(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】体外式膜型人工肺のための双方向動脈カニューレ及びそのようなカニューレを使用する方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
A61M1/36 149
(21)【出願番号】P 2022528570
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(86)【国際出願番号】 FR2020052022
(87)【国際公開番号】W WO2021099716
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-10-06
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】522192056
【氏名又は名称】ノヴァフロー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クエティル ジャン-ポール
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0121079(US,A1)
【文献】国際公開第2019/021215(WO,A1)
【文献】特表平7-502443(JP,A)
【文献】特開2017-99957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0063513(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ECMO用の動脈カニューレ(20)であって、
内壁(31)を有し、血液流出口オリフィス(26)を備えた第1の端部(24)を有し、前記第1の端部が、動脈(100)内に逆戻りの方法で血液を注入するために前記動脈内に挿入されるように意図された主動脈カニューレ(22)と、
前記主動脈カニューレの前記第1の端部における格納位置と、前記主動脈カニューレの前記血液流出口オリフィスとは反対側の、前記主動脈カニューレの前記第1の端部から少なくとも部分的に展開した位置との間で並進移動可能であるように構成された逆行性灌流カニューレ(30)とを備え、前記逆行性灌流カニューレは前記主動脈カニューレの直径よりも小さい直径を有する管(32)と、前記主動脈カニューレの前記血液流出口オリフィスに対する前記逆行性灌流カニューレの近位端(35)に配置された、前記主動脈カニューレの直径と実質的に同一の直径を有するリング(34)とを備える動脈カニューレ。
【請求項2】
請求項1に記載の動脈カニューレにおいて、
前記動脈内に導入されることを意図された前記第1の端部(24)に対応する第1のブランチ(25)と、人工肺と協働することを意図された第2のブランチ(25’)とを含むL字形状を有し、前記第1のブランチ及び前記第2のブランチはエルボ(27)によって接続されている動脈カニューレ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の動脈カニューレにおいて、
前記逆行性灌流カニューレは、前記リングが前記内壁のストッパ(21)と接触するまで、前記主動脈カニューレの前記内壁と接触して並進して滑るように構成されている動脈カニューレ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の動脈カニューレにおいて、
前記管と前記リングとの間に切欠き(38)が存在する動脈カニューレ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の動脈カニューレにおいて、
前記管は、楕円形の外形を有する動脈カニューレ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の動脈カニューレにおいて、
前記リングは、凸状の内壁(34’)を有する動脈カニューレ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の動脈カニューレにおいて、
前記主動脈カニューレは、前記逆行性灌流カニューレのリング上に配置されたリブ(52)と協働する長手溝(50)をその内壁に有する動脈カニューレ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の動脈カニューレにおいて、
前記主動脈カニューレは、前記リング(34)の並進部(T)を備え、前記並進部は前記主動脈カニューレの残りの部分の内径よりも大きい内径を有する動脈カニューレ。
【請求項9】
請求項2~8のいずれか1項に記載の動脈カニューレであって、
請求項2と組み合わされ、
前記管(32)は前記逆行性灌流カニューレ(30)が前記格納位置にあるときに、前記主動脈カニューレ(22)の前記エルボ(27)の曲率に適合するように、前記リング(34)とは反対側の傾斜した遠位端(36’)を有し、前記管(32)は、前記主動脈カニューレ(22)の前記第2のブランチ(25’)に向かう開口部(29)を含む動脈カニューレ。
【請求項10】
動脈内への前記主動脈カニューレの挿入と、前記主動脈カニューレ外への前記逆行性灌流カニューレの展開との両方を可能にするために、請求項1~9のいずれか1項に記載の動脈カニューレ内に挿入されるように構成された導入スタイレット(40、40’)であって、
前記導入スタイレットは、前記主動脈カニューレを閉塞するように構成されている導入スタイレット。
