(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】セルロース繊維の調製
(51)【国際特許分類】
D21H 11/12 20060101AFI20240716BHJP
D21C 3/02 20060101ALI20240716BHJP
D21C 9/10 20060101ALI20240716BHJP
C12P 1/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
D21H11/12
D21C3/02
D21C9/10
C12P1/00 A
(21)【出願番号】P 2021559523
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2020051429
(87)【国際公開番号】W WO2020152178
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-18
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521438467
【氏名又は名称】イーナ トレーディング アンパーツゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ピア ビンダ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン マーク ラウダ
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/086672(WO,A1)
【文献】特開2003-147690(JP,A)
【文献】特開平08-013367(JP,A)
【文献】特開昭54-068402(JP,A)
【文献】国際公開第2018/069168(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/047832(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/185685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H11/00-11/22
D21C 1/00-11/14
C08B 1/00-37/18
C12P 1/00-41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の長さ加重平均繊維長lc(l)のセルロース繊維を穀物わらから単離し、調製する方法であって、前記方法は、
(i)脱蝋した
穀物わ
らを水性懸濁液中に提供すること、
(ii)工程(i)における溶液のpHを9~11.5に調整し、前記溶液の温度を65~95℃に上昇させて、工程(i)における前記溶液中のヘミセルロースおよびリグニン成分を可溶化すること、
(iii)工程(ii)で得られた材料を、固形セルロース繊維画分と、可溶化されたヘミセルロース及びリグニン成分を含む液体画分とに分離すること、
(iv)工程(iii)で得られた前記セルロース繊維画分を水性液体中に懸濁し、温度を65~95℃及びpHを9~11.5に調整し、漂白剤を添加し、前記セルロース繊維画分を懸濁液中に60~
95分(Tl)間保持すること、
(v)工程(iv)で得られた漂白された材料を、湿潤機
械精製処理にかけること、
(vi)工程(v)で得られた材料を漂白精製された固形セルロース繊維画分および水性漂白液画分に分離して、セルロース繊維製品を得ること、ならびに
(vii)任意により、漂白精製された前記セルロース繊維画分を水性液体中で洗浄すること、
を含み、
ここで、
前記セルロース繊維の長さ加重繊維長lc(l)は>0.6mmであり、かつ
前記水性懸濁液中の前記脱蝋
した穀物わ
らは、前記穀物わらを、クチクラワックスの一部を除去するための乾式機械処理、および
前記穀物わ
らから残余のクチクラワックスを除去するための、水性懸濁液における酵素処理を含む前処理に供することによって得られ
、
前記方法は、前記工程(v)の後かつ、前記工程(vi)の前に、追加の工程(v’
)を含むか、または含んでおらず、前記追加の工程(v’
)は、
(v’
)湿潤機械処理を行わずに、温度65~95℃およびpH9~11.5で20~90分間(T3)漂白を継続すること、
を含み、
工程(v)の湿潤機械精製処理が、大気圧で操作されるリファイナー又はミルを使用して行われる、
方法。
【請求項2】
前記穀物わらは、小麦わらである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酵
素前処理が、
a)ヘミセルロース、リグニンおよび蝋からセルロースを遊離させるための、プロテアーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、およびリグニナーゼのリストから選択される2つ以上の異なる酵素を使用する、乾燥機
械処理された穀物わらの酵
素処理;
b)水性懸濁液中の脱蝋固体リグノセルロース材料を提供するための、遊離された蝋の除去;
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記酵
素前処理が、
a)プロテアーゼおよび/またはペクチナーゼを含む水性懸濁液中の乾燥機
械処理された穀物わらの、蝋を遊離させるための第1の酵
素処理;
b)遊離蝋の除去;および
c)水性懸濁液中の脱蝋リグノセルロース材料を提供するために、ヘミセルロースおよびリグニンからセルロースを遊離させるための、プロテアーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、およびリグニナーゼの群から選択される1つ以上の酵素を使用して、蝋を除去した後の穀物わらの第2の酵素処理、
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ヘミセルラーゼ酵素がキシラナーゼおよびフェルラ酸エステラーゼから選択される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
精製処理が12インチプレートを使用し、プレートギャップを15,000分の1イン
チに設定し、3000~5000リットルサンプル/時で処理する、単一の回転ディスク大気圧リファイナーを1~2回通過(T2)すること
である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
T3が25~60分である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(iv)で添加される漂白剤が、過酸化水素、塩素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、過炭酸ナトリウム、活性酸素、オゾン、またはそれらの混合物の群から選択される、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
乾式機
械前処理から得られた材料が、酵
素前処理の前にサイズに従って分画される、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
酵素前処理が湿潤機械処理を含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
酵
素前処理が、第1の酵
素処理の間の湿潤機
械処理を含む、請求項4~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
穀物わらの前記前処理が、
a)穀物わらを提供すること、
b)前記穀物わらに乾燥機
械処理を施すこと、
c)工程(b)で得られた材料をふるい分け処理にかけ、少なくとも2つの画分を得、ここで、第1の画分がふるいメッシュを通過し、第2の画分がふるいメッシュによって保持されること、
d)工程(c)で得られた前記第2の画分を、1つまたは複数のプロテアーゼおよび/またはペクチナーゼ酵素と共に水性液体中に懸濁すること、
e)工程(d)で得られた混合物を湿潤機
械処理にかけること、
f)溶液から蝋を除去すること、
g)工程(f)で得られた残りの脱蝋材料を1つまたは複数のヘミセルラーゼ酵素を使用して酵
素処理すること、
を含む、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
セルロースパルプ製品のセルロース繊維が、>0.61
mmの長さ加重平均繊維長lc(l)を有する、請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法によって得られるセルロースパルプ製品。
【請求項14】
前記セルロース繊維が、製品中のセルロース繊維の総量の少なくとも25
%を構成する、請求項
13に記載のセルロース繊維を含む製品。
【請求項15】
前記製品中の前記セルロース繊維が、製品中のセルロースの総量の少なくとも25
%を構成する
、固体製品の調製における請求項
13に記載のセルロース繊維の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物材料からセルロース、ヘミセルロース、およびリグニンを分画し、それによって、バイオ製品における適用のための改善された特性を有するセルロース、ヘミセルロース、およびリグニン製品を提供する処理に関する。より具体的には、本発明が長さ加重平均繊維長Lc(l)>0.6mmを有するセルロース繊維などの所望の長さのセルロース繊維からなる穀物わらから改良されたセルロースパルプを製造する方法、および改良された特性を有する包装材料などのセルロースパルプ含有製品におけるその使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
バイオプロダクツを得るために植物材料を利用することは、過去10年間に増大する研究および商業的関心を得ている。多くの方法および生成物が代替物、例えば、燃料および他の化学生成物のための石油化学供給源の有望な代替物として植物バイオマスを利用することが示唆されている。
【0003】
リグノセルロース植物バイオマスは、バイオ製品の製造のために地球上で最も豊富に入手可能な原料を含む。それは、少量のタンパク質、ペクチン、ワックスおよび異なる無機化合物と共に、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンから構成される。
【0004】
セルロースは、数百~数千のb(1→4)連結D‐グルコース単位の線形連鎖から成る多サッカライドである公式(C6H10O5)nをもつ有機・コンパウンドである。セルロースは植物の一次細胞壁の重要な構造成分であり、地球上で最も豊富な有機ポリマーである。セルロースは直鎖ポリマーであり、分子は、グルコース残基の赤道コンホメーションによって補助される、伸長した、むしろ硬い棒状コンホメーションをとる。1つの鎖からのグルコース上の複数のヒドロキシル基は同じまたは隣接する鎖上の酸素原子と水素結合を形成し、鎖を並んでしっかりと保持し、それ自体が繊維に配列する高い引張強度を有するミクロフィブリルを形成する。これは、セルロースミクロフィブリルおよび繊維が多糖マトリックス中にメッシュ化され、しばしばリグノセルロース植物茎中のリグニン中にさらに埋め込まれる、細胞壁に引張強度を付与する。このようなセルロース繊維はパルプおよび製紙産業などの様々なバイオ製品での使用に特に興味深いが、植物由来セルロースは通常、ヘミセルロース、リグニン、ペクチンおよび他の物質との混合物中に見出される。
【0005】
ヘミセルロースはキシラン、グルクロノキシラン、アラビノキシラン、グルコマンナン、およびキシログルカンなどのいくつかのヘテロポリマーのいずれかであり、ほとんどすべての植物細胞壁にセルロースと共に存在する。ヘミセルロースは典型的には(排他的ではないが)、ほとんど強度のないランダムな非晶質構造を有し、希酸または塩基、ならびに無数のヘミセルラーゼ酵素によって加水分解され得る。ヘミセルロース多糖類は、多くの異なる糖モノマーを含有する。例えば、ヘミセルロース中の糖モノマーには、キシロース、マンノース、グルコース、ガラクトース、ラムノース、およびアラビノースが含まれ得る。ヘミセルロースは、D-ペントース糖の大部分、および時には小型L-糖も含有する。キシロースはほとんどの場合、最大量で存在する糖モノマーであるが、いくつかの植物材料において、マンノースは最も豊富な糖であり得る。通常の糖がヘミセルロース中に見出されるだけでなく、それらの酸性化方法、例えばグルクロン酸およびガラクツロン酸も存在し得る。ヘミセルロースは、化学的または酵素的分解によって得ることができる異なる糖モノマーの重要な供給源である。
【0006】
リグニンは架橋ラセミ高分子であり、天然では比較的疎水性であり、芳香族である。抽出中に断片化され、分子は、偶然に繰り返されるように見える様々なタイプの下部構造からなるので、本質的に重合の程度を測定することは困難である。様々な程度にメトキシル化された3つのモノリグノールモノマー:p-クマリルアルコール、コニフェリルアルコール、およびシナピルアルコールがある。リグニンは、セルロース、ヘミセルロース、およびペクチン成分の間、特に血管および支持組織における細胞壁の空間を満たす。それは、しばしば、ヘミセルロースに共有結合し、従って、異なる植物多糖類を架橋し、細胞壁に機械的強度を付与し、そして全体として植物を伸長させる。リグニンの成分は、油添加剤、農薬、セメント添加剤、水処理、フェノールの部分的置換としての接着剤および接着剤、ならびに織物に使用される染料を含む異なるプロセスで使用される。
【0007】
リグノセルロース系バイオマスは、例えばパルプ化産業においてそのように使用することができる。しかしながら、リグノセルロース系バイオマスの異なる成分は、異なるバイオ製品におけるような異なる目的のために利用することができる。障害は、錯体リグノセルロースマトリックスから個々の成分を「ロック解除」する方法である。リグノセルロースは分解に抵抗し、植物の細胞壁に加水分解安定性および構造的堅牢性を付与するように進化してきた。この堅牢性は、炭水化物ポリマーセルロースとヘミセルロースとの間の架橋、およびエステルおよびエーテル結合を介したリグニンによって引き起こされる。
【0008】
リグニン-炭水化物超分子構造における物理的および化学的隔壁は、ほとんどの植物細胞壁成分を、商業的製品への直接変換のためにほとんど完全に利用不可能にする。従って、成功した変換戦略はこの構造の破壊をもたらし、リグノセルロース成分の部分的または全体的な分離をもたらさなければならず、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンの接近性を増加させる。また、副生成物の形成を最小限に抑えるべきである。適用される各技術はそれ自体の特性を有し、通常、炭水化物およびリグニンの特定の供給源にアクセスし、精製するために適用される。
【0009】
