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特許7520918喫煙材を加熱するための装置とともに使用するための物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】喫煙材を加熱するための装置とともに使用するための物品
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/465 20200101AFI20240716BHJP
   A24F 40/42 20200101ALI20240716BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F40/42
【請求項の数】 28
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022107307
(22)【出願日】2022-07-01
(62)【分割の表示】P 2020183056の分割
【原出願日】2016-10-26
(65)【公開番号】P2022126873
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】14/927,532
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Nicoventures Trading Limited
【住所又は居所原語表記】Globe House, 1 Water Street,WC2R 3LA London,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100154656
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 英彦
(72)【発明者】
【氏名】ブランディーノ, トーマス, ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルケ, アンドリュー, ピー.
(72)【発明者】
【氏名】フレイター, ジェームス, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】パプロッキー, ベンジャミン ジェイ.
【審査官】芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104997164(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104957779(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00 - 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙材を加熱して前記喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置とともに使用するための物品であって、
喫煙材と、
変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材を備えた、前記喫煙材を加熱するためのヒーターと、
を備え、
前記加熱材が、その中に切れ目又は穴を備え、
前記加熱材が、前記喫煙材の燃焼温度より低いキュリー点温度を有する、物品。
【請求項2】
喫煙材を加熱して前記喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置とともに使用するための物品であって、
喫煙材と、
変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材を備えた、前記喫煙材を加熱するためのヒーターと、
を備え、
前記ヒーターが、熱伝導性コーティングを備え、
前記加熱材が、前記喫煙材の燃焼温度より低いキュリー点温度を有する、物品。
【請求項3】
前記ヒーターが前記喫煙材と接触している、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記加熱材が、摂氏350度以下のキュリー点温度を有する、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項5】
前記喫煙材が、タバコ及び/又は1つ以上の保湿剤を含む、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項6】
前記ヒーターが、全体又は実質的に全体が前記加熱材からなる、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項7】
前記ヒーターが、熱伝導性コーティングを備える、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
喫煙材を加熱して前記喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置であって、
喫煙材を備えた物品を受け入れるための加熱領域と、
変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材を備えた、前記加熱領域を加熱するためのヒーターと、
前記加熱材に侵入する変動磁場を発生させるための磁場発生器と、
を備え、
前記加熱材が、その中に切れ目又は穴を備え、
前記加熱材が、前記喫煙材の燃焼温度より低いキュリー点温度を有する、装置。
【請求項9】
喫煙材を加熱して前記喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置であって、
喫煙材を備えた物品を受け入れるための加熱領域と、
変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材を備えた、前記加熱領域を加熱するためのヒーターと、
前記加熱材に侵入する変動磁場を発生させるための磁場発生器と、
を備え、
前記ヒーターが、熱伝導性コーティングを備え、
前記加熱材が、前記喫煙材の燃焼温度より低いキュリー点温度を有する、装置。
【請求項10】
前記磁場発生器が、導電性材料のコイルを備える、請求項又はに記載の装置。
【請求項11】
各コイルが、前記ヒーター及び加熱領域を取り囲んでいる、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記加熱材が、摂氏350度以下のキュリー点温度を有する、請求項又はに記載の装置。
【請求項13】
前記ヒーターが、全体又は実質的に全体が前記加熱材からなる、請求項又はに記載の装置。
【請求項14】
前記ヒーターが、熱伝導性コーティングを備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
請求項1~のいずれか一項に記載の物品と、前記喫煙材を加熱して前記喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置と、を備えるシステムであって
前記装置は、前記物品を受け入れるための加熱領域と、前記加熱材に侵入する変動磁場を発生させるための磁場発生器と、を備える、システム。
【請求項16】
請求項8~14のいずれか一項に記載の装置と、前記装置とともに使用するための物品と、を備えるシステムであって、前記物品が前記喫煙材を備える、システム。
【請求項17】
前記物品が消耗品であり、前記装置は再使用可能である、請求項15又は16に記載のシステム。
【請求項18】
完全に消費された前記物品は、さらなる物品と交換され得る、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
