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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】二酸化チタン構造体の製造
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20240716BHJP
   C01G 23/04 20060101ALI20240716BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240716BHJP
   H01M 10/054 20100101ALN20240716BHJP
【FI】
C01G23/00 B
C01G23/00 Z
C01G23/04 Z
H01M4/48
H01M10/054
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021547337
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 EP2020053922
(87)【国際公開番号】W WO2020165419
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】1950193-1
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】1950194-9
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】521355968
【氏名又は名称】ティオテック エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ウェスターモエン アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】コーケリー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ビエンファイト アンドレ マルセル
(72)【発明者】
【氏名】スカル ヒョルディス
(72)【発明者】
【氏名】テイグランド アンダース
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-211030(JP,A)
【文献】特開2016-192341(JP,A)
【文献】特開2013-203577(JP,A)
【文献】特表2016-531839(JP,A)
【文献】国際公開第2014/118372(WO,A1)
【文献】特開2008-247712(JP,A)
【文献】特開2001-206720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00ー23/08
H01M 4/00ー4・62
H01M 10/05ー10/0587
H01M 10/36-10/39
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート、ワイヤ及びチューブからなる群から選択されるチタン化合物の構造体の製造方法であって、
連続する工程c)、工程d)及び工程e)を行う前に、
i)連続する工程a)及び工程b)、又は
ii)工程ab)
のいずれかを実行することを含み、各工程は、
a)一般式[TiO(OH)4-2xを有する少なくとも1種のチタン酸を準備し、それを、TiOCl、TiCl、及びHClからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む水溶液中に、透明溶液が得られるように溶解する工程であって、溶解後、前記透明溶液のpHは1未満である工程、
b)前記透明溶液の温度を、沈殿が起こり始める68~85℃の範囲の温度に達するまで上昇させ、前記沈殿が起こり始める前に少なくとも1種の酸性安定剤を添加し、撹拌しながら少なくとも1分間、その温度を保持して、中間生成物としてのTiOを含む粒子の分散液を得る工程、
ab)TiOを含む粒子の分散液を準備する工程であって、前記分散液中の前記粒子の平均直径は、3~20nmであり、前記分散液は、酸性安定剤としての少なくとも1種のα-ヒドロキシ酸を含む工程、
c)工程b)又は工程ab)からの前記分散液の中の水酸化物イオンの濃度を、アルカリ金属水酸化物MOHを添加することにより、少なくとも8Mに調整する工程、
d)工程c)からの前記分散液を90~170℃の範囲の温度で6~72時間処理して、アルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体を得る工程、並びに
e)前記アルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体を、アルカリ金属イオンMの少なくとも一部をHと交換するように処理して、プロトン化チタネートを含む複数の第2の構造体を得る工程
である方法。
【請求項2】
工程b)又は工程ab)の後で工程c)の前に、
b1)ゾルが形成される点までイオン濃度が下がるように、希釈、濾過、限外濾過透析、ダイアフィルトレーション、及びクロスフロー濾過のうちのいずれか1つ以上の方法によって前記分散液の中のイオンの含有量を減少させる工程であって、前記ゾルの中の前記粒子の平均直径は3~20nmである工程と、
b2)前記分散液の中のTiOの濃度を、10~80%の範囲内の値に調整する工程と
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)の後の前記分散液又は工程b1)及び工程b2)の後のゾルが、少なくとも15重量%の二酸化チタンを含む請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程e)の後に得られる前記プロトン化チタネートを含む複数の第2の構造体が、300~700℃の範囲の温度に加熱され、二酸化チタンを含む複数の第3の構造体が得られる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の酸性安定剤が、カルボン酸及びα-ヒドロキシ酸から選択される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種のアルカノールアミン及び少なくとも1種の酸性安定剤が、工程c)の前に一緒に添加される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記分散液が、工程b)と工程c)との間で乾燥及びこの乾燥後の再分散が行われることなく、分散状態のまま留まる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記分散液が、工程b)と工程c)との間で乾燥され、再分散される請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)の後に得られる前記分散液から乾燥された前記粒子の、ISO 9277に従って測定された比表面積が200~300m/gの範囲にある請求項1から請求項6及び請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程a)での溶解後のpHが0よりも低い請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)から得られた前記分散液のpHが、0.5~1.5の範囲の値に調整される請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程b1)及び工程b2)から得られた前記ゾルのpHが、0.5~1.5の範囲の値に調整される請求項2から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体が、工程d)と工程e)との間で残りの液体から分離される請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
チタン以外の遷移金属イオンは添加されない請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ラマン分光法で測定してアナターゼ型の二酸化チタンが形成されない限り前記加熱が行われる請求項4に記載の方法。
【請求項16】
前記加熱が、0.5~10時間の範囲の時間で行われる請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ、シート、及び/又はワイヤからなる群から選択される構造体を含む、チタン化合物の構造体の形成方法に関する。本発明はさらに、二酸化チタン粒子を含む中間分散液及び二酸化チタン粒子を含む中間ゾル、並びにチューブ、シート又はワイヤの形態の二酸化チタンを含む構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
1次元(1D)ナノ材料は古くから研究されている。金属酸化物の中でも、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノファイバー等の1D二酸化チタンナノ構造体は、汚染物質の吸着、触媒反応、光触媒反応、Naイオン電池及びLiイオン電池、太陽電池、センサ、及びセンシング技術等への応用について研究されている。二酸化チタンナノチューブは、高い表面積及び高いイオン交換能力を有しており、このため、様々な用途でのカチオン置換により適している。二酸化チタンの多形体であるTiO(B)(本明細書では「ブロンズ」とも呼ばれる)は、容量、寸法安定性、低毒性、環境プロファイル及び不燃性に限られないその好ましい特性のために、リチウムイオン電池にとって特に魅力的である。上述の好ましい特性のうち、これらは、急速充電、サイクル安定性、及び高電流需要が望まれる用途において、好ましいユーザー特性をもたらす。
【0003】
チューブ及びシート等の二酸化チタン構造体の製造は、典型的には、液体中に分散している二酸化チタンの粒子又は粉末から始まる。
【0004】
国際公開第2015/038076号パンフレットは、二酸化チタンナノチューブの形成方法であって、基剤に分散された二酸化チタン前駆体粉末を含む密閉容器を加熱する工程を含み、この密閉容器内の内容物は、加熱中にマグネチックスターラーで同時に撹拌される方法を開示する。電池のアノード及びその製造も開示されている。
【0005】
中国特許出願公開第103693681号明細書は、低温撹拌水熱法による二酸化チタン粉末を用いた超長尺のチタン酸マイクロナノチューブの調製方法であって、粉末状の二酸化チタン及び水酸化ナトリウムを原料として用いて水熱反応を行うことを含む方法を開示する。
【0006】
韓国特許出願公開第20080057102号明細書は、ゾルを出発点とする二酸化チタンナノチューブの製造方法であって、強アルカリ性水溶液に二酸化チタンゾルを添加する工程と、その強アルカリ性水溶液を加熱する工程と、この強アルカリ性水溶液に塩酸を添加してpHを調整する工程と、水で洗浄する工程とを含む方法を開示する。二酸化チタン粒子ゾルは、30nm以下の粒子径を持つように言及されている。実施例では、金属イオンを添加せずに20~30nmの粒子径が挙げられている。バナジウムイオン等の異なるイオンを添加すると、粒子径は約5nmにまで小さくなる。
【0007】
先行技術で最も一般的な方法は、粒子(粉末)を濃厚なNaOH溶液に分散させて懸濁液を得ることから始まる。これにはいくつかの問題がある。
【0008】
米国特許出願公開第2016/0207789号明細書は、高アスペクト比のチタネートナノチューブの形成方法を開示する。特に、10μm超の長さを有する細長いナノチューブの形成には、改良された水熱法が用いられる。この方法では、水処理等の様々な用途で使用するための、自立した膜又は粉末状として使用するための細長いナノチューブの絡み合ったネットワークを形成することができる。この細長いナノチューブは、電池の電極を形成するために使用されてもよい。
【0009】
米国特許第9,972,839号明細書は、負極活物質、その調製方法、及びその負極を含むリチウム二次電池を開示する。この負極活物質は、複数の酸化チタンナノチューブを含み、その負極活物質のラマンシフトは、約680cm-1~約750cm-1の間のラマンシフトに位置する特徴的なピークを含む。
【0010】
米国特許出願公開第2018/0261838号明細書は、炭素をドープしたTiO-ブロズナノ構造体を開示しており、好ましいことにナノワイヤが、容易なドーピングメカニズムを介して合成され、リチウムイオン電池の活物質として利用された。ワイヤの形状と炭素ドーピングの存在との両方が、この材料の高い電気化学的性能に寄与している。例えば、炭素を直接ドープした場合、リチウムイオンの拡散長が短くなり、ワイヤの導電性が向上することがサイクル実験により実証され、これにより、ドープされていないナノワイヤに比べて、著しく高い容量及び優れたレート性能が確認された。このようにして作製された炭素ドープナノワイヤをリチウムハーフセルで評価したところ、0.1Cの電流レート(Cレート)で約306mAh・g-1(理論容量の91%)のリチウム貯蔵容量と、1000回の充電/放電サイクル後に10Cの電流レートでも約160mAh・g-1という優れた放電容量を示した。
【0011】
米国特許出願公開第2006/0264520号明細書は、親水性ポリマーで表面が化学修飾された表面修飾二酸化チタン粒子であって、この親水性ポリマーのカルボキシル基と二酸化チタンがエステル結合を介して結合している表面修飾二酸化チタン微粒子、並びにその表面改質二酸化チタン微粒子の製造方法であって、粒子径2~200nmの二酸化チタン微粒子を含む分散液及び水溶性ポリマーの溶液を混合する工程と、得られた混合物を80~220℃の温度で加熱することにより、両成分をエステル結合によって結合させる工程と、未結合の水溶性ポリマーを除去して、得られた粒子を精製する工程とを含む方法を開示する。この表面修飾二酸化チタン微粒子は、中性域を含む広いpH領域において、水系溶媒への優れた分散性及び安定性を示す。
【0012】
従来の技術の課題には、粉体の凝集及び沈降が、反応物の不均一な分布、固体表面の反応表面積の相対的な低さに起因する反応速度の阻害、粉体凝集体内及びその近傍での拡散及び物質輸送の阻害、不均一な反応速度、沈降した粉体凝集体の均質化の困難さ、並びに粒子の負荷が増大した際のこれらの問題の悪化が生じるということが含まれる。粒子を液体に分散させる際には、粉体粒子を分離して懸濁液を得るための分散工程が必要であり、これには時間とエネルギーがかかる可能性がある。それでも、原料が大きな粒子の集合体から構成される粉末の場合、撹拌してもそれらの大きな粒子がより小さくなることはない。
