(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】腫瘍を治療するためのナチュラルキラー細胞組成物および免疫療法の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240716BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240716BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240716BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240716BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240716BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20240716BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240716BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240716BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20240716BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20240716BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20240716BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20240716BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20240716BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20240716BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20240716BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20240716BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240716BHJP
A61K 31/69 20060101ALI20240716BHJP
A61K 31/203 20060101ALI20240716BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240716BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20240716BHJP
【FI】
A61K35/17
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K31/44
A61K31/506
A61K31/5377
A61K31/517
A61K31/404
A61K31/19
A61K33/24
A61K31/513
A61K31/704
A61K31/198
A61K31/407
A61K31/7048
A61K31/69
A61K31/203
C07K19/00 ZNA
C07K14/705
(21)【出願番号】P 2021513959
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 US2019050679
(87)【国際公開番号】W WO2020056045
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-09
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520438914
【氏名又は名称】ンカルタ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nkarta, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・バーナビー・トレイガー
(72)【発明者】
【氏名】アンジェラ・ジャン・シェン
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0135015(US,A1)
【文献】国際公開第2018/124766(WO,A1)
【文献】特表2017-515506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝腫瘍を有する対象の治療のための医薬の製造における組み合わせの使用であって、組み合わせが、
(i)(a)配列番号24の配列によってコードされるアミノ酸配列を含む細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびOX-40サブドメインおよびCD3ゼータサブドメインを含む細胞傷害性シグナル伝達複合体を含む細胞傷害性受容体複合体;および(b)膜結合型インターロイキン15(mbIL15)を発現するように操作されたナチュラルキラー(NK)細胞の集団;および
(ii)少なくとも1つの追加の抗癌剤、
を含む、使用。
【請求項2】
肝腫瘍が肝細胞癌腫から生じる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
肝腫瘍が結腸直腸癌腫の原発転移である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
mbIL15が、細胞傷害性受容体複合体もコードするポリヌクレオチドによってコードされる、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
OX40サブドメインが、配列番号35の配列によってコードされるアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
CD3ゼータサブドメインが、配列番号32の配列によってコードされるアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
細胞傷害性受容体複合体およびmbIL15が配列番号8の配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
細胞傷害性受容体複合体およびmbIL15が配列番号7の配列によってコードされる、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
少なくとも1つの追加の抗癌剤が:
チロシンキナーゼ阻害剤、ここで、チロシンキナーゼ阻害剤はソラフェニブ、ニロチニブ、イマンチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、アダボセルチブ、ラパチニブ、またはそれらの組み合わせである、
抗体、ここで、抗体はセツキシマブ、ダラツムマブ、リツキシマブ、オビヌツズマブ、トラスツズマブ、またはそれらの組み合わせである、
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、ここで、HDAC阻害剤は、バルプロ酸、FR901228、MS-275、フェニルブチレート、PDX101、バルプロ酸ナトリウム、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、またはそれらの組み合わせである、
化学療法剤、ここで、化学療法剤はシスプラチン、ヒドロキシウレア、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、エトポシド、またはそれらの組み合わせである、
高線量電離放射線、
プロテアソーム阻害剤、ここで、プロテアソーム阻害剤はボルテゾミブである、
オールトランス型レチノイン酸、酪酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせ、
NKチェックポイント阻害剤、ここで、NKチェックポイント阻害剤はCD73のアンタゴニスト、CD39のアンタゴニスト、アデノシン免疫抑制シグナル伝達経路のアンタゴニスト、またはそれらの組み合わせである、
TIM3に対する抗体、
TGFベータ受容体に対する抗体、または
インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤、
である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
少なくとも1つの追加の抗癌剤が、チロシンキナーゼ阻害剤、ここで、チロシンキナーゼ阻害剤はソラフェニブ、ニロチニブ、イマンチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、アダボセルチブ、ラパチニブ、またはそれらの組み合わせである、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
少なくとも1つの追加の抗癌剤が、ソラフェニブである、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
少なくとも1つの追加の抗癌剤が、化学療法剤、ここで、化学療法剤はシスプラチン、ヒドロキシウレア、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、エトポシド、またはそれらの組み合わせである、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
少なくとも1つの追加の抗癌剤が、ドキソルビシンである、請求項1~9、12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
操作されたNK細胞の集団が、対象に対して同種である、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
肝腫瘍を有する対象の治療のための医薬の製造における、細胞傷害性受容体複合体および膜結合型インターロイキン15(mbIL15)を発現するように操作されたナチュラルキラー(NK)細胞の集団の使用であって、
集団は、(a)配列番号24の配列によってコードされるアミノ酸配列を含む細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびOX-40サブドメインおよびCD3ゼータサブドメインを含む細胞傷害性シグナル伝達複合体を含む細胞傷害性受容体;および(b)mbIL15、を発現するように操作された複数のNK細胞を含み、
操作されたNK細胞の集団は、注入による肝臓への局所経皮投与に適している、
使用。
【請求項16】
医薬が、少なくとも1つの追加の抗癌剤と共に使用される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
少なくとも1つの追加の抗癌剤が:
チロシンキナーゼ阻害剤、ここで、チロシンキナーゼ阻害剤はソラフェニブ、ニロチニブ、イマンチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、アダボセルチブ、ラパチニブ、またはそれらの組み合わせである、
抗体、ここで、抗体はセツキシマブ、ダラツムマブ、リツキシマブ、オビヌツズマブ、トラスツズマブ、またはそれらの組み合わせである、
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、ここで、HDAC阻害剤は、バルプロ酸、FR901228、MS-275、フェニルブチレート、PDX101、バルプロ酸ナトリウム、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、またはそれらの組み合わせである、
化学療法剤、ここで、化学療法剤はシスプラチン、ヒドロキシウレア、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、エトポシド、またはそれらの組み合わせである、
高線量電離放射線、
プロテアソーム阻害剤、ここで、プロテアソーム阻害剤はボルテゾミブである、
オールトランス型レチノイン酸、酪酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせ、
NKチェックポイント阻害剤、ここで、NKチェックポイント阻害剤はCD73のアンタゴニスト、CD39のアンタゴニスト、アデノシン免疫抑制シグナル伝達経路のアンタゴニスト、またはそれらの組み合わせである、
TIM3に対する抗体、
TGFベータ受容体に対する抗体、または
インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤、
である、請求項
16に記載の使用。
【請求項18】
少なくとも1つの追加の抗癌剤が、チロシンキナーゼ阻害剤、ここで、チロシンキナーゼ阻害剤はソラフェニブ、ニロチニブ、イマンチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、アダボセルチブ、ラパチニブ、またはそれらの組み合わせである、請求項
16に記載の使用。
【請求項19】
少なくとも1つの追加の抗癌剤が、ソラフェニブである、請求項1
6に記載の使用。
【請求項20】
少なくとも1つの追加の抗癌剤が、化学療法剤、ここで、化学療法剤はシスプラチン、ヒドロキシウレア、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、エトポシド、またはそれらの組み合わせである、請求項1
6に記載の使用。
【請求項21】
少なくとも1つの追加の抗癌剤が、ドキソルビシンである、請求項1
6に記載の使用。
【請求項22】
少なくとも1つの追加の抗癌剤が、HDAC阻害剤である、請求項
16に記載の使用。
【請求項23】
肝腫瘍が肝細胞癌腫から生じる、請求項15
~22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
肝腫瘍が結腸直腸癌腫の原発転移である、請求項15
~22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
mbIL15が、細胞傷害性受容体複合体もコードするポリヌクレオチドによってコードされる、請求項15~
24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
OX40サブドメインが、配列番号35の配列によってコードされるアミノ酸配列を含む、請求項15~
25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
CD3ゼータサブドメインが、配列番号32の配列によってコードされるアミノ酸配列を含む、請求項15~
26のいずれか一項に記載の
使用。
【請求項28】
細胞傷害性受容体複合体およびmbIL15が配列番号8の配列を含む、請求項15~
27のいずれか一項に記載の
使用。
【請求項29】
細胞傷害性受容体複合体およびmbIL15が配列番号7の配列によってコードされる、請求項15~
28のいずれか一項に記載の
使用。
【請求項30】
操作されたNK細胞の集団が、対象に対して同種である、請求項15~29のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年9月13日に出願された米国仮特許出願第62/730,939号、2019年3月20日に出願された米国仮特許出願第62/821,360号、2019年5月1日に出願された米国仮特許出願第62/841,768号、および2019年7月18日に出願された米国仮特許出願第62/875,893号の優先権を主張するものであり、これらの各々の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
肝臓癌は、主要な癌のタイプの中で一般的である。肝細胞癌腫は、最も一般的な肝臓癌のタイプの1つである。続発性の(例えば、別の組織で発生して肝臓に移動する)特定の肝臓癌のタイプとは対照的に、肝細胞癌腫は、原発性癌である(例えば、肝臓で発生する)。結腸直腸癌腫からの転移による肝腫瘍などの他の肝臓癌のタイプもまた一般的である。
【0003】
ASCIIテキストファイルにおける資料の参照による組み込み
本出願は、以下のASCIIテキストファイルに含まれる配列表を参照することにより組み込み、ファイル名:NKT025WO_ST25として同時に提出され;2019年9月10日に作製され、サイズは90.0KBである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いくつかの実施形態では、本明細書には、腫瘍を治療するための方法および組成物が提供される。特に、いくつかの実施形態では、組成物は、腫瘍に局所的にデリバリーされる。いくつかの実施形態によれば、原発性肝腫瘍を治療するための方法が提供され、本方法は、原発性肝腫瘍を有する患者の肝臓内動脈にアクセスすること、および細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作されたナチュラルキラー(NK)細胞の集団を投与することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCARまたはキメラ受容体などの操作された受容体を有するNK細胞は、腫瘍細胞上のNKリガンドに結合する。次に、細胞傷害性シグナルが生成され、その結果、腫瘍細胞が死滅する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、癌を治療するための併用療法に関する。いくつかの実施形態は、キメラ受容体またはキメラ抗原受容体を発現する操作された免疫細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞またはT細胞)、および別の抗癌剤の組み合わせを用いる。実施形態に応じて、種々の抗癌剤が使用され、例えば、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、キナーゼ(例えば、チロシンキナーゼ)阻害剤、上皮細胞増殖因子受容体シグナル伝達の阻害剤;血管内皮増殖因子受容体シグナル伝達の阻害剤、化学療法剤、プロテアソーム阻害剤、放射線、脱メチル化剤、チロシンキナーゼ阻害剤、オールトランス型レチノイン酸、酪酸ナトリウムなどが含まれる。いくつかの実施形態では、相乗的抗癌効果は、組み合わせから生じる。
【0006】
いくつかの実施形態では、肝腫瘍の治療のための併用療法レジメンが提供され、療法レジメは、(i)細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作されたナチュラルキラー(NK)細胞の集団、および(ii)少なくとも1つの追加の抗癌剤を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、療法レジメンは、NK細胞の集団が肝腫瘍に局所的に投与されるように構成される。
【0008】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、C型レクチン様受容体の機能的断片であって、C型レクチン様受容体がナチュラルキラーグループ2D(NKG2D)受容体を含む、C型レクチン様受容体の機能的断片と、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含む細胞傷害性シグナル伝達複合体とを含む。いくつかの実施形態では、C型レクチン様受容体の機能的断片は、配列番号24、高度の配列同一性(例えば、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性)を有するその断片、またはリガンド結合機能の少なくとも一部を保持するその断片を含む。C型レクチン様受容体の断片は、配列番号24を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、療法レジメンによって治療される肝腫瘍は、肝細胞癌腫から生じる。いくつかの実施形態では、肝腫瘍は、異なる位置の腫瘍に続発する。例えば、いくつかの実施形態では、肝腫瘍は、結腸直腸癌腫の原発転移である。
【0010】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体のシグナル伝達ドメインは、OX40ドメインを含む。いくつかの実施形態では、OX40ドメインは、配列番号35の配列を有するOX40ドメインと少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態では、OX40ドメインは、配列番号35の配列よりも短い配列に切断され得るが、依然として刺激機能を保持する。いくつかの実施形態では、シグナル伝達コンストラクトは、NK細胞活性化を有利に増強する2つ、3つ、4つまたはそれを超えるOX40ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体のシグナル伝達ドメインは、CD3ゼータドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、CD3ゼータドメインは、配列番号32の配列を有するCD3ゼータドメインと少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態では、CD3ゼータドメインは、(例えば、ベクター中の)細胞傷害性受容体複合体のシグナル伝達および/またはパッケージングを増強するために切断または修飾される。例えば、いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、hemi-ITAMドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、IL15をさらに含む。いくつかの実施形態では、IL15は、膜結合IL15(mbIL15)を含む。いくつかの実施形態では、mbIL15は、配列番号39の配列を有するmbIL15と少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態では、mbIL15は、例えば、操作されたNK細胞の刺激を増強するために、切断および/または突然変異される。いくつかの実施形態では、mbIL15は、細胞傷害性受容体複合体の残りの部分もコードするポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、mbIL15は、別個のポリヌクレオチド上に提供され、これは、細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドとともにNK細胞に別個に導入される。
【0011】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号7の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号7と約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、または約95%同一である核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。実施形態に応じて、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号8と約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、または約95%同一である。
【0012】
いくつかの実施形態では、レジメンは、少なくとも1つの追加の抗癌剤がNK細胞の集団が投与される前、それと同時、またはその後に投与されるように構成される。いくつかの実施形態では、追加の抗癌剤は、操作されたNK細胞よりも頻繁に投与され、例えば、抗癌剤は毎日投与され、一方、NK細胞は1週間または数週間の間隔で投与される。いくつかの実施形態では、追加の抗癌剤は、細胞傷害性受容体複合体の受容体部分の1つまたは複数のリガンドの発現を誘導する追加の抗癌剤の結果として、および/またはNK細胞活性もしくは寿命をさらに刺激するために、操作されたNK細胞と相乗的に作用する。
【0013】
いくつかの実施形態では、追加の抗癌剤はチロシンキナーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態では、薬剤はソラフェニブである。一部の実施形態では、抗癌剤は、ソラフェニブ、ニロチニブ、イマンチニブ(imantinib)、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、アダボセルチブ、ラパチニブ、またはそれらの組み合わせ(例えば、2つ、3つ、4つまたはそれを超えるの組み合わせ)である。