異なる前処理方法には、酸性条件(例えば、ヘミセルロースを加水分解するための硫酸)、アルカリ条件(例えば、リグニンを除去するためのカルシウム/ナトリウム/カリウム水酸化物またはアンモニア)、有機ソルブ法(例えば、リグニンを抽出するための有機溶媒)、酸化脱リグニン化(例えば、リグニンを分解するヒドロキシルラジカルを生成するための過酸化水素、またはリグニンの芳香族環構造を攻撃するためのオゾン)、または湿式酸化(ここで、酸素は高温および高圧で水と組み合わせて、ヘミセルロースを可溶化し、リグニンを分解する)、生物学的方法(例えば、種々のリグノセルロース分解微生物、特に、種々のバイオマス成分の酸化および/または加水分解のための酵素を分泌する糸状菌)、マイクロ波照射(例えば、リグノセルロース構造の破壊につながるバイオマスの局所加熱を引き起こすマイクロ波)などが含まれる。
【0010】
植物の葉および茎の表面は、無数の機能を有する蝋質材料の層で被覆されている。より具体的には、一次空中植物表面はクチクラによって覆われ、大気に対する本質的な透過性隔壁として作用する。これは、主に親油性化合物、すなわち、表面に付着した表皮ワックスを有するクチンおよび表皮内ワックスから構成される不均一層である。植物ワックス組成は、植物種間だけでなく、皮下レベルまで単一種内の位置間でも変化する。ワックスは、種々の比率の酸、第一級および第二級アルコール、エステル、アルデヒド、アルカン、およびケトンを含む線状超長鎖(VLC)化合物を含む。さらに、五環式トリテルペノイドなどの環状化合物は、多くの種のワックス中に存在する。
【0011】
外側ワックス層(表皮ワックス)は多くの場合、表面から機械的に剥ぎ取ることができ、一方、その後の遊離および抽出は、さらなる表皮内ワックスを放出することができる。このような抽出は従来、クロロホルム、ベンゼン、ヘキサン等の有機溶媒を用いて溶媒を留去精製していたが、近年、超臨界C02を用いた抽出法が開示されている。さらに、わらの水熱および湿式酸化前処理によるワックスの除去が開示されている。異なる前処理方法によるワックスの除去が開示されているが、そうすることの完全な可能性は探求されていない。
【0012】
より最近では本発明者らがワックスを植物微粉(WO2015/185685A1)(例えば、穀類わら微粉)からワックスを分離するための方法を開示し、この方法はワックスが低繊維が豊富な分率からワックスが豊富な分率からワックスが豊富な分率を分離するための第1の乾燥機械的処理工程と、ワックスを精製するためにワックス微粉上に存在するタンパク質材料のような残留非ワックス植物材料の除去を容易にするためのワックスが豊富な分率の酵素処理の第2の工程とを含む。精製された植物ワックスは、例えば化粧品産業で使用するための石油化学産業から調製されたワックスの代替品として使用するための優れた製品である。「廃棄物」繊維リッチ分率は、可燃性材料の供給源(汚染が少なくタールが少ない改善された燃焼プロセス)、家畜用のリター(優れた吸収特性)、またはバイオ燃料および/または同様の下流製品への変換のために使用できると推測された。
【0013】
従来のパルプ化は高温(100~230℃)での強アルカリ処理によってリグノセルロースバイオマスからセルロースパルプ流を調製したUS2012/0107887に記載されているように、ヘミセルロースおよびリグニンを除去するためのセルロースバイオマスの非常に厳しい処理を含む。パルプを洗浄および濃縮し、洗浄されたパルプ流を酸素脱リグニンおよび機械的精製に供することがさらに示唆された。続いて、最終パルプを、後のアルコール発酵のための発酵性糖を生成するためのセルラーゼを使用して加水分解した。本発明の実施例2では、小麦わらをバイオマスとして使用して、US2012/0107887のパルプ化方法を繰り返した(サンプル11および12)。このことから、このような伝統的なパルプ化プロセスは、本発明と比較して、長い繊維を生じないことは明らかである。
【0014】
(例えば、パルプ化の標準的な「亜硫酸塩プロセス」または「クラフトプロセス」と比較して)リグノセルロース材料を処理する穏やかな方法によって繊維リッチセルロース分率を調製する別の方法が、WO2018/086672A1に開示されている。約0.85mmの平均繊維長はWO2018/086672A1に報告されており、これは、LauritzenおよびWettre自動繊維分析器を使用する分析によって決定される。しかしながら、どの平均繊維長さ値が使用されるかは特定されていない: lc(n)、lc(l)またはlc(w)。繊維長はCarvalho et al[1997、TAPPI journal 80(2): 137-142]に定義されているように、lc(n)、lc(l)またはlc(w)として報告することができ、ここでlc(n)=数値平均長、lc(l)=長さ加重平均長、およびlc(w)=加重平均長である。標準的なLauritzenおよびWettre自動繊維分析装置は、3つの値すべてを提供する。本発明の実施例2では、WO2018/086672A1の方法を繰り返し(サンプル8)、対応するlc(n)、lc(l)およびlc(w)値を表1に報告した。このことから、国際公開第2018/086672A1号パンフレットに報告されている平均繊維長は、lc(w)値であることが明らかである。
【発明の概要】
【0015】
植物材料の全ての構成部品について複数の示唆された使用により、本発明はリグノセルロースの全ての主要構成部品を遊離させ、分離し、精製することができる方法;好ましくは、以前に適用された過酷な前処理方法の多くの欠点と同様に、1つの構成部品にアクセスすることが別の構成部品を破壊するというコストを払って行われない方法の必要性を認める。本発明は非破壊的であるという利点を提供し、したがって、ヘミセルロース、リグニン、およびさらには他の使用のためのワックスを追加的に精製するという選択肢を容易にする。
【0016】
本方法はセルロースをワックス、ヘミセルロースおよびリグニンから分離し、セルロース繊維の束を緩め(除細動)、セルロース画分中のセルロース繊維の長さを制御することができるように、好ましくは長いセルロース繊維を得るように緩める方法を提供することによって、当技術分野に対する改善を提供する。この方法は、改善された繊維長、すなわち所望の長さの繊維を有するセルロース繊維製品の制御された製造を容易にする。繊維長を制御する能力は異なる下流の用途に必須であり、例えば、本発明のデータによって実証されるように、繊維長は例えば、折り畳み耐久性と相関する。それによって、本発明は、セルロース繊維製品を製造するための伝統的なパルプ化方法の代替を提供する。本発明のセルロース繊維製品は、繊維長を制御する能力が繊維の最適な使用を可能にする包装材料のような成形パルプ材料に使用することができる。本発明で実証されるように、より長い繊維は、繊維シートの折り畳み耐久性が繊維長の増加と共に改善されるので、ワンピースで作られた蓋を有する卵箱のような、曲げ可能な包装材料に使用するのに好ましい。
【0017】
本発明は植物材料からセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンにアクセスし、分離し、単離する方法に関し、その結果、下流処理のためのセルロース、ヘミセルロースおよびリグニン生成物が改善される。
【0018】
より具体的には、本方法が平均繊維長lc(l)>0.6mmを有するセルロース繊維を製造する方法を提供する。
【0019】
一態様では本発明が穀物わらから所望の長さlc(l)のセルロース繊維を単離および調製する方法に関し、前記方法は以下のステップを含む:
(i)水性懸濁液中の脱蝋わら材料を提供すること、
(ii)pHをアルカリ性条件に調整し、工程(i)で溶液の温度を上昇させて、水相中のヘミセルロースおよびリグニン成分を可溶化すること、
(iii)工程(ii)で得られた材料を、固体セルロース繊維画分と、ヘミセルロースおよびリグニン成分を含む液体画分とに分離すること、
(iv)ステップ(iii)で得られた前記セルロース繊維画分を水性液体中に懸濁し、温度を65~95℃に、pHを9~11.5に調整し、漂白剤を添加し、前記セルロース繊維画分を懸濁液中に60~180分(Tl)間保持すること、
(v)前記ステップ(iv)で得られた漂白材を湿式機械処理すること、
(vi)工程(v)で得られた材料を漂白精製固形セルロース繊維画分と水溶液漂白液画分とに分離してセルロース繊維製品を得ること、及び
(vii)(2)漂白精製セルロース繊維画分を水性液体中で任意に洗浄すること。
【0020】
ここで、セルロース繊維の長さ加重平均繊維長lc(l)は>0.6mmであり、前記脱蝋わら材料は、前記穀物わらを乾式機械処理および酵素処理を含む前処理に供することによって得られる。
【0021】
本方法はステップ(vi)の前に、ステップ(v)に続く追加のステップ(v’)をさらに含むことができ、前記追加のステップ(v’)は以下を含む:
【0022】
(v’)湿潤機械処理を行わずに、温度65~95℃、pH9~11.5で20~90分間(T3)漂白を続けること。
【0023】
別の態様では、本発明が上記の方法によって得られるセルロースパルプ製品であって、前記セルロースパルプ製品中のセルロース繊維が長さ加重平均繊維長lc(l)>0.6mm、例えば>0.65または>0.7mmを有するセルロースパルプ製品に関する。本発明はさらに、本発明のセルロース繊維を含む製品に関し、前記セルロース繊維は、製品中のセルロース繊維の総量の少なくとも35または45%などの少なくとも25%を構成する。
【0024】
さらに別の態様では本発明が例えば建築材料または包装材料に使用するための固体製品の調製における本発明のセルロース繊維の使用に関し、前記製品中の前記セルロース繊維は製品中のセルロースの総量の少なくとも25%、例えば少なくとも35または45%を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の異なるプロセスステップを示す。
【
図2】
図2は、実施例2のサンプル4Aに適用されたプロセス工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
「植物・リグノセルロース系材料」又は「植物・リグノセルロース系バイオマス」とは多くの種、好ましくは非木質系バイオマスから広範かつ多様な植物部分を意味するものであり、草類、ラッシュ、ゴーラド、茎、根、種子・殻、葉などが含まれる。植物材料の重要な構造成分はほとんどの場合、ヘミセルロース及びリグニンと混在して存在するセルロースである。「植物」、「バイオマス」及び「リグノセルロース系材料」という用語は互換的に使用される。
【0027】
「セルロース」は、b-D-グルコース単位から構築された多糖を意味する。D-グルコース(C6HI2O6)は、炭素-1上に5個の水酸基およびアルデヒド基を含む糖である。セルロースは直鎖ポリマーであり、ヒドロキシル(-OH)基は隣接鎖上の原子と水素結合を形成してそれらを連結し、ミクロフィブリルを形成する。セルロースは、結晶領域および非晶質領域の両方を示す。セルロースの多くの特性は、その重合度、1つのポリマー分子を構成するグルコース単位の数に依存する。
【0028】
「ヘミセルロース」は、キシロース、マンノース、グルコース、ガラクトース、ラムノース、およびアラビノースを含むいくつかの糖に由来する、しばしば分岐型の多糖を意味する。また、ヘミセルロースとは、ヘミセルロースの加水分解により誘導されるオリゴ糖や糖モノマーなどのヘミセルロース誘導体を意味する。
【0029】
「リグニン」は、種々のフェニルプロパン単位を含む複合架橋ラセミ重合体である。それは、本質的に比較的疎水性であり、芳香族である。様々な程度にメトキシル化された3つのモノリグノールモノマー:p-クマリルアルコール、コニフェリルアルコール、およびシナピルアルコールがある。これらのリグノールは、それぞれ、フェニルプロパノイドp-ヒドロキシフェニル(H)、グアヤシル(G)、およびシリンジル(S)の形態でリグニンに組み込まれる。本発明において、リグニンの定義は、リグニン誘導産物をさらに意味する。
【0030】
「ワックス」または「ワックス状成分」は、植物の表層のワックス(表皮ワックス)ならびに植物内部のワックス(表皮ワックス)を含む、植物物質中の様々な形態のワックスを意味する。ワックスは、脂肪酸、第一級および第二級アルコール、エステル、アルデヒド、遊離脂肪酸、アルカン、およびケトンの様々な比率を含む線状超長鎖(VLC)化合物を含む。さらに、ペンタシクロトリテルペノイド、アルキルレゾルシノール、ステロール、およびステリルエステルなどの環状化合物は、多くの種のワックス中に存在する。植物細胞壁を構成する脂質は、本文脈において「ワックス」であるとは考えられない。
【0031】
植物材料からワックスを除去するように処理された植物材料、例えば、全ての植物ワックスの50、55、60、65、70、75、80、85、90%以上、または95%以上が除去された植物材料を意味する「脱ワックスリグノセルロース材料」であって、ワックス含有量は、本出願(第II節)に提供される方法によって決定される。
【0032】
「乾式機械処理」は乾燥ワックス被覆植物材料からワックスを分離するための方法に関し、ワックス被覆が分解され、残りの部分的に脱蝋された植物材料から解放されるように、少なくとも植物材料の外面を、切断、細断、および/または破砕などによって変形させるように適合された装置を使用することによって、乾式プロセスで植物材料を機械的に処理するステップを含む。
【0033】
「プロテアーゼ」(EC3.4)は、アミノ酸残基を連結するペプチド結合を分割することによって、長いタンパク質鎖をより短いフラグメントに消化する任意の酵素である。
【0034】
「ペクチナーゼ」(EC3.2.)は、ペクチンの分解に直接関与する任意の酵素である。
【0035】
「ヘミセルラーゼ」はカルボキシルエステルヒドロラーゼ(EC3.1.1)基に属し、ヘミセルロースの分解に直接関与する任意の酵素を含む。フェルロイルエステラーゼ(EC3.1.1.73)は、「ヘミセルラーゼ」の一例である。
【0036】
「リグニナーゼ」は、ペルオキシダーゼおよびラッカーゼなどの、リグニン分解酵素とも呼ばれる、リグニンの分解に関与する任意の酵素である。
【0037】
「湿式機械的処理」とは、本文脈において、漂白液中の湿潤したわらを機械的に処理して、わらの大部分を構成する繊維の束から繊維を分離することであり、この処理は個々の繊維を破壊又は破壊することなく個々の繊維を分離することになるはずである。これは例えば、円錐形リファイナー及びディスク型リファイナーを含む標準的な紙パルプ化産業から知られているリファイナー(周囲圧力又は大気圧で運転される)のようなリファイナーを用いて行うことができる。ビーチング剤を含むセルロース懸濁液の湿潤機械的処理は、繊維束を部分的または完全に除細動する方法に関する。あるいは、湿潤機械的処理が例えば歯付きコロイドミルを使用して、液体(スラリー)中に懸濁された固体を剪断または破砕する湿潤粉砕によって実施されてもよい。
【0038】
「脱フィブリル化セルロース繊維束」は、セルロース繊維束が、部分的または完全に単一のセルロース繊維に分離されることを意味する。
【0039】
「アルカリ性条件」(または「アルカリ性pH」)は、当業者に自明な技術によって測定される、pH7超を意味する。
【0040】
「漂白剤」は、他の物質を酸化する(電子を失わせる)ことができる物質を意味する。一般的な酸化剤は、酸素、過酸化水素およびハロゲンである。
