IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セントリカ ビジネス ソリューションズ ベルジウム エヌ.ヴィー.の特許一覧

特許7520876エネルギーグリッドにおける周波数変動に対応するシステム
<>
  • 特許-エネルギーグリッドにおける周波数変動に対応するシステム 図1A
  • 特許-エネルギーグリッドにおける周波数変動に対応するシステム 図1B
  • 特許-エネルギーグリッドにおける周波数変動に対応するシステム 図1C
  • 特許-エネルギーグリッドにおける周波数変動に対応するシステム 図2A
  • 特許-エネルギーグリッドにおける周波数変動に対応するシステム 図2B
  • 特許-エネルギーグリッドにおける周波数変動に対応するシステム 図3
  • 特許-エネルギーグリッドにおける周波数変動に対応するシステム 図4A
  • 特許-エネルギーグリッドにおける周波数変動に対応するシステム 図4B
  • 特許-エネルギーグリッドにおける周波数変動に対応するシステム 図5
  • 特許-エネルギーグリッドにおける周波数変動に対応するシステム 図6
  • 特許-エネルギーグリッドにおける周波数変動に対応するシステム 図7
  • 特許-エネルギーグリッドにおける周波数変動に対応するシステム 図8
  • 特許-エネルギーグリッドにおける周波数変動に対応するシステム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】エネルギーグリッドにおける周波数変動に対応するシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/14 20060101AFI20240716BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240716BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H02J3/14
H02J3/00 170
H02J13/00 311T
H02J13/00 301B
H02J13/00 311R
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2021560135
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2020058128
(87)【国際公開番号】W WO2020193533
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】1904189.6
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521438490
【氏名又は名称】セントリカ ビジネス ソリューションズ ベルジウム エヌ.ヴィー.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】クレサン,ベルト
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルス,ジョナス
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-352678(JP,A)
【文献】国際公開第2018/033638(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0123602(US,A1)
【文献】国際公開第2016/035399(WO,A1)
【文献】特表2016-530859(JP,A)
【文献】特開2005-020916(JP,A)
【文献】特表2016-540472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のグリッド周波数で稼働する電力供給グリッドに接続されたアセットを制御する方法であって、前記アセットは、電気エネルギーを供給する、および/または、グリッドからの電気エネルギーを消費するよう設けられたアセットであって、少なくとも一部のアセットは、グリッドへの、またはグリッドからのエネルギーフローを調節し、グリッドにおける周波数変動に対処するよう構成され、前記方法は、
アセット群の、グリッド周波数における変動に対する、集合的な応答を構成する構成工程と、
前記アセット群中の第1アセットを含むグリッドの一部で測定された、第1グリッド周波数および、前記アセット群中の第2アセットを含むグリッドの一部で測定された、第2グリッド周波数の間の差異を検知する検知工程と、
前記差異の検知に応じて、周波数の差異を緩和、またはその増大を防ぐために、前記第1アセットおよび前記第2アセットのうち、少なくとも一つを再構成し、そのアセットに対して再構成されたエネルギーフロー調節を停止する、あるいは前記エネルギーフロー調節の大きさを変更する、再構成工程と、
を含み、
前記集合的な応答には、前記アセット群の各アセットおよびグリッドの間のエネルギーフローをそれぞれ調節することが含まれ、前記調節は、グリッド周波数における変動への対処と組み合わせられる、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記アセット群のうち、特定の一アセットに対し、特定のエネルギーフロー調節を実施する際、
前記特定の一アセットと紐づけて、局所的グリッド周波数を決定する、決定工程と、
前記局所的グリッド周波数に対する、前記特定のエネルギーフロー調節の期待できる効果を評価する、評価工程と、
前記評価に応じて、前記特定のエネルギーフロー調節の実施を停止または変更する停止・変更工程と、をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エネルギーフロー調節が、検知されたグリッド周波数の差異を悪化させ得るかどうかの判定に応じて、前記特定のエネルギーフロー調節の実施を停止する、停止工程をさらに含む、ことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギーフロー調節が、前記局所的グリッド周波数の、前記所定のグリッド周波数からのずれを引き起こす、または増大させるかどうかの判定に応じて、前記特定のエネルギーフロー調節を停止する、停止工程を含み、
前記停止工程は、任意に、前記エネルギーフロー調節により、前記局所的グリッド周波数が低くなり、前記局所的グリッド周波数が、既に前記所定のグリッド周波数を下回るかどうか、または、前記エネルギーフロー調節により、前記局所的グリッド周波数が増加し、前記局所的グリッド周波数が、既に前記所定のグリッド周波数を上回るかどうか、の判定に応じて、行われる、ことを特徴とする、請求項またはに記載の方法。
【請求項5】
前記エネルギーフロー調節が、前記局所的グリッド周波数の調節を行うかどうかの判定に応じて、前記特定のエネルギーフロー調節を停止する、停止工程を含み、
前記局所的グリッド周波数は、前記局所的グリッド周波数の所要の修正を、任意には閾値範囲だけ超える、ことを特徴とする、請求項乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
周波数における前記差異が解消されたと判定された場合、または、前記差異の大きさが閾値を下回ると判定された場合、アセットの構成を構成された集合的な応答に戻す、復帰工程を含む、ことを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記集合的な応答は、集約アルゴリズムをアセット群に適用することに基づいて構成され、
前記方法は、グリッド周波数における前記差異を検知した場合、
前記アセット群を構成するアセットごとに測定した各グリッド周波数に応じて、前記アセット群を複数のアセットクラスタに分割する分割工程と、
各アセットクラスタに対し、クラスタ内のアセットのみを対象とした、一つまたはそれ以上の集合的な応答を構成するため、前記集約アルゴリズムをクラスタ内のアセットに適用する適用工程と、
を含む、ことを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
所定のグリッド周波数で稼働する電力供給グリッドに接続されたアセット群を制御する方法であって、前記アセットは、電気エネルギーを供給する、および/または、グリッドからの電気エネルギーを消費するよう設けられたアセットであって、少なくとも一部のアセットは、グリッドへの、またはグリッドからのエネルギーフローを調節し、グリッドにおける周波数変動に対処するよう構成され、前記方法は、
グリッド周波数における変動に対する、一つまたはそれ以上の集合的な第1応答を構成するよう、集約アルゴリズムを、前記アセット群におけるアセットを適用する、適用工程と、
第1期間で構成された前記集合的な第1応答に応じて、前記アセット群におけるアセットを制御する、制御工程と、
グリッド内の異なる箇所で測定された、第1グリッド周波数および第2グリッド周波数の間の差異を検知する、検知工程と、
前記差異が検知された場合に実施される、
前記アセット群を構成するアセットごとに測定した各グリッド周波数に応じて、前記アセット群を複数のアセットクラスタに分割する、分割工程、および、
各アセットクラスタに対し、クラスタ内のアセットのみを対象とした、一つまたはそれ以上の集合的な第2応答を構成するため、前記集約アルゴリズムをクラスタ内のアセットに適用する、適用工程と、
第2期間で構成された前記集合的な第2応答のそれぞれに応じて、各アセットクラスタにおけるアセットを制御する、制御工程と、
を含み、
前記集合的な応答には、選択されたアセット群の各アセットおよびグリッドの間のエネルギーフローをそれぞれ調節することが含まれ、前記調節は、グリッド周波数における変動への対処と組み合わせられる、ことを特徴とする、方法。
【請求項9】
各グリッド周波数に応じて、前記アセット群を複数のアセットクラスタに分割する、前記分割工程は、
複数の前記アセット群における各アセットに対し、そのアセットの局所的グリッド周波数を決定する、決定工程と、
前記複数のアセットのそれぞれを、局所的グリッド周波数に応じてアセットクラスタに割り当てる、割当工程と、
を含む、ことを特徴とする、請求項またはに記載の方法。
【請求項10】
アセットを分割する分割工程であって、
同様の局所的グリッド周波数を有するアセットを、同じクラスタに割り当てる、割当工程と、
互いの指定範囲にある、および/または、基準周波数の範囲にある局所的グリッド周波数を有するアセットを、同じクラスタに割り当てる、割当工程と、
クラスタ内のアセットが、その他のクラスタのアセットのグリッド周波数と比較して、互いに近いグリッド周波数を持つよう、アセットをクラスタに割り当てる、割当工程と、
のうち、一つまたはそれ以上の工程によって実施される、分割工程をさらに含む、ことを特徴とする、請求項乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記分割工程は、クラスタリングアルゴリズムを用いて、任意には、k-meansクラスタリング法に基づいて、実施される、ことを特徴とする、請求項乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記検知工程は、少なくとも一つのアセットで実施される、ことを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記検知工程は、
特定の一アセットで測定された局所的グリッド周波数と、
前記アセット群のうち、別のアセット群における特定の一アセットで測定されたグリッド周波数と、
のうち、一方あるいは両方に基づいて、前記アセット群のうち、特定の一アセットで実施される、ことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アセットのグリッド周波数測定値に基づいて、または、任意に、制御部に対して局所的に測定された、中央グリッド周波数測定値に基づいて、前記検知工程が、中央制御部によって任意に実施される、ことを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
差異を検知する、前記検知工程は、
好ましくは、差異が閾差異を越えるよう、前記第1グリッド周波数および前記第2グリッド周波数の間の差異を検知する、検知工程と、
前記第1グリッド周波数および第2グリッド周波数のうち、任意に、少なくとも所定の閾量だけ、前記所定のグリッド周波数を下回る一方の周波数を検知し、前記第1グリッド周波数および第2グリッド周波数のうち、任意に、少なくとも所定の閾量だけ、前記所定のグリッド周波数を越えるもう一方の周波数を検知する、検知工程と、
のうち、一方または両方を含む、ことを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
周波数変動に対処するよう組み合わされた所定の応答を実現するため、集合的な応答をみせるよう構成されたアセットは、異なりつつ、補完的な、エネルギーフロー調節を実施するよう構成される、ことを特徴とする、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記構成工程は、
