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特許7520832グリコール-水混合物のための分離法及び反応器システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】グリコール-水混合物のための分離法及び反応器システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 3/00 20060101AFI20240716BHJP
   B01D 3/06 20060101ALI20240716BHJP
   B01D 1/00 20060101ALI20240716BHJP
   B01D 1/26 20060101ALI20240716BHJP
   B01D 1/28 20060101ALI20240716BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20240716BHJP
   C07C 29/80 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B01D3/00 A
B01D3/06
B01D1/00 Z
B01D1/26
B01D1/28
C07C31/20 A
C07C29/80
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021528416
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2019081981
(87)【国際公開番号】W WO2020104552
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】2022037
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】517222797
【氏名又は名称】イオニカ・テクノロジーズ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・バニール・デ・ハーン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・フォルケルト・ザンデル
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開昭47-003506(JP,A)
【文献】特公昭48-044633(JP,B1)
【文献】米国特許第03878055(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0072663(US,A1)
【文献】米国特許第04332643(US,A)
【文献】国際公開第2008/070608(WO,A1)
【文献】中国実用新案第205832659(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D1/00-5/00
C07B63/00-63/04
C07C1/00-409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコール化合物を水から少なくとも部分的に分離して、少なくとも90質量%の産生濃度の多価アルコール化合物を含む精製された生成物ストリームを得るようにする方法であって、
多価アルコール化合物と水との混合物を提供する工程であって、前記混合物がある多価アルコール濃度を有する工程と、
蒸発段階において前記混合物の多価アルコール濃度を増加させる工程であって、蒸発段階の少なくとも一部が第1の圧力で作動される工程と、
還流手段を備える蒸留段階において前記混合物を処理して、少なくとも90質量%の産生濃度の多価アルコール化合物を含む精製された生成物ストリームを送出する工程であって、蒸留段階が第2の圧力で作動される工程と
を含み、
前記蒸留段階が産生蒸気を生成するように作動され、前記蒸発段階に連結されており、前記第2の圧力が前記第1の圧力より高く、
前記蒸発段階が少なくとも1つのフラッシュ容器を備え、
前記少なくとも1つのフラッシュ容器にはリボイラーが設けられ、かつ、還流のためのいかなる手段も含まない、方法。
【請求項2】
前記蒸発段階及び前記蒸留段階は、大気圧で規定した場合に、前記蒸発段階内の蒸発温度が、大気圧における純水の沸点より最大30℃高いように、作動される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フラッシュ容器が、供給原料入口と前記リボイラーからのリサイクルストリームからの入口との間に蒸留トレイを備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記蒸発段階が、直列である複数の容器を備え、各容器が異なる圧力で作動する、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記蒸留段階の前記産生蒸気が、前記蒸発段階の最も下流の容器に連結されている、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記蒸発段階の最も下流の容器が、直接先行する容器に熱交換によって連結されている産生蒸気を有し、前記最も下流の容器が、前記直接先行する容器より高い圧力で作動される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記蒸留段階の前記産生蒸気が、蒸気圧縮器によって第3の圧力に圧縮される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記蒸発段階が、多重効用蒸発器を含む、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記多価アルコール化合物と水との前記混合物の前記多価アルコール濃度が少なくとも40質量%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記多価アルコール化合物がグリコール化合物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記多価アルコール化合物と水との前記混合物が、縮合ポリマーの解重合から得られるオリゴマーを更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物を、前記蒸発段階を通過した後、濃縮段階において処理して、前記多価アルコール濃度を更に増加させ、前記混合物を、前記濃縮段階において反応器から供給される廃熱によって加熱する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
多価アルコール化合物を水から分離して、少なくとも90質量%の産生濃度の多価アルコール化合物を含む精製された生成物ストリームを得るようにするための反応器システムであって、
水中の多価アルコール化合物の混合物のための入口と、前記多価アルコール化合物が濃縮されたストリームのための出口とを備える蒸発段階であって、前記蒸発段階の少なくとも一部分において第1の圧力で作動されるように構成されている蒸発段階と、