【0041】
「繊維長」はCarvalhoら[1997、TAPPI journal 80(2): 137-142]に定義されているように、lc(n)、lc(l)またはlc(w)として報告することができ、ここでlc(n)=数値平均長、lc(l)=長さ加重平均長、およびlc(w)=加重平均長である。
【0042】
I.所望の長さのセルロース繊維の製造方法
図1は本発明の例示的な実施例を提供し、所望の製品に到達するための異なるプロセス工程の概要を示す。全てのプロセスステップは、図示のように実行されてもよく、いくつかのステップは省略されてもよく、いくつかのステップは組み合わされてもよく、追加のステップが追加されてもよい。詳細については、次のセクションで説明する。
【0043】
一態様では、本発明がクチクラワックスが工業的使用のために除去された後、植物材料からセルロース、ヘミセルロースおよびリグニン生成物にアクセスし、分離し、単離する方法に関し、さらなる下流処理のために所望の特性を有する改善された生成物を生じる。好ましい実施形態において、本発明は穀物わらから所望の長さのセルロース繊維を単離および調製する方法を提供することによって、植物ベースのセルロースをパルプ化する代替的な方法を提供する工程は以下の工程を含む:
(i)水性懸濁液中の脱蝋わら材料を提供すること、
(ii)pHをアルカリ性条件に調整し、工程(i)の溶液の温度を上昇させて、水相中のヘミセルロースおよびリグニン成分を可溶化すること、
(iii)工程(ii)で得られた材料を、固体セルロース繊維画分と、ヘミセルロースおよびリグニン成分を含む液体画分とに分離すること、
(iv)ステップ(iii)で得られた前記セルロース繊維画分を水性液体中に懸濁し、温度を65~95℃に、pHを9~11.5に調整し、漂白剤を添加し、前記セルロース繊維画分を懸濁液中に60~180分(Tl)間保持すること、
(v)前記ステップ(iv)で得られた漂白材を湿式機械処理すること、
(vi)工程(v)で得られた材料を漂白精製固形セルロース繊維画分と水溶液漂白液画分とに分離してセルロース繊維製品を得ること、及び
(vii)漂白精製セルロース繊維画分を水性液体中で任意に洗浄すること。
【0044】
ここで、セルロース繊維の繊維長lc(l)は>0.6mmであり、前記脱ロウわら材料は、前記穀物わらを乾式機械処理および酵素処理を含む前処理に供することによって得られる。
【0045】
本発明の方法の工程(i)によれば、水性懸濁液中に脱蝋穀物藁材料が提供される。好ましい実施形態では、本発明の脱蝋穀物わら材料が小麦、ライ麦、大麦、エンバク、モロコシ、米、ライコムギなど、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、穀物からのわら、外皮またはふすまに由来する。
【0046】
別の実施形態では本発明の方法がリグノセルロース系バイオマス、好ましくは一年生植物、例えば、草、サトウキビ、ヤシの葉、バガス、高エネルギー草、または他の植物に由来する脱蝋リグノセルロース系材料に適用することができる。セルロース繊維を得るための処理前のクチクラワックスの除去が、本発明において長い繊維を得るために重要であることが驚くべきことに発見された。
【0047】
一実施形態では、脱蝋材料が50%を超えるワックスが除去されるように処理されており、例えば、植物材料の表面を覆う全ての植物ワックスの55、60、65、70、75、80、85、90%、またはさらに95%を超えるワックスが除去されるように処理されている。
【0048】
脱蝋バイオマス材料は、表面からワックスを機械的にストリッピングすることによるリグノセルロースバイオマスの前処理;クロロホルム、ベンゼンおよびヘキサンを使用することなどの有機溶媒抽出;および超臨界CO2の使用などの、当技術分野で公知の任意の方法によって、または水熱および湿式酸化前処理によってさえ、得ることができる。
【0049】
適用される前処理方法に基づいて、得られる脱蝋材料は、ペレットのような異なる形態であってもよく、または前処理の結果として部分的に完全に懸濁されていてもよい。
【0050】
好ましい実施形態において、脱蝋穀物藁材料は、乾燥機械的処理および酵素的処理を含む前処理に藁を供することによって得られる。
【0051】
本発明の一実施形態では、乾式機械的前処理が切断、細断、および/または破砕、例えば、シュレッディング、ハンマーミリング、ディスクミリング粉砕、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される機械的処理を含む。WO2015/185688は、植物材料の乾式機械的前処理の例を開示している。
【0052】
穀物わら材料は、植物材料を変形させるのに適したミルでの後続の処理に適した長さに切断することができる。一次チョッピングは、約5~20cmの長さ、5~15cmの長さ、結果5~10cmの長さの切断をもたらすことができる。粉砕はさらに、植物材料を、長さ5cm未満、3cm未満、2cm未満、または1cm未満の断片に粉砕する。プロセスは、機械的に処理された植物材料の下流での使用に応じてサイズを調整するように最適化することができる。
【0053】
乾式機械的前処理は、植物材料の外面を変形させて、ワックスコーティングが割れて解放され、部分的に脱蝋された植物材料を得るのに役立ち得る。
【0054】
一実施形態では、乾燥機械的前処理から得られた材料が酵素的前処理の前にサイズに従って分画される。好ましい実施形態において、乾燥機械的に前処理された材料は2つの画分を得るためにふるい分け処理に供され、第1の画分は篩目を通過し、第2の画分は篩目によって保持される。本発明の一実施形態では、篩のメッシュサイズが0.1~5mmの範囲、例えば0.15~2mmの範囲、例えば0.2~0.5mmの範囲である。好ましい実施形態では、メッシュサイズは0.3mmである。ふるい分け処理は、同じまたは異なるメッシュサイズを有する1つ以上のふるいを含んでもよい。ふるい分け処理は、部分的に脱蝋された植物材料(ふるいによって保持された第2の画分)を、ひび割れおよび放出されたワックスに富んだ画分(ふるいを通過する第1の画分)から分離するために行うことができる。好ましくは、リグノセルロース系バイオマス中の全ワックスの少なくとも65%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%がふるい分けにより除去される。
【0055】
代替の実施形態では、分画を省略し、したがって、乾燥した機械的に前処理された材料に酵素的前処理を直接適用することができる。
【0056】
本発明の一実施形態では、酵素前処理がプロテアーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、およびリグニナーゼのリストから選択される1つ以上の酵素を使用する加水分解である。
【0057】
好ましい実施形態において、乾燥した機械的に前処理された材料は1つ以上のプロテアーゼおよび/またはペクチナーゼ酵素と共に水性液体中に懸濁され、そして温度およびpHは添加される酵素の活性を最適化するように調節される。
【0058】
本発明のさらなる実施形態において、酵素的前処理は以下を含む:
(a)ヘミセルロース、リグニンおよびワックスからセルロースを遊離させるためのプロテアーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、およびリグニナーゼから選択される2つ以上の異なる酵素を使用するリグノセルロース系バイオマスの酵素処理をすること;
(b)遊離したワックスを除去して、水性懸濁液中の脱蝋固体リグノセルロース材料を提供すること。
【0059】
本発明の別の態様では、酵素処理後に、ヘミセルロースおよびリグニンと共にワックスを除去してもよい。
【0060】
本発明の別の実施形態において、酵素的前処理は、以下を含む:
(a)プロテアーゼおよび/またはペクチナーゼで水性懸濁液中で乾燥機械的に処理されたリグノセルロースバイオマスを最初に酵素処理した、ワックスの遊離;
(b)遊離したワックスの除去;及び
(c)リストから選択される1つ以上の酵素:プロテアーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、およびリグニナーゼを使用してワックスを除去した後のリグノセルロースバイオマスの第2の酵素処理により、ヘミセルロースおよびリグニンからセルロースを遊離させて、水性懸濁液中の脱ロウリグノセルロース材料を提供すること。
【0061】
プロテアーゼは、アミノ酸残基を連結するペプチド結合を分割することによって、長いタンパク質鎖をより短いフラグメントに消化することに関与する。一実施形態では、酵素前処理に適用されるプロテアーゼがタンパク質鎖から末端アミノ酸を分離するプロテアーゼ(アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼAなどのエキソペプチダーゼ)の中から選択することができる。別の実施形態において、プロテアーゼは、タンパク質の内部ペプチド結合を攻撃するペクチナーゼ(トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン、エラスターゼなどのエンドペプチダーゼ);またはセリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼおよびメタロプロテアーゼからなる群から選択され得る。さらに別の実施形態では、プロテアーゼがAlcalase(登録商標)(Bacillus licheniformisからのプロテアーゼ)Neutrase(登録商標)(Bacillus amyloliquefaciensからのプロテアーゼ、両方ともデンマークのNovozymesから入手可能)およびPromod(登録商標)(Ananas comosusからのプロテアーゼ、英国のBioCatalystsから入手可能)からなる群より選択されるような市販のプロテアーゼから選択されてもよい。さらに別の実施形態では2つ以上のプロテアーゼ酵素または市販のプロテアーゼ酵素産物の組み合わせが、植物タンパク質を分解するために使用され得る。
【0062】
ペクチナーゼは植物細胞壁に見出される多糖であるペクチンの分解に関与し、ここで、例えば、セルロース原線維がしばしば包埋される。一実施形態では、酵素前処理に適用されるペクチナーゼが(i)ペクチン酸骨格ペクチンを加水分解するペクチン加水分解酵素(エンドポリガラクツロナーゼ、EC3.2.1.15;エキソポリガラクツロナーゼ、EC3.2.1.67)、(ii)排除作用を介してペクチン酸を分解するペクチンリアーゼ(エンドポリガラクツロナーゼリアーゼ、EC4.2.2.2;エキソポリガラクツロナーゼリアーゼ、EC4.2.2.9;エンドポリメチル-d-ガラクトシドウロネートリアーゼ、EC4.2.2.10)、および(iii)メチルエステル結合を切断するペクチンエステラーゼ(ペクチンメチルエステラーゼ、EC3.1.1.11)からなる群から選択されてもよい。ペクチナーゼは広く市販されており、大部分は、上述の3つの酵素型の全てを組み込んだブレンドである。別の実施形態において、ペクチナーゼは、Pectinex(登録商標)(デンマークのノボザイムズから入手可能な、アスペルギルス・ニジェールからのペクチナーゼの混合物)およびPectinase 947L(登録商標)(英国のBioCatalystsから入手可能なペクチナーゼ混合物;DuPontによって供給される一連のペクチナーゼ活性酵素混合物でPektozyme)からなる群から選択され得る。さらに別の実施形態では、植物ペクチンを分解するために、2つ以上のペクチナーゼ酵素または市販のペクチナーゼ酵素産物の組み合わせを使用することができる。
【0063】
2つ以上のプロテアーゼおよび/またはペクチナーゼおよび/または市販のプロテアーゼ産物および/または市販のペクチナーゼ産物の組み合わせは、植物タンパク質および/またはペクチンを分解するために適用され得る。
【0064】
一実施形態において、1つ以上の酵素は、0.01~2%w/wの範囲、例えば0.03~1.8%w/wの範囲、例えば0.05~1.6%w/wの範囲、例えば0.07~1.4%w/wの範囲、例えば0.09~1.2%w/wの範囲の酵素濃度を得るために添加されてもよい。酵素濃度は酵素活性に依存するが、酵素濃度が1~2%w/wであることが好ましい場合がある。
【0065】
本発明の一実施形態では、酵素活性が1000~12000U/gの範囲、例えば2000~10000U/gの範囲、例えば3000~9000U/gの範囲、例えば4000~8000U/gの範囲、例えば5000~7000U/gの範囲であることが好ましい場合がある。
【0066】
酵素処理から可能な限り利益を得るために、温度、pH、塩濃度などの酵素活性のための条件は、使用される酵素に関して最適化されるべきである。スラリー/混合物への酸または塩基の添加は、最適なpH条件に到達するために必要であり得る。
【0067】
酵素処理の間の最適温度は、使用される酵素に適合するように選択される。温度は、熱安定性酵素が使用される場合、25、30、35、40、45、50℃以上であってもよい。一実施形態では、ステップ(d)における混合物の温度が30~70℃の範囲、例えば35~65℃の範囲、例えば40~60℃の範囲、例えば45~55℃の範囲、好ましくは45~65℃の範囲、最も好ましくは50~60℃の範囲に調節されて、細胞壁成分の標的加水分解を行う際に使用される酵素の活性を最適化する。
【0068】
さらなる実施形態において、酵素処理の間に維持されるpHは3.5~7.0の範囲、例えば4.0~7.0の範囲、例えば4.0~6.0の範囲、好ましくは4.5~5.5の範囲であり、細胞壁成分の標的加水分解を行う際に使用される酵素の活性を最適化する。pHは、リン酸、塩酸、硫酸、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの酸および/または緩衝液を添加することによって調節され得る。好ましい実施形態では、酸はリン酸である。
【0069】
バイオマス成分の酵素への最適な暴露を得るために、撹拌を適用することが好ましく、撹拌および/または圧縮空気または気体バブリング撹拌および/または容器振盪からなる群から選択することができる。適用可能な撹拌器は、アンカー撹拌器、ブレード撹拌器、K撹拌器、パドル撹拌器、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択することができる。
【0070】
さらなる実施形態において、穀物藁の前処理は、酵素処理の間の湿潤機械的処理をさらに含む。湿潤機械的処理は酵素処理と同時に行ってもよいし、その後の機械的処理と同時に行ってもよい。制限された湿潤機械的処理は、酵素処理の間の選択された、最適化された、間欠時間のためなどに好ましい。本発明の一実施形態では、湿潤機械処理が周囲圧力で実施される円錐精錬機、ディスク型精錬機(いわゆる大気圧精錬)およびそれらの組み合わせ;または歯付きコロイドミルなどの湿潤粉砕からなる群から選択される。このような湿式精錬またはミリングは通常、1、2、3、または4回の繰り返しで十分であり、所望の時間だけ繰り返すことができる。あるいは、またはさらに、非常に強力な撹拌を適用してもよい。
