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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】腫瘍転移を処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7068 20060101AFI20240716BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240716BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240716BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
A61K31/7068
A61P37/04
A61P35/04
A61P35/00
A61K9/20
A61K9/06
A61K9/14
A61K9/48
【請求項の数】 27
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022146670
(22)【出願日】2022-09-15
(62)【分割の表示】P 2020503751の分割
【原出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2022180457
(43)【公開日】2022-12-06
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】62/536,949
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514274409
【氏名又は名称】タリス バイオメディカル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ギーシング, デニス
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/134911(WO,A1)
【文献】特表2017-508749(JP,A)
【文献】特表2015-528469(JP,A)
【文献】国際公開第2017/193098(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の膀胱における第1の腫瘍部位とは異なる第2の腫瘍部位において、腫瘍細胞に対する免疫応答を誘導する方法における使用のための組成物であって、前記組成物は、ゲムシタビンを含み、前記方法は、有効量のゲムシタビンを前記膀胱に局所的に送達することを含み、ゲムシタビンは、少なくとも約24時間、前記膀胱に連続的に送達される、組成物。
【請求項2】
前記免疫応答が、1つまたは複数の炎症促進性サイトカインのレベルの増加を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1つまたは複数の炎症促進性サイトカインが、TNF-αまたはIFN-γである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記免疫応答が、1つまたは複数の抗炎症性サイトカインのレベルの減少を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗炎症促進性サイトカインが、TGF-βである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記免疫応答が、調節性T細胞のレベルまたは活性の減少を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記調節性T細胞のレベルの減少が、調節性T細胞のレベルまたは百分率の、CD4+CD25-T細胞と比較した減少である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記免疫応答が、エフェクターT細胞、ヘルパーT細胞、メモリー細胞、および形質芽細胞からなる群から選択される1つまたは複数の細胞のレベルまたは活性の増加を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記個体が、膀胱がんを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記個体が、筋浸潤性膀胱がんまたは上皮内癌(CIS)を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記個体が、膀胱切除術に不向きであるかまたは膀胱切除術を拒絶する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記個体が、ゲムシタビンの膀胱内投与の前に経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けていない、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記個体が、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けている、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記個体が、切除の部位に残留腫瘍を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記個体が、全身的化学療法に不適切である、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記ゲムシタビンが、約7日間~約3週間の期間、前記個体の膀胱に連続的に送達される、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記ゲムシタビンが、約7日間~約3週間の期間、少なくとも2回、前記個体の膀胱に連続的に送達される、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記ゲムシタビンが、約3週間、前記個体の膀胱に連続的に送達される、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記ゲムシタビンが、約10mg/日~約50mg/日の用量で送達される、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
尿中の前記ゲムシタビンの濃度が、前記送達期間中、約0.1μg/mL~約200μg/mLである、請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記ゲムシタビンが、膀胱内デバイスによって送達される、請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記膀胱内デバイスが、225mgのゲムシタビンを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記方法は、ゲムシタビン放出用の膀胱内デバイスを個体の膀胱中に配置するステップを含み、前記デバイスは、膀胱中に21日間残存する、請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記ゲムシタビン放出用の膀胱内デバイスが、225mgのゲムシタビンを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記デバイスが、約1日間~約21日間ゲムシタビンを放出する、請求項23または請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記デバイスが、約7日間~約21日間ゲムシタビンを放出する、請求項23から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
膀胱とは異なる前記第2の腫瘍部位が、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、骨盤リンパ節、腹膜、皮膚、前立腺、乳房、結腸、直腸、および子宮頸部からなる群から選択される、請求項1から26のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「腫瘍転移を処置する方法」という表題で、2017年7月25日に出願された米国特許仮出願第62/536,949号の優先権を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、腫瘍または離れた部位の腫瘍転移を、有効量の化学療法剤を膀胱に連続的に送達することにより処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
がん性疾患および腫瘍は、一般に、ヒトの死亡および重度の病気の主要な原因である。腫瘍転移は、がん患者の死亡の主要な誘因である。腫瘍の外科的除去の後でさえ、患者は、がんに、主として腫瘍転移に頻繁に苦しめられる。
【0004】
転移性がんは、転移性腫瘍細胞が処置に対して素早く適応し、耐性となり得るため、特に処置が困難である。典型的には、転移性がんは、身体全体にわたるがん細胞に到達するために、化学療法またはホルモン療法などの全身性治療を必要とする。これらの治療の有効性は、特定のがんの種類および特定の患者集団などの種々の因子に依存する。一般に、転移性がんの現在利用可能な治療の有効性は、有効性の乏しさならびに人体への重篤なおよび/または不必要な損傷のため、理想とはほど遠いものである。
【0005】
膀胱がんは、重大な医療上の問題であり、現在利用可能な処置選択肢は、いくつかの理由のために、満足のいくものではない。一般に、膀胱がんは、筋浸潤性膀胱がん(MIBC)または非筋浸潤性膀胱がん(NMIBC)として分類される。膀胱がんの病理学的分類およびステージ分けは、以下の通りである:pTa(尿路上皮の関与);pTis(高リスク尿路上皮限局);pT1(粘膜固有層浸潤);pT2(筋層浸潤);pT3(膀胱周囲脂肪浸潤);およびpT4(骨盤内臓器浸潤(pelvic organ extension))。膀胱がんは、グレード1/3(高分化型);グレード2/3(中分化型);およびグレード3/3(低分化型)としてグレードによっても分類できる。最近、世界保健機関は、膀胱がんに関する、低グレードおよび高グレードの2スケールのグレード分けシステムを使用することを推奨した。さらに、膀胱がんは、ステージ0~IVとしてステージによって分類できる。ほとんどの膀胱がんは、上皮起源の移行上皮癌であり、膀胱の内層に限局された非筋浸潤性膀胱がん(NMIBC)として分類される。最初の症状の時点では、ほとんどの膀胱がんは、表在性NMIBCであり、これには、ステージpTa、pTisおよびpT1の疾患が含まれる。筋浸潤性膀胱がん(MIBC)には、ステージpT2、pT3およびpT4が含まれる。
【0006】
初期ステージNMIBCを処置するために使用される典型的な臨床的アプローチは、膀胱鏡検査による可視化と、その後の経尿道的切除術(TUR)として公知の腫瘍(複数可)の外科的除去である。しかし、手術後の再発率は高く、がんは筋浸潤性疾患へと進行し得る。したがって、手術は、再発を抑制するかまたは遅延させることを助けるために、化学療法剤または免疫療法剤のアジュバント膀胱内注入(尿路カテーテルを通した、短期間の、通常は1時間未満の、膀胱内への化学療法剤の直接的送達)と組み合わせられる場合が多い。カルメット・ゲラン桿菌(BCG)は、そのような免疫療法薬であり、高グレードの非筋浸潤性膀胱がん(NMIBC)に対する手術後に膀胱内に注入される。しかし、多くの患者は、BCGに対して応答せず、BCG処置はまた、様々な有害効果を誘導して、処置の中断をもたらし得る。化学療法剤は、通常はBCG治療が失敗した患者のために
残されている。化学療法は、典型的には、腫瘍部位において化学療法剤を濃縮するために膀胱内適用され、薬物の全身的曝露を低減しつつ、切除術後のいずれの残留腫瘍も排除する助けとなる。
【0007】
筋浸潤性膀胱がんは、非筋浸潤性膀胱がんと比較して、一般に転移し易い。したがって、筋浸潤性膀胱がんを有する患者は、典型的には、シスプラチンベースのネオアジュバント化学療法、その後の根治的膀胱切除術、または膀胱の除去を受ける。一方、根治的膀胱切除術に医学的に不向きであるか、または根治的膀胱切除術を受けることを選択しない、筋浸潤性膀胱がんを有する患者は、典型的には、化学療法と組み合わせた最大限の経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受ける。
【0008】
膀胱がんを処置するために臨床試験において使用される1つのそのような化学療法剤は、ゲムシタビンである。ゲムシタビン(2’,2’-ジフルオロデオキシシチジン)は、転移性膀胱がんに対する活性を有するピリミジンアナログである。ゲムシタビンは、種々の毎週のスケジュールでの膀胱への注入によって、NMIBCを処置するための臨床試験においても使用されてきた。ゲムシタビンは、典型的には、典型的には最大で100mLの食塩水中の500~2000mgの範囲の用量で、1~2時間にわたり、数週間かけて1週間に1回または2回注入される。
【0009】
このような液体製剤は、1~2時間の短い滞留時間後に膀胱から排泄されるので、それらの治療的利益が限定されることが公知である。さらに、高濃度(40mg/mL)および高用量(注入1回当たり最大で2グラム)が、制限された滞留時間で治療的組織レベルを達成するための試みにおいて使用される。しかし、局所的忍容性の問題に加えて、高用量のゲムシタビンの膀胱内送達は、顕著な全身的吸収をもたらし、胃腸、膀胱および骨髄毒性を引き起こすことがあり、その有用性はさらに制限される。
【0010】
全身性ゲムシタビンは、多くの場合、根治的膀胱切除術のための新補助および補助の両方で、全身性シスプラチンと組み合わせて使用され、筋浸潤性膀胱がんを処置し、転移性疾患を処置する。しかし、多くの患者は、骨髄抑制を含むそれらの副作用に起因して、これらの薬剤を用いた処置に不適格であるかまたはそれを拒絶する。
【0011】
したがって、膀胱に腫瘍を有する個体において、離れた部位の腫瘍を処置する方法に対する必要性が依然として存在する。
【0012】
本明細書で参照された全ての刊行物、特許、特許出願および公開された特許出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、種々の態様において、腫瘍転移を処置する方法、既存の腫瘍転移を低減させる方法(根絶するなど)、既存の腫瘍転移の発生率または負荷を低減させる方法、腫瘍転移を抑制するかまたは遅延させる方法、個体の膀胱における第1の腫瘍部位とは異なる第2の部位において腫瘍細胞を阻害する方法であって、有効量の化学療法剤を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、一定期間、膀胱に連続的に送達される、方法を提供する。
【0014】
一部の実施形態では、個体の膀胱における第1の腫瘍部位とは異なる第2の腫瘍部位において腫瘍細胞成長を阻害する方法であって、有効量の化学療法剤を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、第2の腫瘍部位における腫瘍細胞は、骨盤リ
ンパ節に位置する。一部の実施形態では、第2の腫瘍部位における腫瘍細胞は、遠位リンパ節に位置する。一部の実施形態では、第2の腫瘍部位における腫瘍細胞は、循環腫瘍細胞である。一部の実施形態では、第1の腫瘍部位における腫瘍細胞は、第2の腫瘍部位における原発腫瘍の転移に起因する。一部の実施形態では、第2の部位における腫瘍細胞は、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、骨盤リンパ節、腹膜、皮膚、前立腺、乳房、結腸、直腸、および子宮頸部(cervix)からなる群から選択される。一部の実施形態では、個体は、下部尿路の尿路上皮癌を有する。
【0015】
一部の実施形態では、下部尿路の尿路上皮癌を有する個体において、膀胱とは異なる部位における腫瘍転移を処置するかまたは抑制する方法であって、有効量の化学療法剤を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される方法もまた、本明細書で提供される。一部の実施形態では、腫瘍転移部位は、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、骨盤リンパ節、腹膜、皮膚、前立腺、乳房、結腸、直腸、および子宮頸部の1つまたは複数におけるものである。一部の実施形態では、腫瘍転移は、2つまたはそれよりも多い異なる部位におけるものである。
【0016】
上記方法のいずれかに従う一部の実施形態では、個体は、膀胱がんを有する。一部の実施形態では、個体は、筋浸潤性膀胱がんまたは上皮内癌(CIS)を有する。一部の実施形態では、個体は、膀胱切除術に不向きであるかまたは膀胱切除術を拒絶する。
【0017】
上記方法のいずれかに従う一部の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けていない。
【0018】
他の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けている。これらの実施形態の一部では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受け、切除の部位に残留腫瘍を有する。
【0019】
上記方法のいずれかに従う一部の実施形態では、化学療法剤は、約1mg/日~約300mg/日の用量で送達される。一部の実施形態では、尿中の化学療法剤の濃度は、送達期間中、約0.1μg/mL~約200μg/mLである。
【0020】
上記方法のいずれかに従う一部の実施形態では、化学療法剤は、約7日間~約3週間の期間、個体の膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、この方法は、誘導送達期間、続いて維持送達期間を含む。一部の実施形態では、誘導送達期間および維持送達期間は、約7~約14日間の休薬期間によって間が開けられている。一部の実施形態では、化学療法剤は、誘導送達期間中に第1の放出速度で、続いて(followed)維持送達期間中に第2の放出速度で送達される。
【0021】
上記方法のいずれかに従う一部の実施形態では、この方法は、a)個体の尿中の化学療法剤の濃度が少なくとも約0.1μg/mLである、誘導送達期間;b)休薬期間;およびc)個体の尿中の化学療法剤の濃度が約0.1μg/mLよりも高い、維持送達期間を含む。
【0022】
上記方法のいずれかに従う一部の実施形態では、個体は、放射線治療を受けない。他の実施形態では、この方法は、放射線治療をさらに含む。
【0023】
上記方法のいずれかに従う一部の実施形態では、化学療法剤は、膀胱内送達デバイスによって送達される。一部の実施形態では、膀胱内デバイスは、100mg~500mgの化学療法剤を含む。一部の実施形態では、膀胱内デバイスは、膀胱内挿入のために構成されたハウジングであって、化学療法剤を含む投薬形態を保持し、かつ化学療法剤を放出す
るように構成されている、ハウジングを含む。一部の実施形態では、膀胱内薬物送達デバイスは、リザーバーを規定するハウジング;リザーバー内に含まれる第1のユニットであって、化学療法剤を含む第1のユニット;および第1のユニットとは異なる位置でリザーバー内に含まれる第2のユニットであって、ハウジングからの化学療法剤のin vivo放出を促進する機能的薬剤を含む第2のユニットを含む。一部の実施形態では、膀胱内薬物送達デバイスは、ハウジングであって、化学療法剤を含み、化学療法剤を制御可能に放出し、個体の膀胱においてデバイスを保持するように構成された保持形状と個体の尿道を通じたデバイスの通過のための配置形状(deployment shape)との間で弾性的に変形
可能であるハウジングを含む。一部の実施形態では、デバイスは、第1の壁および第2の壁と境界を接する薬物リザーバー管腔(drug reservoir lumen)を含み、第1の壁は、薬物に対して不透過性であり、第2の壁は、化学療法剤に対して透過性である。一部の実施形態では、化学療法剤は、浸透圧によってデバイスから放出される。一部の実施形態では、化学療法剤は、拡散によってデバイスから放出される。一部の実施形態では、ハウジング中に含まれる化学療法剤は、非液体形態である。一部の実施形態では、非液体形態は、錠剤、顆粒、粉末、半固体、カプセル、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0024】
上記方法のいずれかに従う一部の実施形態では、化学療法剤は、ヌクレオシドアナログ、タキサン、白金ベースの薬剤、およびアントラサイクリンアナログからなる群から選択される。一部の実施形態では、化学療法剤は、ヌクレオシドアナログである。これらの実施形態の一部では、ヌクレオシドアナログは、ゲムシタビンである。
【0025】
上記方法のいずれかに従う一部の実施形態では、個体はヒトである。一部の実施形態で
は、個体は、全身的化学療法に不適切である。一部の実施形態では、個体は、損なわれた
免疫系を有する。一部の実施形態では、個体は、高い腫瘍負荷を有する。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
下部尿路の尿路上皮癌を有する個体において、膀胱とは異なる部位における腫瘍転移を
処置するかまたは抑制する方法であって、有効量の化学療法剤を前記膀胱に局所的に送達
するステップを含み、前記化学療法剤は、少なくとも約24時間、前記膀胱に連続的に送
達される、方法。
(項目2)
前記腫瘍転移部位が、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、骨盤リンパ節、腹膜、皮膚、前立
腺、乳房、結腸、直腸、および子宮頸部の1つまたは複数におけるものである、項目1に
記載の方法。
(項目3)
前記腫瘍転移が、2つまたはそれよりも多い異なる部位におけるものである、項目1か
ら2のいずれか一項に記載の方法。
(項目4)
個体の膀胱における第1の腫瘍部位とは異なる第2の腫瘍部位において、腫瘍細胞成長
を阻害する方法であって、有効量の化学療法剤を前記膀胱に局所的に送達するステップを
含み、前記化学療法剤は、少なくとも約24時間、前記膀胱に連続的に送達される、方法

(項目5)
前記第2の腫瘍部位における前記腫瘍細胞が、骨盤リンパ節に位置する、項目4に記載
の方法。
(項目6)
前記第2の腫瘍部位における前記腫瘍細胞が、遠位リンパ節に位置する、項目4に記載
の方法。
(項目7)
前記第2の腫瘍部位における前記腫瘍細胞が、循環腫瘍細胞である、項目4に記載の方
法。
(項目8)
前記第1の腫瘍部位における前記腫瘍細胞が、前記第2の腫瘍部位における原発腫瘍の
転移に起因する、項目4に記載の方法。
(項目9)
