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特許7520836カニューレ近位に装着されたカメラと画像を回転させる画像生成制御システムとを含むカニューレ・システム及びカニューレ・システムを用いた方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】カニューレ近位に装着されたカメラと画像を回転させる画像生成制御システムとを含むカニューレ・システム及びカニューレ・システムを用いた方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
A61B17/34
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021531959
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 US2019065076
(87)【国際公開番号】W WO2020118258
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】62/776,055
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518411372
【氏名又は名称】リバウンド セラピュティクス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】REBOUND THERAPEUTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】13900 Alton Parkway,Suite 120,Irvine,CA 92618,USA
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】ツカシマ ロス
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス ピーター ジー
(72)【発明者】
【氏名】フラワー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】アモルソロ ミロ エー
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/035366(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0265879(US,A1)
【文献】国際公開第2016/132846(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術野にアクセスするためのカニューレ・システムであって、
カニューレ・チューブを含み、前記カニューレ・チューブは、近位端部及び遠位端部、ならびに、前記近位端部から前記遠位端部へ延在する内腔を備え、前記内腔は、前記カニューレ・チューブの前記近位端部から前記カニューレ・チューブの前記遠位端部へ外科用ツールの通過を可能にするように構成される、カニューレと、
前記カニューレ・チューブの前記近位端部に固着され、一部分が、前記内腔に差し掛かり前記内腔の中へ延在し、または、前記内腔に差し掛かり前記カニューレ・チューブの前記内腔によって画定される円筒形状の上部空間の中へ延在している、カメラ組立体と、
ディスプレイ・スクリーンと、
前記カニューレ・チューブの軸線に対する、前記カメラ組立体の周方向の位置に対応する信号を発生させる検出手段と、
前記カメラ組立体から画像データを受信し、前記ディスプレイ・スクリーンの上に表示するための前記画像データに対応する画像を発生させるように動作可能な画像制御システムと、
を含み、
前記画像制御システムは、前記カメラ組立体から取得される画像を前記ディスプレイの上に、ユーザからの入力により選択された初期の好適な配向で提示するための、及び、前記カニューレ・チューブの近位縁の周りで周方向に前記カメラ組立体の回転に応答して、前記画像を回転させ、外科手術空間の画像を前記初期の好適な配向で提示し続ける、カニューレ・システム。
【請求項2】
前記画像制御システムは、前記カメラ組立体が前記カニューレ・チューブに対して第1の周方向の位置にあるということを示す、ユーザからの入力を受信し、前記第1の周方向の位置に対応する初期の配向で、前記カメラ組立体から受信された前記外科手術野の画像を前記ディスプレイ・スクリーンの上に表示し、その後に、前記カメラ組立体の前記周方向の位置に対応する検出手段からの信号を受信し、前記カメラ組立体が前記カニューレ・チューブに対して第2の周方向の位置にあるということを決定し、前記カメラ組立体から第2の画像を受信し、この決定に基づいて、前記ディスプレイ・スクリーンの上に提示される前記第2の画像を回転させ、前記初期の配向で前記第2の画像を提示するように構成されている、請求項1に記載のカニューレ・システム。
