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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20240716BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240716BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/81
A61K8/25
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/891
A61K8/73
A61K8/02
A61Q19/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022172382
(22)【出願日】2022-10-27
(65)【公開番号】P2024064065
(43)【公開日】2024-05-14
【審査請求日】2023-10-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500384503
【氏名又は名称】JNTLコンシューマーヘルス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】若林 麻央
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-535236(JP,A)
【文献】特開2021-165293(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0096925(KR,A)
【文献】Libeiro, Japan,Spicule Needle Cream,Mintel GNPD [online],2020年01月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#7201405, [検索日:2023.11.22], 表題部分及び成分
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61F 2/82- 2/97
A61M 25/00-29/04
A61M 35/00-36/08
A61M 37/00
A61M 99/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧品組成物であって、
化粧品成分と、オイルゲル化剤と、油成分とを含むオイルゲルと、
前記オイルゲル中に分散されている、水溶性高分子を含むマイクロニードルと、
を含み、
前記油成分は、炭化水素と、エステル油と、化粧品組成物全体に基づいて、0重量%-10.0重量%の量のシリコーン油とを含み、
前記オイルゲル化剤は、化粧品組成物全体に基づいて、0.5重量%-20.0重量%の量で存在
前記化粧品成分は、レチノールを含み、
前記オイルゲル化剤は、水添(スチレン/イソプレン)コポリマーおよびシリカの少なくとも一つを含み、
前記炭化水素は、水添ポリデセンおよびイソヘキサデカンの少なくとも一方を含み、
前記エステル油は、炭酸ジカプリリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルおよびトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルから選択される少なくとも一つを含み、
前記シリコーン油は、ジメチコンを含み、
前記水溶性高分子は、ヒアルロン酸またはその塩を含み、
前記化粧品組成物は無水である、化粧品組成物。
【請求項2】
前記マイクロニードルは、化粧品組成物全体に基づいて、0.1重量%-10.0重量%の量で存在する、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項3】
前記化粧品成分は、化粧品組成物全体に基づいて、0.01重量%-5.0重量%の量で存在する、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項4】
前記オイルゲル化剤は、化粧品組成物全体に基づいて、5重量%-15.0重量%の量で存在する、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項5】
前記オイルゲルは、さらに、フェノール系酸化防止剤を含む安定化剤を含む、請求項に記載の化粧品組成物。
【請求項6】
化粧品組成物であって、化粧品組成物全体に基づいて、
(a)0.01重量%-5.0重量%のレチノールと、
(b)5重量%-15.0重量%の、水添(スチレン/イソプレン)コポリマーおよびシリカの少なくとも一つを含むオイルゲル化剤と、
(c)0重量%-10.0重量%のシリコーン油と、40重量%-90重量%の炭化水素と、0重量%-45重量%のエステル油と、を含む油成分と、
を含む、オイルゲルと;
前記オイルゲル中に分散されている、0.1重量%-10.0重量%の、ヒアルロン酸またはその塩から形成されたマイクロニードルと;
を含み、前記化粧品組成物は無水である、化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品成分とマイクロニードルとを含む化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品成分とヒアルロン酸とを含む化粧品組成物が知られている(特許文献1,2)。特許文献1の処方例2には、化粧品成分であるレチノールとヒアルロン酸Naとを含む水中油型乳化化粧料が記載されている。特許文献2の処方例4には、化粧品成分であるレチノールとアセチル化ヒアルロン酸ナトリウムとを含む皮膚化粧料(乳液)が記載されている。化粧品成分とヒアルロン酸とを含む化粧品組成物では、化粧品組成物中に溶解しているヒアルロン酸の分子量が大きく、ヒアルロン酸は肌に浸透することができない。このため、この化粧品組成物中のヒアルロン酸には、肌表面の保湿効果のみが期待でき、化粧品成分の効果を促進する役割は期待できない。
【0003】