【0071】
好ましい実施形態では、前処理における撹拌下の加水分解および湿潤機械的処理が0.5~5.0時間、例えば0.5~3.0時間の範囲、例えば1.0~2.5時間の範囲、例えば1.0~2.0時間の範囲、好ましくは1.0~1.5時間の範囲、好ましくは1.5時間の範囲で行われる。
【0072】
酵素処理が十分であると考えられると、ワックスを除去し、脱蝋固体リグノセルロース材料を回収することができる。脱蝋リグノセルロース材料は脱蝋リグノセルロース材料を溶融ワックスを含む液体部分から分離することができるように、混合物の温度を上昇させて溶融し、遊離したワックスを液化することによって回収することができる。ワックスは、ワックスの組成物および温度に応じて、完全にまたは部分的に液化することができる。遊離したワックスを溶融するために温度を上昇させる場合、酵素が不活性化される温度に最低限到達することが望ましい。
【0073】
一実施形態では、乾燥した機械的および酵素的に前処理された材料の温度が遊離したワックスを溶融および液化するために、65~95℃、例えば70~90℃、例えば75~85℃、例えば80~85℃の範囲、好ましくは80℃に上昇される。一実施形態では、温度が70℃を超える、好ましくは80、90または95℃を超えるまで上昇される。
【0074】
一実施形態では、ワックスの除去および脱蝋材料の回収量がデカント、遠心分離、および濾過からなる群から選択される方法によって行われる。原理的には、嵩水性懸濁液から不溶性繊維画分を除去するために適用することができる任意の公知の方法を適用することができる。好ましくは、分離が所望の任意の分子サイズを使用して、任意の形態の篩い分け/濾過によって行われる。濾過に関して、このような濾過は、小型メッシュフィルター、加圧フィルター、ベルトフィルター、フィルタープレス、およびこれらの組み合わせから選択され得る。
【0075】
脱蝋された材料は材料の容易な取り扱いを容易にするために、ペレット化されるか、または他の方法で処理されてもよい。あるいは、上記のような前処理の結果として、水性液体中に部分的に完全に懸濁されていてもよい。
【0076】
好ましい実施形態において、脱蝋穀物わら材料は、上述のような機械的および酵素的処理の組み合わせを使用して、ワックスを抽出または分離する方法によって得られる。植物材料を脱蝋する同様の方法は、国際公開第2015/185685号パンフレットに記載されている。しかしながら、国際公開第2015/185685号パンフレットではワックスが植物微粉(ワックス含有量が濃縮され、機械的処理後に繊維含有量が低い分率)からのみ酵素処理によって遊離されたが、本発明の好ましい実施形態では脱蝋が機械的処理後に繊維含有量が高い植物分率に対して実施されるか、または機械的処理された植物材料を分離することなくすべての植物材料に対して実施される。
【0077】
本発明の好ましい実施形態において、前記穀物藁を脱蝋わら材料を得るために前処理する工程は、以下の工程を含む:
(a)穀物わらを乾燥機械的処理に供すること、
(b)穀物わらに乾燥機械的処理を施すこと、
(c)工程(b)で得られた材料を篩処理に供し、少なくとも2つの画分を得ること、第1の画分は篩目を通過し、第2の画分は篩目によって保持されること、
(d)工程(c)で得られた第2の画分を1つ以上のプロテアーゼおよび/またはペクチナーゼ酵素と共に水性液体中に懸濁すること、
(e)工程(d)で得られた混合物を湿潤機械的処理に供すること、
(f)溶液からワックスを除去すること、及び
(g)工程(f)で得られた残りの脱蝋材料を1つ以上のヘミセルラーゼ酵素を用いて酵素的に処理すること。
【0078】
さらなる実施形態において、バイオマスは、ヘミセルロース成分を分解するのに適した1つ以上のヘミセルラーゼ酵素を用いて酵素的に前処理される。錯体リグノセルロース植物バイオマス構造におけるヘミセルロースの側鎖はリグニンと相互に連結する。したがって、ヘミセルロースの破壊は、異なるリグノセルロース成分を分離する際の必須の工程である。ヘミセルラーゼは、(i)上記のプロテアーゼおよび/またはペクチナーゼ処理と組み合わせて、(ii)プロテアーゼおよび/またはペクチナーゼ処理の前または後の別個の処理として、(iii)ワックスを除去した後の脱ロウリグノセルロースの別個の処理として、適用することができる。
【0079】
一実施形態では、ヘミセルラーゼ酵素はキシラナーゼ(EC3.2.1.8)であり、これは線状多糖β-1、4-キシラン(ほとんどのヘミセルロースのバックボーン)の内部結合をランダムに切断し、異なる長さのキシロオリゴ糖を産生するか、または反応がその完了まで行われる場合、キシロース単量体を産生する。しかし、ヘミセルロースはβ-1、4-キシランの単なる直鎖状多糖ではなく、多数の側鎖をさらに含み、それらの分解のために別個の酵素作用を必要とする。したがって、ヘミセルロースポリマーにおける高度の置換は種々の補助酵素の作用を必要とし、したがって、別の実施形態において、ヘミセルラーゼ酵素はヘミセルロース置換基を完全に分解するために、異なるグリコシドヒドロラーゼおよび炭水化物エステラーゼを含む。好ましい実施形態において、フェルラ酸エステラーゼはフェルロイル-多糖を加水分解し、カルボン酸エステル結合に作用することによってフェルラ酸を放出する、本発明のこのような補助酵素である。フェルラエステラーゼは、ヘミセルロースに結合したリグニン部分の放出を補助するために添加され得る。
【0080】
一実施形態では、ヘミセルロース(ヘミセルラーゼ)の分解のための酵素がエンドキシラナーゼ、β-キシロシダーゼ、α-L-アラビノフラノシダーゼ、α-グルクロンジアーゼ、α-ガラトシダーゼ、アセチルキシランエステラーゼ、フェルロイルエステラーゼなどのリストから選択されるものなど、グリコシドヒドロラーゼおよび/または炭水化物エステラーゼからなる群から選択されてもよい。植物細胞壁中の非結晶性セルロース中の結合に作用することができるβ-グルカナーゼは、さらに任意に利用される。
【0081】
ヘミセルロース調製物は、商業的に広く入手可能である。一実施形態では、ヘミセルラーゼがDepol 333P(BioCatalysts Ltd、UKからのキシラナーゼリッチ酵素調製物)およびDepol 740L(BioCatalysts Ltd、UKからのフェルラ酸エステラーゼリッチ酵素調製物)からなる群より選択されてもよい。好ましい実施形態では、植物ヘミセルロースを分解するために、2つ以上のヘミセルラーゼ酵素または市販のヘミセルラーゼ酵素生成物の組み合わせを使用することができる。
【0082】
一実施形態では、1つ以上のヘミセルラーゼ酵素を添加して、0.01~2%w/wの範囲、例えば0.03~1.8%w/wの範囲、例えば0.05~1.6%w/wの範囲、例えば0.07~1.4%w/wの範囲、例えば0.09~1.2%w/wの範囲の酵素濃度を得ることができる。酵素濃度は酵素活性に依存するが、酵素濃度が1~2%w/wであることが好ましい場合がある。
【0083】
本発明の一実施形態では、ヘミセルラーゼ酵素活性が1000~12000U/gの範囲、例えば2000~10000U/gの範囲、例えば3000~9000U/gの範囲、例えば4000~8000U/gの範囲、例えば5000~7000U/gの範囲であることが好ましい場合がある。
【0084】
酵素処理から可能な限り利益を得るために、温度、pH、塩濃度などの酵素活性のための条件は、使用される酵素に関して最適化されるべきである。スラリー/混合物への酸または塩基の添加は、最適なpH条件に到達するために必要であり得る。
【0085】
ヘミセルラーゼ処理の間の最適な温度は、使用される酵素に適合するように選択される。温度は、熱安定性酵素が使用される場合、25、30、35、40、45、50℃以上であってもよい。一実施形態では、細胞壁成分の標的加水分解を実施する際に使用される酵素の活性を最適化するために、温度を30~70℃の範囲、例えば35~65℃の範囲、例えば40~60℃の範囲、例えば45~55℃の範囲、好ましくは45~65℃の範囲、最も好ましくは50~60℃の範囲に調節する。
【0086】
さらなる実施形態において、ヘミセルラーゼ処理の間のpHは、3.5~7.0の範囲、例えば4.0~7.0の範囲、例えば4.0~6.0の範囲、好ましくは4.5~6.0の範囲に調節されて、細胞壁成分の標的化された加水分解を実施する際に使用される酵素の活性を最適化する。pHは、リン酸、塩酸、硫酸、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの酸および/または緩衝液を添加することによって調節され得る。好ましい実施形態では、酸はリン酸である。
【0087】
好ましい実施形態において、ヘミセルラーゼ処理の間の温度およびpHは、45~65℃およびpH4.5~6.0の範囲である。
【0088】
バイオマス成分の酵素への最適な暴露を得るために、撹拌を適用することが好ましく、撹拌および/または圧縮空気または気体バブリング撹拌および/または容器振盪からなる群から選択することができる。適用可能な撹拌器は、アンカー撹拌器、ブレード撹拌器、K撹拌器、パドル撹拌器、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択することができる。
【0089】
さらなる実施形態において、ヘミセルラーゼ処理は、酵素処理の間の湿潤機械的処理を含み得る。湿潤機械的処理はヘミセルラーゼ処理と同時に行ってもよいし、その後の機械的処理と同時に行ってもよい。限定された湿潤機械的処理は例えば、ヘミセルラーゼ処理の間の選択され、最適化され、間欠時間のために好ましい。本発明の一実施形態では、湿潤機械処理が周囲圧力で実施される円錐精錬機、ディスク型精錬機(いわゆる大気圧精錬)およびそれらの組み合わせ;または歯付きコロイドミルなどの湿潤粉砕からなる群から選択される。このような湿式精錬またはミリングは通常、1、2、3、または4回の繰り返しで十分であり、所望の時間だけ繰り返すことができる。あるいは、またはさらに、非常に強力な撹拌を適用してもよい。
【0090】
ヘミセルラーゼ処理は十分であると考えられ、例えば、0.5、1.0、1,5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5または5.0時間の加水分解後、または6、8または12時間の加水分解後でさえ、所望の程度の加水分解が得られる。好ましい実施形態では、加水分解が0.5~5.0時間、例えば0.5~4.0時間の範囲、例えば1.0~3.5時間の範囲、例えば1.5~3.0時間の範囲、好ましくは1.5~2.5時間の範囲、好ましくは2時間行われる。
【0091】
別の実施形態では、バイオマスはまた、リグニン成分を分解するのに適した1つ以上の酵素を使用して、酵素的に前処理されてもよい。リグニナーゼは、上記の他の酵素処理のいずれかと組み合わせて、または別個の工程として適用され得る。一実施形態では、リグニナーゼがペルオキシダーゼおよびラッカーゼからなる群から選択される。
【0092】
本発明のステップ(ii)によれば、ステップ(i)で提供される脱蝋穀物藁を含む溶液の温度を上昇させ、pHをアルカリ性条件に調整して、溶液中のヘミセルロースおよびリグニン成分を可溶化する。
【0093】
一実施形態では、ステップ(i)で提供される脱蝋穀物わら材料を含む溶液の温度が65~120℃の範囲、例えば65~95℃の範囲、例えば75~85℃の範囲、例えば80~85℃の範囲、好ましくは80℃に上昇する。一実施形態では、工程(i)で提供される脱蝋リグノセルロース材料を含む溶液の温度が65℃を超える、好ましくは70、80、90または95℃を超えるまで上昇される。
【0094】
一実施形態では、工程(ii)におけるアルカリ性pH条件がpH範囲7.0~12.0、例えば範囲8.0~12.0、例えば範囲9.0~11.5、例えば範囲9.5~11.0、例えば範囲10.0~10.5、好ましくは範囲10.0~11.0を指す。アルカリ性条件を得るための工程(i)で提供される溶液のpH調整は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウムおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される塩基を添加することによって実施され得る。
【0095】
工程(ii)の溶液を5~60分間、好ましくは10~45分間、最も好ましくは10~20分間撹拌することが好ましい。
【0096】
好ましい実施形態では温度を65~95℃に上昇させ、pHを9~11.5に上昇させて、ヘミセルロースおよびリグニンが可溶化されることを確実にするが、セルロースは不溶性のままである。
【0097】
本発明のステップ(iii)によれば、ステップ(ii)で得られた材料は、固体セルロース繊維画分と、ヘミセルロースおよびリグニン成分を含む液体画分とに分離される。セルロース繊維生成物は、嵩水性懸濁液から不溶性画分を分離する任意の公知の方法によって溶液から分離され得る。
【0098】
一実施形態では、ステップ(iii)における分離がデカンテーション、遠心分離、および濾過からなる群から選択される。分離は、所望に応じて任意の分子サイズを使用して、任意の形態のふるい分け/濾過によって行うことができる。濾過に関して、このような濾過は、小型メッシュフィルター、加圧フィルター、ベルトフィルター、フィルタープレス、フィルターバンド、およびこれらの組み合わせから選択され得る。好ましくは、分離はデカンター遠心分離によって行われる。
【0099】
工程(iii)で得られるセルロース繊維画分の乾燥物質含有量は、45%未満、好ましくは40%、35%、30%、25%、20%、15%未満、またはさらには10%未満であってもよい。工程(iii)で得られるセルロース繊維画分の乾燥物質含量は、好ましくは15~35%、例えば20~30%、例えば25%の範囲である。
【0100】
工程(iii)で得られたセルロース繊維画分は、任意に洗浄して、ヘミセルロースおよびリグニン成分のさらなる除去を容易にすることができる。
【0101】
本発明のステップ(iv)によれば、ステップ(iii)で得られたセルロース繊維分画を水性液体に懸濁させ、温度及びpHを65~95℃、pH9~11.5に調整し、漂白剤を添加し、セルロース繊維分画を懸濁液中に時間Tl保持する。
【0102】
セルロース繊維画分の処理中に混合物の自由撹拌を可能にするために、工程(iii)で得られたセルロース繊維画分を、30:1、好ましくは20:1(水対セルロース繊維材料)などの10:1の比で水性液体中に工程(iv)で懸濁させることが好ましい場合がある。
【0103】
一実施形態では、工程(iv)で添加される漂白剤が過酸化水素、塩素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、過炭酸ナトリウム、活性酸素、オゾン、または他の漂白剤、またはそれらの混合物からなる群から選択される。好ましい実施形態では、漂白剤は過酸化水素であり、pHは10.0~11.0であり、温度は60~100℃である。
【0104】
