(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】MEMS共振器
(51)【国際特許分類】
H03H 9/24 20060101AFI20240716BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H03H9/24 Z
B81B3/00
(21)【出願番号】P 2021559716
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 FI2020050236
(87)【国際公開番号】W WO2020208308
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-01-24
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】520071814
【氏名又は名称】キョーセラ テクノロジーズ オーユー
【住所又は居所原語表記】Tietotie 3 02150 Espoo Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ヤーッコラ アンッティ
(72)【発明者】
【氏名】コッピネン パヌ
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-023337(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139396(WO,A1)
【文献】特開2006-005758(JP,A)
【文献】特開平04-242310(JP,A)
【文献】特表2017-536012(JP,A)
【文献】特開2011-135140(JP,A)
【文献】特開2012-105044(JP,A)
【文献】特表2021-513243(JP,A)
【文献】特表2021-513774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/24
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMS共振器であって、
あるジオメトリーを有する複数の梁要素及び
複数の接続要素を備える共振器構造であって、前記複数の梁要素は互いに隣接して位置し、隣接する梁要素は互いに前記
複数の接続要素
のいずれか2つ以上によって機械的に結合している、共振器構造を有し、
前記
複数の梁要素又は前記
複数の接続要素の前記ジオメトリーは前記共振器構造の中で
互いに異なる、
共振器。
【請求項2】
前記共振器は積層共振器であり、前記複数の梁要素は矩形配列構造の中に位置し、前記共振器構造は圧電レイヤの上に実装された上部電極を有する、請求項1に記載の共振器。
【請求項3】
ある梁要素が他の梁要素と幅の点で異なる、請求項1又は2に記載の共振器。
【請求項4】
ある梁要素が他の梁要素と形の点で異なる、請求項1から3のいずれかに記載の共振器。
【請求項5】
前記複数の梁要素における隣接する梁要素の間の傾きがそれぞれ異なる、請求項1から4のいずれかに記載の共振器。
【請求項6】
前記複数の梁要素において、ある梁要素
の質量中心の位置は、隣接する梁要素
の質量中心の位置に対して、前記共振器構造中の長手方向
に垂直な方向にずれている、請求項1から5のいずれかに記載の共振器。
【請求項7】
ある接続要素が他の接続要素と形の点で異なる、請求項1から6のいずれかに記載の共振器。
【請求項8】
ある接続要素が他の接続要素と、共振器のエッジからの距離の点で異なる、請求項1から7のいずれかに記載の共振器。
【請求項9】
少なくとも一つの梁要素の幅は他の梁要素の幅と異なり、隣接する梁要素を接続する接続要素の少なくとも一つは、該隣接する梁要素のいずれかの最端部から離れて位置している、請求項1から8のいずれかに記載の共振器。
【請求項10】
最も外側の梁要素の幅はその隣の梁要素の幅よりも小さい、請求項1から9のいずれかに記載の共振器。
【請求項11】
前記共振器はトレンチを有し、該トレンチは、共振器のエッジから共振器構造の内部へと、前記接続要素の一つのエッジに達するまで延伸する、請求項1から10のいずれかに記載の共振器。
【請求項12】
互いに隣接するn個の梁要素を有し、
1番目の梁要素及びn番目の梁要素は他の梁要素とは異なる幅を有し、
1番目の梁要素と2番目の梁要素との間の接続要素及びn-1番の梁要素とn番目の梁要素との間の接続要素は、これらの梁要素の最端部からある距離だけ離れて位置している、
請求項1から11のいずれかに記載の共振器。
【請求項13】
前記梁要素をその周囲要素に固定するアンカリング点を有し、前記共振器の主要な共振モード形状は、前記アンカリング点に節点を有する、請求項1から12のいずれかに記載の共振器。
【請求項14】
前記梁要素は
細長い形状を有し、該細長い形状は、矩形、丸みを帯びた矩形、
楕円形、砂時計型、テーパー型、回転砂時計型、非対称的長細型の
いずれかである、請求項1から13のいずれかに記載の共振器。
【請求項15】
少なくとも1つの接続要素が他の接続要素と形の点で異なる、請求項1から14のいずれかに記載の共振器。
【請求項16】