補完的なパワー応答特性を有する、二つあるいはそれ以上のアセットを特定する、特定工程と、
集合的な応答を提供するため、特定されたアセットを選択する、選択工程と、
を含む、ことを特徴とする、請求項1乃至7、または請求項1を引用する請求項9乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
集合的な応答をみせるよう構成されたアセットは、エネルギーフローを調整することで、周波数変動に対して、異なる応答特性を有するアセットであり、
前記異なる応答特性は、任意に、
異なる電力吸引能力または電力供給と、
周波数変動に対するエネルギーフローを増加または減少させる、異なる能力と、
エネルギーフロー調節を実現するための、異なる応答時間と、
エネルギーフロー調節に対する、異なるランプ速度と、
アセットがエネルギーフロー調節を実施できる、異なる時間と、
異なるアセットタイプと、
のうち、一つまたはそれ以上を含み、
前記異なるアセットタイプは、
電力が供給されず、または消費されないオフ状態と、所定の電力供給レベルまたは電力消費レベルのそれぞれを実現する、一つまたはそれ以上の稼働状態とを含む、複数の個別の状態のうちの一つにおいて、選択的に稼働可能に構成される、個別のアセットタイプと、
修正対象となる周波数のずれに対して直線的に変化する、任意の電力供給または電力消費の、連続変化レベルを供給できるよう構成された、連続的なアセットタイプと、
を含む、ことを特徴とする、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
一つまたはそれ以上の集合的な応答の構成および/またはアセットクラスタへの分割は、中央制御部、または、前記アセット群のうち、一つまたはそれ以上のアセットによって、任意に実施され、
一つまたはそれ以上の集合的な応答の構成は、アセット間のデータ交換に応じて、前記アセット群のアセットによって協働的に実施され、
交換されたデータは、好ましくは、アセットの稼働モデルを含む、ことを特徴とする、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
一つまたはそれ以上の集合的な応答の構成は、集合的な応答を提供するのに適したアセット群を決定するためのアセット間の交渉と、前記アセット群のアセット間で交換された情報に基づく、前記アセット群のアセットによる集合的な応答の構成と、を含む、ことを特徴とする、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
アセット間でグリッド周波数情報を交換する、情報交換工程をさらに含み、
前記交渉は、グリッド周波数情報に応じて行われる、ことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
閾差異を任意に超えるグリッド周波数を有するアセットは、集合的な応答を提供するアセット群を形成しないよう構成される、ことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
グリッドにおける、またはアセット群のアセット間におけるグリッド周波数の差異の検知に応じて、アセット群のアセット間の協働を停止または変更する工程、および/または、アセット群の再交渉を開始する工程をさらに含む、ことを特徴とする、請求項20乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
央制御部で受信したグリッド周波数測定値に、ほぼリアルタイムで応答するかたちで、中央制御部が前記集合的な応答を構成する、ことを特徴とする、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
好ましくは、中央制御部によって、それぞれの所要の応答を特定する制御パラメータを使用し、前記アセット群の各アセットを構成することで、周波数の差異よりも先に、前記集合的な応答を構成する、ことを特徴とする、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
好ましくは、アセットで、またはアセットに対して局所的に測定した局所的グリッド周波数に基づいて、周波数変動の検知に応じた構成後に、自発的に事前に構成された応答に応じて、前記アセット群の各アセットは、エネルギーフロー調節を実施し、
構成された応答は、測定された周波数のずれに応じたエネルギーフロー調節を特定する、応答機能を任意に含む、ことを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
電力供給グリッドのグリッド周波数における不均衡を修正する方法であって、
エネルギーアセット群の、グリッド周波数における変動に対する集合的な応答を構成する構成工程と、
前記アセット群中の第1アセットを含むグリッドの一部で測定された、第1グリッド周波数および、前記アセット群中の第2アセットを含むグリッドの一部で測定された、第2グリッド周波数の間の差異を検知する検知工程と、
前記差異の検知に応じて、周波数の差異を緩和、またはその増大を防ぐために、前記第1アセットおよび前記第2アセットのうち、少なくとも一つを再構成し、そのアセットに対して再構成されたエネルギーフロー調節を停止する、あるいは前記エネルギーフロー調節の大きさを変更する、再構成工程と、
を含み、
前記集合的な応答には、前記アセット群の各アセットおよびグリッドの間のエネルギーフローをそれぞれ調節することが含まれ、前記調節は、グリッド周波数における変動への対処と組み合わせられる、ことを特徴とする、方法。
【請求項28】
請求項1乃至26のいずれか一項に記載の方法における、工程または特徴をさらに含む、ことを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1乃至28のいずれか一項に記載の方法を実行する手段を、連想メモリを有する、一つまたはそれ以上のプロセッサのかたちで任意に有する、制御装置、アセット制御部、またはシステム。
【請求項30】
少なくとも一つのプロセッサと、
電力供給グリッドの異なる箇所の電力の第1送信周波数および第2送信周波数をそれぞれ感知する、少なくとも第1グリッド周波数センサおよび第2グリッド周波数センサと、
前記電力供給グリッドに接続された、エネルギー供給アセットまたはエネルギー消費アセットを制御する、制御インターフェイスと、
を備え、
前記少なくとも一つのプロセッサは、
グリッド周波数における変動に対する、エネルギーを供給する、および/または、エネルギーを消費するアセット群の、集合的な応答を構成し、前記集合的な応答には、前記アセット群の各アセットおよびグリッドの間のエネルギーフローをそれぞれ調節することが含まれ、前記調節は、グリッド周波数における変動への対処と組み合わせられ、
前記第1グリッド周波数センサから受信した第1グリッド周波数の測定値および前記第2グリッド周波数センサから受信した第2グリッド周波数の測定値の間の差異を検知し、
前記差異の検知に応じて、周波数の差異を緩和、またはその増大を防ぐために、前記アセット群中の少なくとも一つの前記アセットの制御を変更または停止して、グリッド周波数における変動に対処する、
ために配置される、ことを特徴とする、制御システム。
【請求項31】
前記システムは、請求項1乃至28のいずれか一項に記載の方法を実施するためのソフトウェアコードを保存するデータストレージを備え、前記少なくとも一つのプロセッサは、請求項1乃至28のいずれか一項に記載の方法を実施するよう構成される、ことを特徴とする、請求項30に記載の制御システム。
【請求項32】
ソフトウェアコードを備え、
前記ソフトウェアコードは、一つまたはそれ以上のデータ処理装置に、請求項1乃至28のいずれか一項に記載の方法を実行させる際に適用される、ことを特徴とする、コンピュータで読み取り可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリッドにおける周波数変動が起こった際、エネルギーを供給するアセット、または、電力供給グリッドからエネルギーを得てエネルギーを消費するアセットを制御するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力供給者およびグリッド運用者は、工業地や、住居において、分電グリッドおよび送電グリッドに対し、種々のエネルギー管理技術を実施している。グリッド運用者にとって、電力の供給と需要の均衡を保ち、電力グリッドにおける周波数シフトに対応するなど、エネルギーグリッドそれぞれの側面を管理することは、ますます難易度が上がっている。
【0003】
一般的に、電力グリッドの安定性と応答性を確実とするため、グリッド運用者は、エネルギー生産者またはエネルギー消費者の行動に、特権を与える(あるいは、経済的インセンティブを提供する)場合がある。例えば、グリッド運用者が、事業消費者、および/または、電力生産者から、規制容量を買い取る場合がある。グリッドの安定性および品質を維持するため、グリッド運用者から要請があれば、こういったサービスを提供する消費者または生産者は、電力消費を減少または増加する権限を得る。比較的長期間にわたって、電力消費の減少または増加が安定的でなければならない、または、いかなる減少または増加も、急激に生じなければならない、という、具体的な制約がある。重要な点として、グリッド運用者は、個人のアセットレベルではなく、ポートフォリオレベルで、電気エネルギー(例えば、電気ロードまたは発電)を消費または供給するアセットを管理したいと考えている。
【0004】
素早い応答時間は、電力グリッド運用者にとって、特に重要な要素となり得る。グリッド運用者には、グリッドで供給される電力の周波数の安定性を維持することが期待されている(例えば、アメリカ合衆国では60Hz、ヨーロッパでは50Hz)。しかし、グリッド周波数を許容範囲内におさめることは、難易度が高い。例えば、発電所の稼働が、予期せず停止してしまった場合、大きな電力が急に得られなくなり(需要が供給を上回り)、グリッド上の周波数が低下する。同様に、産業ロードが大量にかかり、そうした供給に合致する需要が低速である場合、グリッド上の周波数は低下する。グリッドの周波数が低下すると、グリッド上の電力消費を減少させることで、または、供給を増加させることで(あるいは、その両方によって)、周波数を参照レベルにすることができる。しかしながら、産業消費者または居住消費者といった、多種多様な消費者に対し、電力消費の減少を指示することは、困難である。おそらく、より重要な点として、グリッド運用者が望む通りの速さで、一般的には、分単位ではなく、秒単位(あるいは、より素早く)で、電力消費の減少を実現することは、非常に困難である。中央管理システムにおいて、ずれを検知し、電力減少を計画し、短時間の間に確実に産業ロードに対して、その計画を実行することは、不可能である場合が多い。また、これとは反対の事象も起こり得る。例えば、再生可能電力生産の予測時に起こり得ることだが、供給が需要を上回る場合、周波数が、参照レベル(50Hzまたは60Hz)を上回るほど上昇することがある。これは、電力生産を減少させることで、または、電力消費を増加させることで(あるいは、その両方を組み合わせることで)、相殺することができる。
【0005】
先行技術では、ロード側で簡素なバイナリスイッチを使用する。これにより、電力の周波数が、ある一定のレベルまで下がった場合、ロード全体のスイッチをオフにする(例えば、周波数が49.9Hzまで下がった場合、ロードのスイッチをオフにする)。しかしながら、これは、スイッチが、独立したハードウェア装置の、静的な技術である。このハードウェア装置は、特定の周波数で、常にロードのスイッチをオフにするようロックされている。こうした装置は、その他の情報を考慮することなく、時には、数か月または数年におよぶ単位で、ロードのスイッチを厳密にオフにし続ける。ローカルの運用管理者は、運用上あるいは事業場の規制に基づき、電力始動の要求を却下することができず、この意味で、当該技術は、一方的に作用してしまう。さらに、この技術は、ロードレベルで実施され、ポートフォリオ適正化には、いかなるメリットも生み出さない。
【0006】
より最近では、エネルギー消費アセットおよび/またはエネルギー生産アセットを組み合わせて、組み合わせられた需要応答を実施することで、ポートフォリオ適正化を利用して、応答を向上させる技術が発展してきている。
【0007】
