(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】インラインコヒーレント撮像(ICI)から決定された撮像信号密度を用いた物質加工の監視
(51)【国際特許分類】
B23K 26/03 20060101AFI20240716BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240716BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20240716BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20240716BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B23K26/03
B23K26/00 P
B23K26/00 Q
B23K26/21 A
B23K31/00 L
B23K31/00 N
G01N21/956 Z
(21)【出願番号】P 2021535813
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 US2019067542
(87)【国際公開番号】W WO2020132282
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-19
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・エム・ガルブレイス
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン・カンコ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ジェイ・エル・ウェブスター
(72)【発明者】
【氏名】コール・ヴァン・ヴラック
(72)【発明者】
【氏名】ジュヌビエーブ・エリザベス・ヘイズ
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-545613(JP,A)
【文献】特表2016-538134(JP,A)
【文献】特開2016-155140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/03
B23K 26/00
B23K 26/21
B23K 31/00
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスビームを生成し、物質加工のために前記プロセスビームをワークピースに向けることと、
撮像ビームを生成することと、
前記撮像ビームを前記ワークピースに向けることと、
前記ワークピースから反射された撮像ビームの少なくとも一成分から干渉出力を生成することと、
前記干渉出力を検出して、干渉データを生成することと、
前記干渉データから撮像信号密度を決定することと、を備える方法。
【請求項2】
前記干渉出力を検出することが、前記ワークピースの複数のAスキャンを生成することを含み、前記撮像信号密度を決定することが、各Aスキャンが信号強度閾値を超える測定点を含むという条件を満たすかどうかを決定し、Aスキャンのビン内で該条件を満たすAスキャンのパーセンテージを計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ワークピースの複数のAスキャンが、前記ワークピースの加工領域にわたって間隔が空けられた複数のAラインにおいて生成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ワークピースの複数のAスキャンは時間間隔が空けられている、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
インラインコヒーレント撮像を用いて、ワークピースの距離間隔又は時間間隔が空けられた複数のAスキャンを生成することと、
各Aスキャンが信号強度閾値を超える測定点を含むという条件を満たすかどうかを決定し、Aスキャンのビン内で該条件を満たすAスキャンのパーセンテージを計算することによって、インラインコヒーレント撮像の撮像信号密度を計算することと、を備える方法。
【請求項6】
インラインコヒーレント撮像を用いて物質加工プロセスを監視するためのコンピュータ実施の方法であって、
インラインコヒーレント撮像を用いたワークピースの複数のAスキャンを表すAスキャンデータを受信することと、
各Aスキャンが信号強度閾値を超える測定点を含むという条件を満たすかどうかを決定し、Aスキャンのビン内で該条件を満たすAスキャンのパーセンテージを計算することによって、インラインコヒーレント撮像の撮像信号密度を決定することと、を備える方法。
【請求項7】
前記信号強度閾値がユーザ定義される、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ビンがユーザ定義される、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
複数のビンが、第一Aラインで始まりビン同士の端と端が繋がるように定義される、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
複数のビンが重なるようにして定義される、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
複数のビンが、前記信号強度閾値を超える測定点を含むAラインに対して重なるようにして定義される、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記撮像信号密度を決定することが、計算された前記パーセンテージに平滑化アルゴリズムを適用することを含む、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記撮像信号密度を用いて物質加工を監視することを更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記撮像信号密度を用いて物質加工を制御することを更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記撮像信号密度を用いて物質、部品、構成要素又は製品を検査することを更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記撮像信号密度を用いて自動合否品質評価を行うことを更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記撮像信号密度を用いて完全溶け込み溶接プロセス中にキーホールを監視することを更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記完全溶け込み溶接プロセスが、表面下空隙を含むワークピースに対して行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記キーホールが前記表面下空隙に入り込む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記キーホールが前記表面下空隙に入り込まない、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ワークピースが、
プロセス軸に沿って空隙と棚構造を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記撮像信号密度を用いて部分溶け込み溶接プロセス中にキーホールを監視することを更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記撮像信号密度を用いて完全溶け込み溶接プロセス中に溶融プールを監視することを更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記撮像信号密度を用いて部分溶け込み溶接プロセス中に溶融プールを監視することを更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記撮像信号密度を用いて物質加工プロセスの前に物質表面を監視することを更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記撮像信号密度を用いて物質加工プロセスの後に物質表面を監視することを更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記撮像信号密度を用いて物質加工プロセスの前における物質の表面状態を検査することを更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記撮像信号密度を用いて物質加工プロセスの後における物質の表面状態を検査することを更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
撮像ビームを用いて
