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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】感知システムおよび動作方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20240716BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20240716BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240716BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20240716BHJP
【FI】
G01N27/00 Z
G01N35/08 B
G01N37/00 101
C12M1/34 B
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021529730
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 GB2019053366
(87)【国際公開番号】W WO2020109800
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】62/772,331
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511252899
【氏名又は名称】オックスフォード ナノポール テクノロジーズ ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ホールデン,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ヘロン,アンドリュー
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-150098(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0059523(US,A1)
【文献】特開2012-018400(JP,A)
【文献】特開2012-163956(JP,A)
【文献】特許第4713306(JP,B2)
【文献】特表2015-535179(JP,A)
【文献】ANNE ET AL,Handling of artificial membranes using electrowatting-actuated droplets on a microfluidic device combined with integrated pA-measurements,BIOMICROFLUIDICS,2012年03月01日,6・1,012813(1)-012813(7)
【文献】Hagen Bayley ET AL,Droplet interface bilayers,Molecular BioSystems,2008年12月01日,4,1191-1208
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/34
C12Q 1/00 - C12Q 3/00
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/404
G01N 27/414 - G01N 27/416
G01N 27/42 - G01N 27/49
G01N 35/00 - G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感知システムを動作させる方法であって、前記感知システムが、
(i)エレクトロウェッティングデバイスであって、
作動電極のアレイを支持する第1の基板、および
前記作動電極を覆う絶縁体層であって、疎水性最外表面を有する絶縁体層、および
前記第1の基板の疎水性表面から離れて配置される第2の基板であって、第1の感知電極および第2の感知電極を支持する第2の基板
を備える、エレクトロウェッティングデバイスと、
(ii)前記疎水性表面上に配置された、
流体媒体および各々が前記流体媒体中で液体媒体を含む第1の液滴ならびに第2の液滴であって、前記液体媒体および前記流体媒体のうちの一方が、極性であり、前記液体媒体および前記流体媒体のうちの他方が、無極性であり、
前記第1の液滴および/または前記第2の液滴が、前記第1の液滴および/または前記第2の液滴と前記流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み、
前記第1の液滴が、液滴界面を介して前記第2の液滴と接触し、
前記液滴界面が、両親媒性分子の層および第1の膜貫通細孔を含み、
前記第1および第2の感知電極は、間に液滴界面が形成される液滴との電気的接続を形成する、流体媒体および第1の液滴ならびに第2の液滴と、
(iii)前記第1の感知電極および前記第2の感知電極から電気的測定値を得るように、かつ前記作動電極のアレイに作動信号を印加するように構成された制御システムと、を備え、
前記方法が、
a)前記第1の感知電極および前記第2の感知電極から電気的測定値を得ることと、
b)前記電気的測定値を分析し、次いで、前記制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って、前記電気的測定値に基づいて液滴動作を選択することと、
c)作動電極に作動信号を印加して、前記液滴動作をもたらして、被作動液滴をもたらすことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の液滴が、液滴界面を介して液体媒体の第3の液滴と接触し、前記第1の液滴と前記第3の液滴との間の前記液滴界面が、両親媒性分子の層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の液滴がまた、さらなる液滴界面を介して液体媒体の1つ以上のさらなる液滴とも接触し、前記さらなる液滴界面が、両親媒性分子の層を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記液滴界面のうちの1つ以上が、複数のイオンチャネルを含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記感知システムが、液体媒体の第3の液滴を含み、前記第3の液滴が、電子メディエータを含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)が、前記第1の膜貫通細孔と分析物との間の相互作用を検出することを含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
分析物の存在または不在または1つ以上の特徴を判定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
分析物が、ポリマー単位を含むポリマーであり、方法が、電気的測定値を処理して、ポリマー単位の推定同一性を導出する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記分析物が、ポリヌクレオチドである、請求項6~8のいずれに記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)が、前記第1の液滴を保持するか、または廃棄するかを決定することを含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)が、液滴界面における前記被作動液滴を、液体媒体のさらなる液滴から分離することを含み、このさらなる液滴が、前記第1の液滴、前記第2の液滴、または存在する場合に前記第3の液滴であり得、前記液滴界面が、両親媒性分子の層を含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ステップ(c)が、複数の液滴界面における前記被作動液滴を、液体媒体の複数のさらなる液滴から分離することを含み、このさらなる液滴が、前記第1の液滴、前記第2の液滴、または存在する場合に前記第3の液滴を含み得、前記液滴界面の各々が、両親媒性分子の層を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の液滴界面が各々、両親媒性分子の二重層を含み、ステップ(c)が、前記二重層を分離することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(c)が、前記被作動液滴を液体媒体のさらなる液滴と接触させて液滴界面を形成することを含み、このさらなる液滴が、前記第1の液滴、前記第2の液滴、または存在する場合に前記第3の液滴であり得る、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(c)が、前記被作動液滴を液体媒体の複数のさらなる液滴と接触させて、複数の液滴界面を形成することを含み、このさらなる液滴が、前記第1の液滴、前記第2の液滴、または存在する場合に前記第3の液滴を含み得る、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(c)が、前記被作動液滴を液体媒体のさらなる液滴と融合させることを含み、このさらなる液滴が、前記第1の液滴、前記第2の液滴、または存在する場合に前記第3の液滴であり得る、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(c)が、前記第1の液滴または前記第2の液滴または存在する場合に前記第3の液滴を、2つ以上の部分に分割することを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(c)が、前記第1の液滴または前記第2の液滴または存在する場合に前記第3の液滴を、2つの部分に分割することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(c)の間に前記第1の液滴を移動させない、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記感知システムが、
前記疎水性表面上に配置された、前記流体媒体、および請求項1で定義されるような前記第1の液滴および前記第2の液滴を含む第1の液滴系と、
また、前記疎水性表面上に配置された、請求項1で定義されるような別の第1の液滴および別の第2の液滴を含む第2の液滴系と、を備え、
前記方法が、前記第1の液滴系に対しておよび前記第2の液滴系に対して、同時にステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)を実行することを含む、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記第1の液滴系に対して実行されるステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)のうちの1つ以上が、前記第2の液滴系に対して実行されるステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)のうちの1つ以上とは異なる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
感知システムであって、
エレクトロウェッティングデバイスであって、
作動電極のアレイを支持する第1の基板、および
前記作動電極を覆う絶縁体層であって、疎水性最外表面を有する絶縁体層、および
前記第1の基板の疎水性表面から離れて配置される第2の基板であって、第1の感知電極および第2の感知電極を支持する第2の基板
を備え、前記第1および第2の感知電極は、間に液滴界面が形成される液滴との電気的接続を形成する、エレクトロウェッティングデバイスと、
制御システムであって、
前記第1の感知電極および前記第2の感知電極から電気的測定値を得ること、
前記電気的測定値を分析すること、次いで、前記制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って、前記電気的測定値に基づいて液滴動作を選択すること、および
作動電極に作動信号を印加して、前記液滴動作をもたらすこと、を行うように構成された、制御システムと、を備える、感知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
いくつかの態様では、本発明は、感知システムを動作させる方法に関し、この感知システムは、エレクトロウェッティングデバイスと、エレクトロウェッティングデバイスに信号を提供するように構成された制御システムと、を備える。他の態様では、本発明は、感知システム自体に、および感知システムで作製するかまたは操作することができる液体媒体の液滴を含む構築体に、さらに関する。
【背景技術】
【0002】
化学種の迅速な検出、分析、ならびに処理、およびそのような分析を可能にすることができるシステムに大きな関心が寄せられている。
【0003】
この分野の主要なデバイスは、WO2014/064443に記載されているもののようなデバイスである。このデバイスは、それぞれの膜貫通細孔を含有する両親媒性分子の個々の浮遊膜のアレイを含む。膜貫通細孔を含むそのような膜は、例えば、WO2014/064444に記載されている。このデバイスはまた、感知電極のアレイを包含する特定用途向け集積回路(ASIC)も備える。使用中、デバイスにサンプルが提供される。サンプル中に存在する任意の分析物は、膜貫通細孔のアレイと相互作用し得る。各膜貫通細孔は、電極アレイ内の感知電極と関連付けられており、分析物と膜貫通細孔との相互作用により、関連付けられた感知電極で信号が作成される。したがって、ASICによって得られた電気信号の分析は、存在する分析物(複数可)に関する情報を提供することができる。
【0004】
そのようなデバイスは非常に高度かつ有用なシステムであるが、まだ改善の余地がある。
【0005】
デバイスに損傷を与えることなくデバイスの内部チャンバにアクセスすることが困難であるため、これらのデバイスでは、現在、分析されたサンプルを無傷で容易に回収することができない。したがって、システムに提供されたサンプルを回収することができる感知システムを提供することが望ましいであろう。サンプルの回収は、様々な理由で望ましく、例えば、サンプルの同一性がわかると、WO2014/064443に記載されているもののようなデバイスでは実施できないさらなる実験手順にサンプルをさらすことが有利な場合がある。代替的または追加的には、将来の参照のためにサンプルを保持することが重要な場合がある。このことは、少量のサンプルしか利用できない場合に特に重要である。
【0006】
サンプルに存在する分析物(複数可)が同定されると、多くの場合、そのサンプルに対してさらなる実験手順を実施することが望ましい。関心のある特定の実験手順は、サンプルが分析されるまでわからない場合がある。例えば、DNAを含有するサンプルの場合、DNAが同定されるか、または部分的に同定されると、さらなる実験のための追加の材料を提供するために、PCRによってDNAを増幅することが関心のあることであり得る。DNAを改変することも、関心のあることであり得る。したがって、サンプルに対して広範囲のさらなる実験手順を実施することができるシステムを提供することが望ましいであろう。
【0007】
ユーザの便宜のため、およびサンプルの汚染または劣化を回避するために、システムからサンプルを除去することなく、そのようなさらなる手順をその場で直接実施することができるシステムを提供することは特に有利であろう。特にサンプルの寿命が短い可能性がある場合、または実施された分析を使用して医療状況で敏速な決定を可能にする場合に、さらなる実験手順を迅速に実施することができるような感知システムを提供することも有利であろう。
【0008】
寿命が長いデバイスを提供することも非常に望ましいであろう。デバイスに含有される電子メディエータは、経時的に枯渇する可能性があるため、現在利用可能なデバイスの寿命は制限され得る。しかしながら、そのようなデバイスの内部チャンバにアクセスして、デバイスを壊さずにより多くの電子メディエータを追加することは困難である。
【0009】
分析物を改善されたレベルの精度で測定する能力を有するデバイスを提供することも非常に望ましいであろう。例えば、分析物としてのDNAは、現在、高速処理ナノ細孔シーケンシング法によって高精度でシーケンシングすることができる。しかしながら、精度の改善は、常に望ましい。
【0010】
ディスプレイ技術の分野において、流体媒体中の液体の液滴を操作するための誘電体上のエレクトロウェッティング(EWOD)デバイスが、知られている。この分野において、誘電体上のエレクトロウェッティングは、例えばUS2016/0305906に開示されているように、電場の適用によって流体の液滴を操作するための周知技術である。EWODデバイスの例示的な構成および動作は、以下の文書で説明される。
【0011】
US6,911,132は、二次元における液滴の位置および移動を制御するための二次元EWODアレイを開示している。US6,565,727は、液滴の分割およびマージング、ならびに異なる材料の液滴を一緒に混合することを含む他の液滴動作のための方法を開示している。US7,163,612は、AMディスプレイ技術で採用されているものと同様の回路配設を使用して、薄膜トランジスタ(TFT)を含む薄膜エレクトロニクスに基づくアクティブマトリックス(AM)配設が、EWODデバイスへの電圧パルスのアドレス指定を制御し得る方法を記載している。この一般的なタイプのデバイスは、AM-EWODデバイスと呼ばれ得る。
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは、EWODデバイスを制御システムと一緒に利用することにより、大量のサンプルなどの液体または電極のアレイを包含するために必要とされる複雑な物理的構造を必要とせずに、WO2014/064443に記載のナノ細孔アレイシステムなどの知られている感知システムの機能を実行することができる感知システムを生成できることを実現した。むしろ、電場の操作が、液体サンプル、および/または電子メディエータなどの化学物質を含む液体の必要な封じ込めを提供する。さらに、本発明者らは、この方法で感知システムの壁を取り除くことにより、感知システムで実行され得る方法の改善が可能になることを理解した。追加的に、そのような複雑な物理的構造がないため、他の方法では達成することが困難であろう、実施され得る分析のタイプにより大きな柔軟性が提供される。
【0013】
「壁のない」感知システムを使用することによって、液体を感知システムの周りに非直線的に移動させることができる。感知システムの構造によって判定される特異的な処理のセットにサンプルをさらす必要がない。感知システムを通る液体の流れを導く固定壁がない場合、サンプルを、感知システム内のほぼすべての点に移動させることができ、したがって、多種多様な環境、例えば、多種多様な異なる膜貫通細孔に随意にさらすことができる。同じく、多種多様な環境(特に液滴の形で)を、サンプルにもたらすことができる。
【0014】
本発明者らは、このことによりサンプルを感知することが可能になるだけでなく、感知システム内のサンプルに対して実験手順を実施することも可能にするため、このことが特に重要であることを理解した。感知システムと実験設備との共存は、感知システム内で検出された信号に基づいて実験または他の手順を選択および実施することを可能にするため、特に効果的である。すなわち、システムは柔軟性があり、感知システムによって検出された電気信号に応答してシステムの動作を調整することができる。
【0015】
重要なことに、処理を自動化することができる。このことにより、ユーザが感知システムの出力に基づいて心的にさらなる実験を選択し、次いで、手動でサンプルをそれらのさらなる実験にかけなければならない、知られているシステムの動作と比較して、速度の大きな利点が与えられる。
【0016】
したがって、第1の態様では、本発明は、感知システムを動作させる方法であって、感知システムが、
(i)エレクトロウェッティングデバイスであって、
作動電極のアレイ、
作動電極を覆い、かつ疎水性最外表面を有する絶縁体層、
第1の感知電極、および
第2の感知電極、を備える、エレクトロウェッティングデバイスと、
(ii)疎水性表面上に配置された、
流体媒体および各々が流体媒体中で液体媒体を含む第1の液滴ならびに第2の液滴であって、液体媒体および流体媒体のうちの一方が、極性であり、液体媒体および流体媒体のうちの他方が、無極性であり、
第1の液滴および/または第2の液滴が、当該第1の液滴および/または第2の液滴と流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み、
第1の液滴が、液滴界面を介して第2の液滴と接触し、
液滴界面が、両親媒性分子の層および第1の膜貫通細孔を含む、流体媒体および第1の液滴ならびに第2の液滴と、
(iii)第1の感知電極および第2の感知電極から電気的測定値を得るように、かつ作動電極のアレイに作動信号を印加するように構成された制御システムと、を備え、
方法が、
a)第1の感知電極および第2の感知電極から電気的測定値を得ることと、
b)電気的測定値を分析し、次いで、制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って、電気的測定値に基づいて液滴動作を選択することと、
a)作動電極に作動信号を印加して、液滴動作をもたらすことと、を含む、方法を提供する。
【0017】
特に、本発明者らは、本発明の方法に従って、および本発明の感知システムを使用して、サンプル分析を実施することができるスケールの有意な変化を認識した。EWODデバイス上で操作することができる液体の液滴は、サイズがナノリットルまたはピコリットルのオーダーのものであり得る。これらの非常に小さな液滴は、感知システムの周りを迅速に移動させることができ、その結果、非常に迅速に分析し得る。さらに、サンプルの多数の液滴を小さな空間領域で同時に処理することができ、このことは、本発明の感知システムおよび方法が、非常に短い期間で非常に大量のデータを提供することができることを意味する。
【0018】
したがって、さらに好ましい実施形態では、本発明は、上記で定義されたような本発明の方法であって、感知システムが、
疎水性表面上に配置された、流体媒体、および本明細書で定義されるような第1の液滴および第2の液滴を含む第1の液滴系と、
また、疎水性表面上に配置された、本明細書で定義されるような別の第1の液滴および別の第2の液滴を含む第2の液滴系と、を備え、
方法が、第1の液滴系に対しておよび第2の液滴系に対して同時にステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)を実行することを含む、方法を提供する。
【0019】
第3の液滴を提供する能力、第3の液滴を液滴対の第2の液滴または第1の液滴のいずれかと融合させる能力、または液滴を新たな液滴と置き換える能力などの液滴を操作する能力は、大量の柔軟性を提供し、第1の液滴および/または第2の液滴内に含有される種を交換、補充、希釈、回収などすることを可能にする。そのような種には、関心対象の分析物、電子メディエータ、反応基質などが含まれる。
【0020】
したがって、さらなる態様では、本発明は、方法であって、デバイスの疎水性表面上に、
無極性流体媒体、
流体媒体中で極性液体を含む第1の液滴、第2の液滴、および任意選択的に第3の液滴であって、
第1の液滴および/または第2の液滴および/または存在する場合に第3の液滴が、当該第1の液滴および/または第2の液滴および/または第3の液滴と流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み、
第1の液滴が、液滴界面を介して第2の液滴と接触するか、または第3の液滴および第2の液滴が各々、液滴界面を介して第1の液滴と接触し、
液滴界面または各液滴界面が、両親媒性分子の層を含み、
液滴界面のうちの少なくとも1つが、膜貫通細孔を含み、
第1の液滴が、分析物を含み、
第2の液滴が、電子メディエータを含み、
第1の液滴、または存在する場合に任意選択的に第3の液滴が、第1の感知電極と電気的に接触し、
第2の液滴が、第2の感知電極と電気的に接触する、無極性流体媒体、第1の液滴、第2の液滴、および任意選択的に第3の液滴が配置されており、
方法が、
a)第1の電極および第2の電極から電気的測定値を得、このステップを複数回繰り返して複数の電気的測定値を得ることと、
b)複数の電気的測定値の中で、電気的測定値のうちの1つ以上を他の電気的測定値のうちの1つ以上と比較すること、第2の液滴中の、電子メディエータの損失に帰属する、経時的に検出された電気的測定値の変移を判定こと、および液滴動作を選択して、第2の液滴中の、電子メディエータの濃度を増加させることと、
c)作動電極に作動信号を印加して、液滴動作をもたらすことと、を含む、方法を提供する。
【0021】
本発明者らはまた、本発明の感知システムによって許容される柔軟性により、同じサンプルを2つ以上の感知手順にさらすことが可能になることを認識した。例として、液滴内に存在する分析物を、第1の膜貫通細孔と、およびその後に続いて第2の膜貫通細孔と、または同時に第1の膜貫通細孔および第2の膜貫通細孔と接触させ得る。複数の感知要素(例えば、膜貫通細孔)による単一のサンプルの感知は、サンプル中の分析物の同一性を判定することができる精度を有利に改善することができる。
【0022】
したがって、一態様では、本発明は、本明細書に記載されるような方法を提供し、この場合に、EWODデバイスの疎水性表面上に、
無極性流体媒体、
極性液体媒体を含む第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴が配置されており、
第1の液滴および/または第2の液滴および/または第3の液滴が、当該第1の液滴および/または第2の液滴および/または第3の液滴と流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み、
第1の液滴が、液滴界面を介して第2の液滴と接触し、当該液滴界面が、両親媒性分子の層および第1の膜貫通細孔を含み、
第3の液滴が、別の液滴界面を介して第1の液滴または第2の液滴と接触し、当該別の液滴界面が、両親媒性分子の層および第2の膜貫通細孔を含み、
第1の液滴が、分析物を含む。
【0023】
本発明はさらに、前述の方法を記載し得る感知システムを提供する。したがって、本発明は、感知システムであって、
エレクトロウェッティングデバイスであって、
作動電極のアレイ、
作動電極を覆い、かつ疎水性最外表面を有する絶縁体層、
第1の感知電極、および
第2の感知電極、を備える、エレクトロウェッティングデバイスと、
制御システムであって、
第1の感知電極および第2の感知電極から電気的測定値を得ること、
電気的測定値を分析し、次いで、制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って、電気的測定値に基づいて液滴動作を選択すること、
作動電極に作動信号を印加して、液滴動作をもたらすこと、を行うように構成された、制御システムと、を備える、感知システムを提供する。
【0024】
また、本発明の感知システム内で形成され、かつ感知システムによって操作され得る液体媒体の液滴の新規な構造体も提供される。したがって、本発明は、各々が液体媒体を含む第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を含む第1の液滴構造体であって、
第1の液滴が、分析物を含み、
第2の液滴および第3の液滴が各々、電子メディエータを含み、
第1の液滴が、液滴界面を介して第2の液滴および第3の液滴の各々と接触し、各液滴界面が、両親媒性分子の層を含む、第1の液滴構造体を提供する。
【0025】
本発明はまた、各々が液体媒体を含む第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を含む第2の液滴構造体であって、
第1の液滴が、液滴界面を介して第2の液滴と接触し、この液滴界面が、両親媒性分子の層を含み、
第1の液滴が、液滴界面を介して第3の液滴と接触し、この液滴界面が、両親媒性分子の層を含み、
第1の液滴と第2の液滴との間の液滴界面、および/または第1の液滴と第3の液滴との間の液滴界面が、複数のイオンチャネルを含む、第2の液滴構造体も提供する。
【0026】
本発明はまた、各々が液体媒体を含む第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を含む第3の液滴構造体であって、
第1の液滴が、液滴界面を介して第2の液滴と接触し、この液滴界面が、両親媒性分子の層および第1の膜貫通細孔を含み、
第1の液滴が、液滴界面を介して第3の液滴と接触し、この液滴界面が、両親媒性分子の層および第2の膜貫通細孔を含み、
第1の膜貫通細孔と第2の膜貫通細孔とが、異なる、第3の液滴構造体も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】AM-EWODデバイスを含む装置の概略図である。
図2】AM-EWODデバイスの概略斜視図である。
図3】AM-EWODデバイスの一部分の断面側面図である。
図4A図4A及び図4Bは、それぞれ液体液滴が存在する場合と存在しない場合との、作動電極に提示される電気負荷の回路表現の図である。
図4B図4Aの続きである。
図5】AM-EWODデバイス中の薄膜電子機器の平面図である。
図6】AM-EWODデバイスのアレイ素子回路の図である。
図7】AM-EWODデバイスの第2の基板上に形成された導電性材料の層の平面図である。
図8】本発明の感知システムにおける2液滴構造体の説明図である。
図9】本発明の感知システムにおける3液滴構造体の説明図である。
図10A】第1の液滴と第2の液滴とを分離することができる例示的な液滴動作の図である。
図10B図10Aの続きである。
図10C図10Aの続きである。
図11A】第1の液滴と第2の液滴と第3の液滴とを分離することができる例示的な液滴動作の図である。
図11B図11Aの続きである。
図12A】複数の二重層を形成することができる例示的な液滴動作の図である。
図12B図12Aの続きである。
図12C図12Aの続きである。
図13A】複数の二重層を形成し、かつ複数の二重層を破壊することができる例示的な液滴動作の図である。
図13B図13Aの続きである。
図14】各々が感知電極と接触し、かつ両親媒性分子の層および膜貫通細孔を含む液滴界面によって分離された、第1の液滴および第2の液滴を含む、典型的な最初の液滴配設の図である。図14はまた、その最初の系にさらなる液滴が追加され得ることも示す。
図15】電気的測定値に応答して、第2の液滴を、第1の液滴から分離し、新たな液滴と接触するように移動させ、新たな液滴界面を形成する、本発明の方法の図である。
図16】液滴を第2の液滴と融合させる本発明の方法の図である。
図17】異なる浸透圧電位の液滴を接触させる本発明の方法の図である。
図18】電子メディエータ種を液滴に追加する本発明の方法の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
感知システム
感知システムは、本明細書に記載されるようなエレクトロウェッティングデバイスと、本明細書で定義されるような制御システムと、を備える。感知システムはまた、任意選択的に、流体媒体および各々が液体媒体を含む第1の液滴ならびに第2の液滴も含む。感知システムは、典型的には、感知システムが使用されているとき、流体媒体と液体媒体の液滴とを含む。
【0029】
本明細書に記載されるような感知システムは、本発明の感知システムであるとともに、本発明の方法で使用される感知システムであることを理解されたい。したがって、以後に述べる感知システムの特徴は、本発明による感知システムおよび感知システムを動作させる方法に適用可能である。
【0030】
エレクトロウェッティング(EWOD)デバイス
エレクトロウェッティングは、表面上の液体に電界を印加すると、表面上の液体の濡れ挙動が改変される現象である。エレクトロウェッティングにより、電界の印加によって液滴を表面上で操作すること、例えば、再成形するか、または移動させることが可能になる。本発明のEWODデバイスは、この現象を利用して、液体の液滴を分析するのに好適な多用途の感知システムを提供する。
【0031】
EWODデバイスは、典型的には、アクティブマトリックスを含むため、AM-EWODデバイスと呼ばれ得る。
【0032】
EWODデバイスは、作動電極のアレイを備える。作動電極のアレイは、少なくとも2つの電極を含むが、典型的には、少なくとも10個の電極、少なくとも100個の電極、または少なくとも1,000個の電極、少なくとも10,000個の電極、少なくとも100,000個の電極、または少なくとも1,000,000個の電極を含む。例えば、作動電極のアレイは、典型的には、10~10個の作動電極、例えば、10~10個の作動電極の領域に包含する。作動は、任意のパターンで配設することができるが、典型的には、作動電極の平行な列を含むほぼ長方形の配設で配設されている。
【0033】
作動電極は、任意の導電性材料、例えば、金属または透明な金属酸化物、例えば、インジウム酸化スズ(ITO)で形成することができる。
【0034】
作動電極は、エレクトロウェッティング現象を利用して、EWODデバイスの疎水性表面上の液滴を操作するために使用することができる。作動信号が作動電極のアレイの中の作動電極に印加されると、作動電極は、極性液体の液滴を引き付けるか、または無極性液体の液滴をはじくことができる。したがって、作動電極を使用して、例えば、液滴の形状を変化させるか、または液滴を移動させることができる。それらの液滴動作は、以下により詳細に考察される。
【0035】
したがって、作動電極は、エレクトロウェッティング液滴に対する作動信号を受信するように構成されている。制御システムは、作動電極に印加される作動信号を制御する。作動電極は、制御システムによって個別に制御可能であり得る。したがって、制御システムは、電極アレイ内の1つ以上の電極に作動信号を印加することができる。
【0036】
EWODデバイスは、作動電極に接続されたアクティブマトリックス配設をさらに備えることができる。
【0037】
作動電極のアレイ、および存在する場合にアクティブマトリックス配設は、典型的には、第1の基板によって支持される。第1の基板の材料は、特に絶縁性ではなく、第1の基板の材料の機能は、デバイスに堅固な支持を提供することである。典型的には、第1の基板は、絶縁材料で作製されている。いくつかの実施形態では、EWODデバイスは、薄膜電子機器の層をさらに備える。薄膜電子機器は、制御システムの指示の下で作動電極に作動信号を印加することができる。したがって、薄膜電子機器は、EWODデバイスの制御システムの一部と見なすことができる。薄膜電子機器は、作動電極のアレイとEWODデバイスの第1の基板との間に配置することができる。
【0038】
制御システムが作動電極のアレイ中の1つ以上の電極に作動信号を印加し得るように、作動電極は、制御システムに接続されている。作動電極は、薄膜電子機器を介して制御システムに接続することができる。
【0039】
EWODデバイスは、作動電極のアレイを覆う絶縁体層を備える。「覆う」とは、感知システムの動作において、絶縁体層が、作動電極のアレイと流体媒体(およびまた液体媒体の第1の液滴および第2の液滴)との間に位置することを意味する。絶縁体層は、電気絶縁材料の層である。絶縁体層の厚さは特に制限されず、典型的には、絶縁体層は、0.1~500ミクロン厚である。
【0040】
絶縁体層は、絶縁体層をわたる流体媒体(存在する場合)への電界の印加を妨げない。しかしながら、絶縁体層は、通常、作動電極と流体媒体および液体媒体との間の電気的接触を妨げる。
【0041】
典型的には、絶縁体層は、当該疎水性表面を形成する疎水性材料によってコーティングされた電気絶縁材料の層を含む。「疎水性最外表面」とは、流体媒体および液体媒体が感知システムに置かれたときに、疎水性表面が、流体媒体および液体媒体に直接接触することができることを意味する。疎水性表面は、任意の疎水性材料で形成することができる。
【0042】
したがって、EWODデバイスは、典型的には、順に、第1の基板、薄膜電子機器、作動電極のアレイ、絶縁体層、および疎水性最外表面を備える。もちろん、EWODデバイスは、それらの構成要素の間に散在するさらなる層および構成要素を含み得る。
【0043】
EWODデバイスは、少なくとも2つの感知電極をさらに備える。これらの電極は、第1の液滴および/または第2の液滴および/または存在する場合に第3の液滴と、電気的接触を形成するように構成されている。「電気的接触を形成するように構成された」とは、少なくとも2つの感知電極が、前述の液滴に直接接触し得るか、または少なくとも2つの感知電極が、導電性材料を介して前述の液滴に接触し得ることを意味する。
【0044】