前記梁要素は、平面内長辺振動型共振モードで動作するように構成される、請求項1から15のいずれかに記載の共振器。
【請求項17】
複数の梁要素及び複数の接続要素を有する前記共振器構造は対称的な構造であり、
前記共振器構造のx軸及び/又はy軸に対して鏡面対称性を有し、ここで前記y軸は前記共振器構造の長手方向の軸であり、前記x軸は前記y軸に垂直な軸であり、前記x軸と前記y軸の交点は前記共振器構造の質量中心にある、請求項1から16のいずれかに記載の共振器。
【請求項18】
前記共振器構造は、少なくとも1つの接続要素が
前記共振器構造のx軸及び/又はy軸に対して非対称的に位置する形の非対称性を有
し、ここで前記y軸は前記共振器構造の長手方向の軸であり、前記x軸は前記y軸に垂直な軸であり、前記x軸と前記y軸の交点は前記共振器構造の質量中心にある、請求項1から
16のいずれかに記載の共振器。
【請求項19】
請求項1から18のいずれかに記載の共振器であって、前記共振器は、半導体材料及び/又はシリコン及び/又は縮退ドープされたシリコンを含み、及び/又は、前記共振器の50%以上の質量は、縮退ドープされたシリコンにより生じ、及び/又は、平均不純物濃度が少なくとも2*10
19cm
-3
又は10
20cm
-3である、ドープされたシリコンの躯体を有する、共振器。
【請求項20】
前記梁要素の長手方向軸は、前記梁要素の結晶方向[100]に揃っているか、または、結晶方向[100]からのずれが25度より小さいか、または、結晶方向[100]からのずれが15度より小さいか、または、結晶方向[100]からのずれが5度より小さいか、または、結晶方向[100]からのずれが2度より小さい、請求項1から19のいずれかに記載の共振器。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかに記載の共振器であって、前記共振器は、該共振器を形成する梁要素のエッジと、該共振器の周囲に強固に取り付けられたシリコンフレームの間にある幅のトレンチを有し、
前記トレンチの前記幅は、
トレンチ幅 = 4μm × (40 MHz/Freq) × (n + 1/2)
との式で与えられ、ここで"Freq"は、前記共振器の周波数であり、nは正の整数である(n = 0, 1, 2, ・・・)、共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、微小電気機械システム(MEMS)共振器(resonator)に関する。
【発明の背景】
【0002】
このセクションは、有用な背景情報を説明するが、ここで説明されている技術が技術水準を示していることを認めている訳ではないことに注意されたい。
【0003】
周波数基準アプリケーション(frequency reference application)に用いられるシリコンMEMS共振器のような、微小電気機械システム(MEMS)共振器にとって、キーとなる性能パラメータは、等価直列抵抗(ESR)である。ESRは共振器のQ値に反比例する。従って、このパラメータを最大化することは、しばしば望ましいことである。アンカリング、すなわち共振器をその周囲の基板に取り付けることは、通常、MEMS共振器のQ値を最大化するために非常に重要である。
【摘要】
【0004】
共鳴モード形状の節点(nodal point)にアンカリングポイントが一致するように共振器を固定することが望ましいことは知られていた。共振器及びそのモード形状(mode shape)の特性が望ましいものである場合、節点は共振器のエッジに存在する。なぜなら、アンカリングは通常、共振器のエッジに接続されたシリコンテザーによって行われるからである。
【0005】
また、エネルギーの損失に繋がり、従って共振器のQ値を減少させる別の要因として、共振器の周囲のガス雰囲気に起因する減衰(damping)があることが知られている。
【0006】
積層梁型共振器(stacked beam resonator)は、平面内に並んで配される複数の共振器梁(resonator beam)を備える。これらの共振器梁はトレンチ(溝)によって互いに隔てられ、接続要素によって互いに接続されている。
【0007】
本発明のある実施形態の目的は、積層梁型共振器のジオメトリーを最適化することである。
【0008】
本発明の第1の例示的態様によれば、次のようなMEMS共振器が提供される。このMEMS共振器は、
あるジオメトリーを有する複数の梁要素及び接続要素を備える共振器構造であって、前記複数の梁要素は互いに隣接して位置し、隣接する梁要素は互いに前記接続要素によって機械的に結合している、共振器構造を有し、
前記梁要素又は前記接続要素の前記ジオメトリーは前記共振器構造の中で変化する。
【0009】
実施形態によっては、前記ジオメトリーは、前記共振器の少なくとも一つの次元パラメータが変わることによって変化する。
【0010】
実施形態によっては、前記梁要素及び/又は前記接続要素の前記ジオメトリーのバリエーションは、共振器外縁部における共振モード形状の1つ又は複数の節点を与えるためである。
【0011】
実施形態によっては、前記1つ又は複数の節点は、前記梁要素を周囲に固定する1つ又は複数のアンカリング点に、一致するか又は近接する。
【0012】
