平行姿勢として、両端を同一平面に配置して、両面に配置するリード板92で各々の電池セル91を接続している。シートヒーター93は、リード板92の外側にあるインナーケースに積層して配置され、間接的にリード板92を介して各々の電池セル91を加温する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-213939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9の電源装置は、各々の電池セル91を、インナーケースに貼ったシートヒーター93により、電池セル91の両端面のリード板92を介して間接的に加温している。この電源装置は、電池セルを両端から加温して低温の電池セルを安全に加温できるが、熱効率の確保が難しい。リード板に直接シートヒータを貼った場合、電池ブロックの両端面には、正極リード板と負極リード板が互いに接近して配置されて、その表面に1枚のシートヒーターを積層しているからである。正極リード板と負極リード板の表面に1枚のシートヒーターを積層する構造は、シートヒーターが正極リード板と負極リード板をショートして安全性を阻害するからである。
【0005】
本発明は、さらに従来の電源装置が有する以上の欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の目的の一は、各々の電池セルを効率よく加温しながら、高い安全性を確保して信頼性を向上できる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様にかかる電源装置は、両端に正極1Aと負極1Bとを設けてなる複数の電池セル1からなる電池ブロック10と、電池セル1の正極1Aと負極1Bに接続されて、電池セル1を電気接続しているリード板2と、電池セル1を加温するシートヒーター3とを備える電源装置であって、シートヒーター3が、電池セル1の負極1B側の片面に、リード板2を介して熱結合状態に積層されている。
【発明の効果】
【0007】
以上の電源装置は、電池セルを加温しながら、高い安全性を確保して信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態にかかる電源装置の斜視図である。
図2図1に示す電源装置の分解斜視図である。
図3図2に示す電源装置の電池ケースを取り除いた分解斜視図である。
図4図3に示す電池ブロックの分解斜視図である。
図5図1に示す電源装置の電池ブロックを示す平面図である。
図6図5に示す電源装置の電池ブロックにシートヒーターを配置した状態を示す平面図である
図7図1に示す電源装置の拡大垂直断面図であって、図1のVII-VII線断面図である。
図8図7に示す電源装置の要部拡大断面図である。
図9】従来の電源装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0010】
本発明の第1の態様の電源装置は、両端に正極と負極とを設けてなる複数の電池セルからなる電池ブロックと、電池セルの正極と負極に接続されて、電池セルを電気接続しているリード板と、電池セルを加温するシートヒーターとを備える電源装置であって、シートヒーターが、電池セルの負極側の片面に、リード板を介して熱結合状態に積層されている。
【0011】
以上の電源装置は、シートヒーターで各々の電池セルを負極側の片面から加温して高い安全性を確保し、電源装置としての信頼性を向上できる特徴がある。電池セルは、金属製の電池ケースに絶縁して正極を設けているので、正極側の端部には絶縁材を介して負極が配置される。正極リード板と負極リード板が互いに接近して配置され、その表面にシートヒーターを積層した場合、電源装置は、シートヒーターの導電部やシートヒーターの基材シートに吸水された水分が正極と負極とを短絡し、あるいは漏電して安全性を低下させる原因となる。電池セルの負極側の端部は、外装缶の底面であって正極の反対側の端部に位置する。外装缶を底面から加温するシートヒーターは、リード板から供給される熱エネルギーを効率よく全体に熱伝導して、電池セルの全体を速やかに加温できる。電池セルの正極側は、絶縁材を介して正極を配置している。絶縁材は金属などに比較して熱伝導率が極めて低い。たとえば、外装缶に使用されるアルミニウムに比較して、一般的な絶縁材の熱伝導率は1/100以下と極めて小さく、リード板を介して正極に供給される熱エネルギーは、絶縁材で遮断されて効率よく外装ケースには伝導されない。したがって、電池セルが正極側と負極側の両方から加温されても、正極側に供給される熱エネルギーは絶縁材に遮断されて効率よく全体には伝導されず、負極側に供給される熱エネルギーが極めて効率よく全体に伝導される。以上の電源装置は、電池セルを負極側の片面から加温しながら、電池セルを両面から加温する装置に匹敵する状態で電池セル全体を加温しながら、高い安全性を確保できる特徴がある。
