(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】結晶シリコン太陽電池及び結晶シリコン太陽電池の集合セル
(51)【国際特許分類】
H01L 31/05 20140101AFI20240716BHJP
H01L 31/0224 20060101ALI20240716BHJP
H01L 31/068 20120101ALI20240716BHJP
【FI】
H01L31/04 570
H01L31/04 262
H01L31/06 300
(21)【出願番号】P 2021515980
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2020016065
(87)【国際公開番号】W WO2020218026
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2019081587
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】吉河 訓太
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208570638(CN,U)
【文献】国際公開第2018/142544(WO,A1)
【文献】中国実用新案第208706668(CN,U)
【文献】国際公開第2018/173125(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/037746(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0097073(US,A1)
【文献】特開2019-050375(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106129162(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがPERC型である複数の太陽電池セルを有し、且つ、前記複数の太陽電池セルのうち隣接する各二つの太陽電池セルが互いにシングリング接続されてなる太陽電池ストリングを含み、
前記複数の太陽電池セルの各々は、
第一主面及び第二主面を有する一導電型の単結晶シリコン基板と、
前記第一主面と接触する逆導電型の拡散層と、
前記単結晶シリコン基板と接触している側と反対側で前記拡散層と接触する第一収集電極と、
前記拡散層及び前記第一収集電極と接触する第一接続電極と、
前記第二主面と接触し、且つ、少なくとも一つの貫通した開口部を有する絶縁層と、
前記単結晶シリコン基板と接触している側と反対側で前記絶縁層と接触するとともに、前記少なくとも一つの開口部を介して前記単結晶シリコン基板に接続される第二収集電極と、
前記絶縁層と接触している側と反対側で前記第二収集電極と接触する第二接続電極と、を備え、
前記複数の太陽電池セルの各々において、前記第一主面に略垂直な方向から視たとき、前記第一接続電極と前記第二接続電極とは離間しており、
前記太陽電池ストリングは、前記隣接する各二つの太陽電池セルが重複する重複領域を有し、
前記重複領域では、前記第一主面に略垂直な方向から視たとき、前記隣接する各二つの太陽電池セルのうち一方の太陽電池セルの前記第一接続電極と、前記隣接する各二つの太陽電池セルのうち他方の太陽電池セルの前記第二接続電極とが重なった状態で接続され
前記複数の太陽電池セルの各々において、
前記重複領域の一部を除く大半或いは前記重複領域の全域では、前記第二収集電極と前記単結晶シリコン基板とが前記絶縁層を介して離間している、結晶シリコン太陽電池。
【請求項2】
前記複数の太陽電池セルの各々の前記第二収集電極は、少なくとも、前記太陽電池ストリングにおける前記複数の太陽電池セルの並び方向の前記第二接続電極が配置された側である一方側に位置する前記単結晶シリコン基板の端縁と、前記第二接続電極との間に配置されている、請求項1に記載の結晶シリコン太陽電池。
【請求項3】
前記第二接続電極と前記単結晶シリコン基板とが前記絶縁層を介して離間している、請求項1又は請求項2に記載の結晶シリコン太陽電池。
【請求項4】
前記第一主面が受光面である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の結晶シリコン太陽電池。
【請求項5】
前記複数の太陽電池セルの各々において、
前記単結晶シリコン基板の前記太陽電池ストリングにおける前記複数の太陽電池セルの並び方向における前記第二接続電極が配置された側である一方側に位置する端縁は、前記第一主面に略垂直な面と、前記複数の太陽電池セルの各々を形成する際のレーザー照射により形成された斜面とを有し、
前記第二収集電極の前記一方側に位置する端縁と前記単結晶シリコン基板の前記第一主面に略垂直な面との距離は、前記斜面の前記並び方向における幅の150%以上である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の結晶シリコン太陽電池。
【請求項6】
前記複数の太陽電池セルの各々において、
前記第二収集電極の前記太陽電池ストリングにおける前記複数の太陽電池セルの並び方向における前記第一接続電極が配置された側である他方側に位置する端縁と、前記単結晶シリコン基板の前記他方側に位置する端縁との距離は、前記重複領域の前記並び方向における寸法の40%以上90%以下である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の結晶シリコン太陽電池。
【請求項7】
前記複数の太陽電池セルの各々において、
前記第二収集電極の前記太陽電池ストリングにおける前記複数の太陽電池セルの並び方向における前記第一接続電極が配置された側である他方側に位置する端縁と、前記単結晶シリコン基板の前記他方側に位置する端縁との距離は、0.4mm以上である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の結晶シリコン太陽電池。
