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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20240716BHJP
   G01N 21/95 20060101ALI20240716BHJP
   A61B 6/00 20240101ALI20240716BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240716BHJP
【FI】
H04N1/04 E
G01N21/95 Z
A61B6/00 503K
A61B6/46 506B
H04N1/04 106A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022181222
(22)【出願日】2022-11-11
(65)【公開番号】P2023076397
(43)【公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2021189736
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正志
(72)【発明者】
【氏名】杉原 義人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 優輔
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-279935(JP,A)
【文献】特開平10-215339(JP,A)
【文献】特開2003-248278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
G01N 21/95
A61B 6/00
A61B 6/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージングプレートから放射線像を読み取る読取装置であって、
前記イメージングプレートに励起光を照射する光源と、
前記励起光による前記イメージングプレートからの発光光を検出し、当該発光光の検出結果としての第1の画像信号を出力する検出器と、
前記検出器が前記第1の画像信号を出力した後、前記イメージングプレートから放射線像を消去する消去部と、
記イメージングプレートの表面の異常を特定する特定部と
を備え
前記光源は、前記励起光を、放射線像が消去された前記イメージングプレートに照射し、
前記検出器は、放射線像が消去された前記イメージングプレートからの前記励起光の反射光を検出し、当該反射光の検出結果としての第2の画像信号を出力し、
前記特定部は、前記第2の画像信号に基づいて、前記イメージングプレートの表面の異常を特定する、読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の読取装置であって、
前記イメージングプレートを保持する保持部を備え、
前記光源は、前記イメージングプレートと前記保持部に前記励起光を照射し、
前記保持部の前記励起光を受ける面が、前記イメージングプレートの未露光部分より前記励起光が反射しにくくなる処理が行われた面であり、
前記検出器は、前記放射線像が消去された前記イメージングプレートと前記保持部の前記励起光を受ける前記面からの前記励起光の反射光を検出し、当該反射光の検出結果としての前記第2の画像信号を出力する、読取装置。
【請求項3】
請求項に記載の読取装置であって、
前記第1の画像信号と前記第2の画像信号とを処理する画像処理部と、
画像を表示する表示部と
を備え、
前記画像処理部が、前記第1の画像信号から前記イメージングプレートに相当する部分の切出像である第1切出像と、前記第2の画像信号から前記イメージングプレートに相当する部分の切出像である第2切出像とを切り出し、
前記表示部が前記第1切出像と前記第2切出像の一方を他方の隣に配置して表示する、読取装置。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一つに記載の読取装置であって、
前記特定部は、前記第2の画像信号に基づく反射光像において前記異常が写る異常領域像の位置及び形状を特定し、
前記第1の画像信号の処理により生成された放射線像に対して異常領域の位置と形状を表示する異常領域表示を行う、読取装置。
【請求項5】
請求項に記載の読取装置であって、
前記第1の画像信号の処理により生成された放射線像を表示する場合、当該放射線像での前記位置に相当する箇所に前記形状を当該放射線像に重ねて表示する、読取装置。
【請求項6】
請求項に記載の読取装置であって、
前記反射光像を表示しているときに、前記形状を前記放射線像に重ねて表示する、読取装置。
【請求項7】
請求項に記載の読取装置であって、
ユーザの指示に応じて、前記形状の表示及び非表示を切り替える、読取装置。
【請求項8】
請求項に記載の読取装置であって、
前記異常領域像の輝度情報に基づいて、読み取られた前記放射線像において前記異常に相当する異常相当領域の輝度情報を調整する異常相当領域輝度調整処理を行う、読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄積性蛍光体シートから画像情報を読み取る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-267451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イメージングプレートの表面には、傷、凹み及び汚れ等の異常が発生することがある。
【0005】
そこで、本開示は、イメージングプレートの表面の異常を適切に特定することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る読取装置は、イメージングプレートから放射線像を読み取る読取装置であって、前記イメージングプレートに励起光を照射する第1光源と、前記励起光による前記イメージングプレートからの発光光を検出し、当該発光光の検出結果としての第1の画像信号を出力する第1検出器と、前記イメージングプレートに光を照射する第2光源と、前記イメージングプレートからの前記光の反射光を検出し、当該反射光の検出結果としての第2の画像信号を出力する第2検出器と、前記第2の画像信号に基づいて、前記イメージングプレートの表面の異常を特定する特定部とを備える。
【0007】
第2の態様は、第1の態様に係る読取装置であって、前記第1光源は、前記第2光源として機能し、前記光としての前記励起光を前記イメージングプレートに照射する。
【0008】
第3の態様は、第1または第2の態様に係る読取装置であって、前記第1検出器が前記第2検出器として機能する。
【0009】
第4の態様は、第2の態様に係る読取装置であって、前記第1検出器が前記第2検出器として機能し、前記第1検出器が前記第1の画像信号を出力した後、前記イメージングプレートから放射線像を消去する消去部をさらに備え、前記第1光源が、前記光としての前記励起光を、放射線像が消去された前記イメージングプレートに照射し、前記第1検出器が、放射線像が消去された前記イメージングプレートからの前記反射光を検出する。
【0010】
第5の態様は、第1から第4の態様のいずれか一つに係る読取装置であって、前記特定部は、前記第2の画像信号に基づく反射光像において前記異常が写る異常領域像の位置及び形状を特定し、前記第1の画像信号の処理により生成された放射線像に対して異常領域の位置と形状を表示する異常領域表示を行う。
【0011】
第6の態様は、第5の態様に係る読取装置であって、前記第1の画像信号の処理により生成された放射線像を表示する場合、当該放射線像での前記位置に相当する箇所に前記形状を当該放射線像に重ねて表示する。
【0012】
第7の態様は、第6の態様に係る読取装置であって、前記反射光像を表示しているときに、前記形状を前記放射線像に重ねて表示する。
【0013】
第8の態様は、第5から第7の態様のいずれか一つに係る読取装置であって、ユーザの指示に応じて、前記形状の表示及び非表示を切り替える。
【0014】
第9の態様は、第5から第8の態様のいずれか一つに係る読取装置であって、前記異常領域像の輝度情報に基づいて、読み取られた前記放射線像において前記異常に相当する異常相当領域の輝度情報を調整する異常相当領域輝度調整処理を行う。
【0015】
第10の態様に係るプログラムは、コンピュータ装置を、第1または第5の態様に係る読取装置が備える前記特定部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
第1及び第10の態様によると、イメージングプレートからの光の反射光の検出結果としての第2の画像信号に基づいて、イメージングプレートの表面の異常を適切に特定することができる。
【0017】
第2の態様によると、第1光源が第2光源として機能することから、読取装置の構成を簡素化することができる。
【0018】
第3の態様によると、第1検出器が第2検出器として機能することから、読取装置の構成を簡素化することができる。
【0019】
第4の態様によると、第1検出器が発光光の検出結果としての第1の画像信号を出力した後に、イメージングプレートから放射線像を消去する消去部が設けられていることから、イメージングプレートに記録された放射線像とイメージングプレートの反射光像の両方を容易に得ることができる。
【0020】
第5及び第6の態様によると、ユーザは、放射線像において、イメージングプレートの表面の異常に相当する領域を特定しやすくなる。
【0021】
第7の態様によると、ユーザは、放射線像において、イメージングプレートの表面の異常に相当する領域と、反射光像中の異常領域像とを簡単に見比べることができる。
【0022】
第8の態様によると、ユーザの指示に応じて、異常領域像の形状の表示及び非表示が切り替えられることから、読取装置の利便性が向上する。
【0023】
第9の態様によると、異常相当領域輝度調整処理により適切な放射線像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】読取装置の外観の一例を示す概略図である。
図2】読取装置の構成の一例を示す概略図である。
図3】読取装置の構成の一例を示す概略図である。
図4】読取装置の構成の一例を示す概略図である。
図5】読取装置の構成の一例を示す概略図である。
図6】読取装置の構成の一例を示すブロック図である。
図7】IP存在領域、励起光照射範囲及び検出範囲の一例を示す概略図である。
図8】IP存在領域、励起光照射範囲及び検出範囲の一例を示す概略図である。
図9】IP存在領域、励起光照射範囲及び検出範囲の一例を示す概略図である。
図10】取得全体像の一例を示す概略図である。
図11】取得全体像の一例を示す概略図である。
図12】取得全体像の一例を示す概略図である。
図13】取得全体像の一例を示す概略図である。
図14】読取装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図15】イメージングプレートが傾く様子の一例を示す概略図である。
図16】取得全体像の一例を示す概略図である。
図17】傾き角度特定処理の一例を説明するための概略図である。
図18】傾き角度特定処理の一例を説明するための概略図である。
図19】サイズ特定処理の一例を説明するための概略図である。
図20】イメージングプレートのサイズ及び傾き角度の一例を示す図である。
図21】イメージングプレートのサイズ及び傾き角度の一例を示す図である。
図22】イメージングプレートのサイズの種類の一例を示す図である。
図23】読取装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図24】読取装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図25】取得全体像の一例を示す概略図である。
図26】取得全体像の表示例を示す概略図である。
図27】取得全体像の表示例を示す概略図である。
図28】イメージングプレートのサイズ及び傾き角度の一例を示す図である。
図29】傾き補正処理の一例を説明するための概略図である。
図30】取得全体像の一例を示す概略図である。
図31】切出処理の一例を説明するための概略図である。
図32】切出像の一例を示す概略図である。
図33】切出処理の一例を説明するための概略図である。
図34】切出像の一例を示す概略図である。
図35】切出像の表示例を示す概略図である。
図36】切出処理の一例を説明するための概略図である。
図37】切出像の一例を示す概略図である。
図38】切出像の一例を示す概略図である。
図39】保持部の構成の一例を示す概略図である。
図40】取得全体像の一例を示す概略図である。
図41】切出処理の一例を説明するための概略図である。
図42】切出処理の一例を説明するための概略図である。
図43】切出像の一例を示す概略図である。
図44】取得全体像の一例を示す概略図である。
図45】切出処理の一例を説明するための概略図である。
図46】切出像の一例を示す概略図である。
図47】切出像の一例を示す概略図である。
図48】未露光通知情報の表示例を示す概略図である。
図49】未露光通知情報の表示例を示す概略図である。
図50】未露光通知情報の表示例を示す概略図である。
図51】未露光通知情報の表示例を示す概略図である。
図52】未露光通知情報の表示例を示す概略図である。
図53】未露光通知情報の表示例を示す概略図である。
図54】取得全体像に含まれる放射線像の一例を示す概略図である。
図55】取得全体像に含まれるIP反射光像の一例を示す概略図である。
図56】切出像の表示例を示す概略図である。
図57】切出像の表示例を示す概略図である。
図58】読取装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図59】IP反射光像が複数の小領域に分割される様子の一例を示す概略図である。
図60】読取装置の表示例を示す概略図である。
図61】読取装置の表示例を示す概略図である。
図62】読取装置の構成の一例を示す概略図である。
図63】読取装置の構成の一例を示す概略図である。
図64】読取装置の構成の一例を示す概略図である。
図65】読取装置の構成の一例を示す概略図である。
図66】読取装置の構成の一例を示す概略図である。
図67】読取装置の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は読取装置1の外観の一例を示す概略図である。読取装置1は、放射線像が記録されたイメージングプレート10から当該放射線像を読み取る装置である。読取装置1は、イメージングプレート10に記録された放射線像を検出する装置であるともいえる。
【0026】
イメージングプレート10は、放射線像形成層11を有する平たい形状であり、放射線像を記録する記録媒体である。イメージングプレート10は、例えば、四隅が丸まった略長方形の平たい形状を成している。放射線像形成層11は、照射された放射線のエネルギーを蓄積し、蓄積されたエネルギーに応じた発光光を発する層である。例えば、放射線像形成層11は、樹脂で形成されたフィルムの一方主面に輝尽性蛍光体を塗布することによって形成される。放射線像形成層11に照射される放射線としては、例えばX線が採用される。X線発生器からのX線が撮影対象物を透過してイメージングプレート10に照射されると、X線の強度に応じたエネルギーが放射線像形成層11に蓄積される。X線の強度は、撮影対象物におけるX線吸収領域の分布に基づいたものであるため、放射線像形成層11に蓄積されたエネルギーの分布は、X線による撮影対象物の放射線像である。このように、イメージングプレート10は、例えばX線による放射線像を潜像として記録する。読取装置1は、放射線像形成層11から放射線像を読み取り、読み取った放射線像を表す画像信号(画像データともいう)を生成する。
【0027】
本例では、イメージングプレート10は、例えば、人の口の中に入れられた状態で放射線が照射される。したがって、イメージングプレート10は、人の口の中に入るようなサイズとなっている。そして、イメージングプレート10の放射線像形成層11には、例えば、歯の放射線像が記録される。なお、イメージングプレート10の用途はこれに限られない。
【0028】
以後、イメージングプレート10において、放射線像形成層11側の主面を前面と呼ぶことがある。また、イメージングプレート10において、前面とは反対側の主面を裏面と呼ぶことがある。
【0029】
図1に示されるように、読取装置1は例えば筐体2を備える。筐体2内には、イメージングプレート10から放射線像を読み取る構成が収容されている。当該構成については後述する。
【0030】
筐体2には、挿入口2a及び取出口2bが設けられている。挿入口2aは、例えば筐体2の上面に設けられている。読取装置1のユーザは、挿入口2aからイメージングプレート10を筐体2内に入れることができる。イメージングプレート10は、筐体2内において放射線像が読み取られる。取出口2bは、例えば、筐体2の一側面のうちの下側部分に設けられる。放射線像が読み取られた後のイメージングプレート10(読み取り済みイメージングプレート10ともいう)は取出口2bに排出される。読取装置1のユーザは、取出口2bを通じて、読み取り済みイメージングプレート10を回収することができる。
【0031】
本例では、読取装置1は、イメージングプレート10から放射線像を読み出した後に、イメージングプレート10から放射線像を消去することができる。取出口2bには、例えば、放射線像が消去されたイメージングプレート10が排出される。
【0032】
筐体2には、例えば、ユーザからの操作を受け付ける操作部4が設けられている。操作部4は、例えば複数の操作ボタン4aを備える。各操作ボタン4aは、例えばハードウェアボタンである。複数の操作ボタン4aには、例えば、電源ボタン及び読み取りの開始を指示するためのスタートボタン等が含まれる。操作部4は、ユーザのタッチ操作を検出するタッチセンサを備えてもよい。
【0033】
筐体2には、例えば、表示部3が設けられている。表示部3は、例えば、液晶表示パネルあるいは有機EL(electro-luminescence)表示パネルにより構成される。表示部3は、例えば、文字、記号、図形及び画像などの各種情報を表示することが可能である。表示部3は、イメージングプレート10から読み取られた放射線像(言い換えれば、検出された放射線像)を表示してもよい。
【0034】
操作部4がタッチセンサを備える場合、当該タッチセンサと表示部3とで、表示機能及びタッチ検出機能を有するタッチパネルディスプレイが構成されてもよい。この場合、複数の操作ボタン4aの少なくとも一つが、タッチパネルディスプレイに表示されるソフトウェアボタンに置き換えられてもよいし、操作部4は複数の操作ボタン4aを備えなくてもよい。また、読取装置1は表示部3を備えなくてもよい。
【0035】
筐体2には、例えば、イメージングプレート10を収容可能なプレート収容ケース6及び7が設けられている。プレート収容ケース6及び7は、例えば筐体2の上面に設けられている。プレート収容ケース6は仕切り付きのケースであり、プレート収容ケース7は蓋付きのケースである。読取装置1はプレート収容ケース6及び7の少なくとも一方を備えなくてもよい。
【0036】
筐体2からは、その外側に向かって、ACアダプタ5のケーブル5aが延びている。読取装置1の各部品には、ACアダプタ5から電力が供給される。読取装置1は、ACアダプタ5だけではなく、読取装置1の各部品に電力を供給するバッテリを備えてもよい。あるいは、読取装置1は、ACアダプタ5の代わりにバッテリを備えてもよい。
【0037】
<筐体内の機構の一例について>
図2~5は筐体2内の構成の一例を示す概略図である。図3図2の矢視A-Aの断面構造の一例を示す概略図である。図4図3の矢視B-Bの断面構造の一例を示す概略図である。図6は読取装置1が備える制御部80の構成の一例を主に示すブロック図である。後述するように、イメージングプレート10を保持する保持部20は、筐体2内において、所定方向DR10に沿って移動することが可能である。図3は、イメージングプレート10及び保持部20が、図2に示される状態から移動した様子が示されている。
【0038】
図2~6に示されるように、読取装置1は、例えば、保持部20、光源30、検出器40、駆動部50、一対のガイド部60、消去用光源70、制御部80及びインタフェース部95を備える。これらの構成は筐体2内に設けられている。
【0039】
<制御部について>
制御部80は、読取装置1の動作を統合的に管理することが可能であり、制御回路ともいえる。制御部80は、例えば、表示部3、保持部20、光源30、検出器40、駆動部50、消去用光源70及びインタフェース部95を制御することができる。また、制御部80は、操作部4が受け付けたユーザ操作に応じた処理を行うことができる。
【0040】
制御部80は、例えば、少なくとも一つのプロセッサと、記憶部とを備えるコンピュータ装置によって構成される。制御部80が備える少なくとも一つのプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)が含まれてもよいし、CPU以外のプロセッサが含まれてもよい。制御部80では、少なくとも一つのプロセッサが記憶部(記憶回路ともいう)内のプログラムを実行することによって、以下に説明する各種機能が実現される。
【0041】
制御部80では、少なくとも一つのプロセッサが記憶部内のプログラムを実行することによって、機能ブロックとして、例えば、画像処理部81、表示制御部82、駆動制御部83、保持制御部84、検出制御部85、発光制御部86及び消去制御部87が形成される。
【0042】
画像処理部81は、例えば、検出器40から出力される後述の画像信号に対して画像処理を行うことができる。表示制御部82は表示部3の表示を制御することができる。駆動制御部83は駆動部50を制御することができる。保持制御部84は保持部20を制御することができる。検出制御部85は検出器40を制御することができる。発光制御部86は光源30を制御することができる。消去制御部87は消去用光源70を制御することができる。