好ましい実施形態では、エレクトロウェッティングデバイスは、絶縁体層の疎水性表面に面する第2の基板をさらに備え、第2の基板は、絶縁体層の疎水性表面に面するさらなる疎水性表面を形成する疎水性材料によってコーティングされている。この実施形態では、液滴は、疎水性層のさらなる疎水性表面、および絶縁体層の疎水性表面上に配置され得る。このようにして、液滴は、2つの基板の間に挟まれ、これにより、液滴の形状が、制約される。このことにより、通電状態とより低いエネルギー状態との間の液滴の形状の制御の程度が改善され、ひいては、液滴界面の形成の信頼性が改善される。
【0045】
この実施形態のさらに好ましい態様では、第2の基板は、第1の感知電極および第2の感知電極を支持し得る。例えば、第2の基板は、間に液滴界面が形成される液滴との電気的接続を形成するように構成されるセンサ電極(第1の感知電極および第2の感知電極を含む)の1つ以上のアレイを支持し得る。センサ電極のアレイは、少なくとも第1の感知電極および第2の感知電極を含む。この実施形態は、作動電極が、第2の機能、すなわち電気信号を検出する機能を実行することを必要としないため有利である。
【0046】
この態様では、第1の感知電極および第2の感知電極(例えば、第1の感知電極および第2の感知電極を含む感知電極のアレイ)は、作動電極を覆う絶縁体層の疎水性表面に面する第2の基板上に提供される。このことにより、液滴への電気的接続を形成するための便利かつ信頼できる方法が、提供される。
【0047】
第2の基板は、絶縁体層の疎水性表面に面するさらなる疎水性表面を形成する疎水性材料によってコーティングされ得る。「コーティングされた」とは、疎水性材料が第2の基板上に配置されていることを意味するが、介在種がある場合があり、例えば、感知電極は、第2の基板と、第2の基板をコーティングする当該疎水性材料と、の間に配置され得る。その場合、エレクトロウェッティングデバイスは、疎水性層のさらなる疎水性表面および絶縁体層の疎水性表面上に配置された流体媒体および液滴を受容するように配設され得る。このようにして、液滴は、2つの基板の間に挟まれ、これにより、液滴の形状が、制約される。上で説明したように、このことにより、作動電極に印加された作動信号による液滴の制御の程度が改善される。
【0048】
第2の基板が疎水性材料でコーティングされ、かつ感知電極が第2の基板上に配置されている場合には、第2の基板をコーティングする疎水性材料は、第1の感知電極および第2の感知電極の少なくとも一部を露出する開口を有し得る。このことにより、センサ電極と液滴との間の電気的接続が改善される。第2の基板をコーティングする疎水性材料は、第2の疎水性最外表面と呼ばれ得る。
【0049】
したがって、好ましい実施形態では、EWODデバイスは、順に、第1の基板、薄膜電子機器、作動電極のアレイ、絶縁体層、疎水性最外表面、スペーサ、疎水性材料、第1の感知電極ならびに第2の感知電極、および第2の基板を備える。もちろん、EWODデバイスは、それらの構成要素の間に散在するさらなる層および構成要素を含み得る。この実施形態では、スペーサは、2つの疎水性材料層の間に、流体媒体および液体媒体を受け入れることができる空洞を提供する。
【0050】
第2の基板はまた、例えば、液滴を操作するために作動電極に作動信号が印加される間に基準信号を受信するための少なくとも1つのさらなる電極を支持し得る。感知電極および提供される場合のさらなる電極は、第1の基板に面する第2の基板の表面上に堆積され得る。その場合、提供される場合のさらなる電極は、感知電極の周りに延在し得る。
【0051】
EWODデバイスは、流体媒体中のエレクトロウェッティングデバイスの疎水性表面上に配置された液滴を形成するように構成された液滴調製システムをさらに含み得る。この場合、制御システムは、液滴調製システムを制御して液滴を形成するように構成され得る。このことにより、装置が適正な試薬を含有する液滴を実験目的で形成することが可能になるため、装置の実験力が増加する。
【0052】
例示的な全装置が、図1に示され、以下に記載される。
【0053】
図1は、本発明の感知システムを包含する装置30を示している。装置30は、リーダ32と、リーダ32に挿入され得るカートリッジ33と、を含む。カートリッジ33は、エレクトロウェッティングデバイスの例であるAM-EWODデバイス34を包含する。AM-EWODデバイス34は、図2に示され、以下にさらに記載される。
【0054】
電気通信を提供する様々な他の方法(例えば、無線接続)が使用され得るが、使用中に、例えば、接続ワイヤ42のケーブルによって、リーダ32およびカートリッジ33が一緒に電気的に接続され得る。
【0055】
リーダ32はまた、カートリッジ33が挿入されたときにAM-EWODデバイス34中の流体媒体60中で液体を含む液滴1を形成するように構成された液滴調製システム35も備える。液滴1および流体媒体60に好適な材料特性が、本明細書で考察される。液滴調製システム35はまた、測定される分析物を調製するためのサンプル調製を運ぶこともでき得、代替的には、サンプル調製は、AM-EWODデバイス34中で実施され得る。サンプルは、ライブラリー調製のために、またはシーケンシングのために区画化され得る。
【0056】
液滴調製システム35は、1つ以上のリザーバからAM-EWODデバイス34に液体を投入し、それによってAM-EWODデバイス34内に液滴を生成する機能を実行する流体投入ポートを備え得る。液滴調製システム35は、従来の流体工学要素によって、例えばエレクトロウェッティングによって液体の流れを制御することによって形成され得る。液滴調製システム35は、作成された液滴1の体積を正確に、典型的には正確に2~3%に制御する能力を有することが望ましい。
【0057】
装置30は、リーダ32に提供された制御システム37をさらに含む。この例では、制御システム37は、システムと関連付けられた、任意のアプリケーションソフトウェアの任意のデータを記憶し得る制御電子機器38および記憶デバイス40を含む。制御電子機器38は、CPU、マイクロコントローラ、またはマイクロプロセッサなどの、AM-EWODデバイス34の制御に関連する様々な制御動作を実施するように構成される好適な回路機構および/または処理デバイスを含み得る。
【0058】
それらの機能の中で、本発明の特徴を実装するために、制御電子機器38は、記憶デバイス40内の制御アプリケーションとして具現化されたプログラムコードを実行し得る全制御システム37の一部を備え得る。記憶デバイス40は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能なプログラム可能読み取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、または他の好適な媒体などの非一過性コンピュータ可読媒体として構成され得る。また、コードは、例示的な実施形態に従って制御電子機器38によって実行され得るが、そのような制御システム機能は、専用ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせを介して実施することもできる。
【0059】
以下により詳細に記載するように、制御システム37は、感知システムの様々な要素の制御を実行するように構成されている。このことは、任意選択的に、液滴1を形成するために、存在する場合に液滴調製システム35の制御を含む。制御システムはまた、感知電極に接続されており、感知電極を動作させて電気的測定値を取得するように、かつ電気的測定値を処理するように構成されている。制御システムは、液滴動作を選択するように、かつ液滴を操作するための作動信号の印加を制御するようにさらに構成されている。特に、制御システム37は、電気的測定値に応答して感知システム中の液滴を操作するように構成されており、例えば、制御システムは、液滴界面を介して接続された第1の液滴および第2の液滴の1つ以上の系を形成することができる。制御システム37はまた、ユーザにプログラムコマンドの入力を提供するグラフィカルユーザインターフェース(GUI)をユーザに提供することもできる。例示的なコマンドには、例えば、提案された液滴動作を進行させるかどうか、または実施されるアッセイの選択が含まれる。GUIはまた、そのような動作の結果をユーザに表示することも提供する。
【0060】
図2および図3は、AM-EWODデバイス34を示している。図3は、EWODデバイスが第2の基板を備え、第1の感知電極および第2の感知電極が第2の基板上に配置されている好ましい実施形態に関連する。
【0061】
図2に見られるように、AM-EWODデバイス34は、第1の基板44上に配置された薄膜電子機器46を備えた第1の基板44(図2および図3の最下部の基板である)を有する。作動電極48のアレイ50は、薄膜電子機器46の上に第1の基板46によって支持されている。薄膜電子機器46は、作動電極48を駆動するように配設されている。
【0062】
作動電極48のアレイ50は、X×Yの長方形アレイであり得、ここで、XおよびYは、任意の整数である。作動電極48は、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)もしくは別の透明金属酸化物、または金属、または任意の他の導電性材料から形成され得る。
【0063】
AM-EWODデバイス34はまた、第1の基板44からスペーサ56によって分離された第2の基板54(図2および図3の最上部の基板である)も含む。以下にさらに記載するように、第1の液滴および第2の液滴は、第1の基板44と第2の基板54との間に配置される。単一の液滴1が図2および図3に示されているが、本発明の方法による感知システムの動作中に、少なくとも第1の液滴および第2の液滴が存在する。
【0064】
AM-EWODデバイス34の層状構造は、第1の基板44によって支持された2つの作動電極48を含むその一部分を示す図3で最もよく見られる。作動電極48は、導電性材料のパターン化された層から形成され得る。疎水性材料64によってコーティングされた電気絶縁材料の層62を含む絶縁体層61は、作動電極48を覆う第1の基板44上に配置されている。疎水性材料64は、絶縁体層61の疎水性最外表面を形成している。
【0065】
第2の基板54は、絶縁体層61の疎水性表面に面している。第2の基板54は、絶縁体層61に面する第2の基板54の表面上に堆積された導電性材料の層58を支持する。導電性材料の層58は、より多くの電極を形成するようにパターン化されている。第2の基板54は、導電性材料の層58を覆い、かつ絶縁体層61の疎水性表面に面するさらなる疎水性表面を形成する、疎水性材料68によってコーティングされている。疎水性材料64および68は、任意の好適な材料(同じであり得るか、または異なり得る)、例えばフルオロポリマーによって形成され得る。
【0066】
本発明の感知システムは、流体媒体60内に配置された、AM-EWODデバイス34中の液滴1を含んで示されている。液滴1および流体媒体60は、絶縁体層61の疎水性表面上に、および第2の基板54をコーティングする疎水性材料68のさらなる疎水性表面上に、配置される。このようにして、液滴1は、第1の基板44と第2の基板54との間に挟まれ、これにより、液滴1の形状が制約される。このことにより、以下に記載される方法で作動電極48に印加された作動信号による液滴1の制御の程度が改善される。
【0067】
液滴1は、絶縁体層61の疎水性表面との接触角66を有する。接触角66は、(1)疎水性表面から液滴1(ΓSL)界面の液体まで、(2)液滴1の液体から周囲の流体媒体60(ΓLG)界面まで、および(3)疎水性表面から周囲の流体媒体60(ΓSG)界面までの表面張力成分の釣り合いによって決定される。電圧が印加されない場合、接触角66は、ヤングの法則を満たし、式cosθ=((ΓSG-ΓSL)/ΓLG)で与えられるサイズθのものである。
【0068】
したがって、作動電極48は、作動電極48に作動信号が印加されると、液滴1をエレクトロウェッティングすることができる。液滴に作動信号が印加されるとき、液滴は、被作動液滴と呼ばれ得る。作動信号は、絶縁層61の疎水性表面の疎水性を実効的に制御する電気力を作成し、それによって液滴1に通電する。そのような通電状態において、液滴1は、液滴1がより低いエネルギー状態、すなわち、作動信号が液滴1に提供するエネルギーが少ないかまたは全くない状態にあるときと比較して改変された形状を有することとなる。
【0069】
形状が改変されることへのそのような言及は、AM-EWODデバイス34の平面における形状、すなわち、絶縁体層61の疎水性表面に平行な形状を指す場合がある。作動信号によって供給されるエネルギーは、液滴1の三次元形状を改変することとなるが、形状は、作動電極48が配列される方向であるAM-EWODデバイス34の平面で最も大きく影響を受ける。
【0070】
作動電極のアレイの中の1つ以上の選択された作動電極48に印加された作動信号のパターンを選択的に制御することによって、液滴1を操作し、第1の基板44と第2の基板54との間の横平面で移動させ得る。一般的に言えば、この方法での液滴1のそのような操作は、EWODデバイスについて知られている技術を適用し得る。
【0071】
作動信号は、液滴1をエレクトロウェッティングするのに好適な任意の形態を取り得る。典型的には、作動信号は、AC作動信号であり得るが、一般に、作動信号はまた、基準電圧に対するDC電圧電位でもあり得る。作動信号を印加している間、以下にさらに記載されるように、AM-EWODデバイスの他の場所で基準電極59に基準信号が印加される。
【0072】
基準信号は、任意の好適な形態を取り得る。一例では、基準信号は、固定基準電圧であり得る。作動信号がAC作動信号である別の例では、基準信号は、AC作動信号と逆位相であるAC基準信号であり得る。この例では、作動電極48と基準電極59との間の電位差の大きさを増加させ、例えば、AC作動信号とAC基準信号とが、固定基準電圧である基準信号と比較して等しい大きさである場合、2倍とする。
【0073】
エレクトロウェッティングデバイスの電極の動作は、図4図6に示されている。
【0074】
図4Aは、液滴1が存在する場合の、作動電極48と基準電極59との間の電気負荷70Aの簡略化された回路表現を示す。液滴1は、通常、並列の抵抗器およびキャパシタとしてモデル化することができる。典型的には、液滴1の抵抗は、比較的低く(例えば、液滴がイオンを含有する場合)、液滴の静電容量は、比較的高い(例えば、極性液体の比誘電率が、例えば液滴1が水性の場合は約80と、比較的高いため)。多くの状況では、液滴抵抗は、比較的小さく、そのため、エレクトロウェッティングについての関心対象の周波数で、液滴1は、実効的に電気的短絡として機能し得る。疎水性材料64および68は、キャパシタとしてモデル化され得る電気的特性を有し、層62の絶縁材料もまた、キャパシタとしてモデル化され得る。作動電極48と基準電極59との間の全インピーダンスは、値が、典型的には、層62の絶縁材料の寄与および疎水性材料64ならびに68の寄与によって支配され、かつ、典型的な層の厚さおよび材料についてピコファラッドのオーダーの値になり得るキャパシタによって近似され得る。
【0075】
図4Bは、液滴1が存在しない場合の、作動電極48と基準電極59との間の電気負荷70Bの簡略化された回路表現を示す。この場合、液滴成分は、上部基板と第1の基板との間の空間を占める非極性流体60の静電容量を表すキャパシタによって置き換えられる。この場合、作動電極48と基準電極59との間の全インピーダンスは、値が非極性流体の静電容量によって支配され、かつ典型的には、フェムトファラッドのオーダーの小さいキャパシタによって近似され得る。
【0076】
作動電極48を駆動し、および適用可能な場合は感知する目的で、電気負荷70Aおよび70Bは、全体として、実質的にキャパシタとして機能し、その値は、所与の作動電極48に液滴1が存在するか否かに依存する。液滴が存在する場合、静電容量は、比較的高い(典型的には、ピコファラッドのオーダー)のに対して、液滴1が存在しない場合、静電容量は低い(典型的には、フェムトファラッドのオーダー)。液滴が所与の電極48を部分的に覆う場合には、静電容量は、液滴1による作動電極48の被覆範囲をほぼ表し得る。
【0077】
図5は、AM-EWODデバイス34における薄膜電子機器46の配設を示している。薄膜電子機器46は、第1の基板44上に位置し、対応する作動電極48の電極電位を制御するためのアレイ素子回路72を各々が備えるアレイ素子51のアクティブマトリックス配設を備える。集積行ドライバ74および列ドライバ76の回路もまた、アレイ素子回路72に制御信号を供給するために、薄膜電子機器46に実装されている。このようにして、アレイ要素回路72は、制御システム37の制御下で、作動電極48を選択的に作動させて作動電極48に作動信号を印加する機能を実行することができる。したがって、制御システム37は、液滴操作動作を実行するための必要な電圧およびタイミング信号などの、作動電極48に印加される作動信号を制御する。
【0078】
図6は、各アレイ素子51に存在するアレイ素子回路72の配設を示している。アレイ素子回路72は、入力ENABLE、DATA、ならびにACTUATE、および作動電極48に接続された出力を有する作動回路88を包含する。シリアル入力データストリームを処理し、かつアレイ50の作動電極48への必要な電圧のプログラミングを促進するために、シリアルインターフェース82も提供され得る。電圧供給インターフェース84は、対応する供給電圧、第2の基板駆動電圧、および他の必要な電圧入力を提供する。第1の基板44と外部制御電子機器、電源、および任意の他の構成要素との間のいくつかの接続ワイヤ86は、大きなアレイサイズであっても比較的少なくすることができる。任意選択的に、シリアルデータ入力を部分的に並列化し得る。例えば、2本のデータ入力線が使用される場合、1本目は、列1~X/2についてのデータを供給し、2本目は、列ドライバ回路76にわずかな改変を加えて、列(1+X/2)~Mについてのデータを供給し得る。このようにして、アレイ素子51にデータをプログラムすることができる速度を増加させ、これは、液晶ディスプレイ駆動回路機構で使用される標準的な技術である。
【0079】
図7は、本発明の好ましい実施形態の例示的な態様を示し、第1の感知電極および第2の感知電極が、作動電極のアレイの中にはないが、第2の基板上に支持されている。この実施形態では、図7は、導電性材料の層58をパターン化して、センサ電極100、導電性トラック101、および第2の基板54上に堆積され、かつ第2の基板54によって支持されたさらなる電極102を形成し得る方法を示す。
【0080】
センサ電極100は、それぞれの液滴1と電気的接続を形成するように配設されている。感知電極100の提供は、液滴1への電気的接続を形成するための便利でかつ信頼できる方法である。対照的に、そのようなタイプの電気的接続は、作動電極48と液滴1との間に電気絶縁材料の層62を含む絶縁層61が存在することに起因して、作動電極58からは可能でない。
【0081】
第2の基板54をコーティングする導電性材料の層58を覆う疎水性材料68には、感知電極100の一部を露出する開口69が備えられるが、より一般的には、開口は、より大きく、センサ電極100の全体を露出し得る。疎水性材料68の開口69は、感知電極100と液滴1との間の電気的接触を形成することを支援する。流体媒体60および/または液滴1の液体は、開口69に流入し、疎水性材料68よりも低い電気インピーダンスを有し、それによって導電性経路を提供することができる。そのような開口69は、電極が非作動化されるか、またはデバイスが非給電化される場合に液滴1を所定の位置に留めるのに役立つ親水性パッチとして作用する追加の利点を有し得る。そのような開口69は、例えばドライエッチング処理またはリフトオフ処理によって、疎水性材料68を選択的に除去することによって作成し得る。
【0082】
しかしながら、開口69は、必須ではなく、代わりに、センサ電極100と液滴1との間の電気的接続を、疎水性材料68を通して形成することができ、疎水性材料68は、疎水性材料68を通して電気的測定値を取得し続けることができる十分に低いインピーダンス(実部または虚部のいずれか)であり得る。その場合、疎水性材料68の厚さおよび材料特性は、それに応じて選定される。
【0083】
EWODデバイスは、第1の感知電極および第2の感知電極を備える。典型的には、EWODデバイスは、2つのセットに配設された複数の感知電極を含む感知電極のアレイを備える。図7に示される感知電極100は、セットで配設され、各セットは、第1の電極および第2の電極を含む。第1の感知電極および第2の感知電極は、それぞれ、感知電極のアレイのうちの任意の2つである100aおよび100bとして示されている。各セットの感知電極100は、間に液滴界面が形成された液滴1との電気的接続を形成するようなサイズおよび形状をなし得る。このことは、第1の感知電極および第2の感知電極の領域が、第2の基板の疎水性表面上の関心対象の液滴(例えば、第1の液滴および第2の液滴)によって囲まれる領域と同様であることによって達成され得る。追加的に、感知電極100のセット内の第1の感知電極および第2の感知電極の中心間の距離は、わたって電気的測定値が取得される液滴1の中心間の距離と同様であり得る。このことは、図7に示されており、2つの液滴(1)は、点線で示され、これらの液滴の中心は各々、2つの感知電極100のセット内の第1の感知電極100aおよび第2の感知電極100bの中心上にそれぞれ配設されている。したがって、センサ電極100の各セットは、液滴1のその系中のそれぞれの液滴1への電気的接続を形成するために、液滴1のそれぞれの系と位置整合され得る。
【0084】
図7は、動作中に、感知システムが、2つ以上の液滴1の複数の系を包含し得、液滴1の各系が、感知電極100のそれぞれのセットと位置整合していることを示す。例示として、図7は、2つのセンサ電極100の3つのセットと、それぞれのセットのセンサ電極100と位置整合して形成された2つの液滴1の3つの系と、を示す。しかしながら、一般に、センサ電極100の任意の数のセットがあり得、セットは、各系に含まれる液滴1の数に応じて、任意の数の感知電極100を包含し得る。典型的には、感知電極のアレイは、少なくとも10個、または少なくとも100個、または少なくとも1,000個、または少なくとも10,000個、または少なくとも1,000,000個の電極を含む。いくつかの実施形態では、感知電極のアレイは、10~10個の感知電極、例えば、100~10個の感知電極の領域に含む。
【0085】
この構成の結果として、第1の液滴および第2の液滴1などの2つの液滴の系が並列に形成され得、感知電極100a、100bのそれぞれのセットを使用して実験が並列にそれらに対して実施され得る。一般に、任意の数の、例えば2つ以上、最大で数万のオーダーの大きな数の液滴2の系が形成され得る。
【0086】
導電性トラック101は、センサ電極100に接続されており、制御システム37への、具体的には液滴界面系センサシステム110への電気的接続が形成された導電性材料の層58の縁まで延在する。したがって、導電性トラック101は、感知電極100から制御システム37への電気的接続を提供する。
【0087】
感知電極100および導電性トラック101の周りに、さらなる電極102が延在することができる。さらなる電極102は、図4Aおよび図4Bに示される回路表現において基準電極59として機能し得る。その場合、制御システム37は、さらなる電極102に接続され、作動電極48に作動信号を印加しながら、さらなる電極102に基準信号を印加するように配設される。
【0088】
しかしながら、さらなる電極102は必須ではない。さらなる電極102が存在しない場合、またはさらなる電極102が存在する場合でさえ、異なる電極(複数可)が基準電極59として機能し得る。一例では、感知電極100は、基準電極59として機能し得る。
【0089】
別の例では、基準電極59は、例えば面内基準電極などの別個の要素として、第1の基板44と第2の基板54との間の他の場所に提供され得る。任意のそのような例では、制御システム37は、基準電極59、例えばセンサ電極100に接続され、作動電極48に作動信号を印加しながら、基準電極59に基準信号を印加するように配設される。そのような配設では、第1の基板44上の非作動の作動電極48は、基準として動作し得、液滴1を、第2の基板54上の基準電極を必要とせずに移動させることができる。
【0090】
リーダ32の制御システム37は、液滴界面センサシステム110をさらに備え、液滴界面センサシステム110は、感知電極100に接続され、かつそれらの間に形成された液滴界面を横切って、それぞれの液滴1に電気的に接続される感知電極100間で電気的測定値を取得する、測定ユニット111を含む。測定ユニット111は、典型的には、作動電極48に作動信号が印加されていない間に電気的測定値を取得するように制御される。このことは、例えば、測定されている液滴の系に物理的に影響を与えるかもしくは損傷を与えることによって、または測定ユニット111との電気的干渉を引き起こすことによって、作動信号が電気的測定値に影響を与えるリスクを低減するという利点を有する。
【0091】
薄膜電子機器46の要素は、センサ電極100および測定ユニット111から電気的に分離されているため、電気的測定値の取得には関与しない。
【0092】
制御システム37(例えば、制御システム内の液滴界面センサシステム110)は、分析物を分析するために、膜貫通細孔と相互作用する分析物に依存する電気的測定値を処理するように構成された分析システム112をさらに備え得る。例えば、分析物がポリマーユニットを含むポリマーである場合、分析システムは、電気的測定値を処理して、ポリマーのポリマーユニットの推定同一性を導出するように構成され得る。分析システム112は、任意の好適な知られている技術を使用して電気的測定値を処理し得る。
【0093】
分析システム112は、(1)測定ユニット111からの信号として供給された電気的測定値を前処理するためのハードウェアステージ、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)と、(2)ハードウェアステージから供給された信号を処理するためのプロセッサと、の適切な組み合わせによって形成され得る。プロセッサは、任意の好適な形態の処理デバイスであり得る。プロセッサは、図1に示されるようにリーダ32内に実装されてもよく、記憶デバイス40に記憶され得るソフトウェアを実行してもよい。代替として、プロセッサは、リーダ32の外部の処理デバイス、例えば従来のコンピュータ装置によって実装することができる。
【0094】
例として、測定ユニット111および分析システム112は、WO2011/067559に記載された信号処理機能と同じ構成を有し得る。
【0095】
液滴界面センサシステム110を他のタイプの測定システムと組み合わせて、測定値、例えば、作動電極からの静電容量測定値、および/または追加の電極(図示せず)からの測定値を取得し得る。
【0096】
アレイ素子回路72はまた、作動電極48と電気通信する液滴センサ回路90も包含し得る。液滴センサ回路90は、各作動電極48の場所における液滴1の存在または不在を検出するための感知能力を提供する。このようにして、アレイ素子回路72はまた、液滴1の操作中にアレイ素子51の場所での液滴1の存在または不在を感知する機能も実行し得る。しかしながら、作動電極48と液滴1との間に電気絶縁材料の層62を含む絶縁層61が存在することに起因して、液滴界面または液滴界面で発生する処理を研究するのに好適な電気的測定値を取得することが困難または不便な場合がある。
【0097】
液滴センサ回路90は、インピーダンスセンサ回路を使用する容量感知を便宜的に採用してもよい。液滴センサ回路90は、例えばUS8,653,832およびGB2,533,952に記載されているように、当該技術分野で知られているタイプのインピーダンスセンサ回路機構を含み得る。そこに記載されているように、液滴1は、エレクトロウェッティングによって作動され得、容量性またはインピーダンス感知手段によって感知され得る。典型的には、容量性およびインピーダンス感知は、アナログであり得、あらゆるアレイ素子51で同時に、またはほぼ同時に実行され得る。そのようなセンサからの返された情報を(例えば、リーダ32の記憶デバイス40中のアプリケーションソフトウェアで)処理することにより、制御システム37は、AM-EWODデバイスに存在する各液滴1の位置、サイズ、重心、および周囲をリアルタイムまたはほぼリアルタイムで判定することができる。
【0098】
代替的には、そのような感知は、いくつかの他の手段、例えば光学的手段または熱的手段によって実行され得る。液滴センサ回路90の代替は、エレクトロウェッティングデバイスの分野で知られているように、液滴特性を感知するために使用することができる光学センサなどの外部センサを提供することである。
【0099】
制御システム37は、液滴センサ回路90が液滴1の操作中に感知動作を実行するための制御信号を生成して出力する。統合されたセンサ行アドレス指定78および列検出回路80は、各アレイ素子回路72中の液滴センサ回路90のアドレス指定および読み出しのために、薄膜電子機器46に実装されている。典型的には、液滴センサ回路90の読み出しは、アレイ50の同じ行におけるアレイ素子51に共通であり得、かつ1つ以上の出力、例えばアレイ50の同じ列中のすべてのアレイ素子50に共通であり得るOUTも有し得る、1つ以上のアドレス指定ライン(例えば、RW)によって制御され得る。
【0100】
制御システム37は、液滴センサ回路90の出力を使用して、液滴1を操作するときに作動電極48への作動信号の印加のタイミングを制御し得る。
【0101】
制御システム
制御システムは、多様な機能を実行する。制御システムは、感知電極を動作させて電気的測定値を取得し、取得された電気的測定値を処理して液滴動作を選択し、作動電極を動作させて液滴動作をもたらす。
【0102】
制御システムは、第1の感知電極および第2の感知電極に接続され、第1の感知電極と第2の感知電極との間で、例えばインピーダンス測定値を含む電気的測定値を取得するように構成されている。感知システムが感知電極のアレイを備える場合、制御システムは、感知電極のアレイの中の任意の2つの感知電極間で電気的測定値、例えばインピーダンス測定値を取得するように構成され得る。例えば、制御システムは、電気的測定を実施する感知電極のアレイの中から感知電極の適切な対を選択する前に、第1の液滴および/または第2の液滴(および/または存在する場合に、第3の液滴またはさらなる液滴)の場所を検出するように構成され得る。
【0103】
制御システムは、2つの液滴に電気的に接続される感知電極間で電気的測定値を取得する(すなわち、感知電極から電気的測定を得る)ことができる。
【0104】
制御システムは、第1の感知電極と第2の感知電極との間で電気的測定値を取得するように構成されている。一態様では、制御システムは、第1の感知電極および第2の感知電極が各々液滴と電気的に接触している場合に、第1の感知電極と第2の感知電極との間で電気的測定値を取得するように構成されている。この態様の一実施形態では、制御システムは、第1の感知電極および第2の感知電極が各々液滴と接触しており、かつそれらの液滴が1つ以上の液滴界面によって接続されており、各液滴界面が両親媒性分子の層および膜貫通細孔を含む場合、第1の感知電極と第2の感知電極との間で電気的測定値を取得するように構成されている。典型的な実施形態では、制御システムは、第1の感知電極および第2の感知電極がそれぞれ第1の液滴および第2の液滴と接触する場合、第1の感知電極と第2の感知電極との間で電気的測定値を取得するように構成されている。この配設は、図8に示されている。
【0105】
電気的測定値を得ると、制御システムは、電気的測定値を分析し、次いで、制御システムに記憶された1つ以上の液滴に従う電気的測定値に基づいて液滴動作を選択するように構成されている。
【0106】
一態様では、制御システムは、液滴動作を選択して、ユーザによって指定されたか、または制御システム内に記憶された結果を達成するように構成されている。例えば、制御システムは、制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って液滴動作を選択することであって、当該命令が、分析物を分析するための命令である、選択すること、および/またはアッセイを実施すること、および/またはシステム内のサンプルに対して実験を実施することを行うように構成することができる。
【0107】
本発明の方法による液滴動作の選択を可能にするために制御システム内で発生するステップは、以下に記載される通りである。制御システムは、典型的には、「動作システム」と呼ばれ得るものを備え、動作システムは、1つ以上の命令、および任意選択的に感知システムに関するさらなる情報を記憶する。
【0108】
動作システムは、第1の液滴および/または第2の液滴に対して実行され得る1つ以上の処理に関する命令を記憶する。本発明の感知システムは広く適用可能であるため、関連する処理は非常に可変的であり、例えば、それは、サンプルを調製するための処理、サンプルの内容物を分析するための処理、サンプルに対してアッセイを実施するための処理などであり得る。そのような各処理には、各処理に関連付けられた多用な液滴動作があるであろう。以下でより詳細に考察するように、液滴動作は、典型的には、1つ以上の液滴を移動させることを伴う。簡単な例を挙げると、処理が液滴中に存在する分析物を分析するための処理である場合、実行することができる液滴動作は、
●分析物を含有する液滴を別の液滴と接触させて、膜貫通細孔を含む液滴界面を形成すること、
●分析物を含有する液滴を別の液滴から離れるように移動させて、液滴界面を分離すること、
●以前の液滴が劣化したか、または低品質のものである場合、サンプルの新たな液滴をシステムに持ち込むこと、
●分析物が枯渇した場合、分析物を含有する液滴に分析物の追加の液滴を追加すること、
●電子メディエータが枯渇した場合、電子メディエータの追加の液滴を液滴に追加すること、
●保持される系から分析物の液滴を取り除くこと
などを伴い得る。動作システムは、関心のある1つ以上の処理に関する記憶された命令を、1つ以上の電気的測定値から得られた情報に基づいて適用するように、かつ液滴動作を選択するように構成されている。
【0109】
いくつかの実施形態では、動作システムは、1つ以上の作動電極に作動信号を印加して液滴動作をもたらすようにさらに構成されている。他の実施形態では、動作システムは、GUIに出力を提供するように、例えば、液滴動作が実行されるべきかどうかを決定するための選択肢をユーザに提示するように構成され得る。この実施形態の一態様では、動作システムは、2つ以上の液滴動作を選択するように、かつ次いで、実行されるそれらの液滴動作のうちの1つをユーザが選択できるようにするために、GUIに出力を提供するように構成され得る。
【0110】
いくつかの態様では、実行される液滴動作を選択するために、動作システムは、感知システム内の複数の液滴の性質および場所に関する情報を記憶するように構成されている。液滴の「性質」とは、感知システム内の液滴の組成を意味し、例えば、液滴に含まれる液体媒体は、分析物、電子メディエータ、反応のための基質などの任意の種を含有し得る。液滴の「性質」はまた、そのような種の濃度などを意味し得る。「場所」とは、感知システム内の液滴の場所を意味する。
【0111】
この情報は、事前にプログラムされた構成に基づいて、動作システム内に保持され得、すなわち、動作システムは、感知システムの初期状態における感知システム内の液滴の性質および場所に関する情報を提供され得る。その場合、動作システムは、それらの液滴動作およびシステムの初期状態を参照することによって、1つ以上の液滴動作が発生した後、システム内の液滴の性質および場所を確立し得る。例として、動作システムが、(i)分析物を含む液滴が最初に位置Aに存在し、(ii)液滴を位置Aから位置Bに移動させて液滴動作が実行された、という情報にアクセスすることができる場合、動作システムは、分析物を含む液滴が位置Bに存在するという情報を、位置Bの液滴に対して任意の電気的測定を実施することなく記憶し得る。初期状態の感知システム内の液滴の性質および場所に関する情報は、恒久的または一時的に記憶することができ、例えば、各液滴動作が発生する際に上書きされ得る。
【0112】
他方、動作システムは、電気的測定値または他の測定値に基づいて、液滴の性質および場所に関する情報を判定し得る。例えば、動作システムは、その感知電極で取得された電気的測定値に基づいて、液滴がセンサ電極に対して相対的な場所に存在することを確立することができ、当該液滴と接触している感知電極を使用して電気的測定を実施することによって、その液滴中に存在する分析物の性質をさらに確立し得る。一度確立されると、この情報は、一時的に記憶され得る(例えば、新たなそのような情報が判定されるまで)。
【0113】
さらに、動作システムは、上述の2つの方法の混合によって、システム内の液滴の性質および場所に関する情報を確立および/または記憶し得る。
【0114】
したがって、いくつかの態様では、動作システムは、(i)電気的測定値、および(ii)制御システム(すなわち、制御システム内の動作システム)に格納された感知システムに存在する、液体媒体の1つ以上の液滴の性質および場所に関する1つ以上の命令および情報、に基づいて液滴動作を選択するように構成されている。
【0115】