【請求項8】
前記第二接続電極は、前記太陽電池ストリングにおける前記複数の太陽電池セルの並び方向及び前記単結晶シリコン基板の厚み方向のいずれにも略直交する方向において、間隔をあけて配置され、
前記第二接続電極の前記間隔があけられた領域には、前記絶縁層の開口部が配置される、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の結晶シリコン太陽電池。
【請求項9】
それぞれが分割されることでPERC型である複数の太陽電池セルとなる複数の小区画が集合した結晶シリコン太陽電池の集合セルであって、
前記集合セルは、一の辺と該一の辺の対辺とを有し、
前記複数の小区画の各々は、前記集合セルの前記一の辺に略平行な直線である画定線により画定され、
前記複数の小区画の各々は、
第一主面及び第二主面を有する一導電型の単結晶シリコン基板と、
前記第一主面と接触する逆導電型の拡散層と、
前記単結晶シリコン基板と接触している側と反対側で前記拡散層と接触する第一収集電極と、
前記拡散層及び前記第一収集電極と接触する第一接続電極と、
前記第二主面と接触し、且つ、少なくとも一つの貫通した開口部を有する絶縁層と、
前記単結晶シリコン基板と接触している側と反対側で前記絶縁層と接触するとともに、前記少なくとも一つの開口部を介して前記単結晶シリコン基板に接続される第二収集電極と、
前記絶縁層と接触している側と反対側で前記第二収集電極と接触する第二接続電極と、を備え、
前記複数の小区画の各々において、前記第一主面に略垂直な方向から視たとき、前記第一接続電極と前記第二接続電極とは離間しており、
前記第二収集電極は、前記第二主面に略垂直な方向から視たとき、前記集合セルの前記一の辺から離間するとともに、前記集合セルの前記一の辺の対辺から離間しており、
前記第二接続電極は、
前記複数の小区画のうち、前記集合セルの前記一の辺を含む小区画については、前記集合セルの前記一の辺から遠い前記画定線に沿って設けられ、
前記複数の小区画のうち、前記集合セルの前記対辺を含む小区画については、前記集合セルの前記対辺から遠い前記画定線に沿って設けられる、結晶シリコン太陽電池の集合セル。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2019-081587号の優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、複数の太陽電池セルがシングリング接続により接続された太陽電池ストリングを含む結晶シリコン太陽電池及び結晶シリコン太陽電池の集合セルに関する。
【背景技術】
【0003】
従来、種々の構造を有する結晶シリコン太陽電池が提案されている。このような結晶シリコン太陽電池として、太陽電池ストリングを含むソーラーモジュールがある(特許文献1)。このソーラーモジュールでは、短冊状である複数の太陽電池セルを、例えば、屋根板を葺くようにして、隣接する各二つの太陽電池セルの長辺が互いに重なるように並んだ状態で太陽電池セルの端部同士を接続して太陽電池ストリングを形成する。また、このソーラーモジュールでは、太陽電池セルを重ねて配置することで、隣接する各二つの太陽電池セルの間の隙間を無くす。これにより、ソーラーモジュール内における太陽電池セルの充電率を向上して、モジュール効率を高めることができる。
【0004】
また、結晶シリコン太陽電池を構成する太陽電池セルとして、PERC(Passivated Emitter and Rear Cell)型の太陽電池がある(特許文献2)。この太陽電池は、p型のシリコン基板と、シリコン基板の受光面側に順に積層されたn型の不純物拡散領域及び受光面電極と、シリコン基板の裏面側に順に積層された裏面パッシベーション膜及び裏面電極とを備える。裏面パッシベーション膜は、複数の開口部が設けられた膜である。このような太陽電池では、裏面パッシベーション膜によりシリコン基板の裏面表層部のシリコン原子の未結合手が終端される。そのため、この太陽電池では、再結合が抑制される。なお、この太陽電池セル同士を接続する場合の接続位置については、特に限定されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特表2017-517145号公報
【文献】日本国特開2004-6565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のように太陽電池を重ねて配置する、即ち、シングリング接続(shingling connect)してなるソーラーモジュールに、上記PERC型の太陽電池を適用した構造について、十分な検討がなされていない。そのため、最適構造が提供されていなかった。
【0007】
本発明は、PERC型の太陽電池をシングリング接続してなる結晶シリコン太陽電池であって、構造を最適化した結晶シリコン太陽電池及び結晶シリコン太陽電池の集合セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の結晶シリコン太陽電池は、それぞれがPERC型である複数の太陽電池セルを有し、且つ、前記複数の太陽電池セルのうち隣接する各二つの太陽電池セルが互いにシングリング接続されてなる太陽電池ストリングを含み、前記複数の太陽電池セルの各々は、第一主面及び第二主面を有する一導電型の単結晶シリコン基板と、前記第一主面と接触する逆導電型の拡散層と、前記単結晶シリコン基板と接触している側と反対側で前記拡散層と接触する第一収集電極と、前記拡散層及び前記第一収集電極と接触する第一接続電極と、前記第二主面と接触し、且つ、少なくとも一つの貫通した開口部を有する絶縁層と、前記単結晶シリコン基板と接触している側と反対側で前記絶縁層と接触するとともに、前記少