【請求項11】
請求項10に記載の導入スタイレット(40、40’)であって、
前記主動脈カニューレの前記第1の端部に配置されるように構成された近位端(42)を含み、前記近位端(42)は前記主動脈カニューレの直径と実質的に同一の直径まで増大する直径を有し、前記近位端(42)には、前記逆行性灌流カニューレの長さよりも少なくとも長い長さを有し、前記主動脈カニューレの直径よりも小さい直径を有する第1の中間部分(47)が続き、前記第1の中間部分(47)には、前記主動脈カニューレの直径と実質的に同一の直径を有する第2の中間部分(47’)が続く導入スタイレット。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の導入スタイレット(40、40’)であって、
前記逆行性灌流カニューレが前記格納位置にある状況で前記主動脈カニューレと相補的な形状を有する導入スタイレット。
【請求項13】
前記主動脈カニューレ内に前記逆行性灌流カニューレを後退させ、前記動脈内から前記主動脈カニューレを取り外せるようにするために、請求項1~9のいずれか1項に記載の動脈カニューレ内に挿入されるように構成された取り外しスタイレット(53)であって、
前記主動脈カニューレを閉塞するように構成されている取り外しスタイレット。
【請求項14】
請求項13に記載の取り外しスタイレット(53)であって、
前記取り外しスタイレット(53)を前記主動脈カニューレ内に挿入したときに、前記逆行性灌流カニューレ(30)の前記リング(34)と協働して、前記主動脈カニューレ(22)内でそれを並進駆動させるように構成されたバルジ(54)を備えた取り外しスタイレット。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか1項に記載の動脈カニューレと、
請求項10~12のいずれか1項に記載の導入スタイレットと、
請求項13又は14に記載の取り外しスタイレットとを備えたキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外式膜型人工肺(ECMO:extracorporeal membrane oxygenation)のための動脈カニューレ及びそのようなカニューレを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体外式膜型人工肺(ECMO)とは、心原性ショック患者に対して非常循環補助を行う方法をいう。急性循環不全の場合、心不全の理由にかかわらず、医療用外科的蘇生において患者のベッドサイドでこの方法が用いられる。それは、体外循環法であり、心臓切開手術を行うために用いられる。残りの説明では、より具体的に、体外式静脈模型(VA)による人工肺を参考にし、心臓と肺の両方を補助できるようにする。
【0003】
VA ECMOの目標は、酸素に乏しい血液を患者の体外に引き出し、酸素を入れた後、患者の体内に送り戻すことである。血液は、患者の心臓の右心房(RA)から、又は吸い込みカニューレとも呼ばれる静脈カニューレを介して患者の下大静脈から引き出される。その後、人工肺を通過する。次いで、逆の方法で、すなわち、心臓に向かって、再注入カニューレとも呼ばれる動脈カニューレを介して、患者の腸骨動脈又は大腿動脈に再注入される。3,000rpmの範囲の一定速度で回転する遠心ポンプが、この血液の体外循環を可能にする。ポンプの回転速度は、患者のニーズに適合した可変流量を得ることを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この処置の主な欠点は、下肢の非灌流により下肢虚血が観察されることである。実際、動脈カニューレは酸素供給後に血液が再注入される動脈を閉塞し、したがって、血液が下肢の方向に循環するのを防止する。次いで、人工肺によって酸素供給された血液の一部を分流させて、大腿動脈内で下肢に向かって、すなわち、血流の順方向に関して動脈カニューレの貫通点から下流の順方向に送ることが必要である。この誘導は一般的に
図1に示すような逆行性灌流カニューレ又はカテーテルによって達成される。これは、逆行性灌流カニューレを大腿動脈に導入するために、しばしば困難を伴ってランダムに行われる繊細な操作を必要とする。
【0005】
図1は、主動脈カニューレ12及び逆行性灌流カニューレ14を含む、従来技術に係る動脈カニューレ10を示す。主動脈カニューレ12及び逆行性灌流14カニューレは例えば大腿動脈のような患者の動脈100に導入される第1の端部12’及び14’をそれぞれ含み、それらの反対側の端部10’によって相互接続されて動脈カニューレ10を形成する。主動脈カニューレ12及び逆行性灌流14カニューレは、動脈の拡張を可能にする導入スタイレット(図示せず)のおかげで動脈100内に導入される。その後、スタイレットは、血液が主動脈12及び逆行性灌流14のカニューレを通って流れることを可能にするために除去される。逆行性灌流カニューレ14は、矢印Aによって示される心臓から下肢への血液の順行性循環の方向に関して、主動脈カニューレ12の上流貫通点Pの下流に位置する下流貫通点「P」で動脈100に導入される。この動脈カニューレ10は、体外式膜型人工肺(ECMO)を実施することを可能にするために、人工肺(矢印せず)に接続される。人工肺自体は、患者の心臓の右心耳又は下大静脈(図示せず)で血液Sを引き出すことを可能にする静脈カニューレ(図示せず)と連通している。ECMO中、血液Sは、静脈カニューレ(図示せず)から、人工肺(図示せず)内、次いで、並行する主動脈カニューレ12内及び逆行性灌流カニューレ14内を循環する。主動脈カニューレ12から、血液は矢印Fに沿って動脈100内に逆方向に、すなわち、逆循環の方向に従って、腸骨動脈の方向に再注入される。逆行性灌流カニューレ14から、血液は順行性循環の方向Aに、下肢の方向に、動脈100内に再注入される。主動脈カニューレ12は動脈100を閉塞しており、逆行性灌流カニューレ14は、下肢に血液を供給することを可能にする。
