(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】マクスウェルパラレル撮像
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240716BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
A61B5/055 376
A61B5/055 311
G01N24/00 530Y
G01N24/00 530G
(21)【出願番号】P 2022515106
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 US2020052717
(87)【国際公開番号】W WO2021062154
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-09-13
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521359678
【氏名又は名称】キュー バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス ビレーナ,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】レフキミアティス,スタマティオス
(72)【発明者】
【氏名】ポリメリディス,アタナシオス
(72)【発明者】
【氏名】テイリ,ドルク
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】Jakob Asslander, et al.,Low Rank Alternating Direction Method of Multipliers Reconstruction for MR Fingerprinting,Magnetic Resonance in Medicine,2018年,79,83-96
【文献】Michael A. Ohliger, et al.,Ultimate Intrinsic Signal-to-Noise Ratio for Parallel MRI: Electromagnetic Field Considerations,Magnetic Resonance in Medicine,2003年,50,1018-1030
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル感度の表現の係数と、サンプルに関連するMR情報と、を決定するための方法であって、
コンピュータによって、
測定デバイスまたはメモリから、前記サンプルに関連する磁気共鳴(MR)信号を取得することと、
コイル磁場基底ベクトルの所定のセットにアクセスすることであって、前記測定デバイス内のコイルのコイル感度が、前記係数を使用する前記コイル磁場基底ベクトルの所定のセットの加重重ね合わせによって表され、前記所定のコイル磁場基底ベクトルが、マクスウェル方程式の解である、アクセスすることと、
前記MR情報を入力として使用し、前記MR信号、前記係数、および前記コイル磁場基底ベクトルの所定のセットに対応する計算されたMR信号を出力するために前記サンプルの応答物理をシミュレートするフォワードモデルに少なくとも部分的に基づいて、前記サンプルに関連する前記MR情報および前記コイル感度の表現の前記係数の非線形最適化問題を解くことと、を含み、
前記MR情報が、前記MR信号によって指定される、前記サンプルと関連付けられたボクセル内の1つ以上のMRパラメータの定量値を含
み、
前記非線形最適化問題が、前記MR信号と、前記MR情報に対応する推定MR信号との間の差の絶対値の二乗に対応するデータ忠実度項を含み、
前記非線形最適化問題を解くことは、前記データ忠実度項を反復して解くことを含み、
前記MRパラメータは、所与の反復において、少なくとも部分的に前記MR信号に基づいて逆問題で計算される、方法。
【請求項2】
所与のコイル感度が、前記係数と前記コイル磁場基底ベクトルの所定のセットにおける所定のコイル磁場基底ベクトルとの積の線形重ね合わせによって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記
データ忠実度項が、前記測定デバイス内の前記コイルの前記コイル感度からの寄与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非線形最適化問題が、前記
データ忠実度項の低減または最小化に対する1つ以上の制約を含み、
前記1つ以上の制約は、前記MR情報の空間分布に対応する正則化子を含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記MR情報が、前記MR信号によって指定される、前記サンプルと関連付けられたボクセル内の1つ以上のMRパラメータの空間分布を有する画像を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記MR信号が、磁気共鳴撮像法(MRI)または別のMR測定技術に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記MRパラメータが、核密度、外部磁場の方向に沿ったスピン-格子緩和時間、外部磁場の方向に垂直なスピン-スピン緩和時間、調整されたスピン-スピン緩和時間、拡散テンソルの成分、速度、温度、非共振周波数、電気伝導率、誘電率、磁化率、または誘電率のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記測定デバイスが、テンソル場マッピング、またはMRフィンガープリントを実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記非線形最適化問題が、収束基準が達成されるまで反復して解かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記非線形最適化問題が、前記MR信号および前記コイル磁場基底ベクトルのセットを前記MR情報および前記係数にマッピングする、事前に訓練されたニューラルネットワークまたは事前に訓練された機械学習モデルを使用して解かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記非線形最適化問題を解くことが、前記測定デバイスによって実施される測定中にスキップされたMR走査線を再構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記測定デバイスによって実施される測定のMR走査時間が、磁気共鳴撮像法(MRI)パラレル撮像技術と比較して短縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
コイル感度の表現の係数と、サンプルに関連するMR情報と、を決定するためのコンピュータであって、
測定デバイスと通信するように構成されたインターフェース回路と、
プログラム命令を記憶するように構成されたメモリと、
前記プログラム命令を実行するように構成されたプロセッサであって、前記プログラム命令が、前記プロセッサによって実行されるときに、前記コンピュータに、
前記測定デバイスまたは前記メモリから、サンプルに関連する磁気共鳴(MR)信号を取得することと、
コイル磁場基底ベクトルの所定のセットにアクセスすることであって、前記測定デバイス内のコイルのコイル感度が、前記係数を使用する前記コイル磁場基底ベクトルの所定のセットの加重重ね合わせによって表され、前記所定のコイル磁場基底ベクトルが、マクスウェル方程式の解である、アクセスすることと、
前記MR情報を入力として使用し、前記MR信号、前記係数、および前記コイル磁場基底ベクトルの所定のセットに対応する計算されたMR信号を出力するために前記サンプルの応答物理をシミュレートするフォワードモデルに少なくとも部分的に基づいて、前記サンプルに関連する前記MR情報および前記コイル感度の表現の前記係数の非線形最適化問題を解くことと、を含む動作を実施させる、プロセッサと、を備え、
前記MR情報が、前記MR信号によって指定される、前記サンプルと関連付けられたボクセル内の1つ以上のMRパラメータの定量値を含
み、
前記非線形最適化問題が、前記MR信号と、前記MR情報に対応する推定MR信号との間の差の絶対値の二乗に対応するデータ忠実度項を含み、
前記非線形最適化問題を解くことは、前記データ忠実度項を反復して解くことを含み、
前記MRパラメータは、所与の反復において、少なくとも部分的に前記MR信号に基づいて逆問題で計算される、コンピュータ。
【請求項14】
前記
データ忠実度項が、前記測定デバイス内の前記コイルの前記コイル感度からの寄与を含む、請求項13に記載のコンピュータ。
【請求項15】
前記MR情報が、前記MR信号によって指定される、前記サンプルと関連付けられたボクセル内の1つ以上のMRパラメータの空間分布を有する画像を含む、請求項13に記載のコンピュータ。
【請求項16】
前記MR信号が、磁気共鳴撮像法(MRI)または別のMR測定技術に対応する、請求項13に記載のコンピュータ。
【請求項17】
前記MRパラメータが、核密度、外部磁場の方向に沿ったスピン-格子緩和時間、外部磁場の方向に垂直なスピン-スピン緩和時間、調整されたスピン-スピン緩和時間、拡散テンソルの成分、速度、温度、非共振周波数、電気伝導率、誘電率、磁化率、または誘電率のうちの1つ以上を含む、請求項13に記載のコンピュータ。
【請求項18】
前記MR信号が、テンソル場マッピング、またはMRフィンガープリントに対応する、請求項13に記載のコンピュータ。
【請求項19】
前記非線形最適化問題が、収束基準が達成されるまで反復して解かれる、請求項13に記載のコンピュータ。
【請求項20】
前記非線形最適化問題が、前記MR信号および前記コイル磁場基底ベクトルのセットを前記MR情報および前記係数にマッピングする、事前に訓練されたニューラルネットワークまたは事前に訓練された機械学習モデルを使用して解かれる、請求項13に記載のコンピュータ。
【請求項21】
前記非線形最適化問題を解くことが、前記測定デバイスによって実施される測定中にスキップされたMR走査線を再構成する、請求項13に記載のコンピュータ。
【請求項22】
前記測定デバイスによって実施される測定のMR走査時間が、磁気共鳴撮像法(MRI)パラレル撮像技術と比較して短縮される、請求項13に記載のコンピュータ。
【請求項23】
コンピュータと組み合わせて使用するための非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読記憶媒体は、
コイル感度の表現の係数と、サンプルに関連するMR情報と、を決定するためのプログラム命令を記憶するように構成され、前記プログラム命令が、前記コンピュータによって実行されるときに、前記コンピュータに、
測定デバイスまたはメモリから、サンプルに関連する磁気共鳴(MR)信号を取得することと、
コイル磁場基底ベクトルの所定のセットにアクセスすることであって、前記測定デバイス内のコイルのコイル感度が、前記係数を使用する前記コイル磁場基底ベクトルの所定のセットの加重重ね合わせによって表され、前記所定のコイル磁場基底ベクトルが、マクスウェル方程式の解である、アクセスすることと、
前記MR情報を入力として使用し、前記MR信号、前記係数、および前記コイル磁場基底ベクトルの所定のセットに対応する計算されたMR信号を出力するために前記サンプルの応答物理をシミュレートするフォワードモデルに少なくとも部分的に基づいて、前記サンプルに関連するMR情報および前記コイル感度の表現の前記係数の非線形最適化問題を解くことと、を含む動作を実施させ、
前記MR情報が、前記MR信号によって指定される、前記サンプルと関連付けられたボクセル内の1つ以上のMRパラメータの定量値を含
み、
前記非線形最適化問題が、前記MR信号と、前記MR情報に対応する推定MR信号との間の差の絶対値の二乗に対応するデータ忠実度項を含み、
前記非線形最適化問題を解くことは、前記データ忠実度項を反復して解くことを含み、
前記MRパラメータは、所与の反復において、少なくとも部分的に前記MR信号に基づいて逆問題で計算される、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項24】
前記
データ忠実度項項が、前記測定デバイス内の前記コイルの前記コイル感度からの寄与を含む、請求項23に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項25】
前記MR情報が、前記MR信号によって指定される、前記サンプルと関連付けられたボクセル内の1つ以上のMRパラメータの空間分布を有する画像を含む、請求項23に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項26】
前記MR信号が、磁気共鳴撮像法(MRI)または別のMR測定技術に対応する、請求項23に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項27】
前記MRパラメータが、核密度、外部磁場の方向に沿ったスピン-格子緩和時間、外部磁場の方向に垂直なスピン-スピン緩和時間、調整されたスピン-スピン緩和時間、拡散テンソルの成分、速度、温度、非共振周波数、電気伝導率、誘電率、磁化率、または誘電率のうちの1つ以上を含む、請求項23に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項28】
前記MR信号が、テンソル場マッピング、またはMRフィンガープリントに対応する、請求項23に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項29】
前記非線形最適化問題が、収束基準が達成されるまで反復して解かれる、請求項23に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項30】
前記非線形最適化問題が、前記MR信号および前記コイル磁場基底ベクトルのセットを前記MR情報および前記係数にマッピングする、事前に訓練されたニューラルネットワークまたは事前に訓練された機械学習モデルを使用して解かれる、請求項23に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項31】
前記非線形最適化問題を解くことが、前記測定デバイスによって実施される測定中にスキップされたMR走査線を再構成する、請求項23に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項32】
前記測定デバイスによって実施される測定のMR走査時間が、磁気共鳴撮像法(MRI)パラレル撮像技術と比較して短縮される、請求項23に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月27日に出願された「MAXWELL PARALLEL IMAGING」と題された、米国特許仮出願第62/907,516に対する35 U.S.C.§119(e)に基づく優先的利益を主張するものである。
【0002】
記載された実施形態は、一般に、磁気共鳴測定の分析を加速することに関する。
【背景技術】
【0003】
サンプルの1つ以上の物理パラメータを判定するために、多くの非侵襲的特性評価技術が利用可能である。例えば、磁気特性は、磁気共鳴、すなわちMR(多くの場合「核磁気共鳴」、すなわちNMRと称される)を使用して調べることができ、これは、磁界内の核が電磁放射を吸収して再放出する物理現象である。さらに、固体または剛性材料の密度変動および狭域または広域周期構造は、X線撮像、X線回折、コンピュータ断層撮影、中性子回折、または電子顕微鏡などの特性評価技術を使用して調べることができ、ここで、ド・ブローイ波長が短い電磁波またはエネルギー粒子は、サンプルによって吸収または散乱される。さらに、軟質材料または流体の密度変化および運動は、超音波撮像を使用して調べることができ、ここで、超音波はサンプル内を透過し、かつ、そのサンプル内で反射する。
【0004】