溶接長さの測定結果を決定することを更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記
溶接長さの測定結果が溶け込み深さを示す、請求項
29に記載の方法。
【請求項31】
撮像ビームの後方散乱を促進する表面下特徴部を与えるように前記ワークピースを加工することを更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記干渉出力を検出することが、前記ワークピースの複数のAスキャンを生成することを含み、前記撮像信号密度を用いて、相変化領域又はワークピース
加工領域の少なくとも一つの態様に関してAスキャンを分類する、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記相変化領域又はワークピース
加工領域の少なくとも一つの態様が、蒸気チャネルと、蒸気チャネル底と、蒸気チャネル側壁と、溶接溶け込み深さと、溶融プールと、ワークピース表面と、物質組成と、物質相と、物質密度とのうちの少なくとも一つである、請求項
32に記載の方法。
【請求項34】
前記撮像信号密度を用いて相変化領域又はワークピース
加工領域の少なくとも一つの態様に関してAスキャンを分類することを更に備える請求項5又は6に記載の方法。
【請求項35】
溶接プロセスを監視する方法であって、
プロセスビームを生成し、前記プロセスビームをワークピースに向けて、キーホールを形成することと、
撮像ビームを生成し、前記撮像ビームを前記キーホール内に向けることと、
前記ワークピースから反射された撮像ビームの少なくとも一成分を用いて干渉出力を生成することと、
前記干渉出力を検出して、インターフェログラムデータを生成することと、
前記インターフェログラムデータを用いて
溶接長さの測定結果を決定することと、
前記インターフェログラムデータを用いて撮像信号密度を計算することと、を備える方法。
【請求項36】
前記
溶接長さの測定結果と前記撮像信号密度を用いて溶接溶け込みを監視する、請求項
35に記載の方法。
【請求項37】
前記
溶接長さの測定結果と前記撮像信号密度を用いて自動溶接品質評価を行うことを更に備える請求項
35に記載の方法。
【請求項38】
前記撮像信号密度が所定の距離にわたって信号密度範囲の内側又は外側にあり且つ前記
溶接長さの測定結果が距離範囲の内側又は外側の深さを示す場合に、溶接が合格となる、請求項
37に記載の方法。
【請求項39】
前記撮像信号密度が所定の距離にわたって信号密度閾値未満であり且つ前記
溶接長さの測定結果が距離範囲内の深さを示す場合に、溶接が合格となる、請求項
37に記載の方法。
【請求項40】
前記ワークピースが、軸方向スキャンラインに沿って空隙と棚構造を含む、請求項
35に記載の方法。
【請求項41】
前記撮像ビームの後方散乱を促進する表面下特徴部を与えるように前記ワークピースを加工することを更に備える請求項
35に記載の方法。
【請求項42】
前記ワークピースを加工することが、表面下棚構造にコーティングを設けることを含む、請求項
41に記載の方法。
【請求項43】
前記ワークピースを加工することが、表面下棚構造を形成することを含む、請求項
41に記載の方法。
【請求項44】
前記撮像信号密度を用いて相変化領域又はワークピース
加工領域の少なくとも一つの態様を分類することを更に備える請求項
35に記載の方法。
【請求項45】
プロセスビームを生成し、前記プロセスビームをワークピースに向けるように構成された物質加工システムと、
撮像ビームを生成し、前記撮像ビームを前記プロセスビームと共に前記ワークピースに向け、前記撮像ビームの反射から干渉出力を生成し、前記干渉出力を検出して、インラインコヒーレント撮像データを生成するように構成されたインラインコヒーレント撮像システムと、
前記インラインコヒーレント撮像データを受信して、少なくともインラインコヒーレント撮像信号密度を決定するようにプログラムされた監視システムと、を備えるシステム。
【請求項46】
前記監視システムが、インラインコヒーレント撮像を用いたワークピースの複数のAスキャンを表すAスキャンデータを受信し、各Aスキャンが閾値を超える測定点を含むという条件を満たすかどうかを決定し、Aスキャンのビン内で該条件を満たすAスキャンのパーセンテージを計算することによって、インラインコヒーレント撮像信号密度を決定するようにプログラムされている、請求項
45に記載のシステム。
【請求項47】
前記監視システムが、
溶接長さの測定値を計算するようにプログラムされている、請求項
45に記載のシステム。
【請求項48】
前記物質加工システムが溶接システムであり、前記監視システムが溶接品質評価を行うようにプログラムされている、請求項
45に記載のシステム。
【請求項49】
前記物質加工システムが揺動溶接システムであり、前記監視システムが、前記インラインコヒーレント撮像信号密度を用いて相変化領域又はワークピース
加工領域の少なくとも一つの態様を分類するようにプログラムされている、請求項
45に記載のシステム。
【請求項50】
コンピュータ可読命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読命令は、プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
インラインコヒーレント撮像を用いてワークピースの複数のAスキャンを表すAスキャンデータを受信することと、
各Aスキャンが閾値を超える測定点を含むという条件を満たすかどうかを決定し、Aスキャンのビン内で該条件を満たすAスキャンのパーセンテージを計算することによって、インラインコヒーレント撮像信号密度を決定することと、を行わせる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年12月19日出願の米国仮出願第62/782071号の優先権を主張し、その全内容は参照として本願に組み込まれる。
【0002】
本開示は、物質加工の監視に係り、特にインラインコヒーレント撮像(ICI,inline coherent imaging)から決定された撮像信号密度を用いた物質加工の監視に関する。
【背景技術】
【0003】
インラインコヒーレント撮像(ICI)を用い、ワークピースに向けられたプロセスビームとインラインでワークピースからの反射を検出することによって、多様な種類のプロセスを監視することができる。ICIには、一般的に、撮像ビームを加工ビームと共にワークピースに向けることと、干渉計を用いて撮像ビームの反射を受けることと、プロセス及び/又はワークピースの特性(溶接キーホール深さ等)を示す出力を生成することとが含まれる。ICIの例は、参照として全体が本願に組み込まれる本出願人の特許文献1、特許文献2、特許文献3により詳細に記載されている。
【0004】
レーザ溶接は、ICIで効果的に監視可能なプロセスの一例である。あらゆる種類のレーザ溶接は、許容範囲外のプロセスパラメータ、投入原料の変動、溶融プールと蒸気チャネルやキーホールの自然変動や不安定性に起因して欠陥を含むことが多い。蒸気チャネルやキーホールの溶け込み(penetration)の直接測定は欠陥検出にとって非常に重要であり、ICIは、これを初めて工業的に実現可能にした技術である。ICIは、止め孔(blind)や部分溶け込み(partial penetration)の蒸気チャネル内の欠陥の検出に対しては非常に有効であるが、完全溶け込み(full penetration)溶接プロセスに対してはこれまでそれほど有効ではなかった。ICIは、通常、後方散乱界面(例えば、キーホールの底)までの光路長を測定するのに用いられるが、キーホールが物質を完全に貫通している場合には不安定なデータをもたらす。
【0005】
現状のレーザ溶接法は、ICIでの監視に固有の課題を示す。例えば、揺動(wobble)溶接法では、溶接中にプロセスビームを揺動パターンで素早く移動させる。ICIで揺動溶接を監視する場合には、プロセスビームが揺動パターンで移動しているので、撮像ビームをキーホールや相変化領域(PCR,phase change region)や他のワークピースサブ領域に整列させることが課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8822875号明細書
【文献】米国特許第9757817号明細書
【文献】米国特許第10124410号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0368089号明細書
【文献】米国特許出願公開第2020/0023461号明細書
【文献】国際公開第2018/136622号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る方法は、プロセスビームを生成し、物質加工用にプロセスビームをワークピースに向けることと、撮像ビームを生成し、ワークピースに撮像ビームを向けることと、ワークピースから反射された撮像ビームの少なくとも一成分から干渉出力を生成することと、干渉出力を検出して、干渉データを生成することと、干渉データから撮像信号密度を決定することと、を備える。
【0008】