特許文献1の開示を、ここに参照として取り込む。この文献では、グリッド特性の変化に素早く、確実に応答しながら、グリッド運用者が、エネルギーロードのポートフォリオを、集合的なポートフォリオレベルで管理できるエネルギー管理システムについて、説明がなされている。ハイブリッド方式のアプローチが採用されており、同アプローチでは、周波数帯範囲内の周波数のずれに応じた、グリッド運用者からの電力減少(あるいは増加)の指示に基づいて、ポートフォリオ内の各ロードが、電力を減少(または増加)すべき、最適な周波数トリガーを、中央部によって決定する。イメージとして、グリッド周波数にずれが生じた場合、最適にかつ確実にポートフォリオに送電できるよう、全体的に弱い、ポートフォリオの応答を最適化するために、ロードは、この周波数帯に「詰まって」いる。トリガー(および、それに対応する個別のロード電力の減少)は、(ロードおよびグリッドの挙動に応じて)中央部から個別のロードへ、周期的に送られる。周波数のずれが起こった場合、トリガーおよび、その前に受診した対応する電力減少に応じて、各ロードは、独立して(つまり、工業地の外界との相互連携なく)、素早く、電力消費を減少させることができる。各トリガーは、ロードに対して、信号を出し、現場で測定したグリッドの状況に合わせて、電力を減少または増加させる。このアプローチでは、中央部への依存度を下げて、周波数のずれを検知し、リアルタイムで電力減少を実行することができる。
【0008】
しかしながら、集成技術によって、グリッドにおける周波数変動に対する応答性を向上させることができたとしても、グリッドの異なる領域間で周波数のずれがあった場合に、問題が起こる。通常稼働時、グリッド全体において、周波数は略同一であり、実質、周波数の差異が存在することは稀であるが、例えば、グリッドインフラの一部に欠陥が生じた際など、特定の状況において、起こり得ることではある。こうした状況において、グリッドの異なる部位が、異なる周波数で稼働する場合があり、こうした状況は、一般的に、周波数分岐と称される。こうした周波数分岐によって、グリッドは効果的に二つ(あるいはそれ以上の)周波数ドメイン(領域)に分けられ、各周波数ドメイン(領域)は、独自のグリッド周波数で稼働を続ける。
【0009】
集合的なポートフォリオレベルで受容応答を実行するため、修正技術が利用される場合、関連アセット同士は、一つの送電システムオペレータ(TSO)領域内に入れられていたとしても、(地理的またはグリッドトポロジー的に)互いに近いところに位置している必要はない。その結果、需要応答サービス、例えば、周波数のずれの修正を、協働的に提供するよう、集合的に使用されているアセット群であっても、実際は、グリッドの異なる領域に位置しているため、周波数分岐以降は、異なるグリッド周波数で稼働を続けることになる。この状況において、同じグリッド周波数でることを前提として、中央部で調整された需要応答戦略に基づいて、アセットが稼働している場合、こうした戦略では、所望の効果を得られないか、中央部で決定された応答戦略が、局所的グリッド周波数と合致していないような、特定の箇所においては、状況を悪化させてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2015/059544号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の実施形態の目的は、こうした問題を解決、または、少なくとも軽減し、電力供給グリッドにおける周波数のずれに対処できる、改良された技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の第1形態において、所定のグリッド周波数で稼働する電力供給グリッドに接続されたアセットを制御する方法を提供する。アセットは、電気エネルギーを供給する、および/または、グリッドからの電気エネルギーを消費するよう設けられたアセットであって、少なくとも一部のアセットは、グリッドへの、またはグリッドからのエネルギーフローを調節し、グリッドにおける周波数変動に対処するよう構成される。この方法は、アセット群の、グリッド周波数における変動に対する、集合的な応答を構成する構成工程と、アセット群中の第1アセットを含むグリッドの一部で測定された、第1グリッド周波数および、アセット群中の第2アセットを含むグリッドの一部で測定された、第2グリッド周波数の間の差異を検知する検知工程と、差異の検知に応じて、第1アセットおよび第2アセットのうち、少なくとも一つを再構成し、そのアセットに対して再構成されたエネルギーフロー調節を変更する、再構成工程と、を含む。集合的な応答には、アセット群の各アセットおよびグリッドの間のエネルギーフローをそれぞれ調節することが含まれ、該調節は、グリッド周波数における変動への対処と組み合わせられる。
【0013】
「アセット」や「エネルギーアセット」といった用語は、好ましくは、エネルギーを供給、あるいはグリッドからエネルギーを消費する、装置、機械、その他の施設(または、こうした独立体を集合させたもの)を指す。エネルギーフローは、アセットからグリッドへの流れ(グリッドに対するエネルギー供給)、および、グリッドからアセットへの流れ(グリッドからのエネルギー消費)の両方を含む。一般的に、(電気)エネルギーフローは、電力(例えば、ワット等の適切な単位で表される)として、測定、処理、および/または、制御され得る。したがって、エネルギーフロー調節は、電力調整(例えば、電力消費または電力供給の増加/減少)を含み得る。
【0014】
所定のグリッド周波数は、好ましくは、標準的なものであって、グリッドでの送電では、AC周波数で稼働することが期待される。ここでは、グリッドの、名目上のあるいは基準の周波数と称する。しかしながら、実際のグリッド周波数は、場合によっては、グリッド内の異なる箇所において、所定の名目上の周波数とは異なるものであり得ることは理解されるだろう。さらに、稼働条件に基づいて、グリッド運用者によって、所定の周波数自体も変更されてよい(例えば、ヨーロッパ/USにおいて50Hz/60Hzといった、名目上の参照値からの変更)。
【0015】
(第1期間において)差異を検知する前に、アセット群は、元々構成されていた集合的な応答に基づいて稼働(元々構成されていた応答に応じた、グリッド周波数の変化に基づいて、エネルギーフロー調節を実施)してもよい。そして、差異の検知と再構成(再構成された応答に応じた、グリッド周波数の変化に基づいて、エネルギーフロー調節を実施)の後、アセット群における、一つまたはそれ以上アセットは(第2期間において)、再構成された応答に基づいて稼働する。
【0016】
再構成工程では、アセット群のうち、一つまたはそれ以上のアセット(または各アセット)に対し、(例えば、周波数分岐持続する間、一時的に)それぞれのエネルギーフロー調節の大きさを減少(または増加)させるよう構成してもよい。あるいは、再構成工程では、アセット群のうち、一つまたはそれ以上のアセット(または各アセット)に対し、(例えば、周波数の差異が持続する間)そのアセットに対して形成されたエネルギーフロー調節の提供を停止(または中断)させるよう構成してもよい。したがって、構成されたエネルギーフロー調節を変更した場合、例えば、グリッド周波数が安定するまで、構成されたエネルギーフロー調節を実施しなくてもよい。
【0017】
第1グリッド周波数は、例えば、第1アセットで、またはその近傍で測定された、第1アセットの局所的グリッド周波数である。第2グリッド周波数は、例えば、第2アセットで、またはその近傍で測定された、第2アセットの局所的グリッド周波数である。
【0018】
アセット(またはその他のシステム要素)に紐づいた局所的グリッド周波数として、ここで参照されるのは、アセット近傍で、または、アセットに(地理的に、または、トポロジー的に)近いグリッド位置で測定されたグリッド周波数である。例えば、局所的グリッド周波数は、アセットのグリッド接続地点(アセットがグリッドに接続する地点)における、グリッドの周波数である。例えば、局所的グリッド周波数は、アセットから、1km以内、好ましくは、100m以内、より好ましくは、10m以内で測定された任意のグリッド数であってもよい(ここでの距離は、直線的な地理的距離であってもよいし、接続距離であってもよい)。アセットは、アセット近傍、一般的には、アセットが位置する現場のグリッド接続地点(またはその直下)での局所的グリッド周波数を感知する、それぞれの周波数センサを備えているか、または、それぞれの周波数センサに接続していてもよい。
【0019】
方法は、アセット群のうち、特定の一アセットに対し、特定のエネルギーフロー調節を実施する際、特定の一アセットと紐づけて、局所的グリッド周波数を決定する、決定工程と、局所的グリッド周波数に対する、特定のエネルギーフロー調節の期待できる効果を評価する、評価工程と、評価に応じて、特定のエネルギーフロー調節の実施を停止または変更する停止・変更工程と、を含んでいてもよい。
【0020】
好ましくは、方法は、エネルギーフロー調節が、(例えば、測定された周波数間の差異が増加することにより)検知されたグリッド周波数の差異を悪化させ得るかどうかの判定に応じて、特定のエネルギーフロー調節の実施を停止(もしくは変更)する、停止工程をさらに含んでいてもよい。あるいは、または、それに追加して、方法は、エネルギーフロー調節が、局所的グリッド周波数の、所定のグリッド周波数からのずれを引き起こす、または増大させるかどうかの判定に応じて、特定のエネルギーフロー調節を停止する(もしくは変更する)、停止工程を含んでいてもよい。停止工程は、任意に、エネルギーフロー調節により、局所的グリッド周波数が低くなり、局所的グリッド周波数が、既に所定のグリッド周波数を下回るかどうか、または、エネルギーフロー調節により、局所的グリッド周波数が増加し、局所的グリッド周波数が、既に所定のグリッド周波数を上回るかどうか、の判定に応じて、行われる。
【0021】
方法は、エネルギーフロー調節が、局所的グリッド周波数の調節を停止するかどうかの判定に応じて、特定のエネルギーフロー調節を停止する(あるいは変更する)、停止工程を含んでいてもよい。局所的グリッド周波数は、局所的グリッド周波数の所要の修正を、任意には閾値範囲だけ超える。
【0022】
エネルギーフロー調節を停止するかわりに、エネルギーフロー調節のレベルを変更してもよい。例えば、エネルギーフローにおける、構成された増加または減少を変更してもよい。
【0023】
好ましくは、方法は、周波数における差異が解消されたと判定された場合、または、差異の大きさが閾値を下回ると判定された場合、アセットの構成を構成された集合的な応答に戻す、復帰工程を含む。
【0024】
一実施形態において、集合的な応答は、集約アルゴリズムをアセット群に適用することに基づいて構成され、方法は、グリッド周波数における差異を検知した場合、アセット群を構成するアセットごとに測定した各グリッド周波数に応じて、アセット群を複数のアセットクラスタに分割する分割工程と、各アセットクラスタに対し、クラスタ内のアセットのみを対象とした、一つまたはそれ以上の集合的な応答を構成するため、集約アルゴリズムをクラスタ内のアセットに適用する適用工程と、を含む。
【0025】
本発明のさらなる形態において(第1アセットと組み合わせ可能に)、所定のグリッド周波数で稼働する電力供給グリッドに接続されたアセット群を制御する方法であって、該アセットは、電気エネルギーを供給する、および/または、グリッドからの電気エネルギーを消費するよう設けられたアセットであって、少なくとも一部のアセットは、グリッドへの、またはグリッドからのエネルギーフローを調節し、グリッドにおける周波数変動に対処するよう構成される。この方法は、グリッド周波数における変動に対する、一つまたはそれ以上の集合的な第1応答を構成するよう、集約アルゴリズムを、アセット群におけるアセットを適用する、適用工程と、第1期間で構成された集合的な第1応答に応じて、アセット群におけるアセットを制御する、制御工程と、グリッド内の異なる箇所で測定された、第1グリッド周波数および第2グリッド周波数の間の差異を検知する、検知工程と、差異が検知された場合に実施される、アセット群を構成するアセットごとに測定した各グリッド周波数に応じて、アセット群を複数のアセットクラスタに分割する、分割工程、および、各アセットクラスタに対し、クラスタ内のアセットのみを対象とした、一つまたはそれ以上の集合的な第2応答を構成するため、集約アルゴリズムをクラスタ内のアセットに適用する、適用工程と、を含む。集合的な応答には、選択されたアセット群の各アセットおよびグリッドの間のエネルギーフローをそれぞれ調節することが含まれ、該調節は、グリッド周波数における変動への対処と組み合わせられる。方法は、さらに、第2期間で構成された集合的な第2応答のそれぞれに応じて(好ましくは、集合的な第1応答には応じず)、各アセットクラスタにおけるアセットを制御する、制御工程を含む。以下の任意の特徴を、本発明の上記の形態に適用してもよい。
【0026】
第1グリッド周波数および第2グリッド周波数は、集合的な応答を提供するよう構成された、アセット群のそれぞれのアセットに紐づけられたグリッド周波数(例えば、局所的グリッド周波数)であってもよい。
【0027】
各グリッド周波数に応じて、アセット群を複数のアセットクラスタに分割する、分割工程は、各グリッド周波数に基づいて、アセットをクラスタに割り当てる割当工程を含んでいてもよい。これには、複数のアセット群における各アセットに対し、そのアセットの局所的グリッド周波数を決定する、決定工程と、複数のアセットのそれぞれを、局所的グリッド周波数に応じてアセットクラスタに割り当てる、割当工程と、を含んでいてもよい。
【0028】
