(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】Liイオン電池セルを形成するための方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20240716BHJP
H01M 10/056 20100101ALI20240716BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240716BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240716BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240716BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/056
H01M4/62 Z
H01M4/131
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2021562828
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2020059431
(87)【国際公開番号】W WO2020216597
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-03-03
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブアニク, リュシエン
(72)【発明者】
【氏名】チャキール, モハメド
(72)【発明者】
【氏名】ロペス, ペドロ
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-505074(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0074704(US,A1)
【文献】特開2016-096023(JP,A)
【文献】特開2006-202745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 10/056
H01M 4/62
H01M 4/131
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード材料、アノード材料、および固体電解質を含んだリチウムイオン電池セルであって、電解質がポリエチレンオキシドと式Li
7La
3Zr
2O
12の酸化物との混合物を含む、リチウムイオン電池セルの形成方法であって、以下の連続サイクリング工程:
(a)第1のサイクリング速度C/
40での少なくとも2回のセルの連続充電/放電サイクルであって、充電/放電工程の時間が
20hに制限されている、少なくとも2回のセルの連続充電/放電サイクル;
(b)第1のサイクリング速度とは異なる第2の充電速度C/
20での少なくとも2回のセルの連続充電/放電サイクルであって
、充電/放電工程の時間が
10hに制限されている、少なくとも2回のセルの連続充電/放電サイクル;ならびに
(c)第1および第2の充電速度とは異なる第3のサイクリング速度C/
10での少なくとも2回のセルの連続充電/放電サイクルであって
、充電/放電工程の時間が
5hに制限されている、少なくとも2回のセルの連続充電/放電サイクル
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
以下のサイクリング工程:
(d)第1、第2および第3の充電速度とは異なる第4のサイクリング速度での少なくとも2回のセルの連続充電/放電サイクル
をさらに含むことを特徴とする、請求項
1に記載の形成方法。
【請求項3】
第4のサイクリング速度が、2.5時間の充電/放電に適用されるC/5であることを特徴とする、請求項
2に記載の形成方法。
【請求項4】
以下のサイクリング工程:
(e)第1、第2、第3および第4の充電速度とは異なる第5のサイクリング速度での少なくとも2回のセルの連続充電/放電サイクル
をさらに含むことを特徴とする、請求項
2または
3に記載の形成方法。
【請求項5】
第5のサイクリング速度が、1時間の充電/放電に適用されるC/2であることを特徴とする、請求項
4に記載の形成方法。
【請求項6】
サイクリング工程(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の1つまたは複数が、少なくとも5回のセルの連続充電/放電サイクルを含むことを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の形成方法。
【請求項7】
連続サイクリング工程が増加するサイクリング速度で行われることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の形成方法。
【請求項8】