液滴の場所およびそれらの液滴の性質に関する制御システム内の情報の取得および記憶は、方法が複数の液滴系に対して並行して実行される本発明の実施形態において特に有用である。動作システムは、特に、動作システムが、ステップ(c)を実行するように、すなわち、液滴動作を自動的に、かつユーザからの入力なしにもたらすように構成されている実施形態において、速度の大きな利点を提供する。
【0116】
制御システムは、電気的測定値を処理して、かつ第1の膜貫通細孔と相互作用する分析物を分析するように構成された分析システムをさらに備え得る。例えば、分析物がポリマーユニットを含むポリマーである場合、分析システムは、電気的測定値を処理して、ポリマーのポリマーユニットの推定同一性を導出するように構成され得る。分析システムは、動作システムに接続されてもよいか、または接続されなくてもよい。すなわち、分析システムからの出力は、動作システムが液滴動作を選択できるようにするために、動作システムに入力されてもよいか、または入力されなくてもよい。
【0117】
制御システムは、作動電極に接続され、受容された液滴を操作するために作動電極に作動信号を印加するように構成されている。
【0118】
制御システムは、作動電極に作動信号を印加しながら、第1の感知電極ならびに第2の感知電極に、および/または提供される場合にさらなる電極に、基準信号を印加するように構成され得る。
【0119】
有利には、制御システムは、液滴の複数の系を並列に形成するように選択された作動電極に作動信号を印加するように配設され得る。「液滴の系」とは、本明細書で定義されるような少なくとも第1の液滴および第2の液滴を含む配設を意味する。このことにより、装置は、複数の系に対して互いに並行して実験を実施することが可能になり、それによって、装置の実験スループットが増加する。
【0120】
ハードウェアに関しては、制御システムは、典型的には、制御電子機器と、制御システムと関連付けられた、任意のアプリケーションソフトウェアの任意のデータを記憶し得る記憶デバイスと、を備える。制御電子機器は、CPU、マイクロコントローラ、またはマイクロプロセッサなどのEWODデバイスの制御に関連する様々な制御動作を実施するように構成される好適な回路機構および/または処理デバイスを含み得る。
【0121】
それらの機能の中で、本発明の特徴を実装するために、制御電子機器は、記憶デバイス内の制御アプリケーションとして具現化されたプログラムコードを実行し得る全制御システムの一部を備え得る。記憶デバイスは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能なプログラム可能読み取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、または任意の他の好適な媒体などの、非一過性コンピュータ可読媒体として構成され得る。また、コードは、例示的な実施形態に従って制御電子機器によって実行され得るが、そのような制御システム機能は、専用ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせを介して実施することもできる。
【0122】
制御システムは、典型的には、ユーザにプログラムコマンドの入力を提供する、ユーザへのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)などのユーザインターフェースを備える。例えば、GUIは、ユーザが動作システムによって採用される命令を選択することを可能にし得る。しかしながら、動作システムは、動作システムがユーザからの入力なしに感知電極および作動電極を動作させるのに従う命令のセットを含み得るため、このことは不要である。制御システムがユーザインターフェースを備える場合、ユーザインターフェースは、例えば、ユーザが、実施されるアッセイを選択すること、またはサンプルを保持すべきか否かを選定することを可能にし得る。GUIは、感知システムの動作の結果をユーザに表示するために使用され得る。
【0123】
シリアル入力データストリームを処理し、かつ作動電極のアレイ中の作動電極に、および/または第1の感知電極ならびに第2の感知電極への必要な電圧のプログラミングを容易にするために、シリアルインターフェースを提供することもできる。
【0124】
電圧供給インターフェースは、作動電極のアレイおよび/または感知電極に必要な電圧入力を提供する。
【0125】
制御システムは、感知電極に接続され、かつ第1の感知電極と第2の感知電極との間で電気的測定値を取得する測定ユニットを含む液滴界面センサシステムをさらに含み得る。測定ユニットは、典型的には、作動信号が作動電極に印加されていない間、電気的測定値を取得するように制御される。このことは、例えば、測定されている液滴の系に物理的に影響を与えるかもしくは損傷を与えることによって、または測定ユニットとの電気的干渉を引き起こすことによって、作動信号が電気的測定値に影響を与えるリスクを低減するという利点を有する。測定ユニットは、例えば、増幅器配設を含む検出チャネルを含む、液滴界面実験に好適な、好適な電子部品によって形成され得る。一例では、測定ユニットは、パッチクランプ配設を備え得る。別の例では、測定ユニットは、WO2011/067559に記載された信号処理機能と同じ構造を有し得る。
【0126】
液滴
本発明の方法による感知システムの動作中、感知システムは、流体媒体と、液体媒体の第1の液滴および第2の液滴と、を備える。第1の液滴および第2の液滴は、EWODデバイスの疎水性表面上に配置されている。第1の液滴および第2の液滴はまた、存在する場合にEWODデバイスの第2の基板、またはその第2の基板上の層にも接触し得る。一般に、疎水性表面または第2の基板と接触しない第1の液滴および第2の液滴の任意の部分は、流体媒体と接触する。
【0127】
いくつかの実施形態では、感知システムは、液体媒体の第3の液滴またはさらなる液滴を備える。これらの液滴は、第1の液滴および第2の液滴として、流体媒体中に、疎水性表面上に配置される。
【0128】
一般に、流体媒体中で液滴を形成する任意の液体を、流体媒体中の第1の液滴および第2の液滴として使用し得るが、いくつかの可能な材料は、以下の通りである。
【0129】
流体媒体は、原則として気体媒体であり得るが、好ましくは液体媒体である。
【0130】
液体および流体媒体のうちの一方は、極性であり、液体および流体媒体のうちの他方は、無極性である。好ましくは、液滴の液体は、極性であり、流体媒体は、無極性である。典型的には、第1の液滴、第2の液滴、および存在する場合に第3の液滴の液体は、極性であり、流体媒体は、無極性であり、その結果、作動信号が印加された作動電極は、エレクトロウェッティングを起こす。他の実施形態では、第1の液滴、第2の液滴、および存在する場合に第3の液滴の液体は、無極性であり、流体媒体は、極性であり、その場合、作動信号が印加されない作動電極は、無極性液滴を引き付ける。
【0131】
液体および流体媒体のうちの一方が極性である場合、極性媒体は、典型的には、水を含む水性液体である。水性液体は、1つ以上の溶質をさらに含み得る。水性液体は、例えば、水性媒体のpHを必要に応じて調節するために緩衝剤を含んでもよく、それは、支持電解質を含んでもよい。水性媒体は、例えば、レドックス対、またはレドックス対を提供するために部分的に酸化または還元され得るレドックス対のメンバーを含み得る。レドックス対は、Fe2+/Fe3+、フェロセン/フェロセニウム、またはRu2+/Ru3+などの当該技術分野で知られているものから選定され得る。そのような例は、フェロ/フェリシアン化物、ルテニウムヘキサミン、およびフェロセンカルボン酸である。
【0132】
代替的には、液体および流体媒体のうちの一方が極性である場合、極性媒体は、典型的には、極性有機溶媒を含み得る。極性有機溶媒は、例えば、アルコールなどのプロトン性有機溶媒であり得るか、または非プロトン性極性有機溶媒であり得る。
【0133】
液滴の液体は、以下に記載されるタイプの実験を実施するのに好適な任意の液体であり得る。異なる液滴は、異なる液体を含み得る。
【0134】
液体および流体媒体のうちの他方が極性である場合には、無極性媒体は、油を含み得る。油は、単一の化合物であり得るか、または油は、2つ以上の化合物の混合物を含み得る。一例では、油は、純粋なアルカン炭化水素である。
【0135】
油は、例えば、シリコーン油を含み得る。好適なシリコーン油には、例えば、ポリ(フェニルメチルシロキサン)およびポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)が含まれる。シリコーン油は、ヒドロキシ末端シリコーン油、例えば、ヒドロキシ末端PDMSを含み得る。追加的または代替的には、油は、炭化水素、例えば、ヘキサデカンを含み得るが、任意の好適な炭化水素を使用し得る。油が炭化水素を含む場合、それは、単一の炭化水素化合物、または2つ以上の炭化水素の混合物を含み得る。油が炭化水素を含む場合、炭化水素は、分岐していても分岐していなくてもよい。炭化水素は、例えば、スクアレン、ヘキサデカン、またはデカンであり得る。一実施形態では、炭化水素は、ヘキサデカンである。しかしながら、いくつかの実施形態では、炭化水素は、ハロゲン原子、例えば、臭素で置換され得る。
【0136】
油は、1つ以上のシリコーン油と1つ以上の炭化水素との混合物を含み得る。混合物中のシリコーン油および炭化水素は、両方とも上記でさらに定義されたようなものであり得る。シリコーン油は、例えば、ポリ(フェニルメチルシロキサン)またはPDMSであり得る。
【0137】
他のタイプの油も可能である。例えば、油は、フルオロカーボンまたはブロモ置換C10-C30アルカンであり得る。
【0138】
感知システムは、分析物を含む1つ以上の液滴を含み得る。典型的には、第1の液滴は、分析物を含む。分析物は、通常、第1の膜貫通細孔と相互作用することができる任意の種であり、標的分析物、テンプレート分析物、または関心対象の分析物と呼ばれ得る。例えば、分析物は、ポリマーまたは薬物であり得る。代替的には、分析物は、金属イオン、無機塩、ポリマー、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、染料、漂白剤、薬剤、診断薬、レクリエーショナルドラッグ、爆発物、または環境汚染物質であり得る。典型的には、分析物は、帯電している。
【0139】
分析物は、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、および/またはタンパク質であり得る。アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、天然型であっても非天然型であってもよい。ポリペプチドまたはタンパク質は、それらの中に合成または修飾アミノ酸を含み得る。アミノ酸へのいくつかの異なるタイプの修飾が当該技術分野で既知である。本発明の目的で、分析物は、当該技術分野で利用可能な任意の方法によって修飾され得ることを理解されたい。
【0140】
分析物タンパク質は、酵素、抗体、ホルモン、成長因子、またはサイトカインなどの成長調節タンパク質であり得る。サイトカインは、インターロイキン、好ましくは、IFN-1、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12、およびIL-13、インターフェロン、好ましくは、IL-γ、ならびに他のサイトカイン、例えばTNF-αから選択され得る。タンパク質は、細菌タンパク質、真菌タンパク質、ウイルスタンパク質、または寄生虫由来のタンパク質であり得る。
【0141】
分析物は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドであり得る。ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドは、以下で考察される。オリゴヌクレオチドは、典型的に、50以下のヌクレオチド、例えば40以下、30以下、20以下、10以下、または5以下のヌクレオチドを有する短いヌクレオチドポリマーである。オリゴヌクレオチドは、脱塩基および修飾ヌクレオチドを含む、以下で考察されるヌクレオチドのいずれかを含んでもよい。
【0142】
ポリヌクレオチドの少なくとも一部は、二本鎖であってもよい。
【0143】
ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などの核酸であり得る。ポリヌクレオチドは、DNAの1本の鎖にハイブリダイズされたRNAの1本の鎖を含み得る。
【0144】
ポリヌクレオチドは、任意の長さであり得る。例えば、ポリヌクレオチドは、長さが少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500のヌクレオチドまたはヌクレオチド対であり得る。ポリヌクレオチドは、長さが1000以上、10000以上、100000以上、または1000000以上のヌクレオチドもしくはヌクレオチド対であり得る。
【0145】
任意の数のポリヌクレオチドを調査することができる。例えば、本発明の方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、100、またはそれ以上のポリヌクレオチドの特徴付けに関し得る。2個以上のポリヌクレオチドが特徴付けられた場合、それらは、異なるポリヌクレオチドであるか、または同じポリヌクレオチドの2つの実例であり得る。
【0146】
ポリヌクレオチドは、天然型であっても人工であってもよい。
【0147】
分析物が、ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであり、かつポリマー単位の推定同一性が、電気的測定値から導出される場合には、鎖の特徴付け/シーケンシングまたはエキソヌクレアーゼの特徴付け/シーケンシングを適用し得る。鎖のシーケンシングにおいて、ポリヌクレオチドは、印加された電位とともにまたは印加された電位に対してのいずれかで、ナノ細孔を通って転位し得る。この場合、電気的測定値は、複数のヌクレオチドの1つ以上の特性を示す。
【0148】
1つ以上の液滴は、細孔を通るポリマーの転位を制御するための、酵素などのポリマー結合部分を含有し得る。部分は、例えば、部分が酵素、酵素活性である場合、または分子ブレーキとして使用する分子モータであり得る。
【0149】
ポリマーがポリヌクレオチドである場合、ポリヌクレオチド結合酵素の使用を含む、転位の速度を制御するために提案されたいくつかの方法がある。ポリヌクレオチドの転位の速度を制御するための好適な酵素には、ポリメラーゼ、ヘリカーゼ、エキソヌクレアーゼ、一本鎖ならびに二本鎖結合タンパク質、およびジャイレースなどのトポイソメラーゼが含まれるが、これらに限定されない。他のポリマータイプの場合、そのポリマータイプと相互作用する部分をいくつかの実施形態で使用することができる。ポリマー相互作用部分は、WO2010/086603、WO2012/107778、およびLieberman KR et al,J Am Chem Soc.2010;132(50):17961-72)、ならびに電圧ゲート方式(Luan B et al.,Phys Rev Lett.2010;104(23):238103)に開示されるいずれかであり得る。
【0150】
ポリマー結合部分は、ポリマーの動きを制御するためにいくつかの方法で使用することができる。部分は、印加された場とともに、または印加された場に対して、ナノ細孔を通してポリマーを移動させることができる。部分は、例えば、部分が酵素、酵素活性である場合、または分子ブレーキとして使用する分子モータとして使用することができる。ポリマーの転位は、細孔を通るポリマーの移動を制御する分子ラチェットによって制御され得る。分子ラチェットは、ポリマー結合タンパク質であり得る。ポリヌクレオチドに関して、ポリヌクレオチド結合タンパク質は、好ましくは、ポリヌクレオチドハンドリング酵素である。
【0151】
好ましいポリヌクレオチドハンドリング酵素は、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、およびトポイソメラーゼ、例えば、ジャイレースである。ポリヌクレオチドハンドリング酵素は、例えば、WO2015/140535またはWO2010/086603に記載されているポリヌクレオチドハンドリング酵素のタイプのうちの1つであり得る。
【0152】
各液滴の体積は、特に限定されない。第1の液滴、第2の液滴、および(存在する場合)第3の液滴またはさらなる液滴は各々、同じまたは異なる体積を有し得る。
【0153】
液滴の形状は、特に限定されない。液滴が1つ以上の作動電極と電気的に接触し、かつ作動電極(複数可)が液滴を通電状態に維持しながら、液滴の形状が、活性化電極によって決定される。したがって、作動電極は、疎水性表面上の液滴の場所だけでなく、液滴の形状も操作することができる。多種多様な形状を形成することができる。例えば、液滴は、疎水性表面に平行な平面において、正方形、円形、長尺、または環状であり得る。
【0154】
液滴が作動アレイからの信号によって成形されている場合、液滴がより低いエネルギー状態に弛緩することが可能であるとき(例えば、作動電極がオフにされるとき)、液滴は弛緩する。このことは、特定の作動電極にエレクトロウェッティングを起こさせるための作動信号(複数可)が液滴にかけられる間、液滴の形状が液滴によって適合された形状から歪むことを意味する。
【0155】
いくつかの実施形態では、感知システムに存在する液滴は、少なくとも2つの作動電極、好ましくは少なくとも5つの作動電極、少なくとも10個の作動電極、または少なくとも20個の作動電極と電気的に接触する。これは、液滴が電気的に接触する作動電極が多いほど、液滴の通電状態での形状の制御の分解能が高くなるためである。そのことにより、ひいては、少なくとも1つの液滴の表面の移動の程度を増加させることが可能になり、このことは、ある液滴を別の液滴と接触させるなどの液滴動作の制御を支援する。
【0156】
両親媒性分子
液滴界面は、ある液滴が別の液滴と接触する空間の領域である。液滴界面は、液滴界面で互いに接触する一方または両方の液滴が両親媒性分子の層と接触するように、両親媒性分子の層を含み得る。いくつかの実施形態では、液滴界面は、両親媒性分子の二重層、すなわち、両親媒性分子の2つの隣接する単層を含み得る。その場合、二重層を含む液滴界面は、液滴界面二重層(DIB)と呼ばれ得る。DIBは、DIBに挿入された膜貫通細孔の研究のために使用され得る。例えば、Martel et al.,Biomicrofluidics 6、012813(2012)は、タンパク質チャネルが挿入された液滴界面二重層を形成するためのマイクロ流体デバイスを開示している。Ag/AgClパッドが提供された作動電極を含む基板上に金のマイクロワイヤーを堆積させて、膜チャネルを通るイオン電流の流れの測定を実施するために各液滴と電気的に接触させた。
【0157】
第1の液滴および第2の液滴は、液滴界面を介して互いに接触し、この液滴界面は、両親媒性分子の層を含む。感知システムは、本明細書に記載されるように、各々が両親媒性分子の層を含む、複数の他の液滴界面を備え得る。しかしながら、両親媒性分子は、液滴界面に存在するだけではない。第1の液滴および/または第2の液滴は、当該液滴と流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含む。例えば、両親媒性分子の層は、当該液滴と流体媒体との間の界面の全体に存在し得る。いくつかの実施形態では、第1の液滴および第2の液滴は各々、これらの液滴の流体媒体とのそれぞれの界面の全体に両親媒性分子の層を含む。
【0158】
感知システムが液体媒体の第3の液滴またはさらなる液滴を備える場合、そのような各液滴は、任意選択的に、当該液滴と流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み得る。両親媒性分子の層は、当該液滴と流体媒体との間の界面の全体に存在し得る。
【0159】
両親媒性分子は、液滴界面の形成前に、流体媒体中の液滴を安定化させるのに役立つ。また、両親媒性分子は、液滴界面が形成されたときに、液滴界面が両親媒性分子の膜を含むことを可能にし得る。
【0160】
多数の異なるタイプの両親媒性分子を使用し得る。両親媒性分子の層を含む各液滴は、1つ以上のタイプの両親媒性分子を含み得る。感知システムが、各々が両親媒性分子を含む2つ以上の液滴を含む場合(例えば、流体媒体との界面にある層の形態で)、それらの液滴は、同じまたは異なる両親媒性分子を含み得る。使用され得る両親媒性分子のタイプのいくつかの非限定的な例は、以下の通りである。
【0161】
一例では、両親媒性分子は、脂質二重層を形成するときに慣用的であるように、単一成分または成分の混合物を有し得る脂質を含み得る。脂質二重層などの膜を形成する任意の脂質を使用し得る。リン脂質を採用することができる。脂質は、表面電荷、膜タンパク質を支持する能力、充填密度、または機械的特性などの必要とされる特性を有する脂質二分子層が形成されるように、選定される。脂質は、1つ以上の異なる脂質を含むことができる。例えば、脂質は、最大で100個の脂質を含有することができる。脂質は、好ましくは1~10個の脂質を含有する。脂質は、天然型脂質および/または人工脂質を含み得る。脂質は化学的に修飾することもできる。
【0162】
2つの液滴間の界面にある両親媒性分子の層は、膜と呼ばれ得る。両親媒性ポリマー膜は、より高い電圧に耐える両親媒性ポリマー膜の能力に起因して、脂質膜よりも好ましい。
【0163】
別の例では、両親媒性分子は、第1の外側親水基、疎水性コア基、および第2の外側親水基を含む両親媒性化合物を含み得、第1および第2の外側親水基の各々は、疎水性コア基に連結される。いくつかのそのような両親媒性化合物は、WO2014/064444に開示されており、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。他のそのような両親媒性化合物は、参照により本明細書に組み込まれ、かつ平面両親媒性膜として装置1に採用することができるいくつかのポリマー材料を開示する、US6,916,488に開示されている。特に、トリブロックコポリマー、例えば、ポリ(2-メチルオキサゾリン)-ブロック-ポリ(ジメチルシロキサン)-ブロック-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PMOXA-PDMS-PMOXA)などのシリコントリブロックコポリマー膜が開示されている。採用可能なシリコーントリブロックポリマーの例は、7-22-7 PMOXA-PDMS-PMOXA、6-45-6 PMOXA-PE-PMOXA、および6-30-6 PMOXA-PDMS-PMOXAであり、名称は、サブユニットの番号を指す。そのようなトリブロックコポリマーは、液滴中に小胞形態で提供され得る。
【0164】
両親媒性分子の性質に応じて、膜は、両親媒性分子の二重層であり得るか、または両親媒性分子の単層であり得る。両親媒性分子は、代替的には、別の界面活性剤で置き換えられ得る。
【0165】
異なる液滴界面は、異なる両親媒性分子の膜、例えば、脂質二重層およびWO2017/004504に開示されるような上述したようなシリコーントリブロックポリマー膜などのポリマー膜を含む膜を含み得る。取得される電気的測定値は、両親媒性分子自体の膜またはこの膜の相互作用を研究するために、例えば、薬物膜誘電率を研究するために使用され得る。
【0166】
膜貫通細孔
本発明の感知システムは、1つ以上の膜貫通細孔を含み得る。一般に、液滴界面に挿入することが可能である任意の膜貫通細孔を使用し得る。異なる液滴は、同じまたは異なる膜貫通細孔を含み得るので、複数の液滴界面が異なる複数の液滴対の間に形成される場合、同じまたは異なる膜貫通細孔が、それらの液滴界面に挿入され得る。
【0167】
使用され得る膜貫通細孔のタイプのいくつかの非限定的な例は、以下の通りである。
【0168】
膜貫通細孔は、膜に挿入されると、膜の対向する側の間の連通を可能にするチャネル構造である。典型的には、膜貫通細孔は、イオンが流れ得る膜の一方側から他方側への経路を提供するチャネル構造である。いくつかの実施形態では、膜貫通細孔は、分析物が少なくとも部分的にチャネルに入ることを可能にするチャネル構造である。「少なくとも部分的に」とは、膜貫通細孔は、分析物がイオンチャネルに入ることを可能にするが、膜の一方側から他方側に分析物を通過させないことを意味し、いくつかの実施形態では、膜貫通細孔は、分析物に対して透過性である。チャネルは、チャネルの長さに沿って幅が変動してもよく、典型的には、0.5nm~10nmの内径を有する。
【0169】
任意の好適な膜貫通細孔が、本発明において使用され得る。細孔は生物学的または人工的であってもよい。好適な細孔は、タンパク質細孔、ポリヌクレオチド細孔、および固体細孔を含むが、これらに限定されない。細孔は、DNA折り紙細孔であり得る(Langecker et al.,Science,2012;338:932-936)。好適なDNA折り紙細孔は、WO2013/083983に開示されている。
【0170】
膜貫通孔は、好ましくは、膜貫通タンパク質細孔である。
【0171】
膜貫通タンパク質細孔は、モノマーまたはオリゴマーであり得る。細孔は、六量体細孔、七量体細孔、八量体細孔、または九量体細孔であり得る。細孔は、ホモオリゴマーまたはヘテロオリゴマーであってもよい。
【0172】
膜貫通タンパク質細孔は、CsgG、例えば、大腸菌Str.K-12亜種MC4100からのCsgGに由来し得る。好適なCsgG細孔の例は、WO2016/034591、WO2017/149316、WO2017/149317、およびWO2017/149318に記載されている。
【0173】
膜貫通タンパク質細孔は、典型的には、それを通ってイオンが流れ得るバレルまたはチャネルを含む。細孔のサブユニットは、典型的には、中心軸を取り囲み、鎖を膜貫通βバレルもしくはチャネルまたは膜貫通α-ヘリックスバンドルもしくはチャネルに供する。膜貫通タンパク質細孔のバレルまたはチャネルは、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、または核酸などの分析物との相互作用を促進するアミノ酸を含む。細孔は、例えば、1つ以上のアミノ酸の置換または欠失によって修飾され得る。
【0174】
本発明に従って使用するための膜貫通タンパク質細孔は、βバレル細孔またはαヘリックスバンドル細孔に由来し得る。β-バレルポアは、β鎖から形成されるバレルまたはチャネルを含む。好適なβ-バレル細孔としては、α-溶血毒、炭疽毒素、およびロイコシジンなどのβ-毒素、ならびにMycobacterium smegmatisポリン(Msp)、例えばMspA、MspB、MspC、またはMspD、CsgG、外膜ポリンF(OmpF)、外膜ポリンG(OmpG)、外膜ホスホリパーゼAおよびNeisseriaオートトランスポーターリポタンパク質(NalP)などの細菌の外膜タンパク質/ポリン、ならびにリセニンなどの他の細孔が挙げられるが、これらに限定されない。α-ヘリックスバンドル細孔は、α-ヘリックスから形成されるバレルまたはチャネルを含む。好適なα-ヘリックスバンドル細孔は、内膜タンパク質およびα外膜タンパク質、例えばWZAおよびClyA毒素を含むが、これらに限定されない。
【0175】
膜貫通細孔は、Msp、α溶血毒(α-HL)、リセニン、CsgG、ClyA、Sp1、および溶血性タンパク質フラガセトキシンC(FraC)に由来するか、またはそれらに基づき得る。膜貫通タンパク質細孔は、好ましくはCsgG、より好ましくは大腸菌Str.K-12亜種MC4100からのCsgGに由来する。
【0176】
膜貫通孔はリセニンに由来してもよい。リセニン由来の好適な細孔は、WO2013/153359に開示されている。
【0177】
細孔は、上に列挙されたナノ細孔の変異体であり得る。変異体は、アミノ酸配列に対するアミノ酸類似性または同一性に基づき、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、およびより好ましくは少なくとも95%、97%、または99%の相同性であり得る。
【0178】
相同性を決定するために、当該技術分野における標準的な方法が使用され得る。例えば、UWGCG Packageは、例えばそのデフォルト設定で使用されて、相同性を計算するために使用され得るBESTFITプログラムを提供する(Devereux et al(1984)Nucleic Acids Research 12,p387-395)。例えば、Altschul S.F.(1993)J Mol Evol 36:290-300、Altschul,S.F et al(1990)J Mol Biol 215:403-10に記載されるように、PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを使用して、相同性を計算するか、または配列を並べる(同等の残基または対応する配列を同定する(典型的には、それらのデフォルト設定において))ことができる。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に利用可能である。類似性は、ペアワイズ同一性を使用して、またはBLOSUM62などのスコアリングマトリックスを適用し、同等の同一性に変換することによって測定することができる。それらは進化した変化ではなく機能的なものであるため、相同性を判定する際に意図的に変異した位置はマスクされる。類似性は、タンパク質配列の包括的データベース上の例えばPSIBLASTを使用する位置特異的スコアリングマトリックスの適用によってより敏感に決定され得る。進化的時間スケール(例えば、電荷)にわたる置換の頻度ではなくアミノ酸の化学物理的特性を反映する異なるスコアリングマトリックスを使用することができる。
【0179】
膜貫通タンパク質に対して、例えば、最大1、2、3、4、5、10、20、または30個の置換のアミノ酸置換が行われ得る。保存的置換は、アミノ酸を、類似の化学構造、類似の化学的特性、または類似の側鎖量の他のアミノ酸で置き換える。導入されるアミノ酸は、それらが置き換えるアミノ酸と類似の極性、親水性、疎水性、塩基性、酸性、中性、または荷電性を有し得る。代替的には、保存的置換は、既存の芳香族または脂肪族アミノ酸の代わりに、芳香族または脂肪族である別のアミノ酸を導入してもよい。膜貫通タンパク質細孔などの本明細書に記載のタンパク質はいずれも、合成的にまたは組み換え手段によって生成してもよい。例えば、細孔は、インビトロ翻訳および転写(IVTT)によって合成され得る。細孔のアミノ酸配列は、非天然型アミノ酸を含むように、またはタンパク質の安定性を増加させるように修飾され得る。タンパク質が合成手段によって生成される場合、そのようなアミノ酸は生成中に導入してもよい。細孔はまた、合成生成または組換え生成のいずれかの後に変更してもよい。
【0180】
膜貫通タンパク質細孔などの本明細書に記載のタンパク質はいずれも、当該技術分野において既知の標準的な方法を用いて生成することができる。細孔または構造体をコードするポリヌクレオチド配列は、当該技術分野における標準的な方法を使用して誘導および複製され得る。細孔または構造体をコードするポリヌクレオチド配列は、当該技術分野における標準的な方法を使用して細菌宿主細胞において発現され得る。細孔は、組み換え発現ベクターからのポリペプチドのインサイツ発現によって細胞において生成され得る。発現ベクターは、任意選択的に、ポリペプチドの発現を制御するために誘導性プロモーターを担持する。これらの方法は、Sambrook,J.and Russell,D.(2001).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Edition.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYに記載される。
【0181】
細孔は、タンパク質生成有機体からの任意のタンパク質液体クロマトグラフィーシステムによる精製後に、または組み換え発現後に大規模に生成されてもよい。典型的なタンパク質液体クロマトグラフィーシステムには、FPLC、AKTAシステム、Bio-Cadシステム、Bio-Rad BioLogicシステム、およびGilson HPLCシステムが含まれる。
【0182】
電気的測定
EWODデバイス上に配置された液滴に対して、電気的測定を実施するための方法が知られている。US2010/0,194,408は、とりわけ、作動電極での液滴の存在、部分的存在、または不在を決定するために、液滴アクチュエータの静電容量を検出するための方法、回路、および装置を開示している。US8,653,832は、インピーダンス(または静電容量)感知機能をEWODデバイスの各アレイ素子のアレイ素子回路に組み込むことができる方法を記載しており、インピーダンスセンサ回路を使用して、アレイ中の各電極に存在する液滴の存在およびサイズを判定し得る。しかしながら、これらのアプローチは、作動信号が印加されるのと同じ電極から信号を得る必要性により限定される。
【0183】
Martel et al.,Biomicrofluidics 6、012813(2012)は、タンパク質チャネルが挿入された液滴界面二重層を形成するためのマイクロ流体デバイスを開示し、Ag/AgClパッドが提供された作動電極を含む基板上に金のマイクロワイヤーを堆積させ、膜チャネルを流れるイオン電流の測定を実施するために、各液滴と電気的に接触させた。しかしながら、この構成は不便であり、製造が困難であるだけでなく、測定値を取得する信頼性を限定し、かつ技術のスケーラビリティを限定する。
【0184】
例えば、インピーダンス、電流、または静電容量の測定値など、任意の好適な電気的測定値を取得し得る。一態様では、電気的測定値は、電圧を印加し、かつ他方を接地しながら、第1の感知電極および第2の感知電極を介して供給される電流を測定することによって取得し得る。したがって、横切って電気的測定値が取得される液滴界面の電気インピーダンスの実部および虚部を判定し得る。
【0185】
電気的測定値は、典型的には、液滴の対の間で取得される電気的測定値である。ごく通常、電気的測定値は、液滴界面を横切って取得される電気的測定値であり、液滴界面は、両親媒性分子の層と、この層の中に挿入された膜貫通細孔と、を含む。例えば、電気的測定値は、第1の液滴と第2の液滴との間の界面を横切って取得される電気的測定値であり得る。
【0186】
いくつかの実施形態では、電気的測定値は、2つ以上の液滴界面によって分離された液滴の対の間で取得される電気的測定値であり得る。これらの実施形態では、典型的には、当該各界面は、両親媒性分子の層および膜貫通細孔を含む。例えば、感知システムが第1の液滴および第2の液滴に加えて第3の液滴を含み、かつ第3の液滴が液滴界面を介して第1の液滴と接触し、この液滴界面が両親媒性分子の層および膜貫通細孔を含む場合、電気的測定値は、図9に示されるように、第3の液滴と接触する第1の感知電極と、第2の液滴と接触する第2の感知電極と、の間で取得される電気的測定値であり得る。
【0187】
一実施形態では、電気的測定は、液滴(例えば、第1の液滴、第2の液滴、または第3の液滴)が特定の電極と電気的に接触するかどうかを判定することを含む。例えば、電気的測定は、感知システム内の液滴(例えば、第1の液滴、第2の液滴、または第3の液滴)の場所を判定することを含み得る。
【0188】
例示的な電気的測定値は、膜貫通細孔を通る液滴間のイオン流の測定値である。例えば、電気的測定値が第1の液滴および第2の液滴を横切って取得される電気的測定値である場合(第1の感知電極および第2の感知電極が第1の液滴および第2の液滴と接触する図8に示されるように)、電気的測定値は、第1の膜貫通細孔を通るイオン流の測定値であり得る。別の例では、電気的測定値は、第1の感知電極が第3の液滴と接触し、かつ第2の感知電極が第2の電極と接触する図9に示されるセットアップをわたる電気的測定値である場合、および第1の液滴が第1の膜貫通細孔を含む第2の液滴との液滴界面を形成し、かつ第1の液滴が第2の膜貫通細孔を含む第3の液滴との液滴界面を形成する場合には、電気的測定値は、一緒に取得された、第1の膜貫通細孔および第2の膜貫通細孔をわたるイオン流の測定値であり得る。
【0189】
別の例示的な電気的測定値は、分析物と膜貫通細孔との相互作用に依存する電気的測定値である。例えば、電気的測定値は、図8に示されるように、システム内の第1の感知電極と第2の感知電極との間で取得され得、電気的測定値は、第1の膜貫通細孔との相互作用(または相互作用の不在)を示す電気信号であり得る。別の例では、電気的測定値は、図9に示されるように、システム内の第1の感知電極と第2の感知電極との間で取得され得、電気的測定値は、第1の膜貫通細孔、または第2の膜貫通細孔、または一緒の第1の膜貫通細孔および第2の膜貫通細孔との相互作用(または相互作用の不在)を示す電気信号であり得る。
【0190】
分析物と膜貫通細孔との相互作用に依存する電気的測定値は、膜貫通細孔をわたるイオン流の測定値であり得る。分析物と膜貫通細孔との相互作用は、分析物が細孔と相互作用してイオン流を遮断するときに発生する電気信号の変移として現れ得る。
【0191】