これら、および他の非侵襲的特性評価技術の各々において、1つ以上の(粒子の束もしくは入射放射線、静的もしくは時間変動するスカラー場、および/または静的もしくは時間変動するベクトル場などの)外部励起がサンプルに適用され、物理現象の形で、結果として生じるサンプルの応答は、直接的または間接的に1つ以上の物理パラメータを判定するために測定される。一例として、MRでは、磁性核スピンは印加された外部DC磁界において部分的に整列(または分極)され得る。これらの核スピンは、一種の核の磁気回転比と、外部磁界の大きさまたは強度との積によって与えられる角周波数(「ラーモア周波数」と称されることもある)で、その外部磁界の方向の周りで摂動または回転し得る。角周波数に対応するパルス幅を有する1つ以上の無線周波数(RF)パルス(および、より一般的には電磁パルス)などの分極された核スピンに、外部磁界の方向に直角または垂直に摂動を適用することによって、核スピンの分極は一時的に変化し得る。結果として生じる核スピンの(時間変動する全磁化など)動的応答から、サンプルと関連付けられた1つ以上の物理パラメータなどのサンプルの物理特性および材料特性に関する情報を得ることができる。
【0005】
さらに、一般的には、特性評価技術の各々によって、1つ以上の物理パラメータをサンプル中の少量またはボクセルで判定することが可能となり、それらをテンソルを使用して表すことができる。一例として磁気共鳴撮像法(MRI)を使用すると、(陽子または同位体1Hなどの)核スピンの摂動の角周波数の外部磁界の大きさへの依存性を使用して、異なる材料または種類の組織の三次元(3D)もしくは解剖学的構造、および/または化学組成の画像を判定できる。具体的には、サンプルに不均一または空間的に変化する磁界を印加することにより、典型的には、1Hスピンの摂動の角周波数で生じた変化を用いて、1Hスピンの測定された動的応答をボクセルに空間的に位置付け、これを患者の内部構造などの画像を生成するために使用することができる。
【0006】
しかしながら、多くの場合、サンプルの物理特性の特性評価には時間がかかり、複雑で、かつ費用がかる。例えば、MRIにおいて高空間分解能(つまり、小さなボクセルサイズ)でMR画像を取得するには、多くの場合、患者の様々な種類の組織内の1Hスピンの緩和時間よりも長い期間にわたって多数の測定(「走査」と称されることもある)を実施することが必要になる。さらに、高い空間分解能を達成するために、通常、MRI中に大きな均一な外部磁界を使用する。この外部磁界は、通常、ボアが狭い環状の超伝導磁気を使用して生成され、多くの患者は閉塞感を感じ得る。さらに、フーリエ変換技術を使用して、RFパルスシーケンス、したがってMR走査時間の制約を犠牲にして、画像の再構成を容易にすることができる。
【0007】
長いMR走査時間と、(MRIの場合は)マグネットボアの閉塞環境との組み合わせにより、ユーザ体験が悪化する可能性がある。さらに、MR走査時間が長くなるとスループットが低下し、それにより特性評価を実施するコストが増加する。この種の問題によって、多くの特性評価技術の使用が抑制または制限される可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
コイル感度の表現の係数と、サンプルに関連するMR情報と、を決定するコンピュータが記載される。このコンピュータには、測定デバイス(測定を実施する)と通信するインターフェース回路と、プログラム命令を実行するプロセッサと、プログラム命令を記憶するメモリとが含まれる。動作中、コンピュータは、測定デバイスからサンプルに関連するMR信号を取得し得る。次に、コンピュータは、コイル磁場基底ベクトルの所定のセットにアクセスしてもよく、ここで係数を使用するコイル磁場基底ベクトルの所定のセットの加重重ね合わせは、測定デバイス内のコイルのコイル感度を表し、所定のコイル磁場基底ベクトルは、マクスウェル方程式の解である。次に、コンピュータは、MR信号およびコイル磁場基底ベクトルの所定のセットを使用して、サンプルに関連するMR情報および係数の非線形最適化問題を解き得る。
【0009】
所与のコイル感度は、係数とコイル磁場基底ベクトルの所定のセットにおける所定のコイル磁場基底ベクトルとの積の線形重ね合わせによって表され得ることに留意されたい。
【0010】
さらに、非線形最適化問題は、MR信号と、MR情報に対応する推定MR信号との間の差の絶対値の二乗に対応する項を含み得る。この項は、測定デバイス内のコイルのコイル感度からの寄与を含むか、または組み込み得る。さらに、非線形最適化問題には、MR情報の空間分布に対応する1つ以上の正則化子など、項の低減または最小化に対する1つ以上の制約を含み得る。
【0011】
さらに、MR情報は、MR信号によって指定される、(例えば、画像内の)サンプルと関連付けられたボクセル内の1つ以上のMRパラメータの空間分布を含み得る。例えば、MR情報は、核密度を含み得る。したがって、測定デバイスは、MRIまたは別のMR測定技術を実施するMRスキャナであってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、MR情報は、MR信号によって指定される、サンプルと関連付けられたボクセル内の1つ以上のMRパラメータの定量値を含み得る。例えば、MR情報は、核密度、外部磁場の方向に沿ったスピン-格子緩和時間、および/または外部磁場の方向に垂直なスピン-スピン緩和時間、調整されたスピン-スピン緩和時間を含み得る。したがって、測定デバイスおよびコンピュータによるその後の分析には、テンソル場マッピング、MRフィンガープリントまたは別の定量的MR測定技術が含まれ得る。
【0013】
非線形最適化問題は、反復して解かれ得ることに留意されたい(例えば、収束基準が達成されるまで)。しかしながら、他の実施形態では、非線形最適化問題は、事前に訓練されたニューラルネットワークまたは事前に訓練された機械学習モデルを使用して解かれ得、MR信号およびコイル磁場基底ベクトルのセットを、MR情報および係数の空間分布にマッピングする。したがって、いくつかの実施形態では、非線形最適化問題は、反復なしで解かれ得る。
【0014】
さらに、コンピュータによって実施される動作は、非線形最適化技術を解決するときに、測定デバイスによって行われた測定における複数のMR走査線をスキップし、その後再構成することを可能にし得る。非線形最適化問題を解くために必要な時間の短縮とは別に、またはそれに加えて、これにより、測定デバイスによって実施される測定に関連するMR走査時間が短縮される可能性がある。
【0015】
別の実施形態は、コンピュータと共に使用するためのコンピュータ可読記憶媒体を提供する。このコンピュータ可読記憶媒体は、プログラム命令を含み、プログラム命令が、コンピュータによって実行されるときに、そのコンピュータに前述の動作の少なくとも一部を実施させる。
【0016】
別の実施形態では、コイル感度の表現の係数と、サンプルに関連するMR情報と、を決定するための方法を提供する。この方法は、コンピュータによって実施される前述の動作の少なくとも一部を含む。
【0017】
この概要は、本明細書に記載の主題のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、いくつかの例示的な実施形態を説明する目的で提供される。したがって、上記の特徴は単なる例であり、本明細書に記載の主題の範囲または趣旨を決して狭めるように解釈されるべきではないことが理解されよう。本明細書に記載の主題の他の特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明、図、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の一実施形態によるシステムの一例を示すブロック図である。
【
図2】本開示の一実施形態による、サンプルと関連付けられたモデルパラメータを判定するための方法の一例を示すフロー図である。
【
図3】本開示の一実施形態による、
図1のシステム内の構成要素間の通信の一例を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態による機械学習モデルの一例を示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態によるニューラルモデルの一例を示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態による、サンプル内の1つ以上の解剖学的構造の分類またはセグメント化の一例を示す図である。
【
図7】本開示の一実施形態による、コイル感度の表現の係数と、サンプルに関連するMR情報と、を決定するための方法の一例を示すフロー図である。
【
図8】本開示の一実施形態による、
図1のシステム内の構成要素間の通信の一例を示す図である。
【
図9】本開示の一実施形態による、電子デバイスの一例を示すブロック図である。
【
図10】本開示の一実施形態による、
図9の電子デバイスが使用するデータ構造の一例を示す図である。
【0019】
同様の参照番号は図面全体で対応する部分を指すことに留意されたい。さらに、同一部品の複数のインスタンスは、ダッシュでインスタンス番号と区切られた共通の接頭語で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態の第1のグループでは、コイル感度の表現の係数と、サンプルに関連するMR情報と、を決定するコンピュータについて説明する。動作中、コンピュータは、測定デバイスからサンプルに関連するMR信号を取得し得る。次に、コンピュータは、コイル磁場基底ベクトルの所定のセットにアクセスしてもよく、ここで係数を使用するコイル磁場基底ベクトルの所定のセットの加重重ね合わせは、測定デバイス内のコイルのコイル感度を表し、所定のコイル磁場基底ベクトルは、マクスウェル方程式の解である。次に、コンピュータは、MR信号およびコイル磁場基底ベクトルの所定のセットを使用して、サンプルに関連するMR情報および係数の非線形最適化問題を解き得る。
【0021】
コイル感度を表し、非線形最適化問題を解くことにより、この算出技術は、MR信号を測定するためのMR走査時間を短縮し得る。例えば、コンピュータによって実施される動作は、非線形最適化技術を解決するときに、測定デバイスによって行われた測定における複数のMR走査線をスキップし、その後再構成することを可能にし得る。非線形最適化問題を解くために必要な時間の短縮とは別に、またはそれに加えて、この機能により、測定デバイスによって実施される測定に関連するMR走査時間が短縮される可能性がある。実際、算出技術は、所与のコイルのセット、視野、外部磁場強度(または分解能)、および2Dまたは3D測定について、MR走査時間の可能な加速のための理論的限界を達成し得る。その結果、算出技術は、MR走査を実施するコストを削減し、全体的なユーザ体験を向上させる可能性がある。
【0022】
実施形態の第2のグループでは、前述したように、既存のMRIアプローチは、多くの場合、多数のMR走査および長いMR走査時間、ならびに高価なマグネットおよび/またはマグネットボアの閉塞環境を有し、これは、ユーザ体験が悪化する可能性がある。
【0023】
これらの問題に対処するための1つのアプローチは、1つ以上の励起に対するサンプルの応答物理のシミュレーションを使用して、1つ以上の物理パラメータなどの情報を判定することである。例えば、ボクセルレベルのモデルパラメータと、物理現象を記述する1つ以上の微分方程式に基づくフォワードモデルを使用することにより、コンピュータは1つ以上の励起をフォワードモデルへの入力として規定する情報を用いて、フォワードモデルの出力としてのサンプルの応答物理をシミュレートすることができる。
【0024】
ただし、このアプローチは、多くの場合、MR走査の回数が多くMR走査時間が長いという問題を、ボクセルレベルでモデルパラメータを正確に判定することに関連する問題にすり替えている。例えば、モデルパラメータは通常、1つ以上の励起を反復して適用し、測定を実施し、シミュレーションされた応答物理の望ましい精度が達成されるまで、測定値を使用して対応するモデルパラメータを算出するという逆問題を解くことによって判定される(「反復アプローチ」と称されることもある)。一般に、これらの既存の技術を使用してモデルパラメータを判定することは困難で、時間と費用がかかる可能性があり、サンプルを特徴付けるための応答物理のシミュレーションの使用が抑制または制限されるおそれがある。
【0025】
実施形態の第2のグループでは、サンプルと関連付けられたモデルパラメータを判定するシステムについて説明する。システムは、動作中にソースを使用してサンプルに励起を適用し得る。次に、システムは測定デバイスを使用して、励起に対するサンプルに関連する応答を測定し得る。さらに、システムは、測定された応答および励起を所定の予測モデルへの入力として規定する情報を使用して、サンプルを表す複数のボクセルを有するフォワードモデルにおいて、ボクセルごとにモデルパラメータを算出し得る。フォワードモデルは、所与の励起に対するサンプル内で発生する応答物理をシミュレートし得る。さらに、フォワードモデルは、励起、複数のボクセルのモデルパラメータ、および応答物理に近似する微分方程式または現象論的方程式の関数であり得る。次に、システムは、プロセッサを使用して、少なくとも測定された応答と、フォワードモデル、モデルパラメータ、励起を使用した、応答の計算された予測値とを比較することによって、モデルパラメータの精度を判定し得る。さらに、精度が事前定義された値を超えるときは、システムはモデルパラメータを、ユーザ、別の電子デバイス、ディスプレイ、および/またはメモリへの出力として提供し得る。
【0026】
サンプル内のボクセルのモデルパラメータを判定することにより(ボクセル内のパラメータはベクトル場の真のテンソルではなくハイブリッドテンソルで表すことができるため、「テンソル場マッピング」、すなわちTFMと称されることもある)、この算出技術がモデルパラメータを判定する際の反復測定および適応の必要性を減少または排除し得る。その結果、この算出技術は、モデルパラメータを判定する際の(プロセッサ時間、メモリなどの)システムリソースの使用を著しく低減し得る。さらに、(精度が事前定義された値未満のときなど)精度が不十分な場合は、算出技術を使用して励起の修正を誘導し、モデルパラメータを所望の精度に迅速に収束するのを容易にし得る。さらに、ある範囲の励起値または強度について判定されたモデルパラメータに基づいて物理現象を予測するフォワードモデルを提供することにより、算出技術は、サンプルの迅速かつ正確な(サンプルの判定、または、サンプルの1つ以上の物理パラメータなどの)特性評価を容易に行い得る。したがって、算出技術を使用して、測定で使用される励起を動的に適合または修正することができ、かつ/または、改善されたサンプル特性評価を容易に行い得る。
【0027】
これらの機能により、MR走査または測定の時間が短縮され、スループットが向上し、それゆえ測定コストが削減され、(MRスキャナのマグネットボアの閉塞環境で人々が過ごす時間を削減するなどして)ユーザ体験が向上し、特性評価技術の使用が増加し得る。さらに、算出技術によって測定値の定量分析が容易になり、それにより精度が向上し、誤差が減少し、それゆえ人々の健康状態と福利が向上し得る。
【0028】
一般に、算出技術は、所与の励起に対するサンプル内で発生する応答物理を定量的にシミュレートする様々な特性評価技術およびフォワードモデルと組み合わせて使用し得る。例えば、特性評価技術は、(X線撮像、X線回折、またはコンピュータ断層撮影などの)X線測定、中性子測定(中性子回折)、(電子顕微鏡法、または電子スピン共鳴などの)電子測定、(1つ以上の波長で複素屈折率を判定する光学撮像または光学分光法などの)光学的測定、(1つ以上の波長で複素屈折率を判定する赤外線撮像または赤外線分光法などの)赤外線測定、(超音波画像法などの)超音波測定、(陽子散乱などの)陽子測定、(MRI、MR分光法、または1種以上の核を用いるMRS、磁気共鳴スペクトル画像法、すなわちMRSI、MRエラストグラフィー、すなわちMRE、MRサーモメトリ、すなわちMRT、磁界緩和測定、拡散テンソル撮像および/または別のMR技術、例えば、機能的MRI、代謝撮像、分子撮像、血流撮像などの)MR測定もしくはMR技術、(DCおよび/またはAC周波数での電気インピーダンスなどの)インピーダンス測定、および/または、(DCおよび/またはAC周波数での磁化率などの)磁化率測定に関連し得る。したがって、励起には、X線帯域の波長(0.01~10nmなど)の電磁ビーム、中性子ビーム、電子ビーム、光学帯域の波長(300~800nmなど)の電磁ビーム、赤外線帯域の波長(700nm~1mmなど)の電磁ビーム、超音波帯域の波長(0.2~1.9mmなど)の音波、陽子ビーム、インピーダンス測定デバイスに関連する電界、MR装置またはスキャナに関連する高周波、および/または磁化率測定デバイスに関連する磁界のうちの少なくとも1つが含まれ得る。ただし、(陽電子放出分光法などの)別の非侵襲的特性評価技術、(陽子ビーム治療または陽子移植、放射線療法、磁気誘導ナノ粒子などの)統合療法、および/または、(10~400nmの紫外線波長などの)異なる範囲の波長を使用し得る。一般に、これらの励起の応答物理を記述するフォワードモデルがある限り、空間の領域を「励起」するために使用され得る様々な励起に算出技術を使用し得る。以下の考察では、MR技術を特性評価技術の実例として使用する。