【0014】
いくつかの実施形態では、追加の抗癌剤は抗体である。例えば、いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体、scFvまたは抗体断片である。いくつかの実施形態では、追加の抗癌剤は、セツキシマブ、ダラツムマブ、リツキシマブ、オビヌツズマブ、トラスツズマブ、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、追加の抗癌剤は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤である。種々のHDAC阻害薬を使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、HDAC阻害剤は、バルプロ酸、FR901228、MS-275、フェニルブチレート、PDX101、バルプロ酸ナトリウム、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、またはそれらの組み合わせである。
【0015】
実施形態に応じて、より広く使用される抗癌剤を、本明細書に開示される操作されたNK細胞と結合させることができる。いくつかの実施形態では、追加の抗癌剤は化学療法剤である。例えば、いくつかの実施形態では、化学療法剤は、シスプラチン、ヒドロキシウレア、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、エトポシド、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態に加えてまたはその代わりに、高線量電離放射線を用いる。いくつかの実施形態では、これは、両方の治療が局部的にデリバリーされるため、操作されたNK細胞の局所デリバリーと組み合わされた場合に特に効果的である。
【0016】
いくつかの実施形態では、追加の抗癌剤はプロテアソーム阻害剤である。いくつかの実施形態では、プロテアソーム阻害剤はボルテゾミブである。いくつかの実施形態では、追加の抗癌剤は、オールトランス型レチノイン酸、酪酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、追加の抗癌剤は、NKチェックポイント経路の阻害剤である。このような実施形態では、阻害剤は、NKチェックポイント経路の免疫抑制性をブロックするように作用し、それにより、NK細胞(内因性と操作されたものの両方)の活性を増強する。いくつかの実施形態では、NKチェックポイント阻害剤は、CD73のアンタゴニスト、CD39のアンタゴニスト、アデノシン免疫抑制シグナル伝達経路のアンタゴニスト、またはそれらの組み合わせである。同様に、TIM3および/またはTGFベータ受容体に対する抗体などのいくつかの実施形態では、NK細胞活性を増強するために、他のアプローチが使用される。なおさらなる実施形態では、追加の抗癌剤は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤である。いくつかの実施形態では、NKチェックポイント阻害剤および操作されたNK細胞と組み合わせた放射線などの追加の薬剤の組み合わせが使用される。このような実施形態では、作用の異なるメカニズムおよび異なるシグナル伝達経路の利用は、標的腫瘍細胞に対する相乗的な細胞傷害性効果をもたらす。一部の実施形態では、以下のうちの2つ以上が組み合わされる:チロシンキナーゼ阻害剤、抗体、化学療法剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、プロテアソーム阻害剤、チェックポイント阻害剤、および他の抗癌剤または抗増殖剤。
【0017】
いくつかの実施形態では、肝臓癌の治療のための、本明細書に開示される併用療法の使用が提供される。いくつかの実施形態では、肝臓癌の治療のための医薬を調製するための、本明細書に開示される併用療法の使用が提供される。
【0018】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、C型レクチン様受容体の機能的断片と、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含む細胞傷害性シグナル伝達複合体とを含む。いくつかの実施形態では、C型レクチン様受容体は、ナチュラルキラーグループ2D(NKG2D)受容体を含む。いくつかの実施形態では、C型レクチン様受容体の機能的断片は配列番号24を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、肝腫瘍を治療するための方法も提供され、本方法は、細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作されたNK細胞の集団を含む組成物を肝腫瘍を有する患者に投与することを含み、細胞傷害性受容体複合体は、ナチュラルキラーグループ2D(NKG2D)受容体のリガンドに結合する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含む細胞傷害性シグナル伝達複合体を含み、投与は患者の肝臓内動脈への注射を含む。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、配列番号23のポリヌクレオチドの少なくとも一部によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、野生型NKG2D受容体の細胞外ドメインの一部である。驚くべきことに、いくつかの実施形態では、細胞外ドメインの一部は、NKG2D受容体のリガンドに結合する能力を保持する。また、いくつかの実施形態によれば、アクセサリータンパク質は、NKG2D受容体の細胞外ドメインの効率的な発現に必要ではない。例えば、いくつかの実施形態では、DAP10は、効率的なNKG2D細胞外ドメイン発現および/または機能に必要とされない。同様に、いくつかの実施形態では、DAP12は、効率的なNKG2D細胞外ドメイン発現および/または機能に必要とされない。
【0020】
いくつかの実施形態では、NKG2Dのリガンドは、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、ULBP6、およびそれらの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、他の腫瘍関連リガンドを結合することができる。いくつかの実施形態では、NKG2D受容体はヒトNKG2D受容体の断片である。代替の実施形態では、非ヒト配列を使用することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、肝細胞癌腫を治療するための方法が提供され、本方法は、細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作されたナチュラルキラー(NK)細胞の集団を含む組成物を肝細胞癌腫を有する患者に投与することを含み、細胞傷害性受容体複合体は、膜貫通ドメインに結合した細胞外ドメインを含み、膜貫通ドメインは、シグナル伝達ドメインにさらに結合し、細胞外ドメインは、ナチュラルキラーグループ2D(NKG2D)受容体の断片を含み、NKG2D受容体の断片は、配列番号24のポリヌクレオチドによってコードされるNKG2D受容体断片と少なくとも95%相同であり、投与は、患者の肝臓内動脈への注射を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体のシグナル伝達ドメインは、OX40ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体のシグナル伝達ドメインは、CD3ゼータドメインをさらに含む。実施形態に応じて、CD3ゼータドメインは、少なくとも1つの免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)モチーフを含む。一部の実施形態では、ITAMモチーフは存在しない。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインはIL-15を含む。いくつかの実施形態では、IL-15は、膜結合IL-15としてNK細胞によって発現される。いくつかの実施形態では、膜結合IL-15は、分泌型IL-15の発現によって補足される。いくつかの実施形態では、代替のインターロイキンを、IL-15の代わりに、またはIL-15に加えて使用することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体の膜貫通ドメインは、CD8アルファに由来する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、第1および第2のサブドメインを含む。一部のこのような実施形態では、第1のサブドメインは、CD8アルファ膜貫通ドメインを含む。一部のこのような実施形態では、第2のサブドメインは、CD8アルファヒンジを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号7のポリヌクレオチドによってコードされる細胞傷害性受容体複合体と少なくとも80%相同である。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号7のポリヌクレオチドによってコードされる細胞傷害性受容体複合体と少なくとも85%相同である。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号7のポリヌクレオチドによってコードされる細胞傷害性受容体複合体と少なくとも90%相同である。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号7のポリヌクレオチドによってコードされる細胞傷害性受容体複合体と少なくとも95%相同である。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号8のアミノ酸配列を有する細胞傷害性受容体複合体と少なくとも80%相同である。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号8のアミノ酸配列を有する細胞傷害性受容体複合体と少なくとも90%相同である。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号1、3、5、9、11、13、15、17、19、および21からなる群から選択されるポリヌクレオチドによってコードされる細胞傷害性受容体複合体と少なくとも80%相同である。なおさらなる実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、示された配列に対してより少ない相同性を有し得るが、参照受容体複合体と同じ機能性のすべてまたは実質的にすべてを保持する。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細胞/組成物は、経皮的に投与される。いくつかの実施形態では、肝臓内動脈は経皮的にアクセスされ、細胞の集団は注入によって投与される。一実施形態では、肝臓は、観血的手術アプローチを用いる代わりに、皮膚の針穿刺を介して標的化される。一実施形態では、カテーテルシステムが使用される。一部の実施形態では、オーバーザワイヤーシステムが使用される。いくつかの実施形態では、腫瘍(例えば、固形腫瘍)または肝臓系外の他の部位が標的化される。
【0026】
一実施形態では、注射針は、皮膚を通じて、動脈または静脈などの血管内に配置される。ガイドワイヤなどのイントロデューサーが血管に導入される。次に、注射針は、イントロデューサーの上方および血管内に前進される導管またはシースと交換される。イントロデューサーを取り外し、本明細書に記載される細胞/組成物をデリバリーするために使用されるカテーテルまたは他の医療機器と交換する。カテーテルは、曲がりくねった血管をうまく通過させるために、部分的または完全に可撓性であり得る。一部の実施形態では、カテーテルは、肝動脈または門脈の形状および大きさに適合させることができる。一実施形態では、細胞/組成物は一定期間にわたってデリバリーされる。別の実施形態では、細胞/組成物は単一ボーラスでデリバリーされる。さらに他の実施形態では、細胞/組成物は基質上にデリバリーされる。一部の実施形態では、デリバリーを容易にするために、画像または他のガイダンスが使用される。一部の実施形態では、細胞/組成物は、少なくとも95%、97%、99%または100%の細胞/組成物がデリバリーされ、標的位置に残るように、標的化された局所デリバリーのために使用される。一実施形態では、肝動脈のみが標的化され、門脈は標的化されない。いくつかの実施形態では、キメラ受容体を発現するNK細胞は、トランス動脈デリバリー(例えば、肝動脈へのトランス動脈デリバリー)を介して投与される。
【0027】
いくつかの実施形態では、非経皮投与も提供される。一部の実施形態では、細胞および組成物は、静脈内、筋肉内、腹腔内に、動脈を介して、および/または観血的手術アプローチを介してデリバリーされる。一部の実施形態では、肝臓以外の領域に位置する腫瘍が治療される(卵巣、膵臓、腎臓、および他の臓器など)。本明細書にはNK細胞および組成物が記載されているが、NK細胞(限定されないが、CAR T細胞、抗体、上皮細胞増殖因子受容体阻害剤、抗腫瘍剤など)の代わりに、またはそれに加えて、他の細胞または生物学的製剤/薬物をデリバリーすることができる。一部の実施形態では、セツキシマブ、ダラツムマブ、リツキシマブ、オビヌツズマブ、およびトラスツズマブのうちの1つまたは複数がNK細胞と組み合わせて提供される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のチロシンキナーゼ阻害剤は、本明細書に開示される操作されたNK細胞と組み合わせて提供される。例えば、いくつかの実施形態では、ソラフェニブは、本明細書に開示された操作されたNK細胞と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、スニチニブは、本明細書に開示される操作されたNK細胞と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の化学療法剤が、本明細書に開示される操作されたNK細胞と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、シスプラチン、ヒドロキシウレア、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、および/またはエトポシドのうちの1つまたは複数が、本明細書に開示される操作されたNK細胞と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、高線量電離放射線が、本明細書に開示される操作されたNK細胞と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のプロテアソーム阻害剤が、本明細書に開示される操作されたNK細胞と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、ボルテゾミブ(例えば、ベルケイド(登録商標))が、本明細書に開示される操作されたNK細胞と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のHDAC阻害剤が、本明細書に開示される操作されたNK細胞と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、レミデプシン(例えば、FR901228)、エンチノスタット(例えば、MS-275)、フェニルブチレート、ベリノスタット(例えば、PDX101)、バルプロ酸ナトリウム、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、および/またはバルプロ酸のうちの1つまたは複数が、本明細書に開示される操作されたNK細胞と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、オールトランス型レチノイン酸および/または酪酸ナトリウムのうちの1つまたは複数が、本明細書に開示される操作されたNK細胞と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の脱メチル化剤が、本明細書に開示される操作されたNK細胞と組み合わせて投与される。例えば、いくつかの実施形態では、アザジチジン(azazytidine)および/またはデシタビンが、本明細書に開示される操作されたNK細胞と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、投与される追加の薬剤は、例えば、本明細書に開示される操作された受容体のリガンドの上方制御を誘導することによって、標的腫瘍細胞を、操作されたNK細胞に対してより感受性にする。
【0028】
一部の実施形態では、本明細書に記載される細胞/組成物のデリバリーは、他の診断および/または療法モダリティとともに投与される。例えば、腫瘍アブレーション(例えば、凍結療法)、化学療法、郭清などは、追加の療法として投与することができる。一部の実施形態では、経動脈化学塞栓術、超音波アブレーション、マイクロ波アブレーション、レーザー療法、ガンマナイフ放射線手術、エタノール注射、および/または放射線塞栓術が提供される。一実施形態では、細胞/組成物は、これらの他の療法の有効性を増強し、望ましくない副作用を減少させおよび/または治療時間を短縮する。一部の実施形態では、デリバリー、局在化および/または有効性を増大させる技術が提供され、これには、限定されないが、エレクトロポレーションなどの細胞膜透過性を増大させる技術が含まれる。
【0029】
いくつかの実施形態では、投与されたNK細胞の集団は、患者に対して自家である。代替の実施形態では、投与されたNK細胞の集団は、患者に対して同種である。NK細胞は、ウイルス感染、損傷、および悪性細胞の自然免疫センサーである。NKは、単一のエピトープに制限されない;それらは、健常な細胞を救出し、疾患細胞を死滅させるために、多種多様な活性化および抑制性シグナルを読み取る。また、NK細胞増殖シグナル(例えば、IL15、IL18、IL21、IL2、IL21に応答する)は、細胞傷害性を駆動するシグナル(例えば、NKG2D、NKG2C、CD16、DNAM-1、2B4、NKp44、および/またはNKp30を介したシグナル伝達)とは異なる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される実施形態による操作されたNK細胞の使用は、このような操作されたNK細胞が、(i)健常細胞と癌細胞を識別することができ、(ii)複数の抗原を標的とすることができ、(iii)多数の腫瘍細胞によって過剰発現される天然リガンドを標的化することができ、(iv)チェックポイント阻害剤を標的化することができ、ならびに/または(v)移植片対宿主疾患のリスクを低減および/もしくは排除することができるために有利である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される実施形態による操作された細胞は、限定された細胞死を伴う凍結保存に耐える能力を有する。いくつかの実施形態では、これは、既製製品を可能にする。なおさらなる実施形態では、投与された集団は、混合した自家/同種集団である。一部の実施形態では、T細胞は、NK細胞と組み合わせてまたはそれに代えて投与される。いくつかの実施形態では、治療方法は、患者にIL-2を投与することをさらに含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、本方法は、肝臓内動脈にアクセスする前に、肝臓内動脈の位置をマッピングすることをさらに含む。いくつかの実施形態は、肝臓に血液を供給しない血管を閉塞する工程を用いる。実施形態に応じて、NK細胞の集団の投与は、1週間ごとに1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回繰り返される。いくつかの実施形態では、投与された組成物は、腫瘍量の少なくとも25%の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、腫瘍量の減少は、肝細胞癌腫瘍量の減少である。いくつかの実施形態では、投与された組成物は、約107~約1010個のNK細胞を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体のシグナル伝達ドメインは、CD3ゼータドメインを含み、細胞外ドメインは、配列番号24のポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、CD3ゼータドメインは、少なくとも1つの免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)モチーフを含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体のシグナル伝達ドメインは、OX40ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体は、4-1BBドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体のシグナル伝達ドメインは、CD28ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体のシグナル伝達ドメインは、NKp80ドメインをさらに含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号1の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号2のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号3の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号4のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号5の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号6のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号7の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号8のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号9の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号10のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号11の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号12のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号13の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号14のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号15の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号16のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号17の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号18のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号19の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号20のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号21の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号22のアミノ酸配列を有する。
【0033】