方法は、アセットを分割する(クラスタリングする)分割工程であって、同様の局所的グリッド周波数を有するアセットを、同じクラスタに割り当てる、割当工程と、互いの指定範囲にある、および/または、(クラスタの)基準周波数の範囲にある局所的グリッド周波数を有するアセットを、同じクラスタに割り当てる、割当工程と、クラスタ内のアセットが、その他のクラスタのアセットのグリッド周波数と比較して、互いに近いグリッド周波数を持つよう、アセットをクラスタに割り当てる、割当工程と、のうち、一つまたはそれ以上の工程によって実施される、分割工程をさらに含んでいてもよい。分割工程は、好ましくは、クラスタリングアルゴリズムを用いて、任意には、k-meansクラスタリング法に基づいて、実施される。
【0029】
アセットクラスタへの分割後、異なるクラスタ(例えば、対応する、異なる周波数または周波数範囲)のアセットによる集合的な応答が、好ましくは、もう実施されないよう、集成をクラスタ内で行う。
【0030】
周波数の差異を検知する検知工程は、(アセット群のける)少なくとも一つのアセット、好ましくは、集合的な応答を提供するよう構成されたアセット群の一つで、実施される。好ましくは、検知工程は、特定の一アセットで測定された局所的グリッド周波数と、アセット群のうち、別のアセット群における特定の一アセットで測定されたグリッド周波数と、のうち、一方あるいは両方に基づいて、アセット群のうち、特定の一アセットで実施される。
【0031】
あるいは、アセットのグリッド周波数測定値に基づいて、または、任意に、制御部に対して局所的に測定された、中央グリッド周波数測定値に基づいて、検知工程が、中央制御部によって任意に実施される。中央グリッド周波数測定値は、例えば、制御下にある任意のアセットとは紐づかない、グリッド箇所におけるグリッド周波数測定値に相当する。
【0032】
例えば、第1グリッド周波数および第2グリッド周波数は、特定時間における単一測定値、または、時間窓において、周波数から得た代表値、例えば、時間窓(例えば、測定時間に対する、直近N秒)に対する平均値として、測定されてもよい。したがって、「第1グリッド周波数」および「第2グリッド周波数」という用語や、その他の周波数測定値を指すものは、特定の箇所/時間のグリッド周波数を代表する周波数データから抽出した、いかなる特徴量も含む。
【0033】
好ましくは、差異を検知する検知工程は、好ましくは、差異が閾差異を越えるよう、第1グリッド周波数および第2グリッド周波数の間の差異を検知する、検知工程と、第1グリッド周波数および第2グリッド周波数のうち、任意に、少なくとも所定の閾量だけ、所定のグリッド周波数を下回る一方の周波数を検知し、第1グリッド周波数および第2グリッド周波数のうち、任意に、少なくとも所定の閾量だけ、所定のグリッド周波数を越えるもう一方の周波数を検知する、検知工程と、のうち、一方または両方を含む。差異は、上記条件のどちらか一方に基づいて、あるいは、両方に基づいて、検知されてもよい。
【0034】
周波数変動に対処するよう組み合わされた所定の応答(調節)を実現するため、集合的な応答をみせるよう構成されたアセットは、異なりつつ、補完的なパワー応答(エネルギーフロー調節)を実施するよう構成される。
【0035】
好ましくは、構成工程は、補完的なパワー応答特性を有する、二つあるいはそれ以上のアセットを特定する、特定工程と、集合的な応答を提供するため、特定されたアセットを選択する、選択工程と、を含む。
【0036】
集合的な応答をみせるよう構成されたアセットは、エネルギーフローを調整することで、周波数変動に対して、異なる応答特性を有するアセットであり、異なる応答特性は、任意に、異なる電力吸引能力または電力供給と、周波数変動に対する電力(エネルギーフロー)を増加または減少させる、異なる能力と、エネルギーフロー調節を実現するための、異なる応答時間と、エネルギーフロー調節に対する、異なるランプ速度と、アセットがエネルギーフロー調節を実施できる、異なる時間と、異なるアセットタイプと、のうち、一つまたはそれ以上を含み、異なるアセットタイプは、電力が供給されず、または消費されないオフ状態と、所定の電力供給レベルまたは電力消費レベルのそれぞれを実現する、一つまたはそれ以上の稼働状態とを含む、複数の個別の状態のうちの一つにおいて、選択的に稼働可能に構成される、個別のアセットタイプと、修正対象となる周波数のずれに対して直線的に変化する、任意の電力供給または電力消費の、連続変化レベルを供給できるよう構成された、連続的なアセットタイプと、を含み得る。
【0037】
一つまたはそれ以上の集合的な応答の構成および/またはアセットクラスタへの分割は、中央制御部、または、アセット群のうち、一つまたはそれ以上のアセットによって、任意に実施される。一つまたはそれ以上の集合的な応答の構成は、アセット間のデータ交換に応じて、アセット群のアセットによって協働的に実施され、交換されたデータは、好ましくは、アセットの稼働モデルを含む。
【0038】
好ましくは、一つまたはそれ以上の集合的な応答の構成は、集合的な応答を提供するのに適したアセット群を決定するためのアセット間の交渉と、アセット群のアセット間で交換された情報に基づく、アセット群のアセットによる集合的な応答の構成と、を含む。方法は、アセット間でグリッド周波数情報を交換する、情報交換工程を含んでいてもよい。該交渉は、グリッド周波数情報に応じて行われる。任意に閾差異を越える、互いに異なる/分岐するグリッド周波数を有するアセットは、好ましくは、集合的な応答を提供するアセット群を形成しないよう構成される。
【0039】
方法は、グリッドにおける、またはアセット群のアセット間におけるグリッド周波数の差異の検知に応じて、アセット群のアセット間の協働を停止または変更する工程、および/または、アセット群の再交渉を開始する工程をさらに含んでいてもよい。協働を停止または変更する工程は、アセット群のアセットによる集合的な応答(または、アセット群の一つまたはそれ以上アセットによる集合的な応答に、特に貢献するもの)を停止または変更することを含んでいてもよい。
【0040】
なお、ここで使用される「差異」という用語は、差異、または、ある閾値を越えた量の間の差異を指してもよい(閾値は、例えば、周波数の差異を判定する前に、公差を画定し、例えば、マイナーで軽微な変動や測定エラーではない、実際の有意義な差異を提示する)。
【0041】
中央制御部で受信したグリッド周波数測定値に、ほぼリアルタイムで応答するかたちで、例えば、周波数変動に対処するよう集合するアセットに、電力セットポイントを送ることで、中央制御部が集合的な応答を構成してもよい。
【0042】
あるいは、好ましくは、中央制御部によって、それぞれの所要の応答を特定する制御パラメータを使用し、アセット群の各アセットを構成することで、周波数変動および/または周波数の差異よりも先に、集合的な応答を構成してもよい。好ましくは、アセットで、またはアセットに対して局所的に測定した局所的グリッド周波数に基づいて、周波数変動の(局所的)検知に応じた構成後に、自発的に事前に構成された応答に応じて、アセット群の各アセットは、エネルギーフロー調節を実施してもよい。構成された応答は、測定された周波数/周波数の変化に応じたエネルギーフロー調節を特定する、応答機能を任意に含む。
【0043】
上述の任意の形態と組み合わせ可能な、本発明のさらなる形態において、電力供給グリッドのグリッド周波数における不均衡を修正する方法を提供する。この方法は、エネルギーアセット群の、グリッド周波数における変動に対する集合的な応答を構成する構成工程と、アセット群中の第1アセットを含むグリッドの一部で測定された、第1グリッド周波数および、アセット群中の第2アセットを含むグリッドの一部で測定された、第2グリッド周波数の間の差異を検知する検知工程と、差異の検知に応じて、第1アセットおよび第2アセットのうち、少なくとも一つを再構成し、そのアセットに対して再構成されたエネルギーフロー調節を変更する、再構成工程と、を含み、集合的な応答には、アセット群の各アセットおよびグリッドの間のエネルギーフローをそれぞれ調節することが含まれ、該調節は、グリッド周波数における変動への対処と組み合わせられる。方法は、上述した方法の、さらなる工程または特徴を含んでいてもよい。
【0044】
本発明のさらなる形態において、記載の方法を実行する手段を、連想メモリを有する、一つまたはそれ以上のプロセッサのかたちで任意に有する、制御装置、アセット制御部、またはシステムが提供される。
【0045】
さらなる形態において、本発明は、制御システムを提供する。制御システムは、少なくとも一つのプロセッサと、電力供給グリッドの異なる箇所の電力の第1送信周波数および第2送信周波数をそれぞれ感知する、少なくとも第1グリッド周波数センサおよび第2グリッド周波数センサと、電力供給グリッドに接続された、エネルギー供給アセットまたはエネルギー消費アセットを制御する、制御インターフェイスと、を備える。少なくとも一つのプロセッサは、アセットおよびグリッドの間のエネルギーフローを変更することで、グリッド周波数における変動に対処するよう、(例えば、第1期間に)アセットを制御し、第1周波数センサから受信した第1グリッド周波数の測定値(または第1周波数センサから受信した周波数データに由来する第1グリッド周波数の測定値)またはおよび第2周波数センサから受信した第2グリッド周波数の測定値(または第2周波数センサから受信した周波数データに由来する第2グリッド周波数の測定値)の間の差異を、(例えば、第1期間の後で)検知し、差異の検知に応じて、(例えば、第2期間に)アセットの制御を変更または停止して、グリッド周波数における変動に対処する、ために配置される。システムは、記載の方法を実施するよう、設けられてもよい。例えば、システムは、記載の方法を実施するためのソフトウェアコードを保存するデータストレージを備え、少なくとも一つのプロセッサは、記載の方法を実施するよう構成される。
【0046】
さらなる形態において、本発明は、(有形の)コンピュータで読み取り可能な媒体を提供する。該媒体は、ソフトウェアコードを備え、ソフトウェアコードは、一つまたはそれ以上のデータ処理装置に、記載の方法を実行させる際に適用される。
【0047】
本発明の一形態におけるいかなる特徴も、任意の適切な組み合わせとして、本発明の他の形態に応用できる。特に、方法に関する形態は、装置、コンピュータプログラム等に関する形態に応用でき、その逆もまた可能である。
【0048】
さらに、ハードウェアで実現された特徴は、一般的に、ソフトウェアでも実現することができ、その逆もまた可能である。ソフトウェアおよびハードウェアによる特徴に言及した、いかなるも事項も、そのように解釈される。
【0049】
本発明の好ましい特徴を、添付の図面を参照し、純粋な例示として、説明する。添付の図面は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1A】電力供給グリッドの電力アセットを制御するアプローチを示し、リアルタイムの中央制御アプローチを示す。
図1B】電力供給グリッドの電力アセットを制御するアプローチを示し、ハイブリッド方式の制御アプローチを示す。
図1C】電力供給グリッドの電力アセットを制御するアプローチを示し、分布式自己組織制御アプローチを示す。
図2A】電力供給グリッドの周波数分岐を示す。
図2B】周波数分岐における、周波数制御応答の例を示す。
図3】周波数分岐を検知するプロセスを示す。
図4A】アセットを周波数ドメインでクラスタリングする例を示す。
図4B】アセットをクラスタリングし、アセットクラスタに基づいた集成を実施するプロセスを示す。
図5図5は、リアルタイムの中央制御アプローチをとる際の周波数制御応答を構成するプロセスを示す。
図6図6は、ハイブリッド方式の制御アプローチをとる際の周波数制御応答を構成するプロセスを示す。
図7図7は、分布式自己組織制御アプローチをとる際の周波数制御応答の修正を模式的に示す。
図8図8は、分布式自己組織制御アプローチをとる際の周波数制御応答を適応するプロセスをさらに示す、プロセス図である。
図9図9は、上述の方法で使用される中央制御装置およびアセット制御部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
アセットおよび送電グリッドの間の電力フロー(供給または消費)の調整は、需要応答とも称する。グリッド周波数に影響し、例えば、送信グリッド上の周波数変動に応答・対処するために、需要応答を実施することを、ここでは、周波数制御応答と称する。
【0052】
なお、周波数変動に対処するため、運用サービスを行うことは、FrequencyContainmentReserve(FCR)としても知られている。一方、ここで使用される「周波数制御応答」という用語は、アセットの電力供給/消費を修正することで、予備を利用する制御行動を指す。
【0053】
電力分配/送電グリッド上のAC(交流)送信周波数における変動は、グリッドからの電力消費またはグリッドへの電力供給を調節することで、対処できる。具体的には、ここで、参照または名目上の周波数値とも称される、標準期待値(例えば、ヨーロッパで50Hz)を上回るグリッド周波数の増加は、消費を増加させるか、供給を減らすことで対処することができる。一方、グリッド周波数の減少は、消費を減らすか、供給を増加させることで対処することができる。