【0012】
本発明の第2の態様の電源装置は、電池ブロックが複数のコアモジュールに分割されており、コアモジュールは複数の電池セルを備え、コアモジュールは、複数の電池セルが互いに平行姿勢に配置されて、複数の電池セルの負極を同一平面に配置している負極表面と、複数の電池セルの正極を同一平面に配置している正極表面とを対向面に配置しており、コアモジュールは、負極表面と正極表面にリード板が配置されて、負極表面の負極リード板は、複数の電池セルの負極に接続されて、正極表面の正極リード板は、複数の電池セルの正極に接続され、シートヒーターが、コアモジュール片面の負極表面側において、負極リード板の表面に熱結合して積層されて、負極リード板を介して、電池セルを一方の端部である負極側から加温する構造としている。
【0013】
以上の電源装置は、互いに平行姿勢に配置している多数の電池セルを、シートヒーターで効率よく速やかに加温しながら、全体の構造を簡素化して能率よく多量生産できる。
【0014】
本発明の第3の態様の電源装置は、シートヒーターが、不織布製の基材シートと、基材シートに縫着されてなるヒーター線と、ヒーター線を保護する絶縁シートとを備え、絶縁シートをリード板に接触して配置している。
【0015】
以上の電源装置は、シートヒーターのヒーター線を確実に絶縁しながら、シートヒーターで各々の電池セルを均一に加温できる特徴がある。
【0016】
本発明の第4の態様の電源装置は、電池ブロックが、負極表面と正極表面とが交互に同一平面に位置する配列で、複数のコアモジュールを配置しており、シートヒーターが、各々のコアモジュールの負極表面を加温する複数の加温シート部と、隣り合う加温シート部を連結する連結シート部とを備え、連結シート部が、コアモジュールの正極表面に対向する位置に配置されている。
【0017】
以上の電源装置は、電池ブロックの表面に加温シート部と連結シート部とからなる一枚のシートヒーターを配置して、全ての電池セルを、正極側から加温することなく、負極側の片面から効率よく速やかに加温して、高い安全性を確保できる特徴がある。
【0018】
本発明の第5の態様の電源装置は、加温シート部が細長い形状で、連結シート部を加温シート部の長手方向の両端部に連結している。
【0019】
以上の電源装置は、電池ブロックの表面に配置するシートヒーターの加温シート部を、簡単かつ容易に、しかも正確な位置に配置して、リード板を介して各々の電池セルの負極側を効率よく加温できる特徴がある。
【0020】
本発明の第6の態様の電源装置は、連結シート部を、正極表面との間に絶縁隙間を設けて配置している。
【0021】
以上の電源装置は、シートヒーターによる正極側の加温を確実に阻止しながら、シートヒーターを電池ブロックの表面に配置できる。
【0022】
本発明の第7の態様の電源装置は、シートヒーターが、連結シート部に縫着してなるヒーター線を備え、連結シート部に縫着してなるヒーター線と加温シート部のヒーター線を連続するヒーター線としている。
【0023】
以上の電源装置は、複数の加温シート部を連結シート部で連結して、加温シート部と連結シート部を一体構造とするシートヒーターを、安価に多量生産しながら、複数の加温シート部を確実に電気接続して信頼性を向上し、ヒーター線の断線等の故障を有効に防止できる特徴がある。
【0024】
本発明の第8の態様の電源装置は、電池ブロックを収納してなる電池ケースを備え、電池ケースと加温シート部との間にクッションシートを配置し、クッションシートが加温シート部を負極リード板に弾性的に押圧している。
【0025】
以上の電源装置は、加温シート部を確実に安定してリード板に熱結合状態に配置して、シートヒーターでもって、全ての電池セルの温度むらを少なくして均等に加温できる特徴がある。
【0026】
