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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】フラッシュメモリ
(51)【国際特許分類】
   H10B 43/27 20230101AFI20240716BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240716BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20240716BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H10B43/27
H01L29/78 371
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022133799
(22)【出願日】2022-08-25
(65)【公開番号】P2024030722
(43)【公開日】2024-03-07
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】511062254
【氏名又は名称】ウィンボンド エレクトロニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】白田 理一郎
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-102553(JP,A)
【文献】特開2001-085546(JP,A)
【文献】特開2002-324400(JP,A)
【文献】特開平11-195718(JP,A)
【文献】特開2015-050332(JP,A)
【文献】特開2011-029576(JP,A)
【文献】米国特許第06570788(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0156240(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0141242(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0060995(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0320527(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B 43/27
H01L 21/336
H01L 29/788
H01L 29/792
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース線とビット線との間に電気的に並列に接続された複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを備えたAND型のフラッシュメモリであって、
前記メモリセルアレイには、列方向に延在しかつ並行する細長い複数の拡散領域が形成され、
前記並列に接続された複数のメモリセルの各々は、対向する拡散領域の間に配されたゲートと、ゲート絶縁膜として電荷を蓄積可能な電荷蓄積層とを含み、当該電荷蓄積層は、少なくとも3層以上の絶縁層を含み、
メモリセルアレイはさらに、並列接続されたn個のメモリセルのブロックに共通の一方の拡散領域をソース線に選択的に接続するためのソース線側の選択トランジスタと、当該ブロックに共通の他方の拡散領域をビット線に選択的に接続するためのビット線側の選択トランジスタとを含み、
前記ソース線側の選択トランジスタは、前記ブロックの先頭のメモリセルの一方の拡散領域をソース線に接続するための第1の選択トランジスタと最後のメモリセルの一方の拡散領域をソース線に接続するための第2の選択トランジスタとを含み、
前記ビット線側の選択トランジスタは、前記ブロックの先頭のメモリセルの他方の拡散領域をビット線に接続するための第1の選択トランジスタと最後のメモリセルの他方の拡散領域をビット線に接続するための第2の選択トランジスタとを含み、
前記ソース線側の第1のトランジスタと前記ビット線側の第1のトランジスタとの各ゲートは、対応する第1の選択制御線に共通に接続され、
前記ソース線側の第2のトランジスタと前記ビット線側の第2のトランジスタとの各ゲートは、対応する第2の選択制御線に共通に接続される、フラッシュメモリ。
【請求項2】
前記ソース線側の第1および第2の選択トランジスタがオンしたとき、前記ブロックの一方の拡散領域がソース線に電気的に接続され、前記ビット線側の第1および第2の選択トランジスタがオンしたとき、前記ブロックの他方の拡散領域がビット線に電気的に接続される、請求項1に記載のフラッシュメモリ。
【請求項3】
前記ソース線側の第1および第2の選択トランジスタは、前記一方の拡散領域と同じ列方向に形成され、前記ビット線側の第1および第2の選択トランジスタは、前記他方の拡散領域と同じ列方向に形成される、請求項1に記載のフラッシュメモリ。
【請求項4】
前記ソース線側の第1および第2の選択トランジスタの各々は、前記一方の拡散領域に電気的に接続された一方の不純物領域と、チャンネル領域と、ソース線に電気的に接続された他方の不純物領域とを含み、当該一方の不純物領域、チャンネル領域および他方の不純物領域が前記一方の拡散領域と同じ列方向に形成され、
前記ビット線側の第1および第2の選択トランジスタの各々は、前記他方の拡散領域に電気的に接続された一方の不純物領域と、チャンネル領域と、ビット線に電気的に接続された不純物領域とを含み、当該一方の不純物領域、チャンネル領域および他方の不純物領域が前記他方の拡散領域と同じ列方向に形成される、請求項1に記載のフラッシュメモリ。
【請求項5】
前記ソース線側の第1および第2の選択トランジスタのチャンネルは、前記一方の拡散領域と異なる導電型の不純物領域を含み、前記ビット線側の第1および第2の選択トランジスタのチャンネルは、前記他方の拡散領域と異なる導電型の不純物領域を含む、請求項に記載のフラシュメモリ。
【請求項6】
