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特許7520896中空コアファイバの製造方法および中空コアファイバ用プリフォームの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】中空コアファイバの製造方法および中空コアファイバ用プリフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/012 20060101AFI20240716BHJP
   G02B 6/032 20060101ALI20240716BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
C03B37/012 A
G02B6/032 Z
G02B6/02 356A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021574871
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2020069998
(87)【国際公開番号】W WO2021009225
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】19186768.8
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Heraeusstr.12-14, 63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル ローゼンベアガー
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ エーレントラウト
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン ライス
(72)【発明者】
【氏名】ユスフ タンセル
(72)【発明者】
【氏名】ダーフィト コストカ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ザットマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン フィドラ
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/053412(WO,A1)
【文献】特表2018-533042(JP,A)
【文献】A.F. Kosolapov, et al.,Hollow-core revolver fibre with a double-capillary reflective cladding,Quantum Electronics,英国,IOP Publishing,2016年03月14日,46 [3],267-270,https://iopscience.iop.org/article/10.1070/QEL15972
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00-37/16
G02B 6/032
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ前記中空コアを取り囲む内部クラッド領域とを有する反共振中空コアファイバの製造方法であって、
(a) 被覆管内部ボアと被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁が前記被覆管長手方向軸に沿って延びている被覆管(4)を提供する工程と、
(b) 複数の反共振要素プリフォーム(5)を提供する工程と、
(c) 前記反共振要素プリフォーム(5)を前記被覆管壁の内側の目標位置に配置して、中空のコア領域とクラッド領域とを有する前記反共振中空コアファイバの一次プリフォーム(7)を形成する工程と、
(d) 前記一次プリフォーム(7)を前記反共振中空コアファイバに延伸する工程、または前記一次プリフォーム(7)を、前記反共振中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームにさらに加工する工程と、
を備え、
前記さらに加工する工程では、
(i) 延伸、
(ii) コラップス、
(iii) コラップスおよび同時延伸、
(iv) 追加のクラッド材料のコラップス、
(v) 追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi) 追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行される、製造方法において、
工程(c)により前記反共振要素プリフォーム(5)を配置するために、前記被覆管内部ボアの中に位置決めテンプレート(1)が装填され、該位置決めテンプレート(1)は前記反共振要素プリフォーム(5)を前記目標位置に位置決めするための保持要素(3)を有し、