本発明の第9の態様の電源装置は、電池ブロックの両面にシートヒーターを配置し、各々のコアモジュールの負極リード板に加温シート部を積層し、全ての電池セルの負極側に対向して加温シート部を配置している。
【0027】
以上の電源装置は、電池ブロックを両面から加温して、各々の電池セルの温度ムラを少なくして加温できる特徴がある。また、以上の電源装置は、電池ブロックの両面にシートヒーターを配置するので、多数の電池セルからなる電池ブロックを効率よく加温できる特徴がある。
【0028】
本発明の第10の態様の電源装置は、電池セルを円筒形電池としている。
以上の電源装置は、電池ブロックを構成する円筒形電池を高い安全性を確保して、速やかに加温できる特徴がある。
【0029】
(実施の形態1)
図1ないし図3に示す電源装置は、たとえば、基地局等のように屋外に設置される電気機器に使用される電源装置であって、使用環境が低温となる用途に適している。したがって、低温から高温まで、たとえば-30℃~80℃の外部温度で使用される。また、屋外用の電源装置は、優れた耐久性と強度も要求される。
【0030】
図1ないし図3に示す電源装置100は、電池ブロック10を電池ケース20に収納して、電池ブロック10を構成する電池セル1を加温するシートヒーター3を電池ケース20の内側に配置している。電池ブロック10は、複数のコアモジュール9に分割されて、各々のコアモジュール9は、複数の電池セル1を備える。さらに、このコアモジュール9は、複数の電池セル1を互いに平行姿勢に配置して、複数の電池セル1の負極1Bを同一平面に配置している負極表面9Bと、複数の電池セル1の正極1Aを同一平面に配置している正極表面9Aとを対向面に配置している。さらにまた、コアモジュール9は、負極表面9Bと正極表面9Aにリード板2を配置して、負極表面9Bの負極リード板2Bは、複数の電池セル1の負極1Bに接続して、正極表面9Aの正極リード板2Aは、複数の電池セル1の正極1Aに接続されて、電池セル1を並列に接続している。
【0031】
電池ブロック10は、負極表面9Bと正極表面9Aとを交互に同一平面に位置する配列で、複数のコアモジュール9を配置している。この電池ブロック10は、負極表面9Bの間には正極表面9Aが配置され、正極表面9Aの間には負極表面9Bが配置されるように、複数のコアモジュール9を配置している。コアモジュール9は、負極表面9Bと正極表面9Aとが細長い形状となるように複数の電池セル1をリード板2で連結している。図4のコアモジュール9は、複数の電池セル1を多段多列に配置して、負極表面9Bと正極表面9Aを細長い形状としている。電池ブロック10は、複数のコアモジュール9を、細長い負極表面9Bと正極表面9Aとが互いに平行となるように並べている。コアモジュール9は、負極表面9Bに1枚の金属板からなる負極リード板2Bを配置し、正極表面9Aには1枚の金属板からなる正極リード板2Aを配置して、電池セル1の負極1Bを負極リード板2Bに、正極1Aを正極リード板2Aに溶着して、全ての電池セル1を負極リード板2Bと正極リード板2Aで並列に接続している。
【0032】
多数のコアモジュール9を備える電池ブロック10は、コアモジュール9を多段多列に配置している。図5の平面図に示す電池ブロック10は、14個のコアモジュール9を2つの列と、7つの行に配置して、2列のコアモジュール9の間にはスペース11を設けている。各列に配置された7つのコアモジュール9は、正極リード板2Aと負極リード板2Bを直列に接続して、互いに直列に接続している。各列のコアモジュール9は、負極リード板2Bと正極リード板2Aを交互に配置しているので、隣のリード板2を接続してコアモジュール9を直列に接続できる。2列のコアモジュール9は、互いに直列又は並列に接続される。
【0033】
図において上下2列に配置しているコアモジュール9は、上列のコアモジュール9と下列のコアモジュール9を、負極表面9Bと正極表面9Aとを千鳥に配置して、上列コアモジュール9の負極表面9Bの間には下列コアモジュール9の負極表面9Bを配置して、上列コアモジュール9の正極表面9Aの間には下列コアモジュール9の正極表面9Aを配置している。図4図5に示すように、コアモジュール9の負極表面9Bを千鳥に配置する電池ブロック10は、シートヒーター3で加温される負極表面9Bを、電池ブロック10の全面に均等に分散して配置して、全体の電池セル1を均等に加温できる特徴がある。
