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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】狭帯域の除去
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
G10K11/178 100
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022550985
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 US2021019664
(87)【国際公開番号】W WO2021173830
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】62/981,315
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤシャール・モテダイェン・アヴァル
(72)【発明者】
【氏名】シアマク・ファラバクシュ
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-322066(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0140747(US,A1)
【文献】特開2009-143382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0240452(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除去ゾーンにおけるノイズを表す信号を受信することと、
前記除去ゾーンにおいて軽減される前記信号内の周波数を識別することと、
前記信号をダウンコンバートして、前記識別された周波数をベースバンドに配置することと、
スピーカコマンド信号をダウンコンバートして、前記識別された周波数をベースバンドに配置することと、
前記ダウンコンバートされた信号及び前記ダウンコンバートされたスピーカコマンド信号に基づいて、耳の位置での推定値である推定されたベースバンドノイズ信号を生成することと、
前記推定されたベースバンドノイズ信号からベースバンドアンチノイズ信号を生成することと、
前記ベースバンドアンチノイズ信号を前記識別された周波数にアップコンバートして、前記識別された周波数の成分を有するアンチノイズ信号を生成することと、
音響信号に変換される前記アンチノイズ信号を提供することと、を含む、ノイズを軽減する方法。
【請求項2】
前記除去ゾーンにおけるノイズを表す前記信号は、マイクロフォン信号である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記除去ゾーンにおいて軽減される前記信号内の周波数を識別することは、事前に選択された周波数範囲で前記信号を分析することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記事前に選択された周波数範囲は、空洞共鳴と関連付けられている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記空洞共鳴は、ホイール空洞及び車両室内空洞のうちの少なくとも1つと関連付けられている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記識別された周波数の成分を有する前記アンチノイズ信号は、前記識別された周波数の成分及び前記識別された周波数の周辺の成分を有する狭帯域アンチノイズ信号である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記識別された周波数の前記成分及び前記識別された周波数の周辺の前記成分は、前記識別された周波数より20Hz低く、かつ前記識別された周波数より20Hz高い周波数の範囲、あるいはより狭い範囲に限定されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記識別された周波数の前記成分及び前記識別された周波数の周辺の前記成分は、前記識別された周波数より10Hz低く、かつ前記識別された周波数より10Hz高い周波数の範囲、あるいはより狭い範囲に限定されている、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記アンチノイズ信号は、振幅を有する周波数成分と、位相特性と、を含み、前記識別された周波数の狭帯域ノイズ又は前記識別された周波数の周辺の狭帯域ノイズと弱め合う干渉を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記信号内の周波数を識別することは、前記信号を分析して、前記信号のスペクトルにおいてピークを有する前記周波数を識別することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ノイズ除去システムであって、