本開示の他の態様に係る方法は、インラインコヒーレント撮像(ICI)を用いてワークピースの複数のAスキャン(複数のAスキャンは距離又は時間で間隔が空けられている)を生成することと、各Aスキャンが信号強度閾値を超える測定点を含むかどうかを決定し、Aスキャンのビン内でこの条件を満たすAスキャンのパーセンテージを計算することによって、ICI信号密度を決定することと、を備える。
【0009】
本開示の更なる態様に係るシステムは、プロセスビームを生成し、プロセスビームをワークピースに向けるように構成された物質加工システムと、撮像ビームを生成し、撮像ビームをプロセスビームと共にワークピースに向け、撮像ビームの反射から干渉出力を生成し、干渉出力を検出して、ICIデータを生成するように構成されたインラインコヒーレント撮像(ICI)システムと、を備える。また、本システムは、ICIデータを受信して、少なくともICI撮像信号密度を決定するようにプログラムされた監視システムも備える。
【0010】
上記の特徴と利点及び他の特徴と利点は、添付図面と共に以下の詳細な説明を読むことによってより良く理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係る撮像信号密度を用いて物質加工を監視することができるインラインコヒーレント撮像(ICI)システムを備える物質加工システムの概略図である。
【
図2】
図2Aは、本開示の実施形態に係る撮像信号密度を用いて物質加工を監視するための方法のフローチャートである。
図2Bは、本開示の実施形態に係る撮像信号密度を決定するための方法のフローチャートである。
【
図3】
図3A~
図3Cは、本開示の実施形態に係る撮像信号密度を決定するためのそれぞれ異なる信号密度アルゴリズムを示す図である。
【
図4】
図4Aは、本開示の実施形態に係る溶接部に沿った位置の関数としてキーホール信号密度のプロットを示す像である。
図4Bは、本開示の実施形態に係る溶接部に沿った複数のAラインにおける一連のAスキャンのキーホール生データのプロットを示す像であり、溶接部に沿った位置の関数としてキーホール深さを示している。
【
図5】
図5A~
図5Eは、本開示の実施形態に係るレーザで突き合わせ溶接可能であって、撮像信号密度を用いて監視可能な部品の図である。
【
図6】本開示の実施形態に係るレーザ突き合わせ溶接済みの部品の溶接長さの関数として深さを示す生ICIデータを示している像である。
【
図7】本開示の実施形態に係る距離(溶接長さ)の関数として溶接レーザパワーのグラフと撮像信号フィルファクタ(密度)のグラフを示す。
【
図8】
図8A~
図8Eは、本開示の実施形態に係る合否(合格/不合格)品質保証の目的で撮像信号密度(又はフィルファクタ)のみを用いて評価した溶接長さの関数として深さを示す生ICIデータを示している像である。
【
図9】本開示の実施形態に係る合否(合格/不合格)品質保証の目的で撮像信号密度(又はフィルファクタ)と距離測定結果を用いて評価した溶接長さの関数として深さを示す生ICIデータを示している像である。
【
図10】
図10Aと
図10Bは、本開示の実施形態に係る撮像信号密度を用いて監視可能な表面下ポケットを有する他の部品形状における溶接溶け込みの概略図である。
【
図11】
図11A~
図11Cは、本開示の実施形態に係る撮像信号密度を用いて監視可能な異なるレーザパワーを用いて行われた突き合わせ溶接の溶接ルートの像である。
【
図13】溶接部に沿った距離の関数として
図11A~
図11Cに示される溶接部のフィルファクタ(又は撮像信号密度)を示すプロットである。
【
図14】低速突き合わせ溶接のICIキーホール測定結果(上図)と撮像信号密度を示すプロットである。
【
図15A】撮像ビーム位置に対するキーホール整列が揺動溶接パターンに従って周期的に変化しているバッテリタブ揺動溶接プロセスについて溶接長さの関数として深さ追跡Aスキャン測定結果のプロットを示す。
【
図15B】
図15Aの深さ追跡データに対応する信号密度プロットを、後続の加工ステップで用いられる一定の信号密度閾値レベルを示す破線と共に示す。
【
図15C】
図15Bの信号密度と閾値レベルに従って「表面」と「キーホール」深さ測定結果に分類された
図15Aの深さ追跡Aスキャン測定結果のプロットを示し、分類されたチャネルはグラフ上で囲まれた領域で特定されている。
【
図15D】
図15Cのキーホール深さと表面データの減算によって得られた局所的な表面高さを基準にしたキーホール深さのプロットを示し、局所的な表面高さは深さゼロの破線で表されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示に係るシステムと方法と装置は、例えばインラインコヒーレント撮像(ICI)中にワークピース又は加工領域に向けられた撮像ビームについて計算された撮像信号密度を用いて物質加工を監視するのに用いられる。撮像信号密度を用いて、例えば、パルス溶接、スポット溶接及び/又は揺動溶接を用いて行われる完全溶け込み溶接や部分溶け込み溶接等のレーザ溶接プロセスや電子線溶接プロセスを監視することができる。例として、撮像信号密度は、キーホール床からの反射及び/又はキーホールの下方の表面下構造からの反射の結果として溶接溶け込みを示すものとなる。監視は、溶接又は物質加工や、それによって製造される部品の自動合否(合格/不合格)評価や品質評価を含み得る。また、撮像信号密度を用いて、例えば、撮像信号密度データ出力をフィードバックとして用いて溶接、物質加工及び/又は監視を制御することができる。撮像信号密度は単独で使用され、又は、距離や深さの測定結果等の他の測定結果や測定基準と共に使用され得る。
【0013】
本願において、インラインコヒーレント撮像(ICI)とは、プロセス及び/又はワークピースの特性を測定することを目的として撮像ビームがプロセスビームと共に、つまり「インライン」でワークピースに向けられるプロセスのことを称する。「インライン」との用語は、撮像ビームとプロセスビームが同軸上にあることを必須とするものではない。撮像ビームはプロセスビームと同軸になり得るし、プロセスビームに対して相対的にずらされたり角度を付けられたりし得る。本願において、「揺動溶接」(ウォボル溶接)との用語は、(例えば、ワークピース及び/又はビーム伝送システムを移動させることによって)プロセスビームを溶接サイトにわたって並進移動させながらプロセスビームを相対的に小さな反復運動で移動させる溶接プロセスのことを称する。
【0014】
本願において、信号密度(フィルファクタとも称される)とは、信号強度閾値(例えば、dB単位)を超える信号を示す測定結果のパーセンテージ(百分率)のことを称する。ICI信号密度の決定は、例えば、ICIを用いてワークピース又は加工領域の複数の軸方向スキャン又はAスキャンを生成し、各Aスキャンが信号強度閾値を超える測定点を含むか否かを決定し、その条件を満たすAスキャンのパーセンテージを計算することによって撮像信号密度を計算することで行われ得る。パーセンテージは、以下で詳細に説明するように、所定の距離や時間内、所定の数のAスキャン(信号密度のウィンドウやビンと称される)内で計算され得る。複数のAスキャンは、ワークピースに沿って間隔が空けられた複数の軸方向ライン又はAラインにおいてそれぞれ生成され、又は一箇所において生成され得る。
【0015】
この手法は、溶接中に形成される相変化領域(PCR)内の特定の深さ領域からの信号密度が、溶接の溶け込みや品質を評価することに関与し得ることを認識しているものである。例えば、或る領域からの上昇していく又は高い信号密度がワークピースの頂面で始まって、ワークピースの既知の厚さで実質的に終了するように現れることは、キーホール又は蒸気チャネルが閉じつつある又は閉じていることを示唆している。逆に、溶接されているワークピース特徴部の既知の厚さよりも実質的に深い距離からの上昇して又は高く現れる信号は、蒸気チャネルが開きつつある又は開いていることを示し得て、ワークピースの他の特徴(例えば、ガス放出ポケットの底等)や、機器や部品やアセンブリの他の特徴(例えば、ICIシステム用の強力な反射を生じさせるために意図的に配置されているバッキングプレートや犠牲物質等)を明らかにして、以下で詳細に説明するように、本開示の方法を実現可能とする。
【0016】
図1を参照すると、撮像信号密度が、インラインコヒーレント撮像(ICI)システム120を用いる物質加工システム110における本開示の実施形態に係る物質加工の監視に使用可能である。物質加工システム110は、プロセスビーム112を生成してワークピース102に向けて、ワークピースを加工(例えば、溶接)する。インラインコヒーレント撮像(ICI)システム120は、プロセスビーム112と共に「インライン」で撮像ビーム122を生成しサンプル又はワークピース102に向けて、ワークピースを撮像して、ワークピース及び/又は物質加工の特性を示すICIデータを生成する。監視/制御システム130は、ICIシステム120からICIデータを受信して、物質加工を監視及び/又は制御する目的でICI撮像信号密度及び他の測定値を決定する。
【0017】
