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特許7520988負極片、当該極片を採用した電池及び電子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】負極片、当該極片を採用した電池及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20240716BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240716BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240716BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240716BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240716BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/134
H01M4/62 Z
H01M10/0566
H01M10/052
H01M4/66 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022549219
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-03
(86)【国際出願番号】 CN2020078858
(87)【国際公開番号】W WO2021179220
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李大光
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼茂▲華▼
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-017479(JP,A)
【文献】特開平11-003713(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110660969(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108365200(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62、4/64-4/84
H01M10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質負極骨格と、前記多孔質負極骨格の内部に濃度勾配を形成するように分布されるリチオフィリック物質と、集電体とを含み、
前記リチオフィリック物質は、銀、アルミニウム、金、及び二酸化チタンのうちの少なくとも一種であり、
前記リチオフィリック物質の濃度は、前記集電体から前記多孔質負極骨格の表面に向かって徐々に低下する、負極片。
【請求項2】
前記リチオフィリック物質の厚さは1nm~10μmである、請求項1に記載の負極片。
【請求項3】
前記多孔質負極骨格の材料は、金属、炭素材料、及び絶縁ポリマーのうちの少なくとも一種を含む、請求項1に記載の負極片。
【請求項4】
前記多孔質負極骨格の強度は200GPa以上で、孔隙率は20%~90%である、請求項1に記載の負極片。
【請求項5】
前記負極片の厚さは10~100μmである、請求項1に記載の負極片。
【請求項6】
リチウム金属をさらに含む、請求項1に記載の負極片。
【請求項7】
前記リチウム金属の含有量は0.25~25mg/cmである、請求項に記載の負極片。
【請求項8】
前記集電体の材料は、銅、ニッケル、チタン、モリブデン、鉄、亜鉛、炭素及びグラフェンのうちの少なくとも一種を含む、請求項に記載の負極片。
【請求項9】
正極片と、請求項1~のいずれか一項に記載の負極片と、前記正極片と前記負極片との間に配置されるセパレーターと、電解液とを含む、リチウムイオン電池。
【請求項10】
請求項に記載のリチウムイオン電池を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池分野に関し、具体的には、負極片、当該極片を採用した電池及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は比エネルギーが大きく、動作電圧が高く、自己放電率が低く、体積が小さく、軽量であるという特徴があり、家庭用電気分野で幅広い用途がある。電気自動車や携帯用電子機器の急速な発展に伴い、人々は、例えば、より高いエネルギー密度、安全性、およびサイクル特性などのリチウムイオン電池の性能に対する需要がますます高まっている。
【0003】
リチウムイオン電池の性能を向上させるために、従来の技術は、リチウム析出のための十分なスペースを提供する負極骨格を採用して、充電・放電過程における負極の体積変化を低減する。具体的に、電池が充電される際に、リチウム金属が正極から剥がされて負極に析出し、リチウムは炭素骨格の穴に貯蔵できるため、負極片の体積の安定性が維持されることができ、電池が放電する際に、リチウム金属が負極から剥がされて正極材料に埋め込まれ、炭素骨格が自体の形状を維持できるため、負極片の体積が減少することはない。
【0004】