【0043】
なお、制御部80の一部の機能あるいは制御部80のすべての機能は、その機能の実現にソフトウェア(言い換えればプログラム)が不要なハードウェア回路で実現されてもよい。例えば、画像処理部81の一部の機能あるいは画像処理部81のすべての機能は、その機能の実現にソフトウェアが不要なハードウェア回路で実現されてもよい。画像処理部81は、他の構成とは独立した画像処理回路であってもよい。また、表示制御部82の一部の機能あるいは表示制御部82のすべての機能は、その機能の実現にソフトウェアが不要なハードウェア回路で実現されてもよい。表示制御部82は、他の構成とは独立した表示制御回路であってもよい。また、駆動制御部83の一部の機能あるいは駆動制御部83のすべての機能は、その機能の実現にソフトウェアが不要なハードウェア回路で実現されてもよい。駆動制御部83は、他の構成とは独立した駆動制御回路であってもよい。また、保持制御部84の一部の機能あるいは保持制御部84のすべての機能は、その機能の実現にソフトウェアが不要なハードウェア回路で実現されてもよい。保持制御部84は、他の構成とは独立した表示制御回路であってもよい。また、検出制御部85の一部の機能あるいは検出制御部85のすべての機能は、その機能の実現にソフトウェアが不要なハードウェア回路で実現されてもよい。検出制御部85は、他の構成とは独立した検出制御回路であってもよい。また、発光制御部86の一部の機能あるいは発光制御部86のすべての機能は、その機能の実現にソフトウェアが不要なハードウェア回路で実現されてもよい。発光制御部86は、他の構成とは独立した発光制御回路であってもよい。また、消去制御部87の一部の機能あるいは消去制御部87のすべての機能は、その機能の実現にソフトウェアが不要なハードウェア回路で実現されてもよい。消去制御部88は、他の構成とは独立した消去制御回路であってもよい。
【0044】
<インタフェース部について>
インタフェース部95は、筐体2の外部の装置(以後、外部装置ともいう)と通信することが可能であって、インタフェース回路、通信回路あるいは通信部ともいえる。外部装置には、パーソナルコンピュータが含まれてもよいし、スマートフォン等の携帯電話機が含まれてもよいし、他のコンピュータ装置が含まれてもよい。また、外部装置には、読取装置1に着脱可能なデータ記録媒体(例えば、フラッシュメモリ)が含まれてもよい。インタフェース部95は、外部装置からの信号を受信し、受信した信号を制御部80に入力することができる。また、インタフェース部95は、制御部80からの信号を外部装置に送信することができる。例えば、インタフェース部95は、制御部80の画像処理部81において画像処理が行われた画像信号を外部装置に送信することができる。インタフェース部95は、外部装置と有線通信を行ってもよいし、無線通信を行ってもよい。インタフェース部95と外装装置との間の通信は、イーサネットに準拠してもよいし、USB(Universal Serial Bus)に準拠してもよいし、WiFiに準拠してもよいし、他の規格に準拠してもよい。
【0045】
<保持部について>
保持部20は、筐体2の挿入口2aから挿入されたイメージングプレート10を保持する。保持部20は、例えば、イメージングプレート10を支持する支持板21と、支持板21に支持されたイメージングプレート10の位置を固定する固定部22とを備える。
【0046】
支持板21は、イメージングプレート10の裏面を支持する主面21a(支持面21aともいう)と、当該主面21aとは反対側の主面21b(裏面21bともいう)とを備える。固定部22は、例えば、イメージングプレート10の周縁部分と接近する複数の固定部分22aを有する。固定部22は固定部材ともいえる。複数の固定部分22aは、イメージングプレート10の周縁部分を取り囲むように当該周縁部分と接近する。これにより、支持板21に対するイメージングプレート10の位置(つまり相対位置)及び姿勢(つまり相対姿勢)が固定される。本例では、例えば、イメージングプレート10の両長辺のそれぞれに対して2つの固定部分22aが接近し、イメージングプレート10の両短辺のそれぞれに対して1つの固定部分22aが接近する。
【0047】
各固定部分22aは、保持制御部84による制御によって、支持板21に支持されたイメージングプレート10に接近する接近位置と、支持板21に支持されたイメージングプレート10から離間する離間位置との間で移動することが可能である。イメージングプレート10は、各固定部分22aが離間位置に存在する状態で、挿入口2aから筐体2内に投入されて、支持板21で支持される。その後、各固定部分22aが離間位置から接近位置に移動することによって、イメージングプレート10の位置及び姿勢が固定部22で固定される。各固定部分22aは、接近位置に存在する場合、例えば、イメージングプレート10の周縁部分と接している。
【0048】
なお、複数の固定部分22aの少なくとも一つは、接近位置に存在する場合、イメージングプレート10の周縁部分と接しなくてもよい。また、固定部22の構成は上記の限りではない。また、保持部20の構成は上記の限りではない。
【0049】
<駆動部及び一対のガイド部について>
駆動部50は、駆動制御部83による制御によって、保持部20を所定方向DR10に沿って移動することが可能である。これにより、保持部20で保持されたイメージングプレート10も所定方向DR10に沿って移動することができる。駆動部50は、保持部20を通じてイメージングプレート10を所定方向DR10に沿って移動することが可能であるともいえる。
【0050】
一対のガイド部60は、保持部20をその間に挟んだ状態で所定方向DR10に沿って延在している。各ガイド部60の内側には所定方向DR10に沿って延びる溝が形成されている。支持板21の互いに対向する一対の側縁部は、一対のガイド部60の内側の溝にそれぞれ嵌合している。これにより、一対のガイド部60は、保持部20の所定方向DR10に沿った移動を案内することが可能である。なお、ガイド部60の構成はこの限りではない。
【0051】
駆動部50は、例えば、モータ51、ネジ軸部52及びナット部53を有するボールネジ機構で構成されている。モータ51は、駆動制御部83によって制御される。ネジ軸部52は、周囲にネジ溝が形成された棒状部材である。ネジ軸部52は、所定方向DR10に沿って延びており、モータ51によって回転させられる。ナット部53は、保持部20に固定されている。ナット部53は、例えば、保持部20の支持板21の裏面21bに固定されている。ネジ軸部52はナット部53に螺合している。モータ51の正転方向または逆転方向の回転に応じて、ネジ軸部52が正転方向または逆転方向に回転する。保持部20は、ネジ軸部52の正転方向の回転に応じて、所定方向DR10に沿って一方側に移動する。このとき、一対のガイド部60は、保持部20の一方側への移動を案内する。一方で、保持部20は、ネジ軸部52の逆転方向の回転に応じて、所定方向DR10に沿って他方側に移動する。このとき、一対のガイド部60は、保持部20の他方側への移動を案内する。駆動部50の構成はこの限りではない。
【0052】
駆動部50は、イメージングプレート10からの放射線像の読み取りが開始する読取開始位置に、イメージングプレート10を保持した保持部20を移動させることができる。また、駆動部50は、イメージングプレート10からの放射線像の読み取りが終了すると、イメージングプレート10の放射線像の消去が行われる消去位置に、イメージングプレート10を保持した保持部20を移動させることができる。図2及び3には、イメージングプレート10からの放射線像の読み取りが行われる様子が示されている。図4及び5には、イメージングプレート10から放射線像が消去される様子が示されている。
【0053】
<光源及び検出器について>
本例では、図6に示されるように、光源30と、それを制御する発光制御部86と、検出器40と、それを制御する検出制御部85とで、イメージングプレート10から放射線像を読み取る光測定器90が構成されている。光測定器90を構成する光源30、検出器40、検出制御部85及び発光制御部86は、一つのケースに収容されてユニット化されてもよいし、一つのケースに収容されていなくてもよい。
【0054】
本開示では、物体に作用する光を作用光L10と呼ぶ。そして、物体に作用光L10が作用して生じる光を被作用光L20と呼ぶ。励起光L1は作用光L10の一例である。輝尽光を生じさせる励起力を持たないが物体に反射光を生じさせる光も作用光L10の別例である。作用光L10は、励起光L1と、励起光L1ではない作用光との少なくとも1つからなる光であるともいえる。被作用光L20は、作用光L10の作用を受けて物体から発する光である。
【0055】
光源30は、保持部20に保持されたイメージングプレート10に対して、放射線像形成層11を励起させるための、作用光L10としての励起光L1を照射することが可能である。光源30は保持部20の支持面21aに向けて励起光L1を出射する。光源30は、励起光L1をイメージングプレート10上で一方向(主走査方向DRmともいう)に走査することが可能である。本実施形態では、主走査方向DRmは、所定方向DR10に対して垂直な方向である。つまり、主走査方向DRmは、保持部20の移動方向に対して垂直な方向である。
【0056】
励起光L1は例えば可視光のレーザ光である。励起光L1は、例えば、赤色レーザ光であってもよいし、他の色のレーザ光であってもよい。放射線像形成層11に励起光L1が照射されると、放射線像形成層11に蓄積されたエネルギーの分布に応じて放射線像形成層11が発光し、放射線像形成層11から被作用光L20としての発光光L2が発せられる。発光光L2は、輝尽光とも呼ばれ、例えば青色の可視光である。検出器40は、イメージングプレート10からの発光光L2を検出し、検出した発光光L2の強度に応じた電気信号を出力する。発光光L2を、反射によらずにイメージングプレート10が発光起点となる光と考えてもよい。
【0057】
光源30は、例えば、励起光L1を生成して出力するレーザ発生部と、励起光L1をイメージングプレート10上で主走査方向DRmに走査する走査部とを有する。レーザ発生部は、例えば半導体レーザであって、発光制御部86によって制御される。レーザ発生部は、レーザダイオードであってもよいし、他の半導体レーザであってもよい。走査部は、例えば、レーザ発生部からの励起光L1を、イメージングプレート10の放射線像形成層11に向けて反射するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーである。MEMSミラーは、発光制御部86による制御によって、放射線像形成層11上での励起光L1の照射点が主走査方向DRmに移動するように励起光L1の反射角度を変化させる。
【0058】
検出器40は、イメージングプレート10からの発光光L2(図3参照)が入射する光学フィルタ42と、光学フィルタ42から出射される発光光L2を検出するセンサ41とを備える。センサ41は検出制御部85によって制御される。光学フィルタ42は、センサ41での発光光L2の検出面に対向するように配置されている。光学フィルタ42の発光光L2に対する透過率(発光光透過率ともいう)は非常に高くなっている。したがって、光学フィルタ42は、イメージングプレート10からの発光光L2を十分に透過させてセンサ41に出射する。一方で、光学フィルタ42の励起光L1に対する透過率(励起光透過率ともいう)は、発光光透過率よりも低くなっている。例えば、励起光透過率は、発光光透過率の10%程度になっている。よって、光学フィルタ42は、センサ41に向かう、イメージングプレート10での励起光L1の反射光L4を減衰させる。本開示では、反射光L4には散乱光が含まれる。
【0059】
センサ41は、光学フィルタ42を透過した発光光L2を検出し、検出した発光光L2の強度に応じた電気信号を出力することが可能である。センサ41は、例えば、複数のフォトダイオードで構成されてもよいし、光電子増倍管で構成されてもよい。
【0060】
読取装置1において、イメージングプレート10から放射線像が読み取られる処理(読取処理ともいう)が行われる場合、イメージングプレート10を保持した保持部20は、駆動部50によって読取開始位置に搬送される。そして、光測定器90は読取処理を開始する。読取処理では、光源30が、発光制御部86による制御によって、励起光L1をイメージングプレート10上で主走査方向DRmに走査する処理(主走査方向スキャンともいう)を繰り返し実行する。一方で、読取処理において、駆動部50は、イメージングプレート10を保持した保持部20を、所定方向DR10に沿った一方向DRs(副走査方向DRsともいう)に移動させる。副走査方向DRsは主走査方向DRmに垂直な方向である。保持部20が副走査方向DRsに移動している間に、主走査方向スキャンが繰り返し実行されることにより、イメージングプレート10の放射線像形成層11に対して励起光L1がラスタスキャンされる。これにより、読取処理では、放射線像形成層11の全領域にわたって励起光L1が順次照射されて、放射線像形成層11の全領域が励起光L1で走査される。放射線像形成層11に対して励起光L1がラスタスキャンされる間、検出器40のセンサ41が、ラスタスキャンに応じて放射線像形成層11が順次発する発光光L2を検出することによって、放射線像形成層11から放射線像が読み取られる。センサ41は、励起光L1のラスタスキャン中の発光光L2の検出結果として、読み取られた放射線像(言い換えれば、検出された放射線像)を表す画像信号を検出制御部85に出力する。この画像信号には、読み取られた放射線像を表す複数の画素の輝度値(言い換えれば画素値)が含まれる。センサ41は、例えば、グレースケールの画像信号を出力する。以後、検出器40で読み取られた放射線像を検出放射線像と呼ぶことがある。
【0061】
ここで、本願における走査について説明する。ラスタスキャンは、2次元の走査対象を、点で1次元的に走査(スキャン)して線(走査線(スキャンライン))を得て、次いでその直角方向に所定画素分ずれた位置で同様な1次元的な走査を繰り返すことで2次元の面の画像を得る方法を指すことがある。2次元の面の画像を得る目的が達成できるのであれば、1次元的走査は直線の走査でなければならないことはなく、ずらす方向も直角方向でなければならないことはない。また、単位走査は必ずしも同じ方向であることを要するものではなく、例えば反対方向に往と復を繰り返してもよい。本願では、ラスタスキャンの1次元的走査のように、2次元の面の画像を形成するために集合する走査の各々を単位走査とし、単位走査の走査方向を主走査方向とし、ラスタスキャンでずれる直角方向のように、単位走査と交差する方向を単位走査交差方向とし、単位走査を単位走査方向にずらしながら繰り返して2次元の走査を行うことを単位走査反復走査とする。単位走査を反復するために単位走査を単位走査交差方向に移動させる走査を副走査とし、副走査と交差する方向に行う単位走査を主走査とする。主走査方向は主走査の走査方向であるといえ、副走査方向は副走査の走査方向であるといえる。本願構成で採用される走査は、単位走査反復走査であればよいのであるが、実施形態の説明としては、単位走査反復走査の代表としてラスタスキャンによる走査を説明していく。
【0062】
本例では、イメージングプレート10が保持部20で適切に保持されている状態では、図2及び4に示されるように、イメージングプレート10の短手方向が主走査方向DRmと平行を成し、イメージングプレート10の長手方向が副走査方向DRsと平行を成す。ここで、イメージングプレート10が保持部20で適切に保持されている状態でのイメージングプレートの姿勢を基準姿勢と呼ぶ、本例では、基準姿勢は、イメージングプレート10の短手方向が主走査方向DRmと平行を成し、イメージングプレート10の長手方向が副走査方向DRsと平行を成すようなイメージングプレート10の姿勢である。なお、基準姿勢はこの限りではない。
【0063】
イメージングプレート10は、基本的には、基準姿勢で保持部20に保持される。ただし、固定部22の不具合等により保持部20が適切にイメージングプレート10を保持していない場合、イメージングプレート10は基準姿勢から傾いた状態で保持部20で保持されることもある。
【0064】
本例では、センサ41は、例えば、検出した光の強度が大きいほど、値の大きい輝度値を出力する。イメージングプレート10の放射線像形成層11では、放射線の照射強度が大きく蓄積エネルギーが大きい部分ほど、当該部分からの発光光L2の強度は大きい。したがって、放射線像形成層11において蓄積エネルギーが大きい部分からの発光光L2の検出に基づく像についてセンサ41が出力する輝度値は大きくなる。
【0065】
例えば、放射線像形成層11に歯の放射線像が記録される場合を考える。この場合、放射線像形成層11において歯の放射線像が記録されている部分、つまり、歯を透過した放射線が照射された部分からの発光光L2の強度は比較的小さい。よって、検出放射線像のうち歯が写る部分についてのセンサ41からの輝度値は比較的小さい。一方で、放射線像形成層11において放射線が直接照射された部分(直接照射部分ともいう)からの発光光L2の強度は比較的大きい。よって、検出放射線像のうち、放射線像形成層11の直接照射部分に相当する像についてセンサ41から出力される輝度値は比較的大きい。
【0066】
本例では、光学フィルタ42は、励起光L1を減衰させるものの、励起光L1をある程度は透過させる。したがって、センサ41は、イメージングプレート10が発する発光光L2だけではなく、イメージングプレート10での励起光L1の反射光L4もある程度検出する。よって、センサ41から出力される検出放射線像の輝度値には、検出された発光光L2の強度に応じた輝度値(発光光対応輝度値ともいう)と、検出された反射光L4に応じた輝度値(反射光対応輝度値ともいう)とが含まれる。発光光対応輝度値は、例えば、反射光対応輝度値の10倍以上の値となっている。よって、検出器40から出力される画像信号に基づく検出放射線像は、反射光L4の影響をあまり受けておらず、イメージングプレート10に記録されている放射線像を適切に表している。
【0067】
また、本例では、イメージングプレート10の放射線像形成層11においては、部分的に、放射線の照射に応じたエネルギーが蓄積されていない未露光部分が存在することがある。例えば、イメージングプレート10に対して撮影対象物越しに放射線が照射される場合、放射線を発する光源の位置ずれ等によって、放射線像形成層11において、本来は放射線が照射されるべき部分に対して放射線が照射されずに、部分的に未露光部分が発生することがある。この部分的な未露光部分はコーンカットと呼ばれることがある。また、放射線像形成層11において、放射線が照射された部分から意図せずに放射線像が消えてしまい、未露光部分が部分的に発生することがある。例えば、放射線像を記録するイメージングプレート10は、通常、周囲の光が照射されないように、カバーで覆われた上で保管される。しかしながら、イメージングプレート10が適切にカバーで覆われていない場合には、イメージングプレート10の保管中に周囲の光が放射線像形成層11の一部に照射され、当該一部に記録されていた放射線像が意図せずに消去されることがある。この場合にも、放射線像形成層11は、部分的に未露光部分を有することになる。
【0068】
イメージングプレート10の未露光部分に励起光L1が照射されたとしても、未露光部分からは発光光L2は発せられない。したがって、励起光L1が未露光部分に照射された場合には、検出器40は、発光光L2を検出せずに、未露光部分での励起光L1の反射光L4を検出する。よって、検出器40が出力する画像信号には、未露光部分の反射光像、つまり、未露光部分からの励起光L1の反射光L4の検出に基づく反射光像を表す複数の画素の輝度値が含まれることがある。検出器40が発光光L2及び反射光L4の検出結果として出力する画像信号に基づく全体の像には、発光光L2の検出に基づく検出放射線像だけではなく、未露光部分の反射光像(未露光領域像ともいう)も含まれることがある。検出器40が出力する検出放射線像の輝度値は、例えば、検出器40が出力する未露光領域像の輝度値の10倍以上となっている。
【0069】
また本例では、読取処理において、励起光L1は、イメージングプレート10だけではなく、保持部20のうちイメージングプレート10の外側の部分に対しても照射される。ここで、読取装置1において励起光L1が照射される対象物を照射対象物1200と呼ぶ。本例では、照射対象物1200は、保持部20と、保持部20に保持されたイメージングプレート10とで構成されている。また、照射対象物1200の支持面21a側の主面1200aを支持側主面1200aと呼ぶ。本例では、支持側主面1200aには、イメージングプレート10の放射線像形成層11の表面と、保持部20の固定部22の表面と、保持部20の支持板21の支持面21aのうちイメージングプレート10及び固定部22で覆われていない領域とが含まれる。また、支持側主面1200aにおいてイメージングプレート10が存在する領域R100をIP存在領域R100と呼ぶ。なお、照射対象物1200の支持側主面1200aとは反対側の主面は、支持板21の裏面21bと一致する。
【0070】
本例では、読取処理での支持側主面1200aに対する励起光L1の照射範囲(励起光照射範囲ともいう)R120は、IP存在領域R100を含みつつ、それよりも大きい範囲となっている。励起光照射範囲R120は、読取処理での励起光L1の走査範囲ともいえる。また、読取処理における検出器40の支持側主面1200aでの検出範囲R110も、IP存在領域R100を含みつつ、それよりも大きい範囲となっている。
【0071】