電解質がリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドLiTFSIを含むことを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の形成方法。
【請求項9】
カソードが、ポリエチレンオキシドと酸化物Li
7La
3Zr
2O
12との混合物を含むカソライトを含むことを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の形成方法。
【請求項10】
カソライトがリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドLiTFSIを含むことを特徴とする、請求項
9に記載の形成方法。
【請求項11】
ニッケル-マンガン-コバルト活物質の混合物、カーボンブラックの混合物、ならびにポリエチレンオキシドとLi
7La
3Zr
2O
12との混合物を含むカソライトの混合物を含むカソードを含むことを特徴とする、請求項1から
10のいずれか一項に記載の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に充電式リチウムイオン(Liイオン)電池、より正確には、ポリエチレンオキシドと式Li7La3Zr2O12(PEO-LLZO)の酸化物との混合物を含む、全固体Liイオン電池セルに関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、PEO-LLZO混合物を含むLiイオン電池セルを形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギー貯蔵のための電気化学的システムは、携帯用エレクトロニクスおよびエレクトリックビヒクルの分野において重要な用途を有する。最も使用されている電池技術の1つはリチウムイオンの使用に基づく。
【0004】
慣例的に、Liイオン電池は、1つまたは複数の陰極および陽極、それぞれアノードおよびカソード、電解質および電極間のいかなる接触も阻止する分離体の集合体である。
【0005】
Liイオン電池セルが活性化されると、すなわち、セルが組み立てられ、液体電解質がセルに含浸されると、第1のセル充電サイクルの間に熱力学的反応が行われ、電極間でのリチウムイオンの最初の交換が行われる。
【0006】
これらの反応から生成した生成物は、電極の表面上に蓄積して、固体電解質接触面(固体電解質界面相)またはSEI層と呼ばれる層を形成する。この層は非常に良好にリチウムイオンを伝導し、液体電解質の溶媒の接触分解を停止するという利点をもたらすため、Liイオン電池の適正な作動のための大事な要素となる。
【0007】
SEIの品質は、電池の耐用年数を決定し、したがってその形成は重要な工程である。
【0008】
新しい世代の電池において、分離体および液体電解質は固体電解質で置き換えられており、この固体電解質は、例えば、ポリマー、無機化合物、非晶質材料またはこれら様々な材料の組合せである。
【0009】
全固体電池は、いかなる可燃性材料も含まないため、より大きな安全性を提供する。
【0010】
さらに、そのエネルギー密度は、液体電解質電池のエネルギー密度よりはるかに大きい。
【0011】
固体電解質は、これらのコーティング中、粉末の形態で電極に直接組み込まれ、カソード中ではカソライトおよびアノード中ではアノライトと呼ばれる。
【0012】
しかし、完全固体電池の製造は、工業的規模では依然として複雑であり、中間溶液は、柔軟性もあり、イオン導電体でもある材料、例えば、ある特定のポリマー、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)で作製された電解質を使用することになる。
【0013】
リチウムイオンに対して伝導性のあるポリマーを含む電池の製造は簡単であり、完全にマスターされているが、これらの使用は、基本的な制限に直面したため、依然として広範囲におよぶものではない。
【0014】
実際、これらのポリマーは高い電位では安定ではない。例えば、PEOは3.6Vの電位までしか安定していない。現在、電極を形成する活物質が自動車分野における用途に対して必要とされるエネルギー密度に到達するために必要とされる電位は、3.7V~5Vの間である。
【0015】
文献US2018/0006326は、ポリマー材料を含む全固体Liイオン電池を記載している。特に、PEOおよび式Li6.5La3Zr21.5Ta0.5O12の酸化物を含む電池電極が開示されている。
【発明の概要】
【0016】
しかし、その文献は、ポリマーの安定化を可能にして、高い電位で電池性能を改善する電池セルを形成するための方法を開示していない。
【0017】
したがって、本発明の目的は、これらの弱点を克服し、3.7V~5Vの間の高い電位でポリマーに安定性を付与するPEO-LLZO固体電解質を含む全固体Liイオン電池セルを形成するための方法を提案することである。
【0018】