なくとも一つの開口部を介して前記単結晶シリコン基板に接続される第二収集電極と、前記絶縁層と接触している側と反対側で前記第二収集電極と接触する第二接続電極と、を備え、前記複数の太陽電池セルの各々において、前記第一主面に略垂直な方向から視たとき、前記第一接続電極と前記第二接続電極とは離間しており、前記太陽電池ストリングは、前記隣接する各二つの太陽電池セルが重複する重複領域を有し、前記重複領域では、前記第一主面に略垂直な方向から視たとき、前記隣接する各二つの太陽電池セルのうち一方の太陽電池セルの前記第一接続電極と、前記隣接する各二つの太陽電池セルのうち他方の太陽電池セルの前記第二接続電極とが重なった状態で接続され、前記複数の太陽電池セルの各々において、前記重複領域の一部を除く大半或いは前記重複領域の全域では、前記第二収集電極と前記単結晶シリコン基板とが前記絶縁層を介して離間している。
【0009】
また、前記結晶シリコン太陽電池では、前記複数の太陽電池セルの各々の前記第二収集電極は、少なくとも、前記太陽電池ストリングにおける前記複数の太陽電池セルの並び方向の前記第二接続電極が配置された側である一方側に位置する前記単結晶シリコン基板の端縁と、前記第二接続電極との間に配置されていてもよい。
【0010】
また、前記結晶シリコン太陽電池では、前記第二接続電極と前記単結晶シリコン基板とが前記絶縁層を介して離間していてもよい。
【0011】
また、前記結晶シリコン太陽電池では、前記第一主面が受光面であってもよい。
【0012】
また、前記結晶シリコン太陽電池では、前記複数の太陽電池セルの各々において、前記単結晶シリコン基板の前記太陽電池ストリングにおける前記複数の太陽電池セルの並び方向における前記第二接続電極が配置された側である一方側に位置する端縁は、前記第一主面に略垂直な面と、前記複数の太陽電池セルの各々を形成する際のレーザー照射により形成された斜面とを有し、前記第二収集電極の前記一方側に位置する端縁と前記単結晶シリコン基板の前記第一主面に略垂直な面との距離は、前記斜面の前記並び方向における幅の150%以上であってもよい。
【0013】
また、前記結晶シリコン太陽電池では、前記複数の太陽電池セルの各々において、前記第二収集電極の前記太陽電池ストリングにおける前記複数の太陽電池セルの並び方向における前記第一接続電極が配置された側である他方側に位置する端縁と、前記単結晶シリコン基板の前記他方側に位置する端縁との距離は、前記重複領域の前記並び方向における寸法の40%以上90%以下であってもよい。
【0014】
また、前記結晶シリコン太陽電池では、前記複数の太陽電池セルの各々において、前記第二収集電極の前記太陽電池ストリングにおける前記複数の太陽電池セルの並び方向における前記第一接続電極が配置された側である他方側に位置する端縁と、前記単結晶シリコン基板の前記他方側に位置する端縁との距離は、0.4mm以上であってもよい。
【0015】
また、前記結晶シリコン太陽電池では、前記第二接続電極は、前記太陽電池ストリングにおける前記複数の太陽電池セルの並び方向及び前記単結晶シリコン基板の厚み方向のいずれにも略直交する方向において、間隔をあけて配置され、前記第二接続電極の前記間隔があけられた領域には、前記絶縁層の開口部が配置されてもよい。
【0016】
本発明の結晶シリコン太陽電池の集合セルは、それぞれが分割されることでPERC型である複数の太陽電池セルとなる複数の小区画が集合した結晶シリコン太陽電池の集合セルであって、前記集合セルは、一の辺と該一の辺の対辺とを有し、前記複数の小区画の各々は、前記集合セルの前記一の辺に略平行な直線である画定線により画定され、前記複数の小区画の各々は、第一主面及び第二主面を有する一導電型の単結晶シリコン基板と、前記第一主面と接触する逆導電型の拡散層と、前記単結晶シリコン基板と接触している側と反対側で前記拡散層と接触する第一収集電極と、前記拡散層及び前記第一収集電極と接触する第一接続電極と、前記第二主面と接触し、且つ、少なくとも一つの貫通した開口部を有する絶縁層と、前記単結晶シリコン基板と接触している側と反対側で前記絶縁層と接触するとともに、前記少なくとも一つの開口部を介して前記単結晶シリコン基板に接続される第二収集電極と、前記絶縁層と接触している側と反対側で前記第二収集電極と接触する第二接続電極と、を備え、前記複数の小区画の各々において、前記第一主面に略垂直な方向から視たとき、前記第一接続電極と前記第二接続電極とは離間しており、前記第二収集電極は、前記第二主面に略垂直な方向から視たとき、前記集合セルの前記一の辺から離間するとともに、前記集合セルの前記一の辺の対辺から離間しており、前記第二接続電極は、前記複数の小区画のうち、前記集合セルの前記一の辺を含む小区画については、前記集合セルの前記一の辺から遠い前記画定線に沿って設けられ、前記複数の小区画のうち、前記集合セルの前記対辺を含む小区画については、前記集合セルの前記対辺から遠い前記画定線に沿って設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る結晶シリコン太陽電池の側面図である。
【
図2】
図2は、前記結晶シリコン太陽電池を構成する太陽電池セルの平面図である。
【
図6】
図6は、
図5の前記太陽電池セルの第二接続電極近傍の拡大図である。
【
図8】
図8は、前記太陽電池セルの半製品である集合セルの平面図である。
【
図10A】
図10Aは、前記集合セルから太陽電池ストリングを形成する工程を説明するための模式図であって、集合セルの分割前を示す模式図である。
【
図10B】
図10Bは、前記集合セルから太陽電池ストリングを形成する工程を説明するための模式図であって、太陽電池ストリングを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明につき、一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。なお、以下の説明における「太陽電池セル」とは、「太陽電池ストリング」を構成する個々の板状部分を指す名称である。また、図面は本実施形態の構成を略示したものであって設計図面とは異なる。このため、図中の寸法関係は必ずしも正しくない点がある。