前記位置決めテンプレート(1)は、少なくとも1つの固定手段を有し、該固定手段は、前記被覆管壁内の固定手段相手部品(6)と一緒に作用して摩擦接続および/または形状接続を形成する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記位置決めテンプレート(1)は、前記被覆管内部ボアに突き出す軸(2)と共に装填され、該軸には半径方向に外側を向く複数の保持アームの形で前記保持要素(3)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反共振要素プリフォーム(5)は、管外部クラッド面によって管状に形成されており、それぞれの前記保持要素(3)は、保持する前記反共振要素プリフォーム(5)の前記管外部クラッド面との接触点を少なくとも2つ有していることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記位置決めテンプレート(1)は、被覆管端面の領域、または両方の被覆管端面の領域に装填されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記固定手段相手部品(6)は、前記被覆管壁の端面に配置されており、前記固定手段はその中に完全に埋没可能であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記固定手段相手部品(6)は、前記被覆管壁の外側まで達しないことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記位置決めテンプレート(1)は、グラファイト製またはガラス製であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記位置決めテンプレート(1)は、寸法誤差が+/-0.1mm未満で機械加工されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
内部断面が円形の被覆管(5)が提供され、該被覆管(5)は、前記被覆管壁の内側に、長手方向溝または長手方向スロットとして構成されている長手方向構造(8)を有していることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記被覆管壁の内側は、切削加工によって、特に穴あけ加工、フライス加工、切削加工、ホーニング加工および/またはポリッシング加工によって作製されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記被覆管壁の内側の前記目標位置への前記反共振要素プリフォーム(5)の配置および/または工程(d)による前記一次プリフォーム(7)の延伸またはさらなる加工は、非晶質SiO粒子を含有する封止材または接合材を使用しての固定措置および/または封止措置を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ中空コアを取り囲む内部クラッド領域とを有する反共振中空コアファイバのためのプリフォームの製造方法であって、
(a) 被覆管内部ボアと被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁が前記被覆管長手方向軸に沿って延びている被覆管(4)を提供する工程と、
(b) 複数の反共振要素プリフォーム(5)を提供する工程と、
(c) 前記反共振要素プリフォーム(5)を前記被覆管壁の内側の目標位置に配置して、中空のコア領域とクラッド領域とを有する前記反共振中空コアファイバの一次プリフォーム(7)を形成する工程と、
(d) 一次プリフォーム(7)を前記反共振中空コアファイバのための二次プリフォームに任意でさらに加工する工程と、
を備え、
前記さらに加工する工程では、
(i) 延伸、
(ii) コラップス、
(iii) コラップスおよび同時延伸、
(iv) 追加のクラッド材料のコラップス、
(v) 追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi) 追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行される、製造方法において、
工程(c)により前記反共振要素プリフォーム(5)を配置するために、前記被覆管内部ボアの中に位置決めテンプレート(1)が装填され、該位置決めテンプレート(1)は前記反共振要素プリフォーム(5)を前記目標位置に位置決めするための保持要素(3)を有し、前記位置決めテンプレート(1)は、少なくとも1つの固定手段を有し、該固定手段は、前記被覆管壁内の固定手段相手部品(6)と一緒に作用して摩擦接続および/または形状接続を形成する、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ中空コアを取り囲むクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバの製造方法に関し、この製造方法は、
(a) 被覆管内部ボアと被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁が被覆管長手方向軸に沿って延びている被覆管を提供する工程と、
(b) 複数の反共振要素プリフォームを提供する工程と、
(c) 反共振要素プリフォームを被覆管壁の内側の目標位置に配置して、中空のコア領域とクラッド領域とを有する中空コアファイバのための一次プリフォームを形成する工程と、
(d) 一次プリフォームを中空コアファイバに延伸する工程、または一次プリフォームを、中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームにさらに加工する工程と、
を備え、
さらに加工する工程では、
(i) 延伸、
(ii) コラップス、