除去ゾーンにおけるノイズを表す信号を提供するように構成されたセンサと、
前記センサに連結されたコントローラであって、
前記センサから前記信号を受信することと、
前記除去ゾーンにおいて軽減される前記信号内の周波数を識別することと、
前記信号をダウンコンバートして、前記識別された周波数をベースバンドに配置することと、
スピーカコマンド信号をダウンコンバートして、前記識別された周波数をベースバンドに配置することと、
前記ダウンコンバートされた信号及び前記ダウンコンバートされたスピーカコマンド信号に基づいて、耳の位置での推定値である推定されたベースバンドノイズ信号を生成することと、
前記推定されたベースバンドノイズ信号からベースバンドアンチノイズ信号を生成することと、
前記ベースバンドアンチノイズ信号を前記識別された周波数にアップコンバートして、前記識別された周波数の成分を有するアンチノイズ信号を生成することと、
音響信号に変換される前記アンチノイズ信号を提供することと、を行うように構成された、コントローラと、を備える、ノイズ除去システム。
【請求項12】
前記センサはマイクロフォンであり、前記除去ゾーンにおけるノイズを表す前記信号は、マイクロフォン信号である、請求項11に記載のノイズ除去システム。
【請求項13】
前記除去ゾーンにおいて軽減される前記信号内の周波数を識別することは、事前に選択された周波数範囲において前記信号を分析することを含む、請求項11に記載のノイズ除去システム。
【請求項14】
前記事前に選択された周波数範囲は、空洞共鳴と関連付けられている、請求項13に記載のノイズ除去システム。
【請求項15】
前記空洞共鳴は、ホイール空洞及び車両室内空洞のうちの少なくとも1つと関連付けられている、請求項14に記載のノイズ除去システム。
【請求項16】
前記識別された周波数の成分を有する前記アンチノイズ信号は、前記識別された周波数の成分及び前記識別された周波数の周辺の成分を有する狭帯域アンチノイズ信号である、請求項11に記載のノイズ除去システム。
【請求項17】
前記識別された周波数の前記成分及び前記識別された周波数の周辺の前記成分は、前記識別された周波数より20Hz低く、かつ前記識別された周波数より20Hz高い周波数の範囲、あるいはより狭い範囲に限定されている、請求項16に記載のノイズ除去システム。
【請求項18】
前記識別された周波数の前記成分及び前記識別された周波数の周辺の前記成分は、前記識別された周波数より10Hz低く、かつ前記識別された周波数より10Hz高い周波数の範囲、あるいはより狭い範囲に限定されている、請求項16に記載のノイズ除去システム。
【請求項19】
前記アンチノイズ信号は、振幅を有する周波数成分と、位相特性と、を含み、前記識別された周波数の狭帯域ノイズ又は前記識別された周波数の周辺の狭帯域ノイズと弱め合う干渉を行う、請求項11に記載のノイズ除去システム。
【請求項20】
前記アンチノイズ信号を受信し、前記アンチノイズ信号を音響信号に変換する前記コントローラに連結されたラウドスピーカを更に備える、請求項11に記載のノイズ除去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年2月25日に出願された「NARROWBAND CAVITY RESONANCE CANCELLATION」と題する米国特許出願第62/981,315号の利益を主張し、その内容は、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
アクティブ音響ノイズ除去システムは、不要なノイズが軽減されるように不要な音響ノイズと弱め合う干渉を行うことを意図した音響信号に変換されるアンチノイズ信号を生成する。これらのシステムは、ヘッドホンにおいてなどの非常に個人的なレベルで、又はユーザの頭部の近くの領域などのより広いノイズ軽減ゾーンにおいて動作し得る。自動車用システムは、1名以上の乗員の頭部の近くの音響ノイズ及び/又はより大略的には車両内部全体にわたる音響ノイズを軽減するように動作し得る。いくつかのそのようなシステムは、フィードフォワードシステムにおけるように、ノイズのソースを検出し、不要な音に相関する参照信号を提供するためのセンサを備え得る。様々なシステムは、マイクロフォンなどのエラーセンサを備え、対象のゾーンにおいて結果として生じる音響音を検出し、システムが調整することができるように、フィードバック信号としてエラー信号を提供する。様々なノイズ除去システムは、1つ以上の参照信号及び/又はエラー信号を使用して、1つ以上のアンチノイズ信号を調整し、様々なラウドスピーカによって変換されて、ゾーン内のノイズの軽減を最適化することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書に開示されるシステム及び方法は、1つ以上のマイクロフォンを使用して、狭帯域音響ノイズを検出し、1つ以上のスピーカによって変換される1つ以上のドライバ信号を生成して、マイクロフォン(複数可)の領域内の音響ノイズレベルの軽減を引き起こすオーディオシステム及び方法を対象とする。様々な例では、狭帯域ノイズは、ホイール空洞(例えば、自動車のホイール内の定在波)又は車両室などの音響領域の共鳴と関連付けられ得る。