ここで、前記少なくとも1つの次元パラメータは、例えば、前記梁要素又は前記梁要素を互いに機械的に接続する部分の例えば形状、向き、寸法のいずれか1つ以上を定義する、パラメータ又は(少なくとも2つのパラメータを含むパラメータセット)である。
【0013】
積層梁型共振器は、伝統的に基本ジオメトリーを有する。基本ジオメトリーにおいては、複数の梁要素が互いに等しい幅を有し、共振器のエッジに位置する矩形の接続要素によって互いに結合している。本発明の実施形態は、この基本ジオメトリーから逸脱している。
【0014】
実施形態によっては、ある梁要素の幅は別の梁要素の幅とは異なる。各梁要素はそれぞれ幅を有し、実施形態によっては、1つ又は複数の梁要素の幅が、他の梁要素の幅とは異なる。
【0015】
実施形態によっては、ある梁要素の形状は別の梁要素のものとは異なる。各梁要素はそれぞれの形状を有し、実施形態によっては、1つ又は複数の梁要素の形状が、他の梁要素のものとは異なる。
【0016】
実施形態によっては、ある梁要素の傾き角(傾きの向き)は別の梁要素のものとは異なる。そのような実施形態においては、少なくとも2つの隣接する梁要素は、互いに傾いた角度に位置している。
【0017】
実施形態によっては、隣接する梁要素の傾きは、共振器の面内で生じている。これを「面内傾斜(in-plane tilting)」という。
【0018】
実施形態によっては、ある梁要素は、他の梁要素に対して、共振器構造における長手方向位置が異なっている。そのような実施形態に於いては、少なくとも2つの隣接する梁要素の長手方向の位置が互いに異なっている。
【0019】
実施形態によっては、ある接続要素の形状は別の梁要素のものとは異なる。
【0020】
実施形態によっては、1つ又は複数の接続要素は他の接続要素に対して、共振器のエッジからの変位量が異なっている。
【0021】
実施形態によっては、少なくとも1つの梁要素の幅は他の梁要素の幅とは異なり、隣接する梁要素を接続する少なくとも1つの接続要素は、これら隣接する梁要素の最端部からある距離だけ離れて位置している。又は、これら隣接する梁要素の少なくとも一つの最端部からある距離だけ離れて位置している。(当該最端部は接続要素により近い最端部であってもよい。)
【0022】
実施形態によっては、最も外側の梁要素の幅は、すぐ隣の梁要素の幅よりも小さい。
【0023】
実施形態によっては、前記共振器はトレンチを有する。前記トレンチは、共振器のエッジから共振器構造の内部へと、前記接続要素の一つのエッジに達するまで延伸する。
【0024】
実施形態によっては、前記トレンチの形状は直線的である。
【0025】
実施形態によっては、前記共振器は互いに隣接するn個の共振器を有する。1番目の梁要素及びn番目の梁要素は、他の梁要素とは異なる幅を有する。また、1番目の梁要素と2番目の梁要素との間の接続要素及びn-1番の梁要素とn番目の梁要素との間の接続要素は、これらの梁要素の最端部からある距離だけ離れて位置している。
【0026】
実施形態によっては、前記共振器構造は、複数の梁要素及び複数の接続要素によって形成されている。
【0027】
実施形態によっては、前記梁要素は、平面内で、長辺振動型(LE)共振モードで動作するように構成される。
【0028】
実施形態によっては、前記共振器の前記梁要素は、平面内長辺振動型共振モードで動作するように構成される。
【0029】
実施形態によっては、前記梁要素の幅は平均幅又は有効幅である。
【0030】
実施形態によっては、前記複数の梁要素はそれぞれの長さを有する。
【0031】
実施形態によっては、前記長澤平均長又は有効長である。
【0032】
実施形態によっては、前記梁要素は、幅より長さの方が大きい。
【0033】
実施形態によっては、梁要素の幅方向にx軸が、梁要素の長手方向にy軸が、それぞれ向くように座標系が選択される。梁要素は(従って共振器全体は)、y軸方向においてLEモードで振動する。
【0034】
実施形態によっては、梁要素は細長の形状である。すなわち、幅より長さが大きい形状である。このような形状の例には、矩形、丸みを帯びた矩形、丸みを帯びた楕円形、砂時計型、テーパー型、回転砂時計型、非対称的長細型があってもよい。
【0035】
実施形態によっては、1つ又は複数の梁要素の形状(又は外形)は、他の梁要素の形状と異なってもよい。
【0036】
実施形態によっては、少なくとも一つの接続要素は他の接続要素と異なる。
【0037】
実施形態によっては、その違いは形状やサイズ、位置、向きのいずれか1つ以上であってもよい。
【0038】
実施形態によっては、複数の梁要素及び複数の接続要素を有する共振器構造は対称的な構造である。
【0039】
実施形態によっては、前記共振器構造は線対称である。
【0040】
実施形態によっては、前記共振器構造は鏡面対称である。
【0041】
実施形態によっては、鏡面対称は、x軸及び/又はy軸に対して対称であることであってもよい。(軸の方向は本明細書中で別途定義される。)
【0042】
実施形態によっては、x軸とy軸の交点は、共振器構造の質量中心である。
【0043】
実施形態によっては、前記共振器構造は回転対称である。
【0044】
実施形態によっては、前記回転対称は、2回回転対称である。
【0045】
実施形態によっては、前記共振器構造は、少なくとも1つの接続要素が非対称的に位置する形の非対称性を有する。