しかしながら、従来の負極骨格に基づく負極片では、リチウム金属は、負極骨格の内部ではなく、負極骨格の表面に析出する傾向があるため、負極骨格の性能に影響を及ぼし、サイクル中に負極片の体積が大きく変化し、それによって負極片の性能に影響を及ぼし、さらにリチウムイオン電池の性能に影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、リチウム金属が均一かつ制御可能に析出され得るように、リチウムの析出方向を調整することができる、負極片、当該極片を採用した電池及び電子装置提供することである。具体的な技術的解決策は以下のとおりである。
【0006】
本発明の第1の態様は、多孔質負極骨格、前記多孔質負極骨格の内部に濃度勾配を形成するように分布されるリチオフィリック(lithiophilic)物質、および集電体を含む負極片を提供する。
【0007】
本発明の一つの実施形態において、前記リチオフィリック物質の濃度は前記集電体から多孔質負極骨格の表面に向かって徐々に低下する。
【0008】
本発明の一つの実施形態において、前記リチオフィリック物質は、特定の官能基を含む物質、金属、及び酸化物のうちの少なくとも一種を含む。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、前記金属は、銀、アルミニウム、金、バリウム、カルシウム、インジウム、白金、シリコン、スズ、及び亜鉛のうちの少なくとも一種を含み、前記酸化物は、二酸化チタン、二酸化ケイ素、及び酸化亜鉛のうちの少なくとも一種を含み、前記官能基は、ヒドロキシ基、エステル基、カルボキシ基、及びアミノ基のうちの少なくとも一種を含む。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、前記リチオフィリック物質の厚さは1nm~10μmである。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、前記多孔質負極骨格の材料は、金属、炭素材料、及び絶縁ポリマーのうちの少なくとも一種を含む。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、前記多孔質負極骨格の強度は15MPa以上で、孔隙率は20%~90%である。
【0013】
本発明の一つの実施形態において、前記負極片の厚さは10nm~100μmである。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、リチウム金属がさらに含まれる。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、前記リチウム金属の含有量は0.25~25mg/cmである。
【0016】
本発明の一つの実施形態において、前記集電体の材料は、銅、ニッケル、チタン、モリブデン、鉄、亜鉛、およびそれらの合金、ならびに炭素、グラフェンのうちの少なくとも一種を含む。
【0017】
本発明の第2の態様は、
多孔質負極骨格の片側に対して絶縁封止を行うことと、
多孔質負極骨格の非封止側からリチオフィリック物質を析出させ、リチオフィリック物質を含む多孔質負極骨格を得ることと、
リチオフィリック物質を含む多孔質負極骨格を洗浄してから、真空オーブンで乾燥させることと、
次に、非封止側を集電体に隣接して配置し、負極骨格と集電体をホットプレスによって結合させ、負極片を得ることと、を含む負極片の調製方法を提供する。
【0018】
本発明の一つの実施形態において、電気めっきの電流密度は20~1000mA/cmである。
【0019】
本発明の一つの実施形態において、析出方法は、電気めっき法、PVD法またはALD法を含む。
【0020】
本出願の第3の態様は、正極片と、上述した第1の態様に記載した負極片と、前記正極片と前記負極片との間に配置されるセパレーターと、電解液とを含むリチウムイオン電池を提供する。
【0021】
本発明の第4の態様は、上述した第3の態様に記載したリチウムイオン電池を含む電子装置を提供する。
【0022】
本発明によって提供される負極片は、多孔質負極骨格、多孔質負極骨格の内部に濃度勾配を形成するように分布されるリチオフィリック物質、および集電体を含む。リチオフィリック物質が多孔質負極骨格の内部に濃度勾配を形成するように分布しているため、リチウム金属の析出を集電体側からセパレーター側に向かって徐々に堆積させるように誘導することができ、リチウム金属が負極骨格の表面に優先的に析出するのを防ぎ、負極骨格の内部に析出し、それによってリチウムの析出位置が調整され、リチウム金属の均一で制御可能な析出が実現され、さらに、サイクル中の負極片の体積膨張を改善することができる。そして、リチウム金属が負極骨格の内部に析出するため、リチウムデンドライトの成長を抑制できることにより、リチウムイオン電池の安全性能とサイクル特性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の先行技術の技術的解決策をより明確に説明するために、以下では、実施形態および先行技術に用いられる必要とする図面を簡単に紹介するが、明らかに、以下に説明される図面は、本発明のいくつかの実施形態にすぎず、当業者にとって、創造的労力をかけない前提で、依然としてこれらの図面により他の技術的解決策を得ることができる。
図1図1は、本発明の一つの実施形態の負極片の構造の概略図である。
図2図2は、本発明の一つの実施形態の多孔質負極骨格の構造の概略図である。
図3図3は、本発明の一つの実施形態における多孔質負極骨格の内部のAg(銀)の元素分布のEDX断面図である。