喫煙材を加熱して前記喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるのに使用するためのヒーターを備えた物品を製造する方法であって、
使用時にヒーターが加熱される最高温度を決定するステップと、
加熱材を備えたヒーターを用意するステップであって、前記加熱材が、変動磁場の侵入によって加熱可能であり、前記加熱材が、前記決定された最高温度に基づいて選択されたキュリー点温度を有し、前記加熱材が、その中に切れ目又は穴を備える、ステップと、
を含み、
前記加熱材が、前記喫煙材の燃焼温度より低いキュリー点温度を有する、方法。
【請求項20】
喫煙材を加熱して前記喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるのに使用するためのヒーターを備えた物品を製造する方法であって、
使用時にヒーターが加熱される最高温度を決定するステップと、
加熱材を備えたヒーターを用意するステップであって、前記加熱材が、変動磁場の侵入によって加熱可能であり、前記加熱材が、前記決定された最高温度に基づいて選択されたキュリー点温度を有し、前記ヒーターが、熱伝導性コーティングを備える、ステップと、
を含み、
前記加熱材が、前記喫煙材の燃焼温度より低いキュリー点温度を有する、方法。
【請求項21】
前記キュリー点温度が前記最高温度以下である、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記最高温度が、使用時に前記ヒーターによって加熱される前記喫煙材の燃焼温度より低い、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項23】
前記ヒーターと、使用時に前記ヒーターによって加熱される喫煙材とを備えた物品を形成するステップを含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項24】
前記喫煙材が、タバコ及び/又は1つ以上の保湿剤を含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項25】
前記ヒーターを前記喫煙材と接触させることを含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項26】
喫煙材を備えた物品を受け入れるための加熱領域と、前記加熱領域を加熱するための前記ヒーターと、前記加熱材に侵入する変動磁場を発生させるための磁場発生器とを備えた、喫煙材を加熱して前記喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置を形成するステップであって、
使用時に前記ヒーターが前記変動磁場の侵入によって加熱可能となる最高温度が、前記加熱材のキュリー点温度だけによって決定される、ステップを含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項27】
前記ヒーターが、全体又は実質的に全体が前記加熱材からなる、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒーターが、熱伝導性コーティングを備える、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置と、このような装置とともに使用するための物品と、このような装置及びこのような物品を備えたシステムと、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるのに使用するためのヒーターを備えた製品を製造する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻タバコ、葉巻タバコなどの喫煙品は、使用の間、タバコを燃焼させてタバコ煙を発生させる。燃焼させずに化合物を放出する製品を創出することによってこれらの喫煙品に代わるものを提供する試みがなされている。そのような製品の例としては、いわゆる「非燃焼・加熱式(heat-not-burn)」製品、又はタバコ加熱装置若しくはタバコ加熱製品がある。これらは、材料を燃焼するのではなく加熱することで化合物を放出する。その材料は、例えば、タバコでもよいし、他の非タバコ製品でもよい。非タバコ製品は、ニコチンを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるのに使用するためのヒーターを備えた製品を製造する方法を提供し、本方法は、
使用時にヒーターが加熱される最高温度を決定するステップと、
加熱材を備えたヒーターを用意するステップであって、その加熱材は、変動磁場の侵入によって加熱可能であり、その加熱材は、決定された最高温度に基づいて選択されたキュリー点温度を有する、ステップと
を含む。
【0004】
例示的な実施形態では、キュリー点温度は最高温度以下である。
【0005】
例示的な実施形態では、最高温度は、使用時にヒーターによって加熱される喫煙材の燃焼温度より低い。
【0006】
例示的な実施形態では、喫煙材の燃焼温度は、喫煙材の自発火温度又は発火点である。
【0007】
例示的な実施形態では、キュリー点温度は摂氏350度以下である。
【0008】
それぞれの例示的な実施形態では、キュリー点温度は、摂氏350度より低く、摂氏325度より低く、摂氏300度より低く、摂氏280度より低く、摂氏260度より低く、摂氏240度より低く、又は摂氏220度より低くすることができる。
【0009】
例示的な実施形態では、本方法は、ヒーターと、使用時にヒーターによって加熱される喫煙材とを備えた物品を形成するステップを含む。
【0010】
例示的な実施形態では、喫煙材は、タバコ及び/又は1つ以上の保湿剤を含む。
【0011】
例示的な実施形態では、本方法は、ヒーターを喫煙材と接触させることを含む。
【0012】
例示的な実施形態では、本方法は、喫煙材を備えた物品を受け入れるための加熱領域と、加熱領域を加熱するためのヒーターと、加熱材に侵入する変動磁場を発生させるための磁場発生器とを備えた、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置を形成するステップであって、
使用時にヒーターが変動磁場の侵入によって加熱可能となる最高温度が、加熱材のキュリー点温度だけによって決定される、ステップを含む。
【0013】
例示的な実施形態では、加熱材は、鉄、鉄を含む合金、鉄とニッケルとを含む合金、鉄とニッケルとクロムとを含む合金、鉄とニッケルとクロムとマンガンとを含む合金、鉄とニッケルとクロムとマンガンとケイ素とを含む合金、並びにステンレス鋼からなる群から選択された1つ以上の材料を含む。
【0014】
例示的な実施形態では、ヒーターは、全体又は実質的に全体が加熱材からなる。
【0015】
本発明の第2の態様は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置とともに使用するための物品を提供し、本物品は、
喫煙材と、
変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材を備えた、喫煙材を加熱するためのヒーターであって、加熱材は、喫煙材の燃焼温度より低いキュリー点温度を有する、ヒーターと
を備える。
【0016】
例示的な実施形態では、喫煙材の燃焼温度は、喫煙材の自発火温度又は発火点である。
【0017】
例示的な実施形態では、加熱材は喫煙材と接触している。
【0018】
例示的な実施形態では、キュリー点温度が摂氏350度以下である。
【0019】