【0004】
特定の例では、本明細書のオーディオシステム及び方法は、マイクロフォン信号(複数可)を分析する1つ以上の周波数範囲を選択して、共鳴に関連し得るものなどの狭帯域ノイズの存在を検出し、かつ狭帯域ノイズの周波数、位相、及び幅を識別する。いくつかの例では、様々な共鳴又はその他の狭帯域ノイズが発生する周波数範囲は、システムにアプリオリとして知られている可能性があり、システムは、マイクロフォン信号(複数可)のスペクトルを分析して、周波数範囲内の共鳴ピークを見つけることができる。システムは、ピーク周辺の信号の一部をフィードバック信号として使用して、1つ以上のアンチノイズ信号を能動的に生成する。
【0005】
様々な態様によれば、除去ゾーンにおけるノイズを表す信号を受信し、除去ゾーンにおいて軽減される信号内の周波数を識別し、信号をダウンコンバートして、識別された周波数成分をベースバンドに配置し、ダウンコンバートされた信号に基づいて、ベースバンドアンチノイズ信号を生成し、ベースバンドアンチノイズ信号を識別された周波数にアップコンバートして、識別された周波数の成分を有するアンチノイズ信号を生成し、音響信号に変換されるアンチノイズ信号を提供する、ノイズ除去システム及び方法が提供される。
【0006】
いくつかの例では、除去ゾーンにおけるノイズを表す信号は、マイクロフォン信号である。
【0007】
様々な例によれば、除去ゾーンにおいて軽減される信号内の周波数を識別することは、信号を分析して、信号のスペクトルにおいてピークを有する周波数を識別することを含んでもよい。特定の例では、除去ゾーンにおいて軽減される信号内の周波数を識別することは、信号をベースバンドにダウンコンバートし、ダウンコンバートされた信号を分析して、ダウンコンバートされた信号のスペクトル内の1つ以上のピークを識別することを含んでもよい。
【0008】
様々な例によれば、除去ゾーンにおいて軽減される信号内の周波数を識別することは、事前に選択された周波数範囲で信号を分析することを含んでもよい。特定の例では、事前に選択された周波数範囲は、空洞共鳴と関連付けられ得る。更に、特定の例では、空洞共鳴は、ホイール空洞及び車両室内空洞のうちの少なくとも1つと関連付けられ得る。
【0009】
いくつかの例では、識別された周波数の成分を有するアンチノイズ信号は、識別された周波数の成分及び識別された周波数の周辺の成分を有する狭帯域アンチノイズ信号である。識別された周波数の成分及び識別された周波数の周辺の成分は、様々な例で、識別された周波数より20Hz低く、かつ識別された周波数より20Hz高い周波数の範囲に限定されてもよい。識別された周波数の成分及び識別された周波数の周辺の成分は、特定の例で、識別された周波数より10Hz低く、かつ識別された周波数より10Hz高い周波数の範囲に限定される。
【0010】
様々な例によれば、アンチノイズ信号は、振幅を有する周波数成分と、位相特性と、を含み、識別された周波数の狭帯域ノイズ又は識別された周波数の周辺の狭帯域ノイズと弱め合う干渉を行う。
【0011】
いくつかの例示的なノイズ除去システムは、除去ゾーンにおけるノイズを表す信号を提供するためのセンサを含み得る。センサは、マイクロフォンであり得る。
【0012】
いくつかの例示的なノイズ除去システムは、アンチノイズ信号を受信し、アンチノイズ信号を音響信号に変換するラウドスピーカを含み得る。
【0013】
いくつかの例示的なノイズ除去システムは、ノイズ除去方法を実行するように構成されたコントローラを含み得る。コントローラは、様々な実施例では、プロセッサ及びメモリを含み得る。
【0014】
これらの例示的態様及び例に関する更なる他の態様、実施例、及び利点を、以下で詳細に考察する。本明細書に開示される例は、本明細書に開示される原理のうちの少なくとも1つと一致する任意の様式で他の例と組み合わせられてもよく、「例」、「いくつかの例」、「代替例」、「様々な例」、「一例」などの言及は、必ずしも相互排他的ではなく、記載された特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの例に含まれ得ることを示すことが意図されている。本明細書におけるこうした用語の出現は、必ずしも全てが同じ実施例を示すわけではない。
【0015】
