(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】真空チューブ輸送システム用のチューブ部分
(51)【国際特許分類】
E21D 11/00 20060101AFI20240716BHJP
B61B 13/10 20060101ALI20240716BHJP
E01B 25/30 20060101ALI20240716BHJP
B65G 51/04 20060101ALN20240716BHJP
【FI】
E21D11/00 Z
B61B13/10
E01B25/30
B65G51/04 A
(21)【出願番号】P 2022517505
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2020075825
(87)【国際公開番号】W WO2021052991
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-09-15
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505008419
【氏名又は名称】タタ、スティール、ネダーランド、テクノロジー、ベスローテン、フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】TATA STEEL NEDERLAND TECHNOLOGY BV
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】パウル、アレクサンデル、デ、フリース
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/162068(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/149604(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00468099(EP,A1)
【文献】国際公開第2016/126505(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0124285(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/00-5/00
B65G 51/00-51/03
E21D 11/00-23/26
E01B 1/00-26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧下の用途に好適なチューブ(1)を構築するための、少なくとも2mの直径を有する内接円を有し、長さLを有するチューブ部分(2)であって、
前記チューブ部分(2)は、
複数の長手方向のストリンガ(3)と、
複数の環状部分(4)と、
曲率半径Rを有する複数のスキン部分(5)であって、湾曲が前記複数のスキン部分(5)の全長に沿って延びる前記複数のスキン部分(5)と
を備え、
前記複数の長手方向のストリンガ(3)は、前記複数の環状部分(4)の外面(4a)に接続されており、
前記複数の長手方向
のストリンガ(3)は、前記複数の環状部分(4)に装着されており、これにより、前記複数のスキン部分(5)を取り付けるための骨格フレーム構造(6)を形成しており、
前記複数のスキン部分(5)の長端部は、前記複数の長手方向のストリンガ(3)に気密的に装着されており、
前記複数のスキン部分(5)の曲率半径Rの中心点Mは、前記チューブ部分(2)の外側に位置しており、
前記チューブ部分(2)が加圧下の用途として使用中である場合に、前記複数の長手方向のストリンガ(3)間の前記複数のスキン部分(5)には、前記複数の長手方向のストリンガ(3)間の引張荷重が負荷される、チューブ部分(2)。
【請求項2】
i)前記複数の長手方向のストリンガ(3)のうちの1個、2個以上または全てが中空状であり、および/または、ii)前記複数の環状部分(4)のうちの1個、2個以上または全てが中空状である、請求項1に記載のチューブ部分(2)。
【請求項3】
1/2 Lにおける前記複数の環状部分(4)間の距離が、前記チューブ部分の両端部における前記複数の環状部分(4)間の距離よりも、前記チューブ部分の中央に向かって小さい、請求項1または2に記載のチューブ部分(2)。
【請求項4】
前記複数の環状部分(4)のうちの1個、2個以上または全てが、湾曲した形状、好ましくは円形、卵形、または楕円形の形状を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のチューブ部分(2)。
【請求項5】
前記複数の環状部分(4)のうちの1個、2個以上または全てが、少なくとも8辺を有する多角形である、請求項1~3のいずれか一項に記載のチューブ部分(2)。
【請求項6】
前記複数の長手方向のストリンガ(3)のうちの1個、2個以上または全てが、矩形管から製造される、請求項1~5のいずれか一項に記載のチューブ部分(2)。
【請求項7】
前記複数の環状部分(4)のうちの1個、2個以上または全てが、矩形管から製造される、請求項1~6のいずれか一項に記載のチューブ部分(2)。
【請求項8】
前記複数の長手方向のストリンガ(3)のうちの1個、2個以上もしくは全て、および/または前記複数の環状部分(4)のうちの1個、2個以上もしくは全て、および/または前記複数のスキン部分(5)のうちの1個、2個以上もしくは全てが、熱間圧延鋼帯から製造される、請求項1~7のいずれか一項に記載のチューブ部分(2)。
【請求項9】
前記複数の環状部分(4)に沿った前記複数の長手方向のストリンガ(3)の数が、素数である、請求項1~8のいずれか一項に記載のチューブ部分(2)。
【請求項10】
前記複数のスキン部分(5)のうちの1個または2個以上、ただし三分の一未満
のスキン部分(5)に代えて、平坦なスキン部分、例えば床パネル、または周辺機器用の設置パネル
を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のチューブ部分(2)。
【請求項11】
太陽電池パネルなどの光起電手段が、前記チューブ部分(2)に、好ましくは前記チューブ部分(2)の上部に設けられる、請求項1~10のいずれか一項に記載のチューブ部分(2)。
【請求項12】
使用中に、湾曲した前記複数のスキン部分(5)が、前記複数の環状部分(4)と直接接触する、請求項1~11のいずれか一項に記載のチューブ部分(2)。