【0046】
実施形態によっては、共振器の一般的構造は対称的である。しかし当該構造は、例えば接続要素に存在する前述の非対称性のような、それによって対称性を壊すような、特別の詳細を有する。
【0047】
実施形態によっては、前記共振器は半導体材料を含む。
【0048】
実施形態によっては、前記共振器はシリコンを含む。
【0049】
実施形態によっては、前記共振器は縮退ドープされたシリコン(degenerately doped silicon)を含む。
【0050】
実施形態によっては、前記共振器の50%以上の質量は、縮退ドープされたシリコンにより生じる。
【0051】
実施形態によっては、前記共振器は、平均不純物濃度が少なくとも2*1019cm-3であり、例えば1020cm-3である、ドープされたシリコンの躯体を有する。
【0052】
実施形態によっては、前記共振器は、圧電駆動型または静電駆動型である。
【0053】
実施形態によっては、前記梁要素の長手方向軸は、前記梁要素の結晶方向[100]に揃っている。または、結晶方向[100]からのずれが25度より小さい。ある好適な実施形態において、前記梁要素の長手方向軸は、前記梁要素の結晶方向[100]に揃っている。または、結晶方向[100]からのずれが15度より小さい。ある好適な実施形態において、前記梁要素の長手方向軸は、前記梁要素の結晶方向[100]に揃っている。または、結晶方向[100]からのずれが5度より小さい。ある好適な実施形態において、前記梁要素の長手方向軸は、前記梁要素の結晶方向[100]に揃っている。または、結晶方向[100]からのずれが2度より小さい。
【0054】
実施形態によっては、前記MEMS共振器は積層梁型共振器である。
【0055】
実施形態によっては、複数個の前記梁要素が矩形配列構造を呈している。
【0056】
実施形態によっては、前記共振器の主要な共振モード形状は、共振器の周縁部に1つ又は複数の節点を有する。
【0057】
実施形態によっては、前記共振器は前記梁要素をその周囲要素に固定するアンカリング点を有する。前記共振器の主要な共振モード形状は、前記アンカリング点に節点を有する。
【0058】
実施形態によっては、前記共振モードは基本モードを指す。
【0059】
実施形態によっては、前記共振モードはオーバートーンを指す。
【0060】
実施形態によっては、前記梁要素の少なくとも一つの幅、長手方向の位置、向きのいずれかは、別の梁要素の幅、長手方向の位置、向きと異なるか、
【0061】
隣接する梁要素と接続する少なくとも一つの接続要素は、該隣接する梁要素のいずれかの最端部から離れて位置している。
【0062】
実施形態によっては、前記共振器は第1のエッジと反対側のエッジを有する。
【0063】
実施形態によっては、共振器のエッジからの変位(ずれ)はy方向の変位(ずれ)を意味し、関連する接続要素に近い共振器のエッジからの変位(ずれ)を意味する。同様に、ある実施形態において、接続要素が梁要素の最端部からある距離だけ離間しているとは、関連する接続要素に近い梁要素の最端部からy方向に離間していることを意味する。
【0064】
実施形態によっては、隣接する梁要素の質量中心の長手方向の位置は、y方向において異なる。
【0065】
実施形態によっては、梁要素の長手方向の位置とは、y方向の位置を意味する。
【0066】
実施形態によっては、前記共振器は積層共振器であり、前記複数の梁要素は矩形配列構造の中に位置し、前記共振器構造は圧電レイヤの上に実装された上部電極を有する。
【0067】
実施形態によっては、前記共振器は、該共振器を形成する梁要素のエッジと、該共振器の周囲に強固に取り付けられたシリコンフレームの間にある幅のトレンチを有する。前記幅は、トレンチの領域で音響共振を最小限に又は完全に抑えるように選択される。
【0068】
実施形態によっては、前記共振器を形成する梁要素のエッジと、該共振器の周囲に強固に取り付けられたシリコンフレームの間の前記トレンチの前記幅は、
トレンチ幅 = 4μm x (40 MHz/Freq) x (n + 1/2)
との式で与えられる。ここで"Freq"は、前記共振器の周波数であり、nは整数である(n = 0, 1, 2, ・・・)。または、前記トレンチの前記幅は、上記の式で与えられる幅から、最大でも20%しかずれていない。
【0069】
様々な捉え方や実施形態を紹介してきたが、これらは発明の範囲を限定するために提示されたものではない。これらの実施形態や後述の実施形態は、本発明の実施にあたり使用され得る特定の態様やステップを説明するために用いられるにすぎない。いくつかの実施形態は他の実施形態にも適用可能であることが理解されるべきである。紹介する実施形態は適宜組み合わせ可能でありうる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
本発明を、単なる例示を用いて、かつ添付図面を参照して、以下に説明する。
【
図1】ある実施形態に従う微小電気機械システム(MEMS)共振器を示す。
【
図2】
図1に示されるタイプのMEMS共振器に関する実験結果を示す。
【
図3】
図1に示されるタイプのMEMS共振器に関するシミュレーション結果を示す。
【
図4】
図4aから
図4iは、ある実施形態に従う代替的な共振器ジオメトリーの例を示す。