少なくとも1つの例の様々な態様を、添付図面を参照して、以下で考察するが、これらの図面は、縮尺通りに描かれることを意図しない。これらの図は、様々な態様と例の図示、及び更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するが、本発明の制約の定義として意図されない。図において、様々な図で図示される同一の、又はほとんど同一の構成要素は、同様の文字又は数字で表記され得る。明瞭にするために、全ての図において、全ての構成要素が、必ずしもラベル付けされていない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】例示的なノイズ除去システムの概略図である。
図2図1のノイズ除去システムの例示的な動作の概略ブロック図である。
図3図2の例示的な周波数帯域セレクタの概略ブロック図である。
図4図2の例示的な制御アルゴリズムの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の態様は、マイクロフォンを使用して、フィードバック信号を提供し、事前に選択された周波数範囲における狭帯域ノイズの存在に関するフィードバック信号を分析するノイズ除去システム及び方法を対象とする。そのような狭帯域ノイズは、共鳴ノイズ源に関連付けられ得る。いくつかの例では、共鳴ノイズ源は、音響体積又はホイール空洞(タイヤ内の空域)若しくは室内空洞などの空洞に関連付けられ得る。そのような共鳴空洞は、事前に判定されて、1つ以上の周波数範囲で狭帯域共鳴ノイズを生成し得る。本明細書のシステム及び方法は、フィードバック信号に適合して、1つ以上のラウドスピーカによって変換されるアンチノイズ信号を提供して、狭帯域ノイズに干渉し、それによって、リスニング領域における狭帯域ノイズのレベルを軽減する。様々な例では、本明細書のノイズ除去システム及び方法は、エンターテイメント、通信、ガイダンス、警告プロンプトなどのためのオーディオも含む様々なオーディオシステムと統合され得る。様々な例では、本明細書のノイズ除去システム及び方法は、エンターテイメント、通信、ガイダンス、警告プロンプトなどのための他のオーディオも含み得る、ラウドスピーカに対する様々なドライバ信号に含まれる別のオーディオシステムにアンチノイズ信号(複数可)を提供し得る。
【0018】
図1は、例示的なノイズ除去システム100の概略図である。ノイズ除去システム100は、車両室内などの事前に定義された体積104内の少なくとも1つの除去ゾーン102内の不要な音と弱め合う干渉を行うように構成することができる。高いレベルでは、ノイズ除去システム100の例は、1つ以上のマイクロフォン108、1つ以上のラウドスピーカ110、及びコントローラ112を含み得る。いくつかの例では、1つ以上の成分の振動を感知することができるような参照センサを含み得る。いくつかの例では、狭帯域ノイズのマイクロフォン信号を分析するコントローラ112が周波数の範囲を決定できる情報などの車速、エンジン回転数、トルクなどに関する情報を受け取るためなどの、他の参照入力部を含み得る。
【0019】
1つ以上のアンチノイズ信号は、コントローラ112によって生成され、アンチノイズ信号(複数可)を音響エネルギー(つまり、音波)に変換する1つ以上のラウドスピーカ110に既定の体積で提供される。結果として生成される音響エネルギーは、除去ゾーン102内の不要な音と約180°位相がずれており、したがって、その不要な音と弱め合う干渉を行う。アンチノイズ信号(複数可)から生成された音波と既定の体積内の不要なノイズとの組み合わせは、除去ゾーン102内の聞き手によって知覚された場合、不要なノイズの軽減をもたらす。
【0020】
既定の体積内に配設されたマイクロフォン108は、不要なノイズを含む、除去ゾーン内の音波の組み合わせから生じる残留ノイズの検出に基づいてエラー信号を生成する。エラー信号は、フィードバックとしてコントローラ112に提供され、エラー信号は、アンチノイズ信号(複数可)によって除去されていない残留ノイズを少なくとも部分的に表す。マイクロフォン108は、例えば、車両室内(例えば、ルーフ、ヘッドレスト、ピラー、又は室内の他の場所)に装着された少なくとも1つのマイクロフォンであり得る。
【0021】
除去ゾーン(複数可)は、マイクロフォン108から遠隔に位置付けることができることに留意されたい。この場合、エラー信号は、除去ゾーン(複数可)内の残留ノイズの推定値を表すようにフィルタリングされてもよい。いずれの場合も、エラー信号は、除去ゾーン内の不要な残留ノイズを表すと理解される。
【0022】
