(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】表面保護のためのナノ構造ハイブリッドゾル-ゲルコーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 201/10 20060101AFI20240716BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240716BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240716BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240716BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240716BHJP
【FI】
C09D201/10
B32B27/00 101
B32B27/18 Z
C09D7/63
C09D7/20
(21)【出願番号】P 2021549459
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2020054555
(87)【国際公開番号】W WO2020169775
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-14
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521371887
【氏名又は名称】カスタス テクノロジーズ ディーエーシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ダフィー, ブレンダン
(72)【発明者】
【氏名】ウバハ, ムハメド
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ, ジェームス
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0330380(US,A1)
【文献】Investigation of the mechanical and thermal fatigue properties of hybrid sol-gel coatings applied to AA2024 substrates,Journal of coatings technology and research,2016年11月,vol. 13, No. 6,1083-1094
【文献】The Role of the Chelating Agent on the Structure and Anticorrosion Performances of an Organosilane-Zirconium Sol-Gel Coatings,Advances in Materials Physics and Chemistry,2018年02月28日,vol. 8, No. 2,89-104
【文献】Corrosion protection of AA 2024-T3 aluminium alloys using 3,4-diaminobenzoic acid chelated zirconium-silane hybrid sol-gels,Thin Solid Films,2010年05月26日,vol. 518, No. 20,5753-5761
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)
少なくともオルガノシラン前駆体3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(MAPTMS)を含む、オルガノシラン又
はオルガノシランの混合物と;
(b)ジルコニウム及び配位子を含む金属錯体と
;
(c)添加剤及び
任意選択的に溶媒と
を含
み、
添加剤が、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン(BTSPA)を含む、ハイブリッドゾル-ゲルコーティング配合物。
【請求項2】
触媒が含まれる、任意選択的に触媒が硝酸(HNO
3)である、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
添加
剤ベンゾトリアゾール(BTA
)をさらに含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項4】
溶媒が、C
1-C
4アルコールから選択される任意の1つ又は複数のアルコールを含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項5】
アルコールがエタノール(EtOH)を含む、請求項4に記載の配合物。
【請求項6】
エタノールが
、ゾル-ゲルの0~25%w/wの範囲にある、請求項5に記載の配合物。
【請求項7】
BTSPAが
、ゾル-ゲルの0.5~10%w/wの範囲にある、請求項3に記載の配合物。
【請求項8】
BTAが
、ゾル-ゲルの0.2~1.5%w/wの範囲にある、請求項3に記載の配合物。
【請求項9】
配合物へのBTSPAの添加の前に0.1MのHNO
3を使用
してBTSPAが触媒される、請求項
7に記載の配合物。
【請求項10】
オルガノシランが、フェニルトリエトキシシラン(PhTEOS)
及びTEO
Sを含む群から選択される1つ又は複数のオルガノシラン前駆体を含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項11】
金属錯体
がチタンを含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項12】
金属錯体がジルコニウム(IV)プロポキシド及び/又はチタンイソプロポキシドを含む、請求項
11に記載の配合物。
【請求項13】
金属錯体が単座配位子又は二座配位子を含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項14】
配位子がメタクリル酸(MAAH)を含む、請求項
13に記載の配合物。
【請求項15】
配位子が(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)を含む、請求項
13に記載の配合物。
【請求項16】
成分のモル比が、50:50~99:1のオルガノシラン前駆体:金属錯体のモル比、好ましくは80:20の比にある、請求項1に記載の配合物。
【請求項17】
ハイブリッドゾル-ゲル配合物を調製するための方法であって:
(a)
3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(MAPTMS)であるシラン前駆体を加水分解する工程と;
(b)金属をキレート化して
ジルコニウム(Zr)及び配位子を含む金属錯体を形成する工程と;
(c)オルガノシラン前駆体と金属錯体とを組み合わせて中間体ゾルを形成する工程と;
(d)中間体ゾルを加水分解して最終前のゾルを形成する工程と;
(e
)添加剤及び
任意選択的に溶媒を添加して、最終のゾルを形成する工程と、を含
み、添加剤が、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン(BTSPA)を含む、方法。
【請求項18】
工程(a)において、シラン前駆体がHNO
3の水溶液で加水分解され、HNO
3溶液は混合物に滴下添加される、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
工程(d)において、中間体ゾルが脱イオン水で加水分解される、請求項
17に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の配合物から形成されているコーティング。
【請求項21】
請求項1に記載の配合物を表面上にコーティングすることによって調製されているコーティングされた基材。
【請求項22】