(iii) コラップスおよび同時延伸、
(iv) 追加のクラッド材料のコラップス、
(v) 追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi) 追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行される。
【0002】
さらに本発明は、ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含む、中空コアを取り囲むクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバのためのプリフォームの製造に関し、この製造は、
(a) 被覆管内部ボアと被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁が被覆管長手方向軸に沿って延びている被覆管を提供する工程と、
(b) 複数の反共振要素プリフォームを提供する工程と、
(c) 反共振要素プリフォームを被覆管壁の内側の目標位置に配置して、中空のコア領域とクラッド領域とを有する中空コアファイバのための一次プリフォームを形成する工程と、
(d) 一次プリフォームを中空コアファイバのための二次プリフォームに任意でさらに加工する工程と、
を備え、
さらに加工する工程では、
(i) 延伸、
(ii) コラップス、
(iii) コラップスおよび同時延伸、
(iv) 追加のクラッド材料のコラップス、
(v) 追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi) 追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行される。
【0003】
中実材料から作製される従来のシングルモード光ファイバは、低屈折率のガラスからなるクラッド領域により取り囲まれたガラス製のコア領域を有している。このとき、光の伝搬は、コア領域とクラッド領域間の全反射に基づいている。しかし、導波光と中実材料の相互作用は、データ伝送時の遅延時間の増大や、エネルギー放射線に対する損傷のしきい値の相対的低下に結びついている。
【0004】
これらの欠点は、コアがガスまたは液体を充填した真空の空洞部からなる「中空コアファイバ」によって回避されるか、もしくは軽減される。中空コアファイバでは、光とガラスの相互作用が中実コアファイバの場合よりも減少する。コアの屈折率はクラッドの屈折率よりも小さいため、全反射による光の伝搬は不可能であり、通常光はコアからクラッドに漏れ出ると考えられる。光の伝搬の物理的メカニズムに応じて、中空コアファイバは、「フォトニックバンドギャップファイバ」と「反共振反射ファイバ」に区別される。
【0005】
「フォトニックバンドギャップファイバ」では、中空コア領域が、小さな中空チャネルを周期的に配置したクラッドによって取り囲まれている。クラッド内の中空チャネルの周期的構造には、半導体技術に依る「フォトニックバンドギャップ」と呼ばれる効果があり、これにより、クラッド構造に散乱する特定の波長領域の光はブラッグ反射に基づいて中心の空洞部で構造的に干渉するため、クラッド内で横方向に広がることはできない。
【0006】
「反共振中空コアファイバ」(「antiresonant hollow-core fibers」;ARHCF)と呼ばれる中空コアファイバの実施形態では、中空のコア領域が内部のクラッド領域によって取り囲まれており、いわゆる「反共振性要素」(または「反共振要素」;略号:「AREs」)の中に配置されている。中空コア周辺に均等に分散された反共振要素の壁は、反共振に作動されるファブリ・ペロー空洞として機能し、この空洞は入射光を反射し、ファイバコアに通すことができる。
【0007】
このファイバ技術により、光減衰を軽減することが期待され、透過スペクトルが非常に広くなり(紫外線または赤外線の波長帯域でも)、データ伝送時の遅延時間も小さくなる。
【0008】
中空コアファイバの潜在的用途は、データ伝送、材料加工などに用いる高性能ビーム制御、モーダルフィルタリング、特に超紫外線波長帯域から赤外線波長帯域までのスーパーコンティニウムを発生させる非線形光学の分野にある。
【0009】
背景技術
反共振中空コアファイバの欠点は、高次モードが自動的に抑制されないため、長い伝達距離にわたって純粋なシングルモードにならないことが多く、出力光線の品質が悪化することにある。
【0010】
Francesco Poletti「Nested antiresonant nodeless hollow core fiber」;Optics Express,Vol.22,No.20(2014);DOI:10.1364/OE 22.023807の文献では、反共振要素が単純な単一構造要素として形成されているのではなく、互いに入れ子になった(英語:nested)複数の構造要素から構成されたファイバ設計が提案されている。入れ子になった反共振要素は、高次コアモードがクラッドモードに位相整合されて抑制されるが、基本コアモードは抑制されないように設計されている。これにより、基本コアモードの伝搬が常に保証され、限定された波長帯域にわたって中空コアファイバを効率的にシングルモードにすることができる。
【0011】
効率的なモード抑制は、伝搬光の中心波長の他に、中空コアの半径および反共振要素内で入れ子になっているリング構造の直径差といったファイバ設計の構造パラメータにも左右される。