前記ソース線側の第1および第2の選択トランジスタの各々は、ゲート絶縁膜として電荷蓄積層と他の絶縁膜との積層を含み、前記ビット線側の第1および第2の選択トランジスタの各々は、ゲート絶縁膜として電荷蓄積層と他の絶縁膜との積層を含む、請求項1に記載のフラッシュメモリ。
【請求項7】
前記電荷蓄積層は、上部絶縁層と下部絶縁層との間に窒化層を含む、請求項1に記載のフラッシュメモリ。
【請求項8】
前記電荷蓄積層は、行方向のメモリセル毎に分離される、請求項1に記載のフラッシュメモリ。
【請求項9】
前記電荷蓄積層は、メモリセル毎に分離される、請求項1に記載のフラッシュメモリ。
【請求項10】
選択メモリセルのゲートにプログラム電圧が印加されたとき、前記電荷蓄積層は、チャンネルからFNトンネリングされた電荷を蓄積する、請求項1に記載のフラッシュメモリ。
【請求項11】
選択メモリセルのゲートに基準電圧が印加され、ウエル領域に消去電圧が印加されたとき、前記電荷蓄積層は、蓄積した電荷をトンネリングによりチャンネルに放出するか、あるいは蓄積した電子をチャンネルからトンネリングされた正孔に再結合させる、請求項1に記載のフラッシュメモリ。
【請求項12】
前記ブロックのn個のメモリセルの各ゲートは、メモリセルアレイ上を行方向に延在するワード線にそれぞれ接続され、前記第1および第2の選択制御線は、ワード線と平行に延在する、請求項に記載のフラッシュメモリ。
【請求項13】
フラッシュメモリはさらに、メモリセルのプログラムを制御するプログラム制御手段を含み、
前記プログラム制御手段は、選択メモリセルのプログラムを禁止する場合、前記ソース線側の選択トランジスタおよび前記ビット線側の各々の第1および第2の選択トランジスタをオフし、前記ブロックの一方の拡散領域と他方の拡散領域をフローティングにし、選択ワード線にプログラム電圧を印加し、非選択ワード線に中間電圧を印加する、請求項に記載のフラッシュメモリ。
【請求項14】
前記プログラム制御手段は、選択メモリセルをプログラムする場合、前記ソース線側の選択トランジスタおよび前記ビット線側の各々の第1および第2の選択トランジスタをオンし、前記ブロックの一方の拡散領域と他方の拡散領域をソース線およびビット線に電気的に接続させ、選択ワード線にプログラム電圧を印加し、非選択ワード線に中間電圧を印加する、請求項13に記載のフラッシュメモリ。
【請求項15】
フラッシュメモリはさらに、メモリセルの消去を制御する消去制御手段を含み、
前記消去制御手段は、前記ブロックのメモリセルを一括消去する場合、前記ブロックの各メモリセルのゲートに基準電圧を印加し、前記ソース線側の選択トランジスタおよび前記ビット線側の各々の第1および第2の選択トランジスタをフローティングにし、チャンネルを含むウエル領域に消去電圧を印加する、請求項に記載のフラッシュメモリ。
【請求項16】
ソース線とビット線との間に電気的に並列に接続された複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを備えたAND型のフラッシュメモリのプログラム方法であって、
前記メモリセルアレイには、並行する細長い複数の拡散領域が形成され、
前記並列に接続された複数のメモリセルの各々は、対向する拡散領域の間に配されたゲートと、ゲート絶縁膜として少なくとも3層以上の絶縁層を含む電荷蓄積層とを有しており、
選択メモリセルのゲートにプログラム電圧を印加し、チャンネルに基準電圧を印加することで、チャンネルからトンネリングされた電荷を前記電荷蓄積層に蓄積させ、
並列接続された選択メモリセルおよび非選択メモリセルの共通の拡散領域をフローティング状態にし、選択メモリセルおよび非選択メモリセルの各ゲートに印加された電圧により前記選択メモリセルの拡散領域およびチャンネルをセルフブーストさせ、選択メモリセルのプログラムを禁止する、プログラム方法。
【請求項17】
ソース線とビット線との間に電気的に並列に接続された複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを備えたAND型のフラッシュメモリのプログラム方法であって、
前記メモリセルアレイには、並行する細長い複数の拡散領域が形成され、
前記並列に接続された複数のメモリセルの各々は、対向する拡散領域の間に配されたゲートと、ゲート絶縁膜として少なくとも3層以上の絶縁層を含む電荷蓄積層とを有しており、
選択メモリセルのゲートにプログラム電圧を印加し、チャンネルに基準電圧を印加することで、チャンネルからトンネリングされた電荷を前記電荷蓄積層に蓄積させ、
並列接続された選択メモリセルおよび非選択メモリセルの共通の拡散領域に基準電圧を印加し、選択メモリセルのゲートにプログラム電圧を印加し、非選択メモリセルに中間電圧を印加することで、選択メモリセルのプログラムを行う、プログラム方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AND型のメモリセルアレイ構造を有するフラッシュメモリに関する。
【背景技術】
【0002】
図1(A)に従来のNOR型フラッシュメモリの等価回路を示す。同図に示すように、各メモリセルのソース/ドレインがビット線BLとソース線SL(仮想接地)との間に接続され、ゲートがワード線WLに接続され、個々のメモリセルの読出しやプログラムを行うことができる。プログラム動作では、例えば、選択メモリセルのビット線BLに5V、ソース線SLに0V、ワード線WLに12Vを印加し、非選択メモリセルのビット線BL、ソース線SL、ワード線WLに0Vを印加する。
【0003】
NOR型フラッシュメモリでは、メモリセルのゲート長を100nm未満にスケーリングすることができないため、メモリセルのスケーリングに制限がある。ゲート長をスケーリングできない理由の1つは、プログラミング中のパンチスルーの問題である。ビット線BLに大きな電圧を印加するため、ゲート長をスケーリングに従って100nmより小さくすると、メモリセルのソース/ドレイン間でパンチスルーが生じ、ビット線BLからソース線SLへの電流の漏れを抑えることが難しくなる。また、ゲート長をスケーリングできない場合、読み出し動作時に読み出し電流を得るべくチャンネル幅もスケーリングすることができない。それ故、NOR型フラッシュメモリのメモリセルサイズは、概ね限界にきている。