図4図4は、異なるAgめっき法を採用した場合のリチウム析出位置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的、技術的解決策、および利点をより明確にするために、以下、図面および実施例を参照しながら、本発明についてさらに詳しく説明する。明らかに、説明された実施例は本発明の実施例の一部にすぎず、全部の実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的労力をかけない前提で得られた他のすべての技術的解決策は、本発明の保護範囲にある。
【0025】
例えば、グラファイトなどの従来のリチウムイオン電池の負極材料は、充電のとき、リチウムイオンがインターカレーションの形でグラファイト層構造に存在し、グラファイト層は骨格構造に似ており、リチウムための貯蔵スペースを提供するのに対し、純粋なリチウム金属電極を備えたリチウムイオン電池には、このような骨格構造がないため、充電・放電過程において負極片の体積が急激に変化し、通常、負極片の厚さは8~200μmの範囲で変化し、その結果、電池のサイクル特性が低下する。そして、充電過程において、リチウムは負極片の集電体の表面に析出し、電流密度および電解液中のリチウムイオン濃度の不均一性のため、析出過程において一部のサイトの析出速度は速すぎるという現象が発生し、この一部のリチウムは、リチウム金属本体からシナプスのような形で成長し、成長を続け、さらに分岐し、最終的に鋭いリチウムデンドライトを形成する。リチウムデンドライトの存在により、析出密度が大幅に低下し、電池のエネルギー密度が低下する。例えば、一部のリチウムイオン電池では、リチウム金属の実際の析出密度は0.2g/cm程度であり、リチウム金属の真密度である0.534g/cmよりもはるかに小さい。リチウム金属の析出が緩いため、電池のエネルギー密度は100Wh/L以上に低下する。また、リチウムデンドライトがセパレーターを貫通して短絡を形成し、電池の故障を引き起こし、電池の安全性に影響を及ぼす恐れがある。
【0026】
これによって、本発明は、図1に示すように、多孔質負極骨格1、前記多孔質負極骨格の内部に濃度勾配を形成するように分布されるリチオフィリック物質2、および集電体3を含む負極片を提供する。
【0027】
多孔質負極骨格1は、フィルムシート状の構造であり得、当該多孔質負極骨格1の孔隙は、細孔状または他の形状の穴であり得る。そして、多孔質負極骨格1は十分な強度を持ち、例えば、当該多孔質負極骨格1の強度は15MPa以上であり、それにより安定した形状と内部空間を維持する。充電する際に、多孔質負極骨格1は安定した空間を提供することができるため、リチウム金属を多孔質負極骨格1の多数の孔隙に析出させる。放電する際に、多孔質負極骨格1は、負極のリチウムが減少し続ける過程で安定した構造と内部空間形成することができることにより、負極が激しく収縮することはない。一方、多孔質負極骨格1は、導電性チャネルを提供するために良好なイオン伝導性および電子伝導性を有し、かつ、多孔質負極骨格1は比表面積が大きいため、充電・放電過程で電流を効果的に分散させ、電流密度を低下させ、より均一な電界を形成することで、リチウム析出の均一性を改善し、リチウムデンドライトの成長を抑制する。
【0028】
本発明において、リチオフィリック物質が前記多孔質負極骨格1の内部に濃度勾配を形成するように分布することができるため、リチウム金属を析出過程中で集電体側からセパレーター側に向かって徐々に堆積させるように誘導することができることで、リチウム金属が負極骨格の表面に優先的に析出するのを防ぎ、負極骨格の内部に析出する。
【0029】
具体的に、図2に示すように、多孔質負極骨格1を調製する際に、カーボンペーパーの片側を絶縁テープで封止し、反対側を封止しないため、電解液中のリチオフィリック物質は絶縁テープから離れた側に優先的に析出することにより、絶縁テープに近い側の電解液では、リチオフィリック物質を補充するには遅すぎ、骨格内部に濃度勾配が形成され、骨格内部にリチオフィリック物質の濃度勾配分布が実現される。多孔質負極骨格内にリチオフィリック物質が濃度勾配を形成するように分布にすることによって、リチウム金属の析出は方向性を持たせることができる。すなわち、Ag濃度が高い側では、核生成サイトが多く、比較的に多いリチウムイオンを吸着でき、Ag濃度が低い側もリチウムイオンを吸着できるが、核生成サイトが少ないため、Ag濃度の高い側の過剰なリチウム金属が入る十分なスペースが残っている。巨視的には、リチウム金属はAg濃度の高い側からAg濃度の低い側に拡張し、それによってリチウム金属の方向性析出が実現される。
【0030】
本発明において、リチオフィリック物質が多孔質負極骨格に濃度勾配を形成するように分布していることにより、リチウムの析出方向が調整され、リチウム金属の均一で制御可能な析出が実現され、さらに、サイクル中の負極片の体積膨張が改善されることができ、かつ、リチウム金属が負極骨格の内部に析出するため、リチウムデンドライトの成長を抑制できることにより、リチウムイオン電池の安全性能とサイクル特性が改善される。
【0031】
リチオフィリック物質による本発明の性能の改善をさらに説明するために、リチオフィリック物質であるAg(銀)を例として説明する。
【0032】
図3を参照し、図3は、多孔質負極骨格内部のAgの元素分布のEDX(Energy Dispersive X-Ray Spectroscopy、エネルギー分散型X線分光器)断面図であり、図3から、Agは多孔質負極骨格内部に勾配分布しており、すなわち、下部は絶縁テープから離れた側であり、下部のAg濃度が比較的に高く、上部は絶縁テープに近い側であり、上部のAg濃度は比較的に低いことがわかる。
【0033】