それぞれの例示的な実施形態では、キュリー点温度は、摂氏350度より低く、摂氏325度より低く、摂氏300度より低く、摂氏280度より低く、摂氏260度より低く、摂氏240度より低く、又は摂氏220度より低くすることができる。
【0020】
例示的な実施形態では、加熱材は、鉄、鉄を含む合金、鉄とニッケルとを含む合金、鉄とニッケルとクロムとを含む合金、鉄とニッケルとクロムとマンガンとを含む合金、鉄とニッケルとクロムとマンガンとケイ素とを含む合金、並びにステンレス鋼からなる群から選択された1つ以上の材料を含む。
【0021】
例示的な実施形態では、喫煙材は、タバコ及び/又は1つ以上の保湿剤を含む。
【0022】
例示的な実施形態では、ヒーターは、全体又は実質的に全体が加熱材からなる。
【0023】
本発明の第3の態様は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置を提供し、本装置は、
喫煙材を備えた物品を受け入れるための加熱領域と、
変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材を備えた、加熱領域を加熱するためのヒーターと、
加熱材に侵入する変動磁場を発生させるための磁場発生器と
を備え、
使用時にヒーターが変動磁場の侵入によって加熱可能となる最高温度は、加熱材のキュリー点温度だけによって決定される。
【0024】
例示的な実施形態では、キュリー点温度は摂氏350度以下である。
【0025】
それぞれの例示的な実施形態では、キュリー点温度は、摂氏350度より低く、摂氏325度より低く、摂氏300度より低く、摂氏280度より低く、摂氏260度より低く、摂氏240度より低く、又は摂氏220度より低くすることができる。
【0026】
例示的な実施形態では、加熱材は、鉄、鉄を含む合金、鉄とニッケルとを含む合金、鉄とニッケルとクロムとを含む合金、鉄とニッケルとクロムとマンガンとを含む合金、鉄とニッケルとクロムとマンガンとケイ素とを含む合金、並びにステンレス鋼からなる群から選択された1つ以上の材料を含む。
【0027】
例示的な実施形態では、ヒーターは、全体又は実質的に全体が加熱材からなる。
【0028】
本発明の第4の態様はシステムを提供し、本システムは、
喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置と、
喫煙材と、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材から形成された、喫煙材を加熱するためのヒーターとを備えた、装置とともに使用するための物品であって、加熱材は、喫煙材の燃焼温度より低いキュリー点温度を有する、物品と
を備え、
装置は、物品を受け入れるための加熱領域と、物品が加熱領域内にあるとき、加熱材に侵入する変動磁場を発生させるための磁場発生器とを備える。
【0029】
それぞれの例示的な実施形態では、本システムの物品は、本発明の第2の態様の物品のそれぞれの例示的な実施形態に含まれている上記の特徴のいずれか1つ以上を有することができる。
【0030】
本発明の第5の態様はシステムを提供し、本システムは、
喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置と、
喫煙材を備えた、装置とともに使用するための物品と
を備え、
装置は、
物品を受け入れるための加熱領域と、
物品が加熱領域内にあるときに喫煙材を加熱するためのヒーターであって、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材から形成されるヒーターと、
加熱材に侵入する変動磁場を発生させるための磁場発生器と
を備え、
使用時にヒーターが変動磁場の侵入によって加熱可能となる最高温度は、加熱材のキュリー点温度だけによって決定される。
【0031】
例示的な実施形態では、本システムの物品は、本発明の第2の態様の物品である。本システムの物品は、本発明の第2の態様の物品のそれぞれの例示的な実施形態に含まれている上記の特徴のいずれか1つ以上を有することができる。
【0032】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置とともに使用するための物品の例の概略斜視図である。
図2図1の物品の概略断面図である。
図3】喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置の例の概略断面図である。
図4】喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置とともに使用するための物品を製造する方法の例を示すフロー図である。
図5】喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置を製造する方法の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本書では、用語「喫煙材」は、加熱されると揮発成分を、典型的には蒸気又はエアロゾルの形態で供する材料を含む。「喫煙材」は非タバコ含有材料であってもよいし、タバコ含有材料であってもよい。「喫煙材」は、例えば、タバコ自体、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコ、タバコ抽出物、均質化タバコ、又はタバコ代替品のうちの1つ以上を含んでいてもよい。喫煙材は、挽きタバコ、刻みラグタバコ、押出タバコ、再生タバコ、再生喫煙材、液体、ゲル、ゲル化シート、粉末、又は塊などの形態とすることが可能である。「喫煙材」は、他に非タバコ製品を含んでいてもよい。この非タバコ製品は、製品によってニコチンを含んでもよいし、含まないでもよい。「喫煙材」は、1つ以上の保湿剤、例えばグリセロール又はプロピレングリコール、を含んでいてもよい。
【0035】
本書では、用語「加熱材」又は「ヒーター材」は、変動磁場の侵入によって加熱可能な材料を指す。
【0036】
誘導加熱は、導電性物体に変動磁場を侵入させることによってその物体を加熱するプロセスである。このプロセスは、ファラデーの電磁誘導の法則及びオームの法則によって説明される。誘導ヒーターは、電磁石と、この電磁石に交流電流などの変動電流を流すための装置を備えることができる。加熱しようとする物体と電磁石が、電磁石によって生じた変動磁場がこの物体に侵入するような適切な相対位置に配置されると、この物体内に1つ以上の渦電流が発生する。この物体は電流の流れに対する抵抗を有する。したがって、この物体内にこのような渦電流が発生すると、渦電流が物体の電気抵抗に抗して流れ、それによってこの物体が加熱される。このプロセスは、ジュール加熱、オーム加熱、又は抵抗加熱と呼ばれる。誘導加熱することができる物体は、サセプタとして知られている。
【0037】
サセプタが閉回路の形態のときは、使用時におけるサセプタと電磁石との磁気結合が強くなり、その結果、ジュール加熱が増大し、又は改善されることが分かっている。
【0038】
磁気ヒステリシス加熱は、磁性材料からなる物体に変動磁場が侵入することによって物体を加熱するプロセスである。磁性材料は、原子スケールの磁石すなわち磁気双極子を多く含んでいると考えることができる。磁場がこのような材料に侵入すると、磁気双極子は磁場に沿って整列する。したがって、交流磁場(例えば、電磁石によって生じたもの)などの変動磁場が磁性材料に侵入すると、磁気双極子の向きは、印加された変動磁場に応じて変化する。このような磁気双極子の再配向によって、磁性材料内に熱が発生する。
【0039】