【
図6】ある実施形態に従う代替的な梁要素ジオメトリーの例を示す。
【
図7】ある実施形態に従う更なる代替的な共振器ジオメトリーの例を示す。
【
図8】ある実施形態に従う更なる代替的な共振器ジオメトリーの詳細を示す。
【
図9】ある実施形態に従う更なる代替的な共振器ジオメトリーの詳細を示す。
【
図10】ある実施形態に従う圧電駆動型共振器の断面図を示す。
【
図11】ある実施形態に従う静電駆動型共振器の断面図を示す。
【
図12】共振器構造の中で共振器のジオメトリーが変化する実施形態を描いた図である。
【詳細説明】
【0071】
以下の説明において、類似の番号は類似の要素を示す。
【0072】
図1は、ある実施形態に従う微小電気機械システム(MEMS)共振器を示す。より詳細には、
図1は、積層梁型共振器を上から見た図である。この積層梁型共振器は、隣接して配される6つの梁要素1~6を有する。これら6つの梁要素1~6は、それぞれ幅W1~W6を有する。長さはLである。梁要素1~6は接続要素によって互いに結合している。図示される実施形態において、隣接する2つの梁要素は、それぞれ2つの接続要素によって結合している。第1の梁要素1と第2の梁要素2との間の接続要素の1つが、符号C1を付されて図に描かれている。他の接続要素も同様の符号によって表されうる。すなわち、第2の梁要素2と第3の梁要素3との間の接続要素は符号C2で表されてもよく、第3の梁要素3と第4の梁要素4との間の接続要素は符号C3で表されてもよい。各接続要素はそれぞれ幅WC1~WC5を有する。またそれぞれ、共振器100のエッジから距離LC1~LC5に位置する。図には、第5の接続要素に関して、幅WC5を有し、共振器100のエッジから距離LC5に位置することが描かれている。
【0073】
梁要素1~6は、互いにトレンチ(溝)で隔てられている。この実施例ではトレンチは矩形である。梁要素1と梁要素2との間のトレンチは符号TW1で表されている。
図1において、梁要素2と梁要素3との間のトレンチには符号が付されていないが、以下の説明において、TW2は、梁要素2と梁要素3との間のトレンチを指すと理解されたい。他のトレンチについても同様である。また
図1において、共振器100の全体をその周囲から分離しているトレンチは、符号Tで表されている。符号ALは左側のアンカリング位置を表し、符号ARは右側のアンカリング位置を表している。これらはそれぞれ、共振器の左側又は右側の中央部に位置している。
【0074】
この図におけるジオメトリーは次の通りである。
L1・・・L6 = 91.75 μm,
W2・・・W5 = 28 μm,
TW1・・・TW5 = 5 μm,
LC2・・・LC4 = 0 μm,
LC1 = LC5 = 5 μm,
WC1・・・WC5 = 5 μm。
【0075】
図2は、
図1に示されるタイプのMEMS共振器に関する実験結果を示す。例として、40MHzにおけるQ値がパラメトリックに変化させれらた複数の共振器がシリコンウェーハ上に作成され、実験的に測定された。シリコンウェーハ法線は方向[100]であり、共振器の梁要素の側部は方向<100>に沿っていた。パラメータDが8~16.5μmの間で異なる共振器が複数作成された。同じパラメータDを有する共振器がおよそ5つ作成され、大気圧の下で測定に供された。共振器の設計・ジオメトリーは、
図1に描かれたものと同様であった。しかし、梁要素の幅W1及びW6は、式W1 = W6 = 28 μm - Dに従って変化させられた。最適な性能は、D = 14 μm、すなわち、W1 = W6 = 14 μmの場合に得られた。
【0076】
図3は、
図1に示されるタイプのMEMS共振器に関するシミュレーション結果を示す。より詳細には、
図3は、
図2で議論されたジオメトリーのフィギュア・オブ・メリット(性能指数)FOM
anchorを示している。FOM
anchorは、FEM解析ソフトウェアであるCOMSOL Multiphysicsを用いて計算された。FOM
anchorは次の式で定義される。
【0077】
FOManchor = u_x_anchor / | max(u_y_long_side) |
【0078】
ここでu_x_anchorは、関連する共振モード形状における、右端のアンカリング点AR(
図1参照)におけるx方向のずれ量であり、max(u_y_long_side)は、共振器のx方向の上端における共振モードのy方向の最大ずれ量である。最適である場合、すなわち、FOM
anchor = 0である位置は、W1 = W6 = 14 μmに近い。これは、
図2の議論において実験的に最適であると示された場合によく一致している。
【0079】
開示される実施形態において、座標系は、梁要素の幅方向にx軸が、梁要素の長手方向にy軸が、それぞれ向くように選択されている。梁要素は(従って共振器全体は)、y軸方向においてLEモードで振動する。
【0080】
図1~3で示されるように、少なくとも1つの梁要素の幅が他の梁要素の幅と異なるようにMEMS共振器を作成することは、実際的である。また、隣接する梁要素を接続する接続要素の少なくとも一つが、隣接する梁要素の端から(又は共振器の端から)、ある距離だけ離れているようにMEMS共振器を作成することは、実際的である。共振器の主要な共振モード形状は、共振器の周縁部に節点(nodal point)を有することになる。