図7は励起光照射範囲R120、検出範囲R110及びIP存在領域R100の一例を示す概略図である。図7及び後述の図8及び9では、イメージングプレート10の記載は省略している。図7に示されるように、励起光照射範囲R120及び検出範囲R110のそれぞれは、IP存在領域R100を含みつつ、IP存在領域R100よりも大きい範囲となっている。そして、励起光照射範囲R120及び検出範囲R110は、例えば、互いに同じ大きさであり、かつ互いに同じ位置に存在する。なお、図7では、説明の便宜上、励起光照射範囲R120が検出範囲R110よりも若干大きく示されている。
【0072】
読取処理では、光源30が主走査方向スキャンを繰り返し実行しつつ、イメージングプレート10を保持した保持部20が副走査方向DRsに移動することによって、励起光照射範囲R120に対して励起光L1がラスタスキャンされる。そして、センサ41は、検出範囲R110での励起光L1の照射位置に応じた輝度値を、励起光L1のラスタスキャンに応じて順次出力する。
【0073】
ここで、支持側主面1200aにおいて、IP存在領域R100の外側であり、かつ励起光照射範囲R120及び検出範囲R110の内側の領域をIP外側領域R130と呼ぶ。本例では、励起光照射範囲R120及び検出範囲R110が、IP存在領域R100を含みつつ、IP存在領域R100よりも大きい範囲となっていることから、センサ41は、IP外側領域R130からの励起光L1の反射光L4を検出する。IP外側領域R130には、例えば、固定部22の表面の少なくとも一部と、支持板21の支持面21aのうちイメージングプレート10及び固定部22で覆われていない領域の少なくとも一部とが含まれる。IP外側領域R130は、保持部20の表面、具体的には保持部20のイメージングプレート10側の主面に含まれる。
【0074】
IP外側領域R130に励起光L1が照射されたとしても、IP外側領域R130からは発光光L2は発せられない。したがって、検出器40は、励起光L1がIP外側領域R130に照射された場合、発光光L2を検出せずに、IP外側領域R130からの励起光L1の反射光L4を検出する。よって、読取処理において、検出器40が発光光L2及び反射光L4の検出結果として出力する画像信号には、IP外側領域R130の反射光像、つまり、IP外側領域R130からの励起光L1の反射光L4の検出に基づく反射光像を表す複数の画素の輝度値が含まれる。本例では、検出器40が出力する画像信号に基づく全体の像(取得全体像ともいう)には、検出放射線像だけではなく、IP外側領域R130の反射光像も含まれる。イメージングプレート10に未露光部分が含まれる場合には、取得全体像には、検出放射線像、未露光領域像及びIP外側領域R130の反射光像が含まれる。以後、IP外側領域R130の反射光像をIP外側領域像と呼ぶことがある。
【0075】
本例では、IP外側領域R130に対して、励起光L1が反射しにくくなる処理が行われている。例えば、IP外側領域R130には黒アルマイト処理が行われている。これにより、検出器40は、イメージングプレート10の未露光部分での励起光L1の反射光L4よりも、IP外側領域R130での励起光L1の反射光L4の方が検出しにくくなっている。本例では、黒アルマイト処理により、IP外側領域R130では、ほとんど励起光L1が反射しなくなっている。検出器40が出力する未露光領域像の輝度値は、例えば、検出器40が出力するIP外側領域像の輝度値の3倍以上となっている。なお、黒アルマイト処理は、保持部20の表面のうち、IP外側領域R130以外の領域に対しても行われてもよい。例えば、黒アルマイト処理は、保持部20の表面の全領域に行われてもよい。
【0076】
励起光照射範囲R120、検出範囲R110及びIP存在領域R100の関係は上記の例に限られない。図8及び9は、励起光照射範囲R120、検出範囲R110及びIP存在領域R100の他の一例を示す概略図である。図8の例では、励起光照射範囲R120は、検出範囲R110及びIP存在領域R100を含みつつ、検出範囲R110及びIP存在領域R100よりも大きくなっている。図9の例では、検出範囲R110は、励起光照射範囲R120及びIP存在領域R100を含みつつ、励起光照射範囲R120及びIP存在領域R100よりも大きくなっている。
【0077】
図9の例では、検出範囲R110には、支持側主面1200aにおける、励起光照射範囲R120以外の領域(照射範囲外領域ともいう)が含まれている。したがって、検出器40が出力する画像信号には、照射範囲外領域に対応する輝度値も含まれるが、当該輝度値は零となる。この場合、検出器40は、照射範囲外領域に対応する輝度値を含まない画像信号を出力してもよい。
【0078】
<消去用光源について>
本例では、図6に示されるように、消去用光源70と、それを制御する消去制御部87とで、イメージングプレート10から放射線像を消去する消去処理を行う消去部91が構成されている。消去部91を構成する消去用光源70及び消去制御部87は、一つのケースに収容されてユニット化されてもよいし、一つのケースに収容されていなくてもよい。消去用光源70は、イメージングプレート10から放射線像を消去するための消去光L3をイメージングプレート10に照射することが可能である。消去光L3は、例えば可視光である。消去光L3は、白色光であってもよいし、赤色の可視光であってもよいし、他の色の可視光であってもよい。消去用光源70は、LED(Light Emission Diode)であってもよいし、ハロゲンランプであってもよいし、他の光源であってもよい。
【0079】
図4及び5に示されるように、消去用光源70は、例えば一度の照射で、イメージングプレート10の放射線像形成層11の全領域に消去光L3を照射することができる。消去処理では、放射線像形成層11に消去光L3が照射されることにより、放射線像形成層11から放射線像が消去される。
【0080】
駆動部50は、光測定器90での読取処理が終了すると、イメージングプレート10を保持する保持部20を消去位置まで移動させる。保持部20が消去位置まで移動すると、消去部91が消去処理を行う。消去処理では、消去用光源70が、消去制御部87による制御によって、イメージングプレート10の放射線像形成層11の全領域に対して消去光L3を照射する。これより、イメージングプレート10から放射線像が消去される。
【0081】
駆動部50は、イメージングプレート10から放射線像が消去されると、保持部20を排出位置まで移動させる。保持部20が排出位置まで移動すると、保持部20の各固定部分22aが接近位置から離間位置まで移動する。その後、放射線像が消去されたイメージングプレート10が取出口2bに排出される。以後、消去済みイメージングプレート10と言えば、放射線像が消去されたイメージングプレート10を意味する。
【0082】
<画像処理部について>
制御部80の画像処理部81は、検出制御部85を通じて、センサ41から出力される画像信号を受け取る。画像処理部81は、センサ41からの画像信号に含まれる複数の輝度値のそれぞれに対して画素位置情報を対応付ける。ある輝度値に対応付けられる画素位置情報とは、取得全体像において、当該ある輝度値を有する画素の位置(画素位置ともいう)を示す情報である。
【0083】
ここで、読取処理では、駆動部50は、主走査方向スキャンの繰り返しに合わせて保持部20を副走査方向DRsに移動する。具体的には、主走査方向スキャンが所定回数実行される間に、励起光照射範囲R120の全領域が励起光L1で照射されるように、駆動部50は保持部20を副走査方向DRsに移動する。そして、センサ41は、検出範囲R110での励起光L1の照射位置に応じた輝度値を、励起光L1のラスタスキャンに応じて順次出力する。読取処理では、読取装置1がこのように動作することから、励起光照射範囲R120と、検出範囲R110と、1回の主走査方向スキャンにかかる時間と、主走査方向スキャンの繰り返し周期と、読取処理での主走査方向スキャンの実行回数とが分かれば、センサ41があるタイミングで出力する輝度値が、取得全体像のどの位置の画素の輝度値であるのかが分かる。画像処理部81は、励起光照射範囲R120と、検出範囲R110と、1回の主走査方向スキャンにかかる時間と、主走査方向スキャンの繰り返し周期と、読取処理での主走査方向スキャンの実行回数とに基づいて、センサ41からの画像信号に含まれる複数の輝度値のそれぞれに対して画素位置情報を対応付ける。なお、検出制御部85が、センサ41からの画像信号に含まれる複数の輝度値のそれぞれに対して画素位置情報を対応付けてもよい。
【0084】
また、画像処理部81は、センサ41からの画像信号に対して画像処理を行う。画像処理部81は、例えば、画像処理後の画像信号と、それに含まれる各輝度値に対応付けた画素位置情報とを表示制御部82に出力する。表示制御部82は、例えば、画像処理後の画像信号と、当該画像信号の各輝度値に対応付けられた画素位置情報とに基づいて、検出放射線像を含む取得全体像を表示部3に表示させる。
【0085】
画像処理部81が行う画像処理には輝度反転処理が含まれてもよい。輝度反転処理とは、輝度反転処理が行われる前の画像信号の各輝度値に対して、当該輝度値が大きいほど小さくなるような変換を行う処理である。ここで、輝度値が取り得る範囲の最大値を輝度最大値と呼ぶ。例えば、輝度反転処理が行われる前の画像信号に含まれるある輝度値を、輝度最大値から差し引いて得られる値が、変換後の当該ある輝度値となる。画像信号に対して輝度反転処理が行われることによって、画像処理後の画像信号では、画像処理前の画像信号とは異なり、イメージングプレート10において蓄積エネルギーが小さい部分からの発光光L2の検出に基づく放射線像の輝度値は大きくなり、イメージングプレート10において蓄積エネルギーが大きい部分からの発光光L2の検出に基づく放射線像の輝度値は小さくなる。また、画像処理後の画像信号では、未露光領域像の輝度値及びIP外側領域像の輝度値は、検出放射線像の輝度値よりも大きくなる。
【0086】
なお、画像処理部81が行う画像処理には、輝度反転処理が含まれなくてもよいし、輝度反転処理以外の処理が含まれてもよい。画像処理には、輝度反転処理以外の処理として、例えば、オフセット補正及び対数変換が含まれてもよい。
【0087】
図10及び11は、輝度反転処理が行われる前の画像信号に基づく取得全体像(反転前全体像ともいう)100aの一例を示す概略図である。図12及び13は、輝度反転処理が行われた後の画像信号に基づく取得全体像(反転後全体像ともいう)100bの一例を示す概略図である。図10~13では、反転前全体像100a及び反転後全体像100bがグレースケールで示されている。図10~13では、像の輝度値が大きいほど、その像は明るく(言い換えれば白く)示され、像の輝度値が小さいほど、その像は暗く(言い換えれば黒く)示されている。なお、読取装置1で得られる像を示す後述の図についても同様である。
【0088】
図10には、発光光L2の検出に基づく放射線像(言い換えれば検出放射線像)101aとIP外側領域像102aとを含む反転前全体像100aが示されている。図11には、放射線像101aと、IP外側領域像102aと、未露光領域像103aとを含む反転前全体像100aが示されている。図12には、放射線像101bとIP外側領域像102bとを含む反転後全体像100bが示されている。図13には、放射線像101bと、IP外側領域像102bと、未露光領域像103bとを含む反転後全体像100bが示されている。本例では、センサ41の検出範囲R110が長方形であることから、図10~13に示されるように、取得全体像の形状は長方形となる。
【0089】
表示制御部82は、画像処理後の画像信号に基づいて反転後全体像100bを表示部3に表示させる場合、例えば、図12及び13に示されるようなグレースケールで反転後全体像100bを表示部3に表示させる。図12及び13は、反転後全体像100bの表示例を示す図であるともいえる。また、表示制御部82は、輝度反転処理が行われる前の画像信号に基づいて反転前全体像100aを表示部3に表示させる場合、例えば、図10及び11に示されるようなグレースケールで反転前全体像100aを表示部3に表示させる。図10及び11は、反転前全体像100aの表示例を示す図であるともいえる。
【0090】
<読取装置の動作の一例>
図14は読取装置1の動作の一例を示すフローチャートを示す図である。筐体2の挿入口2aから挿入されたイメージングプレート10が保持部20で保持され、操作部4に含まれるスタートボタンが操作されると、図14のステップs1が実行される。スタートボタンの操作は、図14に示される一連の処理の開始指示操作であるともいえる。
【0091】
ステップs1では、駆動部50が、駆動制御部83による制御によって、保持部20を読取開始位置に移動させる。次にステップs2において、光測定器90が、イメージングプレート10から放射線像を読み取る読取処理を行う。次にステップs3において、駆動部50は、駆動制御部83による制御によって、保持部20を消去位置に移動させる。次にステップs4において、消去用光源70が、消去制御部87による制御によって、消去光L3をイメージングプレート10に照射することによって、イメージングプレート10から放射線像が消去される消去処理が行われる。次にステップs5において、駆動部50は、駆動制御部83による制御によって、保持部20を排出位置に移動させる。次にステップs6において、イメージングプレート10は筐体2の取出口2bに排出される。そしてステップs7において、表示部3は、表示制御部82による制御によって、取得全体像を表示する。ステップs7では、表示部3は、例えば、反転後全体像を図12及び13のようにグレースケール表示する。なお、ステップs7は、ステップs2の後であれば、いつでも実行されてもよい。例えば、ステップs7はステップs3とステップs4の間に実行されてもよい。
【0092】
<イメージングプレートの傾き角度の特定について>
画像処理部81は、例えば、イメージングプレート10の基準姿勢からの傾き角度(IP傾き角度ともいう)を特定する傾き角度特定処理を行ってもよい。画像処理部81は、傾き角度特定処理において、例えば、検出器40が出力する画像信号に基づいてIP傾き角度を特定する。画像処理部81はIP傾き角度を特定する特定部として機能する。以下に傾き角度特定処理の具体例について説明するが、傾き角度特定処理は下記の例に限られない。
【0093】
上述のように、本例の基準姿勢とは、イメージングプレート10の短手方向及び長手方向が主走査方向DRm及び副走査方向DRsにそれぞれ平行となるようなイメージングプレート10の姿勢である。保持部20がイメージングプレート10を適切に保持していない場合、保持部20で保持されたイメージングプレート10をその前面側から見ると、図15に示されるように、イメージングプレート10の長手方向(IP長手方向ともいう)が副走査方向DRsに対して傾いて、イメージングプレート10が基準姿勢に対して傾くことがある。言い換えれば、イメージングプレート10の短手方向(IP短手方向ともいう)が主走査方向DRmに対して傾いて、イメージングプレート10が基準姿勢に対して傾くことがある。図15では、基準姿勢のイメージングプレート10が破線で示されている。
【0094】
本例では、IP傾き角度、つまりイメージングプレート10の基準姿勢からの傾き角度は、副走査方向DRsに対するIP長手方向の傾き角度と一致する。言い換えれば、IP傾き角度は、主走査方向DRmに対するIP短手方向の傾き角度と一致する。
【0095】
一方で、センサ41の検出範囲R110(図7等参照)の長手方向は、センサ41からの画像信号に基づく取得全体像の長手方向に対応する。本例では、検出範囲R110の長手方向は副走査方向DRsに平行であることから、取得全体像の長手方向は、副走査方向DRsに対応しているといえる。したがって、イメージングプレート10の姿勢が基準姿勢である場合、取得全体像の長手方向と、取得全体像のうちのイメージングプレート10に相当する部分(IP相当部分ともいう)の長手方向とは、互いに一致する。一方で、イメージングプレート10が基準姿勢に対して傾いている場合、取得全体像のIP相当部分の長手方向は、取得全体像の長手方向に対して傾くことになる。言い換えれば、イメージングプレート10が基準姿勢に対して傾いている場合、取得全体像に含まれるIP相当部分の短手方向は、取得全体像の短手方向に対して傾くことになる。
【0096】
図16は、イメージングプレート10が基準姿勢に対して傾いている場合に得られる反転前全体像100aの一例を示す図である。図16の例では、反転前全体像100aに含まれるIP相当部分105aの長手方向は、反転前全体像100aの長手方向に対して傾いている。反転前全体像100aの長手方向に対するIP相当部分105aの長手方向の傾き角度は、IP傾き角度と一致する。
【0097】
このように、本例では、取得全体像の長手方向に対するIP相当部分の長手方向の傾き角度は、IP傾き角度と一致する。そこで、画像処理部81は、センサ41からの画像信号に基づいて、取得全体像の長手方向に対するIP相当部分の長手方向の傾き角度を求める。そして、画像処理部81は、求めた傾き角度をIP傾き角度とする。以下にこの画像処理部81の動作について詳細に説明する。
【0098】
傾き角度特定処理において、画像処理部81は、輝度反転処理が行われる前の画像信号(反転前の画像信号ともいう)に基づく反転前全体像を二値化して二値化像を生成する。画像処理部81は、まず、反転前の画像信信号に含まれる、反転前全体像の各輝度値と、予め設定されたしきい値とを比較する。そして、画像処理部81は、反転前全体像の各輝度値について、しきい値以上の輝度値を“1”に置き換え、しきい値未満の輝度値を“0”に置き換える。これにより、反転前全体像が二値化されて二値化像が得られる。
【0099】
二値化で使用されるしきい値は、例えば、反転前の画像信号に含まれるIP外側領域像の輝度値よりも大きく、かつ反転前の画像信号に含まれる未露光領域像の輝度値よりも小さい値に設定される。例えば、反転前の画像信号に含まれるIP外側領域像の輝度値が1000とし、反転前の画像信号に含まれる未露光領域像の輝度値が3000である場合を考える。この場合、しきい値は、例えば2000に設定される。しきい値は、例えば、実稼働前の読取装置1で得られた反転前の画像信号に基づいて設定され、読取装置1の画像処理部81に予め記憶される。なお、反転前の画像信号に含まれる検出放射線像の輝度値は、反転前の画像信号に含まれる未露光領域像の輝度値よりも大きくなることから(図11参照)、しきい値は、反転前の画像信号に含まれる検出放射線像の輝度値よりも小さくなる。
【0100】
しきい値が上記のように設定されることによって、二値化像では、IP外側領域に相当する部分の各輝度値は“0”となる。また、イメージングプレート10に未露光部分が含まれているか否かにかかわらず、二値化像では、イメージングプレート10に相当する部分の各輝度値は“1”となる。
【0101】
図17は二値化像500の一例を示す概略図である。図17には、図16に示される反転前全体像100aを二値化して得られた二値化像500が示されている。図17では、二値化像500において、輝度値が“1”の領域(高輝度領域ともいう)501は白で示され、輝度値が“0”の領域(低輝度領域ともいう)502は黒で示されている。図17から理解できるように、二値化像500では、高輝度領域501がイメージングプレート10に相当し、低輝度領域502がIP外側領域に相当する。高輝度領域501の外形は、イメージングプレート10の外形に応じた形状となる。
【0102】
ここで、二値化像500に含まれる高輝度領域501は、反転前全体像100aに含まれるIP相当部分105aに対応する。画像処理部81は、傾き角度特定処理において、生成した二値化像500に含まれる高輝度領域501を構成する複数の画素の位置を分析対象データとして主成分分析を行って、分析対象データについての第1主成分軸を求める。
【0103】
主成分分析において、画像処理部81は、二値化像500に含まれる高輝度領域501の重心501a(図17参照)を求める。そして、画像処理部81は、図17に示されるように、重心501aを原点とするXY座標系を二値化像500に対して設定する。このとき、X軸は反転前全体像100aの長手方向に平行とし、Y軸は反転前全体像100aの短手方向に平行とする。後述するように、画像処理部81は、XY座標系を重心501aを中心にして回転させる。本例では、XY座標系の右回りの回転角度をプラスとし、XY座標系の左回りの回転角度をマイナスとする。X軸が反転前全体像100aの長手方向に平行であり、かつY軸が反転前全体像100aの短手方向に平行であるXY座標系の姿勢を初期姿勢と呼ぶ。
【0104】
画像処理部81は、初期姿勢のXY座標系を二値化像500に対して設定すると、高輝度領域501を構成する複数の画素のそれぞれについて、当該画素の位置510からY軸に下ろした垂線の長さLを求める。次に、画像処理部81は、高輝度領域501を構成する複数の画素についてそれぞれ求めた複数の長さLの分散を求める。この分散を、初期姿勢のときの分散と呼ぶ。
【0105】
画像処理部81は、XY座標系を重心501aを中心にして初期姿勢から右回り520Rに例えば0.1度ずつ回転させ、XY座標系を0.1度回転させるたびに同様にして複数の長さLの分散を求める右回り処理を行う。右回り処理において、画像処理部81は、XY座標系を右回り520Rに最終的に例えば90度回転させる。また、画像処理部81は、XY座標系を重心501aを中心にして初期姿勢から左回り520Lに例えば0.1度ずつ回転させ、XY座標系を0.1度回転させるたびに同様にして複数の長さLの分散を求める左回り処理を行う。左回り処理において、画像処理部81は、XY座標系を左回り520Lに最終的に例えば90度回転させる。
【0106】
画像処理部81は、右回り処理及び左回り処理を実行すると、右回り処理及び左回り処理において得られた複数の分散と初期姿勢のときの分散のうちの最小値を特定する。そして、画像処理部81は、特定した最小値が得られたときのXY座標系のY軸を第1主成分軸とする。第1主成分軸は、高輝度領域501を構成する複数の画素の位置から、それに下ろした垂線の長さの分散が最小となるような軸であると言える。以後、第1主成分軸に垂直であり、かつ重心501aを通る軸を、第2主成分軸と呼ぶことがある。また、右回り処理及び左回り処理において得られる複数の分散と初期姿勢のときの分散のうちの最小値が得られたときのXY座標系を、分散最小姿勢のXY座標系と呼ぶことがある。