物体が導電性及び磁性の両方を有するときは、その物体に変動磁場を侵入させると、物体にジュール加熱及び磁気ヒステリシス加熱の両方を生じさせることができる。さらに、磁性材料を使用すると、変動磁場を強めることができ、それによりジュール加熱を強めることができる。
【0040】
上記のプロセスのそれぞれにおいて、熱は、外部熱源によって熱伝導により発生するのではなく、物体自体の内部で発生するので、物体内の急速な温度上昇と、より均一な熱分布を達成することができる。これは、特に、物体の材料及び幾何形状を適切に選び、その物体に対して変動磁場の大きさ及び向きを適切に選ぶことによって達成することができる。さらに、誘導加熱及び磁気ヒステリシス加熱では、変動磁場の源と物体との間に物理的な接続部を設ける必要がないので、設計自由度及び加熱プロファイルの制御性を高めるとともに、コストを抑えることができる。
【0041】
キュリー点温度又はキュリー温度は、特定の磁性材料がその磁気的特性に鋭い変化が生じる温度である。キュリー点温度は、その温度より低いと、外部から磁場が印加されていない状態で自発的な磁化があり、その温度より高いと、その材料は常磁性である温度であると理解される。例えば、キュリー点温度は、強磁性材料の強磁性相と常磁性相との間の磁気変態温度である。このような磁性材料がキュリー点温度に達すると、その透磁性は下がり、又はなくなり、その材料が変動磁場の侵入によって加熱される能力もまた下がる、又はなくなる。すなわち、キュリー点温度より高い温度の材料を磁気ヒステリシス加熱によって加熱することは可能でないことがある。磁性材料が導電性材料の場合には、その材料は、キュリー点温度より高くても、ジュール加熱によって、変動磁場の侵入によってより小さく加熱可能となることがある。しかしながら、磁性材料が非導電性材料の場合には、キュリー点温度より高い温度の材料を変動磁場の侵入によって加熱することは妨げられることがある、又は不可能なことさえある。
【0042】
図1及び2を参照すると、本発明の実施形態による物品の例の概略斜視図及び概略断面図が示されている。大まかに言えば、物品1は、喫煙材10と、喫煙材10を加熱するためのヒーター20と、喫煙材10及びヒーター20を取り囲むカバー30を備える。ヒーター20は、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材を備える。このような加熱材の例は本書の他の箇所で説明される。物品1は、喫煙材10を燃焼させることなく喫煙材10を加熱して喫煙材10の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置とともに使用するためのものである。
【0043】
この実施形態では、物品1は、物品1の長手方向軸に垂直な面に実質的に円形の断面を有する細長い円筒状である。しかしながら、他の実施形態では、物品1は、円形以外の断面を有してもよい、及び/又は、細長くなくてもよい、及び/又は、円筒状でなくてもよい。物品1は、シガレットに近い大きさを有することができる。
【0044】
この実施形態では、ヒーター20は、物品1の長手方向軸と実質的に揃えられた長手方向軸に沿って細長く延在している。これは、使用時に喫煙材10をより均一に加熱する助けとなり得、また、物品1の製造性にも助けになり得る。この実施形態では、これらの揃えられた軸は一致する。この実施形態の変形例では、揃えられた軸は互いに平行とすることができる。しかしながら、他の実施形態では、軸は互いに傾けることができる。
【0045】
この実施形態では、ヒーター20は、喫煙材10の塊の長手方向の両端まで延在する。これは、使用時に喫煙材10をより均一に加熱する助けとなり得、また、物品1の製造性にも助けになり得る。しかしながら、他の実施形態では、ヒーター20は、喫煙材10の塊の長手方向の両端のどちらにも延在しなくてもよい、又は、喫煙材10の塊の長手方向の端部の一方だけに延在して、喫煙材10の塊の長手方向の端部の他方から離間してもよい。
【0046】
この実施形態では、ヒーター20は喫煙材10の中にある。他の実施形態では、喫煙材10は、例えば、ヒーター20の一方の側だけにあってもよい。
【0047】
この実施形態では、ヒーター20の加熱材は喫煙材10と接触している。したがって、加熱材が変動磁場の侵入によって加熱されると、加熱材から喫煙材10に熱を直接伝達することができる。他の実施形態では、加熱材は喫煙材10と接触しないようにしてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、物品1は、加熱材がなく、ヒーター20を喫煙材10から離間する熱伝導遮蔽物を備えることができる。いくつかの実施形態では、熱伝導遮蔽物は、ヒーター20上のコーティングであってもよい。このような遮蔽物を設けると、熱を分散して加熱材の過熱点を緩和する助けとなるのに有利となり得る。
【0048】
この実施形態のヒーター20は、2つの小さな面によって接合された対向する2つの大きな面を有する。したがって、ヒーター20の奥行き又は厚さは、ヒーター20の他の寸法に比べると比較的短い。加熱材は、誘導電流及び/又は磁気双極子の誘導再配向のほとんどが生じる外側の領域である表皮深さを有することができる。加熱材の厚さを比較的薄くすることによって、加熱材の他の寸法に比べて比較的長い奥行き又は厚さを有する加熱材と比べると、所与の変動磁場によって加熱材のより大きな割合を加熱可能にすることができる。したがって、材料をより効率的に使用することになり、それはコストを削減する。しかしながら、他の実施形態では、ヒーター20は、円形、楕円形、環状、多角形、方形、三角形、星形、又は放射状フィンなど、矩形以外の形状の断面を有することができる。
【0049】
物品1のカバー30は、喫煙材10とヒーター20との相対的位置を維持する助けとなる。カバー30は、紙、厚紙、プラスチック材などの任意の適切な材料から作ることができる。カバー30の重なる部分は互いに接着されて、カバー30と物品1との形状を全体として維持する助けとなり得る。いくつかの実施形態では、カバー30は異なる形態を採ることができる、又は省略することができる。
【0050】
材料のキュリー点温度は、材料の化学組成によって決定又は制御される。最新技術によって、材料の組成を調節して、予め設定されたキュリー点温度を有する材料を提供することができる。本発明の実施形態で使用することができる加熱材のいくつかの例が、それらのおおよそのキュリー点温度とともに下の表1に示されている。
【0051】
【表1】

*コバール(Kovar)の典型的な組成は次の通り。重量パーセントで、Ni 29%、Co 17%、Si 0.2%、Mn 0.3%、C<0.01%、残りはFe。
【0052】
上の様々なNiとFeの合金に対する%値は重量%値とすることができる。
【0053】
「Low Curie temperature material for induction heating self-temperature controlling system」、T.Todakaら、Journal of Magnetism and Magnetic Materials、320(2008)、e702~e707では、誘導加熱用の低キュリー温度磁性材料が示されている。これらの材料は、SUS430(ステンレス鋼のグレード)に基づく合金で、本発明の実施形態に使用することができ、それらのおおよそのキュリー点温度とともに下の表2に示されている。
【0054】
【表2】
【0055】
「Low Curie temperature in Fe-Cr-Ni-Mn alloys」、Alexandru Iorgaら、U.P.B. Sci. Bull.、Series B、Vol.73、Iss.4(2011)、195~202では、いくつかのFe-Ni-Cr合金について論じられている。この文献で開示されている材料のいくつかは、本発明の実施形態に使用することができ、それらのおおよそのキュリー点温度とともに下の表3に示されている。