【0019】
本実施形態の結晶シリコン太陽電池100は、
図1に示すように、複数の太陽電池セル1を有し、各太陽電池セル1における隣接する各二つの太陽電池セル1,1が互いにシングリング接続されてなる太陽電池ストリング10を含む。この太陽電池ストリング10は、隣接する各二つの太陽電池セル1,1のうち、一方の太陽電池セル1の太陽電池セル1…1の並び方向における一端部と、他方の太陽電池セル1の太陽電池セル1…1の並び方向における他端部と、を重ねることで形成される。
【0020】
これら複数の太陽電池セル1…1の各々は、PERC型であり、
図2及び
図3に示すように、主面に略垂直な方向から視たとき短冊状(略長方形状)である。太陽電池セル1の短手方向における寸法は、例えば、25mm程度である。この太陽電池セル1は、
図4及び
図5に示すように、第一主面21及び第二主面22を有する一導電型の単結晶シリコン基板2と、第一主面21側に設けられた逆導電型の拡散層3、第一収集電極4(
図5参照)、及び、第一接続電極5と、を備える。さらに、この太陽電池セル1は、
図7にも示すように、第一主面21側に設けられた第一絶縁層6も備える。また、この太陽電池セル1は、第二主面22側に設けられた第二絶縁層(絶縁層)7、第二収集電極8、及び、第二接続電極9、を備える。また、この太陽電池セル1は、例えば、片面受光型の太陽電池セルである。
【0021】
太陽電池セル1では、単結晶シリコン基板2の第一主面21に略垂直な方向から視たとき、同一の単結晶シリコン基板2に設けられた第一接続電極5と第二接続電極9とは離間している(
図1参照)。また、太陽電池ストリング10は、隣接する各二つの太陽電池セル1,1が重複する重複領域11と、を有する。この重複領域11では、第一主面21に略垂直な方向から視たとき、隣接する各二つの太陽電池セル1,1のうち一方の太陽電池セル1の第一接続電極5と、隣接する各二つの太陽電池セル1,1のうち他方の太陽電池セル1の第二接続電極9とが重なった状態で接続される(シングリング接続される)。重複領域11は、太陽電池セル1の並び方向における第二接続電極9が配置された側である一方側に位置する第一重複領域111と、太陽電池セル1の並び方向における第一接続電極5が配置された側である他方側に位置する第二重複領域112と、を含む(
図4、
図5参照)。
【0022】
単結晶シリコン基板2の導電型(一導電型)は、n型でもp型でもよく、例えば、B濃度を1e15/cm3程度ドーピングしたp型である。また、単結晶シリコン基板2の第一主面21は、太陽電池セル1が片面受光型である場合には、単一の受光面である。単結晶シリコン基板2の第二主面22側には、少なくとも一つのベース部位23が設けられている。ベース部位23は、第二収集電極8と接触する部位に形成され、基板と同じ導電型であり、且つ基板よりも高濃度のドーピングを用いることで多数キャリアを効率良く回収する、例えば、Bを1e18/cm3程度の濃度に拡散させたp++部である。なお、ベース部位23は、後述する第二絶縁層7の開口部の形状に沿った形状であり、例えば、太陽電池セル1の並び方向及び単結晶シリコン基板2の厚み方向のいずれにも略直交した方向に延びるライン状である。
【0023】
本実施形態の単結晶シリコン基板2の一端縁24(太陽電池セル1の並び方向における第二接続電極9が配置された側である一方側に位置する端縁)は、第一主面21に略垂直な面である垂直面(へき開面)240と、後述する太陽電池セル1を形成する際のレーザー照射により形成されたレーザー痕である斜面241と、を有する(
図6参照)。なお、
図4、
図5では、単結晶シリコン基板2の一端縁24や単結晶シリコン基板2の他端縁25(前記並び方向における第一接続電極5が配置された側である他方側に位置する端縁)の形状は、垂直な面として示されていたが、実際には
図6のような形状である。
【0024】
第一収集電極4は、第一接続電極5から太陽電池セル1の並び方向に沿って延びるフィンガー電極である(
図2参照)。この第一収集電極4は、単結晶シリコン基板2と接触している側と反対側で拡散層3と接触する(
図5参照)。具体的に、第一収集電極4は、拡散層3の表面31に接触している。
【0025】
第一接続電極5は、バスバー電極である。この第一接続電極5は、隣接する各二つの太陽電池セル1,1がシングリング接続された状態で、接続対象の太陽電池セル1の第二接続電極9と接続される(
図1参照)。また、第一接続電極5は、拡散層3(具体的に、拡散層3の表面31)及び第一収集電極4と接触している(
図4、
図5参照)。
【0026】
第一収集電極4及び第一接続電極5の材料として、例えば、銀等の金属からなる微粒子とバインダー樹脂とを含むペースト状の材料等が含まれる。第一収集電極4及び第一収集電極4の形成方法として、例えば、スクリーン印刷等の印刷方法と、焼成等による固化方法とが含まれる。
【0027】
拡散層3の導電型(逆導電型)は、第一導電型と逆の導電型であればn型でもp型でもよく、例えば、Pを1e18/cm3程度の濃度に拡散させたn++部である。この拡散層3は、単結晶シリコン基板2の第一主面21と接触している。拡散層3の材料として、例えば、窒化シリコン(シリコンナイトライド、SiNX)が含まれる。拡散層3は、例えば、窒化シリコン層に、銀等の金属を含む第一収集電極4や第一接続電極5を印刷及び焼成することで形成される。
【0028】
第一絶縁層6は、拡散層3の表面31のうち第一収集電極4及び第一接続電極5が設けられていない部位に積層されている。第一絶縁層6の材料として、例えば、窒化シリコン(シリコンナイトライド、SiN