図1~3に示される例のジオメトリーにおいては、右端及び左端の梁要素の幅が他の梁要素の幅の半分であり、第1の梁要素と第2の梁要素との間の接続要素と、第5の梁要素と第6の梁要素との間の接続要素とが、共振器の端から同じ距離だけ離れている場合が、最適であった。このような場合、関係する主要な共振モード形状における節点は、アンカリング点に一致した。なお、紹介するジオメトリーは、好ましいジオメトリーだけではないことは注意されたい。実施形態によって、ジオメトリーは様々にデザインされ、様々に変わりうる。
【0081】
図4b-4iに示される代替的なジオメトリーにおいては、共振器の周縁部に節点を得ることができる。すなわち、最も外側の梁要素1,6の側端の中央部のアンカリング点に節点を得ることができる。
図4aは基本的なジオメトリーを示している。梁要素1-6はそれぞれ同じ幅を有し、各接続要素は共振器のエッジからゼロ距離に位置している。
【0082】
図4bは、梁要素1及び6の幅が変えられた、共振器ジオメトリーを示している。この実施例では幅が狭くされている。またこの共振器ジオメトリーでは、梁要素2と3の間の接続要素C2と、梁要素4と5の間の接続要素C4とが、共振器のエッジEからある距離のところに配されている。これらの変形は、
図4aの基本ジオメトリーに対してなされたものである。
【0083】
図4cは、梁要素1及び6の幅が(狭く)変えられた、別の代替的共振器ジオメトリーを示している。この共振器ジオメトリーでは、中央に位置する梁要素3と4の間の接続要素C3が変形されている。
【0084】
図4dは、(中央に位置する)梁要素3及び4の幅が変えられた、別の代替的共振器ジオメトリーを示している。この実施例では幅が狭くされている。またこの共振器ジオメトリーでは、梁要素2と3の間の接続要素C2と、梁要素4と5の間の接続要素C4も変形されている。
【0085】
図4eは、梁要素2及び5の幅が変えられた、別の代替的共振器ジオメトリーを示している。
【0086】
図4fは、
図4eに指名された基本ジオメトリーに一般的に対応する、別の代替的共振器ジオメトリーを示している。しかし、この実施例では、梁要素1と2の間の接続要素C1のうちの1つと梁要素5と6の間の接続要素C5のうちの1つが変形されている。すなわち共振器のエッジEからある距離のところに配されている。しかし、別の1つは変形されていない。変形を受けた接続要素C1は、エッジEの一方に近接している。また、変形を受けた接続要素C5は、他方又は反対側のエッジEに近接している。従って、
図4fに示されるジオメトリーは、対称性が減少している。
【0087】
図4gは、
図4fに示されるジオメトリーに比べて、対称性が更に減少した代替的ジオメトリー意を示している。
図4fのジオメトリーにおいては、梁要素1と2の間の接続要素C1のうちの1つと梁要素5と6の間の接続要素C5のうちの1つが変形を受けていたが、
図4gのジオメトリーにおいては、これらのうちの1つのみが変形を受けている。(
図4gにおいてはC5が変形を受けている。)
【0088】
図4hは、
図4gのジオメトリーに対応する別の代替的ジオメトリーを示している。
図4hのジオメトリーでは、全ての梁要素の幅が等しくなっている。従って、
図4hに示されるジオメトリーは、互いに等しい梁要素を有すると共に、接続要素の1つだけが変形されている(エッジEから離れた位置に配されている)。
【0089】
図4iは、互いに幅の等しい梁要素を有する別の代替的ジオメトリーを示している。この実施例では、梁要素1と2の間の接続要素C1と梁要素5と6の間の接続要素C5が変形されている。すなわち共振器のエッジEからある距離のところに配されている。従って、梁要素及び越族要素から形成される共振器構造は、対称的な構造になっている。すなわち、梁要素は互いに等しく、最も外側の接続要素が対称的に変位している。
【0090】
図4b-4iの正確な寸法は、実施形態と、主要な共振モード形状の節点の所望の位置に依存する。
【0091】
図1-4や
図5aに描かれるように、梁要素の間の接続要素は、x方向に長い矩形として実装されてもよい。しかし、
図5bに描かれるように、1つ又は複数の接続要素の形状は、それとは異なっていてもよい。
図5bにおいては、接続要素C1、C2、C4、C5は、傾いた要素として実装されている。
【0092】
また梁要素は、矩形ではなく別の長細い形状であってもよい。長細のジオメトリーは、長辺振動型(Length Extensional, LE)共振モードをサポートする。従って、
図6に例示されるような代替的梁ジオメトリーも適用されることができる。様々な梁のタイプの例には、丸みを帯びた矩形、丸みを帯びた楕円形、砂時計型、テーパー型、回転砂時計型、非対称的長細型がある。これらの実施形態では、梁要素の幅と長さを表す場合、平均幅(有効幅)及び平均長(有効長)を考えることが適切でありうる。
【0093】
図7は、ある実施形態に従う更なる代替的な共振器ジオメトリーの例を示す。これらの例では、共振器の長手方向に沿って、梁要素の質量中心が変化している。つまり、共振器に含まれる各梁要素の質量中心の位置は、y方向において同じではない。
【0094】