一実施形態では漂白剤がセルロース繊維画分に特定量の30%w/v過酸化水素溶液を分配することによって添加され、好ましくは100kg繊維画分当たり15~30kg過酸化水素溶液が100kg繊維画分当たり25kgなどのように添加される。
【0105】
さらなる実施形態において、pHは工程(iv)において、7~12、例えば8~12、例えば9~11.5、またはそのような10~11、好ましくはpH10.5の範囲内に調節され;一方、温度は50℃を超え、好ましくは60、65、70、75、80、85、90℃を超え、またはそれ以上である。さらなる実施形態では、ステップ(iv)の温度が60~110℃の範囲、例えば60~100℃の範囲、例えば70~90℃の範囲、例えば75~85℃の範囲、好ましくは80℃に調節される。好ましい実施形態において、温度およびpHは、65~95℃およびpH9~11.5に調節される
【0106】
本発明のステップ(v)によれば、時間T1の後、ステップ(iv)で得られた漂白された材料は、T2の持続時間の間、湿潤機械処理によって精製される。T2は、「リファイナー」を通過する回数として測定することができる。
【0107】
漂白の3つの段階が好ましい:第1に、漂白は工程(iv)で特定されるように開始され、特定された温度およびpHは選択された時間T1の間維持される。第2に、T1の後に得られた漂白された材料は工程(v)で特定されるように、選択された時間T2の間、湿潤機械的処理によって精製される。第3に、任意に、漂白は、選択された時間T3の間、湿潤機械的処理の後に継続されてもよい。
【0108】
湿潤機械的処理による精製を実施する前に、選択された時間T1にわたってセルロース繊維を漂白させることは、セルロース繊維の最終的に達成される長さを制御する上で必須のパラメータである。理論に束縛されることを望むものではないが、驚くべきことに、本発明では長い繊維を得るためには束が脆くなく、むしろ可撓性であり、かつ被覆リグニンを含まない段階で、すなわち、選択された漂白時間T1の後に、繊維束を精製(湿潤機械的処理)することが非常に重要であることが発見された。例えば、T1が省略される(または短いすぎる)場合、繊維製品は、減少した平均繊維長を有する。この選択された時間T1において、限られた精製プロセスが所望の長さの完成繊維を生成するために、時間T2の間実行される。
【0109】
好ましい実施形態では、退色が湿潤機械的処理の開始前に20~240分間の範囲のTl、例えば湿潤機械的処理の30~180分間の範囲のT1、例えば、60~180分間の範囲のT1、例えば、60~120分間の範囲のT1、例えば、70~100分間の範囲のTl、例えば、好ましくは75~95分間の間行われるT1などの湿潤機械的処理の開始前に行われるT1などの、少なくとも30,35,40,45,50,60分間のT1について行われる。
【0110】
時間T1の後、得られた漂白された材料は、時間T2の間、湿潤機械処理によって精製される。本発明の一実施形態では、工程(v)における湿潤機械処理が製紙において周知であり使用されている精製方法などの精製である。好ましい実施形態では、湿潤機械処理が周囲圧力または大気圧で実施される円錐精製機、ディスク型精製機、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される(いわゆる大気精製)。湿式粉砕はまた、歯付きコロイドミルを使用するなど、湿式機械的処理として適用されてもよい。湿潤機械的処理の目的はわらパルプ中に存在する繊維束を除細動し、過度に短縮することなく個々の繊維を発達させ、元の繊維束と比較して最終湿潤成形製品中のパルプ繊維間の結合を強化することである。
【0111】
一例として、ディスクリファイナーは、典型的には鋸歯状又は他の方法で輪郭形成された表面を有する回転ディスクを備える。2つのディスクが逆方向(一方は時計回り、もう一方は反時計回り)に回転するか、もう一方は回転中に固定される。繊維スラリーは、ディスクの1つの中心を通ってポンプ輸送され、遠心力が繊維/繊維束スラリーをディスクの周囲に向かって投げると、それらの間に挟まれる。回転ディスクの作用は摩擦し、転がり、切断し、ほつれ、繊維を軟化させ、繊維束を破壊するのを助けることができる。ディスク間の空間は、所望の精製の程度に応じて調節することができる。連続精製システムではパルプの種類、精製の程度、および充填剤の種類および量は必要とされる用紙またはパルプの種類に応じて容易に変更することができる。円錐リファイナー(製紙産業において周知)もまた十分である。
【0112】
上記のような湿潤機械的精製を繰り返すことができる。一実施形態では、リファイナーを通る1回、2回、または3回のパス(繰り返し)が行われる。単一パスは、繊維/パルプ液の全てがリファイナープレートまたはミルを1回通す(すなわち、リファイナーを介して1つの槽から別の槽にポンプ輸送する)ことを意味する。2つのパスは、2回パスを通ったことを意味する。
【0113】
時間T2は、好ましくはリファイナーまたはミルを通過する回数として表される。
【0114】
好ましい実施形態では、工程(v)における湿潤機械的処理が1または2回リファイナーまたはミルを通過する際に行われる。したがって、好ましい実施形態では、T2は1~2パスである。より好ましい実施形態では、工程(v)における湿潤機械的処理がリファイナーを1回通過させて行われる。したがって、より好ましい実施形態では、T2は1パスである。
【0115】
上記のように、T2は漂白プロセス中の精製時間であり、湿式ミルまたはリファイナーを通過する回数と呼ぶことができる。実際には理想的にはバイオマススラリーが1つのタンクから次のタンクへリファイナーを通ってポンプ輸送され、その結果、繊維懸濁液の全ては「単一パス」でリファイナーまたはウェットミルを通過する。本明細書で与えられる実施例のいくつかにおいて、繊維懸濁液は1~1.5mmの特定のプレートまたは歯のギャップで、Frymaタイプの歯付きコロイドウェットミルを通過した。長い繊維を得るためには単一パスが最適であることが見出された。フルタンク(1400リットル)が通過するのに20分を要し、したがって、実施例ではT2がしばしば「20分」と見られる。
【0116】
本明細書に記載のいくつかの他の実施例では、繊維懸濁液を、Sprout Waldron model 105-Aパイロットスケール単一回転ディスク大気圧リファイナーに通した。(「加圧精製装置」とは対照的に)大気精製装置は、典型的には12インチプレートを用いて15,000分の1インチ(350~400ミクロン)のプレートギャップと共に使用され、1パスはウェットミルの例と非常に類似した結果をもたらすことが分かった。
【0117】
Sprout Waldronモデル105‐Aパイロットスケール単一回転円板大気リファイナーを1回通過するのが最適であることが分かった。別のタイプのリファイナーが使用される場合、別のプレートギャップおよび/またはプレートサイズおよび/または流量が適用されてもよい。したがって、最適なパスの数は、選択した装置の特性、プレートギャップ、プレートサイズ、流量に基づいて異なる場合がある。プレートギャップ、プレートサイズ、流量、および/またはパスの数のうちの1つ以上は上記で定義されたSprout Waldronリファイナーを使用して得られたものと同じ結果(繊維長)を与えるように調整されるべきであり、それによって、最も長い繊維を得るための最適なリファイニングの程度を得る。
【0118】
リファイナーまたはミルを1回通過する時間(分)は使用されるリファイナーまたはミルのタイプに依存し、それぞれの流量は異なっていてよい。例示的な例として、Fryma型、歯付きコロイド湿式ミルの流量は約70リットル/分であり、その結果、Fryma型、歯付きコロイド湿式ミルを通る1400リットルの1パスは約20分を要し、Sprout Waldronモデル105-Aのパイロットスケールの回転円板大気圧精製器の流量は12インチの精製プレート直径が約3000~5000リットル/時であり、その結果、12インチプレートを使用する15,000分の1インチ(350~400ミクロン)のプレートギャップを有するSprout Waldronモデル105-Aのパイロットスケールの単一回転円板大気圧精製器を通る1400リットルの1パスは約16~28分を要する。
【0119】
したがって、時間T2は湿潤機械処理で処理された0.6~1.2秒/リットルの範囲内、例えば、T2は0.7~1.0秒/リットルの範囲内、例えば、T2は、Sprout Waldron精製器を使用する場合、0.7~0.85秒/リットルの範囲内であり得る。
【0120】
好ましい実施形態において、長い繊維を得るために、精製工程(T2)はFryma型、歯付きコロイド、上記に特定されるような湿式ミルを通る単一パスと同等であるべきであり、または上記に特定されるようなSprout Waldronリファイナーを通る単一パスと同等であるべきである。当業者は同じ程度の精製を得るために、他の精製機または同様の機械をどのように適合させるかを知っている。
【0121】
リファイナーを通る2つ以上のパスは連続的に、またはパス間の指定された時間隔で実行されてもよい。この場合、T2は、合計湿潤機械的処理時間として定義され、したがって、湿潤機械的処理がリファイナーを通る2回以上のパスを含む場合、パス間の時間も時間T2に含まれる。
【0122】
さらなる実施形態では、本発明の工程(v’)によれば、漂白は湿潤機械的処理の後、特定の時間T3、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60分のT3、または1.5、2、2.5、または3時間を超えるT3のような1時間を超えるT3、継続してもよい。好ましい実施形態では、工程(v’)における漂白が20~120分の範囲内の特定の時間T3、例えば20~90分の範囲内のT3、例えば20~60分の範囲内のT3、例えば40~95分の範囲内のT3、例えば好ましくは25~60分の範囲内のT3について行われる。
【0123】
T1、T2およびT3は、所望のファイバ長さとT1、T2およびT3との間の相関に基づいて選択される。T1、T2およびT3の好ましい時間は、セルロース繊維の調製のための出発材料として使用されるリグノセルロース系バイオマス入力(バイオマスの種類ならびに脱蝋の程度)、ならびに使用されるビーチング剤およびリファイナーなどの異なるパラメーターに依存し得る。前述のように、残留リグニンはリグノセルロース錯体から解離し、セルロース繊維の柔軟性はT1中に増加し、より長い繊維を生成するのに有益であると推測される。T2精製の間、所望の長さの繊維製品が生成される。延長された精製時間T2はより短い繊維につながり、一方、より短い精製時間T2では、繊維束がより所望の単一セルロース繊維に十分に分離され得ない。T3はT2の間に制御された湿潤機械的作用によって繊維束が開放された後に、さらなる任意の漂白期間を提供する。T3はそれによって残留リグニンおよびヘミセルロース(pHは10.5)の最終除去を容易にし、さらに、任意の「仕上げ」段階と考えられ、ここで、理論によって束ねられることを望まないが、以前に束ねられた繊維は単一の遊離繊維にさらに広がる。
【0124】
T1、T2、およびT3は、所望のファイバ長に応じて異なる。所望の繊維長に対する最適なT1、T2、およびT3は、異なるリグノセルロース系バイオマスについて実験的に決定することができる。長さT1、T2、およびT3は例えば、JMP統計解析ソフトウェア、SAS研究所A/Sなどの計算プログラムを使用することによって、より洗練された方法で計算され、推定されてもよく、これらは、わずかな初期の実験結果に基づいて、異なる時点T1、T2、およびT3を選択することにおいて当業者を過度の負担なしに導くことができ、次いで、所望のファイバ長を得るためのT1、T2、およびT3の出力好ましい値に基づいて、同定される。
【0125】
合計漂白時間(T1+T2+T3)は、220分を超えてはならず、例えば210、200、180、または170分を超えてはならず、最も好ましくは160分を超えてはならない。
【0126】
一実施形態では時間T1、T2、および任意選択でT3の間の漂白は7~12、例えば8~12、例えば9~11.5、またはそのような10~11、好ましくはpH 10.5の範囲内のpHで行われるが、温度は50℃を超える、好ましくは60、65、70、75、80、85、90℃を超えるか、またはそれ以上である。さらなる実施形態では時間T1、T2、および任意選択でT3の間の漂白は60~110℃の範囲、例えば60~100℃の範囲、例えば70~90℃の範囲、例えば75~85℃の範囲、好ましくは80℃の温度で行われる。好ましい実施形態では、漂白が時間T1、T2、および任意選択でT3の持続時間で、温度65~95℃およびpH9~11.5で、過酸化水素を使用して行われる。
【0127】
さらなる漂白剤は、T1、T2および/またはT3の間に時間添加することができる。
【0128】
好ましい実施形態において、最適な混合を得るために、撹拌は、好ましくは工程(iv)および(v)において、ならびに任意の連続漂白の間に適用され;そして撹拌および/または圧縮空気もしくは気泡撹拌および/または容器振盪からなる群から選択され得る。適用可能な撹拌器は、アンカー撹拌器、ブレード撹拌器、K撹拌器、パドル撹拌器、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択することができる。
【0129】
本発明のステップ(vi)によれば、ステップ(v)で得られた材料を、漂白精製セルロース繊維分率と水溶液漂白液分率とに分離してセルロース繊維製品が得られる。原理的には、嵩水性懸濁液から不溶性画分を除去するために適用することができる任意の公知の方法を適用することができる。
【0130】
一実施形態では、ステップ(vi)における分離がデカンテーション、遠心分離、および濾過からなる群から選択される。分離は、所望に応じて任意の分子サイズを使用して、任意の形態のふるい分け/濾過によって行うことができる。濾過に関して、このような濾過は、小型メッシュフィルター、加圧フィルター、ベルトフィルター、フィルタープレス、フィルターバンド、およびこれらの組み合わせから選択され得る。好ましくは、分離はデカンター遠心分離によって行われる。
【0131】
漂白精製セルロース繊維製品の乾燥物質含量は、45%未満、好ましくは40%、35%、30%、25%、20%、15%未満、またはさらには10%未満であってもよい。
【0132】
本発明のステップ(vii)によれば、漂白され精製されたセルロース繊維画分は任意に、例えば、淡水でリンスするか、または淡水に再懸濁し、続いてステップ(vi)について上記したように再分離することによって、水中で洗浄され得る。
【0133】
本発明のさらなる態様において、上記のような工程(iii)で得られたヘミセルロースおよびリグニンを含む液体画分は、それらの異なる特性に基づいてヘミセルロースおよびリグニンを分離および精製するためにさらに処理され得る。好ましい実施形態では、リグニンを沈殿させるために、例えばpHをpH7未満、好ましくはpH 6、5、4、3、2未満、またはそれ以下に低下させることによって、分離前に液体のpHを低下させる。分離は、遠心分離などの任意の公知の方法によって行うことができる。本発明の好ましい実施形態において、ヘミセルロースに富む水性画分は例えば、1、2、3、4もしくは5kDaなどのカットオフ、または10kDaなどのさらに高いカットオフを使用する限外濾過によって、より高い分子量の多糖材料をより低い重量のオリゴ糖材料から分離することによって、さらに分離される。分離された分率は、好ましい実施形態において、凍結乾燥されて、より安定な生成物を得ることができる。