前記第2の部位における前記腫瘍細胞が、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、骨盤リンパ節
、腹膜、皮膚、前立腺、乳房、結腸、直腸、および子宮頸部からなる群から選択される、
項目8に記載の方法。
(項目10)
前記個体が、下部尿路の尿路上皮癌を有する、項目4から9のいずれか一項に記載の方
法。
(項目11)
前記個体が、膀胱がんを有する、項目1から10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記個体が、筋浸潤性膀胱がんまたは上皮内癌(CIS)を有する、項目11に記載の
方法。
(項目13)
前記個体が、膀胱切除術に不向きであるかまたは膀胱切除術を拒絶する、項目11また
は12に記載の方法。
(項目14)
前記個体が、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けていない、項目11から1
3のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記個体が、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けている、項目11から13
のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記個体が、切除の部位に残留腫瘍を有する、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記化学療法剤が、約7日間~約3週間の期間、前記個体の膀胱に連続的に送達される
、項目1から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
誘導送達期間、続いて維持送達期間を含む、項目1から17のいずれか一項に記載の方
法。
(項目19)
前記誘導送達期間および前記維持送達期間が、約7~約14日間の休薬期間によって間
が開けられている、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記化学療法剤が、前記誘導送達期間中に第1の放出速度で、続いて前記維持送達期間
中に第2の放出速度で送達される、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記化学療法剤が、約1mg/日~約300mg/日の用量で送達される、項目1から
20のいずれかに記載の方法。
(項目22)
尿中の前記化学療法剤の濃度が、前記送達期間中、約0.1μg/mL~約200μg
/mLである、項目1から21のいずれかに記載の方法。
(項目23)
a)前記個体の尿中の化学療法剤の濃度が少なくとも約0.1μg/mLである、誘導
送達期間;
b)休薬期間;および
c)前記個体の尿中の前記化学療法剤の濃度が約0.1μg/mLよりも高い、維持送達
期間
を含む、項目1から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記個体が、放射線治療を受けない、項目1から23のいずれかに記載の方法。
(項目25)
放射線治療をさらに含む、項目1から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記化学療法剤が、膀胱内送達デバイスによって送達される、項目1から25のいずれ
か一項に記載の方法。
(項目27)
前記膀胱内デバイスが、100mg~500mgの前記化学療法剤を含む、項目26に
記載の方法。
(項目28)
前記膀胱内デバイスが、膀胱内挿入のために構成されたハウジング;および化学療法剤
を含む投薬形態を含み、前記ハウジングが、前記投薬形態を保持し、化学療法剤を放出す
るように構成されている、項目26から27のいずれかに記載の方法。
(項目29)
前記膀胱内薬物送達デバイスが、
リザーバーを規定するハウジング;
前記リザーバー内に含まれる第1のユニットであって、化学療法剤を含む第1のユニット
;および
前記第1のユニットとは異なる位置で前記リザーバー内に含まれる第2のユニットであっ
て、前記ハウジングからの前記化学療法剤のin vivo放出を促進する機能的薬剤を
含む第2のユニット
を含む、項目26から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記膀胱内薬物送達デバイスが、ハウジングであって、前記化学療法剤を含み、前記化
学療法剤を制御可能に放出し、前記個体の膀胱において前記デバイスを保持するように構
成された保持形状と前記個体の尿道を通じた前記デバイスの通過のための配置形状との間
で弾性的に変形可能であるハウジングを含む、項目26から29のいずれか一項に記載の
方法。
(項目31)
前記デバイスが、第1の壁および第2の壁と境界を接する薬物リザーバー管腔を含み、
前記第1の壁が、薬物に対して不透過性であり、前記第2の壁が、前記化学療法剤に対し
て透過性である、項目26から30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記化学療法剤が、浸透圧によって前記デバイスから放出される、項目26から31の
いずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記化学療法剤が、拡散によって前記デバイスから放出される、項目26から31のい
ずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記ハウジング中に含まれる前記化学療法剤が、非液体形態である、項目22から29
のいずれかに記載の方法。
(項目35)
前記非液体形態が、錠剤、顆粒、粉末、半固体、カプセル、およびそれらの組合せから
なる群から選択される、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記化学療法剤が、ヌクレオシドアナログ、タキサン、白金ベースの薬剤、およびアン
トラサイクリンアナログからなる群から選択される、項目1から35のいずれか一項に記
載の方法。
(項目37)
前記化学療法剤が、ヌクレオシドアナログである、項目1から36のいずれか一項に記
載の方法。
(項目38)
前記ヌクレオシドアナログが、ゲムシタビンである、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記個体が、ヒトである、項目1から38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記個体が、全身的化学療法に不適切である、項目1から39のいずれか一項に記載の
方法。
(項目41)
前記個体が、損なわれた免疫系を有する、項目1から40のいずれか一項に記載の方法

(項目42)
前記個体が、高い腫瘍負荷を有する、項目1から41のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、膀胱および皮下組織に腫瘍を導入するための、改変された膀胱灌流システムを示す。
【0027】
図2図2は、4つの群のラットに関する処置および投薬スケジュールを示す:1)皮下腫瘍のみを接種した未処置ラット;2)膀胱腫瘍および次に皮下腫瘍を接種した未処置ラット;3)膀胱腫瘍を接種し、180μg/mLのゲムシタビンを用いて灌流し、次に皮下腫瘍を接種し、180μg/mLのゲムシタビンを用いて再び灌流したラット;ならびに4)膀胱腫瘍および皮下腫瘍を同時に接種し、180μg/mLのゲムシタビンを用いて2回灌流したラット。
【0028】
図3図3は、膀胱および/または皮下組織に腫瘍を導入した後および処置の過程における、4つの群のラットにおける皮下腫瘍の平均体積を示す。
【0029】
図4図4は、膀胱および/または皮下組織に腫瘍を導入した後および処置の過程における、4つの群のそれぞれ個々のラットにおける皮下腫瘍の体積を示す。
【0030】
図5図5A~5Cは、化学療法剤の局所的かつ連続的送達を提供するために使用できる膀胱内デバイスを示す。図5Aは、平面図である。図5Bは、図5A中の線3-3に沿って得られた断面図である。図5Cは、部分横断面で示された配置器具(deployment instrument)のワーキングチャネル内に配置されたデバイスの一方の末端部分の図である。
【0031】
図6図6は、ビヒクルまたは45μg/mlおよび90μg/mlのゲムシタビン灌流濃度を用いて処置し、10μg/mlおよび20μg/mlの公称尿濃度を生じている、膀胱腫瘍を有するラットにおける皮下腫瘍の平均腫瘍体積を示す。
【0032】
図7図7は、ビヒクルまたは45μg/mlおよび90μg/mlのゲムシタビン灌流濃度を用いて処置し、10μg/mlおよび20μg/mlの公称尿濃度を生じている、膀胱腫瘍を持たないラットにおける皮下腫瘍の平均腫瘍体積を示す。
【0033】
図8図8は、NBT-II膀胱腫瘍細胞を接種し、ゲムシタビン処置なし(NBT-II)かまたはゲムシタビン(GEM)での膀胱内(intravesicular)処置をしたかのいずれかの、ラットにおける循環TGF-βレベルを示す。
【0034】
図9図9は、NBT-II膀胱腫瘍細胞を接種し、ゲムシタビン処置なし(NBT-II)かまたはゲムシタビン(GEM)での膀胱内処置をしたかのいずれかの、ラットにおける循環IL-10レベルを示す。
【0035】
図10図10は、NBT-II膀胱腫瘍細胞を接種し、ゲムシタビン処置なし(NBT-II)かまたはゲムシタビン(GEM)での膀胱内処置をしたかのいずれかの、ラットにおける循環TNF-αレベルを示す。
【0036】
図11図11は、膀胱内ゲムシタビンを投与された腫瘍保有ラットにおける、活性化されたCD4およびCD8脾臓T細胞集団を示す。
【0037】
図12図12は、膀胱内ゲムシタビンを投与された腫瘍保有ラットにおける、FOXP3脾臓調節性細胞集団を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[詳細な説明]
本出願は、膀胱がんを有する個体において、膀胱とは異なる部位における腫瘍転移を処置するかまたは抑制する方法であって、有効量の化学療法剤(ゲムシタビンなど)を膀胱に局所的に送達する(膀胱内(intravesical)など)ステップを含む方法を提供する。本出願は、ゲムシタビンの膀胱への長期間にわたる連続的送達が、膀胱とは異なる腫瘍部位において並外れた抗腫瘍効果を有するという、驚くべき知見に一部基づく。この効果は、ゲムシタビンが、1回よりも多く連続的に送達される場合、なおもさらに明白である。したがって、本明細書に記載されるような、化学療法剤(ゲムシタビンなど)の連続的送達、特に、化学療法剤(ゲムシタビンなど)の膀胱への反復性の局所的かつ連続的送達は、腫瘍転移を処置するかもしくは抑制するか、または非膀胱腫瘍を処置するための頑健な方法であり得、ここで、膀胱は原発腫瘍部位または二次もしくは転移部位である。
【0039】
したがって、本発明は、種々の態様において、腫瘍転移を処置する方法、既存の腫瘍転移を低減させる方法(根絶するなど)、既存の腫瘍転移の発生率または負荷を低減させる方法、腫瘍転移を抑制するかまたは遅延させる方法、個体の膀胱における第1の腫瘍部位とは異なる第2の部位において腫瘍細胞を阻害する方法であって、有効量の化学療法剤を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、一定期間、膀胱に連続的に送達される、方法を提供する。一態様では、個体の膀胱における第1の腫瘍部位とは異なる第2の腫瘍部位において腫瘍細胞成長を阻害する方法であって、有効量の化学療法剤を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される、方法が提供される。別の態様では、下部尿路の尿路上皮癌を有する個体において、膀胱とは異なる部位における腫瘍転移を処置するかまたは抑制する方法であって、有効量の化学療法剤を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される、方法が提供される。本明細書に記載され
るいずれかの方法を実行するためのキットもまた提供される。
定義
【0040】
本明細書において使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈によってそうでない旨が明確に示されない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「a」または「an」は、「少なくとも1」または「1つまたは複数」を意味する。
【0041】
用語「連続的」または「連続的に」とは、本明細書で使用する場合、持続期間にわたる、化学療法剤(例えばゲムシタビン)の持続的投与を指す。
【0042】
用語「個体」とは、本明細書で使用する場合、ヒトを含む哺乳動物を指す。個体には、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、げっ歯類または霊長類が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、個体はヒトである。
【0043】
本明細書で、「約」値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーター自体に関する実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約7日間」は、7日間を含む。
【0044】
本明細書で使用する用語「約X~Y」は、「約X~約Y」と同じ意味を有する。
【0045】
これらの方法は、アジュバント状況で実施され得る。「アジュバント状況」とは、個体が、増殖性疾患、特にがんの病歴を有しており、手術(例えば、外科的切除術)、放射線療法および化学療法が含まれるがこれらに限定されない治療に対して一般に(必ずではないが)応答性であった、臨床状況を指す。しかし、増殖性疾患(例えば、がん)の病歴に起因して、これらの個体は、疾患の発達/進行のリスクがあるとみなされる。「アジュバント状況」での処置または投与とは、引き続く処置様式を指す。リスクの程度(即ち、アジュバント状況にある個体が、「高リスク」または「低リスク」とみなされる場合)は、いくつかの因子、最も一般的には最初に処置されたときの疾患の程度に依存する。本明細書で提供される方法は、ネオアジュバント状況でも実施され得て、即ち、この方法は、一次/最終的治療の前に実施され得る。一部の実施形態では、個体は、以前に処置されている。一部の実施形態では、個体は、以前に処置されていない。一部の実施形態では、処置は、第一選択治療である。
【0046】
本明細書で使用する場合、「処置」または「処置すること」とは、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的上、有益なまたは所望の臨床結果には、以下:疾患に起因する1つもしくは複数の症状を軽減すること、疾患の程度を低くすること、疾患を安定させること(例えば、疾患の悪化を予防するかまたは遅延させること)、疾患の拡散(例えば、転移)を抑制するかもしくは遅延させること、疾患の再発を予防するかもしくは遅延させること、疾患の進行を遅延させるかもしくは減速させること、疾患状態を軽快すること、疾患の寛解(部分または完全)を提供すること、疾患を処置するために必要とされる1つもしくは複数の他の薬物療法の用量を減少させること、疾患の進行を遅延させること、生活の質を向上させるかもしくは改善すること、体重増加(weight gain)を増やすこと、および/または生存を延長することの1つまたは複数が含まれるが、これらに限定されない。また「処置」に包含されるのは、がんの病理学的帰結の低減である。本発明の方法は、処置のこれらの態様の任意の1つまたは複数を企図している。
【0047】
本明細書で使用する用語「有効量」とは、特定された障害、状態または疾患を処置する、例えば、その症状の1つまたは複数を軽快させる、緩和する、低下させる、および/または遅延させるのに十分な、化合物または組成物の量を指す。がんに関して、有効量は、腫瘍を縮小させるおよび/もしくは腫瘍の成長速度を減少させる(腫瘍成長を抑制するな
ど)、および/または他の望ましくない細胞増殖を抑制するかもしくは遅延させる、および/または腫瘍転移を処置するかもしくは抑制する、および/または既存の腫瘍転移を減少させる(根絶する(eradiate)など)、および/または既存の腫瘍転移の発生率もしくは負荷を低減させる、および/または腫瘍転移を抑制するかもしくは遅延させる、および/または腫瘍細胞を阻害する、および/または腫瘍細胞に対する免疫応答を誘導するのに十分な量を含む。有効量は、1回または複数回の投与で投与され得て、例えば、薬物または組成物の有効量は、(i)がん細胞の数を低減させ得る;(ii)腫瘍サイズを低減させ得る;(iii)末梢臓器中へのがん細胞浸潤を、ある程度まで阻害し得る、遅くし得る、減速させ得る、好ましくはそれを停止させ得る;(iv)腫瘍転移を阻害し得る(即ち、ある程度まで減速させ得る、好ましくはそれを停止させ得る);(v)腫瘍成長を阻害し得る;(vi)腫瘍の発生および/もしくは再発を抑制し得るかもしくは遅延させ得る;および/または(vii)がんと関連する症状のうち1つもしくは複数をある程度まで軽減させ得る。
【0048】
用語「ヌクレオシドアナログ」は、RNAおよびDNAにおける天然に存在する残基と構造的に同様のヌクレオシドであり、医療(medicine)および分子生物学において使用され、ヌクレオシドアナログが、それぞれ、末端位置にあるかまたは鎖内位置にあるかどうかに応じて、例えば、残基鎖の1もしくは2個の残基とのリン酸ジエステル結合の形成または同等の結合の形成によって、化学的に、オリゴヌクレオチドまたは核酸へと組み込まれ得る。核酸は、ヌクレオチドの鎖であり、ホスフェート骨格、パッカー形状の五炭糖であるリボースまたはデオキシリボースのいずれか、および5つの核酸塩基のうちの1つの、3つの部分から構成される。ヌクレオシドアナログは、ヌクレオシドとは、改変されたそのヒドロキシル、塩基または糖基の任意の1つまたは複数を有することによって異なり、改変は、ヌクレオシドアナログがアプタマー、内部移行核酸または腫瘍ホーミング核酸などのオリゴヌクレオチドへと組み込まれることを妨げることはない。
本発明の方法
【0049】
本発明は一態様において、個体の膀胱における第1の腫瘍部位とは異なる第2の腫瘍部位において腫瘍細胞成長を阻害する方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間連続的に送達される、方法を提供する。一部の実施形態では、化学療法剤は、免疫原性である。一部の実施形態では、化学療法剤は、壊死イベントを誘導する。一部の実施形態では、化学療法剤は、ヌクレオシドアナログ(例えば、ゲムシタビンおよびカペシタビン)、タキサン(例えば、ドセタキセルおよびカバジタキセル)、白金ベースの薬剤(例えば、オキサリプラチン)、アントラサイクリンアナログ(例えば、ドキソルビシン、イダルビシン)、ならびにミトキサントロンからなる群から選択される。一部の実施形態では、第2の腫瘍部位における腫瘍細胞は、第1の腫瘍部位における原発腫瘍の転移に起因する。一部の実施形態では、第2の腫瘍部位における腫瘍細胞は、続発性腫瘍からのものである。一部の実施形態では、第2の腫瘍部位における腫瘍細胞は、循環腫瘍細胞である。一部の実施形態では、第1の腫瘍部位における腫瘍細胞は、第2の腫瘍部位における原発腫瘍の転移に起因する。
【0050】
一部の実施形態では、化学療法剤は、ゲムシタビンまたはカペシタビンなどのヌクレオシドアナログである。一部の実施形態では、化学療法剤は、パクリタキセル、カバジタキセル、またはドセタキセルなどのタキサンである。一部の実施形態では、化学療法剤は、オキサリプラチンなどの白金ベースの薬剤である。一部の実施形態では、化学療法剤は、ドキソルビシンなどのアントラサイクリンアナログである。一部の実施形態では、第2の腫瘍部位における腫瘍細胞は、第1の腫瘍部位における原発腫瘍の転移に起因する。例えば、一部の実施形態では、下部尿路の尿路上皮癌を有する個体において、膀胱とは異なる部位における腫瘍転移を処置する方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナ
ログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、下部尿路の尿路上皮癌を有する個体において、膀胱とは異なる部位における腫瘍転移を抑制する方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約3週間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約12週間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、免疫原性である。一部の実施形態では、化学療法剤は、壊死イベントを誘導する。一部の実施形態では、第2の腫瘍部位における腫瘍は、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、骨盤リンパ節、腹膜、皮膚、前立腺、乳房、結腸、直腸、子宮頸部の1つまたは複数(2、3、4、5、6、または7など)におけるものである。一部の実施形態では、腫瘍転移部位は、2、3、4、5、6、またはそれよりも多い部位におけるものである。一部の実施形態では、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)転移は阻害される。一部の実施形態では、腫瘍転移は、2つの異なる部位におけるものである。一部の実施形態では、腫瘍転移は、同じ臓器における2つの部位におけるものである。一部の実施形態では、腫瘍転移は、異なる臓器における2つの部位におけるものである。一部の実施形態では、腫瘍転移は、2つよりも多い部位におけるものである。一部の実施形態では、腫瘍転移は、2つよりも多い異なる部位におけるものである。一部の実施形態では、例えば、転移が肺へのものである場合、罹患している総面積は減少する。一部の実施形態では、患者は、処置後にM0のがんステージを有する。一部の実施形態では、患者は、処置後にN1またはN0のがんステージを有する。
【0051】
一部の実施形態では、個体は、膀胱に腫瘍を有する。一部の実施形態では、個体は、下部尿路の尿路上皮癌を有する。一部の実施形態では、個体は、膀胱における扁平上皮癌、腺癌、肉腫様癌、または小細胞癌を有する。一部の実施形態では、個体は、乳頭状(pappilary)癌、微小乳頭状癌、または上皮内癌などの、下部尿路の尿路上皮癌の、組織学的
バリアントサブタイプを有する。一部の実施形態では、個体は、移行上皮癌(例えば、微小乳頭状(micropappliary)癌もしくは紡錘細胞癌)、リンパ上皮(lymphopithelial)
癌、シュミンケ腫瘍、または巨細胞癌などの下部尿路の浸潤性尿路上皮癌を有する。一部の実施形態では、個体は、移行上皮内癌、非浸潤性乳頭状移行上皮癌、低悪性度の乳頭状移行上皮新生物(papillary transitional cell neoplasm)、または尿路上皮乳頭腫