【0013】
さらに、上記方法が小さな粒子が分散したゾルから出発した場合、これらの粒子が強アルカリ性条件で不可逆的に凝集して大きな粒子を形成し、この大きな粒子は、チタネート(チタン酸塩)の形成が遅いという問題が起こる可能性がある。pH値の範囲で粒子を安定化させ、さらに経済的に現実的な条件で構造体への凝集を可能にすることは、先行技術の課題である。
【0014】
構造体(すなわち、チューブ、ワイヤ及びシート)の製造に使用される分散粒子の比表面積を高くし、二酸化チタンの構造体を製造するための効率的かつ経済的なプロセスを提供することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】国際公開第2015/038076号パンフレット
【文献】中国特許出願公開第103693681号明細書
【文献】韓国特許出願公開第20080057102号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0207789号明細書
【文献】米国特許第9,972,839号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0261838号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0264520号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、先行技術における課題の少なくとも一部を緩和し、改善された合成、得られた構造体の強化された特性、及び改善された使用範囲を示す、シート、ワイヤ及び/又はチューブ等のチタン化合物の構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
チタン化合物は、アルカリ金属チタネート、プロトン化チタネート又は二酸化チタン(TiO)であってもよい。
【0018】
本開示に係る方法によって製造されたシートは、湾曲していてもよい。
【0019】
本開示に係る方法によって製造されたチタン構造体は、骨結合、触媒反応、光触媒反応、水処理、リチウムイオン電池及びナトリウムイオン電池のアノード(負極)を含む電池用電極の製造等、多くの用途を有する。
【0020】
第1の態様では、シート、ワイヤ及びチューブからなる群から選択されるチタン化合物の構造体の製造方法であって、一般式[TiO(OH)4-2xを有する少なくとも1種のチタン酸を準備し、それを、TiOCl、TiCl、及びHClからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む水溶液中に、透明溶液が得られるように溶解する工程であって、溶解後、上記透明溶液のpHは1未満である工程と、b)上記透明溶液の温度を、沈殿が起こり始める68~85℃の範囲の温度に達するまで上昇させ、上記沈殿が起こり始める前に少なくとも1種の酸性安定剤を添加し、撹拌しながら少なくとも1分間、その温度を保持して、中間生成物としてのTiOを含む粒子の分散液を得る工程と、c)工程b)からの上記分散液の中の水酸化物イオンの濃度を、アルカリ金属水酸化物MOHを添加することにより、少なくとも8Mに調整する工程と、d)工程c)からの上記分散液を90~170℃の範囲の温度で6~72時間処理して、アルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体を得る工程と、e)上記アルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体を、アルカリ金属イオンMの少なくとも一部をHと交換するように処理して、プロトン化チタネートを含む複数の第2の構造体を得る工程とを含む方法が提供される。
【0021】
第1の態様の代替として、シート、ワイヤ及びチューブからなる群から選択されるチタン化合物の構造体の製造方法であって、ab)TiOを含む粒子の分散液を準備する工程であって、上記分散液中の上記粒子の平均直径は、3~20nm、好ましくは4~15nm、より好ましくは4.5~7nmであり、上記分散液は、酸性安定剤としての少なくとも1種のα-ヒドロキシ酸を含む工程と、c)工程ab)からの上記分散液の中の水酸化物イオンの濃度を、アルカリ金属水酸化物MOHを添加することにより、少なくとも8Mに調整する工程と、d)工程c)からの上記分散液を90~170℃の範囲の温度で6~72時間処理して、アルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体を得る工程と、e)上記アルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体を、アルカリ金属イオンMの少なくとも一部をHと交換するように処理して、プロトン化チタネートを含む複数の第2の構造体を得る工程とを含む方法が提供される。
【0022】
上記のように得られる透明溶液は、可視光に対してほぼ又は完全に透明であり、未溶解のチタン酸による曇り又は可視光の散乱がほとんど検出可能でないか又はまったく検出可能でないものとして定義され、可視光レーザーを、その可視光レーザーが、肉眼では上記溶液内からの可視光の散乱がほとんど検出可能でないかまったく検出可能でない状態で、上記溶液を真っ直ぐ通過するまで上記溶液に照射することによって、判定されてもよい。あるいは、透明溶液は、通常の12ポイントの印刷テキストがガラスパイプに入れた上記溶液の10cmの長さの経路を通して解像されるときに、実際に検出されてもよい。
【0023】
MOHは、アルカリ金属水酸化物を表し、「M」はアルカリ金属を表す。アルカリ金属水酸化物(MOH)は、水酸化ナトリウム(NaOH)及び水酸化カリウム(KOH)からなる群から選択されてもよい。
【0024】
この方法の1つの利点は、チタン酸を溶解するために使用するTiOCl溶液の量に対する溶解したチタン酸の比率を調整することによって、この方法で作られたゾルの中の粒子サイズ(粒子径)を調整することができることである。
【0025】
1つの実施形態では、当該方法は、工程b)の後で工程c)の前に、b1)好ましくは、ゾルが形成される点までイオン濃度が下がるように、上記分散液の中のイオンの含有量を減少させる工程であって、上記ゾルの中の上記粒子の上記平均直径は3~20nm、好ましくは4~15nm、より好ましくは4.5~7nmである工程と、b2)上記分散液の中のTiOの濃度を、好ましくは10~80%の範囲内の値に、より好ましくは20~70%の範囲内の値に、最も好ましくは30~50%の範囲内の値に調整する工程をさらに含む。
【0026】
これにより、工程b1)及び工程b2)の後にゾルが形成され、このゾルは、その後、チタン化合物を含む上記構造体を製造するために使用されてもよい。
【0027】
工程b1)は工程b2)の前に行われてもよい。工程b1)及び工程b2)は数回繰り返されてもよい。
【0028】
工程b2)は工程b1)の前に行われてもよい。工程b2)及び工程b1)は数回繰り返されてもよい。
【0029】
工程b1)及び工程b2)を含む方法の利点は、分散液中の他の種を濃縮することなくTiO濃度を高めることである。
【0030】
工程b1)及び工程b2)の後、TiOのアルカリ性ゾルが形成される。
【0031】
第2の実施形態では、工程b)の後の分散液又は工程b1)及び工程b2)の後のゾルは、少なくとも15重量%の二酸化チタン、好ましくは少なくとも17重量%の二酸化チタン、より好ましくは少なくとも25重量%の二酸化チタン、さらにより好ましくは少なくとも30重量%の二酸化チタン、さらにより好ましくは少なくとも40重量%の二酸化チタン、最も好ましくは少なくとも50重量%の二酸化チタンを含む。
【0032】
好ましくは、工程b)の後の分散液又は工程b1)及び工程b2)の後のゾルは、80重量%以下の二酸化チタンを含む。従って、工程b)の後の分散液又は工程b1)及び工程b2)の後のゾルは、15~80重量%、17~80重量%、25~80重量%、30~80重量%、40~80重量%、又は50~80重量%の二酸化チタンを含んでいてもよい。
【0033】
二酸化チタン(TiO)の含有量が高いことが望まれるのは、それがより低濃度のものに比べてより高密度の分散液をもたらすからである。より高密度の分散液は、所定の体積におけるより多くの二酸化チタンを意味し、これは体積一定の反応器におけるより高い収率に直接反映されることができる。加えて、所定の体積におけるより多くの二酸化チタンは、二酸化チタンの単位あたりに使用される分散液の全体的な量を減らし、保管や取り扱いに関連するコスト及び時間を低減する上で有利になることが可能であるため、望ましい。
【0034】
別の実施形態では、工程e)の後に得られるプロトン化チタネートを含む複数の第2の構造体は、300~700℃、好ましくは300~600℃、より好ましくは300~450℃、最も好ましくは300~400℃の範囲の温度に加熱され、二酸化チタンを含む複数の第3の構造体が得られる。
【0035】
従って、本開示に係る方法は、工程e)の後に、f)工程e)の後に得られるプロトン化チタネートを含む複数の第2の構造体を、300~700℃、好ましくは300~600℃、より好ましくは300~450℃、最も好ましくは300~400℃の範囲の温度に加熱して、二酸化チタンを含む複数の第3の構造体を得る工程をさらに含んでもよい。
【0036】
1つの実施形態では、ラマン分光法で測定してアナターゼ型の二酸化チタンが形成されない限り、加熱が行われる。アナターゼが形成されていないことを確認するために、異なる加熱時間の後に試料が採取され、ラマン分光法で分析されることが可能である。一般に、アナターゼ型は、ほとんどの用途で望まれない。1つの実施形態では、上記加熱は、0.5~10時間の範囲の時間で行われる。通常、この加熱は0.5~10時間の範囲で行われる。ラマン分析が行えない場合は、0.5~10時間の範囲の加熱時間を行うことができる。
【0037】
さらなる実施形態では、少なくとも1種の酸性安定剤は、カルボン酸及びα-ヒドロキシ酸から選択される。1つの実施形態では、この少なくとも1種の酸性安定剤は、α-ヒドロキシ酸である。
【0038】
さらに別の実施形態では、少なくとも1種のアルカノールアミン及び少なくとも1種の酸性安定剤が、工程c)の前に一緒に添加される。
【0039】
工程d)の前に少なくとも1種のアルカノールアミン及び少なくとも1種の酸性安定剤を一緒に添加することの1つの利点は、この添加が二酸化チタンの等電点を超えるpH値で粒子を凝集に対して安定化させることである。
【0040】
α-ヒドロキシ酸を使用することで、粒子の凝集を防ぐだけでなく、とりわけ経済的に現実的な条件、すなわち過度に高い圧力や過度に高い温度を避けて、シート、ワイヤ及びチューブ等の構造体を形成することができる。α-ヒドロキシ酸は、第1のpKaが3.8以下であり、Tiと錯化(複合化)することができ、粒子の成長を制限することができ、pH値の範囲で粒子を凝集に対して安定化することができる。
【0041】
さらなる実施形態では、上記カルボン酸は、クエン酸及び乳酸からなる群から選択される。別の実施形態では、カルボン酸は、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、及び乳酸からなる群から選択される。
【0042】
このようなα-ヒドロキシ酸は、第1のpKaが3.8以下であり、Tiと錯化することができ、粒子の成長を制限することができ、pH値の範囲で粒子を凝集に対して安定化することができるため、特に好ましい。
【0043】
別の実施形態では、工程d)の間、撹拌が行われる。
【0044】
工程d)の間の撹拌は、反応媒体を均質化して均一な反応条件をもたらし、より長いチューブが形成されるように、一次元での結晶成長を優先的に促進する。
【0045】
さらに別の実施形態によれば、上記分散液は、工程b)と工程c)との間で乾燥及びその後の再分散が行われることなく、分散状態のまま留まる。
【0046】
これにより、工程b)と工程c)との間で粉体を取り扱う必要がないという効果がある。
【0047】
さらなる実施形態では、上記分散液は、工程b)と工程c)との間で乾燥され、再分散される。
【0048】
これは、二酸化チタンが所定の分散液に対して最大限に濃縮されるため、同じチタン含有量の分散液と比較して、より少ない体積で保存、処理、及び取り扱いができるという効果がある。
【0049】
さらに別の実施形態では、工程b)の後に得られる分散液から乾燥された粒子の、ISO 9277に従って測定された比表面積は200~300m/gの範囲にある。
【0050】
200~300m/gの範囲の比表面積は、上記分散液の中の粒子が工程d)での反応に利用可能な高い比表面積を有し、それゆえ工程d)での反応速度が高いことを示す効果がある。
【0051】
さらなる実施形態では、工程a)での溶解後のpHは0よりも低い。
【0052】
さらなる実施形態では、工程b)から得られた分散液又は工程b1)及び工程b2)から得られたゾルのpHは、0.5~1.5の範囲の値に調整される。
【0053】
これは、酸性ゾルを得るという効果がある。
【0054】
別の実施形態では、水酸化物イオンの濃度は、工程c)においてNaOHを用いて調整される。
【0055】
NaOHを用いてpHを調整することの利点は、KOHに比べてNaOHが安価であることである。
【0056】
さらに別の実施形態によれば、工程a)で準備されるチタン酸は、NaOHの水溶液による沈殿までの中和によってTiOClから作製される。
【0057】
さらなる実施形態によれば、上記アルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体は、工程d)と工程e)との間で残りの液体から分離される。
【0058】
これは、工程e)の前にNaOHの含有量を低下させるので、有利である。
【0059】
さらに別の実施形態によれば、工程d)における分散液の処理は、自生圧力で行われる。
【0060】
これは、圧力を一定の値に調整したり、監視したりする必要がないという効果がある。
【0061】
さらなる実施形態によれば、チタン以外の遷移金属イオンは添加されない。
【0062】
本開示は、TiOを含み少なくとも1種の酸性安定剤を含む粒子の分散液の製造方法であって、上記工程a)及びb)を含む方法も提供する。本明細書に開示される工程a)及び工程b)のすべての改変は、このTiOを含み少なくとも1種の酸性安定剤を含む粒子の分散液の製造方法にも適用される。
【0063】