コーティングされた基材が、金属、プラスチック材料、金属コーティングされたプラスチック材料、3D印刷及び/又は付加製造製品から選択される任意の1つ又は複数の材料を含む、請求項
21に記載のコーティングされた基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、表面保護のためのナノ構造ハイブリッドゾル-ゲルコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、金属表面にコーティングを提供するために特に有用であるが、本発明のコーティングは、金属コーティングされたプラスチック表面及び3D印刷/付加製造製品を含むプラスチック表面にも使用できることを理解されたい。
【0003】
金属は、建設、機械及び電気工学、輸送、医療など、多くの産業で構造材料として使用されている。最も一般的に使用される金属は、鉄、アルミニウム、銅、チタン、亜鉛である。
【0004】
鉄は、アルミニウムに次いで、地球の地殻で2番目に豊富な金属であり、その生産量は、他のすべての金属を合わせた生産量を上回っている。鉄の98%は、あらゆる形態の鋼(ステンレス鋼、軟鋼など)の製造に使用されており、主に建設、エンジニアリング、輸送業界で使用されている。世界の鉄鋼生産量は1996年(7億5000万トン)から2016年には16億トンを超えるまで絶えず増加している。
【0005】
アルミニウムは、地球の地殻で最も豊富な金属であり、2番目に生産されている金属である。その優れた電気伝導率と熱伝導率、及びその好ましい高い強度対重量比により、電子機器及び輸送業界にとって優れた材料となった。例えば、現代の航空機は、胴体コンポーネント、表面材料の製造、及びフレームと翼の構造のために、75~80%のアルミニウムで構成されている。世界の自動車産業(中国を除く)は2014年に287万トンのアルミニウムを消費し、この数字は2020年までに449万トンに達すると予想されている。この成長の主な要因には、自動車生産の増加と現代の自動車でのアルミニウムの幅広い使用の両方が含まれる。この傾向の主な理由は、重い鋼部品を交換することによって車両の重量を減らし、その結果、全体的な燃料消費量を減らすことである。このため、エンジンラジエーター、ホイール、バンパー、サスペンションパーツ、エンジンシリンダーブロック、トランスミッションボディ、ボディパーツ(ボンネット、ドア、フレーム)など、アルミニウム製の自動車部品が増えている。その結果、1970年代以降、平均的な自動車の総重量に占めるアルミニウムの割合は35kgから152kgに増加した。専門家は、2025年までに自動車の平均アルミニウム含有量が250kgに達すると予測している。
【0006】
銅は導電率が高く、製造コストが低いため、電気用途で最も利用されている金属である。銅は他のどの金属よりも自由に合金を形成するため、アルミニウム、スズ、ニッケル、鋼、亜鉛などの多くの金属の合金元素として広く使用されている。しかしながら、銅は環境腐食に帯する感応性が非常に高い。
【0007】
チタンとその合金は、非常に好ましい強度対質量比を有する。それらはまた、それらの表面が薄くて弾力性のある酸化物層を発現させるので、腐食に対して耐性がある。それらは主に、強度、軽量性、耐食性が要求される航空宇宙及び医療産業で採用されている。しかし、チタンの主要な問題は、アルミニウム、銅、鋼に比べてコストが高いことである。
【0008】
亜鉛は主に、鉄系材料(鉄鋼)を周囲雰囲気の腐食から保護するための犠牲コーティングとして使用されている。亜鉛は、半製品の合金及び/又は合金元素、例えば、コイン、小さな電気ヒューズ、埋設パイプライン用のアノードリボンなどとしても使用されており、ドアハンドル、マリンフィッティング、配管部品、ねじ固定などの装飾製品と機能製品の両方を製造するためにも使用されている。亜鉛は耐水性があるが、酸性及び塩基性環境に対して非常に感応性である。
【0009】
上記の最も広く使用されている金属は、腐食及び関連する環境への影響に対して脆弱であり、追加の耐食性を提供するために表面処理を適用する必要があることがしばしばある。通常適用される表面処理には、陽極酸化、化成処理、リン酸塩処理、及び高度に架橋された有機ポリマーコーティング(水系又は溶剤ベース)が含まれる。これらの処理は特定の金属に固有であるため、どの金属表面にも多目的に使用できるわけではない。これに加えて、これらの処理は、現在の環境規制、より厳しい耐食性、処理の簡単さ、又はコストのいずれかを満たしていない。
【0010】
所定の比率で架橋化学物質を含めることにより、コーティングの多孔性を低下させ、構造強度と防錆特性を向上させることができる。架橋化学物質の例には、ビスシラン、ジアミノアルカン、ジイソシアネート、ジビニルベンゼン、アクリル、アミド及びポリアミド、アジリジン、ベンゾグアナミン、カルボジイミド樹脂、グリウリル、イソシアネート、メラミン、ポリオール、ケイ素ベースの化合物、尿素ホルムアルデヒド、ウレタン及びポリウレタンが含まれる。
腐食防止のためのコーティングの設計の最も重要な側面の1つは、配合物に環境に優しい化合物を使用することである水系システムに焦点を当てた文献で多くの試みが報告されているが、ハイブリッドゾル-ゲルコーティングは、前処理層又は様々な金属合金のプライマーとして使用できるため、過去数十年にわたって特に注目されてきた。上で概説したクロム酸塩ベースのシステムの有望な代替品を提供する、透明なジルコニウムベースのハイブリッドゾル-ゲルコーティングは、上記の金属に完全な防食性、耐久性、及び審美的に望ましいシステムを提供する優れた潜在性を有する。
【0011】
金属を保護するための保護コーティングの設計における重要な要件は、保護される基材に対する、中性湿度と酸性湿度の両方での耐熱性及び耐紫外線性を伴う、バリア特性及び/又は腐食抑制を含む高い耐食性である。既知の金属コーティングは、これらの重要な要件のすべてを達成するわけではない。この問題は、本発明によって対処される。
【0012】
別の態様では、2つの表面層間の接着の問題、及びゾル-ゲルコーティングへの多機能性の導入が、本発明によって対処される。露出金属上のクロムベースのコーティングの直接の代替として標準的なハイブリッドゾル-ゲルを使用する際の主要な課題の1つは、2つの表面間の不十分な接着性である。この不十分な接着の結果として、防食性能は強く影響を受け、腐食環境への短い曝露時間の後に層間剥離が観察される。
【0013】
本発明は、既知の表面コーティング、特に金属コーティングされたプラスチックを含む金属表面コーティングの欠点を軽減しようとするものである。
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明の一態様は、表面保護のためのナノ構造ハイブリッドゾル-ゲルコーティングを形成するための、請求項1に記載の組成物を提供する。本発明はまた、添付の特許請求の範囲の他の独立した請求項に記載されるように、ナノ構造のハイブリッドゾル-ゲルコーティング及びナノ構造のハイブリッドゾル-ゲルコーティングを製造する方法を提供する。
【0015】
本発明は、多機能ハイブリッドゾル-ゲルコーティングを形成するための組成物を提供し、本発明の組成物は、腐食、UV曝露、耐熱性、耐酸性及び湿度を含む環境劣化から金属表面を保護するためのメタクリレートシラン及びジルコニウムアルコキシドベースの錯体の組み合わせを含む。
【0016】
本発明は、金属コーティングされたプラスチック材料を含む、金属表面をコーティングするのに特に適した配合物を提供するという利点を有する。本発明は、金属表面にコーティングを形成するのに特に有用であるが、本発明のコーティングは、金属コーティングされたプラスチック表面及び3D印刷/付加製造製品を含むプラスチック表面のコーティングにも使用できることを理解されたい。
【0017】
本発明の組成物及びコーティングは、それらが、上記の金属に対して完全な防食性、耐久性、及び審美的に望ましいシステムを提供する、透明なジルコニウムベースのハイブリッドゾル-ゲルコーティングを提供するという利点を有する。
【0018】