【0012】
EP3136143A1から、コアが基本モード以外に別のモードも伝搬することができる反共振中空コアファイバ(「バンドギャップのない中空コアファイバ」と呼ばれる)が公知である。この目的のため、コアは、反共振モードと高次モードの位相整合を提供する「非共振要素」を有する内部クラッドによって取り囲まれている。中空コアファイバの製造は、いわゆる「スタック&ドロー法」によって行われ、そこでは出発要素を軸平行の集合体になるように並べ、固定することによってプリフォームを形成し、続いてそのプリフォームを延伸する。ここでは、内側断面が六角形の被覆管が使用され、被覆管の内縁部には、いわゆる「AREプリフォーム」(反共振要素プリフォーム)が6個固定される。このプリフォームを2段階に分けて線引きすることによって中空コアファイバを形成する。
【0013】
国際特許出願2018/169487A1から、反共振中空コアファイバのプリフォーム製造方法が公知であり、ここでは第1のクラッド領域が多数のロッドから構成され、第2のクラッド領域は、外側の被覆管によって取り囲まれている多数の管から構成されている。ロッド、管、被覆管は「スタック&ドロー」法によって接合され、プリフォームが形成される。プリフォームを延伸する前に、プリフォーム端部に封止材を塗布して封止が行われる。封止材としては、例えばUV接着剤が使用される。
【0014】
発明が解決しようとする課題
反共振中空コアファイバや、特に入れ子になっている構造要素を持つそのようなファイバは複雑な内部形状を有するため、これを正確かつ再現可能に製造することは困難である。さらに、共振条件または反共振条件を満たすには伝搬させる光の動作波長の大きさに僅かな寸法誤差があっても許されないため、このことは一層困難なものとなる。目標形状からの逸脱は、ファイバプリフォームの構成時にその原因が作られるおそれがあるが、ファイバ線引きプロセス時にも縮尺に沿わない不適切な変形によって生じる可能性がある。
【0015】
公知の「スタック&ドロー」法では、多数の要素が正確な位置に接合されなければならない。例えば、冒頭に述べた文献から公知の「NANF」設計の中空コアファイバを製造するには、それぞれが反共振要素外管(略号:ARE外管)からなる6つの反共振要素プリフォームと、ARE外管の内側クラッド面の片側に溶接されている反共振要素内管(略号:ARE内管)とを被覆管の内側に取り付けなければならない。
【0016】
小さい減衰値と広範な伝播範囲を実現するためには、反共振要素の壁の均等な壁厚の他に、被覆管内部における反共振要素の方位角位置も重要である。このことは、「スタック&ドロー」法では簡単に実現できない。本発明の目的は、従来の製造方法の制限を回避して、反共振中空コアファイバを低コストで製造する方法を提供することである。
【0017】
特に本発明の目的は、反共振中空コアファイバと反共振中空コアファイバのプリフォームの製造方法を提供することであり、本方法によって、構造要素の高い精密性とファイバ内での反共振要素の正確な位置決めを、十分に安定的で再現可能な仕方で達成することが可能となる。
【0018】
さらに、必要な構造精度、特に反共振要素の均等な壁厚および規定の方位角位置への正確な位置決めが容易に達成できない従来の「スタック&ドロー」法の欠点をできる限り回避しなければならない。
【0019】
発明の概要
反共振中空コアファイバの製造方法に関して、この課題は、冒頭に述べた種類の方法から出発して、本発明に基づき、工程(c)により反共振要素プリフォームを配置するために、被覆管内部ボアの中に位置決めテンプレートが装填され、この位置決めテンプレートは、反共振要素プリフォームを目標位置に位置決めするための保持要素を有することによって解決される。
【0020】
反共振中空コアファイバ製造の出発点は、ここでは、「一次プリフォーム」と呼ばれるプリフォームである。このプリフォームは被覆管を含み、そこには中空コアファイバ内に反共振要素を形成するための前段階またはプリフォーム(ここでは短く「反共振要素」と呼ぶ)が含まれている。一次プリフォームは中空コアファイバに延伸することができるが、通常は、この一次プリフォームをさらに加工して、ここでは「二次プリフォーム」と呼ばれるプリフォームを作製する。必要に応じて、この二次プリフォームを延伸することにより中空コアファイバが作られる。代替として、一次プリフォームまたは二次プリフォームを、構成部品の同軸集合体を形成しながら、1つまたは複数の外層シリンダにより取り囲み、この同軸集合体を中空コアファイバに直接延伸する。この場合、一般的な「プリフォーム」という用語は、中空コアファイバが最終的に線引きされる構成部品または構成部品の同軸集合体の名称と理解される。
【0021】
クラッド材料の付加は、例えば一次プリフォーム上に外層シリンダをコラップスすることによって行われる。一次プリフォームと外層シリンダからなる同軸配置体は、外層シリンダのコラップス時に延伸されるか、または延伸されない。このとき、反共振要素プリフォームは、その形状または配置が変化するか、またはその形状または配置は変化しない。
【0022】
被覆管の内部クラッド面におけるプリフォームの位置決め精度は、反共振要素プリフォームを配置するために位置決めテンプレートを装填することによって改善される。
【0023】
位置決めテンプレートは、例えば、被覆管内部ボアに突き出す軸を有しており、この軸には半径方向に外側を向く複数の保持アームの形で保持要素が設けられている。