【請求項13】
使用中に、湾曲した前記複数のスキン部分(5)が、前記複数の長手方向のストリンガ(3)とともに、前記チューブ部分(2)の内側の低い圧力と前記チューブ部分(2)の外側の大気圧との間の隔壁を形成する、請求項1~12のいずれか一項に記載のチューブ部分(2)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のチューブ部分(2)を複数備える真空チューブ輸送システムのチューブ(1)であって、使用中に、前記真空チューブ輸送システムのチューブ(1)の内側の圧力が、0.1bar未満である、真空チューブ輸送システムのチューブ(1)。
【請求項15】
2個または3個以上の隣接チューブ部分(2)が、伸縮継手を介して接続されている、請求項14に記載の真空チューブ輸送システムのチューブ(1)。
【請求項16】
真空チューブ輸送システムのチューブ(1)における請求項1~13のいずれか一項に記載のチューブ部分(2)の使用であって、使用中に、前記真空チューブ輸送システムのチューブ(1)の内側の圧力が、0.1bar未満である、使用。
【請求項17】
前記真空チューブ輸送システムのチューブ(1)の内側の圧力が、0.01bar未満である、請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2mの直径を有する内接円を有する加圧下の用途(underpressure application)のためのチューブを構築するためのチューブ部分(tube section)、およびそれから製造される真空チューブ輸送システムのチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
加圧下の用途に関しては、チューブ内の圧力がチューブの外側よりも低いことが意図される。したがって、このチューブは外圧下にある。1つのそのような加圧下の用途として、真空チューブ輸送システム(ETT)におけるチューブがある。ハイパーループは、当初はTeslaおよびSpaceXの合同チームにより公表されたオープン・ソースの真空チューブ列車の設計を説明するために用いられた、乗客および/または貨物の輸送のためのETTの提案されている一方式である。Robert Goddardの真空チューブ列車を大いに利用して、ハイパーループは、人または物体を高い速度および加速度で移送するように、空気抵抗または摩擦がより低いまたはさらには存在しない状態でポッドが進行し得る密閉された真空チューブまたは複数の真空チューブのシステムを備える。2012年に最初に公に言及された、この構想のElon Musk版は、リニア誘導モータおよび空気圧縮機により駆動されるエア・ベアリングに加圧されたカプセルが乗って進む減圧チューブを導入する。これらのチューブは、地上においてパイロン(pylon)上を延びるか、または地下においてトンネル内を延びる。この構想は、現在の鉄道または飛行機での移動よりも大幅に高速な移動を可能とする。理想的なハイパーループ・システムは、既存の大量輸送方式よりもエネルギー効率が高く、静かで、かつ自律的なものとなるであろう。
【0003】
高速鉄道における発展は、歴史的に、車両が高速度に近づくと重大化する摩擦および空気抵抗の両方を扱う困難さによって妨げられてきた。真空チューブ列車構想は、理論的には、真空引きされた(空気のない)または部分的に真空引きされたチューブ内の磁気浮上する列車を利用することにより、これらの障害を排除し、超高速度を可能とする。磁気浮上の原理は、US1020942に開示されている。しかしながら、磁気浮上の高いコストおよび長距離にわたって真空を維持する困難さが、このタイプのシステムがこれまでに構築されることを阻んでいた。ハイパーループは、真空チューブ列車システムに類似するが、およそ1ミリバール(100Pa)の圧力で動作し、したがってUS5950543において概括的に開示されるように真空チューブ輸送(ETT)システムとして説明され得る。
【0004】
ETTシステムは、あらゆる障害物を進行経路から移動させることにより、古典的な輸送に付随する多くの問題を解決する。進行物体(この場合はカプセル)は、チューブ内にあるため、意図された経路に留まり、経路上に障害物が現れることがない。後続のカプセルが同一の加速度および減速度を受ける場合、多数のカプセルが完全な安全性でチューブ内を同時に同じ方向に進行することができる。加速度および減速度は、カプセルが後続のカプセルの障害物となることを防止するように設定される。可動部への依存が最小限であるまたは存在しないことから、カプセルの信頼性は非常に高い。加速に必要なエネルギーのほとんどは、減速中に回復される。
【0005】
ETTシステムの重要な要素の1つは、チューブである。これらのチューブは、貨物または乗客を収容するポッドが通過することを可能とするために、大きな内径を必要とする。チューブ内の圧力は約100Paであるため、それよりも約1000倍高い約101kPaの周囲大気からの圧力に耐えることが可能でなければならない。地上のチューブは多くの場合(例えばパイロンにより)支持されるため、チューブはまた、屈曲(bending)または座屈(buckling)することなく、2つの支持体の間を差し渡すことが可能でなければならない。ハイパーループ・アルファプロジェクトの全提案によれば、圧力差、約30m離して配置されるパイロン間での屈曲および座屈、カプセルの重量および加速度に起因する荷重、ならびに地震に関する考慮事項などの考えられる荷重ケースについて十分な強度を提供するためには、乗客用チューブには20~23mmのチューブ肉厚が必要である。乗客および車両用のチューブについては、より大きいチューブのチューブ肉厚は、23~25mmとなる。これらの計算は、3.30mの内径を有するチューブに基づく。しかしながら、計算はまた、チューブを通行するポッドのサイズを増大させることによりETTシステムの経済的側面が大幅に向上され得ることを示している。これらの増大したポッドのサイズは、3.50~5.00メートル程度の内径を必要とする。これらの直径のチューブが鋼板または鋼帯から製造される場合、これは30mm程度の厚みを必要とする。この厚みの材料を供給できる熱間圧延機は存在せず、したがって、これらのチューブは、板材から製造される必要がある。ETTシステムの提案されている広範な使用例では、鋼材をチューブの好適な材料とすると、これはおよそ3000トン/km×20000km=60メガトンを必要とする。現在のところ、EU28における板材の総生産量は、約10メガトン/年である。この生産能力の問題とは別に、板材からチューブを製造することは、板材の膨大な量の煩雑な取り扱いおよび現場成形ならびに溶接を必要とするのに加え、チューブが非常に重くなる。厚さ30mmの鋼材の5m直径のチューブは、重量が3700kg/mであり、これは10mの区画の重量が37トンであることを意味する。Mi-26ヘリコプターの有効積載量は、約22トンである。道路による輸送は、陸橋またはその他の制限事項を考慮すると非現実的である。