Agはリチウム金属と自発的に合金化反応を起こすことができるため、リチウム核生成に必要なサイトを提供し、それによってリチウムの析出サイトを効果的に調整し、リチウムをサイクル中に極片の表面ではなく、多孔質負極骨格1の孔隙に優先的に析出させることができる。これは、リチウムの析出位置が効果的に制御されているため、骨格の役割を発揮できるからであり、リチウムを極片の表面に析出させれば、極片はサイクル中に依然として急激な体積変化があり、電流密度は低下しない。そのため、Agめっき層は、一方で、多孔質負極骨格をリチオフィリック導電性骨格に変性でき、もう一方で、金属リチウムの析出過電圧を低減し、サイクル安定性を向上し、デンドライトの成長を抑制できることがわかる。
【0034】
図4は、異なるAgめっき法を採用した場合のリチウム析出位置の概略図であり、図4に示すように、Agめっきのない多孔質負極骨格では、リチウム金属が完全にその表面に析出し、表面はリチウム金属の明るい白色の光沢を示している。通常のAgめっき法、すなわち均一なAgめっき法では、負極骨格内のAg濃度の勾配分布は形成されてないが、改善はあるものの、極片の表面に明るい白色のリチウム金属の析出が見られる。勾配Agめっき法を使用すると、極片の表面にリチウム金属の析出の痕跡がほとんど見られなく、リチウム金属が多孔質負極骨格の内部に入ったことを示している。
【0035】
本発明の一つの実施形態において、図1に示すように、リチオフィリック物質2の濃度は前記集電体3から多孔質負極骨格1の表面に向かって徐々に低下し、それによって勾配分布を形成する。
【0036】
本発明の一つの実施形態において、上述した多孔質負極骨格1は、炭素繊維を樹脂に含浸させて接着した後、高温で炭化し、炭化過程で樹脂が分解し、ガスが発生し、多孔質構造が生成され、多孔質負極骨格としてカーボンペーパーが調製される方法を採用することにより得ることができる。
【0037】
本発明の集電体3の材料は、特に限定されず、当業者に熟知の材料、例えば、銅、ニッケル、チタン、モリブデン、鉄、亜鉛およびそれらの合金のうちの少なくとも一種を採用することができ、または導電性無機材料、たとえば、炭素及びグラフェンを採用することができる。これらの材料は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明の一つの実施形態において、リチオフィリック物質は、特定の官能基を含む物質、金属、及び酸化物のうちの少なくとも一種を含むことができ、ここで、リチオフィリック物質としての金属は、銀、アルミニウム、金、バリウム、カルシウム、インジウム、白金、シリコン、スズ、及び亜鉛のうちの少なくとも一種を含むことができるが、これらに限定されない。リチオフィリック物質としての酸化物は、二酸化チタン、二酸化ケイ素、及び酸化亜鉛のうちの少なくとも一種を含むことができるが、これらに限定されない。官能基は、ヒドロキシ基(-OH)、エステル基(-COOR)、カルボキシ基(-COOH)、及びアミノ基(-NH)のうちの少なくとも一種を含むことができるが、これらに限定されない。そして、異なる析出方法、例えば、電気めっき、PVD(Physical Vapor Deposition、物理気相成長)法、またはALD(Atomiclayer Deposition、原子層堆積)法を採用し、リチオフィリック物質を多孔質負極骨格に析出させることができる。
【0039】
本発明の一つの実施形態において、上述したリチオフィリック物質の厚さは1nm~10μmであり、これは、異なる析出時間、異なる析出物質に関係している。
【0040】
本発明の一つの実施形態において、上述した多孔質負極骨格1の材料は、金属、炭素材料、及び絶縁ポリマーのうちの少なくとも一種を含むことができる。本発明の多孔質負極骨格1の材料は、特に限定されず、当業者に熟知の材料、例えば、亜鉛、スズ、シリコン、カーボンペーパー、PP(ポリプロピレン)、PA(ナイロン)、POM(ポリオキシメチレン)、またはPMMA(ポリメチルメタクリレート)などを採用することができる。
【0041】
本発明の一つの実施形態において、上述した多孔質負極骨格1の孔隙率は20%~90%である。
【0042】
本発明の一つの実施形態において、上述した負極片の厚さは10nm~100μmである。
【0043】
本発明の一つの実施形態において、上述した負極片は、さらにリチウム金属を含むことができ、リチウム金属の含有量は0.25~25mg/cmである。リチウム金属を予め補充することで、リチウムイオン電池のサイクル特性をさらに向上させることができるが、リチウム金属の含有量が少なすぎると、電池のサイクル特性を向上させることができず、リチウム金属の含有量が多すぎると、負極片からリチウムが溢れ出す可能性があるため、安全性が低下してしまう。そして、本発明において、リチウム金属を負極片に添加する方法は、特に限定されず、溶融法、PVD法、または電気化学的方法を含むことができる。
【0044】
本発明によって提供される負極片は、多孔質負極骨格の内部のリチオフィリック物質が濃度勾配を形成するように分布しているため、リチウム金属の析出を集電体側からセパレーター側に向かって徐々に堆積させるように誘導することができ、リチウム金属が負極骨格の表面に優先的に析出するのを防ぎ、負極骨格の内部に析出し、それによってリチウムの析出位置が調整され、リチウム金属の均一で制御可能な析出が実現され、さらに、サイクル中の負極片の体積膨張が改善されることができる。そして、リチウム金属が負極骨格の内部に析出するため、リチウムデンドライトの成長を抑制できることにより、リチウムイオン電池の安全性能とサイクル特性が改善されることができる。