したがって、カソード材料、アノード材料、および固体電解質を含み、電解質が、ポリエチレンオキシドと式Li7La3Zr2O12の酸化物との混合物を含むLiイオン電池セルを形成するための方法が提案される。本方法は、以下の連続サイクリング工程を含む:(a)第1のサイクリング速度C/xでのセルの少なくとも2回の連続充電/放電サイクルであって、この充電/放電工程の時間がx/2に制限されている、セルの少なくとも2回の連続充電/放電サイクル;(b)第1のサイクリング速度とは異なる第2の充電速度C/yでのセルの少なくとも2回の連続充電/放電サイクルであって、yがxより低く、充電/放電工程の時間がy/2に制限されている、セルの少なくとも2回の連続充電/放電サイクル;ならびに(c)第1および第2の充電速度とは異なる第3のサイクリング速度C/zでのセルの少なくとも2回の連続充電/放電サイクルであって、zがxおよびyより低く、充電/放電工程の時間がz/2に制限されている、セルの少なくとも2回の連続充電/放電サイクル。
【0019】
充電/放電サイクルとは、充電する工程、次いで放電する工程を含む工程を意味する。結果的に、連続充電/放電サイクルは、充電すること、次いで放電することを含むサイクル、それぞれがまた充電および放電を含むこれに続く1つまたは複数の他のサイクルを意味する。
【0020】
本発明によるセルを形成するための方法は、複合電解質を安定化させること、および全固体Liイオン電池の電気化学的性能を改善することを可能にする。
【0021】
他の目的、利点および特徴は、これより以下に付与される説明から明らかとなり、この説明は、付随された以下の図を参照して、純粋に例示の目的のために提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】サイクリング速度C/20での5回の連続充電/放電サイクルの間の、いかなる前処理も施していないセル容量の関数として、電圧の変動を示すグラフである。
【
図2】異なるサイクリング速度での充電/放電サイクル数の関数として、いかなる前処理も施していないセルの容量の変動を示すグラフである。
【
図3】第1の実施形態によるセルの前処理のサイクリング工程の間のセルの容量の関数として、電圧の変動を示すグラフである。
【
図4】異なるサイクリング速度での、第1の実施形態により前処理を施したセルの容量の関数として、電圧の変動を示すグラフである。
【
図5】異なるサイクリング速度での充電/放電サイクルの数の関数として、第1の実施形態による前処理を施したセルの容量の変動を示すグラフである。
【
図6】第2の実施形態による前処理のサイクリング工程の間のセルの容量の関数として、電圧の変動を示すグラフである。
【
図7】異なるサイクリング速度での、第2の実施形態により前処理を施したセルの容量の関数として、電圧の変動を示すグラフである。
【
図8】異なるサイクリング速度での充電/放電サイクルの数の関数として、第2の実施形態による前処理を施したセル容量の変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
全固体Liイオン電池は、カソード、アノードおよび固体電解質を一般的に含む。
【0024】
本発明による形成の方法は、ポリエチレンオキシド(PEO)と式Li7La3Zr2O12の酸化物(LLZO)との混合物を含む固体電解質を含むLiイオン電池セルに関する。
【0025】
好ましくは、アノードはリチウム金属を含む。
【0026】
好ましい実施形態によると、電解質はリチウム塩、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を含む。
【0027】
カソードは、活物質、カソライトおよび活物質の充填剤を混合することにより調製される。
【0028】
好ましくは、活物質は、ニッケル、マンガンおよびコバルトの混合物に相当する式LiNiMnCoO2の材料、例えば、NMC622を含む。
【0029】
活物質の充填剤は、カーボンブラック、例えば、カーボンブラックC65を含み得る。
【0030】
カソライトは好ましくはポリエチレンオキシドと式Li7La3Zr2O12の酸化物との混合物を含む。
【0031】
好ましくは、カソライトは、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドをさらに含み、よって有利にはPEO-LiTFSI:LLZO混合物を形成する。
【0032】
本発明によるLiイオン電池セルを形成するための方法は、少なくとも3つの連続工程(a)、(b)および(c)を含むセルの前処理工程を含む。
【0033】
工程(a)は、第1のサイクリング速度C/xでのセルの少なくとも2回の連続充電/放電サイクルを含み、各充電/放電工程の時間がx/2に制限されており、工程(b)は、第1のサイクリング速度とは異なる第2の充電速度C/yでのセルの少なくとも2回の連続充電/放電サイクルを含み、yがxより低く、各充電/放電工程の時間がy/2に制限されており、工程(c)は、第1および第2の充電速度とは異なる第3のサイクリング速度C/zでのセルの少なくとも2回の連続充電/放電サイクルを含み、zがxおよびyより低く、各充電/放電工程の時間がz/2に制限されている。