【0006】
座屈とは、構造体の安定性の喪失を指し、その最も単純な形態では、材料の弾性域内においてこの安定性の喪失が生じると想定される材料強度に依存しない。圧縮荷重を受ける細長い構造体または薄肉構造体は、座屈しやすい。そのため、チューブは、圧力差に耐えることが可能であり、大きなたるみなく30mにわたって架かることが可能でなければならないことに加え、十分な座屈耐力を有していなければならない。より強度の高い鋼材を用いることは、機械的特性を向上させ、それによってより薄い肉厚を可能とすることによりいくらかの材料の節減をもたらし得るが、座屈耐力を向上させることはできない。
【0007】
WO2019162068は、外側金属チューブおよび内側金属チューブを備える二重壁の金属チューブからなる複数のチューブ区画を備え、外側金属チューブと内側金属との間の空間が補剛材(stiffening compound)で充填され、補剛材が外側チューブの内面および内側チューブの外面に接合し密着している、ETTシステムのチューブを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、加圧下の用途のためのチューブを構築するためのチューブ部分であって、従来製造されているスパイラル溶接されたチューブ部分よりも軽量であり、座屈を生じにくいチューブ部分を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、加圧下の用途のためのチューブを構築するためのチューブ部分であって、現場で製造可能なチューブ部分を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、ETTシステム用のチューブを構築するためのチューブ部分であって、道路上を容易に輸送することができるチューブ部分を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、ETTシステムに好適なチューブであって、単一スキンのチューブよりも少量の材料を使用しつつ、熱間または冷間圧延帯鋼から従来方式で製造可能であるのと同様の許容可能な剛性を有する座屈性能を提供する、チューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的のうちの1または2以上は、加圧下の用途に好適なチューブ(1)を構築するための、少なくとも2mの直径を有する内接円を有し、長さLを有するチューブ部分(2)であって、
前記チューブ部分(2)は、
複数の長手方向のストリンガ(longitudinal stringer)(3)と、
複数の環状部分(circumferential section)(4)と、
曲率半径Rを有する複数のスキン部分(skin section)(5)であって、湾曲が前記複数のスキン部分(5)の全長に沿って延びる前記複数のスキン部分(5)と
を備え、
前記複数の長手方向のストリンガ(3)は、前記複数の環状部分(4)の外面(4a)に接続されており、
前記複数の長手方向ストリンガ(3)は、前記複数の環状部分(4)に装着されており、これにより、前記複数のスキン部分(5)を取り付けるための骨格フレーム構造(6)を形成しており、
前記複数のスキン部分(5)の長端部は、前記複数の長手方向のストリンガ(3)に気密的に装着されており、
前記複数のスキン部分(5)の曲率半径Rの中心点Mは、前記チューブ部分(2)の外側に位置しており、
前記チューブ部分(2)が加圧下の用途として使用中である場合に、前記複数の長手方向のストリンガ(3)間の前記複数のスキン部分(5)には、前記複数の長手方向のストリンガ(3)間の引張荷重が負荷される、チューブ部分(2)により達成される。好ましい実施形態が、従属請求項において提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、厚さ5mmの正方形の140×140mm
2の中空断面で作製された2個の長手方向ストリンガを示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の長手方向のストリンガを、9個の環状部分、本例においては円形の環状部分とともに示す図である。
【
図3】
図3は、長手方向のストリンガおよび環状部分により形成されるチューブ部分の骨格フレーム構造を示す図である。
【
図4】
図4は、完成されたチューブ部分を、両端部における環状部分を省略して示す図である。
【
図6】
図6は、側方から見た(透視図における)完成されたチューブ部分を示し、これは、環状部分間の距離がチューブ部分の中央において両端部と比較して異なっていることを明確に示す図である。
【
図7】
図7は、長手方向のストリンガ(3)、環状部分(4)およびスキン部分(5)の3つの主要な要素を強調表示したチューブ部分の断面を示す図である。
【
図8】
図8は、スキン部分をストリンガに取り付ける多数の可能な変形例のうちの3つの変形例を示す図である。
【
図9】
図9は、地上用途における複数のチューブ部分(2)を備える真空チューブ輸送システムのチューブ(1)の一部を示す図である。
【
図10】
図10は、チューブ(1)が圧力差を受ける状況(P
outside=1bar、P
inside=1barよりも(大幅に)低い)を示す図である。
【
図11】
図11は、平坦な鋼材シートから切断、パンチング、またはスタンピングにより製造され得、ストリンガ(3)を受ける複数の凹部と、チューブの使用中に引張荷重を受けた場合にこれらがストリンガに固定されたときに任意選択的にスキン部分(5)を支持する凹部間の成形された湾曲とが設けられた環状部分(4)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