【0045】
本発明は、
多孔質負極骨格を封止することと、
多孔質負極骨格の片側に対して絶縁封止を行うこととを含む負極片の調製方法を提供する。
【0046】
本発明において、絶縁テープを使用して多孔質負極骨格の片側を貼り付けることにより、多孔質負極骨格の片側に対して封止を行うことができ、もちろん、絶縁テープ以外に、他の絶縁封止材を使用してもよい。
【0047】
本発明の一つの実施形態において、多孔質負極骨格の材料として、カーボンペーパー以外に、例えば、亜鉛、スズ、シリコン、PP、PA、POM、またはPMMAなどの、金属、他の炭素材料、及び絶縁ポリマーを使用してもよい。
【0048】
リチオフィリック物質の析出:
多孔質負極骨格の非封止側からリチオフィリック物質を析出させ、リチオフィリック物質を含む多孔質負極骨格を得る。
【0049】
多孔質負極骨格の片側を封止し、反対側を封止しないため、電解液中のリチオフィリック物質は絶縁テープから離れた側に優先的に析出することにより、絶縁テープに近い側の電解液では、リチオフィリック物質の析出量は少なく、骨格内部に濃度勾配が形成され、さらに骨格内部にリチオフィリック物質の濃度勾配分布が実現される。
【0050】
負極片の調製:
リチオフィリック物質を含む多孔質負極骨格を洗浄してから、真空オーブンで乾燥させた後、非封止側を集電体と接触するように負極骨格を集電体の上に配置し、負極骨格と集電体をホットプレスによって結合させ、負極片を得る。
【0051】
本発明の一つの負極片の調製方法では、多孔質負極骨格の片側にリチオフィリック物質を析出させることにより、多孔質負極骨格の内部のリチオフィリック物質が濃度勾配を形成するように分布しているため、リチウム金属の析出を集電体側からセパレーター側に向かって徐々に堆積させるように誘導することができ、リチウム金属が負極骨格の表面に優先的に析出するのを防ぎ、負極骨格の内部に析出し、それによってリチウムの析出位置が調整され、リチウム金属の均一で制御可能な析出が実現され、さらに、サイクル中の調製された負極片の体積膨張が改善されることができる。
【0052】
本発明の一つの実施形態において、本発明で記載した負極片と、前記正極片と前記負極片との間に配置されるセパレーターと、電解液とを含むリチウムイオン電池をさらに提供する。
【0053】
本発明のリチウムイオン電池では、多孔質負極骨格の内部のリチオフィリック物質が濃度勾配を形成するように分布しているため、リチウム金属の析出を集電体側からセパレーター側に向かって徐々に堆積させるように誘導することができ、リチウム金属が負極骨格の表面に優先的に析出するのを防ぎ、負極骨格の内部に析出し、それによってリチウムの析出位置が調整され、リチウム金属の均一で制御可能な析出が実現され、さらに、サイクル中の調製された負極片の体積膨張が改善されることができる。そして、リチウム金属が負極骨格の内部に析出するため、リチウムデンドライトの成長を抑制できることにより、リチウムイオン電池の安全性能とサイクル特性が改善されることができる。
【0054】
本発明の一つの実施形態において、上述した実施形態で記載したリチウムイオン電池を含む電子装置をさらに提供し、当該電子装置に使用されるリチウムイオン電池は、リチウム金属の析出がより均一であるため、サイクル中の調製された負極片の体積膨張が改善され、リチウムデンドライトの成長を抑制できることにより、電子装置はより高い安全性を持たせることができる。
【0055】
本発明の正極片は、特に限定されず、当技術分野で公知の任意の正極片を採用することができる。例えば、コバルト酸リチウムを含む正極片、マンガン酸リチウムを含む正極片、リン酸鉄リチウムを含む正極片、あるいは、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物またはリチウムニッケルコバルトアルミネートを含む正極片。
【0056】
本発明のセパレーターは、特に限定されず、当技術分野で公知の任意のセパレーター、例えば、PE(ポリエチレン)セパレーター、PP(ポリプロピレン)セパレーターなどを採用することができる。
【0057】
本発明において、前記電解液は、特に限定されず、当技術分野で公知の任意の電解液、例えば、有機溶媒DOL(ジオキソラン)と、DME(ジメチルエーテル)、およびLiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)と、LiNO(硝酸リチウム)から調製された電解液;または、有機溶媒DMC(炭酸ジメチル)、EMC(炭酸エチルメチル)、およびLiPFから調製された電解液;などを使用することができる。
【0058】
以下では、本発明の実施形態について、実施例および比較例を挙げてより具体的に説明する。下記の方法に従って様々な試験および評価を行った。なお、特に断らない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0059】
実施例1
<リチオフィリック物質を含む多孔質負極骨格の調製>
【0060】
a)カーボンペーパーの絶縁封止
カーボンペーパーをそれぞれ1.0wt%の塩酸と脱イオン水で洗浄した後、カーボンペーパーの片側を絶縁テープで絶縁封止を行い、選択されたカーボンペーパーの厚さは0.1mmであった。
【0061】
b)リチオフィリック物質の析出
封止されたカーボンペーパーに対して、0.2mol/Lの硝酸銀溶液で電気めっきを行い、電気めっきの電流を100mA/cmに制御し、電気めっき時間は180秒であり、ここで、電気めっき周期は18秒であり、10回繰り返され、次の電気めっきは毎回の電気めっきの後に18秒間隔に行い、銀めっきされたカーボンペーパーが得られた。