前記蒸発段階から到達する前記多価アルコール化合物が濃縮された前記ストリームのための入口と、前記精製された生成物ストリームのための出口と、産生蒸気のための出口とを備え、還流手段を備える蒸留段階であって、第2の圧力で作動するように構成されており、前記産生蒸気が前記蒸発段階に連結されており、前記第2の圧力が前記第1の圧力より高いようになる蒸留段階と、を含み、
前記蒸発段階が少なくとも1つのフラッシュ容器を備え、
前記少なくとも1つのフラッシュ容器にはリボイラーが設けられ、かつ、還流のためのいかなる手段も含まない、反応器システム。
【請求項14】
蒸気圧縮器を更に備えて、前記蒸留段階の前記産生蒸気を圧縮するようにする、請求項13に記載の反応器システム。
【請求項15】
記少なくとも1つのフラッシュ容器が、供給原料入口と前記リボイラーからのリサイクルストリームからの入口との間に蒸留トレイを備える、請求項14に記載の反応器システム。
【請求項16】
前記蒸留段階の前記産生蒸気が、前記蒸発段階の最も下流の容器に連結されている、請求項14又は15に記載の反応器システム。
【請求項17】
前記蒸発段階の最も下流の容器が、直接先行する容器に熱交換によって連結されている産生蒸気を有し、前記最も下流の容器が、前記直接先行する容器より高い圧力で作動される、請求項14から16のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項18】
前記蒸発段階が、多重効用蒸発器を用いて少なくとも部分的に、具現化されている、請求項14から17のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項19】
前記蒸発段階の下流にあり、且つ前記蒸留段階の上流にある濃縮段階を更に含み、前記濃縮段階が、反応器から供給される廃熱から生じる加熱されたストリームの供給を与えられる、請求項14から18のいずれか一項に記載の反応器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価アルコール化合物を水から少なくとも部分的に分離して、少なくとも90wt%の産生濃度の多価アルコール化合物を含む精製された生成物ストリームを得るようにする方法であって、多価アルコール化合物と水との混合物を用意する工程と、蒸留段階において混合物を処理して多価アルコール化合物の濃度を増加させる工程とを含む方法に関する。
【0002】
本発明は、前記方法を実施する反応器システムに更に関する。
【背景技術】
【0003】
グリコール等の多価アルコール化合物は、天然ガスの精製、エチレンオキシド、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールの調製、並びにポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルの重合、並びに典型的に廃棄材料のリサイクルの1工程としての、そのようなポリエステルの解重合を含む様々な化学プロセスにおいて使用される。最も一般に使用されるグリコールのうちの1種は、エチレングリコールである。
【0004】
典型的には、これらのグリコールの使用の結果として、水との混合物が得られる。当技術分野で周知の課題は、グリコール化合物又は他の多価アルコール化合物の純粋な又はほぼ純粋なストリームの再生に、減圧蒸留及び多量のエネルギーを費やす他の処理が必要とされることである。それに加えて、混合物中に存在する追加の化合物も蒸発して、環境汚染を起こし得る危険性がある。結果として、逆浸透、膜蒸留、パーベーパレーション、減圧蒸留、オゾン化、活性炭吸収の使用、ストリッピングによるアルデヒド分離、及びイオン交換を含む、グリコールを水から精製するためのプロセスがいくつか想定された。これらの方法の多くは水性廃棄物ストリームにおけるグリコールの濃度の低減に焦点を当てる。精製されたグリコール又は他の多価アルコールを得るための混合物の生成には、典型的なアプローチとして、(真空)蒸留、逆浸透、パーベーパレーション、及び/又はそれらの組み合わせがある。
【0005】
1つの具体的な方法はUS2,218,234から公知である。この特許は、イソプロピルアルコール(50~75%)、エチレングリコール(10~30%)、水、染料、及び塩(合わせて5~15%)の分離のための方法を開示している。第1の工程において、混合物を蒸留によって処理して、イソプロピルアルコール及び一部の水を除去するようにする。残留物は供給原料タンクへと通過され、そこから別の蒸留塔に供給される。次いで、トルエン等の140℃未満で沸騰する炭化水素を蒸気として第2の蒸留塔に加える。トルエンの存在に起因して、グリコールの脱水は特にないが、トルエンは約109℃の温度でグリコール及び水を持ち込む。
【0006】
したがって、これはグリコールから水を除去するための効果的な方法を提供しない。
【0007】
別の方法がUS4,332,643から公知である。この方法は、水とグリコールとの「希釈された」混合物から出発して、少なくとも99.9%の濃度の、トリエチレングリコール等のグリコールを提供する目的を有する。この希釈された混合物は、還流凝縮器の冷却剤として使用され、ここで、混合物は140~150°F(60~65℃)まで加熱され、三相分離器に導かれ、ここで任意のガスが分離される。次いで、混合物は約94.5質量%の濃度を有し、蒸留塔に導かれ、そこで98.5~99.0wt%に濃縮される。濃縮されたグリコールは、198℃の温度で作動しているリボイラーに、次いで、198~221℃の温度で作動している排水装置に移動する。これは、初期濃度がすでに90wt%超でありながら、水を含まないグリコールを達成するための高価なプロセスである。
【0008】
また、更なる方法及びシステムがUS5,234,552から公知である。開示される発明の目的は、グリコール脱水中の芳香族化合物の大気への排出を阻止することである。そのような排出は、水、及び液体としての炭化水素を蒸気の形態で含む。開示されるシステムは、蒸留物ウェル(distillate well)からくる使用可能なガス及び炭化水素を分離するための低温分離システムを備える。そこで、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の乾燥剤が注入され、いくらかの炭化水素を含むグリコール及び水が混合したストリームとして分離器を出る。このストリームは、350~400°F(177~204℃)の温度で作動しているグリコールリボイラーに移送される。しかしながら、この温度は水の大気中の沸点よりずっと高い。換言すると、これはエネルギー効率の良い方法ではなく、改善が望まれる。
【0009】
代替的な方法がUS5,269,933から公知である。ここで、グリコール濃度が約20wt%(一般に5~70wt%)であるグリコール/水混合物において、グリコールが少なくとも90%、好ましくは少なくとも95wt%の濃度に濃縮される。そこへ、グリコール/水混合物は蒸留によって最初に処理され、蒸留は常圧及び減圧(真空蒸留)で実施されてもよい。次の工程は、水選択的膜、及び20~150ミリバールの浸透側圧力を用いたパーベーパレーションの適用による有機流体の濃縮である。蒸留から得られる水のストリームは、20~70バールの圧力で逆浸透を用いて更に処理される。しかしながら、パーベーパレーションの低圧力(0.2バール未満)は、深真空であり、逆浸透の圧力は高い。両方が作動を複雑にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】US2,218,234