また、基板の表面上に、ヒアルロン酸を含むマイクロニードルが配されたニードルパッチが知られている(特許文献3,4)。ニールドパッチのマイクロニードルが配される領域の面積は小さい。このため、所望の効果を得るために十分な量の化粧品成分をニールドパッチに配合することができない。
【0004】
また、ヒアルロン酸と生理活性有効成分とを含む混合溶液から形成された微細ニードルが油相成分に分散されている非水系組成物が知られている(特許文献5)。特許文献5の非水系組成物では、生理活性有効成分が微細ニードルに含まれる。微細ニードルは微細であるため、所望の効果を得るために十分な量の生理活性有効成分を微細ニードルに配合することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2020/137785号公報
【文献】特開2013-189397号公報
【文献】特開2020-164432号公報
【文献】特開2009-201956号公報
【文献】特表2018-535236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
所望の効果を得るために十分な量の化粧品成分を含むとともに、化粧品成分の効果を促進することが可能な化粧品組成物を得るためには、化粧品成分を含む製剤に、マイクロニードルを配合することが望ましい。
【0007】
しかしながら、レチノールなどの化粧品成分を含む、乳化系クリーム、乳液、水溶性ジェルの形態の製剤に、ヒアルロン酸などの水溶性高分子を含むマイクロニードルを添加した場合、マイクロニードルは溶解する。このため、乳化系クリーム、乳液、水溶性ジェルの形態の製剤中では、マイクロニードルは不安定である。
【0008】
レチノールなどの化粧品成分を含むオイル状の形態の製剤に、ヒアルロン酸などの水溶性高分子を含むマイクロニードルを添加した場合、マイクロニードルが沈降する場合がある。このため、オイル状の形態の製剤中で、マイクロニードルは均一に分散することができない恐れがある。
【0009】
このため、本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、化粧品成分を含む製剤に、水溶性高分子を含むマイクロニードルが均一に安定して分散して配合されている化粧品組成物を提供することを目的とする。
また、好ましい態様では、化粧品成分を安定して含む化粧品組成物を提供することを目的とする。
さらに、好ましい態様では、べたつきのない、なめらかな化粧品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述した目的を達成するために鋭意検討し、オイルゲルを構成するオイルゲル化剤と油成分のそれぞれの含有量を調整することにより、レチノールなどの化粧品成分を含むオイルゲル中に、ヒアルロン酸などの水溶性高分子を含むマイクロニードルを均一に安定して分散して配合することができるという知見を得るに至った。
【0011】
本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、以下の構成を有する。
【0012】
(構成1)
化粧品組成物であって、
化粧品成分と、オイルゲル化剤と、油成分とを含むオイルゲルと、
前記オイルゲル中に分散されている、水溶性高分子を含むマイクロニードルと、
を含み、
前記油成分は、炭化水素と、エステル油と、化粧品組成物全体に基づいて、0重量%-10.0重量%の量のシリコーン油とを含み、
前記オイルゲル化剤は、化粧品組成物全体に基づいて、0.5重量%-20.0重量%の量で存在する、化粧品組成物。
【0013】
(構成2)
前記マイクロニードルは、化粧品組成物全体に基づいて、0.1重量%-10.0重量%の量で存在する、構成1に記載の化粧品組成物。
【0014】
(構成3)
前記化粧品成分は、化粧品組成物全体に基づいて、0.01重量%-5.0重量%の量で存在する、構成1または2に記載の化粧品組成物。
【0015】
(構成4)
前記オイルゲル化剤は、化粧品組成物全体に基づいて、5重量%-15.0重量%の量で存在する、構成1~3のいずれかに記載の化粧品組成物。
【0016】
(構成5)
前記化粧品成分は、抗しわ成分、美白成分、および殺菌成分からなる群から選択される少なくとも1つを含む、構成1~4のいずれかに記載の化粧品組成物。
【0017】
(構成6)
前記抗しわ成分は、レチノールを含む、構成5に記載の化粧品組成物。
【0018】
(構成7)
前記オイルゲルは、さらに、フェノール系酸化防止剤(好ましくはブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびジブチルヒドロキシトルエン(BHT)の少なくとも一方)を含む安定化剤を含む、構成6に記載の化粧品組成物。
【0019】
(構成8)
前記オイルゲル化剤は、高分子オイルゲル化剤(特に水添(スチレン/イソプレン)コポリマー)およびシリカの少なくとも1つを含む、構成1~7のいずれかに記載の化粧品組成物。
【0020】
(構成9)
前記シリコーン油は、ジメチコンを含む、構成1~8のいずれかに記載の化粧品組成物。
【0021】
(構成10)
前記炭化水素はオレフィン系炭化水素およびパラフィン系炭化水素からなる群から選択される少なくとも1つを含む、構成1~9のいずれかに記載の化粧品組成物。
【0022】
(構成11)
前記エステル油は、脂肪酸と多価アルコールとのエステル(特にテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルおよびトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルの少なくとも一方)および炭酸ジエステル(特に炭酸ジカプリリル)から選択される少なくとも一つを含む、構成1~10のいずれかに記載の化粧品組成物。
【0023】
(構成12)
前記炭化水素は、水添ポリデセンおよびイソヘキサデカンの少なくとも一方を含む、構成1~11のいずれかに記載の化粧品組成物。
【0024】
(構成13)