物質加工システム110は、プロセスビーム112を生成するためのプロセスビーム源114(レーザや電子線源等)を含む。また、物質加工システム110は、物質加工を行うためにプロセスビーム112をワークピース102に伝える光学系116(コリメータ及び/又はレンズ等)も含む。例示的な一実施形態では、物質加工システム110はレーザ又は電子線溶接システムであり、プロセスビームを用いて、溶接プロセス中に蒸気チャネル又はキーホールを形成し得る。物質加工システム110の一例は、プロセスビーム源114がファイバレーザを含むIPGフォトニクス社製のレーザ溶接システムである。他の物質加工システムも本開示の範囲内にある。
【0018】
物質加工システム110の他の例は、プロセスビームがワークピース上の溶接箇所を走査しながら揺動パターンで素早く移動する揺動溶接システムである。また、揺動溶接システムでは、光学系116が、揺動パターンでプロセスビームを移動させるための可動ミラーや他のアクティブ偏向器や走査アクチュエータを含み得る。「揺動」(wobble,ウォボル)移動の一例は、レーザビームの反復運動(例えば、一つ以上の軸に沿った反復運動)であり、10°未満の走査角度又は±5°未満の最大ビーム角度変位によって定義される比較的小さな視野内にある。揺動溶接システムの例は、参照として全体が本願に組み込まれる本出願人の特許文献4及び2019年7月18日出願の米国特許出願第16/515892号(特許文献5)により詳細に記載されている。
【0019】
ICIシステム120は、撮像ビーム122を生成するための撮像ビーム源124(セミコヒーレント光源等)と、撮像ビーム122をワークピースに向けるための光学系126(コリメータ及び/又はレンズ等)を含む。また、ICIシステム120は、反射した撮像ビーム122から干渉出力を生成するための干渉計128(マイケルソン干渉計等)と、干渉出力を検出してICIデータ(つまり、インターフェログラムデータ)を生成するための検出器129(分光計やカメラ等)も含む。干渉出力は、ワークピースまでの少なくとも一つの光路長と、少なくとも一つの他の光路長に基づいたものとなり得る。例示的な実施形態では、光学系126が、キーホール内の一つ以上の箇所を撮像するために溶接プロセス中に形成されるキーホール内に撮像ビーム122を伝え得る。他の実施形態では、ICIシステム120は、キーホール内の多様な箇所やワークピースに対する多様な箇所に撮像ビーム122を向けるための指向素子(可動ミラー等)(図示せず)を含み得る。ICIシステムの一例は、IPGフォトニクス社製のOmniWELDソフトウェアを備えるICI溶接監視システムである。
【0020】
また、本開示の実施形態は、参照として全体が本願に組み込まれる本出願人の特許文献1、特許文献2、特許文献3に詳細に説明されているようなあらゆる物質加工システムとICIシステムにおいても使用可能である。
【0021】
監視/制御システム130は、撮像信号密度とICIデータからの他の測定値とを少なくとも計算するようにプログラムされたソフトウェアとハードウェア(例えば、汎用コンピュータ)を含む。また、監視/制御システム130は、生ICIデータ、計算された撮像信号密度、及び他の測定値も記録し得る。更に、監視/制御システム130は、加工中にプロセス及び/又はワークピースを監視し得る。監視/制御システム130は、検査又は品質保証(例えば、合格/不合格)を目的としてプロセス及び/又は物質の特性を決定するようにICI撮像信号密度を監視し得る。また、監視/制御システム130は、ICI撮像信号密度を含むアナログ又はデジタルフィードバック(つまり、直接データ出力)に応答して物質加工を制御し得る。また、監視/制御システム130は、キーホール深さ、継ぎ目プロファイル、ワークピース高さ、仕上げ溶接面の高さ、ビードプロファイル、他の距離測定値を含む(これらに限定されない)の他の測定値や測定基準を決定して使用し得る。更に、監視/制御システム130は、プロセスビームに対する相対的な撮像ビームの位置等(これに限定されない)のICIを用いた監視を制御し得る。
【0022】
図2Aを参照して、ICI撮像信号密度を計算するための方法210を示し詳細に説明する。概して、撮像ビームを生成し212(例えば、ICIシステム120の撮像ビーム源124を用いる)、ワークピースに向ける213(例えば、プロセスビームと共に)。キーホール溶接プロセスの一例では、撮像ビームは、溶接キーホール内と、キーホール前後の他の箇所に向けられ得る。また、撮像ビームは、キーホール内とキーホール前後の複数の異なる箇所に向けられ得る。測定結果を改善するために、撮像ビームは、キーホール又は他の加工領域内で整列され得る。
【0023】
ワークピース及び/又は加工領域から反射された撮像ビームの少なくとも一成分から干渉出力を生成する214(例えば、ICIシステム120の干渉計128を用いて)。干渉出力は、ワークピースまでの少なくとも一つの光路長(例えば、サンプルアーム)と、少なくとも一つの他の光路長(例えば、参照アーム)に基づいたものである。キーホール溶接の例では、撮像ビームは、キーホールの側面、キーホールの床(底)、及び/又は表面下構造(キーホール下方の棚等)から後方散乱し得る。
【0024】
干渉データ(インターフェログラムデータ等)を生成するために干渉出力を検出し216(例えば、検出器129を用いて)、干渉出力から撮像信号密度を決定する218(例えば、監視/制御システム130において)。キーホール溶接の例では、以下で詳細に説明するように、干渉データと撮像信号密度は、少なくともキーホールの深さと、ワークピース中へのキーホールの溶け込み具合を示すものである。そして、撮像信号密度を用いて、ワークピースや加工領域(溶接部等)の自動合否や品質保証を与え得る。また、撮像信号密度データを物質加工システム110に直接出力して、物質加工のフィードバック制御を与え得る。追加的に又は代替的に、撮像信号密度を監視システム130にフィードバックして、例えば、監視位置や、プロセスビーム又はワークピースに対する相対的な撮像ビームの位置を調節し得る。
【0025】
図2Bを参照して、撮像信号密度を決定するための方法220を示して詳細に説明する。本実施形態の方法では、ワークピースの加工領域にわたって間隔を空けた又は時間的に間隔を空けた複数のAラインの各々においてICIを用いてワークピースの複数のAスキャンを生成する222。キーホール溶接の例では、溶接ビームが溶接を行うに連れて溶接部の長さに沿って一連のAスキャンが生成され得る。
【0026】
複数のAスキャンの各々が信号強度閾値(例えばdB単位)を超える測定点を含むかどうかを決定し、所定の距離又は時間に対するAスキャンのビン又はウィンドウ内でこの条件を満たすAスキャンのパーセンテージを計算することによって、ICI信号密度を計算する224。加工領域に沿って位置する複数の信号密度ビンに対して信号密度を計算して、加工領域に沿った位置の関数として撮像信号密度を表し得る。キーホール溶接の例では、領域内で可能な全ての測定結果の特定の範囲内(つまりビン又はウィンドウ内)で為された測定結果のこのパーセンテージは、溶接長さの関数としてキーホール信号密度を表す。信号強度閾値(測定閾値や追跡用閾値とも称される)及び/又は信号密度ビンサイズは、ユーザ定義のものとなり得る。以下で詳細に説明するように、多様なアルゴリズムを用いて、加工領域に沿って(例えば、溶接部の長さに沿って)信号密度のビン又はウィンドウの多様な配置構成で撮像信号密度を計算し得る。また、既知の平滑化アルゴリズム(移動平均や中央値、分位フィルタ)を用いて、撮像信号密度の計算を平滑化し得る。
【0027】
図3A~
図3Cを参照して、信号密度のビン又はウィンドウを用いて撮像信号密度を計算するためのアルゴリズムの例を詳細に説明する。
図3A~
図3Cは、加工領域の長さ(溶接部の長さ等)にわたる信号密度のビン又はウィンドウの異なる配置構成での異なるアルゴリズムを示す。各信号密度のビン又はウィンドウは、固定数のAライン測定点(つまり、Aスキャン)を含む固定長さ(例えば、5μm)又は固定時間を含み、加工領域にわたる均一なサンプル間隔をもたらす。撮像信号密度を計算するため、ウィンドウ内で検出された測定結果(つまり、dB単位で閾値を超える測定結果)の数を、ウィンドウ内で可能な測定結果の総数で割り、100%を掛ける。
【0028】
図示の例では、単純明快にするため、各ウィンドウは三つ(3点)の測定点又はAスキャンを含むが、信号密度のウィンドウ又はビンは、他の数の測定点を含み得て、ウィンドウ長はユーザによって定義され得る。測定結果が三つ(3個)全ての測定点又はAスキャンにおいて検出されれば、そのウィンドウ又はビン内の信号密度は100%である。測定結果が三つ(3点)の測定点のうち一つ(1点)で検出されれば、そのウィンドウ又はビン内の信号密度は33%である。そして、計算されたパーセンテージを加工領域に沿った位置の関数としてプロットし得る。
【0029】