WO2020169411は、複数の長手方向のストリンガと、複数の環状部分と、曲率半径Rを有する複数の薄肉スキン部分であって、薄肉スキン部分の全長に沿って湾曲している薄肉スキン部分とを備えるチューブ部分であって、複数の長手方向のストリンガが、複数の環状部分の内面に接続されており、複数の長手方向のストリンガおよび複数の環状部分が、薄肉スキン部分(5)を取り付けるための骨格フレーム構造を形成しており、複数の薄肉スキン部分(5)の長端部が、複数の長手方向のストリンガに固定的かつ気密的に取り付けられており、使用中に、複数の長手方向のストリンガ間の複数の薄肉スキン部分には、引張荷重が負荷される、チューブ部分を開示している。
【0015】
本発明の文脈において、「加圧下の用途に好適」とは、チューブ部分が、本発明による複数のチューブ部分を備える真空チューブ輸送システムのチューブにおいて用いられる場合に、チューブまたはチューブ部分の外側において大気圧の圧力を受け、チューブまたはチューブ部分の内側の圧力が0.1bar未満、好ましくは0.01bar(10mbar)未満、より好ましくは5mbar未満、より一層好ましくは2mbar未満、より一層好ましくは約1mbar(≒100Pa)であることを意味する。言うまでもないが、チューブ部分の構築の間、必ずしも加圧下の状態にあるわけではないことに留意されたい。
【0016】
湾曲したスキン部分の曲率半径Rの中心点Mがチューブ部分の外側に位置するという要求事項は、チューブ部分がETTシステムにおいて用いられ、チューブ部分に外圧がかかっている場合に、湾曲したスキン部分が内方に押され、湾曲したスキン部分が複数の長手方向のストリンガ間の張力による応力を受ける(
図10参照)という効果を有する。本発明による内方に湾曲した薄肉スキン部分による構築に起因して、チューブ部分が加圧下の用途において用いられる場合だけでなく、チューブ部分が加圧下の用途において(まだ)用いられていない場合にも、Mは、チューブ部分の外側に位置する。
【0017】
本発明は、完成品のチューブとして組み立てる前に、別個のチューブ部分が製造されることを可能とする。完成品のチューブは、熱間圧延帯鋼および管状部分の解決策を提供する。これは、直径の大きいチューブ(最小のハイパーループ・アルファチューブのサイズの2.23m内径相当からそれよりも大きなもの)を製造することができる構想である。この設計は、同等の単一厚みの壁のチューブよりも少ない材料を使用しつつ、一方で支持パイロン間における許容可能な鉛直剛性を有して外圧下で同じ座屈性能を実現する。
【0018】
ETTシステム用のチューブは、内部の真空に近い状態および安定的な直線的支持構造を維持する必要がある。これに関する2つの重要な機能的要求事項は、座屈に対する耐性および鉛直剛性(すなわち前述のパイロンなどの後に続く支持体の間でのたるみ(sagging)に対する耐性)である。外圧下のチューブは、2通りの座屈を生じやすい場合がある。第1に、典型的にはチューブの長さの正弦半波(half sine waves the length of the tube)およびチューブのスパン中央における最大の変位により構成される形状を伴う、チューブ部分全体が崩壊する全体座屈破損(global buckling failure)が生じる場合がある。第2の起こり得る座屈破損モード(buckling failure mode)は、チューブの小部分が破損する局所モード(local mode)である。チューブの設計は、鉛直剛性、全体モード(global mode)および局所モードに対処し、各々の調整を可能としつつ、軽量な設計をもたらす。
【0019】
この設計は、構想的な骨格フレーム、およびスキン部分から作製されるスキンからなる。骨格フレームは、本明細書においてストリンガとして説明される長手方向の部分、および本明細書においてリブ(rib)またはリングとして説明される環状部分からなる。リブまたはリングおよびストリンガはともに、標準的な正方形または矩形の中空状の管または断面から作製され得る。これらのタイプの管は、概して矩形中空断面(RHS)と称される。断面はまた、⊥、|_|、| ̄|、IまたはT形プロファイルなどの従来の断面またはプロファイルであってもよい。円筒形チューブが用いられてもよいが、これらは、チューブと環状部分との間の接触がRHSの場合よりも大幅に小さいため、ストリンガを環状部分に接続する際に、より問題を生じやすい。特有の断面をストリンガに用いることには、例としてスキンの位置を特定するまたは溶接の準備を助けるといったいくつかの利点があり得るが、Tata SteelのCelsius(登録商標)系列などの標準的なチューブを用いる方がより費用効果が高い。
【0020】
本発明において、ストリンガは、環状部分の外側に装着される。この点において、外側は、環状部分の片方の側であって、断面の中心点C(
図7a参照)から最も遠く離隔した側として定義される。これは、使用中に、ストリンガが、チューブの内側と外側との間の圧力差の結果として環状部分の外側の面に押圧されることを意味する。したがって、チューブがETTシステムにおいて用いられる場合、ストリンガと環状部分との間の接続部には、圧縮による荷重が負荷される。
【0021】
環状部分は、平坦な金属帯材、好ましくは鋼帯から、当該部分をパンチング加工または(例えばレーザ切断により)切断することにより製造されてもよい。この方法は、形状の選定におけるより高い自由度を設計者にもたらす。その結果、例として、環状部分が、カプセルがチューブ部分を通過することを可能とする円形の開口部と、ストリンガを受ける(receive)複数の凹部であって、ストリンガの正確な配置を可能とする凹部を備える外周部とを有するように製造され得るとともに凹部間のスキン部分への追加的な支持を提供する。
図11は、これを模式的に示す。廃品材料の過度な発生を防止するためにこれらの環状部分を2個または3個以上の部品に分けて製造し、現場でそれらの部品を互いに接続(例えば溶接)することが経済的である。これはまた、あらゆる道路輸送の問題を解決する。これらの環状部分を用いる場合には、外側(the outside)(4a)は、この点において、ストリンガを受ける凹部として定義される(
図11参照)。
【0022】
スキン部分は、スキン部分の全長に沿って直線的であり、スキン部分の幅にわたって実質的に一定の円弧を有し、これは、チューブ部分においてストリンガに取り付けられたときに円弧の中央がチューブの中心点に向く、すなわち換言すると、円弧の中心点がチューブ部分の外側に位置する。これは、外圧下において、スキン部分には、名目上、圧縮力でなく、ストリンガ間の張力が負荷されることを意味する。ストリンガと平行な方向においてスキン部分に張力が生じていないことが理想的である。したがって、本発明の文脈における「使用中」という用語は、チューブ部分の外側と内側との間に圧力差があり、外側の大気圧がチューブ部分内の圧力よりも(大幅に)高いことを示唆する。