前記エステル油は、炭酸ジカプリリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルおよびトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルから選択される少なくとも一つを含む、構成1~12のいずれかに記載の化粧品組成物。
【0025】
(構成14)
前記オイルゲル化剤は、水添(スチレン/イソプレン)コポリマーおよびシリカの少なくとも一つを含む、構成1~13のいずれかに記載の化粧品組成物。
【0026】
(構成15)
前記水溶性高分子は、ヒアルロン酸またはその塩を含む、構成1~14のいずれかに記載の化粧品組成物。
【0027】
(構成16-1)
化粧品組成物であって、化粧品組成物全体に基づいて、
(a)0.01重量%-5.0重量%のレチノールと、
(b)0.5重量%-15.0重量%の、高分子オイルゲル化剤(特に水添(スチレン/イソプレン)コポリマー)およびシリカの少なくとも1つを含むオイルゲル化剤と、
(c)0重量%-10.0重量%のシリコーン油(特にジメチコン)と、0重量%-95重量%の炭化水素(特に水添ポリデセンおよびイソヘキサデカンの少なくとも一方)と、0重量%-95重量%のエステル油(特に炭酸ジカプリリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルおよびトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルから選択される少なくとも一つ)と、を含む油成分と、
を含む、オイルゲルと;
前記オイルゲル中に分散されている、0.1重量%-10.0重量%の、ヒアルロン酸またはその塩を含むマイクロニードルと;
を含む、化粧品組成物。
【0028】
(構成16-2)
化粧品組成物であって、化粧品組成物全体に基づいて、
(a)0.01重量%-5.0重量%のレチノールと、
(b)5重量%-15.0重量%の、高分子オイルゲル化剤(特に水添(スチレン/イソプレン)コポリマー)およびシリカの少なくとも一つを含むオイルゲル化剤と、
(c)0重量%-10.0重量%のシリコーン油(特にジメチコン)と、40重量%-90重量%の炭化水素(特に水添ポリデセンおよびイソヘキサデカンの少なくとも一方)と、0重量%-45重量%のエステル油(特に炭酸ジカプリリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルおよびトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルから選択される少なくとも一つ)と、を含む油成分と、
を含む、オイルゲルと;
前記オイルゲル中に分散されている、0.1重量%-10.0重量%の、ヒアルロン酸またはその塩から形成されたマイクロニードルと;
を含み、前記化粧品組成物は無水である、化粧品組成物。
【0029】
(構成16-3)
前記オイルゲルは、さらに、フェノール系酸化防止剤(好ましくはブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびジブチルヒドロキシトルエン(BHT)の少なくとも一方)を含む安定化剤を含む、構成16―1または16-2に記載の化粧品組成物。
【0030】
(構成16-4)
前記安定化剤は、化粧品組成物全体に基づいて、0.01重量%-5重量%(より好ましくは0.01重量%-1重量%、さらに好ましくは0.05重量%-1重量%)の量で存在する、構成16―3に記載の化粧品組成物。
【発明の効果】
【0031】
上述したように、本発明に係る化粧品組成物によれば、化粧品成分と、オイルゲル化剤と、油成分とを含むオイルゲルと、オイルゲル中に分散されている、水溶性高分子を含むマイクロニードルと、を含み、油成分は、炭化水素と、エステル油と、化粧品組成物全体に基づいて、0重量%-10.0重量%の量のシリコーン油とを含み、オイルゲル化剤は、化粧品組成物全体に基づいて、0.5重量%-20.0重量%の量で存在する。このため、化粧品成分を含むオイルゲル中に、水溶性高分子を含むマイクロニードルが均一に安定して分散して配合されている化粧品組成物を得ることができる。
【0032】
また、本発明に係る別の化粧品組成物によれば、化粧品組成物全体に基づいて、(a)0.01重量%-5.0重量%のレチノールと、(b)5重量%-15.0重量%の、高分子オイルゲル化剤およびシリカの少なくとも一つを含むオイルゲル化剤と、(c)0重量%-10.0重量%のシリコーン油と、40重量%-90重量%の炭化水素と、0重量%-45重量%のエステル油と、を含む油成分と、を含む、オイルゲルと;オイルゲル中に分散されている、0.1重量%-10.0重量%の、ヒアルロン酸またはその塩から形成されたマイクロニードルと;を含み、化粧品組成物は無水である。このため、レチノールを含むオイルゲル中に、ヒアルロン酸またはその塩から形成されたマイクロニードルが均一に安定して分散して配合されている化粧品組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施の形態の化粧品組成物を示す模式図である。
図2】実施例および比較例で使用したマイクロニードルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、具体的に説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0035】
A.化粧品組成物
図1は、この実施の形態の化粧品組成物を示す模式図である。この実施の形態の化粧品組成物1は、オイルゲル2と、オイルゲル2中に分散されているマイクロニードル3とを含む。好ましくは、この実施の形態の化粧品組成物1は、無水である。
【0036】
1.オイルゲル
オイルゲルは、化粧品成分と、オイルゲル化剤と、油成分とを含む。オイルゲルは、さらに、安定化剤を含むことが好ましい。
【0037】
(1)化粧品成分
化粧品成分は、好ましくは、化粧品組成物全体に基づいて、0.01重量%-5.0重量%の量で存在する。この範囲より少ない場合、効果が得られず、また、この範囲より多い場合は刺激などが生じる場合がある。
【0038】