【請求項3】
前記検出手段は、前記カニューレ・チューブの近位縁部上でカメラ組立体を回転可能にする装着構造体または前記カニューレ・チューブの近位縁部によって画定される平面の周りでのカメラの周方向の運動に対応する信号を提供するように動作可能な加速度計組立体を含む、請求項1に記載のカニューレ・システム。
【請求項4】
前記検出手段は、前記カニューレ・チューブの長軸に対して垂直の平面の周りでのカメラの周方向の運動に対応する信号を提供するように動作可能な加速度計組立体を含む、請求項1に記載のカニューレ・システム。
【請求項5】
前記検出手段は、前記カニューレ・チューブに対するカメラの周方向の位置に対応する信号を提供するように動作可能なエンコーダを含む、請求項1に記載のカニューレ・システム。
【請求項6】
前記検出手段は、前記チューブに対するカメラの周方向の位置に対応する信号を提供するように動作可能なレオスタットを含む、請求項1に記載のカニューレ・システム。
【請求項7】
前記検出手段は、前記カニューレ・チューブの近位縁部上でカメラ組立体を回転可能にする装着構造体または前記カニューレ・チューブの近位縁部によって画定される平面の周りでのカメラの運動に対応する信号を提供するように動作可能なジャイロスコープを含む、請求項1に記載のカニューレ・システム。
【請求項8】
前記検出手段は、前記カニューレ・チューブの長軸に対して垂直の平面の周りでのカメラの周方向の運動に対応する信号を提供するように動作可能なジャイロスコープを含む、請求項1に記載のカニューレ・システム。
【請求項9】
前記検出手段は、ニューロナビゲーション・マーカーを含み、前記ニューロナビゲーション・マーカーは、ニューロナビゲーション・システムとともに、前記カニューレ・チューブの周りでのカメラの周方向の運動に対応する信号を提供するように動作可能である、請求項1に記載のカニューレ・システム。
【請求項10】
前記画像制御システムは、前記検出手段によって決定され、及び、ユーザによって選択された、カメラによって取得される画像の配向を初期の好適な配向として設定し、その後に、前記カメラが第2の位置へ回転させられた後に、前記カメラ組立体から取得された前記画像を処理し、回転させられた画像を前記ディスプレイの上に提示するように、ユーザの選択において動作可能であり、前記回転させられた画像は、前記設定された初期の好適な配向で提示される、請求項1に記載のカニューレ・システム。
【請求項11】
ユーザからの入力を受信するための入力手段をさらに含む、請求項1に記載のカニューレ・システム。
【請求項12】
前記画像制御システムは、ユーザによって選択された初期の好適な配向にマッチする配向に、前記ディスプレイの上の前記画像を回転させるように、ユーザの選択において動作可能である、請求項10に記載のカニューレ・システム。
【請求項13】
前記画像制御システムは、前記ディスプレイの上に第1の画像を提示し、ユーザからの入力を受信し、前記入力に応答して、前記ディスプレイの上に提示した前記第1の画像が、初期の好適な配向画像であるとし、その後に、前記カメラ組立体から第2の画像を受信し、前記ディスプレイの上に提示される前記第2の画像を回転させ、前記初期の好適な配向で前記第2の画像を提示するステップを実施するようにさらに構成されている、請求項1に記載のカニューレ・システム。
【請求項14】
前記画像制御システムは、ユーザからの入力を受信し、前記入力に応答して、前記ディスプレイの上に提示される画像を回転させ、前記ディスプレイの上に提示される前記画像が、初期の好適な配向に対応するカメラによって受信される前記画像に対して回転させられた第1の回転させられた画像であるようになっており、その後に、前記カメラ組立体から第2の画像を受信し、前記ディスプレイの上に提示される前記第2の画像を回転させ、前記初期の好適な配向で前記第2の画像を提示するステップを実施するようにさらに構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のカニューレ・システム。
【請求項15】
前記画像制御システムは、ユーザによって選択された初期の好適な配向にマッチする配向に、前記ディスプレイの上の前記画像を回転させるように、ユーザの選択において動作可能である、請求項1から11のいずれか一項または13に記載のカニューレ・システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