【0034】
シートヒーター3は、図6図8に示すように、不織布製の基材シート4と、基材シート4に縫着しているヒーター線5と、ヒーター線5を保護する絶縁シート6とを備える。基材シート4と絶縁シート6は、たとえば、プラスチック繊維を立体的に方向性なく集合している可撓性とクッション性のある不織布である。ヒーター線5は、表面を絶縁皮膜で絶縁している可撓性のある抵抗線で、基材シート4の表面に、所定の形状に縫着されている。シートヒーター3は、ヒーター線5を基材シート4に縫着する形状で、部分的な加温状態を調整できる。ヒーター線5を最適なパターンに縫着して単位面積の発熱量を大きくできるからである。したがって、ヒーター線5は、各々のコアモジュール9の電池セル1を均等に加温できるように、基材シート4に縫着される。電池ブロック10は、電池ケース20で冷却されて、外周部の温度が中央部よりも低くなるので、シートヒーター3は、電池ブロック10の外周部を中央部よりも密なヒーターパターンに縫着して、加温される全ての電池セル1の温度差を小さくしている。
【0035】
シートヒーター3は、電池セル1の正極1A側の対向位置には配置されず、負極1B側の片面にのみ配置されて、リード板2を介して電池セル1に熱結合されて、電池セル1を負極1B側から加温する。正極1A側を加温することなく負極1B側を加温するシートヒーター3は、コアモジュール9の片面の負極表面9B側であって、負極リード板2Bの表面に熱結合して積層される。このシートヒーター3は、負極リード板2Bを介して、各々の電池セル1を一方の端部である負極1B側から加温して、電池セル1を外装缶の底面から加温する。
【0036】
図3に示す電源装置100は、電池ブロック10の表面に、1枚のシートヒーター3を配置して、各コアモジュール9の電池セル1を負極1B側から加温する。このシートヒーター3は、図6図8に示すように、各々のコアモジュール9の負極表面9Bの対向位置に加温シート部3Aを設けて、隣の加温シート部3Aを連結シート部3Bで連結している。シートヒーター3は、各加温シート部3Aを各コアモジュール9の負極表面9Bに対向して配置して、電池セル1を負極1B側から加温する。連結シート部3Bは、コアモジュール9の正極表面9Aの対向位置に配置されて、正極表面9Aから絶縁して配置される。シートヒーター3は、加温シート部3Aを連結シート部3Bで連結して、全体を1枚のシート状としている。
【0037】
1枚のシート状とするシートヒーター3は、加温シート部3Aと連結シート部3Bとを一体構造とするので、従来のシートヒーターのように、複数の加温シート部をリード線で接続する必要がない。加温シート部をリード線で接続しているシートヒーターは、各々の加温シート部のヒーター線にリード線を接続し、このリード線を介して隣の加温シート部を電気接続するので、ヒーター線とリード線との接続に手間がかかって、製造能率が悪くなって製造コストが高くなり、さらにヒーター線とリード線との接続部が断線しやすい等の欠点がある。これに対して、加温シート部3Aと連結シート部3Bとを一体構造とする一体型のシートヒーター3は、ヒーター線5とリード線との接続構造を排除して、1枚の基材シート4の表面に、所定のヒーターパターンにヒーター線5を縫着し、その後、基材シート4を裁断して大幅にコストダウンして、能率よく多量生産できる。
【0038】
さらに、基材シート4にヒーター線5を所定のパターンに縫着している一体型のシートヒーター3は、放熱しやすい電池ブロック10の外側部分は、ヒーターパターンを密にして発熱量を増やし、電池ブロック10の内側や、発熱部品を配置している近傍は、ヒーターパターンを疎に配置して発熱量を減らし、電池ブロック10全体の温度を均一に近づけることができる。複数の加温シート部をリード線で接続している従来のシートヒーターは、ヒーターパターンが異なる複数の加温シート部を別々に製造し、ヒーターパターンが異なる加温シート部をリード線で接続して製造するので、形状が異なる特定の加温シート部を選択して特定の位置に配置するように、リード線で接続して、各々の加温シート部の設置位置を規定し、ヒーターパターンが異なる加温シート部を正確な位置に設置する必要があるので、製造工程にさらに手間がかかる欠点があったが、基材シート4にヒーター線5を縫着し、その後、裁断して製造される一体型のシートヒーター3は、基材シート4の特定の位置に特定のヒーターパターンでヒーター線5を縫着して裁断するので、形状が異なるヒーターパターンを間違える事なく正確な位置に配置して能率よく最適設計できる。