【0004】
図1(B)は、AND型フラッシュメモリの等価回路を示す図である(非特許文献1)。AND型フラッシュメモリでは、ローカルビット線LBLとローカルソース線LSLとの間に複数のメモリセルを並列に接続し、メモリセルの各ゲートがワード線WLに接続される。ローカルビット線LBLは、ビット線側の選択トランジスタを介してビット線BLに接続され、ローカルソース線LSLは、ソース線側の選択トランジスタを介してソース線SLに接続される。メモリセルを選択するとき、選択制御線SG1によりビット線側の選択トランジスタがオンされ、選択制御線SG2によりソース線側の選択トランジスタがオンされる。
【0005】
プログラム動作では、例えば、選択メモリセルのローカルビット線LSLに3V、ローカルソース線LSLをフローティング、ワード線WLに9Vを印加し、非選択メモリセルのローカルビット線LBLに0V、ローカルソース線LSLをフローティング、ワード線に3Vを印加する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】“A 0.24-um2 Cell Process with 0.18um Width Isolation and 3-D Interpoly Dielectric Films for 1-Gb Flash Memories”, Takashi Kobayashi et al., 1997 IEDM, p275-278
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来のAND型フラッシュメモリでは、プログラム動作時、ローカルソース線LSLがフローティングであるため、プログラミングのパンチスルーの問題は生じない。しかし、プログラミングでは、ソース/ドレイン間のチャンネル電流によって生じるホットエレクトロンをフローティングゲートに注入させる必要があり、また、消去のためにフローティングFGからローカルビット線LBLへの電子を排除するには、フローティングゲートFGへのドレインのオーバーラップ領域を大きくする必要がある。そのため、セルサイズを微細化することが難しいという課題がある。
【0008】
本発明は、従来の課題を解決し、メモリセルサイズの微細化を図り、高集積化が可能なAND型のフラッシュメモリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るAND型のフラッシュメモリは、ソース線とビット線との間に電気的に並列に接続された複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを備えたものであって、前記メモリセルアレイには、並行する細長い複数の拡散領域が形成され、前記並列に接続された複数のメモリセルの各々は、対向する拡散領域の間に配されたゲートと、ゲート絶縁膜として電荷を蓄積可能な電荷蓄積層とを含み、当該電荷蓄積層は、少なくとも3層以上の絶縁層を含む。
【0010】
ある態様では、前記電荷蓄積層は、電荷を蓄積するための窒化層を含む。ある態様では、前記電荷蓄積層は、上部絶縁層と下部絶縁層との間に前記窒化層を含む。ある態様では、前記電荷蓄積層は、上部シリコン酸化膜、シリコン窒化膜および下部シリコン酸化膜を含むONO構造である。ある態様では、選択メモリセルのゲートにプログラム電圧が印加されたとき、前記電荷蓄積層は、チャンネルからトンネリングされた電荷を蓄積する。
ある態様では、前記電荷蓄積層は、列方向のメモリセル毎に分離される。ある態様では、前記電荷蓄積層は、行方向のメモリセル毎に分離される。ある態様では、前記電荷蓄積層は、メモリセル毎に分離される。ある態様では、選択メモリセルのゲートに基準電圧が印加され、ウエル領域に消去電圧が印加されたとき、前記電荷蓄積層は、蓄積した電荷をトンネリングによりチャンネルに放出するか、あるいは蓄積した電子をチャンネルからトンネリングされた正孔に再結合させる。ある態様では、メモリセルアレイはさらに、並列接続されたn個のメモリセルのブロックに共通の一方の拡散領域をソース線に選択的に接続するためのソース線側の選択トランジスタと、当該ブロックに共通の他方の拡散領域をビット線に選択的に接続するためのビット線側の選択トランジスタとを含み、前記ソース線側の選択トランジスタがオンしたとき、前記ブロックの一方の拡散領域がソース線に電気的に接続され、前記ビット線側の選択トランジスタがオンしたとき、前記ブロックの他方の拡散領域がビット線に電気的に接続される。ある態様では、前記ソース線側の選択トランジスタは、前記ブロックの先頭のメモリセルの一方の拡散領域をソース線に接続するための第1の選択トランジスタと最後のメモリセルの一方の拡散領域をソース線に接続するための第2の選択トランジスタとを含み、前記ビット線側の選択トランジスタは、前記ブロックの先頭のメモリセルの他方の拡散領域をビット線に接続するための第1の選択トランジスタと最後のメモリセルの他方の拡散領域をビット線に接続するための第2の選択トランジスタとを含み、前記ソース線側の第1のトランジスタと前記ビット線側の第1のトランジスタとの各ゲートは、対応する第1の選択制御線に共通に接続され、前記ソース線側の第2のトランジスタと前記ビット線側の第2のトランジスタとの各ゲートは、対応する第2の選択制御線に共通に接続される。ある態様では、前記ブロックのn個のメモリセルの各ゲートは、メモリセルアレイ上を行方向に延在するワード線にそれぞれ接続され、前記第1および第2の選択制御線は、ワード線と平行に延在する。ある態様では、前記ソース線側の選択トランジスタの一方の拡散領域は、メモリセルの一方の拡散領域に電気的に接続され、他方の拡散領域は、導電性コンタクト部材を介してソース線に電気的に接続され、前記ビット線側の選択トランジスタの一方の拡散領域は、メモリセルの他方の拡散領域と共通であり、他方の拡散領域は、導電性コンタクト部材を介してビット線に電気的に接続される。ある態様では、前記ソース線側の選択トランジスタは、ゲート絶縁膜として電荷蓄積層と他の絶縁膜との積層を含み、前記ビット線側の選択トランジスタは、ゲート絶縁膜として電荷蓄積層と他の絶縁膜との積層を含む。