図10は、これを模式的に示す。
【0023】
チューブ重量の半分超がスキンに関連し、スキンの太さは、座屈性能に大きな影響を及ぼす。スキンが主として張力状態にあるようにチューブを設計することにより、圧縮荷重に関連する現象である座屈をより生じにくくなる。くぼみを大きくすることは、鉛直剛性へのスキンの寄与を低減する。ストリンガ部分を大きくすることは、剛性および質量を大きくする。リングの位置は、全体モードに対してより大きな効果を及ぼすために、スパン中央に向かって偏っていてよい。本設計の一実施形態は、リングがn辺を有する多角形となるように、ストリンガ間の直線部分またはリブを有する。しかしながら、これは、チューブ軸からリブの中央までの距離がより短く、全体座屈に対するより耐性が低くなるため、湾曲した環状リングほどには効果的でない。したがって、環状リングが、円形、卵形または楕円形の形状などの湾曲した形状を有することが好ましい。
【0024】
チューブ部分の長さは固定されない。典型的には、長さは10~50mである。ハイパーループ構想の研究は、30mの長さを実現可能と想定している。そのような長さは、空輸、鉄道またはローリで輸送されることが可能である。ETT用途に関して、チューブ部分の内接円の直径は、少なくとも3mであることが好ましい。この直径の好適な上限は5mであるが、これ自体は限定ではない。チューブ部分が十分な強度および剛性を有する場合、特許請求の範囲に記載の本発明の趣旨を逸脱することなく、5mを超える直径も想定可能である。また、チューブは必ずしも断面が円形であるわけではない。チューブはまた、卵形、または任意のその他の好適な形状であってもよい。
【0025】
ETTシステム用のチューブに関係する体積に起因して、中空管および熱間圧延帯材からチューブを作製することが意図される。幅1600mmまでの帯材に設計を限定することにより、材料がほとんどの圧延機から供給され得る。これは、スキン部分の最大スパンに影響する。より多くの部分を追加することは、鉛直剛性を補助し得る追加のストリンガを追加するが、組み立ての溶接長さも追加し、これはさらなるコストを追加する。
【0026】
製造および組み立てについては、骨格フレームがまず組み立てられ、次いで、スキンがそれに溶接されることが考えられる。スキン部分がチューブ部分と同じ長さを有してもよく、またはスキン部分が異なる長さを有してもよい。その場合、スキン部分の短端部に沿ってスキン部分を接続する必要があり得る。
【0027】
環状部分は、熱間圧延管ラインの最後に追加のプロセスとして作製され得る。矩形中空断面(RHS)の製造中において、最後に追加される追加のステーションが、チューブを正しい直径で非常に浅い螺旋状に屈曲させる。この螺旋は次いで、完全に一周するところで切断される。この一回巻きの螺旋は次いで、完全な円形のリングを形成するために、わずかな横方向の操作のみを必要とする。この方法により、リングは、リング状に巻回されることによる残留応力が最小限になる。環状部分のこの製造は、例えば直線部分から環状部分を製造することが可能な可搬式ユニットにより、チューブ部分の製造現場で実行されてもよい。これらの長い直線部分は、ストリンガと同様に、トラック、鉄道またはその他の方法で道路上を輸送され得る。
【0028】
スキンは、圧延形成および/または順送プレスで作製され得る。スキン上の長い直線的な連続した溶接部は、ロボット溶接の容易な利用を可能とし得る。
【0029】
スキン部分は、スキン部分が長端部に沿って好ましくは溶接により取り付けられる長手方向のストリンガとともに、気密性のスキンを形成し、長手方向のストリンガの補助により外圧に抵抗する。スキン部分に湾曲が設けられることは、スキン部分における応力が引張応力である、すなわちチューブ内の圧力が外側よりも低い場合に、スキン部分には引張荷重が負荷されることを意味する。スキン部分は、圧力差によって内方に押圧され、スキン部分が両方の長端部においてストリンガに固定されているので、スキン部分に及ぼされる圧力は、ストリンガ間に延びる部分に引張応力を生じさせる。引張荷重を受けるスキン部分のこの壁構造およびストリンガは、環状部分と組み合わせて、全体座屈モードに抵抗するように働く。チューブ部分の内側および外側に圧力差がない場合には、例えば圧延形成、プレス加工、屈曲加工または類似のプロセスによる製造の結果として壁部分に存在し得る何らかの残留応力を除けば、壁部分には引張応力がないまたは実質的にない。チューブ部分内の圧力がチューブ部分の外側よりも高い場合、スキン部分には圧縮による荷重が負荷され、圧縮応力状態がストリンガ間のスキン部分に生じることに留意されたい。非常に高い圧力差では、これは最終的に、外方に裏返ることによる湾曲の完全かつ不所望な反転につながり得る。
【0030】
チューブ部分が可能な限り軽量に構築されることを可能とするために、スキン部分の壁が薄いことが好ましい。好ましくは、壁部分の厚みは、1~10mmであり、より好ましくは最大8mm、より一層好ましくは最大6mmである。
【0031】
したがって、本発明によるチューブ部分は、長手方向のストリンガ間において、単一スキンであるチューブ部分であり、長手方向のストリンガ間の湾曲したスキン部分は、チューブ部分の内側の低い圧力と外側の大気圧との間の唯一の隔壁を形成することが述べられる。換言すると、使用中において、湾曲したスキン部分は、長手方向のストリンガとともに、チューブ部分の内側の低い圧力とチューブ部分の外側の大気圧との間の隔壁を形成する。環状部分は、この隔壁の一部ではないが、チューブ部分の内側からストリンガおよび湾曲したスキン部分を支持する。
【0032】
本発明によるチューブ部分により、大幅な重量の低減が実現される。平坦なスパイラル溶接された帯材と比較して、同じ座屈強度が本発明によるチューブ部分により得られ、本発明によるチューブ部分は、平坦なスパイラル溶接された帯材による同等のチューブ部分に対して3分の1の重量である。
【0033】