【0056】
【表3】
【0057】
本発明のいくつかの実施形態に使用することができるさらなる材料として、株式会社NeoMaxマテリアルが提供するNeoMax MS-135がある。この材料については、次のURLに記載されている。http://www.neomax-materials.co.jp/eng/pr0510.htm
【0058】
この実施形態では、ヒーター20の加熱材の化学組成は、加熱材が喫煙材10の燃焼温度より低いキュリー点温度を有するように、注意深く、意図的に設定、選択、又は提供される。燃焼温度は、喫煙材10の自発火温度又は発火点とすることができる。これは、喫煙材10が火炎又は火花などの発火の外部源なしに標準大気中で自然に発火する最低温度である。
【0059】
したがって、使用時、ヒーター20の温度がキュリー点温度に達すると、変動磁場の侵入によってヒーター20をさらに加熱する能力が減じられる又は取り除かれる。例えば、それでも、上記のように、加熱材が導電性のときには、変動磁場を加熱材に侵入させることによってジュール加熱を行うことができる。その代わりに、加熱材が非導電性のときには、加熱材の化学組成に応じて、変動磁場の侵入によってこのようにさらに加熱することが不可能なことがある。
【0060】
したがって、使用時、ヒーター20の加熱材のこの固有のメカニズムを使用して、ヒーター20をさらに加熱することを制限又は防止して、隣接する喫煙材10の温度が、喫煙材10が燃える又は燃焼する高さの温度に達することを避ける助けとなり得る。したがって、いくつかの実施形態では、ヒーター20の化学組成は、喫煙材10を燃焼させることなく喫煙材10の少なくとも1つの成分を揮発させるのに十分に喫煙材を加熱することを可能にする助けとなり得る。いくつかの実施形態では、これはまた、物品1を使用する装置の過熱を防ぐ助けとなり得、及び/又は、物品1の使用中に過剰な熱によって物品1のカバー30又は接着剤などの(1つ以上の)部品が損傷することを防ぐ助けとなり得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、喫煙材10の燃焼温度が摂氏X度より高い場合、加熱材の化学組成を、キュリー点温度が摂氏X度以下となるように与えることができる。例えば、喫煙材10の燃焼温度が摂氏350度より高い場合、加熱材の化学組成を、キュリー点温度が摂氏350度より高くならないように与えることができる。キュリー点温度は、例えば、摂氏350度より低く、摂氏325度より低く、摂氏300度より低く、摂氏280度より低く、摂氏260度より低く、摂氏240度より低く、又は摂氏220度より低くすることができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、加熱材の温度がキュリー点温度より低くなると、加熱材が変動磁場の侵入による磁気ヒステリシス加熱によって加熱される能力が戻ることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、ヒーター20は、全体又は実質的に全体が加熱材からなるものであってもよい。加熱材は、例えば、鉄、鉄を含む合金、鉄とニッケルとを含む合金、鉄とニッケルとクロムとを含む合金、鉄とニッケルとクロムとマンガンとを含む合金、鉄とニッケルとクロムとマンガンとケイ素とを含む合金、並びにステンレス鋼からなる群から選択された1つ以上の材料を含むことができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、物品などの製品のヒーターは、第1のキュリー点温度を有する加熱材の第1の部分、及び第1のキュリー点温度とは異なる第2のキュリー点温度を有する加熱材の第2の部分を備えることができる。第2のキュリー点温度は第1のキュリー点温度より高くすることができる。したがって、使用時、加熱材の第1の部分と加熱材の第2の部分の両方に変動磁場を侵入させたとき、第2の部分は第1の部分より高い温度に達することができる。これは、喫煙材10を漸進的に加熱し、したがって、蒸気を漸進的に生成する助けとなり得る。第1及び第2のキュリー点温度は両方とも、喫煙材10の燃焼温度よりも低くすることができる。
【0065】
図4を参照すると、本発明の実施形態による、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるのに使用するための製品を製造する方法の例を示すフロー図が示されている。図1及び2の物品1はこの方法にしたがって作ることができる。
【0066】
方法400は、使用時にヒーターが加熱される最高温度を決定するステップ401を含む。決定するステップ401は、例えば、使用時にヒーター20によって加熱される喫煙材10の燃焼温度を決定し、次いで、この燃焼温度に基づいて最高温度を決定することを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、最高温度は、上記の理由で、喫煙材10の燃焼温度より低くすることができる。他の実施形態では、決定するステップ401は、これに加えて又はこれに代えて、物品のカバー又は接着剤などの(1つ以上の)他の部品が、使用時に損傷を受けることなしに受けることができる最高温度を決定し、次いで、この温度に基づいて最高温度を決定することを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、最高温度は、(1つ以上の)部品が使用時に安全に受けることができる温度より低くすることができる。さらに他の実施形態では、決定するステップ401は、これに加えて又はこれに代えて、所望の知覚特性に基づいて喫煙材10が加熱される最高温度を決定し、次いで、この温度に基づいて最高温度を決定することを含むことができる。例えば、異なる温度で、喫煙材10の異なる成分を揮発させることができる。
【0067】
方法400は、加熱材を備えたヒーター20を用意するステップ402をさらに含み、加熱材は、変動磁場の侵入によって加熱可能であり、加熱材は、401において決定された最高温度に基づいて、又はそれに応じて選択又は決定されたキュリー点温度を有する。用意するステップ402は、例えば、適切な加熱材からヒーター20を製造することを含むことができる。本方法は、ヒーター20の製造中に加熱材の組成を調節することを含むことができる。これに代えて又はこれに加えて、用意するステップ402は、それぞれ異なるキュリー点温度を有する加熱材から作られた複数のヒーター20からそのヒーター20を選択することを含むことができる。ステップ402において用意されたヒーター20の加熱材のキュリー点温度は、例えば、ステップ401において決定された最高温度に等しくてもよく、又はステップ401において決定された最高温度より低くてもよい。ステップ402において用意されたヒーター20は、全体又は実質的に全体が加熱材からなるものであってもよい。加熱材は、例えば、上記の利用できる加熱材のうちの任意の1つ以上の加熱材を含むことができる、又はそれらから構成することができる。
【0068】
本方法は、次いで、ヒーター20と、使用時にヒーター20によって加熱される喫煙材10とを備える、図1及び2の物品1などの物品を形成するステップ403を含む。形成するステップ403は、図1及び2の物品1の場合のように、ヒーター20を喫煙材10と接触させることを含むことができる。しかしながら、他の実施形態では、喫煙材10は、ヒーター20と接触していないが、それでもヒーター20によって加熱可能であってもよい。方法400のステップ403は、これに加えて又はこれに代えて、図1及び2に示した物品1のカバー30などのカバーで喫煙材10及びヒーター20を取り囲む、又は覆うことを含むことができる。