【0006】
特に、本発明は、上述の欠点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の対象は、ECMO用の動脈カニューレであって、
内壁を有し、血液流出口オリフィスを備えた第1の端部を有し、前記第1の端部が、動脈内に逆戻りの方法で血液を注入するために前記動脈内に挿入されるように意図された主動脈カニューレと、
前記主動脈カニューレの第1の端部における格納位置と、前記主動脈カニューレの前記血液流出口オリフィスとは反対側の、前記主動脈カニューレの前記第1の端部から少なくとも部分的に展開した位置との間で並進移動可能であるように構成された逆行性灌流カニューレとを備えた動脈カニューレである。
【0008】
したがって、本発明に係る動脈カニューレは、ECMOによって発生する虚血及び血栓症の危険性を回避するために、心臓に向かって逆方向に、及び下肢に向かって順方向に動脈に血液を注入することを可能にし、一方で、逆行性灌流カニューレを大腿動脈に導入する繊細な操作を回避する。
【0009】
本発明の他の特徴によれば、本発明のカニューレは別個に、又は任意の可能な組み合わせに従って考慮される以下の任意の特徴のうちの1つ以上を含む。
【0010】
1つの特徴によれば、主動脈カニューレは、動脈内に導入されることを意図された第1の端部に対応する第1のブランチと、人工肺と協働することを意図された第2のブランチとを有するL字状形状を有し、第1のブランチ及び第2のブランチは、エルボによって接続されている。
【0011】
1つの特徴によれば、エルボは、90°~150°、好ましくは135°の曲率角度を有する。このようにして、逆行性灌流カニューレは、主動脈カニューレから容易に展開される。
【0012】
1つの特徴によれば、逆行性灌流カニューレは、主動脈カニューレの直径よりも小さい直径を有する管と、主動脈カニューレの血液流出口オリフィスに対する逆行性灌流カニューレの近位端に配置された、主動脈カニューレの直径と実質的に同一の直径を有するリングとを備える。したがって、逆行性灌流カニューレはそれが主動脈カニューレから展開されると案内され、逆行性灌流カニューレは、展開位置にあるとき、溶血又は動脈外傷につながる可能性があるあらゆるミスアライメント又はズレを防止するために、主動脈カニューレの内壁と協働するリングによって主動脈カニューレ内に保持される。
【0013】
1つの特徴によれば、逆行性灌流カニューレは、リングが内壁のストッパと接触するまで、主動脈カニューレの内壁と接触して並進して滑るように構成される。
【0014】
1つの特徴によれば、管とリングとの間に切欠きが存在する。この切欠きは、主動脈カニューレのエルボと協働するように構成される。さらに、この切欠きは、逆行性灌流カニューレの展開を誘導し、逆行性灌流カニューレが展開位置にあるときに主動脈カニューレ内の血流を最適化するように構成された導入スタイレットと協働するように構成できる。
【0015】
1つの特徴によれば、管は逆行性灌流カニューレが格納位置にあるときに、主動脈カニューレのエルボの曲率に適合するように、リングとは反対側の傾斜した遠位端を有する。したがって、格納位置では、管の遠位端がエルボと相補的であり、エルボの内側からも外側からもエルボから突出せず、動脈カニューレの除去時に動脈カニューレを動脈から容易に滑り出させることができる。
【0016】
1つの特徴によれば、管は、主動脈カニューレの第2のブランチに向かう開口部を含む。この開口部は、傾斜した遠位端が閉塞された場合であっても、血液が管内を流れることを確実にすることを可能にする。実際、傾斜した遠位端は、例えば動脈によって閉塞され得る。
【0017】
1つの特徴によれば、傾斜した遠位端は反対側の第2の面よりも長い長さを有する第1の面を含む壁を有し、第1の面は、主動脈カニューレの第2のブランチに向けられた開口部を備える。
【0018】
1つの特徴によれば、管は逆行性灌流カニューレが展開位置にあるときに、主動脈カニューレのエルボの曲率に適合するように、切欠きに近接して傾斜した近位端を有する。したがって、展開位置において、管の近位端はエルボと相補的であり、エルボの内側から突出せず、これは、主動脈カニューレにおける血液の容易な循環を可能にする。
【0019】
1つの特徴によれば、管は楕円形の外形、すなわち楕円形の断面を有する。したがって、主動脈カニューレの第1の端部の内側の格納位置又は動脈内の展開位置における逆行性灌流カニューレの高さ及びバルクは、最小限に抑えられる。
【0020】
1つの特徴によれば、逆行性灌流カニューレの管は3~3.5mm2の範囲、好ましくは3.15mm2の表面を有し、1~1.5mmの範囲、好ましくは1.2mmの高さ及び3~3.5mmの範囲、好ましくは3.34mmの幅を有する。したがって、1l/分の最小血流が管内を循環することができる。このような流れは、下肢虚血を防止するのに十分である。
【0021】
1つの特徴によれば、リングは凸状の内壁を有する。したがって、逆行性灌流カニューレの展開位置から格納位置への切替が容易になる。さらに、それは、血流を重ね合わせることを可能にし、したがって、溶血及び乱流を回避する。