電気的測定値が分析物と膜貫通細孔との相互作用に依存する場合、分析は、標的分析物の存在、不在、または1つ以上の特徴を判定し得る。分析物が、ポリマー単位を含むポリマーである場合、分析において、電気的測定値を処理して、ポリマー単位の推定同一性を導出するか、またはポリマー単位をカウントするか、もしくはポリマーの長さを判定し得る。分析の基礎として分析物が電気的測定値にどのように影響するかを判定するために、異なる分析物またはポリマーユニットの存在下で対照実験を実施することができる。
【0192】
分析は、例えば、WO2013/041878またはWO2015/140535に記載されているような隠れマルコフモデルを採用する技術、例えば、Boza et al.,「DeepNano:Deep recurrent neural networks for base calling in MinION nanopore reads」PLoS ONE 12(6):e0178751,5 June 2017に記載されているような機械学習を採用する技術、例えば、WO2013/121224に記載されているような特徴ベクトルの比較を採用する技術、または任意の他の好適な技術を含む、任意の好適な知られている技術を使用して実施され得る。
【0193】
標的分析物と膜貫通細孔との間の相互作用は、分析物が、細孔に対して、通って転位するなど、移動する際に発生し得る。その場合、分析物が細孔に対して移動する際に、電気的測定値を取得し得る。液滴間に、すなわち膜貫通細孔をわたる電位差が印加されている間に、そのような移動が発生し得る。印加される電位は、典型的には、細孔とポリヌクレオチド結合タンパク質との間での複合体の形成をもたらす。印加される電位差は、電圧ポテンシャルであり得る。代替的には、印加される電位差は、化学ポテンシャルであり得る。この例は、両親媒性層にわたって塩勾配を使用している。塩勾配は、Holden et al.,J Am Chem Soc.2007 Jul 11;129(27):8650-5に開示されている。
【0194】
電気的測定値(例えば、イオン流の測定値)は、任意選択的に、液滴間に電位差を印加しながら取得することができる。電位差は、第1の感知電極および第2の感知電極を使用して印加することができる。したがって、一実施形態では、電気的測定値は、第1の感知電極および第2の感知電極にわたって電位差を印加しながら取得される。
【0195】
電気的測定値は、下限から上限までの周波数範囲で取得され得、任意の組み合わせで、下限は、1Hz、10Hz、または100Hzであり、上限は、10MHz、100KHz、または10KHzである。
【0196】
初期の液滴配設
以後に、本発明の方法におけるステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)の実行前の、感知システム内の第1の液滴および第2の液滴(ならびに存在する場合に、第3の液滴およびさらなる液滴)の初期構成の様々な典型的な態様が記載される。
【0197】
本発明の方法は、両親媒性分子の層を含む液滴界面を介して接触する第1の液滴および第2の液滴に対して実行される。両親媒性分子の層を含むそのような液滴界面を提供する好適な方法は、両親媒性分子の外層に第1の液滴および第2の液滴のいずれかまたは両方を提供することである。両親媒性分子は、関連する液滴(複数可)に含まれる液体媒体中、または流体媒体中のいずれかに提供され得る。両親媒性分子の外層を、典型的には自発的に形成することにより、両親媒性分子の疎水性部分を無極性媒体と接触させ、かつ親水性部分を極性媒体と接触させ、これはエネルギー的に好ましい配設であるためである。次いで、第1の液滴および第2の液滴を、作動電極のアレイに好適な作動信号を印加することによって接触させることができる。したがって、第1の液滴または第2の液滴のいずれかは、当該第1の液滴および/または第2の液滴と流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含む。両親媒性分子のこの層は、当該第1の液滴および/または第2の液滴と流体媒体との間の界面のすべてまたは一部を覆うことができ、典型的には、両親媒性分子の層は、当該界面の全体を覆う。
【0198】
第1の液滴または第2の液滴と流体媒体との間の界面における両親媒性分子の層の存在は、当該第1の液滴または第2の液滴を安定化させる。したがって、好ましい実施形態では、第1の液滴および第2の液滴は各々、液体媒体と流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含む。両親媒性分子の層は、液体媒体と流体媒体との間の界面全体を覆い得る。
【0199】
第1の液滴と第2の液滴との間の界面は、第1の膜貫通細孔を含む。膜貫通細孔は、典型的には、膜とも呼ばれる液滴界面における層または両親媒性分子に自発的に挿入される。したがって、第1の膜貫通細孔は、第1の液滴および第2の液滴を接触させて感知システムの初期状態を形成する前に、最初に第1の液滴または第2の液滴のいずれかに提供され得る。もちろん、システムは、単一の細孔の存在に限定されず、第1の液滴と第2の液滴との間の界面は、複数の膜貫通細孔を含むことができ、膜貫通細孔の各々は、互いに同じであってもよいか、または異なってもよい。特定の実施形態では、液滴界面は、単一の膜貫通細孔を含み得る。
【0200】
本発明の感知システムは、有利なことに用途が広く、複数の液滴を互いに接触させて、例えば、液滴内に含有される分析物を複数の膜貫通細孔に曝露することを可能にする。したがって、さらに好ましい実施形態では、第1の液滴は、液滴界面を介して液体媒体の第3の液滴と接触し、第1の液滴と第3の液滴との間の液滴界面は、両親媒性分子の層を含む。この実施形態の一態様では、第1の液滴と第3の液滴との間の界面は、膜貫通細孔をさらに含み、この膜貫通細孔は、第1の膜貫通細孔と同じであってもよいか、または異なってもよい。
【0201】
感知システムが、第1の液滴と接触する第2の液滴および第3の液滴を含む場合、3つの液滴は、各液滴が他方と接触するように配設され得る。この実施形態では、第2の液滴はまた、液滴界面を介して第3の液滴と接触し、第2の液滴と第3の液滴との間の液滴界面は、両親媒性分子の層を含む。第2の液滴と第3の液滴との間のこの界面は、任意選択的に、第1の膜貫通細孔と同じであってもよいか、または異なってもよい膜貫通細孔を含み得る。この実施形態では、第1の液滴、第2の液滴、または液滴のいずれかに存在する分析物は、膜貫通細孔を介して存在する他の2つの液滴のいずれかに移動することができる。
【0202】
他方、感知システムが、第1の液滴と接触する第2の液滴および第3の液滴を含む場合、第3の液滴および第2の液滴は、互いに接触しなくてもよい。この実施形態では、第1の液滴に存在する分析物は、第2の液滴または第3の液滴に移動することができるが、分析物は、第2の液滴から第3の液滴に移動することはできない。
【0203】
本システムの特定の利点は、本システムが非常に複雑な感知システムを(非常に少量で)提供できることであり、単一の液滴は、例えば、各場合に、膜および膜貫通細孔を含む液滴界面を介して、3つ以上の他の液滴と接触することができる。そのようなシステムは、非常に小規模でMinION(商標)デバイス(現在の市場をリードするデバイス)の複雑さに近づいている。したがって、第1の液滴がまた、各々さらなる液滴界面を介して液体媒体の1つ以上のさらなる液滴と接触し、各さらなる液滴界面が両親媒性分子の層を含む方法が提供される。各さらなる液滴界面は、任意選択的に、膜貫通細孔を含み、この膜貫通細孔は、第1の膜貫通細孔と同じであってもよいか、または異なってもよい。この設定は、有利なことに、印加された電位によって分析物を検出するように誘導された場合、分析物が各細孔を通って順番に移動する際に分析物を検出することを可能にする。代替的には、もちろん、第1の液滴を一連のさらなる液滴と順番に接触するように移動させ、各場合において、膜および膜貫通細孔を含む液滴界面を形成することによって、同様の結果が達成され得る。
【0204】
前述の液滴界面の各々に提供される両親媒性分子の層は、両親媒性分子の単層からなり得る。これは、例えば、両親媒性分子が、2つの極性ブロックおよび1つの無極性ブロック、または2つの無極性ブロックおよび1つの極性ブロックを含むトリブロックコポリマーである場合であり得る。しかしながら、両親媒性分子の層は、両親媒性分子の2つの層、例えば二重層を含み得る。脂質分子、例えばリン脂質分子が両親媒性分子として使用される場合、二重層が形成されることが知られており、WO2014/064444に記載されているように、トリブロックコポリマーが使用される場合も、二重層が形成され得る。したがって、先行する実施形態のいずれかにおいて、液滴界面または各液滴界面は、両親媒性分子の二重層を含む。他の実施形態では、液滴界面または各液滴界面は、膜貫通細孔(複数可)とともに、両親媒性分子の単層を含み得る。複数の膜が存在する場合、いくつかの膜は、二重層を含み得、他の膜は、両親媒性分子の単層を含み得る。
【0205】
第1の液滴と第2の液滴との間の膜は、膜貫通細孔を含む。好ましい実施形態では、感知システムが、膜を含むさらなる液滴界面を含む場合、当該さらなる液滴界面のうちの1つ以上は、膜貫通細孔を含む。特に好ましくは、感知システムに存在する各膜は、膜貫通細孔を含む。各膜貫通細孔は、同じであってもよいか、または異なってもよい。
【0206】
膜を横切る材料の容易かつ迅速な転送を促進することが望ましい場合がある。特定の例では、分析物と感知電極との間の直接的な電気的接触を妨げながら、第1の液滴中の分析物と第1の膜貫通細孔との相互作用を検出することが望ましい場合がある。この場合、分析物は、第1の液滴に含有され得、第1の液滴は、膜を介して第2の液滴および第3の液滴と接触し得る。したがって、第1の感知電極および第2の感知電極は、第1の液滴および第2の液滴ではなく、第2の液滴および第3の液滴と接触し得る。しかしながら、分析物と第1の膜貫通細孔との間の相互作用を確認するために、第1の液滴と第3の液滴との間で電荷が転送されなければならない。第1の液滴および第2の液滴に関連して、イオンは、典型的には、第1の膜貫通細孔に浸透することができ、すなわち、第1の膜貫通細孔は、典型的には、イオンチャネルとして作用する。しかしながら、第1の液滴および第3の液滴に関連して、このことは、第1の液滴と第3の液滴との間の膜内に複数(典型的には多数、例えば少なくとも10個または少なくとも100個)のイオンチャネルを提供することによって、達成され得る。この場合、複数のイオンチャネルは、一種のフリットとして機能し、電荷転送、したがって第1の電極と第2の電極との間の電気的相互作用を可能にしながら、分析物の第3の液滴への転送を妨げる。液滴の対(例えば、第1の液滴および第3の液滴)の間の多数のイオンチャネルは、液滴ネットワークのその点での電気抵抗を低減し、電流が感知電極間を流れることを可能にし、感知を可能にする(例えば、第1の液滴と第2の液滴との間の界面で)。
【0207】
2つの液滴界面を有する3つの液滴構造体における液滴の対の間の界面が、一方の液滴界面で膜に存在する複数のイオンチャネルを含む場合、イオンチャネルの数は、典型的には、他方の界面に存在する膜貫通細孔の数と比較して多い。例えば、イオンチャネルの数は、他方の液滴界面の膜貫通細孔の数よりも、少なくとも10倍、少なくとも100倍、または少なくとも1000倍、例えば、少なくとも10,000倍、または少なくとも100,000倍多くてもよい。例えば、第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を含む構造体が、第3の液滴と第1の液滴との間の液滴界面に複数のイオンチャネルを含み、かつ第1の液滴と第2の液滴との間の界面に1つ以上の膜貫通細孔を含む場合、第1の液滴と第3の液滴との間の界面のイオンチャネルの数は、第1の液滴と第2の液滴との間の界面の膜貫通細孔の数よりも、少なくとも10倍、少なくとも100倍、または少なくとも1000倍、例えば、少なくとも10,000倍、または少なくとも100,000倍大きくてもよい。
【0208】
この実施形態のさらなる態様では、電極との電荷転送を可能にするために使用される電子メディエータから分析物を完全に分離することが望ましい場合がある。その場合、液滴構造体は、イオンチャネルが電子メディエータに対して不浸透性であることを除いて、上述したものであり得る。例えば、分析物および/または電子メディエータの通過を可能にするには狭すぎるイオンチャネルまたはナノ細孔、またはナノ細孔/チャネルの中央チャネルに負電荷を有するイオンチャネルまたはナノ細孔が、第1の液滴と第3の液滴との間で採用され得る。さらに、第1の膜貫通細孔は、分析物が第1の液滴から完全に第2の液滴に浸透することを可能にしなくてもよく、その場合、分析物は、第1の液滴内に完全に保持される。
【0209】
したがって、本発明の一態様では、感知システムは、各々が複数のイオンチャネル、例えば少なくとも10個のイオンチャネルを含む1つ以上の液滴界面を含む。一態様では、複数のイオンチャネルを含むこの当該液滴界面は、第1の液滴と接触する。この実施形態のさらなる態様では、当該イオンチャネルは、電子メディエータに対して不浸透性である。例えば、第1の液滴と第3の液滴との間の液滴界面は、複数のイオンチャネルを含み得る。
【0210】
前述の実施形態では、典型的には、第1の液滴は分析物を含む。分析物は、単一の化学種または種の混合物を含有し得る。
【0211】
典型的には、第2の液滴は、電子メディエータを含む。「メディエータ」とも呼ばれる「電子メディエータ」とは、電荷を供給または除去し、電荷を感知電極の対の他方の電極に向けて輸送することによって、感知電極を再生する種を意味する。本発明の感知システムでは、第1の感知電極と第2の感知電極との間に電位を提供することができ、イオン流は、これらの電極の間で起こる。この電流の流れは、電子を放出または吸収するために酸化または還元され得る電子メディエータによって媒介される。しかしながら、これの最終的な結果は、印加される電位の極性に応じて、メディエータのレドックス対の一方または他方のメンバーの消費である。レドックスメンバーの消費速度は、イオンフローの大きさに依存する。
【0212】
例えば、正の電位の印加は、最終的に枯渇することになるレドックス対の1つのメンバーの酸化をもたらす。電子メディエータのレドックスメンバーの枯渇が発生すると、基準電位がドリフトし始め、これにより、メディエータがさらに供給されない限り、測定の寿命が制限され得る。
【0213】
典型的な電子メディエータは、例えば、2つの異なる酸化状態のイオンを含むレドックス対である。例示的な電子メディエータは、Fe2+およびFe3+などの2つの異なる酸化状態の遷移金属を含むメディエータである。採用され得るレドックス対のタイプは、例えば、Fe(II)/Fe(III)、Ru(III)/Ru(II)、およびフェロセン/フェロシニウムである。採用され得るレドックス対の特定の例は、フェリ/フェロシアン化物、ルテニウムヘキサミン、およびフェロセンモノカルボン酸である。任意の好適な電子メディエータ、例えば[Fe(CN)3-/4-を使用することができる。典型的には、第1の感知電極および第2の感知電極と最初に電気的に接触する各液滴は、メディエータを含む。例えば、第2の液滴および第3の液滴が第1の感知電極および第2の感知電極と接触する場合、第2の液滴および第3の液滴は、メディエータを含む。しかしながら、第1の液滴および第2の液滴が最初に第1の感知電極および第2の感知電極と接触する場合、第1の液滴および第2の液滴は、メディエータを含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、第1の液滴は、メディエータを含む。他の実施形態では、システムは、液体媒体の第3の液滴を含み、第3の液滴は、メディエータを含む。
【0214】
上に述べたように、感知電極と接触する液滴中の分析物の存在を回避することが好ましい場合がある。このことは、サンプルを含む液滴をEWODデバイスの周りに移動させ、任意選択的にまた、メディエータの液滴を静止させて感知電極と接触させた状態に保ちながらサンプルを回収することを含む実施形態において特に有用であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、第2の液滴、および存在する場合第3の液滴は、実質的に分析物を含まない。
【0215】
液滴系が第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を含むいくつかの実施形態では、当該液滴の3つすべてが、感知電極と電気的に接触してもよい。典型的には、第1の液滴は、第1の感知電極と電気的に接触し、第2の液滴は、第2の感知電極と電気的に接触し、第3の液滴は、さらなる感知電極と電気的に接触する。液滴系内の各液滴は、液滴界面を介して液滴系内の少なくとも1つの他の液滴と接続され得る。より一般的には、液滴系がN個の液滴を含む場合、N個の液滴の各々は、それぞれの感知電極と接触してもよい。一実施形態では、「N」は、2~10の数、または2~100の数を表す。したがって、感知システムは、少なくともN個の感知電極を包含し得る。もちろん、この配設は、系内の任意の液滴界面を横切って電気的測定値を取得することができるという利点を有する。
【0216】
同様に、液滴系がN個の液滴を含む場合、N個の液滴の各々は、作動電極のアレイの中の1つ以上の作動電極、典型的には、作動電極のアレイの中の2つ以上、5つ以上または10個以上の作動電極と接触し得る。これにより、液滴の動きおよびエレクトロウェッティング挙動を正確に制御することが可能になる。
【0217】
上に述べたように、本発明の方法で利用される液滴のサイズは、特に限定されない。EWODデバイスは、最大マイクロリットルのサイズの液滴を操作することができる。しかしながら、電場を使用して液滴の濡れ特性を制御する本発明の特定の利点は、非常に小さな液滴を使用できることである。マイクロ流体デバイスを充填するために必要なより大きな容量を使用する必要はない。本発明の感知システムは、ピコリットル体積の流体を完全に処理することができ、実際、そのような体積は非常に迅速に移動させることができる。したがって、本発明は、第1の液滴、第2の液滴、および存在する場合に第3の液滴のうちの1つ以上が、1nL未満の体積を有する方法を提供する。いくつかの態様では、第1の液滴、第2の液滴、および存在する場合に第3の液滴の各々は、1nL未満の体積を有する。存在する場合、さらなる液滴は、任意選択的に、すべて1nL未満の体積を有することができる。いくつかの実施形態では、感知システム内に存在するすべての液滴は、1nL未満の体積を有する。他の態様では、第1の液滴、第2の液滴、および存在する場合に第3の液滴またはさらなる液滴は各々、最大10μL、例えば、0.001nLから10μLの体積を有する。
【0218】
システムに存在する液滴の数は、感知システムが第1の液滴および第2の液滴を含まなければならないことを除いて、特に限定されない。実際、このシステムの利点は、多数の液滴を含むことができることである。例えば、本発明の感知システムは、Nが少なくとも10、または少なくとも100、または少なくとも1000、または少なくとも10000であるN個の液滴の系を含み得る。第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴は、N個の液滴の中のものである。N個の液滴のいくつかまたはすべては、両親媒性分子の層を含む液滴界面を介して互いに接触して、対に配設され得る。液滴系は、ASICに接続することができる。
【0219】
ステップ(a)
この方法のステップ(a)は、第1の感知電極および第2の感知電極から電気的測定値を得ることを含む。ステップ(a)は、本発明の感知システムを動作させるときに実行される最初のステップである必要はなく、ステップ(a)が行われる前に、追加のステップを実行することができることに留意されたい。例えば、ステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)が1回実行された後、この方法を繰り返すことができる。この方法は、複数回繰り返され得る。この方法を繰り返すたびに、ステップ(a)で取得される測定値は、同じであってもよいか、または異なってもよく、ステップ(b)で選択され、ステップ(c)で実行される液滴動作は、同じであっても異なってもよい。
【0220】
ステップ(a)は、第1の感知電極および第2の感知電極から任意の電気的測定値を取得することを含むことができ、ここで、電気的測定値は、上で考察された通りである。典型的には、制御システムは、例えば、制御システムに格納された1つ以上の命令に基づいて、取得される電気的測定を選択することができる。例えば、本発明の感知システムの典型的な動作において、制御システムは、例えば分析物のアッセイまたは分析を実行するために、指定されたプログラムに従って、ステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)の実行を指示し得る。しかしながら、代替的には、取得されるべき電気的測定値は、ユーザによって手動で指定され得る。
【0221】
電気的測定値を得るために、感知システムは、通常、第1の感知電極と第2の感知電極との間の電気的接触の何らかの手段を含まなければならない。しかしながら、これは必須ではなく、例えば、電気的測定が、液滴が特定の位置に存在しないと判定した場合、感知電極の一方が液滴と接触するか、もしくは感知電極のいずれも液滴と接触しないか、または第1の電極および第2の電極は、イオンがこれらの電極間を流れない場合があるように、互いに電気的に接触しない液滴と接触してもよい。
【0222】
典型的には、ステップ(a)の間、第1の感知電極および第2の感知電極は、2つ以上の液滴を介して電気的に接触し、液滴界面を介して互いに接触する。通常、そのような各液滴界面は、少なくとも1つの膜貫通細孔、例えば、イオンチャネルを含む。一態様では、第1の液滴(または存在する場合に任意選択的に第3の液滴)は、第1の感知電極と電気的に接触し、第2の液滴は、第2の感知電極と電気的に接触する。すなわち、一実施形態では、第1の液滴は、第1の感知電極と電気的に接触し、第2の感知電極は、第2の感知電極と接触する。別の態様では、感知システムは、第3の液滴を含み、第1の感知電極は、第3の液滴と接触し、第2の感知電極は、第2の液滴と接触し、第2の液滴および第3の液滴は各々、膜貫通細孔を含む液滴界面を介して第1の液滴と接触する。
【0223】
第1の感知電極および第2の感知電極が、膜貫通細孔を含む1つ以上の液滴界面を介して接触する場合、膜貫通細孔(複数可)は、典型的には、イオンが通過することを可能にし、したがって電極間に電荷が流れることを可能にし、したがって第1の感知電極と第2の感知電極との間に電流が流れることを可能にする。そのような場合、分析物が存在し、かつ膜貫通細孔のうちの1つと相互作用する場合に、第1の感知電極と第2の感知電極との間のイオン流が中断される。したがって、電極間を流れる電流が、変更され得る。したがって、いくつかの実施形態では、ステップ(a)は、第1の感知電極と第2の感知電極との間を流れる電流を検出することを含む。
【0224】
第1の感知電極および第2の感知電極が、第1の膜貫通細孔を含む1つ以上の介在する膜貫通細孔を介して電気的に接触する場合、第1の電極と第2の電極との間で取得される電気的測定値(例えば、電流の流れの測定値)は、分析物が、介在する膜貫通細孔と相互作用しているか否かに応じて異なる。したがって、いくつかの実施形態では、ステップ(a)は、第1の膜貫通細孔と分析物との間の相互作用を検出することを含む。
【0225】
電気信号の変移(例えば、第1電極と第2電極との間を流れる電流)は、分析物の存在を単に示すだけではなく、より多くの情報を提供することができる。電気信号の値は、2つ以上の候補がある場合、分析物が相互作用している膜貫通細孔(複数可)を示し得る。電気信号はまた、存在する分析物の種類を示す場合もあり、例えば、分析物がポリマー種である場合、正確な電気信号は、細孔を通過するモノマー単位を示し得る。
【0226】
感知電極として作用する電極は、作動電極のアレイを形成する電極と同じであり得る。例えば、作動電極のアレイの中の2つの電極が作動信号を印加していない場合、これらの電極は、第1の感知電極および第2の感知電極として使用され得る。したがって、いくつかの実施形態では、第1の感知電極および第2の感知電極は、作動電極のアレイの中の電極である。しかしながら、上に注記したように、作動電極とは別個である感知電極のセットを提供することが有利であり得る。この場合、第1の感知電極および第2の感知電極は、作動電極のアレイの中のものではない。この後者の実施形態が好ましい。したがって、本発明の感知システムの好ましい実施形態では、エレクトロウェッティングデバイスは、
活性化電極のアレイを支持する第1の基板と、
絶縁体層の疎水性表面に面し、かつ第1の感知電極および第2の感知電極を支持する第2の基板と、を備える。
【0227】
ステップ(a)の電気的測定は、1回実施され得るか、または1回以上繰り返され得る。電気的測定の繰り返しは、方法が感知システムの態様を監視することを伴う場合に特に重要である。例えば、この方法は、液滴中の分析物またはメディエータの濃度を監視することを伴い得るか、またはこの方法は、分析物と膜貫通細孔との相互作用を監視することを含み得るか、またはこの方法は、液滴内の反応の進行を監視することを含み得る。そのような場合、繰り返された電気的測定値が、取得され得る。例えば、最新の測定値を1つ以上の先行する測定値と比較して変化を示し得るように、繰り返された電気的測定値が取得され得る。経時的な電気的測定値の変動は、液滴からの分析物またはメディエータの損失、または反応中の反応基質の枯渇、または分析物が膜貫通細孔を通過する進行を示し得る。
【0228】
そのような場合、もちろん、各電気的測定値が取得された後に作動信号を印加する必要はなく、むしろ、電気的測定値によって提供される情報が、アクションが必要であることを示すまで、電気的測定を繰り返すとよい。
【0229】
したがって、1つの重要な態様において、本発明は、ステップ(a)が1回以上繰り返される、本明細書に記載の方法を提供する。
【0230】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)は、複数回繰り返され得る。例えば、ステップ(a)は、電気的測定値を得ることによって、分析物と第1の膜貫通細孔との間の相互作用を検出することを含み得る。分析物の存在、不在、または1つ以上の特性を判定するために、制御システムによって判定が実行され得る。その分析物を拒絶する決定がなされた場合、ステップ(b)およびステップ(c)が実行される前に、所望の分析物が検出されるまで、ステップ(a)が繰り返され得る。
【0231】
望ましくない分析物がステップ(a)で検出される場合、好ましくは分析物が帯電した分析物である場合、ステップ(a)は、ステップ(a)で検出された分析物を第1の液滴中に強制的に戻すために、第1の標的電極と第2の標的電極との間にわたって電位を印加することをさらに含み得る。
【0232】
一般に、分析物の転位を指示する、第1の感知電極と第2の感知電極との間、または感知電極の任意の対の間の電位の印加は、制御システム中の記憶された命令によって制御され得る。
【0233】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)は、標的分析物の存在を示す電気的測定値を得ることを含む。例えば、ステップ(a)は、標的分析物が第1の液滴から第2の液滴中へと第1の膜貫通細孔を通過したことを示す電気的測定値を得ることを含み得る。
【0234】
ステップ(b)
この方法のステップ(b)は、意思決定ステップである。ステップ(b)では、制御システムによって得られた電気的測定値が分析され、制御システムは、感知システムによってもたらされるべき液滴動作を判定する。典型的には、制御システムは、動作システムによって指定された結果(例えば、アッセイまたは分析手順)を達成するために、感知システムによってもたらされるべき次の液滴動作を判定する。以下に記載するのは、制御システムが、実行される液滴動作を選択し得る様々なステップである。
【0235】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)は、分析物と第1の膜貫通細孔との相互作用を検出することを含み、ステップ(b)は、分析物を全体的または部分的に同定することを含む。例えば、分析物がポリヌクレオチド配列(例えば、DNAまたはRNA)である場合、分析物は、膜貫通細孔に部分的に入るか、または膜貫通細孔を完全に通過し得る。膜貫通細孔と分析物との相互作用中に検出される電気信号は、細孔と接触する配列の部分によって変動する。例えば、分析物が細孔を通過して別の液滴に完全に入ることを可能にするか、または分析物を最初の液滴に戻して、新たな分析物分子とのさらなる相互作用を待って新たな電気的測定を可能にするか、もしくは分析物を含有する液滴をシステム外に移動させるかを決定する前に、分析物の各成分を判定する必要がなくてもよい。むしろ、ポリヌクレオチド配列の配列の一部は、この決定を可能にするのに十分であり得る。したがって、分析物がポリヌクレオチドを含むいくつかの実施形態では、ステップ(b)は、ポリヌクレオチド配列に存在する2つ以上のヌクレオチドの同一性を判定することを含む。例えば、ステップ(b)は、同一性を、および任意選択的にまた、ポリヌクレオチド配列中の少なくとも2個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも100個、または少なくとも1000個のヌクレオチドの順序も、判定することを含み得る。さらに他の実施形態では、ステップ(b)は、ポリヌクレオチド配列全体の同一性を判定することを含み得る。
【0236】
ポリヌクレオチド配列のすべてまたは一部の判定は、配列、または実際に分析物を含有する液滴を拒絶するかどうかについて決定を行うことを可能にし得る。例えば、本発明の方法の目的が、特定の標的分析物配列がサンプル中に存在するかどうかを同定することである場合、検出された分析物がその標的分析物に対応しない場合、分析物、および実際に分析物を含有する液滴は、拒絶され得る。代替的には、検出された分析物が標的分析物に対応する場合、液滴は、さらなる処理のために選択され得るか、または分析物自体が別の液滴に転位され得、次いで、その液滴は、さらなる処理のために選択され得る。他の例では、配列のすべてまたは一部の判定は、例えば配列の長さを判定することによって、分析物または液滴を拒絶するかどうかについて決定を行うことを可能にし得る。長い配列が同定のために断片化されている場合、特定の断片が短すぎることが見出された場合、その断片または実際にその断片を含有する液滴全体は、使用するには低品質すぎるため、拒絶され得る。配列が修飾されていると判定することもでき、それに基づいて配列を受け入れるか、または拒絶することができる。
【0237】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)は、電気的測定値を、制御システムによって記憶された値と比較することを含む。測定値と記憶された値との間の比較は、例えば、電気的測定値が予想される値または値の範囲を上回った、または下回ったことを示すことによって、液滴動作を示すことができる。例えば、ステップ(a)の電気的測定値が電気抵抗の測定である場合、ある基準値よりもかなり高い電気抵抗は、第1の感知電極および第2の感知電極が電気的に接触していないことを示すことができ、それゆえ、第1の電極または第2の電極のいずれかと接触する液滴はないことを示すことができる。結果として、制御システムは、液滴を第1の電極または第2の電極と接触させる液滴動作を選択することができる。
【0238】
ステップ(b)が(第1の感知電極または第2の感知電極と電気的に接触する)特定の場所に液滴が存在するかどうかを判定することを含む実施形態は、液滴動作のアッセイまたは分析配列中に感知システムの周りの液滴の動きを制御するのに有用であり得る。例えば、液滴をある位置に移動させるために(例えば、液滴を別の液滴と接触するように移動させて膜貫通細孔を含む膜を形成するために)1つ以上の作動電極に作動信号が事前に印加されている場合、液滴が予想される位置に存在するかまたは存在しないかを示す電気的測定値は、作動信号が液滴を所定位置に正常に移動させたか否かを判定するのに有用である。したがって、システムは、フィードバックシステムを提供することができ、液滴が予想される位置で検出される場合、ステップ(b)は、元の液滴移動によって設定されたアッセイまたはシーケンシングまたは他のステップが進行することができるように、さらなる作動信号が必要ないことを判定することを含み得る。しかしながら、液滴が予想される位置で検出されない場合、ステップ(b)は、次の実験ステップが行われることを可能にするために液滴を正しい位置に移動させることを伴う液滴動作を選択することを含み得る。このようにして、制御システムは、感知システムが各液滴に対して正確に実験を実施することができることを保証し、液滴間の接触を形成することの失敗などのエラーに起因する誤った値の数を低減することができる。
【0239】
電気的測定値が第1の感知電極と第2の感知電極との間で取得される他の例では、測定された値と記憶された値との比較は、膜貫通細孔を含む液滴界面が正常に形成されたかどうかを示し得る。液滴界面が正常に形成されなかった場合(例えば、膜が破裂した場合)、または膜貫通細孔が第1の感知電極と第2の感知電極との間の2つの液滴間の膜への挿入に失敗した場合、感知電極の間にわたって取得された電気的測定値の比較は、それを示す。したがって、比較は、2つの液滴が融合し、したがって系から排出されるべきであることを示し得るか、または比較は、膜貫通細孔が挿入に失敗し、それゆえ膜貫通細孔を包含する液滴が欠陥であり得、系から排出されるべきであることを示し得る。ステップ(b)は、それに応じて、例えば、融合した液滴または欠陥のある細孔を包含する液滴を排出するための液滴動作を選択することを含む。ここでも、この処理は、誤った結果を回避することによって、系の機能を改善する。
【0240】
電気的測定値が第1の感知電極と第2の感知電極との間で取得される別の例では、これらの電極が1つ以上の膜貫通細孔を介して1つ以上の液滴界面を横切って電気通信する場合、そのような比較はメディエータの損失を示し得る。例えば、分析物がない状態で電極間を流れる電流が、記憶された値または参照値と比較して特に低いことが見出された場合、液滴中のメディエータの量が過度に低くなったことを示し得る。したがって、横切って電気的測定値が取得された液滴のうちの1つ以上に追加の電子メディエータを含有する液滴を追加することを伴う液滴動作を選択することができる。
【0241】
制御システムは、典型的には、制御システムが比較に基づいて好適な液滴動作を選択することを可能にするための命令を記憶する。例えば、制御システムに記憶された命令は、電気的測定値が、記憶された値の特定の許容範囲内にある場合、液滴動作が不要であることを示すことができ、値がその許容範囲を上回るかまたは下回る場合、操作を実行しなければならないことを示すことができ、さらに、その結果を達成するためにいずれの液滴(複数可)を作動させなければならないかを選択するための十分な情報を記憶することができる。
【0242】
したがって、この実施形態の特定の態様では、この方法は、ステップ(a)の電気的測定値を制御システムによって記憶された値と比較することを含み、制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って、電気的測定値と記憶された値との間の比較に基づいて液滴動作を選択することをさらに含む。
【0243】
多くの実施形態では、電気的測定値は、制御システムに恒久的に記憶された絶対基準値とは比較されない。むしろ、この方法は、液滴動作が必要であることを示し得る変化について電気的測定値を監視することを含む。例えば、ステップ(b)は、システムが変化を受け、かつ変化に対処するために液滴動作が必要であるかどうかを判定するために、電気的測定値を以前の電気的測定値と比較することを含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、ステップ(a)が1回以上繰り返されて、複数の電気的測定値を得、ステップ(b)が、複数の電気的測定値の中の1つ以上の電気的測定値を、複数の電気的測定値の中の1つ以上の他の電気的測定値と比較することを含む。
【0244】
典型的には、方法が電気的測定値を監視することを含む場合、個々の電気的測定値は変動を受け得るため、この方法は、電気的測定値を単一の以前の値と比較するのではなく、電気的測定値の傾向を判定することを伴い得る。したがって、より通常、ステップ(b)は、電気的測定値を、ステップ(a)の繰り返し中に取得されたいくつかの以前の電気的測定値と比較することを含み、例えば、ステップ(b)は、電気的測定値を、ステップ(a)の繰り返し中に取得されたいくつかの以前の電気的測定値の平均と比較することを含み得る。例えば、いくつかの電気的測定値の平均は、ステップ(a)の繰り返しによって得られたいくつかの以前の電気的測定値の平均と比較され得る。これにより、制御システムは、経時的に電気的測定値の傾向を検出することが可能になる。
【0245】