本開示は、TiOを含み少なくとも1種の酸性安定剤を含む粒子のゾルの製造方法であって、上記工程a)、工程b)、工程b1)及び工程b2)を含む方法も提供する。本明細書に開示される上記工程a)、工程b)、工程b1)及び工程b2)のすべての改変は、TiOを含み少なくとも1種の酸性安定剤を含む粒子のゾルの製造方法にも適用される。
【0064】
本開示は、アルカリ金属チタネートを含む構造体の製造方法であって、上記工程a)、工程b)、工程c)及び工程d)を含む方法も提供する。この方法の1つの実施形態は、工程b1)及び工程b2)も含む。本明細書に開示される工程a)、工程b)、工程b1)、工程b2)、工程c)及び工程d)のすべての改変は、アルカリ金属チタネートを含む構造体の製造方法にも適用される。
【0065】
本開示は、プロトン化チタネートを含む構造体の製造方法であって、上記工程a)、工程b)、工程c)、工程d)及び工程e)を含む方法も提供する。この方法の1つの実施形態は、工程b1)及び工程b2)も含む。本明細書に開示される工程a)、工程b)、工程b1)、工程b2)、工程c)、工程d)及び工程e)のすべての改変は、プロトン化チタネートを含む構造体の製造方法にも適用される。
【0066】
本開示は、二酸化チタンを含む構造体の製造方法であって、上記工程a)、工程b)、工程c)、工程d)、工程e)及び工程f)を含む方法も提供する。この方法の1つの実施形態は、工程b1)及び工程b2)も含む。本明細書に開示される工程a)、工程b)、工程b1)、工程b2)、工程c)、工程d)、工程e)及び工程f)のすべての改変は、二酸化チタンを含む構造体の製造方法にも適用される。
【0067】
本発明の第2の態様によれば、当該方法の工程b)の後に得られる中間生成物であって、TiOを含み少なくとも1種の酸性安定剤を含む粒子の分散液である中間生成物が提供される。
【0068】
上記分散液は、少なくとも15重量%のTiO、好ましくは少なくとも17重量%のTiO、より好ましくは少なくとも25重量%のTiO、さらにより好ましくは少なくとも30重量%のTiO、さらにより好ましくは少なくとも40重量%のTiO、最も好ましくは少なくとも50重量%の二酸化チタンを含んでいてもよい。
【0069】
好ましくは、上記分散液は80重量%以下の二酸化チタンを含む。従って、上記分散液は、15~80重量%、17~80重量%、25~80重量%、30~80重量%、40~80重量%、又は50~80重量%の二酸化チタンを含んでいてもよい。
【0070】
二酸化チタン(TiO)の含有量が高いことが望まれるのは、所定の体積により多くの二酸化チタンが含まれ、これにより、低濃度の分散液に比べて高濃度の分散液の保存、処理、及び取り扱いにおいて経済的な利点が得られるためである。
【0071】
さらには、上記少なくとも1種の酸性安定剤は、カルボン酸及びα-ヒドロキシ酸から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0072】
好ましくは、上記カルボン酸は、クエン酸及び乳酸からなる群から選択される。このようなα-ヒドロキシ酸は、第1のpKaが3.8以下であり、Tiと錯化することができ、粒子の成長を制限することができ、pH値の範囲で粒子を凝集に対して安定化することができるため、特に好ましい。
【0073】
さらに、pHは0.5~9の範囲にあってもよい。
【0074】
pHは、0.5~1.5の範囲の値に調整されてもよい。これにより、酸性ゾルが得られるという効果がある。
【0075】
pHは、5.5~7.5の範囲の値に調整されてもよい。これにより、中性ゾルが得られるという効果がある。
【0076】
pHは、7.5~9の範囲の値に調整されてもよい。これにより、アルカリ性ゾルが得られるという効果がある。
【0077】
さらには、上記分散液から乾燥された粒子の、ISO 9277に従って測定された比表面積は、200~300m/gの範囲にあってもよい。
【0078】
200~300m/gの範囲の比表面積は、上記分散液の中の粒子が工程d)での反応に利用可能な高い比表面積も有し、それゆえ工程d)での反応速度が高いことを示す効果がある。
【0079】
従って、中間生成物であって、TiOを含み少なくとも1種の酸性安定剤を含む粒子の分散液であり、任意に以下の特徴のうちの1つ以上を示す中間生成物が提供される。
・上記分散液は、少なくとも15重量%のTiO、好ましくは少なくとも17重量%のTiO、より好ましくは少なくとも25重量%のTiO、さらにより好ましくは少なくとも30重量%のTiO、さらにより好ましくは少なくとも40重量%のTiO、最も好ましくは少なくとも50重量%の二酸化チタンを含む。
・上記少なくとも1種の酸性安定剤は、カルボン酸及びα-ヒドロキシ酸から選択される少なくとも1種である。
・pHは0.5~9の範囲にある。
・上記分散液から乾燥された粒子の、ISO 9277に従って測定された比表面積は200~300m/gの範囲にある。
【0080】
第3の態様によれば、当該方法の工程b1)及び工程b2)の後に得られる中間生成物であって、TiOを含み少なくとも1種の酸性安定剤を含む粒子のゾルである中間生成物が提供される。
【0081】
このゾルは、少なくとも15重量%のTiO、好ましくは少なくとも17重量%のTiO、より好ましくは少なくとも25重量%のTiO、さらにより好ましくは少なくとも30重量%のTiO、さらにより好ましくは少なくとも40重量%のTiO、最も好ましくは少なくとも50重量%の二酸化チタンを含んでいてもよい。
【0082】
好ましくは、このゾルは80重量%(重量百分率)以下の二酸化チタンを含む。従って、このゾルは、15~80重量%、17~80重量%、25~80重量%、30~80重量%、40~80重量%、又は50~80重量%の二酸化チタンを含んでいてもよい。
【0083】
二酸化チタン(TiO)の含有量が高いことが望まれるのは、所定の体積により多くの二酸化チタンが含まれ、これにより、低濃度の分散液に比べて高濃度の分散液の保存、処理及び取り扱いにおいて経済的な利点が得られるためである。
【0084】
さらには、上記少なくとも1種の酸性安定剤は、カルボン酸及びα-ヒドロキシ酸から選択される少なくとも1種である。
【0085】
好ましくは、上記カルボン酸は、クエン酸及び乳酸からなる群から選択される。
【0086】
さらに、pHは、0.5~9の範囲にあってもよい。
【0087】
pHは、0.5~1.5の範囲の値に調整されてもよい。これにより、酸性ゾルが得られるという効果がある。
【0088】
pHは、5.5~7.5の範囲の値に調整されてもよい。これにより、中性ゾルが得られるという効果がある。
【0089】
pHは、7.5~9の範囲に調整されてもよい。これにより、アルカリ性ゾルが得られるという効果がある。
【0090】
さらには、上記分散液から乾燥された粒子の、ISO 9277に従って測定された比表面積は、200~300m/gの範囲にあってもよい。
【0091】
200~300m/gの範囲の比表面積は、上記分散液の中の粒子が工程d)での反応に利用可能な高い比表面積も有し、それゆえ工程d)での反応速度が高いことを示す効果がある。
【0092】
従って、中間生成物であって、TiOを含み少なくとも1種の酸性安定剤を含む粒子のゾルであり、任意に以下の特徴のうちの1つ以上を示す中間生成物が提供される。
・上記ゾルは、少なくとも15重量%のTiO、好ましくは少なくとも17重量%のTiO、より好ましくは少なくとも25重量%のTiO、さらにより好ましくは少なくとも30重量%のTiO、さらにより好ましくは少なくとも40重量%のTiO、最も好ましくは少なくとも50重量%の二酸化チタンを含む。
・上記少なくとも1種の酸性安定剤は、カルボン酸及びα-ヒドロキシ酸から選択される少なくとも1種である。
・pHは0.5~9の範囲にある。
・上記ゾルから乾燥された粒子の、ISO 9277に従って測定された比表面積は200~300m/gの範囲にある。
【0093】
本開示は、本明細書に開示される方法の工程d)の後に得られる中間生成物であって、アルカリ金属チタネートを含む構造体である中間生成物も提供する。従って、このアルカリ金属チタネートを含む構造体は、上記で開示された工程a)、工程b)、工程c)及び工程d)を含み、任意に工程b1)及び工程b2)を含む方法によって得られる。好ましくは、このアルカリ金属チタネートを含む構造体は、シート、ワイヤ及び/又はチューブの形態にある。
【0094】
本開示は、本明細書に開示される方法の工程e)の後に得られる中間生成物であって、プロトン化チタネートを含む構造体である中間生成物も提供する。従って、このプロトン化チタネートを含む構造体は、上記で開示された工程a)、工程b)、工程c)、工程d)及び工程e)を含み、任意に工程b1)及び工程b2)を含む方法によって得られる。好ましくは、このプロトン化チタネートを含む構造体は、シート、ワイヤ及び/又はチューブの形態にある。
【0095】
本開示は、本明細書に開示される方法の工程f)の後に得られる中間生成物であって、二酸化チタンを含む構造体である中間生成物も提供する。従って、この二酸化チタンを含む構造体は、上記で開示された工程a)、工程b)、工程c)、工程d)、工程e)及び工程f)を含み、任意に工程b1)及び工程b2)を含む方法によって得られる。好ましくは、この二酸化チタンを含む構造体は、シート、ワイヤ及び/又はチューブの形態にある。
【0096】
第4の態様によれば、二酸化チタンを含む構造体であって、シート、ワイヤ及びチューブのいずれかであり、本明細書に開示される方法に従って製造される構造体が提供される。
【0097】
上記構造体は、リチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池のアノードの一部を構成してもよい。
【0098】
当該構造体は、光触媒体の一部を構成してもよい。
【0099】
当該構造体は、チタン製の歯科用若しくは骨用のインプラントの表面改質材又は表面処理材を構成してもよい。
【0100】
本発明は、シート、ワイヤ及びチューブを製造するための、二酸化チタン粒子を含む高濃度ゾルの使用も開示する。このゾルは、本明細書に記載される工程a)、工程b)、工程b1)及び工程b2)によって得られてもよい。このゾルは、少なくとも15重量%の二酸化チタン、好ましくは少なくとも17重量%の二酸化チタン、より好ましくは少なくとも25重量%の二酸化チタン、さらにより好ましくは少なくとも30重量%の二酸化チタン、さらにより好ましくは少なくとも40重量%の二酸化チタン、最も好ましくは少なくとも50重量%の二酸化チタンを含む。好ましくは、このゾルは80重量%以下の二酸化チタンを含む。従って、工程b)の後の分散液、又は工程b1)及び工程b2)の後のゾルは、15~80重量%、17~80重量%、25~80重量%、30~80重量%、40~80重量%、又は50~80重量%の二酸化チタンを含んでいてもよい。
【0101】
本発明の利点には、より小さな直径の構造体を有する可能性、及び/又はシート、ワイヤ、又はチューブのより薄い壁を含む可能性が含まれ、後者は得られた構造体に大きな比表面積を与えるとともに、反応中に凝集する確率を低くし、従って上記構造体を形成する際の反応速度を速くする。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1図1は、表1及び表2の実験RWC-1-018から得られた複数の第2の構造体の熱処理の生成物に対応するX線粉末回折(XRD)パターンを示す。
図2図2は、図1の同じ試料のラマンスペクトルを示す。
図3図3は、表1及び表2の実験RWC-1-019から得られた複数の第2の構造体の熱処理の生成物に対応するX線粉末回折(XRD)パターンを示す。
図4図4は、図3の同じ試料のラマンスペクトルを示す。
図5図5は、表1及び表2の実験RWC-1-022から得られた複数の第2の構造体の熱処理の生成物に対応するX線粉末回折(XRD)パターンを示す。
図6図6は、図5の同じ試料のラマンスペクトルを示す。
図7図7は、表1及び表2の実験RWC-1-024から得られた複数の第2の構造体の熱処理の生成物に対応するX線粉末回折(XRD)パターンを示す。
図8図8は、図5の同じ試料のラマンスペクトルを示す。
図9図9は、図1のキャプションで説明したように、EDXから測定したTi/Na比(表2参照)と350で℃処理した試料の比表面積との関係を示す。
図10図10は試料RWC-1-005のSEM画像を示す。多孔質固体を形成するチューブ/ロッドの細長い凝集したクラスターがよく形成されている。
図11図11は試料RWC-1-005のTEM画像を示す。TEM試料の調製によって引き起こされたと思われる様々な程度のコンパクトさを持つオープン構造のウェブ又はネットワークを形成するチューブがよく形成されている。
図12図12は試料RWC-1-017のTEM画像を示す。多くは試料調製で使用された粉砕及び超音波処理の間に壊れたと思われるより短いチューブの断片によって取り囲まれた平行なチューブの集合体を形成する長いチューブがよく形成されている。
図13図13は試料RWC-1-018のSEM画像を示す。集合した多孔質固体を形成する細長い湾曲し捻れているチューブ/ロッドがよく形成されている。
図14図14は、試料RWC-1-020のSEM像を示す。集合した多孔質固体を形成する細長い湾曲し捻れているチューブ/ロッドがよく形成されている。
図15図15は、試料RWC-1-024のSEM像を示す。集合した多孔質固体を形成する細長い、湾曲し捻れているチューブ/リボンがよく形成されている。
図16図16は、図14に見られる試料RWC-1-024のSEM画像の拡大図を示し、個々のチューブ/リボンの直径が約3~8nmであることを明確に示す。
図17図17は、表1及び表2のJAT-1-017に対応する77Kにおける窒素物理吸着等温線の吸着(四角)及び脱着(ダイヤ)の曲線を示す。
図18図18は、図17の脱着曲線から導かれたBJH脱着細孔径分布を示す。
図19図19は、本明細書に記載されたTiO八面体を含む結晶構造、すなわち、第1の構造体、第2の構造体及び第3の構造体(1~3)、並びに第2の構造体の単層をチューブ状に巻いたもの(4~6)を示す。
図20図20は、例13に係る充放電サイクル数に対する比容量を示す。
【0103】
表1は、例の条件を示す。
【0104】
表2は、例の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0105】
以下の詳細な説明は、例として、本発明が実施されてもよい詳細及び実施形態を開示する。
【0106】