金属を保護するための本発明のコーティングは、バリア特性及び/又は腐食抑制、中性及び酸性湿度の両方での耐熱性且つUV耐性によって保護される、基材への高い接着特性を含む、高い耐食性の利点を提供する。本発明の組成物によって形成されるコーティングは、高度に付着性の無機化学で機能化された表面を有する高度に緻密化されたハイブリッドゾル-ゲルコーティングを提供することによって、これらすべての特性を同時に達成及び提供するという重要な利点を有する。
【0019】
本発明は、金属表面に適した防食コーティングとして、ここに記載のゾル-ゲルコーティング組成物の使用を提供する。
【0020】
本発明はまた、金属表面に適した防食コーティングとしてここに記載されるようなキレートの使用を提供する。
【0021】
本発明は、高度に付着性の無機化学物質で機能化された表面を備えた高度に緻密化されたハイブリッドゾル-ゲルコーティングを提供する。
【0022】
本発明はまた、本発明のハイブリッドゾル-ゲルコーティングを調製するための方法を提供する。ハイブリッドゾル-ゲルコーティング及び調製するための方法のそれぞれの有利な実施形態は、従属請求項に提供される。
【0023】
本発明の利点は、保護される基材に対して、バリア特性及び/又は腐食抑制を含む、高い耐食性の特性並びに高い接着特性を、中性湿度と酸性湿度の両方での耐熱性及び耐紫外線性と共に同時に示すことである。
【0024】
Zr化学
本発明の有機金属前駆体は、好ましくは、ジルコニウムを含む遷移金属前駆体である。ジルコニウム前駆体は、ジルコニウム(VI)プロポキシド(Zr(OPr)4)であり得る。
【0025】
一実施形態では、有機金属前駆体は、遷移金属前駆体、例えば、ジルコニウムの前駆体である。ジルコニウム前駆体の含有は、コーティングの接着性、及び/又はコーティングのpH安定性、及び/又はフィルム硬度を改善すると理解されている。選択のジルコニウム前駆体は、ジルコニウム(VI)n-プロポキシド(Zr(OPr)4)(2-プロパノール中70%重量)である。ジルコニウム前駆体は、オルガノシラン前駆体の反応性と比較した場合、水に対する反応性が高い。したがって、望ましくない酸化ジルコニウム沈殿物の形成を回避するには、Zr(OPr)4をキレート化して、結合の可能性を4から2(又は1)部位に減らさなければならない。これは、等モル比で二座(又は単座)配位子を使用することによって実現される。典型的なキレートには、メタクリル酸及び酢酸などのカルボン酸(及び(3-アミノプロピル)トリエトキシシランも)含まれる。MAPTMSをホストマトリックスフォーマーで使用する場合、メタクリル酸は、シランの有機対応物とさらに重合し、コーティングの多孔性を最小限に抑えることができるメタクリル官能基を含むため、好ましい配位子である。
【0026】
三座シラン
本発明の別の態様において、ゾル-ゲルコーティングの使用における不十分な接着の問題が扱われる。金属への有機コーティング及びゾル-ゲルコーティングの接着性を高めるための最も一般的な既知の戦略は、金属上に堆積されているアノード層を介した機械的インターロックによるものである。本発明はまた、金属基材上のコーティングの緻密化プロセスにも寄与すると同時に、金属表面へのゾル-ゲルナノ材料の不可逆的な固定化を可能にする三座シランを提供する。したがって、この態様では、本発明は、以下を前駆体として使用してゾル-ゲルコーティングを調製するための、
図3に概説される方法も提供する:MAPTMS(3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート)、BTSPA(ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン)、APTES(3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン)もしくはMAAH(メタクリル酸)、及びZPO(ジルコニウム(IV)プロポキシド)であり、触媒はHNO
3(硝酸)であり、ネットワーキングシラン前駆体はMAPTESであり、インターロッカー遷移金属はZPOであり、動的シランはAPTESであり、三座シランはBTSPAである。
【0027】
APTESは、窒素原子上にある自由電子の対をジルコニウム原子のdの自由軌道と共有することにより、プロポキシドジルコニウムと配位結合を形成するために含まれている(
図6)。これは、ケイ素原子の周りの立体障害を増加させる効果があり、したがって、水などの強い親水性種の存在下での液体中でのその反応性を低下させる。重要なことに、これには、APTESと、触媒として使用される硝酸水溶液によって活性化されたMAPTMS上にある残留Si-OH基との間の縮合反応の発生を介して、MAPTMSにアンカーポイントを提供するという大きな利点があり、それ故ネットワークインターロッカーとして機能する。
【0028】
BTSPAは、三座シランゾル-ゲル反応性前駆体として含まれており、遷移金属インターロックシランナノ材料システム内で使用される。
【0029】
三座シランは、ゾル-ゲル合成の最後に組み込まれる前に、最初に触媒によって活性化され、
図6に示すように、インターロックされたナノ材料の表面修飾剤として反応する。この表面機能化は、ナノ材料のさらなる凝縮と金属基材への不可逆的な固定に有益な効果をもたらし:三座シランは、インターロックされたシランナノ材料システムのシラン成分及び金属表面と同時に結合できる6つの反応性シラノール基を、APTESと同様にジルコニウム原子と結合できるアミノ基と共に有する。したがって、
図7に示すように、BTSPAは効果的に三座システムとして機能している。
【0030】
第1の態様では、本発明は、メタクリレートシラン、好ましくは、添付の図面の
図1に示すような、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(MAPTMS)及び遷移金属錯体、好ましくは、ジルコニウム錯体から形成された2つのハイブリッドネットワークの相互接続性に基づく、新規の高度に緻密化されたハイブリッドゾル-ゲルコーティングを形成するための配合物を提供する。
【0031】
第2の態様では、本発明は、様々な組み合わせと比率のシラン前駆体の組み合わせ(PhTEOS(フェニルトリエトキシシラン)/TEOS(テトラエチルオルトシリケート)/MAPTMS)、及び遷移金属錯体、好ましくはジルコニウム(及び任意選択でTIOP(チタンイソプロポキシド))の錯体であり、MAAH又はAPTESのいずれかでキレート化され、任意選択的にコロイドシリカ、BTSPA及び/又はBTA(ベンゾトリアゾール)から選択される添加剤から形成された2つのハイブリッドネットワークの相互接続性に基づく、新規の高度に緻密化されたハイブリッドゾル-ゲルコーティングの開発及び使用を提供する。ゾル-ゲル配合成分の様々な組み合わせ及び比率を表1に概説し、本発明の第2の態様によるゾル-ゲルコーティングを形成するための方法を
図2に概説する。
【0032】
好ましくは、本発明は、メタクリレートシラン及び遷移金属錯体から形成された2つのハイブリッドネットワークの相互接続性に基づく、高度に緻密化されたハイブリッドゾル-ゲルコーティングを提供する。
【0033】
本発明の第1の態様では、本発明のコーティングを形成するプロセスの最終段階で、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を添加して、Si/Zrゾルが緻密なコーティングを形成する能力を改善することができる。TEOSは、基本的にコロイド状のSi/Zrをコーティングし、結合する能力を向上させる。
【0034】
TEOSの添加により、コーティング形成が向上することが判明している。
【0035】
本発明の第2の態様では、本発明のコーティングを形成するためのプロセスの最終段階で、添加剤(BTA、BTSPA、コロイドシリカなど)を加えて、得られるゾル-ゲルコーティングの性能を改善することができる。
【0036】
本発明は、メタクリレートシラン及び遷移金属錯体から形成された2つのハイブリッドネットワークの相互接続性に基づく、高度に緻密化されたハイブリッドゾル-ゲルコーティングを提供する。