様々な例で、コントローラ112は、非一時的記憶媒体122と、プロセッサ124と、を備えることができる。一例では、非一時的記憶媒体122は、プログラムコードを記憶することができ、当該プログラムコードは、プロセッサ124によって実行されたときに、下で説明する様々なフィルタ及びアルゴリズムを実施する。コントローラ112は、ハードウェア及び/又はソフトウェアに実装することができる。例えば、コントローラは、SHARC(super harvard architecture single-chip computer、スーパーハーバードアーキテクチャコンピュータ)浮動小数点DSP(digital signal processing、デジタル信号処理)プロセッサによって実装することができるが、コントローラ112は、任意の他のプロセッサ、FPGA(field programmable gate array、フィールドプログラマブルゲートアレイ)、ASIC(application specific integrated circuit、特定用途向け集積回路)、又は他の好適なハードウェアによって実装することができることを理解されたい。
【0023】
図2は、コントローラ112によって実行されるプロセスを含むノイズ除去システム100の例示的な動作を示す。物理プラント210は、ラウドスピーカ110を介したアンチノイズ信号(複数可)、車両内部(例えば、既定の体積104)、及びマイクロフォン(複数可)108の応答の物理的伝達関数を表す。マイクロフォン(複数可)108は、アンチノイズ信号(複数可)から生じる残留信号220及び除去ゾーン102内の不要なノイズを提供する。残留信号220はまた、マイクロフォン信号と称され得る。周波数帯域セレクタ230は、マイクロフォン信号を受信し、受信したマイクロフォン信号を1つ以上の選択された周波数範囲内の狭帯域ノイズに対して分析する。周波数帯域セレクタ230は、制御アルゴリズム240に情報を提供し、その情報は、マイクロフォン信号に狭帯域ノイズが存在する1つ以上の周波数を識別する。制御アルゴリズム240は、マイクロフォン信号を受信し、1つ以上の識別された周波数の各々で狭帯域ノイズを軽減することを意図したアンチノイズ信号(複数可)を生成する。様々な例では、アンチノイズ信号(複数可)は、識別された周波数のうちの1つ以上の周辺の周波数範囲内の狭帯域ノイズを軽減する。
【0024】
図3は、例示的な周波数帯域セレクタ230を示す。周波数帯域セレクタは、FFT232を介してなど、信号を周波数ドメイン表現に転換することができ、ブロック234でスペクトルのピークを見つける。周波数帯域セレクタ230は、スペクトルでそのようなピークを有する1つ以上の識別された周波数236を識別する。いくつかの例では、ブロック234は、空洞共鳴が予想され得る周波数範囲などの狭帯域ノイズが予想され得るスペクトルの選択された部分のみを調べてもよい。そのような例では、ブロック234は、1つ以上の事前に選択された周波数範囲を分析することができる。様々な例では、FFT232の前にダウンコンバージョンを実行して、1つ以上の事前に選択された周波数範囲をベースバンドにシフトすることができ、これにより、FFT232を実行するため、かつブロック234でスペクトルのピークを検出するために必要な計算リソースが削減される。他の例では、例えば、必ずしも空洞共鳴とは関係がない、他の狭帯域ソースからのスペクトルにピークを有する1つ以上の周波数236を識別できる。したがって、周波数236は、信号スペクトルのピークに基づいて、任意の狭帯域ノイズに対して識別され得る。
【0025】
いくつかの例では、周波数帯域セレクタ230は、マイクロフォン信号内の周波数を識別するように動作し得る。他の例では、周波数帯域セレクタ230はまた、ラウドスピーカ(複数可)によって変換されているアンチノイズ信号(複数可)を表すスピーカコマンド信号(複数可)を受信し得る。そのような例では、ブロック238は、ある位置で元の信号、例えば、ノイズ除去システムが動作していないかのように、例えば、アンチノイズ信号が存在しない場合にその場所に存在したであろう音響信号を推定することができる。例えば、ノイズ除去システム100が、識別された周波数で音響成分を効果的に軽減しているため、ノイズ除去システム100がかなり良好に動作して、狭帯域ノイズを軽減し、したがって、マイクロフォン(複数可)からの直接の信号には、識別された周波数にピークが含まれていない可能性がある場合、そのような推定が所望され得る。
【0026】
図4は、制御アルゴリズム240の一例を示す。制御アルゴリズム240は、周波数帯域セレクタ230から識別された周波数236を受信する。識別された周波数ごとに、ダウンコンバータ242は、識別された周波数(又は識別された周波数の周辺)でのマイクロフォン信号(複数可)とスピーカコマンド信号(複数可)のスペクトルを、ベースバンドにダウンコンバートする。推定器244は、ベースバンドマイクロフォン信号及びスピーカコマンド信号(複数可)を受信し、識別された周波数で狭帯域ノイズのベースバンドバージョン(乗員の耳の位置など特定の位置での推定値であり得る)を推定する。推定されたベースバンドノイズは、場合によっては、二次経路の逆数として知られている、(ベースバンドにおける)物理プラントの逆数246によって処理されて、ベースバンドのアンチノイズ信号を生成することができ、(スピーカコマンド信号である)アンチノイズ信号を提供するためにアップコンバータ248によってアップコンバートされる。