などの非浸潤性の尿路上皮新生物を有する。一部の実施形態では、個体は、扁平上皮癌、疣状癌、または扁平上皮乳頭腫などの扁平新生物(squamous neoplasm)を有する。一部の実施形態では、個体は、腺癌または絨毛腺腫などの腺新生物を有する。
【0052】
一部の実施形態では、膀胱がんを有する個体において、膀胱とは異なる部位における腫瘍転移を処置する方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約3週間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約12週間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、膀胱がんを有する個体において、膀胱とは異なる部位における腫瘍転移を抑制する方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)転移は阻害される。一部の実施形態では、化学療法剤は、免疫原性である。一部の実施形態では、化学療法剤は、壊死イベントを誘導する。一部の実施形態では、腫
瘍転移部位は、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、骨盤リンパ節、腹膜、皮膚、前立腺、乳房、結腸、直腸、子宮頸部の1つまたは複数(2、3、4、5、6、または7など)におけるものである。一部の実施形態では、腫瘍転移部位は、2、3、4、5、6、またはそれよりも多い部位におけるものである。一部の実施形態では、個体は、筋浸潤性膀胱がんを有する。一部の実施形態では、個体は、上皮内癌(CIS)を有する。一部の実施形態では、個体は、膀胱切除術に不向きであるかまたは膀胱切除術を拒絶する。一部の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けていない。一部の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けている。一部の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受け、切除の部位に残留腫瘍細胞、例えば免疫応答を引き起こすのに十分な残留腫瘍細胞を有する。一部の実施形態では、個体は、TURBT後に、Ta、Tis、T1、T2、T2a、T2b、T3、T3a、T4、T4a、またはT4bのがんを有する。一部の実施形態では、化学療法剤は、TURBT前およびTURBT後の両方に送達される。一部の実施形態では、連続的送達の期間中の個体の血漿中の化学療法剤濃度は、送達期間中、約1μg/mL未満、例えば約0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02、または0.01μg/mL未満のいずれかである。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。
【0053】
一部の実施形態では、下部尿路の尿路上皮癌を有する個体において、膀胱とは異なる部位における既存の非膀胱常在腫瘍転移を低減させる(根絶するなど)の方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約3週間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約12週間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、膀胱がんを有する個体において、膀胱とは異なる部位における既存の非膀胱常在腫瘍転移を低減させる(根絶するなど)の方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約3週間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約12週間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、免疫原性である。一部の実施形態では、化学療法剤は、壊死イベントを誘導する。一部の実施形態では、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)転移は低減する。一部の実施形態では、腫瘍転移部位は、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、骨盤リンパ節、腹膜、皮膚、前立腺、乳房、結腸、直腸、および子宮頸部の1つまたは複数(2、3、4、5、6、または7など)におけるものである。一部の実施形態では、腫瘍転移部位は、2、3、4、5、6、またはそれよりも多い部位におけるものである。一部の実施形態では、個体は、筋浸潤性膀胱がんを有する。一部の実施形態では、個体は、上皮内癌(CIS)を有する。一部の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けなかった。一部の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けた。一部の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受け、切除の部位に残留腫瘍細胞、例えば免疫応答を引き起こすのに十分な残留腫瘍細胞を有する。一部の実施形態では、個体は、TURBT後に、Ta、Tis、T1、T2、T2a、T2b、T3、T3a、T4、T4a、またはT4bのがんを有する。一部の実施形態では、化学療法剤は、TURBT前およびTURBT後の両方に送達される。一部の実施形態では、連続的送達の期間中の個体の血漿中の化学療法剤濃度は、送達期間中、約1μg/mL未満、例えば約0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02、または0.01μg/mL未満のいずれかである。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。
【0054】
一部の実施形態では、下部尿路の尿路上皮癌を有する個体において、膀胱とは異なる部位における既存の非膀胱常在腫瘍の発生率または負荷を低減させる方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、膀胱がんを有する個体において、膀胱とは異なる部位における既存の非膀胱常在腫瘍の発生率または負荷を低減させる方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、腫瘍転移部位は、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、骨盤リンパ節、腹膜、皮膚、前立腺、乳房、結腸、直腸、子宮頸部の1つまたは複数(2、3、4、5、6、または7など)におけるものである。一部の実施形態では、腫瘍転移部位は、2、3、4、5、6、またはそれよりも多い部位におけるものである。一部の実施形態では、化学療法剤は、免疫原性である。一部の実施形態では、化学療法剤は、壊死イベントを誘導する。一部の実施形態では、個体は、筋浸潤性膀胱がんを有する。一部の実施形態では、個体は、上皮内癌(CIS)を有する。一部の実施形態では、個体は、膀胱切除術に不向きであるかまたは膀胱切除術を拒絶する。一部の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けなかった。一部の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けた。一部の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受け、切除の部位に残留腫瘍細胞、例えば免疫応答を引き起こすのに十分な残留腫瘍細胞を有する。一部の実施形態では、個体は、TURBT後に、Ta、Tis、T1、T2、T2a、T2b、T3、T3a、T4、T4a、またはT4bのがんを有する。一部の実施形態では、化学療法剤は、TURBT前およびTURBT後の両方に送達される。一部の実施形態では、連続的送達の期間中の個体の血漿中の化学療法剤濃度は、送達期間中、約1μg/mL未満、例えば約0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02、または0.01μg/mL未満のいずれかである。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。
【0055】
一部の実施形態では、個体の膀胱における第1の腫瘍部位とは異なる第2の腫瘍部位において、腫瘍細胞に対する免疫応答を誘導する方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約3週間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約12週間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、個体の膀胱における第1の腫瘍部位とは異なる第2の腫瘍部位において、がん治療のために腫瘍微小環境を改善する方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、第2の腫瘍部位における腫瘍細胞は、第1の腫瘍部位における原発腫瘍の転移に起因する。一部の実施形態では、第2の腫瘍部位における腫瘍は、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、骨盤リンパ節、腹膜、皮膚、前立腺、乳房、結腸、直腸、子宮頸部の1つまたは複数(2、3、4、5、6、または7など)におけるものである。一部の実施形態では、第2の腫瘍部位における腫瘍細胞は、続発性腫瘍からのものである。一部の実施形態では、第2の腫瘍部位における腫瘍細胞は、循環腫瘍細胞である。一部の実施形態では、第1の腫瘍部位における腫瘍細胞は、第2の腫瘍部位における原発腫瘍の転移に起因する。一部の実施形態では、化学療法剤は、ヌクレオシドアナログ(例えば、ゲムシタビンおよびカペシタビン)、タキサン(例えば、ドセタキセルおよびカバジタキセル)、白金ベースの薬剤(例えば、オキサリプラチン、シスプラチンまたはカルボプラチン)、アントラサイクリンアナログ(例えば、ドキソルビシン、イダルビシン)、ならびにミトキサントロ
ンからなる群から選択される。一部の実施形態では、化学療法剤は、免疫原性である。一部の実施形態では、化学療法剤は、壊死イベントを誘導する。一部の実施形態では、炎症促進性サイトカイン(TNF-αまたはIFN-γなど)のレベルは増加する。一部の実施形態では、抗炎症性サイトカイン(TGF-βなど)のレベルは減少する。
【0056】
一部の実施形態では、免疫細胞集団のレベルまたは活性は、第2の部位において変化する。一部の実施形態では、調節性T細胞のレベルまたは活性は減少する。一部の実施形態では、エフェクターT細胞のレベルまたは活性は増加する。一部の実施形態では、ヘルパーT細胞のレベルまたは活性は増加する。一部の実施形態では、記憶細胞のレベルまたは活性は増加する。一部の実施形態では、形質芽細胞のレベルまたは活性は増加する。当業者は、試料中の調節性T細胞または他の免疫細胞集団の存在を測定するための種々の方法、例えば、関連するマーカーについて免疫組織化学的に染色すること、またはフローサイトメトリーもしくはFACS分析を実施することを認識する。例えば、調節性T細胞のレベルまたは百分率はまた、CD4+CD25-である従来のT細胞と比較して、相対的に減少し得る。
【0057】
一部の実施形態では、免疫応答は、急性炎症イベントによって誘導される。一部の実施形態では、急性炎症イベントは、化学療法剤の連続的送達によって引き起こされる。一部の実施形態では、化学療法剤は、免疫原性である。一部の実施形態では、化学療法剤は、壊死イベントを誘導する。一部の実施形態では、免疫応答は、自然免疫応答である。一部の実施形態では、自然免疫応答は、膀胱におけるかまたは末梢血中かまたは第2の腫瘍部位における、樹状細胞および/またはマクロファージなどの抗原提示細胞の活性化の集団の増加を特徴とする。一部の実施形態では、自然免疫応答は、抗原提示細胞(APC、樹状細胞および/またはマクロファージなど)による腫瘍抗原提示のレベル増加を特徴とする。一部の実施形態では、自然免疫応答は、第2の部位における、抗原提示細胞(APC、樹状細胞および/またはマクロファージなど)による腫瘍抗原提示のレベル増加を特徴とする。一部の実施形態では、APCによる腫瘍抗原提示のレベル増加は、化学療法剤(ゲムシタビンなど)の連続的送達によって引き起こされる。
【0058】
一部の実施形態では、免疫応答は、適応免疫応答である。一部の実施形態では、適応免疫応答は、免疫細胞集団のレベル増加を特徴とする。一部の実施形態では、適応免疫応答は、末梢血または組織におけるメモリーB細胞のレベル増加を特徴とする。一部の実施形態では、適応免疫応答は、末梢血または組織におけるメモリーT細胞のレベル増加を特徴とする。一部の実施形態では、適応免疫応答は、第2の腫瘍部位におけるメモリーB細胞のレベル増加を特徴とする。一部の実施形態では、適応免疫応答は、第2の腫瘍部位におけるメモリーT細胞のレベル増加を特徴とする。一部の実施形態では、適応免疫応答は、末梢血または組織におけるメモリーB細胞の活性化レベル増加を特徴とする。一部の実施形態では、適応免疫応答は、末梢血または組織におけるメモリーT細胞の活性化レベル増加を特徴とする。一部の実施形態では、適応免疫応答は、第2の腫瘍部位におけるメモリーB細胞の活性化レベル増加を特徴とする。一部の実施形態では、適応免疫応答は、第2の腫瘍部位におけるメモリーT細胞の活性化レベル増加を特徴とする。一部の実施形態では、化学療法剤の連続的送達は、自然免疫応答および適応免疫応答の両方を誘導する。
【0059】
一部の実施形態では、第2の腫瘍部位における腫瘍細胞は、続発性腫瘍からのものである。一部の実施形態では、個体の膀胱における第1の腫瘍部位とは異なる第2の腫瘍部位において、続発性腫瘍の成長を阻害する方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約3週間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約12週間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では(n
some embodiments)、化学療法剤は、免疫原性である。一部の実施形態では、化学療
法剤は、壊死イベントを誘導する。一部の実施形態では、個体は膀胱がんを有する。一部の実施形態では、個体は、筋浸潤性膀胱がんを有する。一部の実施形態では、個体は、上皮内癌(CIS)を有する。一部の実施形態では、個体は、膀胱切除術に不向きであるかまたは膀胱切除術を拒絶する。一部の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けなかった。一部の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けた。一部の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受け、切除の部位に残留腫瘍細胞、例えば免疫応答を引き起こすのに十分な残留腫瘍細胞を有する。一部の実施形態では、個体は、TURBT後に、Ta、Tis、T1、T2、T2a、T2b、T3、T3a、T4、T4a、またはT4bのがんを有する。一部の実施形態では、化学療法剤は、TURBT前およびTURBT後の両方に送達される。一部の実施形態では、連続的送達の期間中の個体の血漿中の化学療法剤濃度は、送達期間中、約1μg/mL未満、例えば約0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02、または0.01μg/mL未満のいずれかである。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。
【0060】
一部の実施形態では、第2の部位における腫瘍体積は、化学療法剤(ゲムシタビンなど)を用いて処置すると、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%低減する。一部の実施形態では、第1の腫瘍部位とは異なる第2の部位における腫瘍細胞は、第2の部位における腫瘍細胞の出現または発達を遅延させることにより阻害される。一部の実施形態では、第2の部位における腫瘍細胞の成長は、化学療法剤(ゲムシタビンなど)を用いて処置すると、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%低減する。一部の実施形態では、第1の腫瘍部位とは異なる第2の部位における腫瘍細胞は、第1の腫瘍部位における化学療法剤(ゲムシタビンなど)を用いて連続的、局所的に処置すると、個体の膀胱中の第1の部位における化学療法剤(ゲムシタビンなど)の連続的、局所的な送達を伴わない、同等の条件における腫瘍細胞と比較して、その出現または発達が少なくとも約7、14、21、28、または35日間遅延する。一部の実施形態では、第1の腫瘍部位とは異なる第2の部位における腫瘍細胞は、第1の部位における化学療法剤(ゲムシタビンなど)を用いて連続的、局所的に処置すると、個体の膀胱中の第1の部位における化学療法剤の連続的、局所的な送達を伴わない、同等の条件における腫瘍細胞と比較して、その出現または発達が少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月間遅延する。
【0061】
一部の実施形態では、第2の腫瘍部位における腫瘍細胞は、循環腫瘍細胞である。一部の実施形態では、個体の膀胱における第1の腫瘍部位とは異なる第2の腫瘍部位において、循環腫瘍細胞の放出を阻害する方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約3週間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約12週間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、免疫原性である。一部の実施形態では、化学療法剤は、壊死イベントを誘導する。一部の実施形態では、個体は膀胱がんを有する。一部の実施形態では、個体は、筋浸潤性膀胱がんを有する。一部の実施形態では、個体は、上皮内癌(CIS)を有する。一部の実施形態では、個体は、膀胱切除術に不向きであるかまたは膀胱切除術を拒絶する。一部の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けなかった。一部の実施形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けた。一部の実施
形態では、個体は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受け、切除の部位に残留腫瘍細胞、例えば免疫応答を引き起こすのに十分な残留腫瘍細胞を有する。一部の実施形態では、個体は、TURBT後に、Ta、Tis、T1、T2、T2a、T2b、T3、T3a、T4、T4a、またはT4bのがんを有する。一部の実施形態では、化学療法剤は、TURBT前およびTURBT後の両方に送達される。一部の実施形態では、連続的送達の期間中の個体の血漿中の化学療法剤濃度は、送達期間中、約1μg/mL未満、例えば約0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02、または0.01μg/mL未満のいずれかである。一部の実施形態では、個体の化学療法剤またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。
【0062】
一部の実施形態では、循環腫瘍細胞は、化学療法剤を用いて処置すると低減する。一部の実施形態では、循環腫瘍細胞は、個体の末梢血中の腫瘍細胞である。一部の実施形態では、循環腫瘍細胞は、個体の脳脊髄液中の腫瘍細胞である。循環腫瘍細胞は、臓器に移植されなかった腫瘍細胞であり得る。循環腫瘍細胞は、CELLSEARCH CTC Testまたは他の常法を用いて容易に試験することができる。一部の実施形態では、循環腫瘍細胞は、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%低減する。一部の実施形態では、循環腫瘍細胞の出現または発達は遅延する。一部の実施形態では、循環腫瘍細胞の成長は、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%低減する。一部の実施形態では、循環腫瘍細胞の出現または発達は、少なくとも約7、14、21、28または35日間遅延する。一部の実施形態では、循環腫瘍細胞の出現または発達は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月間遅延する。一部の実施形態では、循環腫瘍細胞の出現または発達は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12年間遅延する。
【0063】
一部の実施形態では、第1の腫瘍部位における腫瘍細胞は、第2の腫瘍部位における原発腫瘍の転移に起因する。一部の実施形態では、第1の腫瘍部位における腫瘍細胞は、第2の腫瘍部位において原発腫瘍を有する個体の続発性腫瘍に起因する。例えば、一部の実施形態では、個体は、膀胱に転移した、第2の腫瘍部位における原発がんを有する。一部の実施形態では、個体は、膀胱とは異なる部位における原発がんおよび膀胱における続発性がんを有する。一部の実施形態では、原発がんは、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、および子宮頸がんからなる群から選択される。
【0064】
したがって、例えば、一部の実施形態では、個体の膀胱とは異なる第2の腫瘍部位における前立腺がんであって、膀胱に転移している前立腺がんを処置する方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、化学療法剤は、免疫原性である。一部の実施形態では、化学療法剤は、壊死イベントを誘導する。一部の実施形態では、個体が、膀胱に転移した、第2の腫瘍部位における前立腺がんを有する場合、前立腺における第2の部位での腫瘍体積は、化学療法剤(ゲムシタビンなど)を用いて処置すると、少なくとも約5%、10%、15%、25%、30%、35%、40%、45%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%低減する。一部の実施形態では、前立腺における第2の部位での腫瘍細胞の成長は、化学療法剤(ゲムシタビンなど)を用いて処置すると、少なくとも約5%、10%、15%、25%、30%、35%、40%、45%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%低減する。一部の実施形態では、連続的送達の期間中の個体の血漿中の化学療法剤濃度は、送達期間中、約1μg/mL未満、例えば約0.5