【0029】
サンプルには、有機材料または無機材料が含まれている場合があることに留意されたい。例えば、サンプルには、無生物(すなわち、非生物学的)サンプル、生物学的生命体(人もしくは動物など、すなわち、生体サンプル)、または、動物もしくは人からの組織サンプル(すなわち、動物もしくは人の一部)が含まれ得る。いくつかの実施形態では、組織サンプルを、動物または人から事前に採取した。したがって、(生検サンプルなどの)組織サンプルは病理学サンプルである場合があり、これは、ホルマリン固定パラフィンに埋め込まれている場合がある。以下の考察では、サンプルは人または個体であり、実例として使用される。
【0030】
ここで、システムの実施形態について説明する。
図1は、システム100の例を示すブロック図を提示する。システム100では、ソース110がサンプル112に選択的に励起を提供し、測定デバイス114がサンプル112に対して選択的に測定を実施して、励起に対するサンプル112の応答を測定する。さらに、システム100はコンピュータ116を含む。
図9を参照して以下でさらに説明するように、コンピュータ116は、処理サブシステム、メモリサブシステム、およびネットワーキングサブシステムなどのサブシステムを含み得る。例えば、処理サブシステムは、プログラム命令を実行するプロセッサを含んでく、メモリサブシステムは、プログラム命令を記憶するメモリを含み得、ネットワーキングサブシステムは、ソース110および測定デバイス114(1つ以上のセンサなど)に命令またはコマンドを通信し、測定デバイス114から測定値を受信し、判定されたモデルパラメータを選択的に提供するインターフェースを含み得る。
【0031】
コンピュータ116内の通信エンジン(またはモジュール)120は、動作中に(1つ以上の有線および/もしくは無線リンクまたは相互接続などの)ネットワーク118を介してソース110に命令またはコマンドを提供し得、これによってソース110からサンプル112に励起を適用し得る。この励起は、少なくとも波長および強度または磁束を有し得る。例えば、励起は、電磁放射、高周波、粒子ビーム、音波、磁界、および/または電界を含み得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、励起は、サンプル112内の1つ種以上の核を分極する外部磁界、磁界のオプションの勾配、および/または無線周波数(RF)パルスシーケンスを含み得る(これらは「測定条件」または「走査命令」と称されることもある)。したがって、ソース110は、外部磁界を適用する磁石、オプションの勾配を適用するオプションの勾配コイル、および/またはRFパルスシーケンスを適用するRFコイルを含み得る。
【0033】
次に、通信エンジン120は、ネットワーク118を介して、測定デバイス114に命令またはコマンドを提供し得、これにより、測定デバイス114は励起に対するサンプル112の少なくとも一部の応答の測定を実施し得る。さらに、測定デバイス114は、ネットワーク118を介して測定結果を通信エンジン120に提供し得る。測定デバイス114は、X線検出器、中性子検出器、電子検出器、光検出器、赤外線検出器、超音波検出器、陽子検出器、MR装置もしくはスキャナ、(MR装置またはスキャナのゲルで覆われたテーブルなどの)インピーダンス測定デバイス、および/または磁化率測定デバイスを含み得ることに留意されたい。
【0034】
いくつかの実施形態では、測定デバイス114は、1つ以上のRFピックアップコイルまたは(磁力計、超伝導量子干渉デバイス、オプトエレクトロニクスなどの)別の磁気センサを含み得、これらは、1種以上の核における核スピンの動的挙動に対応する時間変動または時間領域電気信号を測定するか、または、少なくともサンプル112の部分の核スピン(「磁気応答」と称されることもある)の総動的挙動に対応する磁化の少なくとも平均成分を測定する。例えば、測定デバイス114は、サンプル112がxy平面で摂動するときに、サンプル112の少なくとも一部の横方向磁化を測定し得る。
【0035】
測定デバイス114によって提供される測定値は、画像以外であり得るか、または、画像と異なり得ることに留意されたい。例えば、測定値はMRI結果以外であり得る。例えば、測定値は、サンプル112内の核スピンの自由誘導減衰(の1つ以上の成分など)を含み得、または、それに対応し得る。その結果、いくつかの実施形態では、測定値は、測定された電気信号に対してフーリエ変換の実施を伴わなくてもよい(したがって、k空間で実施しなくてよく、MRフィンガープリントなどのk空間でのパターンマッチングを伴わなくてよい)。ただし、一般に、測定値は時間領域および/または周波数領域で規定され得る。したがって、いくつかの実施形態では、(フィルタリング、画像処理などの)様々な信号処理、(離散フーリエ変換、Z変換、離散コサイン変換、データ圧縮などの)ノイズキャンセル、および変換技術が測定値に対して実施され得る。
【0036】
測定値を受信した後、コンピュータ116の分析エンジン(またはモジュール)122は、その測定値を分析し得る。この分析は、測定デバイス114に対するサンプル112の(おそらく時間変動する)3D位置を判定すること(「3D登録情報」と称されることもある)を伴い得る。例えば、位置合わせは、既知の空間位置に参照マーカーを使用するなどして、点集合登録を実施することを伴い得る。登録は、グローバルまたはローカル位置決めシステムを使用して、測定デバイス114に対するサンプル112の位置の変化を判定し得る。代替的に、または、さらに、登録は、ラーモア周波数の変動および所定の空間磁界の不均一性、またはソース110および/もしくは(MR装置またはスキャナなどの)測定デバイス114の磁界の変動に少なくとも部分的に基づき得る。いくつかの実施形態では、分析は、登録情報に少なくとも部分的に基づいてボクセルを所望のボクセル位置に位置合わせすること、ならびに/または、測定された信号を異なるボクセル位置にリサンプリングおよび/もしくは補間することを伴い、これによって、以前の測定値または結果とのその後の比較を容易にし得る。
【0037】
さらに、分析エンジン122は、測定値を使用して、サンプル112を表し、かつ、可能な励起の範囲内の所与の励起に対するサンプル112で発生する応答物理をシミュレートする複数のボクセルを有するフォワードモデルのモデルパラメータを判定し得る(すなわち、フォワードモデルは特別な、または、特定の励起に対する予測応答を判定するフォワードモデルよりもより一般的であり得る)。特に、サンプル112内のボクセルの適切なモデルパラメータによって、分析エンジン122はフォワードモデルを使用して、励起に対するサンプル112の(磁化の予測成分など)予測応答を正確かつ定量的にシミュレートまたは計算し得る。フォワードモデルは、ボクセルごとにサンプル112の応答物理に近似する1つ以上の微分方程式または1つ以上の現象論的方程式に少なくとも部分的に基づき得るか、またはそれらを使用し得ることに留意されたい。例えば、フォワードモデルは、ブロッホ方程式、ブロッホ-トーリー方程式(したがって、フォワードモデルには、呼吸、心拍、血流、機械的運動などに関連する運動などのダイナミクスのシミュレーションが含まれ得る)、(2つ以上の要素間の相互作用のLiouvilleスーパーマトリックスなどの)完全なLiouvillian算出、完全なハミルトニアン、マクスウェル方程式(例えば、フォワードモデルはサンプル112の磁気的および電気的特性を計算し得る)、熱拡散方程式、ペンヌ方程式、および/または、ある種類の励起に対するサンプル112の応答の物理学を表す別のシミュレーション技術に少なくとも部分的に基づき得るか、またはそれらを使用し得る。いくつかの実施形態では、(磁化の平行成分と逆平行成分が結合されている場合、例えば、磁化の状態がRFパルスシーケンスの前にリセットされないときなど)ブロッホ方程式の基礎となる想定が無効であるため、追加の誤差項をブロッホ方程式に追加し得る。したがって、フォワードモデルは、可能な励起または励起値の範囲内の任意の励起に応答するサンプル112の動的(例えば、時間変動)状態を算出することが可能であり得る。
【0038】
いくつかの分析アプローチでは、コンピュータ116は、予測応答と測定された動的磁気応答との間の差が(0.1、1、5、10%などの)事前定義された値未満になるまで、フォワードモデルのボクセルと関連付けられたモデルパラメータを反復して修正することによって逆問題を解くことでモデルパラメータを判定し得る。(「逆問題」は、1つ以上の結果または出力で始まり、入力または原因を計算することに留意されたい。これは、入力から始まり、1つ以上の結果または出力を計算する「順方向問題」の逆である。)ただし、この「反復アプローチ」では、ソース110は異なる励起を繰り返し適用し得、測定デバイス114は対応する測定を繰り返し実施し得る。その結果、反復アプローチは時間および費用がかかり、複雑になる場合がある。したがって、反復アプローチは、適切なモデルパラメータが判定されるまで、システム100においてかなりのリソースを消費する場合がある。
【0039】
図2~
図5を参照して以下でさらに説明するように、これらの問題に対処するために、算出技術では、分析エンジン122は、1つ以上の所定のまたは事前に訓練された予測モデル(特定のサンプルまたは個体に固有であり得る機械学習モデルまたはニューラルネットワークなど、例えば、予測モデルは、個人化された予測モデルであり得る)を使用して、少なくとも部分的にボクセルごとにモデルパラメータを算出し得る。例えば、分析エンジン122は、測定値および励起を規定する情報を予測モデルへの入力として使用し得、それによりボクセルと関連付けられたモデルパラメータを出力として提供する。したがって、予測モデルは、測定値または測定結果に少なくとも部分的に基づいて訓練され得、またはモデルパラメータ情報を組み込み得る。いくつかの実施形態では、予測モデルは、特定のソース110および/もしくは測定デバイス114(RFノイズまたは空間磁界の不均一性など)、ならびに/または特定の励起もしくは測定条件の外因性特性またはシグネチャの測定値を修正し得、それにより、判定されたモデルパラメータは、測定が実施されたときには特定の時間にサンプル112に固有となる。
【0040】
モデルパラメータは、(ある種の核の核スピン磁化ベクトルの成分が外部磁界の方向と平行になるように緩和しているときの信号強度の損失に関連した時定数である)スピン-格子緩和時間T1、(外部磁界の方向に垂直なある種の核の核-スピン磁化ベクトルの成分の緩和中の信号の広がりに関連する時定数である)スピン-スピン緩和時間T2、調整されたスピン-スピン緩和時間T2*、陽子または核密度(および、より一般的には、1種以上の核密度)、(拡散テンソルの成分などの)拡散、速度/流速、温度、非共振周波数、電気伝導率または誘電率、および/または、磁化率もしくは磁気誘電率を含み得ることに留意されたい。
【0041】
予測モデルによって提供されるこれらのモデルパラメータ、フォワードモデル、およびサンプル112の(シミュレートまたは予測されたMR信号などの)1つ以上の予測応答の1つ以上の励起を用いた後続のシミュレーションが対応する測定値と一致した場合(予測された応答と測定値との間の差が事前定義された値、例えば、0.1、1、5、または10%未満であるか、または代替的に、精度が事前定義された値を超えるとき)には、コンピュータ116の結果エンジン(またはモジュール)124は、ユーザ、別の電子デバイス、ディスプレイ、および/またはメモリに出力を提供するなどして、判定されたモデルパラメータを提供し得る。いくつかの実施形態では、結果エンジン124は、3空間×1時間×最大N個の測定次元のモデルパラメータを有するサンプル112のテンソル場マップを出力し得、各測定値はベクトルまたはスカラー量であり得る。
【0042】
したがって、精度が(90、95、99、または99.9%などの)事前定義された値を超えるときは、モデルパラメータをさらなる反復を伴わない単一のパスにおいて算出し得る。結果として、事前定義された値を超える精度を有するモデルパラメータは、所定の予測モデルを使用しない反復アプローチよりも、所定の予測モデルを使用して、より少ない反復で(または反復を行わずに)(したがって、より迅速に)算出することができる。
【0043】
代替的に、精度が事前定義された値未満のときは、コンピュータ116は、(異なるRFパルスシーケンスなどの)1つ以上の異なる、修正された、または、訂正された励起がソース114によってサンプル112に適用される1つ以上の反復を実施し得、1つ以上の対応する追加の測定が、測定デバイス114によって実施される。これらの1つ以上の追加の測定値を、コンピュータ116で使用して、事前定義された値未満の精度でモデルパラメータを判定し得る。
【0044】
例えば、分析エンジン122は、(第2の機械学習モデルまたは第2のニューラルネットワークなどの)第2の所定の予測モデルを使用して訂正された励起を判定することができる。特に、入力として励起と精度を規定する情報を使用して、第2の予測モデルは、訂正された励起を出力し得る。次に、システム100は、励起の代わりに訂正された励起を用いて、適用する動作、測定する動作、算出する動作、および判定する動作を繰り返し得る。したがって、第2の予測モデルは、システム100によって実施される動作の1つ以上の後続の反復における残りの差異を低減または排除するために、予測応答と測定値との残りの差異に少なくとも部分的に基づいて訓練され得るか、または励起情報を組み込み得る。いくつかの実施形態では、第2の予測モデルは、サンプリング頻度および特性評価技術などを訂正して、第1の予測モデルを使用したモデルパラメータの判定を収束させる(すなわち、事前定義された値未満の精度にする)ことを可能にする追加情報を判定し得る。別の言い方をすれば、次の摂動または擾乱を、超次元空間全体の誤差または差を最小化するように選択し得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、精度が事前定義された値未満のときは、コンピュータ116の訓練エンジン(またはモジュール)126は、励起および測定された応答を訓練データセットに追加し、その訓練データセットを用いて、モデルパラメータの判定に後で使用するための予測モデルの訂正されたインスタンスを判定し得る。したがって、システム100によって実施される測定は適応学習技術で選択的に使用され、予測モデル、したがって、(波長および強度または磁束の異なる値など)ある範囲の励起に対して判定されたモデルパラメータを改善し得る。
【0046】
モデルパラメータおよびフォワードモデルを使用して、分析エンジン122は、任意の外部磁界強度または方向(0T、6.5mT、1.5T、3T、4.7T、9.4T、および/もしくは15T、または時間変動する方向、例えば、ゆっくりと回転する外部磁界など)などの任意の励起に対するサンプル112の応答と、任意のオプションの勾配と、任意のパルスシーケンスと、任意の磁気状態または条件(例えば、サンプル112の磁化または分極が測定前の初期状態に戻らない、リセットされる、または再磁化される)などをシミュレートまたは予測し得る。したがって、モデルパラメータおよびフォワードモデルを使用して、軟組織測定、形態学的研究、化学シフト測定、磁化移動測定、MRS、1種以上の核の測定、オーバーハウザ測定、および/または機能撮像などの高速かつより正確な測定を容易にすることができる。例えば、コンピュータ116が、ソース110および測定デバイス114によってサンプル112に対して実施される測定と同時に(すなわち、リアルタイムで)モデルパラメータを判定する実施形態では、システム100は、組織の任意の種類T1またはT2よりも小さい時間スケール上で(ボクセルレベルまたは平均で)サンプル112の1つ以上の物理パラメータを迅速に特性評価し得る。この機能により、システム100は、初期測定を実施してモデルパラメータを判定し、次に、判定されたモデルパラメータを使用してMR信号をシミュレートまたは予測して、システム100によって実施されている進行中の測定を完了または記入し得、その結果、より迅速に(したがって、より短いMR走査時間で)結果を得ることができる。いくつかの実施形態では、システム100は、サンプル112の以前のMR走査中に判定されたサンプル112のボクセルの記憶されたモデルパラメータなどの、サンプル112で得られた以前の結果の定量的比較に少なくとも部分的に基づいて、(サンプル112の異常または変化の検出などの)結果を判定し得ることに留意されたい。そのような比較は、異なる時間におけるサンプル112内のボクセル位置を整列させることを可能にする3D登録情報によって容易になされ得る。いくつかの実施形態では、結果は、少なくとも部分的に、医師の指示、医療検査結果(例えば、血液検査、尿サンプル検査、生検、遺伝子検査、またはゲノム検査など)、個体の病歴、個体の家族歴、サンプル112または他のサンプルのボクセル依存多次元データを含む定量的テンソル場マップ、サンプル112のインピーダンス、サンプル112の水和レベルおよび/または他の入力に基づく。