【0027】
図3及び図4の例示的な周波数帯域セレクタ230及び例示的な制御アルゴリズム240はそれぞれ、ノイズ除去システム100のそれぞれの成分の単に一例に過ぎず、他の適切な構成が存在する。いくつかの例は、マイクロフォンからのフィードバック(残留)信号に応答して、アンチノイズ信号を調整するための1つ以上の適応アルゴリズムを含み得る。例えば、逆数246は、固定フィルタとして実装されてもよく、又は適応型であってもよく、かつスピーカコマンドと得られる残留信号との間の関係を「学習」してもよい。
【0028】
例示的なノイズ除去システム100及び制御アルゴリズム240の少なくとも1つの利点は、説明されているベースバンドへのダウンコンバージョンによって、フィルタタップ数の要件を減らして狭帯域処理を実装可能にし得ることである。例えば、逆数246は、識別された周波数で信号で動作するものと同じ狭帯域動作を実現するために、より少ないタップを有するベースバンドでフィルタによって実装され得る。
【0029】
ファームウェアなどを含む任意の好適なハードウェア及び/又はソフトウェアは、本明細書に開示される態様及び実施例の構成要素を実行又は実装するように構成されてもよく、態様及び実施例の様々な実装は、開示されるものに加えて構成要素及び/又は機能を含んでもよい。様々な実装は、回路が、少なくとも部分的に、本明細書に記載される機能を実行することを可能にするためのデジタル信号プロセッサ及び/又は他の処理回路の記憶された命令を含んでもよい。
【0030】
本明細書で開示する例は、本明細書に開示される原理の少なくとも1つと一致する任意の様式で、他の例と組み合わせることができ、更に、「一実施例(an example)」、「いくつかの実施例(some examples)」、「代替例(an alternate example)」、「様々な実施例(various examples)」、「一実施例(one example)」等への言及は、必ずしも互いに独占的ではなく、説明される特定の特徴、構造、又は特性は、少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを示すように意図される。本明細書におけるこうした用語の出現は、必ずしも全てが同じ実施例を示すわけではない。
【0031】
また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明目的のみを目的としており、限定的であるとみなされるべきではない。本明細書において単数で言及されるシステム及び方法の実施例、構成要素、要素、行為、又は機能に対する任意の言及はまた、複数を含む実施形態を包含してもよく、本明細書における任意の例、構成要素、要素、動作、又は機能に対する複数での任意の言及もまた、単数形のみを含む実施例を包含してもよい。したがって、単数形又は複数形の参照は、本開示のシステム又は方法、それらの構成要素、行為、又は要素を制限することを意図するものではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、並びに、それらの変形形態の使用は、以下で列挙する項目とその等価物、並びに、他の項目を包含することを意味する。「又は(or)」への言及は、「又は(or)」で記載された全ての用語が、記載された用語の単一、複数、及び、全ての用語のいずれかを示せるよう、包括的であると解釈され得る。文脈が合理的にそうでないことを暗示している場合を除き、前後、左右、上部及び下部、上方及び下方、及び縦横への言及は、説明の便宜のためであり、本システムと方法、あるいは、それらの構成要素を、何らかの1つの位置的か、又は空間的方向に限定するものではない。
【0032】
少なくとも1つの実施例に関するいくつかの態様について述べてきたが、当業者であれば、様々な変更、修正、並びに、改良が容易に思い付くことが、理解されるであろう。こうした変更、修正、及び改善は、本開示の一部であり、本発明の範囲内であることが意図される。したがって、前述の説明及び図面は、例に過ぎず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の適切な構成、並びに、それらの等価物から判定されるはずである。
【符号の説明】
【0033】
100 ノイズ除去システム
102 除去ゾーン
104 既定の体積
108 マイクロフォン
110 ラウドスピーカ
112 コントローラ
122 非一時的記憶媒体
124 プロセッサ
210 物理プラント
220 残留信号
230 周波数帯域セレクタ
236 周波数
240 制御アルゴリズム
242 ダウンコンバータ
244 推定器
246 逆数
248 アップコンバータ
図1
図2
図3
図4