【0034】
驚くことに、上に記載されているような少なくとも3つの工程(a)、(b)および(c)を含むセルの前処理は、セルの表面上にSEIを形成することを可能にし、その品質が、ポリマー(このポリマーからセルが得られる)の安定化を助けることが判明した。
【0035】
特に、3.7V~5Vの間の高い電池作動電位で、ポリマーの安定性が改善されたことが認められた。よって、電池性能および特にエネルギー密度が改善される。
【0036】
有利には、連続サイクリング工程は、増加するサイクリング速度で行われる。
【0037】
有利には、サイクリング工程(a)の間のサイクリング速度はC/40であり、サイクリング工程(b)の間のサイクリング速度はC/20である。
【0038】
サイクリング速度または「充電または放電速度」は、指定されたC/nであり、CはA.hでの電池の容量、すなわち、完全な充電を受けた後、戻ることが可能な電気エネルギーの量であり、nはhでの時間を指す。
【0039】
有利には、サイクリング工程(c)の間のサイクリング速度はC/10である。
【0040】
好ましくは、Liイオン電池セルを形成するための方法は、第1、第2および第3の充電速度とは異なる第4のサイクリング速度でのセルの少なくとも2回の連続充電/放電サイクルを含む連続工程(d)をさらに含む。
【0041】
有利には、サイクリング工程(d)の間のサイクリング速度はC/5である。
【0042】
好ましい実施形態よると、Liイオン電池セルを形成するための方法は、第1、第2、第3および第4の充電速度とは異なる第5のサイクリング速度でのセルの少なくとも2回の連続充電/放電サイクルを含む連続工程(e)をさらに含む。
【0043】
有利には、サイクリング工程(e)の間のサイクリング速度はC/2である。
【0044】
好ましくは、サイクリング工程(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の1つまたは複数は、セルの少なくとも5回の連続充電/放電サイクルを含む。
【0045】
様々な前処理工程の間、サイクリング速度C/nで行われる各充電/放電サイクルの期間は好ましくはn/2と等しい。
【0046】
本発明は、Liイオンセルを形成するための方法の以下の実施例により、非限定的方式で例示される。
【実施例】
【0047】
実施例1
1.セルの調製
固体電解質
使用される電解質は、ポリエチレンオキシド(PEO)、式Li7La3Zr2O12(LLZO)の酸化物、およびリチウム塩、すなわちリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を混合することにより調製される。
【0048】
PEO-LiTFSIの体積パーセンテージは、90体積%であり、LLZO酸化物の体積パーセンテージは10体積%である。
【0049】
アノード
アノードはリチウム金属で形成される。
【0050】
カソード
カソードは、活物質、カソライトおよび電子伝導体を混合することにより調製される。
【0051】
式LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2のNMC622が活物質として選択され、これは60モル%のニッケル、20モル%のマンガンおよび20モル%のコバルトを含むニッケル-マンガン-コバルト混合物に相当する。
【0052】
カーボンブラックC65は電子伝導体として選択される。
【0053】
さらに、カソードは、PEO-LiTFSI:LLZO混合物を形成するためのポリエチレンオキシド、式Li7La3Zr2O12の酸化物およびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含むカソライトを含む。
【0054】
カソード中のNMC622、カーボンブラックC65およびカソライトの割合が表1に示されている。カソードに存在するNMC622の量は、NMC622に対する理論的容量を166mAh/gと仮定して、1.6+0.6mAh.cm
-2の表面容量を得るように調節される。
[表1]
【0055】
セル集合体
直径16の電解質ディスクおよび直径13mmのカソードディスクを組み立ててから、直径14mmのアノードディスクに加えてセルを形成する。
【0056】
2.定電流サイクリング、評価および結果
一連の5回の充電/放電サイクルを、速度C/20で、パラグラフ1に記載されている形成方法に従い得たセルに対して行う。サイクリング試験を70℃で、電位窓2.7V~4.2Vの間で行う。
【0057】
図1において、曲線A、B、C、DおよびEは、第1、第2、第3、第4および第5の充電/放電サイクルの間のセルの容量の関数として、電圧の変動にそれぞれ対応する。
【0058】
充電サイクルの間、3.7Vを超えると電圧の不安定さが存在することに注目する。放電中、容量は平均して43mA.h.g-1に到達する、すなわち活物質としてNMC622を含むセルに対する予想された実験的容量、166mA.h.g-1の26%のみにしか到達しない。
【0059】