図3Aでは、信号密度アルゴリズムは、加工領域の長さにわたってウィンドウ同士の端と端が繋がるエンドツーエンドで配置された(つまり重ならない)複数の固定ウィンドウを用いる。図示の例では、三つ(3点)の測定点毎に、信号密度が、それまでの(つまり、後方に延びるウィンドウ内の)三つ(3点)の測定点に基づいて計算される。このアルゴリズムを用いると、信号密度のウィンドウ長は、加工領域に沿ったサンプル間隔の倍数として設定され得て、各ウィンドウが、その各ウィンドウ内で可能な全ての測定点に一致する数を有するようになる。このアルゴリズムによると、加工領域に沿ったウィンドウ開始位置を測定のx値として、パーセンテージがy値としてプロットされ得る。
【0030】
図3Bと
図3Cでは、信号密度アルゴリズムは、各信号密度ウィンドウが均一な測定可能総数を有するように信号密度ウィンドウを配置する。
図3Bに示される信号密度アルゴリズムでは、信号密度は、各測定点(つまり、検出又は未検出の測定が行われる各箇所)において計算される。図示の例では、各測定点において、信号密度が、それまでの(つまり、後方に延びるウィンドウ内の)三つ(3点)の測定点に基づいて計算される。
図3Cに示される信号密度アルゴリズムでは、信号密度が、各追跡測定箇所(つまり、閾値を超えて検出された測定の各箇所)において計算される。図示の例では、閾値を超えた測定結果が検出された各測定点において、信号密度が、それまでの(つまり、後方に延びるウィンドウ内の)三つ(3点)の測定点に基づいて計算される。
図3Cの例は、均一な測定総数でより少ない信号密度計算と信号密度ウィンドウをもたらす。これらの構成では後方に延びるウィンドを示しているが、ウィンドウは測定点に中心があっても、前方に延びても、他の構成を有してもよい。
【0031】
一部実施形態では、ICI信号密度は、複数の異なる強度閾値レベルを用いて計算される。各閾値に関する信号密度計算は、独立して又はまとめて使用され得て、より具体的なプロセス現象の検出を可能にする。例えば、特定の完全溶け込みキーホール溶接の応用では、「良好な」溶接は、或る閾値レベル(例えば、15dB)を用いた特定のパーセンテージ範囲(例えば、10~20%)の信号密度測定結果と、他の閾値レベル(例えば、20dB)を用いた他の特定のパーセンテージ範囲(例えば、5~8%)の信号密度測定結果を有し得る。
【0032】
一部実施形態では、ICI信号密度は、動的(ダイナミック)強度閾値レベルを用いて計算される。動的強度閾値レベルは、溶接経路位置の関数又は取得時間の関数として特定され得る。ユーザは、プロセス条件についての具体的な知識に従ってカスタム動的限界を構成し得る。一部実施形態では、強度閾値レベルは、Aライン自体のDC(0遅延)信号レベルに従って変更され得る。他の実施形態では、強度閾値レベルは、ワークピース上の他の領域から測定された界面強度に従って変更され得る。更なる実施形態では、強度閾値レベルは、加工前に測定された界面強度に従って変更され得る。このような動的限界を用いて、プロセス条件の変化(例えば、ワークピース形状、物質種類、ビームエネルギー、供給速度、ワークピース表面汚染等の変化)を補償し得て、又は加工設備の変化(例えば、カバーガラスの汚染)を補償し得る。
【0033】
他の実施形態では、信号密度を考慮すべき領域を、他の測定結果(例えば、上方/下方のキーホール深さ、キーホール信号密度等)を用いて、狭くし得る。例えば、ICI信号密度は、複数の異なるAライン深さバンドについて計算され得る。各深さバンド内のICI信号密度は、独立して又はまとめて使用され得て、より具体的なプロセス現象の検出を可能にする。例えば、特定の完全溶け込みキーホール溶接の応用では、「良好な」溶接は、物質の表面下近く(つまり、キーホールの肩部の深さ)で特定のパーセンテージ範囲内の信号密度測定結果と、物質の底面近くでの他の特定の範囲内の信号密度とを有することが必要とされ得る。一部実施形態では、深さバンド領域は、DC(0遅延)強度レベルを測定するように具体的に設定され得る。
【0034】
撮像信号密度を品質保証アルゴリズムにおいて用いて、以下で詳細に説明するように、溶接の合否(合格/不合格)の決定を行い得る。所定の距離又は期間について所定の密度限界又は閾値を超える撮像信号密度は、例えば、不良な溶接をもたらす溶け込みの消失や部分溶け込みを示し得る。他の実施形態では、品質保証アルゴリズムは、撮像信号密度が上限と下限を有する所定の範囲内に存在することに基づいて合否(合格/不合格)を決定し得る。
【0035】
他の実施形態では、撮像信号密度を用いて、システム(ICIシステムや物質加工システム)の健全性を監視し得る。ワークピース表面から、物質加工システム内の特定の箇所から、又はICIシステム内の特定の箇所から測定された信号密度を用いて、システムの構成要素の劣化や損傷を測定し得る。物質加工システムの構成要素(例えば、カバーガラス、集束光学系等)やICIシステムの構成要素(例えば、伝送ファイバ、干渉光学系等)の劣化や損傷は、光路の特定の段における撮像ビームの透過や反射の低下をもたらし得るが、経時的なICI信号密度の降下によって検出可能である。
【0036】
更なる実施形態では、ICI信号密度を用いて、加工セルの健全性を監視し得る。セルの特定の部分(例えば、締め具、治具、機器、機械系等)の信号密度測定を用いて、損傷や汚染を示し得る。
【0037】
一部実施形態では、信号密度の計算の前に、Aラインの平均化、平滑化又は他の集約演算を行い得る。このような演算を用いて、信号密度の測定をスペックルやプロセス不安定性に対してよりロバストにし得る。一部実施形態では、ICIシステムビーム伝送光学系は、スペックルを減らすために拡散器等の特定の光学系を含み得る。
【0038】
図4Aと
図4Bを参照すると、加工領域に沿って計算された信号密度とICI生データを記憶し、加工領域に沿った(例えば溶接部に沿った)位置の関数としてプロットすることによって表示し得る。
図4Aは、キーホール溶接プロセス中の溶接部に沿った位置の関数としてキーホール信号密度の一例を示す。
図4Bは、溶接部に沿った位置の関数としてキーホール深さを示すキーホール生データを示す。図示されているように、撮像信号密度は、キーホールが開く前とキーホールが閉じた後に撮像ビームがワークピースの頂面から反射される溶接の開始と終了において高い。撮像信号密度は、キーホール深さが完全溶け込みに向けて増えるに連れて減少し、完全溶け込み後に撮像ビームが表面下棚から反射されるようになると再び増加する(生データで明信号で示されているように)。この例では、プロットは、溶接部と溶接プロセスを監視することを目的として用いられ得る。例えば、
図4Aの信号密度のプロットを用いて、品質保証を行い、不具合点を決定することができ、
図4Bのキーホール生データのプロットを用いて、キーホール信号密度プロットが予測通りのものであることを確かめることができる。
【0039】
図5A~
図5Eを参照すると、本開示のシステムと方法を用いて、部品がプロセス軸に沿って溶接領域の下方に表面下棚を有する突き合わせ溶接の応用における溶接溶け込みを監視することができる。
図5Aに示されるように、溶接は、圧入突き合わせ接合を介するものであって、プロセスビームと撮像ビームは部品502の溶接領域(矢印で示す)に向けられる。
図5Bは、プロセスビームパワーが0Wでキーホール形成前の部品502と溶接領域503を示す。部品は、空隙505と、溶接領域503の下方の表面下棚506(例えば、頂面の下方略8mmに位置する)を形成している。
図5Cは、プロセスビームパワーが1150~1900Wでの完全溶け込みのキーホール508を示す。この場合、キーホール508は、棚506を露出していて、撮像ビームがキーホール508を通り抜けて、棚506から反射され、キーホール508を通って戻るようになる。
図5Dは、900Wに低下したプロセスビームパワーにおける部分溶け込みのキーホール508を示す。この場合、キーホール508が閉じていて、撮像ビーム522はキーホール508の底509から反射される。
【0040】
図5Eは、どのようにしてICIを用いて突き合わせ溶接の応用において完全溶け込みを監視するのかを示す。ICIシステムは、典型的なキーホール溶接監視用の標準視野(例えば、全部で略12mm)を有する。しかしながら、ICIの全視野は重なり合って、下半分の表面は上半分の表面と重なって見えるようになる。この二重視野を用いて、プロセス軸に沿った溶接経路の下方の棚506からの反射を解像し得る。キーホール508の完全溶け込みは、撮像ビーム用のクリアな経路を与え、下方の表面を撮像してICIデータ中に見えるようにする(標準視野に重なった二重視野内において)。
【0041】
図6~
図9を参照すると、ICIデータを用いて、信号密度を計算し、溶接部の完全溶け込み、部分溶け込み、過剰溶け込み、及び/又は溶け込み消失に基づいて突き合わせ溶接を合格又は不合格にする品質保証アルゴリズムを行うことができる。
図6は、異なるレーザパワーに対する溶接部の溶接長さに沿って生成された生ICIデータを示し、溶接中の異なる溶け込み状態を表している。この例では、レーザを制御して、200msで0Wから1900Wにパワーを上げ、1900Wで450ms、1650Wで400ms、1400Wで400ms、1150Wで400ms、900Wで400msのパワーステップを与え、次いで、400msで0Wに下げた。また、