下記に説明されている本発明は、低侵襲外科手術の分野で用いるカニューレ・システム及びカニューレ・システムを用いた方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Cannula with Proximally Mounted Cameraという標題の(2016年8月17日に出願された)米国特許出願第15/239,632号は、カニューレ・チューブの近位縁部の完全に近位に位置付けされているカメラを備えたカニューレ・チューブの遠位端部における画像を取得するように動作可能な、近位に装着されたカメラを備えたカニューレ・システムを開示している。カメラ(または、カメラ組立体の構成物)は、カニューレ・チューブによって画定され、カニューレ・チューブから近位に延在している円筒形状の上部空間(a cylindrical space)の中へわずかに延在し、カニューレ・チューブの内腔(ルーメン)に差し掛かっており、システム・カメラを使用する外科医が、カメラ(または、カメラ及びカニューレ組立体全体)を回転させ、差し掛かっているカメラによってそうでなければ妨げられる外科用チューブのためのスペースを作る必要があり得るようになっている。このシステム(カニューレ・システム)は、脊椎外科手術、脳外科手術、または他の手技のために使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
脊椎外科手術及び脳外科手術を含む低侵襲外科手術の間の体内組織の可視化を改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
下記に説明されているデバイス(カニューレ・システム)及びカニューレ・システムを用いた方法は、脊椎外科手術及び脳外科手術を含む低侵襲外科手術の間の体内組織の可視化の改善を提供する。このデバイス(カニューレ・システム)は、カメラ(または、カメラ構成物)を備えたカニューレを含み、カメラは、カニューレの近位端部に装着されており、カニューレ・内腔ならびに内腔の中及び下方の組織の中へのビューを伴う。カメラとカニューレの内腔との間に配向されたプリズム、反射器、または他の適切な光学エレメントが、内腔の障害物を最小化しながら、カニューレの中へのビューをカメラに与えるために含まれ得る。カメラまたは光学エレメントは、カニューレ・チューブに対して小さく、長くて小さい直径の外科用ツールが、カニューレを通して挿入され、カニューレの遠位端部における外科手術空間の中にツールの遠位先端部を位置付けすることができるようになっている。システム(カニューレ・システム)は、表示される画像を調節するための手段を含み、(初期の設置が、好適な配向での表示を提供しない場合には)カメラの半径位置(周方向の位置)にかかわらず、外科医にとって初期の好適な「自然な」配向に、表示される画像を回転させる。また、システム(カニューレ・システム)は、カニューレのチューブに対して、または、空間の中の初期の位置に対して、カメラの周方向の位置をトラッキングするための手段と、カニューレ・チューブの近位端部の周りでのカメラの回転に応答して画像を回転させ、初期の好適な配向で外科手術空間の画像を提示し続けるための画像生成制御システムとを含む。
【0005】
システム(カニューレ・システム)(及び、それが可能にするアクセスの方法(カニューレ・システムを用いた方法))は、低侵襲外科手術において使用され、外科医がカニューレの中で長い外科用ツールを操作している間に、及び、患者の近くに位置付けされている大型のディスプレイ・スクリーンの上で作業スペース及びツール先端部を観察している間に外科医によって好まれる配向で外科手術空間の画像を外科医に提供することが可能である。好適な配向は、(患者のそばに垂直方向に立っている外科医にとって)外科医の視点から「自然な」上下の配向で外科手術空間の画像を提示する配向である可能性が最も高いこととなり、外科医から最も遠い外科手術空間の部分は、表示される画像の上部にあり、外科医に最も近い外科手術空間の部分は、表示される画像の底部にあり、外科医の右にある外科手術空間の部分は、表示される画像の右側に表示され、外科医の左にある外科手術空間の部分は、表示される画像の左側に表示される。外科医は、カニューレの遠位端部が外科手術空間に近接した状態で、及び、カメラがこの自然な上下の配向に対して任意の周方向の位置にある状態で、患者の中にカニューレを置くことが可能であり、画像提示システムの中に提供されるコントロールを使用して画像を調節し、自然な上下の配向(または、任意の他の好適な配向)にマッチするように、表示される画像を回転させることが可能である。その後に、外科医は、必要に応じてカメラ(または、カニューレ及びカメラ組立体全体)を回転させ、カニューレ・チューブの中に配設されているツールを操作することが可能であり、画像表示システムは、カメラ(または、カニューレ及びカメラ組立体全体)の回転を検出し、画像を「反対回転」させ、表示される画像を自然な上下の配向(または、任意の他の好適な配向)で維持するように動作させられ得る。