【0037】
したがって、本発明は:
(a)オルガノシラン又は少なくともオルガノシラン前駆体、MAPTMS(3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート)を含むオルガノシランの混合物と;
(b)ジルコニウム及び配位子を含む金属錯体と;任意選択的に
(c)添加剤及び/又は溶媒とを含む、ハイブリッドゾル-ゲルコーティング配合物を提供する。
【0038】
好ましくは、配合物は触媒を含み、より好ましくは、触媒はHN3を含む。
【0039】
好ましくは、添加剤は、以下から選択される任意の1つ又は複数を含む:BTSPA(ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン)、BTA(ベンゾトリアゾール)、TEOS(テトラエチルオルトシリケート)、コロイダルシリカ、又はそれらの組み合わせ。
【0040】
好ましい一実施形態では、添加剤は、好ましくはBTAである腐食防止剤を含む。任意選択的に、BTSPAは、使用時に、三座ベースのインターロックハイブリッドシランゾルを形成することにより、表面への接着を促進するための添加剤として含まれる。
【0041】
TEOSを添加剤として使用すると、シラン前駆体と金属錯体間の結合が向上し、コーティング形成が改善されることが判明している。
【0042】
好ましくは、溶媒は、C1-C4アルコールから選択される任意の1つ又は複数を含む。
【0043】
好ましい実施形態では、アルコールはエタノールを含む。
【0044】
好ましくは、エタノールは0~25%w/wの範囲にある。
【0045】
コロイダルシリカを添加剤として使用する場合、0.25~1.25%w/wの範囲で使用することが好ましい。
【0046】
好ましくは、BTSPAは0.5~10%w/wの範囲で使用される。
【0047】
好ましくは、BTAは0.2~1.5%w/wの範囲にある。
【0048】
好ましくは、BTSPAは、ハイブリッドゾル-ゲル配合物を調製するための方法の工程(d)での添加の前に、0.1MのHNO3(硝酸)を使用することによって触媒される。
【0049】
好ましくは、オルガノシランは、PhTEOS(フェニルトリエトキシシラン)、TEOS又はMAPTMS、又はそれらの組み合わせから選択されるオルガノシラン前駆体の1つ又は組み合わせを含み、より好ましくは、メタクリレートシランはMAPTMSを含む。
【0050】
好ましくは、金属錯体は、ジルコニウム及び/又はチタンを含み、より好ましくは、金属錯体は、ジルコニウム(IV)プロポキシド及び/又はチタンイソプロポキシドを含む。
【0051】
一実施形態では、チタンイソプロポキシドは、改善された架橋及び表面エネルギーのために、ジルコニウム(IV)プロポキシドと組み合わせて使用される。
【0052】
好ましくは、金属錯体は、単座又は二座配位子を含む。
【0053】
好ましい一実施形態では、リガンドは、MAAH(メタクリル酸)を含む。
【0054】
別の実施形態では、配位子は、APTES((3-アミノプロピル)トリエトキシシラン)を含む。
【0055】
好ましい一実施形態において、配合物の成分のモル比は、80:20、シラン前駆体:金属錯体のモル比を含み、より好ましくは、配合物の成分は、75:5:10:10、MAPTMS:TEOS:Zr:MAAHのモル比に含まれる。
【0056】
好ましくは、成分のモル比は、50:50~99:1、好ましくは80:20の比のオルガノシラン前駆体:金属錯体のモル比を含む。
【0057】
別の態様において、本発明はまた、ハイブリッドゾル-ゲル配合物を調製するための方法を提供し、方法は:
(a)シラン前駆体を加水分解する工程と;
(b)金属をキレート化して金属錯体を形成する工程と;
(c)オルガノシラン前駆体と金属錯体とを組み合わせて中間体ゾルを形成する工程と;
(d)中間ゾルを加水分解して最終前のゾルを形成する工程と;
(f)任意選択的に、添加剤及び/又は溶媒を添加して、最終的なゾルを形成する工程とを含む。
【0058】
一実施形態では、「最終前の」ゾルは、基材上にコーティングするための配合物として使用できることが理解されるべきである。
【0059】
好ましい実施形態では、工程(a)において、シラン前駆体は、HNO3の水溶液で加水分解され、ここで、HNO3溶液は、混合物に滴下される。
【0060】
好ましい実施形態では、工程(d)において、中間体ゾルは、脱イオン水で加水分解される。
【0061】
本発明はまた、本発明の調合に従って形成されたコーティングを提供する。
【0062】
本発明はまた、本発明の配合物を表面にコーティングすることによって調製されるコーティングされた基材を提供する。
【0063】
第1の態様では、本発明は、加水分解されたオルガノシラン、有機金属前駆体、及び配位子を含むゾル-ゲルコーティング組成物を提供し、配位子は有機金属前駆体のキレート剤であり、オルガノシランとジルコニウム錯体の比は8:2である。オルガノシランは、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MAPTMS)及び/又はテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を含む。
【0064】
好ましくは、成分は、75:5:20:20、MAPTMS:TEOS:Zr:MAAHのモル比で含まれる。これは、80:20、シラン:ジルコニウムの好ましいモル比として表すこともできる。
【0065】
配合物における好ましい比:
使用される比は、
MAPTMS:TEOS:Zr:MAAH
75:5:10:10である。
【0066】
あるいはまた、これは次のように表すこともできる:
シラン:ジルコニウム
80:20
【0067】
第2の態様では、本発明はまた、
図2のフロー図に従って調製されたゾル-ゲル配合物を提供する。
【0068】
BTSPAを使用して、動力学的シラン及び三座シランによって安定化された、シランネットワーク形成剤及び遷移金属ネットワークインターロッカーの組み合わせに基づくハイブリッドゾル-ゲルコーティングを、本発明の第2の態様の方法に従って調製することができる。
【0069】
次に、本発明を、添付の図面を参照して、以下の実施例において、より具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】本発明の第1の態様による多機能ハイブリッドゾル-ゲルコーティングを調製するための方法の工程を示す概略図である。
【
図2】本発明の第2の態様によるゾル-ゲル合成のプロセスフローである。
【
図3】本発明の第2の態様による、インターロックされた三座ハイブリッドゾル-ゲル材料を調製するための方法を概説するフロー図である。
【
図4】本発明の第2の態様、特にF006配合物によるゾル-ゲルコーティングを調製するための方法を概説するフロー図である。
【
図5】本発明の第1及び第2の態様によるゾル-ゲルコーティングを調製するための方法を概説するフロー図である。
【
図6】APTESとジルコニウムプロポキシドとの間の配位反応を示す図である。
【
図7】金属表面での三座シランとインターロックされたナノ材料との間の反応を示す図である。
【
図8(a)】(a)は、F001のゾル-ゲル粘度対様々な希釈での時間のグラフを示している((a)-F001、(b)-F002、(c)-F003、(d)-F004)対エタノール(EtOH))。
【
図8(b)】(b)は、F002のゾル-ゲル粘度のグラフを示している。
【
図8(c)】(c)は、F003のゾル-ゲル粘度のグラフを示している。
【
図8(d)】(d)は、F004のゾル-ゲル粘度のグラフを示している。
【
図9(a)】(a)は、配合物F005のゾル-ゲル粘度対エタノール(EtOH)及びBTSPAの濃度による様々な希釈での時間のグラフを示している((a)0.0重量%のBTSPA、(b)0.5重量%のBTSPA、(c)1.0重量%のBTSPA、(d)2.5重量%のBTSPA、(e)5.0重量%のBTSPA)。
【