【0024】
構造的に設定された保持要素の星形の配置により、反共振要素プリフォームをそれぞれの目標位置へ正確に位置決めし、固定することが容易になる。
【0025】
好ましい方法では、反共振要素プリフォームが管外部クラッド面によって管状に形成されており、それぞれの保持要素は、保持する反共振要素プリフォームの管外部クラッド面との接触点を少なくとも2つ有している。
【0026】
2つの接触点は、反共振要素プリフォームを規定されたように安定的に位置決めするには十分であるため、内部クラッド面に固定する際に反共振要素プリフォームが逸脱するのを阻止することができる。
【0027】
このとき、位置決めテンプレートは、好ましくは被覆管端面の領域、好ましくは両方の被覆管端面の領域にのみ装填される。
【0028】
これにより、位置決めテンプレートと反共振要素プリフォームとの面接触は必要な範囲に限定される。さらに、位置決めテンプレートは、一次プリフォームのさらなる取扱いおよび加工の際に被覆管内部ボア内に残っていてもよいため、反共振要素プリフォームの位置は引き続き安定する。
【0029】
位置決めテンプレートを被覆管に固定するため、位置決めテンプレートは、有利には少なくとも1つの固定手段を有し、これは、被覆管壁内の固定手段相手部品と一緒に作用して摩擦接続および/または形状接続を形成する。
【0030】
固定手段と相手部品は、例えばフック/受け金、バネ/溝などからなるシステムであり、好ましくは、できるだけ簡単に被覆管壁に取り付けられる、または被覆管壁の中に挿入できる差し込み接続である。簡単かつ好適なケースでは、位置決めテンプレートの保持要素の少なくとも1つが固定手段またはその構成要素を形成している。
【0031】
例えば、固定手段相手部品が被覆管壁の端面に配置されており、固定手段はその中に完全に埋没可能である場合が有利であることが判明した。
【0032】
被覆管端面は、他の構成部品との接続、例えば管状ホルダーとの接着接続が簡単にできるように平坦性を維持している。
【0033】
固定手段相手部品が被覆管外側まで達せず、被覆管外側を突き破らない場合が有利である。これにより、必要に応じて、ホルダーまたはその他のコンポーネントと被覆管との端面側の接続の密閉性を高めることができる。
【0034】
位置決めテンプレートがグラファイト製またはガラス製、好ましくはシリカガラス製である場合が特に有利である。
【0035】
これらの材料で作られた位置決めテンプレートは純度が高く、寸法誤差が+/-0.1mm未満という高い精度で機械加工することができる。これらの位置決めテンプレートは温度安定性に優れ、中空コアファイバの材料、特にガラスに対して不活性を示す。加工がより簡単であるという理由から、グラファイトは特に好ましい材料である。
【0036】
被覆管内部クラッド面でのプリフォームの位置決め精度は、被覆管内側を切削加工によって、特に穴あけ加工、フライス加工、研削加工、ホーニング加工および/またはポリッシング加工によって作製することによって改善する。
【0037】
これらの加工技術は、熱や圧力を使用するその他の周知の変形技術と比べ、より正確で極めて微細な構造を提供し、ノズル、プレスまたは鋳造型などの成形工具による表面の汚れを回避することができる。
【0038】
この切削加工には、好ましくは反共振要素プリフォームの目標位置領域における被覆管内側の構造化も含まれ、これにより反共振要素プリフォームに被覆管長手方向軸に向かって延びる長手方向構造を設けることができる。この長手方向構造には、例えば、被覆管長手方向軸に対して平行に通る長手方向スロットおよび/または長手方向溝が含まれ、これらは、穴あけ加工、鋸加工、フライス加工、切断加工または研削加工によって作製されるのが好ましい。
【0039】
被覆管長手方向軸の方向に延びる長手方向構造は、反共振要素プリフォームの位置決め補助として用いられる。これにより、反共振要素プリフォームが被覆管の内側の規定位置に配置されやすくなる。
【0040】
特に連続する長手方向スロットの場合、被覆管が端面側の端部を有しており、長手方向スロットがこの端面側の端部の手前で終端していることが有利である。これに対して、被覆管壁を突き破らない長手方向溝は、好ましくは端面側の端部まで達している。
【0041】
好適な方法の変形例では、長手方向構造が被覆管壁の周囲に分散された長手方向スロットを有しており、反共振要素プリフォームが長手方向スロットに配置されている。
【0042】
長手方向スロットは、被覆管の両方の端面領域を除いて、被覆管壁を内側から外側へ貫通している。長手方向スロットは平行な長手方向の縁部を備え、最大スロット幅Sを有し、反共振要素プリフォームが好ましくは長手方向縁部に接続される。この場合、反共振要素プリフォームは最大幅Sよりも大きな幅寸法を有しているため、プリフォームが完全に長手方向スロットの中に沈み込むことはない。長手方向縁部の下部領域は、ガスを送り込んだり、吸引したりできる空洞部になっている。
【0043】
好適な方法変形例では、被覆管壁内側の目標位置への反共振要素プリフォームの配置、および/または工程(c)による中空コアファイバの線引きが、非晶質SiO粒子含有の封止材または接合材を使用した固定措置および/または封止措置を含んでいる。
【0044】