本明細書で採用されている用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用されており、限定することを意図していないことを理解されたい。これは、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されるためである。
【0107】
他に何も定義されていない場合、本明細書で使用されるあらゆる用語及び科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を持つことが意図されている。
【0108】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の用語「a」、「an」及び「the」は、文脈と明らかに矛盾する場合を除いて、場合によっては複数形の用語を含むように解釈されることに留意すべきである。
【0109】
「透明溶液」は、可視光に対してほぼ又は完全に透明であり、未溶解のチタン酸による曇り又は可視光の散乱がほとんど検出可能でないか又はまったく検出可能でないものと定義され、可視光レーザーを、その可視光レーザーが、肉眼では上記溶液内からの可視光の散乱がほとんど検出可能でないかまったく検出可能でない状態で、上記溶液を真っ直ぐ通過するまで上記溶液に照射することによって、判定されてもよい。別の方法として、透明溶液は、通常の12ポイントの印刷テキストがガラスパイプに入れた上記溶液の10cmの長さの経路を通して解像されるときに、実際に検出されてもよい。
【0110】
本明細書中及び特許請求の範囲で使用される「安定剤」は、二酸化チタン粒子と相互作用し、二酸化チタン粒子の凝集及び分散等の要因を制御するために利用される物質を表す。安定剤は、キャッピング剤と呼ばれることもあり、さらに、製造中に二酸化チタン粒子がそれほど大きくならないという効果を有する。本発明者らは、特定の科学理論に拘束されることを望むものではないが、安定剤が二酸化チタン粒子に結合し、これにより、二酸化チタン粒子の表面特性及びコロイド挙動、特にその凝集に関して影響を与え、その結果、ゾル中の個々のナノ粒子のコロイド安定性を高めると考えている。さらに、二酸化チタン粒子内の結晶性物質については、安定剤は異なる結晶面に対して異なって結合し、それによって結晶化の傾向を改変する可能性がある。
【0111】
「XRD」はX線粉末回折を表し、「SEM」は走査型電子顕微鏡(法)を表し、「TEM」は透過型電子顕微鏡(法)を表し、「EDX」はエネルギー分散型X線分析を表し、「TGA」は熱重量分析を表し、「SEI」は固体電解質界面(solid-electrolyte interphase)を表す。
【0112】
「比表面積」は、BET表面積又はBET面積と呼ばれることもあり、ISO 9277に従って決定されたm.g-1の単位で測定された表面積である。
【0113】
本明細書及び特許請求の範囲を通して使用される「分散液」は、懸濁液又はゾルであることができる。
【0114】
本明細書中及び特許請求の範囲で使用される「懸濁液」は、液体媒体中の固体粒子である。懸濁液の場合、粒子は少なくとも部分的に非常に大きく、しばらくすると重力によって沈降する。
【0115】
本明細書中及び特許請求の範囲で使用される「ゾル」は、分散相が固体であり、分散媒体が液体であるコロイドの一種である。一般に、ゾルは本質的に安定しており、粒子は重力によって沈降しない。ゾルは一般的には安定しているが、例外的に何らかの要因で沈む固体粒子がある場合もある。ゾルが安定していると記載されていても、当業者は、何らかの要因で沈む可能性のあるごく少数の大きな粒子が存在する可能性があることを認識している。そのような大きな粒子は、不純物とみなすことができる。ゾルは液体媒体中に固体粒子が分散したものであるため、ゾルは分散液と呼ぶこともできる。従って、「ゾル」という用語は、「分散液」という用語に置き換えることができる。
【0116】
液体中に分散した固体粒子の中には、粒子が小さくて沈降しないものもあれば、粒子が大きくて時間が経つと重力によって沈降するものもある。このような混合物についても、「ゾル」という用語を使用することができる。
【0117】
「重量%」は重量パーセントを表す。
【0118】
本明細書中及び特許請求の範囲で使用される「酸化チタン」は、酸化チタン(II)TiO、酸化チタン(III)Ti、酸化チタン(IV)TiOを含むがこれらに限定されない、チタンのすべての可能な酸化物を表す。酸化チタンという用語は、さらに、TiO、TiO、Ti、及びTiを含むが、これらに限定されない。当業者は、酸化チタンが、非晶質チタニアとしても知られる様々な水和物を形成する可能性があり、それによって、様々な割合のTiOH基がTi酸化物と共に存在し、これらが水の放出を介してTi酸化物に変換されうることを理解する。このような水和物はすべて、この用語に包含される。特に興味深いのは、二酸化チタンTiOである。
【0119】
相対酸度(A)は、質量比「M」によって定義され、Mは、pH5.5の中和された懸濁チタン酸中のTiの質量と、チタン酸を溶解するために工程a)で使用された水溶液中のTiの質量との比である。本明細書中で、相対酸度は、A=1/Mと定義される。下記の例1では、2つの質量の比Mが3:7であり、分数で表すことができ、比はR=3/7=0.43であった。この場合、A=1/0.43=7/3=2.333である。R=1:9~9:1、又はR=1/9~9、又はA=0.11~9を検討し、工程b)の後に粒子サイズ及び収率を調べた。Aの値が高いほど、平均粒子サイズは小さくなり、収率は低くなった。相対酸度の値Aが低いほど、粒子サイズは大きくなり、収率は高くなった。当業者であれば、粒子形成の最初の段階で核生成が起こることが理解され、これは工程b)の間に中間生成物の沈殿の直前に起こると考えられる。この核形成段階では、相対酸度Aが高いほど、より多い核の総数に有利に働き、高相対酸度では溶解したTi種の溶解度が比較的高いため工程b)後の収率が低くなると考えられる。この核形成段階では、相対酸度Aが低いほど、より少ない核の総数に有利に働き、高相対酸度における溶解したTi種の溶解度が相対的に低いため、工程b)の後の収率が高くなると考えられる。当業者は、相対酸度Aによって示される粒子サイズ及び収率が、出発材料の組成の違い、例えば酸の含有量にも依存することを理解している。しかしながら、実用的な目的では、処理の容易さ、コスト、及び品質管理の観点から、工程a)のTiを含むすべての種について同じソースバッチを使用することが好ましく、これにより、所定の組成について溶液質量のみから比Aを容易に計算することができる。
【0120】
本明細書中及び特許請求の範囲で使用される「構造体」(単複とも)は、任意の構造体(それらの水和物を含む)を表し、典型的には、層状アルカリ金属チタネート、層状プロトン化チタネート及び二酸化チタンTiO(B)-「ブロンズ」又はTiO-アナターゼを含む化合物で構成され、後者のTiO構造体は、様々な結晶欠陥を有するブロンズ及びアナターゼ構造体も含む。シート、ワイヤ及びチューブはこの用語に包含される。チューブ、ワイヤ及びシートは、そのサイズから、ナノチューブ、ナノワイヤ及びナノシートと呼ばれることがある。チューブは、一般的に内部が中空であると考えられている。ワイヤは一般的に内部が中空ではないと考えられている。中空のチューブと非中空のワイヤを区別することは実験的に困難な場合があるため、これらの用語は互換的に使用されることがあり、チューブが非中空のチューブ、すなわちワイヤを表す場合もある。シートは3次元の構造体であり、その厚さがシートの長さ及び幅の寸法に比べて非常に小さい(少なくとも1~2桁)場合は2次元の構造体である。
【0121】
工程d)及び工程e)で形成されるチタネートは、一般式ATi2n+1を有する層状構造であると考えられており、式中、Aは水素又はアルカリ金属のいずれかであり、nは3~6である。これらは、HTi.HO及びHTi11.2.5HO等の水和物を形成することもできる。層は、チタネート層構造の単斜晶系の単位格子を構成するTiO多面体の波状又は階段状の層として定義されてもよい。非波形、非階段状の層を持ち、斜方晶系の単位格子を持つ他の層状チタネート形態が知られている。これらの層は帯電しており、層間のNaイオン又はHイオンは層の電荷を相殺する。「層の積層体」とは、本明細書中では、1つ以上の層のシートと定義される。
【0122】
「層間剥離」は、1つ以上の層を含むシートから1つ以上の層が分離することと定義される。層間剥離は、湾曲した構造体を形成する可能性を高める。単独の層は薄くて比較的柔軟性があり、曲げたり、巻いたり、折ったり、その他の方法で多数の曲線形状に変形することができ、曲率半径(r)は、所定の曲げ応力に対して層の積層が薄いほど小さくなる傾向がある。
【0123】
完全又は部分的に剥離した層から形成される湾曲した構造体の種類としては、主に一方向のみに沿って湾曲する構造が挙げられるが、これに限定されない。これらは、オープン又はクローズドの継ぎ目のあるチューブ、スクロール、ハーフパイプ、コーン、リボン、及びガウス曲率(K)がゼロでいくらかの有限の平均曲率(M)(シートの端の点は含まない)を持つ他の層構造であることができる。ガウス曲率とは、表面上の点における2つの原理的な曲率の積であり、シート上の点におけるk=1/r及びk=1/rであり、平均曲率とは、シート上の点における2つの原理的な曲率半径の平均である。
【0124】
シートが2方向に曲がってガウス曲率がゼロでない(正又は負)場合、例えば結合の再配列、結合の切断、局所的な組成の変化等で層が十分に歪んでいると、より複雑な湾曲した構造体が形成されることが可能である。
【0125】
さらに、上記湾曲した構造体の1つ以上を含む多数の個々の構造体が、メソポーラス及び/又はマクロポーラスのネットワーク、スポンジ、バンドル、及び膜を含むがこれらに限定されない高次構造に集合したときに、より複雑な構造体が形成されることが可能である。後者の膜の場合、ネットワーク構造は、キャスティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、スプレー、ディッピング(浸漬)等の様々な方法により、構造体の未乾燥の懸濁液、すなわち分散液又はゾルから形成することができ、又は、シート、ワイヤ及びチューブからなる群から選択されるチタン化合物の構造体を製造するために、以前に構築されたTiOナノ粒子の膜を、本明細書に開示される工程c~fの1つ以上に供することにより形成することができる。
【0126】
加熱すると(工程f))、層状のチタネート構造体は、隣接する層の縮合及び脱水のいくつかの中間段階を経ると考えられ、約300℃を超えるところで最終的にTiO(B)を形成することができる。層状チタネートからTiO(B)への同様の進行は、実質的に湾曲していないものと比較して、結晶構造に多少の歪みや欠陥が予想されるものの、湾曲した構造体でも起こりうると考えられる。前駆層構造に高いアルカリ金属/Ti比が存在する場合、加熱による生成物は、TiO(B)と同じTi-Oネットワーク構造を有するアルカリ金属ブロンズ構造MTiOも含む可能性がある。TiO(B)の形成に必要な温度よりも低い温度では、プロトンリッチのチタネートの加熱中に、TiO(B)に近い構造を持つ中間生成物も形成される可能性がある。このような加熱中の構造変化は、Feistら、Journal of Solid State Chemistry 101、275-295(1992))によって考察されている。この著者らは、プロトン化水和物の工程長が異なると、それらから形成されるTiO(B)の結晶秩序の程度が異なることを示す、異なるラマンスペクトルが得られることを指摘しており、そこで、本発明者らは、本開示では、TiO(B)を、これらの変種及びFeistら(1992)によって検討されたTiO(B)様の中間体も含むものとして定義しているが、これは、これらの変種を区別することが時に困難であり、本明細書に開示される加熱された構造中に共存する可能性が極めて高いためである。
【0127】
本開示によれば、シート、ワイヤ及びチューブからなる群から選択されるチタン化合物の構造体の製造方法が提供される。この方法は、以下の
a)一般式[TiO(OH)4-2xを有する少なくとも1種のチタン酸を準備し、それを、TiOCl、TiCl、及びHClからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む水溶液中に、透明溶液が得られるように溶解する工程であって、溶解後、上記透明溶液のpHは1未満である工程と、
b)上記透明溶液の温度を、沈殿が起こり始める68~85℃の範囲の温度に達するまで上昇させ、上記沈殿が起こり始める前に少なくとも1種の酸性安定剤を添加し、撹拌しながら少なくとも1分間、その温度を保持して、中間生成物としてのTiOを含む粒子の分散液を得る工程と、
c)工程b)からの上記分散液の中の水酸化物イオンの濃度を、アルカリ金属水酸化物MOHを添加することにより、少なくとも8Mに調整する工程と、
d)工程c)からの上記分散液を90~170℃の範囲の温度で6~72時間処理して、アルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体を得る工程と、
e)上記アルカリ金属チタネート(チタン酸アルカリ金属塩)を含む複数の第1の構造体を、アルカリ金属イオンMの少なくとも一部をHと交換するように処理して、プロトン化チタネート(プロトン化チタン酸塩)を含む複数の第2の構造体を得る工程と
を含む。
【0128】
式[TiO(OH)4-2x中、xは、HTiOの場合は0、HTiOの場合は1である。nは整数である。式はnなしで表すこともできる。
【0129】
当該方法は、工程b)の後で工程c)の前に、以下の
b1)好ましくは、ゾルが形成される点までイオン濃度が下がるように、上記分散液の中のイオンの含有量を減少させる工程であって、上記ゾルの中の上記粒子の上記平均直径は3~20nm、好ましくは4~15nm、より好ましくは4.5~7nmである工程と、
b2)上記分散液の中のTiOの濃度を、好ましくは10~80%の範囲内の値に、より好ましくは20~70%の範囲内の値に、最も好ましくは30~50%の範囲内の値に調整する工程
をさらに含んでもよい。
【0130】
これにより、工程b1)及び工程b2)の後にゾルが形成され、このゾルは、その後、チタン化合物を含む上記構造体を製造するために使用されてもよい。工程b1)は工程b2)の前に行われてもよい。工程b1)及び工程b2)は数回繰り返されてもよい。工程b2)は工程b1)の前に行われてもよい。工程b2)及び工程b1)は数回繰り返されてもよい。
【0131】