【0039】
加温シート部3Aは、その外形を、コアモジュール9の負極表面9Bの外形、あるいは負極表面9Bに溶着している負極リード板2Bの外形にほぼ等しくし、全ての負極リード板2Bを均等に加温する。図3図5のコアモジュール9は負極表面9Bを細長い形状としているので、加温シート部3Aの外形も細長い形状としている。細長い加温シート部3Aは、長手方向の両端部を連結シート部3Bで連結して、加温シート部3Aと連結シート部3Bとを1枚のシートヒーター3で構成している。このシートヒーター3は、細長い加温シート部3Aの両端部を連結シート部3Bで連結するので、電池ブロック10の表面の定位置にセットするときに、各々の加温シート部3Aをコアモジュール9の負極表面9Bに正確に位置ずれなく配置できる特徴がある。また、複数の加温シート部3Aと連結シート部3Bとからなるシートヒーター3を能率よく多量生産できる。
【0040】
加温シート部3Aは負極リード板2Bに積層されて、負極リード板2Bを加温する。連結シート部3Bは、正極表面9Aとの間に絶縁隙間12を設けて配置されて、正極リード板2Aから絶縁して配置される。絶縁隙間12は、絶縁材13を配置してより確実に連結シート部3Bと正極表面9Aとを絶縁できる。
【0041】
連結シート部3Bは、ヒーター線5を連結して加温シート部3Aを接続しているが、必ずしも両方の連結シート部3Bにヒーター線5を設ける必要はない。全ての加温シート部3Aのヒーター線5を直列に接続するシートヒーター3は、1本のヒーター線5で全ての加温シート部3Aを加温できるからである。ヒーター線5を連結していない連結シート部3Bは、正極表面9Aから絶縁する必要はないので、この連結シート部3Bは、必ずしも正極表面9Aとの間に絶縁隙間12や絶縁材13を設ける必要はない。
【0042】
シートヒーター3の加温シート部3Aは、図2に示すように、クッションシート7を介して負極リード板2Bの表面に弾性的に押圧されて、負極リード板2Bを効率よく均一に加温する。クッションシート7は、絶縁材である軟質ウレタンフォーム等の軟質プラスチック発泡体の弾性シートが適している。ただ、押圧して弾性変形するゴム状弾性のシートも使用できる。クッションシート7は、押圧しない状態では、電池ケース20と負極リード板2Bの間隔よりも厚いシートで、電池ケース20と負極リード板2Bに挟まれて押し潰された状態で、加温シート部3Aを負極リード板2Bに弾性的に押圧する。
【0043】
クッションシート7は、加温シート部3Aの外形にほぼ等しい外形で、負極リード板2Bと対向する表面にのみ積層されて、正極リード板2Aと対向する表面には積層されない。この構造は、加温シート部3Aを負極リード板2Bに弾性的に押圧しながら、電池ケース20と正極リード板2Aとの間には、電池セル1の正極1A側に設けた排出弁(図示せず)からの放出ガスを排気する隙間14を設けることができる。また、クッションシート7が吸水して、吸水した水分が、電池セル1の正極1A側をショートさせる弊害も防止できる。
【0044】
電池ケース20は、図1図2に示すように、中間ケース21の上方開口部を上面プレート22で閉塞し、下方開口部を下面プレート23で閉塞して、内部に電池ブロック10を収納している。中間ケース21、上面プレート22、及び下面プレート23は金属製で、ネジ止め等の構造で連結されて、内部を閉鎖構造としている。
【0045】
電池ブロック10のコアモジュール9は、プラスチック製の電池ホルダー8に設けた保持部に電池セル1を配置して、複数の電池セル1を定位置に配置している。電池ホルダー8は絶縁材のプラスチックを成形して製作されるので、コアモジュール9の周囲は電池ホルダー8で絶縁された状態となる。コアモジュール9は、周囲を電池ホルダー8で絶縁しているが、負極リード板2Bと正極リード板2Aを配置している面は、導電部が露出している。
【0046】