オイルゲルに含まれる化粧品成分として、例えば、美白成分、抗しわ成分、殺菌成分が挙げられる。
美白成分として、例えば、プラセンタエキス、リン酸L-アスコルビルマグネシウム、リン酸L-アスコルビルナトリウム、コウジ酸、アルブチン、L-アスコルビン酸2-グルコシド、エラグ酸、4-n-ブチルレゾルシノール、カモミラET、リノール酸S、トラネキサム酸、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、3-O-エチルアスコルビン酸、アデノシン一リン酸二ナトリウム、5,5’-ジプロピル-ビフェニル-2,2’-ジオール、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビルEX、ニコチン酸アミド、トラネキサム酸セチル塩酸塩、デクスパンテノールW、フェニルエチルレゾルシノール、スクラレオリドが挙げられる。
抗しわ成分として、例えば、アセチルグルコサミン、アスタキサンチン、ウコンエキス、レチノールまたはレチノール誘導体、トレチノイン、レチノールアセテート、ビタミンAパルミテート、ブナエキスが挙げられる。
殺菌成分として、例えば、dl-α-トコフェリルリン酸ナトリウム、o-シメン-5-オール、オウバクエキス、サリチル酸が挙げられる。
いくつかの実施態様では、化粧品成分は、レチノールまたはレチノール誘導体を含む。レチノール誘導体としては、特に限定されないが、例えば、レチナール、レチノイン酸、酢酸レチニル、パルミチン酸レチニル、アミン誘導体などを含む他のレチノイドが挙げられる。
特定の実施態様では、化粧品成分は、レチノールを含む。一実施形態において、レチノールは、化粧品組成物全体に基づいて、好ましくは0.01重量%-2重量%、より好ましくは0.01重量%-1.0重量%、さらに好ましくは0.01重量%-0.5重量%の量で存在する。一実施形態において、レチノールは、化粧品組成物全体に基づいて、0.05重量%-0.5重量%の量で存在する。このような範囲であると、刺激を抑制しつつレチノールに由来する効果が達成され得る。
【0039】
(2)オイルゲル化剤
オイルゲル化剤は、化粧品組成物全体に基づいて、0.5重量%-20.0重量%の量で存在する。オイルゲル化剤が0.5重量%-20.0重量%の量で存在する場合、油成分が、化粧品組成物全体に基づいて、0重量%-10.0重量%の量のシリコーン油を含むという条件下で、化粧品成分を含むオイルゲル中に、水溶性高分子を含むマイクロニードルを均一に安定して分散して配合することができる。
オイルゲル化剤は、好ましくは、化粧品組成物全体に基づいて、0.5重量%-15.0重量%の量で存在する。オイルゲル化剤が0.5重量%-15.0重量%の量で存在する場合、べたつきのない、なめらかな化粧品組成物を得ることができる。より一層べたつきのない、なめらかな化粧品を得る観点から、オイルゲル化剤の配合量は、化粧品組成物全体に基づいて、好ましくは1重量%-15重量%であり、より好ましくは5重量%-15重量%の範囲である。
【0040】
オイルゲルに含まれるオイルゲル化剤として、例えば、12-ヒドロキシステアリン酸;パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリンなどのデキストリン脂肪酸エステル;ジブチルラウロイルグルタミド;ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド;糖脂肪酸エステル;ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド;シリカ;水添(スチレン/イソプレン)コポリマーや水添(スチレン/ブタジエン)コポリマーなどの高分子オイルゲル化剤が挙げられる。中でも、安定性の点から、高分子オイルゲル化剤、シリカ、デキストリン脂肪酸エステルが好ましく、高分子オイルゲル化剤、シリカがより好ましく、特に高分子オイルゲル化剤(例えば、水添(スチレン/イソプレン)コポリマーなど)が好ましい。
【0041】
(3)油成分
油成分は、好ましくは、化粧品組成物全体に基づいて、70重量%-95重量%の量で存在する。70重量%以上であれば、オイルゲルが得られる。95重量%以下であれば粘度が硬くなりすぎず、なめらかなゲルを形成し得る。
【0042】
オイルゲルに含まれる油成分として、炭化水素、エステル油、シリコーン油が挙げられる。油成分は、炭化水素およびエステル油の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0043】
(a)炭化水素
炭化水素は、好ましくは、化粧品組成物全体に基づいて、0重量%-95重量%の量で存在する。この範囲外の場合、オイルゲルが形成されなかったり、なめらかなゲルにならない場合がある。
いくつかの実施形態では、炭化水素の含有量は、化粧品組成物全体に基づいて、40重量%-95重量%(例えば、40重量%-90重量%または45重量%-85重量%)である。いくつかの実施形態では、油成分は炭化水素を含まない。いくつかの実施形態では、炭化水素の含有量は、化粧品組成物全体に基づいて、0重量%-45重量%(例えば0重量%-40重量%、または0重量%-30重量%)である。
【0044】
油成分を構成する炭化水素として、例えば、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、パラフィン、イソヘキサデカン、ミネラルオイル、ポリブテン、水添ポリブテン、水添ポリデセンが挙げられる。中でも、イソヘキサデカン、水添ポリデセンなどのパラフィン系炭化水素;オレフィン系炭化水素が好ましい。
【0045】
(b)エステル油
エステル油は、好ましくは、化粧品組成物全体に基づいて、0重量%-95重量%の量で存在する。この範囲外の場合、オイルゲルが形成されなかったり、なめらかなゲルにならない場合がある。
いくつかの実施形態では、エステル油の含有量は、化粧品組成物全体に基づいて、0重量%-45重量%(例えば0重量%-40重量%、または0重量%-35重量%)である。いくつかの実施形態では、油成分はエステル油を含まない。いくつかの実施形態では、炭化水素の含有量は、化粧品組成物全体に基づいて、0重量%-45重量%(例えば0重量%-40重量%、または0重量%-35重量%)である。