図9(b)】(b)は、配合物F005のゾル-ゲル粘度対エタノール(EtOH)及びBTSPAの濃度による様々な希釈での時間のグラフを示している。
【
図9(c)】(c)は、配合物F005のゾル-ゲル粘度対エタノール(EtOH)及びBTSPAの濃度による様々な希釈での時間のグラフを示している。
【
図9(d)】(d)は、配合物F005のゾル-ゲル粘度対エタノール(EtOH)及びBTSPAの濃度による様々な希釈での時間のグラフを示している。
【
図9(e)】(e)は、配合物F005のゾル-ゲル粘度対エタノール(EtOH)及びBTSPAの濃度による様々な希釈での時間のグラフを示している。
【
図10(a)】(a)は、それぞれ4つのゾル-ゲル配合物でのTGAからの重量損失トレースを示している((a)F001、(b)F002、(c)F003、(d)F004)。
【
図10(b)】(b)は、それぞれ4つのゾル-ゲル配合物でのTGAからの重量損失トレースを示している。
【
図10(c)】(c)は、それぞれ4つのゾル-ゲル配合物でのTGAからの重量損失トレースを示している。
【
図10(d)】(d)は、それぞれ4つのゾル-ゲル配合物でのTGAからの重量損失トレースを示している。
【
図11(a)】(a)は、それぞれ4つのゾル-ゲル配合物のTGAからの熱流トレースを示している((a)F001、(b)F002、(c)F003、(d)F004)。
【
図11(b)】(b)は、それぞれ4つのゾル-ゲル配合物のTGAからの熱流トレースを示している。
【
図11(c)】(c)は、それぞれ4つのゾル-ゲル配合物のTGAからの熱流トレースを示している。
【
図11(d)】(d)は、それぞれ4つのゾル-ゲル配合物のTGAからの熱流トレースを示している。
【
図12】振り子が6°から3°に減衰するのに要する時間のグラフである。値が高いほど、コーティングが硬いことを示す。基材:R-ICFQパネル;
【
図13】配合物F001~F005の水接触角のグラフである。基材:R-ICFQパネル;
【
図14】NSSで24時間後にF001でコーティングされたR-ICFパネルである。各列は異なるディップ速度である。各列は、ゾル-ゲルコーティングの数を表す。
【
図15】NSSで24時間後にF002でコーティングされたR-ICFパネルである。各列は異なるディップ速度である。各列は、ゾル-ゲルコーティングの数を表す。
【
図16】NSSで24時間後にF003でコーティングされたR-ICFパネルである。各列は異なるディップ速度である。各列は、ゾル-ゲルコーティングの数を表す。
【
図17】NSSで24時間後にF004でコーティングされたR-ICFパネルである。各列は異なるディップ速度である。各列は、ゾル-ゲルコーティングの数を表す。
【
図18】
図18の(a)~(c)は、336時間のNSS後のサードパーティシラン(3PS)コーティング前処理を施した軟鋼を示しており、(a)3PSのみ(b)3PS及びゾル-ゲルシステム「E」(F001)、(c)3PS及びゾル-ゲルシステム「J」(F005及びF001)である。
【
図19】
図19の(a)及び(b)は、336時間のNSS後のサードパーティシラン(3PS)前処理による亜鉛メッキ鋼を示しており、(a)3PSのみ、(b)3PS及びゾル-ゲルシステム「J」(F005及びF001)である。
【
図20】
図20の(a)~(e)は、336時間のNSS後のAluminium 6000シリーズ合金を示しており、(a)コーティングされていない、(b)ゾル-ゲルシステム「D」(F001×2)、(c)ゾル-ゲルシステム「F」(F003×2)、(d)ゾル-ゲルシステム「I」(F005)、(e)ゾル-ゲルシステム「J」(F005&F001)である。
【
図21(a)-(e)】
図21の(a)~(e)は、336時間のNSS後のサードパーティシラン(3PS)前処理を施したAluminium 6000シリーズ合金を示しており、(a)3PSのみ、(b)3PSゾル-ゲルシステム「A」(F001)、(c)3PS及びゾル-ゲルシステム「E」(F003)、(d)3PS及びゾル-ゲルシステム「I」(F005)、(e)3PS及びゾル-ゲルシステム「J」(F005&F001)である。
【
図22】NSSで500時間後の、様々な陽極酸化表面処理とゾル-ゲルシールを備えたAluminium 2024T3である。
【
図23(a)-(c)】
図23の(a)~(c)は、コーティングされていない3D印刷部品(a)、ゾル-ゲルコーティングされた部品(b)、及びコーティングの前に最初に研磨され、次にフッ化水素酸(HF)でエッチングされた3D印刷部品(c)のSEM画像である。
【
図24(a)-(f)】
図24の(a)~(f)は、ゾル-ゲルコーティングされた3D印刷部品のエネルギー分散型X線(EDX)である。(a)対応するSEM画像、(b)ケイ素、(c)右上のジルコニウム、(d)アルミニウム、(e)チタンの下中央(f)EDXスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0071】
図1のフロー図を参照して、本発明の第1の態様によるプロセスを次に説明する。
【0072】
(a)シランゾルを形成するためのオルガノシラン加水分解
最初のオルガノシラン加水分解は、オルガノシランMAPTMSをHNO30.01M水溶液で1:0.75の体積比で加水分解することによって行った(この比を下回ると、二回目の加水分解中にジルコニウム種の沈殿が発生した)。MAPTMSと水は混和しないため、加水分解は不均一に行われた。20分間撹拌した後、メタノールの生成は、溶液中に存在するすべての種の混和性を可能にするのに十分になった。
【0073】
(b)ジルコニウム錯体を形成するためのジルコニウムキレート化
MAAHは、1:1のモル比でZPOに滴下され、MAAHは、ZPO剤上で反応して、修飾されたジルコニウムアルコキシドZr(OPr)4-2x(MAA)xを形成し、式中、MAAは、MAAHの脱プロトン化形態である。
【0074】
(c)Si/Zrゾルを形成するためのオルガノシランジルコニウムの組み合わせ
所定の時間が経過した後、好ましくは約45分後、部分的に加水分解されたMAPTMSをジルコン酸塩錯体にゆっくりと加えた。この混合物は温度上昇を特徴とし、不可逆的な化学結合の形成を示している。
【0075】
(d)最終前のゾルを形成するための加水分解
別の所定の時間、好ましくは約2分が経過した後、次に水をこの混合物に加えた。この2回目の加水分解は、事前に決定された加水分解時間、好ましくは約45分後に、安定で均質なゾルをもたらす。
【0076】
(e)最終のゾルの形成
TEOS(0.33g)を最終前のゾルに添加して、最終のゾルを形成した。
【実施例】
【0077】
実施例1
すべての実施例において、メタクリル酸(MAAH)がキレート剤として使用された。
【0078】
次のプロセスが実行された。
【0079】
(a)シランゾルを形成するためのオルガノシラン加水分解
有機シランの加水分解は、MAPTMS(61.22g)をHNO3の0.01M水溶液で1:0.75の体積比で加水分解することによって達成された(この比を下回ると、2回目の加水分解中にジルコニウム種の沈殿が発生した)。MAPTMSと水は混和性がなかったため、加水分解は不均一な方法で行われた。20分間撹拌した後、メタノールの生成は、溶液中に存在するすべての種の混和性を可能にするのに十分になった。
【0080】
(b)ジルコニウム錯体を形成するためのジルコニウムキレート化
MAAH(5.30g)をZPO(28.25g)にモル比1:1で滴下し、MAAHをZPO剤と反応させて、修飾ジルコニウムアルコキシドZr(OPr)4-2x(MAA)x(式中、MAAは、MAAHの脱プロトン化された形態である。)を形成した。
【0081】
(c)Si/Zrソルを形成するためのオルガノシランジルコニウムの組み合わせ
45分後、部分的に加水分解されたMAPTMSをジルコネート錯体にゆっくりと添加した。この混合物は温度上昇を特徴とし、不可逆的な化学結合の形成を示している。
【0082】
(d)最終前のゾルを形成するための加水分解