セルに対して、サイクリング速度C/20で追加の5回の充電/放電サイクルを行い、この間、容量は85mA.h.g-1に到達するまでゆっくりと増加する。
【0060】
セルの容量の変動を速度C/20、C/10、C/5、C/2および1Cでのサイクル数の関数として示す
図2において見てとれるように、C/20での放電容量の値はサイクリング速度C/10と類似しているが、容量レベルCが増加するにつれて徐々に低減し、すなわち、C/2および1Cにおいて約20mA.h.g
-1となる。
【0061】
第1の充電/放電サイクルの間に観察された電圧の不安定さは、複合電解質の分解、特にポリエチレンオキシドの分解により説明することができる。
【0062】
実施例2
1.セルの調製
実施例1に詳細に記載されているセルの調製方法が、実施例2におけるセルの調製方法に対して再現される。さらに、これより以下にさらに記載されているセルを前処理する追加の工程を行う。
【0063】
前処理
前処理の第1の実施形態に従いセルを調製する。第1工程(a)に従い、第1のサイクリング速度C/40で2回の充電/放電サイクルを行う。
【0064】
工程(a)の各充電/放電サイクルを20時間行う。
【0065】
第2の工程(b)では、第2のサイクリング速度C/20で2回の充電/放電サイクルを行い、各サイクルは10時間行う。
【0066】
最後に、第3および最終の工程(c)において、第3のサイクリング速度C/10で2回の充電/放電サイクルを行い、各サイクルは5時間行う。
【0067】
第1の実施形態による前処理のサイクリング工程の間のセルの容量の関数としての電圧の変動が
図3に示されている。この前処理中に得られた結果は、実施例1の結果と比較してより良い安定性を示すことが見てとれる。到達した電圧は3.8Vである。
【0068】
2.定電流サイクリング、評価および結果
セルの前処理後、サイクリング速度C/20、C/10、C/5、C/2および1Cでの充電および放電試験を行う。セルの容量の関数としての電圧の変動および異なる速度での充電/放電サイクル数の関数としてのセルの容量の変動がそれぞれ
図4および
図5に示されている。
【0069】
サイクリング速度C/20およびC/10での容量の関数としての電圧プロファイルは、前処理を行わなかった実施例1のセルと比べて、充電中より大きな安定性を示し、それぞれ3.9Vおよび3.8Vに到達している。
【0070】
電圧の不安定さは、サイクリング速度C/5およびC/2において持続するが、前処理なしの実施例1における不安定さより低い。
【0071】
サイクリング速度C/20での放電で平均容量120mA.h.g-1、すなわち予想された実験的容量の73%が得られている。したがって、これは、前処理していないセルと比べて容量の有意な増加を意味する。
【0072】
よって、実施例2に記載されている前処理は、セルの性能の改善を可能にしている。
【0073】
実施例3
1.セルの調製
実施例1に詳細に記載されているセルの調製方法は、実施例3のセルの調製方法で再現される。さらに、これより以下により詳細に提示されているセルの前処理工程が行われる。
【0074】
前処理
セルを前処理の第2の実施形態に従い調製する。5回の充電/放電サイクルを、第1工程(a)に従い第1のサイクリング速度C/40で行う。工程(a)の各充電/放電サイクルを20時間行う。
【0075】
第2の工程(b)では、5回の充電/放電サイクルを、第2のサイクリング速度C/20で行い、各サイクルを10時間行う。
【0076】
第3の工程(c)では、5回の充電/放電サイクルを、第3のサイクリング速度C/10で行い、各サイクルを5時間行う。
【0077】
第4の工程(d)では、5回の充電/放電サイクルを、第4のサイクリング速度C/5で行い、各サイクルを2時間行う。
【0078】
第5の工程(e)では、5回の充電/放電サイクルを、第5のサイクリング速度C/2で行い、各サイクルを1時間行う。
【0079】
第2の実施形態による前処理のサイクリング工程の間のセルの容量の関数としての電圧の変動が
図6に示されている。この前処理の間に得られた結果は、実施例1の結果との比較で非常に良好な安定性を示すばかりでなく、実施例2のセルの安定性に対する改善も示すことが見てとれる。到達した電圧は4.2Vである。
【0080】
2.定電流サイクリング、評価および結果
セルの前処理後、サイクリング速度C/20、C/10、C/5、C/2および1Cでの充電および放電試験を行う。異なる速度での、セルの容量の関数としての電圧の変動、および充電/放電サイクル数の関数としてのセルの容量の変動が
図7および
図8にそれぞれ示されている。
【0081】
セルの電位は、充電速度C/20~C/2に関わらず、充電で4.2Vに到達することができ、極性形成は充電速度1Cに対して増加する。
【0082】
放電において、平均容量150mA.h.g-1がサイクリング速度C/20で得られ、すなわちこれは予想された実験的容量の91%であり、C/10では81%が得られている。よって、セルの性能は、いかなる前処理も施していないセルの性能と比べて、明確に改善されている。