上記に要約され、以下でさらに詳細に説明される組成物および関連する方法は、熟練者によって取られる特定の行動を記載する。しかしながら、それらは、別の者によるそれらの行動の指示も含むことができることが理解されるべきである。したがって、「操作されたNK細胞の集団を肝臓に局所的に投与する」などの行動は、「操作されたNK細胞の集団を肝臓に局所的に投与することを指示する」ことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1A~1Gは、本明細書に開示されるいくつかの実施形態による、NK細胞における発現のための細胞傷害性受容体複合体コンストラクトの概略図を表す。
【0035】
【
図2】
図2A~2Dは、本明細書に開示されるいくつかの実施形態による、NK細胞における発現のためのさらなる細胞傷害性受容体複合体コンストラクトの概略図を表す。
【0036】
【
図3】
図3A~3Cは、天然のNK細胞(NT NK)または本明細書に開示される実施形態による操作されたNK細胞(NKX101)と共培養した場合に、培養された肝細胞癌腫細胞によって放出される種々の因子の濃度に関するデータを示す。
【0037】
【
図4-1】
図4A~4Jは、種々のエフェクター:標的比で種々の肝細胞癌腫細胞株と共培養した場合に、天然のNK細胞(NT NK)または本明細書に開示される実施形態による操作されたNK細胞(NKX101)によって誘導される細胞傷害性効果の程度に関するデータを示す。
図4Jは、1:2のエフェクター対標的比でなおも生存可能な対照細胞のパーセンテージによって測定されるNKX101に対するそれらの抵抗性の観点から細胞株を要約する。
図4K~4Sは、種々のエフェクター:標的比で種々の肝細胞癌腫細胞株と共培養した場合に、天然のNK細胞(ドナー数)または本明細書に開示される実施形態による操作されたNK細胞(NKX101(+ドナー数))によって誘導される細胞傷害性効果の程度に関連する追加データを示す。
図4T~4BBは、
図4F~4Sに示されるそれらのトレースの要約データを反映する。Y軸は、未処理HCC細胞数に基づく対照のパーセント(PoC)([(平均実験値)/(対照平均)×100]として算出される)を示す。
【0038】
【
図5】
図5は、マウスにおける肝細胞癌腫瘍量を減少させるNKX101のインビボ(in vivo)評価のためのプロトコールの概略図を示す。肝細胞癌腫細胞(ホタルルシフェラーゼを有するSNU449細胞)を受けたマウスに、HCC投与8日後に3×10
6個の細胞(非修飾NKまたはNKX101のいずれか)またはPBSをIP投与した。NKX101形質導入効率は約57%であったが、残存CD3+T細胞は2%未満であった。
【0039】
【
図6】
図6A~6Fは、PBS(AおよびD)、非修飾NK(BおよびE)またはNKX101(CおよびF)を受けたマウスにおける腫瘍量に関連するデータを示す。A、B、およびCに示されるのは、示された細胞(またはPBS)を受けたマウスの生物発光画像であり、経時的な腫瘍量を示す。D、E、およびFに示されるのは、経時的な腫瘍量を示す対応する線グラフである。
【0040】
【
図7】
図7A~7Eは、単独で使用した場合、または本明細書に提供される操作されたNK細胞と組み合わせて使用した場合、種々の腫瘍細胞株に対するソラフェニブの有効性に関するデータを示す。7Aは、Raf-1、B-RafおよびVEGFR-2シグナル伝達経路を阻害する低分子ソラフェニブの種々の用量での示されたHCC細胞株の生存率に関するデータを示す。
図7Bは、HCC細胞株に対するソラフェニブの表にしたEC50用量である。
図7C~7Eは、チロシンキナーゼ阻害剤(ソラフェニブ)と天然のNK細胞またはNKX101の種々の組み合わせの、示されたエフェクター:標的比での細胞傷害性を示す。
【0041】
【
図8】
図8A~8Iは、バモマブ抗体を用いて測定された、示された肝細胞癌腫細胞型における種々のNKG2D受容体リガンドおよび対照マーカーの発現に関するデータを示す。NKG2Dリガンドは破線の枠で囲まれているが、対照は実線の枠で囲まれている。
【0042】
【
図9】
図9A~9Fは、示されたNKG2D受容体リガンドの発現の程度に対する種々のHCC細胞株の細胞傷害性の程度に関するデータを示す。
【0043】
【
図10】
図10A~10Gは、種々のHCC細胞株におけるNKG2D-Fcの発現の程度(AおよびB)、およびNKG2D-Fcの発現と示されたNKG2D受容体リガンドの間の相関の程度に関するデータを示す。
【0044】
【
図11】
図11A~11Bは、ルシフェラーゼを発現するように操作された2つのモデルHCC細胞株において測定された4時間のエンドポイントにおけるNKX101細胞のインビトロ(in vitro)細胞傷害性の増強に関するデータを示す(11AはHep3b細胞を示し;11BはSNU449細胞を示す)。K562-mbIL15-41BBL刺激細胞による拡大後21日目の2人のドナー由来のNKX101および非修飾(NT NK)NK細胞の平均を示す。Prism 4パラメータ非線形回帰分析を用いて算出したEC50値。
【0045】
【
図12】
図12A~12Iは、PEコンジュゲートされた抗体(R&D Systems製)を用いて測定された、示された肝細胞癌腫細胞型における種々のNKG2D受容体リガンドおよび対照マーカーの発現に関するデータを示す。NKG2Dリガンドは破線の枠で囲まれているが、対照は実線の枠で囲まれている。
【0046】
【
図13-1】
図13A~13Iは、
図12のPEコンジュゲートされた抗体および
図8のBAMOmAb抗体を用いて、示された種々の示された肝細胞癌腫細胞株におけるNKG2Dリガンド発現の要約データを示す。データは、dMFI(デルタ平均蛍光強度、検出される標的MFI-抗体アイソタイプMFI(例えば、バックグラウンド)として算出される)として示される。
【0047】
【
図14】
図14A~14Fは、HCCにおける特異的NKG2Dリガンドの変化の調査に関する。これらのデータは、NKG2D-Fcによるリガンド対示された特異的NKG2Dリガンドの結合(X軸)によって測定される、すべてのNKG2Dリガンドの発現レベル(Y軸)をプロットする。
【0048】
【
図15】
図15A~15Cは、ルシフェラーゼを発現するように操作された3つのモデルHCC細胞株において測定された4時間のエンドポイントにおけるNKX101細胞の細胞傷害性データを示す(15AはHep3b細胞を示し、15BはHuh-7細胞を示し、15CはSNU449細胞を示す)。K562-mbIL15-41BBL刺激細胞による拡大後21日目の2人のドナー由来のNKX101および非修飾(ドナー数)NK細胞の平均を示す。
【0049】
【
図16】
図16A~16Gは、ルシフェラーゼを発現するための種々の肝細胞癌腫細胞の操作に関する。細胞株を形質導入するために使用されるベクターは、形質導入された細胞のMACS CD19陽性選択を可能にするためのCD19発現タグを含んだ。
図16A~16Fは、示された細胞株の各々についてのフローサイトメトリーデータを示す。
図16Gは、ルシフェラーゼの発現によって測定された、細胞の成功した生成を要約する(相対光単位/10,000細胞)。
【0050】
【
図17-1】
図17A~17Nは、ソラフェニブ濃度に関連する総NKG2DリガンドおよびPD-L1の発現に関する。
図17A~17Fは、種々の濃度のソラフェニブに応答した、示された腫瘍細胞株における総NKG2Dリガンド発現の変化に関連するフローサイトメトリーデータを示す(総発現はNKG2D-Fc融合の使用に基づき、したがって、検出は任意のリガンドNKG2Dが結合し得るものである)。
図17G~17Lは、種々の濃度のソラフェニブに応答した、示された腫瘍細胞株におけるPD-L1発現の変化に関連するフローサイトメトリーデータを示す。
図17Mおよび17Nは、フローサイトメトリーデータを要約する線グラフである。
【0051】
【
図18-1】
図18A~18Tは、インターフェロンガンマ(IFNg)濃度に関連する総NKG2DリガンドおよびPD-L1の発現に関する。
図18A~18Iは、種々の濃度のIFNgに応答した、示された腫瘍細胞株における総NKG2Dリガンド発現の変化に関連するフローサイトメトリーデータを示す(総発現はNKG2D-Fc融合の使用に基づき、したがって、検出は任意のリガンドNKG2Dが結合し得るものである)。
図18J~18Sは、種々の濃度のIFNgに応答した、示された腫瘍細胞株におけるPD-L1発現の変化に関連するフローサイトメトリーデータを示す。
図18Sおよび18Tは、フローサイトメトリーデータを要約する線グラフである。
【0052】
【
図19】
図19A~19Dは、キメラ受容体コンストラクトで形質導入されていないNK細胞によるPD-1の発現、またはNKX101細胞によるPD-1の発現に関する。
【0053】
【
図20】
図20A~20Eは、操作されたルシフェラーゼ発現結腸直腸癌(CRC)細胞株によるCD19の発現に関する。細胞株を形質導入するために使用されるベクターは、形質導入された細胞のMACS CD19陽性選択を可能にするためのCD19発現タグを含んだ。
【0054】
【
図21】
図21A~21Eは、ルシフェラーゼを発現するように操作されたCRC細胞による種々のNKG2Dリガンドの発現に関する。
【0055】
【
図22】
図22A~22Fは、CD3枯渇前(A~C)およびCD3枯渇後(D~F)のCD56の3人のドナー由来のNK細胞による発現に関連するフローサイトメトリーデータを示す。
【0056】
【
図23】
図23A~23Cは、2人のドナー由来のNK細胞における、操作されたNK細胞(NKX101)によるNKG2D受容体の発現(非形質導入のNK細胞(NTNK)と比較する)に関するフローサイトメトリーデータを示す。
【0057】
【
図24】
図24A~24Cは、示されたCRC細胞株に対する4人の異なるドナー由来のNKX101細胞の細胞傷害性データ、ならびに関連するEC50値を示す。K562-mbIL15-41BBL刺激細胞を用いて、拡大後14~21日目に回収されたデータを示す。
【0058】
【
図25】
図25A~25Fは、2人のドナーに由来し、NKX101を発現するように操作されたNK細胞の特徴付けに関するフローサイトメトリーデータを示す。
図25A~BおよびD~Eは、CD3枯渇前(A~B)およびCD3枯渇後(D~E)のCD56の2人のドナー由来のNK細胞による発現に関する。
図25Cおよび25Fは、これら2人のドナー由来のNK細胞におけるNKX101発現(非形質導入のNK細胞(NTNK)と比較した)に関連するフローサイトメトリーデータを示す。
【0059】
【
図26】
図26A~26Cは、非形質導入のNK細胞(NTNK)またはNKX101を発現するNK細胞のいずれかに応答した、示されたCRC細胞株によって放出されたサイトカインの分析を示す。
【0060】
【0061】
【
図28】
図28A~28Bは、拡大中のNK細胞による受容体発現の活性化に関するフローサイトメトリーデータを示す。
【0062】
【
図29】
図29A~29Cは、本明細書に開示される実施形態による操作されたNK細胞のインビボ持続性および細胞傷害性に関するデータを示す。
図29Aは、本明細書に開示される操作されたNK細胞の非限定的な実施形態のインビボ持続性の増強を示す。
図29Bは、本明細書に開示される操作されたNK細胞の非限定的な実施形態について増強されたインビボ細胞傷害性データを示す。
図29Cは、
図29Bのデータの根拠となる生物発光強度イメージングデータを示す。
【0063】
【
図30】
図30A~30Bは、THP1 AML異種移植モデルからのデータに関する。
図30Aは、急性骨髄性白血病細胞に対する、本明細書に開示される実施形態によるNKG2D CARの細胞傷害性に関するインビボデータを示す。
図30Bは、インビボデータの要約を提供する。
【0064】
【
図31】種々の急性骨髄性白血病細胞に対する、本明細書に開示される実施形態によるNKG2D CARの細胞傷害性に関する要約データを示す。
【0065】
【
図32-1】
図32A~32Kは、本明細書に開示されるNK細胞および操作されたNK細胞のさらなる特徴付けに関する。
図32Aは、本明細書に開示される操作されたNK細胞および凍結保存に対するそれらの応答を特徴付けるための概略的プロトコールを示す。
図32Bは、操作されたNK細胞生存率に関するデータを示す。
図32Cは、操作されたNK細胞生存細胞回収に関するデータを示す。
図32Dは、操作されたNK細胞の細胞傷害性の保持に関するデータを示す。
図32Eは、拡大中の操作されたNK細胞による特定のマーカーの発現に関する要約データを示す。
図32Fは、拡大中の操作されたNK細胞による特定のマーカーの発現に関する追加の要約データを示す。
図32Gは、拡大中の操作されたNK細胞によるCD16の発現に関する要約データを示す。
図32Hは、拡大中の操作されたNK細胞によるマーカー発現に関する要約データを示す。
図32Iは、拡大中の操作されたNK細胞によるマーカー発現の強度に関する要約データを示す。
図32Jは、フィーダー細胞単独による拡大中の操作されたNK細胞によるマーカー発現に関する要約データを示す。
図32Kは、フィーダー細胞および追加のサイトカインによる拡大中の操作されたNK細胞によるマーカー発現に関する要約データを示す。
【0066】
【
図33】
図33A~33Cは、本明細書に開示される実施形態によるかまたは標的細胞(ここでは、Raji細胞およびNalm6細胞)上での操作されたNK細胞による種々の表面マーカーの発現に関する。
図33Aは、本明細書に開示されるいくつかの実施形態による、NKG2D CARを発現するNK細胞上のCD16発現を示す。
図33Bは、RajiおよびNalm6腫瘍細胞上のCD19発現を示す。
図33Cは、RajiおよびNalm6腫瘍細胞上のCD20発現を示す。
【0067】
【
図34】
図34は、NKG2D CARの非限定的な例を発現するNK細胞、ならびに抗CD20抗体に曝露した場合のRaji細胞増殖の減少に関するデータを示す。
【0068】
【
図35】
図35A~35Bは、NKG2D CARの非限定的な例を発現するNK細胞、ならびにHDAC阻害剤に曝露した場合のHL60白血病細胞増殖の阻害に関する。
図35Aは、示されたコンストラクトによるHL60細胞増殖を示す。
図35Bは、HDAC阻害剤の投与と組み合わせた同じコンストラクトを示す。
【0069】
【
図36】
図36は、本明細書に開示されるNKG2D CARの非限定的な実施形態を発現する種々の免疫細胞タイプの存在下での細胞増殖の減少に関するデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
治療活性部位への製剤のデリバリーは、薬物の性能および安全性にとって重要な因子である。細胞性免疫療法の場合、エフェクター細胞タイプがしばしば腫瘍微小環境から除外されるため、デリバリーの問題は、効果的な療法に対するさらなるハードルとなり得る。NK細胞の腫瘍浸潤は、いくつかの腫瘍タイプにおいて良好な予後と関連しているが、NK細胞はまた、いくつかの腫瘍タイプ(例えば、腎細胞癌腫、結腸直腸癌腫、および黒色腫)に低浸潤であることが観察されている。NK細胞によって発現されるケモカイン受容体レパートリーのギャップに関連すると考えられる浸潤の欠如は、特定の腫瘍に関連して養子注入されたNK細胞を用いて達成された様々な臨床的結果を説明し得る。
【0071】
一部の療法は、肝臓への治療薬の局所デリバリーから利益を得る。例えば、肝臓内動脈を介した化学療法剤の投与が実証されている。同様に、肝細胞癌腫の治療のために、肝臓へのCAR T細胞の領域的デリバリーが行われている。
【0072】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態に従えば、NK細胞を用いる細胞療法は、肝細胞癌腫において使用するための魅力的な選択肢である。NKG2D受容体のリガンドは肝細胞癌腫において発現し、NKG2D受容体の過剰発現はインビトロおよびインビボで肝細胞癌腫由来の細胞株に対するNK細胞細胞傷害性を改善する。さらに、肝細胞癌腫の患者由来のNK細胞は消耗の徴候を示すことがあるが、IL-15への曝露はある程度の機能性を回復することができる。一部の実施形態では、NK細胞の肝臓内デリバリーは、肝細胞癌腫の治療にこれらの細胞を使用するための非常に有効な方法である。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞を使用するNKベースの療法は、天然のNK細胞よりもさらに有効性を増加させる。例えば、一部の実施形態によれば、NK細胞は、NKG2D受容体(またはその一部)を含む細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作される。一部の態様によれば、NK細胞は、IL-15を発現するように操作され、一部の実施形態では、分泌型形態を発現するように操作され、一方、一部の実施形態では、IL-15は膜結合型である。肝細胞癌腫へのNK浸潤は限定され、腫瘍微小環境によって潜在的に抑制され得るが、このような操作されたNK細胞の肝臓への局所デリバリーは、疾患部位への有効用量のデリバリーを確実にすること、それらが必要とされる解剖学的コンパートメント内に細胞を収容することの両方ができ、したがって、潜在的な標的外傷害性を制限することができる。したがって、以下により詳細に検討されるように、このような組成物、およびこのような操作されたNK細胞を局所的にデリバリーする方法は、NKG2Dリガンドに対するNKの感受性を増強し、腫瘍微小環境の抑制力に抵抗するそれらの能力を改善し、増強された抗癌療法を提供する。
【0073】
免疫療法用の操作されたNK細胞
細胞性免疫療法では、種々の免疫細胞のタイプを用いることができる。一部の実施形態は、T細胞ベースの組成物(例えば、本明細書に開示されるNKG2Dベースの細胞傷害性受容体複合体を発現するもの)および方法に関する。いくつかの実施態様は、NK細胞ベースの組成物および方法に関する。いくつかの実施態様によれば、操作されたNK細胞を含む組成物は、特定の有利な特徴を有する。NK細胞は、自己由来またはドナー由来の同種細胞のいずれかの使用を可能にする。いくつかの実施形態に従えば、操作されたNK細胞は、正常細胞に対して最小の細胞傷害性を有する。この利点は、例えば、肝臓内動脈を介する局所デリバリーと組み合わせる場合にさらに増強される。操作されたNK細胞はまた、既に非常に強力である天然のNK細胞の細胞傷害性効果よりも予期せぬ増加した有意な細胞傷害性効果を有する。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、NK細胞は、1つまたは複数の細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作される。複合体は、実施形態に応じて、腫瘍リガンドに結合するドメイン(例えば、細胞外ドメイン)、および膜貫通ドメイン、シグナル伝達ドメイン、および/または共刺激ドメインを含む細胞傷害性シグナル伝達複合体を含む。各ドメインは、1つまたは複数のサブドメインを含み得る。
【0075】
腫瘍リガンドに結合するドメイン
いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、それらの腫瘍細胞を認識し、破壊する能力のために利用される。NK細胞は、細胞表面に抑制性受容体と活性化受容体の両方を発現する。抑制性受容体は、健常な細胞の表面に発現する自己分子と結合し(したがって、「自己」細胞に対する免疫応答を妨げる)、一方、活性化受容体は、腫瘍細胞などの異常な細胞上に発現するリガンドと結合する。抑制性受容体と活性化受容体の間のバランスの「チップ」は、活性化受容体に有利に働き、NK細胞の活性化、および標的(例えば、腫瘍)細胞溶解を導く。ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)は、細胞上に発現される種々のリガンドを認識するNK細胞活性化受容体である。種々のNKG2Dリガンドの表面発現は、一般的に、健常な細胞では低いが、例えば、悪性形質転換によって上方制御される。NKG2Dによって認識されるリガンドの非限定的な例としては、限定されないが、MICA、MICAB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、およびULBP6、ならびにNK細胞の細胞溶解または細胞傷害性機能を制御する標的細胞上に発現される他の分子が挙げられる。
【0076】
いくつかの実施形態では、細胞は、腫瘍細胞(例えば、肝細胞)の表面上のリガンドを認識するための細胞外コンポーネントとしての全長NKG2Dを含む細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作される。一実施形態では、全長NKG2Dは配列番号24の核酸配列を有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、細胞は、腫瘍細胞(例えば、肝細胞)の表面上のリガンドを認識するための細胞外コンポーネントとしてのNKG2Dの機能的断片を含む細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作される。一実施形態では、NKG2Dの機能的断片は配列番号24の核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、NKG2Dの断片は、全長野生型NKG2Dと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%相同である。いくつかの実施形態では、断片は、配列番号24からの1つまたは複数のさらなる突然変異を有することができるが、リガンド結合機能を保持するか、または一部の実施形態では、増強されたリガンド結合機能を有する。いくつかの実施形態では、NKG2D断片は、二量体、三量体、または他のコンカテマー形式として提供され、このような実施形態は、増強されたリガンド結合活性を提供する。いくつかの実施形態では、NKG2D断片をコードする配列は、完全にまたは部分的にコドン最適化されてもよい。一実施形態では、コドン最適化されたNKG2D断片をコードする配列は、配列番号25の配列を含む。いくつかの実施形態によれば、有利には、機能的断片は、その天然の膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインを欠いているが、そのNKG2Dのリガンドに結合する能力、ならびにリガンド結合時に活性化シグナルを形質導入する能力を保持する。このような断片のさらなる利点は、NKG2Dを細胞膜に局在化させるためのDAP10の発現が必要でないことである。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチドによってコードされる細胞傷害性受容体複合体はDAP10を含まない。
【0078】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、二量体化するように構成される。二量体化は、実施形態に応じて、ホモ二量体またはヘテロ二量体を含み得る。いくつかの実施形態では、二量体化は、細胞傷害性受容体複合体によるリガンド認識の改善をもたらし(したがって、NK細胞は受容体を発現する)、その結果、有害な傷害性効果の減少(または欠如)をもたらす。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、内部二量体、または1つもしくは複数のコンポーネントサブユニットの反復を用いる。例えば、いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、第2のNKG2D細胞外ドメインに結合した第1のNKG2D細胞外ドメイン、および膜貫通/シグナル伝達領域(または別個のシグナル伝達領域とともに別個の膜貫通領域)を含んでもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、種々のドメイン/サブドメインは、リンカーによって分離され、例えば、GS3リンカー(配列番号41)が使用される(またはGSnリンカー)。これにより、受容体複合体の種々のコンポーネント部分をポリヌクレオチドに沿って分離することができ、受容体複合体の発現を増強することができる。
【0080】
細胞傷害性シグナル伝達複合体
本明細書に開示されるように、いくつかの実施形態によれば、提供される細胞傷害性受容体複合体は、標的細胞の表面上のリガンドに結合するドメインを含み、細胞傷害性シグナル伝達複合体も含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体は、少なくとも1つの膜貫通ドメイン、少なくとも1つの共刺激ドメイン、および/または少なくとも1つのシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、1を超えるコンポーネント部分は、所与のドメインを構成する-例えば、共刺激ドメインは、2つのサブドメインを含むことができる。さらに、一部の実施形態では、ドメインは、複数の機能を果たすことができ、例えば、膜貫通ドメインはまた、シグナル伝達機能を提供するのに役立つことができる。