封止または固定に使用される封止材または接合材には、例えば分散液に取り込まれた非晶質SiO粒子が含まれている。この材料は、接合すべき面または封止すべき面の間に塗布され、使用時は通常ペースト状である。低温で乾燥させると、分散液が部分的または完全に取り除かれ、材料が硬化する。封止材または接合材、および特に乾燥後に得られる硬化したSiO含有封止材または接合材は、固定および圧縮の要件を満たしている。乾燥に必要な温度は300℃以下であり、これによりプリフォームの寸法安定性の維持が促進され、熱による悪影響が回避される。例えばプリフォームを中空コアファイバに延伸する際に、800℃周辺の高温まで加熱すると、封止材または接合材のさらなる熱凝固が生じるため、曇りガラスや透明ガラスの形成にも適している。このことは焼結やガラス化によって生じるが、この場合、曇りガラスへの焼結は、完全に透明になるまでガラス化するよりも比較的低い温度および/または短い加熱時間で済む。従って、封止材または接合材は加熱によって完全に圧縮することができ、熱成形プロセスでの加熱によってガラス化が可能である。このとき、封止材または接合材はシリカガラスのような状態であり、粘性を持ち、変形可能となる。
【0045】
熱成形プロセスでは封止材または接合材は分解されず、不純物をほとんど放出しない。したがって、これは熱成形プロセス時の温度安定性と純度によって特徴付けられ、異なる熱膨張率による変形を回避する。
【0046】
特に、中空コアファイバの低い光減衰と幅広い光学的伝送帯域幅に関しては、反共振要素プリフォームが中空コアの周りに奇数対称に配置されている場合は特に有利であることが証明されている。
【0047】
好適な方法では、管状の構造要素が提供され、そのうちの少なくとも一部は0.2~2mmの範囲の壁厚を有し、好ましくは0.25~1mmの範囲の壁厚を有することによって、被覆管におけるプリフォームの位置決め精度をさらに改善する。このとき、被覆管は外径が90~250mmの範囲のもの、好ましくは外径が120~200mmの範囲のものが提供される。これらの構成部品はそれぞれ少なくとも1mの長さがあり、反共振要素を形成するための比較的容積の大きな構造要素である。これにより、取扱いが容易になる。さらに、被覆管と構造要素が垂直に配置されており、例えば、好ましくは上述の封止材または接合材を使用し、その補足または代替として上述した位置決めテンプレートを用いて、構造要素がそれぞれ上部の端面側端部で目標位置に位置決めされ、固定されている場には、構造要素長手方向軸の平行性と垂直方向への整列が重力によってサポートされる。
【0048】
中空コアファイバ用プリフォームの製造方法に関して、上で指摘した技術的課題は、冒頭に述べた種類の方法から出発して、本発明に基づき、工程(c)による反共振要素プリフォームの配置が、被覆管内部ボアの中に装填された位置決めテンプレートによって行われ、この位置決めテンプレートは反共振要素プリフォームを目標位置に位置決めするための保持要素を有することによって解決される。
【0049】
プリフォームは反共振中空コアファイバ製造に対する出発点である。反共振中空コアファイバは、一次プリフォームを直接延伸することで線引きできるが、最初に一次プリフォームをさらに加工して、別の半製品(「二次プリフォーム」とも呼ぶ)を作製し、そこから反共振中空コアファイバを線引きすることもできる。
【0050】
いずれの場合も、プリフォームの製造には反共振要素プリフォームと被覆管の取付けおよび接続が含まれている。プリフォームの位置決め精度は、反共振要素プリフォームを配置するために位置決めテンプレートを使用することによって改善される。被覆管をあらかじめ構造化すると、さらに改善することができる。
【0051】
プリフォームを製造するための措置は、中空コアファイバの製造に関連して上記に詳しく説明されており、それらの説明がここに引用される。
【0052】
定義
これまでに述べた明細書の個々の工程と用語について、以下に補足的に定義する。これらの定義は本発明の明細書の構成要素である。以下の定義のいずれかと残りの明細書との間で実質的な矛盾がある場合、残りの明細書の中で言及していることが優先される。
【0053】
反共振要素
反共振要素は、中空コアファイバの単純な構造要素または入れ子構造要素であってよい。これは、中空コアの方向から見て負の曲率(凸部)を持つか、曲率を持たない(平面、直線)少なくとも2つの壁を有している。通常、反共振要素は動作光に対して透明な材料、例えばガラス(特にドープしたSiOまたはドープしないSiO)、プラスチック(特にポリマー)、複合材料または結晶材料からなる。
【0054】
反共振要素プリフォーム/反共振要素前段階
反共振要素プリフォームとは、主にファイバ線引きプロセスにおける単純な線引きによって中空コアファイバ内で反共振要素になる構成部品またはプリフォームの構成部品である。反共振要素前段階とは、変形によって初めて反共振要素プリフォームまたは直接的に反共振要素になる構成部品またはプリフォームの構成部品である。反共振要素プリフォームは、単純な構成部品または入れ子になっている構成部品であってよく、これに追加的に位置決め補助を固定することができる。反共振要素プリフォームは、もともと一次プリフォームの中に存在する。
【0055】
入れ子の反共振要素プリフォームは、中空コアファイバの中で入れ子になっている反共振要素を形成する。これは、1本の外管と、外管の内部ボア内に配置されている少なくとも1つのさらなる構造要素とから構成されている。さらなる構造要素は、外管の内側クラッド面に接しているさらなる管であってよい。外管は「反共振要素外管」または略して「ARE外管」と呼ばれ、さらなる管は「反共振要素内管」または略して「ARE内管」または「入れ子になっているARE内管」とも呼ばれる。