【0062】
c)乾燥
銀めっきされたカーボンペーパーを洗浄してから、60℃で真空オーブンで乾燥させて、リチオフィリック物質を含む多孔質負極骨格が得られた。
【0063】
負極片の調製>
乾燥なアルゴン雰囲気中で、絶縁テープで封止されていない側を集電体と接触するように、リチオフィリック物質を含む多孔質負極骨格を集電体の上に配置し、絶縁テープをはがし、負極骨格と集電体をホットプレスによって結合させ、ホットプレス温度を300℃、ホットプレス圧力を100kgに制御し、負極片が得られた後、負極片を40*60mmの寸法に切り抜いておいた。
【0064】
正極片の調製>
正極活物質材料LiFePO(リン酸鉄リチウム)、導電性カーボンブラック、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を97.5:1.0:1.5の重量比で混合した後、溶媒としてNMP(N-メチルピロリドン)を加え、スラリーに調製され、均一に攪拌し、スラリーの固形分は75%であった。次に、スラリーを厚さ15μmのアルミホイル集電体に均一にコーティングし、90℃の条件下で乾燥させ、正極片が得られた。ここで、アルミホイル集電体の正極活物質材料の負荷量は1mg/cmであり、コーティング終了後、正極片を38mm×58mmの寸法に切り抜いておいた。
【0065】
<電解液の調製>
乾燥なアルゴン雰囲気中で、有機溶媒DOLとDMEをDOL:DME=1:1の体積比で混合し、混合溶媒が得られた後、LiFSIとLiNOを混合溶媒に加え、溶解させ、均一に混合した後、電解液が得られた。ここで、混合溶媒中のLiFSIの添加量は1mol/Lであり、混合溶媒中のLiNOの添加量は1wt%であった。
【0066】
<リチウムイオン電池の調製>
セパレーターとして厚さ15μmのPEフィルム(ポリエチレン)を使用し、負極片の両面にそれぞれ正極片一枚を配置し、正極片と負極片の間にセパレーターを配置し、積層体を形成した後、積層体構造全体の四つの角をテープで固定し、アルミラミネートフィルムに入れ、上側を封止し、電解液を注入し、パッケージングした後、リチウムイオン積層体電池が得られた。
【0067】
<試験用半電池の調製>
半電池はモデルナンバー2430のボタン電池を使用し、負極缶、弾性片、ガスケット、負極リチウムシート、電解液、厚さ15μmのポリエチレン(PE)セパレーター、電解液、正極、Cu箔、正極缶を、この順に下から上に組み立て、ここで、半電池の正極は実施例1で作製した負極片であり、切断後の直径は18mmであり、正極集電体はCu箔である。半電池の電解液は、乾燥なアルゴン雰囲気中で、有機溶媒EC(エチレンカーボネート)とDEC(ジエチルカーボネート)をEC:DEC=1:1の質量比で混合した後、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)を混合液に加え、溶解させ、均一に混合することにより得られた。電解液中のリチウム塩濃度は1.0mol/Lであった。
【0068】
実施例2
実施例2では、電気めっきの電流密度を40mA/cmとしたこと以外は、実施例1と同様にした。
【0069】
実施例3
実施例3では、リチオフィリック物質としてアルミニウムを使用したこと以外は、実施例1と同様にした。
【0070】
実施例4
実施例4では、リチオフィリック物質として金を使用したこと以外は、実施例1と同様にした。
【0071】
実施例5
<リチオフィリック物質として二酸化チタンを使用し、PVD法を採用した>
【0072】
<リチオフィリック物質を含む多孔質負極骨格の調製>
マグネトロンスパッタリングを使用して、カーボンペーパーに二酸化チタンを析出させ、スパッタリングモードは高周波であり、電力は100Wであり、スパッタリング時間は10分であり、バイアス電圧は0であり、二酸化チタンを析出させたカーボンペーパーが得られ、二酸化チタンの濃度はカーボンペーパーに勾配分布していた。
【0073】
負極片の調製>
乾燥なアルゴン雰囲気中で、絶縁テープで封止されていない側を集電体と接触するように、リチオフィリック物質を含む多孔質負極骨格を集電体の上に配置し、絶縁テープをはがし、負極骨格と集電体をホットプレスによって結合させ、ホットプレス温度を300℃、ホットプレス圧力を100kgに制御し、負極片が得られた後、負極片を40*60mmの寸法に切り抜いておいた。
【0074】
正極片の調製>
正極活物質材料LiFePO(リン酸鉄リチウム)、導電性カーボンブラック、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を97.5:1.0:1.5の重量比で混合した後、溶媒としてNMP(N-メチルピロリドン)を加え、スラリーに調製され、均一に攪拌し、スラリーの固形分は75%であった。次に、スラリーを厚さ15μmのアルミホイル集電体に均一にコーティングし、90℃の条件下で乾燥させ、正極片が得られた。ここで、アルミホイル集電体の正極活物質材料の負荷量は1mg/cmであり、コーティング終了後、正極片を38mm×58mmの寸法に切り抜いておいた。
【0075】
<電解液の調製>
乾燥なアルゴン雰囲気中で、有機溶媒DOLとDMEをDOL:DME=1:1の体積比で混合し、混合溶媒が得られた後、LiFSIとLiNOを混合溶媒に加え、溶解させ、均一に混合した後、電解液が得られた。ここで、混合溶媒中のLiFSIの添加量は1mol/Lであり、混合溶媒中のLiNOの添加量は1wt%であった。
【0076】
<リチウムイオン電池の調製>