【0081】
膜貫通ドメイン
いくつかの実施形態では、用いられるNKG2Dドメインは、その正常な膜貫通ドメインの少なくとも一部を保持する。しかしながら、いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、T細胞とNK細胞の両方に通常発現される膜貫通糖タンパク質であるCD8の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインはCD8αを含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは「ヒンジ」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、CD8αの「ヒンジ」は配列番号26の配列を有する。いくつかの実施形態では、CD8αヒンジは切断または修飾され、配列番号26の配列を有するCD8αと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同である。
【0082】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインはCD8α膜貫通領域を含む。いくつかの実施形態では、CD8α膜貫通ドメインは配列番号27の配列を有する。いくつかの実施形態では、CD8αヒンジは切断または修飾され、配列番号27の配列を有するCD8αと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同である。
【0083】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインはIgG4短鎖ヒンジを含む。いくつかの実施形態では、IgG4短鎖ヒンジ膜貫通ドメインは配列番号28の配列を有する。いくつかの実施形態では、CD8αヒンジは切断または修飾され、配列番号28の配列を有するCD8αと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同である。
【0084】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体はCD28ドメインを含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインはCD28を含み、一方、いくつかの実施形態では、CD28ドメインは細胞内シグナル伝達ドメインであり、一方、いくつかの実施形態では、CD28ドメインは膜貫通/細胞内シグナル伝達ドメインである。いくつかの実施形態では、CD28膜貫通ドメインは配列番号29の配列を有する。いくつかの実施形態では、CD28膜貫通ドメインは、配列番号29の配列を有するCD28と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断または修飾することができる。いくつかの実施形態では、CD28シグナル伝達ドメインは配列番号40の配列を有する。いくつかの実施形態では、CD28シグナル伝達ドメインは、配列番号40の配列を有するCD28と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断または修飾することができる。いくつかの実施形態では、CD28は、コンストラクトにおける唯一の膜貫通/シグナル伝達ドメインとして使用されるが、いくつかの実施形態では、CD28は1つまたは複数の他のドメインとともに使用され得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、CD28は、コンストラクトにおける唯一の膜貫通/シグナル伝達ドメインとして使用されるが、いくつかの実施形態では、CD28は1つまたは複数の他のドメインとともに使用され得る。例えば、一部の実施形態では、CD28、OX40、4-1BB、および/またはCD3ゼータの組み合わせが使用される。
【0086】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、T細胞CD3 T細胞受容体複合体(ゼータ、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、およびイプシロンサブユニットからなる)の膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメイン全体が使用されるが、一部の実施形態では、その断片が使用される。一部の実施形態では、1~20(例えば、1、2、3、4、5、6、8、10、15またはそれを超える)細胞外CD3ゼータ残基は、CD3ゼータ膜貫通ドメインに直接隣接する。一部の実施形態では、CD3ゼータ膜貫通ドメインは、配列番号30の配列を有する。いくつかの実施形態では、CD3ゼータ膜貫通ドメインは、配列番号30の配列を有するCD3ゼータ膜貫通ドメインと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断または修飾することができる。いくつかの実施形態では、CD3ゼータ膜貫通ドメインへの修飾は、ドメインの長さを増加させるための追加の核酸残基を含む。
【0087】
共刺激ドメイン
いくつかの実施形態では、種々の膜貫通ドメインおよびシグナル伝達ドメイン(および膜貫通ドメイン/シグナル伝達ドメインの組み合わせ)に加えて、追加の共活性化分子を提供することができる。これらは、例えば、免疫細胞の活性をさらに増強する特定の分子であり得る。サイトカインが、一部の実施形態では使用され得る。例えば、非限定的な例として、IL-2および/またはIL-15などの特定のインターロイキンが使用される。一部の実施形態では、療法のための免疫細胞は、分泌型形態としてこのような分子を発現するように操作される。さらなる実施形態では、このような共刺激ドメインは、自己分泌刺激分子(または、デリバリーされた隣接細胞へのパラクリン刺激剤としてさえも)として作用する、膜結合型であるように操作される。いくつかの実施形態では、NK細胞は、膜結合型インターロイキン15(mbIL15)を発現するように操作される。このような実施形態では、NK上のmbIL15発現は、NK細胞の増殖および/または寿命を増強することによって、操作されたNK細胞の細胞傷害性効果を増強する。いくつかの実施形態では、mbIL15は配列番号39の核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、mbIL15は、配列番号39の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断または修飾することができる。
【0088】
一部の実施形態では、操作された細胞傷害性受容体複合体は、1つまたは複数の細胞質プロテアーゼ切断部位、例えば、T2A切断部位、P2A切断部位、E2A切断部位、および/またはF2A切断部位を含むポリヌクレオチドによってコードされる。このような部位は、細胞質プロテアーゼによって認識されおよび切断され、ポリヌクレオチドによってコードされる受容体の種々のコンポーネント部分の分離(および別個の発現)をもたらすことができる。結果として、実施形態に応じて、操作された細胞傷害性受容体複合体の種々の構成部分は、単一のベクターにおいてまたは複数のベクターによりNK細胞にデリバリーされ得る。したがって、図に概略的に示されるように、コンストラクトは、単一のポリヌクレオチドによってコードされ得るが、切断部位も含み、その結果、コンストラクトの下流要素は、別個のタンパク質として細胞によって発現される(IL-15を有する一部の実施形態における場合が挙げられる)。いくつかの実施形態では、T2A切断部位が使用される。いくつかの実施形態では、T2A切断部位は配列番号38の核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、mbIL15は、配列番号38の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断または修飾することができる。
【0089】
シグナル伝達ドメイン
いくつかの実施形態では、シグナル伝達は、4-1BB(CD137および腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF 9)としても公知である)を介して提供される。本明細書に開示されるように、4-1BBは、活性化T細胞のための刺激分子としての天然の役割を有する(例えば、4-1BBの架橋は、T細胞増殖および細胞溶解活性を増強する)が、いくつかの実施形態は、4-1BB活性のNK細胞との機能を利用する。いくつかの実施形態では、4-1BBは配列番号31の配列を有する。いくつかの実施形態では、4-1BBは、配列番号31の配列を有する4-1BBと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断または修飾することができる。いくつかの実施形態では、4-1BBは唯一のシグナル伝達ドメインである。しかしながら、いくつかの実施形態では、増強されたシグナル伝達は、その活性が相乗的に作用する複数のシグナル伝達ドメインの使用によって達成される。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるいくつかの実施形態による操作されたNK細胞は、CD3 T細胞受容体複合体(またはその断片)の少なくとも1つのサブユニットを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータサブユニットを含む。いくつかの実施形態では、CD3ゼータは配列番号32の配列を有する。いくつかの実施形態では、CD3ゼータは、配列番号32の配列を有するCD3ゼータと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断または修飾することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、CD3ゼータは、ドメインがもはや標準的な免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)モチーフを含まないように、突然変異がなされる(例えば、アミノ酸の突然変異、挿入または欠失)。一部の実施形態では、得られた操作されたNK細胞は、限定されたかまたは減少された副作用を伴って、標的細胞に対して特に増強された細胞傷害性を示す。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、非ITAM CD3ゼータサブユニットを含む。いくつかの実施形態では、非ITAM CD3ゼータは、配列番号33の配列を有する。いくつかの実施形態では、非ITAM CD3ゼータは、配列番号33の配列を有する非ITAM CD3ゼータと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断または修飾することができる。
【0092】
これは、いくつかの実施形態では、所与の実施形態において使用される細胞傷害性受容体複合体の種々の部分の相乗的相互作用から生じる。いくつかの実施形態では、4-1BBと組み合わせたCD3ゼータは、相乗的刺激効果を提供し、その結果、特に効果的な(例えば、細胞傷害性)NK細胞がもたらされる。
【0093】
いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインはOX40ドメインを含む。いくつかの実施形態では、OX40ドメインは細胞内シグナル伝達ドメインである。いくつかの実施形態では、OX40細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号35の配列を有する。いくつかの実施形態では、OX40細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号35の配列を有するOX40と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断または修飾することができる。いくつかの実施形態では、OX40は、コンストラクトにおける唯一の膜貫通/シグナル伝達ドメインとして使用されるが、いくつかの実施形態では、OX40は、1つまたは複数の他のドメインとともに使用することができる。例えば、一部の実施形態では、CD28、OX40、4-1BB、および/またはCD3ゼータの組み合わせが使用される。
【0094】
いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、NKp80ドメインを含む。いくつかの実施形態では、NKp80ドメインは、細胞内シグナル伝達ドメインである。いくつかの実施形態では、NKp80細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号36の配列を有する。いくつかの実施形態では、NKp80細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号36の配列を有するOX40と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断または修飾することができる。いくつかの実施形態では、NKp80は、コンストラクトにおける唯一の膜貫通/シグナル伝達ドメインとして使用されるが、いくつかの実施形態では、NKp80は、1つまたは複数の他のドメインとともに使用され得る。例えば、一部の実施形態では、CD28、OX40、4-1BB、および/またはCD3ゼータの組み合わせが使用される。
【0095】
いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、CD16の断片を含む。いくつかの実施形態では、CD16の断片は、CD16の細胞内領域(CD16 IC)である。いくつかの実施形態では、CD16 ICドメインは、細胞内シグナル伝達ドメインである。いくつかの実施形態では、CD16 IC細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号37の配列を有する。いくつかの実施形態では、CD16 IC細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号37の配列を有するOX40と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断または修飾することができる。いくつかの実施形態では、CD16 ICは、コンストラクトにおける唯一の膜貫通/シグナル伝達ドメインとして使用されるが、いくつかの実施形態では、CD16 ICは、1つまたは複数の他のドメインとともに使用され得る。例えば、一部の実施形態では、CD28、OX40、4-1BB、および/またはCD3ゼータの組み合わせが使用される。
【0096】
細胞傷害性受容体複合体コンストラクト
上記に沿って、種々の細胞傷害性受容体複合体(細胞傷害性受容体とも呼ばれる)が本明細書に提供される。NK細胞におけるこれらの複合体の発現は、特定の標的細胞、例えば、癌性細胞、特に癌性肝細胞の標的化および破壊を可能にする。このような細胞傷害性受容体複合体の非限定的な例が、以下でより詳細に検討される。
【0097】
いくつかの実施形態では、NKG2D/4-1BB/CD3z細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドが提供される(
図1A、NK45-1を参照されたい)。このような受容体複合体は、NKG2Dの天然リガンドに結合するNKG2D断片を含む細胞外ドメインを含む。コンストラクトは、IgG4ヒンジおよびCD8α膜貫通ドメイン、4-1BBサブドメインおよびCD3ゼータITAMサブドメイン(シグナル伝達ドメインとして協調して作用する)、ならびにIL-15ドメイン(共刺激ドメインとして作用する)をさらに含む。いくつかの実施形態では、この細胞傷害性受容体複合体は、配列番号1の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。概略的に示されるように、コンストラクトはIL-15を含み、いくつかの実施形態では、このコンストラクトを発現するNK細胞を標的腫瘍細胞に対して特に有効にする。IL-15は、いくつかの実施形態に従って、別個のコンストラクト上にコードされ得ることが理解されなければならない。一部の実施形態では、細胞傷害性受容体複合体の配列は、配列番号1から変化し得るが、実施形態に応じて、配列番号1と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の相同性を維持する。さらに、上述されるように、異なる細胞外ドメイン、例えば、配列番号23または25のドメインはまた、非限定的な例として使用することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、NKG2D/CD28/CD3z細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドが提供される(
図1B、NK45-2を参照されたい)。このような受容体複合体は、NKG2Dの天然リガンドに結合するNKG2D断片を含む細胞外ドメインを含む。コンストラクトは、CD8αヒンジおよびCD28膜貫通ドメイン、CD28シグナル伝達サブドメインおよびCD3ゼータITAMサブドメイン(シグナル伝達ドメインとして協調して作用する)、ならびにIL-15ドメイン(共刺激ドメインとして作用する)をさらに含む。いくつかの実施形態では、この細胞傷害性受容体複合体は、配列番号3の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号4のアミノ酸配列を含む。概略的に示されるように、コンストラクトはIL-15を含み、いくつかの実施形態では、このコンストラクトを発現するNK細胞を標的腫瘍細胞に対して特に有効にする。IL-15は、いくつかの実施形態に従って、別個のコンストラクト上にコードされ得ることが理解されなければならない。一部の実施形態では、細胞傷害性受容体複合体の配列は、配列番号3から変化し得るが、実施形態に応じて、配列番号3と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の相同性を維持する。さらに、上述されるように、異なる細胞外ドメイン、例えば、配列番号23または25のドメインはまた、非限定的な例として使用することができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、NKG2D(SH)/CD28/CD3z細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドが提供される(
図1C、NK45-3を参照されたい)。このような受容体複合体は、NKG2Dの天然リガンドに結合するNKG2D断片を含む細胞外ドメインを含む。コンストラクトは、IgG4短鎖ヒンジおよびCD28膜貫通ドメイン、CD28シグナル伝達サブドメインおよびCD3ゼータITAMサブドメイン(シグナル伝達ドメインとして協調して作用する)、ならびにIL-15ドメイン(共刺激ドメインとして作用する)をさらに含む。いくつかの実施形態では、この細胞傷害性受容体複合体は、配列番号5の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む。概略的に示されるように、コンストラクトはIL-15を含み、いくつかの実施形態では、このコンストラクトを発現するNK細胞を標的腫瘍細胞に対して特に有効にする。IL-15は、いくつかの実施形態に従って、別個のコンストラクト上にコードされ得ることが理解されなければならない。一部の実施形態では、細胞傷害性受容体複合体の配列は、配列番号5から変化し得るが、実施形態に応じて、配列番号5と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の相同性を維持する。さらに、上述されるように、異なる細胞外ドメイン、例えば、配列番号23または25のドメインはまた、非限定的な例として使用することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、NKG2D/OX40/CD3z細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドが提供される(
図1D、NK45-4を参照されたい)。このような受容体複合体は、NKG2Dの天然リガンドに結合するNKG2D断片を含む細胞外ドメインを含む。コンストラクトは、CD8αヒンジおよびCD8α膜貫通ドメイン、OX40シグナル伝達サブドメインおよびCD3ゼータITAMサブドメイン(シグナル伝達ドメインとして協調して作用する)、ならびにIL-15ドメイン(共刺激ドメインとして作用する)をさらに含む。いくつかの実施形態では、この細胞傷害性受容体複合体は、配列番号7の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。概略的に示されるように、コンストラクトはIL-15を含み、いくつかの実施形態では、このコンストラクトを発現するNK細胞を標的腫瘍細胞に対して特に有効にする。IL-15は、いくつかの実施形態に従って、別個のコンストラクト上にコードされ得ることが理解されなければならない。一部の実施形態では、細胞傷害性受容体複合体の配列は、配列番号7から変化し得るが、実施形態に応じて、配列番号7と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の相同性を維持する。さらに、上述されるように、異なる細胞外ドメイン、例えば、配列番号23または25のドメインはまた、非限定的な例として使用することができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、NKG2D(SH)/OX40/CD3z細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドが提供される(
図1E、NK45-5を参照されたい)。このような受容体複合体は、NKG2Dの天然リガンドに結合するNKG2D断片を含む細胞外ドメインを含む。コンストラクトは、IgG4短鎖ヒンジおよびCD8α膜貫通ドメイン、OX40シグナル伝達サブドメインおよびCD3ゼータITAMサブドメイン(シグナル伝達ドメインとして協調して作用する)、ならびにIL-15ドメイン(共刺激ドメインとして作用する)をさらに含む。いくつかの実施形態では、この細胞傷害性受容体複合体は、配列番号9の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。概略的に示されるように、コンストラクトはIL-15を含み、いくつかの実施形態では、このコンストラクトを発現するNK細胞を標的腫瘍細胞に対して特に有効にする。IL-15は、いくつかの実施形態に従って、別個のコンストラクト上にコードされ得ることが理解されなければならない。一部の実施形態では、細胞傷害性受容体複合体の配列は、配列番号9から変化し得るが、実施形態に応じて、配列番号9と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の相同性を維持する。さらに、上述されるように、異なる細胞外ドメイン、例えば、配列番号23または25のドメインはまた、非限定的な例として使用することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、NKG2D/CD3TM/CD28/CD3z細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドが提供される(
図1F、NK45-6を参照されたい)。このような受容体複合体は、NKG2Dの天然リガンドに結合するNKG2D断片を含む細胞外ドメインを含む。コンストラクトは、CD8αヒンジおよびCD3膜貫通ドメイン、CD28シグナル伝達サブドメインおよびCD3ゼータITAMサブドメイン(シグナル伝達ドメインとして協調して作用する)、ならびにIL-15ドメイン(共刺激ドメインとして作用する)をさらに含む。いくつかの実施形態では、この細胞傷害性受容体複合体は、配列番号11の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号12のアミノ酸配列を含む。概略的に示されるように、コンストラクトはIL-15を含み、いくつかの実施形態では、このコンストラクトを発現するNK細胞を標的腫瘍細胞に対して特に有効にする。IL-15は、いくつかの実施形態に従って、別個のコンストラクト上にコードされ得ることが理解されなければならない。一部の実施形態では、細胞傷害性受容体複合体の配列は、配列番号11から変化し得るが、実施形態に応じて、配列番号11と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の相同性を維持する。さらに、上述されるように、異なる細胞外ドメイン、例えば、配列番号23または25のドメインはまた、非限定的な例として使用することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、NKG2D/CD28/4-1BB/CD3z細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドが提供される(