【0134】
本発明のなおさらなる態様において、先に記載されるような篩い分け処理において得られた、分解および放出されたワックスに富む分率は、WO2015/185685A1に記載されるプロセスなどによって、ワックスを精製するためにさらに処理され得る。
【0135】
記載された方法は最小のエネルギー入力を使用し、2~4バールの圧力および12~14のpHで実施されるパルプ化方法のような伝統的なわらパルプ化方法よりも少ない程度でセルロース繊維を破壊することが注目される。例えば、水酸化ナトリウムを使用する伝統的なパルプ化方法によって、セルロースを誘導することができるが、これはほとんどの場合、ヘミセルロースおよびリグニンを破壊し、これらの植物成分を商業的に使用不可能にするというコストを払っている。本発明は製品中のセルロース繊維の長さを制御することができ、同時に、非破壊的であるというさらなる利点を提供し、したがって、ヘミセルロース、リグニン、およびさらには他の用途のためのワックスを追加的に精製するオプションを容易にする方法を提供する。
【0136】
II. 本発明により得られる生成物の分析方法
II.i 繊維分析
ファイバ長は、自動化されたファイバ測定の包括的なセットを提供するValmet FS5として知られるValmet fiber Image Analyzerを使用して測定される。繊維長はCarvalho et al 1997に定義されているように、lc(n)、lc(l)またはlc(w)として報告することができる。Lc(n)=数値平均長、Lc(l)=長さ加重平均長、Lc(w)=重み平均長。Lc(l)は紙の特性と良好に相関し、分析される材料中の微粉の割合にそれほど依存しないので、Lc(l)を使用することが好ましい。Carvalho et al 1997によれば、Lc(w)が使用される場合、この値が信頼されるべきである場合、ファイバ長に正比例する粗さなどの異なる仮定が満たされなければならないことに留意されたい。繊維の長さは、本発明の例示で使用したものとは異なる方法で、異なる装置によって測定することができる。
【0137】
II.ii 耐折性
折りたたみ耐久性は通常、ショッパー型の折りたたみ耐久性タイプの試験機を用いて決定される。試験機は繊維製品から形成されたハンドシートから切り取られたストリップを用いる。本発明に関連して、試験装置においてストリップの破損を引き起こすのに必要な二重折り目の数が測定される。一例として、折り曲げ耐久性は、以下のように決定することができる:
【0138】
標準的な手すき紙は、選択された繊維製品60gを用いて手すき紙形成装置で製造される。手すき紙から切り取った幅1.5cmの紙片を0.5kgの表面張力下に置き、試験機を用いて右135”および左135”に指定の半径で折り曲げ、破損を引き起こすのに必要な折り目の数を「折り曲げ耐久性」と呼ぶ
【0139】
II.iii ISO明るさ
ISO光学明るさの測定はファイバ製品(前述)の平らな「ハンドシート」を作成し、これを光学測定能力を持つ機械である「明るさ・色度計/テスタ」に入れて行う。
【0140】
II.iv. バイオマス組成:リグニン、セルロース、ヘミセルロース及びワックス含量の分析わらから抽出された本発明のセルロース繊維製品中の残留リグニン含量は、以下のようにして測定することができる:
繊維(4g、乾物ベース)を、600mlビーカー中、75℃で400ミス水中に撹拌した。1時間の水和後、12.5mlの10%酢酸を添加し、続いて6.5gの亜塩素酸ナトリウム(NaCl02)を添加し、混合物を75℃の温度を維持しながら1時間撹拌した。次いで、10%酢酸(6.5ml)および亜塩素酸ナトリウム(3g)のさらなるアリコートを添加し、混合物を75℃でさらに1時間撹拌した。2時間の先端に、繊維残渣を、200mlの水(3×)、200mlのエタノール(2×)および最後にジクロロメタン(2×)で洗浄した細かいナイロン布上で注意深く濾過し、繊維を注意深く乾燥させ(60℃オーブン)、次いで秤量した。開始質量と酸化繊維質量の差をリグニン含量とし、残りの繊維質量はセルロースと残りの任意のヘミセルロースを含む「ホロセルロース」を表す。
【0141】
藁から抽出された本発明のセルロース繊維製品中のセルロースおよび残留ヘミセルロース含量は、以下のようにして決定することができる:
【0142】
2.5g(乾物基準)の上からのリグニンを含まない繊維を250mlのビーカーに入れ、これに、24%水酸化カリウム中の0.05ホウ酸ナトリウムの溶液100mlを加えた。混合物を20℃で2時間撹拌し、その後、繊維状残渣を、細かいメッシュのナイロン布を使用して回収し、200mlの水(3×)、100mlの5%酢酸(I×)、100mlのエタノール(2×)、および最後に100mlのジクロロメタンで洗浄した。残った繊維を一晩乾燥(60℃オーブン)し、秤量した。残留質量(灰分含量を調整した)をセルロースとした。開始質量とこの質量との間の差を「ヘミセルロース含量」と記した。
【0143】
植物材料の全ワックス含有量は、全抽出可能な親油性化合物として重量測定することができる。乾燥した植物材料を粉砕し、次いで熱/沸騰クロロホルムで抽出する。これは、2つの基本的な方法のいずれかによって行われ、植物材料の嵩密度が高い場合、方法2が方法1よりも好ましい。
【0144】
1.粉砕されたバイオマスの正確に計量された部分(オーブン乾燥)をソックスレーチンブルに入れ、次いで、標準ソックスレー法を使用して、ソックスレー抽出システムにおいて12時間抽出に供する。抽出後、シンブルおよび残りの固体材料を103℃で乾燥させ、抽出されたワックスを、出発材料と比較した質量差によって決定する。
【0145】
または2.(正確に秤量した)約30gの乾燥、粉砕わらまたは他の植物材料の一部を2L丸底フラスコに入れ、これに1リットルのクロロホルムを加える。フラスコに還流冷却器を取り付け、材料をクロロホルム中で最低3時間還流する。この後、残った固形物を定量的に採取し、乾燥(103℃)し、秤量する。ワックス含量は投入材料に対する質量差によって決定される。
【0146】
III. 本発明により得られる製品
III.i.セルロース製品
本発明の一態様では所望の繊維長の漂白精製セルロース繊維製品などのセルロースパルプ製品が提供される。
【0147】
本発明の一実施形態では工程(vii)で得られるセルロースパルプ繊維製品が0.4~1.5mmの範囲、例えば0.5~1.2mmの範囲、例えば1~2mmの範囲、好ましくは0.55~1mmの範囲、最も好ましくは0.65~1mmの範囲など、0.3~2mmの範囲の長さ加重平均繊維長Lc(l)を有する除細動繊維束を含む。長さ加重平均繊維長はセクションiiに記載されるように、Valmet Fiber Image Analyzerを使用して測定される。
【0148】
本発明の好ましい実施形態では工程(vii)で得られるセルロースパルプ繊維製品が0.5mmより大きい、好ましくは0.55、0.60、0.61、0.62、0.63、0.64、またはさらに好ましくは0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、または0.7mmより大きい、またはさらに好ましくは0.72、0.74、0.76、0.78、または0.8mmより大きい長さ加重平均繊維長Lc(l)を有する除細動繊維束を含む。
【0149】
曲げ可能な材料に使用するためにはセルロース繊維をできるだけ長く製造することが望ましいが、他の目的のためには他の長さが最適であり得る。
【0150】
実施の形態では工程(vii)で得られるセルロースパルプ繊維製品が75、80、又は85%w/wを超える、好ましくは90、92、94、又は96%w/wを超えるセルロース含量さえ含む、70%w/wを超えるセルロース含量を含む。セルロース含量は本文脈において、セクションiiに記載される方法を使用して測定される。
【0151】
本発明の重要な目的は少なくとも80重量%のセルロースを含み、平均繊維長Lc(l)が0.4mmより大きく、好ましくは0.5、0.6、または0.7mmより大きく、さらに好ましくは0.8mmより大きいセルロース繊維製品を提供することである。
【0152】
本発明の別の目的は少なくとも85w/w%のセルロース、2~10w/w%のリグニン、4~12w/w%のヘミセルロースを含み、0.65mmより大きい平均繊維長Lc(l)を有するセルロース繊維製品を提供することである。
【0153】
別の実施形態ではセルロース繊維製品が1~15w/w%リグニンの範囲、例えば1~10w/w%リグニンの範囲、例えば2~5の範囲、好ましくは2~4w/w%リグニンの範囲を含む。
【0154】
さらなる実施形態ではセルロース繊維製品が1~20w/w%の範囲、例えば1~15w/w%の範囲、例えば2~10w/w%の範囲、例えば3~8w/w%の範囲、好ましくは3~5w/wの範囲のヘミセルロースを含む。
【0155】
漂白されたセルロース繊維製品は好ましくは80~95の範囲のISO白色度を得るために漂白される。
【0156】
III.ii ヘミセルロース製品
本発明の第2の態様ではヘミセルロース製品が提供される。このようなヘミセルロース分率(オリゴ糖を含む)がリグニン沈殿後に得られ、それによって液相から除去され得る。ヘミセルロース分率は乾物ベースで、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%の非セルロースおよび非デンプンオリゴおよび多糖を含む。
【0157】
一実施形態ではヘミセルロース生成物が少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%のアラビノキシランを含む。一実施形態ではヘミセルロース生成物(オリゴ糖を含む)が10~90w/w%キシロース、例えば、20~80w/w%キシロース、例えば、30~70w/w%キシロース、例えば、40~60w/w%キシロース、例えば、50~70w/w%キシロース、および好ましくは35~60w/w%キシロース、およびより好ましくは40~50w/w%キシロースを含み得る。キシロース含有量が本文脈において、セクションIIに記載の方法を用いて測定される。
【0158】
III.iii リグニン生成物
本発明の第3の態様では少なくとも60%、好ましくは75~99% w/wの範囲、最も好ましくは80~95% w/wの範囲のリグニンを含むリグニン生成物が提供される。一実施形態ではリグニンリッチ生成物が50~80w/w%リグニンなどの45~85w/w%リグニン、例えば60~70などの55~75の範囲、好ましくは55~65w/w%リグニンおよびより好ましくは60w/w%リグニンを含む。リグニン含量は本文脈において、セクションiiに記載される方法を使用して測定される。
【0159】
III.iv ワックス製品
本発明の第4の態様では長鎖遊離脂肪酸、長鎖脂肪アルコール、長鎖脂肪アルデヒド、アルカン、ベータジケトン、脂肪酸およびアルコールの長鎖モノセター、ステロールのブレンドを含むワックス製品が提供される。ワックス生成物は50~65℃の間の軟化(「落下」)点を示し、完全に溶融し、70℃を超えると液体である。
【0160】
IV.本発明により得られる製品の潜在的使用
本発明の製品はセルロース、ヘミセルロース、リグニン、および潜在的にワックスを含み、それぞれが多くの潜在的使用を有する。
【0161】
IV.i セルロース製品の使用
一態様では本発明が汚染がないか、または非常に少ない、高品質のセルロースパルプ製品を提供する。一実施形態では本発明がセルロース繊維製品を製造するための従来の木材パルプ化方法の代替を提供する。
【0162】
本発明のセルロースパルプ繊維製品がパルプ成形材料、例えば、卵箱、果物および他の食品のための包装、電気「ホワイトグッズ」のための包装からなる群から選択される包装材料;または使い捨て医療製品(例えば、病院で使用するための嘔吐物トレーおよび使い捨て尿瓶)、使い捨てベッドパン;またはセルロース繊維を必要とする他の紙型製品にも使用され得る。セルロース繊維製品の繊維長はその最適な使用を決定することができ、例えば、より長い繊維は屈曲可能な卵ボックスに好ましく、一方、繊維長は他の屈曲不可能な包装材料にはあまり関心がない。本発明によって得られるセルロース繊維製品の純度が他の製品、例えば建築材料、玩具、化粧品、栄養素などへの適用に有用であり得る。
【0163】
本発明のセルロースパルプ繊維製品は選択された製品に成形されるように、直接使用されてもよく、またはセルロース繊維製品は他の成分と混合されてもよい。セルロースパルプ製品のセルロース繊維が>0.65、好ましくは>0.7mmなどの長さ加重平均繊維長lc(l)>0.6mmを有する一実施形態ではセルロースパルプ繊維製品が従来の木材パルプと混合され、本発明によって提供される繊維製品は最終混合製品中のセルロースの総量の少なくとも10、20、25、30、または40%、さらには45%を構成する。
【0164】
さらなる実施形態において、セルロースパルプ繊維は新聞用紙を製造するために使用される伝統的な木材パルプの好ましい代替物であり得、なぜなら、木材中に元々存在するリグニン含有量は新聞用紙の経年による黄変の原因であり、したがって、高品質の漂白紙を製造することができる前に、リグニンをパルプから除去しなければならないからである。
【0165】
IV.ii ヘミセルロース製品の使用
第2の態様において、本発明は糖モノマーならびに短いおよび長いオリゴ糖、ならびに潜在的にいくつかの残りのより大きなヘミセルロースポリマー化合物を含むヘミセルロース製品を提供する。一実施形態ではヘミセルロースに由来する単量体が微生物によって発酵させて、目的の燃料または他の製品にすることができる。いくつかの微生物はキシロースおよび/またはアラビノースを自然に代謝するが、他の微生物は基質としてこのような糖を利用するように遺伝的に改変されており、キシロースおよび/またはアラビノースから出発する潜在的な微生物由来産物のリストに添加されている。好ましい実施形態において、ヘミセルロースおよび/またはオリゴ糖は食品および/または飼料添加物(例えば、プレバイオティック飼料成分)として利用され得る高価値産物とみなされる。オリゴ糖は腸内フローラを調節し、異なる消化管活性および脂質代謝に影響し、免疫を増強し、および/または糖尿病、肥満および心血管リスクを低下させるために使用され得る。別の好ましい実施形態において、多糖は親水コロイド増粘剤、接着剤の成分として、またはオリゴ糖と同様の食品および/または飼料添加物として使用され得る。
【0166】
IV.iii リグニン製品の使用