【0047】
さらに、
図6を参照して以下でさらに説明するように、いくつかの実施形態では、分析エンジン122は、判定されたモデルパラメータおよび(第3の機械学習モデルおよび/または3番目のニューラルネットワークなどの)第3の所定の予測モデルを使用して、サンプル112内の1つ以上の解剖学的構造を分類またはセグメント化し得る。例えば、ボクセルレベルでのサンプル112のシミュレート応答もしくは予測応答、またはボクセルレベルで判定されたモデルパラメータを使用して、第3の予測モデルは、異なる解剖学的構造の位置を出力し得、かつ/または(臓器の種類、特定の病状に関連しているかどうか、例えば、がんの種類、がんの病期など)異なるボクセルの分類を出力し得る。したがって、いくつかの実施形態では、異なるボクセル間の境界に及ぶモデルパラメータの変動(不連続な変化など)に少なくとも部分的に基づいて、第3の予測モデルが訓練され得、または、セグメント化情報の分類を組み込み得る。この機能により、分析エンジン122は、(モデルパラメータの判定を支援し得る)異なる解剖学的構造を識別し、かつ/または、症状もしくは病状を診断するか、あるいはそれらに関する診断推奨を行うことが可能となる。いくつかの実施形態では、分類またはセグメント化は、モデルパラメータの判定の前に、同時に、または後に実施される。
【0048】
いくつかの実施形態では、訓練エンジン126は、シミュレートされたデータセットを使用して、少なくとも部分的に予測モデル、第2の予測モデル、および/または第3の予測モデルを訓練し得る。例えば、訓練エンジン126は、フォワードモデルと、ある範囲のモデルパラメータと、ある範囲の励起とを使用して、シミュレートされたデータセットを生成し得る。このように、シミュレートされたデータを使用して、1つ以上の予測モデルの訓練を高速化し得る。
【0049】
特に、算出技術は(MR走査などの)測定中にすべての関連情報を取り込む場合があるため、フォワードモデルをオフラインモードで使用して、(異なる測定条件などの)多数の可能なシナリオを含む広範なラベル付きデータセットをキュレートできる。次いで、このデータベースは、予測モデルの訓練に使用できる。この機能は、正確にラベル付けされ、再現性があり、かつ、画像の乱れがないMRデータを取得する際の困難を克服し得る。
【0050】
生成したデータセットと組み合わせて1つ以上の予測モデルを使用することで、初期データの取得および/またはノイズ除去を高速化する正則化を選択することができる。さらに、1つ以上の予測モデルを使用して、フォワードモデルを使用したシミュレーションまたは再構成を高速化することもできる。例えば、予測モデルは、フォワードモデルで使用する初期モデルパラメータを提供でき、これにより、事前定義された値を超える精度を有する解に収束するために、測定とシミュレーションに必要な反復回数が低減され得る。したがって、初期モデルパラメータの結果として生じる予測応答が測定値と大きく異なる場合には、これを後続の測定およびシミュレーションにフィードバックして、モデルパラメータ、したがって、予測応答を改善することができる。
【0051】
さらに、予測モデルでカバーされていないモデルパラメータ空間の部分が存在する場合には、新しいデータ点を正確に生成してラベルを付けて予測モデルを訓練できる。さらに、予測モデルは、異なるアプリケーションに対応する様々なメトリックに基づいて訓練し得る。例えば、予測モデルは、様々なシナリオ(無症候性の母集団の高速走査、特定の組織特性の高精度、信号対雑音比の変動に対する堅牢性、様々なハードウェアの欠陥など)で使用される励起を最適化するための訓練であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、分析エンジン122は、測定またはシミュレートされたデータの少なくとも一部に基づいて第1のモデルパラメータを判定するニューラルネットワークを実施し得、測定またはシミュレートされたデータを使用して逆問題を解くためにブルートフォース非線形数値計算を実行して、第2のモデルパラメータを判定し得る。これらの2つの「逆問題」からの第1および第2のモデルパラメータの違いは、ニューラルネットワークベースのアプローチの誤差として使用し得る。このアプローチによって、数値アプローチがニューラルネットワークにリアルタイムでフィードバックを提供し、ニューラルネットワークの重みを逆伝播/更新することができるため、ニューラルネットワークが学習することを可能にし得る。このハイブリッドアプローチは、依然として事前の訓練を要求または必要としないが、逆問題を解くシミュレーション/数値技術の決定論および精度を備えた大規模ニューラルネットワークのパターンマッチングの利点を活用できる。ハイブリッドアプローチは、ニューラルネットワークの訓練に使用されるいずれの例とも異なり、入力があるときは、ニューラルネットワークを支援し得る。同様に、ハイブリッドアプローチを使用して、時間領域の測定からモデルパラメータ化された出力(つまり、逆問題の出力)に直接移動し得る。いくつかの実施形態では、ハイブリッドアプローチは、敵対的生成ネットワーク(GAN)を使用して実装される。
【0053】
いくつかの実施形態では、フォワードモデルは、特定のMR機器またはスキャナから独立し得ることに留意されたい。代わりに、フォワードモデルは、例えば、個体に固有のものであり得る。フォワードモデルを使用して算出された予測応答は、磁界の不均一性または磁界の空間的変動、RFノイズ、特定のRFピックアップコイルまたは別の磁気センサ、外部磁界強度または(ボクセルサイズなど)測定条件による特性またはシグネチャ、地理的位置、(例えば、磁気ストームによる)時間などの特定のMR機器またはスキャナの特性またはシグネチャを含むように調整し得る。したがって、予測応答はマシン固有のものであり得る。
【0054】
上記の考察ではサンプル112の単一の予測モデルを使用する算出技術を示したが、他の実施形態ではサンプル112の予測モデルが複数存在し得る。例えば、異なる予測モデルを使用して、サンプル112の(異なる臓器または異なる種類の組織などの)異なる部分、したがって異なるボクセルのモデルパラメータを判定し得る。したがって、いくつかの実施形態では、異なる予測モデルを用いて、表1に要約した値のような異なる種類の組織におけるT
1値およびT
2値を提供し得る。
【表1】
【0055】
さらに、システム100は特定の構成要素を有するものとして示されているが、他の実施形態では、システム100は、より少ないまたはより多い構成要素を有し得、単一の構成要素に2つ以上の構成要素を組み合わされ得、および/または、1つ以上の構成要素の位置を変更され得る。
【0056】
ここで、方法の実施形態を示す。
図2は、サンプルと関連付けられたモデルパラメータを判定するための方法200の例を示すフロー図を提示する。この方法は、(
図1のシステム100などの)システム、またはシステム内の1つ以上の構成要素(ソース110、測定デバイス114、および/または、コンピュータ116など)によって実施され得る。
【0057】
動作中、システム内のソースは、励起をサンプルに適用し得(動作210)、ここで励起は少なくとも波長および強度または磁束を有する。例えば、励起は、電磁放射、高周波、粒子ビーム、音波、磁界、および/または電界のうちの1つを含み得る。したがって、励起は、X線帯域の波長の電磁ビーム、中性子ビーム、電子ビーム、光帯域の波長の電磁ビーム、赤外線帯域の波長の電磁ビーム、超音波帯域の波長の音波、陽子ビーム、インピーダンス測定デバイスに関連する電界、磁気共鳴機器に関連する高周波、および/または磁化率測定デバイスに関連する磁界のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0058】
次に、システム内の測定デバイスは、励起に対するサンプルに関連する応答(動作212)を測定し得る。例えば、測定デバイスは、X線検出器、中性子検出器、電子検出器、光検出器、赤外線検出器、超音波検出器、陽子検出器、磁気共鳴機器、インピーダンス測定デバイス、および/または磁化率測定デバイスのうちの少なくとも1つを含み得る。測定された応答は、サンプルの時間領域応答を含み得、かつ、画像以外または画像と異なり得ることに留意されたい。
【0059】
さらに、システムは、測定された応答および励起を所定の予測モデルへの入力として規定する情報を使用して、サンプルを表す複数のボクセルを有するフォワードモデルにおいて、ボクセルごとにモデルパラメータを算出し得る(動作214)。フォワードモデルは、励起、波長および強度または磁束、ならびに少なくとも1つの異なる波長および少なくとも1つの異なる強度または異なる磁束を含む、ある範囲の測定条件から選択される、所与の波長および所与の強度または所与の磁束を伴う所与の励起に対する、サンプル内で発生する応答物理をシミュレートし得る。さらに、フォワードモデルは、励起、複数のボクセルのモデルパラメータ、および応答物理に近似する微分方程式または現象論的方程式の関数であり得る。
【0060】
所定の予測モデルは、機械学習モデルおよび/またはニューラルネットワークを含み得ることに留意されたい。いくつかの実施形態では、所定の予測モデルは、個体に対応する個人化された予測モデルを含む。
【0061】
次に、システムは少なくとも測定された応答と、フォワードモデル、モデルパラメータ、および励起を使用して計算された応答の予測値とを比較することによって、モデルパラメータの精度を判定し得る(動作216)。
【0062】
さらに、精度が事前定義された値を超えるときは(動作218)、システムは、モデルパラメータを、例えば、ユーザ、別の電子デバイス、ディスプレイ、および/またはメモリへの出力として提供し得る(動作220)。
【0063】
したがって、精度が事前定義された値を超えるときは(動作218)、モデルパラメータは、さらなる反復を伴わない単一のパスにおいて算出され得る。結果として、事前定義された値を超える精度を有するモデルパラメータは、所定の予測モデルを使用しない反復アプローチよりも、所定の予測モデルでより少ない反復を用いて算出され得る。
【0064】
代替的に、精度が事前定義された値未満のときは(動作218)、システムは、第2の所定の予測モデルへの入力として励起および精度を規定する情報を使用して、少なくとも訂正された波長、訂正された強度または訂正された磁束を有する訂正された励起を計算し(動作222)、さらに、励起の代わりに訂正された励起を使用して、適用する動作、測定する動作、算出する動作、および判定する動作を繰り返し得る(動作224)。第2の所定の予測モデルは、機械学習モデルおよび/またはニューラルネットワークを含み得ることに留意されたい。
【0065】
いくつかの実施形態では、システムは、オプションで1つ以上のオプションの追加動作または代替動作を実施する。例えば、精度が事前定義された値未満のときは(動作218)、システムは、励起および測定された応答をトレーニングデータセットに追加し、そのトレーニングデータセットを使用して、予測モデルの訂正されたインスタンスを判定し得る。
【0066】
さらに、システムは、モデルパラメータおよび第3の予測モデルを使用して、サンプル内の1つ以上の解剖学的構造を分類またはセグメント化し得る。例えば、第3の所定の予測モデルは、機械学習モデルおよび/またはニューラルネットワークを含み得る。
【0067】
さらに、システムは、フォワードモデルと、ある範囲のモデルパラメータと、ある範囲の励起とを使用して算出されたシミュレートされたデータセットを使用して、予測モデルを訓練し得る。
【0068】
図3は、システム100(
図1)内の構成要素間の通信の例を示す図面を提示する。特に、コンピュータ116のプロセッサ310は、メモリ314に記憶されたプログラム命令(P.I.)312を実行し得る。プロセッサ310がプログラム命令312を実行するとき、プロセッサ310は、算出技術における動作の少なくとも一部を実施し得る。
【0069】
算出技術の間、プロセッサ310は、インターフェース回路(I.C.)316に命令318を提供し得る。それに応答して、インターフェース回路316は、例えば、1つ以上のパケットまたはフレームで、ソース110に命令318を提供し得る。さらに、ソース110は、命令318を受信した後にサンプルに励起320を適用し得る。
【0070】
次に、プロセッサ310は、インターフェース回路316に命令322を提供し得る。これに応答して、インターフェース回路316は、例えば、1つ以上のパケットまたはフレームで命令322を測定デバイス114に提供し得る。さらに、測定デバイス114は、命令322を受信した後に、励起320に対するサンプルに関連する応答324を測定し得る。次に、測定デバイス114は、例えば、1つ以上のパケットまたはフレームで、測定された応答324をコンピュータ116に提供し得る。
【0071】
インターフェース回路316は、測定された応答324を受信した後に、この測定された応答324をプロセッサ310に提供し得る。次に、測定された応答324および所定の予測モデルへの入力として励起320を規定する情報を使用して、プロセッサ310は、サンプルを表す複数のボクセルを有するフォワードモデルのボクセルごとに、モデルパラメータ(M.P.)326を算出し得る。
【0072】
さらに、プロセッサ310は少なくとも測定された応答324と、フォワードモデル、モデルパラメータ326、および励起320を用いて計算された応答の予測値とを比較することによって、モデルパラメータの精度328を判定し得る。精度328が事前定義された値を超えるときは、プロセッサ310は、モデルパラメータ326を、例えば、ユーザ、(インターフェース回路316を介した)別の電子デバイス、ディスプレイ330、および/またはメモリ314への出力として提供し得る。
【0073】
そうでなく、精度が事前定義された値未満のときは、プロセッサ310は、是正措置332を実施し得る。例えば、プロセッサ310は、第2の所定の予測モデルへの入力として励起320および精度328を規定する情報を使用して、訂正された励起を計算し得、さらに、励起320の代わりに訂正された励起を用いて、適用する動作、測定する動作、算出する動作、および判定する動作を繰り返し得る。代替的に、または、さらに、プロセッサ310は、励起320および測定された応答324を訓練データセットに追加し得、さらに、訓練データセットを使用して、予測モデルの訂正されたインスタンスを判定し得る。
【0074】
ここで、予測モデルの実施形態について説明する。例えば、予測モデルには、教師あり学習モデルまたは(クラスタリングなどの)教師なし学習技術などの機械学習モデルが含まれ得る。いくつかの実施形態では、機械学習モデルは、サポートベクトルマシン、分類および回帰ツリー、ロジスティック回帰、LASSO、線形回帰、非線形回帰、パターン認識、ベイジアン技術、および/または別の(線形または非線形)教師あり学習技術を含み得る。
【0075】
図4は、機械学習モデル400の例を示す図面を提示する。この機械学習モデルでは、測定値410と、1つ以上の対応する励起412と、1つ以上の測定値410とフォワードモデルを用いて判定された1つ以上の予測応答との間の1つ以上の誤差414と、フォワードモデル内のボクセルのモデルパラメータの現在のインスタンスと、1つ以上の励起412と、の重み付き(重み408を使用)線形または非線形の組み合わせ416を用いて、モデルパラメータ418の訂正されたインスタンスを算出する。したがって、いくつかの実施形態では、予測モデル400をフォワードモデルと組み合わせて使用して、予測応答の精度が事前定義された値未満になる(すなわち、収束基準が達成される)までモデルパラメータのインスタンスを反復して修正する。しかしながら、いくつかの実施形態では、機械学習モデルを使用して、モデルパラメータを単一のパスで、すなわち、開ループ方式で判定し得る。