図1G、NK45-7を参照されたい)。このような受容体複合体は、NKG2Dの天然リガンドに結合するNKG2D断片を含む細胞外ドメインを含む。コンストラクトは、CD8αヒンジおよびCD28膜貫通ドメイン、CD28シグナル伝達サブドメイン、4-1BBシグナル伝達サブドメインおよびCD3ゼータITAMサブドメイン(シグナル伝達ドメインとして協調して作用する)、ならびにIL-15ドメイン(共刺激ドメインとして作用する)をさらに含む。いくつかの実施形態では、この細胞傷害性受容体複合体は、配列番号13の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号14のアミノ酸配列を含む。概略的に示されるように、コンストラクトはIL-15を含み、いくつかの実施形態では、このコンストラクトを発現するNK細胞を標的腫瘍細胞に対して特に有効にする。IL-15は、いくつかの実施形態に従って、別個のコンストラクト上にコードされ得ることが理解されなければならない。一部の実施形態では、細胞傷害性受容体複合体の配列は、配列番号13から変化し得るが、実施形態に応じて、配列番号13と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の相同性を維持する。さらに、上述されるように、異なる細胞外ドメイン、例えば、配列番号23または25のドメインはまた、非限定的な例として使用することができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、NKG2D/CD8TM/4-1BB/CD3z細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドが提供される(
図2A、NK26-8を参照されたい)。このような受容体複合体は、NKG2Dの天然リガンドに結合するNKG2D断片を含む細胞外ドメインを含む。コンストラクトは、CD8αヒンジおよびCD8α膜貫通ドメイン、4-1BBシグナル伝達サブドメインおよびCD3ゼータITAMサブドメイン(シグナル伝達ドメインとして協調して作用する)、ならびにIL-15ドメイン(共刺激ドメインとして作用する)をさらに含む。いくつかの実施形態では、この細胞傷害性受容体複合体は、配列番号15の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。概略的に示されるように、コンストラクトはIL-15を含み、いくつかの実施形態では、このコンストラクトを発現するNK細胞を標的腫瘍細胞に対して特に有効にする。IL-15は、いくつかの実施形態に従って、別個のコンストラクト上にコードされ得ることが理解されなければならない。一部の実施形態では、細胞傷害性受容体複合体の配列は、配列番号15から変化し得るが、実施形態に応じて、配列番号15と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の相同性を維持する。さらに、上述されるように、異なる細胞外ドメイン、例えば、配列番号23または25のドメインはまた、非限定的な例として使用することができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、NKG2D/CD3TM/4-1BB/CD3z(neg)細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドが提供される(
図2B、NK39-5を参照されたい)。このような受容体複合体は、NKG2Dの天然リガンドに結合するNKG2D断片を含む細胞外ドメインを含む。コンストラクトは、CD8αヒンジおよびCD3膜貫通ドメイン、4-1BBシグナル伝達サブドメインおよび非ITAM CD3ゼータサブドメイン(シグナル伝達ドメインとして協調して作用する)、ならびにIL-15ドメイン(共刺激ドメインとして作用する)をさらに含む。いくつかの実施形態では、この細胞傷害性受容体複合体は、配列番号17の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号18のアミノ酸配列を含む。概略的に示されるように、コンストラクトはIL-15を含み、いくつかの実施形態では、このコンストラクトを発現するNK細胞を標的腫瘍細胞に対して特に有効にする。IL-15は、いくつかの実施形態に従って、別個のコンストラクト上にコードされ得ることが理解されなければならない。一部の実施形態では、細胞傷害性受容体複合体の配列は、配列番号18から変化し得るが、実施形態に応じて、配列番号18と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の相同性を維持する。さらに、上述されるように、異なる細胞外ドメイン、例えば、配列番号23または25のドメインはまた、非限定的な例として使用することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、NKG2D/CD3TM/4-1BB/NKp80細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドが提供される(
図2C、NK39-6を参照されたい)。このような受容体複合体は、NKG2Dの天然リガンドに結合するNKG2D断片を含む細胞外ドメインを含む。コンストラクトは、CD8αヒンジおよびCD3膜貫通ドメイン、4-1BBシグナル伝達サブドメインおよびNKp80シグナル伝達サブドメイン(シグナル伝達ドメインとして協調して作用する)、ならびにIL-15ドメイン(共刺激ドメインとして作用する)をさらに含む。いくつかの実施形態では、この細胞傷害性受容体複合体は、配列番号19の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号20のアミノ酸配列を含む。概略的に示されるように、コンストラクトはIL-15を含み、いくつかの実施形態では、このコンストラクトを発現するNK細胞を標的腫瘍細胞に対して特に有効にする。IL-15は、いくつかの実施形態に従って、別個のコンストラクト上にコードされ得ることが理解されなければならない。一部の実施形態では、細胞傷害性受容体複合体の配列は、配列番号19から変化し得るが、実施形態に応じて、配列番号19と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の相同性を維持する。さらに、上述されるように、異なる細胞外ドメイン、例えば、配列番号23または25のドメインはまた、非限定的な例として使用することができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、NKG2D/CD3TM/CD16IC/4-1BB細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドが提供される(
図2D、NK39-10を参照されたい)。このような受容体複合体は、NKG2Dの天然リガンドに結合するNKG2D断片を含む細胞外ドメインを含む。コンストラクトは、さらに、CD8αヒンジおよびCD3膜貫通ドメイン、CD16細胞内シグナル伝達サブドメインおよび4-1BBシグナル伝達サブドメインおよびNKp80シグナル伝達サブドメイン(シグナル伝達ドメインとして協調して作用する)、ならびにIL-15ドメイン(共刺激ドメインとして作用する)をさらに含む。いくつかの実施形態では、この細胞傷害性受容体複合体は、配列番号21の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号22のアミノ酸配列を含む。概略的に示されるように、コンストラクトはIL-15を含み、いくつかの実施形態では、このコンストラクトを発現するNK細胞を標的腫瘍細胞に対して特に有効にする。IL-15は、いくつかの実施形態に従って、別個のコンストラクトにコードされ得ることが理解されなければならない。一部の実施形態では、細胞傷害性受容体複合体の配列は、配列番号21から変化し得るが、実施形態に応じて、配列番号21と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の相同性を維持する。さらに、上記で示されるように、異なる細胞外ドメイン、例えば、配列番号23または25のドメインはまた、非限定的な例として使用することができる。
【0108】
実施形態に応じて、本明細書に開示されるポリヌクレオチドのいずれかはまた、標的細胞に対して細胞傷害性効果を付与する能力を維持しながら、細胞傷害性受容体複合体の1つまたは複数の構成サブユニットの切断および/または変異体をコードしてもよい。さらに、本明細書に開示されるポリヌクレオチドのいずれかはまた、細胞傷害性受容体複合体の種々の構成ドメインの全部または一部のためのコドン最適化ヌクレオチド配列を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「断片」および「切断された」という用語は、それらの通常の意味が与えられ、タンパク質のN末端およびC末端の欠失変異体も含むものとする。
【0109】
本明細書中に記載される細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドをベクターに挿入して、NK細胞における発現を達成することができる。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、細胞傷害性受容体複合体の発現のための少なくとも1つの調節エレメント(例えば、プロモーター)に操作可能に連結される。具体的な実施形態では、転写調節エレメント、例えば、内部リボソーム進入部位(IRES)またはエンハンサーエレメントを用いて、細胞傷害性受容体複合体の転写を指向する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書で検討されるように、1つまたは複数の細胞質プロテアーゼ切断部位を含む。実施形態に応じて、細胞傷害性受容体複合体の種々の構成部分は、単一または複数のベクターでNK細胞にデリバリーすることができる。使用されるベクターの数にかかわらず、任意のポリヌクレオチドは、タグ配列を含んでもよく、コンストラクトを発現するNK細胞の存在の同定を可能にする。例えば、いくつかの実施形態では、FLAGタグ(DYKDDDDK、配列番号42)が使用される。ポリヒスチジンタグ(His-tag)(HHHHHH、配列番号43)、HA-タグまたはmyc-タグ(EQKLISEEDL;配列番号44)などの他のタグ配列も利用可能である。あるいは、緑色蛍光タンパク質、または他の蛍光部分が使用される。また、タグタイプの組み合わせを使用して、細胞傷害性受容体複合体のサブコンポーネントを個別に認識することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドは、例えば、エレクトロポレーションによってNK細胞に導入され得るmRNAである。別の実施形態では、ベクターは、ウイルス、好ましくはレトロウイルスであり、形質導入によってNK細胞に導入することができる。いくつかの実施形態では、ベクターは、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)である。さらなる実施形態では、他のベクター、例えば、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどを使用することができる。いくつかの実施形態では、非HIV由来レトロウイルスが使用される。あるいは、プラスミド、ファージミド、コスミド、ウイルスベクター、ファージ、人工染色体を使用することができる。
【0111】
一実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、NK細胞において一時的に発現される。別の実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、NK細胞において安定に発現される。さらなる実施形態では、NK細胞は自家細胞である。さらに別の実施形態では、NK細胞はドナー由来(同種)細胞である。
【0112】
投与および用量
さらに、本明細書では、癌、特に肝細胞癌腫を有する対象を治療するための方法が提供され、本明細書に開示されるように細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作されたNK細胞を含む組成物を対象に投与することを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される遺伝的に操作された細胞(複数可)による対象の治療は、以下の、例えば、(i)疾患もしくはそれに関連する症状の重症度の低減または軽減;(ii)疾患に関連する症状の持続期間の短縮;(iii)疾患またはそれに関連する症状の進行に対する防御;(iv)疾患またはそれに関連する症状の退行;(v)疾患に関連する症状の発症または発生に対する防御;(vi)疾患に関連する症状の再発に対する防御;(vii)対象の入院の減少;(viii)入院期間の短縮;(ix)疾患を有する対象の生存の増加;(x)疾患に関連する症状数の減少;(xi)別の療法の予防または治療効果(複数可)の増強、改善、補足、補完、または拡大を含む効果のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれを超えて達成する。
【0113】
投与は、種々の経路によって、例えば、限定されないが、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、肝臓内、腹腔内、および/または患部組織への局所デリバリーによることができる。いくつかの実施形態では、投与は、例えば、肝臓内動脈への注射を介して肝臓に局所的に達成される。さらなる実施形態では、投与は、他の臓器に対する治療を達成するために局所的である。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、卵巣癌を治療するために投与される。一部の実施形態では、このような治療は、腹腔内投与を介して行われる。NK細胞の用量は、所与の対象について、その体重、病型および状態、ならびに処置の所望の攻撃性に基づいて容易に決定することができるが、実施形態に応じて、約105細胞/kg~約1012細胞/kg(例えば、105~107、107~1010、1010~1012、およびその中の重複範囲)の範囲であり得る。一実施形態では、用量漸増レジメンが使用される。いくつかの実施形態では、ある範囲のNK細胞は、例えば、約1×106細胞/kg~約1×108細胞/kgの間で投与される。用量はまた、少なくとも部分的に、所望のエフェクター:標的比によって決定することができる。いくつかの実施形態では、用量は、約100:1、約50:1、約25:1、約10:1、約5:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:5、約1:10、約1:25、約1:50、約1:100、またはそれらの間の他の比(終点を含む)のエフェクター:標的比を得ることができる。実施形態に応じて、種々の癌のタイプを治療することができる。いくつかの実施形態では、肝細胞癌腫が治療される。本明細書で提供されるさらなる実施形態は、以下の非限定的な例の癌の治療または予防を含み、限定されないが、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌腫、カポジ肉腫、リンパ腫、消化器癌、虫垂癌、中枢神経系癌、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍(例えば、限定されないが、星状細胞腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、神経膠芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣芽腫、上衣腫、髄芽腫、髄様上皮腫)、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、子宮頸癌、結腸癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性障害、管癌腫、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞白血病、腎細胞癌、白血病、口腔癌、鼻咽頭癌、肝臓癌、肝臓優勢の転移性結腸直腸癌、胆管癌、肺癌(例えば、限定されないが、非小細胞肺癌(NSCLC)および小細胞肺癌)、膵臓癌、腸癌、リンパ腫、黒色腫、眼癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、下垂体癌、子宮癌、および膣癌が挙げられる。
【0114】
一部の実施形態では、本明細書ではまた、配列番号1~44のそれぞれの核酸またはアミノ酸配列と比較して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%(およびその中の範囲)の相同性を有するか、またはそれぞれの配列番号1~44と比較して、限定されないが、(i)増殖の増大、(ii)活性化の増大、(iii)核酸配列およびアミノ酸配列によってコードされる受容体を有するNK細胞が結合するリガンドを提示する細胞に対する細胞傷害活性の増大、(iv)腫瘍または感染部位へのホーミングの増大、(v)標的外の細胞傷害性効果の低減、(vi)免疫刺激性サイトカインおよびケモカイン(例えば、限定されないが、IFNg、TNFa、IL-22、CCL3、CCL4、およびCCL5)の分泌の増大、(vii)さらなる先天性および適応性免疫応答を刺激する能力の増大、ならびに(viii)それらの組み合わせを含む機能のうちの1つまたは複数も示す核酸配列およびアミノ酸配列が提供される。
【0115】
さらに、いくつかの実施形態では、核酸コードの縮重を説明する一方で、本明細書に開示される核酸のいずれかに対応するアミノ酸配列が提供される。さらに、本明細書に明示的に開示されるものとは異なるが、機能的類似性または同等性を有する配列(核酸またはアミノ酸のいずれか)はまた、本開示の範囲内であることが企図される。上記には、突然変異体、切断、置換、または他の修飾のタイプが含まれる。
【0116】
いくつかの実施形態では、開示される細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドは、mRNAである。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドはDNAである。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、細胞傷害性受容体複合体の発現のための少なくとも1つの調節エレメントに操作可能に連結される。
【0117】
さらに、いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供されるポリヌクレオチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを含むベクターが提供され、ポリヌクレオチドが、細胞傷害性受容体複合体の発現のための少なくとも1つの調節エレメントに操作可能に連結されてもよい。いくつかの実施形態では、ベクターはレトロウイルスである。
【0118】
さらに、本明細書では、本明細書に開示されるポリヌクレオチド、ベクター、または細胞傷害性受容体複合体を含む操作されたナチュラルキラー細胞が提供される。いくつかの実施形態では、これらのNK細胞は、肝細胞癌腫などの疾患の予防の治療のために、肝臓などの腫瘍部位への局所デリバリーに適している。
【0119】
さらに、肝腫瘍を治療するための方法が提供され、本方法は、細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作されたナチュラルキラー(NK)細胞の集団を含む組成物を肝腫瘍を有する患者に投与することを含み、細胞傷害性受容体複合体は、ナチュラルキラーグループ2D(NKG2D)受容体のリガンドと結合する細胞外ドメインを含み、NKG2Dのリガンドは、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、ULBP6、およびそれらの組み合わせから選択され、細胞外ドメインは、配列番号23のポリヌクレオチドの少なくとも一部によってコードされ、細胞傷害性シグナル伝達複合体は、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含み、投与は、患者の肝臓内動脈への注射を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約107~約1010個のNK細胞を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、患者にIL-2を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体のシグナル伝達ドメインは、CD3ゼータドメインを含み、細胞外ドメインは、配列番号24のポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、CD3ゼータドメインは、少なくとも1つの免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)モチーフを含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体のシグナル伝達ドメインは、OX40ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体のシグナル伝達ドメインは、4-1BBドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体のシグナル伝達ドメインは、CD28ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体のシグナル伝達ドメインは、NKp80ドメインをさらに含む。
【0120】
さらに、肝細胞癌腫を治療するための方法が提供され、本方法は、細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作されたナチュラルキラー(NK)細胞の集団を含む組成物を肝細胞癌腫を有する患者に投与することを含み、細胞傷害性受容体複合体は、膜貫通ドメインに連結された細胞外ドメインを含み、膜貫通ドメインはシグナル伝達ドメインにさらに連結され、細胞外ドメインは、ナチュラルキラーグループ2D(NKG2D)受容体の断片を含み、NKG2D受容体の断片は、配列番号24のポリヌクレオチドによってコードされるNKG2D受容体断片と少なくとも95%の配列同一性を有し、投与は、患者の肝臓内動脈への注射を含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号1の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号2のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号3の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号4のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号5の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号6のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号7の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号8のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号9の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号10のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号11の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号12のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号13の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号14のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号15の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号16のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号17の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号18のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号19の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号20のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号21の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、配列番号22のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、患者の肝臓内動脈への注射は経皮的注射である。いくつかの実施形態では、NK細胞は、患者に対して自家である。いくつかの実施形態では、本方法は、IL-2を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、追加の抗癌剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、追加の抗癌剤は、チロシンキナーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態では、チロシンキナーゼ阻害剤は、ソラフェニブ、ニロチニブ、イマンチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、アダボセルチブ、ラパチニブ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0121】