【文献】US4,332,643
【文献】US5,234,552
【文献】US5,269,933
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、グリコール等の多価アルコール化合物を脱水するためのエネルギー効率の良いプロセスであって、非常に高い圧力及び非常に低い圧力の使用を防ぐか、又は少なくとも著しく限定されるプロセスが依然として必要とされる。
【0012】
そのようなプロセスを実行することができる反応器システムも必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、第1の態様によれば、本発明は、多価アルコール化合物を水から少なくとも部分的に分離して、少なくとも90wt%の産生濃度の多価アルコール化合物を含む精製された生成物ストリームを得るようにする方法を提供する。本発明の方法は、(1)多価アルコール化合物と水との混合物を用意する工程であって、前記混合物が多価アルコール濃度を有する工程と、(2)少なくとも一部が第1の圧力で作動される蒸発段階において混合物の多価アルコール濃度を増加させる工程と、(3)第2の圧力で作動される蒸留段階において混合物を処理して、少なくとも90wt%の産生濃度の多価アルコール化合物を含むストリームを送出する工程とを含む。本発明によれば、蒸留段階は産生蒸気(steam output)を生成するように作動され、産生蒸気は任意選択で第3の圧力まで圧縮され、蒸発段階に熱交換を用いて連結されており、第2の圧力及び/又は任意の第3の圧力は第1の圧力より高い。
【0014】
第2の態様によれば、本発明は、多価アルコール化合物を水から分離して、少なくとも90wt%の産生濃度の多価アルコール化合物を含む精製された生成物ストリームを得るようにするための反応器システムを提供する。本発明の反応器システムは、水との多価アルコール化合物の混合物のための入口と、多価アルコール化合物が濃縮されたストリームのための出口とを備える蒸発段階であって、前記蒸発段階の少なくとも一部分において第1の圧力で作動されるように構成されている蒸発段階を含む。反応器システムは、蒸発段階から到達する多価アルコール化合物が濃縮されたストリームのための入口と、精製された生成物ストリームのための出口と、産生蒸気のための出口とを備える蒸留段階であって、第2の圧力で作動するように構成されており、産生蒸気が熱交換を用いて蒸発段階に連結されており、産生蒸気が任意選択で第3の圧力まで圧縮され、第2の圧力又は任意の第3の圧力が第1の圧力より高いようになる蒸留段階を更に含む。
【0015】
水-グリコール混合物の沸点が、特にグリコール濃度がUS5,269,933等における約20wt%ではなく50wt%超である場合、エチレングリコールの濃度に伴って急速に上昇する傾向があることを本発明者らは見出した。しかしながら、複数の蒸留段階又は効用(effect)を有する設備において典型的であるように、圧力が逆ではなく第1の段階から最後の段階へと増加するように直列に(in a series)蒸発段階及び蒸留段階を配置することによって、そのような上昇を防ぐことができる、又は少なくとも強力に抑制することができる。加えて、蒸留段階からの蒸気(steam)が、蒸発段階の少なくとも1つの部分を加熱するために使用されるという点で、エネルギー効率は保たれる。そこへ、産生蒸気は、蒸発段階における塔又は効用に連結される。蒸発段階が蒸留塔及び/又はフラッシュ容器を備える場合は、連結は熱交換器を介して生じる。好適には、熱交換器は、蒸気のストリームと混合物の出口ストリームの一部分との間で熱を交換し、前記一部分は前記蒸留塔又はフラッシュ容器へ戻される。蒸発段階が多重効用蒸留のための設備を備える場合、蒸気のストリームはその加熱チャネルに適用されてもよい。好ましくは、システムは、段階内の蒸発温度が、大気圧における純水の沸点より、大気圧において規定されて最大30℃、より好ましくは最大20℃高いように構成される。
【0016】
本発明の好適な一実施形態において、蒸発段階は少なくとも1つのフラッシュ容器を備える。そのようなフラッシュ容器は、プロセス産業において周知である頑丈な装置である。フラッシュ容器は、高温で作動される別の反応器を空にしている場合などの、熱が利用可能になる場合に、時々、一時的に供給される追加のエネルギーを吸収しうるという利点を有する。断続的に利用可能になるようなエネルギーを移送するためには、バッファータンクを使用してもよい。代替的には、前記別の反応器から材料を蒸留段階に直接加えてもよい。次いで、加えられた熱は、熱交換器を介して蒸発段階に移送される。複数のフラッシュ容器を直列に使用することが好ましい。そのような直列の反応器(又は容器)により、圧力を段階的に増加させることができ、且つ反応器のそれぞれは、蒸発する水の量が反応器のそれぞれにおいて同様であるか又は等しいように構成することができる。本明細書において「同様である」という用語は、最大25%の変化量であることを指す。
【0017】
好ましくは、少なくとも1つのフラッシュ容器にはリボイラーが設けられている。これは、フラッシュ容器の底部側で蒸気を生成するための効果的な手段である。リボイラーは、当業者に公知であるように、フラッシュ容器に対して外部にあっても内部にあってもよい。好ましくは、リボイラーの作動に必要とされる熱は、より下流に位置する容器から供給される。特に、そのような下流の容器を出る蒸気ストリームはそれに対し適切であると考えられる。本発明に従って、より下流の容器は、より高い圧力で作動されることが認められる。したがって、そのような下流の容器からの蒸気の温度は、リボイラーが連結されている容器の温度より高い。したがって、熱交換は非常に効果的である。
【0018】
更なる実施形態において、少なくとも1つのフラッシュ容器は、供給原料入口とリボイラーからの再循環ストリーム(recycle stream)の入口との間に蒸留トレイを備える。蒸発段階が直列である第1、第2、及び第3の容器等の複数の容器を備える実施形態において、第3及び第2の容器にそのような蒸留トレイが設けられていることが非常に好ましい。
【0019】
そのような蒸留トレイの存在により、エネルギー消費を著しく低減することができることが見出されている。好ましくは、容器当たりの蒸留トレイの数は、少なくとも2つ、例えば、最大10枚まで、より好ましくは3~5枚等の最大6枚までの範囲である。更に、容器は、還流のためのいかなる手段も含まないため、蒸留塔ではない。結果として、蒸留塔内の温度が第1の成分(即ち多価アルコール)及び第2の成分(即ち水)の沸点の間で変動する(run)のに対し、このことは蒸留トレイを有するフラッシュ容器においては必要ではない。蒸留トレイの数は、すべての利用可能な容器に関して同じである必要はないことは言うまでもない。
【0020】