システム(カニューレ・システム)及び(カニューレ・システムを用いた)方法は、脊椎外科手術に関して図示されている。システム(カニューレ・システム)及び(カニューレ・システムを用いた)方法は、脳外科手術及び他の外科手術においても使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】外科的介入を必要とするエリアを有する患者、ならびに、患者の脊椎の近くにカニューレ・チューブの遠位先端部を置くために切開部を通してインストールされたカニューレ・システム及びカメラ・システムを図示する図である。
図2】近位に装着されたカメラを備えたカニューレを図示する図である。
図3A】カメラの周方向の位置に対応する信号を発生させるように動作可能な検出手段(センサ)を備えたカニューレ・システム及びカメラ・システムを図示する図である。
図3B】カメラの周方向の位置に対応する信号を発生させるように動作可能な検出手段(センサ)を備えたカニューレ・システム及びカメラ・システムを図示する図である。
図3C】カメラの周方向の位置に対応する信号を発生させるように動作可能な検出手段(センサ)を備えたカニューレ・システム及びカメラ・システムを図示する図である。
図4】カメラの周方向の位置の変化の決定に応答して画像制御システムによって生成される、第1の好適な配向にある画像を備えた、カメラによって取得される例示的な画像を示す図である。
図5】カメラの周方向の位置の変化の決定に応答して画像制御システムによって生成される、好ましくない回転させられた配向にある画像を備えた、カメラによって取得される例示的な画像を示す図である。
図6】カメラの周方向の位置の変化の決定に応答して画像制御システムによって生成される、第2の好適な配向画像を備えた、カメラによって取得される例示的な画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、外科的介入を必要とする脊椎3に近接したターゲット組織2を有する患者1を図示している。カニューレ4は、外科的開口部を通して挿入されており、カニューレの遠位端部は、脊椎の上のターゲット組織に近接した状態になっている。ターゲット組織は、椎間板、脊椎の骨、もしくは他の組織、または異物であり得る。カメラ5は、カニューレの近位リムの上に装着されており、カメラの一部分が、カニューレのリムに差し掛かっており、カニューレの内腔の上方に配設された状態になっている(カメラ5は、カニューレの近位端部に固着され、一部分が、内腔に差し掛かり内腔の中へ延在し、または、内腔に差し掛かり内腔によって画定される円筒形状の上部空間の中へ延在している)。カメラ5は、カニューレの遠位端部における血液塊または他の組織のビデオまたは静止画像を取得するように動作可能である。カニューレは、カニューレ・チューブ6を含むことが可能であり、装着構造体7が、カニューレの近位端部6pにカメラ5を固着するために使用され得、カニューレ・チューブの内腔8を通したビューを提供する。
【0008】
図1に示されているように、外科用ツール9は、カニューレ・チューブの中に配設されており、外科手術空間の中のターゲット組織2の何らかの組織部分10に対して何らかの手術を実施するようになっている。この組織は、例えば、トリミングされることとなる突出している椎間板(ミニ椎間板切除術(mini-discectomy))であるか、または、切除されるかもしくはインプラントに固着されることとなる椎弓根もしくは横突起の一部分、または、取り除かれるかもしくは除去されることとなる腫瘍もしくは他の病変組織などであることが可能である。画像表示システムは、カメラ5によって取得される画像を表示するように動作させられ、初期の好適な配向で、ディスプレイ・スクリーンの上に体内組織の画像を示す。(画像表示システムは、ディスプレイ・スクリーン11及び画像制御システムを含み、画像制御システムは、カメラ5から画像信号を受信し、検出手段(センサ)から位置信号を受信し、ユーザによって指示されるように回転させられるディスプレイ・スクリーンに画像データを送信するように動作可能である。)この例では、ターゲット組織2の画像は、カニューレの内壁の環状の画像の中に出現しており、組織部分10は、スクリーンの上部に出現している。その理由は、それが、外科医から最も遠く、外科医が、これを好適な初期の配向として選択したからである。また、外科用ツール9の画像が、ディスプレイ・スクリーンの上に出現している。