【0076】
代替的に、または、さらに、予測モデルはニューラルネットワークを含み得る。ニューラルネットワークは、一般化された関数近似器である。例えば、深層学習などの技術では、典型的には以前の例を入力として使用する。一般に、これらの機械学習モデルでは、予測の誤差を推定するために使用する参照点がないため、近似しようとしている実際の関数を判定することはできない。特に、訓練された例とは非常に異なる入力に基づいて予測を行うことは、ニューラルネットワークには困難な場合がある。この点で、ニューラルネットワークは不可逆算出圧縮エンジンと考えることができる。
【0077】
しかしながら、様々な励起、測定された応答、および対応するモデルパラメータを使用してニューラルネットワークを訓練することにより、ニューラルネットワークは、励起に対するサンプルの応答の物理をシミュレートするフォワードモデルにモデルパラメータ(またはモデルパラメータの初期推定)を提供することができる。ニューラルネットワークは効果的な近似/圧縮であるため、同じ入力をそれほど算出能力を必要とせず、より高速に実行できる。さらに、関数はフォワードモデルで既知であるため、(近似を使用するのとは違って)応答を算出することができ、予測の精度を評価できる。したがって、算出技術を使用して、予測が信頼できない場合を判断できる。特に、
図4について前述したように、ニューラルネットワークをフォワードモデルと組み合わせて使用して、予測応答の精度が事前定義された値未満になる(すなわち、収束基準が達成される)までモデルパラメータのインスタンスを反復して修正し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、ニューラルネットワークを使用して、モデルパラメータを単一のパスで、すなわち開ループ方式で判定することができる。
【0078】
図5は、ニューラルネットワーク500の例を示す図面を提示する。このニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワークまたはリカレントニューラルネットワークを使用して実装できる。例えば、ニューラルネットワーク500はネットワークアーキテクチャ512を含み得、これは、入力510のフィルタリングを提供する初期畳み込み層514(1つ以上の測定値、1つ以上の測定値とフォワードモデルを使用して判定された1つ以上の応答との間の差または誤差、モデルパラメータの現在のインスタンス、および励起など)と、重みを適用する追加の畳み込み層516と、選択(例えば、モデルパラメータの訂正されたインスタンスの選択)を実施する出力層518(修正された線形層など)と、を含み得る。ニューラルネットワーク500の異なる層およびそれらの相互接続の詳細は、ネットワークアーキテクチャ512(有向非巡回グラフなど)を定義し得ることに留意されたい。これらの詳細は、ニューラルネットワーク500の指示によって規定され得る。いくつかの実施形態では、ニューラルネットワーク500は、一連の行列乗算演算として再定式化される。ニューラルネットワーク500は、100万以上の入力における実世界の差異を処理することが可能であり得る。ニューラルネットワーク500は、深層学習技術、すなわちGANを使用して訓練され得ることに留意されたい。機械学習モデル400(
図4)および/またはニューラルネットワーク500のいくつかの実施形態では、モデルパラメータの現在のインスタンスが入力として使用される。
【0079】
いくつかの実施形態では、大規模な畳み込みニューラルネットワークは、60Mのパラメータおよび650,000個のニューロンを含み得る。畳み込みニューラルネットワークは、重み付きの8つの学習層を含み得、この学習層は5つの畳み込み層と、様々な可能なモデルパラメータの1000クラスラベルにわたる分布を生成する最終的な1000通りのソフトマックス関数または正規化指数関数を有する3つの完全に接続された層と、を含む。一部の畳み込み層には、最大プーリング層が続き得る。訓練を高速化するために、畳み込みニューラルネットワークは、(ローカル応答の正規化などの)非飽和ニューロンと、畳み込み演算の効率的なデュアル並列GPU実装と、を使用し得る。さらに、完全に接続された層の過剰適合を減らすために、正則化技術(「ドロップアウト」と称されることもある)を使用し得る。ドロップアウトでは、様々なモデルの予測を効率的に組み合わせて、テスト誤差を減少させる。特に、各隠れニューロンの出力は、確率0.5でゼロに設定される。このように「ドロップアウト」されたニューロンは、フォワードパスに寄与せず、逆伝播に関与しない。畳み込みニューラルネットワークは、多項ロジスティック回帰の目的を最大化する場合があり、これは予測分布の下での正しいラベルの対数確率の訓練ケース全体の平均を最大化することと同等であり得ることに留意されたい。
【0080】
いくつかの実施形態では、第2、第4、および第5の畳み込み層のカーネルは、同一のGPU上に存在する前の層のそれらのカーネルマップに結合される。第3の畳み込み層のカーネルは、第2の層のすべてのカーネルマップに結合され得る。さらに、完全に接続された層のニューロンは、前の層のすべてのニューロンに結合することができる。さらに、応答正規化層は第1および第2の畳み込み層の後に続き得、最大プーリング層は応答正規化層と第5の畳み込み層の両方の後に続き得る。修正された線形ユニットなどのニューロンの非線形モデルは、すべての畳み込み、かつ、完全に接続された層の出力に適用し得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、第1の畳み込み層は、4ピクセルのストライドを有するサイズ11×11×3の96個のカーネルを有する224×224×3入力画像をフィルタリングする(これは、カーネルマップにおける隣接するニューロンの受容野の中心間の距離である)。第2の畳み込み層は、第1の畳み込み層の(応答正規化およびプールされた)出力を入力として受け取り得、サイズ5×5×48の256個のカーネルでフィルター処理し得ることに留意されたい。さらに、第3、第4、および第5の畳み込み層は、介在するプーリングまたは正規化層なしに互いに結合され得る。第3の畳み込み層は、第2の畳み込み層の(正規化され、プールされた)出力に結合されたサイズ3×3×256の384個のカーネルを有し得る。さらに、第4の畳み込み層はサイズ3×3×192の384個のカーネルを有しよく、第5の畳み込み層はサイズ3×3×192の256個のカーネルを有し得る。完全に接続された層は、各々4096個のニューロンを有し得る。上述のおよび以降の残りの考察の数値は単に例示を目的としており、他の実施形態においては異なる値を使用し得ることに留意されたい。
【0082】
いくつかの実施形態では、畳み込みニューラルネットワークは、少なくとも2つのGPUを使用して実装される。一方のGPUは層部分の一部を実行し得、他方のGPUは残りの層部分を実行し、さらに、これらのGPUは特定の層で通信する場合がある。畳み込みニューラルネットワークの入力は150,528次元であり、畳み込みニューラルネットワークの残りの層のニューロンの数は253、440~186、624~64、896~64、896~43、および264~4096~4096~1000で与えられ得る。
【0083】
ここで、フォワードモデルの実施形態について説明する。このフォワードモデルは、(個体などの)サンプルの一部のボクセルの3Dモデルであり得、各ボクセルのブロッホ方程式にモデルパラメータを含み得る。特に、z軸に沿った準静的磁界B
0の場合、ブロッホ方程式は次のようになる。
【数1】
式中、γは磁気回転比であり、
【数2】
はベクトル外積を示し、
【数3】
は、サンプル内のある種の核が受ける磁界である。ブロッホ方程式のモデルパラメータには、T
1、T
2、ある種類の核の密度、拡散、速度/流速、温度、磁化率などを含み得る。各ボクセルの異なる種類の核によって異なるモデルパラメータが存在し得ることに留意されたい。さらに、ブロッホ方程式は、時間変動する磁界に対するサンプル内の核の種類の磁気モーメントの動的応答への半古典的で巨視的な近似であることに留意されたい。例えば、1mm
3のボクセル内に67Mの細胞が存在し得る。
【0084】
原則として、サンプルのブロッホ方程式のモデルパラメータの解空間は、劣決定であり得、すなわち、モデルパラメータを規定または制約する観測値よりも、判定されるモデルパラメータが大幅に多く存在し得る。したがって、予測モデルを訓練するときは、または、(機械学習モデルまたはニューラルネットワークの層内での算出を用いて)予測モデルを使用してモデルパラメータを判定するときは、算出技術は、追加情報を活用して問題の次元を制約または低減する場合がある。例えば、サンプルの解剖学的構造の態様は、コンピュータ断層撮影、X線、超音波などの他の撮像技術を使用して判定され得る。さらに、(心臓組織など)ターゲットの種類の組織に似ていない(すなわち、非常に異なる測定値、例えば、異なる測定されたMR信号を有する)領域は(これらの領域でモデルパラメータをゼロに設定するなどして)フォワードモデルから除外され得る。このようにして、例えば、空気からなる領域を除外し得る。フォワードモデルの他の制約には、灌流または代謝を定量化するためのMRTの熱流(高温から低温へ)に対する熱力学的制約を含み得る。さらに、異なるパルスシーケンス、および/または異なるMR技術を使用して、(疑似ランダムパルスシーケンスに同様の情報を提供し得る)異なる磁界強度B0での測定値を使用して予測モデルを訓練し得、これにより、モデルパラメータと観察値との比を低減し、予測モデルの訓練を簡素化し得る。
【0085】
代替的に、または、さらに、以前のMR測定値または走査値(例えば、異常値または変化値)に基づいて予測またはシミュレートされた(予測されたMR信号などの)応答から大幅に逸脱する組織は、輪郭マップ(例えば、三次スプライン)を使用して、著しく差異がある領域に境界を形成する(または、その領域の境界を指定する)などによりフォワードモデルの焦点になり得る。いくつかの実施形態では、予測モデルを訓練するときは、または、(機械学習モデルまたはニューラルネットワーク層で算出を使用するなどして)予測モデルを使用してモデルパラメータを判定するときは、測定値とシミュレートまたは予測された応答との間の差異または誤差を1つ以上のレベルセット関数を使用して表し得、閾値を超える誤差を有する領域の境界は、閾値に対応する平面と1つ以上のレベルセット関数との交点に基づいて判定し得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、ニューラルネットワーク内の層は、サンプル内のモデルパラメータ解の表面に沿って一次および二次導関数を算出し得る。(導関数の計算を容易にするために、モデルパラメータは1つ以上のレベルセット関数を使用して表し得る。)一次導関数がゼロである線に沿った一式のボクセルを識別し得る。この一式のボクセルは、ボクセル位置と三次スプラインとの間の誤差が最小となる三次スプラインを使用して適合させることができる。この適合動作は、モデル-パラメータ解空間のすべての境界で繰り返すことができる。さらに、三次スプラインによって定義された境界内の最大の連続面を判定し得、モデルパラメータ解の計算を繰り返して、前の連続面内にある新しい連続面を判定し得る。この一般化されたフレームワークは、ボクセル内体積全体の誤差を最小限に抑え、それによって、測定値と、フォワードモデルに基づいてシミュレートまたは予測された応答との間の整合性を改善することができる。
【0087】
例えば、ニューラルネットワークは、フォワードモデルのボクセルのモデルパラメータのヤコビ行列とニュートン法を使用して逆問題を解き、モデルパラメータの摂動が測定値と予測応答との差または誤差にどのように影響を与えるかに基づいて、連続する層内のボクセルのモデルパラメータを修正し得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、サンプルの一部が1つのボクセルを含む場合、特定の種類の組織について判定する必要がある(フォワードモデルを規定する)モデルパラメータが4~10個存在し得る。ボクセルがM種類の組織を含む場合、特定の種類の組織について判定する必要があるモデルパラメータが4M~10M個存在し得る。ボクセルの数が増えると、これは困難な問題のように思われ得る。
【0089】
しかしながら、核の種類が異なればラーモア周波数も異なるため、核の種類の空間分布とそれらの局所濃度は測定値から判定できる。次に、人体(または人体の一部)の事前定義された解剖学的テンプレートを、フォワードモデルの関連する初期モデルパラメータと共に、核の種類の空間分布、およびそれらの局所濃度に一致するようにスケーリングし得る。例えば、異なる種類の組織におけるモデルパラメータの所定の、または事前定義された範囲を使用して、初期モデルパラメータを判定し得る。いくつかの実施形態では、初期モデルパラメータは、以前の測定またはMR走査と関連付けられたモデルパラメータに基づく。
【0090】
次に、関連するモデルパラメータおよび励起の関数として(1つ以上のフォワードモデルを使用して生成された)シミュレートまたは予測された応答を含むルックアップテーブルを使用して、初期モデルパラメータを修正するか、または、サンプル内のボクセルのモデルパラメータを算出し得る。例えば、測定値に類似したシミュレートまたは予測された応答を識別し得、これらのシミュレートまたは予測された応答と測定値との間の差異または誤差を使用して、ルックアップテーブルのモデルパラメータ間の補間を誘導し得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、(特定の臓器などの)ある種類の組織に対して、ニューラルネットワークの異なる層を使用して判定されたモデルパラメータは、異なる層でボクセルのサイズが徐々に減少するにつれて(したがって、ボクセルの数が増加するにつれて)、反復して改善され得る。この分析は、フォワードモデルを使用した測定値と、シミュレートまたは予測された応答との間の誤差によって引き起こされる場合がある。ニューラルネットワークの連続する層を進むと、収束または精度の基準よりも大きい誤差のある残りの領域に焦点が当てられる場合がある。例えば、ニューラルネットワークの層内のフォワードモデルのモデルパラメータは、ある磁界強度での測定値に基づく場合があり、次いで、誤差は別の磁界強度でのフォワードモデルの予測応答に基づいて判定される場合がある。さらに、最初に予測モデルまたはフォワードモデルは、異なるボクセル間に寄与または相互作用がないと想定している場合があることに留意されたい。ただし、誤差とボクセルサイズが減少するにつれて、そのような寄与および/または相互作用は、ニューラルネットワークの後続の層に含まれる場合がある。いくつかの実施形態では、ニューラルネットワーク内の層の逆問題に対して(同様の誤差を有する)複数の候補モデルパラメータ解があるときは、これらの候補の少なくとも一部は、後続の層で使用するために保持され得る(すなわち、この時点では一意のモデルパラメータ解が特定されていない場合がある)。代替的に、(50、25、10、5、または、1%未満などの)所望の誤差範囲内に一意のパラメータ解が存在しない場合は、最良の(最小誤差の)モデルパラメータ解を維持し得る。さらに、所望の誤差範囲内にモデルパラメータ解が存在しないときは、第2の予測モデルを使用して励起を修正し得、追加の測定を実施し得る。
【0092】
したがって、測定値に基づいてモデルパラメータを判定するという逆問題は、測定値と、フォワードモデル、モデルパラメータ、および励起に基づいて生成されたシミュレートまたは予測された応答との間の誤差または差異を最小化するモデルパラメータを提供する予測モデルを使用して「解き」得る。いくつかの実施形態では、逆問題は1つ以上の分析技術を使用して解かれ、分析技術は、最小二乗法、凸二次最小化法、最急降下法、準ニュートン法、シンプレックス法、レーベンバーグ・マルカート法を含む、シミュレートされたアニーリング、遺伝的技術、グラフベースの技術、別の最適化技術、および/またはカルマンフィルタリング(または線形二次推定)を含む。
【0093】
予測モデルの訓練では、動的プログラミングを使用し得ることに留意されたい。特に、訓練の問題は、例えば、クラウドベースのコンピューティングシステムでは、複数のコンピュータによって分割され、並行して実施され得る。例えば、特定のスレッドで特定の測定条件の逆問題を解こうとし得る。コンピュータ(またはプロセッサ)によって生成された複数の潜在的なモデルパラメータ解を(例えば、線形重ね合わせを使用して)組み合わせて、1つ以上の分析技術を使用して最小化される誤差メトリックを判定し得る。