工程a)で準備されるチタン酸は、チタン酸が白色の固相として沈殿して凝集するように、TiOCl水溶液をNaOH水溶液の添加によって中和することによって作製されてもよい。
【0132】
1つの実施形態では、工程a)での溶解後のpHは0より低い。
【0133】
0より低いような低いpH値を測定することは困難であり、その代わりに、計算されたH濃度に基づいて推定することができる。後述する例1の工程a)及び工程b)の後に得られた透明溶液についての計算されたpHは、約-0.8であった。この値は、工程a)の準備されたチタン酸を溶解するために加えられたTiOCl溶液の酸含有量及び工程a)のチタン酸を溶解するために加えられたそのTiOCl溶液の量に応じて、より低く又はより高くなりうる。例1では、工程a)の後のpHは、NaOHで中和して形成されたチタン酸の水性懸濁液のpHにも依存することも明らかである。この点で、工程a)の溶解後のpHは、正確に知られていなくても、工程a)における与えられたTi源又はすべてのチタン化合物の源について、すなわち、準備された少なくとも1種のチタン酸がTiOCl、TiCl及びHClからなる群から選択された少なくとも1種にそれを溶解する場合、相対酸度計算(上述のとおり)によって理解することができる。
【0134】
工程a)での溶解後の相対酸度Aは、1~2の範囲にあってもよい。
【0135】
工程a)での溶解後の相対酸度Aは、2~3の範囲にあってもよい。
【0136】
工程a)での溶解後の相対酸度Aは、3~4の範囲にあってもよい。
【0137】
工程a)での溶解後の相対酸度Aは、5~7の範囲にある。
【0138】
特定の実施形態では、相対酸度Aは、7~9の範囲にある。
【0139】
工程a)で得られた分散液中のイオンの含有量は、好ましくはゾルが形成される点までイオン濃度が下がるように、任意の工程b1)で減少させてもよい。これは、希釈、濾過、限外濾過透析、透析濾過(ダイアフィルトレーション)、クロスフロー濾過を採用した方法の組み合わせの1つによって達成することができる。
【0140】
換言すれば、任意の工程b1)では、好ましくは、ゾル中の粒子の平均直径が3~20nm、好ましくは4~15nm、より好ましくは4.5~7nmであるゾルが形成される点までイオン濃度が下がるように、分散液中のイオンの含有量が減少される。
【0141】
工程b1)及び工程b2)の後に得られたゾルは、少なくとも50重量%の二酸化チタンを含む。50重量%以上の濃度の二酸化チタンを得るためには、任意の工程b1に従ってイオンの含有量を減らすことが一般に必要である。イオンの含有量を減少させると、二酸化チタンの量は、60重量%及び70重量%の二酸化チタンのように高くすることができる。
【0142】
工程b)の後に得られた粒子の分散液、又は工程b1及び/又は工程b2)の後に得られたゾルのpHは、0.5~9の範囲の値に調整されてもよい。pHの調整により、中間生成物の取り扱い及び保存が容易になる。
【0143】
工程b2の後に得られた分散液は、少なくとも50重量%の二酸化チタンを含んでいてもよい。工程b2の後に得られた分散液は、最大で80重量%の二酸化チタンであってもよい。
【0144】
工程b1)及び/又は工程b2)の後に得られたゾルは、工程c)の前に乾燥及び再分散することなく、工程c)に直接移されてもよい。
【0145】
あるいは、工程b1)及び/又は工程b2)の後に得られたゾルは、工程c)の前に乾燥され再分散されてもよい。酸性及び又はアルカリ性の安定剤(後述)は、再分散中に粒子の分散状態を維持するのに役立ち、再分散の前にゾルを固体又は粉末に乾燥させるときの不可逆的な凝集を打ち消す。
【0146】
典型的には、工程b1)及び/又は工程b2)の後に得られたゾルから乾燥された粒子のISO 9277に従って測定された比表面積は、200~300m/gの範囲にある。
【0147】
1つの実施形態では、工程b2)の後、又は工程b1)及び工程b2)の後に得られた分散液は、少なくとも15重量%の二酸化チタン、好ましくは少なくとも25重量%の二酸化チタン、より好ましくは少なくとも30重量%の二酸化チタン、さらにより好ましくは少なくとも40重量%の二酸化チタン、最も好ましくは少なくとも50重量%の二酸化チタンのゾルを含む。濃度が高いと工程d)後の収率が向上し、当該方法では高濃度のTiO粒子を使用することが可能となり、ひいては工程d)後の収率を高くすることができる。さらに、プロセスに使用することができる高価な水熱反応器において、とりわけ大規模な場合には、各バッチにおいてより多量の二酸化チタン粒子を有することが可能であり、シート、ワイヤ及びチューブからなる群から選択されるチタン化合物の構造体を製造するプロセスをより経済的にすることができる。
【0148】
1つの実施形態では、工程a)又は工程b)において、チタン以外の遷移金属イオンは添加されない。金属イオンを添加しなくてもよいということは、プロセスが単純化され、コストが低減されるので有利である。
【0149】
工程b)又は工程b2)の後に得られた分散液は、イオン低減工程b1)に供され、中間生成物が得られてもよい。
【0150】
工程b)又は工程b1)の後に得られた分散液は、真空乾燥、沈降及びデカンテーション(傾瀉法)、遠心分離、濾過、例えば限外濾過、クロスフロー濾過、タンジェンシャルフロー濾過、及びナノ濾過から選択される1つ又は複数の方法の組み合わせによる、濃縮工程b2)に供されてもよい。
【0151】
さらには、本開示によれば、シート、ワイヤ及びチューブからなる群から選択されるチタン化合物の構造体の代替の製造方法が提供される。この方法は、以下の
i)TiOを含む粒子のゾルを準備する工程であって、このゾル中の粒子の平均直径は3~20nm、好ましくは4~15nm、より好ましくは4.5~7nmであり、このゾルは少なくとも1種の酸性安定剤を含む工程と、
c)アルカリ金属水酸化物MOHを添加することによって、上記ゾル中の水酸化物イオンの濃度を少なくとも8Mに調整する工程と、
d)上記ゾルを90~170℃の範囲の温度で6~72時間処理して、アルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体を得る工程と、
e)上記複数の第1の構造体を、アルカリ金属イオンMの少なくとも一部をHと交換するように処理して、プロトン化チタネートを含む複数の第2の構造体を得る工程と
を含む。
【0152】
工程i)で準備されるゾルは、上述の工程a)及び工程b)、任意に続く工程b1)及び工程b2)、並びにこれらの工程の改変によって得られてもよい。
【0153】
工程bの後に得られた分散液、工程b1)及び/若しくは工程b2)の後に得られたゾル、又は工程i)で準備されたゾルに安定剤を使用することによって、TiO粒子の表面はその安定剤の分子によってコーティングされるか、又は部分的にコーティングされ、これは、特に工程b2の間、又はそれに続く工程c)においてゾルがますます濃縮されるにつれて、粒子間Ti-O-Ti結合形成を介して不可逆的に凝集及び縮合することから粒子を維持するか、又は少なくとも凝集及び不可逆的な縮合の確率を減少させると考えられる。安定剤としてのクエン酸及び同様の酸性安定剤、並びにモノエタノールアミン及び同様のアルカリ性安定剤の場合、TiO分散液の安定化は、溶液条件に応じて立体的及び静電的の両方であると考えられる。本明細書で開示されているように得られたTiOの高濃度NaOH分散液又は高濃度NaOHゾルでは、静電的な安定化のためのデバイ長は、ファンデルワールス力又は分散力がTiO粒子を凝集させることができるような短い長さであると考えられる。表面に吸着した安定剤分子は、表面に吸着したクエン酸分子が提供する立体的な安定化に起因してデバイ長が非常に短い、強電解質中で粒子間のTi-O-Ti結合の不可逆的な形成に対して粒子を安定化させると考えられる。この立体的な安定化により、粒子間スペースへの反応物の拡散が比較的容易になるため、同程度の濃度及び粒子サイズの立体的に安定化されていないゾルと比較して、TiOからNa-チタネートへの反応の速度が速くなると考えられる。
【0154】
さらに、本発明者らは、酸安定剤又は塩基安定剤を含む本明細書に開示されている方法によって得られたTiOゾルを固体状に濃縮した後、水に再分散させると、そのゾルは、液体中の粒度(粒子サイズ)分布が顕著な程度には変化しないゾルを再形成することを発見した。これは、粒子が不可逆的に凝集しないことを意味する。このように、安定剤は、より良くかつより簡単な再分散を与える。
【0155】
工程c)の前に、アルカノールアミン及び少なくとも1種の酸性安定剤が一緒に添加されてもよい。アルカノールアミンが工程c)の前に安定剤として添加される場合は、アルカノールアミンが少なくとも1種の酸性安定剤と一緒に添加されることが好ましい。
【0156】
上記少なくとも1種の酸性安定剤は、カルボン酸及びα-ヒドロキシ酸から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0157】
上記少なくとも1種の酸性安定剤は、クエン酸及び乳酸(しかし、これらに限定されない)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0158】
上記少なくとも1種のアルカノールアミンは、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンから選択される少なくとも1種であってもよい。この少なくとも1種のアルカノールアミンは、アルカリ性又は塩基性pHの分散液中のTiO粒子の安定剤として作用することができると考えられ、従って、この少なくとも1種のアルカノールアミンは、TiOの塩基性又はアルカリ性条件の安定剤であると考えられてもよい。
【0159】
水酸化物イオンの濃度は、工程c)において、NaOHを用いて調整されてもよく、すなわち、上記アルカリ金属水酸化物はNaOHである。
【0160】
工程c)の間又は工程d)の前、すなわちアルカリ金属水酸化物MOHを添加することによって分散液又はゾル中の水酸化物イオンの濃度を少なくとも8Mに調整する間又は調整した直後に、その分散液又はゾルは撹拌及び/又は揺動撹拌及び/又は超音波処理されてもよい。pHがこのように大きく上昇すると、分散液又はゾルはしばしば濁り、粘度が上昇することがある。このような場合には、撹拌及び/又は揺動撹拌及び/又は超音波処理が適している。得られたTiO分散液又はゾルの濃度が15重量%よりも著しく高い場合、工程c)の間又は工程c)の直後に均質な分散液又はゾルを得るために、撹拌及び/又は揺動撹拌及び/又は超音波処理が特に有利である。少なくとも8MのNaOHを伴う濃厚分散液又はゾルのこの撹拌は、同じ濃度のMOH、例えばNaOHの中では容易に分散しない純粋なTiOの粉末を撹拌する場合と比較して、90~170℃での加熱前に均質な分散液又はゾルを得るためにより効果的であると考えられる。それにもかかわらず、工程c)の間に分散液の均質性を最大化するためには、撹拌及び/又は揺動撹拌及び/又は超音波処理を行うことが好ましい。
【0161】
撹拌は、工程d)の間に行ってもよい。この撹拌は任意であり、工程d)から得られた第1の構造体に影響を与える。一般に、撹拌は、より長いチューブの形成を促進する。加えて、この段階で撹拌すると、より均質な混合物が得られ、これにより、ひいてはより均質な最終材料が得られる。工程d)の間の撹拌は、専用の撹拌反応容器の使用による機械的な撹拌を含んでもよいし、ロッキング若しくはローリング若しくはシェイキング機構による反応容器全体の揺動撹拌、又は音響波による撹拌を含んでいてもよい。
【0162】
好適には、工程d)における圧力は、自生圧力である。言い換えれば、工程d)におけるゾルの処理は自生圧力で行われる。
【0163】
さらに、少なくとも工程d)は、密閉可能な反応器で行われてもよい。自生圧力は、特定の充填レベル及び温度で密閉された反応器内に生じる圧力であり、蒸気表及び反応物の熱物理的特性の知識を用いて推定することができる。沸点を超える温度に達するには密閉容器が必要である。その後、周囲の圧力に比べて圧力が上昇する。目的の温度に達することができれば、正確な圧力は重要ではない。
【0164】
あるいは、常圧の開放容器が工程d)に使用されてもよく、その場合、過剰な水分蒸発を避けるために還流容器と組み合わせるのが好適である。
【0165】
工程d)の後に得られたアルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体は、工程d)とe)の間で残りの液体から分離されてもよい。これは、濾過によって、又は遠心分離等の他の手段によって行うことができる。分離後のアルカリ金属チタネートを含む分離物に水が加えられてもよい。
【0166】
好適には、工程d)の後に得られたアルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体は、工程e)の前に、例えば濾過等、特に限定されない方法で母液から分離される。
【0167】
工程d)の後に得られたアルカリ金属チタネートを含む第1の構造体のアルカリ金属カチオンMは、原子%で計算した比Ti/Mが6以上となるようにHと交換されてもよい。これは工程e)の間に行われ、プロトン化チタネートを含む第2の構造体が得られる。この比は、第2の構造体又はその後に形成される第3の構造体において測定される。
【0168】
工程e)のイオン交換後に得られる第2の構造体は、多くの場合、積層された層を含む。イオン交換の間、この積層された層は、単層に完全に層間剥離するようには見えないが、完全な層間剥離に向けて継続することができる。高いTi/M比が使用される場合、二酸化チタンを含む第3の構造体が得られるときの加熱中に、層間剥離はより完全な状態に向かって進行する。工程e)のイオン交換中に、積層された層のいくらかの層間剥離が発生し、このプロセスは、その後の工程f)の加熱中も継続する。図17の証拠から、6以上のTi/M比が使用されれば、このプロセスが非常に容易になることが示される。
【0169】
工程e)の後に得られるプロトン化チタネートを含む複数の第2の構造体は、工程e)の後に、例えば濾過によって母液から好適に分離される。工程e)の前、工程e)の間、及び工程e)の後の分離を含む、相対的なタイミングの組み合わせによる分離も想定される。このような分離の間に、構造体を回収し、少なくとも部分的に水溶液に再分散させることができる。
【0170】
工程e)の後に得られるプロトン化チタネートを含む複数の第2の構造体は、任意の工程f)において、300~700℃、好ましくは300~600℃、より好ましくは300~450℃、最も好ましくは300~400℃の範囲の温度に加熱され、二酸化チタンを含む複数の第3の構造体が得られてもよい。