本発明によるチューブ部分は、直径が少なくとも2mの内接円を有する気密チューブを備える。これは、直径の小さいチューブおよび大きいチューブ(最小のハイパーループ・アルファチューブのサイズの2.23m内径相当からそれよりも大きなもの)を製造することができる構想である。この設計は、同等の単一厚みの壁のチューブよりも少ない材料を使用しつつ、一方で支持パイロン間における許容可能な鉛直剛性を有して同じ外圧座屈性能を実現し、その他の利点も有する。好ましくは、チューブ部分、よってチューブ部分を結合することにより製造されるチューブの内接円の直径は、少なくとも2mであり、より好ましくは少なくとも3m、より一層好ましくは少なくとも4mである。この直径の好適な上限は5mであるが、これ自体は限定ではない。チューブ部分が十分な強度および剛性を有する場合、特許請求の範囲に記載の本発明の趣旨を逸脱することなく、5mを超える直径も想定可能である。
【0034】
チューブ部分は、単一壁構成として製造されることが好ましい。スキン部分は、チューブの内側を非常に低い圧力に維持するための気密性を提供する。チューブ部分は、環状部分および長手方向のストリンガにより形成される骨格フレーム構造に基づいて構築される。環状部分は輪を形成し、長手方向のストリンガは樽板(stave)を形成する。ストリンガ間の空間は、スキン部分により閉じられる。座屈耐力を向上させ、スキン部分を可能な限り薄く保つことを可能とするために、スキン部分は、曲率半径Rの湾曲を備える。湾曲は、スキン部分の全長に沿って延びている。この半径は、例えば圧延形成により容易に形成可能であり、これは現場で行われることが可能である。好ましくは全てのチューブ部分が、長手方向において直線的であり、それにより、ストリンガおよび湾曲したスキン部分も全長に沿って直線的である。チューブの湾曲部は、湾曲が非常に小さいため、チューブの直線チューブ部分をまとめて曲げることにより対応可能である。軌道は、チューブ自体の内部で湾曲され得る。例えば絶対的に必要である場合には、より大きな湾曲のために、短い長さの直線チューブ部分がより大きな湾曲を実現するために用いられてよい。
【0035】
長手方向のストリンガは、環状部分の外面に接続される。外面は、チューブ部分の内側から見たものとして定義される。ストリンガは、スキン部分を取り付けるための骨格フレーム構造を形成するように、環状部分の周りにおいて実質的に等距離で環状部分に装着される。湾曲したスキン部分の長端部は、長手方向のストリンガに、好ましくは長手方向のストリンガの外面に、気密的に装着される。好ましくは、スキン部分は、例えば溶接によりまたは締結手段(fastening means)を用いて、ストリンガに固定的に装着される。湾曲したスキン部分(5)の曲率半径(R)の中心点(M)は、チューブ部分が加圧下の用途において使用中であるか、(まだ)使用中でないかに関わらず、チューブ部分の外側に位置する。
【0036】
本明細書において上記で説明されているように、チューブ部分内の圧力がチューブ部分の外側よりも大幅に低い場合、スキン部分は、ストリンガ間において張力状態にある。この状況は、チューブ部分がETTシステムにおいて使用中である場合に生じる。この圧力差は、スキン部分を内方に押圧し、最終的には環状部分に接触し得る。よって、環状部分は、スキン部分がさらに内方に膨らむことを防止する。
【0037】
これにより製造されるチューブ部分は、クレーンなどによって取り扱われ、パイロンまたはその他の支持構造体に装着されるのに十分な剛性を有する。骨格フレーム構造は、この剛性を提供する。スキン部分は、気密性を提供する。
【0038】
一実施形態において、長手方向のストリンガのうちの1個、2個以上または全てが中空管である。これらは、円形管、卵形管または多角形管であってよい。しかしながら、長手方向のストリンガがTata SteelsのCelsius(登録商標)系列などの矩形または方形の管であることが好ましい実施形態であり、これは、これらが、長手方向のストリンガおよびスキン部分を接続するのにより好適にする平坦な端部を有するためである。これらの矩形管はまた、いくらかの追加的な剛性を提供する。
【0039】
一実施形態において、環状部分(4)のうちの1個、2個以上または全てが、中空状の矩形管である。これらのチューブは、適切な剛性を有し、座屈に対するより高い耐性を有する。好ましくは、長手方向のストリンガは、Tata SteelsのCelsius(登録商標)系列などの矩形または方形の管であり、これは、これらが、長手方向のストリンガを接続するのにより好適にする平坦な端部を有するためである。
【0040】
湾曲したスキン部分自体が、長手方向の端部に沿って長手方向のストリンガに接続された後に、湾曲および厚みの適切な組み合わせの選定により十分な強度を有することが好ましいが、別の実施形態においては、追加的な補強要素が設けられる。これらの追加的な補強要素は、当該部分の短端部と平行であることが好ましく、スキン部分に固定された別個の要素からなるものであってもよく、または内方向きもしくは外方向きのディンプル(dimple)などのような貫入物(intrusion)によってスキン部分を補強することによるものであってもよい。スキンに型押しされたパターンは、局所的なパネルの座屈性能を高める一助となる。局所座屈に対する補強要素は、スキン部分の表面における貫入または突出する補強部であってよい。貫入とは、ディンプルがチューブ部分の内径を局所的に低減し、したがって内方向きのディンプルと称されることを意味する。突出とは、ディンプルがチューブ部分の内径を局所的に増大させ、したがって外方向きのディンプルと称されることを意味する。ディンプルは、貫入する補強部であることが好ましい。ディンプルの形状は特に制限されないが、ディンプルを規則的なパターンで設けることが有利である。この規則性は、予測可能な挙動を帯材にもたらし、ディンプルは、圧延形成またはプレス加工のような技術によって付けられることが可能である。ディンプルの深さは、具体的事例に応じて調節されてよい。
【0041】
最も単純な形態において、環状部分は、チューブ部分の長手方向部分の全長に沿って等距離に離隔される。非限定的な例によれば、30mの長さ(L)を有するチューブ部分の全長について、11個の環状部分が用いられる場合、両端に環状部分がある状態で、全ての環状部分間の距離は3mである。しかしながら、一実施形態においては、環状部分間の距離が長手方向部分に沿って変動する。好適な実施形態において、環状部分間の距離は、1/2Lの位置で最小であり、両端部において最大である。距離は、チューブ部分の座屈耐力を最適化するように変更される。
【0042】