【0094】
さらに、前述のように、逆問題は、最初に粗いボクセルサイズを使用したフォワードモデルに対して適切なモデルパラメータ(例えば、測定値とシミュレートまたは予測された応答との間の誤差を最小化するモデルパラメータ)を見つけようと試みて、次いで、計算の後続の層または段階でボクセルサイズが小さい適切なパラメータを段階的に見つけることで、(機械学習モデルまたはニューラルネットワークなど)予測モデルによって反復して解かれ得る。この反復手順で使用される最終的なボクセルサイズ(またはボクセルサイズがいくつかの実施形態では固定されない場合があるため、ボクセルサイズの適切な範囲)は、走査される核の種類の磁気回転比に基づいて判定し得ることに留意されたい。さらに、ボクセルのサイズまたは位置はまた、ボクセルがサブボクセルのセットに均等に分割されるように、または、プレビューボクセルサイズと一定量の重複があり、重複領域を効果的に「オーバーサンプリング」し、潜在的にMR信号が発生する箇所をさらに突き止めるように選択され得る。この最後の技術は、(ボクセルの長さ、幅、または高さなどの)ボクセルの特性長未満の距離dxだけ、勾配システム全体を1つ以上の次元でシフトさせることによって類似し得る。いくつかの実施形態では、予測モデルまたはフォワードモデルでのボクセルサイズは、測定で使用されるものよりも小さい(すなわち、予測モデルまたはフォワードモデルは、超解像技術を使用し得る)。例えば、3Tの磁界強度で512×512ボクセル、または、1024×1024ボクセルが存在し得る。ボクセルサイズは0.253mm3未満であり得ることに留意されたい。
【0095】
ここで、異なる種類の組織をセグメント化するための技術の実施形態について説明し、これは、(ニューラルネットワークなどの)3番目の予測モデルで使用し得る。異なる種類の組織dj(j=1~nの場合)に対して多次元パラメータ空間で測定された時間サンプリングMR軌道(またはベクトル)の辞書D
mrを定義し、その結果、ボクセルについて測定されたMR信号y
obvを以下のように表すことができる。
【数4】
式中、α
jは正規化された重みであり(つまり
【数5】
、)、εは誤差(つまり、ε=(y
j,α
j)、j=1~n)である。これは、ボクセル内線形方程式の問題を定義する場合がある。一般化されたボクセル間の問題は、(27個のボクセルを有する立方体などの)一式のボクセルをグラフGとしてモデル化し得る。一式内の各ボクセルには、8個の隣接するボクセルに対し26個のエッジを有し得ることに留意されたい。逆問題のパラメータ解は、誤差を最小化するものとして定義され得る。
【0096】
2つの隣接するボクセルuおよびvの場合を考える。ボクセル内線形方程式UyおよびVYは、uとvの両方で解かれる必要がある。いくつかの可能な結果がある。まず、UyおよびVyは、一意のモデルパラメータ解を持っている場合があり(ここで、「一意のモデルパラメータ解」は、既存のフォワードモデル、つまり、収束または精度基準未満の誤差または差分ベクトルを有するものに最適合し得る)、そして、分析が終了する場合がある。代替的に、Uyが一意のモデルパラメータ解を有し、Vyが有さない場合がある。Uyに対するモデルパラメータ解が、Vyが単一のモデルパラメータ解を有するようにVyに制約を課すことが可能であり得、その場合には、分析を終了し得る。ただし、UyおよびVyのいずれも一意のモデルパラメータ解を有さない場合があり、この場合、式のシステムを組み合わせる(すなわち、効果的にボクセルサイズを増加させる)ことにより一意のモデルパラメータ解を生成し得る。また、UyとVyのいずれも、いかなるモデルパラメータ解も有しない場合があり、その場合は、さらなる制約を伴わずにボクセル内問題を解決することはできない。
【0097】
最後の場合には、隣接するボクセルwを調べることが可能であり得、すなわち、対応するボクセル内線形方程式Uy、VyおよびWyを有する一連のボクセルu、v、wはu、v、wで解決する必要がある。ボクセル内線形方程式VyおよびWyは、以前の場合まで減少することに留意されたい。ボクセル内線形方程式が以前の場合まで減少しないときは、このペアリング動作を減少するまで再帰的に適用でき、その後、ボクセル内線形方程式を前述のように解くことができる。
【0098】
一般に、この分析技術は、誤差を最小限に抑えるために3D表面(または体積)を適合させる問題と同形であり得る。この点に関する1つの課題は、隣接するすべての体積が、誤差を最小化するモデルパラメータ解αjに等しく影響を与えていると想定していることである。
【0099】
誤差の最小化は、最初はボクセル間の寄与がない(つまり、ボクセルが独立している)と想定し得る。その後、ボクセル間の寄与が含まれる場合がある。特に、隣接するボクセル体積を考慮すると、2つの異なるクラスが存在する。表面を共有する体積と、1Dエッジのみを共有する体積。最小化関数は、相対座標系の中心にあるボクセルuでの誤差の寄与に重みを付けることで改善できる。誤差への影響がr
-2(rはボクセルの中心点間の距離)に比例し、重み付けに1mmの等方性ボクセルを想定すると、ボクセル間の寄与に関する最小化または適合の問題は次のように表すことができる。
【数6】
式中、kの合計は、共通の表面を共有する隣接するボクセル(つまり、(-1、0、0)、(1、0、0)、(0、-1、0)、(0、1、0)、(0、0、-1)、(0、0、1))の合計であり、lの合計は、共通のエッジを共有する隣接するボクセルの残りの部分の合計である。分析の前提は、モデルパラメータ解を適合させる、または判定するのが最も難しい場所は、異なる組織間の不連続性または境界面に存在するということである。その結果、算出技術の間、分析エンジン122(
図1)は、最初にこれらの位置を解決し、次に残りの位置を解決し得る。
【0100】
代替的に、隣接するボクセルからの磁気的寄与はr2に比例するため、最小化問題で一次ボクセルまたは中央ボクセルの中心から半径Rの球が与えられると、球が隣接するボクセルの体積内でどれだけ膨張するかに基づいて(したがって、それらのボクセル間の寄与がどれほど強いと推定されるかに基づいて)周囲のボクセルは重み付けされ得る。例えば、2D表面を共有するボクセルの重み、1D線を共有するボクセルの重み、0D点を共有するボクセルの重みを含む、割り当てる必要のある3つの異なる重みが存在する場合がある。各ボクセル内に均一な組織分布がない場合があるため、誤差を最小化する分布を見つけるために、重みを動的に調整して各ボクセル内の様々な種類の分布をモデル化し得る。これにより、様々な種類の組織に対して、単一のボクセル内で複数のMRシグネチャを識別する機能が提供され得る。算出能力が向上すると、第3の予測モデルの精度が向上し得、最小化問題(したがって逆問題)を解くために使用される分析技術が修正され得ることに留意されたい。
【0101】
したがって、実施形態ではボクセルのフォワードモデルが、周囲の、または隣接するボクセルのフォワードモデルに依存する場合、ボクセルのフォワードモデルは二次またはN次効果を使用して算出され得る。例えば、N個の一次フォワードモデルが存在する場合(Nは整数)、(すべてのボクセルが相互に作用する場合には)N!/(N-27)!ほど多くの二次フォワードモデルが存在し得る。いくつかの実施形態では、局所性を使用して逆問題を単純化する。このように、フォワードモデルは、隣接するボクセルのフォワードモデルが主要な(中央の)、すなわち、一次ボクセルのフォワードモデルにどのように影響するかを取り入れることによって生成し得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、ディザリング技術を使用して、体内の組織の種類の分布に対するボクセルの任意の位置を克服する。特に、任意のボクセル配置または現在のボクセルサイズのために、ボクセル内に2つ以上の種類の組織が存在する場合がある。これにより、このボクセルのフォワードモデルパラメータが大幅に変更される場合がある。これは、ボクセルに必要なフォワードモデルが2つ以上存在することを示唆している場合がある。これを確認するために、ボクセルを(ボクセルの長さ、幅、または高さの一部である)距離dxだけ変位させ得、(例えば、予測モデルを使用して)フォワードモデルパラメータを再度判定し得る。その過程で、組織分布を判定し得る。その結果、このアプローチは、ボクセルサイズを変更することなく、分析の空間分解能を効果的に高めることができる。
【0103】
図6は、1つ以上の解剖学的構造600の分類またはセグメント化の例を示す図面を提示する。特に、
図6は、ボクセル境界でのT
1およびT
2の不連続な変化に少なくとも部分的に基づいて、臓器610を識別またはセグメント化することを示している。
【0104】
前述の考察ではMR技術を使用した算出技術を例示したが、このアプローチは、様々な特性評価技術を使用してリアルタイムでサンプルを物理的にモデル化および測定できる測定システムに一般化できる。一般に、算出技術は、機械的波および/または電磁波の組み合わせを使用して、体積が摂動にどのように応答するかに関しての予測の正確さを評価するために、走査される体積を「摂動」または「励起」することができる。これには、システムが自身、および、システムが走査または測定される体積を記述するために生成しようとしているフォワードモデルの正確さまたは精度に影響を与える可能性のある、システムが配置された環境の任意の部分をシミュレートする機能も含まれる。
【0105】
様々な特性評価技術により、テンソル場マッピングとテンソル場の異常を検出する機能が提供され得ることに留意されたい。これらのマップは、画像または定量的テンソル場マップの可能性があり、特性評価技術の各々は、様々な種類の測定で取り込まれた様々な種類のテンソル場マップの視覚化を提供し得る。これらのマップの2つ以上を確認または考慮することにより、システムは直交情報にアクセスし得る。
【0106】
したがって、システムはリアルタイム、または、ほぼリアルタイムで、3D空間内の各ボクセルで高次または超次元の疑似またはハイブリッドテンソルまたは行列を取り込む方法を提供し得る。電磁的および/または機械的摂動または励起を使用することにより、システムは様々な特性評価技術を使用して、外乱および応答を測定し、次いで、応答をシミュレートし得る。
【0107】
この特性評価の結果は、走査される体積の(4+N)D(3つの空間次元、1つの時間次元、および空間内の各点で最大Nの測定次元)の定量的モデルであり得る。(4+N)D定量的モデルは、2Dまたは3D画像を含む完全な(4+N)D空間の任意のサブセットに投影できることに留意されたい。
【0108】
いくつかの実施形態では、多次元データおよびモデルを使用することにより、より大きなボクセルサイズが使用される場合であっても、従来のMRIアプローチと比較して高い診断精度(すなわち、より低い偽陽性率)が得られる。したがって、算出技術は、従来のMRIで必要とされるよりも大きなボクセルサイズ(またはより弱い外部磁界)で改善された診断精度を可能にし得る。ただし、前述のように、算出技術は、MRIとは別に、または、MRIに加えて様々な測定技術と共に使用し得る。
【0109】
一部の既存のMRスキャナでは、複数の受信チャネル(受信機と関連するアンテナを含む)を使用して、MR走査を実施するのに必要な時間を加速または短縮する。これらのアプローチは、「MRIパラレル撮像」と称されることもある。
【0110】
特に、MRスキャナ位相の勾配コイルは(一時的に)MR信号をエンコードし、これにより、出力MR信号を互いに区別することができる。さらに、これらが複数の受信チャネルがあるとき、収集された位相エンコード式MR信号に冗長性が存在する。原則として、異なる位相プロファイルを利用することにより、冗長性が、位相エンコード式MR信号の一部(MR走査線の一部など)をスキップし、その後、他の位相エンコード式MR信号から再構築することを可能にし、それにより、MR走査時間を加速する。
【0111】
例えば、2D空間の場合、MR走査中にRFパルスを印加し、次いでxとyの勾配コイルを開いて、k空間のMR走査線を読み取り得る。次に、これらの動作(RFパルスの印加とMR走査線の読み取り)を、例えば、256個のMR走査線が読み取られるまで、追加のMR走査線(異なる位相エンコーディングを有する)に対して複数回繰り返し得る。例えば、32個の受信チャネルを使用し、これらのMR走査線の一部の測定をスキップすることにより、MR走査時間を、例えば、2分の1または3分の1に短縮することができる。
【0112】
ただし、MR走査時間の短縮は、受信チャネルの数の線形関数ではないことに留意されたい。これは、多くのMRIパラレル撮像技術では、スキップされたMR走査線を再構成するために追加情報が必要になるためである。その結果、MR走査線の数の低減は、受信チャネルの数よりも少ないか、または追加情報を取得するために個別のプレ走査が使用されるかである。
【0113】
特に、既存のMRIパラレル撮像技術には、2つの主要クラスが存在する。第1のクラスのアプローチ(「SENSE」、「ASSET」、「RAPID」、または「SPEEDER」と称される)は、受信チャネルにおける個体のRFピックアップコイルまたはアンテナ(「コイル」と称されることもある)からのMR信号の再構成後の画像領域ベースである。このアプローチでは、ドロップまたはスキップされたMR走査線の数が受信チャネルの数と等しくなり得る。ただし、受信チャネルのコイル感度(またはコイル感度マップ)を決定するために、個別のプレ走査が使用される。これは、MR走査中に所与の受信チャネルを使用して測定されたMR信号が、所与の受信チャネルのコイル感度とサンプルの時間依存的な磁化の積の体積積分に対応するためである。さらに、所与の受信チャネル内のコイルまたはアンテナによって受信される偏波磁場は、その位置および向きに依存するため、一般に、受信チャネル内のコイルまたはアンテナの各々は、異なるコイル感度を有する。プレ走査を実施することにより、コイル感度を事前決定することができる。次に、画像領域で、サンプル特性(空間的に変化する陽子密度など)を例示または提示することができる。
【0114】
したがって、既存のMRIスキャナでは、第1のクラスのアプローチには、コイル感度マップの生成、部分k空間MRデータの取得、各コイルからの部分視野画像の再構成、および行列反転を使用した部分視野画像の展開/結合の動作を伴い得る。したがって、第1のクラスのアプローチは、線形問題として計算し直され、フーリエ変換と逆フーリエ変換を使用して部分的に解かれ得ることに留意されたい。
【0115】
第2のクラスのアプローチ(「GRAPPA」と称される)は、k空間ベースである。このクラスのアプローチでは、コイル感度を決定するためにプレ走査を使用しなくてもよい。代わりに、別のまたは追加のMR走査線がk空間のゼロに等しいkの近くで取得され得る。ゼロに等しいkの近くのこれらのいわゆる「自動較正線」の平滑度を活用することによって、欠落している(スキップされた)MR走査線が計算され得る(例えば、自動較正線を使用する補間によって)。
【0116】
したがって、既存のMRスキャナでは、第2のクラスのアプローチは、各コイルの周波数信号から画像のフーリエ面を再構成すること(すなわち、周波数領域での再構成)を伴い得る。ここでもう一度、第2のクラスのアプローチは、線形問題として計算し直され、フーリエ変換と逆フーリエ変換を使用して部分的に解かれ得ることに留意されたい。
【0117】
加えて、MRIパラレル撮像には他にもいくつかの(あまり一般的ではない)アプローチがある。特に、コイル感度とサンプル特性(空間的に変化する陽子密度など)は、関節再建で同時に(例えば、プレ走査を使用する代わりに)決定することができる。例えば、原則として、コイル感度と空間的に変化する陽子密度は、非線形反転または逆問題を解くことにより、MR信号から計算することができる。ただし、この非線形最適化問題は通常、明確に定義されていない(例えば、測定されたMR信号で指定できるよりも多くの未知数があり、決定が不十分であるため、一意解はない)。
【0118】
非線形最適化問題を解くための1つのアプローチは、想定される正則化子を使用して最適化を制約することである。例えば、コイル感度は、平滑であると想定され得る。この制約により、解を得ることができる場合があるが、一般に、分析時間は、多くの場合非常に長くなる。
【0119】
非線形最適化問題を解くための別のアプローチは、コイル感度が多項式関数の線形重ね合わせとして表すことができると想定することである。ただし、この想定される拡張は、多くの場合、悪条件である。特に、二次よりも高次の多項式関数を用いて非線形最適化問題を解くのは難しい可能性がある。