傾向が検出された場合、傾向は、電子メディエータの損失、存在する分析物の劣化、分析物の損失、反応中の基質の損失、または第1の感知電極もしくは第2の感知電極と電気的に接触する液滴内の条件の任意の他の変移を示し得る。次いで、制御システムは、いくつかの実施形態では、例えば、関係する液滴により多くの電子メディエータまたは分析物または基質を追加することによって、その変化を是正するために液滴動作を選択し得る。その変化を是正することができる別の例示的な液滴動作は、例えば、分析物、基質、または電子メディエータを含む新たな液滴に関係する液滴のうちの1つ以上を置き換えることであろう。さらに他の実施形態では、制御システムは、例えば劣化した分析物を含む液滴を感知システムから除去することによって、劣化した分析物を廃棄することによって、その特定の処理を終了する液滴動作を選択することができる。
【0246】
したがって、いくつかの実施形態では、ステップ(a)が複数回繰り返されて、複数の電気的測定値を得、ステップ(b)は、
複数の電気的測定値の中で、電気的測定値のうちの1つ以上を他の電気的測定値のうちの1つ以上と比較すること、
経時的に検出される電気的測定値の変移を判定すること、および
電気的測定値の変移を元に戻すために液滴動作を選択することを含む。
【0247】
いくつかの態様では、ステップ(b)は、第1の液滴および/または第2の液滴および/または存在する場合に第3の液滴の物理的特性または化学的特性を判定することを含む。物理的特性または化学的特性は、上述したように監視され得る。この態様の一実施形態では、ステップ(b)は、第1の液滴および/または第2の液滴および/または存在する場合に第3の液滴の物理的特性または化学的特性を改変または維持するために液滴動作を選択することをさらに含む。
【0248】
測定または監視され得る例示的な物理的特性には、導電率が含まれる。測定または監視され得る例示的な化学的性質には、イオン濃度が含まれる。したがって、本発明の方法の一態様では、ステップ(b)は、第1の液滴および/または第2の液滴および/または存在する場合に第3の液滴のイオン濃度を判定することを含む。典型的には、この実施形態では、ステップ(b)は、第1の液滴または第2の液滴のイオン濃度を判定することを含む。
【0249】
一実施形態では、ステップ(b)は、第1の液滴および/または第2の液滴および/または存在する場合に第3の液滴のイオン濃度を増加させるかまたは減少させるために液滴動作を選択することを含む。例えば、液滴動作は、さらなる液滴を、より高いイオン濃度を有するさらなる液滴を第1の液滴または第2の液滴または存在する場合に第3の液滴と接触するように移動させることにより、さらなる液滴のイオン濃度を上げるために、当該第1の液滴または第2の液滴または第3の液滴と融合させることを伴い得る。
【0250】
いくつかの実施形態では、当該イオン濃度は、電子メディエータ種の濃度である。他の実施形態では、当該イオン濃度は、帯電した分析物種の濃度である。しかしながら、正確なイオン濃度を決定する必要はなく、いくつかの実施形態では、ステップ(b)は、分析物が存在するかどうかを確立することを含む。例えば、ステップ(b)は、分析物が第1の液滴に存在するかどうかを判定すること、および任意選択的に、第1の液滴中の分析物の濃度を判定することを含み得る。ステップ(b)は、液滴が分析物または十分な濃度の分析物を含有しないことが見出された場合に、感知システムから液滴(例えば、第1の液滴)を排出することを伴う液滴動作を選択することを含み得る。代替的には、これらの状況では、ステップ(b)は、液滴(例えば、第1の液滴)中の分析物の濃度を増加させるための液滴動作を選択することを含み得る。
【0251】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)は、第1の液滴に存在する分析物の品質を判定することを含む。「品質を判定する」とは、分析物が十分に良好な信号を発することができるかどうかを判定することを意味する。例えば、分析物が複数のポリマー単位を含むポリマー鎖である場合、ステップ(b)は、ポリマー鎖の長さ(例えば、ポリマー単位の数)を判定することを含み得る。このことは、例えば、分析物が第1の膜貫通細孔を介して第1の液滴から第2の液滴に通過する際に生成される電気信号を監視することによって行うことができ、分析物が短い鎖を含む場合、このことは、第1の膜貫通細孔との各相互作用が観察される短い時間から明白であろう。したがって、いくつかの実施形態では、ステップ(a)で得られた電気信号を分析するステップは、ステップ(a)で取得された複数の電気的測定値を分析することを含み得る。そのような分析から、例えば、第1の液滴に存在する分析物が不十分な品質である(例えば、当該分析物が不十分に長いポリマー鎖を含む)と判定される場合、制御システムは、液滴動作を選択することができ、それによって、分析物を含有する第1の液滴は、感知システムから除去される。
【0252】
したがって、いくつかの実施形態では、ステップ(b)は、液滴、通常は第1の液滴を保持するか、または廃棄するかを決定することを含む。「保持する」とは、「例えばさらなる実験または分析を実行するために、感知システム中に保持する」ことを意味する。「廃棄する」とは、収集および保管するためか、または単に捨てるために、感知システムから液滴を除去することを意味する。ステップ(b)が液滴を保持するか、または廃棄するかを決定することを含む場合、ステップ(b)は、液滴を感知システム内に維持するか、またはそれに応じて感知システムから液滴を除去する液滴動作を選択することをさらに含む。
【0253】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)の電気的測定値に対して実行される分析は、制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って、液滴に対して実施され得るさらなる実験手順を判定するために使用される情報を提供する。例えば、電気的測定値または複数の電気的測定値の分析は、液滴が分析物を含むが、分析物濃度が低いことを示し得る。その場合、制御システムは、分析物の濃度を増加させるための手順を実施すべきであると判定し、例えば、液滴を、追加の分析物を含有する液滴と融合させることによって、液滴中の分析物の濃度を増加させるための液滴動作を選択する。したがって、いくつかの実施形態では、ステップ(b)は、第1の液滴に対して実施するさらなる実験手順を選択すること、および液滴動作を選択して、第1の液滴を1つ以上の液滴と接触させて、その実験を実施できるようにすることを含む。
【0254】
ステップ(a)が分析物(典型的には、ポリヌクレオチド、例えばDNAまたはRNA、などのポリマー分析物)間の相互作用を検出することを含む一実施形態では、ステップ(b)は、ポリマー分析物をさらなる液滴に通過させるか、または分析物を拒絶するかを決定する(aで取得された測定値に基づいて)ことを含み得る。ステップ(b)が、ポリマー分析物をさらなる液滴に通過させることを決定することを含む場合、それは、さらなる液滴を第2の液滴に接続する前または後に分析物を第2の液滴に通過させることによって達成され得る。さらなる液滴は、第2の膜貫通細孔を含む、第2の液滴とのさらなる液滴界面を形成することができ、したがって、第2の液滴から分析物を受け取ることができる。
【0255】
他方、ステップ(b)が分析物を拒絶することを決定することを含む場合、このことは、液滴界面をわたる電位、例えば第1の液滴と第2の液滴との間の界面をわたる電位を逆転させることによって、達成することができる。これにより、分析物(典型的には、帯電した分析物)が第2の液滴に転位することを妨げることが可能になる。次いで、液滴動作をステップ(c)に適用して、第1の液滴を第2の液滴から離れるように移動させることができ、任意選択的に、第1の液滴を感知システム外に移動させることを含み得る。
【0256】
ステップ(a)が標的分析物の存在を検出することを含む(例えば、第1の液滴から第2の液滴への標的分析物の通過を検出する)場合、分析物が第1の液滴に戻ることを妨げることが望ましい場合がある。その場合、ステップ(b)で選択された液滴動作は、第1の液滴および第2の液滴が互いに接触しなくなるように第1の液滴または第2の液滴のいずれかを移動させることによって第1の液滴と第2の液滴とを切り離すことを含み得る。標的分析物を別の膜貫通細孔と接触させることが望ましい場合もある。したがって、ステップ(c)で選択される液滴動作は、標的分析物を含む第2の液滴をさらなる液滴と接触させてさらなる液滴界面を形成することをさらに含み得、このさらなる液滴界面は、膜および第2の膜貫通細孔を含む。
【0257】
ステップ(b)は、2つ以上の液滴動作を選択することを含み得る。例えば、ステップ(b)は、標的分析物を含有する第2の液滴をさらなる液滴と接触させるための液滴動作を選択することを含み得る。ステップ(b)は、代替的または追加的に、新たな液滴を第1の液滴と接触させるために液滴動作を選択することを含み得る。
【0258】
ステップ(c)
ステップ(c)では、液滴動作が実行される。
【0259】
ステップ(c)は、ステップ(b)後に自動的に実行されてもよいか、または実行されなくてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、ステップ(b)後に自動的に実行されず、ステップ(b)からステップ(c)に進行するために、ユーザ入力が必要とされる。他の実施形態では、ステップ(c)は、ステップ(b)の後に自動的に実行される。すなわち、ステップ(b)で液滴動作を選択した後、液滴動作は、次いで、さらなるユーザ介入を必要とせずに、制御システムによって実行される。この後者の実施形態は、感知システムが非常に迅速に動作することを可能にするため、好ましい。
【0260】
ステップ(b)で選択され、かつステップ(c)で実行される液滴動作は、何もしないことを含み得ることに最初に留意されたい。例えば、特定の実施形態では、液滴の特性(例えば、イオン濃度または分析物濃度)が、監視され、かつステップ(b)中の分析時に適切であることが見出される場合には、システムの調整は、必要とされない。その場合、選択された液滴動作は、ヌル液滴動作であり得、したがって、ステップ(b)中に印加される作動信号は、問題の液滴系と電気的に接触する作動電極に印加された以前の作動信号から変化しない。
【0261】
他の実施形態では、液滴動作は、液滴系の操作を含み、液滴系は、少なくとも第1の液滴および第2の液滴を含む。
【0262】
液滴動作は、液滴を移動させることを伴ってもよいか、または伴わなくてもよい。いくつかの実施形態では、液滴動作は、液滴を移動させることを伴わない。例えば、液滴動作は、単に、液滴を作動電極と接触させて通電状態にするために、作動電極に作動信号を印加することを含み得る。これにより、膜を含む液滴界面が、引き離され得る。別の例では、液滴動作は、作動電極と接触する液滴のエネルギーをその前の状態よりも低いエネルギー状態に低下させ、それにより、液滴を弛緩させてその低エネルギー状態の形状を適合することを含み得る。このことにより、当該液滴が、両親媒性分子の層を含む液滴界面を介して別の液滴と接触する場合、液滴界面が形成され得る。
【0263】
いくつかの態様では、ステップ(c)は、疎水性表面(すなわち、EWODデバイスの第1の基板の疎水性表面)上に液体媒体の液滴を移動させることを含む。移動させる液滴は、被作動液滴と呼ばれる。したがって、いくつかの態様では、ステップ(c)は、疎水性表面上で液体媒体の被作動液滴を移動させることを含む。典型的には、被作動液滴は、第1の液滴または第2の液滴または存在する場合に第3の液滴であり、例えば、被作動液滴は、第1の液滴であり得る。他の実施形態では、被作動液滴は、第2の液滴であり得る。さらに他の実施形態では、ステップ(c)は、疎水性表面上で液体媒体の2つ以上の液滴を移動させることを含む。そのような実施形態では、被作動液滴は、第1の液滴および/または第2の液滴および/または存在する場合第3の液滴を含み得、例えば、被作動液滴は、第1の液滴および第2の液滴を含み得る。
【0264】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)で実行される液滴動作は、液滴界面で、被作動液滴を液体媒体のさらなる液滴から分離することを含み、このさらなる液滴は、第1の液滴、第2の液滴、または存在する場合に第3の液滴であり得る。当該液滴界面は、両親媒性分子の層を含む。液滴界面が膜貫通細孔を含む場合、膜貫通細孔は、液滴界面の分離中に破壊され得る。液滴界面の分離中、さらなる液滴は、作動信号によって移動させてもさせなくてもよい(すなわち、さらなる液滴は、それ自体が、被作動液滴であってもなくてもよい)。この処理の例では、液滴動作は、第1の液滴を第2の液滴から分離することを含み得、この液滴動作では、作動信号が適用されて、第1の液滴および/または第2の液滴を互いに離れるように移動させる。選択肢は、図10a~図10cに例示されている。これらの図では、矢印は、液滴の動きを示す。図10aでは、第1の液滴は、被作動液滴であり、第2の液滴から離れるように移動する。図10bでは、第2の液滴は、被作動液滴であり、第1の液滴から離れるように移動する。図10cでは、第1の液滴および第2の液滴は両方とも被作動液滴であり、これらの液滴は、互いに離れるように移動する。
【0265】
一態様では、ステップ(c)は、複数の液滴界面における被作動液滴を、液体媒体の複数のさらなる液滴から分離することを含み、このさらなる液滴が、第1の液滴、第2の液滴、または存在する場合に第3の液滴を含み、液滴界面の各々が、両親媒性分子の層を含む。そのような処理の例が、図11に例示されている。これらの例は、各々が両親媒性分子の層を含む液滴界面を介して第1の液滴が第2の液滴および第3の液滴と接触する初期構造体に関係する。図11aに示される第1の例では、第1の液滴のみを移動させるように印加される作動信号によって、2つの界面で第1の液滴が第2の液滴および第3の液滴から分離される。第2の例では、第2の液滴および第3の液滴の両方が、作動信号によって作動され、これらの液滴は、第1の液滴から離れるように移動する。
【0266】
上記の態様のいずれかで、当該1つ以上の液滴界面は各々、両親媒性分子の二重層を含み得、ステップ(c)は、当該二重層を分離することを含む。複数の液滴界面が分離される場合、各々のものが、独立して両親媒性分子の二重層を含み得る。
【0267】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、1つ以上の液滴を接触させることを含む。したがって、ステップ(c)は、被作動液滴を液体媒体のさらなる液滴と接触させて液滴界面を形成することを含み得、このさらなる液滴は、第1の液滴、第2の液滴、または存在する場合に第3の液滴であり得る。この実施形態で形成された液滴界面は、両親媒性分子の層を含む。これらの実施形態では、さらなる液滴は、作動信号によって移動させてもよいか、または移動させなくてもよい(すなわち、さらなる液滴はまた、被作動液滴であってもよいか、またはなくてもよい)。別の液滴と接触させる液滴のうちの1つが膜貫通細孔を含む場合、膜貫通細孔は、ステップ(c)の間または後に、形成された液滴界面に挿入され得る。この処理の一例では、ステップ(c)は、第3の液滴を第1の液滴と接触させることを含み、この処理では、第3の液滴に作動信号が印加されて、第3の液滴を第1の液滴に向けて移動させる。この処理は、図12aに示されており、ここで、矢印は、被作動液滴が作動信号によって移動する方向を示す。
【0268】
さらなる態様では、ステップ(c)は、被作動液滴を液体媒体の複数のさらなる液滴と接触させて複数の液滴界面を形成することを含み得、このさらなる液滴は、第1の液滴、第2の液滴、または存在する場合に第3の液滴を含み得る。例えば、ステップ(c)は、第1の液滴とさらなる液滴との間の第1の液滴界面と、第3の液滴とさらなる液滴との間の第2の液滴界面と、を形成するために、液体媒体のさらなる液滴を第1の液滴および第3の液滴と接触させるように移動させることを含み得、各界面が、両親媒性分子の層を含む。この場合、作動信号をさらなる液滴に印加して、さらなる液滴を第1の液滴および第3の液滴と接触するように移動させ得る。このことは、図12bに示されている。しかしながら、代替的または追加的に、作動信号を第1の液滴および第3の液滴に印加することにより、これらの液滴をさらなる液滴と接触させ得、このことが、図12cに例示されている。
【0269】
典型的には、液体媒体の液滴を液体媒体の別の液滴と接触させるときに形成された各液滴界面は、両親媒性分子の層を含む。一態様では、ステップ(c)で形成された液滴界面(または、複数の液滴界面が形成される場合、形成された液滴界面のうちの1つ以上)は、両親媒性分子の二重層を含み、ステップ(c)は、当該二重層を形成することを含む。
【0270】
被作動液滴(および任意選択的に、感知システムに存在する任意の他の液滴)を通電させるために選択される作動信号は、交流(AC)作動電圧信号であり得る。一般に、エレクトロウェッティングデバイスにおけるAC作動信号の使用は、液滴を操作するために有利であることが知られている。
【0271】
ステップ(c)が液滴界面の形成を伴う場合、選択された活性化電極に電位が印加されて、被作動液滴を別の液滴と接触させる。最も単純な実施形態では、このことは、被作動液滴を移動させるために作動電位を選択することによって、簡単に行い得る。しかしながら、このアプローチでは、液滴が融合する傾向を示し得るため、液滴間の界面を維持することが困難であり得る。
【0272】
したがって、ステップ(c)が被作動液滴と別の液滴との間の液滴界面を形成することを含む実施形態の好ましい態様では、ステップ(c)は、作動電極のアレイの中の選択された作動電極に作動信号を印加して、被作動液滴および/または別の液滴を、これらの液滴が互いに接触しないような通電状態にすることをさらに含み、この状態では、当該液滴の形状は、より低いエネルギー状態にあるときと比較して改変され、ステップ(c)は、作動電極に印加される作動信号を変化させて、当該一方または両方の液滴のエネルギーをより低いエネルギー状態に低下させることをさらに含み、これにより、当該一方または両方の液滴は、通電状態のそれらの形状とは異なる形状に弛緩し、したがって、2つの液滴は互いに接触し、それによって液滴界面を形成する。ステップ(c)のこの実施形態は、液滴全体を互いに向けて移動させる作動信号を印加することによって2つの液滴を直接接触させようとすることと比較して、液滴界面の形成の信頼性を改善する。
【0273】
液滴が液滴の非通電状態に由来して弛緩すると、液滴の重心は、移動しない傾向がある。むしろ、弛緩するのは、液滴の縁部であり、それゆえ、例えば別の液滴に向かって移動する。したがって、典型的には、ステップ(c)は、被作動液滴および/または別の液滴を、被作動液滴および/または別の液滴のエネルギーが低下したときに液滴が互いに接触するように十分に接近させて通電状態にすることを含む。すなわち、ステップ(c)では、被作動液滴および/または通電状態の別の液滴のエネルギーが減少する前に、被作動液滴が別の液滴に対して置かれる距離は、これらの液滴の低エネルギー状態における液滴の結合された半径よりも小さい。
【0274】
背景として、液滴の弛緩状態にあれば(すなわち、液滴が作動電極への作動信号の印加によってエレクトロウェッティングを起こさない場合)、各液滴は、最低の表面エネルギーの形状をとり、これは、一般に、絶縁体層の疎水性表面が均一な特性を有する場合に円形形状となることに留意されたい。
【0275】
ステップ(c)のこの実施形態では、被作動液滴のうちの1つおよび別の液滴は、通電状態にされ得る。しかしながら、好ましくは、両方の液滴が通電状態にされる。その結果、両方の液滴の表面は、これらの液滴が低エネルギー状態で適合する形状に弛緩し、互いに接触して液滴界面を形成する。このようにして、両方の液滴の弛緩を使用して、液滴界面を形成し、このことは、形成の信頼性をさらに高める。
【0276】
印加される作動信号を任意の方法で変化させて、被作動液滴を含む液滴(複数可)を非通電にし得る。作動電極にエレクトロウェッティングを起こさせるために印加される作動信号が、AC作動信号である場合には、変化は、望ましくは、被作動液滴(複数可)を通電させたAC作動信号を、DC電位、例えば、接地電位によって、または浮遊電位によって置き換える。このことは、AC信号が作動信号に適用されなくなるという利点を有し、これは、AC信号から結果として生じるAC電場の存在が、液滴の表面が接触したときに液滴界面を破裂させて液滴を融合させるリスクを増加させるため、液滴界面の形成を支援する。
【0277】
被作動液滴(複数可)を非通電にする他の変化を、代替的に行い得る。一代替形態は、作動電極のアレイからすべての電力を除去することである。しかしながら、不要環境電磁干渉から液滴界面を遮蔽することを支援するためにDC電位を印加することが好ましい場合がある。
【0278】
本発明者らは、結果として生じる擾乱が、液滴界面を損傷し得るか、または液滴界面を通して電気的測定値と干渉し得るため、AC電圧波形を印加することによる従来の方法で液滴を非通電にしないことが好ましいことを認識した。
【0279】
液滴動作は、1つ以上の被作動液滴を1つ以上の液滴から離れるように移動させて、1つ以上の他の液滴と接触させ得る。したがって、いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、上述したように液滴界面で被作動液滴を分離すること、および上述したように被作動液滴を液体媒体のさらなる液滴と接触させることを含む。例えば、ステップ(c)は、第1の液滴を第2の液滴から離れるように移動させるために作動信号を印加すること、第1の液滴と第2の液滴との間に形成された液滴界面を分離すること、および第1の液滴を第3の液滴と接触するように移動させ、第1の液滴と第3の液滴との間に両親媒性分子の層を含む液滴界面を形成することを含み得る。より複雑な例が、図13に示されている。
【0280】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、2つ以上の液滴を一緒に融合させることを含む。「融合」とは、液滴が組み合わされて単一の液滴、すなわち、両親媒性分子の層または複数の層によって区画に分離されていない液滴を形成することを意味する。2つ以上の液滴が融合している場合、これらの液滴の内容物は混合する。対照的に、液滴界面を介して液滴を接触させると、膜貫通細孔が膜に挿入され、かつ膜を横切る物質の輸送を可能にしない限り、液滴の内容物は混合しない。そのような実施形態では、液滴の接触時に融合が発生せず、かつ代わりに液滴界面が形成される場合、当該液滴界面をわたって電圧を印加して、液滴界面を破裂させ、液滴を融合させ得る。
【0281】
したがって、いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、被作動液滴を液体媒体のさらなる液滴と融合させることを含み、このさらなる液滴が、第1の液滴、第2の液滴、または存在する場合第3の液滴であり得る。例えば、ステップ(c)は、第1の液滴に分析物を加えるために、被作動液滴を第1の液滴と融合させることを含み得、ここで、被作動液滴は、分析物を含む。別の例では、ステップ(c)は、第2の液滴に電子メディエータを追加するために、被作動液滴を第2の液滴と融合させることを含み得、ここで、被作動液滴は、電子メディエータを含む。
【0282】
液滴を融合させるために、被作動液滴とステップ(c)で被作動液滴が組み合わされる液滴との間に、両親媒性分子の層が形成されないことが好ましい。したがって、ステップ(c)が被作動液滴を別の液滴と融合させることを含む場合、被作動液滴は、好ましくは、両親媒性分子の外層を含まない。しかしながら、被作動液滴が両親媒性分子の外層を含み、および/または両親媒性分子の層が被作動液滴と別の液滴との間に形成される場合、それにもかかわらず、被作動液滴と別の液滴とを一緒に押し付ける作動信号を印加することによって、作動液滴に強制的に別の液滴と融合させ得る。
【0283】
上で説明したように、被作動液滴は、(選択肢の中でもとりわけ)電子メディエータ、分析物、および実験基質のうちの1つ以上を含み得る。一実施形態では、被作動液滴は、電子メディエータを含む。別の実施形態では、被作動液滴は、分析物を含む。さらに別の実施形態では、被作動液滴は、実験基質を含む。「実験基質」は、例えば、液滴(複数可)内に含有され細胞集団に提供される栄養素であり得る。実験基質は、代替的には、実験手順に必要な試薬、例えば、PCR手順に必要な試薬であり得る。したがって、ステップ(c)で実行される液滴動作は、反応を進行させ得る。代替的には、ステップ(c)で実行される液滴動作は、例えば、被作動液滴に含まれる試薬が別の液滴で発生する反応をクエンチすることができる試薬である場合、反応を停止させ得る。さらに別の実施形態では、別の液滴と融合される作動液滴は、追加の液体媒体のみを含み得、このことは、別の液滴の内容物を洗浄するか、または必要に応じて別の液滴を希釈するのに有用であり得る。
【0284】
さらなる実施形態では、ステップ(c)で実行される液滴動作は、液滴を2つ以上の部分に分割することを含み得る。例えば、ステップ(c)は、第1の液滴または第2の液滴または存在する場合に第3の液滴を2つ以上の部分に分割することを含み得る。一実施形態では、ステップ(c)は、第1の液滴または第2の液滴または存在する場合に第3の液滴を2つの部分に分割することを含む。このことは、分析物の大きな液滴が形成される場合に有用であり得、液滴を2つ以上のより小さな液滴に分割して、2つ以上の異なる手順を同時に使用して分析物を分析できるようにすることができる。
【0285】
いくつかの実施形態では、第1の液滴は、ステップ(c)中に移動されない。第1の液滴は、典型的には、分析物を含む液滴である。すなわち、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、分析物を静止した状態に保つことと、分析物と相互作用し、それゆえ分析物を分析することができる膜貫通細孔を含み得る他の液滴を分析物に対して移動させることと、を伴う。このことは、WO2014/064443に記載されているようなデバイスで使用されるアプローチの逆を表し、サンプルを膜貫通細孔のアレイに提供するのではなく、膜貫通細孔が分析物にもたらされる。このアプローチの1つの利点は、分析手順の速度が最適化できることである。サンプルの大きな液滴が使用される場合、サンプルを分析するために、複数の小さな液滴が便利かつ迅速にサンプルにもたらされ得る。しかしながら、サンプルの小さな液滴が使用される場合、これらの液滴は、液滴動作によって感知システムの周りでより便利に操作され得る。
【0286】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、第1の液滴を第2の液滴から分離することを含み、第2の液滴は、標的分析物を含む。このことは、作動信号を印加して第1の液滴および/または第2の液滴を移動させることによって、達成され得る。
【0287】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、第2の液滴をさらなる液滴と接触させることを含み、第2の液滴は、標的分析物を含む。これらの実施形態では、膜を、および典型的には第2の膜貫通細孔も含む液滴界面が、第2の液滴とさらなる液滴との間に形成される。これにより、標的分析物が第2の膜貫通細孔を通って移動することが可能になり得る。
【0288】
ステップ(b)で2つ以上の液滴動作が選択された場合、ステップ(c)は、作動電極のアレイに作動信号を印加して、2つまたは鉱石の液滴動作をもたらすことを含み得る。
【0289】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)が、液滴界面を介して液滴系内の第1の液滴、第2の液滴、または第3の液滴のいずれかとさらなる液滴を接続することを含む場合、さらなる液滴は、さらなる液滴が接続される当該第1の液滴、第2の液滴、または第3の液滴とは異なる浸透ポテンシャルを有し得る。いくつかの実施形態では、さらなる液滴は、さらなる液滴が接続される当該第1の液滴、第2の液滴、または第3の液滴よりも高い浸透ポテンシャル(すなわち、より高いイオン濃度)を有し得る。他の実施形態では、さらなる液滴は、さらなる液滴が接続される当該第1の液滴、第2の液滴、または第3の液滴よりも低い浸透ポテンシャル(すなわち、より低いイオン濃度)を有し得る。したがって、液滴界面をわたる浸透ポテンシャル差に応じて、さらなる液滴から、またはさらなる液滴に、水が通過し得る。この場合、液滴動作は、系内の液滴の希釈または濃縮を達成することができる。
【0290】
例示的な方法1:分析物の回収
本発明の特定の利点は、分析物を含む液滴が封入されないことであり、このことは、システムの操作後に分析物が回収できることを意味する。さらに、分析物を含む液滴は、第1の感知電極および第2の感知電極と電気的に接触する液滴と同じ液滴である必要はない。代わりに、分析物を含む液滴は、さらなる液滴を介して第1の電極および第2の電極に接続され得る。分析物を含む液滴は、典型的には、第1の液滴であり、この液滴は、膜を介して第2の液滴および第3の液滴(それぞれ第1の電極および第2の電極と接触する)と接触する。
【0291】
この実施形態では、流体媒体は、極性であり得、液体媒体の液滴は、無極性であり得るが、より典型的には、流体媒体は、無極性であり、液体媒体は、極性媒体である。
【0292】
したがって、好ましい態様では、本発明は、任意の先行する請求項に記載の感知システムを動作させる方法であって、感知システムが、
(i)エレクトロウェッティングデバイスであって、
作動電極のアレイ、
作動電極を覆い、かつ疎水性最外表面を有する絶縁体層、
第1の感知電極、および
第2の感知電極、を備える、エレクトロウェッティングデバイスと、
(ii)疎水性表面上に配置された、
無極性流体媒体、
極性液体媒体を含む第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴であって、
第1の液滴および/または第2の液滴および/または第3の液滴が、当該第1の液滴および/または第2の液滴および/または第3の液滴と流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み、
第1の液滴が、液滴界面を介して第2の液滴と接触し、液滴界面を介して第3の液滴と接触し、
各液滴界面が、両親媒性分子の層を含み、
少なくとも第1の液滴と第2の液滴との間の界面が、膜貫通細孔を含み、
第1の液滴が、分析物を含み、
第2の液滴および第3の液滴が、電子メディエータを含み、
第2の液滴および第3の液滴が、それぞれ第2の感知電極および第1の感知電極と電気的に接触する、無極性流体媒体、第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴と、
(iii)第1の感知電極および第2の感知電極から電気的測定値を得るように、かつ作動電極のアレイに作動信号を印加するように構成された制御システムと、を備え、
方法が、
a)第1の感知電極および第2の感知電極から電気的測定値を得ることと、
b)電気的測定値を分析すること、および次いで、制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って、電気的測定値に基づいて液滴動作を選択することと、
c)作動電極に作動信号を印加して、液滴動作をもたらすことと、を含む、方法を提供する。
【0293】
したがって、初期の液滴配設は、図11に示される配設に対応する。しかしながら、一般的に、第1の液滴と第3の液滴との間の液滴界面はまた、さらなる膜貫通細孔も含む。典型的には、さらなる膜貫通細孔は、イオンチャネルである。好ましい態様では、第1の液滴と第3の液滴との間の界面は、複数のイオンチャネル、例えば、少なくとも10個のイオンチャネルを含む。これらのイオンチャネルの数は、典型的には多く、例えば、第1の液滴と第2の液滴との間の界面に存在する膜貫通細孔の数の少なくとも10倍、または少なくとも100倍、または1000倍、または10,000倍である。
【0294】
いくつかの実施形態では、当該イオンチャネルは、電子メディエータに対して透過性ではない。イオンチャネルは、例えば、チャネルが狭すぎるか、またはチャネルが電子メディエータの通過を妨げる静電的に帯電した領域を含むため、電子メディエータに対して不浸透性であり得る。
【0295】
この好ましい態様では、分析物を含む第1の液滴は、電極と接触する液滴に干渉することなく移動することができる。したがって、一態様では、ステップ(b)で選択され、ステップ(c)で実行される液滴動作は、第1の液滴を移動させること、および第1の液滴を第2の液滴および/または第3の液滴から分離することを含む。このことは、図11aに示されている。分析物を含む除去された第1の液滴は、分析物を含み得る別の液滴と置き換えられ得る。したがって、この方法は、分析物を含むさらなる液滴を、第2の液滴および第3の液滴と接触するように移動させて、第2の液滴および第3の液滴の各々とさらなる液滴との間に液滴界面を形成することをさらに含み得、各液滴界面は、両親媒性分子の層を含む。
【0296】
代替的には、分析物を含む第1の液滴は、電子メディエータを含む第2の液滴および第3の液滴を移動させる間、静止状態に保つことができる。したがって、一態様では、ステップ(b)で選択され、かつステップ(c)で実行される液滴動作は、第2の液滴および/または第3の液滴を移動させて、第2の液滴および/または第3の液滴を第1の液滴から分離することを含む。このことは、図(b)に示されている。第2の液滴および第3の液滴を、分析物を含む別の液滴と接触するように移動させて、その液滴が感知できるようにし得る。したがって、いくつかの実施形態では、液滴動作は、第2の液滴および/または第3の液滴を、分析物を含むさらなる液滴と接触するように移動させて、第2の液滴および/または第3の液滴とさらなる液滴との間の液滴界面を形成することをさらに含み、界面(複数可)が、両親媒性分子の層を含む。このことは、図13bに示されている。
【0297】
最初の第2の液滴および第3の液滴を、分析物を含む第1の(静止)液滴から離れるように移動させることができるだけでなく、また、電子メディエータを含有する液滴の別の対を所定位置に移動させて、第1の液滴を感知し得る。したがって、いくつかの実施形態では、この方法は、第4の液滴を、および任意選択的に第5の液滴も、第1の液滴と接触するように移動させて、第4の液滴および存在する場合に第5の液滴と第1の液滴との間の液滴界面を形成することをさらに含み、液滴界面(複数可)は、両親媒性分子の層を含む。この場合、通常、第4の液滴は、および存在する場合に任意選択的に第5の液滴も、電子メディエータを含む。
【0298】
この実施形態の有用な態様は、分析物を含む液滴がチャンバ内に隔離されないことであり、液滴をEWODデバイスの縁部まで操作して、液滴を保管するか、または除去して保持することができる。したがって、好ましい態様では、本発明の方法は、第1の液滴を回収することを含み得る。そのような液滴を「回収する」とは、方法が終了すると、第1の液滴が廃棄されないことを意味する。むしろ、第1の液滴は、任意選択的に感知システムに保管され、代替的には、液滴は、他の場所に保管するために感知システムから除去される。
【0299】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法は、分析物を含む実質的にすべての液滴を回収することを含む。このことは、分析物が不足しているか、もしくは貴重である場合、または将来の分析のために保持する必要がある場合に、有用である。
【0300】
例示的な方法2:電極の再生
上で説明したように、本発明の特定の利点は、第1の感知電極と第2の感知電極との間の通信を可能にする電子メディエータ部分を、アクセスできないチャンバ内に入れないことである。このことは、経時的に電子メディエータが減退し(具体的には、Fe3+が、容易に再酸化することができないFe+に減退し)、かつ新鮮なメディエータを追加することができないものとしてWO2014/064443に記載されているようなデバイスにとっての問題である。電子メディエータは、材料を繰り返し加えることができるか、または新鮮な電子メディエータの液滴と交換することができる液滴に含有されるため、このことは、本発明の感知システムにとって問題ではない。
【0301】
電子メディエータを追加することができるだけでなく、第1の感知電極および第2の感知電極によって得られた電気的測定値を監視して、電子メディエータが劣化しているかどうか、および新たな電子メディエータが必要であるかどうかを判定することができる。したがって、電極、特に第1の感知電極と第2の感知電極との間の通信を可能にする電子メディエータを再生することができる。
【0302】
したがって、好ましい態様では、本発明は、感知システムを動作させる方法であって、感知システムが、
(i)エレクトロウェッティングデバイスであって、
作動電極のアレイ、
作動電極を覆い、かつ疎水性最外表面を有する絶縁体層、
第1の感知電極、および
第2の感知電極、を備える、エレクトロウェッティングデバイスと、
(ii)疎水性表面上に配置された、
無極性流体媒体、
流体媒体中で極性液体を含む第1の液滴、第2の液滴、および任意選的に第3の液滴であって、
第1の液滴および/または第2の液滴が、当該第1の液滴および/または第2の液滴と流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み、