代替的には、蒸発段階は少なくとも部分的に多重効用蒸留設備として具現化される。これの使用は費用対効果が大きい。更に、所望であるか又は必要である場合、圧力は、特定の構築物又は安全対策を必要とせずに、多重効用蒸留設備内で低い最小圧力で設定されてもよい。換言すると、多重効用蒸留での最小圧力は、大きい体積又は追加の安全対策を必要とせずに、フラッシュ容器及び塔を使用する場合の圧力より低くすることができる。より低い最小圧力、例えば0.2バールまでを使用する能力は、蒸留段階が大気圧で作動されうる利点、及び蒸留段階の産生蒸気への圧縮が必要とされない利点を有する。そのような多重効用蒸留設備における効用の数は、好ましくは少なくとも3つである。
【0021】
明確にするために、多重効用蒸留は、当然ながら1つのフラッシュ容器又は更により多くの容器の存在と組み合わされてもよいことが認められる。しかしながら、蒸発段階の技術的実装として多重効用蒸留又はフラッシュ容器のいずれかを選択することがより有利であると思われる。
【0022】
更なる実施形態において、濃縮段階は、蒸発段階の下流に且つ蒸発段階の上流に設けられる。蒸発段階中の熱は、好ましくは最終的に蒸留段階から提供されるが、濃縮段階に供給される熱は、多価アルコール化合物を水から分離するための反応器システムに対して外部の源から発生する。例えば、熱は反応器、例えば、供給原料がそこから蒸発段階へと供給される反応器からの廃熱であってもよい。熱は、濃縮段階中の混合物に、熱交換を用いて供給される。そのようなものは、従来の熱交換器、又は(蒸気又は液体の形態の)廃熱の循環システムが設けられた蒸発装置でありうる。そのような濃縮段階の最も好ましい実装は、多重効用設備として設計された蒸発器として、より好ましくは、蒸発段階のために使用される多重効用蒸留設備と構造的に類似している。
【0023】
前に言及したように、蒸留段階の産生蒸気が蒸気圧縮器において圧縮されることは、本発明よる選択肢である。蒸気圧縮器の使用により、蒸留段階が大気圧で又は大気圧近くで、例えば最大1.5気圧で作動されることが可能である。このことは、多価アルコール化合物と水との混合物が任意の添加剤を含む場合、大きな利点を有する。より高い圧力の使用は、段階の温度も上昇することを意味する。そのような条件において、任意の添加剤が、例えば、多価アルコールと、又は空気中の任意の酸素と、又は存在する他の添加剤と、反応する危険性が生じる。より詳細には、ポリエステルの解重合において得られるオリゴマーが前記混合物中に存在する場合、これらのオリゴマーは混合物を着色するおそれがある。そのような着色は、精製された生成物ストリームはそのようなものとしてはもはや許容されないため、非常に望ましくない。
【0024】
典型的には、複数の容器、好ましくは供給原料入口と蒸気入口との間の黄褐色の領域に蒸留トレイを備えるフラッシュ容器を使用する場合、圧縮された蒸気は、蒸発段階における最も下流位置に配置された容器、換言すると蒸留段階に直接先行する(directly preceding)容器へと導かれる。これの利点は、そのような最も下流の容器が、大気圧で、又はほぼ大気圧で作動されうることである。
【0025】
代替的に、又は追加的に、蒸発段階の第1の容器又は効用からの蒸気圧縮を産生蒸気に適用することが可能である。圧縮された産生蒸気は、更なる容器又は効用の産生蒸気へと導かれる。ここで、第1の容器又は効用は、更なる容器又は効用と比べて減圧で作動する。この実施形態では、圧力差を維持するために、蒸留段階から蒸発段階に戻る蒸気のストリームに蒸気圧縮を適用しない。むしろ、蒸気圧縮は、低圧力容器又は効用からの産生蒸気に適用されて、そのような蒸気が更なる容器又は効用のより高い圧力へと高められることを確実にする。
【0026】
濃縮段階が蒸発段階と蒸留段階との間に存在する場合、蒸留段階からの産生蒸気は蒸発段階において再利用され、したがって、濃縮段階におけるすべての容器又は効用を通過する。
【0027】
反応器システム及び方法は、任意の種類の多価アルコール化合物に関して実行可能であるが、グリコール化合物は有利であると考えられる。好ましいグリコール化合物はエチレングリコールである。好適には、多価アルコール化合物と水との混合物の初期濃度は、少なくとも40wt%の多価アルコール化合物である。好ましくは、初期濃度は、更により高く、少なくとも45wt%、又は更に少なくとも50wt%等である。より好ましくは、方法は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルの解重合において用いられるように、エチレングリコールの再生のために用いられる。
【0028】
本発明のこれらの態様及び他の態様を、図を参照して更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】直列であるフラッシュ容器及び2つの蒸留塔を有する蒸発段階を含む、本発明の反応器システムの第1の実施形態を示す概略図である。
図2】フラッシュ容器を有する蒸発段階を含む、本発明の反応器システムの第2の実施形態を示す概略図である。
図3】多重効用蒸留設備として具現化される蒸発段階を含む、本発明の反応器システムの第3の実施形態を示す概略図である。
図4】蒸気圧縮器を使用する、第1の実施形態の変形を示す概略図である。
図5】蒸気圧縮器を使用する、第1の実施形態の変形を示す概略図である。
図6】蒸気圧縮器を使用する、第1の実施形態の変形を示す概略図である。
図7】第2の実施形態の変形を示す概略図である。
図8】第2の実施形態の変形を示す概略図である。
図9】第3の実施形態の変形を示す概略図である。
図10】第3の実施形態の変形を示す概略図である。
図11】第3の実施形態の変形を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図は縮尺通りには記載されていない。異なる図における同じ参照番号は、等しいか又は対応する要素を指す。バールと言及される場合、これは絶対圧力を指す。したがって、1バールは105Paである。各図は、蒸留段階100及び蒸発段階200を含む、本発明の反応器システムを示す。蒸留段階は、図1図10の実施形態において蒸留塔として具現化される。図11の実施形態において、蒸留段階は、多重効用蒸留設備における効用である。蒸留段階100は、蒸留塔220、230、又は蒸発段階200における効用に対応していてもよいが、それが必須ではない。いずれの場合でも、蒸留段階100は、高圧蒸気等の反応器システムの外部からの動力(図中に示されない)によって駆動される。
【0031】
本発明の反応器システムは、多価アルコール化合物、好ましくはグリコール、例えばエチレングリコールと水との混合物が生成される更なる反応器システムによって好適に先行されることが、明確さのために認められる。典型的には、前記混合物は任意の更なる化合物を含有し、当該化合物は1つ又は複数の事前処理において混合物から除去される。例えば、エチレングリコール等のグリコールは、ポリエステル又はポリアミド等の触媒解重合のために使用される。1つの具体的な例は、エチレングリコール中でのポリエチレンテレフタレートの触媒解重合であり、ここで、冷却及び分離の目的のために水が加えられ、遠心分離処理を用いて触媒及びオリゴマーが除去されるようにする。得られる混合物は、ろ過されて除去されることになる粒子状汚染物質、並びに結晶化及び固体-液体分離によって分離されることになるBHET(ビス-ヒドロキシエチルテレフタレート)等のポリエステルのモノマーを含む。
【0032】