【0107】
図18は、図17に示される二値化像500から得られた第1主成分軸551を示す概略図である。図18には、初期姿勢のXY座標系のY軸が破線で示されている。図18に示されるように、第1主成分軸551は高輝度領域501の長手方向に一致する。画像処理部81は、第1主成分軸551を求めると、第1主成分軸551と一致するY軸を有するXY座標系、つまり分散最小姿勢のXY座標系についての初期姿勢からの回転角度αを求める。そして、画像処理部81は、求めた回転角度αを、取得全体像の長手方向に対するIP相当部分の長手方向の傾き角度αとする。初期姿勢のXY座標系のY軸は取得全体像の長手方向に対応し、第1主成分軸551(言い換えれば、分散最小姿勢のXY座標系のY軸)は取得全体像に含まれるIP相当部分の長手方向に対応する。したがって、回転角度αは、取得全体像の長手方向に対するIP相当部分の長手方向の傾き角度であると言える。分散最小姿勢のXY座標系が右回り処理において得られる場合には、回転角度αはプラスの値を示し、分散最小姿勢のXY座標系が左回り処理において得られる場合には、回転角度αはマイナスの値を示す。そして、分散最小姿勢のXY座標系が初期姿勢のXY座標系と一致する場合には、回転角度αは零となる。
【0108】
画像処理部81は、以上のようにして、取得全体像の二値化像500から取得全体像の長手方向に対するIP相当部分の長手方向の傾き角度αを求めると、求めた傾き角度αをIP傾き角度αとする。イメージングプレート10をその前面側から平面視した場合、IP傾き角度αがプラスのときには、イメージングプレート10は基準姿勢に対して右回りに傾斜し、IP傾き角度αがマイナスのときは、イメージングプレート10は基準姿勢に対して左回りに傾斜している。以後、イメージングプレート10の傾きに関して、単に右回りと言えば、イメージングプレート10をその前面側から見たときの右回りを意味し、単に左回りと言えば、イメージングプレート10をその前面側から見たときの左回りを意味する。
【0109】
以上のような傾き角度特定処理は、上述の図14に示される一連の処理の中で実行されてもよいし、図14に示される処理とは別のタイミングで実行されてもよい。また、画像処理部81で求められたIP傾き角度は表示部3で表示されてもよい。このとき、表示部3は、IP傾き角度を、例えば上述のステップs7において取得全体像と同時に表示してもよいし、取得全体像を表示しないときに表示してもよい。
【0110】
このように、本例では、画像処理部81は、イメージングプレート10からの発光光L2及び反射光L4の検出結果としての画像信号に基づいてIP傾き角度を特定していることから、IP傾き角度を適切に特定することができる。
【0111】
例えば、センサ41が反射光L4を検出できない場合であって、イメージングプレート10に未露光部分が含まれる場合を考える。この場合、センサ41からの画像信号に基づく反転前全体像に含まれる未露光領域像及びIP外側領域像の各輝度値は零となる。したがって、反転前全体像を二値化して得られる二値化像500では、未露光領域像及びIP外側領域像に相当する部分の輝度値はすべて“0”となり、未露光領域像及びIP外側領域像に相当する部分はすべて低輝度領域502となる。よって、イメージングプレート10に未露光部分が含まれる場合、二値化像500の高輝度領域501には、未露光部分に相当する部分が含まれなくなり、高輝度領域501は、反転前全体像に含まれるIP相当部分に対応しなくなる。つまり、イメージングプレート10に未露光部分が含まれる場合、高輝度領域501の外形は、イメージングプレート10の外形に応じた形状にならない。このため、画像処理部81は、高輝度領域501について主成分分析を行った場合、イメージングプレート10の長手方向に対応する第1主成分軸を求めることができず、取得全体像の長手方向に対するIP相当部分の長手方向の傾き角度を適切に求めることができない可能性がある。
【0112】
これに対して、本例では、センサ41は反射光L4をある程度検出することができ、画像処理部81は、イメージングプレート10からの発光光L2及び反射光L4の検出結果としての画像信号に基づく反転前全体像を二値化して二値化像500を生成している。そのため、二値化像500では、イメージングプレート10に未露光部分が含まれている場合であっても、図17及び18に示されるように、高輝度領域501は、反転前全体像に含まれるIP相当部分に対応するようになる。つまり、高輝度領域501の外形は、イメージングプレート10の外形の応じた形状となる。これにより、画像処理部81は、高輝度領域501について主成分分析を行った場合、イメージングプレート10の長手方向に対応する第1主成分軸を求めることができ、取得全体像の長手方向に対するIP相当部分の長手方向の傾き角度を適切に求めることができる。よって、画像処理部81はIP傾き角度を適切に特定することができる。
【0113】
<イメージングプレートのサイズの特定について>
画像処理部81は、例えば、イメージングプレート10のサイズ(IPサイズともいう)を特定するサイズ特定処理を行ってもよい。画像処理部81は、サイズ特定処理において、例えば、検出器40が出力する画像信号に基づいてIPサイズを特定する。画像処理部81はIPサイズを特定する特定部として機能する。以下にサイズ特定処理の具体例について説明するが、サイズ特定処理は以下の例に限られない。
【0114】
画像処理部81は、例えば、上記と同様にして、反転前の画像信号に基づく反転前全体像を二値化して二値化像500を生成する。そして、画像処理部81は、生成した二値化像500に基づいてIPサイズを特定する。例えば、画像処理部81は、イメージングプレート10の長手方向のサイズ(長手サイズともいう)と、イメージングプレート10の短手方向のサイズ(短手サイズともいう)とを数値で特定する。
【0115】
画像処理部81は、IPサイズを特定する場合、上記と同様にして、二値化像500に含まれる高輝度領域501を構成する複数の画素の位置を分析対象データとして主成分分析を行って、分析対象データについての第1主成分軸551を求める。そして、画像処理部81は、第1主成分軸551に垂直であって、重心501aを通る第2主成分軸552を求める。
【0116】
図19は第1主成分軸551及び第2主成分軸552の一例を示す概略図である。図19には、上述の図10に示される反転前全体像100aを二値化して得られた二値化像500と、当該二値化像500に基づいて求められた第1主成分軸551及び第2主成分軸552とが示されている。第1主成分軸551は、イメージングプレート10に相当する高輝度領域501の長手方向と平行である。また、第2主成分軸552は高輝度領域501の短手方向と平行である。
【0117】
図19に示されるように、画像処理部81は、高輝度領域501の第1主成分軸551に沿った画素数(長手方向の画素数ともいう)N1を求める。また、画像処理部81は、高輝度領域501の第2主成分軸552に沿った画素数(短手方向の画素数ともいう)N2を求める。そして、画像処理部81は、長手方向の画素数N1に基づいてイメージングプレート10の長手サイズを求め、短手方向の画素数N2に基づいてイメージングプレート10の短手サイズを求める。
【0118】
ここで、本例では、センサ41の検出範囲R110において一辺がMmmの正方形の領域が、取得全体像及び二値化像500の1画素に相当する。Mmmは例えば0.03mm程度である。画像処理部81は、Mmmに対して長手方向の画素数N1を掛け合わせて得られる長さを、イメージングプレート10の長手サイズとする。また、画像処理部81は、Mmmに対して短手方向の画素数N2を掛け合わせて得られる長さを、イメージングプレート10の短手サイズとする。以後、イメージングプレート10について画像処理部81が求めた長手サイズ及び短手サイズをそれぞれ特定長手サイズ及び特定短手サイズと呼ぶことがある。
【0119】
画像処理部81は、サイズ特定処理において、イメージングプレート10の主面の面積(主面面積ともいう)を数値で特定してもよい。この場合、画像処理部81は、高輝度領域501を構成する複数の画素の総数に対して、Mmmの二乗を掛け合わせて得られる値を、イメージングプレート10の主面面積としてもよい。主面面積は、イメージングプレート10の前面の面積であるともいえるし、イメージングプレート10の裏面の面積であるともいえる。以後、イメージングプレート10について画像処理部81が求めた主面面積を特定主面面積あるいは特定面積と呼ぶことがある。
【0120】
図20及び21は、特定長手サイズ、特定短手サイズ及び特定主面面積の一例を示す図である。図20には、上述の図10に示される反転前全体像100aの二値化像500に基づいて特定された長手サイズ、短手サイズ及び主面面積が示されている。図21には、上述の図11に示される反転前全体像100aの二値化像500に基づいて特定された長手サイズ、短手サイズ及び主面面積が示されている。
【0121】
ここで、図10及び11には、基準姿勢から若干傾いた状態のイメージングプレート10に対して励起光L1が照射されることによって得られた反転前全体像100aが示されている。図20には、図10に示される反転前全体像100aの二値化像500から特定されたIP傾き角度も示されており、図21には、図11に示される反転前全体像100aの二値化像500から特定されたIP傾き角度も示されている。
【0122】
図20及び21から理解できるように、反転前全体像100aに未露光領域像103aが含まれない場合の特定長手サイズ、特定短手サイズ及び特定主面面積と、反転前全体像100aに未露光領域像103aが含まれる場合の特定長手サイズ、特定短手サイズ及び特定主面面積とは、ほぼ同じとなる。画像処理部81は、反転前全体像100aに未露光領域像103aが含まれているか否かにかかわらず、イメージングプレート10の長手サイズ、短手サイズ及び主面面積を適切に特定することができる。
【0123】
画像処理部81は、サイズ特定処理において、イメージングプレート10のサイズの種類を特定してもよい。本例では、イメージングプレート10のサイズとして複数種類のサイズが用意されている。読取装置1において、保持部20は、複数種類のサイズのイメージングプレート10のそれぞれを保持することが可能である。そして、読取装置1は、複数種類のサイズのイメージングプレート10のそれぞれから放射線像を読み取ることができる。
【0124】
図22はイメージングプレート10のサイズの種類(IPサイズの種類ともいう)の一例を示す図である。IPサイズの種類として、例えば、サイズ0、サイズ1、サイズ2及びサイズ3の4種類が用意されている。ここで、各種類のサイズでのイメージングプレート10の短手サイズ及び長手サイズをそれぞれ公称短手サイズ及び公称長手サイズと呼ぶ。
【0125】
サイズ0の公称短手サイズ及び公称長手サイズは、それぞれ22mm及び31mmとなっている。サイズ1の公称短手サイズ及び公称長手サイズは、それぞれ24mm及び40mmとなっている。サイズ2の公称短手サイズ及び公称長手サイズは、それぞれ31mm及び41mmとなっている。そして、サイズ3の公称手サイズ及び公称長手サイズは、それぞれ27mm及び54mmとなっている。なお、公称短手サイズと公称長手サイズを掛け合わせて得られる値を公称主面面積あるいは公称面積と呼ぶ。
【0126】
画像処理部81は、例えば、イメージングプレート10の特定短手サイズ、特定長手サイズ及ぶ特定主面面積に基づいて、当該イメージングプレート10のサイズの種類を特定する。例えば、画像処理部81は、特定短手サイズがサイズ0の公称短手サイズと近く、特定長手サイズがサイズ0の公称長手サイズと近く、特定面積がサイズ0の公称面積と近い場合、IPサイズの種類がサイズ0であると判定する。
【0127】
画像処理部81は、例えば、サイズ0の公称短手サイズよりも少し小さい第1しきい値と、サイズ0の公称短手サイズよりも少し大きい第2しきい値とを用いて、特定短手サイズがサイズ0の公称短手サイズと近いか否かを判定する。例えば、画像処理部81は、特定短手サイズが、第1しきい値よりも大きくかつ第2しきい値よりも小さい場合、特定短手サイズがサイズ0の公称短手サイズと近いと判定する。
【0128】
また、画像処理部81は、例えば、サイズ0の公称長手サイズよりも少し小さい第3しきい値と、サイズ0の公称長手サイズよりも少し大きい第4しきい値とを用いて、特定長手サイズがサイズ0の公称長手サイズと近いか否かを判定する。例えば、画像処理部81は、特定長手サイズが、第3しきい値よりも大きくかつ第4しきい値よりも小さい場合、特定長手サイズがサイズ0の公称長手サイズと近いと判定する。
【0129】
また、画像処理部81は、例えば、サイズ0の公称面積よりも少し小さい第5しきい値と、サイズ0の公称面積よりも少し大きい第6しきい値とを用いて、特定面積がサイズ0の公称面積と近いか否かを判定する。例えば、画像処理部81は、特定面積が、第5しきい値よりも大きくかつ第6しきい値よりも小さい場合、特定面積がサイズ0の公称面積と近いと判定する。
【0130】
同様に、画像処理部81は、例えば、特定短手サイズがサイズ1の公称短手サイズと近く、特定長手サイズがサイズ1の公称長手サイズと近く、特定主面面積がサイズ1の公称主面面積と近い場合、IPサイズの種類がサイズ1であると判定する。
【0131】
同様に、画像処理部81は、例えば、特定短手サイズがサイズ2の公称短手サイズと近く、特定長手サイズがサイズ2の公称長手サイズと近く、特定主面面積がサイズ2の公称主面面積と近い場合、IPサイズの種類がサイズ2であると判定する。
【0132】
同様に、画像処理部81は、例えば、特定短手サイズがサイズ3の公称短手サイズと近く、特定長手サイズがサイズ3の公称長手サイズと近く、特定主面面積がサイズ3の公称主面面積と近い場合、IPサイズの種類がサイズ3であると判定する。
【0133】
なお、図10及び11には、サイズ2のイメージングプレート10に対して励起光L1が照射されることによって得られた反転前全体像100aが示されている。したがって、図21及び22に示される特定短手サイズ及び特定長手サイズは、サイズ2のイメージングプレート10の公称短手サイズ及び公称長手サイズにそれぞれ近い値となっている。よって、図10及び11に示される反転前全体像100aに基づいてIPサイズの種類が特定される場合、サイズ3が特定される。
【0134】
以上のようなサイズ特定処理は、上述の図14に示される一連の処理の中で実行されてもよいし、図14に示される処理とは別のタイミングで実行されてもよい。また、表示部3は、例えば、画像処理部81が特定した短手サイズ、長手サイズ、主面面積及びIPサイズの種類の少なくとも一つを表示してもよい。この場合、表示部3は、短手サイズ、長手サイズ、主面面積及びIPサイズの種類の少なくとも一つを、例えば上述のステップs7において取得全体像と同時に表示してもよいし、取得全体像を表示しないときに表示してもよい。また、表示部3は、短手サイズ、長手サイズ、主面面積及びIPサイズの種類の少なくとも一つを、IP傾き角度と同時に表示してもよいし、IP傾き角度を表示しないときに表示してもよい。また、表示部3は、短手サイズ、長手サイズ、主面面積及びIPサイズの種類の少なくとも二つを同時に表示してもよい。
【0135】
このように、本例では、画像処理部81は、イメージングプレート10からの発光光L2及び反射光L4の検出結果としての画像信号に基づいてIPサイズを特定していることから、IP傾き角度を特定する場合と同様に、IPサイズを適切に特定することができる。上記のように、イメージングプレート10に未露光部分が含まれる場合であっても、二値化像500の高輝度領域501が、反転前全体像のIP相当部分に対応することから、画像処理部81は、イメージングプレート10の短手サイズ、長手サイズ及び主面面積とIPサイズの種類とを適切に特定することができる。
【0136】
図23は、画像処理部81がIP傾き角度及びIPサイズを特定する場合の当該画像処理部81の一連の動作の一例を示すフローチャートである。図23に示される一連の処理は、上述の図14に示される一連の処理の中で実行されてもよいし、図14に示される処理とは別のタイミングで実行されてもよい。
【0137】
図23に示されるように、ステップs11において、画像処理部81は、反転前の画像信号に基づく反転前全体像を二値化して二値化像500を生成する。次にステップs12において、画像処理部81は、上述のように、二値化像500に基づいてイメージングプレート10の主面面積を特定する。次にステップs13において、画像処理部81は、二値化像500に含まれる高輝度領域501を構成する複数の画素の位置を分析対象データとして主成分分析を行って、分析対象データについての第1主成分軸及び第2主成分軸を求める。
【0138】
次にステップs14において、画像処理部81は、上述のように、二値化像500、第1主成分軸及び第2主成分軸に基づいて、IP傾き角度と、イメージングプレート10の短手サイズ及び長手サイズを特定する。次にステップs15において、画像処理部81は、特定短手サイズ、特定長手サイズ及び特定面積に基づいて、IPサイズの種類がサイズ3であるか否かを判定する。ステップs15では、画像処理部81は、例えば、上述のように、特定短手サイズがサイズ3の公称短手サイズと近く、特定長手サイズがサイズ3の公称長手サイズと近く、特定面積がサイズ3の公称面積と近い場合、IPサイズの種類がサイズ3であると判定する。
【0139】
ステップs15においてYESと判定されると、図23に示される処理が終了する。一方で、ステップs15においてNOと判定されると、ステップs16が実行される。ステップs16において、画像処理部81は、特定短手サイズ、特定長手サイズ及び特定面積に基づいて、IPサイズの種類がサイズ2であるか否かを判定する。ステップs16では、画像処理部81は、例えば、上述のように、特定短手サイズがサイズ2の公称短手サイズと近く、特定長手サイズがサイズ2の公称長手サイズと近く、特定面積がサイズ2の公称面積と近い場合、IPサイズの種類がサイズ2であると判定する。
【0140】
ステップs16においてYESと判定されると、図23に示される処理が終了する。一方で、ステップs16においてNOと判定されると、ステップs17が実行される。ステップs17において、画像処理部81は、特定短手サイズ、特定長手サイズ及び特定面積に基づいて、IPサイズの種類がサイズ1であるか否かを判定する。ステップs17では、画像処理部81は、例えば、上述のように、特定短手サイズがサイズ1の公称短手サイズと近く、特定長手サイズがサイズ1の公称長手サイズと近く、特定面積がサイズ1の公称面積と近い場合、IPサイズの種類がサイズ1であると判定する。
【0141】
ステップs17においてYESと判定されると、図23に示される処理が終了する。一方で、ステップs17においてNOと判定されると、ステップs18が実行される。ステップs18において、画像処理部81は、IPサイズの種類がサイズ0であると判定する。ステップs18の実行後、図23に示される処理が終了する。なお、ステップs18において、画像処理部81は、ステップs15~s17と同様に、特定短手サイズ、特定長手サイズ及び特定面積に基づいて、IPサイズの種類がサイズ0であるか否かを判定してもよい。
【0142】
上記の例では、画像処理部81は、特定短手サイズ、特定長手サイズ及び特定面積に基づいてIPサイズの種類を特定しているが、特定短手サイズ、特定長手サイズ及び特定面積のいずれか一つに基づいて、IPサイズの種類を特定することも可能である。図22に示されるように、本例では、複数種類のサイズの間では、公称短手サイズは互いに異なり、公称長手サイズも互いに異なる。また、複数種類のサイズの間では、公称面積も互いに異なる。画像処理部81は、サイズ0~3のうち、特定短手サイズに最も近い公称短手サイズを有する種類を、イメージングプレート10のサイズの種類としてもよい。また、画像処理部81は、サイズ0~3のうち、特定長手サイズに最も近い公称長手サイズを有する種類を、イメージングプレート10のサイズの種類としてもよい。また、画像処理部81は、サイズ0~3のうち、特定面積に最も近い公称面積を有する種類を、イメージングプレート10のサイズの種類としてもよい。
【0143】
また、画像処理部81は、特定短手サイズ、特定長手サイズ及び特定面積のいずれか二つに基づいてIPサイズの種類を特定してもよい。例えば、画像処理部81は、特定短手サイズがサイズ1の公称短手サイズと近く、特定長手サイズがサイズ1の公称長手サイズと近い場合、IPサイズの種類がサイズ1であると判定してもよい。
【0144】
なお、サイズ特定処理では、イメージングプレート10の長手サイズが特定されなくてもよいし、イメージングプレート10の短手サイズが特定されなくてもよいし、イメージングプレート10の主面面積が特定されなくてもよい。また、サイズ特定処理では、イメージングプレート10のサイズの種類が特定されなくてもよい。
【0145】
<消去済みイメージングプレートに対する励起光の照射>
読取装置1では、消去済みイメージングプレート10に対して光源30が励起光L1を照射し、検出器40が、消去済みイメージングプレート10からの励起光L1の反射光L4を検出して、イメージングプレート10が写る反射光像を取得してもよい。反射光L4は被作用光L20の一例である。この場合、本例では、検出器40は、IP外側領域R130からの励起光L1の反射光L4も検出する。本例では、検出器40は、消去済みイメージングプレート10及びIP外側領域R130からの励起光L1の反射光L4を検出し、その検出結果としての画像信号を出力する。以下に、消去済みイメージングプレート10に対して励起光L1を照射する読取装置1の動作例について説明する。
【0146】