【0054】
場合によっては、グリッドに接続された、適切なエネルギー消費アセットまたはエネルギー供給アセットを有する供給者は、グリッド運用者(例えば、送電システムオペレータ、つまり、TSO)と取り決めをし、一つまたはそれ以上アセットの供給または消費を調整することで、需要応答を提供し、周波数変動に対処することができる。例えば、エネルギー消費アセットは、工場や機械等の産業ロード、電気自動車の充電所、家庭内電力供給地点、家庭内ロード等であってもよい。エネルギー供給アセットは、例えば、発電所(例えば、火力発電所、風力タービン、ソーラーパネル等)や、バッテリ等の蓄電装置である。複数の個人消費装置および/または供給装置は、ともに一つのアセットとして稼働してもよい(例えば、風力発電所のタービン、工場内の種々の機械およびシステム)。場合によっては、アセットは、グリッドにエネルギーを供給し、グリッドからエネルギーを消費するという両方向を実施してもよい(例えば、工場が、自前の発電所を有し、場合によって、グリッドからの過剰な需要を消費し、グリッドに過剰な発電容量を供給するケースや、グリッドからの電力吸引を蓄電し、その後、グリッドに蓄電した電力を供給することができるバッテリなど)。
【0055】
一般的に、周波数制御おいて、供給者は、周波数のずれに対し、次から次へと直線的に応答する電力出力を提供しなければならない。これは、アセットレベルで、または、集成技術を使用したアセット群レベルで、実施することができる。周波数制御サービスは、サービスに従事するアセットの範囲内で行われなければならない。
【0056】
アセット群レベルでサービスを提供する場合、システムは、アセットを組み合わせることで、全ての個別応答の集合に対して、より良い応答を提供できるという強みを活かすことができる。以下に例を挙げる。
・それぞれが、周波数スペクトルの異なる部位におけるずれに応答するよう、構成されたアセット。例えば、第1アセットは、周波数が第1周波数帯であるとき、その出力を調節することで応答する。一方、第2アセットは、第2周波数帯に応答する。アセットは、協働してもよい。例えば、周波数が、名目上の値からさらにずれると、他のアセットが、周波数制御応答を開始する。
・関連ランプ制約に対応できず、遅れているアセットに対し、補完する高速アセット。例えば、バッテリの応答は素早い(しかし、その出力容量は限られている)一方で、発電所は、開始から所要の出力レベルに到達するまで時間がかかるものの、高い出力容量を有する。こうした状況で、素早いアセットは、初期段階で応答するよう構成され得るが、一方の低速アセットは、出力を強化する。低速アセットの応答速度は、応答遅延および/または低速のランプ速度によって特徴付けられる。
・バイナリアセット等の、個別のアセットの個別の挙動を補完する連続アセット。バイナリアセットは、オンまたはオフになるアセットである。つまり、稼働状態(オン)のときに、一定レベルで供給(または消費)し、非稼働状態(オフ)のときに、供給(または消費)を一切しない。他の個別のアセットは、(オフ状態に加えて)複数の異なる電力レベルを有していてもよい。連続アセットは、制御信号に応じて、および/または、所要の周波数調節または局所的に測定された周波数のずれに応じて、供給出力または消費を徐々に(例えば、直線的に)変更可能なアセットである。したがって、一例において、連続アセットは、個別のアセットによる応答(例えば、電力出力)における、いかなる不足分に対しても補完するよう、制御され得る。
・一方またはもう一方が、部分的にあるいは全体的に不能になった際、互いに補完しあうアセット。例えば、アセットのなかには、特定の時間窓において、需要応答しか実行できないものもある(例えば、太陽光発電所は、日中のみ稼働でき、天候にも左右される。産業発電所は、産業施設の維持に使用されていない時にのみ、稼働できる)。
【0057】
集合的な周波数制御応答の具体例において、バッテリ等の高速エネルギー装置(一般的に、エネルギーの限度がある)および産業用炉等の低速エネルギーロード(一般的に、エネルギー限度がない)の両方が、周波数のずれに対して応答する際に使用される。一般的に、低速産業ロードは、TSOによって規定された要項に沿った周波数制御サービスを、完全に提供することはできず、低速のランプ速度を補完できるようなバッテリ等のパートナーを必要とする。かわりに、低速ロードは、スループット(サイクル数)およびバッテリの限られたエネルギー容量を補完する。
【0058】
アセットを集める主な目的は、一般的に、可能な限り直線的な応答を提供することにある。したがって、効率的な集成は、組み合わせの最適化問題としてみなすことができる。
【0059】
アセットの集成を実現する方法は、グリッドにおいてアセットを制御し、調整する際に利用するアプローチに依存する。多数の制御アプローチが考えられるが、そのうちの一部を図1A乃至図1Cに示した。
【0060】
図1Aは、外部セットポイント制御を利用した、リアルタイムの中央制御アプローチを示す。このアプローチでは、電力セットポイントは、アセットから離れた位置(例えば、アセットの地理的半径外)で算出される。一例において、バッテリは、セットポイントが離れたところにあるサーバーまたは異なるアセットで算出される、周波数制御応答を提供する。図1Aに示す例において、中央制御部(例えば、サーバー)から、電力供給グリッド100に接続された、全てまたは一部のアセットに、制御信号を送信することで、制御部102が中央制御を行う。本例において、中央制御部102から制御データを受信する、グリッド100内の二つのアセット「A」104および「B」106が示されている。制御データは、アセットで必要とされる電力入力/出力レベル(「セットポイント」は、例えば、メガワットで測定される)を決定し、現状の電力レベルからの増加または減少として、絶対値または相対値で特定され得る。その結果、アセットのセットポイント(例えば、バッテリ)は、アセットに対して局所的に画定されない(ここで、「局所」は、例えば、アセットのグリッド接続地点下を意味する)。
【0061】
制御部は、リアルタイム制御を行う(例えば、特定の更新周波数で、および/または、測定されたグリッド周波数の変化に応じて、セットポイントを更新する)。制御データは、中央部で測定された単一のグリッド周波数(図面において「f」と表記)に基づくものであってもよく、例えば、グリッド全体にわたって、周波数が略同一であるという前提において、制御部に対して局所的に、あるいは他の中央位置で測定されたものに基づいていてもよい。あるいは、アセットは、その周波数測定値を、セットポイントを算出する制御部に向かって上流側に送信できる。制御部は、セットポイントを演算し、それをアセットに返信する。中央制御部が示されているが、実際には、制御部は、どこに位置していてもよい。例えば、特定のアセットが制御機能を実行する演算ノードを備え、他のアセットに対して、制御データを提供してもよい。
【0062】
制御部は、全てのアセットを制御してもよく、また、要求に応じて、部分集合のみを制御してもよい。ここで考える一連の利用可能なアセットは、一般的に、需要応答および/または周波数制御応答を実施可能なものである(アセット群と称する)。例えば、これらは、需要制御を実施することに合意した供給者によって、グリッド運用者および/またはグリッド運用者自身によって提供されたアセットに提供されるアセットを含む。グリッドは、一般的に、需要制御が不可能なアセットをより多く抱えている。
【0063】
中央制御部は、必要であれば、前述の通り、アセット集成を適用する。例えば、測定されたグリッド周波数に基づいて、高速アセットと低速アセットとをリアルタイムで構成し、補完的周波数制御応答を提供する。
【0064】
図1Bは、前述した特許文献である特許文献1にさらに記載される、ハイブリッド方式の制御アプローチを示す。
【0065】
このアプローチにおいて、中央制御部102は、グリッド運用者から、特定のポートフォリオ応答機能を規定する契約条件を受信する。特定のポートフォリオ応答機能は、グリッドで局所的に測定可能な信号機能として、供給されるフレキシブルな電力量を規定する。(例えば、周波数帯、応答時間、そしてロードのポートフォリオ全体がどれくらいの電力を出力するべきか、周波数をその周波数帯の最も低い値まで下げるべきか)。こうした条件に基づいて、中央部は、各アセットの処理部を構成するよう使用されるポートフォリオ内の各アセットに対する一連の局所制御パラメータを算出する。これらの制御パラメータは、アセットに対する局所応答機能を示し、これは、各個別アセットによって供給される電力量(または、同様に消費される電力量)を、局所的に測定されたグリッド周波数の変化に対する応答として定義する。例えば、構成された応答は、アセットが応答および/または提供される応答レベルを提供すべき周波数帯を表していてもよい。
【0066】
制御パラメータは、各アセットに送信され、その後、各アセットは、各アセットが局所的に測定した周波数のずれに基づいて、リアルタイムでその電力を管理することができるようになる。したがって、上記の中央制御の例とは異なり、グリッド運用者は、ロードリアルタイムで管理しない。こうした局所応答機能の典型的な例として、グリッド周波数のずれと、供給されるフレキシブルな電力量との間の直線的な関係性が挙げられる(周波数閾値に基づく平易なオン/オフ応答を提供する平易なバイナリアセット等、非直線的応答機能も可能ではある。)。
【0067】
図1Bの例では、前もって、アセットAおよびアセットBが、それぞれ、応答機能108および110とともに構成される。その後、各アセットは、局所的に測定されたグリッド周波数(f1,f2)およびそれぞれの応答機能に局所的に基づいた、事前に構成された応答を実行する。例えば、各アセットは、現状のグリッド周波数およびその電力消費を検知する。例えば、アセットの周波数が、アセットのトリガーポイントに達すると(または、構成された周波数のサブバンドに入ると)、周波数制御応答が開始され、アセットは、すぐに、独立して、その応答機能を使用し、その電力消費/電力供給を変更する。
【0068】
構成された応答機能は、必要であれば、その時々で、中央制御部によって更新される。
【0069】
上述の通り、中央制御部は、異なるアセットによる応答を調整し、必要であれば、アセット集成を適用する。例えば、組み合わせた応答が、周波数のずれに対し、所望の直線的(に近い)応答を実現するように、異なる周波数帯内で(個別に、または、累積的に)応答する、それぞれの性能に基づいて、アセットを構成してもよい。さらに、個々のアセットは、互いの周波数制御応答の寄与度を必ずしも把握する必要はなく、補完的アセット(例えば、高速アセットと低速アセット)は、所要の集合的な応答が実現するように、補完的応答機能を使用するよう構成されてもよい。
【0070】
図1Cは、分布式自己組織制御アプローチを示す。このアプローチでは、アセット同士が、通信網を介して、互いに直接通信し、それぞれの性能について、例えば、アセットの応答特性を示す動作モデルの形(例えば、ここでは、アセットは、バイナリアセットまたは連続アセット、電力出力/消費性能、ランプ速度等)で、情報を交換し合う。モデルを交換することで、アセットは、他のアセットが周波数変化にどのように応答するか(例えば、アセットの応答が遅いかどうか)、を把握することができる。
【0071】
そして、交換した情報をもとに、アセットは、自律的に、適切な集成群を決定・交渉する(例えば、補完的な需要応答性能を有する高速アセットと低速アセット同士を、同じ集成群としてペアリングする)。その後、交換したモデルを元に、同じアセット群の他の集合アセットの、周波数のずれに対して予測される応答を考慮に入れながら、各アセットが、局所的に測定されたグリッド周波数に基づいて、リアルタイム制御を行うことができる。
【0072】
アセット間でモデルを交換するため、ロードおよびソースを直接制御する中央部を必要としない。また、ロード/ソース間でリアルタイムにデータをやり取りする必要もない。したがって、通信障害や情報の欠如といった状況に対する、障害許容力を有する。
【0073】
ピア・ツー・ピアの相互作用により、また、提供される特定の要求―応答サービスに基づいて、アセット(ロード/電力ソース)の集合群が形成される。アセット同士で、モデルを交換する。モデルを実行し、特定の需要応答サービスに対して、潜在パートナーが提供し得るものを判断した後、受信したアセットは、その潜在パートナーと集成群を形成するかどうかを決定する。時間の経過とともに学習した、他のロードおよびソースに対する履歴データに基づいて、集成群を形成してもよい。そして、自身の制御方針を算出するため、集成群のアセットは、アセット群内でパートナーとなったアセットのモデルに依存し得る。
【0074】
このプロセスには、一つまたはそれ以上の集成群を形成するため、アセット同士が通信する交渉フェーズが含まれる。この工程において、一般的に、アセットは、他のアセット、または、改善された周波数制御応答を提供するために協働できるアセットを模索する。有利な点として、装置間の通信は、ピア・ツー・ピアであり、中央部を通す必要がないため、通信障害に対する障害許容力を有することができる。