さらに、原発性肝腫瘍を治療するための方法が提供され、本方法は、細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作されたナチュラルキラー(NK)細胞の集団を含む組成物を肝細胞癌腫を有する患者に投与することであって、細胞傷害性受容体複合体が、膜貫通ドメインに連結された細胞外ドメインを含み、膜貫通ドメインがシグナル伝達ドメインの断片にさらに連結し、細胞外ドメインが、ナチュラルキラーグループ2D(NKG2D)受容体の断片を含み、細胞傷害性受容体複合体が、配列番号8と配列中で少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、投与すること;NK細胞の集団が投与される前、それと同時、またはその後に少なくとも1つの追加の抗癌剤を投与することであって、追加の抗癌剤が、ソラフェニブ、ニロチニブ、イマンチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、アダボセルチブ、ラパチニブ、およびそれらの組み合わせである、投与することを含む。
【0122】
さらに、原発性肝腫瘍を治療するための併用療法のシステムであって、細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作されたナチュラルキラー(NK)細胞の集団であって、細胞傷害性受容体複合体が、膜貫通ドメインに連結された細胞外ドメインを含み、膜貫通ドメインがシグナル伝達ドメインにさらに連結し、細胞外ドメインが、ナチュラルキラーグループ2D(NKG2D)受容体の断片を含み、細胞傷害性受容体複合体が、配列番号8と配列中で少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、NK細胞の集団と;少なくとも1つの追加の抗癌剤であって、追加の抗癌剤が、ソラフェニブ、ニロチニブ、イマンチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、アダボセルチブ、ラパチニブ、およびそれらの組み合わせであり、追加の抗癌剤が、NK細胞の集団が投与される前、それと同時、またはその後に、原発性肝腫瘍を有する対象に投与するように構成される、追加の抗癌剤とを含む組成物を含む、システムが提供される。
【0123】
さらに、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つに従う組成物または治療方法が提供される。
【0124】
さらに、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つに従う、肝臓または他の臓器の腫瘍の治療における組成物またはその使用が提供される。
【0125】
さらに、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つに従う組成物または治療方法が提供され、操作されたNK細胞が、天然のNK細胞と比較して、細胞傷害性において少なくとも3倍の増加を示す。
【0126】
さらに、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つに従い、肝臓または他の臓器の腫瘍の治療における組成物またはその使用が提供され、操作されたNK細胞は、天然のNK細胞と比較して、細胞傷害性の少なくとも3倍の増加を示す。
【0127】
さらに、腫瘍を治療するための方法が提供され、本方法は、血液供給血管を介してその血液供給の少なくとも一部を受ける腫瘍を有する患者の血液供給血管にアクセスすること、ならびに細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作されたナチュラルキラー(NK)細胞の集団を投与することであって、細胞傷害性受容体複合体は、C型レクチン様受容体の機能的断片と、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含む細胞傷害性シグナル伝達複合体とを含み、C型レクチン様受容体がナチュラルキラーグループ2D(NKG2D)受容体を含み、C型レクチン様受容体の機能的断片が配列番号24を含み、操作されたNK細胞が操作されていないNK細胞と比較して、腫瘍細胞に対する有効性において少なくとも3倍の増加を示す、投与すること;ならびにNK細胞の集団が投与される前、それと同時、またはその後に、少なくとも1つの追加の抗癌剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、追加の抗癌剤はチロシンキナーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態では、追加の抗癌剤は、ソラフェニブ、ニロチニブ、イマンチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、アダボセルチブ、ラパチニブ、およびそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体のシグナル伝達ドメインは、OX40ドメインを含む。
【実施例】
【0128】
以下に記載される方法および材料は、本明細書に開示される実施形態に従って使用することができる方法および材料の非限定的な例である。
【0129】
肝細胞癌腫
背景:
ナチュラルキラー(NK)細胞は、細胞性免疫療法のためのT細胞に対して、代替またはいくつかの実施形態では補充を提供し、これは、それらがHLA制限されておらず、したがって、同種の既製用途に適しているためである。拡大されたNK細胞は、キメラ受容体を発現するように操作され、造血器腫瘍と固形腫瘍の両方に対するそれらの細胞傷害性をさらに改善することができる。健康なヒトでは、肝臓内リンパ球の高い割合がNK細胞であり、肝細胞癌腫(HCC)の場合、CD56+ NK細胞の浸潤は細胞アポトーシスおよび患者生存と正に相関する。ナチュラルキラーグループ2D(NKG2D)受容体の複数のリガンドは、HCC組織で高度に発現するが、健常組織では低レベルであり、NKG2DはHCCを標的とするNK細胞操作の魅力的な候補である。NKX101と総称される、本明細書に開示されるいくつかの態様による操作されたNK細胞は、NKG2Dキメラ受容体を発現するように操作され、HCC細胞に対するそれらの細胞傷害性を改善し、炎症誘発性サイトカイン応答を増強し、および腫瘍量を制御することができる。結腸直腸癌に従った原発性肝転移に関連した追加実験が行われた。
【0130】
材料および方法:
末梢血単核細胞由来のNK細胞を、照射されたK562-mbIL15-41BBL刺激細胞との共培養を用いて拡大させた。このような細胞の非限定的な例は、米国特許第7,435,596号または同第8,026,097号に提供され、各々は、参照により本明細書にそれらの全体が組み込まれる。いくつかの実施形態では、PCT出願番号第PCT/SG2018/050138号(参照により本明細書にその全体が組み込まれる)に開示されるものなどのさらなる修飾が使用される。NKX101細胞は、NKG2D、細胞内OX40共刺激ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、および膜結合IL-15をコードする2シストロン性ウイルスを用いた形質導入によって生成され、これは、細胞生存および増殖の延長を支持する。本明細書で検討されるように、NKX101は、この非限定的な例において利用される特異的コンストラクトだけならず、本明細書に開示される他の細胞傷害性受容体コンストラクトも指す。1:1の比率でHCC細胞株と24時間共培養することに応答した、NKX101 NK細胞の炎症誘発性サイトカイン放出をLuminexによって分析した。4、24および48時間のエンドポイントにおけるNKX101 NK細胞のインビトロ細胞傷害性は、ルシフェラーゼを発現するように操作されたHCC細胞株のパネルを用いて測定された。NKX101 NK細胞のインビボ活性は、4×106個のルシフェラーゼを発現するSNU449 HCC細胞の腹腔内(IP)注射の1週間後に、3×106個のNKX101 NK細胞または非修飾NK細胞(NT NK)をIP投与されたNSGマウス異種移植腫瘍モデルを用いて評価され、腫瘍増殖は、IVIS生物発光イメージングを用いて測定された。HCCのために承認された薬剤であるキナーゼ阻害剤ソラフェニブ(ここでは追加の抗癌剤の非限定的な例として使用される)のサブEC50濃度との組み合わせが、48時間のインビトロでのNKX101 NK細胞の低いE:T比で相加的な細胞傷害性効果について試験された。NKG2Dリガンドの発現をフローサイトメトリーにより評価し、HCC細胞株のパネルにわたってNKX101 NK細胞細胞傷害性と直線的な相関について分析した。
【0131】
結果:
簡単に述べると、結果は、NKX101 NK細胞が、インビトロでHCC細胞株のパネルに対してNT NK細胞(NT NK)と比較して劇的に改善された細胞傷害性を有することを示す。NKX101 NK細胞のHCC細胞株との共培養は、炎症誘発性サイトカイン放出を増強することが示された。インビボでのNSGマウス異種移植HCCモデルにおいて、NKX101 NK細胞は、NT NKによる安定した制御とは対照的に、4/5マウスにおいて完全な腫瘍クリアランスを提供した。キナーゼ阻害剤ソラフェニブとの組み合わせが、インビトロでNKX101 NK細胞に相加効果を与えた。NKG2Dリガンドの高発現はフローサイトメトリーによって観察され、個々のリガンドはNKX101 NK細胞の細胞傷害性と有意な相関を示さなかったが、いくつかの実施形態では、NKG2Dリガンド発現を同定し、その発現をNKX101 NK細胞からの細胞傷害性効果に対する感受性と相関させることができる薬剤が開発される。
【0132】
より詳細には、本明細書に開示される種々の操作されたNK細胞の能力を評価するために、いくつかの実験が、インビボ動物モデルにおいて、肝細胞癌腫細胞株に対するインビトロ設定での細胞の有効性を評価するために行われた。さらなる実験は、TKI阻害剤ソラフェニブをこのような薬剤の非限定的な例として、別の抗癌剤と組み合わせて使用した場合に、本明細書に開示される操作されたNK細胞の有効性を評価することに関する。
図3A~3Bは、本明細書に開示される実施形態による天然のNK細胞または操作されたNK細胞にHCC細胞を曝露した後の細胞傷害性の種々のインジケーターの発現に関するデータを示す。以下に検討される非限定的な実施例において、NKX101の名称は、NKG2D受容体のリガンドと結合することができる切断型NKG2D細胞外ドメインを発現する操作されたNK細胞を指す。いくつかの実施形態では、切断型NKG2Dドメインは、CD8アルファヒンジおよびCD8アルファTMドメインに連結される。いくつかの実施形態では、切断型NKG2Dドメインは、OX40共刺激ドメインおよびCD3ゼータシグナル伝達ドメインに連結される。いくつかの実施形態では、コンストラクトは、膜結合型IL15をさらに含む。いくつかの実施形態では、NKX101は、配列番号7のヌクレオチド配列、または配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する。しかしながら、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される他のNKG2Dコンストラクト(すべてのNKG2Dコンストラクトは、NKX101 NK細胞と総称される)は、同様のやり方で動作し、以下に検討するものと同様の結果をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように、配列番号7または8と約85%、90%、95%またはそれを超える配列相同性を有するヌクレオチドまたはアミノ酸配列(または本明細書に開示される任意の他のコンストラクト)は、HCC細胞に対して細胞傷害性である。
【0133】
図3に戻ると、パネル3A~3Cは、1:1のエフェクター:標的比で、非形質導入NK細胞(NT NK)またはNKX101のいずれかとともに、示されたHCC細胞株の共培養の上清からの種々のサイトカインの濃度を示す。示されるように、HCC細胞とNKX101の共培養は、NKX101 NK細胞からの細胞傷害性シグナル伝達を示す種々のサイトカインのより大きな発現を誘導する。例えば、Hep3b細胞とNKX101 NK細胞の共培養では、NT NK細胞と比較して、上清中のIFNg濃度がはるかに高い。これは、NKX101 NK細胞が免疫刺激性サイトカインおよびケモカインの分泌を増強したことを示す。いくつかの実施形態では、ここで測定されるもの以外のサイトカインおよびケモカインは、より高いレベルで分泌される(例えば、IL-22、CCL3、CCL4、および/またはCCL5)。
【0134】
図4A~4Jは、示されたエフェクター:標的比で、9つの異なるHCC細胞株に対して、本明細書に開示される操作されたNK細胞(NKX101 NK細胞)によって誘導される細胞傷害性の程度に関するデータを示す。
図4A~4Iは、各HCC株のデータを細胞傷害性%として示す。例として、
図4Aは、2:1のエフェクター:標的比で、NKX101 NK細胞が、共培養においてほぼ100%のHep3b細胞において細胞傷害性を誘導することを示す。E:T比が1:1に低下すると、効果は約90%の細胞傷害性にまで低下し、1:2のE:Tでは、NKX101は依然として標的細胞の約75%を死滅させることができる。E:T比の各々において、NKX101 NK細胞はNT NK細胞よりもはるかに多く死滅させ、共培養中のHep3b細胞の約20%において細胞傷害性を誘導する。他のHCC細胞株の各々は、ほぼすべてのE:T比でNT NK細胞と比較してNKX101細胞に対してより高い感受性を示した。1:2のE:Tで、HuH-7細胞は、NKX101 NK細胞およびNT NK細胞とほぼ同等に反応する。しかしながら、いくつかの実施形態では、アジュバント剤を使用して、NKX101の効果を増強することができる(以下に記載される)。
図4Jは、NKX101に対するHCC細胞の抵抗性(感受性の欠如)の要約を示す。これらのデータは、試験した低E:Tでは、HCC細胞の大部分が、ある程度のNKX101誘導細胞傷害性を依然として受けていたことを示した。
【0135】
図4K~4Sは、9つの異なる肝細胞癌腫細胞株に対する2人の追加ドナー由来の操作されたNK細胞の細胞傷害性の程度に関連する追加データを示す。本明細書に開示されるように、NKG2Dキメラ受容体(標識NKX101+ドナー数)を発現する操作されたNK細胞、および対応するドナー由来の非形質導入NK細胞の両方についてのデータが示される。
図4Kに示されるように、NKX101を発現するように操作されたNK細胞は、エフェクター:標的比が1:2であっても、Hep3b細胞に対して実質的な細胞傷害性効果を示した。この比率では、両セットの細胞は約70~75%の細胞傷害性を達成した。エフェクター細胞対標的細胞の比率が増加すると、対応する細胞傷害性の増加が観察され、約80%~90%が1:1の比率で、ほぼ100%が2:1の比率で細胞傷害性を示した。各エフェクター:標的比における細胞傷害性パーセントは、他の8つの肝細胞癌細胞株にわたって変動したが、データに対する全体的なパターンは、エフェクター:標的比が増加するにつれて、操作されたNK細胞が進行性により高い細胞傷害性を示すことを示す。さらに、これらのデータは、いくつかの実施形態によれば、標的細胞株に対する100%細胞傷害性が、本明細書に開示されるように、操作されたNK細胞を用いて達成され得ることを示す。
図4T~4BBにおいて異なる方法で示されるように、操作されたNK細胞(および同じドナー由来の形質導入されたNK細胞上の対応するもの)の細胞傷害性効果は、検出された対照ルシフェラーゼシグナルのパーセントとして表され、ルシフェラーゼ検出の減少は、示された細胞株に対する細胞傷害性効果の増加に対応する。これらの図におけるデータは、
図4K~4Sに示される2人のドナーの平均値である。これらの要約データは、さらに、本明細書に開示される実施形態による操作されたNK細胞は、種々の癌細胞株に対する細胞傷害性効果の実質的な増加をもたらすことができるという結論を支持する。したがって、いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される操作されたNK細胞は、有効な抗癌療法を提供する。一部の実施形態では、本明細書でより詳細に開示されるように、追加の抗癌剤と組み合わせて操作されたNK細胞を使用することは、標的細胞に相乗的な細胞傷害性インパクトをもたらし、予期せぬことに、腫瘍、特に固形腫瘍、例えば、肝細胞癌腫(または別の肝臓癌)による肝臓の固形腫瘍を、または肝臓の原発転移を有する遠隔腫瘍タイプ(例えば、結腸直腸癌など)でさえも治療する能力をさらに高める。
【0136】
図5は、インビボでの腫瘍モデリング実験のための概略的なタイムラインを示す。マウスは、4×10
6個のHCC細胞(特にホタルルシフェラーゼを発現するSNU449細胞)の注射を受けた。8日後、3×10
6個のNK細胞(NT NK細胞またはNKX101 NK細胞のいずれか)をIP注射によりデリバリーした。その後、7日ごとに生物発光イメージングを行い、腫瘍量を評価した。
図6A~6Fは、インビボでの腫瘍量実験の結果を示す。
図6Aは、PBS対照を受けたマウスの生物発光イメージングを示す。図示されるように、有意な腫瘍量が7日後に存在し、すべての動物においてほぼ一貫した腫瘍増殖が認められた。
図6Dは、経時的な生物発光イメージングシグナルの強度を示す。
図6Bは、非修飾NKを投与された動物についての同じデータを示す。PBSとは対照的に、非修飾NKは、経時的に比較的安定した腫瘍量を保持しているようであり、PBS処置された動物に見られる増加は回避されたが、有意な減少は認められなかった(6Eもまた参照されたい)。
図6Fは、NKX101 NK細胞で処置された動物についての同じデータを示す。天然のNK細胞とは全く対照的に、腫瘍量は、NKX101デリバリー後の早くも14日目に急激に減少した。6Cに示される5匹のマウスのうち4匹では、腫瘍量がゼロに近づいた。これらのデータは、同様に
図6Fに反映される。これらの結果は、NKX101 NK細胞によって誘導される有意な抗腫瘍効果を示す。
【0137】
本明細書で検討されるように、いくつかの実施形態によれば、1つまたは複数の追加の抗癌剤は、本明細書に開示される操作されたNK細胞と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、効果を現す作用の複数のメカニズムは、相乗効果(例えば、腫瘍量、腫瘍増殖速度、腫瘍細胞持続性などの減少)をもたらす。換言すれば、いくつかの実施形態では、追加の抗癌剤とともに操作されたNK細胞を使用すると、予想外に増強された抗癌効果が生じる。非限定的な例として、操作されたNK細胞と組み合わせて使用することができる1つのこのような追加の抗癌剤は、チロシンキナーゼ阻害剤である。ソラフェニブは、Raf-1、B-RafおよびVEGFR-2シグナル伝達経路を阻害する低分子であり、現在、肝細胞癌腫の最先端療法として広く使用されている。
図7Aは、示された肝細胞癌腫細胞株に対するソラフェニブのEC50を算出するための用量-応答曲線に関連するデータを示す。EC50値を
図7Bに示す。種々の肝細胞癌腫細胞株2ソラフェニブの感受性は異なり、Huh-7が最も感受性が高く、50%の細胞傷害性を達成するために7.955μMのソラフェニブ濃度を必要とした。一方、SNU-387細胞は50%の細胞傷害性を達成するために29.45μMのソラフェニブを必要とした。
図7C~7Eは、操作されたNK細胞を用いたソラフェニブの使用に関するデータを示す。示されたHCC細胞についてのデータが示され、それらは、NK細胞(ソラフェニブ対照)なしで処理され、NK細胞のみ、TKIソラフェニブ、NKX101 NK細胞、またはソラフェニブを用いたNKX101 NK細胞のいずれかで処理された。これらのデータは、上記で検討されたNKX101 NK細胞の有意な細胞傷害性効果にもかかわらず、ソラフェニブのようなTK阻害剤などの追加の抗癌剤との投与は、依然として細胞傷害性効果を増加させることができることを示す。示されたように、ソラフェニブを用いたNKX101は、NKX101 NK細胞と比較して、特に低いE:T比においてさえ、より高い細胞傷害性を可能にした。細胞傷害性効果は、NK細胞単独よりも大きく(各グラフで最も低いトレース)、NK細胞+ソラフェニブで見られたものよりも優れていた。いくつかの実施形態では、このような併用療法は、相乗的な抗癌効果および患者に対する改善された転帰を可能にする。
【0138】
図8A~8aは、示されたHCC細胞上の種々のNKG2Dリガンドの発現を示す。
図9は、試験された9つのHCC株の各々について、示されたNKG2Dのリガンドの発現の程度と対応する対照のパーセント(未処理HCC細胞)との間の潜在的な相関に関する。
図10A~10Gは、NKG2Dリガンドがいつ過剰発現されるかを同定するために機能する試薬を開発するための実験に関する。NKG2D受容体をIgGのFc領域と融合させた。この融合の種々のHCC細胞への結合を、フローサイトメトリー(
図10A)によって、およびFc領域に対する抗体によっても(10B)測定した。このアプローチは、同定されるべきNKG2Dリガンドのうちの1つの高発現を有する細胞のタグ付けを可能にする(融合物のNKG2D部分がリガンドに結合し、Fc部分は融合物が結合される細胞を検出するためのタグとして役立つ)。
図10C~Gは、NKG2D-FCの結合/検出と示されたNKG2Dリガンドとの間の相関を示す。
【0139】
データはまた、天然のNK細胞と比較して、本明細書に開示される実施形態による操作されたNK細胞の増強された効力(例えば、細胞傷害性)を実証するために生じさせた。Hep3b細胞およびSNU449細胞(両方とも腫瘍細胞の非限定的な例)を、ルシフェラーゼを発現するように操作した。2人の別々のドナーを使用し、NK細胞を回収した。天然のNK細胞は、遺伝的に修飾されなかったが、NKX101細胞は、本明細書に開示されるCARを発現するようなNK細胞の修飾によって生じさせた。いくつかの実施態様に開示されるように、この実験では、NKX101細胞は、NKG2Dをコードする2シストロン性ウイルス、細胞内OX40共刺激ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、ならびに細胞生存および増殖の延長を支持する膜結合型IL-15での形質導入によって生成された。NK細胞は、本明細書に開示される他のコンストラクトで修飾することができることが理解されるべきである。両セットの細胞(NKX101および非修飾(NT NK)NK細胞)をK562-mbIL15-41BBL刺激細胞で拡大させた。細胞傷害性は、Hep3bまたはSNU449細胞に対する各NK細胞型について、種々のエフェクター:標的比で評価された。EC50値は、NT NK細胞およびNKX101の各々について算出された(EC50値は、Prism 4パラメータの非線形回帰分析を用いて算出された)。