以後、今まで説明してきた画像信号のように、放射線像を記録するイメージングプレート10が保持されている場合の発光光L2及び反射光L4の検出結果としての画像信号を発光時画像信号と呼ぶ。また、今まで説明してきた取得全体像のように、放射線像を含む全体の像、つまり発光時画像信号に基づく全体の像を、発光時全体像と呼ぶ。また、上述の反転前全体像及び反転後全体像を、反転前発光時全体像及び反転後発光時全体像とそれぞれ呼ぶ。
【0147】
また、消去済みイメージングプレート10が保持されている場合の光の反射光の検出結果としての画像信号を消去時画像信号と呼ぶ。また、消去時画像信号に基づく全体の像を消去時全体像と呼ぶ。本例では、消去時全体像には、イメージングプレート10の反射光像、つまりイメージングプレート10での励起光L1の反射光L4の検出に基づく反射光像だけではなく、IP外側領域像も含まれ、放射線像は含まれない。消去時全体像は、センサ41の検出範囲R110の反射光像であるともいえる。イメージングプレート10の反射光像をIP反射光像と呼ぶことがある。また、以後、検出器40が光の検出結果として出力する画像信号に基づく全体の像を取得全体像として読取装置1を説明する。以下の説明では、取得全体像は、発光時全体像及び消去時全体像を含む概念である。
【0148】
図24は本例の読取装置1の動作の一例を示すフローチャートである。操作部4に含まれるスタートボタンが操作されると、図24に示されるように、読取装置1は上述のステップs1~s4を実行する。ステップs2の読取処理では、検出器40は、発光光L2及び反射光L4の検出結果としての発光時画像信号を出力する。
【0149】
ステップs4の消去処理の後、ステップs21において、駆動部50が、消去済みイメージングプレート10を保持する保持部20を読取開始位置に移動する。次にステップs22が実行される。ステップs22では、光源30が消去済みイメージングプレート10の前面及びIP外側領域に対して励起光L1を照射する。そして、検出器40が、消去済みイメージングプレート10の前面及びIP外側領域からの励起光L1の反射光L4を検出し、その検出結果としての消去時画像信号を出力する。消去時画像信号は、例えば、発光時画像信号と同様にグレースケールの画像信号である。
【0150】
ステップs22の後、上述のステップs5及びs6が実行されて、消去済みイメージングプレート10が筐体2の取出口2bに排出される。次にステップs27において、表示制御部82は、ステップs2で得られた発光時画像信号に基づく発光時全体像と、ステップs22で得られた消去時画像信号に基づく消去時全体像とを表示部3に同時にかつ別々に表示させる。ステップs27において、画像処理部81は、発光時全体像及び消去時全体像を例えばグレースケール表示する。
【0151】
なお、ステップs27は、ステップs22の後であれば、いつでも実行されてもよい。例えば、ステップs27はステップs22とステップs5の間に実行されてもよい。また、発光時全体像と消去時全体像とは同時に表示されてなくてもよい。また、ステップs27では、発光時全体像は表示されなくてもよい。上述のサイズ特定処理及び傾き角度特定処理の少なくとも一方は、図24の一連の処理の中で実行されてもよいし、図24の処理とは別のタイミングで実行されてもよい。
【0152】
検出器40が出力する消去時画像信号には、IP反射光像を構成する複数の画素の輝度値と、IP外側領域像を構成する複数の画素の輝度値とが含まれる。消去時画像信号に含まれる輝度値は、検出器40が検出する反射光L4の強度が大きいほど大きい値を示す。したがって、例えば、消去済みイメージングプレート10のある領域での反射光L4の強度が大きい場合、消去時画像信号に含まれる、当該ある領域の反射光像の輝度は大きくなる。
【0153】
図25は消去時全体像200の一例を示す概略図である。図25に示されるように、消去時全体像200には、IP反射光像201及びIP外側領域像202が含まれる。図25の例では、IP反射光像201には、イメージングプレート10の前面が写っている。IP反射光像201は、消去時全体像200でのイメージングプレート10に相当する部分であることから、IP反射光像をIP相当部分ともいう。
【0154】
画像処理部81は、消去時画像信号に対して画像処理を行う。本例では、消去時画像信号に対する画像処理では、発光時画像信号に対する画像処理とは異なり、例えば輝度反転処理は行われない。したがって、画像処理後の消去時画像信号では、画像処理前の消去時画像信号と同様に、イメージングプレート10のある領域での反射光L4の強度が大きい場合、当該ある領域の反射光像の輝度値は大きくなる。一方で、イメージングプレート10のある領域での反射光L4の強度が小さい場合、当該ある領域の反射光像の輝度値は小さくなる。以後、輝度反転処理を含まない画像処理が行われた消去時画像信号に基づく消去時全体像200を、反転前消去時全体像200と呼ぶことがある。
【0155】
ステップs27では、表示制御部82は、例えば、反転後発光時全体像100bと、反転前消去時全体像200とを表示部3にグレースケール表示させてもよい。この場合、表示部3は、上述の図12及び13に示されるようなグレースケールで反転後発光時全体像100bを表示し、上述の図25に示されるようなグレースケールで反転前消去時全体像200を表示してもよい。
【0156】
図26及び27は、表示部3の表示面3aに、反転後発光時全体像100b及び反転前消去時全体像200が表示されている様子の一例を示す概略図である。図26には、イメージングプレート10に未露光部分が含まれない場合の反転後発光時全体像100b及び反転前消去時全体像200が示されている。図27には、イメージングプレート10に未露光部分が含まれる場合の反転後発光時全体像100b及び反転前消去時全体像200が示されている。
【0157】
図26及び27に示されるように、表示部3は、反転後発光時全体像100b及び反転前消去時全体像200を、例えば、同じ大きさで表示してもよいし、横並びに表示してもよい。本例では、表示部3は、像の輝度値が大きいほど、その像を明るく表示することから、反転後発光時全体像100bでは、例えば、歯が写る部分及び未露光領域像103bが明るく表示される。また、反転前消去時全体像200では、イメージングプレート10が写る部分が明るく表示される。
【0158】
また、図26及び27に示されるように、イメージングプレート10に未露光部分が含まれる場合の反転前消去時全体像200と、イメージングプレート10に未露光部分が含まれない場合の反転前消去時全体像200とは同じとなる。ユーザは、表示部3に表示される反転前消去時全体像200(言い換えれば消去時全体像)から、イメージングプレート10の外観を確認することができる。なお、反転後発光時全体像100b及び反転前消去時全体像200の表示方法は図26及び27の例に限られない。
【0159】
上述の図24の例では、検出器40が、光源30からの励起光L1によって励起されたイメージングプレート10からの発光光L2を検出し、その検出結果としての発光時画像信号を出力する。その後、イメージングプレート10から放射線像が消去された後、消去済みイメージングプレート10に対して光源30から励起光L1が照射され、検出器40は、イメージングプレート10からの励起光L1の反射光L4を検出する。これにより、読取装置1は、同じ光源30及び同じ検出器40を使用して、イメージングプレート10に記録された放射線像とイメージングプレート10の反射光像の両方を容易に得ることができる。
【0160】
また、図26及び27の例のように、発光時全体像と消去時全体像とが同時にかつ別々に表示される場合には、ユーザは、発光時全体像と消去時全体像とを見比べやすくなる。つまり、ユーザは、イメージングプレート10から読み取られた放射線像と、イメージングプレート10の外観とを見比べやすくなる。これにより、例えば、ユーザは、イメージングプレート10に未露光部分が含まれていることを容易に特定することができる。以下にこの点について説明する。
【0161】
イメージングプレート10に未露光部分が含まれる場合、発光時全体像のうち当該未露光部分に相当する領域には放射線像が存在しない。しかしながら、ユーザは、当該領域には本来は放射線像が存在し、読取装置1の不具合のために当該領域に放射線像が存在しないのか、イメージングプレート10に未露光部分が含まれているために当該領域に放射線像が存在しないのか、発光時全体像の表示だけでは特定することが難しい。これに対して、図27の例のように、発光時全体像及び消去時全体像が同時にかつ別々に表示される場合には、ユーザは、発光時全体像の表示から、イメージングプレート10から読み取られた放射線像を確認し、消去時全体像の表示からイメージングプレート10外観を確認し、両者を比較することによって、イメージングプレート10に未露光部分が含まれていることを容易に特定することができる。また、ユーザは、イメージングプレート10での未露光部分の範囲も容易に特定することができる。
【0162】
上記の例では、画像処理部81は、発光時全体像に基づいてIP傾き角度を特定しているが、消去時全体像(言い換えれば、消去時画像信号に基づく反射光像)に基づいてIP傾き角度を特定してもよい。同様に、画像処理部81は、IPサイズを消去時全体像に基づいて特定してもよい。
【0163】
画像処理部81は、発光時全体像に基づいてIP傾き角度及びIPサイズを特定する場合と同様にして、消去時全体像に基づいてIP傾き角度及びIPサイズを特定することができる。具体的には、画像処理部81は、反転前消去時全体像200を二値化して二値化像を生成する。この二値化像を第2の二値化像と呼ぶことがある。反転前消去時全体像200を二値化するときのしきい値は、例えば、反転前消去時全体像200に含まれるIP外側領域像202の輝度値よりも大きく、かつ反転前消去時全体像200に含まれるIP反射光像201の輝度値よりも小さく設定される。これにより、第2の二値化像は、反転前発光時全体像の二値化像と同様となり、第2の二値化像では、IP外側領域に相当する領域が低輝度領域となり、イメージングプレート10に相当する領域が高輝度領域となる。第2の二値化像の高輝度領域の外形は、イメージングプレート10に未露光部分が含まれている場合であっても、イメージングプレート10の外形に応じた形状となる。画像処理部81は、第2の二値化像に基づいて、上記と同様にして、IP傾き角度と、イメージングプレート10の短手サイズ、長手サイズ及び主面面積と、IPサイズの種類とを特定することができる。
【0164】
図28は、図25に示される反転前消去時全体像200を二値化して得られる第2の二値化像に基づいて特定した、イメージングプレート10の短手サイズ、長手サイズ及び主面面積とIP傾き角度とを示す図である。図25に示される反転前消去時全体像200は、サイズ2のイメージングプレート10に対して励起光L1が照射された場合に得られる消去時全体像である。図28に示されるように、図25に示される反転前消去時全体像200から特定された短手サイズ及び長手サイズは、サイズ2のイメージングプレート10の公称短手サイズ及び公称長手サイズにそれぞれ近い値となっている。
【0165】
このように、IP傾き角度の特定に、イメージングプレート10の反射光像を表す消去時画像信号が使用される場合であっても、発光時画像信号が使用される場合と同様に、IP傾き角度を適切に特定することができる。また、IPサイズの特定に消去時画像信号が使用される場合であっても、発光時画像信号が使用される場合と同様に、IPサイズを適切に特定することができる。
【0166】
<IP相当部分の傾きの補正について>
イメージングプレート10が基準姿勢から傾く場合には、図16等に示されるように、取得全体像においてIP相当部分が傾くことになる。詳細には、イメージングプレート10が基準姿勢から右回りに傾く場合には、IP相当部分の長手方向は、取得全体像において副走査方向DRsに対応する方向(図16では反転前全体像100aの長手方向)に対して右回りに傾くことになる。一方で、イメージングプレート10が基準姿勢から左回りに傾く場合には、IP相当部分の長手方向は、取得全体像において副走査方向DRsに対応する方向に対して左回りに傾くことになる。IP相当部分が傾いた状態で取得全体像が表示される場合、ユーザは、傾いたIP相当部分を見辛い可能性がある。
【0167】
そこで、画像処理部81は、IP傾き角度αに基づいて、取得全体像に対して、IP相当部分の傾きを補正する傾き補正処理を行ってもよい。補正対象の取得全体像が、発光光L2の検出に基づく発光時全体像である場合、傾き補正処理では、IP相当部分の傾きが補正されることによって、当該IP相当部分に含まれる放射線像の傾きが補正される。一方で、補正対象の取得全体像が、反射光L4の検出に基づく消去時全体像である場合、傾き補正処理では、イメージングプレート10が写るIP反射光像の傾きが補正される。画像処理部81は、輝度反転処理が行われる前の画像信号に基づく取得全体像に対して傾き補正処理を行ってもよいし、輝度反転処理が行われた後の画像信号に基づく取得全体像に対して傾き補正処理を行ってもよい。表示部3は、傾き補正処理後の取得全体像を表示してもよい。傾き補正処理は、図14の一連の処理の中で実行されてもよいし、図14の処理とは別のタイミングで実行されてもよい。また、傾き補正処理は、図24の一連の処理の中で実行されてもよいし、図24の処理とは別のタイミングで実行されてもよい。傾き補正処理は、イメージングプレート10の基準姿勢からの傾きに応じた、発光時全体像でのIP相当部分の傾きを補正する処理であるといえる。
【0168】
図29は傾き補正処理の一例を説明するための概略図である。図29では、傾き補正処理が行われる前の取得全体像250が上側に示され、傾き補正処理が行われた後の取得全体像250が下側に示されている。補正対象の取得全体像250には、IP相当部分251とIP外側領域像252とが含まれる。図29では、IP相当部分251の長手方向DR1が破線で示され、取得全体像250において副走査方向DRsに対応する方向DR2が一点鎖線で示されている。
【0169】
傾き補正処理において、画像処理部81は、補正対象の取得全体像250に含まれるIP相当部分251の重心251aを求める。ここで、IP相当部分251の重心251aは、取得全体像250の二値化像の高輝度領域の重心と一致する。画像処理部81は、取得全体像250の二値化像を生成し、生成した二値化像の高輝度領域の重心を求めることによって、取得全体像250のIP相当部分251の重心251aを求めることができる。次に、画像処理部81は、求めた重心251aを中心にして取得全体像250をIP傾き角度αだけ回転させる。このとき、画像処理部81は、IP傾き角度αがプラスの場合、図29に示されるように、取得全体像250を左回り255LにIP傾き角度αだけ回転させる。一方で、IP傾き角度αがマイナスの場合、画像処理部81は、取得全体像250を右回りにIP傾き角度αだけ回転させる。これにより、IP相当部分251の傾きが補正されて、IP相当部分251の長手方向DR1は、取得全体像250において副走査方向DRsに対応する方向DR2に平行となる。
【0170】
図30は、上述の図16に示される反転前発光時全体像100aに対して傾き補正処理が行われた様子の一例を示す概略図である。図16図30とを比較して理解できるように、反転前発光時全体像100aに対する傾き補正処理によって、IP相当部分105aに含まれる放射線像101aの傾きが適切に補正されている。傾き補正処理が行われた反転前発光時全体像100aでのIP相当部分105aの姿勢は、イメージングプレート10の姿勢が基準姿勢である場合に得られる反転前発光時全体像100aでのIP相当部分105aの姿勢と同じとなる。表示部3は、傾き補正処理後の反転前発光時全体像100aを、例えば、図30のようなグレースケールで表示してもよい。以後、取得全体像が表示されることには、傾き補正処理後の取得全体像が表示されることも含まれる。
【0171】
このように、画像処理部81が、IP傾き角度に基づいて取得全体像のIP相当部分の傾きを補正することによって、傾きが適切に補正されたIP相当部分を得ることができる。例えば、発光時全体像に対して傾き補正処理が行われる場合、傾きが適切に補正された放射線像を得ることができる。また、消去時全体像に対して傾き補正処理が行われる場合、傾きが適切に補正されたIP反射光像を得ることができる。
【0172】
<取得全体像に対する切出処理について>
画像処理部81は、放射線像を含む発光時全体像において切り出す対象の切出像をIP傾き角度及びIPサイズに基づいて決定し、決定した当該切出像を当該発光時全体像から切り出す切出処理を行ってもよい。この切出処理により、IP傾き角度及びIPサイズに応じた所望の切出像を発光時全体像から得ることができる。画像処理部81は切出処理を行う切り出し部として機能する。切出処理は、図14の一連の処理の中で実行されてもよいし、図14の処理とは別のタイミングで実行されてもよい。また、切出処理は、図24の一連の処理の中で実行されてもよいし、図24の処理とは別のタイミングで実行されてもよい。
【0173】
切出処理では、例えば、発光時全体像のIP相当部分が切出像として決定されてもよい。この場合、画像処理部81は、例えば、IPサイズの種類とIP傾き角度とに基づいて、発光時全体像のIP相当部分を切出像として決定する。以下に、画像処理部81が発光時全体像のIP相当部分を切出像として決定する際の当該画像処理部81の動作の一例について説明する。以後、画像処理部81が特定したIPサイズの種類を特定サイズZと呼ぶことがある。本例では、Zは0、1、2及び3のいずれかの値となる。
【0174】
切出処理において、画像処理部81は、例えば、IPサイズの種類とIP傾き角度に基づいて、発光時全体像に対して切出枠を設定する。そして、画像処理部81は、発光時全体像での切出枠内の部分を、切出像として決定する。
【0175】
切出枠の形状は、特定サイズZのイメージングプレート10の公称外形と相似形を成す。本例では、イメージングプレート10の外形は四隅が丸まった長方形であることから、切出枠の形状も四隅が丸まった長方形となる。そして、切出枠の短手方向のサイズは、特定サイズZのイメージングプレート10の公称短手サイズ(特定サイズZの公称短手サイズともいう)に応じた値となり、切出枠の長手方向のサイズは、特定サイズZのイメージングプレート10の公称長手サイズ(特定サイズZの公称長手サイズともいう)に応じた値となる。
【0176】
ここで、画像処理部81は、IPサイズの各種類について、公称短手サイズ及び公称長手サイズのそれぞれが、取得全体像での何画素分に相当するかを予め把握している。画素のP1個分が特定サイズZの公称短手サイズに相当し、画素のP2個分が特定サイズZの公称長手サイズに相当するとき、画像処理部81は、切出枠の短手方向のサイズを画素のP1個分の長さに設定し、切出枠の長手方向のサイズを画素のP2個分の長さに設定する。例えば、P1=800、P2=1100とすると、切出枠の短手方向のサイズは画素800個分の長さに設定され、切出枠の長手方向のサイズは画素1100個分の長さに設定される。
【0177】
画像処理部81は、切出枠の外形及びサイズを決定すると、切出枠の中心が発光時全体像のIP相当部分の重心と一致し、かつ切出枠の長手方向及び短手方向が発光時全体像の長手方向及び短手方向にそれぞれ平行となるように、切出枠を発光時全体像上に配置する。なお、上述のように、発光時全体像のIP相当部分の重心は、当該発光時全体像の二値化像の高輝度領域の重心と一致する。
【0178】
次に、画像処理部81は、発光時全体像上に配置した切出枠を、IP相当部分の重心の回りにIP傾き角度だけ回転させる。このとき、画像処理部81は、IP傾き角度がプラスの場合には切出枠を右回りに回転させ、IP傾き角度がマイナスの場合には切出枠を左回りに回転させる。これにより、発光時全体像のうち切出枠内の部分がIP相当部分に一致する。画像処理部81は、発光時全体像のうち、IP傾き角度だけ回転させた切出枠内の部分を切出像に決定する。その後、画像処理部81は、決定した切出像を発光時全体像から切り出す。これにより、発光時全体像からIP相当部分が切り出されて、イメージングプレート10に相当する部分だけの像を得ることができる。切出処理は、反転前発光時全体像に対して行われてもよいし、反転後発光時全体像に対して行われてもよい。
【0179】
図31は、上述の図12に示される反転後発光時全体像100bに対して切出枠150が設定されている様子の一例を示す概略図である。図32は、図31の例において、反転後発光時全体像100bでの切出枠150内の切出像151が、反転後発光時全体像100bから切り出された様子の一例を示す概略図である。図32に示されるように、反転後発光時全体像100bからIP相当部分105bが適切に切り出されている。切出像151には、反転後発光時全体像100bに含まれる放射線像101bと同じ放射線像151aが含まれる。
【0180】
図33は、上述の図13に示される反転後発光時全体像100bに対して切出枠150が設定されている様子の一例を示す概略図である。図34は、図33の例において、反転後発光時全体像100bでの切出枠150内の切出像151が反転後発光時全体像100bから切り出された様子の一例を示す概略図である。図34に示されるように、反転後発光時全体像100bが未露光領域像103bを含む場合であっても、反転後発光時全体像100bからIP相当部分105bが適切に切り出されている。切出像151には、反転後発光時全体像100bに含まれる放射線像101bと同じ放射線像151aが含まれるとともに、反転後発光時全体像100bに含まれる未露光領域像103bと同じ未露光領域像151bが含まれる。
【0181】
切出処理が行われる場合、表示部3は、発光時全体像から切り出された切出像151を表示してもよい。この場合、表示部3は、図32及び34のようなグレースケールで切出像151を表示してもよい。図32及び34は切出像151の表示例を示す概略図であるともいえる。切出像151が表示される場合、ユーザは、発光時全体像のうち必要な像だけを確認することができる。本例のように、発光時全体像からIP相当部分が切出像151として切り出されて表示される場合、ユーザは、発光時全体像のうち、必要なIP相当部分だけを確認することができる。これにより、ユーザは、例えば図34のような切出像151の表示を確認することによって、イメージングプレート10に未露光部分が含まれていることを容易に特定することができる。また、ユーザは、イメージングプレート10での未露光部分の範囲も容易に特定することができる。