以下に詳しく述べるように、触媒解重合は、バッチ方式で、グリコール(典型的にはエチレングリコール)の沸点に近い温度で、よって例えば160~200℃の範囲、好ましくは180~200℃で実施されてもよい。解重合反応器を空にすることにより、熱が放出される。本発明のプロセス及び反応器システムの特定の実装において、この熱はグリコールの脱水において再利用される。
【0033】
典型的には、多価アルコール化合物と水との混合物は、少なくとも40wt%、好ましくは少なくとも45wt%、より好ましくは少なくとも50wt%の多価アルコール化合物の濃度を有する。多価アルコール化合物の濃度がより低い場合、適切な方法で増加させることができる。これはフラッシュ容器、膜蒸留、又は任意の他の公知の手法を用いて実施されうる。これは、多価アルコール化合物が40wt%より低い混合物の沸点は濃度にあまり影響されないため、重要ではない。
【0034】
本発明によれば、精製された混合物は、少なくとも90wt%の多価アルコール化合物の濃度を有する。濃度は少なくとも95質量%又は少なくとも99質量%等、より高くありうる。解重合に由来する混合物の再生の場合、混合物は、モノマー、ダイマー、及び更なるオリゴマー等の、解重合から得られるいくらかの溶解した化合物を更に含む。そうすると、100%の多価アルコール化合物の濃度は、実現可能ではない。再生された多価アルコール組成物が、塩等のいくらかの他の添加剤を含むことは除外されない。
【0035】
図1を見ると、蒸留塔として具現化される蒸留段階100、並びに3つのサブ段階、つまりフラッシュ容器210及び2つの更なる塔又は容器220、230を有して具現化される蒸発段階200を有する反応器システムが示されている。多価アルコール化合物の初期濃度が例えば40~50wt%の間である、多価アルコール化合物、水、及び任意の更なる添加剤の混合物である供給原料ストリーム199は、供給原料入口201において蒸発段階200に入る。次いで、それは、示される実施形態においてフラッシュ容器である第1のサブ段階210に入る。フラッシュ容器は減圧及び低下した温度の下で、本実施形態において例えば、0.2バール及び60℃で沸騰している。蒸気は、蒸気出口213を介して容器210を出て、熱交換器241を通過した後、凝縮器240に導かれる。多価アルコール化合物が濃縮されたストリーム219は、底部においてフラッシュ容器を出る。
【0036】
その一部分214は、熱交換器215を通過した後、容器210に戻る。この熱交換器215はリボイラーとしても公知である。そのようなリボイラーは、フラッシュ容器210(又は任意の蒸留塔)の一部分として、又は個別の器具として実装されてもよい。ポンプは、戻し分岐部215の一部分として存在してもよいが、これは絶対に必要であるとは考えられない。戻し分岐部214中の混合物は、リボイラー/熱交換器214において、第2のサブ段階220に由来する蒸気228を用いて加熱される。結果として、第1のサブ段階210の底部での温度は、蒸気228の温度と等しくなるか、又はほぼ等しくなる。本明細書における「ほぼ等しい」という用語は、移送及び熱交換における熱損失から生じる任意のずれを指す。1つの更なる実装において、蒸留トレイは、フラッシュ容器210において、供給原料入口199とリボイラー214からの入口との間に存在する。供給原料入口199より下の蒸留トレイにより、還流を必要とせずに蒸留がいくらか行われる。これには、効果的な蒸発への良い影響があることがわかり、このことは作動全体に対して有益である。更に、蒸留トレイは、0.5バール未満の圧力等の比較的低い圧力においてフラッシュ容器の作動安定性に寄与する。
【0037】
第2のサブ段階220及び第3のサブ段階230の作動は、本質的に第1のサブ段階210の作動の繰返しである。しかしながら、第1のサブ段階210がいかなる蒸留トレイも備えない場合、第2及び第3のサブ段階220、230がそのような蒸留トレイを備えることが好ましい。これらのトレイは、供給原料入口(ストリーム219、229からの)と再沸騰させたストリーム224、234との間に位置することになる。蒸発段階の第2及び第3のサブ段階220、230のための蒸留塔の使用と比較すると、還流は存在しない。これは費用対効果が大きく、効果的な沸点からずれる頂部温度及び底部温度を有するサブ段階220、230を作動させることが可能になる。その上、且つ更により重要なことには、蒸留トレイの存在により、リボイラー中の水とともに蒸発する、エチレングリコール等のいかなる多価アルコールも蒸気から洗い落とされ、底部の出口に向かって供給原料とともに流れ戻るという利点がもたらされる。結果として、これらのサブ段階210、220、230を、それらの蒸気出口213、223、233において出る蒸気は、多価アルコールによる汚染をより少なく含有する、即ち、より高い純度を有することになる。
【0038】
更に、理解されるように、第2及び第3のサブ段階220、230における圧力、温度、及び多価アルコール化合物の濃度は、第1のサブ段階210におけるものよりも高い。最も下流のサブ段階230は、産生蒸気103において蒸留段階100を出る、蒸留段階100からの蒸気192からのその熱を受け入れる。効率のために、図1に例示される実施形態、他の図に例示される実施形態も、入力101における供給原料の含水量を低減するように設計されている。
【0039】
蒸留段階100は更に、蒸発段階200に由来する濃縮されたストリーム239のための入口101、精製されたストリーム191のための生成物出口102、及び戻し分岐部104における熱交換器105を有する。図1には示されていないが、この熱交換器105は、好適なことに、蒸留段階100へ高圧蒸気を供給するものである。残りの低圧蒸気は、ストリーム193として更に導かれて(図2を参照されたい)、残りの熱を蒸発段階200に移送してもよい。図示されていないが、蒸留段階100には更に、当業者にそれ自体で公知の還流手段が設けられている。ここで、産生蒸気103において蒸留段階100を出る蒸気192は、先行する段階のリボイラー235(又は代替的に図2におけるように215)へ向かう部分と還流からの部分とに分けられる。還流は、蒸気を凝縮すること、凝縮した蒸気を還流缶に導くこと、及び還流缶からの液体を蒸留段階100の頂部へとポンプで送り返すことを包含する。当業者に理解されるように、還流手段の正確な実装は、変更することができる。
【0040】
圧力が漸次的に増加する、この順序によって、混合物は多価アルコール化合物を段階的に濃縮することができ、ここで、解放される水は、工程のそれぞれにおいておおよそ等しい(おおよそ等しいとは最大50%、好適には最大30%の差内であることを意味する)。更に、沸点の温度が上昇し過ぎないことがここで達成される。表1からわかるように、産生蒸気103において蒸留段階100を出る蒸気228は、100℃の温度しか有していない。
【0041】
【表1】
【0042】