【0022】
1つの特徴によれば、主動脈カニューレは、逆行性灌流カニューレのリング上に配置されたリブと協働する長手溝をその内壁に有する。このようにして、主動脈カニューレ内の逆行性灌流カニューレの並進運動が案内される。さらに、溝は逆行性灌流カニューレの並進時にリブのための停止部を形成し、これは、リングが主動脈カニューレ内に突出する停止部なしに、規則的な様式で、主動脈カニューレの内壁と接触して配置されることを可能にし、したがって、乱流および溶血の危険性を回避する。
【0023】
1つの特徴によれば、主動脈カニューレの溝は、逆行性灌流カニューレの並進長さに対応する長さを有する。したがって、溝は、格納位置と展開位置との間の切り換え時に逆行性灌流カニューレの並進を制限する。
【0024】
あるいは主動脈カニューレは、リングの並進部を有し、並進部は主動脈カニューレの残りの部分の内径よりも大きい内径を有する。したがって、リングはこの並進部と並進して協働し、より小さな直径を有する主動脈カニューレの残りの部分と当接するようになる。したがって、逆行性灌流カニューレの並進は主カニューレの内径の差分によって与えられるリングの当接効果によって制限され、その結果、逆行性灌流カニューレが格納位置にあるとき、管の遠位端はエルボと同一平面にあり、展開位置で管の近位端は、エルボと同一平面にある。
【0025】
1つの特徴によれば、主動脈カニューレは血液流出口オリフィスに対向するその壁に、好ましくは逆行性灌流カニューレの管の直径と実質的に同一の直径を有するアパーチャを有し、動脈内での管の展開を可能にする。したがって、逆行性灌流カニューレは、主動脈カニューレから容易に展開される。
【0026】
1つの特徴によれば、アパーチャは、主動脈カニューレのエルボに配置される。
【0027】
1つの特徴によれば、格納位置において逆行性灌流カニューレと接触する主動脈カニューレの内壁は、金属材料又はポリカーボネート等の剛性の生体適合性材料から作製される。したがって、逆行性灌流カニューレは、主動脈カニューレを取り扱う間に変形させることなく、主動脈カニューレ内で容易に摺動するように適合されている。さらに、主動脈カニューレは、血流の妨げを最小限にするようにかさばらない。
【0028】
1つの特徴によれば、逆行性灌流カニューレのリング及び管と接触する内壁の外側で、主動脈カニューレは、好ましくはシリコーンまたはポリウレタンタイプのプラスチック材料でオーバーモールドされた、ニチノール又は編組鋼等の可撓性材料から作製される。したがって、主動脈カニューレは人体組織を傷つけず、動脈内に容易に導入される。
【0029】
さらに、可撓性材料は、主動脈カニューレに、任意の形状、特に、動脈内に導入されるように意図された第1の端部に対応する第1のフリーブランチ、中央ブランチ、及び人工肺と協働するように意図された第2のフリーブランチを有するZ字状形状を与えることを可能にするように変形するように適応する。このZ字状形状はセットの空間的なバルクを減少させ、カニューレのよじれを回避しながら、患者の皮膚にカニューレをより容易に固定することを可能にする。
【0030】
1つの特徴によれば、逆行性灌流カニューレは、最大で1mmの範囲の厚さを有する壁を有する。したがって、バルクは小さい。
【0031】
1つの特徴によれば、逆行性灌流カニューレのリングは、ポリウレタン等の硬質プラスチック、又は鋼鉄等の生体適合性硬質金属から作製される。したがって、逆行性灌流カニューレの並進誘導が最適化される。
【0032】
1つの特徴によれば、逆行性灌流カニューレの管の近位端は、金属及びプラスチックに基づく複合材料から作られ、その遠位端はシリコーン等の可撓性プラスチックから作られる。したがって、逆行性灌流カニューレはその遠位端において人体組織を傷つけず、その近位端において変形不能である。
【0033】
一つの特徴によれば、管とリングは、切欠きを形成する金属インサート、例えば鋼帯によって連結されている。したがって、逆行性灌流カニューレは、良好な機械的強度を有する。
【0034】
1つの特徴によれば、主動脈カニューレの第1の端部は、その血液流出口オリフィスに近接して、その壁に少なくとも1つの穴を含む。したがって、流出口オリフィスが閉塞した場合に血液を排出することができる。
【0035】
本発明はさらに、動脈内への主動脈カニューレの挿入と、主動脈カニューレ外への逆行性灌流カニューレの展開との両方を可能にするために、前述のように動脈カニューレ内に挿入されるように構成された導入スタイレットに関し、導入スタイレットは、主動脈カニューレを閉塞するように構成される。したがって、導入スタイレットが主動脈カニューレ内に配置されている限り、血流は循環しない。
【0036】
1つの特徴によれば、導入スタイレットは主動脈カニューレの第1のブランチにおいて閉塞性であり、この主動脈カニューレのエルボ及び第2のブランチにおいて非閉塞性であるように構成される。したがって、エルボが動脈内に配置されると、血液は血液流出口オリフィスとは反対側のその壁の開口部を介して主動脈カニューレに入ることができ、血液は第2のブランチに流れ込むことができる。次いで、操作者はエルボが動脈内にあり、したがって、動脈カニューレが適切な位置にあることを識別することができる。
【0037】
1つの特徴によれば、導入スタイレットは、逆行性灌流カニューレが格納位置にある状態で、主動脈カニューレと相補的な形状を有する。
【0038】