ある態様では、フラッシュメモリはさらに、メモリセルのプログラムを制御するプログラム制御手段を含み、前記プログラム制御手段は、選択メモリセルのプログラムを禁止する場合、第1および第2の選択トランジスタをオフし、前記ブロックの一方の拡散領域と他方の拡散領域をフローティングにし、選択ワード線にプログラム電圧を印加し、非選択ワード線に中間電圧を印加する。ある態様では、前記プログラム制御手段は、選択メモリセルをプログラムする場合、第1および第2の選択トランジスタをオンし、前記ブロックの一方の拡散領域と他方の拡散領域をソース線およびビット線に電気的に接続させ、選択ワード線にプログラム電圧を印加し、非選択ワード線に中間電圧を印加する。ある態様では、フラッシュメモリはさらに、メモリセルの消去を制御する消去制御手段を含み、前記消去制御手段は、前記ブロックのメモリセルを一括消去する場合、前記ブロックの各メモリセルのゲートに基準電圧を印加し、第1および第2の選択トランジスタをフローティングにし、チャンネルを含むウエル領域に消去電圧を印加する。
【0011】
本発明に係るプログラム方法は、ソース線とビット線との間に電気的に並列に接続された複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを備えたAND型のフラッシュメモリのものであって、前記メモリセルアレイには、並行する細長い複数の拡散領域が形成され、前記並列に接続された複数のメモリセルの各々は、対向する拡散領域の間に配されたゲートと、ゲート絶縁膜として少なくとも3層以上の絶縁層を含む電荷蓄積層とを有しており、選択メモリセルのゲートにプログラム電圧を印加し、チャンネルに基準電圧を印加することで、チャンネルからトンネリングされた電荷を前記電荷蓄積層に蓄積させる。ある態様では、並列接続された選択メモリセルおよび非選択メモリセルの共通の拡散領域をフローティング状態にし、選択メモリセルおよび非選択メモリセルの各ゲートに印加された電圧により前記選択メモリセルの拡散領域およびチャンネルをセルフブーストさせ、選択メモリセルのプログラムを禁止する。ある態様では、並列接続された選択メモリセルおよび非選択メモリセルの共通の拡散領域に基準電圧を印加し、選択メモリセルのゲートにプログラム電圧を印加し、非選択メモリセルに中間電圧を印加することで、選択メモリセルのプログラムを行う。
【0012】
本発明に係る消去方法は、ソース線とビット線との間に電気的に並列に接続された複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを備えたAND型のフラッシュメモリのものであって、前記メモリセルアレイには、並行する細長い複数の拡散領域が形成され、前記並列に接続された複数のメモリセルの各々は、対向する拡散領域の間に配されたゲートと、ゲート絶縁膜として少なくとも3層以上の絶縁層を含む電荷蓄積層とを有しており、選択メモリセルのゲートに基準電圧を印加し、チャンネルを含むウエルに消去電圧を印加することで、前記電荷蓄積層に蓄積された電荷をトンネリングによりチャンネルに放出させる。ある態様では、並列接続された複数のメモリセルを含むブロックを選択し、選択したブロックの複数のメモリセルを一括消去する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、AND型のメモリセルアレイにおいて、メモリセルが電荷を蓄積可能な少なくとも3層以上の絶縁層を含む電荷蓄積層を持つように構成したので、従来のAND型フラッシュメモリと比較してメモリセルの微細化が可能となり、かつ製造工程も簡略化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(A)は、NOR型フラッシュメモリの等価回路、図1(B)は、AND型フラッシュメモリの等価回路である。
図2】本発明の実施例に係るAND型メモリセルアレイの構成を模式的に示す平面図である。
図2A】本発明の実施例に係るAND型メモリセルアレイの等価回路である。
図3図2のB-B線断面図である。
図4図2のA-A線断面図である。
図5図2のD-D線断面図である。
図6図2のE-E線断面図である。
図7図2に示すメモリセルアレイの別のコンタクト例を示す平面図である。
図8A】本発明の実施例に係るAND型フラッシュメモリの等価回路を示す図である。
図8B】本発明の実施例にAND型フラッシュメモリの各部の動作電圧を示すテーブルである。
図9】本発明の実施例に係るAND型フラッシュメモリの製造工程を示す断面図である。
図10】本発明の実施例に係るAND型フラッシュメモリの製造工程を示す断面図および平面図である。
図11】本発明の実施例に係るAND型フラッシュメモリの製造工程を示す断面図および平面図である。
図12】本発明の実施例に係るAND型フラッシュメモリの製造工程を示す断面図および平面図である。
図13A】本発明の実施例に係るAND型フラッシュメモリの製造工程を示す断面図および平面図である。
図13B】本発明の実施例に係るAND型フラッシュメモリの製造工程を示す断面図および平面図である。
図14A】本発明の実施例に係るAND型フラッシュメモリの製造工程を示す断面図および平面図である。
図14B】本発明の実施例に係るAND型フラッシュメモリの製造工程を示す断面図および平面図である。
図15】本発明の実施例に係るAND型フラッシュメモリの製造工程を示す断面図および平面図である。
図16】本発明の実施例に係るAND型フラッシュメモリの製造工程を示す断面図および平面図である。
図17】本発明の実施例に係るAND型フラッシュメモリの製造工程を示す断面図および平面図である。
図18】本発明の実施例に係るAND型フラッシュメモリの製造工程を示す断面図である。
図19】本発明の実施例に係るAND型フラッシュメモリの電気的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、MONOSタイプまたはSONOSタイプのAND型のメモリセルアレイ構造を有するフラッシュメモリに関し、FNトンネリングによりチャンネルからシリコン窒化膜(SiN)に電荷をトラップさせ、あるいはシリコン窒化膜から電荷をチャンネルに放出させる構成を用いる。これにより、メモリセルのドレインからソースへのパンチスルーの問題を解消し、かつドレインからゲートへのオーバーラップ領域を最小限に抑え、メモリセルの微細化および製造工程の簡易化を図ることができる。