X)が含まれる。第一絶縁層6は、単結晶シリコン基板2と接触している側と反対側で拡散層3と接触する(
図4参照)。また、第一絶縁層6は、拡散層3(例えば、拡散層3の表面31)、第一収集電極4、及び、第一接続電極5と接触している(
図4、
図5参照)。
【0029】
第二絶縁層7は、単結晶シリコン基板2の第二主面22と接触する(
図5参照)。第二絶縁層7の材料として、例えば、窒化シリコン(シリコンナイトライド、SiN
X)が含まれる。第二絶縁層7には、少なくとも一つの開口部70が貫通している。即ち、第二絶縁層7は、少なくとも一つの貫通した開口部70を有する。この第二絶縁層7には、複数の開口部70が設けられている。
【0030】
開口部70は、例えば、第二絶縁層7に対するレーザー照射により形成される。本実施形態の第二絶縁層7では、開口部70は、単結晶シリコン基板2の第一主面21と略垂直な方向から視たとき、少なくとも、第一接続電極5と第二接続電極9とで挟まれた領域に設けられている。この領域に設けられる開口部70は、例えば、太陽電池セル1の並び方向及び単結晶シリコン基板2の厚み方向のいずれにも略直交した方向に延びるライン状である(
図3参照)。なお、この開口部70の短手方向における寸法は、例えば、1mm~3mm程度である。本実施形態の第二絶縁層7では、開口部70は、後述する第二接続電極9の間隔90があけられた領域にも設けられている。
【0031】
第二収集電極8は、単結晶シリコン基板2と接触している側と反対側で、第二絶縁層7と接触する(
図4、
図5参照)。この第二収集電極8は、第二絶縁層7の開口部70を介して、単結晶シリコン基板2に接続される。本実施形態の第二収集電極8は、単結晶シリコン基板2の第二主面22に沿った板状に形成されている。第二収集電極8は、単結晶シリコン基板2に接触することにより、単結晶シリコン基板2にベース部位23を形成する。
【0032】
また、第二収集電極8は、第二重複領域112(
図4、
図5の左側に位置する重複領域11)の大半において、第二絶縁層7を介して単結晶シリコン基板2と離間している。なお、ここでいう第二重複領域112の大半とは、第二重複領域112の一部を除く大半である。なお、第二収集電極8は、第二重複領域112の全域において、第二絶縁層7を介して単結晶シリコン基板2と離間していてもよい。本実施形態の太陽電池セル1では、第二重複領域112の前記並び方向における内側の端部を除く部分において、第二収集電極8と単結晶シリコン基板2とが離間する一方、第二重複領域112の前記並び方向における内側の端部において、第二収集電極8と単結晶シリコン基板2とが接触している。この第二収集電極8は、第二重複領域112に配置された部位であっても、特に第二重複領域112の前記並び方向における内側の領域において、重複する太陽電池セル1の間に太陽光が入り込んだ場合に生じるキャリアを収集すべく単結晶シリコン基板2に接触している。
【0033】
本実施形態の第一重複領域111(
図4、
図5の右側に位置する重複領域11)の一部においても、第二収集電極8と単結晶シリコン基板2とが接触している。この第二収集電極8は、単結晶シリコン基板2の前記並び方向における一方側に位置する端部で生じるキャリアを収集すべく単結晶シリコン基板2に接触している。
【0034】
本実施形態の第二収集電極8は、少なくとも、単結晶シリコン基板2の一端縁24(太陽電池セル1の並び方向における一方側に位置する端縁)と、第二接続電極9との間に配置されている。また、
図6に示すように、第二収集電極8の太陽電池セル1の並び方向における一方側に位置する端縁である一端縁81と、単結晶シリコン基板2の一端縁24の垂直面240との距離L1は、単結晶シリコン基板2の一端縁24の斜面241の前記並び方向における幅Wの150%以上である。
【0035】
さらに、第二収集電極8の前記並び方向における第一接続電極5が配置された他方側に位置する他端縁82と、単結晶シリコン基板2の他端縁25との距離L2は、第二重複領域112の前記並び方向における寸法L3の40%以上90%以下である。また、第二収集電極8の他端縁82と、単結晶シリコン基板2の他端縁25との距離L2は、例えば、0.4mm以上である。なお、第二重複領域112の前記並び方向における寸法L3は、1.5mm~2.0mm程度である。
【0036】
第二収集電極8の材料として、例えば、単結晶シリコン基板2に接触することによりこの単結晶シリコン基板2の一部に対して正孔をドープして、正孔が過剰な領域(例えば、p++部であるベース部位23)を形成可能なアルミニウム等の金属からなる微粒子とバインダー樹脂とを含むペースト状の材料等が含まれる。第二収集電極8の形成方法として、例えば、スクリーン印刷等の印刷方法と、焼成等による固化方法とが含まれる。第二収集電極8は、アルミニウムを含む場合、第二絶縁層7の開口部70と重なる部位において、アルミニウムが単結晶シリコン基板2と反応してAlSi(アルミシリサイド)となることにより変色するため、第二収集電極8の外観から開口部70の位置を把握することができる。
【0037】
第二接続電極9は、第二絶縁層7と接触している側と反対側で、第二収集電極8と接触する。この第二接続電極9は、第二絶縁層7を介して単結晶シリコン基板2と離間している。また、第二接続電極9は、太陽電池セル1の並び方向及び単結晶シリコン基板2の厚み方向のいずれにも略直交する方向において、間隔90をあけて配置されている(
図3、
図7参照)。なお、間隔90の第二接続電極9の延びる方向に直交する方向における幅は、例えば、5mm程度である。
【0038】
第二接続電極9の材料として、例えば、単結晶シリコン基板2に接触しても正孔が過剰な領域(例えば、p++部であるベース部位23)を形成しない銀等の金属からなる微粒子とバインダー樹脂とを含むペースト状の材料等が含まれる。第二接続電極9の形成方法として、例えば、スクリーン印刷等の印刷方法と、焼成等による固化方法とが含まれる。