導入スタイレットは、逆行性灌流カニューレの管と接触することなく、逆行性灌流カニューレを含む主動脈カニューレ内に格納位置で挿入されるように構成され、逆行性灌流カニューレのリングと協働して、逆行性灌流カニューレの除去時にそれを展開状態に駆動するように構成される。さらに、導入スタイレットは、動脈内への主動脈カニューレの導入を容易にするために動脈を拡張することを可能にする。
【0039】
1つの特徴によれば、導入スタイレットは主動脈カニューレの第1の端部に配置されるように構成された近位端を含み、近位端は主動脈カニューレの直径と実質的に同一の直径まで増大する直径を有し、近位端には逆行性灌流カニューレの長さよりも少なくとも長い長さを有し、主動脈カニューレの直径よりも小さい直径を有する第1の中間部分が続き、第1の中間部分には主動脈カニューレの直径と実質的に同一の直径を有する第2の中間部分が続く。
【0040】
1つの特徴によれば、導入スタイレットは逆行性灌流カニューレの切欠きに相補的な凹部を含み、凹部は導入スタイレットが主動脈カニューレから除去されるときに、逆行性灌流カニューレを動脈カニューレから並進させるように構成された突起を含む。
【0041】
1つの特徴によれば、導入スタイレットは、リングが嵌合するように意図された溝を含む。したがって、逆行性灌流カニューレは、主動脈カニューレを動脈内に挿入する際に主動脈カニューレ内の格納位置に保持されるように適合され、動脈カニューレから導入スタイレットを除去する際にその展開位置に駆動されるように適合される。
【0042】
1つの特徴によれば、溝はリングの凸状内壁に相補的であり、その結果、リングの凸状内壁が導入スタイレットの溝に嵌合するときに弾性半保持システムを形成する。したがって、逆行性灌流カニューレは主動脈カニューレを動脈内に挿入する際に、主動脈カニューレ内の格納位置に保持されるように適応し、動脈カニューレの導入スタイレットを除去する際に、その展開位置に駆動されるように適応する。逆行性灌流カニューレの展開時にリングが当接すると、導入スタイレットは、操作者によって導入スタイレットに加えられる引っ張り効果によって単独でその並進運動を継続する。
【0043】
1つの特徴によれば、導入スタイレットは、その中心で軸方向に穿孔されてガイドの通過を可能にする中空円筒にされる。
【0044】
本発明はまた、主動脈カニューレ内に逆行性灌流を後退させ、主動脈カニューレを動脈から取り外せるようにするために、前述のように動脈カニューレ内に挿入されるように構成された取り外しスタイレットに関し、取り外しスタイレットは、主動脈カニューレを閉塞するように構成される。
【0045】
1つの特徴によれば、取り外しスタイレットは、その中心で軸方向に穿孔されて中空円筒にされ、ガイドの通過を可能にする。
【0046】
1つの特徴によれば、取り外しスタイレットは、取り外しスタイレットを主動脈カニューレ内に挿入したときに、逆行性灌流カニューレのリングと協働して、主動脈カニューレ内でそれを並進駆動させるように構成されたバルジを備える。
【0047】
本発明はまた、前述のように、動脈カニューレ、導入スタイレット、及び取り外しスタイレットを備えたキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、従来技術に係る主動脈カニューレ及び逆行性灌流カニューレの概略図である。
【
図2】
図2は、本開示に係るECMO用の動脈カニューレを縦断面で示す。
【
図3】
図3は、
図2の動脈カニューレの一部の縦断面の概略図である。
【
図4】
図4は、
図2の動脈カニューレの逆行性灌流カニューレの概略斜視図である。
【
図5】
図5は、逆行性灌流カニューレが展開位置にあるときの逆行性灌流カニューレと主動脈カニューレとの間の位置合わせを示す
図3の詳細図である。
【
図6】
図6は、逆行性灌流カニューレを備えた動脈カニューレの概略断面図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る導入スタイレットの概略斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7の導入スタイレットの詳細の概略斜視図である。
【
図9】
図9は、本開示に係る逆行性灌流カニューレのリングに挿入された、
図8の導入スタイレットの概略断面図である。
【
図10】
図10は、
図7に係る導入スタイレットを備えた動脈カニューレ部分の概略縦断面図である。
【
図11】
図11は動脈カニューレの別の概略縦断面図であり、主動脈カニューレが
図10の内径の差分を有する実施形態を示す。
【
図12】
図12は、第2の実施形態に係る導入スタイレットの部分概略図である。
【
図13】
図13は、本開示に係る動脈カニューレの逆行性灌流カニューレに挿入された
図9の導入スタイレットの概略図である。
【
図14】
図14は、主カニューレに挿入された取り外しスタイレットを備えた、本開示に係る動脈カニューレの部分概略図である。
【
図15】
図15は、取り外しスタイレットを詳述する、
図14の動脈カニューレの部分概略縦断面図である。
【
図17】
図17は、一変形例に係る逆行性灌流カニューレを含む、
図2の動脈カニューレの部分概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
【0050】
【0051】
動脈カニューレ20は、血液流出口オリフィス26を含む第1の端部24と、人口肺(図示せず)に接続されるように意図された第2の端部28とを有する主動脈カニューレ22を有する。