次に、別の所定の時間、約2分後、水をこの混合物に添加した。この2回目の加水分解により、約45分の加水分解時間後に安定した均質なゾルがもたらされる。
【0083】
(e)最終のゾルの形成
TEOS(0.33g)を最終前のゾルに添加して、75:5:20:20、MAPTMS:TEOS:Zr:MAAH又は80:20、シラン:ジルコニウムを有する最終のゾルを形成した。
【0084】
実施例2
プロセスの工程は、以下の量を使用して、実施例1と同様に実施された。
【0085】
実施例3
プロセスの工程は、以下の量を使用して、実施例1と同様に実施された。
【0086】
本発明のコーティングは、驚くほど効果的な金属コーティング保護を提供し、コーティングの上記の要件のすべてを提供する。
【0087】
6ゾル-ゲル配合物(F001~F006)は、本発明の第2の態様に従って、及び
図2(及び
図4)のフロー図に従って調製された。
【0088】
・シラン前駆体(A)は、均質化されるまで、最初にマグネチックスターラーにより混合される。次に、脱イオン水中の0.1Mの硝酸をシラン混合物に添加して、アルコキシド官能基を加水分解する。この段階で、アルコキシド基の25%が加水分解される。シラン混合物に衝撃を与えないように、0.1MのHNO3触媒を滴下して加える。
・並行して、遷移金属(ZPO及び/又はTIOPのいずれか)がメタクリル酸によりキレート化されて金属錯体(B)を形成する(これは、APTESが使用されるF005には当てはまらない。)。メタクリル酸は、ZPOのアルコキシド官能基のx2をキレート化する。
・シラン前駆体(A)と金属錯体(B)を45分間撹拌した後、シラン前駆体を金属錯体に添加し、さらに2分間撹拌する。最初に、潜在的な沈殿を避けるためにシランを滴下して加える。
・(A)と(B)を混合すると、2回目の加水分解が行われる。この加水分解では、脱イオン水が添加されて、ゾル-ゲル中のアルコキシド基の総加水分解を50%にする。
・該当する場合、添加剤(コロイダルシリカ、BTSPA、BTAなど)及び/又は溶媒(エタノールなど)がこの段階で追加される。
・最終のゾル-ゲル混合物をさらに45分間撹拌する。
【0089】
配合物F005の合成に関して:
・ジルコニウムイソプロポキシド(ZPO)をAPTESに添加することが重要である(その逆ではない。)。これにより、APTESが混合物から沈殿するのを防ぐことができることに注目した。
・BTSPAは、ゾル-ゲルに添加する前に、脱イオン水中で、0.1Mの硝酸で触媒(又は活性化)することができる。10%の加水分解のレベルは、時間の経過と共に非常に安定していることがわかる。レベルが高くなればなるほど、数時間以内にBTSPAがゲル化する結果となる。
【0090】
活性化されたBTSPAは、部品をコーティングする直前にのみゾル-ゲルに添加すべきである。ゾル-ゲルは粘度が絶えず増加し、急速に(<2時間)ゲル化するため、このことは、高濃度のBTSPA(例えば、5.0%重量)の場合に特に重要である。
【0091】
ディップコーティングの前に、1.0ミクロンのPTFEシリンジフィルターを使用してゾル-ゲルをろ過し、大きな凝集物や汚染物質をすべて除去する。必要に応じて、ゾル-ゲルを溶媒(エタノールやイソプロパノールなど)で希釈して、粘度を下げ、貯蔵寿命を延ばすことができる。
【0092】
各配合物を表1に簡単に説明し、各配合物を3つの主要成分に分類する6;1)シラン前駆体の混合物、2)金属錯体&3)添加剤。表1で使用されている略称の完全な化学名は、「発明の概要」セクションに示されている。
【0093】
【0094】
配合物F001~F003は、硬質で、疎水性&耐引っかき傷性のコーティング、及び美的表面仕上げとして開発された。F004は、陽極酸化アルミニウム合金の耐食性シーラーとして開発された。配合物F005は、接着促進特性を有することが企図されている。配合物6は、耐食性シーラー及び接着促進剤の両方であることが企図されている。
【0095】
ゾル-ゲル配合物F001~F006
各ゾル-ゲル配合物、F001~F006のより詳細な内訳を表2~表41に示す。各配合物は、シラン前駆体、金属錯体、及び該当する場合は追加の機能を付与するための添加剤、及び該当する場合は溶媒の混合物を含む。添加剤のパーセンテージは、それらが添加される湿ったゾル-ゲルの%w/wで表される。ゾル-ゲル配合物の性能試験に使用された配合物に対応する表には、アスタリスク(*)が付されている。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
金属基材上における配合物F001~F005の試験
ゾル-ゲル配合物F001~F005を試験する目的で、いくつかの金属基材(主にアルミニウム「A」基材及び軟鋼「R」基材及びR-ICF」基材)を使用した。それらはQ-Lab&Amariから調達した。表41に、Q-Labの金属基材の種類と表面仕上げの概要を示す。リン酸鉄前処理で調製したQパネルを使用し、そのままディップコーティングした。しかしながら、剥き出しのアルミニウム「A」と軟鋼「R」は、脱イオン水中の水酸化ナトリウム(NaOH)の0.5M溶液で脱脂し、次いで脱イオン水、続いてイソプロピルアルコール(IPA)ですすいだ。次に、パネルを熱風で乾燥させてから、ディップコーティングを行った。
【0137】
グレード2024T3アルミニウム合金パネル(サイズ6」×3」×1.5mmの厚さに切断)はAmariから調達した。この基材は、シーラーとしてゾル-ゲルで陽極酸化に使用された。ゾル-ゲルコーティングの前に、パネルを硫酸で陽極酸化した。陽極酸化処理の一環として、アルミニウム合金をアルカリ脱脂剤(Socomore A3432)で洗浄し、陽極酸化する前に脱酸(Socomore A1859/A1806)した。陽極酸化後、パネルをIPAに数分間浸して、陽極酸化層に閉じ込められた水を追い出した。最後の熱風ブロードライで、IPA溶媒を除去した。この段階で、パネルはゾル-ゲル中でディップコーティングされた。陽極酸化されたパネルは、ゾル-ゲルがアノード層に浸透することを可能にするために、ゾル-ゲル中に2.5分間滞留させた。
【0138】
【0139】
実験方法とサンプル試験
以下の実験方法は、配合物[F001]~[F005]及び調製されたサンプルの試験に使用された。該当する場合は、試験基準が参照される。
【0140】
粘度
ゾル-ゲルの粘度は、ANDSV-10粘度計を使用して測定した。システムを
図7に示す。約35~45mlのゾル-ゲルのサンプルを容器に入れた。システムが一旦起動すると、定常状態に達するまで約20秒間実行できた。この時点以降、5つの読み取り値が得られるまで、粘度測定は10秒ごとに行われた。ここに示されている粘度値は、これら5つの測定値の平均である。
【0141】
熱重量分析(TGA)
TGAは、様々なゾル-ゲル配合物の硬化挙動に関する洞察を与えるために使用した。試験はShimadzu DTG 60M TGAで実施した。2つの異なるTGA加熱プロファイルが使用された。1つ目は、25℃~250℃の5℃/分の速度での動的スキャンであった。これは、液体ゾル-ゲル及び前硬化サンプルで実行された。2つ目は、従来のオーブンで硬化したディップコーティングされた部品の硬化プロファイルを再現した、シミュレート硬化サイクルであった。この場合、ゾル-ゲルを10℃/分の速度で硬化温度(通常、調合に応じて100℃と160℃との間)まで加熱し、60分間保持した。すべての場合において、液体ゾル-ゲルサンプルの重量は約20~30mgであった。
【0142】
振り子減衰試験
振り子減衰試験は、ISO1522-2006に従って実施された。ケーニッヒ振り子試験を使用して、各ゾル-ゲルコーティングの硬度を示した。コーティングがより軟質であればあるほど、振り子の振動が速く減衰する(つまり、スイングの数が少なくなる)。
【0143】
鉛筆硬度試験
鉛筆硬度試験は、ISO 15184-2012(鉛筆試験によるフィルム硬度の測定)に従って実施された。この特定の試験は、様々なコーティングの相対的な硬度をランク付けするための共通する業界の方法です。
【0144】
水接触角