【0182】
表示部3は、発光時全体像から切り出された切出像151と消去時全体像200とを同時にかつ別々に表示してもよい。図35は、表示部3の表示面3aに切出像151と消去時全体像200がグレースケールで表示されている様子の一例を示す概略図である。図35には、未露光領域像151bを含む切出像151が示されている。図35に示されるように、表示部3は、切出像151及び消去時全体像200を、例えば、切出像151と消去時全体像200のIP反射光像(IP相当部分)201とが同じ大きさとなるように表示してもよい。また、表示部3は、切出像151及び消去時全体像200を、例えば横並びに表示してもよい。表示部3が切出像151と消去時全体像200とを同時にかつ別々に表示することによって、ユーザは、切出像151と消去時全体像200とを簡単に見比べることができる。これにより、ユーザは、例えば、消去時全体像200に含まれるIP反射光像201と切出像151とを比較することによって、発光時全体像から適切にIP相当部分が切り出されているか否かを容易に特定することができる。
【0183】
画像処理部81は、上述の傾き補正処理と同様に、発光時全体像から切り出した切出像151の傾きをIP傾き角度に基づいて補正してもよい。これにより、例えば、補正後の切出像151が表示される場合、ユーザは切出像151を見やすくなる。以後、傾き補正処理には、切出像151の傾きを補正することも含まれるものとする。
【0184】
画像処理部81は、例えば、発光時全体像に対する上述の傾き補正処理と同様にして切出像151の傾きを補正する。具体的には、画像処理部81は、まず、切出像151の重心を求める。切出像151の重心は、発光時全体像の二値化像の高輝度領域の重心と一致する。したがって、画像処理部81は、発光時全体像の二値化像の高輝度領域の重心を求めることによって、切出像151の重心を求めることができる。次に、画像処理部81は、求めた重心を中心にして切出像151をIP傾き角度だけ回転させる。このとき、画像処理部81は、IP傾き角度がプラスの場合、切出像151を左回りにIP傾き角度だけ回転させる。一方で、IP傾き角度がマイナスの場合、画像処理部81は、切出像151を右回りにIP傾き角度だけ回転させる。これにより、切出像151の傾きが補正される。よって、切出像151に含まれる、発光時画像信号に基づく放射線像の傾きが補正される。
【0185】
図36~38は、発光時全体像に対して切出処理が行われ、その後、切出像151に対して傾き補正処理が行われる様子の一例を示す概略図である。図36~38の例では、上述の図16に示される反転前発光時全体像100aに対して切出処理が行われている。図36に示されるように、画像処理部81は、上述のようにして切出枠150を反転前発光時全体像100aに設定する。次に、画像処理部81は、反転前発光時全体像100aでの切出枠150内の切出像151を、図37に示されるように、反転前発光時全体像100aから切り出す。その後、図38に示されるように、画像処理部81は、切り出した切出像151の傾きをIP傾き角度に基づいて補正する。これにより、イメージングプレート10の基準姿勢からの傾きに応じた切出像151の傾きが適切に補正される。傾きが補正された切出像151の姿勢は、イメージングプレート10の姿勢が基準姿勢である場合に得られる切出像151の姿勢と同じとなる。
【0186】
上記の例では、画像処理部81は、発光時全体像のIP相当部分を切出像151としているが、IP相当部分の一部を切出像151としてもよい。以下にこの場合の画像処理部81の動作の一例について説明する。
【0187】
図39は、イメージングプレート10を保持する保持部20の他の例を示す概略図である。図39では、保持部20の固定部22が備える各固定部分22aが接近位置に存在する様子が示されている。図39に示される保持部20(保持部20Aともいう)では、各固定部分22aが接近位置に存在する場合、固定部22は、イメージングプレート10の周縁部10aを覆う重なり部分220を有する。各固定部分22aは、接近位置に存在する場合、イメージングプレート10の周縁部10aを覆う重なり部分220aを有する。固定部22の重なり部分220は、複数の固定部分22aの重なり部分220aで構成されている。
【0188】
イメージングプレート10が保持部20Aで保持されている場合、イメージングプレート10の周縁部10aが固定部22の重なり部分220で覆われることから、読取装置1では、重なり部分220が写る発光時全体像が得られる。
【0189】
図40は、イメージングプレート10が保持部20Aで保持されている場合に得られる反転前発光時全体像100aの一例を示す概略図である。図40に示される反転前発光時全体像100aには、固定部22の重なり部分220の像120(重なり部分像120ともいう)が含まれている。重なり部分像120は、重なり部分220からの励起光L1の反射光L4の検出に基づく像である。重なり部分像120は、複数の固定部分22aの重なり部分220aの像120a(重なり部分像120aともいう)で構成されている。本例では、各固定部分220aの表面には、例えば黒アルマイト処理が行われている。したがって、反転前発光時全体像100aに含まれる重なり部分像120の輝度値は小さくなる。
【0190】
画像処理部81は、重なり部分像120が発光時全体像に含まれる場合、発光時全体像において、重なり部分像120(言い換えれば複数の重なり部分像120a)を切出像151が含まないように、IP相当部分の一部を切出像151として決定してもよい。この場合、画像処理部81は、例えば、上記と同様にして、IPサイズの種類とIP傾き角度に基づいて切出枠150を発光時全体像に設定する。上述のようにして設定された切出枠150の外形は、イメージングプレート10の外形に応じた形状を成すため、この時点では、切出枠150内には重なり部分像120が含まれる。図41は、図40に示される反転前発光時全体像100aに対して上述のようにして切出枠150が設定された様子の一例を示す概略図である。反転前発光時全体像100aに設定された切出枠150内には、重なり部分像120を構成する複数の重なり部分像120aが含まれる。
【0191】
画像処理部81は、上述のようにして切出枠150を発光時全体像に設定した後、切出枠150内に重なり部分像120が含まれないように、切出枠150を例えば相似形で縮小する。このとき、画像処理部81は、切出枠150内に重なり部分像120が含まれないように、かつ縮小後の切出枠150ができるだけ大きくなるように、切出枠150を相似形で縮小する。画像処理部81は、例えば、発光時全体像の二値化像に基づいて、発光時全体像での各重なり部分像120aの位置及び範囲を特定することができる。そして、画像処理部81は、各重なり部分像120aについて特定した位置及び範囲に基づいて、切出枠150内に重なり部分像120が含まれないように、かつ縮小後の切出枠150ができるだけ大きくなるように、切出枠150を相似形で縮小する。そして、画像処理部81は、発光時全体像において縮小後の切出枠150内の部分を切出像151として決定する。これにより、重なり部分像120が含まれず、かつIP相当部分105aの大部分が含まれるような切出像151が得られる。図42は、図41に示される切出枠150が縮小された様子の一例を示す概略図である。画像処理部81は、図42に示されるように、反転前発光時全体像100aにおいて縮小後の切出枠150内の部分を切出像151として決定する。
【0192】
画像処理部81は、切出像151を決定すると、発光時全体像から切出像151を切り出す。図43は、図42に示される切出像151が反転前全体像100aから切り出された様子の一例を示す概略図である。
【0193】
このように、画像処理部81が、切出像151が重なり部分像120を含まないようにIP相当部分の一部を切出像151として決定する場合には、固定部22の重なり部分220が写らない切出像151を得ることができる。これにより、例えば、切出像151が表示される場合、ユーザは、イメージングプレート10に相当する部分だけを確認することができる。
【0194】
なお、画像処理部81は、発光時全体像から、重なり部分220が写らない切出像151を切り出す場合であっても、上述のように、切り出した切出像151の傾きをIP傾き角度に基づいて補正してもよい。この場合、表示制御部82は、傾きが補正された切出像151を表示部3に表示させてもよい。
【0195】
図44は、イメージングプレート10が保持部20Aで保持されている場合に得られる反転前発光時全体像100aの他の例を示す概略図である。図45~47は、図44に示される反転前発光時全体像100aに対して切出処理が行われ、その後、切出像151に対して傾き補正処理が行われる様子の一例を示す概略図である。画像処理部81は、上述のようにして、反転前発光時全体像100aに切出枠150を設定し、その後、図45に示されるように、切出枠150内に重なり部分像120が含まれないように、かつ縮小後の切出枠150ができるだけ大きくなるように、切出枠150を相似形で縮小する。次に、画像処理部81は、反転前発光時全体像100aでの切出枠150内の切出像151を、図46に示されるように、反転前発光時全体像100aから切り出す。その後、図47に示されるように、画像処理部81は、切り出した切出像151の傾きをIP傾き角度に基づいて補正する。これにより、イメージングプレート10の基準姿勢からの傾きに応じた切出像151の傾きが適切に補正される。
【0196】
このように、画像処理部81は、IPサイズ及びIP傾き角度に基づいて、発光時全体像のIP相当部分の少なくとも一部を切出像として決定することから、IP相当部分の少なくとも一部を発光時全体像から適切に切り出すことができる。
【0197】
画像処理部81は、発光時全体像に重なり部分像120が含まれない場合であっても、発光時全体像に設定した切出枠150を例えば相似形に縮小し、発光時全体像において縮小後の切出枠150内の部分を切出像151として決定してもよい。この場合であっても、発光時全体像でのIP相当部分の一部が切出像151として決定される。また、画像処理部81は、発光時全体像に設定した切出枠150を例えば相似形に拡大し、発光時全体像において拡大後の切出枠150内の部分を切出像151として決定してもよい。この場合、発光時全体像において、IP相当部分とその周囲の部分(例えば、IP外側領域像の一部あるいは重なり部分像120の少なくとも一部)とが切出像151として決定される。
【0198】
切出処理において、画像処理部81は、IP反射光像を含む消去時全体像において切り出す対象の切出像(第2切出像ともいう)をIP傾き角度及びIPサイズに基づいて決定し、決定した第2切出像を消去時全体像から切り出してもよい。この場合、画像処理部81は、消去時全体像のIP相当部分(言い換えればIP反射光像)の少なくとも一部を第2切出像として決定してもよい。また、画像処理部81は、消去時全体像に重なり部分220の像が含まれる場合には、第2切出像が重なり部分220の像を含まないように第2切出像を決定してもよい。また、表示制御部82は、消去時全体像から切り出された第2切出像を表示部3に表示させてもよい。この場合、表示部3は、第2切出像と、発光時全体像から切り出された切出像(第1切出像ともいう)151とを、同時にかつ別々に表示してもよい。また、画像処理部81は、IP傾き角度に基づいて、切り出した第2切出像の傾きを補正してもよい。また、表示制御部82は、傾きが補正された第2切出像を表示部3に表示させてもよい。この場合、表示部3は、傾きが補正された第2切出像と、傾きが補正された第1切出像とを同時にかつ別々に表示してもよい。
【0199】
なお、イメージングプレート10が基準姿勢からほとんど傾くことがない場合には、画像処理部81は、IP傾き角度を用いずに、IPサイズに基づいて第1切出像及び第2切出像を決定してもよい。この場合、切出処理では、IP傾き角度に応じて切出枠を回転させる処理が不要となる。以後、切出像を表示することには、傾きが補正された切出像を表示することも含まれる。
【0200】
<未露光領域像の特定について>
画像処理部81は、第1切出像151での未露光領域像あるいは発光時全体像での未露光領域像を特定する未露光特定処理を行ってもよい。未露光特定処理は、図14の一連の処理の中で実行されてもよいし、図14の処理とは別のタイミングで実行されてもよい。また、未露光特定処理は、図24の一連の処理の中で実行されてもよいし、図24の処理とは別のタイミングで実行されてもよい。画像処理部81は、未露光領域像を特定する特定部として機能する。
【0201】
画像処理部81は、図37及び43等の例のように、IP相当部分の少なくとも一部を第1切出像151に設定した場合、未露光特定処理において、例えば、第1切出像151を二値化して得られる二値化像を生成する。ここで、上述の図32及び34のように、反転後発光時全体像100bから切り出された第1切出像151を反転後第1切出像151と呼ぶ。また、上述の図43及び46のように、反転前発光時全体像100aから切り出された第1切出像151を反転前第1切出像151と呼ぶ。
【0202】
反転前第1切出像151の二値化で使用するしきい値は、例えば、反転前第1切出像151に含まれる放射線像の最小輝度値よりも小さく、かつ反転前第1切出像151に含まれる未露光領域像の輝度値よりも大きい値に設定される。例えば、反転前第1切出像151に含まれる放射線像の最小輝度値が10000とし、反転前第1切出像151に含まれる未露光領域像の輝度値が3000である場合を考える。この場合、しきい値は、例えば5000に設定される。これにより、IP相当部分の少なくとも一部である反転前第1切出像151の二値化像では、未露光領域像に相当する部分が低輝度領域となり、放射線像に相当する部分が高輝度領域となる。画像処理部81は、反転前第1切出像151の二値化像での低輝度領域を特定することによって、反転前第1切出像151での未露光領域像を適切に特定することができる。なお、イメージングプレート10に未露光部分が含まれない場合には、反転前第1切出像151の二値化像には低輝度領域は含まれない。
【0203】
また、反転後第1切出像151の二値化で使用するしきい値は、例えば、反転後第1切出像151に含まれる放射線像の最大輝度値よりも大きく、かつ反転後第1切出像151に含まれる未露光領域像の輝度値よりも小さい値に設定される。これにより、IP相当部分の少なくとも一部である反転後第1切出像151の二値化像では、未露光領域像に相当する部分が高輝度領域となり、放射線像に相当する部分が低輝度領域となる。画像処理部81は、反転後第1切出像151の二値化像での高輝度領域を特定することによって、反転後第1切出像151での未露光領域像を適切に特定することができる。
【0204】
このように、画像処理部81は、発光時全体像からIP相当部分の少なくとも一部を第1切出像151として切り出した場合、第1切出像151での未露光領域像を適切に特定することができる。
【0205】
未露光特定処理において、画像処理部81は、IP外側領域像及び重なり部分像120の少なくとも一方を含む第1切出像151での未露光領域像を特定してもよい。この場合、画像処理部81は、第1切出像151を三値化して三値化像を生成する。以後、IP外側領域像及び重なり部分像120を特に区別する必要がない場合には、それぞれを低反射領域像と呼ぶことがある。
【0206】
画像処理部81は、まず、第1切出像151を構成する複数の画素のそれぞれの輝度値と、予め設定された下側しきい値と上側しきい値とを比較する。上側しきい値は下側しきい値よりも大きい値である。画像処理部81は、第1切出像151を構成する複数の画素のそれぞれの輝度値について、下側しきい値未満の輝度値を第1の値に置き換え、下側しきい値以上上側しきい値未満の輝度値を第2の値に置き換え、上側しきい値以上の輝度値を第3の値に置き換える。ここで、第3の値は第2の値よりも大きく、第2の値は第1の値よりも大きい。これにより、第1切出像151が三値化されて三値化像が得られる。以後、三値化像において、輝度値が第3の値である領域を高輝度領域と呼び、輝度値が第2の値である領域を中輝度領域と呼び、輝度値が第1の値である領域を低輝度領域と呼ぶことがある。
【0207】
反転前第1切出像151の三値化で使用される下側第1しきい値は、例えば、反転前第1切出像151に含まれる低反射領域像の輝度値よりも大きく、かつ反転前第1切出像151に含まれる未露光領域像の輝度値よりも小さい値に設定される。反転前第1切出像151の三値化で使用される上側しきい値は、例えば、反転前第1切出像151に含まれる未露光領域像の輝度値よりも大きく、かつ反転前第1切出像151に含まれる放射線像の最小輝度値よりも小さい値に設定される。例えば、反転前第1切出像151に含まれる放射線像の最小輝度値が10000、反転前第1切出像151に含まれる未露光領域像の輝度値が3000、反転前第1切出像151に含まれる低反射領域像の輝度値が1000である場合を考える。この場合、下側しきい値は例えば2000に設定され、上側しきい値は例えば5000に設定される。これにより、反転前第1切出像151の三値化像では、低反射領域像に相当する部分が低輝度領域となり、未露光領域像に相当する部分が中輝度領域となり、放射線像に相当する部分が高輝度領域となる。画像処理部81は、反転前第1切出像151の三値化像での中輝度領域を特定することによって、反転前第1切出像151での未露光領域像を適切に特定することができる。なお、イメージングプレート10に未露光部分が含まれない場合には、反転前第1切出像151の三値化像には、中輝度領域は含まれない。
【0208】
反転後第1切出像151の三値化で使用される下限しきい値は、例えば、反転後第1切出像151に含まれる放射線像の最大輝度値よりも大きく、かつ反転後第1切出像151に含まれる未露光領域像の輝度値よりも小さい値に設定される。反転後第1切出像151の三値化で使用される上限しきい値は、例えば、反転後第1切出像151に含まれる未露光領域像の輝度値よりも大きく、かつ反転後第1切出像151に含まれる低反射領域像の輝度値よりも小さい値に設定される。これにより、反転後第1切出像151の三値化像では、低反射領域像に相当する部分が高輝度領域となり、未露光領域像に相当する部分が中輝度領域となり、放射線像に相当する部分が低輝度領域となる。画像処理部81は、反転後第1切出像151の三値化像での中輝度領域を特定することによって、反転後第1切出像151での未露光領域像を適切に特定することができる。
【0209】
このように、画像処理部81は、低反射領域像を含む第1切出像151での未露光領域像を適切に特定することができる。
【0210】
未露光特定処理において、画像処理部81は、発光時全体像での未露光領域像を特定してもよい。この場合、画像処理部81は、低反射領域像を含む第1切出像151での未露光領域像を特定する場合と同様にして、発光時全体像を三値化して三値化像を生成する。反転前発光時全体像100aの三値化で使用される下限しきい値及び上限しきい値は、反転前第1切出像151の三値化で使用される下限しきい値及び上限しきい値と同様に設定される。画像処理部81は、反転前発光時全体像100aの三値化像での中輝度領域を特定することによって、反転前発光時全体像100aでの未露光領域像を適切に特定することができる。また、反転後発光時全体像100bの三値化で使用される下限しきい値及び上限しきい値は、反転後第1切出像151の三値化で使用される下限しきい値及び上限しきい値と同様に設定される。画像処理部81は、反転後発光時全体像100bの三値化像での中輝度領域を特定することによって、反転後発光時全体像100bでの未露光領域像を適切に特定することができる。
【0211】
画像処理部81が、第1切出像151あるいは発光時全体像において未露光領域像を特定した場合、表示制御部82は、第1切出像151あるいは発光時全体像において未露光領域像が存在することを通知する未露光通知情報161を表示部3に表示させてもよい。これにより、ユーザは、第1切出像151あるいは発光時全体像において未露光領域像が存在することを容易に認識することができる。よって、ユーザは、イメージングプレート10に未露光部分が含まれていることを容易に認識することができる。
【0212】
図48及び49は、未露光通知情報161の表示例を示す概略図である。図48の例では、放射線像151a及び未露光領域像151bを含む第1切出像151と未露光通知情報161とが表示部3の表示面3aに表示されている。図49の例では、反転後発光時全体像100bと未露光通知情報161とが表示面3aに表示されている。図48の例では、未露光領域像151bの範囲を縁取る縁取り線1510が、第1切出像151において未露光領域像151bが存在することを通知する未露光通知情報161として表示されている。同様に、図49の例では、未露光領域像103bの範囲を縁取る縁取り線1030が、反転後発光時全体像100bにおいて未露光領域像103bが存在することを通知する未露光通知情報161として表示されている。縁取り線1510及び1030は、少なくとも一色でカラー表示されてもよい。
【0213】
未露光通知情報161は図48及び49の例には限られない。例えば、未露光領域像に対して付された斜線等のハッチングが未露光通知情報161として表示されてもよい。また、未露光領域像が少なくとも一色でカラー表示されることによって、未露光通知情報161が表示されてもよい。
【0214】
また、図50に示されるように、第1切出像151を取り囲む枠状図形1511が未露光通知情報161として表示されてもよい。図50の例では、説明の便宜上、枠状図形1511にハッチングが示されているが、枠状図形1511にはハッチングが示されなくてもよいし、ハッチングが示されてもよい。また、枠状図形1511は、少なくとも一色でカラー表示されてもよい。同様に、発光時全体像において未露光領域像が特定された場合、当該発光時全体像を取り囲む枠状図形が未露光通知情報161として表示されてもよい。また、未露光通知情報161は文字及び記号の少なくとも一方で表示されてもよい。