【0039】
なお、太陽電池セル1では、単結晶シリコン基板2で生じたキャリアは、太陽電池セル1の並び方向、及び、この並び方向及び単結晶シリコン基板2の厚み方向のいずれにも略直交する方向において、ベース部位23及び第二収集電極8を介して、第二接続電極9に移動する(
図4~
図7参照)。
【0040】
このような太陽電池セル1は、太陽電池セル1となる部分(小区画120)が集合した半製品である集合セル12を、画定線124においてレーザー等により分割することで得られる。集合セル12は、一の辺121と、一の辺121と対向する対辺122と、を有する。また、集合セル12では、
図8及び
図9に示すように、複数の小区画120が、集合セル12の一の辺121に略平行な直線(
図8及び
図9における上下方向に延びる直線)である画定線124により画定される。集合セル12は、例えば、正方形の板状であるが、矩形板状や、八角形状(正方形の隅部を欠けさせた八角形状)等であってもよい。集合セル12に含まれる小区画120の数は、例えば、5個であるが、複数であれば6個等の他の数であってもよい。
【0041】
小区画120の各々は、太陽電池セル1と対応した構成を有する。集合セル12において、第二収集電極8は、第二主面22に略垂直な方向から視たとき、一の辺121から離間するとともに、一の辺121と対向する対辺122から離間している。
【0042】
第二接続電極9は、複数の小区画120のうち、一の辺121を含む小区画120については、一の辺121から遠い画定線124に沿って設けられる。また、第二接続電極9は、複数の小区画120のうち、対辺122を含む小区画120については、対辺122から遠い画定線124に沿って設けられる。具体的に、第二接続電極9は、一の辺121を含む小区画120において一の辺121から遠い画定線124の近傍でこの画定線124に沿って設けられ、対辺122を含む小区画120において対辺122から遠い画定線124の近傍でこの画定線124に沿って設けられる。
【0043】
なお、集合セル12の一の辺121や対辺122を含む端部26では、他の領域と比べてライフタイムが低くなりやすい。また、集合セル12では各層の厚みがばらつくことがある。例えば、集合セル12の端部26では、単結晶シリコン基板2の上方に位置する第一絶縁層6の厚みが、第一絶縁層6の他の部位の厚みより小さくなりやすい。
【0044】
太陽電池ストリング10は、集合セル12から得られた太陽電池セル1をシングリング接続することで得られる。例えば、
図10Aの一点鎖線で集合セル12を分割して得られた太陽電池セル1を、
図10Bに示すように端部26が隠れるようにシングリング接続することで、太陽電池ストリング10が得られる。このシングリング接続では、隣接する各二つの太陽電池セル1,1の第一接続電極5と第二接続電極9とが、金属ペースト13により接続される(
図1参照)。この金属ペースト13は、例えば、銀ペーストであり、ディスペンサーにより第一接続電極5や第二接続電極9に塗布される。
【0045】
以上の結晶シリコン太陽電池100によれば、第一重複領域111の大半や第二重複領域112の大半にキャリアを収集するための第二収集電極8が配置されていないが、日陰になる第二重複領域112では発電が行われにくい。そのため、第一重複領域111や第二重複領域112にキャリアを収集するための第二収集電極8が少なくなっていても支障が無く、第二収集電極8の材料の消費も抑えられる。これにより、構造を最適化した結晶シリコン太陽電池100を提供できる。
【0046】
本実施形態の結晶シリコン太陽電池100では、単結晶シリコン基板2で生じたキャリアの単結晶シリコン基板2からの移動(電荷保存則による移動)の経路を長くせずに、第二収集電極8でこのキャリアを収集できる。そのため、暗電流を抑制して出力を向上すると共に、抵抗を低減して出力を向上できる。
【0047】
また、本実施形態の結晶シリコン太陽電池100では、第二接続電極9と単結晶シリコン基板2との間に第二絶縁層7が存在することにより、第二接続電極9と単結晶シリコン基板2とが非接触である。そのため、これらの接触により生じる少数キャリアの再結合が抑えられ、ライフタイムの低下が抑制される。特に、本実施形態の結晶シリコン太陽電池100では、第二接続電極9が銀であることによりベース部位23のようなP++部を形成しないため、第二接続電極9が単結晶シリコン基板2と非接触であることが有用である。
【0048】
さらに、本実施形態の結晶シリコン太陽電池100が単結晶シリコン基板2の第一主面21が受光面である太陽電池セル1を含むため、結晶シリコン太陽電池100を一般的なPERC型太陽電池に適用できる。
【0049】
本実施形態の結晶シリコン太陽電池100では、太陽電池セル1の製造過程において集合セル12を切断するためにレーザーを照射する際に、前記並び方向における一方側において、第二収集電極8がレーザーの照射部位から離れて位置するため、第二収集電極8が損傷しにくい。
【0050】
また、本実施形態の結晶シリコン太陽電池100では、太陽電池ストリングの製造過程において太陽電池セル1をシングリング接続する際に、例えば、隣接する各二つの太陽電池セル1,1において接続される第一接続電極5と第二接続電極9との間に金属ペースト13を塗布することがある。この場合、この金属ペースト13が第一接続電極5と第二接続電極9とにより押しつぶされた結果はみ出して、はみ出た金属ペースト13が一方の太陽電池セル1の金属ペースト13が塗布された部位から裏側に回り込んだとしても、第二収集電極の太陽電池セル1の並び方向における他端縁82が、単結晶シリコン基板2の他端縁25よりも内側(前記並び方向における一方側)に退避しているため、第一接続電極5と第二収集電極8とが金属ペースト13により接続することに起因するリークが生じにくい。
【0051】