、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02、または0.01μg/mL未満のいずれかである。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。
【0065】
一部の実施形態では、個体の膀胱とは異なる第2の腫瘍部位における乳がんであって、膀胱に転移している乳がんを処置する方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、化学療法剤は、免疫原性である。一部の実施形態では、化学療法剤は、壊死イベントを誘導する。一部の実施形態では、膀胱への転移は、腺癌である。一部の実施形態では、個体が、膀胱に転移した、第2の腫瘍部位における乳がんを有する場合、乳房の第2の部位における腫瘍体積は、化学療法剤(ゲムシタビンなど)を用いて処置すると、少なくとも約5%、10%、15%、25%、30%、35%、40%、45%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%低減する。一部の実施形態では、乳房の第2の部位における腫瘍細胞の成長は、化学療法剤(ゲムシタビンなど)を用いて処置すると、少なくとも約5%、10%、15%、25%、30%、35%、40%、45%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%低減する。一部の実施形態では、連続的送達の期間中の個体の血漿中の化学療法剤濃度は、送達期間中、約1μg/mL未満、例えば約0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02、または0.01μg/mL未満のいずれかである。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。
【0066】
一部の実施形態では、個体の膀胱とは異なる第2の腫瘍部位における結腸直腸がんであって、膀胱に転移している結腸直腸がんを処置する方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、化学療法剤は、免疫原性である。一部の実施形態では、化学療法剤は、壊死イベントを誘導する。一部の実施形態では、個体が、膀胱に転移した、第2の腫瘍部位における結腸直腸がんを有する場合、結腸または直腸における第2の部位での腫瘍体積は、化学療法剤(ゲムシタビンなど)を用いて処置すると、少なくとも約5%、10%、15%、25%、30%、35%、40%、45%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%低減する。一部の実施形態では、結腸または直腸における第2の部位での腫瘍細胞の成長は、化学療法剤(ゲムシタビンなど)を用いて処置すると、少なくとも約5%、10%、15%、25%、30%、35%、40%、45%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%低減する。一部の実施形態では、連続的送達の期間中の個体の血漿中の化学療法剤濃度は、送達期間中、約1μg/mL未満、例えば約0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02、または0.01μg/mL未満のいずれかである。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。
【0067】
一部の実施形態では、個体の膀胱とは異なる第2の腫瘍部位における子宮頸がんであって、膀胱に転移している子宮頸がんを処置する方法であって、有効量の化学療法剤(ヌクレオシドアナログなど、例えばゲムシタビン)を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、例えば少なくとも約24時間、連続的に送達される、方法が提供される。一部の実施形態では、化学療法剤は、免疫原性である。一部の実施形態では、化学療法剤は、壊死イベントを誘導する。一部の実施形態では、個体が、膀胱に転移した、第2の腫瘍部位における子宮頸がんを有する場合、子宮頸部における第2の部位での腫瘍体積は、化学療法剤(ゲムシタビンなど)を用いて処置すると、少なくとも約5%、10%、1
5%、25%、30%、35%、40%、45%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%低減する。一部の実施形態では、子宮頸部における第2の部位での腫瘍細胞の成長は、化学療法剤(ゲムシタビンなど)を用いて処置すると、少なくとも約5%、10%、15%、25%、30%、35%、40%、45%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%低減する。一部の実施形態では、連続的送達の期間中の個体の血漿中の化学療法剤濃度は、送達期間中、約1μg/mL未満、例えば約0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02、または0.01μg/mL未満のいずれかである。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。
【0068】
本明細書に記載される方法における化学療法剤は、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、例えば、少なくとも約2、3、4、5、6、または7日間のいずれかを含む、少なくとも約24時間連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、7日間またはそれ未満、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約7日間~約3週間の期間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤(ゲムシタビンなど)は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤(ゲムシタビンなど)は、少なくとも24~48時間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤(ゲムシタビンなど)は、少なくとも約2~4、4~8、5~10、7~14または18~24日間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、連続的送達の期間中の個体の血漿中の濃度は、送達期間中、約1μg/mL未満、例えば約0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02、または0.01μg/mL未満のいずれかである。一部の実施形態では、連続的送達期間中の、個体の尿中の化学療法剤の、血漿中の化学療法剤に対する比は、送達期間中、約500:1より大きい。本明細書で論じられる連続的送達はまた、例えば、膀胱における化学療法剤の持続性レベルを維持するための規則的または不規則なパルスでの化学療法剤の送達を包含する。一部の実施形態では、個体における化学療法剤の尿レベルは、連続的送達期間にわたり、少なくとも約0.1μg/mLである。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。
【0069】
一部の実施形態では、この方法は、少なくとも2つの別々の連続的送達サイクルを含む。例えば、化学療法剤は、第1の期間、膀胱に連続的に送達され、その後、化学療法剤が送達されない休薬期間が続く。休薬期間後に、化学療法剤は、第2の期間、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、第1および第2の期間は、それぞれ約7日間~約3週間である。一部の実施形態では、休薬期間は、約7日間~約2週間である。一部の実施形態では、休薬期間は、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週間である。一部の実施形態では、休薬期間は約1~12週間である。一部の実施形態では、第1および第2の期間は、それぞれ約7日間~約2週間である。本明細書に記載される方法は、少なくとも2つの別々の連続的送達サイクルを含む場合、特に有効であり得る。理論によって束縛されないが、第1の送達期間は、自然免疫応答および適応免疫応答を引き起こすネオ抗原の提示を起こし得ると考えられている。第2の用量では、ネオ抗原が再び放出され、より強い免疫応答を起こす。一部の実施形態では、この方法は、誘導期間、休薬期間、および維持期間を含み、誘導期間および維持期間中の化学療法剤の尿濃度は少なくとも約0.1μg/mLであり、休薬期間中の化学療法剤の尿濃度は約0.01μg/mL未満(例えば、検出限界未満)である。一部の実施形態では、連続的送達の期間中の個体の血漿中の化学療法剤濃度は、送達期間中、約1μg/mL未満、例えば約0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02、または0.01μg/mL未満のいずれかである。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤
またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。
【0070】
一部の実施形態では、第1の時期は、約5~9または6~8日間である。一部の実施形態では、第1の時期は、少なくとも24または48時間である。一部の実施形態では、第1の時期は、48時間未満である。一部の実施形態では、第1の時期は、約7日間である。一部の実施形態では、第1の時期は、約14日間である。一部の実施形態では、第1の時期は、約24時間である。一部の実施形態では、第2の時期は、約5~9または6~8日間である。一部の実施形態では、第2の時期は、少なくとも24または48時間である。一部の実施形態では、第2の時期は、1.5、3、6、12、24または48時間未満である。一部の実施形態では、第2の時期は、約7日間である。一部の実施形態では、第2の時期は、約14日間である。一部の実施形態では、第2の時期は、約24時間である。一部の実施形態では、第1の時期は、第2の時期と同じである。一部の実施形態では、第1の時期は、第2の時期とは異なる。一部の実施形態では、休薬期は、少なくとも24または48時間である。一部の実施形態では、休薬期は、約7または14日間である。一部の実施形態では、休薬期間は、6、12、24または48時間未満である。一部の実施形態では、第1の用量は、第2の用量と同じである。一部の実施形態では、第1の用量は、第2の用量とは異なる。一部の実施形態では、第1の用量および/または第2の用量のそれぞれは、約1mg/日~約300mg/日(225mg/日など)である。
【0071】
本明細書に記載される方法に好適な他の投薬レジメンは、以下の特定のセクションにさらに記載されている。
【0072】
化学療法剤の連続的送達は、例えば、薬物溶液の膀胱灌流を介して、または膀胱壁に膀胱内で適用されたコーティング物質(例えば、ゲル)を介して、またはより詳細にさらに以下に記載の膀胱内送達デバイスを介することを含む、当技術分野で公知の種々の方法によって実行され得る。一部の実施形態では、化学療法剤は、灌流によって送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、例えば、米国特許公開第2008/0221557号に記載のように、マイクロチップによって送達される。
【0073】
一部の実施形態における、本明細書に記載される化学療法剤の送達は、膀胱内送達デバイスを使用して実行され得る。種々の膀胱内送達デバイスは、本明細書に記載されている。一部の実施形態では、膀胱内デバイスは、膀胱内挿入のために構成されたハウジングであって、化学療法剤を含む投薬形態を保持し、かつ下部尿路の尿路上皮癌を有する個体における、膀胱とは異なる部位における腫瘍転移または腫瘍の処置に有効な量で化学療法剤を放出するように構成されている、ハウジングを含む。一部の実施形態では、膀胱内薬物送達デバイスは、ハウジングであって、化学療法剤を含み、化学療法剤を制御可能に放出し、個体の膀胱においてデバイスを保持するように構成された保持形状と個体の尿道を通じたデバイスの通過のための配置形状との間で弾性的に変形可能であるハウジングを含む。一部の実施形態では、デバイスは、第1の壁(例えば、円柱状壁)および第2の壁(例えば、ディスク形状の壁)と境界を接する薬物リザーバー管腔を含み、第1の壁は、薬物に対して不透過性であり、第2の壁は、化学療法剤に対して透過性である。第1の壁が化学療法剤に対して不透過性であり、第2の壁が化学療法剤に対して透過性である一部の他の実施形態では、第1の壁および第2の壁は、互いに隣接し、一緒になって、薬物リザーバー管腔を規定する環状チューブを形成する。これらの実施形態の一部では、第2の壁は、第1の壁構造の長さの少なくとも一部分に延びる細片の形態である。一部の実施形態では、デバイスは、少なくとも2つの薬物リザーバー管腔を含み、一部の実施形態では、各リザーバーは、その内に含まれる異なる薬物を含む。一部の実施形態では、化学療法剤は、パルスで化学療法剤を送達するデバイスによって送達される。そのようなパルス投薬、段階的投薬、または間欠的投薬は、種々の膀胱内デバイス設計によって達成され得る。一部の実施形態では、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2010/03
31770号および米国特許公開第2017/0157360号に記載されているように、異なる用量の薬物は、例えば、それぞれがそれ自体会合した分解性時間調整膜(degradable timing membrane)を有する複数の開口部の使用により、それぞれ所定の時間にin vivoで薬物の放出を提供するように構成された別個のリザーバーにおいて提供され得る。
【0074】
化学療法剤は、望ましい薬物放出プロファイルに応じて、浸透圧によるかまたは拡散によってデバイスから放出され得る。一部の実施形態では、ハウジング中に含まれる化学療法剤(ゲムシタビンなど)は、非液体形態であり、例えば、非液体形態は、錠剤、顆粒、ペレット、半固体、粉末、カプセルおよびこれらの組合せからなる群から選択される。種々の非液体形態の薬物コアは、本明細書にさらに記載されている。
【0075】
一部の実施形態では、化学療法剤は、受動輸送を介してデバイスから送達される。一部の実施形態では、受動輸送は、促進輸送である。
【0076】
本明細書に記載される個体は、哺乳動物、好ましくはヒトであり得る。一部の実施形態では、個体は、全身的化学療法に不適切である。一部の実施形態では、個体は、損なわれた免疫系を有する。一部の実施形態では、個体は、化学療法的治療に対して耐性または化学療法的治療に不適切である。一部の実施形態では、個体は、他のがん免疫療法に対して耐性または他のがん免疫療法に不適切である。一部の実施形態では、個体は、低い好中球数を有する。一部の実施形態では、個体は、シスプラチンベースの組合せ治療に不適格である。一部の実施形態では、個体は、膀胱への事前の放射線治療を受けていない。一部の実施形態では、個体は、膀胱切除術を受けるのを嫌がるか、または膀胱切除術を受けることができない。一部の実施形態では、個体は、化学療法剤を用いた処置後に、膀胱切除術を受けてもよい。
【0077】
本明細書に記載される方法の有効性は、種々の方法によって評価され得る。例えば、腫瘍処置の方法に関して、方法の有効性は、個体の膀胱における第1の部位とは異なる第2の腫瘍部位における腫瘍成長または腫瘍縮小によって評価され得る。一部の実施形態では、方法の有効性は、1つまたは複数のマーカーのレベルに基づいて評価される。例えば、方法の有効性は、個体のTGF-ベータまたはIL-10のレベルに基づいて決定され得る。一部の実施形態では、方法の有効性は、免疫細胞集団の数に基づいて評価される。例えば、方法の有効性は、個体の膀胱における第1の部位とは異なる第2の腫瘍部位における、調節性T細胞のレベルに基づいて決定され得る。一部の実施形態では、CD4+(ヘルパー)T細胞のレベルが測定され得る。一部の実施形態では、CD8+(細胞傷害性)T細胞のレベルが測定され得る。一部の実施形態では、脾臓において免疫細胞の数が測定される。一部の実施形態では、方法の有効性は、個体の膀胱における第1の部位とは異なる第2の腫瘍部位における腫瘍体積に基づいて評価される。一部の実施形態では、方法の有効性は、個体における循環腫瘍細胞の数に基づいて評価される。一部の実施形態では、方法の有効性は、尿中の化学療法剤およびその代謝産物の比に基づいて評価され得る。例えば、化学療法剤がゲムシタビンである場合、方法の有効性は、尿中の化学療法剤(例えば、ゲムシタビン)およびその代謝物(例えば、dFdU)の比に基づいて評価され得る。がん処置に関して、閾値未満の比は、有効性を示し得る。
【0078】
例えば、下部尿路の尿路上皮癌を有する個体において、膀胱とは異なる離れた部位における腫瘍を処置する方法であって、有効量の化学療法剤を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達され、免疫応答を示す1つまたは複数のサイトカインのレベルが処置すると変化する方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、処置中のサイトカインのレベルは、処置前のレベルと比較して変化する。一部の実施形態では、処置後のサイトカインのレベルは、処置前のレベ
ルと比較して変化する。一部の実施形態では、サイトカインのレベルは、処置を受けた個体において、処置を受けなかった個体と比較して変更される。一部の実施形態では、全身性TGF-βのレベルは、ゲムシタビンなどの化学療法剤を用いた処置中または処置後に低減する。一部の実施形態では、TGF-βのレベルは、化学療法剤を用いた処置後に、2、3、4、5、6、7、または10分の1に低減する。一部の実施形態では、全身性IL-10のレベルは、ゲムシタビンなどの化学療法剤を用いた処置中または処置後に増加する。一部の実施形態では、IL-10のレベルは、ゲムシタビンなどの化学療法剤を用いた処置中または処置後に、1、2、3、4、5、6、7、または10倍増加する。一部の実施形態では、TNF-αのレベルは、ゲムシタビンなどの化学療法剤を用いた処置中または処置後に、増加する。一部の実施形態では、TNF-αのレベルは、ゲムシタビンなどの化学療法剤を用いた処置中または処置後に、1、2、3、4、5、6、7、または10倍増加する。
【0079】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、有効量の化学療法剤を膀胱に局所的に送達するステップであって、化学療法剤は、少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される、ステップと、1つまたは複数のサイトカインのレベルを測定するステップとを含む。一部の実施形態では、IL-10のレベルが測定される。一部の実施形態では、TGF-βのレベルが測定される。一部の実施形態では、TNF-αのレベルが測定される。一部の実施形態では、サイトカインの循環レベルが測定される。一部の実施形態では、サイトカインの脾臓レベルが測定される。一部の実施形態では、末梢血、血清、または血漿におけるサイトカインのレベルが測定される。一部の実施形態では、サイトカインのレベルは、ELISA、フローサイトメトリー、またはラジオイムノアッセイを使用して測定される。
【0080】
下部尿路の尿路上皮癌を有する個体において、膀胱とは異なる離れた部位における腫瘍を処置する方法であって、有効量の化学療法剤を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達され、免疫細胞類のレベルは処置の際に変更される方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、免疫細胞類のレベルは、処置中に、処置前と比較して変更される。一部の実施形態では、免疫細胞類のレベルは、処置後に、処置前と比較して変更される。一部の実施形態では、免疫細胞類のレベルは、処置された個体において、処置されなかった個体と比較して変更される。一部の実施形態では、脾臓における免疫細胞類のレベルは、変更される。一部の実施形態では、末梢血試料中の免疫細胞類のレベルは、変更される。一部の実施形態では、CD4+/CD25+細胞などの活性化されたヘルパーT細胞のレベルは、ゲムシタビンなどの化学療法剤を用いた膀胱内処置中または処置後に増加する。一部の実施形態では、CD8+/CD25+細胞などの活性化された細胞傷害性T細胞のレベルは、ゲムシタビンなどの化学療法剤を用いた膀胱内処置中または処置後に増加する。一部の実施形態では、CD4+/FOXP3+および/またはCD8+FOXP3+細胞などの調節性T細胞のレベルは、ゲムシタビンなどの化学療法剤を用いた膀胱内処置中または処置後に増加する。
【0081】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、有効量の化学療法剤を膀胱に局所的に送達するステップであって、化学療法剤は、少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される、ステップと、1つまたは複数の免疫細胞集団のレベルを測定するステップとを含む。一部の実施形態では、CD4+/CD25+細胞などの活性化されたヘルパーT細胞の数が測定される。一部の実施形態では、CD8+/CD25+細胞などの活性化された細胞傷害性T細胞の数が測定される。一部の実施形態では、CD4+/FOXP3+および/またはCD8+FOXP3+などの調節性T細胞の数が測定される。一部の実施形態では、脾臓において免疫細胞の集団の数が測定される。一部の実施形態では、末梢血において免疫細胞の集団の数が測定される。一部の実施形態では、免疫細胞の集団の数がFACSによって測定される。
【0082】
一部の実施形態では、本明細書に提供される本発明は、放射線治療をさらに含む。一部の実施形態では、化学療法剤(ゲムシタビンなど)は、ネオアジュバント状況で送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、アジュバント状況で送達される。一部の実施形態では、方法は、手術を含む第3の治療をさらに含み、化学療法剤の個体への送達は、手術のときに、手術前に、または手術後に開始され得る。一部の実施形態では、化学療法剤の個体への送達は、膀胱鏡検査中に開始される。