【0046】
油成分を構成するエステル油として、例えば、炭酸ジカプリリル、ジネオペンタン酸トリプロピレングリコール、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、エチルヘキサン酸セチル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリエチルヘキサノイン(トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン)、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルが挙げられる。中でも、テトラエチルヘキサン酸ぺンタエリスリチル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルなどのトリエステルやテトラエステルなどの脂肪酸と多価アルコール(好ましくは3価アルコールまたは4価アルコール)とのエステル;炭酸ジカプリリルなどの炭酸ジエステルが好ましい。
【0047】
(c)シリコーン油
油成分は、化粧品組成物全体に基づいて、0重量%-10.0重量%の量のシリコーン油を含む。すなわち、油成分は、シリコーン油を含まない、または、10.0重量%以下の量でシリコーン油を含む。油成分が0重量%-10.0重量%の量のシリコーン油を含む場合、オイルゲル化剤が、化粧品組成物全体に基づいて、0.5重量%-20.0重量%の量で存在するという条件下で、化粧品成分を含むオイルゲル中に、水溶性高分子を含むマイクロニードルを均一に安定して分散して配合することができる。
【0048】
油成分を構成するシリコーン油として、例えば、ハイドロゲンジメチコン、カプリリルメチコン、ジメチコン、シクロペンタシロキサンが挙げられる。
【0049】
(油成分の代表例)
いくつかの実施形態では、油成分は、化粧品組成物全体に基づいて、0重量%-95重量%の炭化水素、0重量%-95重量%のエステル油、および0重量%-10重量%(例えば0重量%-7重量%または0重量%-5重量%)のシリコーン油を含む。
いくつかの実施形態では、油成分は、化粧品組成物全体に基づいて、40重量%-95重量%(例えば40重量%-90重量%、または45重量%-85重量%)の炭化水素、0重量%-45重量%(例えば0重量%-40重量%、または0重量%-35重量%)のエステル油、および0重量%-10重量%(例えば0重量%-7重量%、または0重量%-5重量%)のシリコーン油を含む。
いくつかの実施形態では、油成分は、化粧品組成物全体に基づいて、0重量%-45重量%(例えば0重量%-40重量%、または0重量%-30重量%)の炭化水素、50重量%-95重量%(例えば50重量%-95重量%、または60重量%-95重量%)のエステル油、および0重量%-10重量%の(例えば0重量%-7重量%または0重量%-5重量%)シリコーン油を含む。
いくつかの実施形態において、油成分はシリコーン油を含まない。特定の実施形態では、油成分は、化粧品組成物全体に基づいて、40重量%-95重量%(例えば40重量%-90重量%、または45重量%-85重量%)の炭化水素、0重量%-45重量%(例えば0重量%-40重量%、または0重量%-35重量%)のエステル油を含み、シリコーン油を含まない。特定の実施形態では、油成分は、化粧品組成物全体に基づいて、0重量%-45重量%(例えば0重量%-40重量%、または0重量%-30重量%)の炭化水素および50重量%-95重量%(例えば50重量%-95重量%、または60重量%-95重量%)のエステル油を含み、シリコーン油を含まない。このような配合とすることでマイクロニードルを均一に安定して分散配合することができる。
いくつかの実施形態において、油成分はシリコーン油を含む。特定の実施形態では、油成分は、化粧品組成物全体に基づいて、40重量%-95重量%(例えば40重量%-90重量%、または45重量%-85重量%)の炭化水素、0重量%-45重量%(例えば0重量%-40重量%、または0重量%-35重量%)のエステル油、および1重量%-10重量%(例えば1重量%-7重量%または1重量%-5重量%または2重量%-7重量%)のシリコーン油を含む。特定の実施形態では、油成分は、化粧品組成物全体に基づいて、0重量%-45重量%(例えば0重量%-40重量%、または0重量%-30重量%)の炭化水素、50重量%-95重量%(例えば50重量%-95重量%、または60重量%-95重量%)のエステル油、および1重量%-10重量%の(例えば1重量%-7重量%または1重量%-5重量%または2重量%-7重量%)シリコーン油を含む。シリコーン油を炭化水素およびエステル油とともに配合することで、マイクロニードルを均一に安定して分散配合しつつ、べたつきが一層抑制された組成物が得られる。
【0050】
(4)安定化剤
安定化剤は、好ましくは、化粧品組成物全体に基づいて、0.01重量%-5重量%の量で存在する。この範囲より少ない場合、効果が得られず、また、この範囲より多い場合は刺激などが生じる場合がある。安定化剤は、化粧品組成物全体に基づいて、より好ましくは0.01重量%-1重量%、さらに好ましくは0.05重量%-1重量%の量で存在する。
【0051】
オイルゲルに含まれる安定化剤として、例えば、防腐剤、防腐助剤、酸化防止剤が挙げられる。
防腐剤として、例えば、フェノキシエタノールが挙げられる。
防腐助剤として、例えば、ビサボロールが挙げられる。
酸化防止剤として、例えば、フェノール系酸化防止剤;アスコルビン酸、アスコルビン酸Na、アスコルビン酸MgなどのビタミンC系の酸化防止剤;酢酸トコフェロールが挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及び高分子型フェノール系酸化防止剤が挙げられる。具体的には、例えば、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)等のモノフェノール系酸化防止剤;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)等のビスフェノール系酸化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、及びα-トコフェロール等の高分子型フェノール系酸化防止剤が挙げられる。中でも、フェノール系酸化防止剤は、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)の少なくとも一つが好ましい。