【0056】
入れ子になっているARE内管の内部ボアの中には、反共振要素プリフォームが何重にも入れ子になっている場合、少なくとも1つのさらなる構造要素、例えば入れ子になっているARE内管の内部クラッド面に接する第3の管を配置してもよい。
【0057】
反共振要素プリフォームが何重にも入れ子になっている場合は、ARE外管の中に配置されている複数の管を区別するため、必要に応じて「入れ子になっている外側のARE内管」と「入れ子になっている内側のARE内管」とが区別される。
【0058】
シリンダ形の反共振要素プリフォームおよびそれらのシリンダ形構造要素に関連する「断面」という用語は、常に、それぞれのシリンダ長手方向軸に対して垂直の断面を示し、特に指定がない限り、管状構成部品における外部輪郭の断面を示すものである(内部輪郭の断面ではない)。
【0059】
一次プリフォームのさらなる加工により、とりわけ熱成形処理により、元の反共振要素プリフォームが初期形状に対して変化した形状で存在する中間製品を作ることができる。ここでは、変化した形状も同様に反共振要素プリフォームまたは反共振要素前段階と呼ぶ。
【0060】
プリフォーム/一次プリフォーム/二次プリフォーム/コアプリフォーム(ケーン)
プリフォームは、反共振中空コアファイバが線引きされる構成部品である。これには、一次プリフォームまたは一次プリフォームのさらなる加工によって作製される二次プリフォームがある。一次プリフォームは、少なくとも1本の被覆管と、その中に緩くまたは堅固に固定された状態で収納されている、反共振要素のためのプリフォームまたは前段階とからなる集合体であってよい。一次プリフォームを、中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームにさらに加工することは、
(i) 延伸、
(ii) コラップス、
(iii) コラップスおよび同時延伸、
(iv) 追加のクラッド材料のコラップス、
(v) 追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi) 追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行されることを含む。
【0061】
文献においてコアプリフォーム(英語:ケーン、Cane)とは、一次プリフォームのコラップスおよび/または延伸によって得られるプリフォームである。通常、コアプリフォームは、中空コアファイバの線引き前または線引き時に追加のクラッド材料により覆われる。
【0062】
延伸/コラップス
延伸では、一次プリフォームが長く伸ばされる。この延伸は、同時コラップスなしで行ってよい。延伸は一定の縮尺に従って行うことができるため、例えば一次プリフォームの構成部品の形状および配置は延伸した最終製品に反映されている。しかし、延伸では、一次プリフォームが寸法どおりに線引きされず、幾何形状が変化する可能性もある。
【0063】
コラップスでは内部ボアを狭くしたり、管状構成部品間の環状の隙間を塞いだり、狭くしたりする。このコラップスは、通常、延伸と平行して行われる。
【0064】
中空コア/内部クラッド領域/外部クラッド領域
少なくとも1つの被覆管と、その中に緩くまたは堅固に固定された状態で収納されている反共振要素のプリフォームまたは前段階とからなる集合体を、ここでは「一次プリフォーム」とも呼ぶ。この一次プリフォームは、中空コアとクラッド領域から構成される。このクラッド領域は、例えば集合体へのコラップスによって形成された「外部クラッド領域」が存在しており、これらのクラッド領域を区別する必要がある場合は、「内部クラッド領域」とも呼ばれる。「内部クラッド領域」と「外部クラッド領域」という名称は、中空コアファイバや一次プリフォームのさらなる加工によって得られる中間製品の該当する領域に対しても使用される。
【0065】
「管内側」という名称は「管の内部クラッド面」の同義語としても用いられ、「管外側」という名称は「管の外部クラッド面」の同義語としても用いられる。管に関連した用語「内部ボア」は、内部ボアが穴あけ作業によって形成されたことを意味するものではない。
【0066】
切削加工
加工物を分離加工するための機械的製造方式であり、特に旋盤加工、切断加工、穴あけ加工、鋸加工、フライス加工または研磨加工を意味する。この加工により、被覆管長手方向軸の方向に延びる長手方向構造が得られ、これは反共振要素プリフォームの位置決め補助として用いられる。長手方向構造は被覆管内側からアクセスできるようになっており、被覆管壁全体を通って外側まで延びていてもよい。
【0067】
粒度および粒度分布
SiO粒子の粒度および粒度分布は、D50値に基づき特徴付けられる。この値は、SiO粒子の累積量を粒度に応じて示す粒度分布曲線から読み取られる。粒度分布は、それぞれのD10値、D50値、D90値に基づき特徴付けられることが多い。このとき、D10値はSiO粒子の累積量の10%に達しない粒度を示し、対応して、D50値およびD90はSiO粒子の累積量の50%または90%に達しない粒度を示す。粒度分布は、ISO13320に準拠した散乱光およびレーザー回折分光法によって検出される。
【0068】
実施例