【0120】
開示された算出技術の実施形態では、非線形最適化問題は、コイル感度が平滑であるか、多項式関数の線形重ね合わせであるか、または任意の事前定義された閉形式の関数表現を有すると想定せずに解かれ得る。代わりに、コイル感度は、所与の外部磁場強度でのMR装置の視野におけるマクスウェル方程式の解である可能性がある(すなわち、マクスウェル方程式を満たす可能性があり、したがって、近似ではない可能性がある)。物理的に正確であることに加えて、結果として生じるコイル感度により、非線形最適化問題を既存の非線形最適化アプローチよりもはるかに迅速に解くことを可能にし得る。個別に、またはスキップされたMR走査線と組み合わせて、この機能は、MR走査時間を大幅に短縮し得る。
【0121】
さらに、開示された算出技術(「マクスウェルパラレル撮像」と称されることもある)は、コイル感度を決定するためのプレ走査の使用または自動較正線の測定を伴わないため、マクスウェルパラレル撮像は、MRIパラレル撮像について前述された第1のクラスのアプローチおよび/または第2のクラスのアプローチよりも大幅に高速であり得る。例えば、マクスウェルパラレル撮像を用いたMR走査時間は、例えば、これらの既存のクラスのアプローチよりも少なくとも2~4倍高速であり得る。実際、マクスウェルパラレル撮像は、所与のコイルのセット、視野、外部磁場強度(または分解能)、および2Dまたは3D測定について、MR走査時間の可能な加速のための理論的限界を達成し得る。
【0122】
マクスウェルパラレル撮像を使用して、定性的または定量的MR測定でMR走査時間を加速化し得ることに留意されたい。したがって、マクスウェルパラレル撮像は、MRI、MRフィンガープリント、テンソル場マッピング、および/または別のMR測定技術と共に使用され得る。
【0123】
一般に、コイル感度に関するマクスウェル方程式の解は、円偏波磁場である。これらのコイル磁場は、MR装置の視野内の数値シミュレーションを使用して、オフラインで(すなわち、MR走査中ではなく)生成され得る。例えば、コイル磁場は、MR装置の視野を取り巻く表面上の電流(双極子など)の分布によって計算され得る。いくつかの実施形態では、表面上に数万以上のランダム電流が存在し得る。
【0124】
ただし、低周波数(1.5Tの外部磁場における陽子の歳差運動周波数は63.87MHz)と近接場条件のため、表面上の電流は互いに類似している可能性がある。その結果、異なるコイル磁場のエネルギーまたは電力の大部分を包含するか、または含むコイル磁場基底ベクトルのセットが存在し得る。例えば、特異値分解または固有値分解手法を、数値的にシミュレートされた様々なコイル磁場で使用して、コイル磁場基底ベクトルのセットを決定し得る。次に、所与のコイル磁場(したがって、所与のコイル感度)は、コイル磁場基底ベクトルのセットの線形重ね合わせであり得る。いくつかの実施形態では、コイル磁場基底ベクトルのセットは、例えば、30個のコイル磁場基底ベクトルを含み得る。ここでもう一度、コイル磁場基底ベクトルは各々、マクスウェル方程式の解になり得ることに留意されたい。あるいは、いくつかの実施形態では、コイル磁場基底ベクトルは各々、マクスウェル方程式の解の近似であり得る(マクスウェル方程式の解の85、95、または99%以内など)。
【0125】
コイル磁場基底ベクトルのセットを使用することにより、非線形最適化問題は、物理的に「正則化」され、はるかに短い時間で解かれ得る。例えば、正則化の想定が行われない場合、12個のコイルを用いて256ビットのフーリエ変換分解能を有する2D MR走査の非線形最適化問題には、256 2+12・2562の未知のパラメータを解くことを伴い得る。未知数の第1の項は、例えば、未知の陽子密度に対応し、未知数の第2の項は、未知のコイル感度に対応する。前述のように、この問題は不適切であるため、一意解はなく、様々な近似または想定が既存のアプローチのいくつかで使用されている。
【0126】
対照的に、マクスウェルパラレル撮像では、未知のコイル感度を解く代わりに、非線形最適化問題は、コイル磁場基底ベクトルのセットの重み付き線形重ね合わせにおいて、異なるコイルの係数を決定することである。したがって、12個のコイル、30個のコイル磁場基底ベクトルを用いて、256ビットのフーリエ変換分解能を有する2D MR走査の非線形最適化問題には、2562+12・30の未知のパラメータを解くことを伴い得る。したがって、マクスウェルパラレル撮像は、例えば、未知の陽子密度と未知のコイル感度を(既存のアプローチよりも)はるかに迅速に解き得る、これは、未知のコイル感度を解く代わりに、マクスウェルパラレル撮像が、コイル磁場基底ベクトルのセットの係数と、例えば、陽子密度とを同時に計算するためである。
【0127】
マクスウェルパラレル撮像では、所与のコイル感度は、コイル磁場基底ベクトルのセットの加重重ね合わせ(すなわち、係数と対応するコイル磁場基底ベクトルとの積の線形重ね合わせ)によって表されるか、またはこれに等しくなり得ることに留意されたい。さらに、マクスウェルパラレル撮像は、最終的には、想定なしでマクスウェル方程式を物理解(コイル磁場基底ベクトルのセット)に対して解くことを伴い得るため、コイル感度をより正確に決定し得ることに留意されたい。さらに、コイル磁場基底ベクトルのセットの加重重ね合わせは、所与のコイル感度の近似である可能性があっても、より正確で物理的な表現である可能性がある。
【0128】
マクスウェルパラレル撮像では、非線形最適化問題は、制約の対象となるデータ忠実度項(MR信号の差の絶対値の二乗から推定MR信号を引いたもの)を反復して解く(例えば、最小化する)ことを伴い得る。データ忠実度項には、コイル感度(コイル磁場基底ベクトルのセットの加重重ね合わせ)からの寄与が組み込まれるか、またはこれが含まれ得ることに留意されたい。さらに、制約には、陽子または核密度の空間分布の構造(および、より一般には、核密度、緩和時間などのMRパラメータ)、陽子密度の全体的な変動(またはMRパラメータ)、および/またはプロトン密度(またはMRパラメータ)に関する別の適切な正則化子が含まれ得ることに留意されたい。一般に、陽子密度(またはMRパラメータ)の正則化項は、画像処理で使用される正則化項に対応し得る。その結果、陽子密度(またはMRパラメータ)の正則化項は、L2ノルムまたは平滑基準を回避し得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、非線形最適化問題は、事前定義された、もしくは事前に訓練されたニューラルネットワーク、または事前定義された、あるいは事前に訓練された機械学習モデルを使用して解かれ得る。これらの実施形態では、コイル感度は、ここでもう一度、コイル磁場基底ベクトルのセットの加重重ね合わせによって表され得る。
【0130】
図7は、コイル感度の表現の係数と、サンプルに関連するMR情報と、を決定するための方法700の一例を示すフロー図を提示する。この方法は、(
図1のシステム100などの)システム、またはシステム内の1つ以上の構成要素(ソース110、測定デバイス114、および/または、コンピュータ116など)によって実施され得る。
【0131】
動作中、コンピュータは、サンプルから、またはサンプルに関連するMR信号を取得(動作710)し得る。これは、外部磁場、勾配磁場、および/または1つ以上のRFパルスシーケンスを印加すること、および受信機または受信チャネルを使用してMR信号を測定するMR装置を有することを伴い得る。代替的に、または、さらに、コンピュータは、MR装置または測定デバイスによって事前に取得された、メモリに記憶されたMR信号にアクセスし得る。MR装置は、コンピュータから離れた場所に位置することも、(共同施設などの)コンピュータに近接することも可能である。
【0132】
次に、コンピュータは、コイル磁場基底ベクトルの所定のセットに(例えば、メモリ内で)アクセスし得(動作712)、コイル磁場基底ベクトルの所定のセットの加重重ね合わせは、MR装置内のコイルのコイル感度を表し得る。例えば、所与のコイル感度は、係数とコイル磁場基底ベクトルの所定のセットにおける所定のコイル磁場基底ベクトルとの積の線形重ね合わせによって表され得る。所定のコイル磁場基底ベクトルの各々は、マクスウェル方程式の解になり得ることに留意されたい。
【0133】
次に、コンピュータは、MR信号およびコイル磁場基底ベクトルの所定のセットを使用して、サンプルに関連するMR情報および係数の非線形最適化問題を解き得る(動作714)。例えば、コンピュータは、MR信号と推定MR信号との間の差の絶対値の二乗に対応する項を低減または最小化し得る。この項は、MR装置内のコイルのコイル感度からの寄与を含むか、または組み込み得る。例えば、所与のコイル感度は、コイル磁場基底ベクトルの所定のセットの加重重ね合わせによって表され得、重みは、所定のコイル磁場基底ベクトルの各々の係数を含み得る。さらに、推定MR信号は、MR信号によって指定されたMR情報(例えば、ボクセル内の1つ以上のMRパラメータの空間分布、例えば、陽子または核密度、緩和時間など)に対応し得る。さらに、非線形最適化問題は、1つ以上のMRパラメータの空間分布に対応する1つ以上の制約(例えば、1つ以上のMRパラメータに対応する正則化子)など、項の低減または最小化に対する1つ以上の制約を含み得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、非線形最適化問題は、反復して(例えば、収束基準が達成されるまで)解かれる。しかしながら、他の実施形態では、非線形最適化問題は、事前に訓練されたニューラルネットワークまたは事前に訓練された機械学習モデルを使用して解かれ、MR信号およびコイル磁場基底ベクトルのセットを、1つ以上のMRパラメータ(ボクセルなど)および係数の空間分布にマッピングする。したがって、いくつかの実施形態では、非線形最適化問題は、反復なしで解かれ得る。
【0135】
さらに、いくつかの実施形態では、1つ以上のMRパラメータの空間分布は、サンプル(例えば、画像)内の核密度の空間分布を指定する。したがって、いくつかの実施形態では、MR信号は、MRIまたは別のMR測定技術などの定性的測定において決定され得る。したがって、これらの実施形態では、MR装置は、MRスキャナであり得る。
【0136】
あるいは、いくつかの実施形態では、1つ以上のMRパラメータの空間分布は、前述のモデルパラメータに対応し得る。したがって、いくつかの実施形態では、MR信号は、TFM、MRフィンガープリント、または別の定量的MR測定技術などの定量的測定において決定され得る。
【0137】
方法200(
図2)および/または700のいくつかの実施形態では、追加の動作、またはより少ない動作が存在し得る。さらに、動作の順序は、変更され得、かつ/または、2つ以上の動作は、単一の動作に組み合わされ得る。
【0138】
図8は、システム100(
図1)内の構成要素と測定デバイス114との間の通信の一例を示す図面を提示する。特に、コンピュータ116のプロセッサ810は、メモリ814に記憶されたプログラム命令(P.I.)812を実行し得る。プロセッサ810がプログラム命令812を実行するとき、プロセッサ810は、算出技術における動作の少なくとも一部を実施し得る。
【0139】
算出技術の間、プロセッサ810は、インターフェース回路(I.C.)816に命令818を提供し得る。それに応答して、インターフェース回路816は、サンプルに関連するMR信号820を取得するために、測定デバイス114(MR装置など)に命令818を提供し得、これは、次に、コンピュータ116に提供される。いくつかの実施形態では、測定デバイス114は、外部磁場、勾配磁場、および/またはRFパルスシーケンスをサンプルに提供するソースなどのソースを含み得ることに留意されたい。
【0140】
MR信号820を受信した後、インターフェース回路816は、MR信号820をプロセッサ810に提供し得る。次に、プロセッサ810は、メモリ814において、コイル磁場基底ベクトル(S.C.M.F.B.V.)822の所定のセットにアクセスし得、コイル磁場基底ベクトル822の所定のセットの加重重ね合わせは、測定デバイス114におけるコイルのコイル感度を表し得、所与の所定のコイル磁場基底ベクトルは、マクスウェル方程式の解となり得る。
【0141】
次に、プロセッサ810は、MR信号820およびコイル磁場基底ベクトル822の所定のセットのセットを使用して、サンプルのボクセルごとに、および加重重ね合わせの係数826に基づいて、MR情報824の非線形最適化問題を解き得る。さらに、プロセッサ810は、追加の措置828を実施し得る。例えば、プロセッサ810は、MR情報824および/または係数826をインターフェース回路816を介してユーザまたは別の電子デバイスに提供し、MR情報824および/または係数826をメモリ814に記憶し、かつ/またはMR情報824および/または係数826をディスプレイ830上に提示し得る。
【0142】
図3および/または
図8の構成要素間の通信は、単方向または双方向通信(例えば、単一の矢印または両方向の矢印を有する線)で示されているが、一般に、所与の通信動作は、単方向または双方向であり得る。
【0143】
いくつかの実施形態では、算出技術は、複数のMRコイルおよびアンダーサンプリングされたk空間測定を使用するMRI再構成の問題に対処する。この問題を解くことにより、算出技術は、復元または再構成された画像の品質を損なうことなく、MR取得または走査時間を大幅に短縮し得る。この問題は、「パラレル撮像」またはMRIパラレル撮像として知られている。
【0144】
k空間測定の数が制限または低減され、ノイズが存在するため、算出技術が解決する問題は不適切である。これは、一意解が存在しないことを意味し、物理的に意味のある解を得るためには、その基礎となる加重陽子密度(WPD)(前の考察では陽子密度または核密度と称されることもある)の特性に関する追加の事前知識を利用する必要があり得る。さらに、パラレル撮像の別の課題は、正確な推定が所望される量であるWPDに加えて、MRコイル感度もまた不明であるということである。
【0145】
この問題に対処するために、算出技術またはマクスウェルパラレル撮像技術は、反復ガウス-ニュートン正則化技術を使用して、WPDおよびコイル感度に関する双線形問題を解き得る。例えば、算出技術には、WPDの明示的な正則化子と、コイル感度の暗黙的な正則化子が含まれ得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、WPDの正則化子は、二次形式とすることができ、恒等演算子、勾配、ヘッセ行列、ラプラスの演算子、または非平滑凸型正則化子(全体的な変動または構造の全体的な変動など)の正則化演算子として含むことができる。二次正則化子の場合、データ忠実度項もまた二次であるため、拡張ガウス-ニュートン正規方程式を解くことによって反復解が得られてもよい。例えば、拡張ガウス-ニュートン正規方程式は、共役勾配法を使用して解かれ得る。あるいは、WPDの正則化子が非平滑凸型関数であるとき、各ガウス-ニュートン反復の解は、加速近接勾配法(FISTAなど)を用いて得られてもよい。
【0147】
さらに、コイル感度の暗黙的な正則化は、既存のアプローチとは異なり得る。特に、コイル感度の暗黙的な正則化は、結果として生じるコイル感度(本質的にはコイルが受け取る円偏波磁場である)が平滑であることを強制し得る。コイル感度の暗黙的な正則化では、より強力な物理ベースの制約が課せられ得る。より具体的には、円偏波磁場の完全な(例えば、85、95、または99%の数値精度まで)基礎が生成され得る。この基礎は、所与のMRコイルのセットに対するMRスキャナ(または、より一般にはMR装置)の視野でサポートされ得る。例えば、基底は、視野を囲み、所与のMRコイルの近くに位置する表面上の数万以上の双極子源のセットから視野内の円偏波磁場をマッピングする行列のランダム化された特異値分解を使用して決定され得る。これらの電流源による磁場の計算には、最先端の体積積分方程式法を使用する全波電磁ソルバの使用を伴い得る。
【0148】
その結果、結果として生じる非線形最適化問題では、実際のコイル感度または磁場の代わりに、この基底の係数が決定され得る。このアプローチは、コイル感度が平滑であるだけでなく、構成上、はるかに強い制約である(そして現実にはるかに近い)マクスウェル方程式を満たすことを保証し得る。さらに、コイル感度の平滑度のために、この基底の少数の部材だけが、高忠実度のコイル感度推定に必要とされ得る。この機能により、関連する非線形最適化問題におけるパラメータを数桁少なくする可能性がある。さらに、マクスウェルパラレル撮像技術は、修正なしで、MRスキャナまたはMR装置の任意の(すなわち、任意の)磁場強度(例えば、数ミリテスラ~11テスラまたはより強い外部磁場強度)に適用可能であり得る。