【実施例
【0016】
次に、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。図2は、本発明の実施例に係るAND型フラッシュメモリのメモリセルアレイの一部の平面図、図2Aは、その等価回路である。図3は、図2のB-B線断面図、図4は、図2のA-A線断面図、図5は、図2のD-D線断面図、図6は、図2のE-E線断面図である。なお、図面は、必ずしも実際のデバイスのサイズを正確に示したものではなく、発明の理解を容易にするために誇張した部分を含むことに留意すべきである。
【0017】
図2図2Aに示すように、ビット線BLとソース線SLとが交互に列方向に延在し、その下層に、ワード線WL、選択制御線SG1、SG2が行方向に延在する。ソース線SLは、コンタクトCTを介してソース線側の選択トランジスタSSEL1、SSEL2に接続され、ビット線BLは、コンタクトCTを介してビット線側の選択トランジスタBSEL1、BSEL2に接続される。
【0018】
ソース線側の選択トランジスタSSEL1およびビット線側の選択トランジスタBSEL1とソース線側の選択トランジスタSSEL2およびビット線側の選択トランジスタBSEL2との間には、ソース線SLとビット線BLに電気的に並列接続された複数のメモリセルMCが形成され、これらの並列接続された複数のメモリセルは1つのブロックを構成する。
【0019】
行方向のソース線側の選択トランジスタSSEL1およびビット線側の選択トランジスタBSEL1の各ゲートは、対応する選択制御線SG1に共通に接続され、行方向のソース線側の選択トランジスタSSEL2およびビット線側の選択トランジスタBSEL2の各ゲートは、対応する選択制御線SG2に共通に接続される。また、行方向のメモリセルの各ゲートは、対応するワード線WLに接続される。
【0020】
図2の破線で示す矩形状のエリアは、1つのメモリセルMCを示し、他の矩形状のエリアは、ソース線側の選択トランジスタSSEL1、SSEL2、ビット線側の選択トランジスタBSEL1、BSEL2を示している。
【0021】
図3は、メモリセルの断面を示している。P型のシリコン基板内に、Nウエルが形成され、Nウエル内にPウエル10が形成される。Pウエル10の表面には、ソース線SLおよびビット線BLと平行に延在するN型の拡散領域12が形成される。ソース線側の拡散領域12とビット線側の拡散領域12とは、メモリセルのソース/ドレインを提供する。Pウエル10の表面には、ゲート絶縁膜として、少なくとも3つ以上の絶縁層を含む電荷蓄積層14が形成される。電荷蓄積層14は、例えば、ONO構造(SiO/SiN/SiO)を有し、SiNは、チャンネルからFNトンネリングされた電子を蓄積する。電荷蓄積層14上には、導電性のポリシリコン等から構成されたゲート16が形成され、ゲート16は、ワード線WLに電気的に接続される。
【0022】
1つのメモリセルMCは、拡散領域12、電荷蓄積層14、ゲート16およびゲート16に電気的に接続されたWL配線を含んで構成される。行方向に隣接するメモリセルを電気的に分離するため、拡散領域12の間に列方向に延在するシャロートレンチアイソレーションSTIが形成される。また、シャロートレンチアイソレーションSTIは、行方向に隣接するメモリセルの電荷蓄積層14も同時に分離する。但し、図5に示すように、電荷蓄積層14は、列方向に延在し、列方向に隣接するメモリセルに共通である。シャロートレンチアイソレーションSTIは、例えば、シリコン酸化領域である。また、ゲート16の間に層間絶縁膜18が形成される。
【0023】
図4は、ソース線側の選択トランジスタSSEL1とビット線側の選択トランジスタBSEL1の断面を示している。ゲート16上に電気的に接続された選択制御線であるSG1配線が配置され、選択トランジスタSSEL1、BSEL1のゲート16の直下には、電荷蓄積層14に加えて厚い絶縁膜22が形成される。厚い絶縁膜22は、例えば、シリコン酸化膜である。また、厚い絶縁膜22の直下には、P+の高不純物拡散領域20が形成される。拡散領域20は、選択トランジスタのしきい値Vtを調整するために形成される。さらに、ソース線SLとビット線BLの下方であって、厚い絶縁膜22の直下には、P+の高不純物拡散領域21が形成される。拡散領域21は、ソース線SL/ビット線BLのコンタクトCTが接続されるN型の拡散領域との間の耐圧を増加させ、選択トランジスタSSEL1、BSEL1がオンするとき、ソース線側の拡散領域12とビット線側の拡散領域12とが導通するのを防止する。
【0024】
図5は、メモリセルの断面を示している。Pウエル10のシリコン表面には、電荷蓄積層14を介してメモリセルのゲート16が形成され、ゲート16は、対応するワード線WLに電気的に接続される。
【0025】
図6は、選択トランジスタの断面を示している。選択トランジスタSSEL1のゲート16は、選択制御線SG1に接続される。また、選択トランジスタSSEL1の一方のN型の拡散領域13は、メモリセルの拡散領域12に電気的に接続され、他方のN型の拡散領域13には、コンタクトCTを介してソース線SLが電気的に接続される。つまり、メモリセルのソース/ドレインを形成するための列方向に延在する拡散領域12は、選択トランジスタSSEL1を形成する領域には形成されない。選択トランジスタのチャンネルには、上記したようにP+の高不純物拡散領域20として、チャネルストップボロンドーピング領域(P型シリコン基板の場合)、またはAsドーピング領域(N型シリコン基板の場合)が形成される。これにより、選択トランジスタのしきい値電圧(Vt)を調整することができる。
【0026】