図7の上段に描かれるジオメトリーでは、ある梁要素の質量中心は、隣の梁要素の質量中心に対してy方向にずれている。
図7の中段に描かれるジオメトリーでは、中央の梁要素(又はその質量中心)が最も変位しており、両端の梁要素はほとんど変位していない。
図7の下段に描かれるジオメトリーでは、梁要素(又はその質量中心)が互い違いに変位している。例えば、一つおきに梁要素が変位している。
図7に描かれている接続要素(例えば接続要素C2及びC3)は、当該接続要素が接続する梁要素の一方の端に位置するが、他方の端からはある距離だけ離間しているように、隣接する梁要素を接続している。
【0095】
図8及び
図9は、ある実施形態に従う更なる代替的な共振器ジオメトリーの詳細を示す。
図8の実施形態において、ある梁要素は、他の梁要素に対して傾き角(傾き方向)が異なっている。梁要素nは、隣接する梁要素n+1に対して傾いた角度で位置している。梁要素nと梁要素n+1は、梁要素の端に位置する接続要素Cnによって接続されている。傾きのため、端にある接続要素の寸法は、他の接続要素とは少し異なっている。(他の接続要素の方が長い。)また、梁要素nと梁要素n+1との間のトレンチは完全な矩形ではなく、共振器の一方の端に向かって幅広くなっている。隣接する梁要素の傾きは、共振器の面内で生じている。これを「面内傾斜(in-plane tilting)」という。
図9の実施形態では、共振器構造の中で隣り合う梁要素は形状も傾斜角も変化している。
図9では接続要素は描かれていない。
【0096】
紹介した共振器構造は、実施形態によって、圧電駆動型や静電駆動型に適切である。
【0097】
図10は、例示的な圧電駆動型の断面図である。シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハ150が適用される。符号201及び202は、それぞれ、ボトム電極用接点及びトップ電極用接点である。トップ電極はレイヤL1に実装される。共振器は符号100で示される領域に位置する。レイヤL2は、そのような共振器の圧電駆動のための圧電レイヤである。L2の開口部が符号120で示されている。レイヤL3はボトム電極のレイヤである。レイヤL4は、共振器の躯体(梁要素及びそれらの接続要素)であり、ドープシリコンのレイヤである。レイヤL5は、SOIウェーハにおける埋め込まれた酸化物レイヤであり、レイヤL6はシリコン支持層(handle layer)である。ドープシリコンのレイヤがL4として使われる場合、実施形態によっては、独立のボトム電極レイヤL3を省略することができる。そのような実施形態においては、導電性を有するドープシリコンのレイヤがボトム電極としての役割を果たす。
【0098】
図11は、例示的な静電駆動型の断面図である。シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハ(符号150'で表される)が適用される。レイヤL4は正負の電極を有する。符号203,204はそれぞれ、これらの電極への接点を表す。レイヤL4は、共振器の躯体(梁要素及びそれらの接続要素)であり、ドープシリコンのレイヤである。共振器の領域は符号100で表されている。共振器の端とレイヤL4の残りの部分との間にはギャップが存在する。このギャップは、静電駆動のために用いられる。レイヤL5は、SOIウェーハにおける埋め込まれた酸化物レイヤであり、レイヤL6はシリコン支持層(handle layer)である。
【0099】
梁要素の数や、隣接する梁要素を繋ぐ接続要素の数は、実施形態によって変化しうる。紹介してきた実施例は六つの梁要素を有していたが、一般的には、梁要素の数は六つでなくてもよい。紹介してきた基本的な共振器構造又は共振器ユニット(積層梁型共振器)は複数制作されてもよい。例えば、実施例によっては、複数の共振器ユニットが並列に又は直列に配されてもよい。基本的な共振器構造は、その最も外側の梁要素を通じて周囲の要素にアンカリングされる代わりに、最も外側ではない梁要素を通じて、すなわち1つ又は複数の内側の梁要素を通じてアンカリングされてもよい。"周囲の要素"へのアンカリングは、他の共振器ユニットへ取り付けられることに置き換えられてもよい。
【0100】
図12は、
図1-3に示されたものと同様の共振器構造の中で、共振器のジオメトリーが変化する実施形態を描いた図である。
図12に示されたMEMS共振器100は、細長の梁要素をn個含む共振器構造を有する。この例ではn=12である。各梁要素1-nは積層梁要素であり、互いに平行に配され、全体として矩形の配列構造を形成している。従って、各梁要素1-nの長手方向は互いに平行である。各梁要素1-nの形状は好ましくは矩形である。各梁要素1-nの質量中心は直線上に並んでいる。すなわち、梁要素1-nの全ての質量中心を通る直線が存在する。全ての梁要素1-nは好ましくは同じ長さを有する。
【0101】
共振器100はその周囲要素からトレンチTで隔てられている。トレンチは、共振器構造の周囲を囲んでいる。また、各梁要素1-nは、互いにトレンチTで隔てられている。各梁要素1-nはまた、接続要素によって隣接する梁要素に接続されている。好ましくは、隣接する(梁要素の)ペアの間の接続要素の数は、いずれも2である。すなわち、隣接する梁要素は正確に2つの接続要素によって互いに接続されている。共振器100は、最も外側の2つの接続要素の側部で、その周囲の要素に機械的に接続されている。