【0149】
したがって、マクスウェルパラレル撮像技術は、WPDの推定値とコイル感度の正確な推定値とを提供し得る。WPD画像または結果の品質をさらに高めるために、いくつかの実施形態では、WPD画像は、制約された最適化問題を解くことによって、ノイズが除去され得る。特に、解は、入力と解との差のノルムがノイズの標準偏差に比例する量以下であるという制約の下で、全体的な変動または構造の全体的な変動を最小化する。標準偏差は、マクスウェルパラレル撮像技術で以前に推定されたWPDから直接算出され得ることに留意されたい。
【0150】
あるいは、マクスウェルパラレル撮像技術で以前に決定された推定コイル感度を使用して、元の非線形問題を線形問題に合計し得る。k空間のアンダーサンプリングのため、この線形問題は依然として不適切であり得る。次に、WPD画像の最終推定値は、制約された凸型最適化問題の解として得られてもよい。特に、WPD画像の改善された推定値は、全体的な変動の最小化または複数の制約を受ける構造の全体的な変動に対応し得、その数は、MRコイル測定の数に等しい可能性がある。制約の各々は、コイル測定値と、解を伴う、対応する観測または推定モデルとの差のノルムが、あるコイル測定値に影響を与えるノイズの標準偏差に比例する量以下であることを強制し得る。これらの動作は、パラメータのないノイズ除去技術を提供し得る。
【0151】
ここで、算出技術の動作の少なくとも一部を実施する電子デバイスについてさらに説明する。
図9は、コンピュータ116(
図1)などのシステム100(
図1)内の電子デバイス900、または、ソース110もしくは測定デバイス114(
図1)などのシステム100内の別のコンピュータ制御構成要素を示すブロック図を提示する。この電子デバイスは、処理サブシステム910と、メモリサブシステム912と、ネットワーキングサブシステム914とを含む。処理サブシステム910は、算出動作を実施し、かつ、システム100(
図1)の構成要素を制御するように構成された1つ以上のデバイスを含み得る。例えば、処理サブシステム910は、1つ以上のマイクロプロセッサまたは中央処理装置(CPU)、1つ以上のグラフィックス処理装置(GPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、(フィールドプログラマブルロジックアレイ、すなわちFPGAなどの)プログラマブルロジックデバイス、および/または1つ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)を含み得る。
【0152】
メモリサブシステム912は、処理サブシステム910およびネットワーキングサブシステム914のためのデータおよび/または命令を記憶するための1つ以上のデバイスを含み得る。例えば、メモリサブシステム912は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、および/または他の種類のメモリを含み得る。いくつかの実施形態では、メモリサブシステム912内の処理サブシステム910の命令は、処理サブシステム910よって(オペレーティングシステム922などの)動作環境で実行され得る1つ以上のプログラムモジュール、または(プログラム命令924などの)命令セットを含む。1つ以上のコンピュータプログラムは、コンピュータプログラム機構またはプログラムモジュール(すなわち、ソフトウェア)を構成し得ることに留意されたい。さらに、メモリサブシステム912内の様々なモジュール内の命令は、高水準手続言語、オブジェクト指向プログラミング言語、および/またはアセンブリもしくは機械語で実装され得る。さらに、プログラミング言語は、処理サブシステム910によって実行されるように、コンパイルまたは解釈される、例えば、構成可能であるか、または、構成され得る(これは、この考察において交換可能に使用され得る)。
【0153】
さらに、メモリサブシステム912は、メモリへのアクセスを制御するための機構を含み得る。いくつかの実施形態では、メモリサブシステム912は、電子デバイス900のメモリに結合された1つ以上のキャッシュを含むメモリ階層を含む。これらの実施形態のいくつかでは、1つ以上のキャッシュは、処理サブシステム910に位置している。
【0154】
いくつかの実施形態では、メモリサブシステム912は、1つ以上の大容量記憶デバイス(図示せず)に結合されている。例えば、メモリサブシステム912は、磁気または光学ドライブ、ソリッドステートドライブ、または別の種類の大容量記憶デバイスに結合され得る。これらの実施形態では、メモリサブシステム912は、頻繁に使用されるデータのための高速アクセス記憶装置として電子デバイス900によって使用され得、一方では、大容量記憶デバイスは、あまり使用されないデータを記憶するために使用される。
【0155】
いくつかの実施形態では、メモリサブシステム912は、リモートに位置するアーカイブデバイスを含む。このアーカイブデバイスは、ネットワーク接続ストレージ(NAS)、外部ハードドライブ、ストレージサーバ、一群のサーバ、クラウドストレージプロバイダ、クラウドコンピューティングプロバイダ、磁気テープバックアップシステム、医療記録アーカイブサービス、および/または別の種類のアーカイブデバイスなどの高容量ネットワーク接続大容量記憶デバイスであり得る。さらに、処理サブシステム910は、アプリケーションプログラミングインターフェースを介してアーカイブデバイスと相互作用して、アーカイブデバイスからの情報を記憶および/またはこれにアクセスし得る。メモリサブシステム912および/または電子デバイス900は、医療保険の相互運用性および説明責任に関する法律に準拠し得ることに留意されたい。
【0156】
メモリサブシステム912に(ローカルおよび/またはリモートに)記憶されたデータの例が
図10に示されており、
図10は電子デバイス900(
図9)によって使用されるデータ構造1000の一例を示す図面を提示する。このデータ構造は、(個体などの)サンプル1008-1の識別子1010-1、(年齢、性別、生検結果、すでに作成されている場合は診断、他のサンプル情報、人口統計情報、家族歴などの)メタデータ1012、データが取得されたときのタイムスタンプ1014、(MR信号、および、より一般的には生データなどの)受信した測定値1016、(外部磁界、オプションの勾配、RFパルスシーケンス、MR機器、位置、磁界の不均一性、RFノイズ、および他の1つ以上のシステムの欠陥などのマシン固有の特性、信号処理技術、登録情報、測定値と個体の心拍または呼吸パターンとの間などの同期情報などの)励起および測定条件1018、および/または(ボクセルサイズ、速度、共振周波数、または核の種類、T
1およびT
2緩和時間、セグメント化情報、分類情報などを含む)判定されたモデルパラメータ1020、(サンプル1008-1が測定された部屋またはチャンバ内の温度、湿度、および/または気圧などの)環境条件1022、フォワードモデル1024、サンプル1008-1の(重量、寸法、画像などの)物理的な特性の1つ以上の追加測定値1026、(検出された異常1028のうちの1つ以上と関連付けられた特定のボクセルを含み得る)オプションの検出された異常1028、および/または、1つ以上の検出された異常の1028のオプションの分類1030を含み得る。データ構造1000は、異なる測定値に複数のエントリを含み得ることに留意されたい。
【0157】
一実施形態では、データ構造1000内のデータは、ブロックチェーンまたは同様の暗号化ハッシュ技術を使用して暗号化され、記録の不正な修正、または破損を検出する。さらに、データは保存前に匿名化できるため、サンプルに関連付けられた個体の識別情報は、その個体が、自身の識別情報にアクセスまたは解放する許可を与えない限り、または、承認を与えない限り匿名となる。
【0158】
図9に戻って参照すると、ネットワーキングサブシステム914は、有線、光、および/または無線ネットワークに結合して通信するように(すなわち、ネットワーク動作、より一般的には通信を実施するように)構成された1つ以上のデバイスを含み得、制御論理916、インターフェース回路918、1つ以上のアンテナ920、および/または、入力/出力(I/O)ポート928を含む。(
図9は1つ以上のアンテナ920を含むが、いくつかの実施形態では、電子デバイス900は、1つ以上のアンテナ920に結合することができる1つ以上のノード908、例えば、パッドまたはコネクタを含む。したがって、電子デバイス900は、1つ以上のアンテナ920を含んでもよく、または含まなくてもよい。)例えば、ネットワーキングサブシステム914は、(ブルートゥース低エネルギー、BLE、またはブルートゥースLEを含むことができる)ブルートゥースネットワーキングシステム、セルラーネットワーキングシステム(例えば、UMTS、LTEなどの3G/4G/5Gネットワーク)、ユニバーサルシリアルバス(USB)ネットワーキングシステム、IEEE802.11に記載された規格に基づくネットワーキングシステム(例えば、Wi-Fiネットワーキングシステム)、イーサネットネットワーキングシステム、および/または別のネットワーキングシステムを含むことができる。
【0159】
さらに、ネットワーキングサブシステム914は、サポートされている各ネットワーキングシステムのデータおよびイベントへの結合、通信、および処理に使用されるプロセッサ、コントローラ、無線/アンテナ、ソケット/プラグ、および/または他のデバイスを含み得る。各ネットワークシステムのネットワーク上のデータおよびイベントへの結合、通信、および処理に使用される機構は、ネットワークサブシステム914のための「ネットワークインターフェース」とも総称されることに留意されたい。さらに、いくつかの実施形態では、システム100(
図1)の構成要素間の「ネットワーク」はまだ存在していない。したがって、電子デバイス900は、例えば、広告またはビーコンフレームを送信する、かつ/または、他の構成要素によって送信される広告フレームを走査する、などの構成要素間の単純な無線通信を実行するためにネットワーキングサブシステム914の機構を使用し得る。
【0160】
電子デバイス900内で、処理サブシステム910、メモリサブシステム912、ネットワーキングサブシステム914は、バス926などの1つ以上の相互接続を使用して結合され得る。これらの相互接続には、サブシステムがコマンドおよびデータを相互に通信するために使用できる電気的、光学的、および/または電気光学的接続が含まれ得る。明確化のために1つのバス926のみが示されているが、異なる実施形態は、サブシステム間の異なる数または構成の電気的、光学的、および/または、電気光学的接続を含むことができる。
【0161】
電子デバイス900は、多種多様な電子デバイスに含まれ得る(または含めることができる)。例えば、電子デバイス900は、タブレットコンピュータ、スマートフォン、スマートウォッチ、ポータブルコンピューティングデバイス、ウェアラブルデバイス、テスト機器、デジタル信号プロセッサ、一群のコンピューティングデバイス、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、サーバ、サブノートブック/ネットブック、および/または別のコンピューティングデバイスに含まれ得る。
【0162】
特定の構成要素が電子デバイス900を説明するために使用されているが、代替の実施形態では、異なる構成要素および/またはサブシステムが電子デバイス900に存在し得る。例えば、電子デバイス900は、1つ以上の追加の処理サブシステム、メモリサブシステム、および/またはネットワーキングサブシステムを含み得る。さらに、1つ以上のサブシステムは、電子デバイス900に存在しなくてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、電子デバイス900は、
図9に示されていない1つ以上の追加のサブシステムを含み得る。
【0163】
別個のサブシステムが
図9に示されているが、いくつかの実施形態では、所与のサブシステムまたは構成要素の一部またはすべてを、電子デバイス900内の他のサブシステムまたは構成要素のうちの1つ以上に統合することができる。例えば、いくつかの実施形態では、プログラム命令924がオペレーティングシステム922に含まれる。いくつかの実施形態では、所与のサブシステム内の構成要素が異なるサブシステムに含まれる。さらに、いくつかの実施形態では、電子デバイス900は、単一の地理的位置に位置するか、または複数の異なる地理的位置に分散されている。
【0164】
さらに、電子デバイス900の回路および構成要素は、バイポーラ、PMOSおよび/もしくはNMOSゲート、またはトランジスタを含むアナログおよび/またはデジタル回路の任意の組み合わせを使用して実装され得る。さらに、これらの実施形態における信号は、ほぼ離散的な値を有するデジタル信号および/または連続的な値を有するアナログ信号を含み得る。さらに、構成要素と回路はシングルエンドまたは差動であり得、電源はユニポーラまたはバイポーラであり得る。
【0165】
集積回路は、ネットワーキングサブシステム914の(無線など)機能の一部またはすべて、および、より一般的には、電子デバイス900の機能の一部またはすべてを実装し得る。さらに、集積回路は、電子デバイス900から無線信号を送信し、システム100内の他の構成要素(
図1)、および/または、システム100(
図1)の外部の電子デバイスから電子デバイス900で信号を受信するために使用されるハードウェアおよび/またはソフトウェア機構を含み得る。本明細書に記載の機構とは異なり、無線機は一般に当該技術分野で既知であり、したがって詳細には説明していない。一般に、ネットワーキングサブシステム914および/または集積回路は、任意の数の無線機を含み得る。複数の無線機の実施形態における無線機は、単一の無線機の実施形態で説明された無線機と同様に機能することに留意されたい。
【0166】
前述の実施形態の動作の一部はハードウェアまたはソフトウェアで実装されたが、一般に、前述の実施形態の動作は、多種多様な構成およびアーキテクチャで実装することができる。したがって、前述の実施形態における動作の一部、またはすべては、ハードウェア、ソフトウェア、またはその両方で実施され得る。
【0167】
さらに、前述の実施形態のいくつかでは、より少ない構成要素が存在し、より多くの構成要素が存在し、構成要素の位置が変更され、かつ/または、2つ以上の構成要素が組み合わされる。
【0168】
前述の考察は、ベクトル波動方程式を解くための算出技術を例示しているが、他の実施形態では算出技術を使用して、スカラー方程式を解き得る。例えば、音波方程式は、フォワードモデルを使用した超音波測定に基づいて任意の不均一な媒体で解き得る。(したがって、いくつかの実施形態では、励起は、機械的であり得る。)超音波測定における音響結合は、操作者に依存し得る(すなわち、超音波測定は圧力に依存し得る)ことに留意されたい。それにもかかわらず、同様のアプローチを使用して、超音波撮像の改善、3D構造の判定、プレゼンテーションの改善の促進などを行うことができる。
【0169】
前述の説明では、「いくつかの実施形態」を参照している。「いくつかの実施形態」では、可能なすべての実施形態のサブセットが記載されているが、実施形態の同じサブセットが常に規定されるとは限らないことに留意されたい。さらに、前述の実施形態の数値は、いくつかの実施形態の実例であることに留意されたい。算出技術の他の実施形態では、異なる数値を使用し得る。
【0170】
前述の説明は、当業者が開示を作成および使用できるようにすることを意図しており、特定の用途およびその要件の文脈内で提供される。さらに、本開示の実施形態の前述の説明は、例示および説明のみを目的として提示されている。それらは、包括的であること、または本開示を開示された形式に限定することを意図するものではない。したがって、多くの修正および変形は当業者には明らかであり、本明細書で定義される一般原理は、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の実施形態および用途に適用し得る。さらに、前述の実施形態の考察は、本開示を限定することを意図するものではない。したがって、本開示は、示された実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理および特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。