A.患者集団
【0083】
本発明は一態様において、個体の膀胱における第1の腫瘍部位とは異なる第2の腫瘍部位において、腫瘍細胞成長を阻害する方法を提供する。本明細書で提供される方法は、膀胱がんを有するある範囲の個体の処置に有用である。一部の実施形態では、個体は、下部尿路の尿路上皮癌を有する。一部の実施形態では、個体は、膀胱に扁平上皮癌、肉腫様癌、または小細胞癌を有する。一部の実施形態では、個体は、乳頭状癌、微小乳頭状癌、または上皮内癌などの、下部尿路の尿路上皮癌の、組織学的バリアントサブタイプを有する。一部の実施形態では、個体は、移行上皮癌(例えば、微小乳頭状癌もしくは紡錘細胞癌)、リンパ上皮癌、シュミンケ腫瘍、または巨細胞癌などの下部尿路の浸潤性尿路上皮癌を有する。一部の実施形態では、個体は、移行上皮内癌、非浸潤性乳頭状移行上皮癌、低悪性度の乳頭状移行上皮新生物、または尿路上皮乳頭腫などの非浸潤性の尿路上皮新生物を有する。一部の実施形態では、個体は、扁平上皮癌、疣状癌、または扁平上皮乳頭腫などの扁平新生物を有する。一部の実施形態では、個体は、腺癌または絨毛腺腫などの腺新生物を有する。
【0084】
一部の実施形態では、個体は、以前に化学療法を受けている。一部の実施形態では、個体は、免疫調節療法に不適格である。
【0085】
一部の実施形態では、個体は、化学療法剤(chemotherapeutic)(ゲムシタビンなど)を膀胱に局所的に投与するステップを含む、ネオアジュバントシスプラチンベースの治療に適格ではない。一部の実施形態では、個体は、化学療法剤(ゲムシタビンなど)を膀胱に局所的に投与するステップを含む、ネオアジュバントシスプラチンベースの治療を拒絶する。一部の実施形態では、個体は、根治的膀胱切除術を受けるはずであるが、シスプラチンベースのネオアジュバント治療に不適格である。
【0086】
一部の実施形態では、個体は、一般状態不良、腎機能不良、難聴、末梢神経障害および心疾患を含む併存症に基づいて、シスプラチンベースの治療に不適格である。一部の実施形態では、個体は、例えば、リンパ脈管(lymphovascular)浸潤(LVI)、水腎症および随伴する上皮内癌(CIS)などの1つまたは複数の高リスク特色の非存在に基づいて、シスプラチンベースの治療に不適格である。
【0087】
一部の実施形態では、個体は、膀胱切除術に不向きであるかまたは適格ではない。一部の実施形態では、個体は、National Comprehensive Cancer Network (NCCN)ガイドラインの下で、根治的膀胱切除術に不適格である。例えば、個体は、虚弱性に起因して、治癒的治療に不向きである。本方法の前に、かかる個体は、典型的には、化学療法なしに緩和的放射線を受けた(3.5Gy/分割-10処置;もしくは7Gy/分割-7処置;TURBT;または処置なし)。一部の実施形態では、個体は、白金ベースの化学療法に不向きである。一部の実施形態では、放射線治療前の化学療法は、個体には推奨されない。一部の実施形態では、個体は、治癒的治療も全身的化学療法も受けない。一部の実施形態では、個体は、cT2~cT3の疾患を有する。
【0088】
一部の実施形態では、個体は、American Society of Anesthesiology(ASA)ガイドラインに基づいて、根治的膀胱切除術に耐えられない。例えば、根治的(radial)膀胱切除術に耐えられない個体は、全身麻酔または硬膜外麻酔を必要とする手術に医学的に不向きであるとみなされ得る。
【0089】
他の実施形態では、個体は、American Society of Anesthesiologistsによって提供されるComprehensive Geriatric Assessmentによって決定されるように、有効な術後ケアのインフラまたは人員が欠如している。これらのガイドラインの下で、個体は、日常生活の独立した活動の異常、重症栄養障害、認知障害、または老年医学のための累積疾患評価尺度(cumulative illness rating scale for geriatrics)(CISR-G)グレード3~4の併存症を示す場合、虚弱とみなされる。さらに、現行のガイドラインの下で、対象は、膀胱切除術に関する現行の手順の専門用語コード51595または51596を使用して、American College of Surgeonsリスク計算表により推定して、5%以上の死亡率のリスクを伴う併存症状態に起因して、根治的膀胱切除術(RC)に不向きであるとみなされなければならない。
【0090】
一部の実施形態では、膀胱がんは、化学療法剤(ゲムシタビンなど)の投与前に切除される。一部の実施形態では、個体は、膀胱への化学療法剤(ゲムシタビンなど)の投与前にTURBTを受ける。一部の実施形態では、腫瘍は、視認できる腫瘍が存在しないように、ゲムシタビンの投与前に最大限切除される。一部の実施形態では、腫瘍は、ゲムシタビンの投与前に最大限ではなく切除される。一部の実施形態では、腫瘍は、残留腫瘍が存在するように、ゲムシタビンの投与前に最大限ではなく切除される。一部の実施形態では、患者は、TURBT後にT0である。
【0091】
一部の実施形態では、個体はTURBTを受け、切除の部位に残留腫瘍を有し、残留腫瘍の量は、免疫応答を誘発する腫瘍抗原を提供するのに十分である。一部の実施形態では、元の腫瘍量の約1/2、1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/8、1/9、1/10、1/20、1/50、1/100が、TURBT後に残存する。一部の実施形態では、元の腫瘍量の少なくとも1/2、1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/8、1/9、1/10、1/20、1/50、1/100が、TURBT後に残存する。一部の実施形態では、個体は、TURBT後に、ステージTa、Tis、T1、T2、T2a、T2b、T3、T3a、T4、T4a、またはT4bのがんを有する。一部の実施形態では、残留腫瘍の十分量は、膀胱とは異なる部位において、免疫応答を誘発するのに十分な量である。免疫応答の誘発は、上記の通りサイトカイン(IL-10、TGFβ、もしくはINFγなど)または免疫細胞の集団(調節性T細胞、活性化されたCD4+Tヘルパー細胞、または活性化されたCD8+細胞傷害性T細胞など)の増加/減少によって決定され得る。
【0092】
本発明はまた、全身的化学療法またはホルモン療法に適格ではない個体に有用であるという利点も有する。一部の実施形態では、個体は、全身的化学療法またはホルモン療法に適格であるが、全身的化学療法またはホルモン療法を受けないことを選択する。一部の実施形態では、個体は、高齢の、相対的に虚弱な集団(70歳よりも上など)に属する。一部の実施形態では、個体は、少なくとも60、65、70、75、80、85または90歳である。一部の実施形態では、個体は、約20~60歳である。
【0093】
本発明はまた、膀胱がんを有しかつ放射線治療に適格ではない個体に有用であるという利点も有する。一部の実施形態では、個体は、放射線治療に適格であるが、放射線治療を受けないことを選択する。一部の実施形態では、個体は、放射線治療を受けない。
B.投薬レジメン
【0094】
以下のセクションは、投薬および処置のレジメンの種々の態様(実施形態)を記載し、その全てがもれなく、本明細書に記載される方法に適用される。
【0095】
一部の実施形態では、膀胱に腫瘍を有する個体において、膀胱とは異なる部位における腫瘍転移を処置する方法であって、a)化学療法剤(ゲムシタビン)の膀胱への局所的かつ連続的送達の第1の時期;b)休薬期間;およびc)同じ化学療法剤の膀胱への局所的かつ連続的送達の第2の時期を含む方法が提供される。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。
【0096】
一部の実施形態では、膀胱に腫瘍を有する個体において、膀胱とは異なる部位における腫瘍転移を処置する方法であって、化学療法剤(ゲムシタビン)を連続的に少なくとも3週間、膀胱に投与するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、化学療法剤(ゲムシタビン)は、約12週間、膀胱に局所的に投与される。
【0097】
一部の実施形態では、個体の尿中の化学療法剤の濃度は、休薬期間中、約0.1μg/mL未満である。
【0098】
一部の実施形態では、化学療法剤の投薬または放出の速度は、異なる送達期間中、同じであるかまたは異なってもよい。例えば、一部の実施形態では、化学療法剤(ゲムシタビンなど)は、少なくとも1ヶ月にわたり連続的に送達され、化学療法剤送達期間は少なくとも1日であり、化学療法剤(ゲムシタビンなど)送達期間の間の間隔は、約1週間以下である。一部の実施形態では、この方法は、a)個体の尿中の化学療法剤の濃度が少なくとも約0.1μg/mLである、第1の化学療法剤(ゲムシタビンなど)送達期間(7日間など);b)休薬期間(14日間など);およびc)個体の尿中の化学療法剤の濃度が約0.1μg/mLよりも高い、第2の同じ化学療法剤(ゲムシタビンなど)送達期間(7日間など)を含む。これらの実施形態の一部では、第1の化学療法剤送達期間は7日間であり、休薬期間は14日間であり、第2の化学療法剤送達期間は7日間である。一部の実施形態では、化学療法剤は、処置レジメンの1~7日目および21~28日目に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、1~14および22~34日目に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、1~6、1~5、または1~4日目におよび21~27、21~26または21~25日目に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、1~14および28~41日目に送達される。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。
【0099】
実施形態の一部では、第1および第2の送達期間は、両方とも3週間である。一部の実施形態では、第1および第2の送達期間は、両方とも14~21日間である。一部の実施形態では、第1および第2の送達期間は、両方とも14日間である。一部の実施形態では、化学療法剤は、6週間の期間にわたり、複数回送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、12週間の期間にわたり、複数回送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、12週間の期間にわたり、4回、それぞれ約14日間送達される。
【0100】
化学療法剤は、一部の実施形態において、特定の期間、膀胱内に連続的に送達される。例えば、一部の実施形態では、化学療法剤は、少なくとも約24時間(少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、または30日間など)、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、約1、2、3、4、5、6、または7日間、膀胱に連続的に送達される。
【0101】
一部の実施形態では、化学療法剤は、反復してより少ない用量を送達することによって、約24時間またはそれよりも長く連続的に送達されてもよい。例えば、化学療法剤は、約24時間またはそれよりも長い過程にわたり、約1、2、5、10、20、または30分の間隔で反復して送達されてもよい。これらの実施形態の一部では、化学療法剤は、電子デバイスを使用して薬剤を膀胱内に規則的な間隔でポンピングして送達され得る。例えば、液体薬物源および個体の膀胱内に配置される遠位末端を有する経尿道的カテーテルを操作可能に連結している外部ポンプは、化学療法剤の間欠的またはパルス送達を提供するようにプログラムされ得る。
【0102】
化学療法剤を、1回よりも多く、膀胱に局所的に連続的に送達することは有利であり得る。例えば、一部の実施形態では、化学療法剤は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、または少なくとも10回、個体の膀胱に局所的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、または少なくとも12週間の期間にわたり、複数回送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、または少なくとも18ヶ月間の期間にわたり、複数回送達される。例えば、一部の実施形態では、化学療法剤は、2回、3回、4回、5回、または10回、個体の膀胱に局所的に送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、1ヶ月間、1ヶ月間~18ヶ月間、2ヶ月間~18ヶ月間、3ヶ月間~18ヶ月間、1ヶ月間~6ヶ月間、または1ヶ月間~2ヶ月間の期間にわたり、複数回送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、膀胱に局所的に4回送達される。これらの実施形態の一部では、化学療法剤は、個体の膀胱に局所的に4回送達され、各化学療法剤送達期間は、3週間である。これらの実施形態の一部では、化学療法剤は、個体の膀胱に局所的に4回送達され、各化学療法剤送達期間は、2週間である。
【0103】
一部の実施形態では、化学療法剤は、約12週間、個体の膀胱に局所的に送達される。一部の実施形態では、第1の送達期間は約12週間である。一部の実施形態では、この方法は、約12週間の第1の送達期間、続いて1つまたは複数の追加の送達期間を含み、それぞれが約1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、または12ヶ月間の休薬期間によって間が開けられている。一部の実施形態では、化学療法剤は、年1回、例えば、維持期中に送達される。
【0104】
一部の実施形態では、化学療法剤は、少なくとも1ヶ月間にわたり連続的に複数回送達され、各化学療法剤送達期間は少なくとも1日である。一部の実施形態では、化学療法剤は、少なくとも1ヶ月間の期間にわたり、少なくとも2回送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、少なくとも1ヶ月間の期間にわたり、少なくとも3回送達される。一部の実施形態では、化学療法剤は、少なくとも2ヶ月間の期間にわたり、少なくとも4回送達される。一部の実施形態では、化学療法剤の各送達期間の間の間隔(休薬期間)は、約4週間以下、約3週間以下、約2週間以下、または約1週間以下である。一部の実施形態では、化学療法剤は、少なくとも(a least)1ヶ月間にわたり送達され、化学療法剤の各送達期間は、少なくとも1日であり、各送達期間の間の間隔(休薬期間)は約1週間以下である。一部の実施形態では、各送達期間の間の間隔(休薬期間)は、約3~50日間、3~30日間、5~20日間または8~15日間である。一部の実施形態では、休薬期間は、最大で約4ヶ月間(例えば、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、または4ヶ月間)である。
【0105】
一部の実施形態では、この方法は、(i)化学療法剤放出用の膀胱内デバイスを個体の膀胱中に配置するステップを含み、デバイスは、膀胱中に7日間残存し、ゲムシタビンは
、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、個体における筋浸潤性膀胱がんを処置する方法であって、(i)化学療法剤放出用の膀胱内デバイスを個体の膀胱中に配置するステップを含み、デバイスは、膀胱中に7日間残存し、化学療法剤放出用の膀胱内デバイスは化学療法剤を受動的に送達する、方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、個体における筋浸潤性膀胱がんを処置する方法であって、(i)0日目に、第1の化学療法剤放出用の膀胱内デバイスを個体の膀胱中に配置するステップ、(ii)7日目に、第1の化学療法剤放出用の膀胱内デバイスを除去するステップ、(iii)21日目に、第2の化学療法剤放出用の膀胱内デバイスを個体の膀胱中に配置するステップ、および(iv)28日目に、第2の化学療法剤放出用の膀胱内デバイスを除去するステップを含む方法が本明細書で提供される。これらの実施形態の一部では、化学療法剤は、ゲムシタビンであり、第1および第2の化学療法剤放出用の膀胱内デバイスの1つまたは両方が、膀胱への配置前に225mgのゲムシタビンを含む。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。
【0106】
一部の実施形態では、この方法は、(i)化学療法剤(chemotherapy)放出用の膀胱内デバイスを個体の膀胱中に配置するステップを含み、デバイスは、膀胱中に21日間残存し、ゲムシタビンは、膀胱に連続的に送達される。一部の実施形態では、個体における筋浸潤性膀胱がんを処置する方法であって、(i)化学療法剤放出用の膀胱内デバイスを個体の膀胱中に配置するステップを含み、デバイスは、膀胱中に21日間残存し、化学療法剤放出用の膀胱内デバイスは化学療法剤を受動的に送達する、方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、個体における筋浸潤性膀胱がんを処置する方法であって、(i)0日目に、第1の化学療法剤放出用の膀胱内デバイスを個体の膀胱中に配置するステップ、(ii)21日目に、第1の化学療法剤放出用の膀胱内デバイスを除去するステップ、(iii)21日目に、第2の化学療法剤放出用の膀胱内デバイスを個体の膀胱中に配置するステップ、および(iv)42日目に、第2の化学療法剤放出用の膀胱内デバイスを除去するステップを含む方法が本明細書で提供される。これらの実施形態の一部では、化学療法剤は、ゲムシタビンであり、第1および第2の化学療法剤放出用の膀胱内デバイスの1つまたは両方が、膀胱への配置前に225mgのゲムシタビンを含む。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。
【0107】
化学療法剤は、単一の放出速度で、または異なる時点において異なる放出速度で、送達され得る。例えば、一部の実施形態では、化学療法剤は、送達の第1の時期において第1の放出速度で送達され、その後、第2の放出速度を有する送達の第2の時期が続く。一部の実施形態では、第1の放出速度は、第2の放出速度より速い(例えば、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍速い)。一部の実施形態では、第1の速度は、第2の放出速度より遅い(例えば、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍遅い)。
【0108】
一部の実施形態では、この方法は、第1の用量が誘導期間に使用される第1の化学療法剤送達期間および第2の用量(即ち、追加投与量)が維持期間に使用される第2の化学療法剤送達期間を含む。一部の実施形態では、第1の用量(基礎投与量)は、第2の用量(追加投与量)とは異なる。
【0109】
一部の実施形態では、化学療法剤は、約1mg/日~約300mg/日、例えば、約1mg/日~約5mg/日、約5mg/日~約10mg/日、約10mg/日~約50mg/日、約50mg/日~約100mg/日、約100mg/日~約225mg/日(例えば、約140mg、約160mg、約180mg、約200mg、もしくは約220mg)または約200mg/日~約300mg/日のいずれかなどの用量(即ち、放出速度)で送達される。一部の実施形態では、約100mg~約500mgのゲムシタビンが、個体に送達される。一部の実施形態では、約100mg~約200mgのゲムシタビンが、
個体に送達される。一部の実施形態では、約160mgのゲムシタビンが、7日間にわたり個体に送達される。一部の実施形態では、約100mg~約200mgのゲムシタビンが、7日間にわたり個体に送達される。一部の実施形態では、約200mg~約225mgのゲムシタビンが、21日間にわたり個体に送達される。一部の実施形態では、約225mgの化学療法剤が、21日間にわたり個体に送達される。一部の実施形態では、225mgのゲムシタビンが、7日間にわたり個体に投与される。一部の実施形態では、225mgのゲムシタビンが、21日間にわたり個体に投与される。
【0110】
一部の実施形態では、尿中の化学療法剤(ゲムシタビンなど)の濃度は、送達期間中、約0.1μg/mL~約200μg/mL、例えば、約0~0.5、0.5~1、1~2、2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~20、20~30、30~40、40~60、60~80、80~100、100~150、または150~200μg/mLのいずれかである。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤濃度は、連続的送達の期間中、約1μg/mL未満、例えば約0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02、または0.01μg/mL未満のいずれかである。一部の実施形態では、個体の血漿中の化学療法剤またはその活性代謝物の濃度は、送達期間中、治療量以下のレベルである。一部の実施形態では、化学療法剤の送達の際に、連続的送達期間中の、個体の尿中の化学療法剤の、血漿中の化学療法剤に対する比は、約500:1より大きい。これらの実施形態の一部では、化学療法剤は、ゲムシタビンである。一部の実施形態では、dFdUの血漿濃度は、化学療法剤の送達の際に0.3μg/mL未満である。一部の実施形態では、dFdUの血漿濃度は、ゲムシタビンの送達の際に0.2μg/mL未満である。一部の実施形態では、dFdUの血漿濃度は、化学療法剤の送達の際に0.1μg/mL未満である。一部の実施形態では、dFdUの血漿濃度は、ゲムシタビンの送達の際に0.1~0.3μg/mLの間である。
膀胱内デバイス
デバイス形状
【0111】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、膀胱内デバイスを使用して化学療法剤(ゲムシタビンなど)を投与することを含む。一部の実施形態では、膀胱内デバイスは、配置形状および保持形状を含む。例えばデバイスは、管腔(例えば尿道)を通じた個体の膀胱への挿入に適した相対的に真っ直ぐな、または解けた(uncoiled)形状(配置形状)と、膀胱内にデバイスを保持するために適した保持形状との間で弾性的に変形可能であってよい。本開示の目的のために、「相対的に広がった形状」、「相対的に高いプロファイル形状」または「保持形状」などの用語は、一般に、これらだけに限らないが膀胱内にデバイスを保持するために適したプレッツェル形状または他のコイル形状(例えば、二重卵形(bi-oval)または重複コイルを含む)を含む、意図する移植位置にデバイスを保