セパレーターとして厚さ15μmのPEフィルム(ポリエチレン)を使用し、負極片の両面にそれぞれ正極片一枚を配置し、正極片と負極片の間にセパレーターを配置し、積層体を形成した後、積層体構造全体の四つの角をテープで固定し、アルミラミネートフィルムに入れ、上側を封止し、電解質を注入し、パッケージングした後、リチウムイオン積層体電池が得られた。
【0077】
<試験用半電池の調製>
半電池はモデルナンバー2430のボタン電池を使用し、負極缶、弾性片、ガスケット、負極リチウムシート、電解液、厚さ15μmのポリエチレン(PE)セパレーター、電解液、正極、Cu箔、正極缶を、この順に下から上に組み立て、ここで、半電池の正極は実施例1で作製した負極片であり、切断後の直径は18mmであり、正極集電体はCu箔である。半電池の電解液は、乾燥なアルゴン雰囲気中で、有機溶媒EC(エチレンカーボネート)とDEC(ジエチルカーボネート)をEC:DEC=1:1の質量比で混合した後、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)を混合液に加え、溶解させ、均一に混合することにより得られた。電解液中のリチウム塩濃度は1.0mol/Lであった。
【0078】
比較例1
<濃度勾配分布のないリチオフィリック物質を含む多孔質負極骨格の調製>
【0079】
a)カーボンペーパーの処理
カーボンペーパーをそれぞれ1.0wt%の塩酸と脱イオン水で洗浄し、選択されたカーボンペーパーの厚さは0.1mmであった。
【0080】
b)リチオフィリック物質の析出
カーボンペーパーに対して、0.2mol/Lの硝酸銀溶液で電気めっきを行い、電気めっきの電流を100mA/cmに制御し、電気めっき時間は180秒であり、その中で、電気めっき周期は18秒であり、10回繰り返され、次の電気めっきは毎回の電気めっきの後に18秒間隔に行い、銀めっきされたカーボンペーパーが得られた。
【0081】
c)乾燥
銀めっきされたカーボンペーパーを洗浄してから、60℃で真空オーブンで乾燥させて、リチオフィリック物質を含む多孔質負極骨格が得られた。
【0082】
負極片の調製>
乾燥なアルゴン雰囲気中で、リチオフィリック物質を含む多孔質負極骨格を集電体の上に配置し、負極骨格と集電体をホットプレスによって結合させ、ホットプレス温度を300℃、ホットプレス圧力を100kgに制御し、負極片が得られた後、負極片を40*60mmの寸法に切り抜いておいた。
【0083】
正極片の調製>
正極活物質材料LiFePO(リン酸鉄リチウム)、導電性カーボンブラック、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を97.5:1.0:1.5の重量比で混合した後、溶媒としてNMP(N-メチルピロリドン)を加え、スラリーに調製され、均一に攪拌し、スラリーの固形分は75%であった。次に、スラリーを厚さ15μmのアルミホイル集電体に均一にコーティングし、90℃の条件下で乾燥させ、正極片が得られた。ここで、アルミホイル集電体の正極活物質材料の負荷量は1mg/cmであり、コーティング終了後、正極片を38mm×58mmの寸法に切り抜いておいた。
【0084】
<電解液の調製>
乾燥なアルゴン雰囲気中で、有機溶媒DOLとDMEをDOL:DME=1:1の体積比で混合し、混合溶媒が得られた後、LiFSIとLiNOを混合溶媒に加え、溶解させ、均一に混合した後、電解液が得られた。ここで、混合溶媒中のLiFSIの添加量は1mol/Lであり、混合溶媒中のLiNOの添加量は1wt%であった。
【0085】
<リチウムイオン電池の調製>
セパレーターとして厚さ15μmのPEフィルム(ポリエチレン)を使用し、負極片の両面にそれぞれ正極片一枚を配置し、正極片と負極片の間にセパレーターを配置し、積層体を形成した後、積層体構造全体の四つの角をテープで固定し、アルミラミネートフィルムに入れ、上側を封止し、電解液を注入し、パッケージングした後、リチウムイオン積層体電池が得られた。
【0086】
<試験用半電池の調製>
半電池はモデルナンバー2430のボタン電池を使用し、負極缶、弾性片、ガスケット、負極リチウムシート、電解液、厚さ15μmのポリエチレン(PE)セパレーター、電解液、正極、Cu箔、正極缶を、この順に下から上に組み立て、ここで、半電池の正極は比較例1で作製した負極片であり、切断後の直径は18mmであり、正極集電体はCu箔である。半電池の電解液は、乾燥なアルゴン雰囲気中で、有機溶媒EC(エチレンカーボネート)とDEC(ジエチルカーボネート)をEC:DEC=1:1の質量比で混合した後、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)を混合液に加え、溶解させ、均一に混合することにより得られた。電解液中のリチウム塩濃度は1.0mol/Lであった。
【0087】
比較例2
<カーボンペーパーのみを含む負極片の調製>
比較例2では、厚さ0.1mmのカーボンペーパーを切断して得られた負極片を、試験用半電池の正極片としたこと以外は、比較例1と同様にした。
【0088】
比較例3
<銅集電体のみを含む負極片の調製>
比較例3では、厚さ0.01mmの銅箔を切断して得られた負極片を、試験用半電池の正極片としたこと以外は、比較例1と同様にした。
【0089】
比較例4
<予め補充されたリチウム金属を含む負極片の調製>
比較例4では、負極片は予め補充されたリチウム金属を含む銅箔であること以外は、比較例1と同様にし、銅箔の厚さは0.01mmであり、補充されたリチウムの厚さは30μmであった。
【0090】
比較例5