【0140】
図11Aは、Hep3b細胞に対するNT NK細胞およびNKX101のEC50データを示す。これらのデータは、Hep3b標的細胞に対して50%の細胞傷害性を達成するのに必要な少数のNKX101細胞によるこのアッセイから証明されるように、NKX101細胞は、非修飾NK細胞と比較して増強された細胞傷害性を有することを確認する。実際に、このアッセイにおいて、NKX101細胞は、NT NK細胞よりも3.5倍を超える細胞傷害性があった。
図11Bは、NT NK細胞と比較してNKX101の有意に増強された細胞傷害性を示す同様のデータを示す。SNU449細胞に対して作用するNKX101は、4.5倍を超えて強力であった。これらのデータは、いくつかの実施形態に従って本明細書に開示されるように、操作されたNK細胞は、操作されていないNK細胞と比較して増強された細胞傷害性を有することを実証する。実施形態に応じて、操作されたNK細胞は、天然のNK細胞と比較して、約2倍~約20倍、例えば、約2倍、約3倍、約5倍、約8倍、約10倍、約15倍、約20倍、または列挙された範囲のエンドポイントを含むそれらの間の任意の量だけ増強される(例えば、増加した細胞傷害性を示す)。
【0141】
図12A~12Iは、PEコンジュゲートされた抗体(R&D Systems、Minneapolis Minnesota、USA)によって測定した場合、9つの肝細胞癌腫細胞株の各々における種々のNKG2Dリガンドの発現に関連するフローサイトメトリーデータを示す。NKG2Dリガンド発現は、破線の枠で囲まれて示され、対応するアイソタイプ対照は実線の枠で囲まれて示されている。
図13A~13Iは、
図8に示されるデータを生じさせるために使用される抗体と比較して、
図12に示されるデータを生じさせるために使用される抗体間の比較データを示す。データは、平均蛍光強度(dMFI、示された標的についての蛍光シグナルから対応するアイソタイプ対照抗体からのバックグラウンド蛍光を差し引いたものとして算出される)におけるデルタとして示される。強度の変化の絶対値は、どの抗体タイプを使用したかに依存して若干異なったが、9つの肝細胞癌腫株にわたって、どの抗体を使用したかにかかわらず、NKG2Dリガンドの発現の一般的パターンは一貫していた。SNU-182およびHuH-7などの特定の細胞株は、いくつかのNKG2Dリガンドの有意な発現を示したが、He3BおよびHepG2などの他の細胞株は、MICA/MICB以外のNKG2Dリガンドの限定的な発現を示した。すべての細胞株にわって、最大の発現はULBP2/5/6およびMICA/MICBと関連しているようであった。
【0142】
いずれかの特異的NKG2Dリガンドの発現が優性であるかどうかを決定するために、実験を行って、すべてのNKG2Dリガンドを全体として比較し、各個々のNKG2Dリガンドの発現間の相関を同定した。これは、任意のNKG2Dリガンドを肝細胞癌腫細胞に結合することができるNKG2D-Fc融合抗体の結合を評価し、NKG2D-リガンド特異的抗体を9タイプの肝細胞癌腫細胞の各々に結合させることと比較することによって達成された。次に、これらのデータを互いにプロットし、回帰分析を行い、相関および発現を同定した。これらのデータを
図14A~14Fに示し、Y軸上に総NKG2Dリガンドを発現し、X軸上に特異的に示されたNKG2Dリガンドを示す。6つの特異的NKG2Dリガンドの各々を通じて、総NKG2Dリガンド発現と比較したが、有意な相関は同定されなかった。これは、
図12および13からのdMFI値と一致しているようであり、種々の腫瘍細胞タイプ間の比較的高い程度の不均一性を示すようである。しかしながら、有利には、本明細書に開示される操作されたNK細胞は、NKG2Dリガンドのいずれかに結合することができるNKG2Dリガンド結合ドメインを利用する。したがって、リガンド特異的アプローチとは対照的に、より広範ベースのアプローチは、本明細書に開示される操作されたNK細胞を使用する療法を可能にし、たとえ唯一の特定のマーカーが頑強な様式で発現された場合であっても、または特異な高度に発現されたマーカーがなくても、むしろいくつかのNKG2Dリガンドの発現レベルが低い場合であっても、腫瘍細胞を成功裏に標的化し、排除する。
【0143】
図15A~15Cは、3つの肝細胞癌腫細胞株(Hep3B-luc、Huh-7-luc、およびSNU-449-luc)に対する操作されたNK細胞の細胞傷害性に関連するデータを示す。上記で検討されるように、これらの細胞株の各々は、種々の量のNKG2Dリガンドを発現したが、これらの細胞株のいずれも「優性」マーカーを発現することを示す強い相関はなかった。
図15A~15Cのデータ(示されたドナー由来の操作されたNK細胞または対応するドナー由来の非形質導入NK細胞を使用する。ドナー1667および1668は、先の図に示された他の以前の実験からのデータを有する。)。
図15A~15Cは、1:1および1:2のE:T比での4時間の細胞傷害性エンドポイントアッセイの結果を示す。
図15A~15Cの各々に示されるように、各ドナー由来の操作されたNK細胞は、対応する非形質導入NK細胞と比較して、試験された両方のエフェクター:標的比で増強された細胞傷害性を示した。例えば、
図15Aに示されるように、1:2のE:Tでは、全3人のドナー由来の非形質導入NK細胞は、Hep3B細胞に対して実質的に細胞傷害性効果を示さなかった。1人のドナー由来の操作されたNK細胞は、最大約20%の細胞傷害性(NKX101 1668)を示したが、他の2人のドナー由来の細胞は、約50%および約80%の細胞傷害性(それぞれ、NKX101 1669およびNKX101 1667)を示した。1:1のE:T比では、非形質導入NK細胞は種々の程度の細胞傷害性を示し、最も有効な細胞は約25%の細胞傷害性を達成した。操作されたNK細胞では、細胞傷害性は少なくとも50%(NKX101 1668)であり、残りのドナーの1人からの細胞は85%を超える細胞傷害性(NKX101 1169)を示し、他はほぼ100%の細胞傷害性(NKX 1667)を示した。同様のデータパターンは、Huh-7細胞株に対するそれぞれのNK細胞の細胞傷害性について示される(
図15B)。ただし、この場合、操作されたNK細胞の各々は、肝細胞癌腫株に対してほぼ100%の細胞傷害性を示した。同様に、同様のデータを
図15Cに示す。まとめると、肝細胞癌腫細胞株全体で可変NKG2Dリガンド発現を示す発現データとともに、これらのデータは、本明細書に開示される実施形態による操作されたNK細胞が、標的細胞全体でリガンド発現の可変性にもかかわらず、依然として有意な程度の細胞傷害性を提示することを示す。したがって、これらのデータは、本明細書に開示されるいくつかの実施形態に従った、操作されたNK細胞が、肝細胞癌腫患者集団全体で経験される予測される不均一な腫瘍プロファイルに対して有効であるべきであることを示唆する。
【0144】
図16A~16Gは、指示された肝細胞癌腫株がルシフェラーゼを発現するように操作された場合に回収されたデータであり、先の図においてデータを回収するために使用される。示された細胞株の各々は、効果的に形質導入された細胞を選択するために用いることができるCD19マーカーと同様に、ホタルルシフェラーゼ遺伝子をコードするベクターで形質導入された。
図16A~16Fは、磁気活性化細胞選別を用いて形質導入細胞を選択した後の、操作された細胞株の各々のCD19の発現の程度に関連するフローサイトメトリーデータを示す。
図16Gは、ホタルルシフェラーゼを発現するように操作された細胞株の各々について検出された相対光ユニットシグナルに関するデータを示す。
【0145】
ソラフェニブに対する肝細胞癌腫細胞の感受性に関する作用の可能なメカニズムを調査するために、各細胞株におけるNKG2Dリガンドの全集団の発現は、種々の用量のソラフェニブに応答して測定された。NKG2Dリガンドの全集団は、NKG2D-Fcキメラ抗体の使用を介して検出された。
図17A~17Fは、NKG2Dリガンド発現に関連するフローサイトメトリーデータを示す。
図17G~17Lは、示された肝細胞癌腫細胞によるプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現のための対応するフローサイトメトリーデータを示す。
図17Mおよび17Nは、試験された細胞株の各々における示された用量のソラフェニブに対する用量-応答を示す線プロットである。
図17Mに示されるデータは、少なくとも試験された用量および総NKG2D発現のレベルで、ソラフェニブが、NKG2Dリガンド発現に実質的な影響を及ぼさないようであることを示す。個々のNKG2Dリガンドは、ソラフェニブ治療に対する多かれ少なかれある程度の応答性を有し得るが、この特定のアッセイに基づいて必ずしも同定できるとは限らない。同様に、
図17Nは、ソラフェニブに応答するPD-L1の発現変化の明確なパターンを明らかにしていないが、データは、特定の濃度(例えば、10μMのソラフェニブ)では、多くの細胞株がPD-L1発現の増加を示すことを示唆しているようである。
【0146】
同様の調査が、PD-L1と同様にNKG2Dリガンドの全プールの発現におけるインターフェロンガンマの影響の決定に関して実施された。インターフェロンガンマは、一旦活性化されるとNK細胞によって分泌される炎症性サイトカインの1つであり、したがって、標的に対するNK細胞の細胞傷害性効果において役割を果たす。
図18A~18Iは、示された濃度のインターフェロンガンマに曝露された場合の9つの肝細胞癌腫細胞株におけるNKG2Dリガンド発現に関連するフローサイトメトリーデータを示す。
図18J~18Rは、同じ濃度のインターフェロンガンマについての対応するフローサイトメトリーデータ、およびPD-L1の発現に対するそれらの影響を示す。
図18Sおよび18Tは、NKG2Dリガンド発現(18S)およびPD-L1発現(18T)についてのフローサイトメトリーデータを要約する線グラフである。ソラフェニブ投与後の先の図に示された結果と同様に、NKG2Dリガンドの全プールの発現におけるインターフェロンガンマの明白な影響はないようである。しかしながら、上述されるように、個々の特異的NKG2Dリガンドは、インターフェロンガンマ曝露に応答して上方制御(または下方制御)され得る。
図18Tは、インターフェロンガンマの増加した用量に対する均一な発現応答パターンを示さないが、いくつかの細胞株は、より高い用量のインターフェロンガンマによりPD-L1発現が増加する傾向を示すようである。ソラフェニブまたはインターフェロンガンマによるNKG2DリガンドまたはPD-L1発現の明白な誘導の欠如にもかかわらず、いくつかの実施形態では、ソラフェニブまたは他の薬剤などの追加の抗癌剤と組み合わせて、本明細書に開示されるいくつかの実施形態による操作されたNK細胞(例えば、NKX101細胞)の併用治療レジメは、相乗的に増強された細胞傷害性効果をもたらす。ソラフェニブおよび/またはIFNgは、一部の実施形態では、本明細書で研究されたもの以外の他のNK活性化受容体(または下方制御抑制性受容体)を上方制御することができ、これは種々の実施形態において見られる相乗的活性に部分的に関与する。
【0147】
図19A~19Dは、4人のドナー由来の非形質導入NK細胞、それらのドナー由来の本明細書に開示される実施形態による操作されたNK細胞、またはアイソタイプ対照シグナルのいずれかによるPD-1の発現に関連するフローサイトメトリーデータを示す。プログラム死受容体1(PD-1)は活性化T細胞の表面に発現し、標的細胞上のそのリガンド(PD-L1またはPD-L2)と相互作用する。
図19A~19Dのデータは、非形質導入NK細胞が、対照と実質的に区別することができないPD-1レベルを発現し、また、本明細書に開示されるキメラ受容体を発現するためのNK細胞(例えば、NKX101)の操作が、PD-1の発現を実質的に変化させないことを示す。PD-1シグナル伝達は一般的に、本質的に抑制性であるため、データは、PD-1発現の誘導(上記で検討される)は、PD-1発現が変化しないため、本明細書に開示されたキメラコンストラクトを発現する操作されたNK細胞の活性に対して有害でない可能性が高いことを示唆する。一実施形態では、PD-L1誘導は、内因性T細胞応答を阻害することができ、本明細書に開示されるキメラ受容体を発現する操作されたNK細胞などは、PD-L1/PD-1経路の阻害剤と組み合わせて投与される。
【0148】
結腸直腸癌
背景:
結腸直腸癌は、米国では男女ともに3番目に多く診断される癌である。米国癌協会は、2019年の米国における結腸直腸癌の新規症例数の推定値に、結腸癌10万人以上、直腸癌4万人以上を含む。肝臓は、結腸直腸癌患者における原発転移の最も一般的な部位の1つである。これは主に、門脈循環を介した腫瘍の播種によるものである。手術は原発性肝転移の治療に成功し得るが、多くの患者は理想的な候補ではない。したがって、本明細書に開示されるように、いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、一部の実施形態では、肝転移を効果的に治療するために、局部的/局所的に投与することができる。
【0149】
以下の実験は、ヒト結腸直腸癌(CRC)細胞株モデルに対する細胞傷害活性に関して、NKX101を発現するものなどの、本明細書に開示される操作されたNK細胞の調査に関する。これには、NKX101のインビトロ細胞傷害性および標的CRC細胞株との共培養に応答したサイトカイン放出から得られたデータの測定および分析が含まれる。それはまた、NKX101細胞傷害性との相関の分析のために、HCC細胞株上のNKG2Dリガンド発現の染色を含む。NKG2D受容体の複数のリガンドは、CRCにおいて高度に発現される。
【0150】
方法:
一過性のレトロウイルス上清を293T細胞のトランスフェクションによって調製した。293T細胞は、レトロウイルスベクター(NKX101コンストラクトをコードするか、またはCD19タグを有するルシフェラーゼ(effluc.CD19)のいずれか)とコトランスフェクトされた。後者のベクターは、CD19発現のスクリーニングにより、ルシフェラーゼ発現細胞の選択を可能にする。
【0151】
NK細胞の拡大、形質導入および特徴付けのために、健常ドナーの軟膜血液試料をスタンフォード血液センターから入手した。PBMCを精製し、バンクした。NK細胞は、K562-mbIL15-41BBLフィーダー細胞とともに、1:1のフィーダー:PBMC比で共培養することにより、バンクしたPBMCから拡大させた。
【0152】
EC50細胞傷害性アッセイおよびサイトカイン分析のために、抗CD3 MACSビーズを用いて、5日目の拡大をT細胞枯渇させた。
【0153】
NK細胞は、上記で検討した修飾されたK562細胞を用いて拡大させた。培地に400IU/mLのIL2を5日目に24時間補足し、NK細胞を6日目に形質導入した。さらなる実施形態では、他の濃度またはタイミングを用いて、NK細胞を拡大する。いくつかの実施形態では、IL2は使用されず、一方、他のサイトカインが使用される。
【0154】
形質導入NK細胞(CD3-CD56+)上のNKG2Dの表面発現は、形質導入4日後に抗ヒトNKG2D抗体(R&D System)を用いたフローサイトメトリーにより分析し、NK細胞培養を40IU/mLのIL2で継続した。いくつかの実施形態では、他の濃度のIL2(IL2なしを含む)が使用される。
【0155】
CRC細胞株の形質導入のために、293FT細胞をレトロウイルスベクターeffluc.CD19でトランスフェクションし、ウイルス上清を生じさせた。ATCC由来のヒトHCC細胞株(HepG2、SNU182、SNU387、SNU398、SNU423、SNU475)は、スピノキュレーションによりeffluc.CD19ウイルス上清で形質導入し、細胞を6ウェルプレート中2.5×104細胞/ml(4ml、1e5/ウェル)の密度で播種した。形質導入細胞をMACS抗CD19ビーズを用いてCD19細胞表面発現について正に選択し、CD19+純度をフローサイトメトリーにより分析した。
【0156】
NKX101細胞のインビトロ細胞傷害性は、上記される操作されたCRC細胞株を発現するルシフェラーゼのパネルに対して測定された。接着性CRC標的細胞は、トリプシン-EDTA(0.25%)を用いて細胞培養フラスコから除去し、計数し、2×105細胞/mlで再懸濁し、100μl(2×104細胞/ウェル)を透明な96ウェルU底組織培養プレートに播種した。NKエフェクター細胞を計数し、EC50実験のために連続的に(最大16:1のE:Tから)2倍に希釈した。NK細胞をCRC細胞とともにウェルに添加し、プレートを37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション後、100μlの各細胞懸濁液を100μl/ウェルBright-Glo試薬(1:1細胞培養容積)を含有する黒壁透明底プレートに移した。相対ルミネセンス単位(RLU)をSoftMax 6.2.2 CellTiter-Glo Luminescenceアッセイプロトコールを用いてSpectraMaxプレートリーダーで読み出した。
【0157】
NKサイトカイン放出アッセイについては、NT NK(非形質導入NK)またはNKX101細胞を、96ウェルU底部プレートにおいて、総計200μL培地中で1:1(ウェルあたり各1×105細胞タイプ)の比率で24時間、37℃でCRC標的細胞と共培養した。24時間で、プレートを300gで5分間遠心分離し、上清を回収し、サイトカインレベルがLuminexにより分析されるまで-80℃で凍結した。ProcartaPlexカスタム5-plexアッセイは、xPONENTソフトウェアを使用してLuminex MAGPIX装置の製造業者プロトコール(Invitrogen)に従って実施された。
【0158】
結果:
図20A~20Eは、ルシフェラーゼを発現するための種々の結腸直腸癌(CRC)細胞株の操作に関連するフローサイトメトリーデータを示す。上記されるように、ホタルルシフェラーゼをコードするベクターはまた、形質導入された細胞のMACS選択を可能にするCD19マーカーを含む。これらのデータは、CD19選択が行われた後に得られたCRC細胞の染色を示す。データは、使用された抗体についてのアイソタイプ対照(左曲線)と比較して、CD19染色(右シフト曲線)を示す。
【0159】
図21A~21Eは、NKG2Dリガンドまたはアイソタイプ対照のいずれかについての操作された結腸直腸癌細胞の染色に関するデータを示す。NKG2Dリガンドは破線の枠で示され、一方、対照は実線の枠で示される。NKG2D-Fcで標識された列は、存在するすべてのNKG2Dリガンドに結合すべきNKG2D-Fcキメラ抗体の使用を示し、したがって、NKG2Dリガンドの全集団を表す。その後の列は、特異的抗体と結合した、各特異的に示されたNKG2Dリガンドについての染色である。要約すると、これらのデータは、複数のNKG2DリガンドがCRC細胞によって発現されることを確認する。いくつかの実施形態によれば、CRC細胞による種々のNKG2Dリガンドの発現は、本明細書における開示による操作されたNK細胞が、CRC細胞、特に肝臓に転移したものを標的化し、死滅することを可能にする。
【0160】
4人のドナー(224、692、699、650)由来のNK細胞を上記されるように拡大した。T細胞は、拡大5日目にCD3 MACS単離によって枯渇させ、細胞を、CD3およびCD56のCD3枯渇前(
図22A~22C)およびCD3枯渇後(
図22D~22F)について染色した。上記で検討したように、CD56はヒトNK細胞のマーカーである。したがって、
図22D~22Fのデータは、CD3枯渇後のNK細胞の結果として生じる集団が、非常に純粋なNK細胞の集団であることを示す。拡大されたNK細胞は、本明細書に開示されるキメラ受容体コンストラクトをコードするポリヌクレオチドを用いて6日目に形質導入された。例として、本実験は、NKG2D/OX40/CD3z細胞傷害性受容体複合体(
図1Dを参照されたい)を利用したが、本明細書中に開示される他のコンストラクトも同様に使用することができることは理解されるべきである。NKX101を発現する操作されたNK細胞を、形質導入後の4日目にNKG2D発現について染色した(
図23A~23C)。見ることができるように、対照NTNK細胞と比較して、NKG2D標的化キメラ受容体を発現するように操作されたNK細胞は、NKG2D受容体発現について有意に高いシグナルを示す。これらのデータは、操作されたNK細胞がキメラ受容体を発現していることを確認する。CRC細胞株HCT15、HCT116およびHT29に対する細胞傷害性アッセイは、上記されるように、拡大後の14~21日目に16:1から1:16に下げる範囲のE:T比にわたって行われた。4時間のエンドポイントにてRLUシグナルを読み取り、細胞傷害性パーセントを使用して、GraphPad Prism 7の4パラメータ非線形回帰分析(
図24A~24C)を用いてEC50値を算出した。示されるように、この実験で試験された各CRC細胞に対して、NKX101キメラ受容体コンストラクトを発現するNK細胞は、NTNK細胞よりも高い細胞傷害性を示した。実際に、NKX101細胞は、すべてのE:T比において、全3つの細胞株にわたって増強された細胞傷害性を示した(しかし、HCT15細胞における最高のE:Tで同様の効果であった)(
図24A)。NKX101の算出されたEC50は、NT NKよりも3~4倍低く、したがって、NKG2D指向性キメラ受容体を発現する操作されたNK細胞のいくつかの実施形態は、種々の腫瘍タイプに対して非常に有効であることを補強した。
【0161】
2人のドナー(091、140)由来のNK細胞を、記載されるように拡大した。T細胞は、拡大5日目のCD3 MACS単離によって枯渇させ、細胞を、CD3およびCD56のCD3枯渇前(
図25A、25D)ならびにCD3枯渇後(
図25B、25D)について染色した。拡大されたNK細胞は、本明細書に開示されるキメラ受容体コンストラクトをコードする6日目のポリヌクレオチド上に形質導入された。例として、本実験は、NKG2D/OX40/CD3z細胞傷害性受容体複合体(
図1Dを参照されたい)を利用したが、本明細書に開示される他のコンストラクトも同様に使用することができることは理解されるべきである。得られた細胞を、形質導入後の4日目にNKG2D発現について染色した(
図25C、25F)。これらのデータは、2人のドナーから拡大したNK細胞が、NTNK細胞と比較して、NKG2Dの頑強な発現を示すことを示す。拡大21日目に両ドナー由来のNKX101またはNT NK細胞を、1:1の比率で24時間、CRC標的細胞とインビトロで共培養し、上清をLuminexアッセイにより分泌型サイトカインレベルについて分析した。3つの細胞株の各々のサイトカイン放出プロファイルのデータを
図26A~26Cに示す(各分析物の標準曲線を
図27A~27Eに示す)。試験した各細胞株について、NKX101を発現するNK細胞とCRCを共培養すると、NT NKに対してNKX101を発現するNK細胞からの炎症誘発性サイトカイン放出が増強した。例えば、NKX101を発現するNK細胞によるIFNg放出は、HCT15群ではほぼ2倍であり、HCT116およびHT29群ではさらに顕著なNK細胞サイトカイン放出が誘導された。炎症誘発性サイトカインのこれらの増加した分泌物は、本明細書に開示される操作されたNK細胞の増強された細胞傷害性について、少なくとも一部は、一部の実施形態に関与する。
【0162】
操作されたNK細胞の特定の特徴
背景:
本明細書に開示される操作されたNK細胞の特徴をさらに評価するために、例えば、NK細胞のマーカープロファイル、本明細書に開示されるキメラ受容体の実施形態を発現する操作されたNK細胞の能力、このような操作されたNK細胞の細胞傷害性、および操作されたNK細胞の他の特徴を評価するために追加の実験を行った。
【0163】
結果:
本明細書で検討されるように、いくつかの実施形態では、ドナーNK細胞の集団は、フィーダーまたは刺激細胞株と関連して拡大されてもよい。いくつかの実施形態では、修飾されたK562細胞が使用される。このような細胞の例は、米国特許第7,435,596号または同第8,026,097号に提供され、これらの各々は、参照により本明細書にそれらの全体が組み込まれる。いくつかの実施形態では、PCT出願番号第PCT/SG2018/050138号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるものなど、さらなる修飾が使用される。拡大されたNK細胞は、いくつかの実施形態では、キメラ受容体および/またはNK細胞の持続性を促進する分子(膜結合型IL15など)を発現し、次に、さらに拡大するように操作されてもよい。いくつかの実施形態によれば、次に、細胞を凍結保存することができ、融解後に患者に投与する準備ができる。実施形態に応じて、種々の程度の拡大を行うことができる。例えば、一部の実施形態では、最大約50人の患者のためのNK細胞は、単一のドナーから生じさせることができる。いくつかの実施形態では、最大約100人の患者のためのNK細胞は、単一のドナーから生じさせることができる。いくつかの実施形態では、拡大は、さらに大量の拡大、例えば、単一ドナーから最大約200、約300、約400、約500またはそれを超える患者用量の拡大を可能にする。