以下に、実施例に基づき、図を用いて本発明を詳しく説明する。詳細は図に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】位置決めテンプレートの実施形態を上から見た図である。
図2】位置決めテンプレートを使用して、被覆管内部クラッド面に反共振要素プリフォームを位置決めするための工程を示す図である。
図3】位置決めテンプレートを収容するために端面側の溝を備える図2(a)の被覆管を切断線S1に沿って切断した長手方向断面図である。
図4】位置決めテンプレートが装填されている図2(b)の被覆管を切断線S2に沿って切断した長手方向断面図である。
図5】反共振要素プリフォームを位置決めするための追加の長手方向構造を備える被覆管の実施形態の図である。
【0070】
中空コアファイバまたは中空コアファイバのためのプリフォームの製造では、多数の構成部品を相互に接続しなければならない。さらに、熱成形プロセスを実行する場合、プリフォームに存在している隙間やチャネルを封止することは有益である。独国特許出願公開第102004054392A1から公知のように、接合または封止には、SiOベースの封止材または接合材が使用される。このとき、シリカガラス粉粒体の湿式製粉によって、D50値が約5μmおよびD90値が約23μmによって特徴付けられる粒度分布を有する非晶質SiO粒子を含む水性スラリーが生成される。このベーススラリーに、約5μmの中等度の粒度を持つ非晶質SiO粒子が混合される。接合材として使用されるスラリーは、90%の固形物含有量を有し、少なくとも99.9質量%はSiOから構成されている。
【0071】
図1は、本発明に基づく方法で使用される位置決めテンプレート1の上から見て星形の複数の実施形態を概略的に示す。各位置決めテンプレート1は中央部(軸2)を有しており、そこから半径方向に外側に向かって、程度の差はあるが明確な保持アーム3が延びている。
【0072】
図2は、被覆管4の中に位置決めテンプレートを取り付け、位置決めテンプレート1によって反共振要素プリフォーム5を位置決めするための工程を示している。被覆管4の内部クラッド面と外部クラッド面は、研削加工、ホーニング加工、ポリッシング加工によって機械加工され、最終寸法に仕上げられている。同時に、反共振要素プリフォーム5の目標位置領域では、被覆管内側が構造化されているが、これについては下記でさらに詳しく説明する。
【0073】
図2(a)およびそれに関連する図3の長手方向断面図は、被覆管4の端面に内部クラッド面から溝6がフライス加工されていることを示している。溝6の幅と深さはそれぞれ2mmである。溝は被覆管4の外部クラッド面を貫通していない。溝の役割は、被覆管4の端面側の領域で内部ボア9の中に挿入される位置決めテンプレート1のアーム3を収容することである。溝6は、保持アーム3の寸法に適合されており、従って収容する保持アーム3(バネ)に対する相手方固定手段として機能する。このことは、図2(b)および関連する図4の長手方向断面図に示されている。保持アーム3の端部は、溝6の中に完全に収容されており、被覆管端面から突出していないため、被覆管端面の平坦性を損なっていない。
【0074】
図2(c)は、保持アーム3の間に反共振要素プリフォーム5が位置決めされることを示している。このとき、反共振要素プリフォーム5は、保持アーム3にも、軸2にも接しているため、周方向にも半径方向にも滑らないように確保されている。
【0075】
被覆管4の内壁での反共振要素プリフォーム4の固定は、上述したSiOベースの接合材によって行われる。接合材は、反共振要素プリフォーム5の端面側の端部領域に局所的に塗布され、その上に反共振要素プリフォームが位置決めテンプレート1を使用して載せられる。このとき、位置決めテンプレート1は、両方の端面側の被覆管端部の周りの領域に制限されている。
【0076】
この方式により、被覆管4と反共振要素プリフォーム5との間で正確かつ再現可能な接続が行われる。固定するためには接合材の硬化は、300℃以下の低い温度で十分なため、周辺領域の強い加熱およびそれによる反共振要素プリフォーム5の変形が回避される。
【0077】
被覆管4は、シリカガラスから作製されている。長さは500mm、外径73m、内径24mmである。被覆管4とその中に位置決めされている反共振要素プリフォーム5からなる集合体は、ここでは「一次プリフォーム」7と呼ばれる。
【0078】
図5は、被覆管4の別の実施形態を、被覆管端面を上から見て示す。被覆管4は、被覆管壁の内部クラッド面にそれぞれ長手方向溝8を有している。長手方向溝8は、6個がそれぞれの被覆管4の内周に対称性に均等分散されている。これらの溝は、反共振要素プリフォーム5の追加の位置決め補助として用いられる。
【0079】
図5(a)は、フライス加工によって作製された、断面が皿形の平坦で広い長手方向溝8を示す。図5(b)は、同様にフライス加工によって作製された、断面が半円形の平坦で細い長手方向溝8示す。図5(c)は、穴あけ加工によって作製された、断面がほぼ閉じられた円形の深くて細い長手方向溝8を示す。最大深さは3mm、内径は4mmである。
【0080】
反共振中空コアファイバを製造するため、一次プリフォーム7を外層シリンダにより覆うことによって、追加のクラッド材料を付加し、最終的な二次プリフォームにおいて中空コアファイバに対して規定されているコアとクラッドの直径比を調節する。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】