第1の液滴が、液滴界面を介して第2の液滴と接触するか、または第3の液滴および第2の液滴が各々、液滴界面を介して第1の液滴と接触し、
液滴界面または各液滴界面が、両親媒性分子の層を含み、
液滴界面のうちの少なくとも1つが、膜貫通細孔を含み、
第1の液滴が、分析物を含み、
液滴のうちの1つ、任意選択的に第2の液滴が、電子メディエータを含み、
第1の液滴、または存在する場合に任意選択的に第3の液滴が、第1の感知電極と電気的に接触し、
第2の液滴が、第2の感知電極と電気的に接触する、無極性流体媒体、第1の液滴、第2の液滴、および任意選択的に第3の液滴と、
(iii)第1の感知電極および第2の感知電極から電気的測定値を得るように、かつ作動電極のアレイに作動信号を印加するように構成された制御システムと、を備え、
方法が、
a)第1の電極および第2の電極から電気的測定値を得、このステップを複数回繰り返して複数の電気的測定値を得ることと、
b)複数の電気的測定値の中で、電気的測定値のうちの1つ以上を他の電気的測定値のうちの1つ以上と比較すること、液滴中の、任意選択的に第2の液滴中の、電子メディエータの損失に帰属する、経時的に検出された電気的測定値の変移を判定すること、および液滴動作を選択して、その液滴中の、任意選択的に第2の液滴中の、電子メディエータの濃度を増加させることと、
c)作動電極に作動信号を印加して、液滴動作をもたらすことと、を含む、方法を提供する。
【0303】
一実施形態では、第2の液滴中の電子メディエータの濃度を増加させるための液滴動作は、第2の液滴を第2の感知電極との電気的接触から外れるように移動させ、より高濃度のメディエータを含む新たな液滴を、第2の感知電極と電気的に接触するように移動させる動作である。
【0304】
別の実施形態では、液滴動作は、疎水性表面上で流体媒体の被作動液滴を移動させること、および被作動液滴を、任意選択的に第2の液滴である、電子メディエータを含む液滴と融合させることを含み、被作動液滴はまた、電子メディエータも含む。典型的には、被作動液滴は、高濃度の電子メディエータを含む。例えば、被作動液滴は、任意選択的に第2の液滴である、電子メディエータを含む液滴中に存在するよりも高濃度の電子メディエータを含み得る。
【0305】
一実施形態では、感知システムは、第1の液滴および第2の液滴を含み、第1の液滴は、液滴界面を介して第2の液滴と接触し、その液滴界面は、両親媒性分子の層および膜貫通細孔を含み、第1の液滴は、第1の感知電極と電気的に接触し、第2の液滴は、第2の感知電極と電気的に接触する。この実施形態では、電子メディエータを含む液滴は、第1の液滴または第2の液滴であり得、液滴動作は、疎水性表面上で流体媒体の被作動液滴を移動させること、および被作動液滴を、電子メディエータを含む液滴と融合させることを含み得、被作動液滴はまた、電子メディエータも含む。典型的には、被作動液滴は、高濃度の電子メディエータを含む。例えば、被作動液滴は、任意選択的に第1の液滴または第2の液滴である、電子メディエータを含む液滴中に存在するよりも高濃度の電子メディエータを含み得る。代替的には、第1の液滴または第2の液滴中の電子メディエータの濃度を増加させるための液滴動作は、第1の液滴または第2の液滴をそれぞれ第1の感知電極または第2の感知電極との電気的接触から外れるように移動させる動作であり得、新鮮な電子メディエータ(通常、置き換えられる液滴よりも高濃度のメディエータ)を含む新たな液滴を、第1の感知電極または第2の感知電極と電気的に接触するように移動させる。
【0306】
別の実施形態では、感知システムは、第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を含む。第3の液滴および第2の液滴は各々、液滴界面を介して第1の液滴と接触し、各液滴界面は、両親媒性分子の層を含み、第1の液滴と第2の液滴との間の液滴界面は、第1の膜貫通細孔を含み、第1の液滴と第3の液滴との間の液滴界面は、イオンチャネルであるさらなる膜貫通細孔を含み、第3の液滴は、第1の感知電極と電気的に接触し、第2の液滴は、第2の感知電極と接触する。第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を用いるこの実施形態は、第3の液滴から第1の液滴または第2の液滴のいずれかに供給され得る電子メディエータのリザーバを提供するために特に有利であるものである。
【0307】
この実施形態では、第2の液滴(図18の液滴C)および第3の液滴(図18の液滴A)は、典型的には、両方とも電子メディエータを含む。第1の液滴は、通常、分析物を含む。分析物は、シーケンシングのための、特にナノ細孔を介した第1の液滴および第2の液滴の界面でのシーケンシングのためのDNAまたはRNAであり得る。上で考察されたように、第3の液滴は、第1の感知電極と電気的に接触し、第2の液滴は、第2の感知電極と接触する(そして、このことは、DNAをシーケンシングするためのイオン電流の変化を検出する目的のためであり得る)。
【0308】
典型的には、第3の液滴(図18の液滴A)から第1の液滴(図18の液滴B)へのイオン電流の通過を可能にするために、第3の液滴と第1の液滴との間の界面は、通常、非常に多数の、イオンチャネルであるさらなる膜貫通細孔を包含する。第3の液滴と第1の液滴との間の界面におけるそのようなさらなる膜貫通細孔の数が多いと、ネットワークのこの点での電気抵抗が低減し、電極間に電流が流れることが可能になって、第1の液滴と第2の液滴と(図18の液滴Bおよび液滴C)の間の界面での感知が可能になる。したがって、典型的には、第1の液滴と第3の液滴との間の界面におけるさらなる膜貫通細孔の数は、第1の液滴と第2の液滴との間の界面における第1の膜貫通細孔の数よりも多い。例えば、さらなる膜貫通細孔の当該数は、第1の膜貫通細孔の当該数の少なくとも10倍であり得る。さらなる膜貫通細孔の当該数は、第1の膜貫通細孔の当該数の少なくとも100倍、または例えば、第1の膜貫通細孔の当該数の少なくとも1000倍、または少なくとも10,000倍であり得る。さらなる膜貫通細孔の数は、例えば、第1の膜貫通細孔の当該数の少なくとも100,000倍であり得る。
【0309】
ナノ細孔に対する分析物の通過は、分析物が第1の液滴から第2の液滴まで完全に通過しないように制御され得る。これにより、分析物が第1の液滴に保持されることが確保される。代替的には、分析物は、ナノ細孔を通って第1の液滴から第2の液滴に完全に転位できるようになり得る。そのような制御は、電極間の電位差の極性または量を変えることによって達成され得る。
【0310】
第3の液滴(図18のA)と第1の液滴(図18のB)との間の界面に挿入されるこのタイプおよび数のさらなる膜貫通細孔を使用して、回路のこの位置での抵抗を制御することができる。例えば、大きな直径を有するさらなる膜貫通細孔(例えば、>2nm)を使用して、大量の電流を自由に流せるようにすることができる。代替的には、さらに小さな膜貫通細孔(例えば、直径が<2nm)を使用して、イオン選択性を制御する、例えば、不要なイオン種が膜を通過することを妨げることができる。例えば、大きなイオンを通過させるには狭すぎるさらなる膜貫通細孔、または通過に対する静電障壁を作成するための負の電荷を中央チャネルに有するさらなる膜貫通細孔を使用することによって、電子メディエータ(例えば、フェロ/イシアニド種)の流れが膜を通過することを妨げるかまたは規制することが可能である(例えば、電子メディエータを1つ以上の分析物種に直接接触させることが望ましくない場合)。したがって、多くの場合、さらなる膜貫通細孔は、2nm未満の内径を有する。追加的または代替的には、さらなる膜貫通細孔は、帯電した、例えば負に帯電した中央チャネルを含み得る。さらなる膜貫通細孔は、「フリット」ナノ細孔と呼ばれ得る。
【0311】
メディエータは、任意の好適な電子メディエータであり得る。典型的には、メディエータは、Fe2+/Fe3+の対を含み、例えば、電子メディエータは、Fe3+を含み得る。例えば、電子メディエータは、[Fe(CN)3-/4-を含み得る。
【0312】
実施形態が現在、第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴について考察されているような、複数の界面ネットワークにおいてナノ細孔がいずれの膜に挿入されるかを制御することが可能である。このことは、例えば、膜界面が形成される順序を制御することによって、所望の膜界面をわたって大きな電圧を印加することによって、または液滴がナノ細孔を包含することによって、達成できる。例えば、第3の液滴(図18の液滴A)にのみナノ細孔を含めることによって、この実施形態の第1の液滴と第3の液滴と(図18の液滴Aおよび液滴B)の間の界面に多数の「フリット」ナノ細孔を挿入することが可能である。同じく、第1の液滴(図18の液滴B)が当該第1の膜貫通細孔(例えば、DNAシーケンシングに好適な感知ナノ細孔)を含む場合、第1の液滴と第2の液滴と(図18の液滴Bおよび液滴C)の間の界面に制御を伴う第1の膜貫通細孔を挿入することが可能である。このようにして、本発明の方法に従って、液滴動作を実行して、当該さらなる膜貫通細孔を第1の液滴と第3の液滴との間の界面に挿入し得る。同様に、本発明の方法に従って、液滴動作を実行して、当該第1の膜貫通細孔を第1の液滴と第2の液滴との間の界面に挿入し得る。したがって、本発明の方法におけるステップ(c)、または複数のステップ(c)のうちの少なくとも1つは、第1の液滴と第3の液滴との間の界面にさらなる膜貫通細孔を挿入することを含み得る。同様に、本発明の方法におけるステップ(c)、または複数のステップ(c)のうちの少なくとも1つは、第1の液滴と第2の液滴との間の界面に第1の膜貫通細孔を挿入することを含み得る。
【0313】
メディエータをある種から別の種へ反応させる際の化学ポテンシャルの変化から生じる電圧の変化を監視することによって、液滴(例えば、上で考察された実施形態の第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴)のネットワーク全体にわたる電子メディエータの濃度の変化を感知することが可能である。したがって、長い実験中に電子メディエータが枯渇したことを検出することが可能である。例えば、第3の液滴(図18の液滴A)の電子メディエータが枯渇した場合、メディエータをリフレッシュするために第3の液滴の条件を調整することが可能である。したがって、例えば、図18の部分II)およびIII)に概略的に示されるように、新鮮なメディエータを含有する新たな液滴(第4の液滴)を第3の液滴に接続および融合することが可能である。代替的には、第3の液滴を第1の液滴(図18の液滴B)から離れるように移動させて、液滴界面で両親媒性分子の層を形成せず、新鮮なメディエータを含有する新たな第3の液滴を第1の液滴に接続することができる。新たな第3の液滴はまた、第3の液滴と第1の液滴との間のイオン流を可能にするために、第3の液滴と第1の液滴との間の新たな界面に挿入するためのさらなる膜貫通細孔を包含し得る。
【0314】
したがって、電子メディエータを含む液滴は、第3の液滴であり得、液滴動作は、疎水性表面上で流体媒体の被作動液滴(第4の液滴)を移動させること、および被作動液滴(第4の液滴)を第3の液滴と融合させることを含み得、被作動液滴はまた、電子メディエータを含む。典型的には、被作動(第4の)液滴は、高濃度の電子メディエータ、例えば、第3の液滴(電子メディエータが、枯渇したか、または枯渇しようとしている可能性がある)に存在するよりも高濃度の電子メディエータを含む。代替的には、第3の液滴中の電子メディエータの濃度を増加させるための液滴動作は、第3の液滴を第1の感知電極との電気的接触から外れるように移動させる動作であり得、新鮮な電子メディエータ(例えば、第3の液滴よりも高濃度のメディエータ)を含む新たな(交換)第3の液滴を、第1の感知電極と電気的に接触するように移動させる。新たな第3の液滴はまた、第3の液滴と第1の液滴との間のイオン流を可能にするために、第3の液滴と第1の液滴との間の新たな界面に挿入するためのさらなる膜貫通細孔を包含し得る。
【0315】
追加的または代替的に、第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を用いるこの実施形態では、電子メディエータを含む液滴は、第2の液滴(図18の液滴C)であり得、液滴動作は、疎水性表面上で流体媒体の被作動液滴(第4の液滴)を移動させること、および被作動液滴(第4の液滴)を第2の液滴と融合させることを含み得、被作動液滴はまた、電子メディエータを含む。典型的には、被作動(第4の)液滴は、高濃度の電子メディエータ、例えば、第2の液滴(電子メディエータが、枯渇したか、または枯渇しようとしている可能性がある)に存在するよりも高濃度の電子メディエータを含む。代替的には、第2の液滴中の電子メディエータの濃度を増加させるための液滴動作は、第2の液滴を第2の感知電極との電気的接触から外れるように移動させる動作であり得、新鮮な電子メディエータ(例えば、除去された第2の液滴よりも高濃度のメディエータ)を含む新たな(交換)第2の液滴を、第1の感知電極と電気的に接触するように移動させる。新たな第2の液滴はまた、第2の液滴と第1の液滴との間の新たな界面に挿入するための当該第1の膜貫通細孔を包含し得る。
【0316】
別の実施形態では、メディエータは、第2の液滴(図18の液滴C)に含まれず、むしろ、フリット様ナノ細孔界面によってそれ自体が第2の液滴に接続されてネットワークA-B-C-Dを作成する第4の液滴(例えば、液滴D)に分離され得、第3の液滴および第4の液滴(液滴Aおよび液滴D)は、メディエータを含有し、第1の液滴(図18の液滴B)は、分析物を包含し、第1の膜貫通細孔(ナノ細孔センサであり得る)は、第1の液滴と第2の液滴と(BおよびC)の間の界面にある。この実施形態では、例えば、ステップ(a)での感知が、第1および第2の「感知」液滴(BおよびC)に影響を与えることなく、メディエータが枯渇したことを検出した場合、第3のメディエータ液滴および第4のメディエータ液滴の両方を、ステップ(c)の液滴動作で除去し、および置き換えることができる。
【0317】
したがって、好ましい態様では、本発明は、感知システムを動作させる方法であって、感知システムが、
(i)エレクトロウェッティングデバイスであって、
作動電極のアレイ、
作動電極を覆い、かつ疎水性最外表面を有する絶縁体層、
第1の感知電極、および
第2の感知電極、を備える、エレクトロウェッティングデバイスと、
(ii)疎水性表面上に配置された、
無極性流体媒体、
各々が流体媒体中で極性液体を含む第1の液滴、第2の液滴、第3の液滴、および第4の液滴であって、
第1の液滴、第2の液滴、第3の液滴、および/または第4の液滴が、第1の液滴、第2の液滴、第3の液滴、および/または第4の液滴と流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み、
第3の液滴が、液滴界面を介して第1の液滴と接触し、第1の液滴が、別の液滴界面を介して第2の液滴と接触し、第2の液滴が、さらに別の液滴界面を介して第4の液滴と接触し、
各液滴界面が、両親媒性分子の層を含み、
第1の液滴と第2の液滴との間の液滴界面が、第1の膜貫通細孔を含み、
第1の液滴と第3の液滴との間の液滴界面が、イオンチャネルである複数のさらなる膜貫通細孔を含み、
第2の液滴と第4の液滴との間の液滴界面もまた、イオンチャネルである複数のさらなる膜貫通細孔を含み、
第1の液滴が、分析物を含み、
第3の液滴および第4の液滴が、電子メディエータを含み、
第3の液滴が、第1の感知電極と電気的に接触し、
第4の液滴が、第2の感知電極と電気的に接触する、無極性流体媒体、第1の液滴、第2の液滴、第3の液滴、および第4の液滴と、
(iii)第1の感知電極および第2の感知電極から電気的測定値を得るように、かつ作動電極のアレイに作動信号を印加するように構成された制御システムと、を備え、
方法が、
a)第1の電極および第2の電極から電気的測定値を得、このステップを複数回繰り返して複数の電気的測定値を得ることと、
b)複数の電気的測定値の中で、電気的測定値のうちの1つ以上を他の電気的測定値のうちの1つ以上と比較すること、第3の液滴または第4の液滴中の電子メディエータの損失に帰属する、経時的に検出された電気的測定値の変移を判定すること、および液滴動作を選択して、その液滴中の、電子メディエータの濃度を増加させることと、
c)作動電極に作動信号を印加して、液滴動作をもたらすことと、を含む、方法を提供する。
【0318】
液滴動作は、疎水性表面上で流体媒体の被作動液滴(第5の液滴)を移動させること、および被作動液滴(第5の液滴)を第3の液滴または第4の液滴と融合させることを含み得、被作動液滴はまた、電子メディエータを含む。典型的には、被作動(第5)液滴は、高濃度の電子メディエータ、例えば、当該第3の液滴または第4の液滴(電子メディエータが枯渇したかまたは枯渇しようとしている液滴)に存在するよりも高濃度の電子メディエータを含む。代替的には、第3の液滴または第4の液滴中の電子メディエータの濃度を増加させるための液滴動作は、第3の液滴または第4の液滴をそれぞれ第1の感知電極または第2の感知電極との電気的接触から外れるように移動させる動作であり得、新鮮な電子メディエータ(例えば、置き換えられる第3の液滴または第4の液滴よりも高濃度のメディエータ)を含む新たな(交換)第3の液滴または第4の液滴を、それぞれ第1の感知電極または第2の感知電極と電気的に接触するように移動させる。新たな第3の液滴または第4の液滴はまた、それぞれ、第3の液滴と第1の液滴との間の新たな界面、または第2の液滴と第4の液滴との間の新たな界面に挿入して、それらの液滴間のイオン流を可能にするために、当該さらなる膜貫通細孔を包含し得る。
【0319】
例示的な方法3:検出の精度の改善
本発明の特定の利点は、感知システムが、サンプルが複数の細孔にさらされることを可能にすることである。これにより、特に分析物がDNAなどのポリマー分析物である場合に、分析物を判定することができる精度を改善することができる。さらに、分析物がさらされる細孔は、分析物と以前の膜貫通細孔との相互作用で得られた電気的測定値に基づいて選択され得る。これにより、分析物の正確な識別を提供するために、最も適切な感知動作を選択および実行することができる動的感知システムが提供される。
【0320】
したがって、好ましい実施形態では、本発明は、任意の先行する請求項に記載の感知システムを動作させる方法であって、感知システムが、エレクトロウェッティングデバイスの疎水性表面上に配置された、
無極性流体媒体、
極性液体媒体を含む第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を備え、
第1の液滴および/または第2の液滴および/または第3の液滴が、当該第1の液滴および/または第2の液滴および/または第3の液滴と流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み、
第1の液滴が、液滴界面を介して第2の液滴と接触し、当該液滴界面が、両親媒性分子の層および第1の膜貫通細孔を含み、
第3の液滴が、別の液滴界面を介して第1の液滴または第2の液滴と接触し、当該別の液滴界面が、両親媒性分子の層および第2の膜貫通細孔を含み、
第1の液滴が、分析物を含む、方法を提供する。
【0321】
いくつかの実施形態では、第1の膜貫通細孔と第2の膜貫通細孔とは同じであり、これにより、同じ細孔を使用して分析物を2回分析できるようになり、このことは、もちろん、測定の精度を改善するのに有用である。しかしながら、別の実施形態では、第2の膜貫通細孔は、第1の膜貫通細孔とは異なり、その実施形態では、2つの異なる細孔の使用は、同定を支援するための分析物に関係する2つの異なる情報セットを提供する。
【0322】
通常、この実施形態では、ステップ(a)の電気的測定値は、分析物と第1の膜貫通細孔および/または第2の膜貫通細孔との相互作用を示す電気的測定値である。第1の感知電極ならびに第2の感知電極、および3つの液滴の相対的構成は、どの相互作用が初期構成で検出され得るかを判定する。
【0323】
第1の感知電極および第2の感知電極が各々、液滴界面を介して互いに直接接触する液滴の対の一方と接触する場合、電気的測定値は、分析物がその界面に存在する膜貫通細孔と相互作用したことを示す測定値を含み得る。例えば、第1の感知電極は、第1の液滴と電気的に接触し得、第2の感知電極は、第2の液滴と電気的に接触し得、第1の液滴および第2の液滴は、図8に示されるように、第1の膜貫通細孔を含む液滴界面を介して接触し得る。その場合、電気的測定値は、第1の膜貫通細孔との相互作用を示す測定値であり得る。別の実施形態では、第1の感知電極は、第1の液滴と電気的に接触し得、第2の感知電極は、第3の液滴と電気的に接触し得、第1の液滴および第3の液滴は、第2の膜貫通細孔を含む液滴界面を介して接触し得る。その場合、電気的測定値は、第2の膜貫通細孔との相互作用を示す測定値であり得る。
【0324】
したがって、一実施形態では、ステップ(b)は、分析物が第1の膜貫通細孔と相互作用したことを判定することを含む。別の実施形態では、ステップ(b)は、分析物が第2の膜貫通細孔と相互作用したことを判定することを含む。
【0325】
電気的測定値により、分析物がこのように第1の膜貫通細孔または第2の膜貫通細孔と相互作用したことを判定した後、ステップ(b)は、分析物を含む液滴を、さらなる液滴、およびさらなる膜貫通細孔を含むさらなる界面と接触させる液滴動作を選択することをさらに含み得る。このようにして、毎回膜貫通細孔を通過させ、分析物の同一性が判定され得る大きなデータセット形態を提供しながら、分析物を、1つの液滴から第2の液滴に、さらなる液滴などに移動させ得る。
【0326】
液滴および電極は、代替的には、例えば図9に示されるように配設され得、ここで、第1の感知電極および第2の感知電極は、2つの膜貫通細孔によって分離される。すなわち、第1の感知電極は、第3の液滴と電気的に接触し、第2の感知電極は、第2の液滴と電気的に接触する。第1の液滴と第2の液滴との間の界面は、第1の膜貫通細孔を含み、第1の液滴と第3の液滴との間の界面は、第2の膜貫通細孔を含む。
【0327】
この配設では、第1の液滴に存在する分析物は、第1の膜貫通細孔もしくは第2の膜貫通細孔のいずれか、またはその両方と、相互作用し得る。代替的には、分析物は、最初に第2の液滴に存在し得、第1の膜貫通細孔を通って第1の液滴中に、次いで、第2の膜貫通細孔を通って第3の液滴に移動し得る。分析物のそのような移動は、分析物が帯電する場合、第1の感知電極および第2の感知電極に印加される電位によって制御できる。したがって、この構成では、ステップ(a)で取得される電気的測定値は、第1の膜貫通細孔および第2の膜貫通細孔のいずれかまたは両方との相互作用を示す電気的測定値であり得る。
【0328】
したがって、一態様では、ステップ(b)は、分析物が第1の膜貫通細孔および第2の膜貫通細孔と同時に相互作用したことを判定することを含み得る。
【0329】
もちろん、各々が液滴界面を介して第1の液滴、第2の液滴、または第3の液滴と接触する、複数のさらなる液滴が存在し得、その液滴界面は、さらなる膜貫通細孔を包含する。分析物は、これらの各々と同時にまたは順番に相互作用し得、その相互作用は、第1の感知電極および第2の感知電極またはさらなる感知電極によって検出され得る。
【0330】
この実施形態の特定の態様では、液滴体積は非常に小さい可能性があるため、分析物が十分に長いポリマー鎖である場合、分析物は、液滴の内部を横切って到達し、第1の細孔および第2の細孔の両方と同時に相互作用し得る。分析物と2つの細孔との相互作用は、分析物の構造に関するさらに詳細な情報を同時に提供する。したがって、一態様では、ステップ(b)は、ポリマー分析物の一本鎖が第1の膜貫通細孔および第2の膜貫通細孔と同時に相互作用したことを判定することを含み得る。この実施形態の好ましい態様では、分析物は、一本鎖のDNAである。例えば、第1の液滴は一本鎖のDNAを含有し得、この方法は、単一の分析物粒子を調べることができる。
【0331】
分析物が第1の膜貫通細孔および第2の膜貫通細孔と相互作用したと判定されると、典型的には、分析物と1つ以上のさらなる膜貫通細孔との相互作用を示す電気的測定値を取得することができるように、液滴系を再構成することが望ましい。例えば、さらなる液滴を液滴系と接触させて、さらなる膜貫通細孔を含むさらなる界面を提供し得る。このことは、分析物を含有する液滴(典型的には、第1の液滴)および/または感知システム内の他の液滴を作動させることによって達成できる。液滴動作による再構成は、典型的には、ステップ(a)で取得された電気的測定値(複数可)から、分析物が初期の液滴系における関心対象の膜貫通細孔のすべてと完全に相互作用した(例えば通過した)と判定されると許可される。
【0332】
一実施形態では、ステップ(b)で選択され、かつステップ(c)で実行される液滴動作が、第1の液滴を第2の液滴および/または第3の液滴から分離するために、第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴のうちの1つ以上を移動させることを含む。
【0333】
一実施形態では、ステップ(b)で選択され、かつステップ(c)で実行される液滴動作は、第1の液滴をさらなる液滴と接触させ、さらなる液滴が、両親媒性分子の層およびさらなる膜貫通タンパク質を含む液滴界面を介して第1の液滴と接触するようにすることを含む。
【0334】
上述のように複数の異なる細孔にサンプルをさらすことによって達成できる精度は、非常に高い。
【0335】
他の例示的な方法
本発明の方法のいくつかの実施形態では、ステップ(a)は、分析物が細孔に対して移動するように第1の膜貫通細孔を分析物と接触させること、および分析物が細孔に対して移動する際に1つ以上の電気的測定値を得ることを含み、この方法は、分析物の存在、不在、または1つ以上の特性を判定することをさらに含む。
【0336】
この方法の好ましい態様では、ステップ(b)は、分析物の1つ以上の特徴の存在または不在を判定することを含み、任意選択的に、ステップ(b)が、分析物の存在、または不在、または1つ以上の特性に基づいて、第1の液滴を保持するか、または廃棄するかを判定することをさらに含む。
【0337】
典型的には、そのような方法では、分析物は、ポリヌクレオチドである。また、典型的には、そのような方法では、当該特徴は、(i)ポリヌクレオチドの長さ、(ii)ポリヌクレオチドの同一性、(iii)ポリヌクレオチドの配列、(iv)ポリヌクレオチドの二次構造、および(v)ポリヌクレオチドが修飾されているか否か、のうちの1つ以上であり得る。
【0338】
以下の方法では、第1の液滴は、最初に、分析物、好ましくはポリヌクレオチドを含む。好ましくは、分析物は、帯電する。第1の液滴および第2の液滴は、それぞれ第1の感知電極および第2の感知電極と電気的に接触する。好ましくは、これらの方法では、第1の液滴および第2の液滴は、無極性油性媒体に浸漬された水性極性媒体の液滴であり、各々が、水性媒体と油性媒体との間の界面に配置された両親媒性分子の層を有する。さらなる液滴または新たな液滴が方法に関与する場合、さらなる液滴または新たな液滴はまた、典型的には、水性媒体の液滴でもあり、水性媒体と油性媒体との間の界面に配置された両親媒性分子の層を含む。
【0339】
一実施形態では、この方法は、ポリマー分析物(例えば、分析物がDNAまたはRNAを含む)をリアルタイムでシーケンシングする方法である。
【0340】
以後に分析物選択の実施形態と呼ばれる一実施形態では、この方法は、
a)電気的測定値を得ることによって、分析物と第1の膜貫通細孔との間の相互作用を検出することと、
b)(a)で得られた電気的測定値に基づいて分析物の存在または不在または1つ以上の特性を判定すること、その分析物を保持することを決定すること、および制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って、極性水性媒体のさらなる液滴を第2の液滴と接触させるための液滴動作を選択することと、
第1の送信電極および第2の送信電極に電位を印加することによって、分析物を第2の液滴に転位させることと、
c)さらなる液滴を第2の液滴と接触させるために、作動電極のアレイに作動信号を印加することと、を含み得る。さらなる液滴は、さらなる液滴と油性媒体との間の界面に配置された両親媒性分子の層を含み得る。ステップ(c)は、第2の液滴とさらなる液滴との間に膜を含む液滴界面を形成することをさらに含み得、任意選択的に、その膜は、第2の膜貫通細孔を含む。
【0341】
別の実施形態では、この方法は、
ai)電気的測定値を得ることによって、分析物と第1の膜貫通細孔との間の相互作用を検出することと、
aii)(a)で得られた電気的測定に基づいて、分析物の存在または不在または1つ以上の特性を判定すること、分析物を拒絶することを決定すること、ならびに第1の送信電極および第2の送信電極に電位を印加して、その分析物が第2の液滴に転位することを妨げることと、
aiii)任意選択的に、ステップ(ai)およびステップ(aii)を1回以上繰り返すことと、
上記の分析物選択方法のステップa~cを実行することと、を含み得る。
【0342】
別の実施形態では、この方法は、第1の液滴から標的分析物をふるいにかけることと、次いで、1つ以上のさらなる細孔中の分析物を検出することと、を含み得る(例えば、分析物がポリヌクレオチドである場合に、分析物の配列を検出できるようにするため)。そのような実施形態では、この方法は、
a)標的分析物が第1の膜貫通細孔を介して第1の液滴から第2の液滴に通過しているか、または通過したことを示す電気的測定値を得ることと、
b)電気的測定値を分析すること、任意選択的に、分析物が第1の液滴から第2の液滴に通過しているか、または通過したことを判定すること、および第1の液滴と第2の液滴とを分離するための液滴動作を選択することと、
c)第1の液滴と第2の液滴とが互いに接触しなくなるように第1の液滴および/または第2の液滴を移動させるために、作動電極のアレイに作動信号を印加することと、を含み得る。
【0343】
この実施形態では、ステップ(b)で選択され、かつステップ(c)で実行される液滴動作は、液滴をさらなる液滴と接触させることをさらに含み得る。さらなる液滴は、典型的には、さらなる感知電極と接触するか、または接触させられる。このように第2の液滴とさらなる液滴との間に形成された界面は、典型的には、膜および第2の膜貫通細孔を含む。
【0344】
この実施形態では、次いで、ステップ(a)~(c)が、1回以上繰り返され得る。例えば、この方法は、
a)標的分析物が第2の膜貫通細孔を介して第2の液滴からさらなる液滴に通過しているか、または通過したことを示す電気的測定値を得ることと、
b)電気的測定値を分析すること、任意選択的に、分析物が第2の液滴からさらなる液滴に通過しているか、または通過したことを判定すること、および第2の液滴とさらなる液滴とを分離するための液滴動作を選択することと、
c)第2の液滴とさらなる液滴とが互いに接触しなくなるように第2の液滴および/またはさらなる液滴を移動させるために、作動電極のアレイに作動信号を印加することと、を含み得る。
【0345】
ステップ(b)で選択され、かつステップ(c)で実行される液滴動作は、液滴を別のさらなる液滴と接触させることをさらに含み得る。別のさらなる液滴は、典型的には、別のさらなる感知電極と接触するか、または接触させられる。このようにさらなる液滴と別のさらなる液滴との間に形成された界面は、典型的には、膜および第3の膜貫通細孔を含む。
【0346】
この方法は、1回以上繰り返され得る。
【0347】
この方法の一態様では、ステップ(b)は、新たな液滴を第1の液滴と接触させるために、第2の液滴動作を選択することを含む。例えば、ステップ(b)は、加えて、新たな液滴を第1の液滴と接触させるために液滴動作を選択することを含み得る。この液滴動作がステップ(c)で実行されると、新たな液滴と第1の液滴との間の界面は、新たな膜貫通細孔を含み得る。このことは、例えば、第1の液滴または新たな液滴のいずれかに挿入するのに好適な膜貫通細孔を提供することによって、達成できる。新たな膜貫通細孔は、異なる標的分析物が新たな液滴中へと通過できるようにし得る。したがって、ステップ(a)は、複数回繰り返され得、各反復において、新たな標的分析物が新たな液滴中へと通過することを示す電気的測定値が取得される。すなわち、この方法は、追加的に、
a)新たな標的分析物が新たな膜貫通細孔を介して第1の液滴から新たな液滴に通過しているか、または通過したことを示す電気的測定値を得ることと、
b)電気的測定値を分析すること、任意選択的に、新たな分析物が第1の液滴から新たな液滴に通過しているか、または通過したことを判定すること、および第1の液滴と新たな液滴とを分離するための液滴動作を選択することと、
c)第1の液滴と新たな液滴とが互いに接触しなくなるように第1の液滴および/または新たな液滴を移動させるために、作動電極のアレイに作動信号を印加することと、を含み得る。
【0348】
この方法を複数回繰り返して、異なる液滴中に異なる標的分析物を収集し得る。
【0349】
この方法により、ターゲット分析物が向かう場所を制御するために、多くの異なる液滴構成を有する複雑なネットワークを作成することが容易に可能である。新たな液滴のいずれにおいても、異なる条件(例えば、異なる液滴は、異なるpH、塩、緩衝液、補因子、酵素、温度などを有することができる)または界面での差異(例えば、異なるタイプの細孔、細孔の数、細孔の配向、分析物の転位の方向、異なる印加電圧など)を使用することも可能である。このようにして、同じ標的分析物に対して複数の異なるアクションを実行することが可能である。例えば、標的分析物は、異なる条件下でシーケンシングされ得る。他の実施形態では、標的分析物は、ポリメラーゼ増幅、逆転写、制限酵素切断、成分のライゲーション、ヌクレアーゼ分解、cas9結合、または切断などのような一般的な核酸調製物に供されるように移動され得る。
【0350】
この方法により、種の混合物を含有する分析物から所望の標的分析物をふるい分けることも可能である。一実施形態では、この方法は、DNA配列の混合物から1つ以上の所望のDNA配列をふるい分けることを含む。
【0351】
いくつかの好ましい実施形態では、ステップ(b)で選択され、かつステップ(c)で実行される液滴動作は、2つの液滴を一緒に融合させることを含み得る。そのような場合、液滴は、接触すると融合し得るか、または2つの液滴間の膜を破壊するために電圧の印加を必要とし得る。したがって、いくつかの実施形態では、第1の感知電極は、第1の液滴(または存在する場合に第3の液滴)と電気的に接触し、第2の液滴は、第2の感知電極と電気的に接触し、本発明の方法は、
a)第1の感知電極と第2の感知電極との間の電気的測定値を得ることと、
b)制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って、電気的測定値を分析すること、および液滴動作を選択することであって、液滴動作は、さらなる液滴を第2の液滴と融合させることを含む、電気的測定値を分析すること、および液滴動作を選択することと、
c)さらなる液滴を第2の液滴およびさらなる感知電極と接触するように移動させるために、作動電極に作動信号を印加することと、
第2の液滴とさらなる液滴とを融合するために、第2の感知電極とさらなる感知電極との間にわたって電位を印加することと、を含む。
【0352】
このことを使用して、第2の液滴の条件を調整し得る。例えば、さらなる液滴は、液滴のpH、イオン濃度、または他の特性を調整するために使用することができる材料を含み得る。代替的には、さらなる液滴は、PCRによってDNAなどのポリヌクレオチド分析物を増幅するために必要な適切な酵素および補因子試薬などの、第2の液滴に存在する分析物を処理することを可能にする材料を含み得る。
【0353】
したがって、いくつかの実施形態では、処理は、
a)所望のポリヌクレオチド配列(例えば、関心の遺伝子)が第1の液滴から第2の液滴に転位したことを示す、第1の感知電極と第2の感知電極との間の電気的測定値を取得することと、
b)電気的測定を分析すること、および任意選択的に、第1の液滴から第2の液滴への所望のポリヌクレオチド配列の転位が発生したことを判定すること、ならびに制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って液滴動作を選択することであって、液滴動作が、さらなる液滴と第2の液滴とを融合させる、分析することおよび判定すること、ならびに選択することと、
c)さらなる液滴を第2の液滴およびさらなる感知電極と接触するように移動させるために、作動電極に作動信号を印加することと、
第2の液滴とさらなる液滴とを融合させるために、第2の感知電極およびさらなる感知電極にわたって電位を印加することと、を含み、さらなる液滴は、PCR手順のための原材料(酵素および補因子試薬など)を含有する。
【0354】