【0171】
上記第3の構造体は、典型的には、シート、ワイヤ及びチューブからなる群から選択される少なくとも1つを含む。この第3の構造体は、TiO(B)を含んでいてもよい。
【0172】
工程f)の加熱は、TiO(B)の提供と、安定剤等の有機不純物の除去との両方をもたらす。
【0173】
上記安定剤を完全に除去することが望まれる場合、工程f)は好ましくは空気中で、又は酸化を補助することが知られている他の薬剤を用いて行う必要がある。
【0174】
場合によっては、例えば導電性材料がリチオ化されたTiO(B)を含む他の成分とともにアノードを構成する、リチウムイオン電池のアノードの製造のためなどに、例えば、導電性等の特性が緊密な分子レベルで組み合わされることが望まれる場合、アルカリチタネート若しくはプロトン化チタネートを含む第1の構造体又は第2の構造体を、加熱によって炭素-TiO(B)ハイブリッドの形成が得られるような雰囲気及び温度で加熱することが望ましい場合がある。
【0175】
上記第3の構造体は二酸化チタンを含み、上記第2の構造体が300~700℃、好ましくは300~600℃、より好ましくは300~600℃、最も好ましくは300~450℃、さらにより好ましくは300~400℃の範囲の温度に加熱される工程f)において得られる。Ti/M比は、第2の構造体又は第3の構造体におけるTiの原子%を取得し(当該原子比は第2の構造体から第3の構造体に移行する際に安定していると仮定されるため、いずれの構造体でも測定可能である)、それをそれぞれの第2の構造体又は第3の構造体におけるMの原子%で割ることによって算出される。図9に見られるように、6超の比率は、加熱後のより高い比表面積と相関している。本発明者らは、特定の科学的理論に拘束されることを望むものではないが、Ti/Mが高いと、層状のアルカリ金属チタネート(例えば、ナトリウムチタネート)から層状のプロトン化チタネートへと移行する際に、HによるMの酸交換の間に、積層された層の層間剥離が促進されると考える。図1図3図5及び図7に見られる110℃から350℃への移行に伴う(002)XRDピークの強度の減少によって示されるように、このような比較的低いMを含有する第2の構造体についての積層された層のこの層間剥離は、第2の構造体から第3の構造体への加熱中に発生し続ける可能性がある。工程c)の後に得られた構造体の中には、積層された層を含むものもある。
【0176】
上記第1の構造体、第2の構造体及び第3の構造体は、相互に異なる構造体を表す。第1の構造体及び第2の構造体は、典型的には組成的に異なる層状チタネートである。これは、第1の構造体のアルカリ金属イオンMが、第2の構造体では少なくとも部分的にHで置き換えられているためであり、この置き換えは、少なくとも部分的には層間剥離及び湾曲誘導に起因して、典型的には、層間の異なるd(200)結晶学的間隔を与え、しばしば、原子の相対的に小さい又は秩序のない結晶学的配置を示すXRDピークの強度の低下及びブロード化を生じる。
【0177】
上記第3の構造体は第1の構造体及び第2の構造体とは異なる。というのも、第3の構造体は、実質的な脱水、層の縮合、及び原子の再配列を受けて、薄いシート、チューブ、ワイヤ及び他のナノ構造体において安定であることができる少なくとも一部のTiO(B)を形成しており、Ti原子及びO原子が層の空間で結合していない第1の構造体及び第2の構造体が有するような正式な層状の結晶構造を有していないからである。
【0178】
本開示は、工程b)、工程b1)及び/又は工程b2)の後に得られる中間生成物であって、TiOを含み少なくとも1種の酸性安定剤を含む粒子の分散液又はゾルである中間生成物も提供する。当該中間生成物は、TiOを含む粒子の分散液又はゾルであり、本開示に係る方法によって得ることができる第1の構造体、第2の構造体及び第3の構造体は、このような粒子から作製される。
【0179】
工程b)、工程b1)及び/又は工程b2)の後に得られる中間生成物は、シート、チューブ及びワイヤ等の構造体が作製される前に、容易に保存することができ、輸送することができ、かつ取り扱うことができる。この中間生成物は、数週間から数年といった長期間にわたって保存することができ、大規模なプロセスが容易になる。
【0180】
中間生成物のpHは、0.5~9の範囲にあってもよい。
【0181】
当該中間生成物は、少なくとも15重量%のTiO、好ましくは少なくとも17重量%のTiO、より好ましくは少なくとも25重量%のTiO、さらにより好ましくは少なくとも30重量%のTiO、好ましくは少なくとも50重量%のTiO、最も好ましくは少なくとも50重量%のTiOを含んでいてもよい。40重量%をわずかに超えるまでは、当該中間生成物は、依然としてゾルである。工程b1)でイオン除去が行われる場合、得られるゾルは50重量%を超えるTiOを有することができる。
【0182】
工程b)、工程b1)及び/又は工程b2)から得られる中間生成物は、二酸化チタンの濃度が少なくとも50重量%になるように、真空下での乾燥によって濃縮されてもよい。
【0183】
工程b)、工程b1)及び/又は工程b2)の後に得られる中間生成物中の二酸化チタンの濃度は、少なくとも70重量%であってもよい。このような場合、当該中間生成物は粘性のあるゾルである。
【0184】
工程b)、工程b1)及び/又は工程b2)の後に得られる中間生成物の分散液から乾燥されたTiO粒子のISO 9277に従って測定された比表面積は、200~300m/gの範囲にある。
【0185】
本開示は、二酸化チタンを含む第3の構造体であって、シート、ワイヤ及びチューブのいずれかであり、上述の工程f)の後に得られる第3の構造体も提供する。
【0186】
シート、ワイヤ及びチューブを含むこの第3の構造体は、リチウムイオン電池のアノードの一部を構成してもよい。シート、ワイヤ及びチューブを含むTiO(B)の上記第3の構造体を使用する利点は、結晶構造にほとんど変化を与えることなく、原子Li/Ti比が最大1までの濃度で、LiイオンがTiO(B)単位格子内のオープンフレームワークに/から容易に挿入/抽出されることである。これにより、一部では、Liイオン電池に使用される典型的なグラファイトアノードと比較して、本質的に比較的速い充放電速度が可能となり、335mAh.g-1という魅力的な理論容量を達成する。さらに、充電時及び放電時のそれぞれTiO(B)結晶への及びTiO(B)結晶からのLi輸送の際のブロンズ単位格子の膨張及び収縮がこのように非常に低いことは、TiO(B)を含むアノードの寸法安定性を高めることと同等である。このことは、リチウムTiO(B)の結晶構造の現状を見れば明らかである。例えば、Armstrongら、Chemistry of Materials 22、6426-6432(2010)において、Armstrongらは、リチウムを含まないTiO(B)、Li0.25TiO(B)、Li0.5TiO(B)、Li0.8TiO(B)及びLi0.9TiO(B)の結晶構造を報告した。バルクの、リチウムを含まないTiO(B)の構造と比較して、単位格子の体積が最大で8.4%拡大する。充電中及び放電中のアノード材料としてのTiO(B)の寸法安定性は、長期的なサイクル安定性の向上及び電池寿命の大幅な延長につながりうる魅力的な特徴である。
【0187】
加えて、二酸化チタンのシート、チューブ又はワイヤを含む上記第3の構造体は、複数の個々の構造体が有限の厚さの膜におけるような固体材料に縮合されたときにネットワーク(網目構造)を形成することができる。さらに、複数の上記TiOの第3の構造体のこのようなネットワークは、複数の個々の構造体を構成する個々の構造体の間に顕著な相互接続されたメソポアネットワークを含むことができる。
【0188】
さらに、二酸化チタンのシート、チューブ、又はワイヤを含む上記第3の構造体は、比較的長い導電経路と、電解質から結晶中のLiイオン結合部位への比較的短い輸送経路とを組み合わせたネットワークを形成することができ、これらすべてが、同じ結晶構造の均一な寸法の粒子から構成されるアノードに比べて、アノードの反応速度と容量を向上させる。
【0189】
二酸化チタンのシート、チューブ又はワイヤを含む上記第3の構造体からアノードを作製するためには、有限の厚さの膜におけるような固体材料に縮合された複数の個々の構造体を含むネットワークを形成することが望ましい可能性があり、上記ネットワークは、複数の個々の構造体を構成する個々の構造体の間に顕著な相互接続されたメソポアネットワークをも含むことが望ましい可能性がある。膜の形態のそのような望ましいネットワーク構造は、本明細書に開示された方法の工程e)の後に得られる、プロトン化チタネートを含む第2の構造体の予め乾燥されていない懸濁液から、金属箔を含む様々な基板へのキャスティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、スプレー、エレクトロスプレー、ディッピングを含む様々な方法によって、そして次に、その膜を、二酸化チタンを含み、シート、ワイヤ及びチューブからなる群から選択される第3の構造体を形成するための本明細書に開示される工程f)に供して製造することができる。あるいは、このような望ましいネットワーク構造は、事前に構築されたTiOナノ粒子の膜を、本明細書に開示される工程c)~工程f)のうちの1つ以上に供することによって形成することができる。
【0190】
合わせると、シート、チューブ又はワイヤを含むTiO(B)の第3の構造体を用いてLiイオン電池の負極を構成することの上記利点には、速い充放電速度、高い電流容量、高い寸法安定性、長期間のサイクル性能、及び長い電池寿命が含まれる。
【0191】
本明細書に開示された工程に従って製造されたチタン化合物の構造体は、全固体リチウムイオン電池のアノードの一部を構成してもよい。この構造体は、シート、チューブ又はワイヤであってもよい。
【0192】
本明細書に開示された工程に従って製造されたチタン化合物の構造体は、固体リチウムイオンマイクロ電池のアノードの一部を構成してもよい。この構造体は、シート、チューブ又はワイヤであってもよい。
【0193】
本明細書に開示された工程に従って製造されたチタン化合物の構造体は、固体電池のアノードの一部を構成してもよい。この構造体は、シート、チューブ又はワイヤであってもよい。
【0194】
本明細書に開示された工程に従って製造されたチタン化合物の構造体は、リチウム硫黄電池のアノードの一部を構成してもよい。この構造体は、シート、チューブ又はワイヤであってもよい。
【0195】
本明細書に開示された工程に従って製造されたチタン化合物の構造体は、リチウム酸素電池のアノードの一部を構成してもよい。この構造体は、シート、チューブ又はワイヤであってもよい。
【0196】
本明細書に開示された工程に従って製造されたチタン化合物の構造体は、ナトリウムイオン電池のアノードの一部を構成してもよい。この構造体は、シート、チューブ又はワイヤであってもよい。
【0197】
本明細書に開示された工程に従って製造されたチタン化合物の炭素ハイブリッド構造体は、アルカリ金属イオン電池のアノードの一部を構成してもよい。この構造体は、シート、チューブ又はワイヤであってもよい。
【0198】
本明細書に開示された工程に従って製造されたチタン化合物の構造体は、光触媒体又は光触媒装置の一部を構成してもよい。この構造体は、シート、チューブ又はワイヤであってもよい。
【0199】
工程b)、工程b1)又は工程b2)の後に得られる中間生成物は、光触媒体若しくは光触媒装置の一部を構成してもよく、又はこの光触媒体又は光触媒装置を製造するための前駆分散液として使用される。
【0200】
工程b)、工程b1)又は工程b2)の後に得られる中間生成物は、リチウムイオン電池のアノードの一部を構成してもよく、又はそのリチウムイオン電池のアノードを製造するための前駆分散液として使用されてもよい。
【0201】
第1の態様の代替として、シート、ワイヤ及びチューブからなる群から選択されるチタン化合物の構造体の製造方法であって、以下の
ab)TiOを含む粒子の分散液を準備する工程であって、上記分散液中の上記粒子の平均直径は、3~20nm、好ましくは4~15nm、より好ましくは4.5~7nmであり、上記分散液は、酸性安定剤としての少なくとも1種のα-ヒドロキシ酸を含む工程と、
c)工程ab)からの上記分散液の中の水酸化物イオンの濃度を、アルカリ金属水酸化物MOHを添加することにより、少なくとも8Mに調整する工程と、
d)工程c)からの上記分散液を90~170℃の範囲の温度で6~72時間処理して、アルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体を得る工程と、
e)上記アルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体を、アルカリ金属イオンMの少なくとも一部をHと交換するように処理して、プロトン化チタネートを含む複数の第2の構造体を得る工程と
を含む方法が提供される。
【0202】
上記代替態様の1つの実施形態では、工程ab)後の分散液は、少なくとも15重量%の二酸化チタン、好ましくは少なくとも17重量%の二酸化チタン、より好ましくは少なくとも25重量%の二酸化チタン、さらにより好ましくは少なくとも30重量%の二酸化チタン、さらにより好ましくは少なくとも40重量%の二酸化チタン、最も好ましくは少なくとも50重量%の二酸化チタンを含む。
【0203】
代替態様の1つの実施形態では、工程e)の後に得られる上記プロトン化チタネートを含む複数の第2の構造体は、300~700℃、好ましくは300~600℃、より好ましくは300~450℃、最も好ましくは300~400℃の範囲の温度に加熱され、二酸化チタンを含む複数の第3の構造体が得られる。
【0204】
代替態様の1つの実施形態では、少なくとも1種のアルカノールアミン及び少なくとも1種の酸性安定剤が、工程c)の前に一緒に添加される。
【0205】
代替態様の1つの実施形態では、上記カルボン酸は、クエン酸及び乳酸からなる群から選択される。
【0206】
代替態様の1つの実施形態では、工程d)の間、撹拌が行われる。
【0207】
代替態様の1つの実施形態では、上記分散液は、工程ab)と工程c)との間で乾燥及びその後の再分散が行われることなく、分散状態のまま留まる。
【0208】
代替態様の1つの実施形態では、上記分散液は、工程ab)と工程c)との間で乾燥され、再分散される。
【0209】
代替態様の1つの実施形態では、工程ab)の後に得られた分散液から乾燥された粒子のISO 9277に従って測定された比表面積は200~300m/gの範囲にある。
【0210】