水接触角(WCA)は、FirstTenÅngstrom(FTA)システムを使用して決定した。コーティングされたサンプルごとに5滴の脱イオン水が使用された。このレポートに示されているWCA値は、5つの測定値の平均である。より低い接触角(<90°)は、その後の塗装又は接着剤による接着に適し得る、親水性コーティングを示す。接触角が高くなればなるほど(>90°)、セルフクリーニング溶液に適し得る、疎水性コーティングを示す。
【0145】
ディップコーティング
サンプルは、Bungard RDC21-Kシステムを使用してディップコーティングした。Qパネルのサンプルは、ワニ口クランプを使用して所定の位置に保持され、一定速度でゾル-ゲルを含む浴に浸した。パネルをゾル-ゲル内に最大20秒間保持し(陽極酸化パネルの場合はそれより長く)、その後一定速度で引き出した。引き抜き速度は、最終的なコーティングの厚さを制御するために変更され、通常、薄いコーティング(<5μm)の場合は50mm/分から、厚いコーティング(10~20μm)の場合は500mm/分の範囲であった。
【0146】
硬化
ディップコーティング後、サンプルを必要な温度の空気循環オーブンで硬化した。温度はゾル-ゲル配合物によって変えた。F001~F003及びF005は通常、140℃で1時間硬化し、F004は120℃で2時間硬化した。
【0147】
塩水噴霧
加速腐食試験は塩水噴霧(NSS)で実施した。NSSチャンバーは、ISO 9227:2017に従って保守した。ディップコーティングされ硬化されたサンプルは、パッキングテープで片面を密封した。背面と端はさらに電気絶縁テープで密封した。これは、サンプルの前面のみが腐食環境にさらされるようにするためであった。このレポートでは、サンプルは最大672時間(4週間)までの時間にわたって監視された。
【0148】
粘度の結果
ゾル-ゲルの粘度は、ディップコーティング後に得られるコーティングの厚さに大きな影響を与える可能性がある。研究は、配合物F001~F004間と、次にF005とに別々に分けた。これは、BTSPA濃度の影響も希釈試験の一部として考慮されたためである。
【0149】
配合物F001~F004は、エタノール(EtOH)の3つの異なる希釈度で調製した。これらは0%、10重量%EtOH、25重量%EtOHであった。溶媒の添加は、粘度を低下させるだけでなく、ゾル-ゲルの貯蔵寿命を延ばすのに役立つ。粘度は、合成後84日(12週間)まで監視した。配合物F001~F004は、各希釈度において経時的に粘度の一般的な増加を示した。金属錯体のモル濃度が最も高い配合物(すなわち、F001及びF004)は、最も高い粘度で始まり、時間の経過と共に最も速く増加するものと思われる。25重量%EtOHで希釈した場合、すべてのゾル-ゲルは時間の経過と共に比較的安定しており、約20~40mPa・sの粘度を維持する。
【0150】
配合物F005を4つの異なるレベルのエタノールで希釈した。これらは0重量%EtOH、10重量%EtOH、25重量%EtOH、50重量%EtOHであった。BTSPAのレベルもまた、5つの異なる濃度で考慮した。これらは0.0重量%BTSPA、0.5重量%BTSPA、1.0重量%BTSPA、2.5重量%BTSPA及び5.0重量%BTSPAであった。粘度は、84日(12週間)まで、又は粘度が約100mPa・sに達するまで監視した。この粘度レベルでは、ゾル-ゲルは失効したものと見なされた。
図9は、EtOHによる様々な希釈レベル及びBTSPAの濃度における、粘度とゾル-ゲル寿命(age)の関係を示している。F001~F004で観察されたように、エタノールのレベルは、ゾル-ゲルの粘度を低下させ、貯蔵寿命を延ばすことがわかった(つまり、時間の経過と共に粘度が急激に上昇するのを防ぐ)。25%EtOH又は50%EtOHの希釈により、時間の経過と共に比較的安定したゾル-ゲルが生成された。BTSPAの濃度は、ゾル-ゲルの粘度に大きな影響を及ぼした。高濃度のBTSPA及びEtOHによる低レベルの希釈度において、粘度は時間の経過と共に急速に増加した。
【0151】
熱重量分析(TGA)
TGA実験は、100℃~160℃の範囲の様々な硬化温度での硬化挙動を決定するために、液体ゾル-ゲルサンプルで実行した。シミュレートされた硬化サイクル(SCC)がTGAにプログラムされ、硬化温度(100℃、120℃、140℃、又は160°C)までの10℃/分のランプと、それに続く60分間、硬化温度での保持(又は滞留)が含まれていた。この一連の試験では、ゾル-ゲルは希釈しなかった。
図14は、異なる硬化温度での4つの配合物のそれぞれの重量損失トレースを示している。配合物F001、F002及びF003の完全な硬化を達成するには、100℃又は120℃で60分間の硬化サイクルでは不十分であることが特に注目に値する。これは、160℃で60分間硬化したゾル-ゲルと同じレベルに達していない重量損失によって確認できる。より長い硬化時間を採用した場合、同じ重量損失が達成された可能性がある。しかしながら、これには過度に長い硬化時間を要することになる場合がある。
【0152】
図11は、
図10に示したのと同じTGA実験からの熱流トレースを示している。すべての配合物と硬化温度は、シミュレートされた硬化サイクルの開始時(x軸で0~10分)に有意な吸熱ピークを示している。これは、ゾル-ゲル配合物の揮発性有機化合物(VOC)のフラッシュオフに関連している。10分と20分との間において、いくつかのピークがネットワークの形成とゾル-ゲルの緻密化に関連しているようである。これらのピークの強度は、ゾル-ゲルが低温で硬化した場合ほど顕著ではない。これは、VOCのかなりの部分が低い硬化温度で除去されたとしても、ゾル-ゲルネットワークが完全に硬化又は凝縮していない可能性があることを示している。
【0153】
図10及び
図11に示した結果は、配合物F001、F002、及びF003には140℃で60分間の硬化サイクルで十分であり、F004では120℃で120分間の硬化サイクルを使用できることを示している。
【0154】
TGA実験は配合物F005では実施しなかった。しかしながら、F004のシランの化学的性質が比較的類似していることを考慮して(つまり、MAPTMSとZPO)、120℃で120分間の硬化サイクルがF005にも使用された。
【0155】
振り子減衰試験
振り子減衰試験を、硬化したサンプルで実行した。提示された結果は、Q-LabのR-ICF基材(リン酸鉄前処理を施した軟鋼)を使用したものであった。浸漬速度は、すべてのサンプルで100mm/分に設定した。結果を
図16に示す。配合物F001~F004はすべて、振動が6°~3°に低下するまで、180~195秒の範囲内であった。配合物F003が最も硬質であり、次にF004が、そしてF001とF003が4つの中で最も軟質であった。F005は、165秒の時間で他の4つの配合物よりも著しく軟質であった。これは、おそらく合成中にMAAHの代わりにAPTESを使用したために、より軟質のコーティングであることを示している。
【0156】
鉛筆硬度試験
4つのゾル-ゲル配合物のそれぞれについての鉛筆硬度試験の結果を表43に見ることができる。ゾル-ゲルコーティングは、アルミニウムの「A」仕様のQパネルに適用された。「鉛筆の硬度」は、コーティングに印を付けない特定の鉛筆です。「塑性変形」は、コーティングにマークを付けた結果の鉛筆の硬度である。「凝集破壊」とは、コーティングが除去された結果の硬度である。「塑性変形」と「凝集破壊」は、同じ鉛筆硬度値で発生する可能性があることに注意されたい。結果は、鉛筆硬度試験は、振り子減衰試験と比較して、異なるコーティングを区別するのが難しいことを示している。唯一の顕著な違いは、F004がわずかに高い硬度(2Hではなく3H)で「凝集破壊」を引き起こしたことである。
【0157】
【0158】
水接触角(WCA)
水接触角の結果を
図13に示している。すべての配合物は90°未満の接触角を示し、すべての表面がわずかに親水性であることを示している。PhTEOSを含む3つのゾル-ゲル(すなわち、F001~F003)は、F004又はF005のいずれかと比較して最も高い接触角を示した。配合物F005は、調査したすべてのゾル-ゲルの中で最も低い接触角を示した。これは、反応性が高いことが知られているゾル-ゲル配合物でのAPTES及びBTSPAの使用に起因すると考えられている。