しかし、カメラ5の位置に起因して、外科医は、完全な自信を持って組織部分を攻撃することができない可能性があり、また、関心の組織部分10のビューを遮断する視野の中でのツールの近位部分の存在に起因して、アプローチされるべき組織を明確に見ることができない可能性がある。これに対処するために、外科医は、(カニューレ及びカメラ組立体全体を回転させること、または、カニューレ・チューブを回転させることなく、カニューレ・チューブの周りにカメラ5を回転させることのいずれかによって)カニューレ・チューブの軸線の周りにカメラ5を回転させることが可能である。この回転は、図2に示されている。補正がなければ、この回転は、表示される画像をひっくり返すこととなり、組織部分10は、表示される画像の底部に出現することとなる(そして、画像の中の左及び右が、反転させられることとなる)。
【0009】
上下逆さまに逆転されて外科手術空間を見ながら外科的手技を実施することは可能であるが、一貫したディスプレイの助けを借りて脊椎に手術をすることが、より自然であり、したがって、より安全である。したがって、画像表示システムは、カメラ5に関連付けられる位置検出手段(センサ)から、周方向の位置(半径位置)及び/又は周方向の運動に対応する信号を受信し、それらの信号に基づいて、カニューレに対する初期の位置、または、空間の中の絶対的な初期の位置を決定し、その後に、以前に決定されたカニューレに対する初期の位置または空間の中の絶対的な初期の位置に対して、カメラ5の周方向の位置を決定し、「反対回転させられた」画像を発生させ、反対回転させられた画像をディスプレイ・スクリーンの上に初期の好適な配向で表示するように動作可能であり、カメラ5の位置にかかわらず、手技の全体を通して一貫している表示された画像に基づいて、外科医が手術を行うことができるようになっている。
【0010】
図3A図3B、及び図3Cは、カメラ5の周方向の位置に対応する信号を発生させるように動作可能な検出手段(センサ)を備えた、カニューレ・システム及びカメラ・システムを図示している。図3A図3B、及び図3Cに示されているように、カニューレ4は、カニューレ・チューブ6及び装着構造体7を含む、図1及び図2に示されている構成物を含み、システム(カニューレ・システム)は、カニューレ・チューブの内腔に差し掛かっている構成物(例えば、プリズム、反射器もしくは他のミラー構造体、または光学エレメント12など)を備えたカメラ組立体5をさらに含む。いくつかの図は、カニューレ・チューブに対するカメラ組立体5の周方向の位置を決定するために、画像制御システムとともに使用され得る多くの検出手段(センサ)のうちのいくつかを示している。
【0011】
図3Aは、カメラ組立体に周方向に固定されたジャイロスコープまたは加速度計組立体13(単一の加速度計、または、多軸軸加速度計組立体(multi-axis axis accelerometer assembly))を示している。この実施形態では、カメラ組立体は、装着構造体の上に回転可能であり得、または、装着構造体及び/もしくはカニューレ・チューブに周方向に固定され得、または、それは、装着リングを通して、カニューレ・チューブに対して回転可能であり得、装着リングは、環状のスナップ・フィッティング及び対応するカニューレ・チューブの上のディテント、ネジ山付きフィッティング、ロータリー・ユニオン、または、回転可能な取り付けのための他の手段を使用して、カニューレ・チューブの端部に装着されている。
【0012】
検出手段(センサ)は、カメラ組立体5の運動に対応する信号を画像制御システムに提供するように動作可能であり、画像制御システムは、カメラが第1の周方向の位置(例えば、初期の配向または初期の好適な配向に対応する)にあるということを示す、ユーザからの入力を受信し、第1の周方向の位置に対応する第1の配向で外科手術野の画像をディスプレイ・スクリーンの上に表示し、その後に、カメラ組立体5の運動に対応する信号を受信し、第1の周方向の位置に対するカメラの周方向の位置を決定し、この決定に基づいて、ディスプレイ・スクリーンの上に提示される画像を回転させ、初期の配向または初期の好適な配向で画像を提示するように構成されている。
【0013】
図3Bは、カメラ組立体5に周方向に固定されたエンコーダ組立体5(エンコーダ・スケール14A及びリーダー14B)を示している。この実施形態では、カメラ組立体5は、装着構造体の上で回転可能であり、装着構造体は、カニューレ・チューブに周方向に固定されている。エンコーダ組立体5の第1の構成物(エンコーダ・リーダ)14Aは、カメラに固定されており、エンコーダ組立体の第2の構成物(エンコーダ・スケール)14Bは、装着構造体に固定されている。
【0014】