【0052】
主動脈カニューレ22はL字状形状を有することができ、その第1のブランチ25は第1の端部24を含み、第2のブランチ25’は第2の端部28を含む。第1のブランチ25及び第2のブランチ25’は、平均して135°の曲率角度を有することができ、90°から150°まで変化することができるエルボ27によって接続できる。
【0053】
第1の端部24は矢印Fに従って逆方向に血液を動脈内に注入するために、動脈(図示せず)内に導入されるように構成される。これは、主動脈カニューレ22の第1の端部24における格納位置(
図6)と、主動脈カニューレ22の血液流出口オリフィス26とは反対側の、主動脈カニューレ22から部分的に出る、動脈における展開位置(
図2)との間で並進移動可能であるように構成された逆行性灌流カニューレ30を含む。逆行性灌流カニューレ30は、矢印Aに従って、順方向に動脈に血液を注入することが意図される。
【0054】
主動脈カニューレ22の第1の端部24は逆行性灌流カニューレ30と同様に、直線状であってもよい。
【0055】
主動脈カニューレ22は、血液流出口オリフィス26に近接するその端部に、流出口オリフィス26が閉塞した場合に血液を排出することを可能にする穴29を含むことができる。
【0056】
主動脈カニューレ22は、主として、シリコーン又はポリウレタンでオーバーモールドされたニチノール又は編組鋼から形成され得る。それは、格納位置において、ポリカーボネートで作られた逆行性灌流カニューレ30と接触する部分を有する可能性がある。したがって、それは、ニチノール又は鋼鉄で作られた可撓性部分と、ポリカーボネートで作られた剛性部分とを有してもよい。
【0057】
逆行性灌流カニューレは、主動脈カニューレの血液流出口オリフィス26に対する近位端35と、反対側の遠位端35’とを備える。
【0058】
図3~
図6にさらに詳細に示すように、逆行性灌流カニューレ30は例えば、3.15mm
2の表面、12mmの高さ「h」、3.34mmの幅L、及び5~15mmの範囲の長さ「l」を有する楕円管のような管32を含んでもよい。逆行性灌流カニューレ30はまた、円形リング等のリング34を備えてもよい。リング34は、金属製又はポリウレタン製とすることができる。これは、主動脈カニューレの内径D’よりも非常にわずかに小さい直径Dを有してもよく、逆行性灌流カニューレが主動脈カニューレにおいて困難なく滑ることを可能にする。管32は、主動脈カニューレ22の血液流出口オリフィス26に対する近位端36と、反対側のいわゆる遠位端36’とを含むことができる。リング34は、逆行性灌流カニューレ30の近位端35に配置されてもよい。それは、切欠き38によって管32から分離されてもよい。管32の近位端36及び遠位端36’はオブリークであってもよく、すなわち、傾斜していてもよい。
【0059】
傾斜した遠位端36’は逆行性灌流カニューレ30が格納位置にあるとき、主動脈カニューレのエルボ27の曲率に適合され得る。したがって、格納位置では、管32の遠位端36’はエルボ27と相補的である。それはエルボ27から突出せず、その内側からも外側からも突出せず、それは動脈カニューレの除去時に動脈カニューレの動脈からの容易な滑りを可能にする。傾斜した遠位端36’は、血液を主動脈カニューレ22の第2のブランチ25’と反対側に向けるように構成された血液通過オリフィスを形成する。
【0060】
図17及び
図18に示すように、管32は、主動脈カニューレ22の第2のブランチ25’に向かう開口部39を含むことができる。開口部は、管32の遠位端36’に配置され得る。
【0061】
傾斜した遠位端36’は反対側の第2の面37Bよりも長い長さを有する第1の面37Aを含む壁37を有することができ、第1の面37Aは、主動脈カニューレ22の第2のブランチ25’に向けられた開口部39を含む。その開口部は、傾斜した遠位端が閉塞された場合であっても、血液が管を通って流れることを確実にすることを可能にする。実際、傾斜した遠位端は、例えば動脈によって閉塞され得る。
【0062】
管32の傾斜した近位端36は、切欠き38に近接して配置することができる。これは、逆行性灌流カニューレ30が展開位置にあるときに、主動脈カニューレ22のエルボ27の湾曲に適合され得る。従って、展開位置において、管の近位端36はエルボと相補的であり、エルボの内側から突出せず、これは、主動脈カニューレにおける血液の容易な循環を可能にする。
【0063】
主動脈カニューレ22は、管32の長さ「l」と同一の長さを有するリング34の並進部T(
図11)を有し得る。並進部Tは、主動脈カニューレ22の第1の端部24に配置できる。
【0064】
主動脈カニューレの内側の直径D’と逆行性灌流カニューレ30の管32の内側の直径との比は8であり得る。
【0065】
逆行性灌流カニューレ30は、0.1mmの厚さ「e」を有する壁を有してもよい。
【0066】
楕円管腔のようなアパーチャ26’(
図3)が、血液流出口オリフィス26の反対側に、主動脈カニューレ22のエルボ27内に存在し得、逆行性灌流カニューレ30が主動脈カニューレ22から展開されることを可能にする。アパーチャ26’は、管32の断面の形状及び寸法と同一の形状及び寸法を有していてもよい。したがって、管32のみがアパーチャ26’を通って動脈内に展開され得る。
【0067】
図3はさらに、主動脈カニューレ22の第1の端部24が、管32及び逆行性灌流カニューレのリング34が接触して滑るように構成される内壁31を備え得ることを示す。これにより、管32を内壁31に接触させて配置することができる。