【0069】
上記の物品1及びその上記の変形は、喫煙材10を燃焼させることなく喫煙材10を加熱して喫煙材10の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置とともに使用することができる。(1つ以上の)の物品のいずれか1つとこのような装置をシステムとして一緒に提供してもよい。このシステムはキットの形態を採ることができ、このキットでは、物品1は本装置とは別個のものである。これに代えて、システムは組立体の形態を採ることができ、この組立体では、物品1は本装置と組み合わされている。本システムの装置は、物品1を受け入れるための加熱領域と、物品1が加熱領域内にあるとき、加熱材に侵入する変動磁場を発生させるための磁場発生器とを備える。
【0070】
図3を参照すると、本発明の実施形態による、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置の例の概略断面図が示されている。大まかに言うと、装置100は、喫煙材を備えた物品を受け入れるための加熱領域111と、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材を備えた、加熱領域111を加熱するためのヒーター115と、ヒーター115の加熱材に侵入する変動磁場を発生させるための磁場発生器112とを備える。使用時にヒーター115が変動磁場の侵入によって加熱可能となる最高温度は、ヒーター115の加熱材のキュリー点温度だけによって決定される。このような加熱材の例は本書の他の箇所で説明される。装置100は、喫煙材を備えた物品とともに使用するためのものである。いくつかの実施形態では、装置100は、喫煙材を燃焼させることなく喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるためのものである。本物品は、図1及び2の物品1などのように、加熱材を備えることができる、又は、加熱材がなくてもよい。
【0071】
この実施形態の装置100は、本体110及び吸い口120を備える。吸い口120は、プラスチック材、厚紙、酢酸セルロース、紙、金属、ガラス、セラミック、又はゴムなどの任意の適切な材料から作ることができる。吸い口120は、それを貫通する通路122を画定する。吸い口120は、加熱領域111内への開口を覆うように本体110に対して配置可能である。吸い口120を本体110に対してこのように配置すると、吸い口120の通路122は、加熱領域111と流体連通する。使用時、通路122は、加熱領域111に挿入された物品から揮発材が装置100の外部に流れることを可能にする通路として働く。この実施形態では、装置100の吸い口120は、本体110に吸い口120を接続するように、本体110と取外し可能に係合可能である。他の実施形態では、吸い口120は、蝶番又は可撓性部材などによって、本体110と永続的に接続することができる。物品自体が吸い口を備える実施形態などのいくつかの実施形態では、装置100の吸い口120を省略することができる。
【0072】
装置100は、加熱領域111を装置100の外部と流体接続する空気入口を画定することができる。このような空気入口は、装置100の本体110及び/又は装置100の吸い口120によって画定することができる。使用者は、吸い口120の通路122を通して(1つ以上の)揮発成分を引き込むことによって喫煙材の(1つ以上の)揮発成分を吸入することができる。(1つ以上の)揮発成分が物品から出ると、空気は、装置100の空気入口を経て加熱領域111内に引き込まれることができる。
【0073】
この実施形態では、本体110は加熱領域111を備える。この実施形態では、加熱領域111は、物品の少なくとも一部分を受け入れるための凹部111を備える。他の実施形態では、加熱領域111は、凹部以外、例えば、棚、面、又は突起としてもよく、また物品と協働するため又は受け入れるために物品との機械的な嵌合を必要としてもよい。この実施形態では、加熱領域111は細長く、物品を受け入れるような大きさと形状である。この実施形態では、加熱領域111は物品全体を収容する。他の実施形態では、加熱領域111は物品の一部分だけ受け入れるような大きさであってもよい。
【0074】
この実施形態では、磁場発生器112は、電源113と、コイル114と、コイル114に交流電流などの変動電流を流すためのデバイス116と、制御器117と、制御器117を使用者が操作するためのユーザインターフェース118とを備える。
【0075】
この実施形態では、電源113は充電式電池である。他の実施形態では、電源113は、例えば、非充電式電池、キャパシタ、電池-キャパシタハイブリッド、又は商用電源への接続部など、充電式電池以外とすることができる。
【0076】
コイル114は任意の適切な形態を採ることができる。この実施形態では、コイル114は、銅などの導電性材料の螺旋コイルである。いくつかの実施形態では、磁場発生器112は、コイル114が巻かれた透磁性コアを備えることができる。このような透磁性コアは、使用時、コイル114によって生成される磁束を集中させ、磁場をより強力にする。透磁性コアは、例えば鉄で作ることができる。いくつかの実施形態では、透磁性コアは、コイル114の長さに沿って部分的にだけ延在して、特定の領域のみに磁束を集中させることができる。
【0077】
この実施形態では、コイル114は、ヒーター115及び加熱領域111に対して固定位置にある。この実施形態では、コイル114は、ヒーター115及び加熱領域111を取り囲んでいる。この実施形態では、コイル114は、加熱領域111の長手方向軸A-Aと実質的に揃えられた長手方向軸に沿って延在している。この実施形態では、これらの揃えられた軸は一致する。この実施形態の変形例では、揃えられた軸は互いに平行とすることができる。しかしながら、他の実施形態では、軸は互いに傾けることができる。さらに、この実施形態では、コイル114は、ヒーター115の長手方向軸と実質的に一致する長手方向軸に沿って延在している。これは、使用時にヒーター115をより均一に加熱する助けとなり得、また、装置100の製造性にも助けになり得る。他の実施形態では、コイル114及びヒーター115の長手方向軸は、互いに平行にすることによって互いに揃えることができる、又は、互いに傾けることができる。
【0078】
この実施形態では、コイル114に変動流を流すためのデバイス116は、電源113とコイル114との間に電気的に接続される。この実施形態では、制御器117もまた、電源113に電気的に接続され、デバイス116に通信可能に接続されてデバイス116を制御する。より詳細には、この実施形態では、制御器117はデバイス116を制御して、電源113からコイル114への電力の供給を制御するためのものである。この実施形態では、制御器117は、プリント回路基板(PCB:printed circuit board)上の集積回路(IC:integrated circuit)などのICを備える。他の実施形態では、制御器117は異なる形態を採ることができる。いくつかの実施形態では、本装置は、デバイス116及び制御器117を備える単一の電気又は電子構成部品を有することができる。この実施形態では、制御器117は、ユーザインターフェース118を使用者が操作することによって動作する。この実施形態では、ユーザインターフェース118は、本体110の外側に配置される。ユーザインターフェース118は、押しボタン、トグルスイッチ、ダイヤル、タッチスクリーンなどを備えることができる。他の実施形態では、ユーザインターフェース118は遠隔にあって、ブルートゥース(Bluetooth)などによって装置の残りの部分に無線で接続することができる。