図2は、第2の実施形態による本発明の反応器システムを概略的に示す。この第2の実施形態において、蒸発段階200はフラッシュ容器210のみを備える。そのようなシステムは、段階毎に平衡蒸発に達するための段階的な圧力の減少から恩恵をそれほど受けない。しかしながら、熱の再利用において、システムの作動は実行可能であり、エネルギー効率が良い。この図に関連して示される原理は、複数の蒸留塔を有する蒸発段階200を含む反応器システムにも適用されうる。示されるシステムにおいて、熱交換器105を介して蒸留段階100を加熱するために使用される高圧蒸気は戻し分岐部104に至る。その後、蒸気193は、濃縮されたストリーム219を事前加熱するために適用することができ、ストリーム219は蒸留段階にその入口101において入ることになる。なお、残りの蒸気は、フラッシュ容器210にその入口201において入る供給原料199を加熱するために使用できるため、有用である。供給原料199の温度の上昇により、フラッシュ容器210等においての蒸発段階200において、減圧条件下での蒸発をもたらす。これは、圧力がより低いとフラッシュ容器210における沸点の温度がより低くなるため、フラッシュ容器が蒸留段階より低い圧力で作動する本発明の方法において特に効果的である。したがって、フラッシュ容器において水-アルコール混合物中の水のかなりの部分を蒸発させることが実行可能となり、このことは、最少量部の水を有するアルコール溶媒という所望の結果を達成するために明らかに有益である。
【0043】
第2の実施形態の文脈において、蒸留段階の圧力は、好ましくは1.0~2.0バールの範囲であり、フラッシュ容器における圧力は、好適にはその20~60%、例えば、最大1バール、好ましくは0.2~0.6バールである。
【0044】
追加的にこの図2に示すように、蒸留段階100において発生する蒸気192は、熱交換器205を介して凝縮器140に導かれる。このように、蒸留段階100の熱は効果的に蒸発段階200に移送される。更に、蒸留段階100は、追加の入口109を介して、追加の、主として液体であるストリームを投入されてもよい。
【0045】
そのような追加のストリームは、好適には、遠心分離機等のプロセスの別の一部分に由来する。追加のストリームは、典型的に、蒸留段階100に入る際は熱いストリームであり、そのため、その温度が蒸留段階100の作動を妨害しない。先行する段階の汚染を阻止するために、そのような主に液体であるストリーム109を蒸留段階100においてのみ加えることは、好ましいと考えられる。様々な液体ストリームを種々の度合いの純度で使用しうる一方で、そのような主に液体であるストリームが特定の汚染物質を粒子又は溶質の形態で含有することは排除されない。粒子状汚染物質の1つの例は、例えば、不均一系触媒である。
【0046】
図3は、第3の実施形態による本発明の反応器システムを概略的に示す。ここで、蒸発段階200は多重効用蒸留(MED)設備280として具現化される。多重効用蒸留設備の第1の効用280Aが、同じ低圧力において(又は更にその圧力未満で)第1の実施形態による蒸発段階200の第1のサブ段階210として作動してもよい一方で、第1の効用280Aの体積は、第1の実施形態における第1のサブ段階210のフラッシュ容器の体積ほど大きい必要はない。実際、単一の第1の効用280Aの容量が十分でない場合、余分の効用又は余分のMED設備280を加えることは可能である。
【0047】
図3に示されるMED設備280は、3つの効用280A、280B、280Cを備える。供給原料199は、蒸発段階200に、したがってMED設備280に、入口201において入る。次いで、供給原料199は供給原料分配装置282を通過し、供給原料分配装置282はストリームを複数の液滴へと分割し、供給原料が第1の効用280Aの個々の段へ噴霧されるようにする。熱は加熱チャネル281を用いてこの第1の段階280Aに与えられる。追加的に、蒸留段階からの蒸気912はMED設備280に導かれる。効用280A、B、Cにより、水の蒸気が残りの液体から膜によって分離される。水の蒸気は壁に対して凝縮される。解放された熱は、隣接する効用に壁を通して伝達される。得られる凝縮物は、凝縮物出口288を介して除去される。残りの濃縮された液体は、第2の出口286を介して効用280A、280B、280Cを出て、その後、後に続く効用の対応する入口287に、又は最も下流の効用280Cに関しては蒸留段階100に、ポンプで送られる。ここで、ポンプは、液体混合物が低圧力からより高い圧力に流れることを達成するために、各段階間に必要である。最も上流の効用280Aに残っている蒸気は、凝縮器240へと導かれる。
【0048】
図4図6は、蒸気凝縮器160、260を使用する、第1の実施形態の変形を概略的に示す。蒸気凝縮器160、260の使用は、方法を適用する場合に、反応器システムにおける最も低い圧力と最も高い圧力との間の効果的な範囲を限定することができるため、本発明の文脈において有利であると考えられる。なお、蒸発段階におけるサブ段階の数は、十分に大きくするか、又は最適にすることさえできる。
【0049】
図4に概略的に示される実施形態において、SCでも表される蒸気凝縮器160は、蒸留段階100の蒸気出口103と、蒸発段階200の熱交換器、より詳細には蒸発段階200内の最も下流に配置されている、したがって最も高い圧力である、サブ段階230の熱交換器235との間に配置されている。蒸気が圧縮されたストリーム192を、別のサブ段階210、220の熱交換器に導くことは不可能ではないだろう。熱交換器235に別の熱源からの熱を供給することができる場合、これは特に実行可能である。この図には示されていないが、蒸留段階100の熱交換器105に適用される蒸気を再利用して、その後、蒸留段階100に供給される濃縮された混合物239を加熱する、且つ/又は多価アルコール化合物と水との混合物を反応器システム内の別の位置で加熱(又は事前加熱)することは実行可能である。
【0050】
蒸気圧縮器の効用は、表2、及び表1との比較から理解することができる。蒸気圧縮器を有する実施形態及びそれを有しない実施形態(それぞれ図1及び図4)において、流速及び水の蒸発速度が同じである一方で、第1のサブ段階における圧力は、蒸気圧縮器を有する実施形態において、それを有しない実施形態においてよりも2倍高い(0.4~0.44対0.2~0.22バール)。結果として、第1のサブ段階(好適にはフラッシュ容器)の体積は、著しく低減することができる。大気圧は、蒸留段階においてだけではなく第3のサブ段階において到達される。それに対応して、温度は蒸発段階のサブ段階において、より高い、即ち、60~80℃ではなく76~100℃である。必要とされる蒸気圧力に目を向けると、最小圧力は0.31バールではなく0.64バールである。これは、反応器システムの取扱い及び構築を簡素化する。
【0051】
【表2】
【0052】
本発明の例では、第3のサブ段階における温度が1バールで100℃となりうるように十分な動力を与えることが公知である、1~2バールの蒸気圧縮が使用されることが確認される。蒸気圧縮器が、蒸気をそれほど強く圧縮しないこと、例えば、蒸留段階における圧力に対して100%(1バール)ではなく、50%(又は0.5バール)に圧力を増加させることは、明らかに排除されない。圧力の増加がより小さいと、蒸気圧縮器がより簡素になり、対応して第1のサブ段階における圧力が低減される効果がある。見たところでは、蒸留段階100における圧力を増加し、蒸気圧縮比(=産生圧力対付与圧力)を、表2に示される2つの比に対して低減することを追加的に選択することができる。
【0053】