持するために適した任意の形状を示す。保持形状は、個体が排尿するときにデバイスが尿中に移動し、排泄されることがないようにする。同様に「相対的に低いプロファイル形状」または「配置形状」などの用語は、これらだけに限らないが、カテーテル、膀胱鏡または尿道に置かれる他の配置器具のワーキングチャネルを通じてデバイスを配置するために適した線状または細長く伸びた形状を含めて、身体、例えば膀胱に薬物送達デバイスを配置するために適した任意の形状を一般に示す。実施形態では、薬物送達デバイスは、自然に相対的に広がった形状を呈することができ、手動でまたは外部機器を用いて、身体への挿入のための相対的に低いプロファイル形状に変形されてよい。例えば外部機器は、経尿道挿入のために構成されたインサーターであってよい。膀胱内デバイスは、配置すると自発的にまたは自然に、身体での保持のための最初の相対的に広がった形状に戻る。一部の実施形態では、デバイスは、スプリング様に挙動し、圧縮負荷に応答して変形する(例えば、デバイスは配置形状に変形する)が、負荷が除去されると自発的に保持形状に戻る。
【0112】
一部の実施形態では、先の段落において記載された膀胱内デバイスの形状変化機能は、参照により本明細書に組み込まれる公開された出願US2012/0203203、US2013/0158675、US2015/0360012、US20150165177、US2015/0165178、US20160199544、WO2014/145638、WO2015200752、およびWO2011/031855に開示されたものなどの形状保持フレーム(即ち「保持フレーム」)をデバイス中に含むことによって提供されてよい。一部の実施形態では、デバイスは、弾性ワイヤー、例えばニチノールなどの超弾性合金であってよい保持フレームが固定された保持フレーム管腔を含んでよい。保持フレームは、先に組み込まれた出願において開示されたものなどの「プレッツェル」形状または別のコイル形状などの保持形状に自発的に戻るように構成されてよい。特に、保持フレームは、膀胱中など身体中にデバイスを保持できる。保持形状は、個体が排尿するときにデバイスが尿中に移動し、排泄されることがないようにする。例えば保持フレームは、デバイスが相対的に低いプロファイル形状で身体に導入されることを可能にし、デバイスが身体内では相対的に広がった形状に戻れるようにし、かつ排尿筋の収縮および排尿に伴う流体力などの予期される力に応答してデバイスが身体内で相対的に低いプロファイル形状を呈することを妨げる弾性限界および弾性率を有し得る。それによりデバイスは、配置されると偶発的な排出を制限または防止し、個体の膀胱内に保持され得る。
【0113】
一部の他の実施形態では、膀胱内デバイスの形状変化機能は、デバイスハウジングを少なくとも部分的に熱形状硬化(thermally shape set)弾性ポリマーで形成することに
よって提供され得る。
【0114】
デバイスボディー(即ちハウジング)を形成するために使用される材料は、配置形状および保持形状の間をデバイスが移動できるように、少なくとも部分的に弾性または可撓性であってよい。デバイスが保持形状にある場合、保持フレーム部分は、薬物リザーバー部分内に置かれる傾向にあり得るが、他の場合に保持フレーム部分は薬物リザーバー部分の内部、外部、上または下に位置していてもよい。デバイスボディーを形成するために使用される材料は、水透過性であってよく、そのため可溶化流体(例えば尿)は、デバイスが膀胱内に配置されると薬物リザーバーに含有されている化学療法剤、免疫調節性薬剤、追加的治療剤、機能的薬剤またはこれらの組合せの非液体形態を可溶化するように薬物リザーバー部分に進入できる。例えば、シリコーンまたは別の生体適合性エラストマー性材料は使用されてよい。他の実施形態では、デバイスボディーは、少なくとも部分的に、水不透過性材料で形成されてよい。
【0115】
一部の実施形態では、デバイスボディーは、弾性の、生体適合性ポリマー材料で作られる。材料は、非吸収性または吸収性であってよい。非吸収性材料の例として、ポリ(エーテル)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(ビニルピロリドン(pyrolidone))、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ウレタン)、セルロース、セルロースアセテート、ポリ(シロキサン)、ポリ(エチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)および他のフッ素化ポリマー、ならびにポリ(シロキサン)から選択される合成ポリマーが挙げられる。吸収性材料、具体的な生分解性または生体侵食性ポリマーの例として、ポリ(アミド)、ポリ(エステル)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(酸無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリホスファゼン、シュードポリ(アミノ酸)、ポリ(グリセロール-セバシン酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)(PC)誘導体、アミノアルコールベースポリ(エステルアミド)(PEA)およびポリ(クエン酸オクタン-ジオール)(POC)ならびに他の硬化性生体吸収型エラストマーから選択される合成ポリマーが挙げられる。PCベースポリマーは、エラストマー性特性を得るためにリシンジイソシナネートまたは2,2-ビス(e-カプロラクトン-4-イル)プロパンなどの追加的な橋架け剤を必要とする場合がある。共重合体、混合物および上記材料の組合せも用いられて
よい。
【0116】
一部の実施形態では、デバイスボディーは、シリコーン、熱可塑性ポリウレタン、エチルビニルアセテート(EVA)、またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、デバイスボディーは、2つの異なる熱可塑性材料を含み、その1つは親水性熱可塑性ポリウレタンで、薬物透過性であり、他方は薬物不透過性である。薬物不透過性材料は、親水性ポリウレタン、親水性ポリエステルおよび親水性ポリアミドからなる群から選択されてよい。デバイスボディーは、1つまたは複数のこれらの材料を使用して、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2016/0310715号に記載の通り、押出または共押出工程によって形成された環状チューブを含んでよい。
薬物コア
【0117】
化学療法剤が膀胱内薬物送達デバイスから送達される実施形態では、薬物は、デバイスが薬物を膀胱中の流体(例えば、尿)に制御可能に放出する特定の機序に応じ得る、種々の形態でデバイス中に収容されてよい。一部の実施形態では、薬物は、有利にはデバイスが使用される前に薬物の安定保存を促進でき、有利には保存されるデバイスの薬物ペイロードが、薬物が液体溶液の形態で収容される場合に可能であるよりも小さな容量で保存することを可能にし得る、固体、半固体または他の非液体形態で提供される。一部の実施形態では、非液体形態は、錠剤、顆粒、ペレット、粉末、半固体(例えば、軟膏、クリーム、ペーストまたはゲル)、カプセルおよびこれらの組合せから選択される。一実施形態では、薬物は、米国特許第8,343,516号に記載のミニ錠剤などの複数の錠剤の形態である。
【0118】
例えば、化学療法剤は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液または乳液などの形態を取ってよく、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を含有してよい。あるいは、活性成分は、使用前の好適なビヒクル、例えば滅菌、発熱物質不含有水を用いた構成のために、滅菌固体の無菌単離によってまたは溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末形態であってよい。
【0119】
一実施形態では、化学療法剤(ゲムシタビンなど)は、デバイスハウジングの放出開口部からの可溶化化学療法剤(ゲムシタビンなど)の制御放出のための粘度増強剤を含む1つまたは複数の賦形剤を用いて製剤化される。別の実施形態では、デバイスリザーバーは、化学療法剤および粘度増強剤の両方を含むが、それらは共製剤化されず、代わりにリザーバー内の別個の領域内で、例えば別々の錠剤として提供される。これだけに限らないがポリエチレンオキシド(PEO)を含めた好適な粘度増強剤は、医薬品分野において公知である。実施形態の一部の変形では、粘度増強剤は、尿素または別の浸透剤と共に提供、例えば調合されてよい。
【0120】
一実施形態では、化学療法剤は、溶解度増強剤と共に個体に投与される。一実施形態では、溶解度増強剤は尿素である。一実施形態では、尿素は、錠剤または他の固体形態で提供され、膀胱内薬物送達デバイスの薬物リザーバー内に化学療法剤と共にロードされる。尿素は、デバイスに応じて、薬物リザーバー内の浸透圧の生成を促進する浸透剤としても機能する場合がある。特定の実施形態では、化学療法剤および浸透剤は、本明細書に参照により組み込まれるPCT WO2015/026813(Lee et al.)に記載の通り、薬物リザーバーの異なる領域内に位置を定められた別々の錠剤(または他の固体形態)として構成される。
【0121】
一部の実施形態では、デバイスは、薬物リザーバー管腔を含んでよい。これらの実施形態の一部では、各薬物リザーバー管腔は、1つもしくは数個の薬物錠剤、または他の固体薬物ユニットを保持してよい。一実施形態では、デバイスは、いくつかの別個の薬物リザ
ーバー管腔の中でミニ錠剤などの約10~100個の円柱状薬物錠剤を保持する。ある特定の実施形態では、ミニ錠剤は、約1.5~約3.1mmなどの約1.0~約3.3mmの直径および約2.0~約4.5mmなどの約1.5~約4.7mmの長さをそれぞれ有し得る。
薬物ハウジング
【0122】
本明細書に記載される膀胱内デバイスからの化学療法剤の放出は、異なる作用機序によって駆動および制御されてよい。種々の実施形態では、薬物は、薬物ハウジングの壁を通じた拡散によって、薬物ハウジングの壁の1つもしくは複数の規定の開口部を通じた拡散によって、薬物ハウジングの開口部を通じた浸透圧によって、1つもしくは複数の一過的に形成されたマイクロチャネルを通じた浸透圧によって、膀胱内の尿との接触での薬物製剤の浸食によって、またはこれらの組合せによって膀胱内薬物送達デバイスから放出されてよい。一部の実施形態では、薬物放出は、デバイスハウジングの一部を規定する薬物透過性ポリマーまたはマトリクスコンポーネントを通じた薬物拡散によって制御される。一実施形態では、デバイスは、薬物透過性ポリマーコンポーネントを含む。
【0123】
壁の厚さを含むハウジングのサイズは、とりわけ、含有される薬物(および機能的薬剤、ある場合)製剤(複数可)の容量、デバイスボディー/ハウジングからの薬物送達の所望の速度、身体内のデバイス移植の意図する部位、デバイスについての所望の機械的完全性、水および尿への所望の放出速度または透過性、初回放出の開始前の所望の誘導時間、ならびに身体への挿入の所望の方法または経路に基づいて選択されてよい。ハウジングがチューブである実施形態では、薄すぎるチューブ壁は十分な機械的完全性を有さない可能性がある一方で、厚すぎるチューブ壁はデバイスからの初回薬物放出のために望ましくない長い誘導時間を経る可能性があり、および/または尿道もしくは他の狭い身体管腔を通じた送達を可能にするための十分な可撓性を有さない可能性があることから、チューブ壁厚はチューブ材料の機械的特性および水透過性に基づいて決定されてよい。
【0124】
一部の実施形態では、ハウジングは、内径約2mm~約5mmを有する細長く伸びた環状チューブを含んでよい。薬物、およびある場合、機能的薬剤は、細長く伸びた環状チューブの内径と実質的に同じ直径を有する固体錠剤であってよい。一部の実施形態では、ハウジングは、薬物を含む1つまたは複数の第1のユニット(例えば、錠剤)、および薬物の放出を促進する機能的薬剤を含む1つまたは複数の第2のユニット(例えば、錠剤)を保持する。第1のユニット錠剤の1つまたは複数は、チューブの管腔の長さ約1cm~約3cmを充填し得、第2のユニット錠剤の1つまたは複数は、チューブの管腔の長さ約10cm~約15cmを充填し得る。一実施形態では、第1のユニット(複数可)の容量対第2のユニット(複数可)の容量の比は、約0.05~約0.5である。錠剤ペイロードの他の長さおよび比も想定される。
【0125】
一部の実施形態では、ハウジングは、壁厚0.2mmなどの壁厚0.1~0.4mmを有する細長く伸びた環状チューブであってよい。ハウジング材料は、1つまたは複数の生体適合性エラストマーを含んでよい。ハウジング材料は、ハウジングが25A、50A、65A、70Aまたは80Aなどの25A~80Aのデュロメーターを有するように選択されてよい。
【0126】
種々の実施形態では、膀胱内デバイスは、本明細書で提供される方法において記載される膀胱における尿中の薬物の治療有効濃度を維持する、膀胱における薬物の濃度を達成するように、薬物を持続的または間欠的に放出できる。ある特定の実施形態では、膀胱内デバイスは、化学療法剤を1mg/日~1000mg/日、例えば20mg/日~300mg/日または25mg/日~300mg/日の量で放出できる。ある特定の実施形態では、これらの放出速度は、本明細書に記載される処置期間にわたって提供される。ある特定
の実施形態では、これらの放出速度は、14日間~21日間の処置期間にわたって提供される。
浸透および拡散システム
【0127】
in vivo配置に続いてデバイスは、薬物を放出する。上に記載の通り、放出は、デバイスの内側と外側との間の浸透圧勾配、浸透圧力下でデバイスにおいて薬物が1つまたは複数のオリフィスまたは通過ポアを通過することによって、生じ得る。放出は、拡散によっても生じ得、それによって、薬物は、デバイス中の1つもしくは複数のオリフィスもしくは通過ポアを、および/またはデバイスの内側と外側との間の薬物濃度勾配のためにデバイスの薬物透過性壁を通過する。単一デバイス内でのこれらの放出様式の組合せは可能であり、一部の実施形態では、個々のいずれかの様式では容易に達成できない全体的な薬物放出プロファイルを達成するために好ましい。
【0128】
デバイスが薬物を固体形態で含む一部の実施形態では、デバイスからの薬物の溶出は、デバイス内の薬物の溶解に続いて生じる。体液がデバイスに進入し、薬物に接触し、薬物を可溶化し、その後溶解された薬物は、デバイスから拡散する、または浸透圧下もしくは拡散を介してデバイスから流れる。この「溶解された薬物」は、固体形態の薬物の実質的溶解後に残存する、懸濁液中の薬物のミクロおよびナノスケールの微粒子を含み得て、例えば、デバイスハウジング中の開口部を通して、デバイスから放出されることも可能である。例えば、薬物は、膀胱内の尿と接触すると可溶化され得る。ある特定の実施形態では、ハウジングの水透過性壁部分は水溶液中の薬物に透過性であり、その結果、可溶化された薬物が壁部分を介して放出され、それは、本明細書で「経壁拡散」とも称される。デバイスが、個体の膀胱において配置された後、尿は壁を通して透過し、リザーバーに進入し、化学療法剤、および存在する場合は機能的薬剤を可溶化する。一部の実施形態では、次いで薬物は、デバイスの内側と外側との間の薬物濃度勾配によって、制御された速度で壁を通じて直接拡散する。例えば、ハウジングおよび/または任意の水もしくは薬物透過性壁部分は、シリコーン、熱可塑性ポリウレタン、エチレン-co-ビニルアセテート(EVA)、またはこれらの組合せであってよい。
【0129】
一部の実施形態では、膀胱内デバイスは、225mgのゲムシタビンの単位濃度を含有できる。これらの実施形態の一部では、デバイスは、7日間にわたってまたは3週間にわたって、個体に約100~約225mgのゲムシタビン(例えば、約140mg、約160mg、約180mg、約200mgまたは約220mg)mgの化学療法剤を送達するように構成されてよい。
【0130】
特定の実施形態では、薬物送達デバイスは、両者とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2014/145638および米国特許公開第2016/0310715号に記載される、透過システムを含んでよい。一部の実施形態では、薬物送達デバイスは、第1の壁構造および親水性の第2の壁構造と境界を接する、閉じた薬物リザーバー管腔;ならびに薬物リザーバー管腔中に含有された化学療法剤を含む薬物製剤を有するハウジングを含み、第1の壁構造は水に対して透過性または不透過性および薬物に対して不透過性であり、第2の壁構造は化学療法剤に対して透過性である。
【0131】
一部の実施形態では、デバイスハウジングは、第1の壁構造としての役割を果たす第1の材料および第2の壁構造としての役割を果たす第2の材料から作製されているデバイスの薬物リザーバーの境界となってそれを規定している壁を有し、それにより薬物放出は基本的に第2の材料を通じてだけ生じる。一実施形態では、デバイスは、開口部を含まず;薬物放出は第2の壁構造を通じた拡散によってのみである。本明細書において使用される場合の用語「薬物に対して不透過性」および「水に対して不透過性」は、治療放出期間にわたって壁構造を通じて薬物または水が基本的に放出されないような、薬物または水に対
して実質的に不透過性である壁構造を指す。膀胱での使用のために、患者への不快感および刺激を回避または緩和するためにデバイスが排尿筋収縮中に対応している(compliant
)こと(即ち、容易に曲がる、柔らかい感触)が望ましい。したがって、構築物の第1および第2の材料のデュロメーターは、設計検討事項であり、高デュロメーター材料の割合は、膀胱での対応性を適切に保ちながら所与のサイズのデバイスハウジングを構築することにおいて制限される場合がある。例えば、シリコーン管組織は50A~70Aのショア硬度を有する場合があるが、Tecophilic(商標)熱可塑性ポリウレタン(Lubrizol Corp.)は、80A~65Dなどの70Aより大きなショア硬度を有する場合がある。したがって、水膨潤親水性、薬物透過性の第2の材料からデバイス全体を作製するよりも、これら2つの異なるポリマー材料の組合せを利用することは有利である場合がある。
【0132】
第1および第2の壁構造の配置は、種々の形態を取り得る。ある特定の実施形態では、第1の壁構造は円柱状チューブであり、第2の壁構造は円柱状チューブの少なくとも一方の末端に配置された端壁である、または第1の壁構造と第2の壁構造とは互いに隣接し、一緒に円柱状チューブを形成する。即ち、薬物放出は、閉じたデバイスハウジングの部分を規定する薬物透過性コンポーネントを通じた薬物拡散によって制御される。薬物透過性壁構造は、デバイスからの制御された薬物拡散の所望の速度を提供するように位置を定められ、寸法を決められ、材料特性を有し得る。一実施形態では、薬物透過性壁は、チューブの末端またはその近くのチューブの管腔中に、必要に応じて内側のワッシャーと外側のワッシャーの間に挟まれるかたちで、安定化されたディスクを含んでよい。別の実施形態では、薬物透過性壁は、管状ハウジングの側壁の一部、または管状ハウジングの末端に位置を定められたエンドプラグの一部である。
【0133】
長さおよび幅、例えば水透過性材料で形成された壁部分は、デバイスハウジングによって規定されるリザーバーへの水流動の所望の速度を提供するように選択される。一実施形態では、水透過性壁部分の幅は、管腔軸に垂直な横断面で見た場合に壁を規定する弧の角度によって定量することができる。デバイスハウジングの水透過性領域(複数可)は、浸透水浸出の選択された面積、したがって速度をもたらすように、さらに好適な生体適合性エラストマーで形成されたデバイスの好適な全体的寸法および弾性を有利に維持するように制御されてよい。有利には、共押出工程によってデバイスハウジングを形成することによって、水透過性領域(複数可)の構造的多様性は、処理パラメーターの選択により従来の共押出装置を用いて作製し、それにより複数の構造のデバイス形状(device configuration)を費用効率良く製造する能力を有益に提供することができる。一部の実施形態で
は、水透過性領域(複数可)の長さは、デバイスの全長の一部のみにわたる。そのような実施形態では、したがって、長期間にわたって望ましいレベルでの薬物放出の速度を保ちながら、水透過性領域(複数可)のより大きな弧の角度を用い得る。
【0134】
一部の実施形態では、壁は、壁の周囲にわたって厚さが様々であってよい、例えば薬物透過性部分は薬剤不透過性部分の厚さより薄い厚さを有してよい。さらに、より薄い薬物透過性壁構造は、隣接する、より厚い薬物不透過性壁構造に対して種々の位置に配置されてよい。一部の実施形態では、薬物放出は、閉じたデバイスハウジングの部分を規定する薬物透過性コンポーネントを通じた薬物拡散によって制御される。薬物透過性壁構造は、デバイスからの制御された薬物拡散の所望の速度を提供するように位置を定められ、寸法を決められ、材料特性を有し得る。
【0135】
一部の実施形態では、薬物送達デバイスは、互いに隣接し、一緒に薬物リザーバー管腔を規定するチューブを形成する第1の壁構造および第2の壁構造を含むハウジング;ならびに薬物リザーバー管腔中に含有された薬物を含み、(i)第2の壁構造または、第1の壁構造および第2の壁構造の両方は、水に対して透過性である、(ii)薬物が第2の壁
構造を通じた拡散によってin vivoで放出可能であるように、第1の壁構造は薬物に対して不透過性であり、第2の壁構造は薬物に対して透過性である、(iii)第2の壁構造は、チューブの長軸方向に垂直の横断面でチューブの断面積の90パーセント未満を占める、(iv)ならびに第1の壁構造は、第1のポリウレタン組成物を含む。
【0136】
一部の実施形態では、デバイスは、第1の閉じた末端と第2の閉じた末端の間に延在する薬物リザーバー管腔;および薬物リザーバー管腔中に含有された薬物を有する細長く伸びた弾性ハウジングを含み、(i)ハウジングは、薬物に対して不透過性である第1の材料で全体が形成されている第1の環状セグメント、および薬物に対して透過性である第2の材料から少なくとも部分的に形成されており、第2の環状セグメント中の第2の材料を通じた拡散によってin vivoで薬物を放出するように構成された第2の環状セグメントを含む管状壁構造を含む、ならびに(ii)第1の環状セグメントは、一体に形成され、第2の環状セグメントの第1の末端に接続された第1の末端を有する。
【0137】
一部の実施形態では、薬物リザーバー管腔を規定する壁は、厚さが様々であってよい。異なる厚さの壁を有するハウジングは、ハウジングの可撓性、圧縮性または両方を改善できる。異なる壁厚は、薬物リザーバー管腔内の固体薬物ユニットを固定することに役立つ場合もある。