【0079】
この実施形態では、使用者がユーザインターフェース118を操作すると、制御器117は、デバイス116に、コイル114に交流電流を流してコイル114に交流磁場を発生させる。装置100のコイル114及びヒーター115は、コイル114によって生成された交流磁場がヒーター115の加熱材に侵入するように適切な相対位置に配置される。ヒーター115の加熱材が導電性材料のとき、加熱材内に1つ以上の渦電流を発生させることができる。渦電流が加熱材の電気抵抗に抗して加熱材内を流れると、加熱材はジュール加熱によって加熱される。この実施形態では、加熱材が磁性材料で作られているため、加熱材内の磁気双極子の向きは印加された磁場の変化に応じて変化し、それによって、加熱材内に熱が生成される。
【0080】
使用時に装置100のヒーター115が変動磁場の侵入によって加熱可能となる最高温度は、ヒーター115の加熱材のキュリー点温度だけによって決定される。すなわち、装置100には、ヒーター115が加熱可能な温度を最高温度より低く制限するいかなる他のシステムもなくてもよい。この実施形態では、装置100のヒーター115の加熱材の化学組成は、加熱材が、装置100とともに使用される物品内の喫煙材の燃焼温度より低いキュリー点温度を有するように、注意深く、意図的に設定、選択、又は提供されている。したがって、上記のように、使用時、ヒーター115の温度がキュリー点温度に達すると、変動磁場の侵入によってヒーター115をさらに加熱する能力が減じられる又は取り除かれる。
【0081】
したがって、使用時、ヒーター115の加熱材のこの固有のメカニズムを使用して、ヒーター115をさらに加熱することを制限又は防止して、加熱領域111及びその中に配置された物品の温度が、物品の喫煙材が燃える又は燃焼する高さの温度に達することを避ける助けとなり得る。したがって、いくつかの実施形態では、ヒーター115の化学組成は、喫煙材を燃焼させることなく喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるのに十分に喫煙材を加熱することを可能にする助けとなり得る。いくつかの実施形態では、これはまた、装置100の過熱を防ぐ助けとなり得、又は、磁場発生器112などの装置の構成部品に対する損傷を防ぐ助けとなり得る。
【0082】
上記のように、いくつかの実施形態では、加熱材の温度がキュリー点温度より低くなると、加熱材が変動磁場の侵入による磁気ヒステリシス加熱によって加熱される能力が戻ることができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、装置100とともに使用される喫煙材の燃焼温度が摂氏X度より高い場合、加熱材の化学組成を、キュリー点温度が摂氏X度以下となるように与えることができる。例えば、喫煙材の燃焼温度が摂氏350度より高い場合、喫煙材の化学組成を、キュリー点温度が摂氏350度より高くならないように与えることができる。キュリー点温度は、例えば、摂氏350度より低く、摂氏325度より低く、摂氏300度より低く、摂氏280度より低く、摂氏260度より低く、摂氏240度より低く、又は摂氏220度より低くすることができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、ヒーター115は、全体又は実質的に全体が加熱材からなるものであってもよい。加熱材は、例えば、鉄、鉄を含む合金、鉄とニッケルとを含む合金、鉄とニッケルとクロムとを含む合金、鉄とニッケルとクロムとマンガンとを含む合金、鉄とニッケルとクロムとマンガンとケイ素とを含む合金、並びにステンレス鋼からなる群から選択された1つ以上の材料を含むことができる。
【0085】
装置100はコイルを2つ以上備えることができる。装置100の複数のコイルは、物品1の喫煙材10を漸進的に加熱し、以て、蒸気を漸進的に生成するように動作可能とすることができる。例えば、1つのコイルは、加熱材の第1の領域を比較的急速に加熱して、喫煙材10の第1の領域で、喫煙材10の少なくとも1つの成分の揮発及び蒸気の形成を開始させることができる。別のコイルは、加熱材の第2の領域を比較的ゆっくり加熱して、喫煙材10の第2の領域で、喫煙材10の少なくとも1つの成分の揮発及び蒸気の形成を開始させることができる。したがって、蒸気は、使用者が吸入するために比較的迅速に形成することができ、喫煙材10の第1の領域が蒸気の生成を終えた後でさえ、使用者が引き続き吸入するためにその後も蒸気を形成し続けることができる。最初のうちは加熱されていない喫煙材10の第2の領域は、喫煙材10の第1の領域が加熱されている間、生成された蒸気の温度を下げるように、又は生成された蒸気をまろやかにするようにヒートシンクとして働くことができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、装置100は、ヒーター20、115のキュリー関連の磁性の変化を検出するためのセンサを有することができる。センサは制御器117に通信可能に接続することができる。制御器117は、制御器117で受信されたセンサからの信号に基づいて、変動磁場の発生を停止又は変更させるようにデバイス116を制御するように構成することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、装置100は、物品1又は装置100のヒーター20、115のキュリー関連の磁性の変化を増幅するための増幅器を有することができる。例えば、コイル114は、ヒーター20、115のキュリー関連の磁性の変化に応答したコイル114の特性の変化が大きくなるように構成又は配置することができる。コイル114のインピーダンスをヒーター20、115のインピーダンスと一致させると、キュリー関連の事象をより信頼性高く検出可能とすることができる。
【0088】
図5を参照すると、本発明の実施形態による、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるのに使用するための製品を製造する方法の例を示すフロー図が示されている。図3の装置100は、この方法にしたがって作ることができる。
【0089】
方法500は、使用時にヒーターが加熱される最高温度を決定するステップ501を含む。決定するステップ501は、例えば、使用時にヒーター115によって加熱される喫煙材の燃焼温度を決定し、次いで、この燃焼温度に基づいて最高温度を決定することを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、最高温度は、上記の理由で、喫煙材の燃焼温度より低くすることができる。他の実施形態では、決定するステップ501は、これに加えて又はこれに代えて、装置100の外側が、使用時に達することが許容され、一方で、それでもなお使用者が快適に持てる、快適な最高温度を決定し、次いで、この温度に基づいて最高温度を決定することを含むことができる。さらなる実施形態では、決定するステップ501は、これに加えて又はこれに代えて、装置100の電気構成部品などの構成部品が、損傷を受けることなしに使用時に受けることができる最高温度を決定し、次いで、この温度に基づいて最高温度を決定することを含むことができる。
【0090】