エンコーダ組立体は、装着構造体の上のカメラ組立体5の位置に対応する信号を画像制御システムに提供するように動作可能であり、画像制御システムは、カメラが第1の周方向の位置(例えば、初期の配向または初期の好適な配向に対応する)にあるということを示す、ユーザからの入力を受信し、第1の周方向の位置に対応する第1の配向で外科手術野の画像をディスプレイ・スクリーンの上に表示し、その後に、カメラ組立体5の第2の位置(または、カメラの運動)に対応する信号を受信し、第1の周方向の位置に対するカメラの周方向の位置を決定し、この決定に基づいて、ディスプレイ・スクリーンの上に提示される画像を回転させ、初期の配向または初期の好適な配向で画像を提示するように構成されている。
【0015】
図3Cは、カメラ組立体5に周方向に固定されたニューロナビゲーション・マーカー・アレイ15を示している。この実施形態では、カメラ組立体5は、装着構造体の上で回転可能であり得、または装着構造体及び/もしくはカニューレ・チューブに周方向に固定され得る。ニューロナビゲーション・マーカー・アレイは、カメラに固定されたニューロナビゲーション・システムの第1の構成物15Aであり、ニューロナビゲーション・システムの第2の構成物(例えば、カメラ、アンテナ、超音波センサなどの、マーカーを検出するように動作可能なセンサ)15Bは、マーカー・アレイに近接して配設されている。
【0016】
ニューロナビゲーション・システムは、装着構造体の上のカメラ組立体5の位置に対応する信号を画像制御システムに提供するように動作可能であり、画像制御システムは、カメラが第1の周方向の位置(例えば、初期の配向または初期の好適な配向に対応する)にあるということを示す、ユーザからの入力を受信し、第1の周方向の位置に対応する第1の配向で外科手術野の画像をディスプレイ・スクリーンの上に表示し、その後に、カメラ組立体5の第2の位置(または、カメラの運動)に対応する信号を受信し、第1の周方向の位置に対するカメラの周方向の位置を決定し、この決定に基づいて、ディスプレイ・スクリーンの上に提示される画像を回転させ、初期の配向または初期の好適な配向で画像を提示するように構成されている。
【0017】
一般的に、画像制御システムは、カメラが第1の周方向の位置にあるということを示す、ユーザからの入力を受信し、第1の周方向の位置に対応する初期の配向で外科手術野の画像をディスプレイ・スクリーンの上に表示し、その後に、カメラ組立体5の周方向の位置に対応する信号を検出手段(センサ)から受信し、第1の周方向の位置に対するカメラの周方向の位置を決定し、この決定に基づいて、ディスプレイ・スクリーンの上に提示される画像を回転させ、初期の配向または初期の好適な配向で画像を提示するように構成されている(第1の周方向の位置は、幾何学的なホーム位置によって定義され得、ホーム位置では、カメラは、初期の周方向の位置においてのみカニューレに取り付けられ得、または、それは、画像制御システム・ソフトウェア・ユーザ制御が「ホーム」もしくは「オリジン」スターティング位置を設定することを通して、開始させられ得る)。
【0018】
位置検出手段(センサ)は、多くの形態で提供され得、それは、カニューレ・チューブに対するカメラの周方向の位置に対応する信号を提供するように動作可能なエンコーダ、または、他の位置カウンター(カニューレの上部を取り囲む円形マークをカウントすることができる)、または、カニューレを取り囲み、ソフトウェアに基づいてカメラ位置を解釈するカラー・アレイ、チューブに対するカメラの周方向の位置に対応する信号を提供するように動作可能なレオスタット、装着構造体もしくはカニューレ・チューブの近位縁部によって画定される平面(または、カニューレ・チューブの長軸に対して垂直の平面)の周りでのカメラの運動に対応する信号(それは、画像制御システムによって解釈され、初期の位置からのカメラの周方向の変位を決定することが可能である)を提供するように動作可能なジャイロスコープ、装着構造体もしくはカニューレ・チューブの近位縁部によって画定される平面(または、カニューレ・チューブの長軸に対して垂直の平面)の周りでのカメラの運動に対応する信号(それは、画像制御システムによって解釈され、初期の位置からのカメラの周方向の変位を決定することが可能である)を提供するように動作可能な加速度計組立体5、ニューロナビゲーション・システムとともに、カニューレ・チューブの周りでのカメラの周方向の運動に対応する信号を提供することができるニューロナビゲーション・マーカー、カメラの絶対的な位置及び配向に対応する信号(それは、画像制御システムによって解釈され、初期の位置からのカメラの周方向の変位を決定することが可能である)を提供するように動作可能な、加速度計、ジャイロスコープ、及び重力検出手段(センサ)の組合せ、ならびに、カメラの位置を検出するための、または、以前に決定されたカニューレに対する初期の位置、もしくは、空間の中の絶対的な初期の位置のいずれかに対して、カニューレ・チューブの軸線に対するカメラ組立体5の周方向の位置に対応する信号を発生させるための任意の他の手段を含む。