さらに、本実施形態の結晶シリコン太陽電池100では、第二接続電極9が分離されていることにより、開口部70から隣接する第二接続電極9に電流を流すことができるため、第二接続電極9に起因する抵抗を低減して出力をさらに向上できる。
【0052】
本実施形態の結晶シリコン太陽電池100では、集合セル12の端部26では少数キャリアのライフタイムが低いが、集合セル12の各小区画120を分離し、各小区画120を各太陽電池セル1としてシングリング接続する際に、集合セル12の一の辺121や対辺122であった部分が各太陽電池セル1の重複する重複領域11に位置するように、シングリング接続することができる。この場合、重複領域11では単結晶シリコン基板2が日陰になることから発電が行われにくいため、出力への影響を抑えることができる。しかも、太陽電池ストリング10において、第一主面21に略垂直な方向から視たときシリコンウエハの端部26が隠れるため、例えば、集合セル12の端部26に積層される第一絶縁層6の厚みが、第一絶縁層6の他の部位の厚みより小さくても、意匠性に優れた結晶シリコン太陽電池100が得られる。
【0053】
また、本実施形態の結晶シリコン太陽電池100では、第二重複領域112の一部、例えば、第二重複領域112の前記並び方向における内側の端部において、第二収集電極8と単結晶シリコン基板2とが接触している。そのため、この第二収集電極8が、第二重複領域112に近い領域(単結晶シリコン基板2における第二重複領域112近傍の領域)で生じたキャリアを収集可能であるため、出力を向上できる。
【0054】
尚、本発明の結晶シリコン太陽電池は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0055】
例えば、上記実施形態の結晶シリコン太陽電池100では、第一重複領域111の一部や第二重複領域112の一部において、第二収集電極8と単結晶シリコン基板2とが接触していたが、第一重複領域111の全域、及び、第二重複領域112の全域の少なくとも一方において、第二収集電極8と単結晶シリコン基板2とが第一絶縁層6や第二絶縁層7を介して離間していてもよい。
【0056】
また、太陽電池セル1を構成する各層の材料や形状は上記実施形態のものに限らない。例えば、上記実施形態の第二接続電極9は、太陽電池セル1の並び方向及び単結晶シリコン基板2の厚み方向のいずれにも略直交する方向において、間隔90をあけて延びていたが、間隔をあけずに延びていてもよい。
【0057】
さらに、太陽電池セル1は両面受光型であってもよく、この場合、第二収集電極が複数のライン状や格子状といった単結晶シリコン基板2の第二主面22側から光が入射する構造となる。また、この場合、単結晶シリコン基板2の第一主面21が一方の受光面であり、第二主面22が他方の受光面となる。
【0058】
以上より、本発明によれば、PERC型の太陽電池をシングリング接続してなる結晶シリコン太陽電池であって、構造を最適化した結晶シリコン太陽電池を提供することができる。
【0059】
本発明の結晶シリコン太陽電池は、それぞれがPERC型である複数の太陽電池セルを有し、且つ、前記複数の太陽電池セルのうち隣接する各二つの太陽電池セルが互いにシングリング接続されてなる太陽電池ストリングを含み、前記複数の太陽電池セルの各々は、第一主面及び第二主面を有する一導電型の単結晶シリコン基板と、前記第一主面と接触する逆導電型の拡散層と、前記単結晶シリコン基板と接触している側と反対側で前記拡散層と接触する第一収集電極と、前記拡散層及び前記第一収集電極と接触する第一接続電極と、前記第二主面と接触し、且つ、少なくとも一つの貫通した開口部を有する絶縁層と、前記単結晶シリコン基板と接触している側と反対側で前記絶縁層と接触するとともに、前記少なくとも一つの開口部を介して前記単結晶シリコン基板に接続される第二収集電極と、前記絶縁層と接触している側と反対側で前記第二収集電極と接触する第二接続電極と、を備え、前記複数の太陽電池セルの各々において、前記第一主面に略垂直な方向から視たとき、前記第一接続電極と前記第二接続電極とは離間しており、前記太陽電池ストリングは、前記隣接する各二つの太陽電池セルが重複する重複領域を有し、前記重複領域では、前記第一主面に略垂直な方向から視たとき、前記隣接する各二つの太陽電池セルのうち一方の太陽電池セルの前記第一接続電極と、前記隣接する各二つの太陽電池セルのうち他方の太陽電池セルの前記第二接続電極とが重なった状態で接続され、前記複数の太陽電池セルの各々において、前記重複領域の一部を除く大半或いは前記重複領域の全域では、前記第二収集電極と前記単結晶シリコン基板とが前記絶縁層を介して離間している。
【0060】
かかる構成によれば、日陰になっている重複領域では発電が行われにくいため、重複領域の大半にキャリアを収集するための第二収集電極が少なくなっていても支障が無く、第二収集電極が配置されない分だけ第二収集電極の材料の消費も抑えられる。これにより、構造を最適化した結晶シリコン太陽電池を提供できる。
【0061】
また、前記結晶シリコン太陽電池では、前記複数の太陽電池セルの各々の前記第二収集電極は、少なくとも、前記太陽電池ストリングにおける前記複数の太陽電池セルの並び方向の前記第二接続電極が配置された側である一方側に位置する前記単結晶シリコン基板の端縁と、前記第二接続電極との間に配置されていてもよい。
【0062】
かかる構成によれば、単結晶シリコン基板からの移動経路を長くせずに第二収集電極でキャリアを収集できるため、暗電流を抑制して出力を向上すると共に、抵抗を低減して出力を向上できる。
【0063】
また、前記結晶シリコン太陽電池では、前記第二接続電極と前記単結晶シリコン基板とが前記絶縁層を介して離間していてもよい。
【0064】
かかる構成によれば、第二接続電極と単結晶シリコン基板とが非接触であるため、これらの接触により生じる少数キャリアの再結合を抑えて、ライフタイムの低下を抑制できる。
【0065】