本方法は、加熱材を備えたヒーター115を用意するステップ502をさらに含み、加熱材は、変動磁場の侵入によって加熱可能であり、加熱材は、501において決定された最高温度に基づいて、又はそれに応じて選択又は決定されたキュリー点温度を有する。用意するステップ502は、例えば、適切な加熱材からヒーター115を製造することを含むことができる。本方法は、ヒーター115の製造中に加熱材の組成を調節することを含むことができる。これに代えて又はこれに加えて、用意するステップ502は、それぞれ異なるキュリー点温度を有する加熱材から作られた複数のヒーター115からそのヒーター115を選択することを含むことができる。
【0091】
ステップ502において用意されたヒーター115の加熱材のキュリー点温度は、例えば、ステップ501において決定された最高温度に等しくてもよく、又はステップ501において決定された最高温度より低くてもよい。ステップ502において用意されたヒーター115は、全体又は実質的に全体が加熱材からなるものであってもよい。加熱材は、例えば、上記の利用できる加熱材のうちの任意の1つ以上の加熱材を含むことができる、又はそれらから構成することができる。
【0092】
本方法は、次いで、喫煙材を備えた物品を受け入れるための加熱領域111と、加熱領域111を加熱するためのヒーター115と、加熱材に侵入する変動磁場を発生させるための磁場発生器112とを備えた図3の装置100などの装置を形成するステップ503であって、使用時にヒーター115が変動磁場の侵入によって加熱可能となる最高温度が、加熱材のキュリー点温度だけによって決定される、ステップ503を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、図4の方法400のステップ403、及び/又は図5の方法500のステップ503を省略することができる。例えば、いくつかのこのような実施形態では、本方法を使用して作られた製品は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置にさらに組み入れるための構成部品又はシステムとすることができる。いくつかの他のこのような実施形態では、本方法を使用して作られた製品は、このような装置で使用するための物品にさらに組み入れるための構成部品又はシステムとすることができる。
【0094】
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、図1及び2の物品1、又は図3の装置100などの製品は、その製品のヒーター20、115が変動磁場の侵入によって加熱可能となる温度を制限するための自動メカニズムを備えることができる。
【0095】
上記の実施形態のそれぞれでは、加熱材は、誘導電流及び/又は磁気双極子の誘導再配向のほとんどが生じる外側の領域である表皮深さを有することができる。加熱材を備える構成部品の厚さを比較的薄くすることによって、構成部品の他の寸法に比べて比較的長い奥行き又は厚さを有する構成部品の加熱材と比べると、所与の変動磁場によって加熱材のより大きな割合を加熱可能にすることができる。したがって、材料をより効率的に使用することになる。それはコストを削減する。
【0096】
いくつかの実施形態では、加熱材を備える構成部品は、その中に切れ目又は穴を備えていてもよい。このような切れ目又は穴は、使用時に喫煙材10の異なる領域が加熱される度合いを制御するための熱断絶部として機能してもよい。加熱材のうち切れ目又は穴を有する領域は、切れ目又は穴のない領域よりも加熱される程度を低くすることができる。これは、喫煙材10を漸進的に加熱し、したがって、蒸気を漸進的に生成する助けとなり得る。一方、このような切れ目又は穴を使用して、使用時、複雑な渦電流の生成を最適化することができる。
【0097】
上記の実施形態の各々において、喫煙材10はタバコを含んでいる。しかしながら、これらの実施形態の各々の変形例では、喫煙材10は、タバコのみからなるものであってもよいし、ほぼ全体がタバコのみからなるものであってもよいし、タバコとタバコ以外の喫煙材とを含むものであってもよいし、タバコ以外の喫煙材を含むものであってもよいし、タバコを含まないものであってもよい。いくつかの実施形態では、喫煙材10は、蒸気又はエアロゾルの形成剤や、湿潤剤(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、トリアセチン、又はジエチレングリコール)を含んでいてもよい。
【0098】
上記の実施形態のそれぞれでは、物品1は消耗品である。物品1内の喫煙材10の(1つ以上の)揮発成分のすべて又は実質的にすべてが消費されると、使用者は物品1を装置から取り外して物品1を処分することができる。使用者は、引き続き、別の物品1で装置を再使用することができる。しかしながら、他のそれぞれの実施形態では、物品1は消耗品でないものとすることができ、喫煙材10の(1つ以上の)揮発可能な成分が消費されると、装置と物品1とを一緒に処分することができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、上記の装置100は、装置100とともに使用可能な物品とは別個に販売され、供給され、又はその他の方法により提供される。しかしながら、いくつかの実施形態では、装置100及び1つ以上の物品をシステムとして一緒に提供してもよい。同様に、いくつかの実施形態では、上記の物品1は、物品1とともに使用可能な装置とは別個に販売され、供給され、又はその他の方法により提供される。しかしながら、いくつかの実施形態では、1つ以上の物品1をシステムとして装置と一緒に提供してもよい。このようなシステムは、場合によっては清掃器具などの追加の構成要素とともにキット又は組立体の形態とすることができる。
【0100】
本発明は、本明細書で説明した物品のいずれか1つと、本明細書で説明した装置のいずれか1つとを備えるシステムとして実施することも可能である。物品の部分が加熱領域内にあるとき、装置の加熱材で発生した熱が物品に伝達されて、物品内の喫煙材を加熱する、又はさらに加熱することができる。
【0101】
本書で説明した製品のいくつかは喫煙材産業製品と考えることができる。
【0102】
様々な課題に対処し、技術を進歩させるため、本開示はその全体にわたって様々な実施形態を例示している。これらの実施形態は、特許請求された発明を実施することが可能なものであり、また、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための優れた装置と、このような装置とともに使用するための優れた物品と、このような装置及びこのような物品を備えた優れたシステムと、ヒーターを備えた製品を製造する優れた方法とを提供するものである。本開示の利点及び特徴は、実施形態のうち代表的な例のものにすぎず、すべての利点や特徴を網羅したものでもなければ、他の利点や特徴を排除するものでもない。これらは、特許請求の範囲などに開示される特徴の理解と教示を助けるためだけに提示されている。本開示の利点、実施形態、例、機能、特徴、構造、及び/又は他の側面は、特許請求の範囲によって規定されたとおりに本開示を限定するもの、或いは特許請求の範囲の均等物を制限するものと考えるべきではなく、本開示の範囲や趣旨から逸脱することなく他の実施形態を利用し、変形を施すことができることを理解されたい。様々な実施形態が、開示された要素、構成、特徴、部品、ステップ、手段などの様々な組合せを適切に備え、それらのみから構成され、或いは実質的にそれらから構成されてもよい。本開示は、特許請求の範囲に現在は記載されていないが将来記載される可能性のある他の発明を含む可能性がある。
【符号の説明】
【0103】
1…物品、10…喫煙材、20…ヒーター、100…装置。

図1
図2
図3
図4
図5