電池ケース20は、上面プレート22と下面プレート23の内面に、絶縁材のプラスチック板などの絶縁プレート15を配置している。この構造の電源装置100は、絶縁プレート15で上面プレート22の内面と下面プレート23の内面を絶縁して、負極リード板2Bと正極リード板2Aが金属製の電池ケース20に接触するのを防止できる。中間ケース21の上下の開口部を閉塞する絶縁プレート15は、図2の斜視図に示すように、外周縁にV字状に折り曲げした弾性折り曲げ部15Aを設け、この弾性折り曲げ部15Aを、中間ケース21の周壁24と電池ブロック10との隙間に挿入して、中間ケース21の開口部を隙間なく閉塞できる。中間ケース21の開口部を閉塞する電源装置100は、シートヒーター3で加温された空気が外部に漏れて循環するのを防止して、シートヒーター3による電池セル1の加温効率を高くでき、さらに加温された内部空気を介して全ての電池セル1を均等に加温できる特徴がある。
【0047】
以上の電源装置100は、以下の工程で組み立てられる。
1.電池ブロック10の製造工程
プラスチック製の電池ホルダー8の定位置に電池セル1をセットした後、各々の電池セル1の負極1Bに負極リード板2Bを、正極1Aには正極リード板2Aを溶着して電池ブロック10を製造する。
電池ブロック10は、複数のコアモジュール9に分割しているので、各々のコアモジュール9は、電池セル1の負極1B側には負極リード板2Bを溶着して、正極1A側には正極リード板2Aが溶着される。隣接するコアモジュール9は、負極リード板2Bと正極リード板2Aとが交互に配置しているが、負極リード板2Bと正極リード板2Aとをリード板2で接続して直列に接続される。ただ、隣接するコアモジュール9の反対側のリード板2を接続して、隣接するコアモジュール9を並列に接続することもできる。
【0048】
2.電池ブロック10に、シートヒーター3を積層する工程
電池ブロック10の表面にシートヒーター3を配置する。シートヒーター3は、両面テープ(図示せず)で加温シート部3Aを負極リード板2Bに接合して、連結シート部3Bを正極リード板2Aに絶縁して対向する位置に配置する。シートヒーター3は、各々の加温シート部3Aを負極リード板2Bに対向して位置ずれしないように接合する。
【0049】
3.加温シート部3Aにクッションシート7を接合する工程
シートヒーター3の加温シート部3Aの表面に、両面接着テープ(図示せず)を介してクッションシート7を接合する。クッションシート7も位置ずれしないように、加温シート部3Aの表面に接合する。
【0050】
4.電池ブロック10を電池ケース20に挿入する工程
下面プレート23の内面に絶縁プレート15を配置する状態で、中間ケース21の下方開口部を下面プレート23で閉塞する。下面プレート23は、たとえば、ネジ止めして中間ケース21に固定される。下方開口部が下面プレート23で閉塞された中間ケース21に、シートヒーター3とクッションシート7を接合している電池ブロック10を挿入して定位置に配置する。その後、電池ブロック10の上に絶縁プレート15を配置して、絶縁プレート15の外周に設けている弾性折り曲げ部15Aを中間ケース21の周壁24と電池ブロック10の間に挿入する。
その後、中間ケース21に上面プレート22を固定して、中間ケース21の上方開口部を上面プレート22で閉塞する。上面プレート23は、たとえば、ネジ止めして中間ケース21に固定される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、低温環境で電池セルを加温するシートヒーターを備える電源装置であって、たとえば、基地局等の屋外に設置される電気機器のように、使用環境が低温となる用途で使用される電気機器用の電源装置として好適に使用される。
【符号の説明】
【0052】
100…電源装置
1…電池セル
1A…正極
1B…負極
2…リード板
2A…正極リード板
2B…負極リード板
3…シートヒーター
3A…加温シート部
3B…連結シート部
4…基材シート
5…ヒーター線
6…絶縁シート
7…クッションシート
8…電池ホルダー
9…コアモジュール
9A…正極表面
9B…負極表面
10…電池ブロック
11…スペース
12…絶縁隙間
13…絶縁材
14…隙間
15…絶縁プレート
15A…弾性折り曲げ部
20…電池ケース
21…中間ケース
22…上面プレート
23…下面プレート
24…周壁
90…電池ブロック
91…電池セル
92…リード板
93…シートヒーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9