【0052】
化粧品成分として、レチノールを用いる場合、オイルゲルは、フェノール系酸化防止剤(好ましくはブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびジブチルヒドロキシトルエン(BHT)の少なくとも一方)を含むことが好ましい。フェノール系酸化防止剤(好ましくはBHAおよびBHTの一方または両方)を含むことにより、化粧品組成物中でレチノールは安定する。
【0053】
2.マイクロニードル
マイクロニードルは、水溶性高分子を含む。マイクロニードルは、1つまたは複数の鋭い針を有する任意の形状であってよい。マイクロニードルは、水溶性高分子を用いて、公知または慣用の方法により製造される。例えば、溶解させた高分子原料を金型によりプレスする方法、小滴を落とし、 反対側のパッチを突き合わせてから伸ばしてマイクロニードルを成形するDroplet Extension(DEN)製法などの方法により製造することができる。マイクロニードルは、例えば、円錐形状や擬球形状である。擬球形状とは、円形の底面から先端に向かって先細となり、底面から先端に向かう外面がラッパのようになっている形状である。いくつかの実施形態では、マイクロニードルは円錐形状または擬球形状であり、底面の直径は200μm~3000μmの範囲であり、先端の直径は1μm~100μmの範囲であり、高さは100μm~1000μmの範囲である。いくつかの実施形態では、マイクロニードルは1つまたは複数の鋭い針を有する球形状を有する。
マイクロニードルは、マイクロニードル全体(重量)に基づいて、好ましくは50重量%-100重量%、より好ましくは75重量%-100重量%、さらに好ましくは90-100重量%、特に好ましくは100重量%の水溶性高分子を含む。
【0054】
マイクロニードルは、好ましくは、化粧品組成物全体に基づいて、0.01重量%-10重量%の量で存在する。この範囲より少ない場合、マイクロニードルが均一に配合できず、また、この範囲より多い場合、製剤のなめらかさが低下する場合がある。均一な配合および組成物のなめらかさの両立の観点から、マイクロニードルの配合量は、化粧品組成物全体に基づいて、より好ましくは0.05重量%-5重量%であり、さらに好ましくは0.1重量%-3重量%であり、特に好ましくは0.1重量-1重量%である。
【0055】
マイクロニードルを形成するために用いる水溶性高分子としては、例えば、ヒアルロン酸もしくはその塩(例えばヒアルロン酸Naなど)、架橋ヒアルロン酸もしくはその塩、コラーゲン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、架橋ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール架橋ポリ乳酸又はポリグリコール酸又はポリ-乳酸-co-グリコール酸又はポリジオキサノン、ポリ(スチレン)ブロックポリ(アクリル酸)、ポリエチレングリコール架橋PMVE/MA、架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、セルロース、天然ゴム、合成ゴム、アルギネート、ポリアクリル酸ナトリウム、PEG架橋ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸)(PMVE/MA)及びそのエステル、PEG架橋ポリ(メチル/ビニルエーテル/無水マレイン酸)(PMVE/MAH)及びそのエステルが挙げられる。
中でも、生体適合性の点から、マイクロニードルは、ヒアルロン酸またはその塩(例えばヒアルロン酸Naなど)を含むことが好ましい。マイクロニードルは、マイクロニードル全体(重量)に基づいて、好ましくは50重量%-100重量%、より好ましくは75重量%-100重量%、さらに好ましくは90-100重量%、特に好ましくは100重量%のヒアルロン酸またはその塩を含む。いくつかの実施形態では、マイクロニードルはヒアルロン酸またはその塩から形成されている(すなわち、100重量%のヒアルロン酸又はその塩を含む)。
マイクロニードルは水溶性高分子以外の成分を含んでもよい。水溶性高分子以外の成分としては、例えば上記化粧品成分や水溶性高分子以外のポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、マイクロニードルは水溶性高分子(例えばヒアルロン酸またはその塩)と化粧品成分(例えば、レチノール)とを含む。
【0056】
B.製造方法
この実施の形態の化粧品組成物は、公知または慣用の方法により製造することができる。例えば、この実施の形態の化粧品組成物は、化粧品組成物を構成する各成分を混合し、攪拌して製造することができる。
【0057】
C.効果
この実施の形態の化粧品組成物によれば、化粧品成分と、オイルゲル化剤と、油成分とを含むオイルゲルと、オイルゲル中に分散されている、水溶性高分子を含むマイクロニードルと、を含み、油成分は、炭化水素と、エステル油と、化粧品組成物全体に基づいて、0重量%-10.0重量%の量のシリコーン油を含み、オイルゲル化剤は、化粧品組成物全体に基づいて、0.5重量%-20.0重量%の量で存在する。このため、化粧品成分を含むオイルゲル中に、水溶性高分子を含むマイクロニードルが均一に安定して分散して配合されている化粧品組成物を得ることができる。また、このような化粧品組成物を皮膚に適用した際、マイクロニードルにより皮膚の表面に微細な孔が開けられるため、化粧品成分が角質層内に浸透して、化粧品成分の効果が促進することが期待できる。また、マイクロニードルは水溶性高分子を用いて形成されているため、水溶性高分子が持つ効果が発揮されることが期待できる。