【0075】
したがって、アセットのモデルは、他のアセットの制御方針決定時に利用することができる。稼働時、各アセットは、集成群をともに形成する、他の装置から受信したモデルを考慮に入れながら、自身の局所制御方針に従い、結果として、グリッドにおける周波数変動に対し、調整され、組み焦られた応答を提供する。
【0076】
通信および制御
上述の制御構成において、アセットは、例えば、狭域帯IoT(Internet of Things:物のインターネット)、ADSL、ファイバーネットワーク、4Gやその他の地域別の移動電話システム、イーサネット等、任意の適切な通信技術および媒体を利用し、有線および/または無線ネットワークを含む、任意の適切な通信手段を介して、互いに通信してもよい。ネットワークは、接続に特化した私設網やインターネットのような公設網を含んでもよい。エネルギーアセットとの、そして、エネルギーアセット間の通信は、中央制御部等の中央部を介して、および/または、その制御下で、またはアセット間同士の直接のピア・ツー・ピア通信を利用することで、実行されてもよい。
【0077】
上述した種々のアプローチにおいて、アセットは、処理機能(例えば、リアルタイムの中央制御(図1A)、アセットに格納された事前に構成された応答機能を利用し、局所周波数をモニタリングし、周波数制御応答を実行すること(図1B)、または、ピア・ツー・ピア交渉およびモデルベースの制御(図1C)に応じて、周波数制御応答を実行する機能)を有することが示された。こうした処理機能は、装置エージェントを使用することで実行されてもよく、装置エージェントは、制御対象のアセット付近のローカルコンピューティングハードウェアで実行されるソフトウェアである。一例として、このローカル制御部は、アセットと一体化された制御部が内蔵されていてもよい。別の例として、ローカル接続された制御部が設けられていてもよい。こうした制御部は、例えば、制御部で実行している、別体の装置エージェントを介して、独立して、複数のアセットを制御してもよい。例えば、それぞれに対し、別体の制御パラメータ(例えば、応答機能)および/または装置エージェントを維持する、ネットワーク接続された単一の制御コンピュータによって、一連のバッテリを制御してもよい。図1Cの場合、装置エージェントは、ピア・ツー・ピア交渉、周波数データ配信等を実行する。装置エージェントは、これらを、例えば、REstore N.V.社(アントワープ、ベルギー王国)から入手可能なFlexTract制御部を使用して、汎用コンピュータまたは専用コンピューティングハードウェアにおいて、実行してもよい。したがって、ここで言及されるアセットにおいて、任意の一体化または関連制御ハードウェアとともに、エネルギー供給装置またはエネルギー消費装置自体を、一般的に含むものとする。
【0078】
外部グリッドセンサが、電力グリッドに接続され、グリッド周波数、電圧、電力品質等の変数を感知し、こうした情報をローカルコンピューティングハードウェア上で装置エージェントへ送信する。ローカル制御部はまた、他のアセットおよび/または(使用する場合は)中央制御部と通信するための通信網とも接続される。
【0079】
図1A乃至図1Cでは、種々の可能な制御体系を示したが、その他任意の適切な制御体系を、本発明の実施形態において採用してもよい。
【0080】
周波数分岐においてアセット集成を採用する場合
上述の集成技術は、一般的に、全てのアセット群におけるアセットで周波数がほぼ同じである場合に、良質のサービスを提供することができる。しかしながら、既に説明した通り、グリッドの急な非同期化等により、グリッドの異なる領域で周波数がばらつき、周波数差異が生じた場合に、問題が起こる。このような場合に、上述の集成により、個々のアセットが局所周波数に対処できるようになる。
【0081】
したがって、本発明の実施形態は、周波数分岐において、グリッド上で集成が有し得る悪影響を低減する制御体制を提供するものである。本開示の技術の目的は、種々の異なる集成体制に適するアプローチを提供することにあり、それにより、周波数分岐が起こった際に状況を悪化させることなく、むしろ改善させる。
【0082】
例えば、セットポイントを介して、アセットおよび遠隔の制御部の間で通信が行われる、外部リアルタイム制御アプローチ(例えば、図1A)や、中央部で決定した制御方針に基づいて、アセットが自律的に行動する、ハイブリッド方式のアプローチ(図1B)において、セットポイントやバッテリに送信される制御方針が、他のアセット群におけるアセットの挙動に関知しない場合、周波数分岐は問題を引き起こすことはない。しかしながら、セットポイントまたは制御方針が、他のアセット群におけるアセットのパフォーマンスに関知する場合、問題が起こる。具体的には、バッテリアセットは、バイナリ(オン/オフ)動作に限定されるアセットや、低速(低ランプ速度)アセットといった、機能に支障がある他のアセットを補完するよう構成される。それぞれのアセットの位置における周波数のずれが、互いに逆方向であり、バッテリが、それ自体の局所周波数測定値を使用しているか、中央部または他のアセットの数値を使用している場合、バッテリが設けられた箇所の状況を、実際に、さらに悪化させることになる。同様に、分散型自己組織化アプローチ(図1C)を利用して、アセットが動作する場合、アセットによって実施される制御方針は、一般的に、グリッド周波数が同一であるという前提に基づいており、状況を悪化させ得るアセットで周波数分岐が起こると、同様の結果になる可能性がある。
【0083】
考えられるケースを図2Aに例示する。本例において、図内の全てのアセットは、同一の集成アセット群の一部であり、アセットBは、バッテリであり、アセットAは、(例えば、周波数帯の一部のみしかカバーできない、分離された状態にある、低速かつ限られた時間にしか活動的に周波数制御応答を提供できない等の理由で)唯一、充分な周波数制御応答を提供できない不完全なアセットである。そのため、アセットAおよびアセットBは、他のアセットの応答を補足するよう調整された、各アセットの個別応答により、集合的な応答を実施するよう構成されている。周波数分岐が起こると、アセットAを含むグリッド領域202で測定されたグリッド周波数(例えば、アセットに対して局所的に測定された周波数f1)は、名目上のグリッド周波数から-50mHzのずれ(例えば、49.950Hzの周波数)を示す。一方、アセットBを含むグリッド領域204で測定されたグリッド周波数(例えば、アセットに対して局所的に測定された周波数f5)は、+100mHzのずれ(例えば、50.100Hzの周波数)を示す。
【0084】
この例では、アセットAがセパレート型のアセットであり、バッテリが、残りの欠陥を修正する必要があると仮定され、アセットAが局所周波数のずれ(-50mHz)に応答し、-1メガワットの電力フロー変化をもたらすと想定される。なお、こうした例において、負の電力フロー図は、電力吸引の減少、または、グリッドへの電力供給の増加に相当する(本例では、-1メガワットは、グリッドへの1メガワットの供給に相当し得る)ように、電力フロー図は、グリッドからの電力吸引として示される。
【0085】
アセットBは、アセットAのランプ速度を修正するよう構成される(アセットAは、完全な電力調整に至るまで時間がかかるため)。例えば、アセットBは、アセットAで測定されたグリッド周波数のずれに基づき、(グリッドへの供給を増加させて)-1メガワットだけ傾斜し得る。しかし、これにより、アセットBでの周波数のずれ(+100mHz)が生じ、局所的グリッド周波数がより高くなってしまう。あるいは、アセットBは、それ自体の局所周波数測定値を利用して応答を決定し、3メガワットまで傾斜し、(100mHz、結果として、所要の+2メガワット-1メガワット)、過剰送電となり得る。これらの結果は、いずれも望ましいものではない。
【0086】
図2Bは、図2Aで示した周波数分岐(アセットAで-50mHzのずれ、アセットBで+100mHzのずれ)に基づいて、さらなるケースを例示する。第1列は、線分210で示す、特定の周波数変化に必要な「完全な」応答を行うバイナリアセットの動作(つまり、周波数のずれに正確に対処するために求められる応答)、および線分212で示すアセットの実際の応答の動作を示す。本例において、バイナリアセットの応答は、バイナリ出力状態間を直ちに切り替えてしまうため、速すぎる。そのため、アセットBによって補完がなされる。対応する補完は、線分214で示される。この補完は、アセットAの周波数のずれに基づいたものであり、これにより、所要の(完全な)応答210および実際の応答212の間の差異が修正される。しかしながら、アセットBにおける局所的グリッド周波数にとっては、この修正は正しい方向であるものの、局所ずれ(100mHz)に対処するには不十分である。
【0087】
図2Bの第2列は、アセットAにおける特定の周波数のずれに対する「完全な」応答216と比較して、低速アセットに対する実際の応答218を示す。この場合、アセットは、ずれに対処するのに必要とされる速度より、遅く応答する。これには、アセットBにおける多方向への補完が必要となる。したがって、このケースでは、アセットBはまた、アセットAでの局所的グリッド周波数のずれに基づいて、補完を行う。その結果、アセットBで実施された補完220は、アセットBにおける局所周波数のずれに対して、誤った方向に働き、局所ずれがさらに増大してしまう。
【0088】
第3列および第4列は、アセットAの周波数を使用するのではなく、アセットB自体の局所的グリッド周波数(100mHz)に基づいて応答する場合に相当する応答を示す。どちらの場合も、補完(224,226)は、(アセットAに求められる補完に対して)右方向であるが、過剰である(過剰送電)。
【0089】
応答が、中央制御部(例えば、f7)の位置で測定された周波数に基づく場合、同様の問題が起こり得る。ここでは、周波数は、アセットAまたはアセットBの周波数のどちらかに相当し得る(または、第3の値を有し得る)。
【0090】
周波数分岐の検知とそれに対する応答
第1のアプローチとして、システムは、周波数分岐状況が検知された際に、一つまたはそれ以上集合アセットの周波数制御応答を変更または一時中断することで、状況を悪化させかねない、アセットの、逆効果となる周波数制御応答動作を避けることを目的としている。このために、集合アセットは、互いに(または中央制御部に)局所周波数測定値を送信するよう構成されている。
【0091】
一例として、各アセットは、局所的グリッド周波数を測定し、集成アセット群の他の各アセットに、周波数測定値を周期的に送信するよう構成されている。あるいは、アセットは、単純に、システム内の他のアセット全てに、配信周波数測定値を送信してもよい。したがって、アセットは、他のアセットで測定されたグリッド周波数に関する、ほぼリアルタイムの情報を有することになる。
【0092】
集合的なアセットのうち、特定の一つ、または、可能であれば、集合的なアセットの各アセットは、集成アセット群中の他のアセットから周波数情報を受信し、他のアセットから受信した周波数測定値を評価して、周波数分岐を検知するよう構成されている。周波数分岐を検知する基準は、以下を含み得る。
・閾値を上回る、二つの集合アセットの局所的グリッド周波数差異。
・名目上の周波数から異なる方向へずれた、二つの集合アセットのそれぞれの周波数(つまり、一方のアセットが、名目上の周波数を少なくとも一定の閾値量だけ上回り、他方のアセットが、名目上の周波数を少なくとも一定の閾値量のだけ下回る)。
【0093】
これらの基準は、組み合わせて使用されてもよく、および/または、代替基準が使用されてもよい。
【0094】
互いに直接通信するかわりに、周波数データを中央部から送信してもよい。中央制御部は、周波数分岐に対する上述の対処法を実行してもよい(例えば、図1Aおよび図1Bのアプローチ)。
【0095】
図3は、周波数分岐状況を検知し、中央制御装置で実行される対処法を開始する方法の一例を示す。
【0096】
ステップ302では、送信グリッドの周波数が判定される。これは、グリッドが動作する際の、名目上、あるいは、基準の周波数であり、例えば、各アセットおよび/または中央制御部において、事前に構成されていてもよい。本例において、送信周波数は50Hzである。
【0097】
ステップ304において、周波数のずれの許容範囲が決定され、本例においては、±20mHzである。ここにおいても、この範囲は、アセットまたは中央制御部において、事前に構成されていてもよい。あるいは、ずれの許容範囲は、状況に応じて、アセットまたは中央制御部によって、自動的に決定されてもよい。(例えば、先行時間窓におけるグリッドパフォーマンスに基づいて)周期的に自動決定されてもよく、あるいは、許容範囲は、現状のグリッドパフォーマンス特性に基づいて、継続的に更新することができる。
【0098】
ステップ306において、各アセットにおいて、グリッド周波数測定値を得る。測定値は、ステップ308の許容範囲と比較され、アセット周波数のなかで、許容範囲を外れているものはないかどうか判定される。もしなければ、ステップ306でモニタリングが続けられる。少なくとも一つのアセット周波数測定値が、許容範囲から外れていた場合、ステップ310において、例えば、測定された最低周波数および最高周波数の差異として、アセット周波数測定値の範囲が決定される。