代替態様の1つの実施形態では、工程ab)から得られた上記分散液のpHは、0.5~1.5の範囲の値に調整される。
【0211】
代替態様の1つの実施形態では、水酸化物イオンの濃度は、工程c)においてNaOHを用いて調整される。
【0212】
代替態様の1つの実施形態では、上記アルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体は、工程d)と工程e)との間で残りの液体から分離される。
【0213】
代替態様の1つの実施形態では、工程d)における分散液の処理は、自生圧力で行われる。
【0214】
代替態様の1つの実施形態では、チタン以外の遷移金属イオンは添加されない。
【0215】
第2の態様の代替では、二酸化チタンを含む構造体であって、シート、ワイヤ及びチューブのいずれかであり、上記に概説した方法に従って製造される構造体が提供される。
【0216】
この代替態様の1つの実施形態では、当該構造体は、リチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池のアノードの一部を構成する。
【0217】
代替態様の1つの実施形態では、当該構造体は、光触媒体の一部を構成する。
【0218】
代替局面の1つの実施形態では、当該構造体は、チタン製の歯科用若しくは骨用のインプラントの表面改質材又は表面処理材を構成する。
【0219】
上記代替物を考えると、第1の態様において、連続した工程a)及び工程b)が実行されるか、又は代替的に工程ab)が提供されることがわかる。上で詳述したように、工程a)及び工程b)は、TiOを含む粒子の分散液を得るための方法工程である。上で詳述したように、工程ab)は、TiOを含む粒子を準備する工程であり、この粒子は特定の特性を有する。
【0220】
従って、第1の態様は、シート、ワイヤ及びチューブからなる群から選択されるチタン化合物の構造体の製造方法としても表現することができ、この方法は、
連続する工程c)、工程d)及び工程e)を行う前に、
i)連続する工程a)及び工程b)、又は
ii)工程ab)
のいずれかを実行することを含み、各工程は、
a)一般式[TiO(OH)4-2xを有する少なくとも1種のチタン酸を準備し、それを、TiOCl、TiCl、及びHClからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む水溶液中に、透明溶液が得られるように溶解する工程であって、溶解後、上記透明溶液のpHは1未満である工程、
b)上記透明溶液の温度を、沈殿が起こり始める68~85℃の範囲の温度に達するまで上昇させ、上記沈殿が起こり始める前に少なくとも1種の酸性安定剤を添加し、撹拌しながら少なくとも1分間、その温度を保持して、中間生成物としてのTiOを含む粒子の分散液を得る工程、
ab)TiOを含む粒子の分散液を準備する工程であって、上記分散液中の上記粒子の平均直径は、3~20nm、好ましくは4~15nm、より好ましくは4.5~7nmであり、上記分散液は、酸性安定剤としての少なくとも1種のα-ヒドロキシ酸を含む工程、
c)工程b)からの上記分散液の中の水酸化物イオンの濃度を、アルカリ金属水酸化物MOHを添加することにより、少なくとも8Mに調整する工程、
d)工程c)からの上記分散液を90~170℃の範囲の温度で6~72時間処理して、アルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体を得る工程、並びに
e)上記アルカリ金属チタネートを含む複数の第1の構造体を、アルカリ金属イオンMの少なくとも一部をHと交換するように処理して、プロトン化チタネートを含む複数の第2の構造体を得る工程
である。
【0221】
上述した全ての実施形態は、本発明をこのように記載した場合にも適用可能である。
【0222】
理論的には、LTO(リチウムチタネート(チタン酸リチウム)、LiTi12)は、Priyonoら、AIP Conference Proceedings 1826、020005(2017)によれば、175mAh/gの比容量で1.55Vの動作電圧を有する。従って、175mAh/gは、TiOを含むアノード(電極)にとって重要な閾値である。
【0223】
さらに別の態様では、リチウムイオン電池用の電極成分であって、上述の方法に従って製造された構造体を含む電極成分が提供される。
【0224】
さらなる態様では、電解質(電解液)によって分離された第1の電極及び第2の電極を含むリチウムイオン電気化学セルであって、第1の電解質及び第2の電解質の一方は、上述の方法に従って製造された構造体を含むリチウムイオン電気化学セルが提供される。
【0225】
1つの実施形態では、半電池試験(ハーフセルテスト)における充電容量は175mAh/g超である。
【0226】
さらなる態様では、電気化学的に連結された複数のリチウムイオン電気化学セルを含むリチウムイオン電池であって、この複数のリチウムイオン電気化学セルの各々は、電解質によって分離された第1の電極及び第2の電極を含み、第1の電解質及び第2の電解質のうちの1つは、上述の方法に従って製造された構造体を含むリチウムイオン電池が提供される。
【0227】
当該電池の1つの実施形態では、半電池試験における充電容量は175mAh/g超である。
【0228】
1つの実施形態では、当該電池は、5Cのレートで充電することができる。1つの実施形態では、当該電池は、10Cのレートで充電することができる。この点において、Cレートは、電池の最大容量に対する充電可能なレートの指標である。1Cレートとは、電流が1時間で電池全体を充電することを意味する。5Cレートは、電流が1/5時間で電池全体を充電することを意味する。10Cレートは、電流が1/10時間で電池全体を充電することを意味する。
【0229】
1つの実施形態では、上記リチウムイオン電気化学セル又はリチウムイオン電池は、99.5%を超える、100サイクル後のクーロン効率を有する。クーロン効率は、電気化学反応を促進する系において、電荷が移動する際の効率である。この場合、全く新しい電気化学セルを使用する際の影響を避けるために、クーロン効率は100サイクル後に測定される。
【0230】
1つの実施形態では、C/10、C/3、C/2、1C、2C、5C、10C、及び再びC/10でそれぞれ5サイクル充放電した後のC/10充電の容量回復率は、少なくとも90%である。この際、1Cは330mA/gとして定義され、測定はC/10充電の3サイクル目に行われる。C/10で充放電サイクルが行われ、その後、高レートサイクルが行われ、その後、同じC/10充放電サイクルが行われる。そのあとで、90%以上の容量が依然として残っている。
【実施例
【0231】
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。
【0232】
例1。工程a)及び工程b)に従って、水に懸濁したチタン酸2.5部をTiOCl溶液(TiO 22~24重量%、密度1.5~1.6g.cm-3)1部と混合して透明溶液を得て(工程a))、安定剤としてのクエン酸をTiO:クエン酸が10:1の質量比で添加した後で80℃に昇温して75分間保持し(工程b))、その後急冷することによって、pH<1の酸性の10重量%TiO分散液を調製した。上記水に懸濁したチタン酸はpH5.5であり、工程a)の前に、25~40℃の範囲の温度を保ちながら、2部の上記TiOCl溶液を1部の水及び8.8部の10%NaOHと混合することによって調製した。この例では、2つの質量、すなわち、水に懸濁したチタン酸を調製するために使用したTiOCl水溶液中のTiの質量と、工程a)でチタン酸と混合されて透明溶液を形成したTiOCl水溶液中のTiの質量との比は、3:7であった。
【0233】
工程b)の後、pH1~1.5、TiOが20重量%となるように、イオンと水分の含有量を調整して(工程b1)及び工程b2))、TiOの酸性ゾルを得た。
【0234】
例2。工程c)の前に、例1のpH1~1.5の20重量%酸性ゾルを取り、撹拌しながらクエン酸、KOH及びモノエタノールアミン(MEA)を加えることにより、15重量%TiOを含むpH8.5~9.0のアルカリ性ゾルを調製した。上記酸性ゾル6.1部に、水1.8部、KOH(49重量%)1.8部、及びクエン酸1.0部からなる塩基性溶液1部を加えた。MEAを加えて、最終的なアルカリ性ゾルの最終物は、クエン酸:MEAの質量比が2.1:1となった。
【0235】
例3。例1の工程b)の後に得られた酸性分散液を、工程b)の後に得られた分散液の2.2重量部から、1.0部の透明な液体を除去し、この透明な液体はTiO粒子を実質的に含まず、TiO粒子を含む1.2部を濃縮された白色ペースト及び残留する透明な母液として残すようにした、密度差分離によりTiO含有量に関して濃縮した(工程b2))。この濃縮工程に続いて、次にこの1.2部を、工程b1)に対応する上記1.0部の水で希釈し、それによってpH<0のTiOのイオン低減酸性分散液の合計2.2部を得た。
【0236】
例4。上記例3のTiOのイオン低減分散液を、透析濾過(工程b1))及び限外濾過(工程b2))に供することによって、20重量%TiOの酸性分散液を得たが、ここでは、例3のイオン低減酸性分散液の上記2.2部に加えて、1.4部の水を入力として加えて、pH1~1.5の20重量%TiO酸性ゾル0.7部及び2.7部の生成水を得た。
【0237】
例5。例4からの酸性ゾルを、真空下で固体形態まで蒸発させ(工程b2))、この固体形態が水に再分散可能であり、それによって安定なTiOゾルが得られるようにした。この固体を再分散することによって形成されたゾル中のTiOの重量パーセントは、その固体に対する水の比率を変化させることによって調整することができた。この場合、上記固体を再分散することにより、40重量%のTiOの最終的なゾルを得た。
【0238】
例6。例2のアルカリ性ゾルを、60℃で加熱しながら真空下で蒸発させ(工程b2))、TiO含有量>15%のゾルを得た。このようにして、例2の上記アルカリ性ゾルを37重量%のTiOまで濃縮した。
【0239】
例7。例6の上記アルカリ性ゾルを水で希釈して、TiOが30重量%のゾルを得た。
【0240】
例8。例1の20重量%TiOゾルを、表1の実験番号JAT-1-019の量及び条件に従って10M NaOHでpH調整した(工程c))。明示的には、上記ゾル0.477gを0.19gの10M NaOHとよく混合し(工程c))、テフロン(登録商標)で裏打ちされた鋼製オートクレーブ内で130℃で24時間、自生圧力下で加熱し(工程d))、ナトリウムチタネート生成物を形成した。その後、この生成物を0.1M塩酸でイオン交換し(工程e))、洗浄し、空気中において室温で乾燥させた。この生成物を、透過型電子顕微鏡法(TEM)を用いて特性評価した。その結果は表2に示されている。
【0241】
例9。例2に従って調製した15重量%のTiOゾルを、「ゾル中の%TiO」と記された列のエントリが15%と記載されているすべての実験について、表1に与えられた量及び条件に従って、2~15MのNaOH(工程c))とともに反応物として使用した。例8と同様に、各実験についての反応物を混合し、表1に与えられた条件でオートクレーブ内で加熱し(工程d))、ナトリウムチタネート生成物を生成した。次に、このナトリウムチタネート生成物をイオン交換して(工程e))、プロトン化チタネートを得た後、室温で空気中で洗浄及び乾燥し、画分に分割し、それらを、続いて空気中で110℃で2.5時間又は空気中で110℃で2.5時間加熱した後、空気中で350℃に2.5時間加熱した(工程f))。その後、この生成物を以下のうちの1つ以上の方法によって特性評価した:粉末X線回折(XRD)、ラマン分光法、窒素物理吸着、走査型電子顕微鏡法(SEM)、透過型電子顕微鏡法(TEM)、エネルギー分散型X線分析(EDX)、又は熱重量分析(TGA)。
【0242】
例10。例6に従って調製した37重量%のTiOゾルを、「ゾル中の%TiO」と記された列のエントリが37%と記載されているすべての実験について、表1に与えられた量及び条件に従って、10M NaOH(工程c))とともに反応物として使用した。例8及び例9と同様に、各実験についての反応物を混合し、表1に与えられた条件でオートクレーブ内で加熱して、ナトリウムチタネート生成物を生成した(工程d))。その後、生成物をそれぞれの反応容器から取り出した後、例8及び例9の生成物と同じプロセス(工程e)、110℃での加熱(工程f))及び特性評価方法によって処理した。
【0243】
例11。例6に従って調製した30重量%のTiOゾルを、「ゾル中の%TiO」と記された列のエントリが30%と記載されているすべての実験について、表1に与えられた量及び条件に従って、10MのNaOHでpH調整した(工程c))。例8、例9及び例10と同様に、各実験についての反応物を混合し(工程c))、表1に与えられた条件でオートクレーブ内で加熱し(工程d))、ナトリウムチタネート生成物を生成した。その後、生成物をそれぞれの反応容器から取り出した後、例8、例9及び例10の生成物と同じプロセス(工程e)、110℃での加熱(f))及び特性評価方法によって処理した。
【0244】
例12。工程e)の後に得られた試料RWC-1-24(表1参照)2.8969mgを空気中で110℃で2.5時間加熱し、続いて、窒素ガスを流しながら室温から500℃まで毎分20℃で加熱する熱重量分析(TGA)にかけたところ、重量損失は17.2%と記録された。加熱後の試料は黒色の粉末で、チューブを含む炭素-TiO(B)ハイブリッド材料が形成されていることを示していた。この炭素は、この試料中のプロトン化チタネートを形成し、洗浄し、そして乾燥した後に残る残留有機物から供給されたものである。
【0245】