【0068】
さらに、逆行性灌流カニューレ30の管32は、展開位置で逆行性灌流カニューレ30をブロックするように構成された、例えば可撓性のバルジ33を有してもよい。バルジ33は、管32の上部32’上に配置することができる。バルジ33は、主動脈カニューレ22の第2の端部28に向けることができる。これは、エルボ27のアパーチャ26’と協働することができる。より具体的には、それは主動脈カニューレ22のエルボ27のアパーチャ26’の外側及び上部と協働することができる。バルジ33は、主動脈カニューレ内で自然に起こる逆行性灌流カニューレ30の除去を防止することを可能にする。
【0069】
管32は、生体適合性複合材料で作ることができる。切欠き38に鋼帯状の部分を含んでいてもよい。
【0070】
さらに、
図4に示すように、リング34は、主動脈カニューレ22の内壁31に長手方向に配置された溝50(
図6)と協働するように構成されたリブ52を含むことができる。溝50は、逆行性灌流カニューレ30の並進長さに対応する長さを有し得る。したがって、溝50は逆行性カニューレの並進を制限し、収容することを可能にする。それは、管32の近位端36が展開位置における主動脈カニューレ22のエルボ27の壁の厚さで正確に停止するように、格納位置から展開位置への切り替え時に、逆行性灌流カニューレ30が主動脈カニューレ22の第1の端部24から抜けるのを防止することを可能にする。さらに、それは、管32の遠位端36’が格納位置における主動脈カニューレ22のエルボ27の壁の厚さ内で正確に停止するように、展開位置から格納位置への切り換えの際に、逆行性灌流カニューレ30の並進を制限することを可能にする。
【0071】
図13に示す一実施形態では、リング34はリブ52を含まず、主カニューレの内壁31は溝50を有していない。この実施形態では、主動脈カニューレがリング34の並進部Tの外側に、リング34の直径Dよりも小さい内径を有する(
図11)。したがって、並進部Tは主動脈カニューレの残りの部分の内径よりも大きい内径を有し、並進部Tの内径は、リングの直径Dよりも極めてわずかに大きい。リングの並進は逆行性灌流カニューレの展開及び/又は取り外し時に、リングの並進部Tの外側の主動脈カニューレのより小さい内径によって制限される。この直径の差分により、並進部Tの各端部にストッパ21(
図11)が形成される。
【0072】
図3に示すように、主動脈カニューレは、内側突出部51を有することができる。後で分かるように、内側突出部51は、動脈カニューレ20内に挿入されるように意図された導入スタイレット40の並進を制限するように構成される。
【0073】
図7~
図11は、本開示に係る導入スタイレット40の第1の実施形態を示す。導入スタイレットは、動脈内への主動脈カニューレ22の挿入と、主動脈カニューレ22からの逆行性灌流カニューレ30の展開との両方を可能にするために、動脈内への導入スタイレットの導入前に、前述のように動脈カニューレ20内に挿入されるように構成される。これは、主動脈カニューレ22の動脈内への導入を容易にするために、導入スタイレット40が動脈カニューレ内に挿入されるときに、主動脈カニューレ22の血液流出口オリフィス26を通過するように意図された、とがった先端の形態の近位端42を有してもよい。それはさらに、動脈カニューレの第2の端部28を留めるように構成されたクランプの形態の遠位端42’を有してもよい。
【0074】
図7に示すように、導入スタイレット40は、有利には近位端42に近い第1の中間部分47と、遠位端42’に近いクランプの形態の第2の中間部分47’とを有してもよい。第1の中間部分47は、逆行性灌流カニューレの長さよりもわずかに長い長さを有してもよい。それは、主動脈カニューレの直径よりも小さい直径を有してもよい。したがって、逆行性灌流カニューレが主動脈カニューレ内の格納位置にあるとき、第1の中間部分47は逆行性灌流カニューレと空間的に干渉しない。他方、第2の中間部分47’は動脈カニューレ内への導入時に最小限のクリアランスを有するために、主動脈カニューレの直径と実質的に同一の直径を有してもよい。さらに、これは、導入スタイレットにいくらかの剛性を付与することを可能にし、導入スタイレットを動脈カニューレに挿入する際に、軸方向に中心で進行することを可能にする。しかしながら、非閉塞性とするために、第2の中間部分47’は、血液が循環することを可能にする長手方向の溝(図示せず)を有してもよい。
【0075】
導入スタイレット40の近位端42は主動脈カニューレ22の内径D’と同一の最大直径D’’まで増大する直径を有してもよく、これは主動脈カニューレ22を閉塞することを可能にする。したがって、導入スタイレットが主動脈カニューレ内に配置されている限り、血流は循環しない。この増大する直径は、逆行性灌流カニューレ30が格納位置に配置された主動脈カニューレ20の第1の端部24に導入スタイレット40が挿入されることを可能にする。実際、格納位置にある逆行性灌流カニューレ30は、(
図6に示すように)主動脈カニューレの自由内部空間を減少させる。
【0076】
さらに、導入スタイレット40の近位端42は、逆行性灌流カニューレのリング34と協働するように構成され得る。この目的のために、近位端42は、リング34が嵌合するように意図された溝44を含むことができる(