【0099】
ステップ312では、システムは、測定された周波数における差異が、ある閾値(本例では、20mHz)を上回るかどうかを判定する。上回らない場合は、システムは、分岐なしと判断する。この場合、必要であれば、小さい周波数変動を解消するため、通常の対処行動を任意にとることができる(ステップ314)。
【0100】
周波数の差異が閾値を上回る場合、システムは、周波数分岐が起こったと判断し、例えば、ステップ316で、一つまたはそれ以上アセットの周波数制御応答を再構築することで、ステップ316の修正行動を開始し、分岐を修正または緩和する(または、その増大を防ぐ)。こうした修正を行う戦略の一部について、以下に説明する。
【0101】
なお、図3の例は、集成アセット群中のアセットから周波数情報を得られる中央制御部によって、実施される。しかしながら、ここで、アセットは、周波数情報を互いに送受信するが、その方法は、個々のアセットで実施される。別のアプローチでは、必ずしも全てのアセットから周波数情報を得られなくてもよい。例えば、集合アセットは、直接、周波数情報を交換し、それぞれの周波数の比較によってのみ、分岐を検知する。
【0102】
アプローチ1:周波数制御応答の一時停止
周波数分岐が検知されると、一つのアプローチでは、一つまたはそれ以上アセットが、単純に、いかなる周波数制御応答の提供も停止する。ここでは、中央制御が使用され、中央制御部は、もう一つのアセットに制御信号を送信して、周波数制御応答を一時中断させてもよい。ここで、アセットは、自律的に周波数分岐を検知し、アセットは、周波数分岐状況が検知されると、それ自体の応答を一時中断する。アセットは、状況のモニタリングを続け、周波数分岐が検知されなくなれば、周波数制御応答の実施を再開してもよい。以下の例示では、アセットが処理および制御を行い、必要であれば、周波数制御応答を一時中断することを前提とするが、同様の技術は、中央制御部においても適用され得る。
【0103】
上述のアプローチの変形例として、アセット(または制御部)は、所期の周波数制御応答が、周波数分岐をふまえても、依然として適切であるかを評価し、周波数制御応答動作を停止するか、そうでなければ、構成された制御応答を変更するかのどちらかを実施する工程をさらに実施してもよい。
【0104】
例えば、通信障害等により、集成アセット群中の他のアセットから周波数情報が得られなかった場合も、アセットは、同様の行動をとり、周波数情報が受信されるまで、周波数制御応答は一時停止される。短い期間でも通信が途切れて、周波数制御応答が滞ることを避けるため、アセットは、また、直近の周波数測定値によって決定した予測周波数に基づいた周波数制御応答動作を続ける(例えば、最後に受信した周波数測定、直近の測定値の平均、または周波数測定値の傾向に基づいた予測等を使用する)。
【0105】
さらに別の変形例として、アセットは、他のアセットの周波数制御応答における限界を補完する周波数制御応答を実施するよう構成される(「補完アセット」)が、このアセットは、局所的に測定されたグリッド周波数に基づいて、補完結果を考慮に入れてもよい。このアプローチでは、補完アセットが、構成された応答を評価し、局所グリッド状態における影響を評価する。適用される補完が局所状態に対して効果を発揮しない場合は、周波数制御応答を一時停止する。例えば、以下の場合において、補完は望ましいものではないとみなされ、実施されない。
・局所周波数のずれを修正するのに必要な方向とは、逆の方向に補完が実施されてしまい、補完により、局所的グリッド周波数が、名目上の値からさらに乖離してしまうような場合(例えば、局所周波数が、すでに名目上の値を下回っているにも関わらず、グリッドへの供給を減少させるような補完により、結果として、グリッド周波数を低下させてしまう場合。逆も同様である)。
・補完レベルが高すぎて、局所状態に対して効果が発揮されない場合。過剰送電が所定の範囲内であれば、差し支えないが、その範囲を超えてしまうと、周波数制御応答が一時停止する。
【0106】
上述の例では、アセットに対し、構成された応答を完全に停止してしまうかわりに、応答レベル(電力増加/電力減少)を高める、あるいは低下させることで、局所的グリッド周波数に対する影響を和らげる。
【0107】
アプローチ2:動的クラスタリング
第2のアプローチは、周波数分岐の検知に応じて、局所的に測定された、それぞれのグリッド周波数に従い、集成アセット群中のアセットをサブクラスタにクラスタリングすることを含む。
【0108】
具体的には、局所的に測定された、同様のグリッド周波数を有するアセット(または、同じように、名目上の値からの周波数のずれが類似しているアセット)が、同じクラスタに割り当てられる。一般的に、こうしたアセットは、グリッド(地理的に、またはトポロジー的に)グリッドの同じ領域に位置していると予測されるが、必ずしも、そうでなくてもよい。その後、これらのサブクラスタ全体に対して、独立して修正が実施される(通常稼働時と同様の集成技術および方針が使用される)。
【0109】
一例を図4Aに示す。ここでは、共通周波数f1を有するアセットを含む第1サブクラスタ402および第2共通周波数f2を有するアセットを含む第2サブクラスタ404に分割されたグリッド400を示す。なお、同じクラスタ内のアセットは、完全に一致する周波数を有している必要はなく、略同一の周波数を有するアセット同士が同じクラスタに割り当てられるよう、クラスタリングが行われていればよい(例えば、その他のクラスタのアセットの周波数と比較して、同じクラスタ内のアセットが、互いに近い周波数を持っていればよい)。クラスタリングの結果、アセット群(およびグリッド)が、効果的に、周波数ドメイン群に細分化される。周波数ドメイン群において、前述の望ましくない結果を生じさせることなく、周波数ドメインごとに、独立して、集成を実施することができる。
【0110】
プロセスを図4Bにまとめた。ステップ410において、通常稼働時(周波数分岐の検知前)、所定の集成戦略、アルゴリズム、または方針を利用し、集成された周波数制御応答をアセット群中のアセットに適用する。ステップ412において、周波数分岐が検知されたとする。ステップ414では、クラスタリングアルゴリズムが、グリッド周波数に基づいてアセット群におけるアセットに適用され、少なくとも二つのアセットクラスタを決定する。ステップ416において、所定の集成戦略、アルゴリズム、または方針が、アセット内の各クラスタに独立して適用される。したがって、集合的な周波数制御応答は、引き続き実施され得るが、同じクラスタ内のアセットのみで集合アセット群を形成し、例えば、需要応答におけるそれぞれの限界を補完する。その結果、集合的な応答を提供する際、異なる周波数ドメインのアセットが集合することはない。
【0111】
さらに、クラスタリングの際に、グリッドトポロジーを考慮に入れてもよい。例えば、切断された関連性があることが分かっている場合は、グリッド内の特定の関連性によって、クラスタリングを導いてもよい。
【0112】
さらに、図5では、リアルタイムの中央制御モデル(図1Aを参照して説明)にクラスタリングアプローチを適用した例を示す。
【0113】
ステップ502において、それぞれの周波数測定値f[Hz]として、アセット(数1)を含む、一連のアセットAのそれぞれにおいて周波数が測定される。ステップ504では、各アセットに対し、周波数セットポイントf が決定され、それぞれのアセットが適宜構成される。周波数セットポイントは、周波数のずれによる、電力出力の変化を判定する。アセットによる電力出力の変化は、直接、周波数のずれに結び付く(例えば、グリッド周波数が50Hzの場合、周波数のずれにおいて実施されるベースラインに対する調節をするため、ベースラインとなる供給/消費に対する電力変化は、必要とされない。例えば、1メガワットで稼働する発電所は、この1メガワットに対して、出力電力を変更することができる)。
【0114】
【数1】
【0115】
ステップ506では、周波数分岐が検知される(例えば、前述の技術を利用する)。
【0116】
応答として、ステップ508では、クラスタリングアルゴリズムが適用され、基準周波数f(例えば、クラスタの中心周波数)に対する、別個のクラスタA(ΣA=A)の最小セットを判定する。これにより、クラスタA内の全てのアセットについて、fから事前の指定範囲内の周波数、つまり、数2を測定する。
【0117】
【数2】
【0118】
一例として、使用されるクラスタリングアルゴリズムは、k-meansクラスタリングアルゴリズムであるが、任意の適切なクラスタリングアルゴリズムを使用可能である。例えば、平易なクラスタリング技術により、周波数分岐事象により、グリッドが二つの周波数ドメインに分割されたと仮定できる。したがって、例えば、局所周波数を、全てのアセットにおける周波数値の中央値や平均値と比較することで、クラスタアセットを二つのクラスタに分割する。
【0119】
各アセットクラスタに対し、ステップ510乃至514が繰り返される。ステップ510では、最初の(または、以降の反復では、次の)クラスタAに対し、クラスタ内の全ての不完全なアセットの電力供給/消費が測定される。
【0120】
【数3】
【0121】
そして、不完全なアセットに対する所要の補完が、ステップ512で決定される。不完全なアセットによる電力および完全送電の差異、つまり、数4によって、決定されてもよい。その後、決定した補完は、最もパフォーマンスが高いアセット(つまり、例えば、バッテリ等の、セットポイントに対して、素早く、および/または、正確に応答できるアセット)に送られる。補完の実施が可能なアセットが二つ以上ある場合、任意の適切な基準およびヒューリスティック解(例えば、過去に実施した補完に基づくもの)に基づいて、所要の補完を共有してもよい。
【0122】
【数4】
【0123】
さらに処理すべきクラスタがある場合(514)、ステップ510においても、次のクラスタに対してプロセスを継続する。クラスタがない場合、プロセスは終了する。なお、周波数分岐が持続するようであれば、実際には、周波数制御応答の実施を周期的に継続する(例えば、ステップ510乃至514のループを周期的に繰り返す)。
【0124】
図6は、ハイブリッド方式の制御モデル(図1Bを参照して説明)に適用した際のクラスタリングアプローチについて説明する。
【0125】
実施形態における、ハイブリッド方式のアプローチでは、アセットの技術的限界(例えば、ランプ速度)を補完することなく(完全に利用不可能になったアセットに反応することなく)、予測される周波数のずれの範囲を充分にカバーするよう構成された集成により、局所的に測定された周波数に対して反応し得る。このアプローチは、状況を悪化させないという点で、より堅牢であるといえる。しかしながら、クラスタリングアプローチは、依然として、同様の周波数を有するクラスタを特定し、異なるサブクラスタに集成を適用することで、周波数分岐に対しても、有効である。
【0126】
ステップ602では、それぞれの周波数測定値f[Hz]として、アセット(数5)を含む、一連のアセットAのそれぞれにおいて周波数が測定される。ステップ604では、各アセットに対し、局所応答機能が決定され、それぞれのアセットが適宜構成される。
【0127】
【数5】
【0128】
ステップ606では、周波数分岐が検知される(例えば、前述した技術を使用する)。
【0129】
応答において、ステップ608では、クラスタリングアルゴリズムを適用して、一連のアセットクラスタを判定する。前例で説明したように、クラスタリングを実施する。
【0130】
各アセットクラスタに対して、ステップ610乃至614を繰り返す。ステップ610において、全てのアセット(数6)に対し、システムが再構成された応答機能を判定する。ここでは、特許文献1で説明したような、例えば、以下の式(数7)といったアプローチを利用できる。
【0131】
【数6】
【0132】
【数7】
【0133】
再構築された応答機能は、クラスタ内のアセットに対してのみ、集成し、同一周波数ドメイン内のアセットによる集合的な応答を提供する。ステップ612では、アセットは、再構築された応答機能を利用するよう、再構成される。さらに処理すべきクラスタがある場合は、プロセス(614)を繰り返す。全てのクラスタに対して処理が終わると、プロセスを終了する。
【0134】
自己組織化周波数制御応答の場合における対処行動
分散型自己組織化のアプローチ(図1Cを参照して説明)では、モデルを交換することにより、リアルタイムのデータリンクを有することなく、アセット同士が相互に作用することができる。これにより、通信障害に対する障害許容力を有する。このアプローチは、グリッド周波数が均一である間は、確実に機能するものの、どの周波数がローカルモデルに接続するかにおいて、周波数分岐が引き起こされると、同様の問題が発生する。例えば、図2Aのケースでは、アセットAが稼働する際の局所周波数が+2メガワット(効果的には、-1メガワット)であり、アセットBが-1メガワットを送電することで、これを補完する。アセットBからすると、合わせて+1メガワットを送電しなければならないように見えるが、実際は、システムに反した動作となってしまう。より一般的には、自己組織化周波数制御応答において問題が生じうるケースは、本質的には、図2Aおよび図2Bを参照して説明したものと同様であるが、中央制御時と異なるのは、制御がアセットにおいて自律的に行われる点である。