選択トランジスタのゲート絶縁膜として、電荷蓄積層14に厚い絶縁膜22を加えることで、選択トランジスタのゲートに高電圧が印加されても、選択トランジスタの電荷蓄積層14に電荷が蓄積されて選択トランジスタのしきい値Vtが変動するのを防止する。但し、厚い絶縁膜22は、必ずしも必須ではなく、電荷蓄積層14に電荷が蓄積されるような高電圧がゲートに印加されないようであれば、省略することができる。なお、ソース線側の選択トランジスタSSEL2とビット線側の選択トランジスタBSEL2も同様に構成される。
【0027】
選択トランジスタSSEL1の向きは、メモリセルMCの向きと90度異なり、つまり、選択トランジスタSSEL1は、メモリセルMCのソース線側の拡散領域12とソース線SLとを選択的に接続/非接続する。選択トランジスタSSEL1は、選択制御線SG1が選択トランジスタSSEL1のしきい値Vtよりも高い場合にオンし、メモリセルの拡散領域12をソース線SLに電気的に接続する。選択トランジスタSSEL2も選択トランジスタSSEL1と同様に構成され、また、ここに図示しない、ビット線側の選択トランジスタBSEL1、BSEL2も同様に構成される。
【0028】
本実施例では、上記のAND型セル構造を採用することで、従来のAND型フラッシュメモリとは異なり、選択制御線SG1、SG2とワード線WLの形成を同時に行うことができる。また、電荷蓄積層14は、図3に示すようにメモリセル間で分離されるため、1つのメモリセルから隣接するメモリセルへの電荷の拡散が回避され、データ保持が向上する。
【0029】
図7に、本実施例のAND型セルアレイ構造の変形例を示す。ここでは、ソース線SLとビット線BLのコンタクト領域が千鳥状であり、このレイアウトは、図1(B)に示す等価回路に対応する。図7に示すレイアウトを使用することで、読出し動作中にビット線BLからソース線SLに流れるセル電流がワード線WLの位置に依存することを低減させることができる。
【0030】
次に、本実施例のAND型フラッシュメモリの動作について図8Aおよび図8Bを参照して説明する。本実施例のAND型フラッシュメモリの動作は、SiN層とチャンネルとの間の電子トンネリングを利用する独自のものである。図8Aは、2つのブロックを含むメモリセルアレイの等価回路を例示し、例えば、ブロック1では、ビット線側の選択トランジスタとソース線側の選択トランジスタとの間に、並列に接続されたn個のメモリセルが並列に接続され、ブロック1の上端の選択トランジスタの各ゲートに選択制御線SG11が共通に接続され、下端の選択トランジスタの各ゲートに選択制御線SG12が共通に接続され、行方向のメモリセルの各ゲートにCG10、CG11、・・・、CG1n-1が共通に接続される。「CG」は、ワード線WLと同義であり、コントロールゲートである。
【0031】
ここでは、ブロック1のCG11に接続されたメモリセルが選択されるものと仮定する。2次元NAND型フラッシュメモリと同様に、読出しおよびプログラムはワード線単位(ページ単位)で行われ、消去はブロック単位で行われる。図8Bは、読出し時、プログラム時、消去時に、選択されたブロック1と非選択ブロック2の各部に印加する電圧を示している。
【0032】
[読出し動作]
メモリセル当たりシングルビットの場合、選択したメモリセルのCGに約2Vが印加され、ビット線BLに約0.6V、ソース線SLが読み出し用に接地される。その他の選択されていないCGには、-0.6~0V付近が印加される。選択制御線SG11とSG12には、選択トランジスタのしきい値Vtよりも高い電圧が印加される。CG11に接続されたメモリセルのしきい値VtがVCG11(「1」セル)よりも低い場合、セル電流はビット線BLからソース線SLに流れる。他方、CG11に接続されたメモリセルのしきい値VtがVCG11(「0」セル)よりも高い場合、ビット線BLからソース線SLに電流は流れない。メモリセルのデータを正しく読み取るには、メモリセルのしきい値Vtが、非選択のメモリセルのCGバイアスよりも高くなければならない。
【0033】
[プログラム動作]
プログラミングでは、選択されたCG11に高電圧(例えば、~10V)が印加され、非選択のCGに中間電圧(例えば、~5V)が印加される。「0」プログラミングの場合(電荷蓄積層に電子を注入する場合)、ビットBLには0Vが印加される。ソース線SLにもビット線BLと同じ電圧が印加される。「1」プログラミングの場合(電荷蓄積層に電子を注入しない、プログラム禁止の場合)、ビット線BLには、正の電圧(例えば、~1.6V)が印加される。ソース線SLにもビット線BLと同じ電圧が印加される。
【0034】
「0」プログラムでは、選択制御線SG11、12は、選択トランジスタのしきい値Vt(例えば、~1V)よりも高い電圧を印加し、選択トランジスタをオンさせ、ビット線BLをメモリセルの拡散領域に電気的に接続し、拡散領域に0Vを印加する。これにより、選択メモリセルの電荷蓄積層14には、チャンネルからトンネリングされた電子が注入され、電子が電荷蓄積層14に蓄積される。非選択メモリセルのゲートには、チャンネルからのトンネリングには十分ではない中間電圧が印加されるため、「0」プログラムはされない。
【0035】
「1」プログラムでは、ビット線に正の電圧が印加されているため、選択制御線SG11、12の高い電圧によって選択トランジスタがオフし、つまり、メモリセルの拡散領域がフローティング状態になる。CG11に高電圧が印加されると、拡散領域およびチャンネルの電位がカップリングによりセルフブーストされ、チャンネルと電荷蓄積層との間の電位差はトンネリングに十分な大きさにならない。このため、選択メモリセルや非選択メモリセルにプログラムは行われない。
【0036】
また、ブロック2の選択制御線SG21、SG22には0Vが印加され、選択トランジスタをオフさせ、ソース線SL/ビット線BLからメモリセルの拡散領域が分離される。
【0037】
ある実施態様では、電荷蓄積層14は少なくとも3層の絶縁層を含む。1つ目は、シリコン表面に面した下部絶縁層(例えば、酸化物層)であり、2つ目は、データ識別のために電荷を蓄えているSiN層であり、3つ目は、ゲート/ワード線WLに面した上部絶縁層(例えば、酸化物層)である。下部絶縁層の有効な酸化物の厚さは、上部絶縁層の有効酸化物の厚さよりも薄い。逆の場合も可能であるが、この場合、プログラミング時と消去時のSiN層への電荷の流れが異なる。下部絶縁層の実効酸化物の膜厚が薄い場合、プログラミングおよび消去中に電荷がシリコン表面とSiN層との間を流れる。他方、両者の絶縁層体の厚さが逆の場合、プログラミングおよび消去中に電荷がSiNとゲート/ワード線WLと間を流れる。