両端部における環状部分は、骨格フレーム構造のその他の箇所で用いられるものと同じ環状部分であってもよく、または2個の隣接チューブ部分を互いに連結することを可能とする接続機能を有する特定の環状部分であってもよいことに留意されるべきである。例として、これらの特定の環状部分が、その他の環状部分の2倍の幅を有するリングを得るように互いに溶接された2個の環状部分を含んでもよく、または、接続機能が、(例えば)温度変化の結果としての長さの変化を許容する伸縮継手(expansion joint)を含んでもよい。
【0043】
環状部分の最も単純な形態は円形であるが、環状部分はまた、卵形または楕円形の形状を有してもよく、これは、2個のチューブが1個のチューブとして続く切り替え部に特に関連し得る。円形、卵形または楕円形の環状部分は、例として、チューブを製造直後に螺旋状に屈曲させることにより形成され得る。螺旋を切断し、両端部を溶接することにより、閉じた円形、卵形または楕円形の環状部分が形成され得る。
【0044】
一実施形態において、環状部分は、円形、卵形または楕円形ではなく、多角形の形状を有する。辺の数は3ほどの少なさであってもよいが、6または7の数が用いられてもよい。しかしながら、実用上の理由から、多角形は少なくとも8辺を有することが好ましい。そのような多角形の環状部分は、直線管を互いに溶接することにより製造され得る。
【0045】
全ての要素、長手方向のストリンガ、環状部分およびスキン部分は、熱間圧延鋼帯から製造されることが好ましい。鋼帯は、熱間圧延されたままであってもよく、任意選択的に亜鉛めっきおよび/または有機被覆されてもよく、あるいは、冷間圧延され、焼鈍され、任意選択的に亜鉛めっきおよび/または有機被覆されてもよい。圧延されたままの鋼帯または被覆されたままの鋼帯は、通常、コイル状鋼帯の形態で提供される。スキン部分が直接コイル状帯材から可搬式製造設備を用いて現場で製造される場合、後に現場でチューブ部分を組み立てることは、コイルを輸送することが問題とならないため、輸送の問題も解決する。
【0046】
一実施形態において、環状部分に沿った長手方向のストリンガの数は、素数であり、例えば11個の長手方向のストリンガである。本発明者は、素数個の長手方向のストリンガを有することが、全体モードについて、考えられる繰り返しの分割可能なパターン・モード形状がない(there is no repeat divisible pattern mode shape possible)ことから、座屈耐力に有益な効果を及ぼすことを見出している。
【0047】
一実施形態において、スキン部分のうち、全てではなく1個または2個以上、好ましくはパネルの3分の1未満が、平坦なスキン部分、例えば床パネル、または周辺機器の設置パネルなどの追加の機能性を有するスキン部分である。これらの周辺機器は、チューブ部分がETTシステムの一部として機能することを可能とするために必要とされる、電気レール、照明またはその他の設置部品であってよい。また、スキン部分には、緊急脱出用ハッチ、またはハイパーループの組み立て中におけるアクセスのためのハッチが設けられてもよい。床としては、内側パネルへの浅い圧痕のみが必要である場合、または圧痕が必要ないがより厚い太さを必要とする場合、または滑り止め縞板タイプのパターンが必要である場合があり得る。組み立て前に、アクセスおよび脱出用のハッチをスキン部分に設置することが、より容易であり得る。ストリンガの拡張部が、ETTシステムにおけるポッドの案内レールなどのアクセサリを装着するために用いられてもよい。ETTポッドのレールは、ストリンガに直接装着されても、ストリンガから直接装着されてもよく、必要に応じて異なるサイズまたは太さのストリンガを必要とする可能性がある。
【0048】
周辺機器は、ストリンガおよび/または環状部分を用いて装着されてもよく、これはこれらがチューブの内側からアクセス可能であるためである。
【0049】
本発明はまた、本発明による複数のチューブ部分を備える真空チューブ輸送システムのチューブにおいて具現化され、チューブの外側の圧力は大気圧であり、チューブの内側の圧力は0.1bar未満、好ましくは0.01bar(10mbar)未満、より好ましくは5mbar、より一層好ましくは2mbar未満である。地上での用途において、チューブの外側の圧力は、約1barの大気圧である。個々の完成されたチューブ部分が、ETTシステムの一部を形成する連続的なチューブを形成するように組み合わされてよい。そのようなチューブは、スキン部分およびチューブの背骨材として機能する比較的開放された骨格フレームにも関わらず、高い座屈耐力の利点を得る。隣接チューブ部分は、伸縮継手としても機能し得る接続リングを用いて接続されてよい。ETTシステムなどの加圧下の用途のためのチューブは、管理可能なサイズのチューブ部分に分割される。チューブ部分は、その他のチューブ部分に固定的に接続されてチューブを形成する(
図9参照)。チューブ部分間の接続部は、低い圧力がチューブ内に存在することが可能となるように気密的でなければならない。この気密性は、接続部自体によって、すなわち溶接に起因して、またはチューブ部分が互いにボルト留めまたはクランプ留めされる場合にはエラストマーなどのチューブ部分の間の何らかの化合物により、またはチューブ部分の熱膨張に対処するために伸縮継手を用いて、提供されてよい。
【0050】
骨格フレームの追加の利点は、チューブ部分またはチューブの外側に周辺機器を装着するための基材としても働き得ることである。例として、太陽電池パネルなどの光起電手段が、チューブに、好ましくはチューブの上部に装着され得る。また、チューブの大部分がパイロンから空中高くに懸架される場合、最もあり得る形態の損傷のうちの1つは、高木または電柱がチューブに当たることによるものである。ETTチューブのその他の設計と比較して、外部骨格フレームにより、優れた保護が提供される。
【0051】
本発明によるチューブ部分は、真空チューブ輸送システムを構築するのに好適である。しかしながら、チューブ部分の特定の特性、およびこれらのチューブ部分から製造されるチューブの外側から及ぼされる圧力がチューブ内の圧力よりも著しく高い条件下での性能は、同様の圧力条件下で動作するチューブの用途にもチューブ部分を好適にする。これらの用途の例は、加圧下の状態が生じるまたは生じ得る、自転車用トンネル、自動車用トンネル、鉄道用トンネル、保守作業用トンネルまたはシャフトなどの交通用の地中または水中トンネル、水力発電所、ガス貯蔵システムにおけるチューブなどである。
【0052】
図面の簡単な説明