【0164】
実験は、本明細書に開示される実施形態による操作されたNK細胞の特徴を決定するために行われた。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示されるNK細胞は、広く活性化された表現型を示す。
図28Aは、拡大中の3つの時間点(0日目、丸;7日目、四角、および12日目、三角)におけるNK細胞のフローサイトメトリー発現データを示す。Y軸は、生きたNK細胞(拡大培養物中のCD56
pos/CD3
neg細胞)の総数のパーセンテージを表す。x軸は、NKG2D(左群)、NKp30(中央群)、またはNKp44(右群)のいずれかを発現するNK細胞(CD56
pos)の検出に関する。上記で検討したように、NKG2D、NKp30およびNKp44の各々は、NK細胞によって発現される活性化受容体である。0日目には、少数のNK細胞のみがNKG2D(約25%未満)またはNKp44(ほとんど発現しない~全く発現しない)を発現した。対照的に、NKp30発現はかなり高かった(約85%)。しかしながら、拡大7日後、NKG2D発現は有意に上方制御され、NK細胞の平均80%近くがNKG2Dを発現した。同様に、NKp44は、実質的に同様に上方制御され、ほぼ50%の細胞がそれを発現した。その高い初期発現レベルにもかかわらず、NKp30発現さえ増加し、ここではほぼ100%のNK細胞に存在していた。培養12日目。NKG2D発現は、平均して減少した(依然として60%を超える)が、2人のドナー由来のNK細胞の80%では発現したままであった。NKp44発現は増加し続け、NK細胞の平均60%がNKp44を発現した。NKp30は12日目に変化せず、NK細胞のほぼ100%に依然として存在していた。
図28Bは、NK細胞の総数のパーセンテージとしてのNKp46、2B4、CD69 CD25およびDNAM-1の発現についての対応するデータを示す。NK細胞は、0日目、ならびに拡大開始後の7日目および12日目にフローサイトメトリーにより特徴付けられた。NKp46、CD69およびCD25の発現はすべて、0日目で比較的低かった(それぞれ約40%、約10%、および約5%)。対照的に、2B4およびDNAM-1は、各々、0日目にNK細胞により高発現した(それぞれ約100%および90%)。拡大の7日目に、NKp46、CD69、およびCD25の各々は、NK細胞上で有意な有病率を示し、各々は、ここでは、NK細胞の約90%によって発現された。2B4発現はNK細胞の約100%で一定のままであったが、DNAM-1発現はNK細胞の約95%に増加した。拡大の12日目に、NKp46レベルは平均して約75%の発現まで低下し、CD25発現は約50%まで低下した。CD69の発現は依然として高く、NK細胞の85%近くが平均してそれを発現した。2B4およびDNAM-1はいずれも、ほぼすべてのNK細胞によって発現された。まとめると、これらのデータは、NK細胞活性化の特定のマーカーおよび種々の活性化受容体が、拡大したNK細胞において広範であり、比較的安定に上方制御されることを示した。いくつかの実施形態によれば、特定のマーカー(複数可)の発現を最大化するために、特定の時間、拡大を行うことができる。いくつかの実施形態では、いくつかの異なる活性化マーカーの広範な発現は、本明細書に開示されるいくつかの実施形態による操作されたNK細胞がこのような有意な細胞傷害性効果を示す理由の少なくとも1つを表す。
【0165】
上記で検討されるように、いくつかの実施形態では、細胞は、NK細胞の拡大および永続性を増強するために、NKG2D(またはリガンドと結合するその一部)、ならびにIL15、例えば、膜結合型IL-15(mbIL-15)を発現するように操作される。膜結合型IL-15に関する非限定的な情報は、米国特許出願第15/309362号に見出され得、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、mbIL15の発現は、操作されたNK細胞の持続性を増強する。これはインビトロ設定で有利であり得るが、本明細書に開示される実施形態によれば、mbIL15はまた、インビボでの持続性を増強する。
図29Aは、mbIL15発現が、操作されたNK細胞の持続性を増強することを示す。フローサイトメトリーを用いて、血液試料中のNKG2D
pos/CD56
pos/CD3
neg細胞を測定し、その結果を全検出細胞のパーセントで表した。経時的に循環するNK細胞の総数と比較して測定した場合、キメラ受容体コンストラクトの非限定的な実施形態を発現する結果としてmbIL15を発現するNK細胞のみ(GFP細胞または非修飾NK細胞ではなく)が、7日後に循環中に依然として存在する。2つの対照群は、それらの数のいずれもの増加を示さないが、投与後の少なくとも28日目まで、mbIL15を発現するNK細胞は、循環中に依然として存在する。これらのデータは、いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される操作されたNK細胞が、インビボでさえ長期の永続性を示し、それによって、癌免疫療法の治療を必要とする対象において長期の細胞傷害性効果を可能にすることを示す。
【0166】
本明細書に開示される操作されたNK細胞の利点をさらに支持するのは、経時的に改善されるNK細胞の存在だけでなく、それらの活性でもある。
図29Bは、NSGマウスに2×10
5個のU2OS骨肉腫細胞を腹腔内注射した後に検出された蛍光シグナルに関する要約データを示す。マウスには、PBS、GFPを発現するNK細胞、本明細書に開示されるNKG2Dキメラ受容体を発現するNK細胞(mbIL15なし)、またはmbIL15も発現するように構成された本明細書に開示されるNKG2Dキメラ受容体を発現するNK細胞をIP注入した(各NK細胞注入は3×10
6個の細胞であり、7日目に投与された)。3用量のIL2を投与し、14日目、21日目、28日目、35日目、49日目、および63日目に画像データを回収し、
図29Cに示す。示されるように、NKG2Dキメラ受容体を発現するNK細胞、またはmbIL15とともにNKG2Dキメラ受容体を発現するNK細胞のいずれかを受けたマウスは、63日間でさえ、有意に少ない腫瘍量を示す。これは、2つの対照群(PBSおよびGFPを発現するNK細胞)のそれぞれにおいて、経時的に腫瘍量が急速に増加することと対照的である。
【0167】
種々の肝腫瘍タイプまたは骨肉腫細胞に関連して上記で検討した実験からのデータがあるが、本明細書に開示されるいくつかの実施形態による操作されたNK細胞は、他の腫瘍タイプに対しても効果的である。例えば、本明細書に開示されるNKG2D CARを発現するNK細胞は、AMLモデル、THP-1異種移植モデルにおいて用量依存性の腫瘍活性を示す。このモデルにおいて、ラットを、腫瘍注射の2日後にNKG2D-OX40-CD3Z-mbIL15 CARを発現するNK細胞の単回用量で処置した。画像データは
図30Aに示され、要約データは
図30Bに示される。上述のU2OS異種移植モデルと同様に、NKG2D CARを発現するNK細胞の投与により、腫瘍量は有意に低かった。さらに、細胞傷害性効果は明白な用量依存的応答を示した(腫瘍量は細胞量の増加に伴って減少する)。
【0168】
本明細書に開示されるNKG2D CARの有効性をさらに調査するために、追加のAML株を試験した。
図31に示されるように、8つの異なるAML細胞株と比較して、本明細書に開示されるキメラ受容体コンストラクトを発現する操作されたNK細胞は、非修飾NK細胞よりも増加した細胞傷害性効果をもたらした。試験したいくつかの細胞株において、増強効果は腫瘍細胞に対してほぼ90~95%の細胞傷害性をもたらしたが、静止PBMCを標的としなかった。上述したように、実施形態に応じて、種々の操作された受容体を使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、活性化受容体は、NKG2D細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含むことができる。各ドメインは、複数のサブドメインから構成されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、活性化受容体は、NKG2D細胞外ドメイン、CD8アルファヒンジ領域、CD8アルファ膜貫通ドメイン、OX40共刺激ドメイン、CD3zシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、このような受容体をコードするポリヌクレオチドは、mbIL15も発現するように操作される。他の刺激ドメイン、例えば、CD28、4-1BB、CD16、NKp80、2B4、DAP10、DAP12、およびそれらの組み合わせを使用することができる。いくつかの実施形態では、グリシン-セリンスペーサーなどの種々のスペーサーを用いて、種々のドメインを分離する。
【0169】
有利には、特に同種投与のために、NK細胞は、高い生存率で凍結保存することができ、生存細胞回収および細胞傷害活性は融解時に保持される。これは、
図32Aに概略的に示された実験プロトコールを用いて評価された。
【0170】
凍結保存後、本明細書に開示された実施形態によるNKG2D CARを発現するNK細胞の生存率は、培養の14日後および27日後の新鮮(非凍結)細胞の生存率と比較された。
図32Bは、融解後の生存率に実質的な変化がないこと、換言すれば、操作されたNK細胞は、凍結保存後も依然として生存可能であることを示す。重要なことに、生存細胞のパーセンテージは、融解後に非常に高く、所与の凍結-融解サイクルからの生存細胞の制限された喪失を示し、これは、所与のバッチの拡大された細胞のより大きなパーセンテージが融解後に投与され得ることを意味する。
図32Cは、3つの試料からの75%以上の生存率を示す。凍結保存および融解後であっても、操作されたNK細胞の細胞傷害性は、新鮮な細胞と有意差がない程度に維持された(
図32Dを参照されたい)。これは、操作された細胞の抗腫瘍活性を示す能力が保持されるために重要であり、いくつかの実施形態によれば、これは、凍結保存された細胞を効果的に使用する能力を高める。
【0171】
種々の追加マーカーの発現レベルを拡大中に(0日目、7日目、および12日目にフローサイトメトリーにより特徴付けした低IL2培地中で)評価した。
図32Eは、NK細胞上の抑制性受容体CD158bの発現が、拡大中に有意に変化しなかったことを示す。対照的に、抑制性NKG2A受容体を発現するNK細胞のパーセンテージは7日目に増加したが、培養12日目にはわずかな低下を示した。ILT2抑制性受容体の発現は、拡大中に本質的に変化しなかった。NK細胞消耗の潜在的マーカーであるPD-1は、拡大中に発現を変化させず、本質的に発現されなかった。NK細胞の成熟のマーカーであるTIGITおよびTim3は、拡大が進行するにつれてNK細胞でわずかに多く見られた。有利には、本明細書で検討されるように、特定の抑制性受容体の様々な上方制御にもかかわらず、いくつかの実施形態では、活性化受容体も上方制御され、バランスのとれたNK細胞活性の増強を可能にする。
【0172】
図32Gは、0日目における培養中の生きたNK細胞上のCD56およびCD16発現のベースラインの特徴付けに関連するデータを示す。NK細胞の2つの主要なサブセットはCD56
high/CD16
dimおよびCD56
dim/CD16
highである。CD56の存在/強度は、NK細胞の増殖能と直接相関しており、すなわち、頑強なCD56発現は、NK細胞が増殖するように構成されていることを意味する。このCD56の発現は、下記で検討するように、細胞傷害活性と関連する、より低いCD16の発現と関連している。したがって、CD56
high/CD16
dimは、増殖および分化し、より細胞傷害性の高いCD56
dim/CD16
highNK細胞を生じると考えられる。
図32Gは、培養0日目の生きたNK細胞の大部分が、CD56
dim/CD16
highの細胞傷害性のより強力なNK細胞であることを示す。
図32Hは、NK細胞によるCD16およびCD57の発現において、拡大した時間経過で流束が存在し、CD16は7日目に一時的に減少し、次に、12日目に開始レベルに回復することを示す。CD57の発現は、拡大を通じて低下する。
図32Iは、培養7日目および12日目のマーカー強度に関連するデータを示し、0日目のマーカー強度の比で表す。これらのデータは、CD56発現強度が増加する一方で、CD16およびCD57発現強度は変化しないことを示す。これらのデータは、本明細書に開示される実施形態による拡大が、操作されたNK細胞を「復帰」または増殖促進表現型を採用するように誘発することを示唆する。
図32Jおよび32Kは、拡大中の記憶NK細胞様発現プロファイルの発生に関するものであり、操作されたNK細胞をフィーダー細胞および追加のサイトカインで拡大させた場合、特定の記憶様マーカーの発現が増加する。NK細胞拡大法に関するさらなる情報は、米国特許第7,435,596号(2008年10月14日発行)、同第8,026,097号(2011年9月27日発行)、国際特許出願第PCT/SG2018/050138号(2018年3月27日出願)および米国仮特許出願第62/881,311号(2019年7月21日出願)に見出され得、これらのすべては、各々、参照により本明細書に組み込まれる。
【0173】
併用療法
背景:
理論に拘束されることなく、本明細書に開示されるいくつかの実施形態における操作されたNK細胞の細胞傷害性は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を誘発することによって増強され得る。抗体は、腫瘍細胞の増殖を妨げることにより、直接的に、一方で抗腫瘍効果を媒介する。抗体はまた、免疫媒介性補体依存性細胞傷害性(CDC)またはADCCを誘導することによって間接的に腫瘍に作用し得る。ADCCは、特異的免疫グロブリンによって標的細胞表面に発現された抗原を認識することから始まる。次に、これらの抗体のFcドメインは、本明細書に開示される操作されたNK細胞などの免疫エフェクター細胞上に発現されるFcγ受容体(FcγR)に結合され、次に、標的細胞への細胞傷害性顆粒の放出を誘発するか、または細胞表面上の死受容体発現を上方制御する。
【0174】
結果:
いくつかの実施形態によれば、操作されたNK細胞は、腫瘍細胞表面上のリガンドに結合し、発現されたCARを介して細胞傷害性を誘導することができるだけでなく、ADCCに動員されることによってさらなる細胞傷害性効果を誘導するために動員することもできる。いくつかの実施形態に従う、2つの異なるメカニズムが機能する場合、ADCCカスケードを開始することができる抗体と組み合わせて、本明細書に開示される操作されたNK細胞を使用すると、相乗的な抗腫瘍効果がもたらされる。
図33Aは、本明細書に開示される非限定的な実施形態による、NKG2D CARを発現するNK細胞によるCD16の発現を示す(本明細書では、使用されたCARはNKG2D-OX40-CD3z-mbIL15であった)。FcγRIIIAであるCD16は、NK細胞のADCCへの動員に大きく関与している。興味深いことに、
図33Aに示されるように、NKG2D CARを発現する操作されたNK細胞の90%はまたCD16を発現し、これらの操作された細胞がADCCに関与するためにプライミングされることを示唆する。
図33Bおよび33Cは、RajiおよびNalm6細胞上のCD19およびCD20発現(それぞれ)に関連するデータを示す。Raji細胞はBリンパ球細胞株であり、Nalm6細胞は青年期の男性から開始されたB細胞前駆体白血病細胞株である。
図33Bに示されるように、RajiとNalm6細胞の両方がCD19を発現する。
図33Cに示されるように、Raji細胞はCD20発現が豊富であるが、Nalm6細胞はそうではない。
【0175】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される実施形態による、癌を標的とするために使用される抗体+操作された細胞などの併用療法の使用は、相乗的な細胞傷害性をもたらす。例えば、いくつかの実施形態では、NKG2D CARを発現するNK細胞は、抗CD20抗体(非限定的な例として、リツキシマブなど)と同時投与される。他の実施形態は、CD19、CD123、NY-ESO、MAGEA4、MAGEA1、PRAME、生存などの他の一般的な腫瘍マーカーに指向される他の抗体を使用する。
図34は、共培養単独、NKG2D CAR+対照IgG1抗体を発現するNK細胞、またはNKG2D CAR+抗CD20抗体を発現するNK細胞におけるRaji細胞の拡大に関するデータを示す。非限定的な例として、この実施例で使用されるNKG2D CARは、NKG2D-OX40-CD3z-mbIL15であった。標的:エフェクター細胞比は2:1であり、NK細胞を、NKG2D CARコンストラクトでのそれらの形質導入の14日後に腫瘍細胞に添加した。示されるように、Raji細胞単独は、経時的に数が増加する(上段の「標的単独」トレース)。本明細書に開示される実施形態およびIgG1に従って、Raji細胞をNKG2D CARを発現するNK細胞に曝露した場合、Raji細胞増殖は有意に妨げられた。4.5日目には増加傾向にあったが、対照と比較して腫瘍増殖は明らかに遅延した。本明細書に開示される実施形態によるNKG2D CARを発現するNK細胞と抗CD20抗体との組み合わせは、すべてのRaji細胞の増殖を妨げるようであった。上記で検討したように、本明細書に開示される操作されたNK細胞の表現型は、ADCCにおけるそれらの潜在的関与を示す。この実験に見られるように、およびいくつかの実施形態によれば、NKG2Dリガンド結合およびNKG2D CARシグナル伝達ドメインとADCCの攻撃の組み合わせは、予期せぬ増強された細胞傷害性をもたらした。
【0176】
上記で検討されるように、追加の薬剤は、本明細書に開示される操作されたNK細胞と同時に投与することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、NKG2Dリガンド(またはCD123またはCD19などの他の腫瘍マーカー)を標的とする操作されたNK細胞とともに投与される。白血病細胞株は、対照として単独で増殖させ、GFPを発現するNK細胞と共培養し、または本明細書に開示されるNKG2D CARを発現するNK細胞と共培養した。非限定的な例として、この実施例で使用されるNKG2D CARは、NKG2D-OX40-CD3z-mbIL15であった。
図35Aは、HL60細胞数の増加およびNK GFP細胞によるその速度のわずかな減少を示す。HL60細胞をNKG2D CARを発現するNK細胞で処理した場合、細胞増殖はさらに低下した。
図35Bは同じ処理群を示し、培養物にHDAC阻害剤バルプロ酸を添加した。示されているように、バルプロ酸の添加は、NKG2D CARを発現するNK細胞と相乗的に相互作用し、HL-60細胞増殖を劇的に抑制した。さらなる実施形態によれば、他のHDAC阻害剤、例えば、ロミデプシン(例えば、FR901228)、エンチノスタット(例えば、MS-275)フェニルブチレート、ベリノスタット(PDX101)、バルプロ酸ナトリウム、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、またはそれらの組み合わせが使用される。
【0177】
上述したように、一部の実施形態では、NK細胞が使用される。一部の実施形態では、T細胞が使用される。なおさらなる実施形態では、NK細胞およびT細胞の組み合わせが使用される。いくつかの実施形態では、NK細胞およびT細胞がNKG2D活性化受容体を発現するように操作される、このような組み合わせは相乗的な細胞傷害性をもたらす。
【0178】
NK、TまたはNK+T細胞は、本明細書に開示される実施形態によるNKG2D CARを発現するNK細胞で形質導入された。非限定的な例として、この実施例で使用されるNKG2D CARは、NKG2D-OX40-CD3z-mbIL15であった。種々のコンストラクトの細胞傷害活性は、1:4のE:T比(NK:T=1:1比)でHL60 AML株に対して評価された。
図36は、得られたデータを示す。HL60細胞は、予想されるように、単独で増殖した場合に数が増加する。NKG2D CARを発現するNK細胞は、HL60細胞の増殖を有意に減少させる。同様に、T細胞はまたHL60細胞の増殖を減少させる。NK NKGD CAR細胞とT NKG2D CAR細胞の両方による有意な減少を考慮すると、NK+T NKG2D CAR細胞の組み合わせが、HL60細胞増殖をなおさらに減少させ、効果的にゼロにすることができることは予想外である。NK細胞は迅速な動態で腫瘍細胞を死滅させるが、E:T比が高いと、腫瘍細胞は依然として増殖する。T細胞は、よりゆっくりとした動態で死滅させるが、培養で拡大されて、より持続的な制御を提供する。いくつかの実施形態によれば、NK+T細胞の組み合わせは、細胞傷害活性の迅速な開始および延長された動態を示し、これは、細胞型単独の既に高い細胞傷害性効果を考えると、驚くほど有利である。いくつかの実施形態に従って、混合されたNK+T細胞集団は、腫瘍を治療するために使用される。さらなる実施形態では、NK+T細胞集団が、抗癌抗体、キナーゼ阻害剤、および/またはHDAC阻害剤などの追加の薬剤とともに使用される場合、より速い作用および/またはより長い持続効果のいずれかが見られる。
【0179】
上記に開示された実施形態の特定の特徴および態様の種々のコンビネーションまたはサブコンビネーションを作製することができ、1つまたは複数の発明の範囲内になおも入ることができると考えられる。さらに、実施形態に関連する任意の特定の特徴(feature)、態様、方法、特性、特徴(characteristic)、品質、属性、要素などの本明細書における開示は、本明細書に記載する他のすべての実施形態において使用することができる。したがって、開示された実施形態の種々の特徴および態様は、開示された発明の種々の様式を形成するために、互いに組み合わせることができ、または互いに置き換えることができることが理解されるべきである。したがって、本明細書に開示される本発明の範囲は、上記した特定の開示された実施形態によって制限されるべきではないことが意図される。さらに、本発明は種々の変更、および代替形態に感受性であるが、その具体例を図面に示し、本明細書で詳細に説明する。しかしながら、本発明は、開示された特定の形態または方法に限定されるものではなく、逆に、本発明は、記載された種々の実施形態および添付の請求の範囲の精神および範囲内に入るすべての変更、同等物および代替物をカバーするものであることが理解されるべきである。本明細書に開示された任意の方法は、列挙された順序で実施される必要はない。本明細書に開示された方法は、熟練者によって行われる特定の行為を含むが、しかしながら、それらは、明示的にまたは黙示的に、それらの行為の任意の第三者の指示を含むこともできる。例えば、「操作されたNK細胞の集団を肝臓に局所的に投与する」といった行為は、「操作されたNK細胞の集団を肝臓に局所的に投与することを指示する」ことを含む。さらに、開示の特徴または態様がマーカッシュ群に関して記載されている場合、当業者は、開示がマーカッシュ群のメンバーの任意の個々のメンバーまたはサブグループに関しても記載されていることを認識する。
【0180】
本明細書に開示された範囲はまた、任意のおよびすべての重なり、サブ範囲、およびそれらの組み合わせを包含する。「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「間」などの言語は、列挙された数値を含む。「約」または「およそ」などの用語の前にある数字は、列挙された数字を含む。例えば、「約90%」は、「90%」を含む。一部の実施形態では、少なくとも95%相同性は、参照配列と96%、97%、98%、99%、および100%相同性を含む。さらに、配列がヌクレオチドまたはアミノ酸配列を「含む」として開示される場合、このような参照は、別段の指示がない限り、配列が、列挙された配列「を含む」、「からなる」または「から本質的になる」ことも含むものとする。
【0181】
本明細書で使用されるタイトルまたは小見出しはいずれも、整理目的であり、本明細書で開示される実施形態の範囲を制限するために使用されるべきではない。
【配列表】