【0215】
なお、第1切出像151あるいは発光時全体像に未露光領域像が含まれない場合、つまり、画像処理部81が第1切出像151あるいは発光時全体像において未露光領域像を特定しなかった場合、表示制御部82は、第1切出像151あるいは発光時全体像において未露光領域像が存在しないことを通知する通知情報162を表示部3に表示させてもよい。これにより、ユーザは、イメージングプレート10に未露光部分が含まれていないことを容易に認識することができる。
【0216】
図51は、通知情報162の表示例を示す概略図である。図51には、第1切出像151に未露光領域像が存在しないことを通知する通知情報162の表示例が示されている。図51の例では、未露光領域像を含まない第1切出像151を取り囲む枠状図形1512が通知情報162として表示されている。図51の例では、説明の便宜上、枠状図形1512にハッチングが示されているが、枠状図形1512にはハッチングが示されなくてもよいし、ハッチングが示されてもよい。また、枠状図形1512は、少なくとも一色でカラー表示されてもよい。未露光通知情報161として図50の枠状図形1511が表示される場合には、未露光通知情報161としての枠状図形1511と、通知情報162としての枠状図形1512とは、互いに異なる態様で表示される。このとき、枠状図形1511と枠状図形1512は、互いに異なる色で表示されてもよい。また、枠状図形1511と枠状図形1512には、互いに異なるハッチングが示されてもよい。同様に、発光時全体像において未露光領域像が存在しない場合、当該発光時全体像を取り囲む枠状図形が通知情報162として表示されてもよい。また、通知情報162は文字及び記号の少なくとも一方で表示されてもよい。
【0217】
表示制御部82は、上述の図35に示されるように、第1切出像151と消去時全体像200とを同時にかつ別々に表示部3に表示させる場合であって、第1切出像151に未露光領域像が含まれる場合、図52に示されるように未露光通知情報161も一緒に表示部3に表示させてもよい。このとき、消去時全体像200の代わりに第2切出像が表示されてもよい。また、表示制御部82は、上述の図27に示されるように、発光時全体像と消去時全体像200とを同時にかつ別々に表示部3に表示させる場合であって、発光時全体像に未露光領域像が含まれる場合には、図53に示されるように未露光通知情報161も一緒に表示部3に表示させてもよい。このとき、消去時全体像200の代わりに第2切出像が表示されてもよい。
【0218】
また、表示制御部82は、未露光領域像を含まない第1切出像151と消去時全体像200とを同時にかつ別々に表示部3に表示させる場合には、通知情報162も一緒に表示部3に表示させてもよい。このとき、消去時全体像200の代わりに第2切出像が表示されてもよい。同様に、表示制御部82は、未露光領域像を含まない発光時全体像と消去時全体像200とを同時にかつ別々に表示部3に表示させる場合には、通知情報162も一緒に表示部3に表示させてもよい。このとき、消去時全体像200の代わりに第2切出像が表示されてもよい。
【0219】
以上のように、本例に係る検出器40は、イメージングプレート10からの発光光L2だけではなく、イメージングプレート10からの励起光L1の反射光L4もある程度検出することができる。そのため、読取装置1は、発光光L2の検出に基づく放射線像と、反射光L4の検出に基づく反射光像(例えば未露光領域像など)とを得ることができる。よって、読取装置1の利便性が向上する。
【0220】
例えば、読取装置1は、イメージングプレート10からの発光光L2の検出に基づく放射線像と、イメージングプレート10からの反射光L4の検出に基づく反射光像とを含む発光時全体像に基づいて、上述のように、IPサイズを適切に特定したり、IP傾き角度を適切に特定したりすることができる。
【0221】
また例えば、読取装置1は、上述の図26,27,35,52,53等に示されるように、イメージングプレート10からの発光光L2の検出に基づく放射線像と、イメージングプレート10からの反射光L4の検出に基づく反射光像とを同時にかつ別々に表示することによって、ユーザは、イメージングプレート10から読み取られた放射線像とイメージングプレート10の外観とを簡単に見比べることができる。これにより、ユーザは、例えば、イメージングプレート10に未露光部分が含まれていることを容易に特定することができる。
【0222】
また、上述の図25~27,52,53等に示されるように、イメージングプレート10からの反射光L4の検出に基づく反射光像であるIP反射光像が表示される場合には、ユーザは、例えば、イメージングプレート10の表面に異常が発生しているか否かを容易に特定することができる。イメージングプレート10の表面の異常には、例えば、傷、凹み、欠け、汚れ及び異物の付着が含まれる。
【0223】
図54及び55は、イメージングプレート10の前面に異常が発生している場合において、読取装置1で取得される反転後発光時全体像100bに含まれる放射線像101bの一例と、読取装置1で取得される反転前消去時全体像200に含まれるIP反射光像201の一例とをそれぞれを示す概略図である。図54には、放射線像101bにおいて、イメージングプレート10の表面の異常が写る異常領域像1010の拡大図1010Lも示されている。また、図55には、IP反射光像201において、イメージングプレート10の表面の異常が写る異常領域像2010の拡大図2010Lも示されている。図54及び55では、イメージングプレート10の前面に傷が発生している場合の放射線像101b及びIP反射光像201がそれぞれ示されている。
【0224】
図54及び55に示されるように、放射線像101b及びIP反射光像201において、イメージングプレート10の表面の異常が写る異常領域像の輝度値が、その周囲の輝度値と異なることがある。一方で、撮影対象である歯にカリエス等の病変が発生している場合にも、放射線像101bにおいて、歯の病変発生部位が写る領域の輝度値が、その周囲の輝度値と異なることがある。さらに、図54の例とは異なり、放射線像101bにおいて、異常領域像1010の輝度値が、歯が写る領域の輝度値と近い値となる可能性もある。これらの点に鑑みると、ユーザは、表示部3に表示される放射線像101bに基づいて、イメージングプレート10の表面の異常を特定することは容易ではない。
【0225】
これに対して、IP反射光像201には歯が写らない。よって、ユーザは、表示部3に表示されるIP反射光像201に基づいて、イメージングプレート10の表面の異常を容易に特定することができる。つまり、ユーザは、表示部3に表示されるIP反射光像201に含まれる異常領域像2010を認識することによって、イメージングプレート10の表面の異常を容易に特定することができる。ユーザは、表示部3に表示される、IP反射光像201を含む消去時全体像200に基づいてイメージングプレート10の表面の異常を特定してもよい。また、ユーザは、表示部3に表示される、IP反射光像201の少なくとも一部を含む第2切出像(例えば消去時全体像から切り出した切出像)に基づいてイメージングプレート10の表面の異常を特定してもよい。
【0226】
表示部3が、表示制御部82の制御を受けて放射線像とIP反射光像とを同時にかつ別々に表示する場合には、ユーザは、放射線像において、イメージングプレート10の表面の異常に相当する領域を特定しやすくなる。よって、例えば、歯科医がユーザである場合、歯科医は、放射線像において、イメージングプレート10の表面の異常に相当する領域を、診断の判断材料から容易に除外することができる。
【0227】
光源30はイメージングプレート10に励起光L1を照射する第1光源として機能する。検出器40は、励起光L1によるイメージングプレート10からの被作用光L20としての発光光L2を検出し、発光光L2の検出結果として第1の画像信号を出力する第1検出器として機能する。また、本願構成では、イメージングプレート10から被作用光L20として反射光L4を発生させるためにイメージングプレート10に作用光L10としての光を照射するようにする。この光を照射光L1と考えてよい。光源30に、照射光L1として作用する励起光L1を照射するものを用いてよい。光源30は、イメージングプレート10に照射光L1を照射する第2光源として機能する。この場合、第1光源としての光源30は第2光源としても機能する。後出のように、第1光源と第2光源を別体に構成してもよい。
【0228】
検出器40に、イメージングプレート10からの照射光L1の反射光L4を検出できるものを用いて、検出器40を、反射光L4を検出する検出器としても利用するようにしてもよい。この場合、検出器40は反射光L4の検出結果としての第2の画像信号を出力する第2検出器として機能する。この場合、第1検出器としての検出器40は第2検出器として機能する。後出のように、第1検出器と第2検出器を別体に構成してもよい。この場合、光学フィルタ42は、発光光L2と反射光L4の透過率が高く、その他の光の透過率が低いものとするのが好適である。
【0229】
まず、第1光源としての光源30から励起光L1をイメージングプレート10に照射して発光光L2を第1検出器としての検出器40で検出して、その後、第2光源としての光源30から照射光としての励起光L1をイメージングプレート10に照射して反射光L4を第2検出器としての検出器40で検出するようにしてよい。また、発光光L2の検出と反射光L4の検出の間にイメージングプレート10への消去光L3の照射をはさむようにしてもよい。また、X線撮影前の、潜像を含まないイメージングプレート10に照射光L1としての励起光L1を照射して反射光L4を検出して第2の画像信号を得ておくようにしてもよい。
【0230】
異常特定に用いるIP反射光像を得るために照射光L1を照射して反射光L4を生じさせる対象となるイメージングプレート10としては、潜像が励起されて発光した(輝尽した)後のイメージングプレート、消去光L3で照射されたイメージングプレート、潜像が記録されていないイメージングプレートが考えられる。
【0231】
図56は、前面に異常を有するイメージングプレート10について取得された第1切出像151及び第2切出像152の表示例を示す概略図である。図56の例では、反転後発光時全体像100bのIP相当部分105bが第1切出像151に設定され、反転前消去時全体像200のIP反射光像(つまりIP相当部分)201が第2切出像152に設定されている。第2切出像152は、イメージングプレート10の表面の異常が写る異常領域像2010を有している。
【0232】
第1切出像151は、第1の画像信号から生成した放射線像を含む画像の例である。第1の画像信号から生成した放射線像を含む画像にては、放射線像が全域にわたっていてもよい。第2切出像152は、第2の画像信号から生成したIP反射光像を含む画像の例である。第2の画像信号から生成したIP反射光像を含む画像にては、IP反射光像が全域にわたっていてもよい。
【0233】
画像処理部81によるIP反射光像201の生成により、イメージングプレート10の表面の異常が特定される。この場合、IP反射光像201の生成が強調による特定となる。図56に示すように、第1切出像と第2切出像の一方の隣に他方を配置して表示してよい。これにより両者の対比が容易となる。隣は、左右の隣でもよく、上下の隣でもよく、他の隣でもよい。
【0234】
IP反射光像201を生成する処理を行うことで異常領域像2010の位置と形状を特定する画像処理部81を特定部と考えてもよいし、放射線像とIP反射光像201を生成して一方を他方の隣に配置する処理を行う画像処理部81及び表示制御部82を特定部と考えてもよい。この場合、放射線像とIP反射光像201を生成して一方を他方の隣に配置する処理を行うことが放射線像中の異常領域像2010の位置と形状を特定することになると考えてもよい。
【0235】
第1切出像と第2切出像の一方の隣に他方を配置する表示は、第1の画像信号の処理により生成した放射線像に対して異常領域の位置と形状を表示する異常領域表示の一例である。
【0236】
図56のような表示が行われる場合、ユーザは、例えば、表示される第2切出像152に含まれるIP反射光像201において異常領域像2010を特定する。そして、ユーザは、IP反射光像201において特定した異常領域像2010に基づいて、第1切出像151に含まれる放射線像101bにおいて、イメージングプレート10の表面の異常に相当する領域を特定する。
【0237】
なお、表示制御部82は、複数枚のイメージングプレート10についてのIP反射光像を同時にかつ別々に表示部3に表示させてもよい。図57は、このような表示の一例を示す概略図である。図57の例では、複数枚のイメージングプレート10の前面がそれぞれ写る複数の第2切出像152が表示面3aに表示されている。図57の例では、反転前消去時全体像200のIP反射光像201が第2切出像152に設定されている。図57に示されるように、複数枚のイメージングプレート10の前面がそれぞれ写る複数のIP反射光像201が同時にかつ別々に表示されることによって、ユーザは、例えば、複数枚のイメージングプレート10のうち、比較的広範囲に異常が発生しているイメージングプレート10を容易に特定することができる。ユーザは、広範囲に異常が発生しているイメージングプレート10を例えば破棄してもよい。なお、複数枚のイメージングプレート10の前面がそれぞれ写る複数の消去時全体像が同時にかつ別々に表示部3に表示されてもよい。
【0238】
表示制御部82は、操作部4がユーザからの所定の操作を受け付けると、過去に取得された複数のIP反射光像201を図57のように表示部3に表示させてもよい。また、読取装置1は、操作部4がユーザからの所定の操作を受け付けると、読取装置1の動作モードを、イメージングプレート10の品質を確認するための品質確認モードに設定し、この品質確認モードの中で、複数枚のイメージングプレート10がそれぞれ写る複数のIP反射光像201が取得されて図57のように表示されてもよい。品質確認モードの読取装置1には、複数枚のイメージングプレート10がユーザによって順次投入される。品質確認モードの読取装置1は、一枚のイメージングプレート10が挿入口2aから入れられると、例えば、上述の図24のステップs3,s4,s21,s22を実行して、入れられたイメージングプレート10の前面が写る消去時全体像を取得する。そして、読取装置1は、図24のステップs5及びs6を実行して、処理済みのイメージングプレート10を排出する。読取装置1から処理済みのイメージングプレート10が排出されると、読取装置1には次のイメージングプレート10が入れられる。品質確認モードの読取装置1は、同様に動作して、次のイメージングプレート10の前面が写る消去時全体像を取得し、処理済みのイメージングプレート10を排出する。以後、同様にして、読取装置1へのイメージングプレート10の投入と、読取装置1からのイメージングプレート10の排出が繰り返し実行され、品質確認モードの読取装置1では、複数枚のイメージングプレート10がそれぞれ写る複数の消去時全体像が取得される。その後、表示制御部82は、取得された複数の消去時全体像に基づいて、図57のような表示を表示部3に実行させる。ユーザは、例えば、図57の表示に基づいて、広範囲に異常が発生しているイメージングプレート10を特定して破棄する。
【0239】
上記の例では、ユーザが、表示部3に表示されるIP反射光像に基づいて、イメージングプレート10の表面の異常を特定しているが、画像処理部81が、イメージングプレート10の表面の異常を特定する異常特定処理を行ってもよい。この場合、画像処理部81は、イメージングプレート10の表面の異常を特定する特定部(異常特定部ともいう)として機能する。
【0240】
図58は異常特定処理の一例を示すフローチャートである。画像処理部81は、例えば、消去時画像信号に基づいて、消去時全体像での異常領域像の位置及び形状を特定することによって、イメージングプレート10の表面の異常を特定する。以後、イメージングプレート10の表面の異常をIP表面異常と呼ぶことがある。
【0241】
図58に示されるように、ステップs101において、画像処理部81は、上述のステップs22で得られた消去時画像信号に基づく消去時全体像でのIP反射光像(言い換えればIP相当部分)を特定する。画像処理部81は、例えば、反転前消去時全体像でのIP反射光像を特定する。上述のように、画像処理部81は、消去時全体像のIP反射光像を第2切出像として決定することができることから、同様にして反転前消去時全体像でのIP反射光像を特定することができる。
【0242】
次にステップs102において、画像処理部81は、ステップs101で特定したIP反射光像を複数の小領域に分割する。図59は、IP反射光像201が複数の小領域201aに分割される様子の一例を示す概略図である。ここで、イメージングプレート10が臨床で使用される場合、イメージングプレート10の放射線像形成層11の一部の領域だけが使用されることがある。この領域を使用対象領域と呼ぶ。ステップs102において、画像処理部81は、例えば、IP反射光像201のうち、イメージングプレート10の使用対象領域に相当する特定領域2000を複数の小領域201aに分割する。この場合、画像処理部81は、IP反射光像201の特定領域2000での異常領域像2010を特定することになる。各小領域201aは、例えば複数の画素で構成される。各小領域201aの形状は、例えば正方形である。
【0243】
図59に示されるように、画像処理部81は、特定領域2000を例えば行列状に複数の小領域201aに分割する。ここで、IP反射光像201の短手方向及び長手方向をそれぞれ行方向及び列方向とする。画像処理部81は、複数の小領域201aが行方向にP個、列方向にQ個並ぶように特定領域2000を行列状に分割する。図59には、P=Q=17個の場合の例が示されている。なお、画像処理部81は、IP反射光像201のすべてを複数の小領域201aに分割してもよい。
【0244】
次にステップs103において、画像処理部81は、複数の小領域201aのそれぞれについて、当該小領域201aにIP表面異常が写っている可能性を表す評価値を求める。評価値は、小領域201aが、イメージングプレート10において異常が発生している領域の像である可能性を表す値であるともいえる。
【0245】
ステップs103において、画像処理部81は、例えば、小領域201aを構成する複数の画素の輝度値の平均値及び標準偏差を求める。そして、画像処理部81は、平均値を標準偏差で除算して得られる値を評価値とする。このようにして、画像処理部81は各小領域201aの評価値を求める。本例では、評価値が大きいほど、それに対応する小領域201aにIP表面異常が写っている可能性が高くなる。なお、評価値の求め方はこの限りではない。
【0246】
次にステップs104において、画像処理部81は、各小領域201aの評価値と比較される基準値を決定する。画像処理部81は、例えば、ステップs103において複数の小領域201aについて求めた評価値の平均値を基準値として決定する。なお、基準値の決定方法はこの限りではない。
【0247】
次にステップs105において、画像処理部81は、基準値を用いて、IP表面異常が小領域201aに写っているか否かを判定する判定処理を、各小領域201aについて行う。判定処理において、画像処理部81は、例えば、基準値と小領域201aの評価値とを比較する。そして、画像処理部81は、小領域201aの評価値が基準値を超える(例えば、評価値が基準値より小)場合、当該小領域201aにはIP表面異常が写っていると判定する。一方で、画像処理部81は、小領域201aの評価値が基準値を超えない(例えば、評価値が基準値と同じか基準値よりも大)場合、当該小領域201aにはIP表面異常が写っていないと判定する。以後、それにIP表面異常が写っていると判定された小領域201aを異常小領域201aと呼ぶ。イメージングプレート10の表面に異常がある場合、ステップs105では、少なくとも一つの異常小領域201aが特定される。
【0248】
次にステップ106において、画像処理部81は、ステップs105での各小領域201aについての判定処理の結果に基づいて、反転前消去時全体像200のIP反射光像201においてIP表面異常が写っている異常領域像2010(図55~57参照)の位置及び形状を特定する。画像処理部81は、IP反射光像201において、ステップs105で特定された少なくとも一つの異常小領域201aからなる部分領域の像を、異常領域像2010とする。そして、画像処理部801は、ステップs105で特定された少なくとも一つの異常小領域201aからなる部分領域の位置及び形状を、異常領域像2010の位置及び形状とする。画像処理部801は、各異常小領域201aの位置及び形状に基づいて、異常領域像2010の位置及び形状を特定することができる。異常領域像2010の位置及び形状が特定されると、異常特定処理が終了する。異常領域像2010の位置及び形状の特定は抽出による特定と考えてもよい。以後、画像処理部81で特定された異常領域像2010の位置及び形状を、異常領域像位置及び異常領域像形状とそれぞれ呼ぶことがある。
【0249】
なお、ステップs105において、すべての小領域201aにIP表面異常が写っていないと判定された場合、ステップs106が実行されずに異常特定処理が終了する。つまり、IP反射光像201の特定領域2000にIP表面異常が写っていないと判定された場合、ステップs106が実行されずに異常特定処理が終了する。
【0250】
このように、画像処理部81は、イメージングプレート10からの励起光L1の反射光L4の検出結果としての画像信号に基づいて、イメージングプレート10の表面の異常を適切に特定することができる。
【0251】