【0159】
塩水噴霧(NSS)試験
塩水噴霧(NSS)環境でのゾル-ゲルコーティングの性能について様々な研究を行った。個々の研究は、基材の種類とゾル-ゲル配合物によって分類されている。
【0160】
R-ICF Qパネル(リン酸鉄前処理を施した軟鋼)&F001~F004
防食性能の実験は以下のように行った。
基材上のゾル-ゲル配合物(F001~F004)を、様々な浸漬速度(100mm/分、250mm/分、及び500mm/分)及び様々なコーティング数(×1、×2、及び×3)で評価した。目標は、より厚いゾル-ゲルコーティング又はマルチコートシステムがNSSの腐食保護のレベルを改善するかどうかを判断することであった。この研究では、リン酸鉄Qパネルで前処理されたR-ICF軟鋼を、追加の表面処理なしで受け取ったままの状態で使用した。
【0161】
図14~
図17は、配合物F001~F004のNSSで24時間後のR-ICFパネルを示している。写真は、すべてのシングルコート(x1ディップ)システムが24時間後に孔食と腐食の兆候を示したことを示している。赤い境界線で強調表示された写真は、腐食の過度の兆候を示している。オレンジ色のものは、腐食/孔食のいくつかの初期兆候を示した。緑色の写真は失敗の証拠を示さなかった。腐食の兆候が見られないのは、マルチディップシステム(×2及び×3)のほんの一部であった。約336時間(2週間)の間に、すべてのコーティングされたシステムが腐食の兆候を示し始めた。4つの配合物すべてについて、破損し始める前に最も長く持ちこたえたのは、500mm/分で×3コーティングシステムであった。
【0162】
軟鋼、亜鉛メッキ鋼、6000シリーズアルミニウム合金
ゾル-ゲル配合物を用いた調査下の3つの基材は、軟鋼、亜鉛メッキ鋼、及び6000シリーズのアルミニウム合金である。これらの基材の一部は、ベンチマーク比較として使用するために、サードパーティのシラン(3PSと呼ばれる)で前処理された状態で提供された。
【0163】
この作業の一環として、様々なゾル-ゲルシステムが調査された。合計10個のゾル-ゲルシステムが検討され、表に概説された。各システムには、固有の識別コード「A」~「J」が割り当てられた。見てわかるように、F001、F003、F004、F005のいくつかの組み合わせが検討された。F002は、F001と類似しているため、この研究から除外した。いくつかのシングルコート及びデュアルコートシステムが調査された。
【0164】
【0165】
コーティングされたパネルは、336時間(2週間)の塩水噴霧で評価した。
図18~
図21は、この調査の336時間NSS後の最高性能のパネルの写真を示している。比較のために、本発明のゾル-ゲル溶液を含まないパネルを含めて、これらのシステムを使用することによって得られる利点及び追加のレベルの保護を強調した。
【0166】
図18は、すべてサードパーティのシラン(3PS)で前処理された一連の軟鋼パネルを示している。
図18(a)は、サードパーティのシランがそれ自体では適切な保護を提供しないことを示している。
図18(b)&(c)は、3PSの上にそれぞれ適用されたゾル-ゲルシステム「E」及び「J」を示している。両方のソリューションは、336時間のNSS曝露後も優れた状態を維持した。
【0167】
図19は、すべてサードパーティのシラン(3PS)で前処理された亜鉛メッキ鋼パネルを示している。
図19(a)は、サードパーティのシランだけでは十分な保護が得られないことを示している。
図19(b)は、3PSの上に適用されたゾル-ゲルシステム「J」を示している。NSS 336時間後、パネルは良好な状態を維持した。
【0168】
図20は、6000シリーズのアルミニウム合金で作られた基材材料を示している。
図20(a)は、追加の表面処理を行わないパネルを示している。見てわかるように、サンプルは1日以内に見える過度の腐食を示している。ゾル-ゲルでコーティングされた
図20の(b)、(c)、(d)、(e)に示す4つのアルミニウムパネルはすべて、336時間後も良好な状態を保ち、腐食の兆候は見られない。
【0169】
図21は、サードパーティのシランで前処理された6000シリーズのアルミニウムを示している。前と同じように、
図21の(a)は、サードパーティのシランだけでは十分な保護が得られないことを示している。4つのゾル-ゲルコーティングシステムはすべて、最大336時間のNSS暴露で優れた腐食保護を提供した。
【0170】
陽極酸化アルミニウム2024T3&F004
陽極酸化処理後にゾル-ゲルをシーラーとして使用した場合の影響を、アルミニウム合金グレードAA2024T3を使用して調査した。アルミニウムのパネルを硫酸中で10分又は30分間陽極酸化し、次に上記のようにコーティングした。
図22は、NSSで500時間後の表面処理の5つの異なる組み合わせを使用したAA2024T3を示している。見てわかるように、コーティングされていないパネル(左側)は、数時間後でも明らかな腐食の過度の兆候を示した。次のパネル(左から2番目)は30分間陽極酸化され、まったく密封されていなかった。コーティングされていない場合よりも性能は向上したが、ピッチングの顕著な兆候が見られた。
図22の中央のパネルは前のパネルと同じであるが、90℃で20分間、脱イオン水中のホットサーマルシール(HTS)に供された。これにより、孔食や腐食の形跡がほとんど又はまったくなく、腐食保護が大幅に向上した。右から2番目と右端から2番目のパネルを硫酸でそれぞれ30分と10分間陽極酸化し、配合物F004で密封した。どちらのサンプルも、腐食の兆候をほとんど又はまったく示さなかった。これは、ゾル-ゲルが従来のHTSと同じレベルの腐食保護を与えると同時に、代替の表面仕上げ(光沢など)の可能性を提供できることを示している。
【0171】
付加製造部品に対するゾル-ゲルコーティング
付加製造は、従来の製造方法では不可能だった非常に複雑な形状を製造するための新しい機会を切り開いた。しかしながら、これには新たなコーティングの課題も示す。印刷された部品、特に金属部品は、非常に厚い酸化物層を有することができる。サイトコーティング法のラインもまた、パーツ全体のコーティングが難しい場合がある。
【0172】
使用されている3D印刷材料は、チタングレード23(G23/Ti-6Al-4V ELI)である。しかしながら、コーティングシステムは、3D印刷された金属又は選択されたプラスチック部品に適用できる。ゾル-ゲルは配合物F005に基づくものであった。
図23は、コーティングされていない3D印刷部品と、F005ゾル-ゲルでコーティングされた2つの部品の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示している(これらのサンプルの1つはフッ化水素酸で事前にエッチングされている。)。コーティングされていない部分は、緩く焼結されたTiG23粉末の粒子のように見える領域を示している。
図23の(b)は、ゾル-ゲルが印刷面にどのように輪郭を描くように見えるかを示している。
図23の(c)は、コーティング前に最初に研磨され、HFエッチングされた部品を示している。摩耗は、3D印刷面を滑らかにするのに顕著な効果があった。
【0173】
図24は、コーティングされた3D印刷部品のエネルギー分散型X線(EDX)分析を示している。元素のケイ素(Si)とジルコニウム(Zr)は、ゾル-ゲルコーティングに関連しており、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)は基材に関連している。元素マップは、コーティングが均一な厚さのコーティングを生成することを示している。これは、3D印刷面の比較的粗い性質と、ゾル-ゲルの低粘度が原因である可能性があるように思われる。
【0174】
当然ながら、様々な修正を行うことができ、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義されることが理解されよう。