ある液滴を別の液滴と接触させる液滴動作のしばしば望ましい結果は、液滴間で材料を搬送することである。このことは、2つの液滴の浸透ポテンシャルが異なる場合に、浸透によって達成できる。異なる浸透ポテンシャルを包含する液滴(例えば、異なる濃度の塩または他の好適な溶質を有する液滴)が接続されて、膜(例えば、両親媒性分子の二層)を含む液滴界面を形成する場合、水が、2つの液滴間の膜を横切って流れて、浸透ポテンシャルをバランスさせ、浸透ポテンシャルがバランスするか、または液滴が切り離されるまで、水が低塩濃度の液滴から、高濃度の塩溶液を有する液滴に流れる。適切な浸透ポテンシャル液滴を標的液滴に接続することによって、標的液滴中の含水量を増加させる(例えば、標的液滴よりも低いイオン濃度を有する液滴、すなわち、より塩分が少ない液滴を接続することによって)か、または標的液滴中の含水量を減少させる(例えば、標的液滴よりも高いイオン濃度を有する液滴、すなわち、より塩分が多い溶液液滴を接続することによって)ことが可能である。このようにして、標的液滴中の内容物を希釈するか、または濃縮することが可能である。
【0355】
「標的液滴」は、ここでさらなる液滴を接触させる液滴である。
【0356】
したがって、この方法のいくつかの実施形態では、
ステップ(b)は、任意選択的に、第1の液滴、第2の液滴、および存在する場合に第3の液滴(標的液滴)のうちの1つ以上のイオン濃度または浸透ポテンシャルを判定すること、および異なるイオン濃度または浸透ポテンシャルを有するさらなる液滴を当該第1の液滴、第2の液滴、または第3の液滴(標的液滴)と接触させるための液滴動作を選択することを含み、
ステップ(c)は、作動電極アレイに作動信号を印加して、当該さらなる液滴を当該第1の液滴、第2の液滴、または第3の液滴(標的液滴)と接触させて、さらなる液滴と当該第1の液滴、第2の液滴、または第3の液滴(標的液滴)との間に液滴界面を形成することを含み、
この方法は、水が第1の液滴、第2の液滴、または第3の液滴(標的液滴)とさらなる液滴との間の液滴界面を横切って通過することを可能にすることをさらに含む。
【0357】
いくつかの実施形態では、さらなる液滴は、各々が異なる浸透ポテンシャルまたはイオン濃度を有する複数の液滴の中から選択される。
【0358】
液滴の塩含有量の制御は、例えば、高塩濃度の使用を通じて、アダプタの標的DNA分子へのライゲーションなどの酵素反応を阻害し、次いで、塩の希釈によって必要に応じて酵素反応を開始することが意図される場合、望ましい場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、液滴を希釈することが有用であり得る。しかしながら、他の実施形態では、水を除去することによって液滴の内容物を濃縮することが望ましい場合がある。例えば、サンプルを濃縮することは、ナノ細孔との相互作用によって分析物を感知することによって、または分析物の蛍光測定のために、標的分子の検出の感度を高めるのに有用であり得る。
【0359】
したがって、この方法のいくつかの実施形態では、さらなる液滴は、標的液滴よりも高い浸透ポテンシャルまたはイオン濃度を有し、これにより、標的液滴の濃縮が可能になる。この方法の他の実施形態では、さらなる液滴は、標的液滴よりも低い浸透ポテンシャルまたはイオン濃度を有し、これにより、標的液滴の希釈が可能になる。
【0360】
いくつかの実施形態では、さらなる液滴は、各々が異なる浸透ポテンシャルまたはイオン濃度を有する複数の液滴から選択され得る。
【0361】
したがって、特に好ましい例では、この方法は、
本明細書に記載されるように、分析物を第1の液滴から第2の液滴に通過させることと、
a)第1の感知電極および第2の感知電極(それぞれ第1の液滴および第2の液滴と電気的に接触する)から電気的測定値を得ることと、
b)電気的測定値を分析して、第2の液滴に存在する浸透ポテンシャルまたはイオン濃度を判定すること、および制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って、液滴動作を選択することによって、第2の液滴とは異なる浸透ポテンシャルまたはイオン濃度を有するさらなる液滴を第2の液滴と接触させ得ることと、
作動電極に作動信号を印加して、好ましくはさらなる液滴を移動させることによって、さらなる液滴を第2の液滴と接触させることと、を含む。したがって、さらなる液滴および第2の液滴は、両親媒性分子の層を含む液滴界面によって接続される。
【0362】
この方法は、水が、第2の液滴に流入するか、または第2の液滴から流出することを可能にすることをさらに含み得る。
【0363】
追加の処理ステップ
本発明の方法は、典型的には、1回以上繰り返される。すなわち、ステップ(c)が実行され、新たに配設された液滴の系が調製されると、ステップ(a)~(c)が繰り返され得る。ステップ(a)で取得された測定値、ステップ(b)で選択され、かつステップ(c)で実行される液滴動作は、方法の各反復で異なり得る。
【0364】
さらに、本発明の方法は、ステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)の前、間、または後に実行される1つ以上のさらなる処理ステップを含み得る。
【0365】
1つのそのような追加のステップは、サンプルの初期調製である。ユーザの側でサンプルの調製を全く必要とせずに、「原」サンプルを感知システムに提供することが特に望ましい。「原」サンプルとは、最初に収集されたサンプルを意味し、例えば、体から収集された血液サンプル、または海から直接収集された海水のサンプルである。好ましくは、感知システム自体が、本発明の方法に供されるサンプルを調製するために必要な初期処理ステップを実行する。そのような初期調製ステップは、サンプルの洗浄、精製、細胞溶解、希釈、濃縮、追加の基を結合することによる修飾などを含み得る。
【0366】
したがって、いくつかの実施形態では、処理は、原サンプルを感知システムに提供する初期ステップを含む。好ましくは、初期ステップは、感知システム内でサンプルを調製することをさらに含む。「調製する」とは、本発明の方法での使用に好適な形態でサンプルを置くために必要なサンプルに対して動作を実行することを意味する。
【0367】
上記で説明したように、本発明の方法は、分析物を含む1つ以上の液滴の回収を可能にする。好ましい態様では、本発明の方法は、分析物自体を回収することをさらに含む。すなわち、分析物を構成する液滴(複数可)のいくつかまたは好ましくはすべてが、一緒に収集され、感知システムから除去され得る。次いで、液滴を処理して、汚染物質を除去し、分析物を戻すことができる。
【0368】
本発明の別の利点は、同じ感知システム内の複数の液滴系に対して本発明を同時に実行し得ることである。液滴系は、本明細書で定義される第1の液滴ならびに第2の液滴、および任意選択的に第3の液滴ならびにさらなる液滴を含む。したがって、この方法の好ましい態様では、感知システムは、
疎水性表面上に配置された、流体媒体、および本明細書で定義されるような第1の液滴および第2の液滴を含む第1の液滴系と、
また、疎水性表面上に配置された、本明細書で定義されるような別の第1の液滴および別の第2の液滴を含む第2の液滴系と、を備え、
この方法が、第1の液滴系に対しておよび第2の液滴系に対して、同時にステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)を実行することを含む。理論的には、この方法は、多数の液滴系に対して、例えば、少なくとも10個または少なくとも100個の液滴系に対して同時に実行され得る。この方法の各反復では、ステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)は、同じであってもよいか、または異なってもよい。例えば、第1の液滴系に対して実行されるステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)のうちの1つ以上が、第2の液滴系に対して実行されるステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)のうちの1つ以上とは異なり得る。代替的には、第1の液滴および第2の液滴系に対して実行されるステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)は、同じであり得る。しかしながら、第1の液滴および第2の液滴系が同じデバイス中に存在する場合、ステップ(c)で実行される液滴動作は、それらの液滴が一緒に融合することを意図されない限り、液滴を正確に同じ場所に移動させることを含むことができない。
【0369】
本発明の装置
本発明は、本発明の方法を実行することができる、本明細書に記載されるような感知システムを提供する。したがって、本発明は、感知システムであって、
エレクトロウェッティングデバイスであって、
作動電極のアレイ、
作動電極を覆い、かつ疎水性最外表面を有する絶縁体層、
第1の感知電極、および
第2の感知電極、を備える、エレクトロウェッティングデバイスと、
制御システムであって、
第1の感知電極および第2の感知電極から電気的測定値を得ること、
電気的測定値を分析すること、次いで、制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って、電気的測定値に基づいて液滴動作を選択すること、および
作動電極に作動信号を印加して、液滴動作をもたらすこと、を行うように構成された、制御システムと、を備える、感知システムを提供する。
【0370】
感知システムの特徴は、本明細書で定義されている通りである。好ましい実施形態では、感知システムは、
活性化電極のアレイを支持する第1の基板と、
絶縁体層の疎水性表面に面し、かつ第1の感知電極および第2の感知電極を支持する第2の基板と、を備える。
【0371】
本発明の感知システムでは、制御システムは、典型的には、本明細書に記載される任意の実施形態による方法を実行するように構成されている。
【0372】
感知システムは、流体媒体または液体媒体の液滴を含む必要はない。むしろ、感知システムは、流体媒体および各々が流体媒体中で液体を含む第1の液滴ならびに第2の液滴であって、液体および流体媒体のうちの一方が、極性であり、液体および流体媒体のうちの他方が、無極性である、流体媒体および第1の液滴ならびに第2の液滴を受け取るように構成され得る。しかしながら、感知システムが使用されているとき、感知システムは、そのような液体および流体媒体を含むであろう。したがって、一態様では、本発明は、上述したような感知システムであって、疎水性表面上に配置された、
流体媒体および各々が流体媒体中で液体を含む第1の液滴ならびに第2の液滴であって、液体および流体媒体のうちの一方が、極性であり、液体および流体媒体のうちの他方が、無極性であり、
第1の液滴および/または第2の液滴が、当該第1の液滴および/または第2の液滴と流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み、
第1の液滴が、液滴界面を介して第2の液滴と接触し、
液滴界面が、両親媒性分子の層および第1の膜貫通細孔を含む、流体媒体および第1の液滴ならびに第2の液滴を含む、感知システムを提供する。
【0373】
第1の液滴、第2の液滴、および存在する場合に第3の液滴は、本明細書で定義される通りである。
【0374】
本発明は、本明細書に記載される任意の実施形態による方法を実行するための、上述したような感知システムの使用をさらに提供する。
【0375】
本発明の第2の態様
別の態様では、本発明は、感知システムを動作させる方法であって、感知システムが、
(i)エレクトロウェッティングデバイスであって、
作動電極のアレイ、
作動電極を覆い、かつ疎水性最外表面を有する絶縁体層、
第1の感知電極、および
すべて本明細書に記載されるような第2の感知電極、を備える、エレクトロウェッティングデバイスと、
(ii)疎水性表面上に配置された、
流体媒体および各々が流体媒体中で液体媒体を含む第1の液滴、第2の液滴、ならびに第3の液滴であって、液体媒体および流体媒体のうちの一方が、極性であり、液体媒体および流体媒体のうちの他方が、無極性であり、
第1の液滴が、液滴界面を介して第2の液滴と接触し、第1の液滴が、液滴界面を介して第3の液滴と接触し、
各液滴界面が、両親媒性分子の層および膜貫通細孔を含み、
任意選択的に、第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴のうちの1つ以上が、液滴自体と流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含む、流体媒体、および第1の液滴、第2の液滴、ならびに第3の液滴と、
(iii)第1の感知電極および第2の感知電極から電気的測定値を得るように、かつ任意選択的に、作動電極のアレイに作動信号を印加するように構成された制御システムと、を備え、
方法が、
a)第1の感知電極および第2の感知電極から電気的測定値を得ることと、
b)(a)で得られた電気的測定値を分析し、第1の液滴と第3の液滴との間の界面に関連して実行する動作を選択することと、を含む、方法を提供する。
【0376】
(ai)で得られる電気的測定値は、第1の液滴と第2の液滴の間の界面に存在する膜貫通細孔に関する。(ai)で得られる電気的測定値は、一般に、電気的測定値であり、通常、第1の液滴または第2の液滴に存在する分析物などの種と当該膜貫通細孔との間の相互作用の検出に関する。
【0377】
(aii)で選択される操作は、例えば、第1の液滴と第3の液滴との間の界面に存在する膜貫通細孔に関して取得される電気的測定値であり得る。その電気的測定値は、本明細書に記載されている通りであり得る。代替的には、(aii)で選択される動作は、分析物などの種を、第1の液滴と第3の液滴との間の界面に存在する膜貫通細孔と接触するように転位させる決定であり得る。
【0378】
この方法は、ステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)を含む、本明細書の他の場所に記載されるような方法をその後に実行することをさらに含み得る。
【0379】
本発明の液滴構造体
本発明の感知システムを使用して、本発明の一部でもある多様な新規な液滴構造体を調製し、および任意選択的に操作し得る。これらの液滴構造体が、以下に記載される。「液滴構造体」とは、流体媒体中に配置された液体媒体の液滴の集合を意味し、液体媒体および流体媒体のうちの一方は、極性であり、他方は、無極性である。好ましくは、液体媒体は、極性である。液体媒体および流体媒体は、本明細書に記載されている通りである。各液滴に存在する液体媒体は、同じであっても異なってもよい。
【0380】
本発明による第1の新規な液滴構造体は、各々が液体媒体を含む第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を含み、
第1の液滴が、分析物を含み、
第2の液滴および第3の液滴が各々、電子メディエータを含み、
第1の液滴が、液滴界面を介して第2の液滴および第3の液滴の各々と接触し、各液滴界面が、両親媒性分子の層を含む。
【0381】
第1の新規な液滴構造体では、第1の液滴と第2の液滴との間の液滴界面、および/または第1の液滴と第3の液滴との間の液滴界面は、複数のイオンチャネルを含み得る。好ましくは、第1の液滴と第3の液滴との間の液滴界面は、複数のイオンチャネル、例えば、少なくとも10個のイオンチャネルを含む。通常、第1の液滴間の液滴界面に存在するイオンチャネルの数は、第1の液滴と第2の液滴との間の液滴界面に存在する膜貫通細孔の数よりも、少なくとも10倍、または少なくとも100倍、または少なくとも1000倍、または少なくとも10,000倍、または少なくとも100,000倍大きい。第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴は、各々独立して、当該液滴と流体媒体との間の界面に配置された両親媒性分子の層を含み得る。
【0382】
本発明による第2の新規な液滴構造体は、各々が液体媒体を含む第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を含み、
第1の液滴が、液滴界面を介して第2の液滴と接触し、この液滴界面が、両親媒性分子の層を含み、
第1の液滴が、液滴界面を介して第3の液滴と接触し、この液滴界面が、両親媒性分子の層を含み、
第1の液滴と第2の液滴との間の液滴界面、および/または第1の液滴と第3の液滴との間の液滴界面が、複数のイオンチャネルを含む。
【0383】
第2の新規な液滴構造体では、第1の液滴は、典型的には、分析物を含む。
【0384】
第2の新規な液滴構造体では、第2の液滴および/または第3の液滴は、典型的には、電子メディエータを含む。
【0385】
第1の新規な液滴構造体および第2の新規な液滴構造体では、第1の液滴と第2の液滴との間の液滴界面は、典型的には、第1の膜貫通細孔を含む。さらに、第1の液滴と第3の液滴との間の液滴界面は、第2の膜貫通細孔を含み得、任意選択的に、第2の膜貫通細孔は、第1の膜貫通細孔とは異なる。
【0386】
本発明による第3の新規な液滴構造体は、各々が液体媒体を含む第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を含み、
第1の液滴が、液滴界面を介して第2の液滴と接触し、この液滴界面が、両親媒性分子の層および第1の膜貫通細孔を含み、
第1の液滴が、液滴界面を介して第3の液滴と接触し、この液滴界面が、両親媒性分子の層および第2の膜貫通細孔を含み、
第1の膜貫通細孔と第2の膜貫通細孔とが、異なる。
【0387】
第3の新規な液滴構造体では、第1の液滴と第2の液滴との間の液滴界面、および/または第1の液滴と第3の液滴との間の液滴界面は、複数のイオンチャネルを含み得る。通常、複数のイオンチャネルを含む液滴界面は、多数(例えば、少なくとも10個または少なくとも100個)のイオンチャネルを含む。複数のイオンチャネルを含む液滴界面は、他の液滴界面に存在する膜貫通細孔の数と比較して、多くの場合、多数のイオンチャネルを包含し、例えば、イオンチャネルの数は、他の液滴界面に存在する膜貫通細孔の数よりも、少なくとも10倍、または少なくとも100倍、または少なくとも1000倍、または少なくとも10,000倍、または少なくとも100,000倍大きい。
【0388】
第3の新規な液滴構造体は、任意選択的に、DNA鎖をさらに含み得る。この実施形態では、DNA鎖は、第1の膜貫通細孔および第2の膜貫通細孔に接触し得る。例えば、DNA鎖は、少なくとも部分的に、第1の膜貫通細孔および第2の膜貫通細孔の両方内にあり得る。
【0389】
本発明の第1の新規な液滴構造体、第2の新規な液滴構造体、または第3の新規な液滴構造体では、第2の液滴と第3の液滴とは、互いに接触してもしなくてもよく、好ましくは、第2の液滴と第3の液滴とは、互いに接触してない。
【0390】
本発明の第1の新規な液滴構造体、第2の新規な液滴構造体、または第3の新規な液滴構造体では、好ましくは、液体媒体は、極性媒体、好ましくは水性媒体である。
【0391】
一実施形態では、本発明の第1の新規な液滴構造体、第2の新規な液滴構造体、または第3の新規な液滴構造体は、無極性流体媒体中に配置される。
【0392】
本明細書で定義されるEWODデバイスと組み合わせた上記の液滴構造体は、本発明のさらなる部分である。
【0393】
また、本発明の一部は、本明細書で定義されるようなEWODデバイスおよび本明細書で定義されるような制御システムを含む、本明細書で定義されるような感知システムと組み合わせた上記の液滴構造体である。
【0394】
したがって、本発明は、第1の液滴または第3の液滴が第1の電極と電気的に接触する、好ましくは当該新規な液滴構造体が、本明細書に記載されるようにEWODデバイスの疎水性表面上に配置されている、上で定義されるような第1の新規な液滴構造体、第2の新規な液滴構造体、または第3の新規な液滴構造体を提供する。
【0395】
本発明はまた、第2の液滴が第2の電極と電気的に接触する、好ましくは当該新規な液滴構造体が、本明細書に記載されるようにEWODデバイスの疎水性表面上に配置されている、上で定義されるような第1の新規な液滴構造体、第2の新規な液滴構造体、または第3の新規な液滴構造体も提供する。
【0396】
上述の新規な液滴構造体は、もちろん、液体媒体の1つ以上のさらなる液滴を含み得る。したがって、本発明は、さらなる液滴を含む、上で定義された第1の新規な液滴構造体、第2の新規な液滴構造体、または第3の新規な液滴構造体を提供し、第1の液滴は、さらなる液滴界面を介してさらなる液滴と接触し、この液滴界面は、両親媒性分子の層を含む。この実施形態の好ましい態様では、さらなる液滴界面は、さらなる膜貫通細孔を含む。
【0397】
上記の新規な液滴構造体では、液滴界面または各液滴界面は、両親媒性分子の二重層を含み得る。
【実施例
【0398】
本発明の装置を使用する方法が、以後に記載される。
【0399】
実施例1:配列の再読み取り
一実施例では、各々が両親媒性分子のコーティングを有する、無極性油媒体に浸漬された水性極性媒体の第1の液滴および第2の液滴は、両親媒性分子の層を含む液滴界面がこの2つの間に形成されるように接続される。この配設が、図14に示されており、第1および第2は、それぞれ「A」および「B」と標示されている。液滴間の二重層に、膜貫通タンパク質(例えば、ナノ細孔)が挿入される。例示的な一態様では、液滴界面は、両親媒性分子の二重層を含み、この実施例の他の態様では、で形成される膜は、ブロックコポリマーの層を含む。最初に、第1の液滴(図14の液滴A)中に分析物が提供される。
【0400】
第1の液滴および第2の液滴(液滴Aおよび液滴B)を、第1の感知電極および第2の感知電極と電気的に接触させる。図に示される第1の感知電極と第2の感知電極との間の電気的接触は、第1の感知電極および第2の感知電極の液滴への投射によって示されている。しかしながら、第1の感知電極および第2の感知電極と液滴との間の直接接触は、必要とされず、実際には、電極は、絶縁層によって電極から分離され得る。第1の電極および第2の電極の各々と電気的に接触する感知電極は、液滴界面を横切るイオン電流の変化の感知を可能にする。このようにして、液滴Aに追加された分析物は、液滴Aと液滴Bとを接続する液滴界面で膜中の膜貫通タンパク質(ナノ細孔とも呼ばれる)によって感知することができる。例えば、分析物は、DNAであり得、このDNAは、接続された感知電極によって設定された印加電圧の力の下でナノ細孔を通ってこのDNAが液滴Aから液滴Bに転位する際に、シーケンシングされる。
【0401】
以下の実施例では、DNAまたはRNAポリヌクレオチドなどの分析物は、以下のように膜液滴界面のナノ細孔によって感知されるため、リアルタイムで監視することができる。
【0402】
第1の実施例1Aでは、第1の液滴(液滴A)に存在する分析物と、第1の液滴と第2の液滴と(AおよびB)の間の液滴界面に存在する膜貫通細孔と、の間の相互作用が、ステップ(a)で検出される。ステップ(b)は、その分析物を受け入れること、それゆえ、分析物をさらなる細孔と接触させることを可能にする液滴動作を選択することを含む。したがって、分析物は、第1の液滴(A)から第2の液滴(B)に通過できるようになる。図14に示されるように、ステップ(c)で実行される液滴動作は、極性媒体の第3の液滴(液滴C)を既存のAおよびBの液滴対と接触させて、液滴Bと液滴Cとの間に新たな液滴界面を形成するステップである。液滴Cは、液滴Cと周囲の無極性流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含んでもよいか、または含まなくてもよい。ナノ細孔は、この新たな液滴界面に挿入され、このことは、液滴Bまたは液滴Cのいずれかに可溶性ナノ細孔があることによって実現できる(液滴界面での膜のナノ細孔の所望の最終配向に依存する)。膜貫通細孔を、高電圧の印加で膜に挿入されるようにする(例えば、全内容が参照により本明細書に組み込まれる、WO2018/096348に記載されているように)。
【0403】
次いで、本発明の方法は、隣りの液滴界面で繰り返される。液滴Cは、以下のことを可能にするために、さらなる感知電極と接触して位置する。第1の液滴と第2の液滴との間の界面で最初に検出された(そして現在液滴Bに移動した)受け入れられた分析物(例えば、特定の遺伝子配列)は、第2の液滴と第3の液滴の間の界面に存在するナノ細孔と相互作用する。したがって、ステップ(a)が繰り返され、この新たな界面での分析物とナノ細孔との間の相互作用は、第2の液滴と第3の液滴との間の界面をわたって適切な電位を印加することによって検出される。第2の液滴と第3の液滴との間の界面に存在するナノ細孔は、第1の液滴と第2の液滴との間のナノ細孔と同じであるか、または異なる。いくつかの場合、第2の液滴界面(第2の液滴と第3の液滴との間)で、第1の液滴界面(第1の液滴と第2の液滴との間)と比較して異なる電圧が使用される。したがって、この方法では、所望の遺伝子配列が、最初に第2の液滴B中に分離され、次いで、異なる界面で読み取られる。
【0404】
別の実施例1Bでは、第1の液滴(液滴A)に存在する分析物と、第1の液滴と第2の液滴と(AおよびB)の間の液滴界面に存在する膜貫通細孔と、の間の相互作用が、ステップ(a)で検出される。電気的測定値は、制御システムによって分析され、拒絶される。したがって、ステップ(a)は、電気的測定値の分析が、所望の分析物が存在することを示すまで繰り返される。感知電極に電圧が印加され、分析物が、液滴Aから液滴Bに通過しないで、液滴Aに保持されることを確保する(典型的には、このことを可能にするために、分析物を帯電させる)。次いで、電気的測定値が、分析物が所望の分析物であることを示すまで、ステップ(a)が繰り返され、次いで、実施例1Aに記載されるようなステップ(b)およびステップ(c)が実行される。
【0405】
実施例2-標的分析物の収集および処理
上で説明したように、方法のステップ(c)では、膜を含む液滴界面を形成するか、または解体することが可能である。このことは、図15に関連して後述するように、標的分析物の検出に応答して行われ得る。
【0406】
図15に示される第1の実施例では、初期の液滴セットアップが、15(I)に示されている。第1の液滴(分析物を含む)は、第2の液滴と接触し、第1の液滴および第2の液滴は、それぞれ第1の感知電極および第2の感知電極(円で終わる線として示される電極)と電気的に接触する。第1の液滴に存在する分析物は、第1の電極と第2の電極との間の界面に存在する第1の膜貫通細孔を介して第1の液滴から第2の液滴に通過する。感知システムは、各々が感知電極と接触する、少なくとも2つのさらなる液滴(CおよびDとして示される)を含む。
【0407】
この実施例では、ステップ(a)で電気的測定が実行され、したがって、ステップ(b)で、標的分析物が液滴B(第2の液滴)中へと通過したと判定される。第2の液滴Bを好適なさらなる液滴Dに運ぶための液滴動作が選択される。ステップ(c)では、この液滴動作は、画像15(II)の矢印によって示されるように、作動電極(図示せず)によってもたらされる。結果として、15(III)に示されるセットアップが形成され、ここで、第2の液滴Bとさらなる液滴Dとの間に界面が形成され、界面は、標的分析物が通過することができる液滴界面を含む。
【0408】
この実施例では、標的分析物は、DNA配列である。この実施例では、液滴Aおよび液滴B、ならびに液滴BおよびS汽笛Dの各々の間の膜は、二重層である。
【0409】
この検出の処理に続く二重層の形成および解体は、必要に応じて繰り返すことができ、いずれの液滴が互いに接続されるかを制御し、および液滴膜をわたる印加電圧を管理するリアルタイムread-untilソフトウェアを使用して鎖の方向を制御して、いずれの鎖を所与の液滴中へと通過させるか、およびいずれのものを以前の液滴中に残すかを制御する。
【0410】
この方法の特定の実施例、実施例2Aでは、この方法は、標的遺伝子パネルが、フィルタリングされ、複雑なゲノムまたはゲノムの混合物から収集される方法である。実施例2Aでは、液滴Aは、N個の異なるパネルを収集することが所望される配列の混合物を含有し、各パネルは、X個の異なる標的配列領域(例えば、遺伝子)を含有する。図15(I)に示されるように、分子が液滴Aから液滴Bに転位する際に、分子のリアルタイム配列を使用すると、所望の標的が、第2の液滴Bに通過する一方、不要な鎖は、拒絶される。個々の鎖の通過または拒絶は、ステップ(a)を数回繰り返すことによって達成され、所望の標的配列が検出されるたびに、第1の感知電極および第2の感知電極に、配列を第2の液滴(B)中へと転位させるための電圧が印加される。しかしながら、不所望な配列が検出されるたびに、第1の感知電極および第2の感知電極に、配列が第2の液滴中へと通過することを妨げるための電圧が印加される。このように、ステップ(a)の繰り返しにより、第1の所望の標的パネルは、第2の液滴である液滴Bに収集される。次いで、第1の液滴と第2の液滴、AとBとの間の液滴界面は、液滴動作によって解体されず、液滴Bは、さらなる処理のために別の場所に移動される。
【0411】
加えて、新たな液滴は、液滴動作によって液滴Aに接続され(図示せず)て、膜および新たな膜貫通細孔を含む新たな液滴界面を形成する。この新たな膜貫通細孔は、第1の標的分析物の収集に関連して記載されるように、異なる標的分析物を収集するために使用され、新たな標的分析物は、セット中の隣りのパネルである。
【0412】
したがって、新たな液滴を液滴Aに接続し、標的分析物をふるい分けするための新たな膜貫通細孔を提供し、続いて、ふるい分けされた標的分析物を液滴(a)から離れるように移動させるために液滴界面を解体することを使用して、各々が異なる所望のパネルを有する多数の出力液滴を作成する。この方法のいくつかの実施形態では、第1の液滴(a)は、ゲノム混合物を含有し、この方法は、さらなる処理のために関心対象のセグメントのみを回収する。
【0413】
実施例3-液滴の融合
上で説明したように、1つの可能な液滴動作は、液滴の融合を伴う。このことが、図16に示されている。
【0414】
初期の液滴セットアップが、図16(I)に示されている。第1の液滴A(分析物を含む)は、第2の液滴Bと接触し、第1の液滴および第2の液滴は、それぞれ第1の感知電極および第2の感知電極(円で終わる線として示される電極)と電気的に接触する。第1の液滴に存在する分析物は、第1の電極と第2の電極との間の界面に存在する第1の膜貫通細孔を介して第1の液滴から第2の液滴に通過する。感知システムは、各々が感知電極と接触する、少なくとも2つのさらなる液滴(CおよびDとして示される)を含む。
【0415】
この実施例では、ステップ(a)は、所望のポリヌクレオチド配列(例えば、関心の遺伝子)が液滴Aから液滴Bに転位したことを示す電気的測定値を得ることを含む。ステップ(b)は、その電気的測定値を分析すること、および所望のポリヌクレオチド配列が液滴Aから液滴Bに通過したと判定することを含み、さらに、次いで液滴Cを液滴Bに融合させることができる液滴動作を選択することをさらに含む。ステップ(c)では、この液滴動作が、実行される。液滴Cを、液滴Bと接触するように、かつさらなる感知電極(液滴Cと接触する円で終わる線によって示される)と接触するように、移動させるために、液滴Cに作動信号が印加される。この配設は、図16(II)に示されている。次いで、BC界面をわたる高印加電圧の短いパルスが、典型的には、図16(III)に見られるように、液滴Bおよび液滴Cを一緒に融合させる第2の感知電極および/またはさらなる感知電極を使用して提供され、液滴Bと液滴Cとを分離する膜は、失われる。融合により、液滴Cの全内容物が、液滴B中へと送達される。液滴Cは、PCRによって標的分子を増幅するために必要な適切な酵素および補因子試薬を含有するため、これらは融合ステップによって液滴(b)の分析物に送達される。液滴B中の関心対象の所望の標的が増幅されると、これらの標的は、液滴Bを、移動させ、かつ必要に応じてさらなる液滴に接続することによって、必要に応じて処理またはシーケンシングされる。このことは、特異的なDNA標的を増幅するための有用な手段である。
【0416】
実施例4-浸透:
上で説明したように、液滴動作が、異なる浸透ポテンシャルの2つの液滴を接続することを伴ういくつかの実施形態では、液滴のうちの1つで内容物を希釈するか、または濃縮することが可能である。
【0417】
そのような方法の実施例が、図17に示されている。初期の液滴セットアップが、図17(I)に示されている。第1の液滴A(分析物を含む)は、第2の液滴Bと接触し、第1の液滴および第2の液滴は、それぞれ第1の感知電極および第2の感知電極(円で終わる線として示される電極)と電気的に接触する。第1の液滴に存在する分析物は、第1の電極と第2の電極との間の界面に存在する第1の膜貫通細孔を介して第1の液滴から第2の液滴に通過する。感知システムは、さらなる液滴(Cとして示される)を含む。
【0418】
第1の実施例、4Aでは、分析物は、DNAサンプルである。所望のポリヌクレオチドと呼ばれる、DNAサンプルの中の所望の鎖は、これらの鎖が第1の膜貫通細孔と相互作用するときに、DNA配列のリアルタイム監視によってAからBに通過する。上述したように、ステップ(a)は、第1の液滴から第2の液滴への所望のポリヌクレオチドの転位を示す、第1の電極と第2の電極との間にわたる電気的測定値を得ることを含む。電気的測定値を分析して、検出された種が所望のポリヌクレオチドであるかどうかを判定し、そうである場合、鎖を液滴A中へと通過させ、そうでない場合、鎖を液滴Bに戻す。このことは、AとBとの間の界面をわたって好適な電圧を印加することによって実現することができる。この実施例では、分析物は、大きなゲノムバックグラウンド、またはDNAバックグラウンドにおけるRNAを含有する。ステップ(a)が1回以上繰り返された後、ステップ(b)が実行される。このステップでは、ステップ(a)で取得された電気的測定の分析によって、所望のポリヌクレオチドが液滴Bに収集され、かつ第3の液滴(液滴C)を液滴Bに接続することができる液滴動作が選択されると判定される。方法4Aの一態様では、また、ステップ(b)は、液滴Bと液滴Aとを分離する液滴動作を選択することを含むが、この態様は図17には示されていない。選択された液滴動作は、液滴Cを液滴Bと接触するように移動させ、図17(II)に示されるように、液滴Bと液滴Cとの間に両親媒性分子の二重層を含む新たな液滴界面を形成する。感知システムは、異なる浸透ポテンシャルを有する異なる液滴のプールを含む(図示せず)。しかしながら、液滴Cは、浸透によって液滴Bの条件を変更するための、液滴Bに対する適切な浸透ポテンシャルを有するため、液滴Cが選択される。この実施例では、BはCよりも低い塩濃度(より低い浸透ポテンシャル)を有するため、図17(III)に示されるようにBとCとが接続されると、液滴Bは、液滴Cに水を失うことによって収縮する。このようにして、所望のポリヌクレオチドを含む、液滴Bに存在する種が、濃縮される。この方法は、Bが十分に濃縮されていることが検出されると、液滴動作を選択して実行して、液滴Bを別の液滴と接触させることをさらに含む。この実施例の一態様では、Bと別の液滴との間に形成される液滴界面は、膜貫通細孔を含み、所望のポリヌクレオチドの相互作用が、感知目的で検出される。
【0419】
別の実施例、4Bが実行される。4Bは、液滴Bが液滴Cよりも高いイオン濃度(より高い浸透ポテンシャル)を有するという点で4Aとは異なり、それゆえ、それらを液滴Cに接触させると、液滴Bの内容物を希釈する。
【0420】
実施例5-メディエータの補充:
多くのナノ細孔感知用途では、例えばDNAまたはRNAのナノ細孔シーケンシングのために、電気化学メディエータ(例えば、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム対)を分析物から分離することが有利である。電気化学メディエータは、酵素モータとの反応などの、シーケンシング化学との不要な反応を起こす可能性がある。
【0421】
図18は、液滴界面二重層によって接続された別個の液滴を使用して電気化学メディエータを分離する方法を示している。図18では、液滴Aおよび液滴Cは両方とも電気化学メディエータを含有する。液滴Bは、シーケンシング用のDNAまたはRNAを含有し、ナノ細孔を介して液滴Bと液滴Cとの界面でシーケンシングされる。液滴Aおよび液滴Cは、イオン電流の変化を検出してDNAをシーケンシングする目的で、電極(例えば、プラチナ)に接続される。液滴Aから液滴Bへのイオン電流の通過を可能にするために、液滴Aと液滴Bとの間の界面は、非常に多数のナノ細孔を含有する。液滴Aと液滴Bとの間の界面に多数のナノ細孔があると、ネットワークのこの位置での電気抵抗が減少し、電極間に電流が流れることが可能になって、液滴Bと液滴Cとの間の界面での感知が可能になる。
【0422】
液滴Aと液滴Bとの間の界面に挿入されるこのタイプおよび数のナノ細孔を使用して、回路のこの位置での抵抗を制御する。大きな直径を有するナノ細孔(例えば、>2nm)を使用して、大量の電流を自由に流せるようにすることができる。
【0423】
代替的には、小さな膜貫通細孔(例えば、直径が<2nm)を使用して、イオン選択性を制御する、例えば、不要なイオン種が膜を通過することを妨げることができる。特に、膜を通過することに由来して損傷を与えるフェロシアン化物/フェリシアニド種の流れは、大きなイオンを通過させるには狭すぎるナノ細孔、または中央チャネルに負電荷を有するナノ細孔を使用することによって、通過に対する静電障壁を作成する。