図6は、溶接品質保証アルゴリズムの望ましい合否(合格/不合格)アウトカムも示す。矢印は、生データがキーホール溶け込み後の下方の棚表面と、溶け込み消失後のキーホール底を示す箇所を示す。パワーが変わると、棚信号の明確な変化が見て取れる。
【0042】
この棚信号の変化は、上述のように撮像信号密度を計算することによって定量化可能である。
図7は、溶接部に沿った距離の関数としての信号密度(フィルファクタとも称される)を、溶接部に沿った距離の関数としてのレーザパワーと共に示す。この例では、信号密度(又はフィルファクタ)は、12dBの強度閾値を超える測定の移動パーセンテージである。信号密度の変化は各パワーステップ毎に見て取れ、略100%の値の信号密度は、撮像ビームが部品の頂面の固体を測る際の溶接の前後に見て取れる。
【0043】
図8A~
図8Eは、信号密度(フィルファクタ)に基づいた品質保証アルゴリズムの結果を示す。この例では、品質保証アルゴリズムは、特定の特性距離(例えば1~2mm)にわたって棚信号の周りでの狭い深さバンド(例えば、200μm)の周りで信号密度が特定のパーセンテージ(例えば、10%)を超えて留まっている場合に溶接を不合格にする。
図8Aは、パワーが1900Wであって狭い深さバンド内の信号密度が完全溶け込みが達成されていることを示し、溶接が合格であることを正しく示している。
図8B~
図8Dは、狭い深さバンド内の信号密度が高過ぎて、これはパワーが低過ぎることを示しているので、溶接が不合格であることを正しく示している。この場合、低いパワーが、棚での少ない乱れと棚からの多くの反射をもたらすものであるので、高い信号密度は、パワーが低過ぎることを示す。
図8Eは、部分溶け込みキーホール信号が、正しいプロセス状態(
図8A)において観測される弱い棚信号と区別するのに十分に密ではない結果として、信号密度が閾値未満に留まっているので、溶接が誤って合格となっている様子を示す。
【0044】
他の測定結果を用いて、
図8Eに示される状態での溶接を正しく不合格にすることができる。特に、品質保証アルゴリズムは、上述のような最大信号密度を、境界外の最大連続距離等の距離測定結果と共に用いて、溶接の合否を決め得る。例えば、
図9に示されるように、境界外、又は、棚信号の箇所の周りの2050μから2250μの間の200μmという狭い深さバンドの外で4mmにわたって連続して測定される距離の結果として、溶接が不合格となる(
図8Eに示される状態において)。1900W領域での境界外の測定点(
図8Aに示される状態において)は、不具合を起こす程のものではなくて、この品質保証アルゴリズムを用いて、その状態での溶接は正しく合格となる。そこで、自動品質保証アルゴリズムは、「OR」論理演算を上述の最大信号密度と最大距離測定結果に適用して、溶接を不合格にし得る。また、特定の応用では最小信号密度も使用され得る。
【0045】
図10Aと
図10Bは、ICIと撮像信号密度を用いて突き合わせ溶接の応用中に溶接溶け込みを監視し得る他の部品形状を示す。
図10Aの部品形状が定めている表面下ポケットは、平坦なポケット床を有し、キーホールが開口している際に撮像ビームの大部分を反射してICIシステムに戻す。
図10Bの部品形状が定めている表面下ポケットは、プロセス軸に直接沿って中心を有する突き合わせ接合で終わるV字溝を含むポケット床を有し、キーホールが開口している際にポケット内で光を散乱させ、より少量の撮像ビームをICIシステムに戻す。この形状で比較的弱い信号がポケット床から戻される場合であっても、撮像信号密度を用いて溶接溶け込みを監視することができる。
【0046】
一部実施形態では、表面下反射を改善するように部品形状を変更又は設計し得る。表面下構造が、良好な反射率を与えない幾何学的形状を有して存在する場合(例えば、
図10Bに示されるような場合)、反射率を改善するように表面下構造を変更し得る。例えば、ポリマー層や他のコーティングをポケット床に使用して、表面下構造の反射率を改善し、ポケット床から戻される信号強度を増やし得る。層及び/又はコーティングは、プロセス中にプロセスビームによって消耗、蒸発、又は他の方法で除去されるように設計され得る。プロセス軸に沿って表面下構造が存在しない場合、キーホールを通り抜ける撮像ビームを反射することができる表面下構造を形成するように部品形状を変更又は設計し得る。
【0047】
バッキングプレートや犠牲物質を意図的に配置して、ICIシステム用の強力な反射を生じさせる場合には、そのような物質やバッキングプレートは、簡単に回復、交換又は洗浄可能であって、レーザや電子線のエネルギーに耐え及び/又はスパッタの接着に耐えることが特に有用である。その一例は、銅表面の上又は下に水を流すことである。この実施形態では、ICIシステムによって水と銅表面を撮像して、溶接部が完全溶け込みとなっていることを確かめることができる。他の実施形態では、銅表面が完全に省かれ、ICIシステムは、溶接接合部の下方を通過するウォータジェットや霧(又は他の流体)を撮像する。光散乱媒体(蒸気を含む同伴ガス)が流体ジェット中に存在する場合には、ICI像用に複数の散乱事象を生成し、他の信号と極めて簡単に区別可能であり、光がワークピースの接合物を通過することができて、溶接の完全溶け込みが想定されていることをユーザが確かめることができるようになる。ICIシステムの積分時間を変更することによって(高速移動アーティファクトに対するシステムの感度を変調するように)、及び/又は、光コヒーレンストモグラフィの分野の当業者に既知のドップラー又はスペックル分散法を適用することによって、プロセスの他の態様(蒸気チャネルやスパッタなど)からの動きと一致しない特定の範囲内の速度を示すようにすることで、散乱媒体が更に識別可能となる。ICI積分時間の変調と同期させて撮像プロセッサを適用して、異なる積分期間で取得された測定結果同士の間の差分比較を可能とすることが特に有用である。
【0048】
一部実施形態では、流体は、プロセスエネルギービーム、又はプロセスビームと共に伝送される他の光学ビームが照射されると放射(例えば、蛍光発光)する物質を備え又は含み、ビーム伝送システム(例えば、伝送ファイバーを含む)及び/又はレーザは、その放射を受けて、溶接の完全溶け込みが生じていることを確認するように構成される。一実施形態によると、補助光学センサを用いてこの放射を受け得る。補助センサを備えたICIシステムの例は、参照として全体が本願に組み込まれる本出願人の国際出願第PCT/US2018/014218号(特許文献6)に開示されている。この放射を受け取って認識することは、プロセス自体からの他の放射(熱いワークピースからの黒体放射等)では難しいものとなり得る。この点を解決するために、この信号の検出を、光学フィルタを用いて特定波長の放射(例えば、蛍光発光輝線)に対して分離し得て、及び/又は、励起源をパルス動作させることによって(数kHzや数MHzの率で)時間的に分離し、パルス中の測定信号を他の時点で測定された信号と比較することによって分離し得る。パルス周波数が、背景ノイズが変化する速度と十分に異なる場合には、真の信号をはるかに簡単に特定して、溶接の完全溶け込みを識別できる。このコンセプトは、ドリル穴開けや切断等の他の物質加工応用にも適用可能であり、実質的に不透明な物質の完全な貫通(full penetration)が生じていることを示すことができる。
【0049】
図11A~
図11Cを参照すると、本開示のシステムと方法を用いて、溶接領域の下方でプロセス軸に沿った表面下構造を用いない突き合わせ溶接の溶接溶け込みを監視することができる。この例では、撮像信号密度を用いて、完全溶け込みと限界溶け込み消失とを区別することができる。
図11A~
図11Cは、レーザパワーが9.6kWからそれぞれ6.0kW、7.0kW、8.0kWの異なるレーザパワーに低下している溶接ルートの像を示す。溶接ルートは
図11Aに見て取れ、
図11Bでは散発的に見て取れるが、
図11Cでは溶接部全体にわたって連続的な溶融となっていて、ルートの薄くなった部分のみを有している。この例では、
図11Aと
図11Bの溶接は不合格となり、
図11の溶接が合格となる。
【0050】
図12A~
図12Cはそれぞれ
図11A~
図11Cに示される溶接の距離の関数としてICIキーホール測定結果を示す。各プロットは、パワーが低下している領域の開始点においてキーホールが閉じていることを示し、その領域内での点密度の増加によって示される。
図13は、
図11A~
図11Cに示される三つの溶接についての距離の関数として撮像信号密度を単一プロットで示し、信号密度1301Aは6.0kWでの溶接のもの、信号密度1301Bは7.0kWでの溶接のもの、信号密度1301Cは8.0kWでの溶接のものである。この例では、測定又は追跡閾値は17dBであり、撮像信号密度が2mm超にわたって2.8%(破線で示される)を超えている溶接が不合格となる。この撮像信号密度のプロットは、撮像信号密度未満で合格した溶接(つまり、
図11Cの溶接)と、撮像信号密度を超えて不合格の溶接(つまり、
図11Aと
図11Bの溶接)とをより明確に区別することによって、合否(合格/不合格)の決定を示すのに役立つ。
【0051】