【0138】
一部の実施形態では、膀胱内デバイスボディー、またはハウジングは、組み立て工程の際に薬物ペイロードの薬物リザーバーへのロードに続く密封を必要とする開放部を(例えば、環状チューブの反対側の末端に)含んでよい。一体型ハウジングおよびモジュール式ハウジングユニットを含む、ハウジングのこれらの規定の開放部または末端のいずれかは、開放部を閉じることが所望の場合、密封されてよい。この密封は、密封物質または構造を用いて達成されてよい。密封構造は、とりわけ、ステンレス鋼などの金属、シリコーンなどのポリマー、セラミックもしくはサファイアもしくは接着剤またはこれらの組合せを含む生体適合性材料から形成されてよい。密封物質または構造は、生分解性または生体侵食性であってよい。一実施形態では、医療用グレードシリコーン接着剤または他の接着剤は、開放部に流体または実行可能な形態でロードされ、次いで、ハウジング開放部を密封するようにその中で硬化する。一部の実施形態では、ハウジングは、デバイスからの薬物の放出のための1つまたは複数の所定の開口部を含む。これらの薬物放出開口部は、密封された規定の開放部ではない。他の実施形態では、ハウジングは、所定の薬物放出開口部を含まない。
【0139】
一部の実施形態では、デバイスは、所定の薬物放出開口部(即ちオリフィス)を用いずに薬物を放出する。所定の薬物放出開口部を用いないデバイスからの薬物の放出は、拡散または浸透圧によって駆動され得る。そのような好適な「非オリフィス」放出システムの例は、参照により本明細書に組み込まれるPCT特許出願公開第WO2014/144066号(TB130)および米国特許出願公開第2014/0276636号(TB134)に記載されている。
【0140】
一部の実施形態では、薬物送達デバイスは、本明細書に参照により組み込まれる米国特許公開第2016/0199544号、米国特許第8,679,094号および米国特許公開第2016/0008271号に記載される浸透システムを含む。
【0141】
一部の実施形態では、デバイスは、リザーバーを規定するハウジング;薬物を含む、リザーバー内に含有される第1のユニット;およびハウジングからの薬物のin vivo放出を促進する機能的薬剤を含む、第1のユニットとは別個の位置でリザーバー内に含有される第2のユニットを含む。一部の実施形態では、第1のユニットは少なくとも1つの薬物(例えば、ゲムシタビンなどの化学療法剤)を含む1つまたは複数の固体錠剤を含み
、第2のユニットは1つまたは複数の固体錠剤(例えば、尿素などの浸透剤を含む)を含む。一部の実施形態では、ハウジングは、第1および第2のユニットの全ての固体錠剤が整列して含有された管腔(即ち、リザーバー)を有する細長く伸びたエラストマー性チューブの形態である。固体錠剤の直径は、管腔の直径と実質的に同じであってよい。
【0142】
浸透放出が所望の薬物放出様式である場合、第2のユニット中の機能的薬剤は、薬物の浸透放出を促進する浸透剤を含んでよい。例えば、浸透剤は、浸透剤が可溶化および/または続く薬物の放出を促進するように、薬物より高い溶解度を有してよい。これは、浸透送達に基づくデバイスから、典型的には拡散を介してだけ送達される低溶解度の、または他の薬物の送達を有利に可能にする。デバイスは、浸透圧勾配を達成するために十分な容量の機能的薬剤および/または薬物が可溶化される間に誘導期間を示してよい。
【0143】
次に、デバイスは、長期間のゼロ次放出速度に続いて、減衰期間にわたる低減された、非ゼロ次放出速度を示してよい。所望の送達速度は、これらだけに限らないが、水透過性壁の表面面積および厚さ;壁を形成するために使用される材料の水への透過性;開口部の形状、サイズ、数および配置;ならびに薬物および機能的薬剤の溶解プロファイルを含めたデバイスの種々のパラメーターを制御すること/選択することによって達成できる。
【0144】
本明細書に記載されるデバイスは、拡散を介して、単独でまたは浸透放出と組み合わせて薬物を放出するように構成されてもよい。デバイスは、可溶化された薬物がハウジングの一部またはその1つもしくは複数の開口部を通じて通過できるように構成されてよい。
【0145】
あるいは、または水透過性壁部分と組み合わせて、ハウジングはin vivoでリザーバーに流体が進入できるように構成された少なくとも1つの開口部を含んでよい。ハウジングは、可溶化された薬物がそれを通過できるように構成された1つまたは複数の開口部または通過ポアも含んでよい。
【0146】
浸透システムの一部の実施形態では、デバイスハウジングは、水透過性である第1のエラストマー性材料および水不透過性である第2のエラストマー性材料を含み、両材料はハウジングに含有される薬物に対して不透過性であるように選択される。
【0147】
図5A~5Cは、本明細書に記載される方法において有用な膀胱内デバイスの一実施形態を例示する。デバイス100は薬物リザーバー部分102および保持フレーム部分104を含む。図5Aでは、デバイス100は、個体の膀胱内での保持のために適した相対的に広がった形状で示されている。図5Cでは、デバイス100は、例えば患者の尿道へのおよび尿道を通る、ならびに膀胱への挿入のための、膀胱鏡または他のカテーテルなどの配置器具200のワーキングチャネル202を通じた配置のための相対的に低いプロファイル形状で示されている。膀胱への配置(デバイスの放出)に続いて、デバイス100は膀胱内に薬物送達デバイスを保持するための相対的に広がった形状を呈し得る。例示される実施形態では、薬物送達デバイス100の薬物リザーバーおよび保持フレーム部分102、104は、長軸方向に整列され、一体で形成されるか、でなければそれらの長さに沿って互いに連結される。
【0148】
薬物送達デバイス100は、薬物リザーバー管腔108および保持フレーム管腔110を規定する弾性または可撓性デバイスボディー106を含む。薬物リザーバー管腔108は、薬物リザーバー部分102を形成するように複数の固体薬物ユニット112の形態である薬物(例えば、化学療法剤)を収容するように構成される。隣接する薬物ユニット112間に形成される間隙116または割れ目は、薬物ユニット112が互いに関して移動を可能にし、それによりデバイス100は、薬物が固体形態でロードされているにも関わらず可撓性である。保持フレーム管腔110は、保持フレーム部分104を形成するよう
に保持フレーム114を収容するように構成される。
【0149】
図5Bの横断面図に示す通り、デバイスボディー106は、薬物リザーバー管腔108を規定するチューブまたは壁122、および保持フレーム管腔110を規定するチューブまたは壁124を含む。チューブ122、124および管腔108、110は、実質的に円柱状であり、薬物リザーバー管腔108が保持フレーム管腔110より相対的に大きな直径を有していてよいが、他の形状は、例えば、送達される薬物の量、保持フレームの直径、および配置器具の内径などの配置の考慮事項に基づいて選択されてよい。デバイスボディー106は、成形または押出などを介して一体で形成されてよいが、チューブ122、124の別々の構築および組み立ては可能である。保持フレーム管腔110を規定する壁124は薬物リザーバー管腔108を規定する壁122の全長に沿って伸長してよく、そのため、示される通り、保持フレーム管腔110は薬物リザーバー管腔108と同じ長さを有するが、他の実施形態では、一方の壁は他方の壁より短くてよい。さらに、断続的な接着は用いられ得るが、例示される実施形態では、2つの壁122、124はデバイスの全長に沿って接着している。
【0150】
図5Aに示す通り、薬物リザーバー管腔108は、直列配置でいくつかの薬物ユニット112がロードされている。例えば、約20~約80個の間の薬物ユニット112などの約10~約100個の間の薬物ユニット112がロードされていてよい。薬物ユニットは、例えば、錠剤、ビーズまたはカプセルであってよい。本質的に任意の数の薬物ユニットが、リザーバーおよび薬物ユニットのサイズに応じて使用されてよい。薬物リザーバー管腔108は、薬物リザーバー管腔108の反対側の末端での相対的に円形の開放部として示される開放端130および132を含む。開放部の少なくとも1つは、デバイスのロードおよび組み立ての間に薬物リザーバー管腔108に入れられる薬物ユニット112の進入をもたらす。
【0151】
エンドプラグ120は、薬物ユニット112のロード後に開放部130および132を塞ぐ。エンドプラグ120は、円柱状であってよく、摩擦係合および/もしく接着または他の固定手段によって薬物リザーバー管腔108に固定されてよい。各エンドプラグ120は、例示される通り、薬物リザーバー管腔108から薬物を放出するための通路を提供するために開口部118を含む。一部の代替的実施形態では、エンドプラグの1つだけが開口部を含む。一部の他の代替的実施形態では、エンドプラグはいずれも開口部を含まず、これらの実施形態の一部では、チューブ壁122は、それを通じた薬物の放出のための規定の開口部を含む。
【0152】
保持フレーム管腔110には、図5Aに示される重複コイル形状に(熱的に)形状が硬化されるニチノールワイヤーなどの弾性ワイヤーであってよい保持フレーム114がロードされる。保持フレーム114は、デバイス100が相対的に低いプロファイル形状で身体に導入されることを可能にし、デバイス100が身体内では相対的に広がった形状に戻れるようにし、かつ排尿筋の収縮および排尿に伴う流体力などの予期される力に応答してデバイスが身体内で相対的に低いプロファイル形状を呈することを妨げる弾性限界および弾性率を有してよい。
浸食ベースのシステム
【0153】
低溶解度薬物を含む錠剤を使用する場合がある一部の実施形態では、薬物は、錠剤面を露出してデバイスに固定された錠剤形態で提供され、その結果、米国特許第9,107,816号に記載の通り、デバイスからの薬物の放出は、制御された浸食/溶解によって生じる。一部の実施形態では、デバイスは、モジュール式ハウジングを含んでよい。モジュール式ハウジングは、少なくとも2つの別々のハウジングユニットから典型的には形成され、各ユニットは少なくとも1つの固体薬物ユニットを収容する。各ハウジングユニット
を形成する材料は、固体薬物ユニットを収容できる少なくとも1つの薬物リザーバー管腔を規定する。薬物リザーバー管腔は、1つまたは複数の規定の開放部を有してよい。例えば、薬物リザーバー管腔は、それに収容される少なくとも1つの固体薬物ユニットの対応する反対側の末端表面を露出する、2つの対向する開放部を有してよい。ある特定の実施形態では、モジュール式ハウジング中の少なくとも2つの別々のハウジングユニットは、保持フレームによって直接または間接的に接続されている。一部の実施形態では、モジュール式ハウジングユニットは、「ブレスレット」デザインを形成するように保持フレーム上に置かれてよい。デバイスは、1つのハウジングユニットまたは複数のハウジングユニットを有してよい。ハウジングユニットの数は、それらが接続される保持フレームのサイズによってだけ限定され得る。
【0154】
一部の実施形態では、別々のハウジングユニットの1つまたは複数は、共有保持フレームがそれを通じて伸長される保持フレーム管腔を含む。ある特定の実施形態では、各ハウジングユニットの保持フレーム管腔および薬物リザーバー管腔は、互いに平行に配置されている。特定の実施形態では、各ハウジングユニットの保持フレーム管腔および薬物リザーバー管腔は、互いに垂直に配置されている。さらなる実施形態では、各ハウジングユニットの保持フレーム管腔および薬物リザーバー管腔は、5、10、30、45、60または85°などの0°(平行)および90°(垂直)以外の角度で配置されている。さらなる実施形態では、本明細書に記載されるデバイスは、次の形状(configuration):(1
)保持フレーム管腔および薬物リザーバー管腔が互いに実質的に平行に配置されている、(2)保持フレーム管腔および薬物リザーバー管腔が互いに実質的に垂直に配置されている、ならびに(3)保持フレーム管腔および薬物リザーバー管腔が0°(平行)および90°(垂直)以外の角度で配置されている、の少なくとも2つを含む2つまたはそれよりも多いハウジングユニットを含む。
一体型シリコーン薬物送達システム
【0155】
一部の実施形態では、デバイスは、本明細書にその全体が参照により組み込まれるWO2015/200752に記載される弾性ポリマー薬物マトリクスを含んでよい。
複数の放出部分を含むデバイス
【0156】
一部の実施形態では、デバイスは、少なくとも2つの薬物放出部分を含み、その全体が本明細書に参照により組み込まれるWO2011/031855に記載の通り、少なくとも1つの放出部分は別の放出部分とは異なる速度で薬物を放出する。放出部分は、とりわけ、異なる形状を有することによって、異なる薬物製剤を収容することによって、もしくは異なる放出機序を用いることによってまたはこれらの組合せで、異なる放出速度を達成できる。放出部分は、所望の放出プロファイルを達成するために組み合わされてよい。例えば、デバイスは、とりわけ、初回放出の開始前に異なる誘導時間もしくは遅滞時間を示す、放出開始後に異なる速度もしくは異なる放出曲線に従って薬物を放出する、または薬物ロードが実質的に使い果たされるまでに異なる期間にわたって薬物を放出する、またはこれらの組合せである放出部分を含んでよい。異なる放出部分は、全体としての薬物送達デバイスからの所望の放出プロファイル、例えば、比較的短い初期遅滞時間を示し、その後、長期間にわたって比較的一定速度での持続された放出を示す放出プロファイルを達成するように組み合わされてよい。
【0157】
一部の実施形態では、デバイスは、従来の薬物錠剤よりも小さなサイズであってよいいくつかの固体薬物錠剤の形態での薬物をロードされる。デバイスが身体への薬物の放出を制御することから、薬物それ自体は薬物放出を制御する賦形剤をほとんどまたは全く含まなくてよい。代わりに、薬物錠剤に存在する賦形剤は、主にまたは完全に、錠剤化工程またはin vivoでの可溶化を促進するために存在してよい。したがって、デバイスは容量または重量ベースで高薬物ペイロードを提供でき、さらにデバイスは、侵襲性が最小
限の方式でのin vivo配置のために十分に小さくてよい。
【0158】
薬物ハウジングは、移植としてまたはin vivo可溶化に続いて液体または半固体形態での薬物が出ていくこと(egress)も可能にする。壁は、その全長に沿って薬物ハウジングを通じた薬物流出を可能にする薬物透過性材料から形成されてよい。壁は、少なくとも部分的に薬物形態に応じて薬物に対して半透過性である材料から形成されてもよい。例えば、壁は、荷電形態などの1つの形態で薬物に対して透過性であってよいが、非荷電形態などの別の形態ではそうでなくてよい(例えば塩基形態対塩形態)。壁は、薬物が薬物ハウジングから出られるように、完全に壁を貫通して形成された1つまたは複数の開放部または通路を含んでもよい。
【0159】
薬物ハウジングは、直列配置で薬物ハウジング内に整列され、薬物ハウジングの反対側の末端の進入開放部を閉じるプラグなどの密封構造を用いて薬物ハウジング内に封入されているいくつかの固体薬物錠剤の形態で、薬物を収容してよい。隣接する薬物錠剤の間に形成された間隙または割れ目は、薬物錠剤を互いに関して移動できるようにし、そのためデバイスは固体形態で薬物をロードされているにもかかわらず可撓性である。
【0160】
薬物部分は、本明細書に記載の特徴または形状の任意の組合せを有してよく、開口部が提供され、省かれ、通過ポアで置換され、または追加的開口部もしくは通過ポアで増強されてよく;ハウジングはオープンセル構造またはクローズドセル構造を含む多孔性壁を有してよく;1つまたは複数の分解性時間調整構造または放出調節構造は、ハウジングを伴っていてよい、あるいはその任意の組合せを意味する。
【0161】
薬物錠剤は、薬物ハウジングの形状に応じて直列配置以外の任意の配置で整列されてよい。薬物錠剤は、例示される薬物ハウジング全体ではない薬物ハウジングの任意の部分を充填し得る。シリコーン接着剤などの充填材は、薬物錠剤がロードされていない薬物ハウジングの任意の部分を充填して使用されてよく、または空気が使用される場合があり、デバイスの浮力が増加される。薬物錠剤の組成は、同じであってよく、またはデバイスに沿って変化していてもよい。薬物は、他の液体、半固体または固体形態(例えば、顆粒)などの薬物錠剤以外の形態であってもよい。
【0162】
特定の実施形態では、薬物送達デバイスは、単一の保持部分を伴う少なくとも2つの別個のまたは分けられた薬物部分を含む。薬物部分はそれぞれ保持部分を伴う別々の薬物ハウジングであってよく、または薬物部分は保持部分を伴う単一の薬物ハウジング内の別々のエリアであってよい。
【0163】
各薬物部分は、薬物部分を第2の薬物部分から分離している、薬物ハウジングの壁の一部および少なくとも1つの仕切り構造によって規定されてよい。仕切り構造は、とりわけ、シリンダー、球またはディスクなどのハウジングに挿入されるプラグであってよく、そのサイズまたは接着剤を用いて適切な位置に固定される。仕切り構造は、成形によってなどそこで直接形成されたハウジングの一部であってよい。
【0164】
少なくとも2つの別個の部分を含むデバイスは、対応する数の薬物リザーバーからの少なくとも2つの薬物ペイロードの制御放出のために適し得る。2つの別個の部分は、本明細書に記載の通り、同じ形状または異なる形状を有していてよい。2つの薬物ペイロードは、とりわけ、活性成分含有量もしくは賦形剤含有量などの含有量;塩形態もしくは塩基形態などの形態;液体、半固体もしくは固体状態などの状態;またはこれらの組合せに関して互いに同じであってよく、または互いに異なっていてよい。したがって、2つの別個の部分は、2つの薬物ペイロードを同じ時間にもしくは異なる時間に、同じ速度でもしくは異なる速度で、同じ放出機序もしくは異なる放出機序を介して、またはこれらの任意の
組合せで放出できる。
【0165】
例えば、1つの薬物部分は移植後比較的速やかにその薬物ペイロードを放出するように構成されてよく、別の薬物部分は放出開始前に誘導時間を経るように構成されてよいし、またはこれらの組合せであってもよい。異なる薬物部分の2つのペイロードの放出開始は、段階的であってよい。急速放出薬物部分の例として、比較的薄い壁を有するシリコーン管組織などの比較的即効性の浸透ポンプとして作動する薬物部分、液体形態もしくは特別に製剤化された固体形態などの急速放出形態で薬物をロードされた薬物部分、比較的即効性の分解性時間調整構造を伴う薬物部分、またはこれらの組合せが挙げられる。したがって、デバイスは、初期急性期中および維持期中に薬物を放出できる。
【0166】
別の例として、1つの薬物部分は、その薬物ペイロードを他の薬物ペイロードよりも比較的速い速度で放出するように構成されてよい。例えば、1つの薬物部分は、移植後比較的速やかに開始される拡散性放出のために低水溶性で薬物ペイロードを収容してよく、別の薬物部分は、誘導期後の浸透放出のために高水溶性である薬物ペイロードを収容してよい。別の例として、1つの薬物部分は、即効性の分解性時間調整膜を有する開口部を通じた急速放出のための液体状態で薬物ペイロードを収容でき、別の薬物部分は、in vivoでの可溶化に続く緩徐放出のために固体錠剤の別の薬物ペイロードを収容できる。さらに別の例として、1つの薬物部分は比較的硬い壁を有してよい一方で、別の薬物部分は、拡散による放出速度を増加できるその壁を貫通するように形成された、いくつかの開口部もしくはポア、または壁を通じた水もしくは薬物の透過の増加により放出速度を増加させることができるクローズドセル多孔性壁を有してよい。
【0167】
放出部分は、所望の放出プロファイルを達成するように組み合わされてよい。例えば、デバイスは、とりわけ、初回放出の開始前に異なる誘導時間もしくは遅滞時間を示す、放出開始後に異なる速度もしくは異なる放出曲線に従って薬物を放出する、または薬物ロードが実質的に使い果たされるまでに異なる期間にわたって薬物を放出する、またはこれらの組合せである放出部分を含んでよい。異なる放出部分は、全体としての薬物送達デバイスからの所望の放出プロファイル、例えば、比較的短い初期遅滞時間を示し、その後、長期間にわたって比較的一定速度での持続された放出を示す放出プロファイルを達成するように組み合わされてよい。
【0168】
複数の異なる薬物部分を単一のデバイスに組み合わせることによって、デバイスは、化学療法剤の所望の放出プロファイルを示すことができる。全体としてのデバイスからの放出プロファイルは、別個の部分の放出プロファイルの合計であってよく、例えば、放出開始前の最小の遅滞時間を示す第1の部分、浸透圧勾配が発達する短い誘導期間を示す第2の部分、および分解可能構造が溶解または分解するために開始前のより長い遅延を示す第3の部分を含む。任意の1つの部分から放出が始まると、放出速度は長期間、相対的にゼロ次であってよく、減衰の期間が続く。3つの異なる部分は例であり、別個の部分の任意の数または組合せが所望の放出プロファイルを達成するために使用されてよいことは留意されるべきである。
【0169】
異なる薬物部分は、単一の管状ハウジング内で単に分けられたエリアであるため、デバイスは、構築および配置のために有利には相対的に単純であってよく、さらに異なる薬物部分は、異なる薬物ペイロード、開口部配置および分解性時間調整構造のために異なる放出プロファイルを示す。薬物部分が、例えば異なる材料、厚さまたは多孔性セル構造の壁を使用する他の実施形態では、ハウジングは、その長さが様々であってもよく、別々の薬物ハウジングが使用されてもよい。したがって、制御放出は、様々な方式で達成されてよい。
ゲル
【0170】
別の実施形態では、コーティング物質は、膀胱壁に(例えば、膀胱内の尿路上皮エリアに)膀胱内で適用されてよく、コーティング物質は、化学療法剤または他の薬物、およびコーティング物質の膀胱壁への接着性を促進し、処置期間にわたる薬物の持続的な制御放出を提供する1つまたは複数の賦形剤材料を含む。コーティング物質は、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、ペースト剤、フィルム剤、乳液ゲル剤、錠剤、ポリマー剤、またはこれらの組合せなどの粘膜付着性製剤であってよい。粘膜付着性製剤ポリマーとして、ハイドロゲルまたは親水性ポリマー、ポリカルボフィル(即ちカーボポールなど)、キトサン、ポリビニルピロリドン(PVP)、レクチン、ポリエチレングリコレート化ポリマー、セルロースまたはこれらの組合せが挙げられ得る。好適なセルロースとして、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒロドキシプロピルセルロース(HPC)またはこれらの組合せが挙げられる。コーティング物質は、透過増強剤を含んでよい。透過増強剤の非限定的な例として、ジメチルスルホキシド(DMSO)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、脂質、界面活性剤またはこれらの組合せが挙げられる。コーティング物質は、コーティング物質が膀胱壁に結合できるように膀胱内で配置されてよい。
【0171】