ここで、以下の非限定的な図面を用いて、本発明をさらに説明する。下記で言及される寸法は、示唆的なものであり、限定的なものではない。
【0053】
図1は、厚さ5mmの正方形の140×140mm
2の中空断面で作製された2個の長手方向ストリンガを示す図である。本例において、長さLは30mである。本明細書において上述されているように、ストリンガは、その他のタイプの断面またはプロファイルであってもよい。原理は同じのままである。
【0054】
図2は、
図1の長手方向のストリンガを、9個の環状部分、本例においては円形の環状部分とともに示す図である。断面は、6.3mmの肉厚を有する120×80mm
2の矩形中空断面である。本明細書において上述されているように、環状部分は、その他のタイプの断面またはプロファイルであってもよく、必ずしも円形でなくてもよい。それらは卵形、楕円面などであってもよい。原理は同じのままである。
【0055】
図3は、長手方向のストリンガおよび環状部分により形成されるチューブ部分の骨格フレーム構造を示す図である。例えば完成されたチューブ部分を隣接チューブ部分に接続するための、フレーム構造の端部における環状部分は、わかりやすくするために省略されている。上記で説明されているように、これらの環状部分は、その他の環状部分と同じであってもよく、または、2個の隣接チューブ部分を接続するために特別に適応されてもよい。
【0056】
図4は、完成されたチューブ部分を、両端部における環状部分を省略して示す図である。使用中に、チューブ内の圧力が外側よりも大幅に低い場合には、引張応力がストリンガ間のスキン部分に存在する。この圧力差は、スキン部分を内方に押圧し、最終的には環状部分に接触し得る。これは、
図4において、スキン部分上の小さなストライプの対により視認可能である。
【0057】
図5は、
図3のフレーム構造に固定された
図4のスキン部分を示す図である。長手方向のストリンガとスキン部分の長端部との間の接続部は気密的であり、接続部は、溶接(レーザ溶接、レーザ・ハイブリッド溶接、ガス・メタル・アーク溶接、または任意のその他の好適な形態の溶接など)によって形成されることが好ましい。
【0058】
図6は、側方から見た(透視図における)完成されたチューブ部分を示し、これは、環状部分間の距離がチューブ部分の中央において両端部と比較して異なっていることを明確に示す図である。本例におけるチューブは、直径4.5mのチューブに相当する内部断面積を与えるサイズとされている。
【0059】
図7aおよび
図7bは、長手方向のストリンガ(3)、環状部分(4)およびスキン部分(5)の3つの主要な要素を強調表示したチューブ部分の断面を示す図である。ストリンガの端部が、例えば溶接により、環状部分の外側(チューブ部分内から見た外側)の面に固定されていることが明確に示されている。また、スキン部分の端部が例えば溶接によりストリンガに固定されていることも示されている。本例において、スキン部分の端部は、隣接スキン部分の端部に重なりつつ、ストリンガに固定される。スキン部分の湾曲は、半径Rおよび中心点Mを用いて示されている。中心点Mがチューブ部分の外側に位置することが重要とみなされる。中心点がチューブ部分の内側に位置する場合、チューブ部分内の圧力が低減されたときに、スキン部分がストリンガ間において引張荷重を受けずに圧縮による荷重を受け、これは座屈耐力に関して不利益である。
【0060】
図8a、bおよびcは、スキン部分をストリンガに取り付ける多数の可能な変形例のうちの3つの変形例を示す図である。
図8aでは、スキン部分の端部がストリンガの角部に取り付けられている。
図8bでは、ストリンガの外側の面に重なって溶接される平坦フランジが端部に設けられている。
図8cは、スキン部分が両側のT字の角部においてT字断面に溶接される、T字断面の形状のストリンガを有する変形例を示す。溶接部の表示Wは、示唆的なものであり、スキン部分の上部または下部から適用されてもよい。
【0061】
図9は、地上用途における複数のチューブ部分(2)を備える真空チューブ輸送システムのチューブ(1)の一部を示す図であり、チューブの外側の圧力は大気圧であり、チューブの内側の圧力は0.1bar未満である。チューブは、例えばパイロン(右側のみにおいて模式的に図示されている)により支持される。
【0062】
図10は、チューブ(1)が圧力差を受ける状況(P
outside=1bar、P
inside=1barよりも(大幅に)低い)を示す図である。圧力差P
outside-P
insideに応じて、スキン・パネルに及ぼされる力(F
pressure)が増大する。この力がより大きいほど、スキン・パネルが取り付けられるストリンガ間のスキン・パネルにおける引張応力がより大きくなる。スキン・パネルに及ぼされる力は、ストリンガ間の方向における引張応力のみを生じさせる。圧力差がゼロになるとすぐに、F
pressureもゼロとなる。そのため、チューブの外側と内側との間の圧力差が存在する場合、スキン・パネルには引張応力のみが生じ、これはあらゆる加圧下の用途において当てはまる。チューブ部分の構築中、および複数のチューブ部分を備えるチューブの構築中において、チューブの外側と内側との間に圧力差がない限り、スキン・パネルには張力が生じない。
【0063】
図11は、平坦な鋼材シートから切断、パンチング、またはスタンピングにより製造され得、ストリンガ(3)を受ける複数の凹部と、チューブの使用中に引張荷重を受けた場合にこれらがストリンガに固定されたときに任意選択的にスキン部分(5)を支持する凹部間の成形された湾曲とが設けられた環状部分(4)の模式図である。
【0064】
図12は、スキン部分(5)の模式図である。スキン部分は、長さlおよび幅wを有する。スキン部分は、その全長に沿って曲率半径Rで湾曲しており、湾曲はスキン部分の全長に沿って延びている。したがって、短端部(5a)には上記湾曲が生じ、長端部は、長手方向のストリンガ(3)に気密的に接続されるため、実質的に直線的である。スキン部分の長端部(5b)の一方または両方には、長手方向のストリンガへの接続を可能とするフランジ(5c)が設けられてよく、これは、例えば、フランジが両側に設けられ実質的に平坦である
図8aまたは
図8bに示される通りである。フランジの所望の形状およびフランジの必要性は、長手方向のストリンガの構造の選定およびストリンガへのスキン部分の接続の選定に依存し、適切な選定は、十分に関連分野における当業者の技能および能力の範囲内である。