【0038】
ここでは、代表的な例として最初のケース(下部絶縁層の厚さが上部絶縁層の厚さよりも薄い)を説明する。ビット線BLが接地されると、CG11に接続されたメモリセルセルは、「0」プログラムされる(チャンネルからSiNへの電子注入)。ビット線BLに正の電圧(~1.6V)を印加すると、ソース線側とビット線側の2つの拡散領域12がビット線BLとソース線SLから分離される。このため、拡散領域12とチャネルの領域の両方が、CG11および他のCGに高電圧と中間電圧を印加することによって自己ブーストされ、拡散領域12とCG11との電圧差が小さくなり、CG11に接続されたメモリセルでは、基板からSiNへの電子注入が生じない。
【0039】
[消去動作]
消去の場合、選択したブロック(ここでは、ブロック1が選択)のメモリセルが同時に消去される。基板内に形成されたNウエルとPウエルの2つのウエルが電気的に接続され、消去中、Pウエルに高電圧(例えば、8~14V)が印加され、選択したブロック内の全てのCGが接地され、ビット線BLとソース線SLがフローティングにされる。そして、電子がSiN層からPウエルにトンネルされるか、正孔がPウエルからメモリセルのSiN層に注入され、電子と再結合される。これにより、メモリセルのしきい値Vtが、読出し動作時に選択したCGに印加された読出し電圧よりも低下する。一方、選択されていないブロックでは、すべてのCGがフローティングである。Pウエルに高電圧が印加されると、フローティングのCGが自己ブーストされ、選択されていないブロックでは消去が生じない。なお、消去は、ブロック単位で行うことが好ましいが、ワード線単位で行うことも可能である。
【0040】
このように、従来のAND型フラッシュメモリでは、電荷蓄積層にフローティングゲート(FG)を使用するのに対し、本実施例では、電荷蓄積層として誘電体(SiN:窒化ケイ素層)を使用する。本実施例では、フローティングゲートを使用しないため、メモリセルを製造するための工程をより簡易にすることが可能である。
【0041】
また、プログラミング時に従来のAND型フラッシュメモリは、フローティングゲートへの熱電子注入を使用するが、本実施例では、ゲートに高電圧を印加することにより、チャネルと拡散領域から電荷蓄積層にトンネリングする電子を使用する。また、電子を注入しないセル(「1」プログラムセル)のプログラミング障害を回避するために、拡散領域がフローティング状態で、選択されていないワード線WLに中間電圧が印加され、次に、チャネルと拡散領域の両方が自己ブーストされ、ワード線WLとシリコン表面間の電圧差が減少し、「1」プログラミングセルの電荷蓄積層への電子注入を回避する。
【0042】
次に、本実施例のSONOSタイプのAND型フラッシュメモリを作成するためのプロセスフローを図9ないし図18を参照して説明する。ここでは、図2に示すようにAND型セルアレイの両端でビット線BLとソース線SLとコンタクトするプロセスフローを示す。但し、図7に示すコンタクトがスタッガードタイプのプロセスフローは、両端でコンタクトを取るタイプのプロセスフローと同じである。
【0043】
図9に示すように、最初にセルアレイ領域のP型シリコン基板30内にNウエル32が形成され、Nウエル32内にPウエル34が形成される。Pウエル34は、メモリセルを形成するための領域を提供する。なお、N型のシリコン基板を用いることも可能であり、その場合、2つのウエルの順序が逆になる。Nウエル32とPウエル34は電気的に接続されており、2つのウエル32、34には、消去中に高電圧が印加される。但し、図8Bの表に示すように、他の動作では2つのウエル32、34が接地され、P型シリコン基板30は常に接地されたままである。
【0044】
2つのウエル32、34の形成後、選択トランジスタ(SSEL1、SSEL2、BSEL1、BSEL2)のための絶縁体40がPウエル34上に形成される。次に、図10に示すように、選択トランジスタを形成する領域に絶縁体が残るように、絶縁体40がパターニングされる。なお、絶縁体40は、必須ではないことに留意すべきである。
【0045】
次に、Pウエル34上に例えばSiN層および絶縁膜を含む電荷蓄積層42がデポジットされる。次に、図11に示すように、ボロンのイオン注入が行われ、これが絶縁体40の直下の深いP型の拡散領域44を形成する。次に、図11(D)に示すように、電荷蓄積層42上にゲート材料46とマスク材料48がデポジットされ、それらが列方向に延在するようにパターニングされる。尚、図11(E)に示すように、パターンニングの際にゲート材料46をエッチングする領域で電荷蓄積層42も同時にエッチングすることも可能である。そうする事により各ゲート材料46の直下にのみ電荷蓄積層42が残存し、列方向に延在する各ゲート材料46毎に電荷蓄積層42が分離される。
【0046】
次に、別のマスク材料(例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜などであり、ここには図示しない)が全面にデポジットされ、当該別のマスク材料を異方性エッチングすることで、図12に示すように、ゲート材料46およびマスク材料48に側壁50を形成する。
【0047】
側壁50の形成後、図13Aに示すように、側壁50とゲート材料46上のマスク材料48とをエッチング用マスクとして使用し、露出したシリコン表面がエッチングされる。シリコン表面のエッチングされたトレンチ52は、その後、シャロートレンチアイソレーションSTIを提供する。
【0048】
次に、全体に絶縁層54(例えば、シリコン酸化膜など)がデポジットされ、続いて、図13Bに示すように、絶縁層54の上部がCMP等によって平坦化される。次に、図14Aに示すように、平坦化された絶縁層54が、電荷蓄積層42の近くまでエッチバックされる。次に、図14Bに示すように、例えば、トレンチ52内に残存した絶縁層54により、トレンチ52内に絶縁領域56が形成される。