第3の態様において、本発明は多くの潜在的使用を有するリグニン製品を提供する。好ましい実施形態ではアスファルト中のビチューメンを代替するために使用することができ、これは従来、粘着性、黒色、および高粘性の液体または半固体形態の石油として誘導される。これは潜在的に巨大な市場であり、アスファルトの主な用途(70%)はアスファルトコンクリートを作り出すために凝集粒子と混合された接着剤またはバインダーとして道路建設にある。その他の主な用途が屋根用フェルトの製造や平坦な屋根のシールなど、歴青防水製品に使用されている。別の実施形態では高品質リグニン生成物がフェノールアルデヒドおよびフェノール酸などのフェノール化合物の供給源など、化学工業用の将来の再生可能な芳香族資源になる可能性を示す。さらに別の実施形態ではリグニン生成物が抗酸化化合物を生成するための酸化防止剤または供給原料と考えることができる。さらに別の実施形態ではリグニン生成物が大型船舶用の海上ディーゼルでの使用などのための燃焼生成物と考えることができる。好ましい実施形態ではリグニンを接着剤として使用することができる。より具体的にはリグニンのフェノール性質がPF(フェノールホルムアルデヒド)樹脂中のフェノールをリグニン誘導体で置き換えて、例えば、合板、パーティクルボードおよび他の類似の種類の複合材に適した木材複合材接着剤を配合し、化石燃料からの石油化学非再生可能材料に基づく現在の合成PF樹脂を置き換える傾向がある。リグニンの化学構造がその反応性を制限するため、メチロール化(ヒドロキシメチル化)、フェノール化、脱メチル化、および縮小などの修飾を導入して、より良好な接着剤生成物を得ることができる。しかしながら、穏やかな処理(例えば、本発明の方法)に由来するリグニンは例えば、木材パルプ化に由来するリグニンと比較して「失活」が少なく、それにより潜在的により有用であり、より反応性が高い。
【0167】
IV.iv ワックス製品の使用
第4の態様では本発明が高価値の植物ワックス製品を提供する。一実施形態ではワックス生成物が石油化学産業から来るワックスの天然および「グリーン」代替物として使用することができる。さらなる好ましい実施形態ではワックス製品が化粧品、医療用添加剤、潤滑剤、研磨剤、表面コーティング、インク、塗料、衣類など、およびロウソク灯を含む多くの用途において、鉱油ベースのワックス、または蜜蝋、カルナウバワックスなどの他の天然ワックスの代わりに使用することができる。
【実施例】
【0168】
実施例1:脱蝋材料の提供
小麦わらは、以下のように乾燥機械処理された:最初に、わらをハンマー粉砕し、8mm篩を用いて分別した。次に、篩を通過した分率を、微粉材料を除去するためにダストセパレーターで処理した(わら塊の15~20%を微粉材料として除去した)。次いで、微粉を除去した後に生成したより長い分率を、穏やかなディスクミリング(ディスクミル中の1mmプレートギャップ)によってダストをさらに洗浄し、0.3mmの篩を使用してさらなる約5%のダスト分率を除去した。より長い分率はここでは主に長さ2~3mmのわら片であった。
【0169】
このより長い分率を、ジャケット付きスチールタンク中、55℃の水中に、1400リットルの水当たり85キログラムの刻みわら(約75kgのわら乾燥物質に相当する)の負荷で懸濁させた。得られたスラリーのpHをリン酸を用いてpH5.3に調整し、温度を約55℃に維持した。良好な分散を確保するために、スラリーをMyers型分散ミキサーを用いて撹拌した。200mlのプロテアーゼリッチ調製物(Promod 24L、BioCatalysts Ltd、UK)および100mlのペクチナーゼリッチ酵素調製物(Pectinase 974L、BioCatalysts Ltd、UK)を添加して、わらクチクラを破壊し、成分ワックスの放出を助けた。スラリーを、広いミル(>2mm)ヘッドギャップを有するFryma型湿式ミル(歯付きコロイド粉砕ヘッドを取り付けた)を通して循環させ、これはミルが真の粉砕ミルではなく、有効なポンプミキサーとして作用し、わらのクチクラ表面への酵素のアクセスを確実にするのを助けることを意味する。湿式粉砕および撹拌は上記で特定されたpHおよび温度プロフィールを維持しながら、酵素処理の間に適用された。1時間後、スラリーの温度を80℃に上げて、全ての蝋質構成部品が溶融状態にあることを確実にした。混合物をさらに10分間撹拌した。以下のように機械的に乾燥処理した。次いで、5500rpmのバレル速度で、毎時1800リットルのスラリーの供給速度で運転するGEA UCD 2015 2相デカンターを使用して、デカンター遠心分離によって、不溶性繊維画分を嵩プロセス液から分離した。この生成物は脱蝋材料と呼ばれる。
【0170】
実施例2:セルロース繊維の製造
本発明の目的は本発明のセルロース生成物の繊維長を制御することである。以下の実施例から明らかなように、精製の程度は精製の長さだけでなく、精製がリグノセルロース系バイオマスをセルロース繊維製品に加工する複数の工程の一部として行われる場合にも、セルロース繊維長に有意に影響することが確認された。試験した種々の条件を以下に特定し、一方、得られた種々のサンプルの繊維長を第2.8節の表1に報告する。
【0171】
2.1 酵素処理および漂白段階における精製(ウェットミル)
サンプル1は、以下のステップに記載されるように調製した:
1.脱蝋わらは、実施例1に記載したように提供した。
2.60kgの脱蝋わらを、機械的撹拌機を取り付けたジャケット付きタンク中で20:1(水対わら)の割合で水中に懸濁させた。温度を55℃にし、リン酸を用いてpHをpH5.3に調整した。300gのキシラナーゼリッチ酵素調製物(Depol 333P、BioCatalysts Ltd、UK)および100mlのフェルラ酸エステラーゼリッチ酵素調製物(Depol 740L、BioCatalysts Ltd、UK)を添加した。酵素的加水分解を、上記で特定したpHおよび温度プロフィールを維持しながら、機械的撹拌しながら2時間行った。フライマ(Fryma)タイプの歯付きコロイド湿式ミル(wet-mill)を介してヘッドギャップを1.5mmに設定して循環させることにより、酵素加水分解の間、わらを連続的に精製した。
3.加水分解は、NaOHの添加によりpHを10.5に上昇させ、温度を80℃に上昇させることにより停止させた。撹拌をさらに15分間続けた。
4.不溶性繊維を、GEA UCD 205二相デカンタを用いてデカンタ遠心分離することによって水性液相から分離し、5500rpmの速度で1800リットルスラリー/時間を走らせた。ヘミセルロースおよびリグニンを回収するための潜在的な下流処理のために、水性液相を除去した。残りの繊維状固形物は乾物含量23%で回収された。
5.繊維状固体をジャケット付きタンク中の水(20:1)中に再懸濁し、pHを10.5に調整し(NaOHを用いて)、温度を80℃に上げ、機械的に撹拌した。過酸化水素(H202、水中30%、VWR、デンマーク)を添加して漂白を開始した。
6.繊維材料を漂白し、必要に応じてH202を撹拌しながら、180分間(T1=0分、T2= 180分)、温度およびpHを維持しながら同時に精製した。繊維質量40kg当たり30% H202を最初に5リットル添加する。漂白期間中に合計10リットルのH202を添加した。漂白中、pHが低下するのが観察されたので、NaOH(アルカリ)を定期的に添加してpHを10.5に戻した。わらは漂白中に、1~1.5mmに設定されたヘッドギャップを有するFrymaタイプの歯付きコロイド湿式ミルを通した循環によって湿式粉砕によって精製された。
7.180分後、漂白された繊維スラリーのpHをオルトリン酸の添加によりpH7.5に急速に調整した。
8.次いで、漂白されたセルロース繊維を、5500rpmの速度で毎時1800リットルのスラリーを流しながら、GEA UCD 205 2相デカンターを使用して遠心デカントすることによって、嵩水溶液漂白液から分離した
【0172】
サンプル2:脱蝋わらは同時漂白精製(ステップ6)を120分(Tl=0min、T2 = 120min)行った以外はサンプル1について上記のように処理した。
【0173】
2.2 漂白段階のみの精製(湿式ミル)
サンプル3:脱蝋したわらを、酵素処理(ステップ2)の間に湿式ミル精製を行わなかったことを除いて、サンプル1について上述したように処理した。2時間の酵素処理の間、混合物を単に撹拌し、湿式ミルで処理しなかった。
【0174】
2.3 漂白段階中の短い「臨界」期間のみの精製(湿式ミル)
サンプル4A:漂白段階(ステップ6)における湿式ミル精製が漂白を通して全て行われるのではなく、むしろ漂白中に短い臨界時間だけ行われたことを除いて、脱蝋わらをサンプル3について上述したように処理した。より具体的には95分の漂白(T1=95分)(漂白剤H202が最初にステップ5で添加された時間から計算された時間)の後、混合物を湿式ミル処理することによって、より具体的には1~1.5mmに設定されたヘッドギャップを有するフリマ型歯付きコロイド湿式ミルを通る繊維スラリーの循環によって、精製を開始した。湿式粉砕精製を20分間(T2=20分)実施し、その間に全タンク容積が少なくとも1回リファイナーを通過した。さらに、20分後、撹拌および漂白をさらに45分間継続した(T3=45分)。次いで、漂白された繊維状スラリーのpHを、オルトリン酸の添加によってpH 7.5に急速に調整し、続いて繊維を分離および洗浄した(ステップ7以降に記載されるように)。サンプル4Aに適用されるプロセスステップは、
図2に示されている。
【0175】
サンプル4B:T1=80分以外はサンプル4Aと同じ。
【0176】
サンプル4C:T1=70分以外はサンプル4Aと同じ。
【0177】
サンプル5A:脱蝋わらを、20分間の湿式ミル精製(T2=20分)(115分間の合計漂白時間)の後、リン酸を使用してスラリーpHを直ちに7.5に低下させ(T3=0分)、GEA UCD 205 2相デカンターを使用してデカントすることによって繊維を単離したことを除いて、サンプル4Aについて上述したように処理した。分離された繊維の平均繊維長のその後のモニタリングは、最適でない値を示した。
【0178】
サンプル5B:サンプル5Aの繊維を80℃で400リットルの水に再懸濁し、pHを再び10.5(NaOHを使用)に上昇させ、さらに2LのH202をタンクに添加した。混合物を、これらの条件下でさらに45分間(T3=45分)機械的に撹拌し、その後、リン酸を使用してpHを7.5に低下させ(合計漂白時間160分)、遠心デカンテーションによって繊維を水性液から再び分離した。
【0179】
サンプル6Aおよび6B:脱蝋わらを、20分間の湿式粉砕精製(T2=20分)の後、サンプルを分割し、サンプル6Aについては漂白を45分間継続し(T3=45分)、一方サンプル6Bについては漂白を120分間継続した(T3=120分)ことを除いて、サンプル4Aについて上述したように処理した。
【0180】
2.4 酵素処理中の精製(湿式粉砕)および漂白段階中の短い「臨界」期間
サンプル7:漂白段階(ステップ6)における湿式ミル精製が漂白を通して全て行われるのではなく、むしろサンプル4Aに記載されているように漂白中に短い臨界時間だけ行われたが、T1=115分、T2=20分(1パス)、およびT3=45分を有することを除いて、脱ロウわらをサンプル1について上述したように処理した。
【0181】
2.5 酵素処理および漂白段階の間の精製(ディスク大気リファイナー)
サンプル8(WO2018/086672A1に匹敵する方法)を、湿式ミル精製の代わりにパイロットスケールのディスク大気リファイナーを使用したことを除いて、サンプル1と同様に調製した。以下のステップを行った:
1.脱蝋わらは、実施例1に記載したように提供した。
2.4.5kgの脱蝋わらを、機械的撹拌機を取り付けた120 Lジャケット付きタンク中で、20: 1(水対わら)の割合で水中に懸濁した。温度を55℃にし、リン酸を用いてpHをpH 5.3に調整した。キシラナーゼに富む酵素調製物(Depol 333P、BioCatalysts Ltd、UK製)およびフェルラ酸エステラーゼに富む酵素調製物(Depol 740L、BioCatalysts Ltd、UK製)を、5kgの脱蝋わら投入量あたり20gの投与量で添加した。酵素的加水分解を、上記で特定したpHおよび温度プロフィールを維持しながら、機械的撹拌しながら2時間行った。プレートギャップを15,000分の1インチに設定して、Sprout Waldronモデル105-Aパイロットスケール単一回転ディスク大気圧リファイナーを通過させることによって、酵素加水分解の間にわらを3回精製した。
3.加水分解は、NaOHの添加によりpHを10.5に上昇させ、温度を80℃に上昇させることにより停止させた。撹拌をさらに10分間続けた。
4.不溶性繊維を、GEA UCD 205 2相デカンタを使用して、デカンタ遠心分離によって水性液相から分離した。この特定の試行において、水性液相を除去し、廃棄した。残りの繊維状固形物は乾物含量23%で回収された。
5.繊維状固体をジャケット付きタンク中の水(20:1/5%濃度)中に再懸濁し、pHを10.5に調整し(NaOHを用いて)、温度を80℃に上昇させながら機械的に撹拌した。ブリーチを開始するために、過水(H2O2)が追加された。
6.繊維物質を、必要に応じてH2O2を添加しながら、撹拌しながら180分間(Tl=0min、T2=180min)、温度およびpHを維持しながら漂白した。30%H2O2の0.5リットルは、最初はファイバマスの4kgチャージごとに追加される。ブリーチング期間中に、全部で1.1リットルのH2O2が追加された。漂白中、pHが低下するのが観察されたので、NaOH(アルカリ)を定期的に添加してpHを10.5に戻した。わらはSprout Waldronモデル105-Aパイロットスケールの単一回転円板大気リファイナーを通し、12インチのプレートを用いて15,000分の1インチにプレートギャップを設定し、36分間隔で4通過を用いることにより、漂白プロセス中に4回精製された。
7.180分後、漂白された繊維スラリーのpHを、オルトリン酸(T3=0分)の添加によってpH 7.5に急速に調整した。
8.次いで、GEA UCD 205 2相デカンタを使用して、遠心デカントによって、漂白セルロース繊維を嵩水溶液漂白液から分離した。
9.漂白された繊維は最終的に、新鮮な水ですすぐことによって洗浄され、次いで、100ミクロンメッシュの篩上で手動で「圧搾乾燥」された。
【0182】
2.6 漂白段階中の短い「臨界」期間のみの精製(ディスク大気圧リファイナー)
サンプル9は、湿式ミル精製の代わりにパイロットスケールのディスク大気リファイナーを使用したことを除いて、サンプル4Aと同様に調製した。以下のステップを行った:
1.脱蝋わらは、実施例1に記載したように提供した。
2.脱蝋わらをサンプル4A(キシラナーゼおよびフェルラ酸エステラーゼ処理、続いてpH増大による加水分解の停止;次いで、デカンタ遠心分離による液体からの不溶性繊維の分離)と同様に酵素的に処理した。
3.次に、3.6kgの繊維状固体(乾物ベース)を、約4%のコンシステンシーまで、80℃の温度で、(NaOHの添加により)pHを10.5に調整しながら、メカニカルスターラーを取り付けた120 Lジャケット付き温度制御タンク中の水中に再懸濁した。
4.ブリーチングは30%H2O2の500ミスの添加によって開始され、材料は槽内で機械的に撹拌されるだけで95分間(Tl=95分)、期間Tlの間0.1Lアリコート中のさらなる0.5L30%H2O2の添加によって開始された。pHはNaOHの周期的添加によって10.5に維持された。