【0019】
図4図5、及び図6は、カメラの周方向の位置の変化の決定に応答して画像制御システムによって生成される、第1の好適な配向にある画像、好ましくない回転させられた配向にある画像、及び、第2の好適な配向画像を備えた、カメラによって取得される例示的な画像を示している。図4において、カメラは、初期の周方向の位置にあり、それは、このケースでは、画像制御システムに入力を提供することによって、好適な配向として外科医によって設定された。画像に対するカメラ及びプリズムの位置は、仮想線で示されている。この画像は、(1)カメラもしくはカニューレの手動回転を含む、カニューレの初期の設置によって取得される画像、または、(2)好適な回転において画像を提示するための画像のソフトウェア回転であることが可能である。図4のこの画像では、カメラは、スクリーンの底部に位置付けされており(システム(カニューレ・システム)のデフォルト、システム(カニューレ・システム)は、任意の配向のデフォルト・ビューを提供するように構成され得る)、カニューレ・チューブ6の内壁の環状の画像によって取り囲まれているターゲット組織2の画像を含み、組織部分10の画像は、画像の左上(約11:00の位置)にある状態になっている。その理由は、組織部分が、カメラの周方向の位置(それは、6:00の位置にある)とは反対側にあるからである。ツール9は、カニューレの近位端部から組織部分10に向けて下方へ延在するように出現する。外科医がカメラを回転させ、その妨害位置から外へカメラを移動させる場合には(例えば、外科医が、カニューレ・システム及びカメラ・システムを約180°回転させた場合には)、第1の好適な配向のこの画像は回転させられることとなる。この回転は、図5に示されており、図5は、カメラ(それは、今では、12:00の位置に、画像の上部にある)に対して時計回りに、約5:00の位置に、右下に組織部分を示している。この回転させられた画像の場合、外科医は、画像を解釈するのに困難を伴う可能性がある。画像制御システムは、外科医の選択において、ディスプレイの上の画像を回転させ、図6に示されているように初期の好適な配向へ戻すように動作可能である。この補正されたディスプレイによって、外科医は、ディスプレイが自然な配向で提示されているディスプレイを使用して(外科医から最も遠い組織がディスプレイの上部に示されており、外科医に最も近い組織が、スクリーンの底部に示された状態になっている)、ツールを操作し、組織部分10を攻撃することが可能である。
【0020】
使用時に、外科医は、外科的開口部(または、自然の開口部)を通して、カニューレ・チューブの遠位端部6dを患者の身体の中へ挿入し、ターゲット組織2、ならびに、治療及び検査されることとなる組織部分10などに近接して、遠位端部を置くこととなる。外科医は、最初に、開口部、患者の位置、及び外科医の姿勢に対して都合の良い周方向の場所にカメラを置くこととなる。外科医は、入力手段を通して画像制御システムに入力を提供し、この周方向の位置が第1の周方向の位置であるということを示すこととなり、次いで、画像制御システムは、第1の周方向の位置に対応する初期の配向で外科手術野の画像をディスプレイ・スクリーンの上に表示することとなる。外科医がこの画像に満足している場合には、外科医は、これが初期の好適な配向であるということを示す入力を、入力手段を通して画像制御システムに提供することとなる。外科医が異なる初期の好適な配向を好む場合には、外科医は、画像制御システムに入力を提供し、画像を所望の初期の好適な配向に回転させることが可能であり(カメラをその初期の周方向の位置に維持している)、また、結果として生じる画像の配向が初期の好適な配向になっているということを示す入力をシステム(カニューレ・システム)に提供することが可能である。その後に、外科医は、画像制御システムを動作させ、(初期の位置に対する)カメラの周方向の位置を示す検出手段(センサ)からの入力を受信することが可能であり、ツールの通過に対処することを望まれるときには、そうでなければツールなどによって遮断されるビューを取得し、カメラを新しい位置へ回転させ、画像制御システムを動作させ、カニューレの軸線の周りでのカメラの物理的な回転の程度を決定することが可能であり、一方では、画像制御システムを動作させ、表示された画像を回転させ、画像を好適な初期の配向に維持する。この説明では、初期の配向は、カニューレの第1の設置のときに取得される画像を指す。初期の好適な配向は、外科医がそれを用いて働くことを好む画像であり、外科医は、システム(カニューレ・システム)を使用し、所望の上下の配向を設定する。それは、カニューレの初期の設置によって確立され得(それは、初期の配向であることが可能である)、または、それは、初期の設置の後に確立され得、システム(カニューレ・システム)は、ユーザによって望まれるように画像を回転させ、ディスプレイ・スクリーンの上に初期の好適な配向を表示する。説明されているユーザ入力のすべては、オンスクリーン・インターフェースの中のダイアログ・ボックス、キーボードとともにディスプレイの上に提供されるソフト・キー、または、制御システムの上の物理的なスイッチもしくはボタン、または他の入力手段などのような、インターフェースを通して提供され得る。