【0058】
この実施の形態の別の化粧品組成物によれば、化粧品組成物全体に基づいて、(a)0.01重量%-5.0重量%のレチノールと、(b)5重量%-15.0重量%の、高分子オイルゲル化剤およびシリカの少なくとも一つを含むオイルゲル化剤と、(c)0重量%-10.0重量%のシリコーン油と、40重量%-90重量%の炭化水素と、0重量%-45重量%のエステル油と、を含む油成分と、を含む、オイルゲルと;オイルゲル中に分散されている、0.1重量%-10.0重量%の、ヒアルロン酸またはその塩から形成されたマイクロニードルと;を含み、化粧品組成物は無水である。このため、レチノールを含むオイルゲル中に、ヒアルロン酸またはその塩から形成されたマイクロニードルが均一に安定して分散して配合されている化粧品組成物を得ることができる。また、このような化粧品組成物を皮膚に適用した際、マイクロニードルにより皮膚の表面に微細な孔が開けられるため、レチノールが角質層内に浸透して、レチノールの効果が促進することが期待できる。また、マイクロニードルはヒアルロン酸またはその塩を用いて形成されているため、ヒアルロン酸またはその塩の保湿効果が発揮されることが期待できる。
【実施例
【0059】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本発明の一例であって、本発明を限定するものではない。
【0060】
実施例および比較例で使用した材料は、以下の通りである。
(a)マイクロニードル
マイクロニードルは、ヒアルロン酸Naを用いて製造されたもの(以下、ヒアルロン酸ニードルという)を使用した。ヒアルロン酸ニードルは、公知または慣用の方法により製造された。実施例および比較例で使用したヒアルロン酸ニードルは、ヒアルロン酸ニードル全体に基づいて、100重量%のヒアルロン酸を含む。
図2は、実施例および比較例で使用したヒアルロン酸ニードルの模式図である。実施例および比較例で使用したヒアルロン酸ニードルは、擬球形状であり、底面の直径は200μm~3000μmであり、先端の直径は1μm~100μmであり、高さは100μm~1000μmである。
【0061】
(b)化粧品成分
化粧品成分として、レチノール(BASF社製、商品名Retinol50C)を使用した。
(c)オイルゲル化剤
オイルゲル化剤として、シリカ(日本アエロジル株式会社社製、商品名AEROSIL 300)、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン(千葉製粉社製、商品名レオパールTT2)、水添(スチレン/イソプレン)コポリマー(Kraton社製、商品名BI-THIN 602)を使用した。
(d)炭化水素
油成分を形成する炭化水素として、水添ポリブテン(日油社製、商品名パールリーム)、イソヘキサデカン(クローダ社製、商品名ARLAMOL HD-LQ)を使用した。
(e)エステル油
油成分を形成するエステル油として、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(BASF社製、商品名Cetiol PEEH4 SD)、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル(BASF社製、商品名ミリトール318)、炭酸ジカプリリル(BASF社製、商品名セチオールCC)を使用した。
(f)シリコーン油
油成分を形成するシリコーン油として、ジメチコン(信越シリコーン社製)を使用した。
(g)安定化剤
安定化剤として、フェノキシエタノール(クラリアント社製)、ビサボロール(Symrise社製、商品名Dragosantol)、酢酸トコフェロール(DSM社製)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)(IMCD Benelux B.V.社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(Oxiris社製、商品名IONOL CP)を使用した。
【0062】
実施例および比較例の化粧品組成物を含まれる各材料の含有量および実施例および比較例の化粧品組成物の評価を表1に示す。表1中に数値は、化粧品組成物全体に基づいた各材料の重量%を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例および比較例の化粧品組成物は、以下のように製造した。先ず、炭化水素とエステル油とシリコーン油とを混合して、油成分を形成した。油成分が、シリコーン油を含まない場合には、炭化水素とエステル油とを混合した。形成された油成分に、レチノールおよび安定化剤を添加した後、オイルゲル化剤を投入し、十分に増粘するまで攪拌し、レチノールを含むオイルゲルを得た。得られたオイルゲルに、ヒアルロン酸ニードルを投入した後、オイルゲルを所定の時間攪拌し、無水の化粧品組成物を得た。
【0065】
実施例および比較例の化粧品組成物の評価は、以下のように行った。
<ニードルの安定性>
化粧品組成物中でのヒアルロン酸ニードルの安定性は、目視により、以下の基準で評価した。
A:ヒアルロン酸ニードルがオイルゲル全体に均一に安定して分散している
B:オイルゲル中でのヒアルロン酸ニードルの分散にややばらつきがでている
C:オイルゲル中でヒアルロン酸ニードルが沈降している
【0066】
<レチノールの安定性>
化粧品組成物中でのレチノールの安定性は、目視により、以下の基準で評価した。
A:オイルゲルの色、臭いに変化が全くない
B:オイルゲルの色、臭いにやや変化がある
C:オイルゲルの色、臭いが著しく変化
【0067】
<べたつきのなさ>
化粧品組成物のべたつきのなさは、6名の被験者の皮膚に化粧品組成物を適用し、体感により、以下の基準で評価した。皮膚に適用した化粧品組成物が、所定の時間経過後も皮膚に残ってべたつくとき、べたつきがあると評価される。
AA:べたつきがないと6名が評価
A:べたつきがないと4-5名が評価
B:べたつきがないと2-3名が評価
C: べたつきがないと0-1名が評価
【0068】
<なめらかさ>