5.95分で、スラリー/懸濁液をSprout Waldronモデル105-Aパイロットスケールの単一回転ディスク大気リファイナーに1回通過させた(T2=l通過)プレートギャップは12インチのプレートを用いて15,000分の1インチ(サーカ350~400ミクロン)に設定した。
6.次いで、精製した材料をタンクに戻し、80℃およびpH10.5でさらに40分間(T3=40分)撹拌し、その後、pHを(リン酸を使用して)7.5に急速に低下させた。
7.次いで、GEA UCD 205 2相デカンタを使用する遠心デカントによって、漂白された不溶性セルロース繊維を嵩水溶液漂白液から分離した。
【0183】
2.7 脱蝋されていないわらからのセルロース繊維
サンプル10:脱蝋されていないわらをサンプル4Aについて上述したように処理した-すなわち、60kgのハンマー粉砕わら(事前脱ロウなし)を水中に懸濁させ、サンプル4Aについて説明したように以下のプロセス工程を実施した。サンプル10の得られた長さ加重平均繊維長Lc(l)は0.404mmであった。
【0184】
2.8 従来のアルカリパルプ化および漂白からのセルロース繊維
サンプル11:従来のパルプ化および漂白を、以下のように小麦わら(非脱蝋)で行った:わらをハンマーミル粉砕した。ハンマー粉砕わらを4%のコンシステンシー(乾物ベース)で水に導入し、これに3M NaOHをpH13に添加した(3リットルの全パルプ化液中の繊維120g)。スラリーを100℃で90分間撹拌した。過剰の液体を排出し、乾燥物質12%の湿った繊維塊を残した。次いで、繊維状塊を80℃で2リットルのアルカリ性(pH10.5)水に添加し、過酸化水素(水中35%溶液)の添加を介して90分間撹拌しながら漂白し、3M NaOH溶液を段階的に投与することによってpHを10.5に維持した。次いで、実験室湿式ミルに1回通し、次いでさらに45分間撹拌しながらさらに漂白した。リン酸の添加によりpHを急速に7.5に低下させた。繊維長は、Valmet Fibre分析装置を用いて測定した。長さ加重平均繊維長Lc(l)は0.422mmであった。
サンプル12:従来のパルプ化および漂白はサンプル11について記載されたように行われたが、例1に記載されたように提供された脱蝋わら上で行われた。得られた長さ加重平均繊維長Lc(l)は0.501mmであった。
【0185】
2.8 結果:繊維長
繊維処理は繊維長についての「Lc(l)」および「Lc(w)」パラメーター、より具体的には、パルプサンプル内の平均繊維長をそれぞれ加重した長さおよび加重した重量を使用することによってモニターした(セクションIIに記載されるように、標準的な繊維分析計器Valmet画像分析基礎を使用して測定および決定した)。異なるサンプル1~10の繊維長を表1に示す。ここで、サンプル4A、4B、4C、5A、5B、6A、及び9は実施例であり、サンプル1~3、6B、7、8、及び10は、比較例である。
【0186】
【0187】
本発明の目的は好ましくは少なくともLc(1)0.65mmの繊維のような長い繊維を提供することであり、このような長い繊維は、折り曲げ可能である必要がある卵トレイまたは他の包装材料(標準的な卵ボックスの開閉のよう)の製造に特に適している。
【0188】
ウェットミル精製はもともと、脱蝋わらのヘミセルラーゼ処理の間に、また漂白の間中実施された(サンプル1および2)。しかしながら、湿式ミル精製が酵素相および漂白段階を通して実施されるシナリオでは、約0.4mmのみのlc(l)値が繊維製品に共通である(表1参照)。湿式ミル精製が漂白段階のみに限定される場合(サンプル3)、繊維長lc(l)は約0.5mmに増加する(表1参照)。しかしながら、湿式ミル精製が漂白の臨界段階でのみ実施される場合、限られた時間(サンプル4)、少なくとも0.6mm、0.8mmまでのlc(l)値が日常的に達成される(表1参照)。
【0189】
精製前の漂白期間(Tl)は、長い繊維を得るために有益である。T1が60分未満である場合(データは示さず)、得られる繊維(T2=1パス、T3= 95分)は、自動繊維分析装置で測定するには粗すぎる。一方、T1=60~95分では、繊維長はT1が増加することにつれて増加する(サンプル4A、4B、および4C)。
【0190】
限られた時間の湿式ミル精製工程後の「熟成期間」(T3)にわたる連続撹拌漂白は長繊維を得るために有益であることがさらに実証され(サンプル5Aおよび5B)、一方、長すぎる連続漂白は長繊維を提供するためには好ましくないことが見出された(サンプル6Aおよび6B)。さらに、漂白中の臨界段階での精製から得られる長繊維(サンプル4A、5B、6A)は、ヘミセルラーゼ処理中にも精製が行われた場合(サンプル7)には生成されないことが示された。
【0191】
(脱蝋されていないわらを使用することと比較して)本発明の方法のために脱ロ蝋トローを提供することの驚くべき重要性が実証された。本発明の方法工程による非脱蝋わらの処理は、約0.4mmのlc(l)値のみを与える(サンプル10)。
【0192】
また、パイロットスケールをディスクリファイニングすることにより、脱蝋わらから長繊維を製造できることも実証された。湿式ミル精製の結果と同様に、パイロットスケールでディスク精製を使用する場合、漂白中に短時間(1パス)のみ精製することが重要であることが示された(サンプル9)。一方、酵素処理および漂白工程(サンプル8)の間の精製は、漂白の間の短い臨界期間のみの精製(サンプル9)と比較して、Lc(l)値を臨界的に減少させる。
【0193】
これらの結果に基づいて、束が脆くなく、むしろ可撓性であり、漂白段階の間の設定時間(T1)後のような、リグニンを被覆しない段階で、わら繊維「束」を最終「繊維」に精製することが非常に重要であると推測される。この時点で、所望のより長い漂白わら繊維を得るために、漂白プロセスのこの臨界点で、リファイナーディスクまたは湿式粉砕ヘッドを通る繊維の単一または最大2回の通過と同等の限られた精製プロセス(T2)を実施することが有利である。
【0194】
2.9 結果:セルロース繊維製品の組成
サンプル4の組成を分析して、セクションIIに記載されるように、セルロース、リグニン、およびヘミセルロース含量を決定した。以下の値が得られた(表2):
【0195】
【0196】
実施例3:セルロース繊維手すき紙:折り曲げ耐久性
セルロース繊維製品(実施例2で製造した)を標準的な手すき紙にした:標準的な手すき紙を、選択した試験パルプ60gを使用して手すき紙形成装置で製造した。折り曲げ耐久性はSchopperタイプ折り曲げ耐久性試験装置を用いて測定した:手すき紙から切り取った幅1.5cmの紙片を0.5kgの表面張力下に置き、試験装置を用いて右側135”および左側135”に折り曲げ、破損を引き起こすのに必要な折り曲げ数を表3に「折り曲げ耐久性」と呼ぶ。
【0197】
より長い繊維(lc(l)平均値>0.7mm)は、より短い繊維と比較して、より大きな折り曲げ耐久性を明らかに示した。このような改善された折り曲げ耐久性は例えば、ワンピースで作られた蓋を有する卵箱のような曲げ可能な包装材料において有利である。
【0198】
【0199】
本発明の実施形態
1.リグノセルロース系バイオマスから所望の長さのセルロース繊維を単離し、調製する方法であって、前記方法は以下を含んでおり、
(i)脱蝋リグノセルロース材料を水性懸濁液中に準備すること、
(ii)工程(i)で溶液のpHをアルカリ性条件に調整し、溶液の温度を上昇させること、
(iii)工程(ii)で得られた材料を、固体セルロース繊維画分とヘミセルロースおよびリグニン成分を含む液体画分とに分離すること、
(iv)工程(iii)で得られた前記セルロース繊維画分を水性液体中に懸濁し、温度を65~95℃およびpHを9~11.5に調整し、漂白剤を添加し、前記セルロース繊維画分を懸濁液中に時間T1の間保持すること、
(v)時間T1の後に工程(iv)で得られた漂白された材料を時間T2の間湿式機械処理にかけること、
(vi)工程(v)で得られた材料を漂白されたものに分離することによってセルロース繊維製品を得ること、及び
(vii)選択的に、漂白-精製された固体セルロース繊維画分を水性液体中で洗浄すること、
ここで、前記脱ロウリグノセルロース材料は前記リグノセルロースバイオマスを乾式機械処理および酵素処理を含む前処理に供することによって得られ、
ここで、T1およびT2は繊維長とT1およびT2との間の相関に基づいて所望の長さのセルロース繊維を得るように選択される。
【0200】
2.請求項1に記載の方法であって、前記方法はステップ(v)の後かつステップ(iv)の前に、追加のステップ(v’)を含み、前記追加のステップ(v’)は、
(v’)湿潤機械処理なしで、温度65~95℃およびpH9~11.5で、時間T3の間、漂白を継続することを含み、T3は、繊維長とT1、T2およびT3との間の相関に基づいて選択される。
本開示は更に以下の態様を含んでいる:
《態様1》
所望の長さ加重平均繊維長lc(l)のセルロース繊維を穀物わらから単離し、調製する方法であって、前記方法は、
(i)脱蝋した穀物わらを水性懸濁液中に提供すること、
(ii)工程(i)における溶液のpHを9~11.5に調整し、前記溶液の温度を65~95℃に上昇させて、工程(i)における前記溶液中のヘミセルロースおよびリグニン成分を可溶化すること、
(iii)工程(ii)で得られた材料を、固形セルロース繊維画分と、可溶化されたヘミセルロース及びリグニン成分を含む液体画分とに分離すること、
(iv)工程(iii)で得られた前記セルロース繊維画分を水性液体中に懸濁し、温度を65~95℃及びpHを9~11.5に調整し、漂白剤を添加し、前記セルロース繊維画分を懸濁液中に60~180分(Tl)間保持すること、
(v)工程(iv)で得られた漂白された材料を、湿潤機械精製処理にかけること、
(vi)工程(v)で得られた材料を漂白精製された固形セルロース繊維画分および水性漂白液画分に分離して、セルロース繊維製品を得ること、ならびに
(vii)任意により、漂白精製された前記セルロース繊維画分を水性液体中で洗浄すること、
を含み、
ここで、
前記セルロース繊維の長さ加重繊維長lc(l)は>0.6mmであり、かつ
前記水性懸濁液中の前記脱蝋した穀物わらは、前記穀物わらを、クチクラワックスの一部を除去するための乾式機械処理、および前記穀物わらから残余のクチクラワックスを除去するための、水性懸濁液における酵素処理を含む前処理に供することによって得られる。
《態様2》 前記方法は、前記工程(v)の後かつ、前記工程(vi)の前に、追加の工程(v’)を含み、前記追加の工程(v’)は、
(v’)湿潤機械的処理を行わずに、温度65~95℃およびpH9~11.5で20~90分間(T3)漂白を継続すること、
を含む、態様1に記載の方法。
《態様3》
前記酵素前処理が、
a)ヘミセルロース、リグニンおよび蝋からセルロースを遊離させるための、プロテアーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、およびリグニナーゼのリストから選択される2つ以上の異なる酵素を使用する、乾燥機械処理された穀物わらの酵素処理;
b)水性懸濁液中の脱蝋固体リグノセルロース材料を提供するための、遊離された蝋の除去;
を含む、態様1又は2に記載の方法。
《態様4》
前記酵素前処理が、
a)プロテアーゼおよび/またはペクチナーゼを含む水性懸濁液中の乾燥機械処理された穀物わらの、蝋を遊離させるための第1の酵素処理;
b)遊離蝋の除去;および
c)水性懸濁液中の脱蝋リグノセルロース材料を提供するために、ヘミセルロースおよびリグニンからセルロースを遊離させるための、プロテアーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、およびリグニナーゼの群から選択される1つ以上の酵素を使用して、蝋を除去した後の穀物わらの第2の酵素処理、
を含む、態様1~3のいずれか一つに記載の方法。
《態様5》
ヘミセルラーゼ酵素がキシラナーゼおよびフェルラ酸エステラーゼから選択される、態様3又は4に記載の方法。
《態様6》
工程(v)の湿潤機械精製処理が、大気圧で操作されるリファイナーを使用して行われる、態様1~5のいずれか一つに記載の方法。
《態様7》
工程(v)における湿潤機械精製処理が、リファイナーまたはミルを用いて行われる、態様1~6のいずれか一つに記載の方法。
《態様8》
精製処理が12インチプレートを使用し、プレートギャップを15,000分の1インチ(約350~400ミクロン)に設定し、3000~5000リットルサンプル/時で処理する、単一の回転ディスク大気圧リファイナーを1~2回通過(T2)することに等しい、態様7に記載の方法。
《態様9》
T1が60~120分である、態様1~8のいずれか一項に記載の方法。
《態様10》
T3が25~60分である、態様1~9のいずれか一つに記載の方法。
《態様11》
工程(iv)で添加される漂白剤が、過酸化水素、塩素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、過炭酸ナトリウム、活性酸素、オゾン、またはそれらの混合物の群から選択される、態様1~10のいずれか一つに記載の方法。
《態様12》
乾式機械前処理から得られた材料が、酵素前処理の前にサイズに従って分画される、態様1~11のいずれか一つに記載の方法。
《態様13》
酵素前処理が湿潤機械処理を含む、態様1~12のいずれか一つに記載の方法。
《態様14》
酵素前処理が、第1の酵素処理の間の湿潤機械処理を含む、態様4~13のいずれか一つに記載の方法。
《態様15》
穀物わらの前記前処理が、
a)穀物わらを提供すること、
b)前記穀物わらに乾燥機械処理を施すこと、
c)工程(b)で得られた材料をふるい分け処理にかけ、少なくとも2つの画分を得、ここで、第1の画分がふるいメッシュを通過し、第2の画分がふるいメッシュによって保持されること、
d)工程(c)で得られた前記第2の画分を、1つまたは複数のプロテアーゼおよび/またはペクチナーゼ酵素と共に水性液体中に懸濁すること、
e)工程(d)で得られた混合物を湿潤機械処理にかけること、
f)溶液から蝋を除去すること、
g)工程(f)で得られた残りの脱蝋材料を1つまたは複数のヘミセルラーゼ酵素を使用して酵素処理すること、
を含む、態様1~14のいずれか一つに記載の方法。
《態様16》
セルロースパルプ製品のセルロース繊維が、>0.61、>0.62、>0.63、>0.64、>0.65、>0.66、>0.67、>0.68、>0.69、または>0.7mmの長さ加重平均繊維長lc(l)を有する、態様1~15のいずれか一つに記載の方法によって得られるセルロースパルプ製品。
《態様117》
前記セルロース繊維が、製品中のセルロース繊維の総量の少なくとも25%、例えば少なくとも35または45%を構成する、態様16に記載のセルロース繊維を含む製品。
《態様18》
前記製品中の前記セルロース繊維が、製品中のセルロースの総量の少なくとも25%、例えば少なくとも35または45%を構成する、例えば建築材料または包装材料に使用するための固体製品の調製における態様16に記載のセルロース繊維の使用。