【0135】
こうしたシステムでは、前述の技術を以下のように適用し得る。
【0136】
アプローチ1により、周波数測定値を交換(または配信)する協働アセットに基づき、周波数応答の明確な検知に応じて、周波数制御応答を決定してもよい。したがって、アセットが、集合的な周波数制御応答を協働して提供する他のアセットから、周波数測定値を受信した場合、そして、その周波数測定値が、局所的グリッド周波数と異なる(例えば、許容閾値を上回るほど異なる)場合、アセットは、周波数制御応答を一時停止する。あるいは、顕著なモデルエラーが発生した場合、特定のアセットが、周波数制御応答の提供の停止を決定してもよい。これを実現するため、アセットは、局所的に測定されたグリッド周波数に対する、そして、調整された応答が不完全である場合の顕著な差異に対する、モデルの正確性を継続的に確認し得る。
【0137】
別のアプローチでは、アセットは、前述の通り、継続的に周波数測定値を交換してもよく、さらに、必要であれば、その情報に基づいて、格納モデルを更新してもよい。これは、一連の四つのアセットを示す図7にも表されており、同図においては、そのうちの二つ(AおよびBとする)が協働して補完的かつ集合的な周波数制御応答を提供している。図の矢印が示すとおり、時間は左から右に向かって経過するものとする。初期段階では、アセットは、それぞれのモデルおよび周波数データを交換する。その後、周波数分岐が検知され、各アセットは、必要となる応答を計算する。最後に、各アセットは、自身のローカルモデルを更新し、更新されたモデルを交換する。そして、アセットは、更新されたモデルに基づき、動作を継続する。
【0138】
このアプローチの他の例として、アセットは、また、周波数の差異または変化に応じて、協働再交渉を開始してもよい。協働を交渉する際、アセットは、矛盾するグリッド周波数を有する他のアセットとの協働を拒否することができる。例えば、二つのアセット間の周波数における差異が、許容閾値を上回る場合、および/または、アセットそれぞれの周波数のずれが、名目上のグリッド周波数に対して、異なる方向である(例えば、一方が名目上の値を上回り、他方が下回る)場合が、該当する。
【0139】
このアプローチにより、効果的に、アセットが、複数の周波数ドメインに正確に分割される。これは、周波数分岐後も、異なる周波数ドメインに存在し続けるアセットが、協働して、集合的な周波数制御応答を提供することがないためである(さらに、前例があれば、集合的な周波数制御応答を停止するためである)。自己組織化制御の原則により、このような正確な分割が、自然になされ、先例でも述べた、明確なクラスタリングと同様の結果を得ることができる。
【0140】
プロセスを図8にまとめた。ステップ802では、アセットがモデルを交換し、集合的なアセット群を形成するよう交渉することで、集合的な周波数制御応答を実施し、局所応答機能を構成する。続いての動作では、アセットは、周期的に、周波数測定値を交換し(ステップ804)、同時に、交換したモデルおよび局所的に測定されたグリッド周波数に基づいて、周波数制御応答を実行する(ステップ806)。ここで、応答機能において、集成群における他のアセットの周波数が利用され得ることに注目し、構成された応答機能に基づく制御動作を適合することを含む(図7で示す。ここで、以下の数8は、制御方針において、局所的に測定された周波数に加え、他のアセットの周波数が利用されていることを示す)。したがって、ステップ804およびステップ806は、一般的に、並列で処理される。
【0141】
【数8】
【0142】
ステップ808では、アセットが周波数分岐を検知する。ステップ810では、例えば、優先的に(または独占的に)、類似または合致するグリッド周波数を有する(例えば、所定の許容範囲内で同様のグリッド周波数を有する)アセットからなる集合アセット群を形成することで、アセットは、他のアセットで測定されたグリッド周波数の情報に基づく、集合的な周波数制御応答を交渉する。再交渉時、モデルがすでに正確なものではない場合、アセットは、他のアセットに対し、自身のモデルを更新してもよい。ステップ812において、アセットは、再構築されたモデルと、再構成された周波数制御応答および集成群とに基づき、通常の周波数制御応答動作を継続する。
【0143】
なお、このアプローチでは、いずれの場合でも、アセットは、集合的な周波数制御応答を実施するため、周期的な再交渉を行ってもよい。これにより、交渉方針の一部としてグリッド周波数の差異を利用することに基づき、周波数分岐に対する応答が自然に行われることになる。同様に、周波数分岐の終了時、アセットは、応答およびアセット群形成を自然に再構成する(例えば、初期の構成に戻す)。あるいは、または、それに追加して、周波数分岐や、その他の急激な周波数のずれ/異常を検知すると、それが明白なトリガーとなり、集成群の再交渉が開始される。
【0144】
あるいは、前述のクラスタリング技術を利用して、クラスタリングを明確に行うことができる。例えば、中央制御部は、クラスタリングを実施し、クラスタの要員として、各アセットを構成してもよい。そして、アセットが、同じクラスタ内に割り当てられたアセットとのみ協働し、調整された周波数制御応答を再交渉する。クラスタリングはまた、各アセットにより、自律的に実施されてもよい。アセットが自身の局所周波数測定値を他のアセットに配信するという前提のもと、各アセットは、クラスタリングを実施するのに必要な周波数情報を有し、クラスタ要員の決定に関しては、同じ結果に至ることが期待される。別の変形例においては、周波数分岐を検知した特定のアセットがクラスタリングを行い、他のアセットにその結果を知らせる。
【0145】
上述のアプローチに共通しているのは、周波数分岐後に異なる周波数ドメインに存在するアセット間における、集合的かつ補完的な周波数制御応答(外部との協働あるいは直接協働に関わらず)を避けている点である。したがって、前述のアプローチは以下のいずれかを含み得る。
・(アセットによって一方通行で、または、中央制御部によって双方向に)確実に集合的な応答を一時停止する。
・異なる周波数ドメインにしたがって、利用可能なアセットをクラスタに割り当て、その後、異なるクラスタ(周波数ドメイン)のアセット同士が、引き続き集合的に動作しないよう、同じクラスタ内でのみ集成を適用する。
・周波数不均衡を考慮し、アセットの動的自己組織化を許容する。
【0146】
しかしながら、周波数制御に対する調整された需要応答を防ぐ、限定する、あるいは変更する、その他のアプローチも利用可能である。
【0147】
各アプローチにおいては、検知された周波数分岐が終了すれば、システムは、通常稼働に戻ってもよい。例えば、グリッド内の異なる箇所間で生じた周波数の差異が、一定の許容閾値におさまった場合がこれに該当する(この時の許容閾値は、分岐を検知した際に使用したものと同様のものであってもよいし、異なる閾値を利用してもよい)。その後、制御部および/またはアセットは、分岐前の構成に戻ってもよい(例えば、制御部および/またはアセットは、格納された、以前の集成群構成、局所応答機能等を有してもよい)。あるいは、周波数分岐のない、集合的な応答を再構成するために、関連する集約アルゴリズムを、再度実行してもよい(例えば、分散型自己組織化アプローチの場合、アセットは、新たな集合的な応答を区政するため、互いに再交渉をしてもよい)。その後、アセットは、さらなる周波数分岐事態が引き起こされるまでは、小さい周波数変動に対しても、平常時と同様に、周波数制御応答の提供を継続できる。
【0148】
制御装置
図9は、前述のシステムの構成要素に対する、ハードウェアおよびソフトウェア構造を示す。中央制御部(例えば、図1Aおよび図1Bのアプローチ)として、中央サーバー900を設けてもよい。サーバーは、一時的なデータおよび実行するソフトウェアコードを格納する揮発性/ランダムアクセスメモリ904とともに、一つまたはそれ以上プロセッサ902を備える。
【0149】
ネットワークインターフェイス906(例えば、有線または無線のインターフェイス)が、一つまたはそれ以上通信網912(例えば、ローカルエリアネットワークやインターネットを含むワイドエリアネットワーク)を介して、エネルギーアセットを含む、他のシステム構成要素と通信するために設けられる。
【0150】
持続ストレージ908(例えば、ハードディスクストレージ、光学ストレージ等)が、持続的に、中央制御(図1Aおよび図1Bの例)を行う制御プロセス910や、アセットに対する、セットポイントまたは局所応答機能の計算を含む、前述の機能を実施するためのソフトウェアを格納する。クラスタリングプロセス911は、周波数分岐発生時に、アセット群をクラスタに分割する、前述のクラスタリングアルゴリズムを実施する。この場合、制御プロセス910は、各クラスタに対し、独立して動作する(一例として、それぞれが並列な制御プロセスまたはスレッドが、各クラスタに対して実行される)。持続ストレージはまた、サーバーオペレーティングシステムシステム等、他のサーバーソフトウェアおよびデータ(図示しない)を含む。
【0151】
サーバーは、当業者にとっては自明な、他の従来ハードウェアおよびソフトウェア構成要素を備え得る。これらの構成要素は、データバスを介して、相互接続される(実際の使用においては、メモリバスやI/Oバス等の複数の独立したバスによって構成されていてもよい)。
【0152】
エネルギーアセット926を制御するコンピューティング装置として、アセット制御部914を設ける(例えば、バッテリやその他エネルギー供給アセット、または産業ロードや他のエネルギー消費アセット)。アセット制御部914は、ネットワークインターフェイス920(例えば、有線または無線インターフェイス)を利用し、通信網912に接続され、これにより、中央制御部と通信する。アセット制御部はまた、アセットに対して局所的にグリッド周波数(さらに可能であれば他のグリッド動作特性)を検知する、一つまたはそれ以上グリッドセンサ928に接続される。
【0153】
アセット制御部は、一時的なデータおよび実行するソフトウェアコードを格納する揮発性/ランダムアクセスメモリ918とともに、一つまたはそれ以上プロセッサ916を備える(例えば、RAMに紐づいたARM Cortex CPUといった内臓マイクロプロセッサを使用してもよい)。
【0154】
持続ストレージ922(例えば、ハードディスクストレージ、光学ストレージ、固体記憶装置、フラッシュメモリ等)は、前述した、装置エージェント924を含むアセット制御部の機能を実施するためのソフトウェアを持続的に格納してもよい。装置エージェントは、前述した任意の技術に基づいた、例えば、遠隔セットポイント、ローカルに格納された応答機能、モデルや、他のアセット制御部と交換されるその他情報等に基づいた、需要応答/周波数制御応答を実施する。自己組織化制御アプローチにおいて、装置エージェントは、さらに、他のアセット制御部との交渉を実施し、前述の、調整された周波数制御応答戦略を決定する。必要な制御パラメータ、セットポイント、応答機能、アセットモデル等を、アセット制御部/装置エージェントが利用するメモリ918および/または持続ストレージ922に、追加で格納してもよい。アセット制御部は、当業者にとって自明な、その他の従来ハードウェア/ソフトウェア要素を備えていてもよい。
【0155】
一般的に、システムは、グリッド内の種々のアセットと紐づいた、複数のこうしたアセット制御部914を含み得る。ここで、アセット制御部914は、互いに、および/または、通信網912を介して、中央サーバー900と通信可能に接続される。アセット群中の、管理された各アセットは、それぞれ、対応するアセット制御部と紐づけられていてもよい。場合によっては、複数のアセットに対して、単一のアセット制御部が設けられる。中央制御部を要さないシステムにおいては、中央サーバー900を省略してもよい。
【0156】
具体的な構造を例示したが、適切なハードウェア構造、ソフトウェア構造を任意に採用してもよい。
【0157】
さらに、別体として示された機能構成要素は、組み合わせても、そうでなくてもよい。例えば、サーバー900の機能は、実際の使用時に、複数の別体のサーバー装置によって実現されてもよい(例えば、制御プロセス910およびクラスタリングプロセス911は、異なるサーバーにおいて実行されてもよく、また、異なるサーバーによって、異なるアセットクラスタまたはグリッド領域を制御してもよい)。別の例では、中央サーバーの機能を、選択したアセット制御部と一体化させることもできる。
【0158】
以上説明した本発明は、例示に過ぎず、本発明の範囲内において、細部における変更を行ってもよいことは、理解されるであろう。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9