表示制御部82は、検出放射線像を表示部3に表示させる場合、当該検出放射線像での異常領域像位置に相当する箇所に、異常領域像形状を当該検出放射線像に重ねて表示してもよい。図60はこの場合の表示部3の表示例を示す概略図である。重ねる表示は、第1の画像信号の処理により生成した放射線像に対して異常領域の位置と形状を表示する異常領域表示の一例である。
【0252】
図60の例では、表示面3aに、放射線像101bを含む反転後発光時全体像100bと、反転前消去時全体像200から切り出された第2切出像152とが同時にかつ別々に表示されている。図60の例では、反転前消去時全体像200のIP反射光像201が第2切出像152に設定されており、第2切出像152には異常領域像2010が含まれている。図60の例では、放射線像101bでの異常領域像位置に相当する箇所に、異常領域像形状(異常領域像形状像ともいう)2011が放射線像101bに重ねて表示されている。IP反射光像201での異常領域像2010の相対位置と、放射線像101bでの異常領域像形状2011の相対位置とは同じとなる。
【0253】
図60の例のように、放射線像101bでの異常領域像位置に相当する箇所に、異常領域像形状2011が放射線像101bに重ねて表示されることによって、ユーザは、放射線像101bにおいて、イメージングプレート10の表面の異常に相当する領域を特定しやすくなる。よって、例えば、歯科医がユーザである場合、歯科医は、放射線像101bにおいて、イメージングプレート10の表面の異常に相当する領域を、診断の判断材料から容易に除外することができる。
【0254】
また、図60の例のように、IP反射光像201が表示されているときに、異常領域像形状2011が放射線像101b上に表示される場合には、ユーザは、放射線像101bにおいて、イメージングプレート10の表面の異常に相当する領域と、IP反射光像201中の異常領域像2010とを簡単に見比べることができる。これにより、ユーザは、例えば、読取装置1において異常領域像2010の位置及び形状が適切に特定されているか否かを判定することができる。なお、異常領域像形状2011が放射線像101bに重ねて表示されている場合にIP反射光像201は表示されなくてもよい。
【0255】
読取装置1は、ユーザの指示に応じて、異常領域像形状2011の表示及び非表示を切り替えてもよい。この場合、表示部3は、異常領域像形状2011の表示及び非表示を切り替えるための切替ボタン300を表示してもよい。図61はこの場合の表示部3の表示例を示す概略図である。
【0256】
図61の例では、操作部4に含まれるタッチセンサと表示部3とでタッチパネルディスプレイが構成されている。切替ボタン300はソフトウェアボタンであって、操作部4は切替ボタン300に対するユーザのタッチ操作を受け付けることができる。切替ボタン300がタッチ操作されるたびに、異常領域像形状2011の表示及び非表示が切り替えられる。図61のように、異常領域像形状2011が表示されている状態で、操作部4が切替ボタン300に対するユーザ操作を受け付けると、異常領域像形状2011が非表示にされる。一方で、異常領域像形状2011が非表示の状態で、操作部4が切替ボタン300に対するユーザ操作を受け付けると、図61のように異常領域像形状2011が表示される。
【0257】
このように、ユーザの指示に応じて、異常領域像形状2011の表示及び非表示が切り替えられる場合には、読取装置1の利便性が向上する。
【0258】
なお、異常特定処理では、イメージングプレート10の表面での異常の有無だけが特定され、異常領域像2010の位置及び形状までは特定されなくてもよい。
【0259】
以上のように、読取装置1が、発光光L2の検出に基づく放射線像と、反射光L4の検出に基づく反射光像とを得ることができることによって、読取装置1の利便性が向上する。
【0260】
なお、異常小領域201aの輝度情報(言い換えれば輝度値)が検出放射線像の補正に用いられてもよい。画像処理部81は、ステップs106において異常領域像2010の位置及び形状の特定をした後、検出器40からの画像信号から、異常領域像2010の輝度情報(言い換えれば輝度値)と、第2切出像152において異常領域像2010外の像の輝度情報とを取得する。そして、画像処理部81は、異常領域像2010外の像の輝度情報と、異常領域像2010の輝度情報との差分の絶対値を、検出放射線像の補正の際の補正値として使用する。例えば、検出放射線像において、イメージングプレート10の表面の異常に相当する領域(異常相当領域)の輝度値が、他の領域の輝度値よりも下がるようであれば、画像処理部81は、異常相当領域の輝度値に対して補正値を加算する。一方で、検出放射線像において、異常相当領域の輝度値が他の領域の輝度値より上がるようであれば、画像処理部81は、異常相当領域の輝度値から補正値を減算する。このような輝度情報の調整を異常相当領域輝度調整処理と呼ぶこととする。異常相当領域輝度調整処理により適切な放射線像を得ることができる。検出放射線像において異常領域像形状2011が重ねられた部分が、異常相当領域となる。
【0261】
<読取装置の他の構成例>
上記の例では、保持部20が移動しているが、保持部20は移動しなくてもよい。この場合、保持部20が停止した状態で、光源30、検出器40及び消去用光源70が移動することによって、読取装置1では上記と同様の処理が実現される。また、光源30、検出器40及び消去用光源70と、保持部20とが移動してもよい。
【0262】
また、読取装置1は複数の光源を備えてもよい。図62は2つの光源を備える読取装置1(読取装置1Aともいう)の構成例を示す概略図である。
【0263】
図62に示されるように、読取装置1Aは、上述の光源30と、それとは別の光源130とを備えている。光源130は、保持部20に保持されたイメージングプレート10あるは評価用部材900に対して作用光L10としての照射光L11を照射することが可能である。光源130は、例えば光源30と同じ構成を有しており、照射光L11を主走査方向DRmに走査することが可能である。照射光L11は例えば可視光のレーザ光である。照射光L11の波長は、励起光L1の波長と同じであってもよいし、異なっていてもよい。光源130は、光源30と同様に、発光制御部86によって制御される。
【0264】
光源130は、例えば、上述の図24のステップs22で使用されてもよい。この場合、ステップs22では、光源30でなく光源130が、消去済みイメージングプレート10の前面及びIP外側領域に対して照射光L11を照射する。ステップs22では、光源130は、光源30と同様に、発光制御部86による制御によって、照射光L11をイメージングプレート10及びIP外側領域上で主走査方向DRmに走査する処理を繰り返し実行する。一方で、ステップs22において、駆動部50は、上述の読取処理と同様に、イメージングプレート10を保持した保持部20を、副走査方向DRsに移動させる。保持部20が副走査方向DRsに移動している間に、照射光L11を主走査方向DRmに走査する処理が繰り返し実行されることにより、励起光L1と同様に、照射光L11がイメージングプレート10及びIP外側領域に対してラスタスキャンされる。ステップs22では、イメージングプレート10に対して照射光L11がラスタスキャンされる間、検出器40が、イメージングプレート10からの照射光L11の反射光を検出し、その検出結果としての消去時画像信号を出力する。この消去時画像信号に基づく消去時全体像は、励起光L1の反射光L4の検出に基づく上述の消去時全体像と同様に、IP反射光像及びIP外側領域像を含み、放射線像を含まない。照射光L11の反射光は、被作用光L20の一例である。図24のステップs27では、照射光L11の反射光の検出に基づく消去時全体像が表示される。読取装置1Aは、励起光L1の反射光L4の検出に基づく消去時全体像と同様に、照射光L11の反射光の検出に基づく消去時全体像を使用することができる。例えば、読取装置1Aは、照射光L11の反射光の検出に基づく消去時全体像に基づいてIP傾き角度を特定してもよいし、IPサイズを特定してもよいし、異常領域像を特定してもよい。
【0265】
読取装置1は複数の検出器を備えてもよい。図63は2つの検出器と1つの光源を備える読取装置1(読取装置1Bともいう)の構成例を示す概略図である。
【0266】
図63に示されるように、読取装置1Bは、上述の検出器40と、検出器40とは別の検出器140とを備えている。また、読取装置1Bは、光源30を備えており、光源130は備えていない。検出器140は、例えば、検出器40と同様の構成を有している。検出器140は、検出器40と同様に、イメージングプレート10からの発光光L2を検出することができる。また、検出器140は、検出器40と同様に、イメージングプレート10あるいは評価用部材900からの励起光L1の反射光L4と、IP外側領域あるいは評価用部材外側領域からの励起光L1の反射光L4とを検出することができる。
【0267】
検出器140は、例えば、上述の図24のステップs22で使用されてもよい。この場合、読取装置1Bでは、ステップs22において、光源30が、消去済みイメージングプレート10の前面及びIP外側領域に対してラスタスキャンしている間、検出器140が、イメージングプレート10及びIP外側領域からの励起光L1の反射光を検出し、その検出結果としての消去時画像信号を出力する。この消去時画像信号に基づく消去時全体像は、今まで説明した消去時全体像と同様に、IP反射光像及びIP外側領域像を含み、放射線像を含まない。読取装置1Bは、ステップs22で取得された消去時全体像に基づいて、IP傾き角度の特定等の各種処理を行うことができる。
【0268】
読取装置1は複数の検出器と複数の光源とを備えてもよい。図64は検出器40及び140と光源30及び130を備える読取装置1(読取装置1Cともいう)の構成例を示す概略図である。
【0269】
読取装置1Cは、検出器140及び光源130を、例えば、上述の図24のステップs22で使用してもよい。この場合、読取装置1Cでは、ステップs22において、光源130が、消去済みイメージングプレート10の前面及びIP外側領域に対してラスタスキャンしている間、検出器140が、イメージングプレート10及びIP外側領域からの励起光L1の反射光L4を検出し、その検出結果としての消去時画像信号を出力する。この消去時画像信号に基づく消去時全体像は、今まで説明した消去時全体像と同様に、IP反射光像及びIP外側領域像を含み、放射線像を含まない。
【0270】
読取装置1A及び1Cでは、光源130は、可視光以外の光を照射光L11として出力してもよい。例えば、照射光L11は、赤外線であってもよいし、紫外線であってもよい。この場合、検出器40及び検出器140としては、赤外線あるいは紫外線を検出できる検出器が採用される。
【0271】
また、読取装置1B及び1Cでは、照射光L11の反射光を検出する検出器140は、例えば、カメラで使用されるCCDセンサあるいはCMOSセンサを備えてもよい。CCDはCharge Coupled Deviceの略語であり、CMOSは、Complementary Metal Oxide Semiconductorの略語である。
【0272】
また、読取装置1Cでは、光源130は、照射光L11を走査するのではなく、消去用光源70のように、1度の照射でイメージングプレート10あるいは評価用部材900の全範囲を照射光L11で照射してもよい。この場合、検出器140は、例えば、カメラで使用されるCCDセンサあるいはCMOSセンサを備えてもよい。
【0273】
また、読取装置1B及び1Cでは、検出器40は、励起光L1の反射光L4を検出できなくてもよい。この場合、検出器40の光学フィルタ42は、励起光L1を透過させてなくてもよい。また、読取装置1Cでは、検出器40は、照射光L11の反射光を検出できなくてもよい。この場合、検出器40の光学フィルタ42は、照射光L11を透過させてなくてもよい。
【0274】
検出器40が励起光L1の反射光L4を検出しない場合に取得される発光時全体像では、イメージングプレート10に未露光部分が含まれるとき、未露光領域像の輝度値と、IP外側領域像の輝度値とは同じような値となる。よって、イメージングプレート10に未露光部分が含まれる場合、画像処理部81は、上記のような二値化像を用いる方法では、発光時全体像に基づいてIP傾き角度及びIPサイズを特定することが難しくなる。しかしながら、イメージングプレート10に未露光部分が含まれる場合であっても、画像処理部81は、検出器140が出力する消去時画像信号に基づく消去時全体像に基づいて、IP傾き角度及びIPサイズを上記のようにして適切に特定することができる。
【0275】
また、読取装置1B及び1Cでは、検出器140は、発光光L2を検出できなくてもよい。この場合、読取装置1B及び1Cは、イメージングプレート10から放射線像を消去することなくIP反射光像を得ることができる。例えば、読取装置1Bは、上述のステップs2の読取処理において、検出器40及び140を同時に動作させてもよい。この場合、検出器40での発光光L2の検出と、検出器14でのイメージングプレート10からの励起光L1の反射光L4の検出とが並行に行われる。検出器140が出力する画像信号に基づく全体の像は、消去時全体像と同様の像となり、IP反射光像及びIP外側領域像を含み、放射線像を含まない。また、読取装置1Cは、上述のステップs2の読取処理において、光源30及び130を同時に動作させるとともに検出器40及び140を同時に動作させてもよい。この場合、検出器40での発光光L2の検出と、検出器140でのイメージングプレート10からの照射光L11の反射光の検出とが並行に行われる。この場合も、検出器140が出力する画像信号に基づく全体の像は、消去時全体像と同様の像となり、IP反射光像及びIP外側領域像を含み、放射線像を含まない。このように、読取処理の中で、発光光L2の検出に基づく放射線像だけではなく、励起光L1あるいは照射光L11の反射光の検出に基づく反射光像を得ることによって、図24のステップs21及びs22の処理が不要となる。つまり、上述の図14の一連の処理の中で、発光光L2の検出に基づく放射線像と、励起光L1あるいは照射光L11の反射光の検出に基づく反射光像とを得ることができる。よって、読取装置1の動作を簡素化することができる。
【0276】
上記の例の読取装置1では、ACアダプタ5以外の複数の構成が、筐体2で一体化されていたが、一体化されていなくてもよい。例えば、読取装置1は、筐体2に設けられた表示部3とは別に、あるいは表示部3の代わりに、筐体2の外側に位置する表示部13を備えてもよい。図65は、筐体2表示面の外側に表示部13を備える読取装置1(読取装置1Dともいう)の構成の一例を示す概略図である。表示部13は表示装置13ともいえる。
【0277】
表示部13は、例えば、液晶表示装置あるいは有機EL表示装置であり、文字、記号、図形及び画像などの各種情報を表示することが可能である。表示部13は、筐体2内の制御部80の表示制御部82によって制御される。表示制御部82は、例えば、筐体2内のインタフェース部95を通じて、表示部13を制御することができる。インタフェース部95と表示部13との間の通信は、USBに準拠してもよいし、DisplayPortに準拠してもよいし、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)(登録商標)に準拠してもよい。また、インタフェース部95は、表示部13と有線接続されてもよいし、無線接続されてもよい。表示部13は、取得全体像を表示してもよいし、切出像を表示してもよい。なお、図65の例では、読取装置1Dの筐体2に表示部3が設けられているが、表示部3は設けられなくてもよい。また、読取装置1Dは、図62~64に示されるように、複数の光源を備えてもよいし、複数の検出器を備えてもよい。
【0278】
図66及び67は、読取装置1の構成の他の一例を示す概略図である。図66及び67に示される読取装置1(読取装置1Eともいう)では、読取装置1Eの機能の一部を有するコンピュータ装置950が筐体2の外側に設けられている。図67に示されるように、コンピュータ装置950は、例えば、上述の表示部3、画像処理部81及び表示制御部82を備える。コンピュータ装置950は、例えば、パーソナルコンピュータ(汎用コンピュータともいう)であってもよい。この場合、コンピュータ装置950は、ノート型であってもよいし、デスクトップ型であってもよい。以後、読取装置1Eにおいて、筐体2と、筐体2によって一体化された複数の構成と、ACアダプタ5とをまとめて読取装置本体9と呼ぶことがある。
【0279】
コンピュータ装置950は、読取装置本体9と通信することが可能である。コンピュータ装置950は、例えば、画像処理部81及び表示制御部82を有する制御部951と、読取装置本体9と通信するインタフェース部952とを備える。また、コンピュータ装置950は、ユーザからの操作を受け付ける操作部953を備える。
【0280】
制御部951は、コンピュータ装置950の動作を統合的に管理することが可能であり、制御回路ともいえる。制御部951は、例えば、表示部3及びインタフェース部952を制御することができる。また、制御部951は、操作部953が受け付けたユーザ操作に応じた処理を行うことができる。
【0281】
制御部951は、例えば、少なくとも一つのプロセッサと、記憶部とを備え、一種のコンピュータ装置であるといえる。制御部951が備える少なくとも一つのプロセッサには、CPUが含まれてもよいし、CPU以外のプロセッサが含まれてもよい。制御部951では、少なくとも一つのプロセッサが記憶部(記憶回路ともいう)内のプログラムを実行することによって、各種機能が実現される。制御部951では、少なくとも一つのプロセッサが記憶部内のプログラムを実行することによって、機能ブロックとして、上述の画像処理部81及び表示制御部82が形成される。
【0282】
操作部953は、例えば、キーボード及びマウスを備える。操作部953は、ユーザのタッチ操作を検出するタッチセンサを備えてもよい。操作部953がタッチセンサを備える場合、当該タッチセンサと表示部3とで、表示機能及びタッチ検出機能を有するタッチパネルディスプレイが構成されてもよい。
【0283】
インタフェース部952は、読取装置本体9のインタフェース部95と通信することが可能である。インタフェース部952と読取装置本体9のインタフェース部95との間の通信は、イーサネットに準拠してもよいし、USBに準拠してもよいし、WiFiに準拠してもよいし、他の規格に準拠してもよい。インタフェース部952は、インタフェース部95と有線通信を行ってもよいし、無線通信を行ってもよい。インタフェース部952は、インタフェース回路ともいえるし、通信部ともいえるし、通信回路ともいえる。コンピュータ装置950の制御部951と、読取装置本体9の制御部80とは、インタフェース部952及びインタフェース部95を通じて、互いに情報のやり取りを行うことができる。
【0284】
読取装置1Eでは、コンピュータ装置950の制御部951と読取装置本体9の制御部80とが協働することによって、制御部80が行っていた上述の各種処理が実行される。読取装置1Eでは、検出制御部85が、検出器40が出力する画像信号をインタフェース部95に出力する。インタフェース部95は、入力された画像信号をインタフェース部952に出力する。インタフェース部952は、入力された画像信号を制御部951に入力する。画像処理部81は、制御部951に入力された画像信号に対して上述の画像処理を行う。そして、画像処理部81は、画像処理後の画像信号に基づいて、上述の傾き角度特定処理を実行したり、サイズ特定処理を実行したり、切出処理を実行したりする。また、表示制御部82は、画像処理後の画像信号に基づいて、例えば、取得全体像を表示部3に表示させる。
【0285】
コンピュータ装置950の操作部953は、読取装置本体9の操作部4が受け付ける複数のユーザ操作の少なくとも一部を受け付けてもよい。例えば、操作部953は、図14の一連の処理の開始を指示するユーザ操作を受け付けてもよいし、図23の一連の処理の開始を指示するユーザ操作を受け付けてもよいし、図24の一連の処理の開始を指示するユーザ操作を受け付けてもよい。この場合、制御部951は、操作部953が受け付けたユーザ操作をインタフェース部952を通じて読取装置本体9に通知する。読取装置本体9では、制御部80が、インタフェース部95を通じて制御部951からの通知を受け取り、操作部953が受け付けたユーザ操作に応じた処理を実行する。
【0286】
また、操作部953は、操作部4が受け付けないユーザ操作を受け付けてもよいし、操作部4は、操作部953が受け付けないユーザ操作を受け付けてもよい。また、操作部953が受け付けたユーザ操作と、操作部4が受け付けたユーザ操作が競合する場合、読取装置1Eでは、例えば、読取装置本体9が受け付けたユーザ操作に応じた処理が優先的に実行されてもよい。
【0287】
なお、読取装置1Eは、上述の図1等に示されるように、筐体2に設けられた表示部を備えてもよい。また、読取装置1Eは、図62~64に示されるように、複数の光源を備えてもよいし、複数の検出器を備えてもよい。また、読取装置1Eは、操作部4及び953のどちらか一方を備えなくてもよい。また、読取装置1Eでは、読取装置本体9の制御部80が、コンピュータ装置950の画像処理部81が行う複数の処理の一部を代わりに実行してもよい。例えば、制御部80は、検出器40からの画像信号に対する画像処理を実行し、画像処理後の画像信号が画像処理部81に入力されてもよい。
【0288】
以上のように、読取装置1は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0289】
1,1A,1B,1C,1D,1E 読取装置
10 イメージングプレート
30,130 光源
40,140 検出器
81 画像処理部
91 消去部
100a,100b,200 全体像
101a,101b,151a 放射線像
201 IP反射光像
2010 異常領域像
2011 異常領域像形状
L1 励起光
L2 発光光
L11 照射光
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