図14は、速度が3.8m/minと3.5m/minであってパワーが9.6kWから6.0kWに低下している溶接について、ICIキーホール測定結果(上図)と、撮像信号密度(下図)を示す。図示されているように、距離の関数としてプロットされている撮像信号密度は、速度の低下が溶接の合格と不合格との間の差をもたらすことを示している。撮像信号密度を用いて、一つ以上のプロセスパラメータ(溶接速度、パワー、デフォーカス、横方向プロセスビームオフセット等)に変化を与え、溶接キーホールの幾何学的形状を変化させることができる。また、ICI測定設定(測定閾値、信号密度限界、キーホール測定位置等)を調節して、品質保証アルゴリズムが特定の応用に向けて所望の合格/不合格の結果を与えることを保証し得る。
【0052】
図15A~
図15Dを参照すると、撮像信号密度を用いた物質加工の監視用のシステムと方法の更なる実施形態は、揺動溶接プロセス(バッテリタブのレーザ溶接プロセス等)を監視するのに使用され得る。この種のプロセスは、エレクトロモビリティ(Eモビリティ)の応用(バッテリパックアセンブリ等)において一般的であり、多様な構成で伝導性金属(銅やアルミニウム等)を接合するのに多く用いられる。別の金属、鋼や他の鉄合金等、ニッケル等の金属コーティングもこうしたプロセスにおいて一般的である。角柱型セル、ポーチ型セル、シリンダ型セルがバッテリパックアセンブリの構成の非限定的な例として挙げられる。Eモビリティ溶接応用では、そのプロセスに関与する高反射性金属の溶接可能性を改善するために、一般的にシングルモードレーザを用いる揺動溶接法を採用している。
【0053】
この応用では、揺動パターンが、撮像ビーム測定箇所と相変化領域(PCR)位置との間の整列の周期的な空間変動をもたらす。また、揺動パターンは、揺動パターンの周囲での線形エネルギー密度の変化に起因するPCRの周期的な時間変動も生じさせて、キーホール蒸気チャネルの周期的な生成と崩壊をもたらし得る。こうした変動の結果として、所与の撮像ビーム位置で得られる一連のAスキャンは、蒸気チャネルに対応しているものと、その近傍表面(例えば、溶融プールやワークピース表面)に対応しているものとを含み得る。各Aスキャンを対応カテゴリー(例えば、PCR、蒸気チャネル、ワークピース表面、溶融プール等)に分類することは、測定システムの精度を改善するのに有用である。
【0054】
揺動パターン(より具体的にはPCR位置)との正確な時間空間的同期は、実現不可能なものであり得る。そこで、Aスキャンを上述のカテゴリーや種類に分類することは、測定結果自体に含まれる情報に依るものとなる。撮像信号密度を用いて、そのような分類を行うことができる。
図15Aは、溶接部に沿ったAスキャンデータ(つまり、光路距離)を示し、
図15B~
図15Dは、
図15AのAスキャンデータを「キーホール」深さ又は「表面」として分類するための撮像信号密度と静的閾値レベルの使用を示す。また、より複雑な閾値化法と信号分析法を用いて、分類精度を改善し得る。
【0055】
図15Bは、
図15Aの深さ追跡データに対応している信号密度プロットを示す。信号密度は、一定の信号密度閾値レベル(この例では0.78)に対して比較されている。閾値を超える信号密度の値を有するAスキャンは「表面」と分類され、閾値未満の値を有するものは「キーホール」深さと分類される。「キーホール」Aスキャンからの深さ追跡データ点は、
図15Cにおいて「表面」Aスキャンからの深さ追跡データ点とは別にプロットされている。そして、分類されたデータは、例えば、上述のように追加のデータ処理、品質保証決定、フィードバック制御信号用に用いられ得る。この例では、「キーホール」深さ信号が「表面」信号から引かれて、ワークピースの局所的表面に対する相対的な深さ測定結果を生成している(
図15D)。そして、表面を基準にしたキーホール深さに、それ自体の品質保証決定アルゴリズムが適用され得る。また、「表面」信号を用いて、スキャン用光学系に起因する光路距離の変動を補正することができる。
【0056】
パルスレーザ溶接の応用においてもPCRに同様の周期的時間変動が観測され、上述の分類の対象となり得る。上記例は周期的PCR変化についてのAスキャンの分類を示しているが、上述の分類法は、非周期的に変化しているPCRや他のワークピースの特徴についても有用である。このような変化を生じさせ得るプロセスの例としては、プロセス条件(物質種類、レーザパワー、溶接速度、フォーカス、シールドガス等)が変動するものや、固有の不安定性がより高いものが挙げられる。
【0057】
図示の例は「表面」と「キーホール」の分類を示しているが、撮像信号密度を用いてAスキャンを分類するというコンセプトは、相変化領域やワークピースサブ領域のあらゆる態様に関与するものとしてもAスキャンを分類するのに使用可能である。こうした態様としては、蒸気チャネル、蒸気チャネル底、蒸気チャネル側壁、溶接溶け込み深さ、溶融プール、ワークピース表面、物質組成、物質相、物質密度が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
上述の方法の更なる応用として、ワークピースの多様な態様の分類と識別特定が挙げられる。複数の物質種で構成されるワークピースについて、信号密度を用いて、或る物質種を他の物質種と区別したり、Aスキャンが特定の物質種に属するのか否かを分類したりすることができる。異なる物質種について固有に異なる光学特性と幾何学的特性は、撮像システムが受ける異なる信号レベルを生じさせる。これらの信号レベルは異なる信号密度読取値を表し、それらの値を閾値化アルゴリズムと組み合わせて用いて、特定の物質種に対応するようにAスキャンを分類することができる。このような分類は、多種多様な応用(異種物質レーザ溶接、レーザ物質除去、レーザクリーニング、レーザアディティブマニュファクチャリング、レーザマーキングが挙げられるがこれらに限定されない)において有用となる。
【0059】
物質相(例えば、固体、液体、気体)や物質相程度(例えば、半固体、半液体)は、撮像システムが受ける測定信号レベル、つまりは信号密度に対して同様の影響を有する。信号密度の分析を用いて、一つの物質相や物質相程度を他のものと区別することができる。この種の分類は、プロセスの固体(例えば、ワークピース)と、液体(例えば、溶融プール)と、気体(例えば、キーホール溶接の蒸気チャネル)の態様を区別する必要が多いレーザ加工応用において有用となり得る。
【0060】
また、物質密度も、上述のものと同様の信号密度レベルの特性変化を生じさせる。例えば、金属粉末粒子の凝集体(例えば、粉末系アディティブマニュファクチャリングで使用されるもの等)は、対応のバルク固体形状のものよりも散漫散乱を生じさせる。散漫散乱は、典型的には、より反射性の表面に関連している信号密度読取値から、例えば信号安定性や信号レベルによって区別可能である信号密度読取値をもたらす。
【0061】
本願に含まれる例は、信号密度に基づいたAスキャン分類の利点の単純な例である。上述の方法は他の応用に拡張可能である。
【0062】
より汎用な使用として、Aスキャン取得結果を一つ以上の個々のチャネルに分類することが挙げられるが、これに限定されない。それらのチャネルを追加分析して、プロセスの態様を測定又は定量化することができる。Aスキャンがどのチャネルに属しているのかという分類に加えて、Aスキャンが或るチャネルに属していないことを特定する分類も挙げられる。
【0063】
本開示の方法は、例えば、ハードウェアの制限や変動するプロセス条件の結果として、プロセスの事前の計画立案や同期が可能ではない応用やプロセスに特に適している。Aスキャンの分類は、プロセスの態様に対する事後的な同期を与えることによって、こうした制限を克服するのに役立つ。
【0064】
インラインコヒーレント撮像信号の密度を計算するためのシステム、方法、アルゴリズム、ソフトウェアが与えられる。その方法を用いて、レーザ物質可能の監視や制御ができ、物質、部品、構成要素、製品等の全般検査を行うことができる。
【0065】
一実施形態では、ICI信号密度の計算は、各Aスキャンがユーザ定義の信号強度閾値(例えば、検出器ノイズフロアを超えてdB単位で測定され、ゼロ遅延点付近のユーザ定義領域を除く)を超える測定点を含むかどうかを決定し、信号がまとめられるユーザ定義の距離又はユーザ定義の時間(「ビン」と称される)内でこの条件を満たすAスキャンのパーセンテージを計算することによって行われる。
【0066】
一部実施形態では、複数のビンが、取得した一番目のAスキャンで始まる測定のビン同士の端と端が繋がるエンドツーエンドで定義され得る。一部実施形態では、複数のビンが、一貫して重なって定義され得る。一部実施形態では、複数のビンは、上記条件を満たすAスキャンの位置に関して重なって定義され得る。一部実施形態では、結果としてのパーセンテージの値を、移動平均、中央値、分位フィルタ等のアルゴリズム(これらに限定されない)によって更に平滑化し得る。
【0067】
一部実施形態では、本方法によって生成されたデータは、レーザ物質加工プロセスの自動合否や品質評価に用いられ、又は、物質、部品、構成要素、製品等の自動合否や品質評価に用いられ得る。
【0068】
一実施形態では、ICI信号の強度又は密度を用いて、完全溶け込みレーザ又は電子線溶接プロセスの蒸気チャネルを監視する。