【0424】
複数界面ネットワークにおいて、ナノ細孔がいずれの膜に挿入されるかを制御することは、膜界面が形成される順序を制御すること、所望の膜界面をわたって大きな電圧を印加すること、またはいずれの液滴がナノ細孔を含有するかを制御することによって達成される。したがって、多数の「フリット」ナノ細孔は、液滴Aにのみナノ細孔を含めることによって、液滴Aと液滴Bとの界面に挿入される。同じく、液滴Bが感知ナノ細孔(例えば、DNAシーケンシング用)を含有することを確保することによって、感知ナノ細孔は、液滴Bと液滴Cとの間の界面に挿入される。
【0425】
ネットワーク全体にわたるメディエータ濃度の変化は、メディエータがある種から別の種に反応する際の化学ポテンシャルの変化から生じる電圧の変化を監視することによって、検出される。このようにして、長い実験中にメディエータが枯渇したことを検出することが可能である。メディエータが枯渇すると、液滴A中の条件が調整されて、メディエータをリフレッシュする。新鮮なメディエータを含有する新たな液滴が接続されて、液滴Aに融合される(図5Bおよび図5C)。代替的には、液滴Aを液滴Bから離れるように移動させ、液滴界面二重層を解体し、新鮮なメディエータを含有する新たな液滴Aを液滴Aに接続する(イオン流を可能にするために界面に挿入する新鮮なナノ細孔も含有する)。
【0426】
代替的には、メディエータを液滴Cに含めずに、第4の液滴Dに分離し、フリット様のナノ細孔界面によって接続されてネットワークA-B-C-Dを作成し、ここで、AおよびDは、メディエータを含有し、Bは、分析物を含有し、ナノ細孔センサは、液滴Bと液滴Cとの間の界面中にある。このネットワークでは、感知が、メディエータが枯渇したことを検出するのであれば、Aメディエータ液滴は、除去され、および置き換えられ、感知液滴BおよびCには影響が及ばない。同様に、感知が、メディエータが枯渇したことを検出するのであれば、Dメディエータ液滴は、除去され、および置き換えられ、感知液滴BおよびCには影響が及ばない。
【0427】
さらなる情報
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で引用される刊行物およびそれらが引用される資料は、参照により明確に組み込まれる。
【0428】
本発明は、特定の実施形態に関して、および特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲のいかなる参照符号も、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。もちろん、必ずしもすべての態様または利点が本発明の特定の実施形態に従って達成されるわけではないことを理解されたい。したがって、例えば、当業者は、本明細書で教示または示唆され得る他の態様または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの利点または利点のグループを達成または最適化する方法で本発明を具体化または実施することができることを認識するであろう。
【0429】
本発明は、組織および動作方法の両方に関して、その特徴および利点とともに、添付の図面と併せて上述の詳細な説明を参照することによって最もよく理解され得る。本発明の態様および利点は、以下に記載される実施形態(複数可)を参照して明らかになり、解明されるであろう。本明細書を通して「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所での「一実施形態では」または「実施形態では」という句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指すとは限らないが、そうであってもよい。同様に、本発明の例示的な実施形態の説明では、本発明の様々な特徴が、単一の実施形態、図、またはその説明にまとめられて、開示を簡素化し、様々な発明的態様のうちの1つ以上の理解を支援することを目的とする場合があることを理解されたい。しかしながら、この開示方法は、特許請求された発明が各特許請求項に明示的に列挙されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明的態様は、単一の前述の開示された実施形態のすべての特徴にあるわけではない。
【0430】
さらに、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に示さない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド」への言及は2つ以上のポリヌクレオチドを含み、「ポリヌクレオチド結合タンパク質」への言及は2つ以上のかかるタンパク質を含み、「ヘリカーゼ」への言及は2つ以上のヘリカーゼを含み、「モノマー」への言及は2つ以上のモノマーを指し、「細孔」への言及は2つ以上の細孔などを含む。
【0431】
当業者は、本明細書に記載された本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識し、または日常実験にすぎないことを使用して確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。

本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.感知システムを動作させる方法であって、前記感知システムが、
(i)エレクトロウェッティングデバイスであって、
作動電極のアレイ、
前記作動電極を覆い、かつ疎水性最外表面を有する絶縁体層、
第1の感知電極、および
第2の感知電極、を備える、エレクトロウェッティングデバイスと、
(ii)前記疎水性表面上に配置された、
流体媒体および各々が前記流体媒体中で液体媒体を含む第1の液滴ならびに第2の液滴であって、前記液体媒体および前記流体媒体のうちの一方が、極性であり、前記液体媒体および前記流体媒体のうちの他方が、無極性であり、
前記第1の液滴および/または前記第2の液滴が、前記第1の液滴および/または前記第2の液滴と前記流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み、
前記第1の液滴が、液滴界面を介して前記第2の液滴と接触し、
前記液滴界面が、両親媒性分子の層および第1の膜貫通細孔を含む、流体媒体および第1の液滴ならびに第2の液滴と、
(iii)前記第1の感知電極および前記第2の感知電極から電気的測定値を得るように、かつ前記作動電極のアレイに作動信号を印加するように構成された制御システムと、を備え、
前記方法が、
a)前記第1の感知電極および前記第2の感知電極から電気的測定値を得ることと、
b)前記電気的測定値を分析し、次いで、前記制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って、前記電気的測定値に基づいて液滴動作を選択することと、
c)作動電極に作動信号を印加して、前記液滴動作をもたらすことと、を含む、方法。
2.前記第1の液滴および前記第2の液滴が各々、前記液体媒体と前記流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含む、上記1に記載の方法。
3.前記第1の液滴が、液滴界面を介して液体媒体の第3の液滴と接触し、前記第1の液滴と前記第3の液滴との間の前記液滴界面が、両親媒性分子の層を含む、上記1または2に記載の方法。
4.前記第2の液滴がまた、液滴界面を介して前記第3の液滴とも接触し、前記第2の液滴と前記第3の液滴との間の前記液滴界面が、両親媒性分子の層を含む、上記3に記載の方法。
5.前記第3の液滴と前記第2の液滴とが互いに接触しない、上記3に記載の方法。
6.前記第1の液滴がまた、さらなる液滴界面を介して液体媒体の1つ以上のさらなる液滴とも接触し、前記さらなる液滴界面が、両親媒性分子の層を含む、上記1~5に記載の方法。
7.前記液滴界面または各液滴界面が、両親媒性分子の二重層を含む、上記1~6のいずれかに記載の方法。
8.前記液滴界面のうちの1つ以上が、膜貫通細孔を含む、上記3~7のいずれかに記載の方法。
9.前記液滴界面のうちの1つ以上が、複数のイオンチャネル、例えば少なくとも10個のイオンチャネルを含む、上記1~8のいずれかに記載の方法。
10.複数のイオンチャネルを含む前記液滴界面が、前記第1の液滴と接触する、上記10に記載の方法。
11.前記第1の液滴が、分析物を含む、上記1~10のいずれかに記載の方法。
12.前記第2の液滴が、電子メディエータを含む、上記1~11のいずれかに記載の方法。
13.前記第1の液滴が、電子メディエータを含む、上記1~12のいずれかに記載の方法。
14.前記システムが、液体媒体の第3の液滴を含み、前記第3の液滴が、電子メディエータを含む、上記1~13のいずれかに記載の方法。
15.前記第2の液滴、および存在する場合に前記第3の液滴が、分析物を実質的に含まない、上記1~14のいずれかに記載の方法。
16.前記第1の液滴、前記第2の液滴、および存在する場合に前記第3の液滴、のうちの1つ以上が、1nL未満の体積を有する、上記1~15のいずれかに記載の方法。
17.前記第1の液滴、前記第2の液滴、および存在する場合に前記第3の液滴が各々、1nL未満の体積を有する、上記1~16のいずれかに記載の方法。
18.ステップ(a)が、前記第1の膜貫通細孔と分析物との間の相互作用を検出することを含む、上記1~17のいずれかに記載の方法。
19.前記第1の液滴(または存在する場合に任意選択的に前記第3の液滴)が、前記第1の感知電極と電気的に接触し、前記第2の液滴が、前記第2の感知電極と電気的に接触する、上記1~18のいずれかに記載の方法。
20.ステップ(a)が、前記第1の感知電極と前記第2の感知電極との間を流れる電流を検出することを含む、上記1~19のいずれかに記載の方法。
21.前記第1の感知電極および前記第2の感知電極が、前記作動電極のアレイの中の電極である、上記1~20のいずれかに記載の方法。
22.前記エレクトロウェッティングデバイスが、
活性化電極のアレイを支持する第1の基板と、
前記絶縁体層の前記疎水性表面に面し、かつ前記第1の感知電極および前記第2の感知電極を支持する第2の基板と、を備える、上記1~20のいずれかに記載の方法。
23.ステップ(a)が、1回以上繰り返される、上記1~22のいずれかに記載の方法。
24.ステップ(a)が、分析物と前記第1の膜貫通細孔との前記相互作用を検出することを含み、ステップ(b)が、前記分析物を全体的または部分的に同定することを含む、上記1~23のいずれかに記載の方法。
25.前記分析物が、ポリヌクレオチドを含み、ステップ(b)が、ポリヌクレオチド配列に存在する2つ以上のヌクレオチドの同一性を判定することを含む、上記1~24のいずれかに記載の方法。
26.ステップ(b)が、前記電気的測定値を、前記制御システムによって記憶された値と比較することを含む、上記1~25のいずれかに記載の方法。
27.ステップ(b)が、前記制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って、前記電気的測定値と前記記憶された値との間の前記比較に基づいて液滴動作を選択することをさらに含む、上記26に記載の方法。
28.ステップ(a)が1回以上繰り返されて、複数の電気的測定値を得、ステップ(b)が、前記複数の電気的測定値の中の1つ以上の電気的測定値を、前記複数の電気的測定値の中の1つ以上の他の電気的測定値と比較することを含む、上記1~27のいずれかに記載の方法。
29.ステップ(a)が複数回繰り返されて複数の電気的測定値を得、
ステップ(b)が、
前記複数の電気的測定値の中で、前記電気的測定値のうちの1つ以上を他の電気的測定値のうちの1つ以上と比較すること、
経時的に検出される前記電気的測定値の変移を判定すること、および
前記電気的測定値の前記変移を元に戻すために液滴動作を選択することを含む、上記28に記載の方法。
30.ステップ(b)が、前記第1の液滴および/または前記第2の液滴および/または存在する場合に前記第3の液滴の物理的特性または化学的特性を判定することを含む、上記1~29のいずれかに記載の方法。
31.ステップ(b)が、前記第1の液滴および/または前記第2の液滴および/または存在する場合に前記第3の液滴の前記物理的特性または前記化学的特性を改変または維持するために液滴動作を選択することをさらに含む、上記30に記載の方法。
32.ステップ(b)が、前記第1の液滴および/または前記第2の液滴および/または存在する場合に前記第3の液滴のイオン濃度を判定することを含む、上記1~31のいずれかに記載の方法。
33.ステップ(b)が、前記第1の液滴および/または前記第2の液滴および/または存在する場合に前記第3の液滴のイオン濃度を増加または減少させるために液滴動作を選択することを含む、上記1~32のいずれかに記載の方法。
34.前記イオン濃度が、電子メディエータ種の濃度である、上記32または33に記載の方法。
35.ステップ(b)が、前記第1の液滴中に分析物が存在するかどうかを確立すること、または前記第1の液滴中の分析物の濃度を判定することを含む、上記1~34のいずれかに記載の方法。
36.ステップ(b)が、前記第1の液滴中に存在する分析物の品質を判定することを含む、上記1~35のいずれかに記載の方法。
37.ステップ(b)が、前記第1の液滴を保持するか、または廃棄するかを決定することを含む、上記1~36のいずれかに記載の方法。
38.ステップ(b)が、前記第1の液滴に対して実施するさらなる実験手順を選択すること、および液滴動作を選択して、前記第1の液滴を1つ以上の液滴と接触させて、その実験を実施することができるようにすることを含む、上記1~37のいずれかに記載の方法。
39.ステップ(c)が、ステップ(b)の後に自動的に実行される、上記1~38のいずれかに記載の方法。
40.ステップ(c)が、前記疎水性表面上で液体媒体の被作動液滴を移動させることを含む、上記1~39のいずれかに記載の方法。
41.前記被作動液滴が、前記第1の液滴または前記第2の液滴または存在する場合に前記第3の液滴である、上記40に記載の方法。
42.ステップ(c)が、液滴界面における前記被作動液滴を、液体媒体のさらなる液滴から分離することを含み、このさらなる液滴が、前記第1の液滴、前記第2の液滴、または存在する場合に前記第3の液滴であり得、前記液滴界面が、両親媒性分子の層を含む、上記40または41に記載の方法。
43.ステップ(c)が、複数の液滴界面における前記被作動液滴を、液体媒体の複数のさらなる液滴から分離することを含み、このさらなる液滴が、前記第1の液滴、前記第2の液滴、または存在する場合に前記第3の液滴を含み得、前記液滴界面の各々が、両親媒性分子の層を含む、上記40~42のいずれかに記載の方法。
44.前記1つ以上の液滴界面が各々、両親媒性分子の二重層を含み、ステップ(c)が、前記二重層を分離することを含む、上記40~43のいずれかに記載の方法。
45.ステップ(c)が、前記被作動液滴を液体媒体のさらなる液滴と接触させて液滴界面を形成することを含み、このさらなる液滴が、前記第1の液滴、前記第2の液滴、または存在する場合に前記第3の液滴であり得る、上記40または41に記載の方法。
46.ステップ(c)が、前記被作動液滴を液体媒体の複数のさらなる液滴と接触させて、複数の液滴界面を形成することを含み、このさらなる液滴が、前記第1の液滴、前記第2の液滴、または存在する場合に前記第3の液滴を含み得る、上記45に記載の方法。
47.前記1つ以上の液滴界面が各々、両親媒性分子の層を含む、上記45または46に記載の方法。
48.前記1つ以上の液滴界面が各々、両親媒性分子の二重層を含み、ステップ(c)が、前記二重層を形成することを含む、上記47に記載の方法。
49.ステップ(c)が、上記32~44のいずれかに従って液滴界面における前記被作動液滴を分離すること、および前記被作動液滴を、上記45~48で定義されるような液体媒体のさらなる液滴と接触させることを含む、上記40または41に記載の方法。
50.ステップ(c)が、前記被作動液滴を液体媒体のさらなる液滴と融合させることを含み、このさらなる液滴が、前記第1の液滴、前記第2の液滴、または存在する場合に前記第3の液滴であり得る、上記40または41に記載の方法。
51.前記被作動液滴が、両親媒性分子の外層を含まない、上記50に記載の方法。
52.前記被作動液滴が、電子メディエータを含む、上記50または上記51に記載の方法。
53.前記被作動液滴が、分析物を含む、上記50~52のいずれかに記載の方法。
54.前記被作動液滴が、実験基質を含む、上記50~53のいずれかに記載の方法。
55.ステップ(c)が、前記第1の液滴または前記第2の液滴または存在する場合に前記第3の液滴を、2つ以上の部分に分割することを含む、上記1~39のいずれかに記載の方法。
56.ステップ(c)が、前記第1の液滴または前記第2の液滴または存在する場合に前記第3の液滴を、2つの部分に分割することを含む、上記55に記載の方法。
57.ステップ(c)の間に前記第1の液滴を移動させない、上記1~56のいずれかに記載の方法。
58.上記1~57のいずれかに記載の感知システムを動作させる方法であって、前記感知システムが、
(i)エレクトロウェッティングデバイスであって、
作動電極のアレイ、
前記作動電極を覆い、かつ疎水性最外表面を有する絶縁体層、
第1の感知電極、および
第2の感知電極、を備える、エレクトロウェッティングデバイスと、
(ii)前記疎水性表面上に配置された、
無極性流体媒体、
極性液体媒体を含む第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴であって、
前記第1の液滴および/または前記第2の液滴および/または前記第3の液滴が、前記第1の液滴および/または前記第2の液滴および/または前記第3の液滴と前記流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み、
前記第1の液滴が、液滴界面を介して前記第2の液滴と接触し、液滴界面を介して前記第3の液滴と接触し、
各液滴界面が、両親媒性分子の層を含み、
少なくとも前記第1の液滴と前記第2の液滴との間の界面が、膜貫通細孔を含み、
前記第1の液滴が、分析物を含み、
前記第2の液滴および前記第3の液滴が、電子メディエータを含み、
前記第2の液滴および前記第3の液滴が、それぞれ前記第2の感知電極および前記第1の感知電極と電気的に接触する、無極性流体媒体、第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴と、
(iii)前記第1の感知電極および前記第2の感知電極から電気的測定値を得るように、かつ前記作動電極のアレイに作動信号を印加するように構成された制御システムと、を備え、
前記方法が、
a)前記第1の感知電極および前記第2の感知電極から電気的測定値を得ることと、
b)前記電気的測定値を分析すること、および次いで、前記制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って、前記電気的測定値に基づいて液滴動作を選択することと、
c)作動電極に作動信号を印加して、前記液滴動作をもたらすことと、を含む、方法。
59.前記液滴動作が、前記第1の液滴を移動させること、および前記第1の液滴を前記第2の液滴および/または前記第3の液滴から分離することを含む、上記58に記載の方法。
60.前記方法が、分析物を含むさらなる液滴を前記第2の液滴および前記第3の液滴と接触するように移動させて、前記第2の液滴および前記第3の液滴の各々と前記さらなる液滴との間の液滴界面を形成することをさらに含み、各液滴界面が、両親媒性分子の層を含む、上記59に記載の方法。
61.前記液滴動作が、前記第2の液滴および/または前記第3の液滴を移動させて、前記第2の液滴および/または前記第3の液滴を前記第1の液滴から分離することを含む、上記58に記載の方法。
62.前記液滴動作が、前記第2の液滴および/または前記第3の液滴を、分析物を含むさらなる液滴と接触するように移動させて、前記第2の液滴および/または前記第3の液滴と前記さらなる液滴との間の液滴界面を形成することをさらに含み、前記界面(複数可)が、両親媒性分子の層を含む、上記61に記載の方法。
63.前記方法が、第4の液滴および任意選択的にまた第5の液滴を、前記第1の液滴と接触するように移動させて、前記第4の液滴および存在する場合に前記第5の液滴と前記第1の液滴との間の液滴界面を形成することをさらに含み、前記液滴界面(複数可)が、両親媒性分子の層を含む、上記62に記載の方法。
64.前記第4の液滴および存在する場合に任意選択的にまた前記第5の液滴が、電子メディエータを含む、上記63に記載の方法。
65.前記方法が、前記第1の液滴を回収することを含む、上記1~64のいずれかに記載の方法。
66.前記方法が、分析物を含む実質的にすべての液滴を回収することを含む、上記1~65のいずれかに記載の方法。
67.ステップ(a)が、分析物が前記細孔に対して移動するように前記第1の膜貫通細孔を前記分析物と接触させること、および前記分析物が前記細孔に対して移動する際に1つ以上の電気的測定値を得ることを含み、
前記方法が、前記分析物の存在、不在、または1つ以上の特性を判定することをさらに含む、上記1~66のいずれかに記載の方法。
68.ステップ(b)が、前記分析物の1つ以上の特徴の前記存在または前記不在を判定することを含み、任意選択的に、ステップ(b)が、前記分析物の前記存在、または前記不在、または前記1つ以上の特性に基づいて、前記第1の液滴を保持するか、または廃棄するかを判定することをさらに含む、上記67に記載の方法。
69.前記分析物が、ポリヌクレオチドである、上記67または68に記載の方法。
70.前記特徴が、(i)前記ポリヌクレオチドの長さ、(ii)前記ポリヌクレオチドの同一性、(iii)前記ポリヌクレオチドの配列、(iv)前記ポリヌクレオチドの二次構造、および(v)前記ポリヌクレオチドが修飾されているか否か、のうちの1つ以上である、上記69に記載の方法。
71.上記1~70のいずれかに記載の感知システムを動作させる方法であって、前記感知システムが、
-エレクトロウェッティングデバイスであって、
作動電極のアレイ、
前記作動電極を覆い、かつ疎水性最外表面を有する絶縁体層、
第1の感知電極、および
第2の感知電極、を備える、エレクトロウェッティングデバイスと、
-前記疎水性表面上に配置された、
無極性流体媒体、
前記流体媒体中で極性液体を含む第1の液滴、第2の液滴、および任意選択的に第3の液滴であって、
前記第1の液滴および/または前記第2の液滴が、前記第1の液滴および/または前記第2の液滴と前記流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み、
前記第1の液滴が、液滴界面を介して前記第2の液滴と接触するか、または前記第3の液滴および前記第2の液滴が各々、液滴界面を介して前記第1の液滴と接触し、
前記液滴界面または各液滴界面が、両親媒性分子の層を含み、
前記液滴界面のうちの少なくとも1つが、膜貫通細孔を含み、
前記第1の液滴が、分析物を含み、
前記液滴のうちの1つ、任意選択的に前記第2の液滴が、電子メディエータを含み、
前記第1の液滴、または存在する場合に任意選択的に前記第3の液滴が、前記第1の感知電極と電気的に接触し、
前記第2の液滴が、前記第2の感知電極と電気的に接触する、無極性流体媒体、第1の液滴、第2の液滴、および任意選択的に第3の液滴と、
-前記第1の感知電極および前記第2の感知電極から電気的測定値を得るように、かつ前記作動電極のアレイに作動信号を印加するように構成された制御システムと、を備え、
前記方法が、
a)前記第1の電極および前記第2の電極から電気的測定値を得、このステップを複数回繰り返して複数の電気的測定値を得ることと、
b)前記複数の電気的測定値の中で、前記電気的測定値のうちの1つ以上を他の電気的測定値のうちの1つ以上と比較すること、前記液滴中の、任意選択的に前記第2の液滴中の、電子メディエータの損失に帰属する、経時的に検出された前記電気的測定値の変移を判定すること、および液滴動作を選択して、その液滴中の、任意選択的に前記第2の液滴中の、電子メディエータの濃度を増加させることと、
c)作動電極に作動信号を印加して、前記液滴動作をもたらすことと、を含む、方法。
72.前記液滴動作が、流体媒体の被作動液滴を前記疎水性表面上で移動させ、前記被作動液滴を、任意選択的に前記第2の液滴である、前記電子メディエータを含む前記液滴と融合させることであって、前記被作動液滴が、電子メディエータを含む、融合させること、または(b)前記電子メディエータを含む前記液滴を前記第1の感知電極または前記第2の感知電極との接触から外れるように移動させ、新鮮な電子メディエータを含む新たな液滴を前記第1の感知電極または前記第2の感知電極と電気的に接触するように移動させることを含む、上記71に記載の方法。
73.前記電子メディエータが、Fe 3+ を含む、上記71または72に記載の方法。
74.上記1~73のいずれかに記載の感知システムを動作させる方法であって、前記感知システムが、前記エレクトロウェッティングデバイスの前記疎水性表面上に配置された、
無極性流体媒体、
極性液体媒体を含む第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を備え、
前記第1の液滴および/または前記第2の液滴および/または前記第3の液滴が、前記第1の液滴および/または前記第2の液滴および/または前記第3の液滴と前記流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み、
前記第1の液滴が、液滴界面を介して前記第2の液滴と接触し、前記液滴界面が、両親媒性分子の層および第1の膜貫通細孔を含み、
前記第3の液滴が、別の液滴界面を介して前記第1の液滴または前記第2の液滴と接触し、前記別の液滴界面が、両親媒性分子の層および第2の膜貫通細孔を含み、
前記第1の液滴が、分析物を含む、方法。
75.前記第2の膜貫通細孔が、前記第1の膜貫通細孔とは異なる、上記74に記載の方法。
76.前記電気的測定値が、前記分析物と前記第1の膜貫通細孔および/または前記第2の膜貫通細孔との相互作用を示す電気的測定値である、上記74または75に記載の方法。
77.ステップ(b)が、前記分析物が前記第1の膜貫通細孔と相互作用したと判定することを含む、上記74~76のいずれかに記載の方法。
78.ステップ(b)が、前記分析物が前記第2の膜貫通細孔と相互作用したと判定することを含む、上記74~77のいずれかに記載の方法。
79.ステップ(b)が、前記分析物が同時に前記第1の膜貫通細孔および前記第2の膜貫通細孔と相互作用したと判定することを含む、上記74~78のいずれかに記載の方法。
80.前記分析物が、一本鎖のDNAである、上記74~79のいずれかに記載の方法。
81.ステップ(b)で選択され、かつステップ(c)で実行される前記液滴動作が、前記第1の液滴を前記第2の液滴および/または前記第3の液滴から分離するために、前記第1の液滴、前記第2の液滴、および前記第3の液滴のうちの1つ以上を移動させることを含む、上記74~80のいずれかに記載の方法。
82.前記方法が、前記第1の液滴をさらなる液滴と接触させ、前記さらなる液滴が、両親媒性分子の層およびさらなる膜貫通タンパク質を含む液滴界面を介して前記第1の液滴と接触するようにすることをさらに含む、上記74~81のいずれかに記載の方法。
83.前記第1の液滴が、一本鎖のDNAを含有する、上記74~82のいずれかに記載の方法。
84.処理が、前記感知システムに原サンプルを提供する最初のステップを含む、上記1~83のいずれかに記載の方法。
85.前記最初のステップが、前記感知システム内で前記サンプルを調製することをさらに含む、上記84に記載の方法。
86.前記方法が、前記分析物を回収する後続のステップを含む、上記1~85のいずれかに記載の方法。
87.前記感知システムが、
前記疎水性表面上に配置された、前記流体媒体、および上記1で定義されるような前記第1の液滴および前記第2の液滴を含む第1の液滴系と、
また、前記疎水性表面上に配置された、上記1で定義されるような別の第1の液滴および別の第2の液滴を含む第2の液滴系と、を備え、
前記方法が、前記第1の液滴系に対しておよび前記第2の液滴系に対して、同時にステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)を実行することを含む、上記1~86のいずれかに記載の方法。
88.前記第1の液滴系に対して実行されるステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)のうちの1つ以上が、前記第2の液滴系に対して実行されるステップ(a)、ステップ(b)、およびステップ(c)のうちの1つ以上とは異なる、上記87に記載の方法。
89.感知システムを動作させる方法であって、前記感知システムが、
(i)エレクトロウェッティングデバイスであって、
作動電極のアレイ、
前記作動電極を覆い、かつ疎水性最外表面を有する絶縁体層、
第1の感知電極、および
第2の感知電極、を備える、エレクトロウェッティングデバイスと、
(ii)前記疎水性表面上に配置された、
無極性流体媒体、
各々が前記流体媒体中で極性液体を含む第1の液滴、第2の液滴、第3の液滴、および第4の液滴であって、
前記第1の液滴、前記第2の液滴、前記第3の液滴、および/または前記第4の液滴が、前記第1の液滴、前記第2の液滴、前記第3の液滴、および/または前記第4の液滴と前記流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み、
前記第3の液滴が、液滴界面を介して前記第1の液滴と接触し、前記第1の液滴が、別の液滴界面を介して前記第2の液滴と接触し、前記第2の液滴が、さらに別の液滴界面を介して前記第4の液滴と接触し、
各液滴界面が、両親媒性分子の層を含み、
前記第1の液滴と前記第2の液滴との間の前記液滴界面が、第1の膜貫通細孔を含み、
前記第1の液滴と前記第3の液滴との間の前記液滴界面が、イオンチャネルである複数のさらなる膜貫通細孔を含み、
前記第2の液滴と前記第4の液滴との間の前記液滴界面もまた、イオンチャネルである複数のさらなる膜貫通細孔を含み、
前記第1の液滴が、分析物を含み、
前記第3の液滴および前記第4の液滴が、電子メディエータを含み、
前記第3の液滴が、前記第1の感知電極と電気的に接触し、
前記第4の液滴が、前記第2の感知電極と電気的に接触する、無極性流体媒体、第1の液滴、第2の液滴、第3の液滴、および第4の液滴と、
(iii)前記第1の感知電極および前記第2の感知電極から電気的測定値を得るように、かつ前記作動電極のアレイに作動信号を印加するように構成された制御システムと、を備え、
前記方法が、
a)前記第1の電極および前記第2の電極から電気的測定値を得、このステップを複数回繰り返して複数の電気的測定値を得ることと、
b)前記複数の電気的測定値の中で、前記電気的測定値のうちの1つ以上を他の電気的測定値のうちの1つ以上と比較すること、前記第3の液滴または前記第4の液滴中の電子メディエータの損失に帰属する、経時的に検出された前記電気的測定値の変移を判定すること、および液滴動作を選択して、その液滴中の、電子メディエータの濃度を増加させることと、
c)作動電極に作動信号を印加して、前記液滴動作をもたらすことと、を含む、方法。
90.感知システムであって、
エレクトロウェッティングデバイスであって、
作動電極のアレイ、
前記作動電極を覆い、かつ疎水性最外表面を有する絶縁体層、
第1の感知電極、および
第2の感知電極、を備える、エレクトロウェッティングデバイスと、
制御システムであって、
前記第1の感知電極および前記第2の感知電極から電気的測定値を得ること、
前記電気的測定値を分析すること、次いで、前記制御システムに記憶された1つ以上の命令に従って、前記電気的測定値に基づいて液滴動作を選択すること、および
作動電極に作動信号を印加して、前記液滴動作をもたらすこと、を行うように構成された、制御システムと、を備える、感知システム。
91.前記感知システムが、
活性化電極のアレイを支持する第1の基板と、
前記絶縁体層の前記疎水性表面に面し、かつ前記第1の感知電極および前記第2の感知電極を支持する第2の基板と、を備える、上記90に記載の感知システム。
92.前記制御システムが、上記1~89のいずれかに記載の方法を実行するように構成されている、上記90または上記91に記載の感知システム。
93.前記疎水性表面上に配置された、
流体媒体および各々が前記流体媒体中で液体を含む第1の液滴ならびに第2の液滴であって、前記液体および前記流体媒体のうちの一方が、極性であり、前記液体および前記流体媒体のうちの他方が、無極性であり、
前記第1の液滴および/または前記第2の液滴が、前記第1の液滴および/または前記第2の液滴と前記流体媒体との間の界面に両親媒性分子の層を含み、
前記第1の液滴が、液滴界面を介して前記第2の液滴と接触し、
前記液滴界面が、両親媒性分子の層および第1の膜貫通細孔を含む、流体媒体および第1の液滴ならびに第2の液滴を含む、上記90~92のいずれかに記載の感知システム。
94.前記第1の液滴、前記第2の液滴、および存在する場合に前記第3の液滴が、上記2~17のいずれかで定義されるものである、上記93に記載の感知システム。
95.上記1~89のいずれかに記載の方法を実行するための、上記90~94のいずれかに記載の感知システムの使用。
96.各々が液体媒体を含む第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を含む液滴構造体であって、
前記第1の液滴が、分析物を含み、
前記第2の液滴および前記第3の液滴が各々、電子メディエータを含み、
前記第1の液滴が、液滴界面を介して前記第2の液滴および前記第3の液滴の各々と接触し、各液滴界面が、両親媒性分子の層を含む、液滴構造体。
97.前記第1の液滴と前記第2の液滴との間の前記液滴界面、および/または前記第1の液滴と前記第3の液滴との間の前記液滴界面が、複数のイオンチャネルを含む、上記96に記載の液滴構造体。
98.各々が液体媒体を含む第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を含む液滴構造体であって、
前記第1の液滴が、液滴界面を介して前記第2の液滴と接触し、この液滴界面が、両親媒性分子の層を含み、
前記第1の液滴が、液滴界面を介して前記第3の液滴と接触し、この液滴界面が、両親媒性分子の層を含み、
前記第1の液滴と前記第2の液滴との間の前記液滴界面、および/または前記第1の液滴と前記第3の液滴との間の前記液滴界面が、複数のイオンチャネルを含む、液滴構造体。
99.前記第1の液滴が、分析物を含む、上記98に記載の液滴構造体。
100.前記第2の液滴および/または前記第3の液滴が、電子メディエータを含む、上記98または99に記載の液滴構造体。
101.前記第1の液滴と前記第2の液滴との間の前記液滴界面が、第1の膜貫通細孔を含む、上記90~95のいずれかに記載の液滴構造体。
102.前記第1の液滴と前記第3の液滴との間の前記液滴界面が、第2の膜貫通細孔を含み、任意選択的に前記第2の膜貫通細孔が、前記第1の膜貫通細孔とは異なる、上記96~101のいずれかに記載の液滴構造体。
103.各々が液体媒体を含む第1の液滴、第2の液滴、および第3の液滴を含む液滴構造体であって、
前記第1の液滴が、液滴界面を介して前記第2の液滴と接触し、この液滴界面が、両親媒性分子の層および第1の膜貫通細孔を含み、
前記第1の液滴が、液滴界面を介して前記第3の液滴と接触し、この液滴界面が、両親媒性分子の層および第2の膜貫通細孔を含み、
前記第1の膜貫通細孔と前記第2の膜貫通細孔とが、異なる、液滴構造体。
104.前記第1の液滴と前記第2の液滴との間の前記液滴界面、および/または前記第1の液滴と前記第3の液滴との間の前記液滴界面が、複数のイオンチャネルを含む、上記103に記載の液滴構造体。
105.DNA鎖をさらに含む、上記103または104に記載の液滴構造体。
106.前記DNA鎖が、前記第1の膜貫通細孔および前記第2の膜貫通細孔に接触する、上記105に記載の液滴構造体。
107.前記第2の液滴と前記第3の液滴とが、互いに接触しない、上記96~106のいずれかに記載の液滴構造体。
108.前記液体媒体が、極性媒体、好ましくは水性媒体である、上記96~107のいずれかに記載の液滴構造体。
109.無極性流体媒体中に配置されている、上記96~108のいずれかに記載の液滴構造体。
110.前記第1の液滴または前記第3の液滴が、第1の電極と電気的に接触する、上記96~109のいずれかに記載の液滴構造体。
111.前記第2の液滴が、第2の電極と電気的に接触する、上記96~110のいずれかに記載の液滴構造体。
112.さらなる液滴を含み、前記第1の液滴が、さらなる液滴界面を介して前記さらなる液滴と接触し、この液滴界面が、両親媒性分子の層を含む、上記96~111のいずれかに記載の液滴構造体。
113.前記さらなる液滴界面が、さらなる膜貫通細孔を含む、上記112に記載の液滴構造体。
114.前記液滴界面または各液滴界面が、両親媒性分子の二重層を含む、上記96~113のいずれかに記載の液滴構造体。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18