【0049】
次に、図14Bの(A)、(C)に示すように、選択トランジスタを形成する領域を除くセルアレイ領域の側壁50を除去した後、N型不純物を注入してメモリセルの拡散領域58を形成する。選択トランジスタの形成領域には、図14Bの(B)に示すように拡散領域は形成されない。
【0050】
拡散領域58の形成後、図15に示すように層間絶縁層60がデポジットされ、層間絶縁層60がCMP等によって平坦化され、ゲート材料46が露出される。次に、図15(A)に示すようなパターニングされたマスク62を使用して、選択トランジスタ用の絶縁体40の領域で層間絶縁層60および側壁50がエッチングにより除去される。
【0051】
続いて、同じマスク62を使用して選択トランジスタ用の絶縁体40の領域にP型不純物が注入され、高濃度のP型拡散領域64が形成される。このマスクは、選択トランジスタのしきい値Vtを調整するために使用することも可能である。
【0052】
マスク62を除去した後、図16に示すように、第2のゲート材料66がデポジットされ、第2のゲート材料66は、第1のゲート材料46に電気的に接続される。第2のゲート材料66のデポジット後、第1および第2のゲート材料46、66は、図17(A)に示すように、行方向に延在するように同時にパターニングされる。その際、図17(G)に示すように、第1および第2ゲート材料46、66のパターニングと同時に電荷蓄積層42もパターニングする事も可能である。つまり、第1および第2ゲート材料46、66の直下にのみ電荷蓄積層42が残され、それ以外の領域で電荷蓄積層42がエッチングによる除去される。そうすることにより各WL及びSG下の列方向の電荷蓄積層42は分離される。電荷蓄積層42を第1のゲート材46の下にのみに残す場合は、電荷蓄積層42は各セル毎に分離されることとなる。すると書き込み及び消去で各セルに蓄積された電荷は隣のセルに拡散出来ず、よりデータ保持特性は向上する。
【0053】
次に、図17に示すように、ワード線WL/選択制御線SGとその行方向の空間68が形成される。ゲートのパターニング後、図18に示すように、選択トランジスタの絶縁体40の領域70に高濃度にドープされたN型不純物が注入される。領域70は、選択トランジスタのソース/ドレインを提供する。
【0054】
次に、層間絶縁層がデポジットされ、層間絶縁層を通してコンタクトホールが形成される。最後に、図5図6、および図7に示すように、金属材料がデポジットされ、当該金属材料がパターニングされ、列方向に延在するビット線BLおよびソース線SLが形成される。ビット線BLおよびソース線SLは、高濃度にドープされたN型拡散領域70に電気的に接続される)。
【0055】
SONOSタイプのAND型フラッシュメモリを作成する別の例として、メモリセルのソース/ドレインを提供する拡散領域58を形成するシーケンスを変更することができる。すなわち、イオン注入のマスクとなり得る第1のゲート材料46のパターニングの直後に、N型不純物が注入されるようにしてもよい。また、図14および図15に示すように、P型の不純物を注入する前に、図14および図15のときと同様に、選択トランジスタの領域がフォトレジストでマスクされる。
【0056】
図19は、本実施例のAND型フラッシュメモリの主要な電気的構成を示すブロック図である。同図に示すように、フラッシュメモリ100は、AND型のメモリセルアレイ構造を有するメモリセルアレイ110、外部から入力されたアドレス等を保持するアドレスバッファ120、行アドレスに基づきワード線等を選択し、選択したワード線等を駆動する行選択・駆動回路130、列アドレスに基づきビット線やソース線等を選択する列選択回路140、外部のホスト装置等との間でデータやコマンド等の送受を行う入出力回路150、読出し動作時に選択メモリセルから読み出されたデータをセンスしたり、プログラム動作時に選択メモリセルに書込むためのバイアス電圧をビット線等に印加したり、消去動作時にPウエル等に消去電圧等を印加する読み書き制御部160などを含んで構成される。各部は、アドレス、データ、制御信号等を送受可能な内部バス等によって接続され、また、ここには図示しないが、各種のバイアス電圧を生成するための電圧生成回路等が含まれている。
【0057】
行選択・駆動回路130は、行アドレスに基づきワード線WLを選択し、選択ワード線WLおよび非選択ワード線を動作に応じた電圧で駆動する。行選択・駆動回路130は、ワード線WL(CG)、選択制御線(SG)に図8Bに示すような電圧を印加する。
【0058】
列選択回路140は、列アドレスに基づきビット線BLおよびソース線SLを選択し、選択したビット線BLおよびソース線SLに動作に応じた電圧を印加し、あるいはフローティング状態にする。
【0059】
読み書き制御部160は、外部のホスト装置から受け取ったコマンドに応じて読出し、プログラム、消去などの動作を制御する。読み書き制御部160は、センスアンプや書込みアンプなどを含み、センスアンプは、読出し動作時に選択メモリセルに接続されたビット線BLとソース線SLに流れる電流や電圧をセンスし、書込みアンプは、読出し動作時に選択ビット線に読出し電圧を印加したり、プログラム動作時に選択ビット線や非選択ビット線に電圧を印加し、さらに消去動作時にビット線やソース線をフローティング状態にする。
【0060】
本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
10:Pウエル 12:N型拡散領域
13:N型拡散領域 14:電荷蓄積層
16:ゲート 18:層間絶縁膜
20:P型拡散領域 21:P型拡散領域
22:絶縁膜 30:P型シリコン基板
32:Nウエル 34:Pウエル
40:絶縁体 42:電荷蓄積層
44:P型拡散領域 46:ゲート材料
48:マスク材料 50:側壁
52:トレンチ 54:絶縁層
56:絶縁領域 58:N型拡散領域
60:層間絶縁層 62:マスク
64:P型拡散領域 66:ゲート材料
68:ゲートの無い領域 70:N型拡散領域
図1
図2
図2A
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19