【0021】
システム(カニューレ・システム)は、初期の位置が何であるかまたはそれが絶対的にどこにあるかを知る必要がない。オペレーターは、画像制御システムに入力を提供し、システム(カニューレ・システム)の中で初期の好適な配向を設定し、したがって、初期の好適な配向に対応する検出手段(センサ)読み値を決定することが可能である。次いで、画像制御システムは、初期の位置に対して、カメラの周方向の運動を決定することのみを必要とする。例えば、加速度計を使用して、外科医は、(カニューレ及びカメラを調節した後に、及び、恐らく、画像を調節した後に)画像制御システムに入力を提供し、初期の好適な配向を設定することとなる。加速度計読み値は、このポイントにおいてゼロであるべきであり、または、スターティング・ポイントとして見なされるべきであり、また、システム(カニューレ・システム)は、カメラの実際の位置を決定する必要はない。カニューレ・チューブの軸線の周りでのカメラのその後の回転は、加速度信号を結果として生じさせることとなり、それは、回転の量を決定するために、画像制御システムによって使用される。
【0022】
画像制御システムがニューロナビゲーション・システム(それは、ニューロナビゲーション・システムの検出手段(センサ)に対して絶対的な位置を提供する)と協働して働く実施形態では、画像制御システムは、絶対的な位置に対して画像を回転させる可能性がある。したがって、システム(カニューレ・システム)は、患者とのシステム・センサの位置合わせの後に、カメラがどこにあるか及びそれがどこに向けられているかを決定するように動作可能であり得、また、その周方向の位置を決定することが可能であり、それは、初期の周方向の位置を決定すること(これがオペレーターからの入力によって示されているとき)、及び、初期のスターティング位置からのその回転を決定するというよりもむしろ、空間の中のカメラの周方向の位置をトラッキングすることを含む。
【0023】
初期の好適な配向は、(1)初期の設置ならびにカニューレ及びカメラ組立体の手動回転(本体に回転方向に固定する前に、カニューレ及びカメラ組立体5を回転させる)によって取得され得、または、(2)初期の配向で(それは、好適である場合もあり、または、好適でない場合もある)画像を取得するために、カメラの配向に関係なく、カメラ組立体5の初期の設置を行うこと、及び、その後に、画像データを回転させるように画像制御システムを動作させ、初期の好適な配向でディスプレイ・スクリーンの上に画像を提示することによって取得され得る。
【0024】
画像制御システム、関連の画像処理ソフトウェア、及び関連の入力デバイスは、表示される画像を調節するための、及び、上記に説明されているように初期の好適な配向へ画像を回転させるための手段を提供する。図3A図3B、及び図3Cに関連して説明されているさまざまなセンサ・システムは、カメラの周方向の位置をトラッキングするための手段を提供する。画像制御システム及び関連の画像処理ソフトウェアは、カメラ組立体5から取得される画像をディスプレイの上に初期の好適な配向で提示するための、及び、カニューレ・チューブに対する周方向にカメラ組立体5の回転に応答して、画像を回転させ、外科手術空間の画像を初期の好適な配向で提示し続けるための手段を提供する。
【0025】
デバイス及び方法の好適な実施形態が、それらが開発された環境を参照して説明されてきたが、それらは、本発明の原理の単なる例示目的のものに過ぎない。デバイスは、さまざまな脳内手技(例えば、脳室内出血手技、神経刺激手技、及び腫瘍切除など)、及び、さまざまな脊椎外科手術(例えば、除圧及び融合手技、ならびに腫瘍切除など)において使用され得る。さまざまな実施形態のエレメントは、他の種のそれぞれの中へ組み込まれ、そのような他の種と組み合わせてそれらのエレメントの利益を取得することが可能であり、さまざまな有益な特徴は、単独でまたは互いに組み合わせて、実施形態の中で用いられ得る。他の実施形態及び構成が、本発明の要旨及び添付の特許請求の範囲から逸脱することなく考案され得る。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6