図12において、アンカリング点の位置は、左のアンカリング点が符号ALで、右のアンカリング点が符号ARで表されている。ALは共振器の左端に位置し、ARは共振器の右端に位置している。従って共振器100は、好ましくは、最も外側の梁要素1及びnの横側で、且つこれらの外側の長手方向側部の中間地点で、その周囲要素(例えば基板)に固定される。
【0102】
梁要素1-nがこれらの第1の端部でトレンチTと(y方向において)出会う位置は、エッジE1として表されている。ここは共振器の前端部である。梁要素1-nの反対側の端部に対応するエッジはエッジE2として表されている。ここは共振器の後端部である。
【0103】
図12の例において梁要素の幅と接続要素の位置は、構造の中で様々である。例えば、最も外側の梁要素1及びnの幅は、その他の梁要素の幅よりも小さい。好ましくは、第1の梁要素1の幅は、最後の梁要素nの幅と等しい。また、その他の梁要素(梁要素2から梁要素n-1)の幅は互いにほぼ等しく、また梁要素1やnの幅よりは大きい。
【0104】
また、これらの接続要素は、共振器のエッジE1又はE2からゼロ距離に位置している。但し、最も外側の梁要素を隣接する梁要素に接続している接続要素(のうちエッジE1又はE2に最も近い接続要素)は、エッジE1又はE2からある距離だけ離れたところに存在する。(または、当該隣接する梁要素の先端部からある距離だけ離れたところに存在する。)従って、エッジE1,E2に沿って存在する直線的な境界線は、最も外側の梁要素と隣接する梁要素との間で途切れる。この場所において、トレンチTは、境界線の位置から、最も外側の梁要素と隣接する梁要素との間へと入り込んでいる。つまりトレンチTは、共振器エッジE1又はE2から共振器の内部へと、(最も外側の梁要素と隣接する梁要素とを隔てる)接続要素の端に達するまで延伸している。
【0105】
図12に描かれる共振器構造は、対称的な共振器構造である。この構造は、中心に原点を置いたx軸及びy軸に対して鏡面対称性を有する。
【0106】
共振器100の梁要素は(みな)、これらの長手方向(y方向)において、長辺振動型(LE)共振モード振動するように構成される。この共振器構造は、共振器の圧電駆動のための圧電レイヤを備える。
【0107】
本発明の具現化における好適な実装形態において、共振器100は、低圧の空洞に封入される。これは、ガスダンピングによるエネルギー損失を抑えるためである。しかし、実際的な実装形態において、共振器の周囲の圧力は、ガスダンピングのへ影響を無視できるレベルとするには十分に低くはないかもしれない。本発明の実際的な実装形態において、梁(又は共振器)のエッジ(
図12のE1又はE2)と、その周囲に強固に取り付けられているシリコンフレームとの間のトレンチ(
図12のトレンチT)において、音響共振が発達することがある。本発明の実施形態に従う梁型共振器がいくつか製造され、それらの共振器特性が電気インピーダンス測定によって特徴付けられた。これらの梁型共振器には、周波数が40 MHz、32 MHz、24 MHzの共振器が含まれていた。エッジE1とE2(
図12参照)の間のトレンチTの幅は、2μm、4μm、5.5μm、6μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μmであった。測定は大気圧下でなされ、高いQ値(すなわち低いガスダンピング)を与えるトレンチ(T
Low gas dampingと定義される)と、低いQ値(すなわち高いガスダンピング)を与えるトレンチ(T
High gas dambingと定義される)とを求めた。トレンチ幅に関する結果を、次の経験的モデル式にフィッティングすることを試みた。
T
Low gas damping = 4μm (40 MHz/Freq) (n + 1/2)
T
High gas damping = 4μm (40 MHz/Freq) (n + 1)
ここで"Freq"は、本発明の実施形態に従う梁型共振器の周波数であり、nは音波長(acoustic wave length)の整数である(n = 0, 1, 2, ・・・)。
【0108】
本件において開示される1つ又は複数の実施例の技術的効果のあるものを以下に示す。ただし、これらの効果は特許請求の範囲および解釈を制限するものではない。技術的効果は、積層梁型共振器の最適なジオメトリーを提供することである。別の技術的効果は、MEMS共振器デザインの柔軟性を改善することである。
【0109】
以上の説明により、本発明の特定の実装および実施形態の非限定例を用いて、発明者によって現在考えられている、本発明を実施するための最良の形態の完全かつ有益な説明を提供した。しかしながら、当業者には明らかであるように、上述の実施形態の詳細は本発明を限定するものではなく、本発明の特徴から逸脱することなく同等の手段を用いて、他の実施形態に実装することができる。
【0110】
さらに、以上に開示した本発明の実施形態の特徴は、対応する他の特徴を用いることなく用いられてもよい。然るに、以上の説明は、本発明の原理を説明するための例に過ぎず、それを限定するものではないと捉えるべきである。よって、本発明の範囲は添付の特許請求のみによって制限されるものである。