図10)。溝44は、主動脈カニューレ22を動脈内に挿入すると、逆行性灌流カニューレ30を主動脈カニューレ22内の格納位置に保持し、導入スタイレット40を動脈カニューレ20から取り外すと、逆行性灌流カニューレ30をその展開位置に駆動することを可能にする。
【0077】
導入スタイレット40の近位端42は、最大直径D’’で、主動脈カニューレの内側突出部51(
図3)に当接するように構成され得る。したがって、主動脈カニューレ内での導入スタイレット40の並進は、逆行性灌流カニューレのリング34が導入スタイレットの溝44内に嵌合するように制限される。
【0078】
図8は、導入スタイレット40が溝44及びその周りに切込み45を有し得ることを示す。これらの切込みは、変形可能な保持システム49を形成することを可能にする。したがって、逆行性灌流カニューレが、その展開時に主動脈カニューレ内でのその並進を完了すると、変形可能な保持システムにおけるスタイレットの直径はわずかに縮み、スタイレットがリングから滑り出て動脈カニューレから完全に自由になることを可能にする。
【0079】
導入スタイレット40は主動脈カニューレ22に任意の形状を与えることができるように、変形可能であってもよい。実際、主動脈カニューレ22の可撓性部分は例えば、動脈内に導入されるように意図された第1の端部24に対応する第1のフリーブランチ、中央ブランチ、及び人工肺(図示せず)と協働するように意図された第2のフリーブランチを有するZ字状形状をそれに授けるように、導入スタイレット40によって変形させることができる。
【0080】
図9に示すように、導入スタイレット40は、その中心で軸方向に穿孔されて中空円筒400にされてもよい。
【0081】
図12及び
図13は、本開示に係る導入スタイレット40’の第2の実施形態を示す。
【0082】
導入スタイレット40’は逆行性灌流カニューレ30(
図10)の管32と相補的な凹部46を有してもよく、導入スタイレット40’を、逆行性灌流カニューレ30が格納位置に配置される主動脈カニューレ20の第1の端部24に導入することを可能にする。この凹部46は、逆行性灌流カニューレ30の管32と協働して、主動脈カニューレ22からのその展開を可能にするように構成された突起48を含み得る。
【0083】
第1の実施形態に係る導入スタイレット40はその縦軸に関して対称であり、したがって、その軸上でのスタイレットの回転に関係なく、任意の位置で動脈カニューレ20内に導入されるように構成される。
【0084】
他方、第2の実施形態に係る導入スタイレット40’は正確な位置で動脈カニューレ内に導入されるように構成され、その結果、凹部46は逆行性灌流カニューレ30の管32と協働する。
【0085】
これらのスタイレット40、40’は、逆行性灌流カニューレの双方向並進を可能にする。
【0086】
図14~
図16は、主動脈カニューレ22を動脈内から後退させることを可能にするために、主動脈カニューレ22内に逆行性灌流カニューレ30を後退させることを可能にするように構成された取り外しスタイレット53を示す。
【0087】
取り外しスタイレット53は逆行性灌流カニューレ30が展開位置にあるときに、主動脈カニューレ22内に逆行性灌流カニューレ30を後退させることを可能にするために、前述のように動脈カニューレ20内に挿入されるように構成される。それは、取り外しスタイレット53が主動脈カニューレ22内に挿入されたときに、それを主動脈カニューレ22内で並進駆動させるために、逆行性灌流カニューレ30のリング34と協働するように構成されたバルジ54を有することができる。バルジ54は、取り外しスタイレット53のいわゆる近位端に配置されてもよい。取り外しスタイレット53の近位端は取り外しスタイレット53が動脈カニューレ20に挿入されたときに、主動脈カニューレ22の血液流出口オリフィス26に近接して配置されるように意図された端部である。バルジ54は、リング34に嵌合するようになっていてもよい。それはリング34を塞ぐことができる。バルジ54は球形であってもよい。取り外しスタイレット53はまた、好ましくは円筒形の第1の中間部分54’を有してもよく、その直径は主動脈カニューレ内での引込時に、逆行性灌流カニューレとの空間的干渉なしに、逆行性灌流カニューレの取り外しを可能にする。この第1の中間部分54’は、逆行性灌流カニューレの長さと同一の長さを有し得る。取り外しスタイレットはまた、好ましくは円筒形の第2の中間部分54”を有してもよく、その直径は主動脈カニューレ内での血液の上昇を防止するように、主動脈カニューレを閉塞するために主動脈カニューレの直径と等しい。さらに、取り外しスタイレットは、動脈カニューレの第2の端部28と協働するように構成されたキャップの形態の遠位端54”を有してもよい。
【0088】
取り外しスタイレット53の第2の中間部分54”は主動脈カニューレ22の内径D’と同一の直径を有してもよく、これは主動脈カニューレ22を閉塞することを可能にする。したがって、取り外しスタイレットが主動脈カニューレ内に配置されるとき、血流は動脈カニューレ内を循環しない。
【0089】
バルジ54は動脈カニューレ20への挿入時に、主動脈カニューレ22内の並進において逆行性灌流カニューレ30を駆動するために、凸状内壁34’(
図5)を有し得るリング34と協働するように構成されている。
【0090】
さらに、リング34の凸状内壁34’は血流をラミネートすることを可能にし、したがって、溶血および乱流の血流を回避する。
【0091】
図14に示すように、取り外しスタイレット53は主動脈カニューレに挿入されたときに、主動脈カニューレ22を閉塞することを可能にする。