比較例5では、電気めっきの電流密度を40mA/cmとしたこと以外は、比較例1と同様にした。
【0091】
比較例6
比較例6では、電気めっきの電流密度を20mA/cmとしたこと以外は、比較例1と同様にした。
【0092】
比較例7
比較例7では、電気めっきの電流密度を20mA/cmとしたこと以外は、実施例1と同様にした。
【0093】
比較例8
比較例8では、電流密度を1000mA/cmとする場合、めっき層が焦げてしまったため、負極片をさらに調製することはできなかった。
【0094】
<曲げ強度試験>
材料の3点曲げ性能試験は、INSTRON-5569電子万能材料試験機で実施された。曲げサンプルの寸法は60mm×10mm×2mmであり、スパン(span)は40mmであった。BJ120-3AA型の抵抗ひずみゲージをスパンの中央に502接着剤で貼り付けた。試験過程において、ビームの移動速度は2mm/分であり、データ収集速度は100点/分であり、圧子の直径は10mmであった。曲げ強度は、オンラインレコーダーが収集したデータによって得られた。
【0095】
<リチウム層と骨格層の厚さ試験>
析出されたリチウム層および骨格層の厚さは、電界放出型走査電子顕微鏡SEMによって測定された。
【0096】
<半電池の性能試験>
実施例1~5および比較例1~4で調製された半電池に対して、下記の方法を使用して試験を行った。
【0097】
各実施例および比較例の有効性は、半電池サイクルの短絡サイクル回数と極片の膨張を使用して評価し、半電池サイクルは、市販のLANDバッテリーテストシステム、または市販のNewareバッテリーテスタによって測定され、体積膨張は万分の一のマイクロメーターで厚さを測定することで評価した。具体的なデータを以下の表に示す。
【0098】
半電池は、最初に0.2mA/cmの電流密度で15時間放電してから、0.2mA/cmの電流密度で1Vまで充電し、上記のプロセスを2回繰り返した後、電池を活性化させ、次に、1mA/cmの電流密度で3時間放電してから、1mA/cmの電流密度で1Vまで充電し、次に、電池が短絡するまでサイクルを繰り返した。
【0099】
実施例1~5と比較例1~4の試験パラメータおよび対応する実験結果を以下の表1に示す。
【0100】
【表1】
表1に示すように、実施例1と実施例2は、電気めっきする際の電流密度は異なるが、比較例1~7と比較すると、そのサイクル回数が明らかに増加し、体積膨張が明らかに減少し、特に実施例1は、その体積膨張の実測値が0であり、サイクル回数が著しく増加した。
【0101】
実施例3および4は、実施例1とは異なるリチオフィリック物質を使用したが、比較例1~7と比較すると、そのサイクル回数が明らかに増加し、体積膨張が明らかに減少したことから、リチオフィリック物質が多孔質負極骨格内に勾配分布している場合、電池のサイクル特性を向上させることができ、サイクル中の電池の体積膨張を減少させることができることがわかった。
【0102】
実施例5は、比較例1~7と比較すると、サイクル回数が明らかに増加し、体積膨張が明らかに減少したことから、酸化物を使用してPVD法によって得られた負極片も、電池のサイクル特性を向上させることができ、サイクル中の電池の体積膨張を減少させることができることがわかった。
【0103】
比較例1において、通常の銀めっき法を採用したため、リチオフィリック物質は勾配分布を形成せず、その結果、電池の性能は改善されなかった。
【0104】
比較例2において、負極片には集電体とリチウム金属が含まれていないため、負極片の性能が低く、その結果、電池の性能は改善されなかった。
【0105】
比較例3において、負極片にはカーボンペーパーとリチウム金属が含まれていないため、負極片は多孔質構造を持たず、リチオフィリック物質を析出させることができず、その結果、電池の性能は改善されなかった。
【0106】
比較例4において、負極片にはカーボンペーパーが含まれていないため、負極片は多孔質構造を持たず、リチオフィリック物質を析出させることができず、その結果、電池の性能は改善されなかった。
【0107】
比較例5において、電気めっきの電流密度を実施例1と同様にしたが、通常の銀めっき法を採用したため、リチオフィリック物質は勾配分布を形成せず、その結果、そのサイクル回数および体積膨張性能は改善されなかった。
【0108】
比較例6において、通常の銀めっき法を採用し、かつ、電気めっきの電流密度を小さくしたため、リチオフィリック物質は勾配分布を形成せず、その結果、そのサイクル回数および体積膨張性能は改善されなかった。
【0109】
比較例7において、勾配銀めっき法を採用したが、電気めっきの電流密度をさらに低下させ、比較的に小さい電流密度で電気めっきすると、リチオフィリック物質の粒子が比較的に大きいため、リチオフィリック物質が多孔質負極骨格の表面により容易に析出し、内部に入ることができなくなり、リチオフィリック物質は勾配分布を形成せず、その結果、サイクル回数が減少し、体積膨張が増加した。
【0110】
比較例8において、高電流密度を採用したため、めっき層が焦げてしまい、負極片をさらに準備することはできなかったことから、めっき層の焦げ付きを防ぐために、電気めっきする際に電流密度を制御する必要があることがわかった。
【0111】
上記は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明を限定するためではなく、本発明の主旨と原理の範囲内で行われた修正、同等の置換、改善などは、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4