図5及び図6に示される実施形態において、蒸気圧縮器260は、蒸発段階200の第1のサブ段階210の産生蒸気213において蒸気ライン218中に配置されている。サブ段階は、リボイラー215、225、235、及び好ましくは供給原料入口199とリボイラー215からの入口との間にいくつかの蒸留トレイが設けられたフラッシュ容器として具現化されている。得られる圧縮された蒸気のストリーム217は、より下流に配置されているサブ段階からの蒸気出口を出る蒸気と合流される。必須ではないが、前記サブ段階は、図5及び図6に示される第2のサブ段階220であることが好ましいように思われる。得られる蒸気のストリーム228は、おおよそ第2のサブ段階220の出口圧力であることになる。そうすると、この蒸気は、第1のサブ段階210を適切な圧力及び温度に維持するのに十分強く、適切な圧力及び温度は、図5及び図6の例において、出口103での蒸気に関して0.28バール及び70℃、並びに濃縮された液体混合物219に関して78℃及び0.3バールである。
【0054】
図5の実施形態において、蒸留段階は2バールの圧力で作動される。代替的に、図4に示すように、最大1バールのより低い圧力でこの蒸留段階を作動させ、次いで別の蒸気圧縮器を蒸気192に適用してもよいことが当業者によって理解されるであろう。
【0055】
図6の実施形態において、濃縮段階500は、蒸留段階100の上流且つ蒸発段階200の下流に存在する。この濃縮段階は、典型的には、外部の熱源、より詳細には空になった反応器からの廃熱等の廃熱に由来する蒸気である熱のストリーム534を用いて加熱される。したがって、蒸留段階100からの蒸気192は、濃縮段階500を通過して、蒸発段階200における最も下流の容器220に直接導かれる。
【0056】
この実施形態において、濃縮段階500は、2つのサブ段階510、520を含み、当該サブ段階のそれぞれは、例示される実施形態において、蒸発段階200のサブ段階210、220に対応して具現化される。したがって、容器510、520にはそれぞれ、供給原料入口、蒸気出口513、523、リボイラー515、525が設けられている。混合物は第2のサブ段階220から、多価アルコールが濃縮されたストリーム229として第3のサブ段階510の入口へと流れる。更に濃縮された混合物519は、(必要であればポンプによって)第4のサブ段階520へと流れるか、又は流される。重ねて更に濃縮された混合物529は、蒸留段階100の入口101に流れる。例示される実施形態において、熱ストリーム534は、190℃より高い温度を有し、その体積は第4のサブ段階520を加熱して、その蒸気出口523で2バールの圧力で120℃の温度を達成することが可能であるように設定される。第3のサブ段階510において、蒸気出口513での温度は、0.9バールの圧力で97℃である。混合物519の温度は約120℃であり、混合物529の温度は160℃でさえある。選択された圧力を考慮すると、蒸留段階100に由来する蒸気192に蒸気圧縮を適用する必要はない。
【0057】
蒸発速度が、蒸発段階200のサブ段階210、220、濃縮段階の510、520すべてにおいて、並びに蒸留段階100において等しいことを選択するよりはむしろ、全体的な反応器サイズを最小化する仕方で蒸発速度を設定することが実行可能であり、有用でありうる。例えば、第1のサブ段階210における蒸発速度を低減することを選択しうる一方で、別のサブ段階を増加させることができる。例えば、第2のサブ段階220は、より大きくすることができ、且つ/又は並列の2つの容器として具現化することができる。
【0058】
図7図8は、図2に概略的に示す本発明の第2の実施形態の異形を示す。図7は、熱の更なる再利用を可能にする選択肢を示す。これは、ストリーム409上の熱交換を用いて行われる。追加的に、主として液体であるストリーム109は蒸留段階100に加えられてもよい。ストリーム409及び液体ストリーム109は、例えば、本発明の方法の作動において使用される温度より高い温度で作動する解重合反応器等の反応器に由来する。ストリーム409は、バッチ反応器に由来する一時的バッチ401を連続ストリーム409へと変換するように設計されたバッファータンク400に由来する。熱交換は、熱交換器410において起こる。受取ストリーム411は、例えば、水及び/又は蒸気であるが、油を含む、任意の種類の熱伝達媒体でありうる。受取ストリーム411はその後、供給原料199と熱交換することができるが、代替的には、例えば、フラッシュ容器210を囲むジャケットとして、容器210を直接加熱するために適用される。
【0059】
図8に示される実施形態において、蒸気圧縮は、蒸発段階200の第1の(且つ唯一の)サブ段階210の産生蒸気218に適用される。これは、蒸気圧縮器260によって起こる。圧縮されたストリーム217は、下流段階に由来する蒸気、この例においては蒸留段階100に由来する蒸気192のストリームと合流される。
【0060】
ストリーム409(反応器由来である)は、熱交換器399において供給原料199と熱交換されることが、この図8に更に示される。ストリーム409における利用可能な熱と供給原料199に必要とされる熱とを一致させるために、ここで供給原料は、熱交換器399を通過しない第1の供給原料ライン199Aと、熱交換器399を通過する第2の供給原料ライン199Bへと分けられる。第1の供給原料ライン199Aはしたがって、迂回路を構成する。第1及び第2の供給原料ライン199A、199Bにおける流速を制御することによって、供給原料の加熱は、フラッシュ容器210において過度に激しい沸騰を起こさずに効率的であるように調整することができる。熱交換器399の代わりに、ケトルボイラー(kettle boiler)が使用されてもよい。そのようなケトルボイラーは、蒸留段階100の減圧下で作動することになる。エチレングリコール等のなんらかのグリコールを加えて、濃縮された混合物の粘度が適正を維持することを確実であるようにすることは排除されない。
【0061】
図9図11は、多重効用蒸留(MED)設備280を用いる第3の実施形態に関して3つの異形を示す。図9に概略的に示される実施形態において、MED設備280は4つの効用280A~280Dを備える。図10の実施形態において、MED設備280は、5つの効用280A~280Eを備える。図11の実施形態において、MED設備280は、6つの効用280A~280Fを備える。単一のMED設備280に統合されているにもかかわらず、最初の3つの段階280A~Cと残りの段階280D、280E、280Fとの間には概念的な区別がある。前述において論じたように、最初の3つの段階280A~Cは蒸発段階を構成する。この蒸発段階200は、蒸留段階100に由来する蒸気192によって加熱される。別個の容器及び塔210、220、230を用いた実装におけるように、各効用は別個の圧力で作動され、ここで、圧力は第1の効用280Aから第3の効用280Cに向けて増加する。
【0062】
残りの効用280D、280E、280Fは濃縮段階500の一部分である。蒸気蒸発はここでは使用されない。むしろ、効用は熱交換器として具現化され、ここで、別の液体又は気体はチャネル又は管を通って流れ、前記効用の供給原料ストリームに接触しない。液体又は気体は典型的に、外部の熱源に由来する。それは反応器からの、又は代替的に廃熱に基づいたストリームであってもよい。より詳細には、熱ストリーム534は、管541を介して効用280D(図9における)、効用280D及び280E(図10及び図11)を通して供給され、循環される。熱ストリーム534は、ストリーム535として段階を出て、次いで廃棄物として廃棄される(しかし、ストリーム535が再利用されることは排除されない)。管は、任意の適切な形状に従って具現化することができ、穴を有するトレイを備える。得られる濃縮された混合物519は、蒸留段階100の入口に導かれる。