図1は、表1及び表2の実験RWC-1-018から得られた複数の第2の構造体の熱処理(すなわち工程f)の生成物に対応するX線粉末回折(XRD)パターンを示す。両方のパターンは、Carvahloら、Chemical Engineering Journal 313(2017) 1454-1467に示されたインデックス付けに従って、組成(H,Na)Tiの単斜晶チタネート結晶構造に従ってインデックス付けされている。上側のパターンで星印でラベル付けされたピークは、Etacheriら、ACS Nano 8(2) 1491-1499(2014)で与えられたインデックス付けに従って、TiO(B)にインデックス付けされている。なお、(110)及び(020)のピークは両構造体に共通している。(200)ピーク又は(001)ピークの下の相対的な面積は、シート構造(又はそれから形成されたTiO(B)シート/チューブ壁)の剥離(脱積層)の程度の指標と解釈され、そのため、任意のピーク強度は、チタネート相のある程度の積層又はそれから形成されたTiO(B)シートの相対的な厚さを示すものと解釈される。層の積層(又はTiO(B)シートの厚さ)の相対的なレベルは、この試料と表2の他の試料との間で比較することができる。より薄いTiO(B)シートは、より高い比表面積が望まれるいくつかの場合に望ましい。表2及び図9に見られるように、より大きなピーク(より厚いTiO(B)シート/チューブ壁に対応する)は、より低いBET面積と相関し、Ti/Na原子比が最も高いときに最も高いBET比表面積が得られる。これは、チタネートシートの層間剥離は、イオン交換プロセス(すなわち、工程e))が十分なNaを除去して、Ti/Na原子比がおよそ6よりも大きくなるときに、より効果的であることを示唆している。このレベル未満では、チタネートの積層物が残り、より低い比表面積の厚いブロンズシートを形成する。表2に示すように、この試料は、工程e)の間にプロトン(ヒドロニウムイオン)へのイオン交換が高度に行われたことを示す低いナトリウムを示す。
【0246】
図2は、図1の同じ試料のラマンスペクトルを示す。これらのラマンスペクトル及び本明細書に示されるその他のラマンスペクトルの場合、スペクトルは試料全体ではなく、試料内の5~10マイクロメートルのスポットから取得されており、いくらかのばらつきが生じているが、これはおそらくチタネートの多形の違いに起因するいくらかの局所的なばらつきと一致している。110℃の下側の曲線は、Carvahloら、Chemical Engineering Journal 313(2017) 1454-1467の帰属に従って、チタネート構造に帰属される。上側の曲線は、Feistら、Journal of Solid State Chemistry 101、275-295(1992)の帰属に従って、TiO(B)構造に帰属される。
【0247】
図3は、表1及び表2の実験RWC-1-019から得られた複数の第2の構造体の熱処理(工程f)の生成物に対応するX線粉末回折(XRD)パターンを示す。両方のパターンは、Carvahloら、Chemical Engineering Journal 313(2017) 1454-1467に示されたインデックス付けに従って、組成(H,Na)Tiの単斜晶チタネート結晶構造に従ってインデックス付けされている。加えて、一重の星印が付いたピークはTiO(B)のピークの予想される位置を示し、二重の星印が付いたピークはTiOアナターゼについて予想される位置を示している。下側の曲線はチタネートと一致している。上側のパターンは、TiO(B)がTiOアナターゼに移行しているか、又はTiOアナターゼと共存していることと整合する。アナターゼの存在は、図4にも示されている。
【0248】
図4は、図3の同じ試料のラマンスペクトルを示す。110℃の下側の曲線は、Carvahloら、Chemical Engineering Journal 313(2017) 1454-1467の帰属に従って、チタネート構造に帰属される。上側の曲線は、TiOアナターゼに帰属される。
【0249】
図5は、表1及び表2の実験RWC-1-022から得られた複数の第2の構造体の熱処理(工程f)の生成物に対応するX線粉末回折(XRD)パターンを示す。両方のパターンは、Carvahloら、Chemical Engineering Journal 313(2017) 1454-1467に示されたインデックス付けに従って、組成(H,Na)Tiの単斜晶チタネート結晶構造に従ってインデックス付けされている。加えて、一重の星印が付いたピークは、TiO(B)のピークの予想される位置を示す。下側の曲線は、チタネートと一致している。上側のパターンはTiO(B)と一致している。
【0250】
図6は、図5の同じ試料のラマンスペクトルを示す。110℃の下側の曲線は、Carvahloら、Chemical Engineering Journal 313(2017) 1454-1467の帰属に従って、チタネート構造に帰属される。上側の曲線は、Feistら、Journal of Solid State Chemistry 101、275-295(1992)の帰属に従って、TiO(B)構造にかろうじて移行しているチタネートに帰属され、特に、126cm-1、151cm-1及び383cm-1のピークの強度が増加していること、並びに448cm-1及び660cm-1のピークのブロード化が開始されていることによって、これが示されていると考えられる。
【0251】
図7は、表1及び表2の実験RWC-1-024から得られた複数の第2の構造体の熱処理(工程f)の生成物に対応するX線粉末回折(XRD)パターンを示す。両方のパターンは、Carvahloら、Chemical Engineering Journal 313(2017) 1454-1467に示されたインデックス付けに従って、組成(H,Na)Tiの単斜晶チタネート結晶構造に従ってインデックス付けされている。加えて、一重の星印が付いたピークは、TiO(B)のピークの予想される位置を示す。下側の曲線は、チタネートと一致している。上側のパターンはTiO(B)と一致している。なお、上側の曲線のTiO(B)の001ピークはゼロに近づいているが、これは、チタネートが薄いTiO(B)シートに変化するにつれてチタネートの完全な剥離に近づいていることと一致し、チタネートが薄いTiO(B)シートに変化していることは、この試料の高い表面積と一致している。
【0252】
図8は、図5の同じ試料のラマンスペクトルを示す。110℃での下側の曲線は、Carvahloら、Chemical Engineering Journal 313(2017) 1454-1467の帰属に従って、チタネート構造に帰属される。上側の曲線は、Feistら、Journal of Solid State Chemistry 101、275-295(1992)に従って、TiO(B)構造に帰属される。
【0253】
図9は、図1のキャプションで説明したように、EDXから測定したTi/Na比(表2参照)と350℃で処理した試料のBET表面積の関係を示す。高い表面積で示される高度な層間剥離と、イオン交換生成物において測定されたTi/Na比との間には相関関係があるようである。比較的高い程度の層間剥離を達成することはおよそ6のTi/Na比よりも高い比で起こるようである。なお、表面積が200℃に近いデータ点は、その結晶構造がTiOアナターゼであるため、異常値と考えることができるが、他のデータ点はすべてTiO(B)に対応している。
【0254】
図10は、試料RWC-1-005のSEM画像を示し、多孔質固体を形成するチューブ/ロッドの細長い凝集したクラスターがよく形成されている。
【0255】
図11は、試料RWC-1-005のTEM画像を示し、TEM試料の調製によって引き起こされたと思われる様々な程度のコンパクトさを持つオープン構造のウェブ又はネットワークを形成するチューブがよく形成されている。
【0256】
図12は試料RWC-1-017のTEM像を示し、多くは、試料調製で使用された粉砕及び超音波処理の間に壊れたと思われるより短いチューブの断片によって取り囲まれた平行なチューブの集合体を形成する長いチューブがよく形成されている。これらのチューブはこの画像では明らかに中空であり、外径は約5nm、内径は約1.5~2.0nmのオーダーであり、壁の厚さは約1.5nmである。工程e)の後に得られる典型的なチューブの内径と外径は、それぞれ1.5~8nmと5~10nmである。
【0257】
図13は、工程e)の後、110℃で加熱して得られた試料RWC-1-018のSEM画像を示すが、集合した多孔質固体を形成する細長い湾曲し捻れているチューブ/ロッドがよく形成されている。この試料で行った窒素物理吸着実験では、メソ細孔容積が約0.6~0.65cm.g-1で、吸脱着時のメソ細孔サイズ分布が8nm付近に集中していることから、このチューブの集合体は巨視的なスケールでは均質である可能性が高く、集合体構造は、明確に定義されアクセス可能な内部メソ細孔系を持つメソポーラス固体を形成していることが示された。
【0258】
図14は、工程e)の後、110℃で加熱して得られた試料RWC-1-020のSEM画像を示すが、集合した多孔質固体を形成する細長い湾曲し捻れているチューブ/ロッドがよく形成されている。
【0259】
図15は、工程e)の後、110℃で加熱して得られた試料RWC-1-024のSEM画像を示すが、集合した多孔質固体を形成する細長い、湾曲し捻れているチューブ/リボンがよく形成されている。
【0260】
図16は、図14に見られる、工程e)の後、110℃で加熱して得られた試料RWC-1-024のSEM画像の拡大図を示すが、個々のチューブ/リボンの直径が約3~8nmであることを明確に示す。
【0261】
図17は、表1及び表2の工程f)後のJAT-1-017に対応する77Kにおける窒素物理吸着等温線の吸着(四角)及び脱着(ダイヤ)の曲線を示す。
【0262】
図18は、図17の脱着曲線から導かれたBJH脱着細孔径分布を示す。チューブの内側の中空の空間は、長い円筒形の細孔と考えることができる。細孔径分布の3.4nmのピークは、チューブの平均的な内孔半径と解釈され、6.8nmの内孔径に対応する。この試料についての約0.99のp/pに対応する細孔の細孔容積は0.4625cm.g-1であった。BJHの細孔径は窒素物理吸着によって求めた。
【0263】
表1は、例の条件を示す。
【0264】
表2は、例の結果を示す。
【0265】
【表1】
【0266】
【表2(1)】
【表2(2)】
【表2(3)】
【表2(4)】
【表2(5)】
【表2(6)】
【0267】
例13
本発明に係る材料を用いることによって、電池用アノードを作製した。
【0268】
材料は、以下の質量で以下に従って合成した。
【0269】
TiOは、5.2773gのTiOに相当する37重量%の粒子の分散液として準備した。
【0270】
合計10M KOH 130.56gを加えて、水酸化物イオンの濃度を8Mを十分に超えるように調整した。
【0271】
この混合物をマグネチックスターラーを用いて1時間撹拌した。その後、この混合物をテフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエテン)で裏打ちされたオートクレーブ4台に均等に分割し、145℃で56時間、無撹拌で加熱した。
【0272】
56時間の加熱の後、オートクレーブを閉じたオーブンの中で23時間かけて室温まで放冷した。各テフロン(登録商標)ライナー内の生成物を一緒に混合した。
【0273】
これに0.1M HClを加えて沈降させ、透明な上澄み液をデカンテーションした。これを3回繰り返した。この後、過剰の0.1M HClをデカンテーションした生成物と混合し、濾過した。この手順により、Kイオンの少なくとも一部がHイオンに置き換えられた。
【0274】
その後、この試料を数日間かけてゆっくりと濾過し、pH>3になるまでmilliQ水で洗浄した。その後、この試料を風乾させた。この風乾した試料を、セラミック製の皿に入れて、以下のように空気中で加熱した。
【0275】
最初に300℃未満の温度に加熱して水分を除去した後、350℃で1.5時間、さらに400℃で30分加熱して、TiOを含む第3の構造体に変換した。
【0276】
ラマンをこの試料からの分割試料に対して使用し、温度と時間を制限することでアナターゼを最小限に抑えた。
【0277】
次いで、熱処理した試料を、乳鉢と乳棒で細かく粉砕した。
【0278】
アノードの調製
上記材料を用いて分散液を以下のように作製した。
【0279】
試料は、以下のものを用いて調製した。
1.0028gのTiOを含む第3の構造体
0.125gのSuper C 65カーボンブラック(Imerys(登録商標))
0.125gのKynar(登録商標) PVDF(ポリフッ化ビニリデン)
2.38gのn-メチルピロリドン(NMP)
【0280】
すべてのスラリーは、RETCH Mixer Mill MM200とステンレス鋼製の瓶を用いて均質化した。
【0281】
まず、カーボンブラックを5重量%のPVDF溶液に10分間分散させた。その後、活物質及び追加のNMPを加え、このスラリーを30分間均質化した。
【0282】
このスラリーを、100μmのウェット膜堆積物を残すように設計されたメーターバーを備えたKコントロールコーターを用いてコーティングした。
【0283】
コーティング後、この電極シートを60℃で乾燥し、ロールプレスし、再度100℃で10時間真空乾燥した。12mmφの電極を打ち抜き、Arを充填したグローブボックスに移した。
【0284】
Liを対電極とし、Celgard 2400 PPセパレータと40μLのLP40電解液(EC/DEC 1:1重量比中の1M LiPF)を用いて、2016個のコインセル(1試料あたり6セル)を組み立てた。
【0285】
電気化学的特性評価
電気化学的な充放電実験は、Maccor 4200及びLANHE CT2001Aを用いて、1~2.5V対Li/Liの電圧枠で実施した。1Cは330mA/g(TiO)と定義した。
【0286】
2種類のテストプログラムを適用した。
【0287】
最初のプログラムでは、レート受容性(rate acceptance)を評価した。セルを、C/10、C/3、C/2、1C、2C、5C、10C及び再びC/10で充電と放電をそれぞれ5サイクル行った。最後の低電流での工程を、容量回復率を分析するために適用した。
【0288】
2つ目のプログラムでは、3Cでのサイクル寿命を500サイクルについて評価した。サイクル寿命を分析する前に、セルをC/10の低電流で3サイクル処理した。
【0289】
電気化学的結果
すべての結果は、TiO 1グラムあたりのmAhで与えられている。クーロン効率は、脱リチウム容量をリチウム化容量で割ることによって算出される。
【0290】
最も低い印加電流は33mA/g(C/10)であり、最も高い印加電流は3300mA/g(10C)であった。これは、LTOでは約20Cに相当する。
【0291】
試験サイクルの図を図20に示す。
【0292】
C/10サイクル3での初期容量:215mAh/g
5C(サイクル30)での容量:150mAh/g
10C(サイクル35)での容量:125mAh/g
回復した容量:210mAh/g
【0293】
3Cで500サイクル後の容量:130mAh/g(初期値は160mAh/g
【0294】
両試験におけるクーロン効率:初期サイクル後に99.5%以上に収束。
図1
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