化粧品組成物のなめらかさは、6名の被験者の皮膚に化粧品組成物を適用し、体感により、以下の基準で評価した。皮膚に適用した化粧品組成物ののびがよいとき、なめらかであると評価される。
AA:なめらかだと6名が評価
A:なめらかだと4-5名が評価
B:なめらかだと2-3名が評価
C:なめらかだと0-1名が評価
【0069】
実施例および比較例の化粧品組成物の評価結果から以下の点が考えられる。
<ニードルの安定性>
オイルゲル中に、オイルゲル化剤が全く含まれていないとき、または、シリコーン油が多く含まれているとき、ヒアルロン酸ニードルの安定性の評価は低くなる。すなわち、オイルゲル中に、オイルゲル化剤が含まれており、かつ、シリコーン油が全く含まれていないか少なくしか含まれていないとき、ヒアルロン酸ニードルの安定性の評価は高くなる。
比較例1では、ヒアルロン酸ニードルの安定性の評価はCである。これは、オイルゲル化剤が全く含まれておらず、さらに、シリコーン油が10.0重量%より多く(具体的には、20重量%)含まれているためである。比較例2では、ヒアルロン酸ニードルの安定性の評価はCである。これは、オイルゲル化剤が15重量%含まれているが、シリコーン油が10.0重量%より多く(具体的には、20重量%)含まれているためである。比較例3では、ヒアルロン酸ニードルの安定性の評価はCである。これは、オイルゲル化剤が7重量%含まれているが、シリコーン油が10.0重量%より多く(具体的には、12重量%)含まれているためである。比較例4では、ヒアルロン酸ニードルの安定性の評価はCである。これは、シリコーン油が10.0重量%以下(具体的には、7重量%)しか含まれていないが、オイルゲル化剤が全く含まれていないためである。
これに対して、実施例1-7では、ヒアルロン酸ニードルは、オイルゲル中で均一に安定して分散しており、ヒアルロン酸ニードルの安定性の評価はAである。これは、オイルゲル化剤が含まれており(具体的には、5.0重量%-20重量%)、かつ、シリコーン油が10.0重量%以下(具体的には、0重量%-5.0重量%)しか含まれていないためである。
【0070】
<レチノールの安定性>
オイルゲル中に、安定化剤として、レチノールの酸化を防止する、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびジブチルヒドロキシトルエン(BHT)の少なくとも一方が含まれているとき、レチノールの安定性は高くなる。
実施例3では、レチノールの安定性の評価はCである。これは、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびジブチルヒドロキシトルエン(BHT)のどちらも含まれていないためである。
これに対して、実施例1,2,4-7では、レチノールの安定性の評価はAである。これは、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびジブチルヒドロキシトルエン(BHT)が含まれているためである。
比較例1-4でも、レチノールの安定性の評価はAである。これは、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびジブチルヒドロキシトルエン(BHT)が含まれているためである。
なお、表1には、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびジブチルヒドロキシトルエン(BHT)の両方を含むときにレチノールの安定性が高くなる場合しか示されていないが、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびジブチルヒドロキシトルエン(BHT)の少なくとも一方だけを含めば、レチノールの安定性は高くなる。
【0071】
<べたつきのなさ>および<なめらかさ>
オイルゲル中に、シリコーン油が全く含まれていないか少なくしか含まれておらず、かつ、オイルゲル化剤が多く含まれているとき、べたつきのなさおよびなめらかさの評価は低くなる。
実施例4では、べたつきのなさおよびなめらかさの評価はどちらもCである。これは、シリコーン油が全く含まれておらず、かつ、オイルゲル化剤が15.0重量%より多く(具体的には、20重量%)含まれているためである。
これに対して、実施例1-3,5-7では、べたつきのなさおよびなめらかさの評価はどちらもAまたはAAである。これは、シリコーン油が10.0重量%以下(具体的には、0重量%-5.0重量%)しか含まれていないが、オイルゲル化剤が15.0重量%以下(具体的には、5.0重量%-15.0重量%)しか含まれていないためである。
比較例1-3でも、べたつきのなさおよびなめらかさの評価はどちらもAまたはAAである。これは、シリコーン油が10.0重量%より多く(具体的には、12.0重量%-20重量%)含まれ、さらに、オイルゲル化剤が15.0重量%以下(具体的には、0重量%-15.0重量%)しか含まれていないためである。
比較例4でも、べたつきのなさおよびなめらかさの評価はどちらもAである。これは、シリコーン油が10.0重量%以下(具体的には、7重量%)しか含まれていないが、オイルゲル化剤が15.0重量%以下(具体的には、0重量%)しか含まれていないためである。
【0072】
実施例1,2,5-7の化粧品組成物では、ヒアルロン酸ニードルは、オイルゲル中で均一に安定して分散している。また、オイルゲルの色、臭いに変化が全くない。実施例1,2,5-7の化粧品組成物を被験者の皮膚に適用した際、被験者は、べたつきがなく、なめらかであると感じる。実施例1,2,5-7の化粧品組成物を被験者の皮膚に適用した際、ヒアルロン酸ニードルにより皮膚の表面に微細な孔が開けられるため、レチノールが角質層内に浸透して、レチノールの効果が促進することが期待できる。また、ヒアルロン酸の保湿効果が発揮されることが期待できる。
【0073】
以上のように、本発明を実施の形態および実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されない。該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白である。
図1
図2