【0069】
他の実施形態では、本方法を用いて、部分溶け込みレーザ又は電子線溶接プロセスの蒸気チャネルを監視する。
【0070】
他の実施形態では、本方法を用いて、伝導型レーザ又は電子線溶接プロセスの溶融プールを監視する。
【0071】
他の実施形態では、本方法を用いて、キーホール型溶接プロセスと伝導型溶接プロセスとの間の典型的なエネルギー密度方式での中間レーザ又は電子線溶接プロセスの溶融プール又は初期蒸気チャネルを監視する。
【0072】
他の実施形態では、本方法を用いて、部分溶け込み又は完全溶け込みのレーザ又は電子線溶接プロセスの溶融プールを監視する。
【0073】
他の実施形態では、本方法を用いて、レーザ又は電子線物質加工プロセスの前における物質の表面状態や特性を監視する。
【0074】
他の実施形態では、本方法を用いて、レーザ又は電子線物質加工プロセスの後における物質の表面状態や特性を監視する。
【0075】
他の実施形態では、本方法を用いて、レーザ又は電子線物質加工プロセスの前に物質の表面状態や特性を検査する。
【0076】
他の実施形態では、本方法を用いて、レーザ又は電子線物質加工プロセスの後に物質の表面状態や特性を検査するが、ここでいう「物質」とは、溶接溶融領域自体、周囲の物質、物質/表面コーティング、又はプロセスに関連する他の表面部のことを称し得る。
【0077】
本方法を用いて、蒸気チャネルが表面下の中空空間や空隙に入り込む完全溶け込みレーザ又は電子線溶接プロセス、又は、蒸気チャネルが表面下の中空空間や空隙に入り込まない完全溶け込みレーザ又は電子線溶接プロセスにおける蒸気チャネルを監視することができる。一部実施形態では、表面下の中空空間や空隙はガスポケットや同様の特徴部であり得る。一部実施形態では、蒸気チャネルは物質を貫通して自由空間内に至り、その自由空間内にはプロセス軸に沿って他の表面が存在している。その自由空間内の表面として、溶接される部品やアセンブリの段や棚、周囲の装置の表面、溶接部品が属するアセンブリ内の他の構成要素の表面、溶接プロセス中に適所に存在する犠牲又は一時的なガードやシールドの表面、溶接セル内に存在する締め具、治具、ガス伝達部、排気設備の表面が挙げられる。
【0078】
他の実施形態では、本方法は、溶接の溶け込み深さ等の他の測定基準や測定結果を抽出又は計算するために同じICIデータに適用される他の方法、アルゴリズム及びソフトウェアと並列に使用される。他の実施形態では、本方法の結果は、同じICIデータに並列して適用される溶け込み深さ抽出方法の深さの結果と独立して、溶接プロセスの特定の態様の監視、合否評価、又は制御に使用される。他の実施形態では、本方法の結果は、同じICIデータに並列して適用される溶け込み深さ抽出方法の深さの結果と併用して、溶接プロセスの特定の態様の監視、合否評価、又は制御に使用される。
【0079】
他の実施形態では、本方法は、他の測定基準や測定結果を抽出又は計算するために同じレーザ物質加工プロセス中に取得されたICIデータの他のサブセットに適用される他の方法、アルゴリズム及びソフトウェアと並列して用いられる。
【0080】
他の実施形態では、本方法は、溶接される物質の高さ、物質又は周囲の装置の縁、接合部若しくは継ぎ目の横方向位置、仕上がった溶接部の長手方向表面プロファイル、又はそれらから導出される測定基準や特徴、仕上がった溶接部の横方向表面プロファイル、又はそれらから導出される測定基準や特徴を抽出及び/又は計算するために同じレーザ又は電子線溶接プロセス中に取得されたICIデータの他のサブセットに適用される他の方法、アルゴリズム及びソフトウェアと並列して用いられる。
【0081】
他の実施形態では、計算された信号密度を、同じICIデータの測定強度とまとめて又は並列して用いて、測定されている物質、部品、又はプロセスについての関連情報を更に良好に抽出することができる。この強度データはフィルタリング、平滑化、又は平均化され得る。
【0082】
他の実施形態では、信号密度測定結果を用いて、乱流プロセス(例えば、アルミニウム/チタン/合金の溶接)についてキーホール/溶接の安定性を決定する。
【0083】
一部実施形態では、本方法をより効果的に用いることを目標として、ICIビームの後方散乱を一貫して又は予測可能に促進するように表面下特徴部を意図的に設計し得る。このような特徴部として、ガスポケットやチャネル、プロセス領域の下方で部品又はアセンブリ内に含まれる他の特徴部、プロセスビーム軸の領域内のいずれかの箇所に位置する他の特徴部が挙げられる。このような設計は、幾何学的形状、表面仕上げ、表面角度、物質選択(例えば、蛍光発光や光散乱によって特定可能であること)、コーティング、クラッド、塗装、本方法を用いる測定を促進する他の設計要素を含み得る。また、こうした設計要素は、本方法を用いる測定を促進するようにレーザプロセスに影響を与えるように設計された通気やガス流や溶融流の管理手法も含み得る。
【0084】
他の実施形態では、加工されている物質の相変化領域(PCR)の複数の特徴部が、ICIシステムを用いて同時に又は逐次的に照らされて、各領域からの信号密度が一次元又は複数次元で別々に分析され、及び/又は、領域同士を相関させて、物質加工プロセスの一つ以上のパラメータを示すようにする。
【0085】
他の実施形態では、プロセスの一つ以上の領域からの信号密度を用いて、プロセスを管理する。このような管理は、実時間(プロセス中)でのもの、又は複数のサイクル間でのものとなり得る。
【0086】
一部実施形態では、ICIビームをディザリング(振動)させて、プロセスの不安定性を補償するが、これは、特に、突き合わせ接合の両側が不均一な厚さのものである場合に当てはまる。こうした場合には、プロセスビームに対する相対的なワークピースの運動が、PCRの幾何学的形状に大きな影響を与え得るが、この運動によって生じる不安性がディザリングによって補償される。
【0087】
一部実施形態では、キーホール底の測定箇所を、継ぎ目位置の他のICI測定結果及び/又はPCR自体のICI測定結果に基づいて変更する。
【0088】
更なる実施形態では、ICI信号密度が計算される完全溶け込みレーザ溶接の溶接されたアセンブリの物質の棚又は他の表面は、プロセス軸に略垂直であって、プロセス軸が横断するものであって、溶接ビーム伝送光学系の反対側において目標溶接接合部から10m未満で隔てられているものである。その物質の棚は、溶接プロセス中に完全溶け込み蒸気チャネルを通り抜ける(つまり、チャネルを通って棚に至り、また戻るという往復移動を行う)ICIビームによって測定される。ICI信号の密度は、同じICIデータから並列して抽出される溶接溶け込み深さ測定結果と共に計算される。信号密度の測定結果に溶接溶け込み測定結果と共に論理式を適用して、レーザ溶接プロセスの自動合否決定を定式化し、自動制御に関するデータを生成するようにする。本方法は、継ぎ目位置、物質高さ、長手方向仕上げ溶接表面プロファイル及びその導出測定基準、横方向表面プロファイル及びその導出測定基準、インラインコヒーレント撮像又はフォトダイオード型プロセス監視システムによって得られた他の測定結果(及びその導出測定基準)に基づいてプロセスを監視するための他の方法と共に適用される。
【0089】
本開示の他の態様は、プロセッサによって実行されると、本開示に係る撮像信号密度計算をそのプロセッサ(又はそのプロセッサを含むデバイス)に行わせるコンピュータ可読命令を含むコンピュータ可読記憶媒体に関する。使用時には、コンピュータ可読記憶媒体は、製品の形となり得る。一部例では、コンピュータ可読記憶媒体は、非一時的コンピュータ可読媒体や機械可読記憶媒体であり得て、光学記憶媒体、磁気記憶媒体、半導体記憶媒体が挙げられるが、これらに限定されない。いずれの場合でも、記憶媒体は、例えば撮像信号密度を計算し、撮像信号密度を用いて物質加工を監視及び/又は制御する方法の工程を命令するコンピュータ実行可能命令を含み又は記憶し得る。使用可能な適切なコンピュータ可読記憶媒体の非限定的な例として、電子データを記憶することができる有形媒体、例えば、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、リムーバブルメモリ、非リムーバブルメモリ、消去可能メモリ、消去不能メモリ、書き込み可能メモリ、再書き込み可能メモリ等が挙げられる。コンピュータ実行可能命令の例として、適切な種類のコード、例えば、ソースコード、コンパイル済みコード、解釈コード、実行可能コード、静的コード、動的コード、オブジェクト指向コード、ビジュアルコード等が挙げられる。
【0090】
以上、本発明の原理を説明してきたが、この説明は、単に例示であり、本発明の範囲を限定するものではないことを当業者は理解されたい。他の実施形態は、本願で開示されている例示的な実施形態に加えて本発明の範囲内において想定されるものである。当業者による変更や置換は、添付の特許請求の範囲以外によっては限定されることなく本発明の範囲内にあるものとされる。
【0091】
112 プロセスビーム
122 撮像ビーム
502 部品
503 溶接領域
505 空隙
506 表面下棚
508 キーホール
509 キーホールの底
522 撮像ビーム