コーティング物質は、配置器具を使用して膀胱内で配置されてよい。配置器具は、意図する移植部位に達するように身体の天然の管腔を導くために設計された任意のデバイスであってよい。膀胱内での配置のために、配置器具は患者の尿道を通過して膀胱に至るためにサイズ決めされ形づくられる。配置器具は、カテーテルもしくは膀胱鏡などの公知のデバイスまたは特別に設計されたデバイスであってよい。配置器具は、身体内にコーティング物質を配置するために使用され、次に身体から除去され、コーティング物質全てが身体に移植される。そのように移植されると、コーティング物質は、長期間身体へ薬物を放出できる。同等の手順は、本明細書に記載のデバイスまたは薬物のいずれかを他の天然の管腔を通じて身体の他の部分に配置するために使用できる。例えば、配置器具は、尿道を通じて配置器具を通過させることによって液体薬物または薬物製剤を膀胱内に配置させるために使用できる。
例示的実施形態
実施形態1.下部尿路の尿路上皮癌を有する個体において、膀胱とは異なる部位における腫瘍転移を処置するかまたは抑制する方法であって、有効量の化学療法剤を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される、方法。
実施形態2.腫瘍転移部位が、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、骨盤リンパ節、腹膜、皮膚、前立腺、乳房、結腸、直腸、および子宮頸部の1つまたは複数におけるものである、実施形態1に記載の方法。
実施形態3.腫瘍転移が、2つまたはそれよりも多い異なる部位におけるものである、実施形態1または2のいずれか1つに記載の方法。
実施形態4.個体の膀胱における第1の腫瘍部位とは異なる第2の腫瘍部位において、腫瘍細胞成長を阻害する方法であって、有効量の化学療法剤を膀胱に局所的に送達するステップを含み、化学療法剤は、少なくとも約24時間、膀胱に連続的に送達される、方法。実施形態5.第2の腫瘍部位における腫瘍細胞が、骨盤リンパ節に位置する、実施形態4に記載の方法。
実施形態6.第2の腫瘍部位における腫瘍細胞が、遠位リンパ節に位置する、実施形態4に記載の方法。
実施形態7.第2の腫瘍部位における腫瘍細胞が、循環腫瘍細胞である、実施形態4に記載の方法。
実施形態8.第1の腫瘍部位における腫瘍細胞が、第2の腫瘍部位における原発腫瘍の転移に起因する、実施形態4に記載の方法。
実施形態9.第2の部位における腫瘍細胞が、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、骨盤リンパ
節、腹膜、皮膚、前立腺、乳房、結腸、直腸、および子宮頸部からなる群から選択される、実施形態8に記載の方法。
実施形態10.個体が、下部尿路の尿路上皮癌を有する、実施形態4から9のいずれか1つに記載の方法。
実施形態11.個体が、膀胱がんを有する、実施形態1から10のいずれか1つに記載の方法。
実施形態12.個体が、筋浸潤性膀胱がんまたは上皮内癌(CIS)を有する、実施形態11に記載の方法。
実施形態13.個体が、膀胱切除術に不向きであるかまたは膀胱切除術を拒絶する、実施形態11または12に記載の方法。
実施形態14.個体が、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けなかった、実施形態11から13のいずれか1つに記載の方法。
実施形態15.個体が、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けた、実施形態11から13のいずれか1つに記載の方法。
実施形態16.個体が、切除の部位に残留腫瘍を有する、実施形態15に記載の方法。
実施形態17.化学療法剤が、約7日間~約3週間の期間、個体の膀胱に連続的に送達される、実施形態1から16のいずれか1つに記載の方法。
実施形態18.誘導送達期間、続いて維持送達期間を含む、実施形態1から17のいずれか1つに記載の方法。
実施形態19.誘導送達期間および維持送達期間が、約7~約14日間の休薬期間によって間が開けられている、実施形態18に記載の方法。
実施形態20.化学療法剤が、誘導送達期間中に第1の放出速度で、続いて維持送達期間中に第2の放出速度で送達される、実施形態18に記載の方法。
実施形態21.化学療法剤が、約1mg/日~約300mg/日の用量で送達される、実施形態1から20のいずれかに記載の方法。
実施形態22.尿中の化学療法剤の濃度が、送達期間中、約0.1μg/mL~約200μg/mLである、実施形態1から21のいずれかに記載の方法。
実施形態23.a)個体の尿中の化学療法剤の濃度が少なくとも約0.1μg/mLである、誘導送達期間;
b)休薬期間;および
c)個体の尿中の化学療法剤の濃度が約0.1μg/mLよりも高い、維持送達期間
を含む、実施形態1から22のいずれか1つに記載の方法。
実施形態24.個体が、放射線治療を受けない、実施形態1から23のいずれかに記載の方法。
実施形態25.放射線治療をさらに含む、実施形態1から24のいずれか1つに記載の方法。
実施形態26.化学療法剤が、膀胱内送達デバイスによって送達される、実施形態1から25のいずれか1つに記載の方法。
実施形態27.膀胱内デバイスが、100mg~500mgの化学療法剤を含む、実施形態26に記載の方法。
実施形態28.膀胱内デバイスが、膀胱内挿入のために構成されたハウジング;および化学療法剤を含む投薬形態を含み、ハウジングが、投薬形態を保持し、化学療法剤を放出するように構成されている、実施形態26から27のいずれかに記載の方法。
実施形態29.膀胱内薬物送達デバイスが、
リザーバーを規定するハウジング;
リザーバー内に含まれる第1のユニットであって、化学療法剤を含む第1のユニット;および
第1のユニットとは異なる位置でリザーバー内に含まれる第2のユニットであって、ハウジングからの化学療法剤のin vivo放出を促進する機能的薬剤を含む第2のユニット
を含む、実施形態26から28のいずれか1つに記載の方法。
実施形態30.膀胱内薬物送達デバイスが、ハウジングであって、化学療法剤を含み、化学療法剤を制御可能に放出し、個体の膀胱においてデバイスを保持するように構成された保持形状と個体の尿道を通じたデバイスの通過のための配置形状との間で弾性的に変形可能であるハウジングを含む、実施形態26から29のいずれか1つに記載の方法。
実施形態31.デバイスが、第1の壁および第2の壁と境界を接する薬物リザーバー管腔を含み、第1の壁が、薬物に対して不透過性であり、第2の壁が、化学療法剤に対して透過性である、実施形態26から30のいずれか1つに記載の方法。
実施形態32.化学療法剤が、浸透圧によってデバイスから放出される、実施形態26から31のいずれか1つに記載の方法。
実施形態33.化学療法剤が、拡散によってデバイスから放出される、実施形態26から31のいずれか1つに記載の方法。
実施形態34.ハウジング中に含まれる化学療法剤が、非液体形態である、実施形態22から29のいずれかに記載の方法。
実施形態35.非液体形態が、錠剤、顆粒、粉末、半固体、カプセル、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態34に記載の方法。
実施形態36.化学療法剤が、ヌクレオシドアナログ、タキサン、白金ベースの薬剤、およびアントラサイクリンアナログからなる群から選択される、実施形態1から35のいずれか1つに記載の方法。
実施形態37.化学療法剤が、ヌクレオシドアナログである、実施形態1から36のいずれか1つに記載の方法。
実施形態38.ヌクレオシドアナログが、ゲムシタビンである、実施形態37に記載の方法。
実施形態39.個体が、ヒトである、実施形態1から38のいずれか1つに記載の方法。実施形態40.個体が、全身的化学療法に不適切である、実施形態1から39のいずれか1つに記載の方法。
実施形態41.個体が、損なわれた免疫系を有する、実施形態1から40のいずれか1つに記載の方法。
実施形態42.個体が、高い腫瘍負荷を有する、実施形態1から41のいずれか1つに記載の方法。
【実施例
【0172】
(実施例1)
標準化膀胱灌流システムを改変して、膀胱腫瘍および皮下腫瘍を導入した。カテーテルを膀胱内に配置することによって、膀胱を最初に外科的にカニューレ処置し、縫合糸を使用して適切な位置に固定し、自由端を肩甲骨間で露出させた。
【0173】
動物を治癒させた。腫瘍細胞懸濁液を膀胱壁に直接注射することによって、膀胱腫瘍を確立した。腫瘍細胞懸濁液を皮膚側腹部下に注射することによって、皮下腫瘍を確立した。
【0174】
本研究で使用した膀胱腫瘍および側腹腫瘍のモデルには、7~8週齢および体重150~200gの間の免疫適格性ウィスターラットを利用した。P50カテーテルを膀胱頂部内に配置することによって、膀胱を最初に外科的にカニューレ処置し、巾着縫合糸を使用して適切な位置に固定し、自由端を肩甲骨間で露出させた。図1を参照のこと。回復の際に、動物は、ケージ内を自由に動き回ることができ、動物の健康状態を毎日監視した。研究プロトコールに従って、膀胱カニューレ処置したラットの異なる群には、次にNBTII腫瘍細胞(Nara Bladder Tumor No.2;ATCC(登録商標)CRL1655(商標))を接種した。これは、元々は、N-ブチル-N-(4-ヒドロキシブチル)ニトロソアミンを用いて誘導された腫瘍に由来するラット同系膀胱腫瘍細胞
株である。ある特定の処置群では、腫瘍細胞を、およそ2×10細胞の50uLの細胞懸濁液として、膀胱壁に直接注射した。これらの処置群において、および膀胱腫瘍接種を受けなかった対照群において、およそ2.5×10を含有するおよそ50uLの腫瘍細胞懸濁液を、側腹部内にも皮下注射した。
【0175】
本研究は、図2に示す4つの処置群から構成された。
【0176】
1群(IVCなし SCTのみ、N=5)動物には、研究0日目に、NBTII腫瘍細胞を側腹部にのみ皮下接種した。膀胱カニューレ処置手順は実施しなかった。
【0177】
2群(対照、N=10)動物膀胱を、研究0日目にカニューレ処置した。研究17日目に、NBTII腫瘍細胞を側腹部内に皮下接種した。リン酸緩衝食塩水を、研究6日目に開始して毎時0.3mLの一定速度で5日間、20日目に再び開始してさらに5日の処置期間、カニューレを介して膀胱内に灌流した。
【0178】
3群(BT後にSCT、N=10)動物膀胱を、研究0日目にカニューレ処置し、研究4日目に膀胱にNBTII腫瘍細胞を接種した。研究17日目に、動物にまた、NBTII腫瘍細胞を側腹部内にも皮下接種した。PBS中のゲムシタビンHCl(180ug/mL)を、研究6日目に開始して毎時0.3mLの一定速度で5日間、20日目に再び開始してさらに5日の処置期間、膀胱カニューレを介して膀胱内に灌流した。
【0179】
4群(BTと共にSCT、N=10)動物膀胱を、研究0日目にカニューレ処置し、研究4日目に膀胱および側腹部の両方にNBTII腫瘍細胞を接種した。PBS中のゲムシタビンHCl(180ug/mL)を、研究6日目に開始して毎時0.3mLの一定速度で5日間、20日目に再び開始してさらに5日の処置期間、カニューレを介して膀胱内に灌流した。
【0180】
皮下腫瘍体積を、接種後の2日または3日毎に、カリパス法を使用して連続的に測定した。
【0181】
本研究の結果を、図3および4に要約する。皮下NBTII腫瘍のみを側腹部に接種した1群動物では、腫瘍移植率は100%であり、それは全処置群に対する率であった。最初の急速な成長期の後に、腫瘍は、研究の期間にわたり、相対的に一定した速度で成長した。腫瘍倍加速度は、およそ6~10日間であった。比較として、膀胱カニューレ処置、膀胱腫瘍接種および5日間の膀胱内のリン酸緩衝食塩水灌流後の、研究17日目に接種された皮下側腹腫瘍は、1群において観察された速度と極めて同様の速度で成長することが観察された。同様の成長速度により、膀胱カニューレ処置、膀胱内ビヒクル灌流および膀胱腫瘍の存在は、皮下腫瘍の成長特徴に影響を及ぼさなかったことが実証される。
【0182】
対照的に、膀胱腫瘍および皮下腫瘍を4日目に接種した場合または皮下腫瘍接種を研究17日目まで遅らせた場合、2回の5日間の処置サイクルにわたる膀胱内ゲムシタビン灌流は、皮下腫瘍成長に劇的かつ予想外の効果を示した。4日目に膀胱腫瘍および皮下腫瘍の両方を移植された4群の動物では、皮下腫瘍は、最初に予想通り成長することが観察された。予想外に、腫瘍成長は、第1の膀胱内灌流期間の最後までに、動物において劇的に減速するかまたは完全に停止した。その後の7日間の無薬物期間にわたり、全ての皮下腫瘍は、その最初の成長速度に戻ることができないか、または成長速度の増加のエビデンスを示すことができなかった。また、予想外に、第2の5日間の膀胱内ゲムシタビン処置を用いた膀胱腫瘍の再処置は、1つを除いて全ての腫瘍が触診によって検出されなくなるまで、腫瘍体積の急激な低下という結果をもたらした。
【0183】
研究17日目に皮下腫瘍を移植した3群動物では、膀胱腫瘍接種およびその後の第1の5日間の膀胱内ゲムシタビン灌流期間の14日後、第2のゲムシタビンの5日間灌流の開始は、予想外に、皮下腫瘍体積の顕著でかつ即時の低下という結果をもたらした。腫瘍体積における低下は、5日間の膀胱内ゲムシタビン灌流の間、全ての皮下腫瘍が触診によって検出されなくなるまで継続した。
【0184】
標準的な膀胱内ゲムシタビン処置は、典型的には、40mg/mLの注入(50mLの水中の2000mgのゲムシタビン)として調製される。本研究で使用される灌流液濃度は、およそ200分の1である。同様に、毎日の膀胱曝露の合計は1000分の1未満である。動物およびヒトにおける先行する研究により、低濃度の膀胱内ゲムシタビンは、全身的に治療的薬物濃度を生じないことが示された。その結果として、観察された皮下腫瘍応答は、全身性ゲムシタビン曝露によって説明することはできない。
【0185】
膀胱内処置時点の皮下腫瘍の年齢(age)または体積もまた、観察された皮下腫瘍応答
を予測しなかった。4群では、膀胱内ゲムシタビンを用いて最初に処置した動物における3日の皮下腫瘍は数日間成長し続けた後に停止した。対照的に、3群において第2の膀胱内ゲムシタビン処置を受けた動物における3日の皮下腫瘍は、腫瘍がもはや検出されなくなるまで、腫瘍体積が即時に低下した。
【0186】
理論によって束縛されないが、本研究結果により、免疫媒介性の効果が起こり得たことが示唆される。膀胱腫瘍のゲムシタビン膀胱内処置は、動物の免疫系を膀胱腫瘍に対して感作させた可能性がある。膀胱内ゲムシタビンを用いた膀胱腫瘍の再処置の際に、以前に感作されたかまたは予備刺激を受けた免疫系は、より強くかつより有効な免疫学的応答を開始し、組み合わせた3群と4群の腫瘍における1つを除いて全ての皮下腫瘍の完全根絶をもたらした。
【0187】
本結果により、化学療法剤を用いた膀胱腫瘍の連続した局所的処置が、遠位腫瘍の縮小および最終的除去をもたらし得ることが初めて示される。これは、ゲムシタビンなどの化学療法剤を用いた連続した局所的処置が、膀胱がんの転移、および膀胱に転移する他の原発腫瘍(例えば、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、または子宮頸がん)の両方を含む広範囲のがんの処置に有効であり得ることを示唆している。
(実施例2)
【0188】
ヒト由来のMIBC細胞、T24-TurboFP635を膀胱内に注射した無胸腺ラットにおいて、低用量ゲムシタビンの直接的効果を研究した。3日間の腫瘍成長後、ゲムシタビンまたはビヒクルを膀胱内に5日間にわたり灌流し、0、20、40、または80ug/mlのゲムシタビンの公称尿濃度を得た(1群当たりN=6)。腫瘍生物発光を5日目に測定した。同系NBTII膀胱腫瘍を接種した免疫適格性ラットにおけるコンパニオン研究は、免疫細胞分析用の腫瘍を提供した。
【0189】
T24腫瘍を有する無胸腺ラットでは、対照に対して、47.6%、70.5%および91.2%の膀胱腫瘍生物発光における有意な用量依存的低減が、20、40、および80ug/mlの群においてそれぞれ観察された。NBTII腫瘍を有する免疫適格性ラットから回収した残留腫瘍のフローサイトメトリー分析により、腫瘍T調節性細胞の、Tエフェクター細胞に対する比率において85.2%という有意な減少が実証された。
【0190】
NBTII細胞を膀胱および皮下側腹組織に注射した免疫適格性ラットにおいて、ゲムシタビン免疫原性を研究した;側腹腫瘍は、膀胱腫瘍と同時かまたは膀胱腫瘍注射の14日後のいずれかに移植された。対照群は、側腹腫瘍のみ、N=15、または膀胱腫瘍および側腹腫瘍を、ビヒクル灌流とともに受けた、N=10。ゲムシタビン処置群、N=10
は、2回の5日間の膀胱灌流を受け、7日間、間をあけて、10、20、および40ug/mlの尿ゲムシタビン濃度を得た。
【0191】
側腹腫瘍成長は、1.0、2.5、または5.0×10細胞の皮下注射後の、4.5日間の腫瘍倍化時間と同様であった。側腹腫瘍成長速度は、膀胱腫瘍伴いかつビヒクルを用いて灌流した対照ラットにおいて変化しなかった。第1のゲムシタビン灌流サイクル中に、側腹腫瘍成長は十分に停止され、腫瘍サイズは、膀胱腫瘍を伴うラットにおいて平均して対照のわずか50%であり;この効果は、60ug/ml群において、7日間の無薬期間中に維持された。第2の灌流の開始により、1匹を除いて全ての研究を完了した動物に急速な側腹腫瘍除去がもたらされた。同様のプライミング効果が、15および30ug/ml群において観察された。側腹腫瘍移植を第2の灌流の3日前に遅らせることにより、腫瘍成長はおこらず、即時の腫瘍除去という結果がもたらされた。
【0192】
本結果により、化学療法剤を用いた膀胱腫瘍の連続した局所的処置が、遠位腫瘍の縮小および最終的除去をもたらし得ることが初めて示される。これは、ゲムシタビンなどの化学療法剤を用いた連続した局所的処置が、膀胱がんの転移、および膀胱に転移する他の原発腫瘍(例えば、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、または子宮頸がん)の両方を含む広範囲のがんの処置に有効であり得ることを示唆している。
(実施例3)
【0193】
実施例1に記載される調査を拡張して、NBTII膀胱腫瘍および皮下腫瘍のさらなる研究により、同時の膀胱腫瘍移植あり、およびなしでゲムシタビン膀胱曝露を変化させることによる効果を評価した。
【0194】
1組の実験では、ゲムシタビン灌流濃度を変化させて、異なる膀胱腫瘍曝露の皮下腫瘍成長速度に対する効果を評価した。膀胱および皮下のNBTII腫瘍を同時に移植された、膀胱カニューレ処置したラット(1処置群当たりn=10)を、実施例1の研究に使用したように7日間の無薬期間によってそれぞれ間をあけた2処置サイクルにわたり研究した。
【0195】
45μg/mlおよび90μg/mlのゲムシタビン灌流濃度を試験したところ、それぞれ10μg/mlおよび20μg/mlの公称尿濃度を生じた。これは、元のゲムシタビン尿濃度研究に対して、50%および75%の低減を示す。皮下腫瘍成長を、前述のように研究中に測定した。
【0196】
図6に示すように、対照皮下腫瘍は、前述の実施例のように研究期間にわたり成長した。ゲムシタビンは、低減した尿濃度において、皮下腫瘍体積において用量関連の低減を生じた。実施例1の所見と同様に、皮下腫瘍体積は、第2の処置サイクル中にほぼ除去まで有意に減少した。
【0197】
これらの結果を合わせると、より低いゲムシタビン曝露が、皮下NBTII腫瘍に対して免疫系を予備刺激することができることが示される。第2のゲムシタビン処置サイクルは、試験したゲムシタビン尿濃度の低減にもかかわらず、皮下腫瘍体積を急速に低下させ続けた。
(実施例4)
【0198】
皮下腫瘍成長に対する観察された効果が、膀胱内ゲムシタビンの膀胱腫瘍に対する局所的作用の結果であることを確認するために、膀胱カニューレ処置したラットに皮下NBTII腫瘍のみを移植する、さらなる一連の実験を完成させた。次に、前述の実験のように、膀胱内ゲムシタビンの2回の灌流サイクルを用いて、動物を処置した。図7に示すよう
に、皮下腫瘍は、両方の処置サイクルにわたり、ビヒクルおよびゲムシタビン処置された膀胱の両方において成長し続けた。これらの所見は両方とも、膀胱腫瘍の存在が必要とされ、皮下腫瘍における観察された低減が免疫学的に媒介されたことを確証している。
(実施例5)
【0199】
NBTII腫瘍を接種し、次に膀胱内ゲムシタビンを殺腫瘍性用量で投与したラットには、循環サイトカインレベルに有意な変化がもたらされた。
【0200】
180ug/ml溶液の膀胱内ゲムシタビン灌流により、40ug/mLの平均ゲムシタビン尿濃度が生じ、このことから、T24またはNBTII腫瘍細胞の接種後に膀胱腫瘍成長が有意に低減することが実証された。
【0201】
図8に示すように、ラットに膀胱腫瘍を接種後(n=8)、腫瘍が膀胱で発達するにつれて、循環TGF-β血漿濃度が、腫瘍接種を伴わない正常動物(n=3)と比較して、10および15日目までに有意に増加した。TGF-βは、膀胱腫瘍に対する局所的および全身的なCD4およびCD8 T細胞応答の両方を次々に抑制する、調節性T細胞の発現を駆動する。対照的に、低濃度の膀胱内ゲムシタビン灌流は、TGF-β産生および対応する免疫系阻害を抑制した。
【0202】
膀胱腫瘍を接種し、次に膀胱内ゲムシタビン処置したラットにおいても、処置された動物の脾臓においてフローサイトメトリーを実施した場合、適応全身性免疫応答のエビデンスが観察された。膀胱内ゲムシタビンを用いて処置した動物の脾臓は、図9に示すように、IL-10レベルの増加を示した。急性処置に関連するIL-10の増加が、T細胞媒介性の抗腫瘍効果を促進することは公知である。TNF-αもまた、図10に示すように、ゲムシタビンを用いて処置すると中程度に増加した。
(実施例6)
【0203】
ラットにNBT-II腫瘍を接種し、脾臓における活性化されたCD4細胞およびCD8細胞の数を、膀胱内ゲムシタビンを用いて処置したラットまたは未処置ラットのいずれかにおいて、フローサイトメトリーによって評価した。図11に示すように、NBT-II腫瘍を接種しかつ膀胱内ゲムシタビンを受けなかったラットは、活性化されたCD8細胞およびCD4細胞の減少を示した。膀胱内ゲムシタビンは、活性化されたCD4細胞およびCD8細胞の百分率を増加させた。したがってこれにより、腫瘍に対する免疫系の活性化が示される。
【0204】
脾臓の調節性T細胞の百分率を、フローサイトメトリーを使用して評価した(was assed)。図12に示すように、NBT-II腫瘍を接種しかつ膀胱内ゲムシタビンを受けなかった(did nto receive)ラットは、CD4+FOXP3+およびCD8+FOXP
3+の調節性T細胞の両方における減少を示した。膀胱内ゲムシタビンは、CD4+FOXP3+およびCD8+FOXP3+の調節性T細胞の両方の、活性化されたCnの百分率を増加させた。したがってこれにより、腫瘍に対する全身性免疫系の活性化が示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12