【0063】
図10及び図11において、熱ストリーム534は、第5の効用280Eから延長部536を介して第4の効用280Dへと導かれる。これらの効用280D、280Eにおいて、熱交換のみ起こることが確認される。結果として、圧力は効用280D、280E両方において等しく、分離障壁281は2つの効用280D、280Eの間に必要とされない。
【0064】
図11において、濃縮段階500は、第6の効用280Fを備え、第6の効用280Fは、循環システム543によって効用を通って延伸する熱ストリーム537によって供給される。この第6の効用280Fは、濃縮段階500の先行する効用280D、280Eと同じ圧力で保たれる。図11に示される実施形態において、蒸気の更なる再循環289が設けられる。これは、第2のサブ段階又は効用280Bから蒸留段階100へと戻る再循環である。したがって、蒸気192は蒸留段階100から第2の効用280Bの頂部に与えられ、この第2の効用280Bを通過した後、再循環289を介して蒸留段階100に戻される。理解されるように、再循環は、蒸気若しくは液体のいずれか、又は両方の混合物であってもよい。
【0065】
図示されていないが、蒸留段階100に由来する蒸気192の一部分は、第1の効用280Aに導かれること、又は第2の効用280Bからの蒸気/液体は第1の効用280Aに更に導かれることは、排除されない。典型的には、多重効用蒸留において、熱は、効用間の分離壁又は障壁281を介して伝達される。図9図11には図式的に示されるに過ぎないが、各効用は、好ましくは統合を可能にするように対応して設計される。多重効用蒸留設備の構築は、それ自体で公知であり、多重効用蒸留設備の専門家にとって実行可能である。
【0066】
図9に示される設備を作動させる一例において、第1の効用280Aを産生286で出て第2の効用280Bの入口287に向かう濃縮されたストリームは、70℃の温度を有する(グリコールは約57wt%である)。第2の効用280Bの底部において、温度は80℃である(グリコールは約67%である)。第3の効用の底部において、温度は100℃である(グリコールは約80%である)。第4の効用280Dは、例えば、第4の効用に195~200℃の温度で入る別個の熱ストリーム419で加熱され、濃縮された混合物219のために135℃の温度になり、グリコール濃度は90wt%に達する。
【0067】
図9は、追加的に蒸気圧縮器260の使用を示し、蒸気圧縮器260は、第1の効用280Aからの蒸気を凝縮器に移送する代わりに(又は任意選択でそれに加えて)、前記蒸気をより高い圧力、ここでは約1バールに圧縮する。第3の効用280Cへの増加した蒸気の流れは、蒸発を増強するのに効果的である。結果として、蒸留段階100における蒸留塔のサイズを低減することが実行可能となる。蒸留段階100に由来する蒸気192及び圧縮されたストリーム217は、MED設備280の加熱チャネル281に入ることが、明確さのために認められる。
【符号の説明】
【0068】
100 蒸留段階
101 多価アルコール化合物が濃縮され、蒸発段階200から到達するストリーム(239、219)のための入口
102 精製された生成物ストリーム191のための出口
103 産生蒸気192のための出口
104 戻し分岐部
105 熱交換器
109 主として液体である残りストリームのための入口
125 供給原料ストリームにおける熱交換器
140 凝縮器
160 蒸気圧縮器
191 精製された生成物ストリーム
192 産生蒸気ストリーム
193 蒸留段階100から蒸発段階200への熱ストリーム(例えば、蒸気)
199 供給原料ストリーム
199A 供給原料ストリームの近道
199B 熱交換器420を熱い出口ストリームとともに通過する供給原料ストリーム
200 蒸発段階
201 供給原料入口
210 蒸発段階200の第1のサブ段階(例えば、フラッシュ容器として具現化される)
213 第1のサブ段階210の蒸気出口
214 戻し分岐部(濃縮されたストリーム219からの)
215 熱交換器
218 蒸気出口ストリーム
217 圧縮された蒸気のストリーム
219 多価アルコール化合物が濃縮された混合物ストリーム
220 蒸発段階200の第2のサブ段階(例えば、蒸留塔として具現化される)
223 サブ段階220の蒸気出口
224 戻し分岐部(濃縮されたストリーム229からの)
225 熱交換器
228 先行するサブ段階210、310の熱交換器215、315へと導かれる産生蒸気ストリーム
229 多価アルコール化合物が濃縮された混合物ストリーム
230 蒸発段階200の第3のサブ段階(例えば、蒸留塔として具現化される)
233 サブ段階230の蒸気出口
234 戻し分岐部(濃縮されたストリーム239からの)
235 熱交換器
238 先行するサブ段階220の熱交換器225へと導かれる産生蒸気ストリーム
239 多価アルコール化合物が濃縮された混合物ストリーム
240 凝縮器(フラッシュ容器として具現化される場合、第1のサブ段階210に連結されている)
241 熱交換器
260 蒸気圧縮器
280 多重効用蒸留設備
280A、B、C、D、E、F 多重効用蒸留設備280の個々の効用
281 個々の効用280A、B、C間の加熱チャネル
282 供給原料分配装置
286 多価アルコール化合物が濃縮されたストリームのための出口
287 多価アルコール化合物が濃縮されたストリームのための入口
288 凝縮物のための出口
289 効用入口287から多価アルコール化合物が濃縮されたストリームを分配装置282に導くチャネル
310 蒸発段階200の更なるサブ段階
314 戻し分岐部(濃縮されたストリーム319からの)
315 熱交換器
318 先行するサブ段階210の熱交換器215へと導かれる産生蒸気ストリーム
319 多価アルコール化合物が濃縮された混合物ストリーム
399 熱い出口ストリーム409と供給原料ストリーム199Bとの間の熱交換器
400 バッファータンク
401 バッファータンクのための入口
409 熱い出口ストリーム
410 出口ストリームのための熱交換器
411 熱交換器410と蒸発段階のサブ段階(210)との間の熱ストリーム
416 多重効用蒸留設備280を加熱した後の熱ストリームのための出口
417 多重効用蒸留設備280の効用D、E間の熱ストリームのための接続
418、419、420 多重効用蒸留設備280効用D、E、Fを加熱するための熱ストリーム
434 廃熱ストリーム
500 濃縮段階
510 第3のサブ段階、容器
513 蒸気出口
515 リボイラー
519 得られる濃縮された混合物
520 第4のサブ段階、容器
523 蒸気出口
525 リボイラー
534 熱ストリーム
535 ストリーム
536 延長部
537 熱ストリーム
541 管
543 循環システム
図1
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図3
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