また、前記結晶シリコン太陽電池では、前記第一主面が受光面であってもよい。
【0066】
かかる構成によれば、この結晶シリコン太陽電池を一般的なPERC型太陽電池に適用できる。
【0067】
また、前記結晶シリコン太陽電池では、前記複数の太陽電池セルの各々において、前記単結晶シリコン基板の前記太陽電池ストリングにおける前記複数の太陽電池セルの並び方向における前記第二接続電極が配置された側である一方側に位置する端縁は、前記第一主面に略垂直な面と、前記複数の太陽電池セルの各々を形成する際のレーザー照射により形成された斜面とを有し、前記第二収集電極の前記一方側に位置する端縁と前記単結晶シリコン基板の前記第一主面に略垂直な面との距離は、前記斜面の前記並び方向における幅の150%以上であってもよい。
【0068】
かかる構成によれば、太陽電池セルの製造過程において太陽電池セルの半製品(集合セル)に切断のためのレーザーを照射する際に、第二収集電極がレーザーの照射部位から離れて位置するため損傷しにくい。
【0069】
また、前記結晶シリコン太陽電池では、前記複数の太陽電池セルの各々において、前記第二収集電極の前記太陽電池ストリングにおける前記複数の太陽電池セルの並び方向における前記第一接続電極が配置された側である他方側に位置する端縁と、前記単結晶シリコン基板の前記他方側に位置する端縁との距離は、前記重複領域の前記並び方向における寸法の40%以上90%以下であってもよい。
【0070】
また、前記結晶シリコン太陽電池では、前記複数の太陽電池セルの各々において、前記第二収集電極の前記太陽電池ストリングにおける前記複数の太陽電池セルの並び方向における前記第一接続電極が配置された側である他方側に位置する端縁と、前記単結晶シリコン基板の前記他方側に位置する端縁との距離は、0.4mm以上であってもよい。
【0071】
このような構成によれば、太陽電池ストリングの製造過程において太陽電池セルをシングリング接続する際に、例えば、隣接する太陽電池セルにおいて接続される第一接続電極と第二接続電極との間に金属ペーストを塗布することがある。この場合、この金属ペーストが一方の太陽電池セルの金属ペーストが塗布された部位から裏側に回り込んだとしても、第二収集電極の前記並び方向における他方側の端縁が、単結晶シリコン基板の他方側の端縁よりも内側(前記並び方向における一方側)に退避しているため、第一接続電極と第二収集電極とが金属ペーストにより接続することに起因するリークが生じにくい。
【0072】
また、前記結晶シリコン太陽電池では、前記第二接続電極は、前記太陽電池ストリングにおける前記複数の太陽電池セルの並び方向及び前記単結晶シリコン基板の厚み方向のいずれにも略直交する方向において、間隔をあけて配置され、前記第二接続電極の前記間隔があけられた領域には、前記絶縁層の開口部が配置されてもよい。
【0073】
かかる構成によれば、第二接続電極が分離されていることにより、各開口部から隣接する第二接続電極に電流を流すことができるため、抵抗を低減して出力をさらに向上できる。
【0074】
本発明の結晶シリコン太陽電池の集合セルは、それぞれが分割されることでPERC型である複数の太陽電池セルとなる複数の小区画が集合した結晶シリコン太陽電池の集合セルであって、前記集合セルは、一の辺と該一の辺の対辺とを有し、前記複数の小区画の各々は、前記集合セルの前記一の辺に略平行な直線である画定線により画定され、前記複数の小区画の各々は、第一主面及び第二主面を有する一導電型の単結晶シリコン基板と、前記第一主面と接触する逆導電型の拡散層と、前記単結晶シリコン基板と接触している側と反対側で前記拡散層と接触する第一収集電極と、前記拡散層及び前記第一収集電極と接触する第一接続電極と、前記第二主面と接触し、且つ、少なくとも一つの貫通した開口部を有する絶縁層と、前記単結晶シリコン基板と接触している側と反対側で前記絶縁層と接触するとともに、前記少なくとも一つの開口部を介して前記単結晶シリコン基板に接続される第二収集電極と、前記絶縁層と接触している側と反対側で前記第二収集電極と接触する第二接続電極と、を備え、前記複数の小区画の各々において、前記第一主面に略垂直な方向から視たとき、前記第一接続電極と前記第二接続電極とは離間しており、前記第二収集電極は、前記第二主面に略垂直な方向から視たとき、前記集合セルの前記一の辺から離間するとともに、前記集合セルの前記一の辺の対辺から離間しており、前記第二接続電極は、前記複数の小区画のうち、前記集合セルの前記一の辺を含む小区画については、前記集合セルの前記一の辺から遠い前記画定線に沿って設けられ、前記複数の小区画のうち、前記集合セルの前記対辺を含む小区画については、前記集合セルの前記対辺から遠い前記画定線に沿って設けられる。
【0075】
かかる構成によれば、集合セルの端部では少数キャリアのライフタイムが低いが、集合セルの各小区画を分離し、各小区画を各太陽電池セルとしてシングリング接続する際に、集合セルの一の辺や対辺であった部分が各太陽電池セルの重複する重複領域に位置するように、シングリング接続することができる。この場合、重複領域では日陰になることから発電が行われにくいため、出力への影響を抑えることができる。
【符号の説明】
【0076】
1…太陽電池セル、2…単結晶シリコン基板、3…拡散層、4…第一収集電極、5…第一接続電極、6…第一絶縁層、7…第二絶縁層(絶縁層)、8…第二収集電極、9…第二接続電極、10…太陽電池ストリング、11…重複領域、12…集合セル、13…金属ペースト、21…第一主面、22…第二主面、23…ベース部位、24…一端縁、25…他端縁、26…端部、31…表面、70…開口部、81…一端縁、82…他端縁、90…間隔、100…結晶シリコン太陽電池、111…第一重複領域、112…第二重複領域、120…小区画、121…位置の辺、122…対辺、124…画定線、240…垂直面(へき開面)、241…斜面、L1、L2…距離、L3…寸法、W…幅